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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】鋼製床における構築物の支持構造
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/02 20060101AFI20221107BHJP
   E04F 15/06 20060101ALI20221107BHJP
   E04H 17/14 20060101ALI20221107BHJP
   E04B 5/02 20060101ALI20221107BHJP
   E04G 5/08 20060101ALN20221107BHJP
   E04G 5/14 20060101ALN20221107BHJP
【FI】
E04F15/02 101B
E04F15/06
E04H17/14 102Z
E04B5/02 L
E04G5/08 B
E04G5/14
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018207311
(22)【出願日】2018-11-02
(65)【公開番号】P2020070682
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】592018629
【氏名又は名称】三進金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】松浪 信一
【審査官】清水 督史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05118147(US,A)
【文献】特開2014-114624(JP,A)
【文献】特開平09-119215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/02
E04F 15/06
E04H 17/14
E04B 5/02
E04G 5/08
E04G 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏み板に長孔が設けられ、その長孔の2つの長辺のそれぞれの縁から踏み板の裏側にリブが突出する鋼製床材が敷設されて鋼製床が形成され、この鋼製床の上面に設置される構築物の支持構造であって、
前記構築物を支持するベースを鋼製床材に固定するベース固定用組金具が、鋼製床材の長孔のリブに係合するリブ係合金具と、このリブ係合金具とベースを連結するボルトを備え、
前記鋼製床材のリブに踏み板の長孔の長辺に沿って延びるスリット状の差込孔が形成され、
前記ベース固定用組金具のリブ係合金具が、長手方向の寸法が前記踏み板の長孔の長手方向の開口寸法よりも小さくかつ前記長孔の短手方向の開口寸法よりも大きく、短手方向の寸法が前記踏み板の長孔の短手方向の開口寸法よりも小さく形成された差込板であり、
前記差込板を踏み板と平行な平面内で回転させることにより、両端部がリブの差込孔に挿入され、
前記鋼製床の上面に配置したベースと、リブの差込孔に係合させたリブ係合金具とがボルトで連結されていることを特徴とする鋼製床における構築物の支持構造。
【請求項2】
前記ベース固定用金具が、さらに、差込板の逆回転を阻止してリブへの係合姿勢を保持する外れ防止金具を備えている請求項1に記載の鋼製床における構築物の支持構造。
【請求項3】
前記ベースは、長孔から挿入されて鋼製床材の裏側に入り込んで裏面に係合される支持片を有している請求項1または2に記載の鋼製床における構築物の支持構造。
【請求項4】
前記構築物が、前記ベースに支持されて鋼製床に立設される複数本の支柱と、隣接する支柱を連結する横桟とを備えている請求項1~3のいずれか1項に記載の鋼製床における構築物の支持構造。
【請求項5】
前記構築物が、さらに、前記支柱に挿入されて横桟が貫通するインサート材と、前記横桟を支柱およびインサート材に固定するボルトとを備え、
前記支柱が横桟を貫入させる挿入口を有し、
前記インサート材が、前記支柱の挿入口に連通して横桟を貫入させる挿入口を有する第1辺部と、前記第1辺部の一端から屈曲して前記ボルトによって支柱に係合される第2辺部と、前記第1辺部の他端から屈曲する第3辺部と、前記第3辺部から屈曲して第1辺部に対向し、第1辺部の第3辺部側端部から挿入口の縁までの寸法に形成された第4辺部とが一体に結合してなり、
前記支柱およびインサート材の第2辺部を貫通するボルトが、前記支柱の挿入口およびインサート材の挿入口に貫入された横桟を、支柱の挿入口の縁、インサート材の挿入口の縁および第4辺部の先端部に押し付けることによって横桟が支柱に固定されている請求項4に記載の鋼製床における構築物の支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼製床材を敷設して形成した鋼製床の上面に柵等の構築物を設置する際の構築物の支持構造およびその関連技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2に、複数の鋼製床材を梁材上に固定して形成された鋼製床が記載されている。これらの文献は鋼製床材を梁材に固定する際に、踏み板の長孔から固定用金具を差し込んで床材を固定する固定構造を開示している。これらの固定構造は床面から梁材への固定作業を行うことができるので作業負担が少ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-206833
【文献】特開2011-184862
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の鋼製床の床面に柵等の構築物を設置することがある。構築物の設置においても、鋼製床材の梁材への固定作業と同様に、設置の作業負担が少ない構築物の支持構造が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述した背景技術に鑑み、鋼製床材の形状的特徴を活かして床面に構築物を支持する構造を提供することを目的とする。
【0006】
即ち、本発明は下記[1]~[7]に記載の構成を有する。
【0007】
[1]踏み板に長孔が設けられ、その長孔の2つの長辺のそれぞれの縁から踏み板の裏側にリブが突出する鋼製床材が敷設されて鋼製床が形成され、この鋼製床の上面に設置される構築物の支持構造であって、
前記構築物を支持するベースを鋼製床材に固定するベース固定用組金具が、鋼製床材の長孔のリブに係合するリブ係合金具と、このリブ係合金具とベースを連結するボルトを備え、
前記鋼製床の上面に配置したベースと、リブに係合させたリブ係合金具とがボルトで連結されていることを特徴とする鋼製床における構築物の支持構造。
【0008】
[2]前記鋼製床材のリブに踏み板の長孔の長辺に沿って延びるスリット状の差込孔が形成され、
前記ベース固定用組金具のリブ係合金具が、長手方向の寸法が前記踏み板の長孔の長手方向の開口寸法よりも小さくかつ前記長孔の短手方向の開口寸法よりも大きく、短手方向の寸法が前記踏み板の長孔の短手方向の開口寸法よりも小さく形成された差込板であり、
前記差込板を踏み板と平行な平面内で回転させることにより、両端部がリブの差込孔に挿入されている前項1に記載の鋼製床における構築物の支持構造。
【0009】
[3]前記ベース固定用金具が、さらに、差込板の逆回転を阻止してリブへの係合姿勢を保持する外れ防止金具を備えている前項2に記載の鋼製床における構築物の支持構造。
【0010】
[4]前記ベース固定用金具のリブ係合金具が、リブの下端部が嵌合する溝を有している前項1に記載の鋼製床における構築物の支持構造。
【0011】
[5]前記ベースは、長孔から挿入されて鋼製床材の裏側に入り込んで裏面に係合される支持片を有している前項1~4のいずれか1項に記載の鋼製床における構築物の支持構造。
【0012】
[6]前記構築物が、前記ベースに支持されて鋼製床に立設される複数本の支柱と、隣接する支柱を連結する横桟とを備えている前項1~5のいずれか1項に記載の鋼製床における構築物の支持構造。
【0013】
[7]前記構築物が、さらに、前記支柱に挿入されて横桟が貫通するインサート材と、前記横桟を支柱およびインサート材に固定するボルトとを備え、
前記支柱が横桟を貫入させる挿入口を有し、
前記インサート材が、前記支柱の挿入口に連通して横桟を貫入させる挿入口を有する第1辺部と、前記第1辺部の一端から屈曲して前記ボルトによって支柱に係合される第2辺部と、前記第1辺部の他端から屈曲する第3辺部と、前記第3辺部から屈曲して第1辺部に対向し、第1辺部の第3辺部側端部から挿入口の縁までの寸法に形成された第4辺部とが一体に結合してなり、
前記支柱およびインサート材の第2辺部を貫通するボルトが、前記支柱の挿入口およびインサート材の挿入口に貫入された横桟を、支柱の挿入口の縁、インサート材の挿入口の縁および第4辺部の先端部に押し付けることによって横桟が支柱に固定されている前項6に記載の鋼製床における構築物の支持構造。
【発明の効果】
【0014】
上記[1]に記載の発明によれば、構築物を支持するベースを鋼製床材の踏み板のリブに係合するリブ係合金具とボルトを用いて固定するので、鋼製床材に加工をする必要がなく、構築物の設置作業および撤去作業が容易である。また、長孔とリブがあればベースを固定できるので、床面の任意の位置に構築物を設置することができる。
【0015】
上記[2]に記載の発明によれば、鋼製床材のリブに差込孔が形成され、リブ係合金具である差込板を床面から差し入れて回転させるだけリブに係合することができる。
【0016】
上記[3]に記載の発明によれば、外れ防止金具によって差込板の逆回転が阻止されてリブへの係合姿勢が保持されるので、ボルトを締め込む際の共回りを防ぐことができる。
【0017】
上記[4]に記載の発明は、リブ係合金具の溝にリブの下端部を嵌合させることによってリブと係合する。従って、差込孔のないリブを有する鋼製床材に対してもベースを固定できる。
【0018】
上記[5]に記載の発明によれば、ベースの支持片が鋼製床材の裏面に係合されることにより、鋼製床の上面に配置したベースをボルトで固定する際の位置ずれを防ぐことができる。また、固定後においては、支持片が鋼製床材に係合されていることによりベースおよび構築物の固定安定性を高めることができる。
【0019】
上記[6]に記載の発明によれば、鋼製床の支柱と横桟による柵を設置するに際し、上記の効果を得ることができる。
【0020】
上記[7]に記載の発明によれば、横桟が支柱とインサート材の両方に係合するのでしっかりと連結することができ、かつインサート材が支柱に挿入されることで支柱が補強される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】柵を設置した鋼製床の全体斜視図である。
図2】鋼製床材の要部斜視図である。
図3】長手方向用ベースの斜視図である。
図4】幅方向用ベースの斜視図である。
図5】ベース固定用金具の分解斜視図である。
図6】3つのベース固定用金具を取り付けた鋼製床材の要部斜視図である。
図7A】ベースを取り付けた鋼製床材の要部斜視図である。
図7B図7Aにおける7B-7B線断面図である。
図7C図7Aにおける7C-7C線断面図である。
図8】ベース、支柱、インサート材の分解斜視図である。
図9A図8の組み立て状態における9A-9A線断面図である。
図9B図8の組み立て状態における9B-9B線断面図である。
図10】支柱に横桟を固定した状態を示す断面図である。
図11】ベースの他の例を示す斜視図である。
図12】ベースのさらに他の例を示す斜視図である。
図13】リブ係合金具の他の例である。
図14図13のリブ係合具の使用状態を示す断面図である。
図15】外れ止め金具の他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図面を参照しつつ、本発明の一実施形態として、鋼製床A、鋼製床Aの床面に設置する構築物、構築物を設置するための各種部材について詳述する。前記構築物は、鋼製床Aの上面の縁部に立設した複数本の支柱20とこれらの支柱20の間を横桟30で連結した柵である。
【0023】
以下の説明において、同じ符号付したものは同一物または同等物であり、重複する説明を省略する。
[鋼製床]
図1に示すように、鋼製床Aは、梁材2上に梁材2と直交する方向に複数個の鋼製床材1を架け渡して隙間なく並べて梁材2に固定することにより形成されている。前記鋼製床材1は鋼等の高強度材料で構成されている。
【0024】
図2に示すように、前記鋼製床材1は、踏み板10の幅方向の両端にリップ部付フランジ14を有する鋼製C形チャンネル材で構成され、踏み板10には、踏み板10の幅方向に延びる複数の長孔11が長さ方向に沿って横列して設けられている。また、前記フランジ14には長孔11と同じ間隔で長穴15が穿たれている。これらの長穴15は隣接する鋼製床材1の連結や構築物の支持に使用するボルトの通し穴として用いられる。
【0025】
また、前記長孔11の2つの長辺の縁からそれぞれ踏み板10の裏側に突出するリブ12a、12bが向かい合って形成されている。対をなすリブ12a、12bは、それぞれに後述するベース固定用金具50を係合するための3個のスリット状の差込孔13a、13bが長孔11の長辺に沿って縦列して穿設されている。向かい合う位置の差込孔13a、13bは対をなし、3対いずれの差込孔13a、13bにもベース固定用金具50を係合することができる。即ち、ベース固定用金具50は1つの長孔11は3カ所のうちの任意の位置に係合することができる。
【0026】
前記長孔11の長さ、即ち長孔11の長手方向の開口寸法はP1であり、長孔11の幅、即ち短手方向の開口寸法はP2である。また、前記差込孔13a、13bの幅、即ち差込孔13a、13bの短手方向の開口寸法はP3である。
【0027】
前記鋼製床Aの上面の端部に、間隔をあけて複数本の支柱20が立設され、隣接する支柱20が3本の横桟30によって連結された柵が設置されている。前記支柱20は、ベース固定用金具50を用いて鋼製床Aに固定されたベース40、41に連結され、ベース40、41を介して鋼製床Aの上面に支持されて設置されている。
[ベースおよびベース固定用金具]
図3、4に前記支柱20を連結して支持するためのベース40、41を示し、図5に前記ベース40、41を鋼製床Aに固定するためのベース固定用組金具50を示す。
【0028】
前記ベース40、41は金属板の曲げ加工品であり、鋼製床材1の長手方向の辺、即ち踏み板10とフランジ14のコーナー部に取り付けるものと、幅方向の辺、即ち踏み板10と小口(符号なし)のコーナー部に取り付けるものの2種類がある。以下の説明において、「長手方向用ベース40」、「幅方向用ベース41」と称し、あるいはベース40、41と略称する。
【0029】
長手方向用ベース40は、鋼製床材1の上面に配置される長方形の本体部42と、前記本体部42の一方の長辺から下側に屈曲延設されて鋼製床材1のフランジ14に重なる側板部43と、前記本体部42の2つの短辺から下面側に屈曲して延設されたL字形の支持片44とが一体に形成されている。前記支持片44は鋼製床材1の裏面に係合して、長手方向用ベース40の鋼製床材1からの離脱を防止する。前記本体部42の側板部43とのコーナー部近くに支柱20を連結するための係合用凸部45が立設され、前記コーナー部の反対側にベース固定用金具50を連結するための3つのボルト通し穴46が穿設されている。これらのボルト通し穴46の間隔は鋼製床材1の長孔11の間隔に等しい。前記係合用凸部45は角U字形のチャンネル材からなり、チャンネル材のウエブ45aに2つのねじ穴47が形成され、チャンネル材の開口部がコーナー部側にウエブ45aがその反対側に向くように配置されている。前記側板部43には鋼製床材1のフランジ14に穿設された長穴15に連通するボルト通し穴48が穿設されている。
【0030】
幅方向用ベース41は、本体部42の係合用凸部45の両脇、即ちチャンネル材の両フランジ45bの傍らにそれぞれ2つのボルト穴通し46が長孔11に等しい間隔で穿設されている。前記本体部42の一方の長辺から下面側に屈曲して側板部43が延設され、前記本体部42の側板部43に対向する辺には、L字形に屈曲する2つの支持片44が延設されている。
【0031】
前記ベース固定用金具50は、リブ12a、12bに係合させる差込板51と、差込板差込板51のリブ12a、12bに対する係合姿勢を保持する外れ防止金具53と、差込板51と前記ベースを連結するボルト52とを備えている。
【0032】
前記差込板51は、概略長円形の金属板からなり、上面の中央にボルト52が溶接されている。前記差込板51は、長手方向の寸法Q1が鋼製床材1の長孔11の長手方向の開口寸法P1より小さくかつ短手方向の開口寸法P2よりも大きく、短手方向の寸法Q2が短手方向の開口寸法P2よりも小さく、厚みQ3がリブ12a、12bの差込孔13a、13bの短手方向の開口寸法P3よりも小さい。従って、前記ボルト52を摘まんで差込板51を鋼製床材1の上面から長孔11に差し入れ、踏み板10と平行な平面内で回転させると両端部がリブ12a、12bの差込孔13a、13bに挿入されてリブ12a、12bに係合される。
【0033】
前記差込板51は本発明のリブ係合金具に対応する。図示例では差込板51とボルト52とが溶接された一体物であるが、これらを別体にして、差込板に穴を穿設し、この穴にボルトを係合するようにしてもよい。
【0034】
前記外れ防止金具53は長孔11の短手方向の開口寸法P2よりも若干幅の狭い帯状金属板の長手方向の両端部を逆方向に曲げ加工された金具であり、前記ベース40、41との組み付け姿勢において、一端部54が前記差込板51の上面に当接し、他端部55が鋼製床材1のフランジ14の内側面に当接する。前記一端部54に前記ボルト52を通す穴56が穿設され、他端部55に鋼製床材1のフランジ14の長穴15に連通する穴57が穿設されている。
[ベースの固定]
以下に、図5図7Cを参照しつつ、長手方向用ベース40を鋼製床材1に固定する手順を説明する。
(1)ベース固定用金具50は、ボルト52の端部を摘まんで鋼製床材1の上面から長孔11に差込板51を差し入れ、回転させてリブ12a、12bの差込孔13a、13bに挿入して係合させる。前記ボルト52は先端部が鋼製床材1の上面から突出している。
(2)外れ防止金具53の一端部54の穴56にボルト52を差し込みながら、他端部55側を長孔11に挿入する。前記外れ防止金具53の一端部54および他端部55の曲げ角度により、一端部54が差込板51の上面に当接し、他端部55がフランジ14の内面に当接する。
(3)前記差込板51は外れ止め金具53の裏面に接触しているので両端部が差込孔13a、13bに挿入された係合姿勢が保持されている。
(4)前記長手方向用ベース40の3つのボルト通し穴46の位置に対応する3つの長孔11に対して(1)~(3)を行う。本例では、連続する3つの長孔11にベース固定用金具50を取り付ける(図6参照)。
(5)前記長手方向用ベース40の一方の支持片44を鋼製床材1の長孔11に挿入し、先端部を一方のリブ12aまたは12bの下に差込み、前記長手方向用ベース40をスライドさせながら鋼製床材1の上面から突出しているボルト52をボルト通し穴46に通し、他方の支持片44を長孔11に挿入し、先端部を他方のリブ12bまたは12aの下に差込む。また、側板部43をフランジ14の外面に沿わせてボルト通し穴56をフランジ14の長穴15および外れ防止金具53の穴57に合わせる(図7A図7B参照)。
(6)前記ボルト52にナット58を取り付けて締め付ける。このとき、外れ防止金具53が差込板51に接触しているので、差込板51の共回りを阻止して差込孔13a、13bからの抜け落ちを防ぎ、差込板51のリブ12a、12bに対する係合姿勢が保持される(図7A図7C参照)。
(7)鋼製床材1の側面において、ベース40のボルト通し穴48、鋼製床材1の長穴15、外れ防止金具53の穴57にボルト59を装着して締め込む(図7A図7B図7C参照)。
【0035】
以上より、鋼製床材1に長手方向用ベース40が固定される。
【0036】
幅方向用ベース41も、前記固定用金具50を用いて、長手方向用ベース40と同様の手順で鋼製床材1の上面に固定する。ただし、幅方向用ベース41の側板部436は鋼製床材1のフランジ14に当接しないので、外れ防止金具53はフランジ14のみに固定される。
【0037】
前記差込板51は床面から長孔11に差し入れて回転させるだけでリブ12a、12bの差込孔13a、13bに挿入できるので、差込板51のリブ12a、12bへの係合は簡単である。また、外れ防止金具53を取り外して差込板51を逆回転させればリブ12a、12bへの係合が簡単に解除される。
[構築物の設置]
図8に、前記ベース40、41に支持される支柱20およびインサート材60を示す。なお、図8は長手方向用ベース40を記載しているが、幅方向用ベース41が支持する支柱20およびインサート材60材は長手方向用ベース40と共通である。
【0038】
前記支柱20は、断面略四角形でリップ部付フランジ21を有するCチャンネル材で構成され、対向する2つのフランジ21に断面四角形の中空材からなる横桟30を挿入する四角形の挿入口22が穿設されている。前記挿入口22は長さ方向に間隔をおいて3箇所に設けられている。また、両フランジ21を繋ぐウエブ23には、挿入口22と同じ高さの3箇所に横桟30を固定するためのボルトを通す穴24が形成され、下方部に前記ベース40、41に固定するためのボルトを通す2つの穴25が形成されている。
【0039】
前記支柱20内にインサート材が60が挿入され、横桟30は支柱20およびインサート材60に係合されている。前記インサート材60材は断面略四角形の棒状材であり、前記支柱20のフランジ21に平行な第1辺部61に支柱20の挿入口22に連通する四角形の挿入口62が穿設されている。前記第1辺部61の一端から屈曲する第2辺部63は支柱20のウエブ23に内接し、穴24に連通するねじ穴64が形成されている。また、前記第2辺部63は、幅がウエブ23の幅よりも小さく、下端からベース40、41の係合用凸部45の高さに対応する位置までの部分に切欠部63aが形成されている。前記第1辺部61の他端から屈曲する第3辺部65は、幅が第2辺部63と同寸であり、支柱20の両フランジ21のリップ部21a間に嵌合されている(図9A参照)。前記第3辺部65の端部から屈曲する第4辺部66は対向する第1辺部61の第3辺部64側端部から挿入口62の縁までの寸法に等しく、横桟30の挿入口62への挿入を阻害しない寸法に設定されている。
【0040】
前記支柱20および横桟60は以下の手順で鋼製床Aに固定する。
(1)長手方向用ベース40を鋼製床材1に固定する。
(2)長手方向用ベース40の係合用凸部45に支柱20を被せると、支柱20のウエブ23と係合用凸部45のウエブ45が重なり穴25とねじ穴47が連通する。前記穴25とねじ穴47にボルト26を挿入して締め込み、支柱20を係合用凸部45に固定する。
(3)長手方向用ベース40に固定した支柱20にインサート材60を挿入する。上述した支柱20およびインサート材60の寸法関係により、支柱20のフランジ21とインサート材60の第1辺部61および第4辺部65との間に隙間が生じ、この隙間に長手方向用ベース40の係合用凸部23のフランジ45bが配置されている。また、前記インサート材60の第2辺部63の切欠部63aが係合用凸部45のウエブ45aに係合される(図9A参照)。
(4)上記(3)により、支柱20の挿入口22とインサート材60の挿入口62が連通し、穴24とねじ穴64が連通している。連通した挿入口22、62に横桟30を通し、前記穴24とねじ穴64にボルト27を挿入して締め込み、横桟30を支柱20に固定する。図9Bに示すように、前記ボルト27を締め込んでいくと、ボルト27の先端が横桟30をインサート材60の第3辺部65側に押し付け、横桟30はボルト27の先端と、支柱40およびインサート材60の挿入口22、62の縁部および第4辺部66の先端によって強く挟み付けられて強く固定される(図10参照)。
(5)同様の方法で、鋼製床材1に固定した幅方向用ベース41に支柱20およびインサート材60を連結し、横桟30を取り付ける。
【0041】
なお、図1の構築物は、鋼製床Aのコーナー部において、鋼製床材1の長手方向および幅方向から出会った横桟30をL字形ジョイント31で連結している。
【0042】
上述した構築物の支持構造においては、構築物を支持するベースを鋼製床材の踏み板のリブに係合するリブ係合金具とボルトを用いて固定するので、鋼製床材に加工をする必要がなく、構築物の設置作業および撤去作業が容易である。長孔とリブがあればベースを固定できるので、床面の任意の位置に構築物を設置することができる。
[他のベース]
構築物は鋼製床の端部に設置した例であるが、本願のベースは鋼製床材の長孔のリブを利用して固定するものであるから、床面中央部の長孔を利用してベースを固定すれば中央部に構築物を設置することができる。
【0043】
図11のベース70は、係合用凸部45を立設する本体部71にベース固定用金具を係合するボルト通し穴46を穿設し、本体部71の対向する2辺からL字形の支持片72を延設したものである。床面の端部から離れた位置に取り付けるベース70であるから側板部を持たない。
【0044】
鋼製床Aの端部に固定するベースが側板部を備えていることは必須要件ではなく、図11の側板部を持たないベース70を用いることもできる。ただし、支柱等の構築物を床面の端部に設置する場合は、係合用凸部を本体部の端部に配置することが好ましいので、本体部から側板部を延設して固定安定性を高めることが好ましい。
【0045】
また、前記ベース40、41、70の支持片44、72は鋼製床材1のリブ12a、12bの下に入り込んでリブ12a、12bに係合させているが、鋼製床材1の裏面の他の部位に入り込ませて係合させるようにしてもよい。図12のベース75は長い支持片76を有しており、鋼製床材1のフランジ14のリップ部の下に入り込んで係合させることができる。また側板部77の先端部分が外側に屈曲しており、この屈曲部分77aを梁材2に当接させることで固定安定性を高める効果がある。
【0046】
上述したベース40、41、70、75は、支持片44、72、76を長孔11に挿入してリブ12a、12bやフランジ14のリップ部の下に入り込ませ、これらに係合させることにより、ベース40、41、70、75を鋼製床材1に支持させている。このように、支持片44、72、76を鋼製床材1の裏面に係合させることにより、鋼製床Aに配置したベース40、41、70、75の位置ずれを防いで、ボルトやナットによる固定作業を安定して行うことができる。また、固定後においてもベース40、41、70、75および構築物の固定安定性を高める効果がある。
【0047】
本発明において、ベースによって支持する構築物は支柱に限定されず、係合用凸部の形状や連結方法も構築物の形状に応じて適宜変更することができる。また、上述したインサート材60を用いることにより、横桟30が支柱20とインサート材60の両方に係合するのでしっかりと連結することができ、かつインサート材60が支柱20に挿入されることで支柱20が補強される。また、横桟30の連結作業は、支柱20にインサート材60を挿入する、横桟30を貫入する、ボルト27を締める、という簡単な作業であり、連結後に支柱20の外面に露出するのはボルト26の頭だけであるからすっきりとした外観となる。なお、本発明は支柱と横桟の連結構造を限定するものではない。
[他のベース固定用金具]
本発明はリブに差込孔を設けられていない鋼製床材にも適用できる。図13はリブ12a、12bの下端に係合するリブ係合金具80であり、差込孔の有無に関係なくリブ12a、12bに係合させることができる。前記リブ係合金具80は角形U字形のチャンネル材であり、ウエブ81の中心にねじ穴82が形成され、このねじ穴82の両側にフランジ83aに達する溝84が形成されている。前記リブ係合金具80は、長手方向の寸法R1が長孔11の長手方向に開口寸法P1より小さく短手方向の寸法P2よりも大きく設定され、短手方向の寸法R2は長孔11の短手方向の開口寸法P2よりも小さく設定されている。また、2つの溝84の間隔はリブ12a、12b間の寸法に等しい。
【0048】
ベース固定用金具9は前記リブ係合金具80とボルト91とにより構成され、以下の手順でベース40を固定する。
【0049】
前記ベース40の3つのボルト通し穴46にそれぞれボルト91を通し、ボルト91の先端部をリブ係合金具80のねじ穴82に係合させて両者を緩く連結し、3つのリブ係合金具80は長手方向を長孔11の長手方向に合わせておく。次に、前記ベース40を鋼製床材1の上面に配置するとともにリブ係合金具80を鋼製床材1の長孔11からリブ12a、12bの下端よりも下方に差し入れ、ボルト91とともにリブ係合金具80を回転させて溝84とリブ12a、12bの位置合わせをし、ボルト91を締め込む。十分に締め込むことにより、リブ12a、12bの下端部がリブ係合金具80の溝84に強く係合してベース40が固定される(図14参照)。また、ボルト91の締め込みはリブ12a、12bが溝84に緩くかみ合った状態で行うので、リブ係合金具80の共回りは起こらない。
【0050】
また、図13のリブ係合金具80を用いる場合は、予めボルト91でベース40にリブ係合金具80を取り付けておき、リブ係合金具80とベース40の支持片44を長孔11に挿通させる必要がある。このとき、前記リブ係合金具80はベース40の裏面に当接する程度に近づけて組み付けておいてもよい。そして、ベース40を斜めにして一方の支持片44から順次長孔11に挿通させてベース40およびリブ係合金具80をセットする。この状態ではリブ係合金具80は長孔11のリブ12a、12bに当たって回転できないので、ボルト91を緩めてリブ係合金具80をリブ12a、12bよりも下方に下ろしてから回転させ、リブ12a、12bと溝84の位置合わせをしてボルト91を締め込む。
【0051】
また、図5等の差込板51をリブ12a、12bの差込孔13a、13bに係合させるタイプのベース固定用金具50において、外れ防止金具53は任意に使用する部材である。ボルト52を押さえながらナット58を回すといった方法でも共回りと脱落を防止することができる。図5等の外れ防止金具53は、差込板51に係合して共回りを阻止するだけでなく、鋼製床材1に止めることによってベース40、41の固定安定性を高める効果がある。また、外れ防止金具の形状は限定されず、他に図15の逆角U字形の外れ防止金具95を例示できる。前記外れ防止金具95は長孔11に嵌まり込む寸法に設定され、差込孔13a、13bに挿入した差込板51を跨ぐように配置することにより、差込板51の共回りを防ぐことができる。さらに、外れ防止金具95が差込板51とベース40の間の空間を埋めることで差込板51およびベース40の変形を防止する効果が得られる。
【0052】
また、一つのベースの固定に複数種のベース固定用金具を使用することもできる。図5の外れ防止金具53は他端部55を鋼製床材1のフランジ14の長穴15を利用してフランジ14に固定する構造であるから、長穴15が形成された鋼製床材1であり、さらに長穴15を外れ防止金具53の固定に使用できる場合に限定されるが、図15の外れ防止金具95は長孔11内で差込板51にのみ係合されるのでそのような制限はない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は鋼製床の床面における各種構築物の設置に利用できる。
【符号の説明】
【0054】
A鋼製床
1…鋼製床材
10…踏み板
11…長孔
12a、12b…リブ
13a、13b…差込孔
20支柱
22挿入口
30横桟
31L形ジョイント
40、41、70、75ベース
42本体部
43側板部
44、72、76支持片
45係合用凸部
50、90ベース固定用金具
51差込板(リブ係合金具)
52ボルト
53、95外れ防止金具
60インサート材
61第1辺部
62挿入口
63第2辺部
64ねじ穴
65第3辺部
66第4辺部
80リブ係合金具
84溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15