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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   B08B 3/08 20060101AFI20221107BHJP
   C23G 5/04 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
B08B3/08 A
B08B3/08 B
C23G5/04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020093929
(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公開番号】P2021186736
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2021-07-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 公開日:令和2年2月13日から3月26日まで、公開した場所:ウィルヴィー株式会社 デモルーム 配布日:令和2年2月28日から5月25日まで、配布した場所:別紙配布先リストに記載した配布場所
(73)【特許権者】
【識別番号】520189946
【氏名又は名称】星原 義彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100196140
【弁理士】
【氏名又は名称】岩垂 裕司
(72)【発明者】
【氏名】星原 義彦
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-116619(JP,A)
【文献】実開平04-017879(JP,U)
【文献】実開昭63-107790(JP,U)
【文献】特開2010-240606(JP,A)
【文献】実開平01-156786(JP,U)
【文献】特開2009-136754(JP,A)
【文献】特開昭62-018036(JP,A)
【文献】実開平03-019586(JP,U)
【文献】米国特許第03028267(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 3/00~ 3/14
C23G 1/00~ 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄容器に入れたワークを洗浄液によって洗浄する洗浄装置であって、
底部に洗浄液が貯留される浸漬槽が設けられ、上端に前記洗浄容器を出し入れするワーク投入口が設けられた洗浄槽と、
前記ワーク投入口の上方の待機位置と前記浸漬槽内の浸漬洗浄位置との間で前記洗浄容器を昇降させる昇降機構と、
前記ワーク投入口を密閉する密閉位置、および、前記ワーク投入口を開放する開放位置に移動して 前記ワーク投入口を開閉する可動蓋と、
前記洗浄槽に前記洗浄液の蒸気を供給する蒸気発生槽と、
前記洗浄液の蒸気を冷却して液化させ回収する洗浄液回収機構と、を有し、
前記昇降機構は、
前記洗浄容器を載せる昇降台と、
前記昇降台を上下方向に案内するガイド機構と、
前記昇降台に連結される金属製の昇降ベルトと、
前記昇降ベルトを巻き取るリールと、
前記リールを回転させるモータと、を備え、
前記昇降台は、前記洗浄容器よりも下方に延びる脚部を備え、前記脚部の下端に前記昇降ベルトの一端が固定され、前記昇降ベルトの他端は前記リールに固定され、
前記昇降台に乗せた前記洗浄容器が前記待機位置に上昇したとき、前記昇降台の前記下端に固定された前記昇降ベルトの一端は前記洗浄槽の内側に位置し、
前記昇降ベルトおよび前記リールの全体が、前記洗浄槽の内部に配置され、前記洗浄槽の内部で前記昇降ベルトの巻き取りおよび繰り出しが行われることにより、前記可動蓋が前記ワーク投入口を開閉する際に前記可動蓋と前記昇降機構とが干渉しないことを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記洗浄槽は、前記リールを収容するリール収容部を備え、
前記リールの中心に配置されるシャフトは、前記リール収容部の側壁に設けられた軸受け部に通されて前記洗浄槽の外部へ延びており、
前記シャフトと前記軸受け部との隙間は、シール部材によって密閉され、
前記モータは前記洗浄槽の外部に配置され、前記シャフトを介して前記リールを回転させることを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
記密閉位置、および、前記開放位置に前記可動蓋をスライドさせるシリンダを備え
前記ワーク投入口を囲む縁部と前記可動蓋との隙間を封止する封止部材を備え ることを特徴とする請求項1または2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記洗浄液は、フッ素系溶剤またはアルコール類であることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の洗浄装置。
【請求項5】
洗浄容器に入れたワークを洗浄液によって洗浄する洗浄装置であって、
底部に洗浄液が貯留される浸漬槽が設けられ、上端に前記洗浄容器を出し入れするワーク投入口が設けられた洗浄槽と、
前記ワーク投入口の上方の待機位置と前記浸漬槽内の浸漬洗浄位置との間で前記洗浄容器を昇降させる昇降機構と、
前記ワーク投入口を開閉する可動蓋と、
前記洗浄槽に前記洗浄液の蒸気を供給する蒸気発生槽と、
前記洗浄液の蒸気を冷却して液化させ回収する洗浄液回収機構と、を有し、
前記昇降機構は、
前記洗浄容器を載せる昇降台と、
前記昇降台を上下方向に案内するガイド機構と、
前記昇降台に連結される金属製の昇降ベルトと、
前記昇降ベルトを巻き取るリールと、
前記リールを回転させるモータと、を備え、
前記昇降ベルトおよび前記リールは、前記洗浄槽の内部に配置され、
前記洗浄液回収機構は、
前記洗浄槽において前記洗浄液の蒸気を冷却して液化させる冷却器と、
前記洗浄液を含む回収液から水分を分離する水分分離器と、を備え、
前記水分分離器は、
前記洗浄槽から前記回収液が流入する水分分離槽と、
前記水分分離槽の液面よりも上に配置される冷却用ペルチェ素子と、を備えることを特徴とする洗浄装置。
【請求項6】
前記水分分離槽は、前記洗浄槽から前記回収液が流入する第1槽と、比重により前記回収液から分離された前記洗浄液が前記第1槽の底部から流入する第2槽と、に仕切られており、
前記冷却用ペルチェ素子は、前記第1槽に配置されることを特徴とする請求項5に記載の洗浄装置。
【請求項7】
洗浄容器に入れたワークを洗浄液によって洗浄する洗浄装置であって、
底部に洗浄液が貯留される浸漬槽が設けられ、上端に前記洗浄容器を出し入れするワーク投入口が設けられた洗浄槽と、
前記ワーク投入口の上方の待機位置と前記浸漬槽内の浸漬洗浄位置との間で前記洗浄容器を昇降させる昇降機構と、
前記ワーク投入口を開閉する可動蓋と、
前記洗浄槽に前記洗浄液の蒸気を供給する蒸気発生槽と、
前記洗浄液の蒸気を冷却して液化させ回収する洗浄液回収機構と、
前記洗浄容器が前記浸漬槽の液面よりも上の蒸気洗浄位置に停止しているとき、前記洗浄容器に入れたワークから流れ落ちる汚染液を前記蒸気発生槽へ流入させる汚染液回収機構と、を有し、
前記昇降機構は、
前記洗浄容器を載せる昇降台と、
前記昇降台を上下方向に案内するガイド機構と、
前記昇降台に連結される金属製の昇降ベルトと、
前記昇降ベルトを巻き取るリールと、
前記リールを回転させるモータと、を備え、
前記昇降ベルトおよび前記リールは、前記洗浄槽の内部に配置され、
前記汚染液回収機構は、
前記洗浄容器を載せる昇降台に設けられた第1受け部材と、
前記洗浄槽と前記蒸気発生槽とを連通させる蒸気供給口に配置される第2受け部材を備え、
前記第1受け部材は、前記第2受け部材が配置される側に設けられた流出部を備え、
前記第2受け部材は、前記第1受け部材よりも下方に配置されることを特徴とする洗浄装置。
【請求項8】
前記第1受け部材は、前記昇降台における前記洗浄容器の下方に配置されることを特徴とする請求項7に記載の洗浄装置。
【請求項9】
前記昇降台は、前記洗浄容器を載せる枠部を備え、
前記第1受け部材は、前記枠部に固定された受け板であり、
前記受け板は、前記第2受け部材が配置される側に向かうに従って下方へ向かう方向に傾斜していることを特徴とする請求項8に記載の洗浄装置。
【請求項10】
前記第2受け部材は、前記流出部の下側に延びる垂れ液受け位置と、前記流出部の下側から退避した退避位置に移動可能であることを特徴とする請求項8または9に記載の洗浄装置。
【請求項11】
前記第2受け部材は、支軸を中心として回転することにより、前記垂れ液受け位置と前記退避位置に移動することを特徴とする請求項10に記載の洗浄装置。
【請求項12】
前記第2受け部材は、前記洗浄槽の側にスライドすることにより、前記退避位置から前記垂れ液受け位置に移動し、前記蒸気発生槽の側にスライドすることにより、前記垂れ液受け位置から前記退避位置に移動することを特徴とする請求項10に記載の洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄液を用いてワークを洗浄する洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、フッ素系溶剤、塩素系溶剤、臭素系溶剤、アルコール類、グリコールエーテル類、炭化水素系溶剤、等の揮発性が高い洗浄液を入れた浸漬槽に各種のワークを浸漬して超音波洗浄を行い、続いて加熱した洗浄液の蒸気(べーパー)を供給した蒸気槽(べーパー槽)にワークを入れてべーパー洗浄を行い、その後に液切乾燥を行う洗浄装置が使用されている。
【0003】
特許文献1には、縦長の1つの洗浄槽を有し、この洗浄槽の中でワークを入れたバスケットなどの洗浄容器を昇降させて超音波洗浄および蒸気洗浄を行う1槽式の洗浄装置が開示されている。特許文献1の洗浄装置は、洗浄槽の底部に洗浄液を入れる浸漬槽が設けられている。また、洗浄液の液面より上に蒸気洗浄を行うための空間(蒸気洗浄領域)が設けられ、蒸気洗浄領域の上に洗浄液の蒸気(ベーパー)及びワークに残留した洗浄液や洗浄液のガスを回収するための冷却管を配置した空間(冷却乾燥領域)が設けられている。洗浄槽の上端には、ワークを入れた洗浄容器を出し入れする開口部(連通口)が設けられている。
【0004】
特許文献1では、ワークを入れた洗浄容器は、昇降台に乗せられ、昇降台ごと開口部を通って洗浄槽に出し入れされる。昇降台を昇降させる昇降機構は、昇降台を先端に取り付けた伸縮ロッドをパワーシリンダによって上下方向に伸縮させる機構、あるいは、昇降台の背面にラックを取り付けて昇降させるラック・ピニオン機構を用いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-170425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の洗浄装置は、1槽式であるため、洗浄槽とは別個に蒸気槽(べーパー槽)を備えた2槽式の洗浄装置、あるいは、洗浄槽と蒸気槽の間にすすぎ槽を設けた3槽式の洗浄装置よりも装置構造が簡素であり、設置スペースが小さい。しかしながら、特許文献1の洗浄装置は、洗浄槽の上部に搬入搬出室が設けられており、さらに、昇降機構を構成するパワーシリンダが搬入搬出室の上方に延びており、全体として大型の構造体を備えている。そのため、さらなる小型化の要望がある。
【0007】
また、洗浄装置に対しては、洗浄力の強化、高清浄度化、洗浄液の低消耗化、ランニングコストの低減、等に対する要求がますます高くなっている。
【0008】
洗浄装置に用いられる昇降機構としては、特許文献1に記載されたパワーシリンダ機構およびラック・ピニオン機構のほかに、チェーンの巻き上げおよび巻き下げによって昇降台を昇降させるチェーン機構などが用いられている。しかしながら、上記のように、パワーシリンダ機構を用いると洗浄装置が大型化する。また、ラック・ピニオン機構やチェーン機構は、駆動部品から発塵するという問題がある。洗浄槽に発塵体を配置すると、洗浄液に汚染物質が混入するため、洗浄精度が低下する。
【0009】
また、パワーシリンダ機構、ラック・ピニオン機構、チェーンの巻き上げおよび巻き下げによって昇降台を昇降させるチェーン機構、等は本来グリスなどの潤滑剤で可動部分の動作を滑らかにする必要があるが、フッ素系溶剤、塩素系溶剤、臭素系溶剤、アルコール類、グリコールエーテル類、炭化水素系溶剤、等は概ね高脱脂溶剤であるため、短時間の内に脱脂され、動きが硬くなる、摩耗が早く進む、発塵する、などという不都合が生じる。また、グリス等の潤滑剤を塗布すればする程に、それらの飛散によって洗浄槽内が汚染され、洗浄精度を低下させるという問題がある。
【0010】
また、1槽式の洗浄装置では、ワークを入れた洗浄容器を浸漬槽から上方に移動させながら洗浄を行っており、洗浄容器を昇降させる昇降機構は、ワークを洗浄槽に出し入れする開口部をまたいで設けられていることが多い。そのため、開口部を塞ぐ蓋や扉が昇降機構と干渉するおそれがあるので、洗浄中に洗浄槽の開口部を密閉することが困難である。洗浄槽を密閉できないと、揮発や飛散による洗浄液の消耗量が多くなり、洗浄装置のランニングコストが大きくなる。また、開口部から洗浄槽に汚染物質が侵入し、洗浄精度が低下するおそれがある。
【0011】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、浸漬洗浄および蒸気洗浄を行う洗浄装置の小型化を図るとともに、洗浄液の消耗を抑制し、洗浄精度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明は、洗浄容器に入れたワークを洗浄液によって洗浄する洗浄装置であって、底部に洗浄液が貯留される浸漬槽が設けられ、上端に前記洗浄容器を出し入れするワーク投入口が設けられた洗浄槽と、前記ワーク投入口の上方の待機位置と前記浸漬槽内の浸漬洗浄位置との間で前記洗浄容器を昇降させる昇降機構と、前記ワーク投入口を密閉する密閉位置、および、前記ワーク投入口を開放する開放位置に移動して前記ワーク投入口を開閉する可動蓋と、前記洗浄槽に前記洗浄液の蒸気を供給する蒸気発生槽と、前記洗浄液の蒸気を冷却して液化させ回収する洗浄液回収機構と、を有し、前記昇降機構は、前記洗浄容器を載せる昇降台と、前記昇降台を上下方向に案内するガイド機構と、前記昇降台に連結される金属製の昇降ベルトと、前記昇降ベルトを巻き取るリールと、前記リールを回転させるモータと、を備え、前記昇降台は、前記洗浄容器よりも下方に延びる脚部を備え、前記脚部の下端に前記昇降ベルトの一端が固定され、前記昇降ベルトの他端は前記リールに固定され、前記昇降台に乗せた前記洗浄容器が前記待機位置に上昇したとき、前記昇降台の前記下端に固定された前記昇降ベルトの一端は前記洗浄槽
の内側に位置し、前記昇降ベルトおよび前記リールの全体が、前記洗浄槽の内部に配置され、前記洗浄槽の内部で前記昇降ベルトの巻き取りおよび繰り出しが行われることにより、前記可動蓋が前記ワーク投入口を開閉する際に前記可動蓋と前記昇降機構とが干渉しないことを特徴とする。
【0013】
本発明の洗浄装置では、洗浄槽の上端からワークを入れた洗浄容器を洗浄槽に投入して昇降させることにより、洗浄槽の底部において浸漬洗浄を行い、浸漬槽の液面よりも上方において蒸気洗浄を行うことができる。洗浄容器を昇降させる昇降機構は、駆動部品である昇降ベルトおよびリールを洗浄槽の内部に収容できる。従って、ワーク投入口の上方に大型の構造体を設ける必要がないので、洗浄装置を小型化できる。また、ワーク投入口を開閉するときに可動蓋と昇降機構とが干渉しないので、ワーク投入口を密閉しやすい。従って、洗浄槽の密閉性を高めることができるので、気化や飛散による洗浄液の消耗量を少なくすることができる。また、金属製の昇降ベルトは無発塵体であるため、洗浄液への塵等の汚染物質の混入を少なくすることができる。従って、洗浄精度を向上させることができる。さらに、昇降ベルトは動きを円滑にするためのグリスを必要としないので、洗浄槽の内部において洗浄液によって脱脂されて動きが硬くなったり摩耗したりすることはなく、グリスの補給も必要ない。従って、円滑に昇降させることができ、メンテナンスの負担が少なく、装置の寿命も長くなる。また、グリスによる洗浄液の汚染がないので、洗浄精度が向上する。
【0014】
本発明において、前記洗浄槽は、前記リールを収容するリール収容部を備え、前記リールの中心に配置されるシャフトは、前記リール収容部の側壁に設けられた軸受け部に通されて前記洗浄槽の外部へ延びており、前記シャフトと前記軸受け部との隙間は、シール部材によって密閉され、前記モータは前記洗浄槽の外部に配置され、前記シャフトを介して
前記リールを回転させることが好ましい。このようにすると、モータを洗浄槽の外部に配置できる。また、シャフトと軸受け部との隙間を密閉することにより、洗浄液の消耗を少なくすることができる。
【0015】
本発明において、前記密閉位置、および、前記開放位置に前記可動蓋をスライドさせるシリンダを備え、前記ワーク投入口を囲む縁部と前記可動蓋との隙間を封止する封止部材を備えることが好ましい。駆動源としてシリンダを用いることにより、発塵を少なくすることができる。また、部品点数を少なくでき、構造を簡素化できる。さらに、ワーク投入口の密閉性を高めることができる。従って、ワーク投入口から外部に漏れる洗浄液を少なくすることができるので、洗浄液の消耗量を減らすことができる。
【0016】
本発明において、前記洗浄液は、フッ素系溶剤またはアルコール類である
【0017】
本発明は、洗浄容器に入れたワークを洗浄液によって洗浄する洗浄装置であって、底部に洗浄液が貯留される浸漬槽が設けられ、上端に前記洗浄容器を出し入れするワーク投入口が設けられた洗浄槽と、前記ワーク投入口の上方の待機位置と前記浸漬槽内の浸漬洗浄位置との間で前記洗浄容器を昇降させる昇降機構と、前記ワーク投入口を開閉する可動蓋と、前記洗浄槽に前記洗浄液の蒸気を供給する蒸気発生槽と、前記洗浄液の蒸気を冷却して液化させ回収する洗浄液回収機構と、を有し、前記昇降機構は、前記洗浄容器を載せる昇降台と、前記昇降台を上下方向に案内するガイド機構と、前記昇降台に連結される金属製の昇降ベルトと、前記昇降ベルトを巻き取るリールと、前記リールを回転させるモータと、を備え、前記昇降ベルトおよび前記リールは、前記洗浄槽の内部に配置され、前記洗浄液回収機構は、前記洗浄槽において前記洗浄液の蒸気を冷却して液化させる冷却管と、前記洗浄液を含む回収液から水分を分離する水分分離器と、を備え、前記水分分離器は、前記洗浄槽から前記回収液が流入する水分分離槽と、前記水分分離槽の液面よりも上に配置される冷却用ペルチェ素子と、を備える。このようにすると、熱負荷が大きい洗浄運転中は冷却管に冷媒を循環させて蒸気を液化・回収できるとともに、熱負荷が少ない運転停止中は、冷却用ペルチェ素子によって低温でピンポイント冷却を行って気化した洗浄液を液化・回収できる。低温で冷却することにより、水分分離槽の内部で液化が進んで蒸気濃度が薄くなると、洗浄槽の蒸気が水分分離槽に吸い寄せられてさらに液化が進む。すなわち、蒸気発生槽と浸漬槽では装置の周囲温度(例えば20℃)によって増減はあるが、一定の割合で洗浄液が気化する。方や、冷却用ペルチェ素子の表面温度はマイナスであるため、冷却用ペルチェ素子の周辺の蒸気濃度は洗浄槽の蒸気濃度よりも薄く保たれる。濃い蒸気は薄まろうとして冷却用ペルチェ素子周辺に移動する。従って、ピンポイント冷却で
も効率的に洗浄液を回収できる。よって、洗浄液の消耗を減らすことができ、消費電力も大幅に削減できるので、ランニングコストを削減できる。
【0018】
本発明において、前記水分分離槽は、前記洗浄槽から前記回収液が流入する第1槽と、比重により前記回収液から分離された前記洗浄液が前記第1槽の底部から流入する第2槽と、に仕切られており、前記冷却用ペルチェ素子は、前記第1槽に配置される。このようにすると、洗浄槽から流入する蒸気が冷却用ペルチェ素子に接触しやすいので、効率よく蒸気を液化できる。
【0019】
本発明は、洗浄容器に入れたワークを洗浄液によって洗浄する洗浄装置であって、底部に洗浄液が貯留される浸漬槽が設けられ、上端に前記洗浄容器を出し入れするワーク投入口が設けられた洗浄槽と、前記ワーク投入口の上方の待機位置と前記浸漬槽内の浸漬洗浄位置との間で前記洗浄容器を昇降させる昇降機構と、前記ワーク投入口を開閉する可動蓋と、前記洗浄槽に前記洗浄液の蒸気を供給する蒸気発生槽と、前記洗浄液の蒸気を冷却して液化させ回収する洗浄液回収機構と、前記洗浄容器が前記浸漬槽の液面よりも上の蒸気洗浄位置に停止しているとき、前記洗浄容器に入れたワークから流れ落ちる汚染液を前記蒸気発生槽へ流入させる汚染液回収機構と、を有し、前記昇降機構は、前記洗浄容器を載せる昇降台と、前記昇降台を上下方向に案内するガイド機構と、前記昇降台に連結される金属製の昇降ベルトと、前記昇降ベルトを巻き取るリールと、前記リールを回転させるモータと、を備え、前記昇降ベルトおよび前記リールは、前記洗浄槽の内部に配置され、前記汚染液回収機構は、前記洗浄容器を載せる昇降台に設けられた第1受け部材と、前記洗浄槽と前記蒸気発生槽とを連通させる蒸気供給口に配置される第2受け部材を備え、前記第1受け部材は、前記第2受け部材が配置される側に設けられた流出部を備え、前記第2受け部材は、前記第1受け部材よりも下方に配置される。このようにすると、浸漬槽へ汚染液が流入することを抑制できるので、浸漬槽内の洗浄液に混入する汚染物質を少なくすることができる。従って、洗浄精度を高めることができる。また、洗浄容器から垂れる汚染液を第1受け部材で受けて、蒸気供給口から蒸気発生槽へ回収できる。従って、浸漬槽へ汚染液が垂れることを抑制できる。
【0020】
本発明において、前記第1受け部材は、前記昇降台における前記洗浄容器の下方に配置される。このようにすると、洗浄容器から垂れる汚染液を第1受け部材で受けて、蒸気供給口から蒸気発生槽へ回収できる。従って、浸漬槽へ汚染液が垂れることを抑制できる。
【0021】
本発明において、前記昇降台は、前記洗浄容器を載せる枠部を備え、前記第1受け部材
は、前記枠部に固定された受け板であり、前記受け板は、前記第2受け部材が配置される側に向かうに従って下方へ向かう方向に傾斜している。このようにすると、洗浄容器の真下で汚染液を回収できる。また、汚染液が第2受け部材へ流れやすいので、受け板(第1受け部材)の上に汚染液が残留しにくい。従って、浸漬洗浄を行う際に受け板に残留した汚染液が浸漬槽内の洗浄液に混入することを回避できる。
【0022】
本発明において、前記第2受け部材は、前記流出部の下側に延びる垂れ液受け位置と、前記流出部の下側から退避した退避位置に移動可能であることが好ましい。例えば、前記第2受け部材は、支軸を中心として回転することにより、前記垂れ液受け位置と前記退避位置に移動する。あるいは、前記第2受け部材は、前記洗浄槽の側にスライドすることにより、前記退避位置から前記垂れ液受け位置に移動し、前記蒸気発生槽の側にスライドすることにより、前記垂れ液受け位置から前記退避位置に移動する。このように、第2受け部材を可動式にすれば、第1受け部材と上下に重なる位置に第2受け部材を配置できるので、第1受け部材から流出する汚染液をより確実に回収できる。従って、浸漬槽へ汚染液が流入することを抑制できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、洗浄槽の上端からワークを入れた洗浄容器を洗浄槽に投入して昇降させることにより、洗浄槽の底部において浸漬洗浄を行い、浸漬槽の液面よりも上方において蒸気洗浄を行うことができる。ワークを昇降させる昇降機構は、駆動部品である昇降ベルトおよびリールを洗浄槽の内部に収容できる。従って、ワーク投入口の上方に大型の構造体を設ける必要がないので、洗浄装置を小型化できる。また、ワーク投入口を開閉するときに可動蓋と昇降機構とが干渉しないので、ワーク投入口を密閉しやすい。従って、洗浄槽の密閉性を高めることができるので、気化や飛散による洗浄液の消耗量を少なくすることができる。また、金属製の昇降ベルトは無発塵体であるため、洗浄液への塵等の汚染物質の混入を少なくすることができる。従って、洗浄精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明を適用した洗浄装置の配管系統図である。
図2】洗浄装置をYZ面で切断した断面構成を示す説明図である。
図3】洗浄装置をXZ面で切断した断面構成を示す説明図である。
図4】昇降台、昇降ベルト、およびリールの説明図である。
図5】昇降台およびガイド機構の斜視図である。
図6】汚染液回収機構の説明図である。
図7】汚染液回収機構の斜視図である。
図8】第2受け部材の変形例の説明図である。
図9】洗浄装置によるワーク洗浄動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した洗浄装置の実施形態を説明する。図1は、本発明を適用した洗浄装置1の配管系統図である。洗浄装置1は、洗浄槽2に投入したワークWを洗浄液に浸漬して超音波洗浄を行い、洗浄液から引き上げて蒸気洗浄を行い、液切乾燥を行ったのちに洗浄槽から取り出す工程を自動運転により行う自動昇降式洗浄装置である。
【0026】
(全体構成)
図1に示すように、洗浄装置1は、縦長の洗浄槽2と、洗浄槽2に洗浄液の蒸気を供給する蒸気発生槽3と、洗浄液の蒸気を冷却して液化させ回収する洗浄液回収機構4を備える。洗浄液回収機構4は、後述するように、液化した回収液を空気中の水分が結露した結露水と洗浄液とに分離する水分分離器40を備える。
【0027】
洗浄槽2の底部には、洗浄液を貯留する浸漬槽21が設けられている。浸漬槽21の底部には、超音波振動子22およびヒータ23が配置される。洗浄槽2は、浸漬槽21の上方に設けられた蒸気洗浄領域24、および、蒸気洗浄領域24の上方に設けられた液切乾燥領域25を備えている。液切乾燥領域25の上方には、洗浄槽2にワークWを出し入れするためのワーク投入口26が開口している。
【0028】
ワークWは、洗浄容器10に収容され、洗浄容器10ごと洗浄槽2内で洗浄される。本形態では、洗浄容器10として直方体状の洗浄かご(バスケット)を用いる。なお、洗浄容器10は、洗浄液を通し且つワークWを保持できるものであればよく、本形態の洗浄容器10と同じ構成に限定されるものではない。
【0029】
図2図3は、図1の洗浄装置1の断面構成を示す説明図である。本細書において、XYZの3方向は互いに直交する方向である。Xは洗浄装置1の装置幅方向であり、Yは洗浄装置1の装置前後方向である。また、Zは上下方向である。図2は、洗浄装置1をYZ面で切断した断面構成を示しており、図3は、洗浄装置1をXZ面で切断した断面構成を示している。図2図3では、洗浄容器10のみを図示し、洗浄容器10に収容されたワークWの図示を省略している。
【0030】
図2図3に示すように、洗浄装置1は、洗浄槽2の上端に配置されてワーク投入口26を開閉する可動蓋5と、ワーク投入口26の上方で洗浄容器10を保持する洗浄容器保持機構6と、洗浄容器10を昇降させる昇降機構7を備える。
【0031】
昇降機構7は、洗浄槽2の底部の浸漬洗浄位置10Aと、洗浄槽2の上方の待機位置10Dとの間で洗浄容器10を昇降させる。また、昇降機構7は、浸漬洗浄位置10Aの上方の蒸気洗浄位置10B、および、蒸気洗浄位置10Bの上方の液切乾燥位置10Cにおいて洗浄容器10を一時停止させる。洗浄装置1は、洗浄容器10の上下移動のみで、浸漬洗浄、蒸気洗浄、および液切乾燥の3工程を行う。
【0032】
図2に示すように、洗浄装置1は、洗浄槽2、蒸気発生槽3、洗浄液回収機構4、可動蓋5、洗浄容器保持機構6、および昇降機構7を収容する筐体100を備える。筐体100の前面には、洗浄容器取り出し口101が設けられている。洗浄容器取り出し口101は、装置幅方向Xにスライド可能な蓋部材102によって開閉される。洗浄容器取り出し口101とワーク投入口26との間には、洗浄容器10を載せる支持ローラ103が配置される。支持ローラ103の上に洗浄容器10を載せて装置後方側にスライドさせることにより、洗浄容器10を洗浄槽2の上方に移動させる。
【0033】
(洗浄容器保持機構)
図3に示すように、洗浄容器保持機構6は、装置幅方向Xに開閉するバスケットハンガーであり、装置幅方向Xの一方側に配置される第1保持部61と、装置幅方向Xの他方側に配置される第2保持部62を備える。第1保持部61および第2保持部62は、それぞれ、装置前後方向Yに並ぶ複数のローラ63を備える。図3に示すように、洗浄容器保持機構6を開いた状態では、第1保持部61のローラ63と第2保持部62のローラ63の間隔が洗浄容器10の幅よりも大きいので、洗浄容器10は洗浄容器保持機構6に保持されない。
【0034】
洗浄容器保持機構6を閉じると、第1保持部61のローラ63と第2保持部62のローラ63の間隔が狭まる。洗浄容器保持機構6を閉じた状態で、支持ローラ103に乗せた洗浄容器10を装置後方側にスライドさせると、洗浄容器10の両側面に設けられたレール11がローラ63によって支持される。従って、洗浄容器10は、洗浄容器保持機構6
によって保持される。
【0035】
(蒸気発生槽)
図1図3に示すように、蒸気発生槽3には、洗浄液が貯留される。蒸気発生槽3の底部には、ヒータ31、32、33が配置される。蒸気発生槽3では、ヒータ31、32、33によって洗浄液を加熱し沸騰させて濃い蒸気を発生させる。本形態では、洗浄液として沸点が40~80℃の溶剤を用いる。なお、洗浄液の沸点は上記の温度に限定されるものではない。また、蒸気発生槽3に配置されるヒータの数は3に限定されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0036】
蒸気発生槽3で発生した濃い蒸気は、洗浄槽2の側壁に設けられた蒸気供給口34から洗浄槽2の蒸気洗浄領域24に供給される。本形態では、蒸気洗浄領域24に供給された濃い蒸気が、蒸気洗浄位置10Bに保持されたワークWの表面で凝縮して流れ落ちることによって蒸気洗浄を行う。また、蒸気発生槽3には、運転停止時に蒸気発生槽3内の洗浄液の気化を防止するための冷却管35(図1参照)が配置される。
【0037】
(洗浄液回収機構)
図1図2に示すように、洗浄液回収機構4は、水分分離器40と、洗浄槽2の液切乾燥領域25に配置される冷却管41(冷却器)と、回収液受け部42を備える。冷却管41は、洗浄槽2の内壁に配置され、ワークWを入れた洗浄容器10は、冷却管41の内周側を通って昇降する。回収液受け部42は、冷却管41の下方に配置され、洗浄槽2の内壁に沿って延びている。回収液受け部42に流れ落ちる回収液は、液化した洗浄液、および、空気中の水分が結露した結露水を含んでおり、水分分離器40に流入する。
【0038】
水分分離器40は、比重分離式であり、水分分離槽43と、水分分離槽43の底面との間に所定の隙間を開けた状態で、且つ、上端が液面よりも上方に突出する仕切り壁44を備える。水分分離槽43は、仕切り壁44によって第1槽40Aと第2槽40Bに区画される。第1槽40Aには、洗浄槽2の回収液受け部42から回収液が流入する。第1槽40Aでは、水と洗浄液の比重の違いによって回収液が2層に分離する。洗浄液は水よりも比重が大きいため、第2槽40Bには、仕切り壁44の下側を通って洗浄液だけが流入する。水と分離された洗浄液は、第2槽40Bから浸漬槽21に還流する。
【0039】
本形態では、洗浄液としてフッ素系溶剤、塩素系溶剤、臭素系溶剤などの水よりも比重の大きい洗浄液を用いることを想定しているので、上記の構成の水分分離器40を設置している。なお、洗浄液として炭化水素系溶剤を用いる場合には、水よりも洗浄液の方が比重が軽いので、第1槽の上部に浮いた洗浄液を第2槽に流入させるように、水分分離器40の構成を変更する。また、洗浄液が水と相溶の場合(例えば、グリコールエーテル類やアルコール類の場合)は、回収液は水分分離器40で分離されず、水分分離器40を通過するだけである。従って、水分分離器40を省略した構成を採用してもよい。
【0040】
水分分離槽43の内部には、冷却管45および冷却用ペルチェ素子46が配置される。冷却用ペルチェ素子46は、例えば、熱伝導性シリコンなどの接着部材を用いて、水分分離槽43に固定される。本形態では、冷却管45および冷却用ペルチェ素子46は、第1槽40Aに配置される。冷却用ペルチェ素子46は、冷却管45よりも下側に配置され、冷却管45よりも洗浄液の液面に近い位置に配置される。
【0041】
第1槽40Aには、回収液および洗浄槽2内の蒸気が流入する。第1槽40Aに流入した蒸気は、冷却管45もしくは冷却用ペルチェ素子46によって冷却され、液化して回収液に加わる。
【0042】
洗浄装置1の運転時には、水分分離器40に配置される冷却管45、および、洗浄槽2に配置される冷却管41に冷媒ガスを供給する。これにより、気化した洗浄液、および、洗浄槽2に供給された洗浄液の蒸気が液化され、水分分離器40において水分が分離され、洗浄液が回収される。一方、洗浄装置1の停止から一定時間の間は、蒸気発生槽3に配置される冷却管35に蒸気発生槽3内の液温度(沸点温度)よりも温度の低い浸漬槽21の洗浄液を還流させる。これにより、蒸気発生槽3内の蒸気は液化し、液の温度も低くなるため、洗浄装置1の停止中に気化した洗浄液や洗浄液の蒸気が外部へ漏れることが抑制される。浸漬槽21の洗浄液を冷却管35に還流させる時間帯は、冷凍機47から供給される冷媒ガスにより、熱交換器48を介して、蒸気発生槽3から浸漬槽21に戻る洗浄液を冷却することにより、浸漬槽21の液温を上昇させないようにする。
【0043】
なお、本形態では、以下に説明するように、水分分離器40に配置した冷却用ペルチェ素子46によって蒸気を液化・回収することができるので、冷却管35を省略し、浸漬槽21から蒸気発生槽3に洗浄液を還流させない構成を採用してもよい。
【0044】
本形態では、洗浄装置1の運転停止時には、運転停止中に気化した洗浄液が洗浄槽2の外部に漏れて洗浄液の消耗量が増大することを抑制するために、冷却用ペルチェ素子46によって、水分分離槽43において洗浄液の蒸気を液化して回収する。このとき、冷却管41、45には冷媒ガスを供給せず、冷却用ペルチェ素子46のみで蒸気を液化し、回収する。
【0045】
図1に示すように、洗浄装置1は、冷却用の冷媒ガスを供給する冷凍機47を備えている。本形態では、冷媒直冷方式の冷凍機47を用いており、冷凍機47は、-15℃前後の冷媒ガスを供給する。従って、洗浄槽2に配置される冷却管41の温度、および、水分分離器40に配置される冷却管45の温度は、-15℃前後である。
【0046】
なお、冷却管41、45を冷却する手段は、冷凍機47に限定されるものではない。例えば、冷凍機47の代わりに、冷水装置を用いることもできる。一般的な冷水装置を用いる場合は、供給される冷媒(冷却水)の温度は5~10℃である。従って、洗浄槽2に配置される冷却管41の温度、および、水分分離器40に配置される冷却管45の温度は、5~10℃である。あるいは、冷媒として不凍液を用いる場合には、冷媒ガスを用いる場合と同様に、-15℃程度に冷却することも可能である。
【0047】
冷却用ペルチェ素子46の温度は、冷却管41、45よりも低温である。冷却用ペルチェ素子46は、外気温よりも40℃程度低い温度に冷却されることが確認されている。従って、例えば、外気温が20℃の場合には、冷却用ペルチェ素子46の冷却温度は、-20℃程度になる。つまり、冷却用ペルチェ素子46を用いることにより、冷却管41、45よりも低い温度で蒸気を液化させることができる。
【0048】
冷却温度が低い箇所では、液化が効率的に進むために洗浄液の蒸気濃度が薄くなる。上記のように、冷却用ペルチェ素子46は冷却温度が低いため、冷却用ペルチェ素子46が配置された水分分離槽43の内部では効率的に液化が進み、蒸気濃度が薄くなる。蒸気濃度が低い箇所には濃い蒸気が移動するため、洗浄槽2内の蒸気は、蒸気濃度が低い水分分離槽43に吸い寄せられる。従って、1つの冷却用ペルチェ素子46を水分分離槽43に配置するだけでも、効率的に気化した洗浄液を回収できる。
【0049】
洗浄装置1の運転中は、蒸気発生槽3のヒータ31、32、33によって洗浄液を加熱して蒸気を発生させているので、洗浄槽2の蒸気を液化し回収するための熱負荷が大きい。そこで、冷凍機47を稼働させ、冷却管41、45を用いて冷却する必要がある。
【0050】
一方、洗浄装置1の運転停止中は、ヒータ31、32、33は停止しており、熱負荷は小さい。そのため、冷凍機47を稼働させると消費電力が無駄になる。また、熱負荷の小さい状態での冷凍機47の運転は冷媒の液バックなどにつながり、コンプレッサーを破損させる可能性があり、避けるべきである。洗浄装置1の運転停止中は、運転中に発生する濃い蒸気でなく、気化により発生する薄い蒸気を液化して回収できればよいので、消費電力の小さい冷却用ペルチェ素子46でピンポイント冷却すれば十分である。冷凍機47を稼働させる場合の消費電力は1.5kW程度(但し、装置の大きさによる)であるのに対して、1個の冷却用ペルチェ素子46であれば消費電力は60W程度で済むので、大幅に消費電力を小さくすることができる。
【0051】
本形態では、冷却用ペルチェ素子46を水分分離器40に設置しているので、-20℃の低温に冷却することによって空気中の水分が結露して回収液に混入したとしても、回収液から水分を分離可能であり、何ら問題はない。冷却用ペルチェ素子46を洗浄槽2や蒸気発生槽3に取り付けた場合は、水分が液化して洗浄液に混入した時に除去することができない。洗浄槽2や蒸気発生槽3において水分を洗浄液から分離できないと、ヒータの加熱によって水と洗浄液の加水分解などが発生する可能性があるので、使用できないが、本形態ではそのような問題が発生しない。
【0052】
(可動蓋)
図2図3に示すように、可動蓋5は、可動蓋5の縁に取り付けられたガイドローラ51と、洗浄槽2の天板に設けられたガイド部材52によって構成される可動蓋ガイド機構により、装置前後方向Yにスライド可能に支持されている。可動蓋5の上方には、装置前後方向Yに可動蓋5をスライドさせるシリンダ54が配置される。
【0053】
シリンダ54は、ワーク投入口26を塞ぐ密閉位置5A、および、ワーク投入口26を開放する開放位置5Bに可動蓋5を移動させる。可動蓋5が密閉位置5Aに移動すると、ワーク投入口26の縁に配置されるパッキンなどの封止部材53によって可動蓋5とワーク投入口26の縁との隙間が封止され、ワーク投入口26が密閉される。ワーク投入口26を密閉することにより、気化した洗浄液が自然拡散により消耗することが抑制される。
【0054】
(昇降機構)
図2図3に示すように、昇降機構7は、洗浄容器10を載せる昇降台71と、昇降台71を上下方向Zに案内するガイド機構72と、昇降台71に連結される金属製の昇降ベルト73と、昇降ベルト73を巻き取るリール74と、リール74を回転させるモータ75と、昇降台71および洗浄容器10の昇降位置を検出するための昇降位置検出機構76を備える。本形態では、昇降台71はSUS製であり、昇降ベルト73はステンレスベルトである。従って、昇降台71および昇降ベルト73は洗浄液に対する耐食性が高い。また、昇降ベルト73は、無発塵体である。
【0055】
図4は、昇降台71、昇降ベルト73、およびリール74の説明図である。図5は、昇降台71およびガイド機構72の斜視図である。昇降台71は、洗浄容器10を載せる矩形の枠部711と、枠部711の装置後方側の端部から下方に延びる脚部712を備える。図5に示すように、枠部711の各辺には、洗浄容器ガイド713が固定されている。洗浄容器10は、洗浄容器ガイド713によって枠部711の中央に保持される。
【0056】
図4に示すように、昇降ベルト73の一端は、押さえ板731およびキャップボルト732を用いて脚部712の下端に固定される。昇降ベルト73の下端には、キャップボルト732を通すための複数の固定穴が形成されている。昇降ベルト73の他端は、押さえ具733およびキャップボルト734を用いて、リール74に固定される。昇降ベルト73をリール74に固定する箇所は、リール74の外周面に設けられた嵌合凹部741に押
さえ具733を固定することにより、嵌合凹部741の内面と押さえ具733との間に昇降ベルト73の端部を挟み込む構造になっている。これにより、リール74の外周面は円筒面になるので、昇降ベルト73の巻取りが可能である。
【0057】
図3図5に示すように、ガイド機構72は、昇降台71の装置幅方向Xの両側に配置される。ガイド機構72は、昇降台71の脚部712に回転可能に取り付けられた昇降ローラ721と、上下方向Zに延びる昇降ローラ用ガイド722を備える。昇降ローラ721は、昇降ローラ用ガイド722に収容され、昇降ローラ用ガイド722に沿って上下に移動する。従って、昇降ベルト73の巻取りおよび繰り出しを行うと、昇降台71がガイド機構72によって案内されて上下方向Zに移動する。
【0058】
本形態では、昇降台71、ガイド機構72、昇降ベルト73、およびリール74は洗浄槽2の内部に配置される。図2に示すように、リール74は、洗浄槽2の上端近傍に設けられたリール収容部27に配置される。昇降台71が洗浄槽2の底部まで下降しているとき、昇降ベルト73は、リール収容部27から洗浄槽2の底部まで延びている。リール74を回転させて昇降ベルト73を巻き取ることにより、昇降台71および洗浄容器10が上昇する。昇降台71が洗浄容器10を待機位置10Dまで上昇させたとき、昇降台71の下端に固定された昇降ベルト73の端部はワーク投入口26の下側(洗浄槽2の内側)に位置する。リール74を巻き取り時とは逆方向に回転させて昇降ベルト73を繰り出すことにより、昇降台71および洗浄容器10が下降する。
【0059】
図3に示すように、昇降機構7は、リール74の中心に通されてリール74と一体に回転するシャフト77を備える。シャフト77の両端部は、リール収容部27の装置幅方向Xの両側の側壁に設けられた軸受け部78に支持され、洗浄槽2の外部へ延びている。シャフト77と軸受け部78との隙間は、メカニカルシールなどのシール部材によって封止される。モータ75は、洗浄槽2の外部に配置されており、シャフト77を介してリール74を回転させる。
【0060】
昇降位置検出機構76は、シャフト77の端部に固定された第1スプロケット761、および、第1スプロケット761の下方に配置された第2スプロケット762に掛け渡された昇降位置検出用チェーン763と、フォトセンサ764を備える。本形態では、4個のフォトセンサ764が上下に配列される。フォトセンサ764の配置は、洗浄容器10および昇降台71の昇降位置に対応する。例えば、待機位置10D、液切乾燥位置10C、蒸気洗浄位置10B、および浸漬洗浄位置10Aの各位置に対応する位置にそれぞれフォトセンサ764を配置することにより、各位置に洗浄容器10が移動したことを検出できる。
【0061】
(汚染液回収機構)
図6は、汚染液回収機構8の説明図であり、図7は、汚染液回収機構8の斜視図である。洗浄装置1は、洗浄容器10が浸漬洗浄位置10Aまで下降する途中で、ワークWから垂れる汚染した洗浄液(以下、汚染液という)を回収する汚染液回収機構8を備える。浸漬洗浄を行う前の汚染したワークWに洗浄液の蒸気が付着して液化すると、汚染物質が多く含まれる汚染液になる。汚染液回収機構8は、ワークWから垂れる汚染液を蒸気発生槽3に回収して浸漬槽21の洗浄液に混入させないようにする。これにより、浸漬槽21への汚染物質混入を1/5~1/10程度に減らすことができる。蒸気発生槽3の洗浄液に汚染物質が混入しても、発生する蒸気には汚染物質が混入しないので、問題はない。
【0062】
図6図7に示すように、汚染液回収機構8は、洗浄容器10の下方に配置される第1受け部材81と、第1受け部材81から流出する汚染液を受ける第2受け部材82を備える。第1受け部材81は昇降台71に固定され、昇降台71および洗浄容器10と共に昇
降される。第2受け部材82は、洗浄槽2の側壁に設けられた蒸気供給口34の下端に配置される。
【0063】
第1受け部材81は、金属製の受け板であり、昇降台71の枠部711に固定される。第1受け部材81は、枠部711の内側に設けられた開口部を塞いでいる。従って、洗浄容器10から垂れる汚染液は、全て、第1受け部材81によって回収される。なお、図6に示す形態では、第1受け部材81(受け板)は、枠部711の内周側に配置されるが、枠部711の上側もしくは下側に第1受け部材81を配置することもできる。枠部711の上側に第1受け部材81(受け板)を配置する場合は、枠部711に固定される洗浄容器ガイド713と枠部711との間に上下方向の隙間を設けて、この隙間に第1受け部材81(受け板)を配置することができる。
【0064】
第1受け部材81は、第2受け部材82が配置される側に向かうに従って下方へ向かう方向に傾斜している。第1受け部材81は、例えば、図7に示す形状とすることができる。第1受け部材81の外周縁には、上方へ立ち上がる縁部811が設けられている。また、第1受け部材81は、第2受け部材82に向けて汚染液を流出させる流出部812を備える。図6に示すように、流出部812は、第2受け部材82側の端部に設けられており、第2受け部材82と上下に重なる。
【0065】
第2受け部材82は、金属製の受け樋であり、蒸気供給口34の下端に沿って装置前後方向Yに延びている。第2受け部材82は、第1受け部材81の傾斜方向と同じ方向に傾斜しており、蒸気発生槽3が配置される側に向かうに従って下方へ向かう方向に傾斜している。第2受け部材82の第1受け部材81側の縁、および、装置前後方向Yの両側の縁には、上方に立ち上がる縁部821が設けられている。従って、第2受け部材82の上に流れ落ちた汚染液は、洗浄槽2に流れ落ちることはなく、蒸気発生槽3に流れ落ちる。
【0066】
第2受け部材82は、装置幅方向Xにスライド可能である。第2受け部材82は、第1受け部材81の流出部812の下方に突出した垂れ液受け位置82A、および、流出部812の下方から蒸気発生槽3の側に退避した退避位置82Bに移動可能である。昇降台71および洗浄容器10を浸漬洗浄位置10Aまで下降させるときには、第2受け部材82を退避位置82Bにスライドさせることにより、昇降台71に固定された第1受け部材81と第2受け部材82との干渉を回避する。
【0067】
図8は、第2受け部材82の変形例の説明図である。図8(a)は、変形例1の第2受け部材82の説明図であり、図8(b)は、変形例2の第2受け部材82の説明図である。変形例1の第2受け部材82は、上下方向に延びる支軸822を中心として回転することにより、垂れ液受け位置82Aと退避位置82Bに移動する。従って、図6図7に示した形態と同様に、第1受け部材81から流出する汚染液を受けて蒸気発生槽3に流すことができる。また、昇降台71が昇降する際に、第1受け部材81と第2受け部材82との干渉を回避することができる。
【0068】
変形例2の第2受け部材82は、固定式である。変形例2では、第1受け部材81と第2受け部材82との干渉を回避するために、第2受け部材82は、第1受け部材81の流出部812の先端よりも蒸気発生槽3側に配置されており、第1受け部材81の流出部812の先端と、第2受け部材82との間には、隙間Sが設けられている。従って、昇降台71が昇降する際に、第1受け部材81と第2受け部材82との干渉を回避することができる。また、隙間Sから垂れ液が浸漬槽21に落ちるおそれはあるものの、隙間Sは狭いため、大部分の汚染液を第2受け部材82で受けて回収することができる。
【0069】
(洗浄装置の動作)
図9は、洗浄装置1によるワーク洗浄動作のフローチャートである。洗浄装置1は、図9のワーク洗浄動作を自動制御によって行う。洗浄装置1が停止している間は、洗浄槽2は、可動蓋5によってワーク投入口26が密閉されている。また、昇降台71は、可動蓋5の下側で停止している。ワーク洗浄動作をスタートする前に、閉じた状態の洗浄容器保持機構6(バスケットハンガー)に洗浄容器10を保持させる。
【0070】
洗浄容器10を洗浄容器保持機構6にセットした状態で、操作パネル(図示せず)に設けられた洗浄スタートボタンを押して、ワーク洗浄動作(ステップST1~ST14)を開始する。ステップST1では、可動蓋5を開く。具体的には、シリンダ54を駆動して可動蓋5を開放位置5Bに移動させる。これにより、ワーク投入口26が開放される。
【0071】
ステップST2では、昇降台71を上昇させて洗浄容器10を待機位置10Dに保持する。具体的には、昇降ベルト73を巻き取って可動蓋5の下側で停止していた昇降台71を上昇させ、洗浄容器10が洗浄容器保持機構6からわずかに浮いた状態になるまで持ち上げて停止する。これにより、洗浄容器10は待機位置10Dに保持される。
【0072】
ステップST3では、洗浄容器保持機構6を開く。これにより、洗浄容器10の側面に設けられたレール11の下から洗浄容器保持機構6のローラ63が退避するので、洗浄容器10を下降させることができるようになる。
【0073】
ステップST4では、昇降台71を下降させて洗浄容器10を洗浄槽2に投入する。続いて、ステップST5では、可動蓋5を閉じる。具体的には、洗浄容器10が液切乾燥位置10Cを通過した直後にシリンダ54を駆動し、可動蓋5を密閉位置5Aに移動させる。これにより、ワーク投入口26が密閉される。
【0074】
ステップST6では、洗浄容器10を蒸気洗浄位置10Bで所定時間(例えば、20~30秒)一時停止させる。このとき、洗浄槽2の蒸気洗浄領域24には、洗浄液の蒸気が供給されている。洗浄容器10が蒸気洗浄位置10Bで一時停止している間は、洗浄容器10内のワークWから垂れる汚染液を回収して蒸気発生槽3に流入させる。
【0075】
ステップST7では、浸漬洗浄を行う。具体的には、昇降台71をさらに下降させ、洗浄容器10を浸漬洗浄位置10Aで停止させて、超音波洗浄を所定時間行う。
【0076】
ステップST8では、蒸気洗浄を行う。具体的には、昇降台71を上昇させ、洗浄容器10を蒸気洗浄位置10Bで所定時間停止させる。このとき、蒸気発生槽3からは、濃い蒸気が蒸気洗浄領域24に供給されているので、蒸気洗浄が行われる。
【0077】
ステップST9では、液切乾燥を行う。具体的には、昇降台71をさらに上昇させ、洗浄容器10を液切乾燥位置10Cで所定時間停止させる。液切乾燥位置10CでワークWを乾燥させている間、洗浄槽2に配置される冷却管41、および、水分分離器40に配置される冷却管45には、冷媒ガスが供給されている。これにより、洗浄液の蒸気が液化され、回収されて循環する。
【0078】
ステップST10では、ワークWを洗浄槽2から取り出すために可動蓋5を開く。具体的には、シリンダ54を駆動して可動蓋5を開放位置5Bに移動させてワーク投入口26を開放する。続いて、ステップST11では、昇降台71を上昇させ、洗浄容器10を待機位置10Dまで上昇させて停止する。
【0079】
ステップST12では、洗浄容器保持機構6を閉じる。次に、ステップST13では、昇降台71を下降させ、可動蓋5の下側で停止させる。このとき、洗浄容器10は閉じた
状態の洗浄容器保持機構6によって待機位置10Dに保持されているので、昇降台71だけが下降する。続いて、ステップST14では、可動蓋5を閉じる。具体的には、シリンダ54を駆動して可動蓋5を密閉位置5Aに移動させ、ワーク投入口26を密閉する。以上により、1回のワーク洗浄動作が終了する。
【0080】
本形態では、1回のワーク洗浄動作は、5~6分程度である。そのうち、可動蓋5が開いている時間は、50~60秒程度である。また、可動蓋5が閉じている間は、ワーク投入口26が密閉されている。従って、気化した洗浄液が外部へ漏れたり外部へ飛散する量が大幅に少なくなっている。
【0081】
(本形態の主な作用効果)
以上のように、本形態の洗浄装置1は、洗浄容器10に入れたワークWを洗浄液によって洗浄する。洗浄装置1は、底部に洗浄液が貯留される浸漬槽21が設けられ、上端に洗浄容器10を出し入れするワーク投入口26が設けられた洗浄槽2と、ワーク投入口26の上方の待機位置10Dと浸漬槽21内の浸漬洗浄位置10Aとの間で洗浄容器10を昇降させる昇降機構7と、ワーク投入口26を開閉する可動蓋5と、洗浄槽2に洗浄液の蒸気を供給する蒸気発生槽3と、洗浄液の蒸気を冷却して液化させ回収する洗浄液回収機構4と、を有する。昇降機構7は、洗浄容器10を載せる昇降台71と、昇降台71を上下方向に案内するガイド機構72と、昇降台71に連結される金属製の昇降ベルト73と、昇降ベルト73を巻き取るリール74と、リール74を回転させるモータ75と、を備える。昇降ベルト73およびリール74は、洗浄槽2の内部に配置される。
【0082】
本形態の洗浄装置1では、ワークWを入れた洗浄容器10を洗浄槽2の上端から洗浄槽2に投入して、洗浄容器10の上下動のみで、浸漬洗浄および蒸気洗浄を行うことができる。ワークWを昇降させる昇降機構7は、昇降台71を金属製の昇降ベルト73に連結し、昇降ベルト73の巻取りおよび繰り出しを行うことによって昇降台71および洗浄容器10を昇降させる構造である。従って、駆動部品である昇降ベルト73およびリール74を洗浄槽2の内部に収容できるので、ワーク投入口26の上方に大型の構造体を設ける必要がない。従って、洗浄装置1を小型化できる。また、昇降ベルト73は昇降台71の下端に連結されていて洗浄槽2の内部で巻き取りおよび繰り出しが行われる。従って、ワーク投入口26を開閉するときに可動蓋5と昇降機構7とが干渉しないので、ワーク投入口26を密閉しやすい。従って、洗浄槽2の密閉性を高めることができるので、気化や飛散による洗浄液の消耗量を減らすことができる。また、金属製の昇降ベルト73は無発塵体であるので、洗浄液への塵などの汚染物質の混入を少なくすることができる。従って、洗浄精度を向上させることができる。また、グリスが不要であるため、洗浄液によって脱脂されることによる不具合(動きが硬くなる、摩耗する、等)がない。従って、円滑に昇降させることができ、耐久性が向上する。また、グリスの補給が必要ないので、メンテナンスの負担が少ない。さらに、グリスによる洗浄液の汚染がないので、洗浄精度が向上する。
【0083】
本形態では、洗浄槽2は、リール74を収容するリール収容部27を備える。リール74の中心に配置されるシャフト77は、リール収容部27の側壁に設けられた軸受け部78に通されて洗浄槽2の外部へ延びており、シャフト77と軸受け部78との隙間は、シール部材によって密閉される。モータ75は洗浄槽2の外部に配置され、シャフト77を介してリール74を回転させる。従って、モータ75を洗浄槽2の外部に配置できるので、洗浄液によってモータ75が悪影響を受けることを防止できる。また、シャフト77と軸受け部78との隙間から洗浄液が外部に漏れることを防止できるので、洗浄液の消耗が少ない。
【0084】
本形態では、ワーク投入口26を塞ぐ密閉位置5A、および、ワーク投入口26を開放
する開放位置5Bに可動蓋5をスライドさせるシリンダ54を備える。駆動部材としてシリンダ54を用いることにより、可動蓋5の開閉に伴う発塵を少なくできる。また、部品点数を少なくでき、構造を簡素化できる。
【0085】
本形態では、可動蓋5が密閉位置5Aに移動したときにワーク投入口26を囲む縁部と可動蓋5との隙間を封止する封止部材53を備えているので、ワーク投入口26の密閉性を高めることができる。これにより、ワーク投入口26から外部に漏れる洗浄液を少なくすることができるので、洗浄液の消耗量を減らすことができる。
【0086】
本形態では、洗浄液回収機構4は、洗浄槽2において洗浄液の蒸気を冷却して液化させる冷却管41(冷却器)と、洗浄液を含む回収液から水分を分離する水分分離器40と、を備える。水分分離器40は、洗浄槽2から回収液が流入する水分分離槽43と、水分分離槽43における回収液の液面よりも上に配置される冷却用ペルチェ素子46と、を備える。従って、熱負荷が大きい洗浄運転中は冷凍機47を稼働して冷却管41、45によって蒸気を液化・回収できるとともに、熱負荷が少ない運転停止中は、冷却用ペルチェ素子46によって低温でピンポイント冷却を行って気化した洗浄液を液化・回収できる。低温で冷却することにより、水分分離槽43の内部で液化が進んで蒸気濃度が薄くなると、洗浄槽2の蒸気が水分分離槽43に吸い寄せられてさらに液化が進む。従って、ピンポイント冷却でも効率的に洗浄液を回収できる。よって、洗浄液の消耗を減らすことができ、消費電力も大幅に削減できるので、ランニングコストを削減できる。
【0087】
本形態では、水分分離槽43は、洗浄槽2から回収液が流入する第1槽40Aと、比重により回収液から分離された洗浄液が第1槽40Aの底部から流入する第2槽40Bと、に仕切られており、冷却用ペルチェ素子46は、第1槽40Aに配置される。従って、洗浄槽2から流入する蒸気が冷却用ペルチェ素子46に接触しやすいので、効率よく蒸気を液化できる。
【0088】
本形態では、洗浄容器10が浸漬槽21の液面よりも上の蒸気洗浄位置10Bに停止しているとき、洗浄容器10に入れたワークWから流れ落ちる汚染液を蒸気発生槽3へ流入させる汚染液回収機構8を備える。従って、浸漬槽21へ汚染液が垂れることを抑制できるので、浸漬槽21内の洗浄液に混入する汚染物質を少なくすることができる。よって、洗浄精度を高めることができる。
【0089】
本形態では、汚染液回収機構8は、洗浄容器10を載せる昇降台71に設けられた第1受け部材81と、洗浄槽2と蒸気発生槽3とを連通させる蒸気供給口34に配置される第2受け部材82を備え、第1受け部材81は、第2受け部材82が配置される側に設けられた流出部812を備え、第2受け部材82は、第1受け部材81よりも下方に配置される。従って、洗浄容器10から垂れる汚染液を第1受け部材81で受けて、蒸気供給口34から蒸気発生槽3へ回収できる。従って、浸漬槽21へ汚染液が垂れることを抑制できる。
【0090】
本形態では、昇降台71は、洗浄容器10を載せる枠部711を備え、第1受け部材81は、枠部711に固定された受け板であり、第2受け部材82が配置される側に向かうに従って下方へ向かう方向に傾斜している。このようにすると、洗浄容器10の真下で汚染液を受けることができるので、多くの汚染液を回収できる。また、汚染液は第2受け部材82へ流れやすいので、受け板の上に汚染液が残留しにくい。従って、浸漬洗浄を行う際に受け板に残留した汚染液が浸漬槽21内の洗浄液に混入することを回避できる。
【0091】
本形態では、第2受け部材82は、流出部の下側に延びる垂れ液受け位置82Aと、流出部の下側から退避した退避位置82Bに移動可能である。第2受け部材82は、洗浄槽
2の側にスライドすることにより、退避位置82Bから垂れ液受け位置82Aに移動し、蒸気発生槽3の側にスライドすることにより、垂れ液受け位置82Aから退避位置82Bに移動する。このように、第2受け部材82を可動式にしたことにより、第1受け部材81から流出する汚染液をより多く回収できる。従って、浸漬槽21へ汚染液が垂れることを抑制できる。なお、第2受け部材82は、支軸822を中心として回転することにより、垂れ液受け位置82Aと退避位置82Bに移動する態様であってもよい。
【0092】
<本発明に包含されない発明>
上記形態は、本発明に包含されない以下の発明1、発明2を適用した実施形態である。以下に、発明1、発明2の構成、およびその解決課題と作用効果を説明する。
【0093】
<発明1:洗浄方法および洗浄装置>
発明1は、洗浄方法および洗浄装置の発明である。浸漬洗浄を行う洗浄装置では、洗浄液にワークWに付着していた汚染物質が混入するため、洗浄液の汚染物質の濃度が上昇し、汚染物質のワークWへの再付着などによる洗浄精度の低下が課題となっていた。そこで、浸漬槽内の洗浄液の汚染を抑制し、洗浄精度を向上させるという課題を解決するため、上記形態は、以下の構成を採用している。
【0094】
発明1を適用した洗浄方法は、底部に洗浄液が貯留される浸漬槽21が設けられ、上端にワークWを出し入れするワーク投入口26が設けられた洗浄槽2内でワークWを昇降させて洗浄する洗浄方法であって、ワーク投入口26から浸漬槽21にワークWを下降させる途中で、浸漬槽21の液面よりも上方の蒸気洗浄位置10BにワークWを一時停止させて、ワークWに洗浄液の蒸気を付着させ、ワークWから流れ落ちた汚染液を浸漬槽21とは別の容器に回収する垂れ液回収工程(ステップST6)と、浸漬槽21内の洗浄液にワークWを浸漬させて洗浄する浸漬洗浄工程(ステップST7)と、蒸気洗浄位置10BにワークWを引き上げて、洗浄液の蒸気によってワークWを洗浄する蒸気洗浄工程(ステップST8)と、蒸気洗浄位置によりも上方の液切乾燥位置10CにワークWを引き上げて、ワークWを乾燥させる液切乾燥工程(ステップST9)と、を行うことを特徴とする。
【0095】
次に、発明1を適用した洗浄装置1は、底部に洗浄液が貯留される浸漬槽21が設けられ、上端に洗浄容器10を出し入れするワーク投入口26が設けられた洗浄槽2と、ワーク投入口26の上方の待機位置10Dと浸漬槽21内の浸漬洗浄位置10Aとの間で洗浄容器10を昇降させる昇降機構7と、洗浄槽2に洗浄液の蒸気を供給する蒸気発生槽3と、洗浄液の蒸気を冷却して液化させ回収する洗浄液回収機構4と、洗浄容器10が浸漬槽21の液面よりも上の蒸気洗浄位置10Bに停止しているとき、洗浄容器10に入れたワークWから流れ落ちる汚染液を蒸気発生槽3へ流入させる汚染液回収機構8を備えることを特徴とする。
【0096】
発明1を適用した洗浄方法および洗浄装置1では、浸漬槽21にワークWを浸漬する前にプレ洗浄として短時間の蒸気洗浄を行い、プレ洗浄によって除去した汚染物質を浸漬槽21内の洗浄液に混入させないようにすることができる。従って、浸漬槽21に混入する汚染物質を少なくすることができるので、浸漬槽21内の洗浄液の汚染を抑制でき、汚染物質のワークWへの再付着を抑制できる。従って、洗浄精度を向上させることができる。
【0097】
発明1を適用した洗浄装置1において、汚染液回収機構8は、ワークWから流れ落ちた汚染液を蒸気発生槽3に回収する。蒸気発生槽3に汚染液を回収した場合、汚染した洗浄液を沸騰させて蒸気を発生させることになるが、蒸気には汚染物質は混入しないので、蒸気洗浄に影響はない。従って、別途回収容器を設ける必要がないので、装置構成を簡素化できる。なお、汚染液を蒸気発生槽3とは別の回収容器に回収する構成を採用してもよい。また、汚染液回収機構8の詳細な構成およびその作用効果は、既に説明した通りである
【0098】
さらに、発明1を適用した洗浄方法および洗浄装置1では、汚染液を回収するプレ洗浄と、浸漬洗浄後の仕上げ洗浄としての蒸気洗浄とが同一の蒸気洗浄位置10Bで、且つ、同一の蒸気発生槽3からの蒸気供給によって行われる。従って、プレ洗浄を行うために追加の機構を設ける必要がないので、装置構成を簡素化できる。また、ワークWを停止させる位置が増加しないので、昇降機構7の制御が複雑化しない。
【0099】
<発明2:洗浄装置>
発明2は、洗浄装置の発明である。蒸気洗浄を行う洗浄装置では、ヒータで洗浄液を加熱して発生させた蒸気によって蒸気洗浄を行った後、冷却管によって蒸気を液化・回収して、水分分離器によって水分を除去して浸漬槽に戻すことにより、洗浄液を循環させながらワークを洗浄している。しかしながら、冷却管に冷却水を供給する冷水装置や冷凍機の消費電力が大きいため、ランニングコストが大きい。また、冷却管に空気中の水分が凝縮・付着するので、装置の錆の原因になったり、洗浄液に水が混入して洗浄液の安定性を低下させるなどの問題がある。そこで、洗浄液の蒸気を液化・回収する際の消費電力を低減させて洗浄装置のランニングコストを低減させるという課題を解決するため、上記形態の洗浄装置1は、以下の構成を採用している。
【0100】
発明2を適用した洗浄装置1は、底部に洗浄液が貯留される浸漬槽21が設けられ、上端に洗浄容器10を出し入れするワーク投入口26が設けられた洗浄槽2と、ワーク投入口26の上方の待機位置10Dと浸漬槽21内の浸漬洗浄位置10Aとの間で洗浄容器10を昇降させる昇降機構7と、洗浄槽2に洗浄液の蒸気を供給する蒸気発生槽3と、洗浄液の蒸気を冷却して液化させ回収する洗浄液回収機構4と、を備え、洗浄液回収機構4は、洗浄槽2において洗浄液の蒸気を冷却して液化させる冷却管41(冷却器)と、洗浄液を含む回収液から水分を分離する水分分離器40と、を備える。水分分離器40は、洗浄槽2から回収液が流入する水分分離槽43と、水分分離槽43における回収液の液面よりも上に配置される冷却用ペルチェ素子46と、を備える。
【0101】
発明2を適用した洗浄装置1では、熱負荷が大きい洗浄運転中は冷凍機47を稼働して冷却管41、45によって蒸気を液化・回収できるとともに、熱負荷が少ない運転停止中は、冷却用ペルチェ素子46によって低温でピンポイント冷却を行って気化した洗浄液を液化・回収できる。低温で冷却することにより、水分分離槽43の内部で液化が進んで蒸気濃度が薄くなると、洗浄槽2の蒸気が水分分離槽43に吸い寄せられてさらに液化が進む。従って、ピンポイント冷却でも効率的に洗浄液を回収できる。よって、洗浄液の消耗を減らすことができ、消費電力も大幅に削減できるので、ランニングコストを削減できる。また、冷却用ペルチェ素子46を水分分離器40に設置しているので、低温に冷却することによって空気中の水分が結露して回収液に混入したとしても、回収液から水分を分離可能であり、何ら問題はない。冷却用ペルチェ素子46を洗浄槽2や蒸気発生槽3に取り付けた場合は、水分が液化して洗浄液に混入した時に除去することができない。洗浄槽2や蒸気発生槽3において水分を洗浄液から分離できないと、ヒータの加熱によって水と洗浄液の加水分解などが発生する可能性があるので、使用できないが、本発明ではそのような問題が発生しない。
【0102】
発明2を適用した洗浄装置1において、水分分離槽43は、洗浄槽2から回収液が流入する第1槽40Aと、比重により回収液から分離された洗浄液が第1槽40Aの底部から流入する第2槽40Bと、に仕切られており、冷却用ペルチェ素子46は、第1槽40Aに配置される。従って、洗浄槽2から流入する蒸気が冷却用ペルチェ素子46に接触しやすいので、効率よく蒸気を液化できる。
【0103】
発明2を適用した洗浄装置1において、冷却用ペルチェ素子46は、第1槽40Aにおける回収液の液面に近い位置に配置することが好ましい。例えば、第1槽40Aと第2槽40Bを仕切る仕切り壁44の上端よりも下側に配置されることが好ましい。液面の近くに冷却用ペルチェ素子46を配置することにより、水分分離槽43に蒸気を吸い寄せやすいので、効率よく洗浄液を回収できる。
【符号の説明】
【0104】
1…洗浄装置、2…洗浄槽、3…蒸気発生槽、4…洗浄液回収機構、5…可動蓋、5A…密閉位置、5B…開放位置、6…洗浄容器保持機構、7…昇降機構、8…汚染液回収機構、10…洗浄容器、10A…浸漬洗浄位置、10B…蒸気洗浄位置、10C…液切乾燥位置、10D…待機位置、11…レール、21…浸漬槽、22…超音波振動子、23…ヒータ、24…蒸気洗浄領域、25…液切乾燥領域、26…ワーク投入口、27…リール収容部、31、32、33…ヒータ、34…蒸気供給口、35…冷却管、40…水分分離器、40A…第1槽、40B…第2槽、41…冷却管、42…回収液受け部、43…水分分離槽、44…仕切り壁、45…冷却管、46…冷却用ペルチェ素子、47…冷凍機、48…熱交換器、51…ガイドローラ、52…ガイド部材、53…封止部材、54…シリンダ、61…第1保持部、62…第2保持部、63…ローラ、71…昇降台、72…ガイド機構、73…昇降ベルト、74…リール、75…モータ、76…昇降位置検出機構、77…シャフト、78…軸受け部、81…第1受け部材、82…第2受け部材、82A…垂れ液受け位置、82B…退避位置、100…筐体、101…洗浄容器取り出し口、102…蓋部材、103…支持ローラ、711…枠部、712…脚部、713…洗浄容器ガイド、721…昇降ローラ、722…昇降ローラ用ガイド、731…押さえ板、732…キャップボルト、733…押さえ具、734…キャップボルト、741…嵌合凹部、761…第1スプロケット、762…第2スプロケット、763…昇降位置検出用チェーン、764…フォトセンサ、811…縁部、812…流出部、821…縁部、822…支軸、S…隙間、W…ワーク、X…装置幅方向、Y…装置前後方向、Z…上下方向
図1
図2
図3
図4
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図6
図7
図8
図9