(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】ヘアケア装置及びヘアケア装置用筐体
(51)【国際特許分類】
A61H 23/02 20060101AFI20221107BHJP
A61N 7/00 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
A61H23/02 341
A61H23/02 386
A61N7/00
(21)【出願番号】P 2020184571
(22)【出願日】2020-11-04
【審査請求日】2022-05-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ・2020年10月15日及び2020年11月5日 ピクシーダストテクノロジーズ株式会社が、ヘアケア装置について、試験場所に来店したユーザに対してユーザテストを行った。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517182918
【氏名又は名称】ピクシーダストテクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002815
【氏名又は名称】IPTech弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小片 尚志
(72)【発明者】
【氏名】伊東 信之
【審査官】関本 達基
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-528839(JP,A)
【文献】国際公開第2019/065362(WO,A1)
【文献】特表2013-517088(JP,A)
【文献】特表2018-522657(JP,A)
【文献】特開平10-216146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 23/02
A61N 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の超音波振動子を有するフェーズドアレイを備えた超音波発生装置を具備し、
前記超音波発生装置に取り付けられた筐体を具備し、
前記筐体は、
軸方向の第1端部で前記フェーズドアレイを囲み、
軸方向の第2端部で開口し、
前記筐体はさらに、
第1カバーを具備し、
前記第1カバーは、軸方向の一方側に位置する前記第1端部が前記超音波発生装置に取り付けられ、
前記第1カバーの前記第1端部と軸方向の反対側に位置する第2端部に、前記第1カバーと同軸に配置される第2カバーを具備し、
前記第2カバーの内径は、前記第1カバーの外径よりも大きい、ヘアケア装置。
【請求項2】
複数の超音波振動子を有するフェーズドアレイを備えた超音波発生装置を具備し、
前記超音波発生装置に取り付けられた筐体を具備し、
前記筐体は、
軸方向の第1端部で前記フェーズドアレイを囲み、
軸方向の第2端部で開口し、
前記筐体はさらに、
第1カバーを具備し、
前記第1カバーは、軸方向の一方側に位置する前記第1端部が前記超音波発生装置に取り付けられ、
前記第1カバーの内周面に沿って配置された第1吸音部材を具備し、
前記第1カバーの前記第1端部と軸方向の反対側に位置する第2端部に、前記第1カバーと同軸に配置される第2カバーを具備し、
前記第2カバーの内周面に沿って配置された第2吸音部材を具備し、
前記第2カバーの内径は、前記第1カバーの外径よりも大きい、ヘアケア装置。
【請求項3】
前記筐体は
、
前
記第1カバーの内周面に沿って配置された第1吸音部材を具備し
、
前
記第2カバーの内周面に沿って配置された第2吸音部材を具備する請求項
1に記載のヘアケア装置。
【請求項4】
前記第2カバーの内径は、前記第1カバーの外径よりも大きい、請求項
3に記載のヘアケア装置。
【請求項5】
前記第1カバーの外径は、前記第2吸音部材の内径よりも小さく、
前記第1カバー及び前記第2カバーは、軸方向に沿って相対移動可能に配置されている、請求項
2から請求項
4のいずれか1項に記載のヘアケア装置。
【請求項6】
前記第1吸音部材の軸方向の一端部には、径方向の内側に向けて延びる延伸部が形成され、
前記延伸部における径方向の中央部には、軸方向に向けて貫通する貫通穴が形成されている、請求項
2から請求項
5のいずれか1項に記載のヘアケア装置。
【請求項7】
前記複数の超音波振動子は、前記筐体の内側に位置する焦点に集束する集束超音波を放射し、
前記貫通穴の半径Dは、下記式(1)を満たす、請求項
6に記載のヘアケア装置。
D>X×h/L…(1)
D:前記貫通穴の半径
X:前記貫通穴の中心軸から各超音波振動子までの距離の最大値
h:前記貫通穴の上端開口縁から、集束超音波の焦点までの上下方向の距離
L:集束超音波の焦点距離
【請求項8】
前記第1カバー及び前記第1吸音部材のうちの少なくともいずれか一方に固定されたストッパ部材を備え、
前記ストッパ部材は、前記第2カバー及び前記第2吸音部材のうちの少なくともいずれか一方の上端部と当接することで、前記第2カバーが前記第1カバーから離脱するのを抑制する、請求項
2から請求項
7のいずれか1項に記載のヘアケア装置。
【請求項9】
複数の超音波振動子を有するフェーズドアレイを備えた超音波発生装置に取り付けられ、
軸方向の第1端部が前記フェーズドアレイを囲み、
軸方向の第2端部が開口し、
軸方向の一方側に位置する前記第1端部が、前記超音波発生装置に取り付けられる第1カバーを具備し、
前記第1カバーの前記第1端部と軸方向の反対側に位置する第2端部に、前記第1カバーと同軸に配置される第2カバーを具備し、
前記第2カバーの内径は、前記第1カバーの外径よりも大きい、ヘアケア装置用筐体。
【請求項10】
複数の超音波振動子を有するフェーズドアレイを備えた超音波発生装置に取り付けられ、
軸方向の第1端部が前記フェーズドアレイを囲み、
軸方向の第2端部が開口し、
軸方向の一方側に位置する前記第1端部が、前記超音波発生装置に取り付けられる第1カバーを具備し、
前記第1カバーの内周面に沿って配置された第1吸音部材を具備し、
前記第1カバーの前記第1端部と軸方向の反対側に位置する第2端部に、前記第1カバーと同軸に配置される第2カバーを具備し、
前記第2カバーの内周面に沿って配置された第2吸音部材を具備し、
前記第2カバーの内径は、前記第1カバーの外径よりも大きい、ヘアケア装置
用筐体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘアケア装置及びヘアケア装置用筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、頭髪の悩み(例えば、薄毛又は白髪)を抱える人は、ヘアケアのために様々な手段を講じている。例えば、育毛又は発毛を促進することにより、頭髪の問題(薄毛又は抜け毛)が解消される。育毛又は発毛を促進するための様々な手段が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、被施術者の頭皮に電極を装着することにより、育毛又は発毛を促進する発毛育毛装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術では、発毛育毛装置の一部を頭皮に接触させるため、ヘアケアにおいて、衛生面への悪影響の懸念がある。
【0006】
本開示の目的は、ヘアケアにおいて、衛生面への悪影響を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係るヘアケア装置は、複数の超音波振動子を有するフェーズドアレイを備えた超音波発生装置を具備し、超音波発生装置に取り付けられた筐体を具備し、筐体は、軸方向の第1端部でフェーズドアレイを囲み、軸方向の第2端部で開口する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ヘアケアにおいて、衛生面への悪影響を解消する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態のヘアケア装置の構成を示す概略図である。
【
図2】本実施形態のヘアケア装置のうち、超音波発生装置に関する構成を例示する図である。
【
図3】本実施形態のヘアケア装置のうち、フェーズドアレイの構成を例示する図である。
【
図4】
図3に示すフェーズドアレイから超音波を発生する状態を説明する図である。
【
図5】本実施形態のヘアケア装置のうち、筐体の縦断面図である。
【
図8】本実施形態のヘアケア処理のフローチャートである。
【
図9】ユーザへのヘアケア装置のセッティングを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0011】
以下の説明において、「X方向」は、後述される少なくとも1つの超音波振動子の放射面の横方向であり、「Y方向」は、放射面の縦方向であり、「Z方向」は、放射面の法線方向、すなわち超音波の放射方向である。
「上方向」は、後述されるヘアケア装置を水平面に置いたときの上方向である。「下方向」は、後述されるヘアケア装置を水平面に置いたときの下方向(つまり、重力方向)である。
【0012】
(1)本実施形態
本実施形態を説明する。
【0013】
(1-1)ヘアケア装置1の構成
本実施形態のヘアケア装置1の構成を説明する。
図1は、本実施形態のヘアケア装置1の構成を示す概略図である。
図2は、本実施形態のヘアケア装置1のうち、超音波発生装置10に関する構成を例示する図である。
【0014】
図1のヘアケア装置1は、超音波を利用したヘアケアを被施術者U(
図7参照)に提供するように構成される。
【0015】
図1に示されるように、ヘアケア装置1は、超音波発生装置10と、支持スタンド2と、筐体3と、を備えている。
【0016】
超音波発生装置10は、集束超音波を放射するように構成される。
【0017】
支持スタンド2は、超音波発生装置10を支持するように構成される。
【0018】
筐体3は、超音波発生装置10に取り付けられるように構成される。
【0019】
図2に示すように、超音波発生装置10は、記憶装置11と、プロセッサ12と、入出力インタフェース13と、通信インタフェース14と、フェーズドアレイ15と、を備えている。
記憶装置11は、プログラム及びデータを記憶するように構成される。記憶装置11は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び、ストレージ(例えば、フラッシュメモリ又はハードディスク)の組合せである。
【0020】
プログラムは、例えば、以下のプログラムを含む。
・OS(Operating System)のプログラム
・超音波振動子15aを制御するためのドライバアプリケーションのプログラム
・情報処理を実行するアプリケーションのプログラム
【0021】
データは、例えば、以下のデータを含む。
・情報処理において参照されるデータベース
・情報処理を実行することによって得られるデータ(つまり、情報処理の実行結果)
【0022】
プロセッサ12は、記憶装置11に記憶されたプログラムを起動することによって、ヘアケア装置1のコントローラの機能を実現するように構成され得る。プロセッサ12は、コンピュータの一例である。
【0023】
プロセッサ12は、複数の超音波振動子15aを制御する。具体的には、プロセッサ12は、超音波を放射するように複数の超音波振動子15aを制御する。
【0024】
入出力インタフェース13は、ヘアケア装置1に接続される入力デバイスから信号(例えば、被施術者Uの指示)を取得し、かつ、ヘアケア装置1に接続される出力デバイスに信号を出力するように構成される。
入力デバイスは、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル、リモートコントローラ、プッシュボタン、スイッチ、又は、それらの組合せである。
出力デバイスは、例えば、ディスプレイ、スピーカ、振動デバイス、光学ガイド、又はそれらの組合せである。
【0025】
通信インタフェース14は、ヘアケア装置1と図示されない外部装置(例えば、サーバ、被施術者デバイス(例えば、スマートフォン、ウェアラブルデバイス))との間の通信を制御するように構成される。
【0026】
(1-1-1)フェーズドアレイ15の構成
フェーズドアレイ15の構成を説明する。
図3は、本実施形態のヘアケア装置1のうち、フェーズドアレイ15の構成を例示する図である。
図3に示すように、フェーズドアレイ15は、振動子盤16と、複数の超音波振動子15aと、を有する。複数の超音波振動子15aは、振動子盤16にXY平面に沿う水平面に沿って並べられ、例えばアレイ状に配列される。複数の超音波振動子15aは、プロセッサ12よる制御に従って駆動(すなわち振動)するように構成される。
【0027】
振動子盤16は、例えば、XY平面(つまり、Z方向から見た平面視(以下、単に「平面視」という))で矩形状を有する。振動子盤16が、フェーズドアレイ15の放射面を形成している。複数の超音波振動子15aは、平面視で、六角形状をなすように、振動子盤16に配列されている。
【0028】
図4は、
図3に示すフェーズドアレイ15から放射された超音波が焦点FPに集束する様子を説明する図である。
プロセッサ12は、複数の超音波振動子15aそれぞれを個別のタイミングで駆動する。各超音波振動子15aから放射される超音波は、互いに同じ音圧を有する。フェーズドアレイ15から放射される超音波は、各超音波振動子15aの振動の時間差に応じた位相差を有する。
図4に示すように、複数の超音波振動子15aのそれぞれから放射された超音波は、振動子盤16からZ方向に所定の距離(以下「焦点距離」という)だけ離れた位置にある焦点FPで集束する。すなわち、本実施形態における超音波発生装置10は、フェーズドアレイ15から集束超音波を発生する集束超音波発生装置である。
【0029】
図1に示すように、支持スタンド2は、支柱21と、キャスタ22と、支持部23と、第1アーム24と、第2アーム25と、を備えている。
支柱21は、上下方向に延びている。
キャスタ22は支柱21の下端部に取り付けられている。使用者は、キャスタ22を転がして、支持スタンド2を移動させることができる。
支持部23は、支柱21に取り付けられている。支持部23の上下方向の位置は、変更可能となっている。
【0030】
第1アーム24は、第1端部24aが支持部23に取り付けられることにより、支持部23により回転可能に軸支されている。つまり、第1アーム24が支柱21となす角度は、調整可能である。
第2アーム25の第1端部25aは、第1アーム24における第2端部24bに回転可能に軸支されている。つまり、第2アーム25が第1アーム24となす角度は、調整可能である。
【0031】
第2アーム25の第2端部25bには、超音波発生装置10が支持されている。図示の例では、超音波発生装置10が集束超音波を放射するZ-方向が、鉛直方向下向きと一致している。なお、第1アーム24が支柱21となす角度、及び、第2アーム25が第1アーム24となす角度の少なくとも1つを調整することで、Z-方向の向きは任意に変更することができる。
以下の説明では、
図1を例にあげて、Z+方向を上方、Z-方向を下方として説明する。
【0032】
図5は、本実施形態のヘアケア装置1のうち、筐体3の縦断面図である。
図5に示すように、筐体3は、筒状をなし、中心軸が上下方向に延びている。上方に位置する軸方向の第1端部3aが、フェーズドアレイ15を囲むように、超音波発生装置10に取り付けられている。筐体3の下方に位置する軸方向の第2端部3bは開口している。
筐体3は、軸方向と直交する径方向の外側に配置された第1カバー31および第2カバー33と、第1カバー31の内周面に沿って配置された第1吸音部材32と、第2カバー33の内周面に沿って配置された第2吸音部材34と、ストッパ部材35と、を具備する。
【0033】
第1カバー31は、円筒形状を呈している。第1カバー31の上端部(第1端部)31aは、超音波発生装置10に取り付けられる。第1カバー31は、例えば一定の強度を備えた軽量の合成樹脂材料により形成されている。
【0034】
第1吸音部材32は、第1カバー31の内周面に沿って配置され、第1カバー31に例えば接着剤等により固定されている。第1吸音部材32の外形は、筒状を呈している。第1吸音部材32は超音波を吸収する材質により形成されている。第1吸音部材32は、例えばポリウレタン等の合成樹脂の発泡成形により形成される。第1吸音部材32は、超音波発生装置10から放射される集束超音波の乱反射成分、すなわち超音波振動子15aから放射された超音波のうち、焦点FPに向かわない成分を吸収する。
【0035】
第1吸音部材32の下端部(軸方向の一端部)32aには、径方向の内側に向けて延びる延伸部36が形成されている。延伸部36は、第1吸音部材32の下端部32aの全周にわたって形成されている。このため、第1吸音部材32は縦断面視でL字状を呈している。
【0036】
第1吸音部材32の延伸部36における径方向の中央部には、軸方向に向けて貫通する貫通穴37が形成されている。貫通穴37の大きさは、水平方向の最も外側に位置する超音波振動子15aから焦点FPに向かう経路に、延伸部36が位置しない大きさとなっている。
すなわち、第1吸音部材32に形成された貫通穴37の半径Dは、下記式(1)を満たす。
D>X×h/L…(1)
D:貫通穴37の半径
X:貫通穴の中心軸Oから各超音波振動子15aまでの距離の最大値
h:貫通穴37の上端開口縁から、集束超音波の焦点FPまでの上下方向の距離
L:集束超音波の焦点距離
式(1)において、貫通穴の中心軸Oから各超音波振動子15aまでの距離の最大値とは、X方向およびY方向に沿って並べて配置された複数の超音波振動子15aのうち、中心軸Oから最も離れた箇所に位置する超音波振動子15aと、中心軸Oと、の径方向の距離を指す。
【0037】
ここで、貫通穴37および超音波振動子15aの位置関係について
図6を参照して説明する。
図6は、筐体3の下面図である。
図6示すように、超音波振動子15aは、X方向およびY方向に沿って並べて配置されている。複数の超音波振動子15aのうち、X方向およびY方向の中央部に位置する一部の超音波振動子15aは、貫通穴37を通して下方から覗いた状態となる。つまり換言すれば、貫通穴37の大きさは、下面図において、延伸部36により隠れた超音波振動子15aからも、焦点までの経路が確保される大きさよりも大きくなる。
【0038】
図5に示すように、第2カバー33は、外形が円筒形状を呈し、第1カバー31における第1端部31aと軸方向の反対側に位置する下端部(第2端部)31bに、第1カバー31の中心軸Oと同軸となるように配置されている。第2カバー33の内径は、第1カバー31の外形よりも大きい。第2カバー33は、例えば一定の強度を備えた軽量の合成樹脂材料により形成されている。
第2カバー33の上端部33aには、径方向の内側に向けて突出する突出部38が形成されている。突出部38は、第2カバー33の全周にわたって形成されている。
【0039】
第2吸音部材34は、第2カバー33の内周面に沿って配置され、第2カバー33に例えば接着剤等により固定されている。第2吸音部材34は、円筒形状を呈している。第2吸音部材34は超音波を吸収する材質により形成されている。第2吸音部材34は、例えばポリウレタン等の合成樹脂の発泡成形により形成される。第2吸音部材34の材質は、第1吸音部材32の材質を同じであってもよい。第2吸音部材34は、被施術者Uで反射した集束超音波の反射波を吸収する。
【0040】
ここで、第1カバー31の外形は、第2吸音部材34の内径よりも小さい。このため、第1カバー31及び第2カバー33は、上下方向に沿って相対移動可能に配置されている。
【0041】
ストッパ部材35は、中心軸Oと同軸に配置されたリング状の部材である。ストッパ部材35は、例えば一定の強度を備えた軽量の合成樹脂材料により形成されている。
ストッパ部材35は、ストッパ部材35は、第1カバー31及び第1吸音部材32の下端縁に固定されている。ストッパ部材35の外周面は、第1カバー31の外周面よりも径方向の外側に張り出している。ストッパ部材35の外周面は、第2吸音部材34の内周面を径方向の外側に向けて押圧した状態で、第2吸音部材34に当接している。ストッパ部材35が第2吸音部材34に当接していることで、第2吸音部材34が固定された第2カバー33と、第1カバー31と、が上下方向に位置決めされる。
【0042】
第2カバー33を第1カバー31に対して下方に移動させると、ストッパ部材35のうち、第1カバー31の外周面よりも径方向の外側に張り出した部分が、第2カバー33の突出部38と上下方向に当接する。すなわち、ストッパ部材35は第2カバー33が第1カバー31から離脱するのを防ぐ抜け止めとなっている。
【0043】
(1-2)実施形態の概要
実施形態の概要を説明する。
図7は、本実施形態の概要を説明する図である。
【0044】
超音波発生装置10のプロセッサ12が、複数の超音波振動子15aを位相制御しながら駆動する。駆動された各超音波振動子15aそれぞれは、フェーズドアレイ15の放射面(XY平面)に対して直交する方向(Z方向)に向かって、超音波ビームを放射する。
図7に示されるように、フェーズドアレイ15から放射された超音波ビーム(すなわち、集束超音波)は、複数の超音波振動子15aの振動の時間差に応じた位相差を生じさせる振動の制御によって決まる焦点FPに集束する。故に、焦点FPに被施術者Uの施術部位である頭部(例えば、頭皮、毛髪(毛根を含む、以下同じ)、又はそれらの組み合わせ)が位置する場合に、複数の超音波振動子15aから放射された超音波ビームは、被施術者Uの施術部位に集束超音波による音響放射圧を印加できる。印加された音響放射圧によって、被施術者Uの施術部位はいずれの超音波振動子15aとも接触することなくZ方向への押圧刺激を受ける。
【0045】
プロセッサ12は、複数の超音波振動子15aを所定の振動周波数(例えば10Hz)で間欠的に駆動する。具体的には、プロセッサ12は、第1期間に亘って複数の超音波振動子15aを駆動し、第1期間に続く第2期間に亘って複数の超音波振動子15aを駆動しないようなパルス信号を用いて複数の超音波振動子15aを駆動させる。第1期間に被施術者Uの施術部位を押圧した音響放射圧は、第2期間に消滅する。音響放射圧が消滅すると、被施術者Uの施術部位には頭皮の弾力による復元力が働く。すなわち、第1期間及び第2期間を繰り返すことにより、被施術者Uの施術部位には音響放射圧が間欠的に印加される。その結果、当該施術部位は、いずれの超音波振動子15aとも接触することなく、上記振動周波数での音響放射圧による刺激を受ける。被施術者Uの頭皮が振動すると、頭部の休止期の毛乳頭細胞は、振動に起因する活性化により、成長期に移行する。成長期の毛乳頭細胞は、振動に起因する活性化により、成長が促進する。これにより、被施術者Uに衛生面への悪影響を与えることなく、被施術者Uの発毛又は育毛を促進する効果が得られる。また、被施術者Uの頭皮が振動すると、色素細胞(メラノサイト)が活性化する。これにより、被施術者Uの白髪が改善する効果が得られる。
【0046】
一例として、プロセッサ12は、複数の超音波振動子15aから、所定の振動周波数で変調した集束超音波を放射させることにより、被施術者Uの施術部位に音響放射圧を間欠的に印加してもよい。変調の一例は、振幅変調(AM(Amplitude Modulation))である。プロセッサ12は、PWM(Pulse Width Modulation)変調された駆動信号を複数の超音波振動子15aに与えることにより、当該複数の超音波振動子15aに、振幅変調された集束超音波を放射させてもよい。
【0047】
(1-3)ヘアケア処理
本実施形態のヘアケア処理を説明する。
図8は、本実施形態のヘアケア処理のフローチャートである。
【0048】
図8に示すように、まず、ヘアケア装置1の使用者が、ヘアケア装置1の被施術者Uへのセッティングを行う。セッティングの方法について、
図9を用いて説明する。
図9は、被施術者Uへのヘアケア装置1のセッティングを説明する図である。この図において、支持スタンド2の図示を省略している。ここで、使用者とは、例えばヘアケア装置1を使用する病院等の医療機関、又は理髪店及び美容院等の美容業を営む店舗のスタッフ等が挙げられる。なお、被施術者Uがヘアケア装置1の操作を行ってもよい。
【0049】
まず、支持スタンド2のキャスタ22、第1アーム24、及び第2アーム25を動かして、
図9Aに示すように、筐体3の下方に被施術者Uの頭頂部が来るように、超音波発生装置10及び筐体3の位置を調整する。
この際、第2カバー33及び第2吸音部材34は、第1カバー31及び第1吸音部材32と径方向に重なる位置に配置されている。そして、この位置調整では、貫通穴37が被施術者Uの頭頂部の上方に位置していることを確認する。貫通穴37の下方に超音波発生装置10の焦点FPが形成されるためである。そして、第2カバー33が、第1カバー31と径方向に重なっていることにより、第1吸音部材32における貫通穴37の位置と、被施術者Uの頭部の位置と、を使用者が視認しながら筐体3の位置合わせをする。
【0050】
次に、
図9Bに示すように第2カバー33及び第2吸音部材34を、第1カバー31及び第1吸音部材32に対して、下方に向けて相対移動させる。
この際、第2カバー33の上端に位置する突出部38が、ストッパ部材35のうち、第1カバー31の外周面よりも径方向の外側に張り出した部分に当接することで、第2カバー33及び第2吸音部材34の上下方向の位置が決められる。これにより、被施術者Uの頭部の上方が、第2カバー33及び第2吸音部材34により覆われる状態となる。
【0051】
次に、被施術者Uの耳に保護を行う具体的には耳栓又は耳当てを被施術者Uの耳に装着することで、超音波発生装置10から放射される超音波が被施術者Uの耳に与える影響を抑制する。以上により、ヘアケア装置1の被施術者Uへのセッティングが完了する。
【0052】
ステップS10の後に、
図8に示すように、ヘアケア装置1は、開始指示の受付(S11)を実行する。
具体的には、プロセッサ12は、入出力インタフェース13又は通信インタフェース14を介して、使用者からの開始指示を受け付ける。
【0053】
ステップS11の後に、ヘアケア装置1は、超音波振動子15aの制御(S12)を実行する。
具体的には、超音波発生装置10のプロセッサ12は、所定の施術時間(例えば、2分間~60分間程度)が終わるまで、複数の超音波振動子15aを所定の振動周波数で間欠的に駆動する。一例として、プロセッサ12は、複数の超音波振動子15aから、所定の振動周波数で振幅変調した集束超音波を放射させることにより、被施術者Uの施術部位に音響放射圧を間欠的に印加してもよい。プロセッサ12は、複数の超音波振動子15aそれぞれに対して位相を制御しながら駆動する。つまり、複数の超音波振動子15aの駆動タイミングは、超音波振動子15aの位置により異なっている。これにより、前述した効果を被施術者Uの施術部位に発揮することができる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態のヘアケア装置1は、フェーズドアレイ15が複数の超音波振動子15aを備える。このため、ヘアケア装置1によれば、複数の超音波振動子15aそれぞれの位相を制御して駆動させることで、超音波の位相により決まる焦点FPに超音波ビームを集束させることができる。被施術者Uが施術部位を焦点FPに合わせることで、当該施術部位はいずれの超音波振動子15aとも接触することなく(すなわち非接触で)超音波ビームによる音響放射圧による押圧刺激を受けることができる。特に、複数の超音波振動子15aを間欠的に駆動することで、被施術者Uの施術部位には音響放射圧が間欠的に印加され、当該施術部位はいずれの超音波振動子15aとも接触することなく上記振動周波数で振動する。被施術者Uの頭皮が振動すると、頭部の休止期の毛乳頭細胞は、振動に起因する活性化により、成長期に移行する。成長期の毛乳頭細胞は、振動に起因する活性化により、成長が促進する。これにより、被施術者Uに衛生面への悪影響を与えることなく、被施術者Uの発毛又は育毛を促進する効果が得られる。また、被施術者Uの頭皮が振動すると、色素細胞(メラノサイト)が活性化する。これにより、被施術者Uの白髪が改善する効果が得られる。
【0055】
また、上記振動に起因する活性化により、頭髪のハリ及びコシが向上する。これにより、頭髪の見た目がよくなる。
【0056】
また、非接触型のヘアケア装置1を用いることにより、被施術者Uの身体(例えば頭部)に接触することなくヘアケアを行うことができる。これにより、ヘアケア装置1のメンテナンスが容易になる。その結果、ヘアケア装置1の衛生がより維持される。
【0057】
また、ヘアケア装置1が筐体3を備えており、筐体3の下方側の端部が開口しているので、筐体3を被施術者Uの頭部を覆うように配置した状態で、超音波発生装置10から集束超音波を発生させることができる。これにより、第1吸音部材32が、複数の超音波振動子15aから発生した超音波のうち、焦点FPに向かわない成分を吸収するとともに、第2吸音部材34が、被施術者Uの頭部で反射した超音波を吸収することができる。これにより、外部に超音波が漏れ出るのを抑制し、超音波による外部への影響を抑制することができる。
【0058】
また、筐体3が、径方向の外側に配置された第1カバー31及び第2カバー33と、第1吸音部材32及び第2吸音部材34と、を具備する。第1吸音部材32は、第1カバー31の内周面に沿って配置されている。第2吸音部材34は、第2カバー33の内周面に沿って配置されている。このため、例えば第1吸音部材32及び第2吸音部材34が発泡ウレタンのような軟質材料により形成されていても、筐体3に一定の剛性を付与することができる。
【0059】
また、筐体3が、第1カバー31と、第1吸音部材32と、第2カバー33と、第2吸音部材34と、を具備する。このため、第1吸音部材32により、複数の超音波振動子15aから放射された超音波のうち、外部に向けて放射される漏れ出る成分を吸音することができる。また、第2吸音部材34により、複数の超音波振動子15aから放射された超音波のうち、被施術者Uの頭部に反射した成分を吸音することができる。
【0060】
また、第1カバー31の外径が、第2カバー33の内周面に配置された第2吸音部材34の内径よりも小径をなし、第1カバー31及び第2カバー33が、軸方向に沿って相対移動可能に配置されている。このため、第2カバー33を第1カバー31に対して上方に向けて移動させることで、第1カバー31及び第2カバー33が径方向に互いに重ねることができる。これにより、筐体3をコンパクトな構成にできるとともに、超音波発生装置10の焦点位置の、被施術者Uの頭部への位置合わせを容易に行うことができる。
【0061】
また、第1吸音部材32における軸方向の他端部に、径方向の内側に向けて延びる延伸部36が形成され、延伸部36における径方向の中央部には、軸方向に向けて貫通する貫通穴37が形成されている。このため、貫通穴37の径方向の外側に向けて放射された超音波を延伸部36に吸収させることができ、第1吸音部材32により効果的に吸音することができる。
【0062】
また、貫通穴37の半径Dが、式(1)を満たしている。
このため、延伸部36により効果的に吸音しながら、焦点FPに向かう超音波の成分については貫通穴37を通過させることができる。
【0063】
また、第1カバー31及び第1吸音部材32のうちの少なくともいずれか一方に固定されたストッパ部材35を備えている。そして、ストッパ部材35が、第2カバー33及び第2吸音部材34のうちの少なくともいずれか一方の上端部と上下方向に当接することで、第2カバー33が第1カバー31から離脱するのを抑制する。
このため、第2カバー33が第1カバー31から抜け落ちるのを抑制することができる。
【0064】
(2)変形例
本実施形態の変形例を説明する。
【0065】
上記実施形態では、第1カバー31及び第2カバー33の外形が円筒形状を呈している構成を示したが、第1カバー31及び第2カバー33は、平面視で多角形を呈してもよい。
また、上記実施形態では、第2カバー33が第1カバー31よりも大径である構成を示したが、第1カバー31が第2カバー33よりも大径であってもよい。
【0066】
(3)付記
実施形態で説明した事項を、以下に付記する。
【0067】
(付記1)
複数の超音波振動子15aを有するフェーズドアレイ15を備えた超音波発生装置10を具備し、
超音波発生装置10に取り付けられた筐体3を具備し、
筐体3は、
軸方向の第1端部3aでフェーズドアレイ15を囲み、
軸方向の第2端部3bで開口する、ヘアケア装置1。
【0068】
(付記2)
筐体3は、
径方向の外側に配置されたカバー31、33を具備し、
カバー31、33の内周面に沿って配置された吸音部材32、34を具備する、(付記1)に記載のヘアケア装置1。
【0069】
(付記3)
筐体3は、
第1カバー3131を具備し、
第1カバー31は、軸方向の一方側に位置する第1端部31aが超音波発生装置10に取り付けられ、
第1カバー31の内周面に沿って配置された第1吸音部材32を具備し、
第1カバー31の第1端部31aと軸方向の反対側に位置する第2端部31bに、第1カバー31と同軸に配置される第2カバー33を具備し、
第2カバー33の内周面に沿って配置された第2吸音部材34を具備する(付記1)又は(付記2)に記載のヘアケア装置1。
【0070】
(付記4)
第2カバー33の内径は、第1カバー31の外径よりも大きい、(付記3)に記載のヘアケア装置1。
【0071】
(付記5)
第1カバー31の外径は、第2吸音部材34の内径よりも小さく、
第1カバー31及び第2カバー33は、軸方向に沿って相対移動可能に配置されている、(付記3)又は(付記4)に記載のヘアケア装置1。
【0072】
(付記6)
第1吸音部材32の軸方向の一端部には、径方向の内側に向けて延びる延伸部36が形成され、
延伸部36における径方向の中央部には、軸方向に向けて貫通する貫通穴37が形成されている、(付記3)から(付記5)のいずれかに記載のヘアケア装置1。
【0073】
(付記7)
複数の超音波振動子15aは、筐体3の内側に位置する焦点FPに集束する集束超音波を放射し、
貫通穴37の半径Dは、下記式(1)を満たす、(付記6)に記載のヘアケア装置1。
D>X×h/L…(1)
D:貫通穴37の半径
X:貫通穴37の中心軸から各超音波振動子15aまでの距離の最大値
h:貫通穴37の上端開口縁から、集束超音波の焦点FPまでの上下方向の距離
L:集束超音波の焦点距離
(付記8)
第1カバー31及び第1吸音部材32のうちの少なくともいずれか一方に固定されたストッパ部材35を備え、
ストッパ部材35は、第2カバー33及び第2吸音部材34のうちの少なくともいずれか一方の上端部と当接することで、第2カバー33が第1カバー31から離脱するのを抑制する、(付記3)から(付記7)のいずれかに記載のヘアケア装置1。
【0074】
(付記9)
複数の超音波振動子15aを有するフェーズドアレイ15を備えた超音波発生装置10に取り付けられ、
軸方向の第1端部3aでフェーズドアレイ15を囲み、
軸方向の第2端部3bで開口する、ヘアケア装置用筐体3。
【符号の説明】
【0075】
1 :ヘアケア装置
2 :支持スタンド
3 :筐体
10 :超音波発生装置
11 :記憶装置
12 :プロセッサ
13 :入出力インタフェース
14 :通信インタフェース
15 :フェーズドアレイ
15a :超音波振動子
16 :振動子盤
17 :筐体
21 :イメージセンサ
22 :可動部
23 :ヘアケア装置
24 :メッシュカバー
25 :プッシュボタン
31 :第1カバー
32 :第1吸音部材
33 :第2カバー
34 :第2吸音部材
35 :ストッパ部材
36 :延伸部
37 :貫通穴
38 :突出部