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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】保冷保温容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/38 20060101AFI20221107BHJP
   B65D 81/18 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
B65D81/38 Q
B65D81/38 B
B65D81/18 B
B65D81/18 F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017080555
(22)【出願日】2017-04-14
(65)【公開番号】P2018177311
(43)【公開日】2018-11-15
【審査請求日】2020-02-21
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 壮男
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(72)【発明者】
【氏名】後藤 雅享
(72)【発明者】
【氏名】橋本 一男
(72)【発明者】
【氏名】橋本 義之
【合議体】
【審判長】井上 茂夫
【審判官】塩治 雅也
【審判官】稲葉 大紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-39102(JP,A)
【文献】特開2008-30790(JP,A)
【文献】特開平11-109561(JP,A)
【文献】特開2017-47942(JP,A)
【文献】国際公開第2015/063820(WO,A1)
【文献】特開平6-298283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D81/18,B65D81/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被保冷保温物が収容される収容部を有し、真空断熱材を備えた開口可能な内側容器と、
前記内側容器を収容し、真空断熱材を備えた開口可能な外側容器と、を備え、
前記内側容器の収容状態で、前記内側容器の外面と前記外側容器の内面とが実質的に隙間なく対向して配置され、
前記被保冷保温物の収容状態で、前記内側容器の内面と前記被保冷保温物との間に保冷保温剤が配置され
前記内側容器の収容状態で、前記内側容器の一端に形成された開口部の少なくとも一部が、前記外側容器の底部の内面側の近傍に配置され、かつ、前記外側容器の一端に形成された開口部の少なくとも一部が、前記内側容器の底部の外面側の近傍に配置され、
前記内側容器の真空断熱材及び前記外側容器の真空断熱材が、それぞれ実質的に均一な厚さの複数枚の真空断熱材からなり、
前記内側容器及び前記外側容器の底部において前記複数枚の真空断熱材が積層され、
前記内側容器及び前記外側容器の側壁において、前記底部に積層された真空断熱材の枚数の二分の一の真空断熱材が積層され、
前記内側容器の真空断熱材及び前記外側容器の真空断熱材が、前記内側容器及び前記外側容器の角部において、実質的にL字状、U字状又はコの字状に折り曲げて配置されている、保冷保温容器。
【請求項2】
前記内側容器の内面と前記被保冷保温物との間に隙間なく前記保冷保温剤が敷設された、請求項1に記載の保冷保温容器。
【請求項3】
前記内側容器の真空断熱材及び/又は前記外側容器の真空断熱材が、グラスウール、シリカ粉末、及びウレタンフォームの、少なくとも一つ又は複数を芯材とした真空断熱材である、請求項1または2に記載の保冷保温容器。
【請求項4】
前記内側容器の真空断熱材及び/又は前記外側容器の真空断熱材が、複数枚の真空断熱材からなり、前記複数枚の真空断熱材のそれぞれの周縁部がそれぞれ真空断熱材の厚さ方向からみて全体として一致しないように積層された、請求項1~のいずれか一項に記載の保冷保温容器。
【請求項5】
前記内側容器の真空断熱材の周縁部と、前記内側容器の真空断熱材に隣接する前記外側容器の真空断熱材の周縁部とがそれぞれ真空断熱材の厚さ方向からみて全体として一致しないように積層されている、請求項1~のいずれか一項に記載の保冷保温容器。
【請求項6】
前記内側容器の真空断熱材及び/又は前記外側容器の真空断熱材が、複数枚の真空断熱材からなり、隣接する真空断熱材がそれぞれの周縁部がそれぞれ真空断熱材の厚さ方向からみて全体として一致しないように積層されている、請求項1~のいずれか一項に記載の保冷保温容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被保冷保温物を収容して保冷保温する保冷保温容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被保冷保温物を収容して保冷保温する保冷保温容器が知られている。例えば保冷の場合には、保冷剤を用いて食品その他の低温を維持することが望ましい被保冷物を保冷することが行われており、被保冷物が収容される収容部を有する保冷保温容器に、保冷剤を被保冷物とともに収容し、保冷剤が相変化する時の吸熱現象を利用して被保冷物を保冷することが行われている。
【0003】
このような保冷保温容器においては、保冷剤の冷気が被保冷保温物に効率的に伝達されるように、保冷容器の内面に伝熱板を配置することが考えられる。例えば、特許文献1の発明においては、保冷容器の内面の全てに保冷剤を配置するとともに、この保冷剤の表面に伝熱板を配置することが考えられている。
【0004】
また、その改良技術が特許文献2に開示され、そこにおいて伝熱板は、前記収容部の内側面及び前記蓋部による天面のうち少なくとも内側面に設けられ、該内側面においては上端側のみに設けられている。
【0005】
さらに、特許文献3には、底面部及び側面部を有する金属製の内筒容器と、天面部及び側面部を有する金属製の外筒蓋体とを少なくとも有する保冷容器であって、該内筒容器の底面部内及び側面部内と、該外筒蓋体の天面部内及び側面部内は、真空二重壁構造により形成された真空断熱部がそれぞれ設けられ、該内筒容器に外筒蓋体を被せて一体化した際、保冷容器の側面部おいて、該内筒容器と該外筒蓋体が有する真空断熱部が重なり合うようにした保冷容器が開示されている。
また、特許文献4には、外容器と内容器の二重殻構造となっており、外容器内側底部と上部には内容器が移動しないように柔軟性のある底部支持板と上部支持板を収めており、内容器本体内は温度管理対象物を中心として側面には蓄冷材を収めた温度管理対象物と密着するような形状を呈した蓄冷材側面設置用容器を配し、底面には蓄冷材を収めた上下面を硬く且つ変形しない強度を持つ材料で挟んだ耐振動性や耐衝撃性のある柔軟な緩衝材の蓄冷材底面設置用容器を配し、上面には温度管理対象物上面をすべて覆う板状の蓄冷材を配している構造となっており、外容器及び内容器の蓋を開けた状態で温度管理対象物及び蓄冷材を内容器上方から直接出し入れ出来るように配置された保冷容器が開示されている。
加えて、発泡スチロール、発泡ウレタン等の発泡合成樹脂の断熱材を用いた容器本体と蓋体とから構成される保冷容器において、少なくとも前記容器本体の周壁内面全周に蓄冷剤を取り付けたことを特徴とする保冷容器が特許文献5に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-43020号公報
【文献】特開2013-203461号公報
【文献】実用新案登録第3206726号公報
【文献】特開2014-84176号公報
【文献】実開昭61-151177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した保冷容器においては、断熱性能が十分ではないなどの理由により、長期間内部温度を維持することが難しい場合がある。これに対して、例えば冷凍機と外部電源などを用いて保冷容器の内部温度を長期間維持する保冷手段が考えられる。しかしながら、電源がない場所や電源が使用できない空間などにおいては、外部電源を用いた保冷容器は保温機能を十分に発揮することができないという問題があった。
【0008】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであって、外部電源を用いない場合や、外部電源が使用できない環境下においても、内部温度の変化を長期間抑制することができる保冷保温容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の保冷保温容器は、被保冷保温物が収容される収容部を有し、真空断熱材を備えた開口可能な内側容器と、内側容器を収容し、真空断熱材を備えた開口可能な外側容器と、を備え、内側容器の収容状態で、内側容器の外面と外側容器の内面とが実質的に隙間なく対向して配置され、被保冷保温物の収容状態で、内側容器の内面と被保冷保温物との間に保冷保温剤が配置された、保冷保温容器であることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の保冷保温容器においては、内側容器の収容状態で、内側容器の一端に形成された開口部の少なくとも一部が、外側容器の端部近傍に配置され、かつ、外側容器の一端に形成された開口部の少なくとも一部が、内側容器の端部近傍に配置されていてもよい。
【0011】
本発明の保冷保温容器においては、内側容器の内面と被保冷保温物との間に隙間なく前記保冷保温剤が敷設されていてもよい。
【0012】
本発明の保冷保温容器においては、内側容器の真空断熱材及び/又は外側容器の真空断熱材が、グラスウール、シリカ粉末、及びウレタンフォームの、少なくとも一つ又は複数を芯材とした真空断熱材であってもよい。
【0013】
本発明の保冷保温容器においては、内側容器の真空断熱材及び/又は外側容器の真空断熱材が、それぞれ実質的に均一な厚さの複数枚の真空断熱材からなり、内側容器及び外側容器の底部において複数枚の真空断熱材が積層され、内側容器及び外側容器の側壁において、底部に積層された真空断熱材の枚数の二分の一の真空断熱材が積層されていてもよい。
【0014】
本発明の保冷保温容器においては、内側容器の真空断熱材及び/又は外側容器の真空断熱材が、複数枚の真空断熱材からなり、複数枚の真空断熱材のそれぞれの端部が実質的に重ならないように積層されていてもよい。
【0015】
本発明の保冷保温容器においては、内側容器の真空断熱材及び/又は外側容器の真空断熱材が、内側容器及び/又は外側容器の角部において折り曲げられていてもよい。本発明の保冷保温容器においては、内側容器の端部近傍が、内側容器の底部であり、及び/又は外側容器の端部近傍が、外側容器の底部であってもよい。本発明の保冷保温容器においては、内側容器の真空断熱材及び/又は外側容器の真空断熱材が、実質的にL字状、U字状又はコの字状に折り曲げた状態で配置されていてもよい。本発明の保冷保温容器においては、内側容器の真空断熱材の端部と、内側容器の真空断熱材に隣接する前記外側容器の真空断熱材の端部とが全体として重ならないように積層されていてもよい。本発明の保冷保温容器においては、内側容器の真空断熱材及び/又は外側容器の真空断熱材が、複数枚の真空断熱材からなり、隣接する真空断熱材がそれぞれの端部が全体として重ならないように積層されていてもよい。本発明の保冷保温容器においては、真空断熱材のそれぞれの端部が、真空断熱材のそれぞれの周縁部であり、周縁部がそれぞれ真空断熱材の厚さ方向からみて全体として一致しないように積層されていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、外部電源を用いない場合や、外部電源が使用できない環境下においても、内部温度の変化を長期間抑制することができる保冷保温容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の保冷保温容器の実施の一形態である保冷容器を示すものであり、内側容器と外側容器、被収容物の収納容器を取り囲む保冷剤の関係を示す斜視図である。
図2図1の保冷容器において、内側容器と外側容器、被収容物の収納容器の収容関係を示す斜視図である。
図3図1の保冷容器の収容状態を示す斜視図である。
図4図3の正面図である。
図5図3のA-A断面図である。
図6図3のB-B断面図である。
図7】複数の断熱材の配置の一例を示す概略図である。
図8】実施例の実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の保冷保温容器の実施の形態について、保冷容器を例として、図面を参照して説明するが、保温容器としても同様の構成を備えることができる。なお、本発明は以下の実施形態によって限定的に解釈されるものではない。
【0019】
本実施形態の保冷容器11は、図1及び図2に示すように、被保冷物を収納する収納容器(試料収納ボックス)21が収容される収容部12aを有する一端を開口した、真空断熱材からなる内側容器12と、該内側容器12を開口部側から収容する収容部13aを有する一端を開口した真空断熱材からなる外側容器13とを備えている。図において内側容器12及び外側容器13は、いずれも底部12b、13bが形成されている。
また、前記内側容器12の底部12bの内面側及び側壁の内面側(内壁)に沿って保冷剤を収納した複数の保冷剤収容用板状容器22を連続させて敷設した状態において、被保冷物収納容器21を内側容器12内に収容し、その上で内側容器12を外側容器13内に収容・保持されている。
【0020】
本実施形態の保冷容器11において、内側容器12の外側容器13への収容時には、内側容器12の外面12cと外側容器13の内面13cとが実質的に隙間なく対向して配置されている。内側容器12の外面12cの少なくとも一部と、外側容器13の内面13cの少なくとも一部とは、実質的に対流が生じない限り接していなくてもよい。内側容器12の外面12cと、外側容器13の内面13cとがクリアランスがほとんどない密接した状態(好ましくは隙間が0mm)で、内側容器12が外側容器13へ収容されていてもよい。これにより、内側容器12の外面12cと、外側容器13の内面13cとの間への空気の侵入を防止することができ、空気の対流による保冷容器11内の温度変化を抑制することができる。
【0021】
また、本実施形態の保冷容器11においては、内側容器12の収容時に、内側容器12の一端に形成された開口部12aの少なくとも一部が、外側容器13の端部近傍(例えば底部13bの内面側の近傍)に配置され、かつ、外側容器13の一端に形成された開口部13aの少なくとも一部が、内側容器12の端部近傍(例えば底部12bの外面側の近傍)に配置されていることが好ましい。これにより、内側容器12と外側容器13との間への空気の侵入を防止することができ、空気の対流による保冷容器11内の温度変化を抑制することができる。また、内側容器12の断熱素材と、外側容器13の断熱素材との重畳する領域が増加し、保冷容器11の断熱性が向上する傾向にある。
【0022】
本実施形態の保冷容器11においては、真空断熱材を用いる。内側容器12及び/又は外側容器13を構成する真空断熱材としては、特に限定されるものではなく公知の真空断熱材を用いることができる。特に、グラスウールを芯材とした真空断熱材、例えばビップエース(VIP-A、商品名:旭ファイバーグラス株式会社製)が好適に使用される。なお、真空断熱材の芯材としては、グラスウールに限定されず、公知の任意の芯材、例えば、グラスウール、シリカ粉末、及びウレタンフォームの、少なくとも一つ又は複数を用いることもできる。
【0023】
保冷容器11においては、内側容器12の内底部及び内壁に沿って連続させて敷設した保冷剤を収納した複数の保冷剤収納用板状容器22中、内底部の保冷剤収納用板状容器22aはその周囲に段差22bを形成されている。したがって、当該段差22b部分に側壁部分の保冷剤収納用板状容器22の端部を組み付けることにより、前記内側容器12の内底部及び内壁に沿って隙間なく敷設することができる。なお、保冷剤は、内側容器12の内底部及び内壁に沿って連続させて敷設したものとしたが、完全に連続させて敷設する必要はない。例えば、内側容器12の内底部及び内壁の合計表面積に対して、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上を保冷剤で覆えばよい。
【0024】
本実施形態に係る保冷剤について説明する。保冷剤としては、特に制限されることなく公知のものを用いることができ、目的とする保冷温度に応じて選択することが好ましい。
例えば、15℃~0℃程度の低温域で被保冷物の温度を保つことが可能な含水ゲル状の保冷剤組成物が知られている(特開平8-325563号公報)。
また、例えば、-50℃~-20℃程度の低温域で被保冷物の温度を保つことが可能な保冷剤として、固体状態の二酸化炭素であるドライアイスが知られている。
さらに、-80℃以下のような極低温域で用いる保冷剤としては、水と、塩化リチウム及び塩化ナトリウムを含有する溶質とを含み、溶質の各成分の中で塩化リチウムの重量換算における含有割合が最も高いもの、水と、塩化リチウム及び塩化カリウムを含有する溶質とを含み、溶質の各成分の中で塩化リチウムの重量換算における含有割合が最も高いもの、又は水と、塩化リチウム及び塩化ナトリウム、並びに、塩化カリウム、塩化アンモニウム及び硝酸カリウムからなる群より選ばれた1種を含有する溶質とを含み、溶質の各成分の中で塩化リチウムの重量換算における含有割合が最も高いものである(特願2016-007002号参照)。
【0025】
次に、本実施形態に係る保冷剤収納用板状容器について説明する。本実施形態に係る保冷剤収納用板状容器は、上述した実施形態に係る保冷剤を密封などして収納するものである。
ここで、保冷剤を密封するものとしては、一般的に使用されているナイロン、ポリエチレンなどのラミネートフィルムでもよいが、-80℃程度の極低温域では、耐低温性がないので、繰り返しの使用に耐えることができない場合がある。
繰り返し使用する場合には、-80℃での使用に耐える高密度ポリエチレンフィルムやポリイミドフィルム、高密度ポリエチレン樹脂、ポリイミド樹脂などで形成された-80℃での耐低温性を有する容器が、保冷剤を密封するものとして好適である。
【0026】
また、保温剤としては、特に制限されることなく公知のものを用いることができ、目的とする保温温度に応じて選択することが好ましい。保温剤収納用容器についても目的とする保温温度に応じて選択することが好ましい。
【0027】
図3図6は、内側容器12と外側容器13とを組み付けた状態を示すものである。
保冷容器11においては、内側容器12及び外側容器13をそれぞれ実質的に均一な厚さの複数枚の真空断熱材15(図7参照)で構成し、内側容器12及び外側容器13の底部においては必要な枚数の真空断熱材15を積層して形成され、また内側容器12及び外側容器13の側壁においては底部の枚数の二分の一の真空断熱材15を積層して形成することにより、最終的に底部の真空断熱材15の積層枚数と、側壁の真空断熱材15の積層枚数とがほぼ等しくなるように形成されている。これにより、底部側と側壁側の厚さ方向の断熱性がほぼ等しくなり、保冷容器11の内部温度をほぼ均一にし、内部温度の変化を長期間抑制することができる。なお、本発明において、実質的に「均一な厚さ」とは、完全に均一な厚さである必要はなく、例えば、設計上の厚さに対して、約±5.0%の範囲にある厚さを公差として含んでもよく、約±3.0%の範囲にある厚さを公差として含んでもよい。
【0028】
内側容器12を外側容器13に収容して強固に保持する部材又は器具としては、外側容器13に接着剤や融着加工、その他の部材又は器具で取り付けた結束及び取り外し可能なベルト31が採用されている。
ベルト31の一端には横長の開口を備えた一対の保持金具32,33が取り付けられ、ベルト31の他端を挿通して一対の保持金具32,33間を掛け回すことにより、ワンタッチで強固にロックすることができる。
また、一対の保持金具32,33の側端部には対向する位置においてテーパがそれぞれ形成されているため、ベルト31の端部を左右に振るだけでロックを簡単に解除して、ベルト31を取り外すことができる。
【0029】
図7は、本実施形態の保冷容器における複数の断熱材の配置の一例を示す概略図である。点線の楕円で示す部分は、前方側断熱材15aにおける断熱性の劣る端部(周縁部)である。ここで、前方側断熱材15aの後ろ側に後方側断熱材15bを配置し、前方側断熱材15aにおける断熱性の劣る端部(周縁部)に、後方側断熱材15bの中心部分を重ね合わせて積層させている。これにより、保冷容器11の高い断熱性能を発揮することができる点で好ましい態様である。図7に示されるように、前方側断熱材15aの周縁部(輪郭線)と後方側断熱材15bの周縁部(輪郭線)とが、好ましくは、断熱材の厚さ方向から見て全体として重ならない又は一致しないように積層されてもよい。前方側断熱材15aの周縁部と後方側断熱材15bの周縁部とは、限定するものではないが例えば、交差するか又は実質的に直交するように積層されてもよい。さらに、限定するものではないが例えば、交差する位置は、矩形状の後方側断熱材15bのほぼ中心部分とすることができる。
また、内側容器12及び/又は外側容器13の角部や角状の端部において、真空断熱材を実質的にL字状、U字状又はコの字状に折り曲げて配置してもよい。これにより、断熱性の劣りやすい部分における断熱性能の低下を抑制できる点で好ましい態様である。
【実施例
【0030】
本実施例では、図1で示す構成の保冷容器を用いた。
内側容器及び外側容器の底部及び側壁には真空断熱材を適用した。具体的には、ビップエース(VIP-A、商品名:旭ファイバーグラス株式会社製)を用い、側壁側に2枚ずつの真空断熱材を配置した。また、底部側には4枚の真空断熱材と、1枚の予備の真空断熱材を合わせて、5枚の真空断熱材を配置した。
保冷容器の内側容器の内寸法は、31.3×27.2×9.3(cm)であった。
【0031】
保冷剤としては、株式会社STS研究所製の保冷剤(STS2)を用いた。保冷剤の成分は純水であり、保冷剤を入れる保冷剤収納用板状容器としてビニール容器(ソフトパック)を用いた。保冷剤収納用板状容器は図1に示すとおり、試料収納ボックスの周囲に10枚が取り囲むように、内側容器の内面に配置した。
【0032】
内側容器内には試料収納ボックスを被保冷物収納容器21として収容し、試料収納ボックスの外側の6面の保冷温度を測定して平均保冷温度を算出した。
なお、実験環境における外部環境の温度は、約12~23℃であった。
【0033】
図8は、本実施例の実験結果を示すグラフである。
図8に示すとおり、本実施例の保冷容器においては、試料収納ボックスを収容してから開封を行うまでの10日間という長期間、外部電源なしに、内部温度を3℃から4℃の間で維持することができ、非常に高い保冷効果を実現し、内部温度の変化を長期間抑制することができた。
【符号の説明】
【0034】
11 保冷容器
12 内側容器
12a 収容部
12b 内側容器の底部
12c 内側容器の外面
13 外側容器
13a 収容部
13b 外側容器の底部
13c 外側容器の内面
15a 前方側断熱材
15b 後方側断熱材
21 被保冷物収納容器
22 保冷剤収納用板状容器
22a 底部の保冷剤収納用板状容器
22b 段差
31 ベルト
32,33 保持金具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8