(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】疾患リスク評価方法、疾患リスク評価装置、及び疾患リスク評価プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20221107BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
G01N33/68
G01N33/50 T
(21)【出願番号】P 2022539503
(86)(22)【出願日】2021-07-27
(86)【国際出願番号】 JP2021027776
(87)【国際公開番号】W WO2022025069
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2022-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2020127010
(32)【優先日】2020-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520280324
【氏名又は名称】株式会社シンクメディカル
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】岡上 武
【審査官】白形 優依
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/019976(WO,A1)
【文献】特開2012-194170(JP,A)
【文献】国際公開第2020/096043(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/220833(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/043617(WO,A1)
【文献】POYNARD, T. et al.,The diagnostic value of biomarkers (Steato Test) for the prediction of liver steatosis,Comparative Hepatology,2005年12月23日,Vol.4, Article number: 10,pp.1-14
【文献】FIALOKE, S. et al.,Application of Machine Learning Methods to Predict Non-Alcoholic Steatohepatitis (NASH) in Non-Alcoh,AMIA Annual Symposium Proceedings Archive,2018年12月05日,pp.430-439
【文献】ATABAKI-PASDAR, N. et al.,Predicting and elucidating the etiology of fatty liver disease: A machine learning modeling and vali,PLOS MEDLINE,2020年06月19日,Vol.17, No.6,pp.1-27
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 - 33/98
G06N 5/00 - 5/04
G16H 50/00 - 50/80
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
医中誌WEB
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)属性データ、(b)身体所見データ、(c)血液検査データ、(d)医師の診断結果、を学習モデルとして、各種疾患のリスク度を推定する推定モデルを機械学習により生成する、推定モデル生成ステップと、
被験者の(a)属性データ、(b)身体所見データ、(c)血液検査データを取得するデータ取得ステップと、
前記推定モデル生成ステップにて生成された前記推定モデルに前記データ取得ステップにて取得したデータを入力し、前記被験者の各種疾患リスク度を推論する、リスク度評価ステップと、
を有し、
前記推定モデル生成ステップは、
前記(a)属性データ、前記(b)身体所見データおよび前記(c)血液検査データからインデックスデータを生成する前処理と、
前記(a)属性データ、前記(b)身体所見データおよび前記(c)血液検査データと、前記前処理にて算出したインデックスデータとを入力層として機械学習させる本処理と、
を含む、
疾患リスク評価方法。
【請求項2】
前記被験者の肝疾患に関するリスク度を推論する、請求項1に記載の疾患リスク評価方法。
【請求項3】
前記推定モデル生成ステップにおいて、(a)前記属性データとして性別及び年齢から選ばれた少なくとも1種を含むデータ、(b)前記身体所見データとして身長及び体重から選ばれた少なくとも1種を含むデータ、(c)前記血液検査データとして、AST(GOT)、ALT(GPT)、γGTP、PLT、T-Cho、TGからなる群より選ばれた少なくとも1種を含むデータ、(d)医師の診断結果、を利用して、非アルコール性脂肪肝のリスク度を推定する推定モデルを機械学習により生成し、
前記推定モデル生成ステップにて生成された前記推定モデルに、被験者の(a)性別及び年齢から選ばれた少なくとも1種を含む属性データ、(b)身長及び体重から選ばれた少なくとも1種を含む身体所見に係る身体所見データ、(c)AST(GOT)、ALT(GPT)、γGTP、PLT、T-Cho、TGからなる群より選ばれた少なくとも1種を含む血液検査データを入力し、前記被験者の非アルコール性脂肪肝のリスク度を推論する、
請求項2に記載の疾患リスク評価方法。
【請求項4】
前記推定モデル生成ステップにおいて、(a)前記属性データとして性別及び年齢から選ばれた少なくとも1種を含むデータ、(b)前記身体所見データとして身長及び体重から選ばれた少なくとも1種を含むデータ、(c)前記血液検査データとして、AST(GOT)、ALT(GPT)、γGTP、PLT、T-Cho、TGからなる群より選ばれた少なくとも1種、及び、4型コラーゲンを含むデータ、(d)医師の診断結果、を利用して、肝繊維化レベルを推定する推定モデルを機械学習により生成し、
前記推定モデル生成ステップにて生成された前記推定モデルに、被験者の(a)性別及び年齢から選ばれた少なくとも1種を含む属性データ、(b)身長及び体重から選ばれた少なくとも1種を含む身体所見に係る身体所見データ、(c)AST(GOT)、ALT(GPT)、γGTP、PLT、T-Cho、TGからなる群より選ばれた少なくとも1種、及び、4型コラーゲンを含む血液検査データ、を入力し、前記被験者の肝繊維化レベルを推論する、
請求項2に記載の疾患リスク評価方法。
【請求項5】
前記推定モデル生成ステップにおいて、(a)前記属性データとして性別及び年齢から選ばれた少なくとも1種を含むデータ、(b)前記身体所見データとして身長及び体重から選ばれた少なくとも1種を含むデータ、(c)前記血液検査データとして、AST(GOT)、ALT(GPT)、γGTP、PLT、T-Cho、TGからなる群より選ばれた少なくとも1種、及び、AIMを含むデータ、(d)医師の診断結果、を利用して、肝臓がんのリスク度を推定する推定モデルを機械学習により生成し、
前記推定モデル生成ステップにて生成された前記推定モデルに、被験者の(a)性別及び年齢から選ばれた少なくとも1種を含む属性データ、(b)身長及び体重から選ばれた少なくとも1種を含む身体所見に係る身体所見データ、(c)AST(GOT)、ALT(GPT)、γGTP、PLT、T-Cho、TGからなる群より選ばれた少なくとも1種、及び、AIMを含む血液検査データ、を入力し、前記被験者の肝臓がんのリスク度を推論する、
請求項2に記載の疾患リスク評価方法。
【請求項6】
(a)属性データ、(b)身体所見データ、(c)血液検査データ、(d)医師の診断結果、を学習モデルとして、各種疾患のリスク度を推定する推定モデルを機械学習により生成する、推定モデル生成部と、
被験者の(a)属性データ、(b)身体所見データ、(c)血液検査データを取得するデータ取得部と、
前記推定モデル生成部にて生成された前記推定モデルに
前記データ取得部にて取得したデータを入力し、前記被験者の各種疾患のリスク度を推論する、リスク度評価部と、
を有し、
前記推定モデル生成部は、
前記(a)属性データ、前記(b)身体所見データおよび前記(c)血液検査データからインデックスデータを生成する前処理と、
前記(a)属性データ、前記(b)身体所見データおよび前記(c)血液検査データと、前記前処理にて算出したインデックスデータとを入力層として機械学習させる本処理と、
を実行して前記推定モデルを生成できること、
を特徴とする、疾患リスク評価装置。
【請求項7】
請求項6に記載の疾患リスク評価装置の機能をコンピュ-タに実現させるための疾患リスク評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝疾患等の疾患リスク評価方法、疾患リスク評価装置、及び脂肪性肝疾患リスク評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非侵襲性であって、非アルコ-ル性脂肪肝疾患等の肝疾患の病態を判別する方法を提供することを目的として、下記特許文献1に開示されているような方法が提供されている。下記特許文献1の方法は、被験者から採取された血液に含まれる、マーカー分子の量を測定する工程と、同一の群の上記マーカー分子の量に基づいて算出される規格化スコアから指標値を求める工程と、指標値が、基準値よりも大きい場合に、被験者がNASHを罹患している可能性があると判定する工程と、を含むものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記特許文献1に開示されているような方法は、脂肪性肝疾患リスクを評価するための方法として有望なものであるが、例えば肝生検による確定診断の代替等として用いるためには、更なる精度の向上を図ることが望ましい。
【0005】
そこで本発明は、肝疾患等のリスクをより一層精度良く評価可能な疾患リスク評価方法、疾患リスク評価装置、及び疾患リスク評価プログラムの提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上述した課題を解決すべく提供される本発明の疾患リスク評価方法は、(a)属性データ、(b)身体所見データ、(c)血液検検査データ、(d)医師の診断結果、を学習モデルとして、各種疾患のリスク度を推定する推定モデルを機械学習により生成する、推定モデル生成ステップと、被験者の(a)属性データ、(b)身体所見データ、(c)血液検査データを取得するデータ取得ステップと、前記推定モデル生成ステップにて生成された前記推定モデルに前記データ取得ステップにて取得したデータを入力し、前記被験者の各種疾患リスク度を推論する、リスク度評価ステップと、を有する。
【0007】
本発明の疾患リスク評価方法は、推定モデル生成ステップにおいて、血液検査データに加えて、性別、年齢等の属性データ、身長、体重等の身体所見データ、医師の診断結果を学習モデルとし、機械学習によって各種疾患のリスク度を推定するための推定モデルを生成する。本発明の疾患リスク評価方法は、このような推定モデルに基づき、被験者の血液検査データだけでなく、性別、年齢等の属性データ、身長、体重等の身体所見データを加味して各種疾患のリスク度を推論、評価するため、従来技術の方法に比べて疾患のリスクをより一層精度良く評価できる。
【0008】
(2)上述した課題を解決すべく提供される本発明の疾患リスク評価装置は、(a)属性データ、(b)身体所見データ、(c)血液検査データ、(d)医師の診断結果、を学習モデルとして、各種疾患のリスク度を推定する推定モデルを機械学習により生成する、推定モデル生成部と、被験者の(a)属性データ、(b)身体所見データ、(c)血液検査データを取得するデータ取得部と、前記推定モデル生成ステップにて生成された前記推定モデルに前記データ取得ステップにて取得したデータを入力し、前記被験者の各種疾患のリスク度を推論する、リスク度評価部と、を有する。
【0009】
本発明の疾患リスク評価装置は、推定モデル生成部により、血液検査データに加えて、性別、年齢等の属性データ、身長、体重等の身体所見データ、医師の診断結果を学習モデルとし、機械学習によって各種疾患のリスク度を推定するための推定モデルを生成することができる。また、データ取得部が、被験者の血液検査データだけでなく、性別、年齢等の属性データ、身長、体重等の身体所見データを取得する。さらに、推定モデル生成部により生成された推定モデル、及びデータ取得部により取得された被験者のデータに基づき、リスク度評価部が各種疾患のリスク度を評価することができる。従って、本発明の疾患リスク評価装置によれば、従来技術の方法に比べて各種疾患のリスクをより一層精度良く評価できる。
【0010】
(3)上述した課題を解決すべく提供される本発明の疾患リスク評価プログラムは、上記(2)に係る疾患リスク評価装置の機能をコンピュ-タに実現させるためのものである。
【0011】
かかる構成によれば、コンピュ-タを用いて各種疾患のリスクを評価することが可能となり、評価精度や処理速度の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、脂肪性肝疾患等の疾患リスクをより一層精度良く評価可能な疾患リスク評価方法、肝疾患リスク評価装置、及び肝疾患リスク評価プログラムの提供を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】訓練と検証のためのNASH-Scopeの構造(NAFLDスクリ-ニングのためのAIシステム)を示す図である。
【
図2】トレ-ニングと検証のためのFibro-Scopeの構造(NASHにおける肝線維症の病期を同定するためのAIシステム)を示す図である。
【
図3】NASH-ScopeとFibro-Scopeで診断しえた進行NASHの一例である。
【
図4】Fibro-Scopeの診断精度と関連NIT6件との比較例を示す図である。
【
図5】発明を実施するための形態において参照される表1を示したものである。
【
図6】発明を実施するための形態において参照される表2を示したものである。
【
図7】発明を実施するための形態において参照される表3を示したものである。
【
図8】発明を実施するための形態において参照される表4を示したものである。
【
図9】発明を実施するための形態において参照される表5の一部を示したものである。
【
図10】発明を実施するための形態において参照される表5の一部を示したものである。
【
図11】発明を実施するための形態において参照される表5の一部を示したものである。
【
図12】発明を実施するための形態において参照される表6を示したものである。
【
図13】発明を実施するための形態において参照される表7を示したものである。
【
図14】本発明の一実施形態にかかる脂肪性肝疾患評価装置の構成を示したブロック図である。
【
図15】発明を実施するための形態に係る説明の第1ペ-ジを示したものである。
【
図16】発明を実施するための形態に係る説明の第2ペ-ジを示したものである。
【
図17】発明を実施するための形態に係る説明の第3ペ-ジを示したものである。
【
図18】発明を実施するための形態に係る説明の第4ペ-ジを示したものである。
【
図19】発明を実施するための形態に係る説明の第5ペ-ジを示したものである。
【
図20】発明を実施するための形態に係る説明の第6ペ-ジを示したものである。
【
図21】発明を実施するための形態に係る説明の第7ペ-ジを示したものである。
【
図22】発明を実施するための形態に係る説明の第8ペ-ジを示したものである。
【
図23】発明を実施するための形態に係る説明の第9ペ-ジを示したものである。
【
図24】発明を実施するための形態に係る説明の第10ペ-ジを示したものである。
【
図25】発明を実施するための形態に係る説明の第11ペ-ジを示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の疾患リスク評価方法は、(a)属性データ、(b)身体所見に係る身体所見データ、(c)血液検査データ、(d)医師の診断結果、を学習モデルとして、各種疾患のリスク度を推定する推定モデルを機械学習により生成する、推定モデル生成ステップと、被験者の(a)属性データ、(b)身体所見に係る身体所見データ、(c)血液検査データを取得するデータ取得ステップと、前記推定モデル生成ステップにて生成された前記推定モデルに前記データ取得ステップにて取得したデータを入力し、前記被験者の各種疾患リスク度を推論する、リスク度評価ステップと、を有する。
【0015】
推定モデル作成時に利用する属性データ、被験者の各種疾患リスク度を推論する際に利用する属性データとしては、性別、年齢の他、病歴や基礎疾患の有無、国籍等が挙げられる。推定モデル作成時に利用する身体所見データ、被験者の各種疾患リスク度を推論する際に利用する身体所見データとしては、身長や体重の他、血圧、胴囲、視力、聴力、体脂肪率、座高、頭囲、胸囲、超音波および磁気共鳴による硬度・エラストグラフィ、各種部位のX線画像やCT画像、MRI画像等が挙げられる。推定モデル作成時に利用する血液検査データ、被験者の各種疾患リスク度を推論する際に利用する血液検査データとしては、AST(GOTともいう)、ALT(GPTともいう)、γ-GTP、PLT、T-Cho、TG、Alb、HDL、LDL、HbA1c、ALP、ChE、4型コラーゲン(特にIV型コラーゲン・7S)、Total-AIM、Free-AIM等が挙げられる。
【0016】
本発明の疾患リスク評価方法においては、被験者の肝疾患に関するリスク度を推論することができる。具体的には、被験者の非アルコール性脂肪肝、肝繊維化(肝炎、肝硬変)、肝臓がん等の肝疾患に関するリスクレベルを推論することができる。
【0017】
本発明の疾患リスク評価方法、疾患リスク評価装置、疾患リスク評価プログラムは、非アルコール性脂肪肝のリスク度を評価する方法、評価装置、評価プログラムにも向けられる。具体的には、前記推定モデル生成ステップにおいて、(a)前記属性データとして性別及び年齢から選ばれた少なくとも1種(望ましくは全種)を含むデータ、(b)前記身体所見データとして身長及び体重から選ばれた少なくとも1種(望ましくは全種)を含むデータ、(c)前記血液検査データとして、AST(GOT)、ALT(GPT)、γGTP、PLT、T-Cho、TGからなる群より選ばれた少なくとも1種(望ましくは全種)、(d)医師の診断結果、を利用して、非アルコール性脂肪肝のリスク度を推定する推定モデルを機械学習により生成し、前記推定モデル生成ステップにて生成された前記推定モデルに、被験者の(a)性別及び年齢を含む属性データから選ばれた少なくとも1種(望ましくは全種)を含むデータ、(b)身長及び体重を含む身体所見に係る身体所見データから選ばれた少なくとも1種(望ましくは全種)を含むデータ、(c)AST(GOT)、ALT(GPT)、γGTP、PLT、T-Cho、TGからなる群より選ばれた少なくとも1種を含む血液検査データ(望ましくは全種)、を入力し、前記被験者の非アルコール性脂肪肝のリスク度を推論することができる。以下、非アルコール性脂肪肝のリスク度を評価する方法、評価装置、または評価プログラムをNASH-Scope(登録商標)と称することがある。
【0018】
本発明の疾患リスク評価方法、疾患リスク評価装置、疾患リスク評価プログラムは、肝臓の繊維化レベルを評価する方法、評価装置、評価プログラムにも向けられる。具体的には、前記推定モデル生成ステップにおいて、(a)前記属性データとして性別及び年齢から選ばれた少なくとも1種(望ましくは全種)を含むデータ、(b)前記身体所見データとして身長及び体重から選ばれた少なくとも1種(望ましくは全種)を含むデータ、(c)前記血液検査データとして、AST(GOT)、ALT(GPT)、γGTP、PLT、T-Cho、TGからなる群より選ばれた少なくとも1種(望ましくは全種)、及び、4型コラーゲンを含むデータ、(d)医師の診断結果、を利用して、肝繊維化レベルを推定する推定モデルを機械学習により生成し、前記推定モデル生成ステップにて生成された前記推定モデルに、被験者の(a)性別及び年齢から選ばれた少なくとも1種(望ましくは全種)を含む属性データ、(b)身長及び体重から選ばれた少なくとも1種(望ましくは全種)を含む身体所見に係る身体所見データ、(c)AST(GOT)、ALT(GPT)、γGTP、PLT、T-Cho、TGからなる群より選ばれた少なくとも1種(望ましくは全種)、及び、4型コラーゲンを含む血液検査データ、を入力し、前記被験者の肝繊維化レベルを推論することができる。つまり、上述した非アルコール性脂肪肝のリスク度を評価する方法における血液検査データとしてさらに4型コラーゲン(代表的にはIV型コラーゲン7S)を利用することで、被験者の肝繊維化レベルまでを推論することができる。以下、肝繊維化のリスク度を評価する方法、評価装置、または評価プログラムをFibro-Scope(登録商標)と称することがある。
【0019】
本発明の疾患リスク評価方法、疾患リスク評価装置、疾患リスク評価プログラムは、肝臓がんのリスク度を評価する方法、評価装置、評価プログラムにも向けられる。具体的には、前記推定モデル生成ステップにおいて、(a)前記属性データとして性別及び年齢から選ばれた少なくとも1種(望ましくは全種)を含むデータ、(b)前記身体所見データとして身長及び体重から選ばれた少なくとも1種(望ましくは全種)を含むデータ、(c)前記血液検査データとして、AST(GOT)、ALT(GPT)、γGTP、PLT、T-Cho、TGからなる群より選ばれた少なくとも1種、及び、AIM(Total-AIMおよび/またはFree-AIM)を含むデータ、(d)医師の診断結果、を利用して、肝臓がんのリスク度を推定する推定モデルを機械学習により生成し、前記推定モデル生成ステップにて生成された前記推定モデルに、被験者の(a)性別及び年齢から選ばれた少なくとも1種(望ましくは全種)を含む属性データ、(b)身長及び体重から選ばれた少なくとも1種(望ましくは全種)を含む身体所見に係る身体所見データ、(c)AST(GOT)、ALT(GPT)、γGTP、PLT、T-Cho、TGからなる群より選ばれた少なくとも1種、及び、AIM(Total-AIMおよび/またはFree-AIM)を含む血液検査データ、を入力し、前記被験者の肝臓がんのリスク度を推論することができる。つまり、上述した非アルコール性脂肪肝のリスク度を評価する方法における血液検査データとしてさらにAIMを利用することで、被験者の肝臓がんのリスク度を推論することができる。別の言い方をすると、上述した肝繊維化レベルを評価する方法における血液検査データとして4型コラーゲンの代わりにAIMを利用することで、被験者の肝臓がんのリスク度を推論することができる。以下、肝臓がんのリスク度を評価する方法、評価装置、または評価プログラムをHCC-Scopeと称することがある。
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係る脂肪性肝疾患リスク評価方法、脂肪性肝疾患リスク評価装置、及び脂肪性肝疾患リスク評価プログラムについて、詳細に説明する。
【0021】
≪本発明の概要≫
以下、本発明を具体的な実施形態に基づいて説明する。なお、以下の説明において、NASH-Scope及びFibro-Scopeと称するものは、本発明に係る脂肪性肝疾患リスク評価方法、脂肪性肝疾患リスク評価装置、及び脂肪性肝疾患リスク評価プログラムを実現したものである。
【0022】
本発明は、非アルコ-ル性脂肪性肝疾患(NAFLD; NASH-Scope)をスクリ-ニングし、非アルコ-ル性脂肪性肝炎(NASH; Fibro-Scope)における線維症ステ-ジを診断するために、人工知能(AI)/ニュ-ラルネットワ-ク(NN)アルゴリズムを用いた貴重な非侵襲的検査を開発することを目的とした。
【0023】
本発明に係る脂肪性肝疾患リスク評価方法、脂肪性肝疾患リスク評価装置、及び脂肪性肝疾患リスク評価プログラムを実現したNASH-Scope及びFibro-Scopeについて、以下のような方法で検証研究を行うことにより、有効性を確認した。具体的には、本実施形態に係る検証研究は、NASH-Scope及びFibro-Scopeに係る試験は、324人及び組織学的に診断されたNAFLD患者74人を訓練及び検証研究に登録して行った。NASH-Scopeは、年齢、性別、身長、体重、胴囲、アスパラギン酸アミノトランスフェラ-ゼ、アラニンアミノトランスフェラ-ゼ、γ-グルタミルトランスフェラ-ゼ、コレステロ-ル、トリグリセリド、血小板数の11項目に基づいた。Fibro-Scopeは、11のすべての値及び4型コラ-ゲン7Sレベルを含んでいた。
【0024】
NASH-Scopeは、トレ-ニングにおいて高いパフォ-マンス(感度99.5%、特異度95.2%、陽性的中率[PPV]98.1%、陰性的中率[NPV]98.8%)でNAFLとNASHを区別した。Fibro-ScopeによるF0対F1-4の鑑別では、感度97.2%、特異度96.2%、PPV98.1%、NPV94.4%であった。また、F0,1対F2,3,4及びF0,1,2対F3,4を比較すると判別が有効であった(F1;軽度の線維化、F2;中等度線維化、F3;高度線維化 、F4;肝硬変)。
【0025】
上述した検証研究の結果、NASH-Scopeは、感度96.6%、特異度100%、PPV100%、NPV85.7%で線維化を伴うNAFLとNASHを鑑別した。Fibro-ScopeによるF0とF1-4の鑑別は、感度96.6%、特異度86.7%、PPV96.6%、NPV86.7%を示した。Fibro-ScopeによるF0,1とF2,3,4との識別も有効であったが、F0,1,2はF3,4から感度80.0%、特異度89.8%、PPV80.0%、NPV89.8%に低下した。かかる検証研究の結果に基づけば、NASH-Scope及びFibro-Scopeと呼ばれるAI/NNアルゴリズムは使用が簡単であり、進行した線維症を伴うNASH及び/またはNASHを正確に診断することができることが分かる。NASH-ScopeはNAFLDのスクリ-ニングに有用であり、Fibro-ScopeはNASH診断を加速し、NASHにおける線維症段階を容易にすることができる。
【0026】
非アルコ-ル性脂肪性肝疾患(NAFLD)はメタボリックシンドロ-ムと密接に関連している。本症の病理学的範囲は非アルコ-ル性脂肪性肝疾患(NAFLD)から非アルコ-ル性脂肪性肝炎(NASH)に及ぶ; NASHは最終的に肝硬変及び肝細胞癌(HCC)1に進行しうる。
【0027】
≪序文≫
最近のいくつかの予後研究では、肝線維症は長期死亡率及び肝関連死亡を予測した唯一の組織学的所見であった。しかしながら、この診断ツ-ルには、サンプルのばらつき、観察者間及び観察者内の差異、有害事象、及び侵襲性を含む多くの限界がある。肝臓由来酵素の超音波検査及び血清中濃度はNAFLDのスクリ-ニングに広く用いられているが、超音波検査は肝臓脂肪含量の30%以上を検出する可能性がある。血清アラニンアミノトランスフェラ-ゼ(ALT)値はNAFLD患者の間で正常範囲にあることが多い。したがって、NASHにおける肝線維症のスクリ-ニングと病期分類のための簡便で高感度で低コストの非侵襲的検査(NIT)を確立することは重要であろう。
2~13の臨床数値の組合せに基づくいくつかの非侵襲的検査(NIT)が報告されている。本発明者のグル-プは、NASH及び線維症を診断するための2つの貴重なNITについても述べている。NITの第1のセットは、FMNASHインデックス及びFM線維インデックス9と命名された。これらの指標は、NASHと診断された患者の間でLFの診断とステ-ジの決定のための受信者動作特性曲線(AUROC)下で優れた面積を示した。しかし、アウトカムの算出に用いた式は複雑であった。本発明者は後に、アスパラギン酸アミノトランスフェラ-ゼ(AST)と4型コラ-ゲンの7S領域(T4C7S)の血中濃度を含む2組目のNIT、CAインデックス-NASH及びCAインデックス-線維症10を確立した。最新のスコアリングシステムは、NAFLD、NASH、及びNASH関連線維症のスクリ-ニングに十分な精度を示した。これらの研究から、T4C7SはNASHにおける優れた線維症マーカーであると考えた。
最近の疫学的報告では、成人の約20~30%が超音波検査により脂肪肝と診断されていることが明らかになった。一過性エラストグラフィ-及び磁気共鳴エラストグラフィ-(MRE)のような画像検査は、NAFLDと診断された患者における脂肪症及び肝線維症の発見のために普及している;しかしながら、これらのモダリティ-は、費用及び時間がかかる。
【0028】
本発明者の目標は、人工知能(AI)と機械学習(ML)法を用いて、NAFLDのスクリ-ニングと肝線維症の所定の段階の決定のための簡便で正確なスコアリングシステムを確立することであった。この目的のために、NAFLDスクリ-ニングのための本発明者の新しい方法論は11の容易に評価される臨床値(NASH-Scope)を特徴とする。これらの値は血清T4C7Sと共にNASH (Fibro-Scope)におけるLFのステ-ジを決定するための新しい一連のアルゴリズムを生成するのに使用された。新しいアルゴリズムは非常に簡単に使用でき、非常に高い感度と特異性でNAFLDとNASHの線維化ステ-ジの両方を予測できる。
【0029】
≪検証研究≫
済生会吹田病院から組織学的にNAFLDと診断された324名の患者を訓練セットに登録した。ウイルス感染または自己免疫疾患に続発する肝障害を有する患者、または薬物性肝障害またはアルコ-ル性関連肝疾患と診断された患者は除外した。これらの患者の1日のアルコ-ル摂取量は、男性ではエタノ-ル30g未満、女性ではエタノ-ル20g未満であり、2014年4月から2017年9月まで16ゲ-ジ針を用いて肝生検を実施した。肝生検サンプルの長さは20mmを超え、ヘマトキシリン-エオシン及びマッソン・トリクロムで染色した。
【0030】
NASH Clinical Research Network (CRN)17の基準に従い、肝病理医である本発明者が盲検下で組織診断を行った。疾患はMatteoniらの1に従って1/2型(NAFL)または3/4型(NASH)に分類された;脂肪肝、小葉炎症及び肝線維症を有するがバル-ニング肝細胞を有さない患者は境界型NASH (b-NASH)に分類された。
【0031】
バリデ-ションセットについては、3つの病院(京都府立医科大学、金沢大学、済生会吹田病院)で2016年4月から2017年7月までに生検でNAFLDと診断された患者74名を対象とした。全74例の生検標本は、中央病理医(原田憲一教授)が盲検下で組織学的にスコア化した。
【0032】
本発明者の臨床プロトコ-ルは済生会吹田病院の倫理委員会及び同様に2つの大学病院の委員会によって承認された。本試験はヘルシンキ宣言の倫理指針に準拠して実施され、肝生検及び採血を実施する前に全患者からインフォ-ムドコンセントが得られた。
【0033】
≪AIトレ-ニングシステムの教師データの背景≫
NAFLDと診断された324例のうち、93例がNAFLと同定され、13例が線維化を伴わないNASH(Matteoni type 3)、54例がb-NASH (F1で34例、F2で10例、F3で8例、F4で2例を含む)、164例が線維化を伴うNASH(F1で40例、F2で46例、F3で57例、F4で21例)と診断された。表1aに示すように。F0(NAFL)からF4(線維化を伴うNASH)への進行は、年齢の増加及び胴囲(WC)の増加と関連していた。血清GGTとT4C7Sレベルも増加したが、血小板数は肝線維症の進行と関連して減少した。
【0034】
≪AIシステムのバリデ-ションデータの背景≫
中央病理医は以下のように74例を診断した: 13例はNAFL、2例は線維化を伴わないNASH(Matteoni type 3)、15例はb-NASH、44例は線維化を伴うNASHであった(表1b)。これらの患者の臨床的背景は、トレ-ニングセットについて評価された患者のそれらと類似していた。
【0035】
≪NAFLDをスクリ-ニングし、NASHにおける肝線維症の病期を同定するためのAI/NNシステムの訓練≫
AI解析用のEngineの構造は、前処理ステップ、NN (ディ-プラ-ニング)ステップ、後処理ステップ(
図1,2)の3ステップを用いて構築されている。
【0036】
[治療前段階]身体測定及びル-チンの生化学検査の中で、AST、ALT、GGT、コレステロ-ル、トリグリセリド、及びPLTは、NAFL (F0)対NASH (F1~4); F0,1対F2,3,4;及びF0,1,2対F3,4の比較において有意に異なっていた(表2)。基本因子として年齢、性別、身長、体重、WCを導入し、肝機能検査としてAST, ALT,GGTを総合した。コレステロ-ル、トリグリセリド、PLT、ヘモグロビンA1c (HbA1c)、及び免疫反応性インシュリン(IRI)レベルを分析した。これらの因子の分布を解析し、HbA1c,IRIを除く11値の分布から基準を設定した。NASH-Scopeでは、これらのデータを重み付けし、NAFLD診断のための7つの指標に変換した。全入力データは18(
図1-2)であった。
【0037】
Fibro-Scopeでは、T4C7SがNASH7,8患者の強力な肝線維症マーカーとして用いられた。前述の18のデータにT4C7Sを追加し、その後肝線維症の病期診断のための1つの指標値に変換した。全入力データは20(
図2-2)であった。
【0038】
[NN(ディ-プラ-ニング)ステップ]
治療前データを入力層とした。このNNのトレ-ニングは教師データと324のエポック数を持ち、収束するまで学習した。活性化機能:S状結腸機能と喪失機能:二値クロスエントロピ-を採用した。学習精度は、入力層に関連する教師データの逆伝播を繰り返すことで向上した(
図1-2、
図2-2)。
【0039】
[治療後のステップ]
NASH-Scopeは出力層の閾値により、NAFL、中間診断(グレ-ゾ-ン)、NASHを効率的に同定する(
図1)。特に、線維症を伴わないNASH(Matteoni 3型)及び軽度の線維症を伴うNASHの一部の症例は、灰色帯に割り付けられる。
【0040】
Fibro-Scopeは、NNに対する2値分類の3つのタイプ:タイプ1、F0対F1、2、3、4;タイプ2、F0、1対F2、3、4;及びタイプ3、F0、1、2対F3、4(
図2-2)によって線維症の病期を同定する。NASHにおける肝線維症の病期は、各タイプの出力層の閾値によって決定される。
【0041】
≪検証研究の精度確認≫
線維化を伴わないNAFLまたはNASHの組織学的診断を受けた患者106人のうち、NASH-Scopeは79人をNAFL、23人を灰色帯、4人をF0ではない(すなわち、線維化を伴うb-NASHまたはNASH)と診断した。b-NASHの54例を含む組織学的検査によりNASHと診断された218例のうち、212例がNASHと診断され、5例がグレ-ゾ-ン、1例がNASH-ScopeによるF0(NAFLまたはNASHは線維化を伴わない)であった。感度、特異度、PPV、NPV、ACC (精度)、MCC (Mathew相関係数)はいずれも高値であった(表3)。
【0042】
324例のトレ-ニング症例に対してFibro-Scopeが提供した診断には、NAFLと診断された106例が含まれ、そのうち102例はF0、4例はF0ではなかった。NASHの218症例のうち、Fibro-Scopeはb-NASHの54症例と線維化を伴うNASHの212症例を診断した;症例のうち6症例はF0であった。感度、特異度、PPV、NPV、ACC、MCCはいずれも非常に高かった(93.0%から98.1%;表4)。Fibro-Scopeは、F0,1対F2,3,4及びF0,1,2、対F3,4を、表4に示すように高い感度、特異度、PPV、NPV、ACC、及びMCCで明確に識別することもできた。
【0043】
≪Fibro-Scope検査と非侵襲的検査の比較≫
Fibro-Scopeの肝線維症の他のNITとの臨床的意義及び正確性を明らかにするために、以下のパラメ-タを検討した: AAR [AST/ALT比]、APRI [(100×AST/ASTの正常上限)/PLT (×109/L)]、FIB-4指数[年齢(IU/L)×(109/L)×、NAFLD線維症スコア(NFS) [-1.675×0.037×年齢(年齢)+0.094× BMI (kg/m2)+1.13×空腹時血糖値障害/糖尿病(あり)、なし=0.99×AST(IU/L)/ALT (IU/L)-0.013× PLT (×109/L)-0.66×アルブミン(g/dL)]、CA-index-fibrosis [1.50×T4C7s (ng/ml)+0.0264×AST(IU/L)]、FM-fibro index T4C7sとヒアルロン酸の併用[1/2 S状結腸[(HA(ng/mL)-73.56)/86.13}+1/2 S状結腸[(T4C7s (ng/mL)-5.06)/1.57]]であった。他のNITと比較したNASH-Scopeの診断性能は、受信者オペレ-タ特性(ROC)分析により評価した。Fibro-Scopeと関連NITについて決定したAUROCをDeLong試験18に従って比較した。√(ALT(IU/L)}])
【0044】
≪統計≫
このシステムの診断能はROC解析により評価した。診断精度18の統計的尺度としてAUROCを用いた。NAFLDの診断及び各線維症段階の同定のための最大感度及び特異度、陽性的中率(PPV)、及び陰性的中率(NPV)を生じるカットオフ値を分析した。<0.05(両側)のp値は、Welch検定を用いて統計学的に有意とみなした。AST、ALT、GGT、コレステロ-ル、トリグリセリド、及びPLTを含む6つの値を、潜在的に不等分散の連続変数と考えたため、それらをWelchのt検定により分析した。データ解析はSPSS verで行った。22.0 (SPSS、シカゴ、IL)
【0045】
≪結果≫
[NASH-Scopeのバリデ-ション]
バリデ-ション試験に使用した74例のうち、独立した2施設の病理医と済生会吹田病院の臨床病理医がMatteoniらの1によりNAFLまたはNASHに分類し、中央病理医とT.O.がNASH-CRN17によりNAFL、b-NASHまたはNASHに分類した(表5)。外部機関及び済生会吹田病院からの当初の組織学的診断は以下の通りであった;15名はNAFLと診断され、59名はNASHと診断された。中枢病理医は、13例がNAFL,2例が線維化を伴わないNASH,15例がb-NASH,44例が線維化を伴うNASHと診断した。対象とした本発明者 15によるこれら74例の組織学的診断はNAFL、2例は線維化を伴わないNASH、14例はb-NASH、43例は線維化を伴うNASHであった(表5)。中央病理医と本発明者の組織学的診断の一致率は87.8%であったが、最初に記録された診断と中央病理医の診断の一致率は68.9%に過ぎなかった。
【0046】
また、AI/NNアルゴリズムを用いてb-NASHとNASH(F1-4)の診断を行った。中央病理医によりNASHまたはb-NASHと診断された59例のうち、56例がNASHと診断され、1例がgray zoneと診断され、2例がNASH-ScopeによりNAFLと診断された(表3)。中央病理医によりNAFLと診断された13例のうち、10例がNAFLと診断され、3例がNASH-Scopeによりgray zoneと診断された;同様に、線維化を伴わないNASHの2例がNASH-ScopeによりNAFLと診断された。NASH-Scopeにおける感度、特異度、PPV、NPV、ACC、MCCは同様に訓練結果と比較して非常に高かった(表3)。
【0047】
[Fibro-Scopeのバリデ-ション]
NAFL 13例、線維化を伴わないNASH 2例と、組織学的に線維化またはb-NASHと診断されたNASH 59例で検証を行った。最初の15例のうち、2例のF0患者(Matteoni type 3が1例、Matteoni type 2が1例)がNASHと診断され、残りの13例はFibro-scopeによりNAFL (F0)と診断された。繊維性NASHの59例のうち、57例は繊維性NASHを、2例はNAFLを、1例はFibro-Scopeを用いてグレ-ゾ-ンとして特定した。感度、特異度、PPV、NPV、ACCはいずれも高値(86.7~96.6%)であったが、MCCは83.3%と低かった(表6)。F0,1対F2,3,4の診断精度は、感度、特異度、PPV、NPV、ACCに関して84.4%~88.1%であったが、MCCは72.5%に過ぎなかった。病期F3及びF4で組織学的に診断された25例のうち、20例はFibro-ScopeでF3及びF4でも診断された。また、組織学的にF0,F1,F2期と診断された49例中44例はすべてF0,F1,F2と診断された。感度、特異度、PPV、NPV、ACCは80.0~89.5%であったが、MCCは69.8%であった(表7)。また、本発明者により組織学的に診断された検証試験で用いた74症例についてFibro-Scopeによる診断精度を解析し、これらの結果を中央病理医が診断した結果と比較した。表7に示したように、診断精度は表6に示したものよりも良好であり、特にF0,1,2対F3,4の識別に関して顕著であった。これらの診断精度の不一致は、中央病理医と本発明者の組織学的診断における観察者間の違いによるものと思われる。
【0048】
Fibro-ScopeによりNASH (F3/F4)「おそらくF4」と診断されたNASHの症例を
図3に示す。
【0049】
[Fibro-Scope検査と非侵襲的検査の診断力]
Fibro-Scopeの診断特性を各種NITと比較した。F0対F1~4の鑑別におけるAAR、APRI、FIB-4、NSF、CA指数線維症、FM-線維指数、及びFibro-Scopeを含む種々のNITに対するAUROC値は、それぞれ0.692、0.776、0.797、0.746、0.872、0.862、及び0.967であった(
図4a)。F0,1対F2,3,4(
図4b)及びF0,1,2対F3,4(
図4c)の鑑別に関する全てのアルゴリズムのAUROC値は、他の6つのNITからのそれらと比較してFibro-Scopeで最も高かった。
【0050】
≪考察≫
ここでは、NAFLDをスクリ-ニングするための簡便で高感度なAI/NNアルゴリズムのセットと、一般的で容易に利用可能な11の臨床値を入力として用いたNASHにおける肝線維症の病期分類を提示する;Fibro-Scopeについては、T4C7Sの値も含めた。T4C7sは、ラジオイムノアッセイ(RIA)により測定されるため、他の国では容易には利用できないが、NASHにおける線維症マーカーとして日本で広く使用されている。しかし、日本の企業が最近酵素免疫測定法を開発し、近い将来すべてに利用可能になるかもしれない。
【0051】
NAFLD患者の日常的スクリ-ニングは現在、米国肝疾患研究会(AASLD)19では推奨されていないが、欧州肝臓研究会(EASL)、欧州糖尿病研究会(EASD)、及び欧州肥満研究会(EASO)が共著した臨床診療ガイドラインでは、肥満及び/またはメタボリックシンドロ-ム20の全患者に対する肝酵素及び/または超音波検査によるNAFLDの日常的スクリ-ニングが示唆されている。超音波検査はNAFLDを検出するための最も一般的な検査の一つであるが、その感度は21で約85%にすぎず、肝脂肪症が2230%未満であれば検出率は低下する。
【0052】
脂肪肝指数、脂肪試験、及びNAFLD肝脂肪スコアは、23重度肥満者の脂肪症を確実に予測する。これらのバイオマーカーはアジア系の人には適さない;アジア人の肥満はBMIが25kg/m2を超える一方、西洋ではこの値が30kg/m2 を超えると定義される。T4C7SとASTを含むNASHのCA指標は、NAFLとNASHの鑑別に高AUROC (訓練:0.857、検証:0.769)10を示した。NASH-Scopeにおけるアルゴリズムは、合理的なコストで、超音波研究の必要なしに短時間で、NAFLDとNASHをより効率的に識別できる。
【0053】
近年、USAOOBand Europe 25からNASHとそれに伴う肝線維症に関する2つのシステマティックレビュ-が報告された。Younossiらの24は、生化学的NITとMREの併用が最良の予測性能をもたらしたと報告している。Vilar-Gomezらの25は、NFS及びFibrosis-4指数(FIB-4)が肝線維症の病期分類に役立つスクリ-ニングツ-ルであり、臨床現場でル-チンに適用できることを報告した。
【0054】
NASHに対する最近の臨床試験は、大部分が重大から進行した肝線維症の患者を対象としている。セロンセルチブを対象とした最近の2件の第3相試験の検診成績では、同時にNITの進行性線維症8診断能が評価されている。これらの試験では、NFS、FIB-4指数、Enhanced LF試験、及び振動制御一過性エラストグラフィ-(VCTEによるLSM)による肝硬度測定を含む、線維症ステ-ジとNITとの関連を分析した。結論の中で、AUROCはNITs alone8からの進行した線維症の診断のために0.75~0.80の範囲であった。各々のCRNクリニカルセンタ-等の8名の病理医から構成される病理部会は、NASHに関する評価者間の合意が線維化17に対して0.84であったと報告した。
【0055】
近年、欧州26及びUSA27の2件の研究では、NAFLDが疑われる患者における脂肪症及び線維症の評価におけるVCTE制御減衰パラメ-タ(CAP)及びLSMの有用性も実証された。肝臓脂肪症及び線維症の症例において線維スキャンによって評価したCAP及びLSMは、0.70~0.8925の範囲のAUROC値を示したが、VCTEは、最小線維症、高脂肪症、またはNASH27の存在の同定にはあまり正確ではなかった。
【0056】
本発明者は最近、NASHにおける肝線維症の診断のためのVCTEとNITによるLSMの組み合わせの有用性を報告した。NAFLD患者に対するVCTEの適用は限られているが、FM-線維指数(AUROC; 0.945)、T4C7S (AUROC; 0.925)、FIB-4(AUROC; 0.927)及びCA-線維指数(AUROC; 0.919)を含む進行肝線維症(ステ-ジ≧3)を予測するための特異的バイオマーカーとの同時測定が診断精度28を有意に改善することを示した。
【0057】
MLの適用は、肝生検画像、超音波検査、及び臨床データ29を用いてNAFLDにおけるパタ-ン認識のために探索されてきた;しかし、これらはNAFLDとNASHの間の鑑別診断及びNASH30における肝線維症の病期分類のためには不満足である。
今回のAI/NNアルゴリズムは、臨床診療に非常に有用であることが証明でき、特にNASH-Scopeを用いたNAFLDの発生率及び有病率の疫学的評価と同様にNAFLDのル-チンスクリ-ニングの一部として含まれる可能性がある。臨床検査データからNASHが疑われる場合は、当初からFibro-Scopeを使用すべきであると考える。しかしながら、これらのアルゴリズムが日本のNAFLD症例のみを用いてデザインされ、検証され、検証研究のための患者数がわずかに少なかったことには、いくつかの限界がある。そこで本発明者らは、西欧のNAFLD症例を中心に、これらのアルゴリズムを改訂する予定である。この時点で、これらのアルゴリズムは、日本の健康診断プログラムの構成要素として導入されている。
【0058】
結論として、本発明者らは、NAFLDに対する患者のスクリ-ニング、及びNASHによる重大及び/または進行した線維症を有する患者の同定に使用できる、高感度で安価なAI/NNアルゴリズムのセットを作成した。微調整システムやアルゴリズムによるAI/NNのさらなる進歩により、最終的には組織生検の必要性がなくなる可能性がある。
【0059】
以下、本特許出願に添付されている図表を参照しつつ、さらに詳細に説明する。
【0060】
表1は、AI/NNシステムのトレ-ニングと検証に用いたNAFLD症例の特徴を示したものである。
【0061】
[1a: 訓練のための患者]
トレ-ニングセットとして用いたNAFLDの組織学的診断を受けた324例のうち、106例は線維症(F0)がなく、74例はF1期、56例はF2期、88例はF3期またはF4期であった。定量データは、括弧内に中央値及び四分位範囲で示す。
【0062】
[1b: バリデ-ション試験の患者]
バリデ-ション対象集団として用いたNAFLDの組織学的診断が得られた74例のうち、15例はF0期、18例はF1期、15例はF2期、24例はF3期またはF4期であった。臨床的背景は、先に評価したものと同様であった(表1a)。結果は、定量データについては中央値及び四分位範囲で括弧内に示した。
【0063】
表2は、NASH-Scope作成のための6回の血液検査の臨床的意義を示した表である。F0対F1-4,F0,1対F2,3,4及びF0,1,2対F3,4の比較において、AST, GGT、トリグリセリド、及び血小板の血清中濃度の間に有意差を検出した。
【0064】
表3は、線維化を伴うNAFLD及びNASH症例のスクリ-ニングに対するNASH-Scopeの診断能を示した表である。NASH-Scopeは、F0(線維化を伴わないNAFL及びNASH)vs. F1-4(線維化を伴うNASH及びb-NASH)を識別した。感度、特異度、PPV、NPV、ACC及びMCCは、訓練試験及び検証試験のいずれにおいても95%以上であった。「灰色帯」のF0症例のほとんどは、線維化を伴わないNASH(Matteoni3型)と組織学的に診断された;対照的に、診断されたF1~4症例のうち、灰色帯で発見されたものは非常に少数であった。
【0065】
表4は、トレ-ニングセットによる肝線維症の病期分類のためのFibro-Scopeの診断精度を示した表である。Fibro-ScopeはF0対F1-4,F0,1対F2,3,4,F0,1,2対F3,4を明確に識別した。感度及び特異度は96%を超え、PPV、NPV、ACC、及びMCCも同様にきわめて高かった。
【0066】
表5は、外部病理医、中央病理医、病理医(本発明者)の組織診断の比較を示した表である。中央病理医も本発明者も多くのNAFLD症例をb-NASHと診断したが、外部2施設の病理医と済生会吹田病院ではNAFLDをNAFLまたはNASHと診断したのが典型的であった。観察者間の差は、中央病理医vs.本発明者の転帰よりも、外部2施設及び済生会吹田病院の病理医からの転帰の方が、中央病理医からの転帰よりも顕著であった。
【0067】
表6は、バリデ-ションセットによる肝線維症の病期分類のためのFibro-Scopeの診断精度を示した表である。Fibro-Scopeでは、F0,1対F2,3,4とF0,1,2対F3,4との鑑別はトレ-ニングセットを用いて判定した場合より劣っていたが、F0対F1-4との鑑別は十分であった。
【0068】
表7は、本発明者が診断したバリデ-ションセットによる肝線維症の病期分類のためのFibro-Scopeの診断精度を示した表である。これらの結果と中央病理医が診断した結果との比較診断精度は表5に示したものよりも良好であり、特にF0,1,2対F3,4の識別に関して顕著であった。
【0069】
図1は、訓練と検証のためのNASH-Scopeの構造(NAFLDスクリ-ニングのためのAIシステム)を示す図である。
【0070】
[1)研修1(前処理).治療前のステップ(統計的アルゴリズム)]
これは、身体所見、生化学的データ、及び18の出力パラメ-タを含む11のデータから7つのインデックスデータを生成するステップである。新たに作成された7つの指標は、身体的スコア(2つのデータ)及び機能的スコア(4つのデータ)として定義される。機械学習分野の決定木で独立変数(X)として割り当てられる。従属変数(Y)は「NASHであるのか」と定義される。総得点は回帰分析を(X,Y)=(X1,X2,X3,X4,X5,X6,Y)として算出し、第7指標データとする。
【0071】
[2)研修2(本処理).ニュ-ラルネットワ-ク(ディ-プラ-ニング)ステップと治療後ステップ]
このステップは、(1)NASHとNAFLのトレ-ニングセット、(2)多層パ-セプトロン(入力層/隠れ層/出力層)からなる2値分類である。これが出力するステップです。2つの隠れ層、すなわち誤差逆伝播とシグモイド交差エントロピ-を持つディ-プラ-ニングを用いて、324エポック(教師データあり)の条件下で学習構造を構築した。治療後では、出力データの閾値に基づいてNAFL、グレイゾ-ン、NASHに割り当てられます。324例の学習結果に基づき、出力結果を0.0<NAFL<0.35≦灰色帯≦0.70<NASH<1.0で算出する。
【0072】
[3)バリデ-ションステップ]
トレ-ニングによって構築したモデルに74症例の11項目のデータを入力し、その後、NAFL、グレイゾ-ン、またはNASHのFibro-Scopeに基づく判断を行う。判断の結果と作成した診断結果を錯乱マトリックスで評価した。
【0073】
図2は、トレ-ニングと検証のためのFibro-Scopeの構造(NASHにおける肝線維症の病期を同定するためのAIシステム)を示す図である。
【0074】
[1)研修1(前処理).治療前のステップ(統計アルゴリズム)]
これは、追加された生化学データ(T4C7S)及び11データから生成された7つのインデックスデータから20のパラメ-タを出力するステップである。新たに作成した指標はCA-index-NASHとCA-index-fibrosis、ならびに身体・機能スコアと定義され、機械学習野デシジョンツリ-の独立変数(X)として割り当てられる。従属変数(Y)を「F0,1,2か?」と定義し、回帰分析を(X,Y)=(X1,X2,X3,X4,X5,X6,X7,X8,X9,Y)とする。それに応じて総スコアを算出し、8番目の指標データ(X8=CA-index-NASH、X9=CA-index-fibrosis)として使用する。
【0075】
[2)研修2(本処理).ニュ-ラルネットワ-ク(ディ-プラ-ニング)ステップと治療後ステップ]
このステップは、(1)NASHの線維化段階のためのトレ-ニングセットと、(2)多層パ-セプトロン(入力層/隠れ層/出力層)からなる。これは、分類の結果を計算して出力するために使用されるステップである。2値分類の採用により、タイプ1,F0対F1,2,3,4;タイプ2,F0,1対F2,3,4;及びタイプ3,F0,1,2対F3,43の異なるモデルが得られた。各モデルにおいて、ディ-プラ-ニングを用いて324エポック(教師データあり)の条件下で学習構造を構築する。ディ-プラ-ニングは、2つの隠れ層を配置する、すなわち、誤差逆伝播とシグモイドクロスエントロピ-である。治療後では、出力データの閾値に基づいて線維化ステ-ジを割り当てる。324例の学習結果により、0.0<陰性回答<0.5≦陽性回答<1.0で出力結果を算出する。
【0076】
[3)バリデ-ションステップ]
74症例の12項目データをトレ-ニングと線維化段階の判断により形成されたモデルに入力する。判定結果と作成した診断結果を錯乱マトリックスで評価した。
【0077】
図3は、NASH-ScopeとFibro-Scopeで診断しえた進行NASHの一例である。NASH-Scope(
図3-1)は、入力データに応じて、NAFL、グレイゾ-ン、またはNASHのコンピュ-タ化診断を生成する。NASH-Scopeの生成に用いられるものにT4C7Sレベルを加えてFibro-Scopeを作成する(
図3-2)。これはNASH-scopeがNASHの診断を生成する際に用いられる。Fibro-Scopeは、ここに示すように、「NASHF3,4」おそらくF4の診断を生成した。
【0078】
図4は、Fibro-Scopeの診断精度と関連NIT6件との比較例を示す図である。(2a)はF0対1,2,3のAUROC識別それぞれの場合、赤線はFibro-ScopeからのAUROCデータを示す。(2b)はF0,1対F2,3,4、(2c)はF0,1,2対F3,4である。全ての図は、関連する6つのNITと比較して、NASHにおける肝線維症の病期分類に対するFibro-Scopeの優れた診断能力を示している。
【0079】
≪脂肪性肝疾患評価装置の構成について≫
続いて、本実施形態の脂肪性肝疾患評価装置10の構成について説明する。脂肪性肝疾患評価装置10は、推定モデル生成部20、データ取得部30、及びリスク度予測部40を備えている。脂肪性肝疾患評価装置10は、これらの構成を実現するためのプログラムをコンピュ-タにインスト-ルすることにより構築されている。また、脂肪性肝疾患評価装置10は、当該コンピュ-タを直接的に操作すること、あるいはインタ-ネットやイントラネットなどのネットワ-クを介して当該コンピュ-タにアクセスすることにより利用することができる。
【0080】
推定モデル生成部20は、(a)性別、年齢を含む属性データ、(b)身長、体重を含む身体所見に係る身体所見データ、(c)AST(GOT)、ALT(GPT)、γGTP、PLT、T-Cho、TGを含む生化学検査データ、及び(d)医師の診断結果、を学習モデルとして、脂肪性肝疾患のリスク度を推定する推定モデルを機械学習により生成するものである。
【0081】
データ取得部30は、被験者の(a)性別、年齢を含む属性データ、(b)身長、体重を含む身体所見に係る身体所見データ、及び、(c)AST(GOT)、ALT(GPT)、γGTP、PLT、T-Cho、TGを含む生化学検査データを取得するものである。
【0082】
リスク度予測部40は、前記推定モデル生成ステップにて生成された前記推定モデルに前記データ取得ステップにて取得したデータを入力し、前記被験者の脂肪性肝疾患のリスク度を予測するものである。
【0083】
脂肪性肝疾患リスク評価装置10は、推定モデル生成部20により、生化学検査データに加えて、性別、年齢等の属性データ、身長、体重等の身体所見データ、医師の診断結果を学習モデルとし、機械学習によって脂肪性肝疾患のリスク度を推定するための推定モデルを生成することができる。また、脂肪性肝疾患リスク評価装置10は、データ取得部30が、被験者の生化学検査データだけでなく、性別、年齢等の属性データ、身長、体重等の身体所見データを取得する。さらに、脂肪性肝疾患リスク評価装置10は、推定モデル生成部20により生成された推定モデル、及びデータ取得部30により取得された被験者のデータに基づき、リスク度予測部40が脂肪性肝疾患のリスク度を評価する。脂肪性肝疾患リスク評価装置10は、リスク度予測部40により、性別、年齢等の属性データ、身長、体重等の身体所見データを加味して被験者の脂肪性肝疾患のリスク度を予測するための方法を実現することができる。従って、脂肪性肝疾患リスク評価装置10によれば、従来技術の方法に比べて脂肪性肝疾患のリスクをより一層精度良く評価できる。
【0084】
本発明は、上述した実施形態や変形例等として示したものに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲でその教示及び精神から他の実施形態があり得る。上述した実施形態の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また実施形態の任意の構成要素と、発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素または発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とは任意に組み合わせて構成してもよい。これらについても本願の補正または分割出願等において権利取得する意思を有する。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の脂肪性肝疾患等の疾患リスクをより一層精度良く評価可能な脂肪性肝疾患等の疾患リスク評価方法、疾患リスク評価装置、及び疾患リスク評価プログラムは、各種疾患のリスクを評価する方法、評価装置、及び当該評価装置用のプログラム全般において好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0086】
10 : 脂肪性肝疾患評価装置
20 : 推定モデル生成部
30 : データ取得部
40 : リスク度予測部