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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】流体吐出容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/00 20060101AFI20221107BHJP
   B65D 77/30 20060101ALI20221107BHJP
   B65D 77/06 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
B65D83/00 K
B65D77/30 C
B65D77/06 F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020035484
(22)【出願日】2020-03-03
(65)【公開番号】P2021138383
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-03-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】710006932
【氏名又は名称】株式会社パックプラス
(74)【代理人】
【識別番号】100114764
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 菜見子
(72)【発明者】
【氏名】中谷 友彰
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-159955(JP,A)
【文献】特開2005-313994(JP,A)
【文献】特開昭57-055855(JP,A)
【文献】特開2016-078916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/00
B65D 77/30
B65D 77/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する表裏一対の平面部材と、前記平面部材の下部に設けられた底面部材とからなり、前記平面部材の上側縁部同士、右側縁部同士および左側縁部同士が互いに溶着され、かつ前記平面部材の下側縁部と前記底面部材の周縁部とが溶着された可撓性の袋体と、
前記袋体の前記平面部材の上側縁部、右側縁部または左側縁部に設けられたコネクタと、
前記コネクタに連結される吐出機構とを備え、
前記吐出機構により前記袋体の内部に充填された流体を吐出する流体吐出容器であって、
前記袋体の前記平面部材および前記底面部材は、下式[1]の条件を満たす形状に構成され、
前記袋体の前記底面部材は、前記袋体の内部に流体が満杯状態に充填された際、前記平面部材の表裏方向に対して前記袋体の内部に向けて予め山型に変形するように構成され、
前記袋体の内部に流体が満杯状態に充填された状態において、前記吐出機構により前記袋体の内部に充填されている流体を外部の空気と置換することなく気密状態で吸引しながら吐出すると、前記袋体の前記平面部材同士が互いに接近するのに伴って、前記袋体の前記底面部材が前記袋体の内部に向けて山型に次第に折り込まれながら前記袋体が変形していき、最終的には、前記袋体の前記平面部材同士が密着するとともに、前記袋体の前記底面部材が互いに密着するように変形する ことを特徴とする流体吐出容器。
X<B…[1]
X:前記袋体の内部に流体が満杯状態に充填されたときの前記平面部材の下側縁部における表裏方向の最大開口径
B:前記底面部材における前記平面部材の表裏方向のマチの最大長さ
【請求項2】
前記袋体の前記平面部材および前記底面部材は、下式[2]の条件を満たす形状に構成されている請求項1に記載の流体吐出容器。
B×0.05<X<B×0.98…[2]
【請求項3】
前記袋体の前記底面部材は、前記袋体の内部に流体が満杯状態に充填された際、前記平面部材の表裏方向の中央部が前記袋体の内部に向けて突出するように構成されている請求項1に記載の流体吐出容器。
【請求項4】
前記袋体の前記平面部材は、下側縁部同士が幅方向の両側部で互いに溶着されている請求項1から請求項3のいずれかに記載の流体吐出容器。
【請求項5】
前記袋体の前記平面部材は、下側縁部同士が幅方向の両端部で互いに溶着されている請求項4に記載の流体吐出容器。
【請求項6】
前記袋体の前記平面部材は、下側縁部同士が左側縁部同士および/または右側縁部同士の溶着部分よりも幅方向内側で溶着されている請求項4に記載の流体吐出容器。
【請求項7】
前記袋体の前記平面部材は、下側縁部同士が左側縁部同士および/または右側縁部同士の溶着部分よりも幅方向内側であって、下式[3]の条件を満たす位置で溶着されている請求項6に記載の流体吐出容器。
K1<K×1/4…[3]
K1:前記平面部材における下側縁部の幅方向の端部の幅方向外側位置から下側縁部同士の溶着部分の幅方向内側位置までの距離
K:前記平面部材の下側縁部の最大幅
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性の袋体に充填されている流体を吐出機構により吐出する流体吐出容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧品、シャンプー、せっけん、パーマ液などの各種流体を扱う商品において、一般に剛性を有するプラスチック製の包装容器が使用されていた。そして、地球に対する環境面の配慮から、プラスチック製の包装容器から流体をすべて吐出したあとにおいても、プラスチック製の包装容器を廃棄することなく維持しておき、詰め替え用の可撓性の包装袋に収容されている流体をプラスチック製の包装容器に詰め替えることが行われている。
【0003】
ところが、これだと、流体の詰め替え時や詰め替えた後において、流体が空気に触れることになるため、流体が劣化する虞があった。また、プラスチック製の包装容器を長期間に亘って使用し続けると、包装容器において流体が付着したり、カビが生えたり、摩耗したりして、包装容器の外観が次第に損なわれるため、使用者にとって必ずしも気持ちの良いものではなかった。
【0004】
そこで、近年、可撓性の包装袋を詰め替え用として使用するのではなく、商品の本体として使用することが行われている。具体的に説明すると、流体が内部に充填される袋体と、袋体に設けられたコネクタと、コネクタに連結されるポンプなどの吐出機構とを備える流体吐出容器が知られている。そして、この袋体は、対向する表裏一対の平面部材と、平面部材の下部に設けられる底面部材とからなり、平面部材と底面部材により囲まれた内部に所定の流体が充填される可撓性のパウチが用いられることが多い(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
これによれば、吐出機構により袋体の内部の流体を外部の空気と置換することなく気密状態で吐出していくため、流体が空気に全くまたはほとんど触れず、流体の劣化を防止することができる。また、袋体から流体をすべて吐出したあとは、新しい袋体に交換すればよいため、常に新しくて綺麗な状態を維持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-43568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、吐出機構により袋体の内部の流体を外部の空気と置換することなく気密状態で吐出する際、流体の吐出に応じて平面部材同士が互いに接近していくのに伴って、底面部材が袋体の内部に向けて山型に折り込まれるように変形するのが理想であるが、実際には底面部材は袋体の内部に向けてスムーズに折り込まれない場合が多く、その結果、底面部材に無視できない量の流体が残ってしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであって、袋体の底面部材に流体が残ることを防止または軽減することができる流体吐出容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、対向する表裏一対の平面部材と、前記平面部材の下部に設けられた底面部材とからなり、前記平面部材の上側縁部同士、右側縁部同士および左側縁部同士が互いに溶着され、かつ前記平面部材の下側縁部と底面部材の周縁部とが溶着された可撓性の袋体と、前記袋体の前記平面部材の上側縁部、右側縁部または左側縁部に設けられたコネクタと、前記コネクタに連結される吐出機構とを備え、前記吐出機構により前記袋体の内部に充填された流体を吐出する流体吐出容器であって、前記袋体の前記平面部材および前記底面部材は、下式[1]の条件を満たす形状に構成されていることを特徴とする。
【0010】
X<B…[1]
X:前記袋体の内部に流体が満杯状態に充填されたときの前記平面部材の下側縁部における表裏方向の最大開口径
B:前記底面部材における前記平面部材の表裏方向のマチの最大長さ
【0011】
これによれば、袋体の内部に流体が満杯状態に充填されたときの平面部材の下側縁部における表裏方向の最大開口径が、袋体の底面部材における平面部材の表裏方向のマチの最大長さよりも小さいことにより、袋体の底面部材において平面部材の表裏方向に物理的な弛みが生じるため、袋体の内部に向けて引っ張られ易い状態となる。このため、吐出機構により袋体の内部に充填されている流体を気密状態で吸引しながら吐出する際、袋体の平面部材同士が互いに接近するのに伴って、袋体の底面部材が袋体の内部に向けて山型にスムーズに折り込まれながら袋体が変形していくため、袋体の底面部材に流体が残ることを防止または軽減することができる。
【0012】
また、前記袋体の前記平面部材および前記底面部材は、下式[2]の条件を満たす形状に構成されているのがよい。
【0013】
B×0.05<X<B×0.98…[2]
【0014】
これによれば、袋体の内部に充填される流体の容量を十分に確保しながら、袋体の底面部材を袋体の内部に向けて山型にスムーズに折り込むことができる。
【0015】
また、前記袋体の前記底面部材は、前記袋体の内部に流体が満杯状態に充填された際、前記平面部材の表裏方向に対して前記袋体の内部に向けて予め山型に変形するように構成されてもよい。また、前記袋体の前記底面部材は、前記袋体の内部に流体が満杯状態に充填された際、前記平面部材の表裏方向の中央部が前記袋体の内部に向けて突出するように構成されてもよい。これによれば、吐出機構により袋体の内部に充填されている流体を気密状態で吸引しながら吐出する際、袋体の底面部材を袋体の内部に向けて山型に確実に折り込むことができる。
【0016】
また、前記平面部材は、下側縁部同士が幅方向の両側部で互いに溶着されてもよい。例えば、前記平面部材は、下側縁部同士が幅方向の両端部で溶着されるものが挙げられる。あるいはまた、前記平面部材は、下側縁部同士が左側縁部同士および/または右側縁部同士の溶着部分よりも幅方向内側で溶着されるものが挙げられる。これによれば、上式[1]または上式[2]の条件を満たす平面部材および底面部材を構成し易くなる。
【0017】
また、前記平面部材は、下側縁部同士が左側縁部同士および/または右側縁部同士の溶着部分よりも幅方向内側であって、下式[3]の条件を満たす位置で溶着されてもよい。これによれば、包装袋の内部に充填される流体の容量を十分に確保することができるとともに、包装袋を安定した状態で載置することができる。
【0018】
K1<K×1/4…[3]
K1:前記平面部材における下側縁部の幅方向の端部の幅方向外側位置から下側縁部同士の溶着部分の幅方向内側位置までの距離
K:前記平面部材の下側縁部の最大幅
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、袋体の内部に流体が満杯状態に充填されたときの平面部材の下側縁部における表裏方向の最大開口径が、袋体の底面部材における平面部材の表裏方向のマチの最大長さよりも小さいことにより、袋体の底面部材において平面部材の表裏方向に物理的な弛みが生じ、袋体の内部に向けて引っ張られ易い状態となる。このため、吐出機構により袋体の内部に充填されている流体を気密状態で吸引しながら吐出する際、袋体の平面部材同士が互いに接近するのに伴って、袋体の底面部材が袋体の内部に向けて山型にスムーズに折り込まれながら袋体が変形していくため、袋体の底面部材に流体が残ることを防止または軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る流体吐出容器の分解斜視図である。
図2】流体吐出容器の正面断面図である。
図3図1の包装袋(流体充填後)の斜視図である。
図4図1の包装袋(流体充填後)の正面断面図である。
図5図1の包装袋(流体充填後)の側面断面図である。
図6図1の包装袋(流体充填後)の底面図である。
図7図1の包装袋(流体充填前)の正面図である。
図8図1の包装袋の分解斜視図である。
図9】流体吐出容器の内部の流体を吐出する過程を示す袋体の側面断面図である。
図10】他の実施形態に係る流体吐出容器(流体充填後)の側面断面図である。
図11図10の流体吐出容器(流体充填後)の底面図である。
図12】包装袋の下側縁部の溶着位置および溶着形状の変形例を示す一部正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明に係る流体吐出容器(以下、本容器という)の実施形態について図1図9を参照しつつ説明する。なお、本実施形態では、袋体11の平面部材111に直交する方向を表裏方向、平面部材111の縦の長さ方向を上下方向、平面部材111の横の幅方向を左右方向として説明する。
【0022】
本容器は、図1および図2に示すように、シャンプーやリンス、化粧液等の流体が充填される包装袋1と、包装袋1が格納される下側容器2と、下側容器2の開口部23に脱着可能に設けられる上側容器3と、上側容器3に設けられた吐出機構4とを備える。
【0023】
なお、前記包装袋1は、図2に示すように、下側容器2において径方向に収縮しながら格納されるため、左側縁部111cおよび右側縁部111dが折れ曲がることにより、図2では左側縁部111cおよび右側縁部111dの断面幅が狭い状態で図示している。また、袋体11の平面部材111および底面部材112は非常に薄いシート部材であるが、説明の便宜上、厚みを持たせて図示している。
【0024】
前記包装袋1は、図3に示すように、一般にスタンディングパウチと呼ばれる合成樹脂素材からなる可撓性の袋体11と、合成樹脂素材からなる剛性のコネクタ12とから構成される。
【0025】
前記袋体11は、図7および図8に示すように、対向する表裏一対の平面部材111、111と、該平面部材111、111の下部に設けられた一枚の底面部材112とからなり、平面部材111、111と底面部材112で囲まれた空間に流体が充填される。
【0026】
前記平面部材111は、上側縁部111aが下側縁部111bよりも短い正面視略台形状であって、内面側にシーラント層を有するシート部材から構成されており、上側縁部111a同士、左側縁部111c同士および右側縁部111d同士が互いに所定の溶着幅で溶着される。
【0027】
より具体的に説明すると、図4に示すように、前記平面部材111の上側縁部111a同士は、コネクタ12が位置する中央部以外で所定の溶着幅で互いに溶着されている。また、前記平面部材111の左側縁部111c同士および右側縁部111d同士は、後述するように底面部材112の周縁部112aが溶着される下部以外の上部および中間部において所定の溶着幅K2で互いに溶着される。また、前記平面部材111の下側縁部111b同士は、幅方向の両端部111fにおいて所定の溶着幅K1の溶着部分Mで部分的に互いに溶着されている。なお、図4において、平面部材111同士の溶着部分は灰色を付した部分である。
【0028】
また、前記平面部材111は、流体が充填される前は互いに密着した状態である一方、図3に示すように、流体が満杯状態に充填された後は互いに表裏方向に離間して緩やかに膨らんだ状態になる。特に平面部材111の下側縁部111bは、図6に示すように、流体が充填された後は左側縁部111cおよび右側縁部111dから中央部にかけて表裏方向に次第に開口するように膨らんだ状態になる。
【0029】
なお、平面部材111の下側縁部111bの最大開口径Xは、図6に示すように、袋体11の内部に流体が充填された後の平面部材111の下側縁部111bの最も開いた中央部の内面間の距離である。
【0030】
前記底面部材112は、図7および図8に示すように、平面部材111の下部に対応する形状であって、内面側にシーラント層を有するシート部材から構成されており、周縁部112aが平面部材111の左側縁部111c、右側縁部111dおよび下側縁部111b等と図7の灰色部分において溶着され、平面部材111との間で左側縁部111cおよび右側縁部111dから中央部にかけて下方に円弧を描く溶着線112bが構成される。
【0031】
また、前記底面部材112は、4つの角部に所定形状の切欠孔112dがそれぞれ形成されている。このため、平面部材111の下側縁部111b同士を両端部111fの切欠孔112dに対応する位置の溶着部分Mにおいて直接溶着することができる。
【0032】
また、前記底面部材112は、図7に示すように、袋体11の内部に流体が充填される前は底面部材112の折込線112c(底面部材112における平面部材111の表裏方向の中央部において左右方向に延びる線)において袋体11の内部に折り込まれた状態になる一方、袋体11の内部に流体が満杯状態に充填された後は表裏方向に開いた状態になる。具体的には、底面部材112は、袋体11の内部に流体が満杯状態に充填されると、図4に示すように、左側縁部111cおよび右側縁部111dから中央部にかけて下方向に円弧を描く溶着線112bに沿う形状で、かつ、図5に示すように、表裏方向に概ね平坦な形状であって、図6に示すように、全体として底面部材112が平面視野で略葉形状の状態になる。
【0033】
なお、底面部材112のマチの最大長さBは、図7に示すように、袋体11の内部に流体が充填される前の折り込み高さの2倍の長さ、すなわち平面部材111との溶着線112bの中央部から底面部材112の内面の折込線112cまでの高さの2倍の長さである。
【0034】
ここで、平面部材111の下側縁部111bの最大開口径Xと、底面部材112のマチの最大長さBの関係について説明する。
【0035】
従来、平面部材111の下側縁部111bの最大開口径Xと、底面部材112のマチの最大長さBとは、流体の充填量を最大限に高めるために完全に一致していた。
【0036】
しかしながら、吐出機構により袋体11の内部の流体を外部の空気と置換することなく気密状態で吐出する際、流体の吐出に応じて平面部材111同士が互いに接近していくのに伴って、底面部材112が袋体11の内部に向けて山型に折り込まれるようにスムーズに変形しない場合があり、その結果、底面部材112に流体が無視できない程度に残ってしまうという問題があった。
【0037】
そこで、本発明では、図5に示すように、袋体11の平面部材111および底面部材112を下式[1]の条件を満たす形状に形成した。
【0038】
X<B…[1]
X:袋体11の内部に流体が満杯状態に充填されたときの平面部材111の下側縁部111bにおける表裏方向の最大開口径
B:底面部材112における平面部材111の表裏方向のマチの最大長さ
【0039】
これによれば、平面部材111の下側縁部111bの最大開口径Xが、底面部材112のマチの最大長さBよりも小さいことにより、袋体11の底面部材112において平面部材111の表裏方向に物理的な弛みが生じ、袋体11の内部に向けて引っ張られ易い状態となる。このため、前記吐出機構4により前記袋体11の内部に充填されている流体を気密状態で吸引しながら吐出する際、前記袋体11の平面部材111同士が互いに接近するのに伴って、前記袋体11の前記底面部材112が袋体11の内部に向けて折込線112cを頂点として山型にスムーズに折り込まれながら前記袋体11が変形していくため、袋体11の底面部材112に流体が残ることを防止または軽減することができる。
【0040】
また、本実施形態では、上式[1]の条件を満たすための手段として、平面部材111の下側縁部111bの両端部111f同士を溶着部分Mで溶着している。具体的に説明すると、通常のスタンディングパウチは、平面部材111の下側縁部111bの両端部111fが溶着されていないため、平面部材111の下側縁部111bは平面部材111の表裏方向に開き易い状態となっている。これに対して、図6および図7に示すように、平面部材111の下側縁部111bの両端部111f同士を溶着すると、平面部材111の下側縁部111bが平面部材111の表裏方向に開きにくくなって、上式[1]の条件を満たし易くなる。なお、図6において、平面部材111の下側縁部111bの両端部111f同士の間において、平面部材111のシーラント層が溶着により溶け出した状態を灰色で図示している。
【0041】
前記コネクタ12は、本体部121と、本体部121の軸線方向の上側に設けられた上側コネクタ板122と、本体部121の軸線方向の下部に設けられた下側コネクタ板123と、本体部121を軸線方向に貫通する態様で設けられた貫通孔124と、貫通孔124の下端部に設けられた蓋部材125とを備え、本体部121の下部側面が平面部材111の間でヒートシールにより挟着されることにより、貫通孔124と袋体11の軸線方向が一致する態様で袋体11の上側縁部111aの中央部に設けられている。
【0042】
前記上側コネクタ板122は、図3に示すように、平面方向に延びる態様の平板状に形成されており、径方向内側に窪んだ2個の凹部122bが互いに対向する態様で形成されている。一方、前記コネクタ12の下側コネクタ板123も、前記コネクタ12の上側コネクタ板122と同様、平面方向に延びる態様の平板状に形成されており、径方向内側に窪んだ2個の凹部123bが互いに対向する態様で形成されている。これら上側コネクタ板122の凹部122bと下側コネクタ板123の凹部123bは、軸線方向に沿って面一となるように形成されており、作業者の手の指(例えば、人差し指と親指)を凹部122b,123bを沿わせることによりコネクタ12を摘み易くなっている。
【0043】
また、下側コネクタ板123は、最大外径が下側容器2の開口部23の内径よりも大きくなるように形成されている。これにより、図2に示すように、包装袋1を下側容器2に格納した際、下側コネクタ板123の周縁部123aの下面と下側容器2の上端面とが当接するため、包装袋1のコネクタ12が下側容器2の開口部23で係止されて、包装袋1の袋体11が下側容器2の内部で吊り下げられた状態となる。
【0044】
また、上側コネクタ板122と下側コネクタ板123は、最大外径が上側容器3の内径よりも小さくなるように形成されている。これにより、図2に示すように、包装袋1を下側容器2に格納した状態で上側容器3を下側容器2に完全に装着した際、コネクタ12の全体が上側容器3の内部空間33に収まった状態となる。
【0045】
また、上側コネクタ板122と下側コネクタ板123は、コネクタ12の軸線方向に所定距離を隔てながら対向する態様で設けられている。これにより、製造時において包装袋1に流体を充填する際、包装袋1のコネクタ12の上側コネクタ板122と下側コネクタ板123の間に別に設けられた係止部材を係止させることにより、流体を安定して充填することができる。
【0046】
前記下側容器2は、図1および図2に示すように、円形状の底壁部21と、底壁部21の周縁から立設された円筒状の周壁部22とからなる合成樹脂製の剛性の容器であって、周壁部22の上部に開口部23が形成されるとともに、周壁部22の上部の外周面に雄螺子部24が形成されている。この雄螺子部24は、後述するように上側容器3の雌螺子部34と螺合する。
【0047】
前記上側容器3は、図1および図2に示すように、円形状の天壁部31と、天壁部31の周縁から垂下した円筒状の周壁部32とからなる合成樹脂製の剛性の容器であって、包装袋1のコネクタ12を被覆する内部空間33が形成されている。
【0048】
また、前記上側容器3は、周壁部32の下部の内周面に雌螺子部34が形成されており、下側容器2に形成された雄螺子部24と螺合することにより下側容器2に装着される。
【0049】
また、前記上側容器3は、天壁部31の中央部に貫通孔35が形成されており、吐出機構4が上側容器3に取り付けられた際、吐出機構4の雄部材41が貫通孔35を貫通するものとなされている。
【0050】
また、前記上側容器3は、周壁部32の上部において、軸方向の断面がL字状の段部36が周方向に沿って形成されている。このため、図2に示すように、包装袋1を下側容器2に格納した状態で、上側容器3を下側容器2に完全に装着した際、下側コネクタ板123の周縁部123aの上面が上側容器3の段部36の下面に当接し、かつ下側コネクタ板123の周縁部123aの下面が下側容器2の周壁部22の上端面に当接するため、コネクタ12を上側容器3と下側容器2に挟着された状態で固定することができる。
【0051】
前記吐出機構4は、図1および図2に示すように、いわゆるプッシュ式ポンプが採用されており、上側容器3の天壁部31に設けられている。この吐出機構4は、下端部に流体を吸引する吸引口44を有する管状の雄部材41と、上端部に流体を吐出する吐出口45を有するポンプ部42と、内部を貫通する態様で吸引口44と吐出口45と連通する流体通路43とを有する。
【0052】
また、前記吐出機構4は、図2に示すように、上側容器3が下側容器2に装着した際、雄部材41が包装袋1のコネクタ12の貫通孔124に密着状態に挿入され、包装袋1のコネクタ12の貫通孔124の下端部に設けられた蓋部材125を押し出すことにより、袋体11の内部に臨んだ状態となる。これにより、ポンプ部42を作業者の手で一回ないし複数回押し下げると、ポンプの吸引作用により袋体11に充填されている流体を雄部材41の吸引口44から吸引して、流体通路43を通じて吐出口45から容器外部に吐出することができる。
【0053】
而して、図9(a)に示すように、袋体11の内部に流体が満杯状態に充填された状態において、吐出機構により袋体11の内部に充填されている流体を外部の空気と置換することなく気密状態で吸引しながら吐出すると、図9(b)に示すように、袋体11の平面部材111同士が互いに接近するのに伴って、袋体11の底面部材112が袋体11の内部に向けて山型に次第に折り込まれながら前記袋体11が変形していき、最終的には、図9(c)に示すように、袋体11の平面部材111同士が密着するとともに、袋体11の底面部材112が互いに密着するように変形するため、袋体11の底面部材112に流体が残ることを防止または軽減することができる。なお、図9では、袋体11の変形のみを図示しており、その他の機構は省略している。
【0054】
なお、本実施形態では、前記袋体11の平面部材111および底面部材112は、上式[1]の条件を満たす形状に形成されるものとしたが、好ましくは下式[2]の条件を満たす形状に形成されるのがよい。これによれば、袋体の内部に充填される流体の容量を十分に確保しながら、袋体の底面部材を袋体11の内部に向けて山型にスムーズに折り込むことができる。
【0055】
B×0.05<X<B×0.98…[2]
【0056】
また、平面部材111の下側縁部111bの最大開口径Xが、底面部材112のマチの最大長さBよりも大幅に小さい場合、底面部材112のマチに余剰が生じることになる。この場合、袋体11の内部に流体が満杯状態に充填された際、図10に示すように、袋体11の底面部材112を平面部材111の表裏方向に対して袋体11の内部に向けて予め山型に変形するように構成することが挙げられる。また、図10および図11に示すように、袋体11の底面部材112における平面部材の表裏方向の中央部を折込線112cに沿って袋体11の内部に向けて突出するように構成することも挙げられる。これによれば、吐出機構により袋体11の内部に充填されている流体を気密状態で吸引しながら吐出する際、袋体11の底面部材112を袋体11の内部に向けて山型に確実に折り込むことができる。
【0057】
また、平面部材111は、下側縁部111b同士が両端部111fの溶着部分Mで溶着されるものとしたが、図12に示すように、下側縁部111b同士が左側縁部111cおよび/または右側縁部111dの溶着部分よりも幅方向内側の溶着部分Mで溶着されてもよい。
【0058】
この場合、平面部材111は、下側縁部111bが左側縁部111cおよび/または右側縁部111dの溶着部分よりも幅方向内側であって、下式[3]の要件を満たす位置の溶着部分Mで溶着されるのが好ましい。
【0059】
K1<K×1/4…[3]
K1:平面部材111における下側縁部111bの幅方向の端部111fの幅方向外側位置から下側縁部111bの溶着部分Mの幅方向内側位置までの距離
K:平面部材111の下側縁部111bの最大幅(図7に示す袋体11の内部に流体が充填される前の空の状態)
【0060】
また、平面部材111の下側縁部111bの溶着部分Mは略半円状に形成したが、図12に示すように、円形状、三角形状、半長円状など、その他の形状であってもよい。
【0061】
また、下側容器2および上側容器3が設けられるものとしたが、下側容器2および上側容器3が設けられず、包装袋1(袋体11およびコネクタ12)および吐出機構4のみから構成されるものとしてもよい。
【0062】
また、一対の平面部材111と底面部材112を別部材としたが、一対の平面部材111と底面部材112が一枚のシート部材から構成されるものについて上述と同様の溶着を行ってもよい。
【0063】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0064】
1…包装袋
11…袋体
111…平面部材
111a…上側縁部
111b…下側縁部
111c…左側縁部
111d…右側縁部
111f…端部
112…底面部材
112a…周縁部
112b…溶着線
112c…折込線
12…コネクタ
121…本体部
122…上側コネクタ板
123…下側コネクタ板
124…貫通孔
125…蓋部材
2…下側容器
21…底壁部
22…周壁部
23…開口部
24…雄螺子部
3…上側容器
31…天壁部
32…周壁部
33…内部空間
34…雌螺子部
35…貫通孔
36…段部
4…吐出機構
41…雄部材
42…ポンプ部
43…流体通路
44…吸引口
45…吐出口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12