(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】液体肥料供給装置
(51)【国際特許分類】
A01C 23/00 20060101AFI20221107BHJP
【FI】
A01C23/00 J
(21)【出願番号】P 2019018892
(22)【出願日】2019-02-05
【審査請求日】2022-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000201641
【氏名又は名称】全国農業協同組合連合会
(73)【特許権者】
【識別番号】596029085
【氏名又は名称】株式会社パディ研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 恒雄
(72)【発明者】
【氏名】竹内 智
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-153466(JP,A)
【文献】特開平03-108437(JP,A)
【文献】実開昭51-110932(JP,U)
【文献】特開平10-165015(JP,A)
【文献】特開2017-077210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 3/00 - 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体肥料の供給量を設定可能な液体肥料供給器を介して供給される液体肥料と、用水供給源から供給される用水とを混合して圃場に供給する液体肥料供給装置において、前記液体肥料供給器は、該液体肥料供給器の外径より大径で、液体肥料供給器の高さより高い筒状体の内部に配置され、該筒状体には、液体肥料供給器の上部に、筒状体を上下に仕切る仕切板が設けられ、該仕切板の上部の筒状体内に液体肥料を貯留する液体肥料貯留部が設けられるとともに、前記仕切板には、液体肥料貯留部に貯留された液体肥料を前記液体肥料供給器に流下させる液体肥料流下管が設けられ、前記筒状体の外面には、前記液体肥料供給器から供給する液体肥料の流量を設定する流量設定部が設けられていることを特徴とする液体肥料供給装置。
【請求項2】
前記圃場に向けて前記用水と前記液体肥料とが混合した液体肥料混合用水を供給する液体肥料混合用水供給器を備えており、該液体肥料混合用水供給器は、前記用水供給源から前記圃場の方向に向かって配置された用水供給管と、該用水供給管の基部に設けられて前記液体肥料供給器から供給される液体肥料を用水供給管内に流入させる液体肥料供給部と、前記用水供給管の先端部及び側面の複数箇所に設けられて前記液体肥料混合用水を圃場に流出させる液体肥料混合用水供給孔とを有していることを特徴とする請求項1記載の液体肥料供給装置。
【請求項3】
前記圃場に向けて前記用水と前記液体肥料とが混合した液体肥料混合用水を供給する液体肥料混合用水供給器を備えており、該液体肥料混合用水供給器は、前記用水供給源から圃場の方向に向かって配置される用水供給管と、該用水供給管の先端から二方向に分岐して水平方向に配置される一対の分岐管と、各分岐管の先端からそれぞれ用水供給管の基部の方向に、かつ、用水供給管に沿う方向に屈曲して先端が閉塞された一対の屈曲管と、前記用水供給管の基部に設けられて前記液体肥料供給器からの液体肥料を前記用水供給管内に流入させる液体肥料供給部と、前記分岐管及び前記屈曲管にそれぞれ設けられて前記液体肥料混合用水を圃場に流出させる複数の液体肥料混合用水供給孔とを有していることを特徴とする請求項1記載の液体肥料供給装置。
【請求項4】
前記用水供給源は、前記圃場の端部に設けられた給水枡であり、前記用水供給管は、前記給水枡から前記圃場に供給される用水の流れの中央部に配置され、少なくとも一部の用水が用水供給管内に流入することを特徴とする請求項2又は3記載の液体肥料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体肥料供給装置に関し、詳しくは、圃場(水田)への流し込み施肥を行う際の液体肥料を効率よく供給するための液体肥料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水稲栽培を行う圃場への施肥作業を行う際の施肥方法として、湛水深を低くした状態で、水口から圃場に流入する水流に乗せて肥料を施肥する流し込み施肥方法が知られている。この流し込み施肥を行う際に使用する液体肥料供給装置として、水口から圃場に流入する用水中に、一定割合の液体肥料を供給するための構造を有する液体肥料供給装置が用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された液体肥料供給装置では、圃場への施肥作業を行う際に、液体肥料を貯留し、液体肥料供給装置に向けて液体肥料を供給するための液体肥料貯槽や接続パイプを別途に用意し、接続パイプを着脱する必要があり、液体肥料供給装置の設置や撤収に手間がかかり、コスト的な問題もあった。
【0005】
そこで本発明は、液体肥料を一定量で供給できる液体肥料供給器と液体肥料貯槽や接続パイプとを一体化して作業性の向上や設備コストの低減を図ることができる液体肥料供給装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の液体肥料供給装置は、液体肥料の供給量を設定可能な液体肥料供給器を介して供給される液体肥料と、用水供給源から供給される用水とを混合して圃場に供給する液体肥料供給装置において、前記液体肥料供給器は、該液体肥料供給器の外径より大径で、液体肥料供給器の高さより高い筒状体の内部に配置され、該筒状体には、液体肥料供給器の上部に、筒状体を上下に仕切る仕切板が設けられ、該仕切板の上部の筒状体内に液体肥料を貯留する液体肥料貯留部が設けられるとともに、前記仕切板には、液体肥料貯留部に貯留された液体肥料を前記液体肥料供給器に流下させる液体肥料流下管が設けられ、前記筒状体の外面には、前記液体肥料供給器から供給する液体肥料の流量を設定する流量設定部が設けられていることを特徴としている。
【0007】
さらに、本発明の液体肥料供給装置は、前記圃場に向けて前記用水と前記液体肥料とが混合した液体肥料混合用水を供給する液体肥料混合用水供給器を備えており、該液体肥料混合用水供給器は、前記用水供給源から前記圃場の方向に向かって配置された用水供給管と、該用水供給管の基部に設けられて前記液体肥料供給器から供給される液体肥料を用水供給管内に流入させる液体肥料供給部と、前記用水供給管の先端部及び側面の複数箇所に設けられて前記液体肥料混合用水を圃場に流出させる液体肥料混合用水供給孔とを有していることを特徴としている。
【0008】
また、液体肥料混合用水供給器として、前記用水供給源から圃場の方向に向かって配置される用水供給管と、該用水供給管の先端から二方向に分岐して水平方向に配置される一対の分岐管と、各分岐管の先端からそれぞれ用水供給管の基部の方向に、かつ、用水供給管に沿う方向に屈曲して先端が閉塞された一対の屈曲管と、前記用水供給管の基部に設けられて前記液体肥料供給器からの液体肥料を前記用水供給管内に流入させる液体肥料供給部と、前記分岐管及び前記屈曲管にそれぞれ設けられて前記液体肥料混合用水を圃場に流出させる複数の液体肥料混合用水供給孔とを有していることを特徴としている。
【0009】
さらに、前記用水供給源が、前記圃場の端部に設けられた給水枡であり、前記用水供給管は、前記給水枡から前記圃場に供給される用水の流れの中央部に配置され、少なくとも一部の用水が用水供給管内に流入することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の液体肥料供給装置によれば、液体肥料の供給量を設定可能な液体肥料供給器を、液体肥料貯留部及び液体肥料流下管と一体的に形成するとともに、外面に流量設定部を設けたので、圃場への施肥作業を効率よく行うことができ、作業性を大幅に向上させることができる。また、複数箇所に液体肥料混合用水供給孔を設けた用水供給管に液体肥料を供給することにより、用水と液体肥料とを確実に混合することができるとともに、液体肥料混合用水を圃場の全体に効果的に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の液体肥料供給装置の一形態例を示す断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1及び
図2は、本発明の液体肥料供給装置の一形態例を示している。本形態例に示す液体肥料供給装置11は、液体肥料を供給する液体肥料供給源12となるもので、この液体肥料供給源12から供給される液体肥料と、用水供給源13から供給される用水とを混合して圃場14に供給する。用水供給源13は、圃場14の一辺に沿った農道15の圃場14側に設けられた給水枡16であって、給水枡16の内部には、用水供給パイプ(図示せず)からの用水の供給量を制御するための給水弁17が設けられている。また、給水枡16の圃場14側には、給水用開口18が設けられ、給水弁17を開くことにより、用水供給パイプから供給される用水が、給水枡16内から給水用開口18を通って圃場14に供給されるように形成されている。
【0013】
圃場14に液体肥料を供給する際には、給水枡16に近接する農道15に液体肥料供給装置11を設置するとともに、給水枡16の給水用開口18の部分に、液体肥料混合用水供給器19を設置し、液体肥料供給源12と液体肥料混合用水供給器19とを液体肥料供給管20で接続する。
【0014】
液体肥料供給源12となる液体肥料供給装置11は、液体肥料の供給量を設定可能な液体肥料供給器21を備えている。この液体肥料供給器21は、例えば、前記特許文献1に記載された液体肥料供給装置を使用することができる。すなわち、筒状容器21aの下部に液体肥料貯留槽を設け、該液体肥料貯留槽の上部に液体肥料導入孔21bを設けるとともに、液体肥料貯留槽内に、液体肥料貯留槽内の液面が上昇したときに前記液体肥料導入孔を閉塞して液体肥料貯留槽内の液位を一定に保つためのフロート弁体を配置し、液体肥料貯留槽の底部に液体肥料導出管21cの基端を接続し、該液体肥料導出管21cの先端の高さを調節することにより、液体肥料貯留槽から液体肥料導出管21cを介して導出する液体肥料の供給量を設定可能な液体肥料供給装置を、本発明の液体肥料供給器21として使用することができる。
【0015】
前記液体肥料供給器21は、該液体肥料供給器21の外径より大径で、液体肥料供給器21の高さより高い筒状体22の内部に配置されている。この筒状体22の内部には、液体肥料供給器21の上部に、筒状体22を上下に仕切る仕切板23が設けられており、該仕切板23の下部に、前記液体肥料供給器21を収容する液体肥料供給器収容部24が形成され、仕切板23の上部となる筒状体22の上半部内は、所定量の液体肥料を貯留するための液体肥料貯留部25が形成されている。さらに、前記仕切板23には、液体肥料貯留部25に貯留された液体肥料を液体肥料供給器21の液体肥料導入孔に向けて流下させる液体肥料流下管26が設けられている。これにより、液体肥料供給用の貯槽や接続パイプを別に用意して接続パイプを着脱する必要がなくなり、作業性の向上を図ることができる。
【0016】
また、前記筒状体22の外周面には、液体肥料供給器21から液体肥料供給管20への液体肥料の供給量を設定するための流量設定部27が設けられている。この流量設定部27は、筒状体22の内部に、上下方向の複数箇所に接続口を有する液量設定管28を設けたものであって、上方の3箇所の接続口は、前記液体肥料導出管21cの接続口28a,28b,28cとなっており、最下部の接続口は、液体肥料供給管20の接続口28dとなっている。したがって、液体肥料導出管21cを上方の接続口28aに接続すれば液体肥料の供給量を少なくでき、下方の接続口28cに接続すれば液体肥料の供給量を少なくできるようになっている。
【0017】
一方、前記液体肥料混合用水供給器19は、基部が給水枡16内に挿入されて先端側が給水用開口16から圃場13の方向に向かって配置される用水供給管29と、該用水供給管29の先端からT字状に二方向に分岐して水平方向に配置される左右一対の分岐管30,30と、各分岐管30,30の先端からそれぞれ用水供給管29の基部の方向に、かつ、用水供給管29に沿う方向に屈曲して先端がそれぞれ閉塞された一対の屈曲管31,31と、前記用水供給管29の基部に設けられて液体肥料供給器21からの液体肥料を用水供給管29内に流入させる液体肥料供給管20が接続される液体肥料供給部29aとを備えるとともに、前記分岐管30,30及び前記屈曲管31,31の周壁にそれぞれ設けられた複数の液体肥料混合用水供給孔32,32とを備えている。複数の液体肥料混合用水供給孔32は、給水用開口16から圃場13への用水の流れ方向に対して平行な方向と、直交する方向とに設けられており、液体肥料混合用水供給器19の口径や、用水の供給量、液体肥料の供給量、圃場の大きさなどの条件に応じて適宜な直径で、適数が設けられている。また、前記屈曲管31,31は、前記給水用開口16より外側に位置するように設定されており、給水用開口16から圃場14に向かう直線方向の用水の流れが、屈曲管31の液体肥料混合用水供給孔32から左右方向に向かう液体肥料混合用水の流れに悪影響を与えないようにしている。
【0018】
このように形成した液体肥料供給装置11は、液体肥料混合用水供給器19を所定位置に配置した後、接続口28dからの液体肥料供給管20を液体肥料供給部29aに接続し、用水中への液体肥料の混合割合に合わせて液体肥料導出管21cを流量接続口28a,28b,28cのいずれかに接続し、液体肥料貯留部25に肥料成分を溶解した液体肥料を投入することにより、液体肥料混合用水供給器19に一定流量の液体肥料を供給することができる。この状態で給水弁16を開くことにより、給水枡16から圃場14に液体肥料混合用水を供給することができる。
【0019】
このとき、給水用開口18から流出した用水は、流出方向に対して直交方向に配置されている分岐管30及び両側方の屈曲管31によって流れ方向が分散され、液体肥料混合用水供給孔32から流出する液体肥料混合用水と共に正面方向及び左右両側方に分かれながら圃場14に供給されていく。これにより、液体肥料が一方向に集中して流れることがなくなり、所定量の液体肥料が混合した状態の用水を圃場14の全体にわたって平均した状態で供給することができる。
【0020】
さらに、液体肥料供給装置11の各部材を、合成樹脂製パイプなどの軽量材料で形成することができるので、目的とする圃場14への運搬や設置を容易に行うことができ、一つの液体肥料供給装置11で複数の圃場への肥料供給に容易に対応することができる。また、液体肥料供給器21は、接続口28a,28b,28cへの液体肥料導出管21cの接続位置によって液体肥料の供給量を設定できることから、液体肥料供給源12を搬送車の荷台に搭載した状態のまま一定量の液体肥料を供給することができる。したがって、圃場から圃場への移動は、液体肥料混合用水供給器19だけを移動させるだけでよく、複数の圃場への肥料供給を極めて容易に行うことができる。加えて、筒状体の外面に流量設定部となる接続口28a,28b,28cを設けているので、液体肥料の供給量調節も容易に行うことができる。特に、液体肥料供給器21と液体肥料貯留部25とを一体に設けることにより、別の液体肥料貯槽を設けたり、この液体肥料貯槽と液体肥料供給源や液体肥料供給器とを接続ホースで接続する必要がなくなる、
【0021】
なお、用水供給源の構成は特に限定されるものではなく、用水供給路との間に堰板を介して設けたものであってもよく、水位調節のための給排水を行う機能を有するものであってもよい。
【符号の説明】
【0022】
11…液体肥料供給装置、12…液体肥料供給源、13…用水供給源、14…圃場、15…農道、16…給水枡、17…給水弁、18…給水用開口、19…液体肥料混合用水供給器、20…液体肥料供給管、21…液体肥料供給器、21a…筒状容器、21b…液体肥料導入孔、21c…液体肥料導出管、22…筒状体、23…仕切板、24…液体肥料供給器収容部、25…液体肥料貯留部、26…液体肥料流下管、27…流量設定部、28…液量設定管、28a,28b,28c,28d…接続口、29…用水供給管、29a…液体肥料供給部、30…分岐管、31…屈曲管、32…液体肥料混合用水供給孔