(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】周波治療器
(51)【国際特許分類】
A61N 1/32 20060101AFI20221107BHJP
A61H 23/02 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
A61N1/32
A61H23/02 360
(21)【出願番号】P 2018065228
(22)【出願日】2018-03-29
【審査請求日】2020-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】522037894
【氏名又は名称】合同会社中研トラスト
(74)【代理人】
【識別番号】110002963
【氏名又は名称】弁理士法人MTS国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松山 圭佑
【審査官】五閑 統一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-160328(JP,A)
【文献】特開平04-129571(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104485926(CN,A)
【文献】実開昭53-043782(JP,U)
【文献】特開2003-305130(JP,A)
【文献】米国特許第05109847(US,A)
【文献】特開平06-296704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/32
A61H 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患部を間にして、人体に接触可能な少なくとも一対の電極パッドと、これら対をなす電極パッド間に、規則的に反復される時間間隔で向きを逆転し、交互に正側及び負側に電圧が増減する電圧波形の電流を流すようにされた本体装置部と、この本体装置部に接続され、前記対をなす電極パッド間に印加される電圧の大小を表示する表示部、及び、前記本体装置部を操作するための操作・表示パネルと、を備える周波治療器であって、
前記本体装置部は、周波数が異なる複数種類の電圧波形が記憶された音源メモリである波形メモリと、
前記波形メモリに記憶された複数種類の電圧波形を選択的に読出して、その電圧波形を繰返し、且つ、連続的に用いて電流を前記対をなす電極パッドに流すようにされた中央制御装置と、
前記中央制御装置に、前記電極パッドと並列に接続され、患部に機械振動を付与可能な、前記電極パッドの対数と同数の体感音響装置用の振動トランスデューサと、
前記中央制御装置により制御され、前記振動トランスデューサに流れる電流を増幅するアンプと、を有し、
前記波形メモリは、電圧波形を、複数種類の前記周波数における各周波数毎に、サンプリング周波数が192kHz以上、量子化ビット数が24ビット以上の矩形波からなる波形データとして記憶していて、
前記波形メモリに記憶された波形データは、1波形期間内で、立上り転移期間中に正の領域に向かう立上り部、立上り終りのスパイク形状の先鋭トップピーク部、前記先鋭トップピーク部よりも小さい値のハイレベル部を経て、立下り転移期間中に、負の領域に向かう立下り部、立下り終りのスパイク形状の先鋭ボトムピーク部、前記先鋭ボトムピーク部よりも大きい値のローレベル部を経て次の立上り部に至る波形とされ、且つ、
前記波形データは、周波数が少なくとも1000Hz以下の範囲では、1波形期間内で、0Vレベルから立上り転移期間中に正の領域に向かう立上り部、立上り終りのスパイク形状のパルス幅30μsec~200μsecの先鋭トップピーク部、前記電圧が0Vを超えて5V以下のハイレベル部を経て、立下り転移期間中に、負の領域に向かう立下り部、立下り終りのスパイク形状のパルス幅30μsec~200μsecの先鋭ボトムピーク部、前記電圧が0Vより低く-5V以上のローレベル部を経て次の立上り部に至る波形とされ、
前記中央制御装置は、前記波形メモリから1種類の周波数毎に前記波形データを読み出して、その1種類の周波数につき予め設定された時間の間に、前記波形データをD/Aコンバータでアナログ波形に変換して、前記電圧波形の電流を前記対をなす電極パッド間に流し、
また、前記アナログ波形に変換された前記電圧波形の電流を前記アンプにより増幅して、前記振動トランスデューサに流すように構成された
ことを特徴とする周波治療器。
【請求項2】
請求項1において、
前記先鋭トップピーク部直後で、前記ハイレベル部の直前のピーク部直後立下り部と、前記先鋭ボトムピーク部直後で、前記ローレベル部の直前のピーク部直後立上り部と、を有する
ことを特徴とする周波治療器。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記波形メモリは、前記波形データを記憶する複数の記憶領域を有し、前記複数の記憶領域における1つの記憶領域は、1種類の周波数毎に、波形データが繰返し連続的に前記設定された時間分記憶され、前記中央制御装置は、前記波形メモリにおける、1つの記憶領域に記憶された前記設定された時間分の波形データを1回で読み出して、アナログ波形に変換して、前記対をなす電極パッドに流すようにされた
ことを特徴とする周波治療器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記波形メモリは、前記波形データを記憶する複数の記憶領域を有し、前記複数の記憶領域における1つの記憶領域は、同一の周波数で、同一波形の電圧波形が繰返し連続的に設定された時間分記憶され、前記中央制御装置は、前記波形メモリにおける、1つの記憶領域に記憶された前記設定された時間分の波形データを1乃至3回で読み出して、アナログ波形に変換して、順次、前記対をなす電極パッドに流すようにされた
ことを特徴とする周波治療器。
【請求項5】
請求項3又は4において、
前記設定された時間は3分とされたことを特徴とする周波治療器。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記中央制御装置には、2以上の異なる周波数セット選択コード及び、前記周波数セット選択コード毎にこれに対応して予めセットされた複数種類の周波数の波形データ、その波形データを読み出す場合の順番が記憶されていて、前記周波数セット選択コードが入力されたとき、対応して予めセットされた複数種類の周波数の波形データを前記予め決められている順番で順次前記設定された時間分ずつ読出して、且つ、出力するように構成された
ことを特徴とする周波治療器。
【請求項7】
請求項6において、
前記中央制御装置は、前記周波数セット選択コード、これに対応する周波数の種類、及び、これらの周波数の波形データの出力順を記憶しているコード別対応周波数順番記憶手段と、
前記周波数セット選択コードを選択する周波数セット選択コード信号受付手段と、前記受付けられた周波数セット選択コード信号に基づいて、前記コード別対応周波数順番記憶手段に記憶された順番で、前記周波数セット選択コード毎に、周波数の波形データを前記波形メモリから読出すコードグループ電圧波形読出し手段と、
前記コードグループ電圧波形読出し手段により読出した波形データを前記の順番で出力する電圧波形出力手段と、
を有することを特徴とする周波治療器。
【請求項8】
請求項7において、
前記周波数セット選択コード信号受付手段は、前記周波数セット選択コードを複数種類順次受付けるようにされ、且つ、前記コードグループ電圧波形読出し手段は、前記周波数セット選択コード信号受付手段により受付けられた周波数セット選択コードの順で、前記周波数セット選択コード毎に、波形データを読出すようにされた
ことを特徴とする周波治療器。
【請求項9】
請求項7又は8において、
前記本体装置部は、
前記中央制御装置と、
前記波形メモリと、
前記中央制御装置からの、波形データからなるデジタル出力をアナログ出力に変換するD/Aコンバータと、前記D/Aコンバータからのアナログ出力に電圧を付与して前記電極パッド間に印加される電圧波形を形成する2乃至4の出力ドライブと、
前記出力ドライブに、直流を供給する直流電源部と、
前記2乃至4の出力ドライブに独立して接続される2乃至4対の電極パッドと、
を有し、
前記中央制御装置は、前記2乃至4の出力ドライブの一つのみに直流を供給し、他の出力ドライブに直流を供給しない単一出力モードと、2乃至4の出力ドライブに同一の電圧波形を形成するように同時に直流を供給する同一波形出力モードを選択するように構成された
ことを特徴とする周波治療器。
【請求項10】
請求項9において、
前記中央制御装置は、最大で11種類の周波数セット選択コードについて、その順番及び、周波数セット選択コード毎の単一出力モードか同一波形出力モードかの選択設定を受付ける周波数セット選択コード出力順・出力モード選択設定受付手段と、
前記受付けられた周波数セット選択コード出力順、出力モード選択設定信号を記憶する周波数セット選択コード出力順・出力モード選択設定記憶手段と、
を有することを特徴とする周波治療器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波治療器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、患部を間にして、人体に接触可能な一対の電極パッドと、これら一対の電極パッド間に、規則的に反復される時間間隔で向きを逆転し、交互に正側及び負側に電圧が増減する電圧波形の電流を流すようにされた制御部とを備えた周波治療器が開示されている。
【0003】
又、この種の周波治療器において、周波数が異なる複数の電圧波形の電流を順次患部に印加することも知られている。この場合、各電圧波形を一種類毎に同一波形を繰返して用いて、一定時間ずつ電流を印加するようにされている。
【0004】
他方、特許文献2に示されるように、手術中やその前後に、患者の緊張や不安を低減させるためにベッドや手術台に例えばボディソニック(登録商標)と称される体感音響装置を装備して、振動トランスデューサから音楽として、患者の体に音圧を加えるものがある。
【0005】
上記のような体感音響装置を周波治療器での治療に用いることが考えられるが、音波が、仮に単独で治療効果があった場合、電極パッドに加えられる電圧波形と干渉して、相互に治療効果を低くしてしまうということも考えられる。
【0006】
更に、従来の周波治療器においては、1周波ごとに、その都度電圧波形を形成したり、波形メモリに格納された波形データを読出し、そのデータをD/Aコンバータでアナログ波形に変換して所定の波形を出力するようにされている。
【0007】
この場合、電圧波形あるいは波形データは、パルス幅変調PWM(Pulse Width Modulation)で生成したデジタル波形であり、アナログ波形をそのまま用いる場合と比較して、立上り部及び立下り部のスパイク状部分は、デジタル波形ではその量子化ビット数及びサンプリング周波数に依存するが、特に波長が短くなったとき、該スパイク状部分が消えてしまうという状態が生じた。
【0008】
スパイク部は、従来ノイズとされていたので、その限りでは問題がないが、最近、周波治療器において、電圧がより高い場合に、人体に与える衝撃が大きくなり、この衝撃が大きい程、例えば、疼痛緩和効果が大きくなると認識されるようになっている。
【0009】
このようなスパイク部は、細幅の矩形波を用いて形成できることは容易に想定できる。しかしながら、スパイク部のみで、これに続く、ハイレベル部又はローレベル部が存在しないと疼痛緩和効果が少ないように感じられるという結果が得られた(非公知)。これは、スパイク部に続く部分(ハイレベル部、ローレベル部)の電圧(絶対値)が、スパイク部のトップピーク部又はボトムピーク部による衝撃が、例えば病変細胞を変形させ、ハイレベル部、ローレベル部が、その変形状態が戻らないように維持しているためではないかと考えられる。
【0010】
一方、デジタル波形による場合、2000Hz以下、特に、1000Hz以下の低周波の領域において、使用中に電圧を上げようとすると、例えば、電圧が10段階(レベル1~レベル10)で可変であっても、レベル3程度を超えると、電気に痺れるような状態となり、人体にショックや痛みが生じることがあった。
【0011】
この場合、レベル1あるいは2、人によってはレベル3を超えないようにして周波治療器を用いざるを得ないので、スパイク部の電圧も、レベル10まで上げた場合の1/3以下となってしまい、疼痛緩和効果が少ないと感じられる。同様に、先鋭トップピーク部のパルス幅についても、適切な範囲が存在すると考えられる。
【0012】
更に、治療の現場では、1つのコード番号(説明後述)の治療が終わると、次のコード番号を、患者本人あるいは補助者が新たにセットするという作業が必要となり、煩雑であり、また、次のコード番号をセットするまでの間に空白が生じてしまうという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】米国特許第5658322号公報
【文献】特許第3035704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、いわゆる音源チップと称される波形メモリで確実に再生できるようにデジタル波形を用いて記録し、このデジタル波形に基いて、電極パッド及びこれに並列に設けられた振動トランスデューサに同じ電圧波形でのアナログ波形の電流を同期して供給し、電極パッドからの電流によるショックと音波による圧力とが同時に加えられるようにして、治療効果を高めることができる。特に患者が電流に敏感で、電圧波形における電圧を、十分な治療効果が得られるほど高くできない場合に、振動トランスデューサから振動を人体に加えることによって、電圧不足を補うことができる周波治療器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、患部を間にして、人体に接触可能な少なくとも一対の電極パッドと、これら対をなす電極パッド間に、規則的に反復される時間間隔で向きを逆転し、交互に正側及び負側に電圧が増減する電圧波形の電流を流すようにされた本体装置部と、この本体装置部に接続され、前記対をなす電極パッド間に印加される電圧の大小を表示する表示部、及び、前記本体装置部を操作するための操作・表示パネルと、を備える周波治療器であって、前記本体装置部は、周波数が異なる複数種類の電圧波形が記憶された音源メモリである波形メモリと、前記波形メモリに記憶された複数種類の電圧波形を選択的に読出して、その電圧波形を繰返し、且つ、連続的に用いて電流を前記対をなす電極パッドに流すようにされた中央制御装置と、前記中央制御装置に、前記電極パッドと並列に接続され、患部に機械振動を付与可能な、前記電極パッドの対数と同数の体感音響装置用の振動トランスデューサと、前記中央制御装置により制御され、前記振動トランスデューサに流れる電流を増幅するアンプと、を有し、前記波形メモリは、電圧波形を、複数種類の前記周波数における各周波数毎に、サンプリング周波数が192kHz以上、量子化ビット数が24ビット以上の矩形波からなる波形データとして記憶していて、前記波形メモリに記憶された波形データは、1波形期間内で、立上り転移期間中に正の領域に向かう立上り部、立上り終りのスパイク形状の先鋭トップピーク部、前記先鋭トップピーク部よりも小さい値のハイレベル部を経て、立下り転移期間中に、負の領域に向かう立下り部、立下り終りのスパイク形状の先鋭ボトムピーク部、前記先鋭ボトムピーク部よりも大きい値のローレベル部を経て次の立上り部に至る波形とされ、且つ、前記波形データは、周波数が少なくとも1000Hz以下の範囲では、1波形期間内で、0Vレベルから立上り転移期間中に正の領域に向かう立上り部、立上り終りのスパイク形状のパルス幅30μsec~200μsecの先鋭トップピーク部、前記電圧が0Vを超えて5V以下のハイレベル部を経て、立下り転移期間中に、負の領域に向かう立下り部、立下り終りのスパイク形状のパルス幅30μsec~200μsecの先鋭ボトムピーク部、前記電圧が0Vより低く-5V以上のローレベル部を経て次の立上り部に至る波形とされ、前記中央制御装置は、前記波形メモリから1種類の周波数毎に前記波形データを読み出して、その1種類の周波数につき予め設定された時間の間に、前記波形データをD/Aコンバータでアナログ波形に変換して、前記電圧波形の電流を前記対をなす電極パッド間に流し、また、前記アナログ波形に変換された前記電圧波形の電流を前記アンプにより増幅して、前記振動トランスデューサに流すように構成されたことを特徴とする周波治療器により、上記課題を解決するものである。
【0016】
ここで、本発明では、波形メモリは、いわゆる音源チップであり、また本発明では振動トランスデューサは、振動音響療法(Vibroacoustic therapy)に用いられる体感音響装置におけるものであり、例えば特許文献2に記載されるような電気機械振動変換装置である。
【0017】
また、本発明では、電圧波形におけるスパイク形状の部分であるスパイク部を先鋭トップピーク部及び先鋭ボトムピーク部としている。更に、「周波」は、1~1000Hzとされる低周波、1000~10000Hzとされる中周波、及び、10000Hz以上と言われるが定義が明確でない高周波、を含むとされるが、本発明に係る周波治療器では、1Hzから人体に影響を与えるとされる30000Hzまでの高周波を含むものとする。また、サンプリング周波数が192kHz、量子化ビット数が24ビットの数値は、現存する、商品化されたハイレゾ無圧縮音源の数値であり、これら以上の数値の音源波形を用いる場合も含むものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る周波治療器においては、同一の周波数で連続的に、電極パッド間に印加される電圧波形の電流を、電極パッドと並列に設けられた振動トランスデューサにも流し、電圧波形と同調して、人体に振動を与えて電流による治療効果を高めることができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施例1に係る周波治療器を示すブロック図
【
図3】同周波治療器の操作・表示パネルを示す正面図
【
図4】同周波治療器の中央制御装置と波形メモリの構成の概略を示すブロック図
【
図5】同波形メモリに記憶された電圧波形の例を示す線図
【
図6】同波形メモリに記憶された電圧波形におけるサンプリング周波数と量子化ビット数との関係を示す線図
【
図7】同周波治療器による治療の過程を示すフローチャート
【
図8】同周波治療器のパッドの貼付位置の例を示す図
【
図9】同周波治療器におけるコード変更時の操作パネルの表示例を示す正面図
【
図10】同じくコード新規登録時の操作パネルの表示例を示す正面図
【
図11】同じく対象コード削除時の操作パネルの表示例を示す正面図
【
図12】同じく全コード一括削除時の操作パネルの表示例を示す正面図
【
図13】波形メモリに1分間分ずつ分割して電圧波形を記憶した状態を示す
図5と同様の線図
【
図14】本発明の実施例2に係る周波治療器における波形メモリに記憶された電圧波形におけるサンプリング周波数と量子化ビット数との関係を示す線図
【
図15】本発明の実施例3に係るBST及び電極パッドを模式的に示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
図1(ブロック図)及び
図2(外観を示す斜視図)に示されるように、本発明の実施例1に係る周波治療器10は、患部を間にして人体に接触可能な2対の電極パッド12、12及び14、14と、これら対をなす電極パッド12、12間及び/又は電極パッド14、14間(以下「電極パッド12、12間」と省略して示す)に規則的に反復される時間間隔で向きを逆転し、交互に正側及び負側に電圧が増減する電圧波形の電流を流すようにされた本体装置部20と、この本体装置部20に接続され、該本体装置部20を操作すると共に各種表示を行うための操作・表示パネル16と、例えば赤外線により送受信を行うIRリモコン受信部17と、該IRリモコン受信部17に対して操作信号を送信するためのIRリモコン送信器18と、操作・表示パネル16に含まれる電源スイッチ16Aを介して入力されるAC100Vの入力を整流して、本体装置部20に出力するためのスイッチング電源アダプタ28と、を備えて構成されている。
【0022】
更に、出力ドライブ26A、26Bに対して、電極パッド12、14と並列に、体感音響装置用の振動トランスデューサ(以下BST)102、104がそれぞれ接続されている。また、BST102、104と出力ドライブ26A、26Bとの間には、CPU40により制御されるアンプ102A、104Aがそれぞれ介在されている。
【0023】
BST102、104として具体的には、例えば、株式会社アクーヴ・ラボ(東京都千代田区)製で、超小型(43φ、厚さ15mm、重量49g)、音楽再生周波数が20-15000HzのバイブロトランスデューサVp2(商品名)を用いるとよい。
【0024】
前記操作・表示パネル16は、
図3に詳細に示す如く、電源スイッチ16Aと、各設定スイッチ群16Bと、コード情報表示部16Cと、治療前と設定中は設定されているコード番号の合計時間を表示し、治療中は治療の残時間を点滅表示する残り治療時間表示部16Dと、治療中に電流を表示する電流表示部16Eと、治療の開始(START)/一時停止(PAUSE)/再開を行うためのスタート/一時停止スイッチ16Fと、治療中に出力レベルを増減するための出力増減スイッチ16Gと、例えばバー表示で0~31の32段階を表示(0=OFF)する出力表示部16Hと、例えば黄色の出力中(OUT)表示LED16Iとを備えている。
【0025】
また、スタート/一時停止スイッチ16Fの下側位置には、BST102、104のためのアンプ102A、104Aをオンオフし、且つ、そのゲインを増減するBSTコントローラ106、108が設けられている。
【0026】
前記各設定スイッチ群16Bは、設定値をセットするためのセット(SET)スイッチ16B1と、出力CHを選択するための出力チャネル(CH)選択スイッチ16B2と、コード値を設定するためのコード設定ダイヤル16B3と、設定を記憶するためのレコード(RECORD)スイッチ16B4と、例えば3秒以上長押しされると、治療前は設定済みコードを全て削除し、変更中は現在のコードを削除するためのクリア(CLEAR)スイッチ16B5とを備えている。
【0027】
前記コード情報表示部16Cは、コード番号を選択するためのNo.アップダウンスイッチ16C1と、治療前は該No.アップダウンスイッチ16C1で選択されたコード番号を、例えば1から11まで表示し、治療中は現在治療中のコード番号を表示するコード番号表示部16C2と、治療前はNo.アップダウンスイッチ16C1により選択された番号のCH設定を表示し、変更中は出力チャネル選択スイッチ16B2で選択された出力CHを表示し(CH1、CH2同時の場合には両方点灯、コード未登録「----」時はCH1、CH2両方消灯)、治療中は現在のコード番号の選択CHを表示する出力CH表示部16C3と、No.アップダウンスイッチ16C1により選択された番号のコード値を表示するコード値表示部16C4と、治療前はNo.アップダウンスイッチ16C1により番号毎に登録されたコード時間を例えば分単位で表示し、コード変更中はコード設定ダイヤル16B3により設定されたコードに登録されている時間を表示し、治療中は現在治療中のコードの残り時間を、例えば点滅表示するコード時間表示部16C5とを備えている。
【0028】
前記操作・表示パネル16は、例えば全体を一枚の液晶タッチパネルで構成することもできる。
【0029】
本体装置部20は、
図1に示したように、周波数が異なる複数の電圧波形が記憶された波形メモリ22と、この波形メモリ22に記憶された複数種類の電圧波形を順次読み出して、その電圧波形の電流を、対をなす電極パッド12、12間に流すようにされた中央制御装置(以下CPU)40と、を備えている。
【0030】
波形メモリ22は、いわゆる音源メモリであり、電圧波形を、複数種類の周波数における各周波数毎に、サンプリング周波数が192kHz以上、量子化ビット数が24ビット以上で形成された波形データとして記憶している(詳細後述)。
【0031】
CPU40は、波形メモリ22から1種類の周波数毎に波形データを読み出して、その1種類の周波数につき予め設定された時間の間、波形データをD/Aコンバータ24に出力することにより、ここでアナログ波形に変換して、電圧波形の電流を電極パッド12、12間に流すように構成されている。
【0032】
本体装置部20は、前記の波形メモリ22及びD/Aコンバータ24の他に、一対の出力ドライブ26A、26Bを含む出力ドライブセット26、DC/DCコンバータ30、レギュレータ32、告知音出力系36、マイナス電圧制御部38を備えている。
【0033】
D/Aコンバータ24は、CPU40が波形メモリ22から、サンプリング周波数が192kHz以上、量子化ビット数が24ビット以上で読み出した波形データをD/A変換して、アナログ波形で出力ドライブ26A、26Bに出力するようにされている。
【0034】
出力ドライブ26A、26Bは、D/Aコンバータ24からの出力を、前記のアナログ波形に基づいて変化させて、電極パッド12、12及び14、14に各々出力するようにされている。
【0035】
CPU40は、操作・表示パネル16の出力CH選択スイッチ16B2の設定に応じて出力ドライブ26A、26Bが同時に作動されるモード、一方の作動終了後に他方が続けて作動されるモード、あるいは他方が続けて設定回数だけ繰り返して同一コードで作動されるモードとなる指令信号を出力ドライブ26A、26Bに出力できるようにされている。
【0036】
DC/DCコンバータ30は、スイッチング電源アダプタ28からの直流出力を所定の電圧に降圧するものであり、また、レギュレータ32は、スイッチング電源アダプタ28からの出力電圧及び電流が異常に増大する時に、直流出力をOFFとするものである。
【0037】
プログラムメモリ34には、CPU40を動作させるためのプログラムが内蔵されている。告知音出力系36は、例えば電源投入時の起動音、治療開始時の治療開始音、治療終了時の治療終了音、エラー発生時(過電流、コード未登録開始時等)のエラー音、出力レベル操作時の出力レベル操作音等を再生する。具体的には、治療が終了したときその他の、患者に知らせるべき状態が発生した時に、例えば、「終了しました」、「一時中断します」等の告知内容が音声によってスピーカー36Cから知らされるように構成されている。
【0038】
この音声情報は、波形メモリ22の余り記憶領域22-A(
図4参照)に設定されていて、告知すべき状態になったとき、CPU40からの指示信号に基づいて、波形メモリ22から、告知音出力系36におけるD/Aコンバータ36Aに送られ、ここで、アナログ信号に変換された後、アンプ36Bにより増幅され、スピーカー36Cで音声として出力されるものである。
【0039】
マイナス電圧制御部38は、後述のように電圧波形における0ボルトレベルを、波形図における中間位置から、最大電圧の5%-10%をプラス側にオフセットさせることにより、電極パッド12、12から人体に入り込む電子の量が、体外に流出する電子の量よりも多くなるようにして、電子不足による人体への影響を抑制するものである。ここで、5%以上としたのは、電源電圧の変動があっても、人体の電子不足を抑制でき、10%以下としたのは、電子過剰を抑制するためである。
【0040】
IRリモコン送信器18は、
図2に示したように、スタート/一時停止スイッチ16Fと同様のリモコンスタート/一時停止スイッチ18Fと、出力増減スイッチ16Gと同様のリモコン出力増減スイッチ18Gとを備えている。このIRリモコン送信器18は、出力CH毎に、2CHの場合は計2個備えられている。なお、リモコンは赤外線によるものに限定されない。
【0041】
図2の符号12A、14Aは、電極パッド12、14のプラグ12B、14Bを差し込むためのジャックをそれぞれ示す。ジャック12A、14Aは第1及び第2出力チャネルを構成している。
【0042】
また、患者の背骨の上下端近くに一対の電極パッドを配置する場合は、例えば、
図2に2点鎖線で示されるように、BST102を、相互に180°位相をずらして振動する同一仕様の2個のBSTとして、振動の位相が一対の電極パッドのアナログ波形の位相と一致して、その近くに配置するようにしてもよい。
図2の符号103B、105Bは、BST102、104のプラグを、符号103A、105Aは、プラグ103B、105Bが差し込まれるジャック、103Cは分岐器、103DはBST102に設けられ、振動の位相を180°反転させる位相反転器をそれぞれ示す。ジャック103A、105Aは、上記の第1及び第2出力チャネルに対応している。
【0043】
次に、CPU40の構成及び波形メモリ22について説明する。
【0044】
CPU40は、
図4に示されるように、表示信号出力手段41と、操作スイッチ信号受付手段42と、出力チャネル選択信号受付手段43と、周波数セット選択コード信号受付手段44と、操作信号受付手段45と、周波数セット選択コード出力順・出力モード(片方、交互、同時)選択設定受付手段46と、コード表示信号出力手段47と、コードグループ電圧波形読出し手段48と、電圧波形出力手段49と、DC/DCコンバータ駆動手段50と、電源ON/OFF手段51と、マイナス電圧制御手段52と、BST制御手段110と、操作スイッチ信号記憶手段53と、操作信号記憶手段54と、出力チャネル選択信号記憶手段55と、読出し電圧波形記憶手段56と、コード別対応周波数順番記憶手段57と、周波数セット選択コード信号記憶手段58と、周波数セット選択コード出力順・出力モード(片方、交互、同時)選択設定記憶手段59と、出力中周波数記憶手段60と、BST制御信号記憶手段107と、を備えて構成されている。
【0045】
表示信号出力手段41は、操作・表示パネル16における出力増減スイッチ16G及びNo.アップダウンスイッチ16C1により操作された出力強度及びコード番号を出力表示部16H、コード番号表示部16C2に表示させるものである。出力チャネル選択スイッチ16B2は、それ自体がタッチパネルとされていて、タッチ毎に「1」から「2」、「2」から「1」を交互に表示するようにされている。
【0046】
操作スイッチ信号受付手段42は、操作・表示パネル16の各設定スイッチ群16Bからの操作信号を受付けるように構成されている。又、この受付けられた信号は、操作スイッチ信号記憶手段53に記憶されるようになっている。
【0047】
操作信号受付手段45は、操作・表示パネル16及びIRリモコン送信器18から送信された操作信号を受付けるものであり、受付けられた操作信号、具体的には出力強度信号及び後述のコード番号信号は、操作信号記憶手段54に記憶されるようになっている。
【0048】
出力チャネル選択信号受付手段43は、出力CH選択スイッチ16B2の操作によって決定される出力チャネル選択信号を受付け、且つ、この信号は、出力チャネル選択信号記憶手段55に記憶されるようになっている。
【0049】
コード表示信号出力手段47は、操作スイッチ信号記憶手段53に記憶された表示信号に基づいて、入力されたコード番号の情報をコード情報表示部16Cに表示するように構成されている。
【0050】
ここで、コード別対応周波数順番記憶手段57には、コードに対応して、コード毎に、該コードに含まれるとして、予め決められている複数の周波数及びその出力順が記憶されている。例えば表1に示されるように、周波数セット選択コードと第1~第n周波数(nは2以上の自然数)が組合せて記憶されている。具体的には、コード番号1231については、20Hz、880Hz、5kHz、・・・、10kHzが、この順で記憶されている。
【0051】
【0052】
前記周波数セット選択コード出力順・出力モード選択設定受付手段46は、コード設定ダイヤル16B3の設定順及び出力CH選択スイッチ16B2の操作によって周波数セット選択コード出力順・出力モード(片方、交互、同時)の選択設定を受付け、且つ、この信号は、周波数セット選択コード出力順・出力モード選択設定記憶手段59に記憶されるようになっている。
【0053】
コードグループ電圧波形読出し手段48は、入力されたコード信号及びコード別対応周波数順番記憶手段57及び周波数セット選択コード出力順・出力モード選択設定記憶手段59に記憶された情報に基づいて、該コードに含まれる複数の周波数の電圧波形を、読出し電圧波形記憶手段56に記憶された出力順及び出力モード(片方、交互、同時)に従って波形メモリ22から順に読み出すように構成されている。
【0054】
電圧波形出力手段49は、コードグループ電圧波形読出し手段48によって読み出された周波数の電圧波形のデータを、D/Aコンバータ24に出力するようにされている。
【0055】
DC/DCコンバータ駆動手段50は、出力増減スイッチ16Gにより操作された出力強度に従ってDC/DCコンバータ30を駆動するように構成されている。
【0056】
又、電源ON/OFF手段51は、電源スイッチ16Aの操作に従って、スイッチング電源アダプタ28へのAC100Vの入力をON/OFFするようにされている。
【0057】
出力中周波数記憶手段60は、電圧波形出力手段49から現在出力されている波形データにおける周波数を記憶するようにされている。
【0058】
又、操作スイッチ信号受付手段42は、周波治療器10による治療中に、IRリモコン送信器18のリモコンスタート/一時停止スイッチ18Fの操作により、治療を中断する中断信号が入力された時、レギュレータ32により、DC/DCコンバータ30をOFFとして、出力ドライブセット26からの電流供給を中断するように構成されている。
【0059】
又、この時、コードグループ電圧波形読出し手段48は、出力中周波数記憶手段60に記憶された、中断時の周波数情報を読み出して、中断から治療に戻った時に、該周波数の電圧波形を読み出すように構成されている。
【0060】
波形メモリ22には、N(Nは2以上の自然数)個の波形記憶領域22-1~22-Nが設けられていて、且つ、この実施例における周波治療器10で用いる治療周波数はN種類であり、このN種類の周波数の電圧波形は1種類毎に波形記憶領域22-1~22-Nのいずれかに記憶されている。
【0061】
図5に、波形メモリ22の各波形記憶領域における電圧波形の記録状態の例を示す。
図5は、例えばコード番号1231の場合の、これに属する20Hz、880Hz、5kHz、及び、10kHzの4種類の周波数それぞれの電圧波形の状態を模式的に示している。
【0062】
波形メモリ22の各波形記憶領域22-1~22-Nの一つ一つには、同一の周波数で、且つ同一波形の電圧波形が、連続的に、且つ繰り返し、3分間分ずつ記憶されている。例えば、周波数が20Hzの場合は、3(分)×60(秒)×20=3600個の同一の電圧波形が繰返し記憶されている。各電圧波形間の距離は一定とされ、隣接する波形との重なり合いや、離間が存在しないようにされている。
【0063】
又、各電圧波形は、基本的には、
図6に示されるような状態であって、量子化ビット数24ビット、サンプリング周波数192kHzで示され、サンプリング周波数の逆数の時間に分割されたデジタル信号によって構成されている。例えば、周波数が20Hzの場合は、その逆数の1/20秒間分の波形が、192kHz/20Hz=9600個のパルスによって構成される。
【0064】
また、ハイレベル部HL、ローレベル部LLの電圧は、それぞれ最大値/最小値が+5V、-5Vとされている。
【0065】
図6に拡大して示されるように、波形メモリ22の各波形記憶領域に記憶された波形データは、1波形期間内で、立上り転移期間中に正の領域に向かう立上り部Up、立上り終りのスパイク形状の先鋭トップピーク部Tp、先鋭トップピーク部Tpよりも小さい値のハイレベル部HLを経て、立下り転移期間中に、負の領域に向かう立下り部Dw、立下り終りのスパイク形状の先鋭ボトムピーク部Bp、先鋭ボトムピーク部Bpよりも大きい値のローレベル部LLを経て次の立上り部Upに至る波形Dfとされている。
【0066】
先鋭トップピーク部Tpと先鋭ボトムピーク部Bpのそれぞれの部分の先端間の高さ(絶対値)は、最大電圧を示し、且つ、これら先鋭トップピーク部Tpと先鋭ボトムピーク部Bpの電圧は、プラス側又はマイナス側に各々量子化ビット数24ビットの最大値で表せるようにされている。
図6の波形では、先鋭トップピーク部Tpと先鋭ボトムピーク部Bpはそれぞれ35V、-35V、最大電圧は|+35|+|-35|=70Vであった。また、先鋭トップピーク部Tpと先鋭ボトムピーク部Bpの最大パルス幅Wtp、Wbpはそれぞれ約110μsecであった。
【0067】
ここで、上記波形Dfにおける先鋭トップピーク部Tpと先鋭ボトムピーク部Bpのパルス幅Wtp、Wbpは、周波数が1000Hz以下の範囲では、30μsec~200μsecとする。30μsec以上としたのは、30μsec未満では、例えば疼痛緩和の効果が非常に小さかったり、又は、患者に、治療を受けているという実感がなかったりするためである。
【0068】
最大パルス幅については、例えば300μsecとすると、患者に与える衝撃が大きくなり、不快感が生じた。
【0069】
周波数との関係では、例えば1000Hzでは、1波形の波長の時間が0.001sec=1000μsecとなり、そのうちの300μsec×2=600μsecが先鋭トップピーク部Tpと先鋭ボトムピーク部Bpのパルス幅Wtp、Wbpとなり、先鋭トップピーク部Tpと先鋭ボトムピーク部Bp間の0~5Vの部分のパルス幅が先鋭トップピーク部Tpと先鋭ボトムピーク部Bpよりも小さくなってしまい、消費電力の低減効果が小さくなるとともに先鋭トップピーク部Tpと先鋭ボトムピーク部Bpにより患部に正確な衝撃を与える効果が低下するからである。
【0070】
なお、先鋭トップピーク部Tpと先鋭ボトムピーク部Bpのパルス幅Wtp、Wbpを各々60μsec以下とした場合、1000Hzを超えて2000Hzまでの間でも上記の消費電力の低減効果がある。
【0071】
又、CPU40は、操作・表示パネル16から、出力CH選択スイッチ16B2の切換えにより2つの異なる周波数セット選択コードが、周波数セット選択コード信号受付手段44を介して入力可能とされ、且つ、周波数セット選択コードは、周波数セット選択コード信号記憶手段58に記憶されるように構成されている。入力された周波数セット選択コードに対応して予めセットされた複数種類の周波数の波形データが、その波形データを記憶する波形メモリ22の波形記憶領域22-1~22-Nから予め決められている順番で順次設定時間分ずつ読出して、且つ、出力するように構成されている。
【0072】
更に、CPU40は、周波数セット選択コード、これに対応する周波数の種類、及び、これらの周波数の波形データの出力順を記憶しているコード別対応周波数順番記憶手段57と、このコード別対応周波数順番記憶手段57及び周波数セット選択コード出力順・出力モード選択設定記憶手段59に記憶された順番で、周波数の波形データを、波形メモリ22から読み出すコードグループ電圧波形読出し手段48と、該コードグループ電圧波形読出し手段48により読み出した波形データを前記の順番で出力する電圧波形出力手段49とを備えて構成されている。
【0073】
CPU40における、BST制御手段110は、BSTコントローラ106、108のON/OFF位置からの回転角度に対応して、アンプ102A、104Aに、それぞれのゲインを増幅するBST制御信号を出力するようにされている。また、このBST制御信号が、BST制御信号記憶手段107に記憶されるようになっている。
【0074】
出力ドライブセット26は、この実施例1においては2個設けられ、CPU40は、出力CH選択スイッチ16B2によって出力チャネルを選択し、第1出力チャネルと第2出力チャネルの各々について、No.アップダウンスイッチ16C1により、選択された「01」~「11」の11種類のコード番号毎に異なるコードを設定し、2つの出力ドライブ26A、26Bのうちの、例えば最初に出力ドライブ26Aにのみ直流を供給し、この出力ドライブ26Aによる直流の供給が終了してから、他の出力ドライブ26Bに直流を供給することができるように構成されている。或いは、第1出力チャネルと第2出力チャネルから交互に出力したり、同時に出力して2人に対応させたり、1人に出力した2つの出力を干渉させることもできる。
【0075】
本実施例1においては、第1チャネルと第2チャネルの出力ドライブ26A、26Bが独立して完全並列2チャネルとされているので、1チャネルを単純に分岐して2チャネル化した場合に比べて、一方のチャネルに電流が多く流れても他方のチャネルの電流が減ることはない。又、2つのチャネルに別のコードの電流を流すこともできる。
【0076】
次に、
図7を参照して、上記実施例に係る周波治療器10により、治療する過程について説明する。
【0077】
まずステップS100で、疼痛緩和対象に応じて、
図8に例示する如く、所定部位に電極パッド12(又は14)を貼付する。
図8(A)は、一対の電極パッド12を対象の右脇腹に貼付した例、
図8(B)は、一対の電極パッド14を対象の左右の脇腹に貼付した例である。なお、電極パッド12、14の位置は、これらに限定されず、例えば両足の裏でもよい。
【0078】
BST102、104を使用する場合は、これらを、一対の電極パッド12、12のうち患部に近い位置の電極パッドに接近して、患者の皮膚に直接又は着衣を介して接触するように配置する。
【0079】
治療を開始する際には、まずステップS101において電源スイッチ16AをONすると電源が入り、一度全LEDを点灯し、各パーツ毎に全点灯させた後、各コード情報(コード/時間/出力CH及び治療時間)を表示する。コード情報は前回の電源OFF前の設定とする。同時に起動音を鳴動させる。
【0080】
次いでステップS102において、操作・表示パネル16がONされ、各設定スイッチ群16Bによる治療コード設定が可能な状態となる。
【0081】
ステップS103では、出力チャネル選択スイッチ16B2を操作して出力ドライブ26A、26Bを順次選択すると共に出力モードを選定してから、その選択コード毎にコード設定ダイヤル16B3によりコード値表示部16C4を見ながら4桁の治療コードを設定する(出力ドライブ26Aのみについて、治療コードを設定してもよい)。
【0082】
次のステップS104で、レコードスイッチ16B4により設定を登録し変更を終了する。これによって、コードグループ電圧波形読出し手段48が作動され、コード別対応周波数順番記憶手段57からの信号に基づいて、波形メモリ22における波形記憶領域22-1~22-Nのいずれかから1つずつの周波数の波形を、第1、第2、・・・、第n周波数の電圧波形としてそのデータを、記憶された順番に基づいて読み出すことが可能な状態となる。
【0083】
設定されているコードを変更する場合を、
図9に例示する。コード番号は01から11までの11種類を設定可能である。
【0084】
まず、
図9(A)に示す如く、現在のコード情報(図では、例えば前回の治療で用いたコード番号01、出力CH2、コード値0005、時間036分)が残っていて、これを確認する。変更の必要がなければ、次のコード番号02の設定に移る。
【0085】
まずNo.アップダウンスイッチ16C1によりコード番号を変更する。
図9(B)では01→02に変更するが、出力CH、コード値及び時間は前回治療で用いた出力CH2、コード値0021、時間027分が残っている。
【0086】
次いで、SETスイッチ16B1を押すことにより、
図9(C)に示す如く、NO、CODE、TIMEの各LED及び出力CH表示部16C3が点滅し、変更可能状態になる。ここでコード設定ダイヤル16B3を回転してコード値を変更する。
【0087】
次いで、
図9(D)に示す如く、出力CH選択スイッチ16B2にてCH出力を変更(CH1/CH2、CH1、2同時)する。
図9(D)はコード値を「0005」に変更し、出力CHをCH1、2同時にした例である。時間はコード値とセットになっているので「0005」に対応した「036」が表示される。
【0088】
次いで、
図9(E)に示す如く、レコードスイッチ16B4を押すことにより設定を登録し、点滅→点灯に変わって変更が終了する。
【0089】
次に、コード番号03を選択したとき、前回使用されなかった未登録のコードを設定する場合を
図10に示す。
【0090】
まず、
図10(A)に示す如く、未登録の番号は「----」と表示されている。ここでSETスイッチ16B1を押すことにより変更可能状態となる。登録は、前記変更時と同じ動作で行う。
【0091】
即ち、
図10(B)に示す如く、コード設定ダイヤル16B3にてコード値を変更し、出力CH選択スイッチ16B2にてCH出力を変更(CH1/CH2、CH1、2同時)する。
【0092】
図10(C)はコード値を「0017」に登録し、出力CHをCH1、2同時にした例である。
【0093】
次いで、
図10(D)に示す如く、レコードスイッチ16B4を押すことにより設定を登録し、点滅→点灯に変わって登録が終了する。
【0094】
又、1つの対象コードの登録を削除する場合を
図11に示す。
【0095】
この場合には、
図11(A)に示す如く、No.アップダウンスイッチ16C1で削除したいコード番号(例えば「03」)を選択後、SETスイッチ16B1を押して変更可能状態とする。
【0096】
次いで、
図11(B)に示す如く、変更可能状態(点滅)でクリアスイッチ16B5を、例えば3秒長押しにて登録解除する。
【0097】
次いで、
図11(C)に示す如く、レコードスイッチ16B4を押すことにより設定を登録し、削除が終了する。
【0098】
終了状態を
図11(D)に示す。そのままコード設定ダイヤル16B3で新しいコード入力も可能である。
【0099】
又、1から新しくコードを入力するときのように、全てのコードの登録を一括削除する場合を
図12に示す。
【0100】
この場合には、
図12(A)に示す如く、クリアスイッチ16B5を、例えば3秒長押しにて登録を解除する。
【0101】
これにより、
図12(B)に示す如く、登録されている全てのコードが解除される。
【0102】
図7のステップS104終了後、次のステップS105でスタート/一時停止スイッチ16FをONする。また、BSTコントローラ106、108をONする。
【0103】
次のステップS106において、第1周波数の電圧波形が選択され、波形メモリ22における、例えば波形記憶領域22-2に記憶された電圧波形が読み出される。この波形記憶領域22-2には、連続して3分間分の電圧波形が記憶されているので、ステップS107において、第1周波数電圧波形にて、出力ドライブ26Aからアナログ出力が発生し、電極パッド12、12から患者の体に通電される。また、上記アナログ出力は、対応するBST102に至り、BST102の振動が患者の患部に伝達される。
【0104】
ここで、周波数セット選択コード出力順・出力モード選択設定記憶手段59に記憶されている今回の出力モードが出力チャネル2である場合には出力ドライブ26Bからアナログ出力が発生し、交互出力モードが記憶されている時には出力ドライブ26Aと26Bで交互に出力を発生し、同時出力モードが記憶されている時には、両方の出力ドライブ26Aと26Bから同時に出力を発生する。同時に出力を発生する場合には、2人に同時出力したり、1人に2つの出力を同時に加えて、例えばクロスにより2つの出力を干渉させることもできる。
【0105】
パルスが発生してから直ちに、次のステップS108において、操作・表示パネル16における出力表示部16Hに示される出力強度を、同じく操作・表示パネル16の出力増減スイッチ16Gの操作によって例えば、患者に接触した電極パッドの部分で痛みが発生しない程度に出力強度を調節する。このとき、BSTコントローラ106を調節して、BST102の振動出力が、患者に快適となるようにする。
【0106】
第1周波数の電圧波形に対応するアナログ出力は3分間続くが、途中で、何らかの不具合により、治療を中断する場合は、IRリモコン送信器18により、リモコンスタート/一時停止スイッチ18Fを作動させると、これが中断スイッチとなり、ステップS109においてYesが選択され、ステップS111においてアナログ出力ゼロに戻される。同時にスピーカー36Cから「一時中断します」等の告知音声が出力される。
【0107】
又、その3分間の間に、中断スイッチがONされない場合は、ステップS109においてNoとなり、ステップS110に至り、アナログ出力発生時間3分後に出力ゼロに戻る。
【0108】
一方、中断スイッチONにより出力ゼロに戻された後、リモコンスタート/一時停止スイッチ18FをIRリモコン送信器18により作動させると、これが再スタートスイッチONとなり、ステップS112におけるYesが選択され、ステップS107に戻る。Noであれば、ステップS112に戻る。
【0109】
ステップS110終了後、次のステップS113で、次の第2周波数電圧波形を選択する。次のステップS114においては、ステップS113で選択された第2周波数電圧波形にて、アナログ出力が発生する。
【0110】
第1周波数電圧波形の場合と同様に、ステップS115において出力強度を調節し、ステップS116において中断スイッチONか否かを判定し、Yesであれば、ステップS117に進み、ステップS111とS112を繰返した後、ステップS113に戻る。
【0111】
ステップS116において中断スイッチONがNoであれば、ステップS118に進み、第2周波数電圧波形によりアナログ出力発生から3分後に出力ゼロに戻る。次のステップS119では、以後第3~第n周波数につき、上記ステップS106からステップS112を繰返して、第n周波数について3分間のアナログ出力発生後、ステップS120に進む。
【0112】
ステップS120では、周波数セット選択コード出力順・出力モード選択設定記憶手段59に次の治療コードが設定・記憶されているか否かが判定され、NoであればステップS124に進み、終了ランプ/ブザーON、即ち、告知音出力系36におけるスピーカー36Cから治療が終了したことが、患者に知らされて、患者又は補助者が、電源スイッチ16AをOFFとすることによって、ステップS125において終了する。ここで、BSTコントローラ106、108をOFFの位置に戻しておくとよい。
【0113】
出力CH選択スイッチ16B2により、出力ドライブ26Bについて、次の治療コードの出力が設定・記憶されている場合は、ステップS120での判定結果がYesとなり、ステップS121でパッド貼付位置及びBST配置位置を変更する必要があるか否か判定する。判定結果がYesである場合は、ステップS122に進み、パッド貼付位置及びBST配置位置を変更する。
【0114】
ステップS122終了後、又は、ステップS121の判定結果がNoである場合には、ステップS123に進み、前記次の治療コードについて、上記ステップS106からS119が繰返され、その終了後にステップS120に戻る。
【0115】
なお、上記実施例1において、波形メモリ22における各波形記憶領域22-1~22-Nには3分間連続して電圧波形が記憶されているが、本発明はこれに限定されるものでなく、波形メモリ22の電圧波形記憶容量が充分でない場合等には、設定時間(実施例では3分間)を2等分あるいは3等分した時間分だけ電圧波形を記憶しておき、1回の設定時間で、2回あるいは3回電圧波形を読み出して用いるようにしてもよい。
図13は3分間を3等分して、1分間ずつの3回電圧波形を読み出すようにしている場合を示す。
【0116】
また、上記実施例において、サンプリング周波数は192kHz、量子化ビット数が24ビットとされているが、これは波形メモリにいわゆる音源チップを用いていて、その上限が192kHz、24ビットであり、更に、192kHz及び24ビットを超える場合にも、本発明は適用されるものである。
【実施例2】
【0117】
なお、上記実施例1においては、波形メモリに記憶される電圧波形(波形データ)が、
図6に示されるように、ハイレベル部HL、ローレベル部LLの電圧は、それぞれ最大値/最小値が+5V、-5Vで、先鋭トップピーク部Tp及び先鋭ボトムピーク部Bpよりもかなり小さくされているが、電流に対して痛みをあまり感じない患者の場合、例えば
図14に示される実施例2の電圧波形のように、ハイレベル部HL及びローレベル部LLの電圧(絶対値)を上記よりも大きくしてもよい。
【0118】
この場合、先鋭トップピーク部Tp及び先鋭ボトムピーク部Bpにより人体に与えた衝撃による病変細胞の変形状態を、逆方向の衝撃による変形開始まで、より確実に維持することができる。
【0119】
上記実施例1、2において電極パッドは2対とされているが、本発明はこれに限定されることなく、電極パッドは最多で4対とし、出力ドライブ、ジャック、プラグ、BST、そのアンプ、BSTコントローラの数を電極パッドの対数と同数としてもよい。
【0120】
ここで、最大4対及びこれと同数としたのは、例えば患部が患者の複数箇所にある場合、全部の患部を電極パッドで挟み込むようにするのが理想的であるが、ジャックの数、電極パッドが多すぎると、患者がその姿勢を変えにくくなったりして負担が大きすぎることになるからであり、また、一対のみとすると1回の治療が短時間で終了するが、患者は短時間の治療を何回も受けなければならず、その負担増を考慮すると2~4対及びこれと同数とするのがよい。
【実施例3】
【0121】
実施例3において、電極パッド12、14は、
図15に示されるように、BST112、114の先端に取付けられている。この場合、電極パッド12、14は、BST112、114の先端の振動部分に着脱される導電性粘着シートにより構成される。
【0122】
このようにすると、電極パッドとBSTを同時に患部に接触させることになり、BSTのセッティングが正確になり、且つ、簡単である。
【0123】
なお実施例3において、導電性粘着シートを省略し、BST112、114先端の導電性の金属又は樹脂を電極パッドとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0124】
低周波治療器等の周波治療器の分野に利用できる。
【符号の説明】
【0125】
10…周波治療器
12、14…電極パッド
12A、103A…ジャック(第1出力チャネル)
14A、105A…ジャック(第2出力チャネル)
12B、14B、103B、105B…プラグ
16…操作・表示パネル
16A…電源スイッチ
16B…各設定スイッチ群
16B1…セット(SET)スイッチ
16B2…出力チャネル(CH)選択スイッチ
16B3…コード設定ダイヤル
16B4…レコード(RECORD)スイッチ
16B5…クリア(CLEAR)スイッチ
16C…コード情報表示部
16C1…No.アップダウンスイッチ
16C2…コード番号表示部
16C3…出力CH表示部
16C4…コード値表示部
16C5…コード時間表示部
16D…残り治療時間表示部
16E…電流表示部
16F…スタート/一時停止スイッチ
16G…出力増減スイッチ
16H…出力表示部
16I…出力中表示LED
17…IRリモコン受信部
18…IRリモコン送信器
18F…リモコンスタート/一時停止スイッチ
18G…リモコン出力増減スイッチ
20…本体装置部
22…波形メモリ
22-1~22-N…波形記憶領域
22-A…余り記憶領域
24…D/Aコンバータ
26…出力ドライブセット
26A、26B…出力ドライブ
28…スイッチング電源アダプタ
30…DC/DCコンバータ
32…レギュレータ
34…プログラムメモリ
36…告知音出力系
36A…D/Aコンバータ
36B…アンプ
36C…スピーカー
38…マイナス電圧制御部
40…中央制御装置(CPU)
41…表示信号出力手段
42…操作スイッチ信号受付手段
43…出力チャネル選択信号受付手段
44…周波数セット選択コード信号受付手段
45…操作信号受付手段
46…周波数セット選択コード出力順・出力モード選択設定受付手段
47…コード表示信号出力手段
48…コードグループ電圧波形読出し手段
49…電圧波形出力手段
50…DC/DCコンバータ駆動手段
51…電源ON/OFF手段
52…マイナス電圧制御手段
53…操作スイッチ信号記憶手段
54…操作信号記憶手段
55…出力チャネル選択信号記憶手段
56…読出し電圧波形記憶手段
57…コード別対応周波数順番記憶手段
58…周波数セット選択コード信号記憶手段
59…周波数セット選択コード出力順・出力モード選択設定記憶手段
60…出力中周波数記憶手段
102、104、112、114…振動トランスデューサ(BST)
102A、104A…アンプ
103C…分岐器
103D…位相反転器
106、108…BSTコントローラ
107…BST制御信号記憶手段
110…BST制御手段