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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】土寄せ板
(51)【国際特許分類】
   A01B 35/04 20060101AFI20221107BHJP
   A01B 33/08 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
A01B35/04 A
A01B33/08 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021183260
(22)【出願日】2021-11-10
(62)【分割の表示】P 2020073314の分割
【原出願日】2015-04-30
(65)【公開番号】P2022017552
(43)【公開日】2022-01-25
【審査請求日】2021-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390010836
【氏名又は名称】小橋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】山中 誠
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 忠治
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-200174(JP,A)
【文献】特開2014-018156(JP,A)
【文献】特開平11-253001(JP,A)
【文献】実開昭54-097406(JP,U)
【文献】特開2012-200179(JP,A)
【文献】特開2012-191884(JP,A)
【文献】特開2007-222114(JP,A)
【文献】特開2011-087507(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0166321(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 33/00 - 35/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業爪を回転させることで土壌を耕し又は攪拌する作業機に装着される土寄せ板であって、
前記土寄せ板は、土を寄せる板状部を有し、
前記板状部は、前記作業機に装着された状態において、外側の側部が、前記作業機の進行方向上の水平面に対して鋭角をなし、
前記板状部の土寄せ面は、平面視において、下辺の内側及び外側の端部にそれぞれ直線状の切欠を有するとともに、前記内側の切欠と前記下辺とがつくる内角は、前記外側の切欠と前記下辺とがつくる内角に比べて大きい、土寄せ板。
【請求項2】
前記板状部は、前記作業機に装着された状態において、土寄せ作業を行う土寄せ面が、前記作業機の進行方向上の水平面に対して鋭角をなす、請求項1に記載の土寄せ板。
【請求項3】
前記板状部は、前記作業機に装着された状態において、土寄せ作業を行う土寄せ面が、前記作業機の進行方向上の鉛直面に対して鋭角をなす、請求項1または2に記載の土寄せ板。
【請求項4】
前記土寄せ板は、土寄せ作業を行う土寄せ面に凸部を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の土寄せ板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業機に関する。特に、トラクタの後部に装着されて圃場を耕うんする耕うん作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
このような耕うん作業機には、例えば、耕うん軸に取り付けられた複数の耕うん爪を回転させて圃場を耕す耕うんロータと、耕うんロータの後方に設けられ、耕うんされた土を均平にする整地体と、整地体の後部に設けられ、整地体に対して上下方向に回動可能に支持されて圃場表面に接するレベラとを有する代かき作業機がある。
【0003】
このような代かき作業機は、トラクタ(走行機)が通過した後の圃場表面を耕し均平化する作業を行うところ、作業領域となる圃場表面の土がトラクタのタイヤの通過によって押し出されることによって凹部(タイヤ跡)が形成され、土の偏りが生じる場合がある。このタイヤ跡による土の偏りによって、代かき作業機による均平作業の仕上がりが不十分になる場合がある。
【0004】
そこで、作業機の進行方向前側(走行機側)に土寄せ板が設けられた作業機が知られている。土寄せ板は、作業機から進行方向前側に向かって突出する板状の部材であって、走行機のタイヤ等の位置の後方に設置され、走行機のタイヤの通過等によって形成された圃場表面の凹部に土を埋め戻して(土を寄せて)土の偏りを緩和する。
【0005】
例えば、特許文献1において、トラクタのタイヤの通過によって形成される凹部に土を寄せる(埋め戻す)ための土寄せ板を備える代かき作業機が開示されている。特許文献1に開示された土寄せ板は、軸部51に対して板状部53が傾斜しており、かつ、板状部53の一方側の角部に切り欠き53cが形成され、平面視において上下方向が長手方向となる略長方形状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-200174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された土寄せ板では、土を押し流す量が不足し、タイヤ跡等の凹部に土を寄せる跡消し性能が十分ではないという問題があった。
【0008】
本発明は、そのような課題に鑑みてなされたものであり、タイヤ跡等の凹部に十分な量の土を寄せることができ、跡消し性能が向上した土寄せ板を備える作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態による作業機は、走行機体の後部に装着され、耕うんロータを回転させながら前記走行機体の前進走行に伴って進行して圃場を耕うんし、前記走行機体の通過により圃場表面に形成された凹部に土を寄せることが可能な土寄せ板が設けられた作業機であって、前記土寄せ板は、土を寄せる板状部を有し、前記板状部は、作業機に装着された状態において、外側の側部が、前記走行機体の進行方向上の水平面に対して鋭角をなすことを特徴とする。
【0010】
また、別の態様において、前記板状部は、作業機に装着された状態において、土寄せ作業を行う土寄せ面が、前記走行機体の進行方向上の水平面に対して鋭角をなすものでもよい。
【0011】
また、別の態様において、前記板状部は、作業機に装着された状態において、土寄せ作業を行う土寄せ面が、前記走行機体の進行方向上の鉛直面に対して鋭角をなすものでもよい。
【0012】
また、別の態様において、前記板状部は、作業機に装着された状態において、下辺の内側及び外側の端部にそれぞれ直線状の切欠が形成され、前記下辺の外側の端部に形成される切欠は、前記外側の側部を構成してもよい。
【0013】
また、別の態様において、前記土寄せ板は、前記板状部の上部に延設されたハンドル部を含むものでもよい。
【0014】
また、別の態様において、前記土寄せ板は、土寄せ作業を行う土寄せ面に凸部を有するものでもよい。
【0015】
また、別の態様において、前記土寄せ板は、前記凹部の左右に位置するように隣接して2枚設けられ、前記2枚の土寄せ板の土寄せ面が互いに向き合うものでもよい。
【0016】
また、別の態様において、前記耕うんロータは多数の作業爪を備え、前記多数の作業爪のうち少なくとも1つは、前記耕うんロータの回転軸に対して略直交する縦刃部がストレート形状であり、前記縦刃部から延設される横刃部が前記縦刃部に対して略直交する形状の土寄せ爪であり、前記土寄せ爪は、前記凹部の側方に設けられ、前記縦刃部から延設される横刃部が前記凹部側を向くように配置されてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る作業機によれば、タイヤ跡等の凹部に十分な量の土を寄せることができ、跡消し性能が向上した土寄せ板を備える作業機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る作業機の全体構成を示す上面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る作業機の全体構成を示す側面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る作業機に装着された状態における土寄せ部を示す部分説明図である。図3(a)は土寄せ部の上面図、図3(b)は図3(a)のA方向から見た平面図、図3(c)は図3(a)のC方向から見た平面図、図3(d)は図3(a)のB方向から見た平面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る作業機に装着される土寄せ板を示す図である。図4(a)は土寄せ板の側面図、図3(b)は土寄せ板の平面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る作業機に装着される土寄せ板を示す図である。図5(a)は土寄せ板の側面図、図5(b)は図5(a)のA方向から見た平面図、図5(c)は図5(a)のB方向から見た平面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る作業機に装着された状態における土寄せ部を示す部分説明図である。図6(a)は土寄せ板の上面図、図6(b)は図6(a)のA方向から見た平面図、図6(c)は図6(a)のC方向から見た平面図、図6(d)は図6(a)のB方向から見た平面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る作業機に装着される土寄せ板を示す図である。図7(a)は土寄せ板の側面図、図7(b)は土寄せ板の平面図である。
図8】本発明の一実施形態に係る作業機に装着される土寄せ板を示す図である。図8(a)は本発明の一実施形態における土寄せ板の側面図、図8(b)は図8(a)のA方向から見た平面図、図8(c)は図5(a)のB方向から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明に係る作業機について説明する。但し、本発明の作業機は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、説明の便宜上、上方(上部)又は下方(下部)という語句を用いて説明するが、上方(上部)又は下方(下部)はそれぞれ作業機の作業状態における向きを示す。また、同様に、前方(前側)又は後方(後側)という語句を用いて説明するが、前方(前側)は作業機に対する作業機を牽引する走行機の方向を示し、後方(後側)は走行機に対する作業機の方向を示す。
【0020】
〈実施形態1〉
図1から図4を用いて、本発明の実施形態1に係る作業機の全体構成及び土寄せ板の構成について説明する。本発明の実施形態1に係る作業機は、耕うん機や代かき機のように、例えばトラクタなどの走行機の後部に連結され、作業爪を回転させることで土壌を耕し又は撹拌する作業機であってもよい。実施形態1では、作業機の一例として代かき機を用いて本発明の構成を説明するが、本発明に係る作業機は耕うん機であってもよく、耕うん機又は代かき機以外の作業機であってもよい。特に、実施形態1では、作業機本体の両側に左右の作業体が折り畳み及び展開可能に設けられたものを例にして説明する。
【0021】
[作業機10の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る作業機の全体構成を示す上面図である。また、図2は、本発明の一実施形態に係る作業機の全体構成を示す側面図である。図1及び図2に示すように、実施形態1に係る作業機10は、機体5、作業部100、延長作業部200、レベラ拡張部510、ロータ部600、及び土寄せ部700を有する。
【0022】
機体5は、作業機の左右方向に延びる主フレーム3を含み、主フレーム3の左右両端部には伝動フレーム(チェーンケース)620と側部フレーム9が垂設され、伝動フレーム(チェーンケース)620と側部フレーム9との下部間には多数の作業爪610が取り付けられた耕うんロータ(図示せず)が回転自在に支持される。
【0023】
作業部100は、シールドカバー110、整地体120及びレベラ130を有する。シールドカバー110と整地体120とは、接続部122を回転移動の軸(回動軸)として接続されている。また、整地体120とレベラ130とは、接続部132を回動軸として接続されている。整地体120はロータ部600の作業によって飛散された飛散物が外部に放出されることを抑制する。また、整地体120及びレベラ130はロータ部600(図2参照)の作業によって耕うんされた土壌を均平にする。シールドカバー110はロータ部600の上方を覆う位置に設けられている。
【0024】
延長作業部200は作業部100の左右両端部に設けられ、作業部100の上方に折り畳まれた収納状態(図示せず)と、図1に示すように展開された作業状態とを切り替え可能に作業部100に接続されている。
【0025】
延長作業部200は、作業部100と同様に延長シールドカバー210、延長整地体220及び延長レベラ230を有する。延長シールドカバー210は、作業爪610(図2参照)を回転させるロータ部600のうち延長作業部200に対応して設けられた作業ロータの上方に設けられている。延長整地体220は、当該作業ロータの後方に設けられており、延長シールドカバー210に接続部222を軸として回動可能に接続されている。延長レベラ230は、上記作業ロータの後方に設けられており、延長整地体220に接続部232を軸として回動可能に接続されている。延長整地体220は整地体120と連動し、ロータ部600の作業によって飛散された飛散物が外部に放出されることを抑制する。また、延長レベラ230はレベラ130と連動し、ロータ部600の作業によって耕うんされた土壌を整地する。
【0026】
延長レベラ230の端部には、整地可能な幅をさらに広げることができるレベラ拡張部510が設けられている。レベラ拡張部510は延長レベラ230に回動可能に接続されている。また、レベラ拡張部510はレベラ130及び延長レベラ230の延長方向に対して傾斜した方向に延長している(長手を有している)。
【0027】
図2に示すように、ロータ部600には、伝動フレーム(チェーンケース)620と側部フレーム9の下部間に多数の作業爪610が取り付けられた耕うんロータ(図示せず)が回転自在に支持されている。耕うんロータに取り付けられた多数の作業爪610は、伝動フレーム(チェーンケース)620内の伝動機構を介して伝達された動力によって所定方向回動し、土壌に作用することで土壌を耕し又は撹拌する。なお、図2において、作業爪610が回動する範囲を回動範囲612として示した。
【0028】
図1に示すように、シールドカバー110の走行機側には土寄せ部700が設けられている。土寄せ部700は、土寄せ板710、土寄せ板取付部材720、支持部材730、土寄せ部取付部材740、グリップ750(図3参照)を有する。土寄せ部700は、作業機10の使用時において、走行機の車輪等の位置に合わせて設置され、轍等の凹部による土の偏りを緩和する。
【0029】
[土寄せ部700の全体構造]
土寄せ部700の構成について図3及び図4を用いて詳しく説明する。まず、図3を用いて土寄せ部700の全体構造について説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る作業機に装着された状態における土寄せ部を示す部分説明図である。図3(a)は土寄せ部の上面図、図3(b)は図3(a)のA方向から見た平面図、図3(c)は図3(a)のC方向から見た平面図、図3(d)は図3(a)のB方向から見た平面図である。
【0030】
図3(d)に示すように、土寄せ板710aは土を寄せる土寄せ面760aを有し、図3(a)及び図3(b)に示すように、土寄せ板取付部材720aは土寄せ面760aの裏面に傾斜して固定されている。
【0031】
また、図3(b)に示すように、土寄せ板取付部材720aの土寄せ板710aに固定されている側とは反対側に、支持部材730がボルト等によって取り付けられている。支持部材730には複数の孔733が上下方向に並んで設けられている。
【0032】
支持部材730の外側には土寄せ部取付部材740が嵌合されており、土寄せ部取付部材740にはロックピン(図示せず)を貫通するための孔744が設けられている。土寄せ部取付部材740に設けられた孔744は、土寄せ部取付部材740を支持部材730の上下方向に沿ってスライド移動することによって、支持部材730に設けられた複数の孔733の各位置と重なるように形成されている。土寄せ部取付部材740と支持部材730とは、土寄せ部取付部材740に設けられた孔744の位置を支持部材730に設けられた孔733のいずれかの位置に合わせて両孔ともロックピンで貫通することによって固定される。
【0033】
このように、支持部材730に設けられた複数の孔733のいずれの位置に合わせるかによって作業機に対する土寄せ板710aの上下方向の位置を変更することができ、圃場条件や目的に応じて土寄せ板710aが圃場表面の轍等に作用する深さを調節することができる。
【0034】
また、土寄せ部取付部740にはU字型ボルト741とナット742によって形成されるスライド孔748が設けられており、スライド孔748は作業機10のシールドカバーに設けられた角パイプ状のフレームの外周にスライド可能に嵌合されて作業機10に固定される。
【0035】
このように、土寄せ部取付部材740のスライド孔748は、シールドカバーに設けられた角パイプ状のフレームの外側にスライド可能に嵌合されるため、土寄せ部700aは、当該フレームに沿って作業機の幅方向(走行機の進行方向に対して直交する方向)に移動可能である。
【0036】
これにより、作業機の幅方向において土寄せ板710aの位置を変更することができるので、タイヤの位置やタイヤ幅が異なる様々な走行機体にも対応可能であり、各走行機体のタイヤに応じて適切な位置に土寄せ板710aを移動することができる。
【0037】
[土寄せ板の平面形状]
次に、図4を用いて土寄せ板の平面形状について説明する。図4は、図3に示す土寄せ部に含まれる土寄せ板を示す図である。図4(a)は土寄せ板の側面図、図4(b)は土寄せ板の平面図である。図4に示すように、土寄せ板710aは平面視において略矩形の薄い板状の部材である。図4(b)に示すように、土寄せ板710aにおいては、その全体が土を寄せる板状部711(711a)を構成している。
【0038】
土寄せ板710a(板状部711a)は、作業機に装着された状態において、下辺717aの内側(土流れの下流側)の端部に直線状の切欠C11が形成され、下辺717aの外側(土流れの上流側)の端部に直線状の切欠C12が形成されている。下辺717aの外側の端部に形成された直線状の切欠C12は、作業機に装着された状態において土寄せ板710aの外側側面(図3(b)参照)に相当する側部718aを構成する。
【0039】
土寄せ板710a(板状部711a)の下辺717aの内側端部に切欠C11を形成することによって、土寄せ板710aの内側(凹部側)への土の流れが発生しやすくなり、より効果的に土を寄せることができる。
【0040】
また、土寄せ板710aの平面形状において、上辺719と側部718aとがなす角度R11は、側部718aの傾斜角度を決定する。土寄せ板710aの平面形状における側部718aの傾斜角度は、後述するように、土寄せ板710aが作業機に取り付けられた状態において、側部718と走行機体の進行方向上の水平面とのなす角度が所定の角度になるように形成される。
【0041】
また、土寄せ板710aの平面形状において、土寄せ板710a(板状部711a)の全福W11が小さいと、土寄せ板710a(板状部711a)によって土を流す量が不足し、跡消し性能が悪化することが判明した。本発明にかかる作業機は、土寄せ板710a(板状部711a)の全福W11を、他の部材との干渉を回避しつつ、可能な限り大きくすることによって、十分な土の流量を確保し、跡消し性能を向上させることができる。具体的には、図4(b)の全福W11は300mm程度であることが好ましい。
【0042】
同様に、土寄せ板710aの平面形状において、土寄せ板710a(板状部711a)の下部福W12が小さいと、土寄せ板710a(板状部711a)の下方の土を流す量が不足し、跡消し性能が悪化することが判明した。本発明にかかる作業機は、土寄せ板710a(板状部711a)の下部福W12を、後述する側部718の措定の角度を確保しつつ、可能な限り大きくすることによって、下層の土の流量を確保し、跡消し性能を向上させることができる。
【0043】
[作業機に装着された状態における土寄せ板710aの構成]
再び図3(a)を用いて作業機に装着された状態における土寄せ板710aの構成について説明する。図3(a)を参照すると、土寄せ板710aは、作業機に装着された状態において、土寄せ面760aが、走行機体の進行方向(図3(a)に矢印Dで示す方向)上の鉛直面に対して鋭角をなす。具体的には、図3(a)において、土寄せ面760aと走行機体の進行方向上の鉛直面とのなす角度θ11が約45°となるように、土寄せ板取付部材720aと土寄せ板710aとが傾斜して固定されている。
【0044】
これに対して、土寄せ面760aと走行機体の進行方向上の鉛直面とのなす角度θ11が約90°である場合(土寄せ面760aが作業機の幅方向に対して略平行である場合)には、土寄せ面が土を前方に押し出すことによって土寄せ板の前方に土が滞留し、凹部に十分な量の土を寄せることができないことが判明した。
【0045】
本発明にかかる作業機のように、土寄せ面760aと走行機体の進行方向上の鉛直面とのなす角度θ11が鋭角である場合には、土寄せ面760aが土を内側(凹部側)に寄せる土の流れが発生するとともに、土寄せ面760aの裏面においても、土寄せ板710aに沿って土が内側(凹部側)に流れることが判明した。これにより、土寄せ板710aの土寄せ面760a側においてはもちろん、土寄せ面760aの裏面においても、内側(凹部側)に流れる土の流れを発生させることができ、より効果的に土寄せすることができる。トラクタの走行に伴う一般的な代かき作速度(2~5km/h)のとき、特にθ11が約45°である場合にこれらの効果がよりよく発揮されることが判明した。
【0046】
また、図3(b)を参照すると、土寄せ板710aは、作業機に装着された状態において、土寄せ面760aが、走行機体の進行方向(図3(b)に矢印Dで示す方向)上の水平面に対して鋭角をなす。具体的には、図3(b)において、土寄せ面760aと走行機体の進行方向上の水平面とのなす角度θ12が約60°となるように、土寄せ板取付部材720aと土寄せ板710aとが傾斜して固定されている。
【0047】
これに対して、土寄せ面760aと走行機体の進行方向上の水平面とのなす角度θ12が約90°である場合(土寄せ面760aが略鉛直である場合)には、土寄せ面が土を前方に押し出すことによって土寄せ板の前方に土が滞留し、凹部に十分な量の土を寄せることができないことが判明した。
【0048】
本発明にかかる作業機のように、土寄せ面760aと走行機体の進行方向上の水平面とのなす角度θ12が鋭角である場合には、土寄せ面760aが土を下方に押し流すことができるため、土を凹部の下方に寄せる土の流れを発生させることができる。
【0049】
これにより、土寄せ板710aの前方への土の押し出しを防止して跡消し性能を向上させると共に、圃場の稲わら等を土中にすき込むすき込み性能も向上させることができる。特にθ12が約60°である場合にはこれらの効果がよりよく発揮されることが判明した。
【0050】
さらに、図3(b)を参照すると、土寄せ板710aは、作業機に装着された状態において、下辺の外側の切欠を構成する側部718aが、走行機体の進行方向(図3(b)に矢印Dで示す方向)上の水平面に対して鋭角をなす。具体的には、図3(b)において、土寄せ板710aの側部718aと走行機体の進行方向上の水平面とのなす角度θ13が約50°となるように土寄せ板710aの平面形状が規定されている。
【0051】
これに対して、側部718aと走行機体の進行方向上の水平面とのなす角度θ13が約90°である場合(側部718aが略鉛直である場合)には、土寄せ板710aの下辺の外側角部において稲わら等が引きずられることにより、すき込み性能が不十分になることが判明した。
【0052】
本発明にかかる作業機のように、側部718aと走行機体の進行方向上の水平面とのなす角度θ13が鋭角である場合には、土寄せ板710aの下辺の外側角部における稲わら等の引きずりを軽減することができる。
【0053】
これにより、土寄せ板710aによる跡消し性能を向上させると共に、圃場の稲わら等を土中にすき込むすき込み性能も向上させることができる。特にθ13が約50°である場合にはこれらの効果がよりよく発揮されることが判明した。
【0054】
[土寄せ板とストレート爪(土寄せ爪)との組み合わせ]
さらに、土寄せ板710aとともに、耕うんロータに取り付けられる多数の作業爪610のうち、タイヤ跡等の凹部の側方に位置する作業爪610として、耕うん軸に対して略直交する縦刃部がストレート形状であり、縦刃部から延設される横刃部が縦刃部に対して略直交する形状のストレート爪(土寄せ爪)を用いてもよい。
【0055】
ストレート爪(図示せず)は、タイヤ跡等の凹部の側方に少なくとも1本設けられ、縦刃部から延設される横刃部が凹部側を向くように配置される。なお、ストレート爪がタイヤ跡等の凹部を挟むように左右両側方に配置される場合には、跡消し性能がより向上する。
【0056】
土寄せ板710aとともにストレート爪を用いることにより、土寄せ板710aによって圃場表面の土を凹部に埋め戻すために移動させることができるとともに、ストレート爪によって土寄せ板710aでは移動させることのできない圃場下層の土を移動させることができることによって、跡消し性能をより向上させることができる。
【0057】
[土寄せ板と作業爪との間の距離]
さらに、土寄せ板710aと作業爪610との間の距離(土寄せ板710aと作業爪610の回動範囲612との距離)が近すぎると、土寄せ板710aと作業爪610との間に土が滞留し、凹部に埋め戻される土の量が不十分になることが判明した。
【0058】
本発明に係る作業機では、土寄せ板710aと作業爪610との間の距離(土寄せ板710aと作業爪610の回動範囲612との距離)約50mmとすることによって、土寄せ板710aと作業爪610との間に土が滞留しない、良好な土流れを形成することができる。
【0059】
以上のように、本発明の実施形態1に係る作業機10によると、タイヤ跡等の凹部に十分な量の土を寄せることができ、跡消し性能が向上した土寄せ板を備える作業機を提供することができる。
【0060】
〈実施形態1の変形例〉
図5を用いて実施形態1で説明した作業機10の変形例について説明する。以下の変形例において、主に土寄せ板の形状が実施形態1と相違する。
【0061】
図5は、本発明の一実施形態に係る作業機に装着される土寄せ板を示す図である。図5(a)は土寄せ板の側面図、図5(b)は図5(a)のA方向から見た平面図、図5(c)は図5(a)のB方向から見た平面図である。
【0062】
図5(b)に示すように、土寄せ板710b(板状部711b)の表面には、土寄せ面760a側(図5(a)のA方向から見た平面側)に凸となる凸状部712bが形成されている。図5(c)に示すように、土寄せ板710b(板状部711b)の土寄せ面760aの裏面には、凸状部712bに対応する位置に沿って凹状部714bが形成されている。図5(b)において、凸状部712bは、土寄せ板710b(板状部711b)によって形成される土の流れる方向に沿って設けられている。
【0063】
その他の構成については実施形態1と同じであるため、繰り返しの説明は省略する。
【0064】
本実施形態にかかる作業機において、土寄せ板710b(板状部711b)の表面に、土の流れる方向に沿って設けられた凸状部712bが形成されることにより、土寄せ板710bによって形成される土の流れを補助することができるとともに、リブとして土寄せ板710b(板状部711b)の剛性を向上させることができる。
【0065】
〈実施形態2〉
図6から図7を用いて実施形態2について説明する。以下の実施形態2において、主に土寄せ板の形状が実施形態1と相違する。
【0066】
図6は、本発明の一実施形態に係る作業機に装着された状態における土寄せ部を示す部分説明図である。図6(a)は土寄せ板の上面図、図6(b)は図6(a)のA方向から見た平面図、図6(c)は図6(a)のC方向から見た平面図、図6(d)は図6(a)のB方向から見た平面図である。
【0067】
図7は、図6に示す土寄せ部に含まれる土寄せ板を示す図である。図7(a)は土寄せ板の側面図、図7(b)は土寄せ板の平面図である。
【0068】
図7(b)に示すように、実施形態2において、土寄せ板710cは、土を寄せる板状部711cと、板状部711cの上部に延設されたハンドル部713とを有する。ハンドル部713には、土寄せ板710cを把持するための孔715が形成されている。
【0069】
土寄せ板710cがハンドル部713を有することによって、土寄せ板710cの土寄せ板取付部材720cを支持部材730から取り外した場合における土寄せ板710cの取扱が容易になり便宜である。
【0070】
また、図7(b)に示す土寄せ板710cの板状部711cの形状において、実施形態1の土寄せ板710aとやや異なる部分もあるが、実施形態1の土寄せ板710aにおいて説明したC11,C12,R11、W11,W12は、それぞれ土寄せ板710cにおけるC21,C22,R21、W21,W22に相当するため、これらの構成に関する説明及び作用効果は実施形態1と同様である。
【0071】
また、図6に示す作業機に装着された状態における土寄せ部700cの構成においても、実施形態1の土寄せ部700aにおいて説明したθ11,θ12,θ13は、それぞれ土寄せ部700cにおけるθ21,θ22,θ23に相当するため、これらの構成に関する説明及び作用効果は実施形態1と同様である。
【0072】
なお図6では土寄せ部700cのうち土寄せ板710cと土寄せ板取付部材720cのみを図示したが、土寄せ部700cも実施形態1と同様に、支持部材730、土寄せ部取付部材740、グリップ750を有してもよい。
【0073】
その他の構成については実施形態1と同じであるため、繰り返しの説明は省略する。
【0074】
〈実施形態2の変形例〉
図8を用いて実施形態2で説明した作業機10の変形例について説明する。以下の変形例において、主に土寄せ板の形状が実施形態2と相違する。
【0075】
図8は、本発明の一実施形態に係る作業機に装着される土寄せ板を示す図である。図8(a)は本発明の一実施形態における土寄せ板の側面図、図8(b)は図8(a)のA方向から見た平面図、図8(c)は図5(a)のB方向から見た平面図である。
【0076】
図8(b)に示すように、土寄せ板710d(板状部711d)の表面には、土寄せ面760側(図8(a)のA方向から見た平面側)に凸となる凸状部712dが形成されている。図8(c)に示すように、土寄せ板710d(板状部711d)の土寄せ面760の裏面には、凸状部712dに対応する位置に沿って凹状部714dが形成されている。図5(b)において、凸状部712dは、土寄せ板710d(板状部711d)によって形成される土の流れる方向に沿って設けられている。
【0077】
その他の構成については実施形態2と同じであるため、繰り返しの説明は省略する。
【0078】
本実施形態にかかる作業機において、土寄せ板710d(板状部711d)の表面に、土の流れる方向に沿って設けられた凸状部712dが形成されることにより、土寄せ板710dによって形成される土の流れを補助することができるとともに、リブとして土寄せ板710d(板状部711d)の剛性を向上させることができる。
【0079】
以上、本発明について図面を参照しながら説明したが、本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0080】
10:作業機、 100:作業部、 110:シールドカバー、 120:整地体、 122、132:接続部、 130:レベラ、 200:延長作業部、 210:延長シールドカバー、 220:延長整地体、 230:延長レベラ、 510:レベラ拡張部、 700:土寄せ部、 710:土寄せ板、 711:板状部、 712:凸部、 713:ハンドル部、 714:凹部、 720:土寄せ板取付部材、 730:支持部材、 740:土寄せ部取付部材、 750:グリップ、 760:土寄せ面、 600:ロータ部、 610:作業爪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8