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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】ノンシールローラチェーン
(51)【国際特許分類】
   F16G 13/02 20060101AFI20221107BHJP
   F16G 13/06 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
F16G13/02 B
F16G13/06 C
F16G13/06 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017242188
(22)【出願日】2017-12-18
(65)【公開番号】P2019108929
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000207425
【氏名又は名称】大同工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東出 有弘
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-127300(JP,A)
【文献】特開平10-238598(JP,A)
【文献】実開平2-55605(JP,U)
【文献】特開平8-4987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 13/02
F16G 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対の内プレートの両端部をブシュにより結合した内リンクと、1対の外プレートの両端部をピンにより連結した外リンクとを、前記ブシュに前記ピンを嵌挿して交互に連結したノンシールローラチェーンにおいて、
前記ブシュは、前記1対の外プレートの内側面の間の間隔よりも短いと共に前記1対の内プレートの外側面の間の間隔よりも長く、
前記ブシュは、前記内プレートの外側面より所定量突出したブシュ突出部を有し、前記ブシュ突出部の端面が前記外プレートの内側面に当接可能に構成され、前記内プレートの外側面と前記外プレートの内側面との間に所定の隙間を保持し、
前記内プレートの外側面及び前記外プレートの内側面は、平坦面であり、
前記ブシュ突出部の突出長さは、前記所定の隙間に対して79~91[%]の範囲内にあり、
前記所定の隙間は、上記1対の外プレートの内側面の間隔に対して7~18[%]の範囲にあり、
前記所定の隙間を通して、外部から供給された潤滑油を前記ブシュ突出部の周りに溜めて油溜りを形成し、該油溜りの潤滑油を前記ブシュの端面と前記外プレートの内側面との間を通って前記ブシュと前記ピンとの間の軸受部に供給してなる、
ことを特徴とするノンシールローラチェーン。
【請求項2】
前記ブシュ突出部に、該ブシュの内周面と外周面とを連通する連通部を形成してなる、
請求項1記載のノンシールローラチェーン。
【請求項3】
前記連通部は、前記ブシュの端面から形成された所定深さの溝である、
請求項2記載のノンシールローラチェーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送用又は動力伝達用のローラチェーンに係り、詳しくはシールのないノンシールローラチェーンに関する。なお、本発明において、ローラチェーンとは、ブシュにローラを被嵌した狭義のローラチェーンに限定するものではなく、ローラを省いた、いわゆるブシュチェーンも、ローラチェーンに含むものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ローラチェーン1は、図6に示すように、1対の内プレート2,2の両端部をブシュ3で連結し、かつ該ブシュ3にローラ5を被嵌した内リンク6と、2枚の外プレート7,7の両端部をピン9で連結した外リンク10とを、前記ブシュ3にピン9を嵌挿することにより無端に連結して構成されている。該ローラチェーン1は、スプロケットに噛合して走行するが、該スプロケットへの噛合時等に、前記ブシュ3とピン9とが摺動することにより屈曲する。従って、上記ローラチェーン1は、軸受部11である前記ブシュ3とピン9との間に潤滑油を供給する必要がある。
【0003】
従来の上記標準ローラチェーン1は、1対の外プレート7の内側面の間隔をCとし、1対の内プレート2の外側面の間隔をDとすると、ブシュ3の端面が内プレート2の外側面と面一となるように固定されており、従って、内プレート2と外プレート7とは、[(C-D)/2]からなる僅かな隙間Aで対向している。従って、該隙間Aに潤滑油を供給して、前記軸受部11に潤滑油を導くことになるが、上記隙間Aは狭いため、十分な潤滑油を軸受部に供給することができず、チェーンの摩耗伸びの原因となることがある。
【0004】
従来、ブシュを、内プレートの外側面から所定量突出して、内プレートに圧入・固定したローラチェーンは知られている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
しかし、該ローラチェーンは、ブシュとピンとの間にグラファイト製潤滑油スリーブを介在したり、またグリースをシールリングで封入したシールチェーンであって、外部から、上記ブシュとピンとの間の軸受部に潤滑油を供給するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-190547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の標準ローラチェーン1は、内プレート2と外プレート7との間の隙間Aは狭く、油差し給油及び滴下給油にあって、該狭い隙間Aに正確に給油するには注意深い作業が必要であり、かつ上記狭い隙間Aに保持し得る潤滑油Oの油量も少く、常に適量の油量を供給する面倒な作業を必要とする。また、上記内プレート2と外プレート7との隙間Aに供給された潤滑油Oは、内プレート2と外プレート7との間の粘着力(表面張力)により拡がり、軸受部11内への滑らかな侵入が妨げられるものと推測される。その結果、上記隙間Aを通って軸受部11に供給する潤滑油量が十分でない状態となり易く、軸受部11での摩擦損が大きく、更に摺接するピン9とブシュ3との間で摩耗又は錆が生じ、チェーン摩耗伸び等の不具合が発生する。また、正確に上記隙間Aに潤滑油が供給されなかったり、また過度に潤滑油が供給されると、潤滑油が周囲に飛散し、汚れ又は搬送物品に付着する等の不具合が生じる。
【0008】
また、前記特許文献1に記載の固体潤滑無給油チェーンは、ブシュが内プレート外側面から所定量突出しているが、内プレートと外プレートとの間にラビリンス構造が形成され、外部塵埃の侵入を防止しており、このため潤滑油を、内プレート及び外プレートの間の隙間を通して軸受部に供給することはできない。同様に、シールチェーンにあっても、ブシュが内プレートより所定量突出して、該突出部を囲むようにして内プレートと外プレートとの間にシールリングが介在しているが、上記ブシュの突出は、シールリングの過度の圧縮を防止するためのものであり、シールリングが内プレートと外プレートの間に縮設されているため、内プレートと外プレートとの間の隙間を通して潤滑油を軸受部に供給することはできない。
【0009】
そこで、本発明は、ブシュの端面を外プレートに当接し、内プレートと外プレートの間の隙間を所定量確保し、もって上述した課題を解決したノンシールローラチェーンを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、1対の内プレート(22,22)の両端部をブシュ(23)により結合した内リンク(26)と、1対の外プレート(27,27)の両端部をピン(29)により連結した外リンク(30)とを、前記ブシュ(23)に前記ピン(29)を嵌挿して交互に連結したノンシールローラチェーン(21)において、
前記ブシュ(23)は、前記1対の外プレート(27,27)の内側面(27b)の間の間隔よりも短いと共に前記1対の内プレート(22,22)の外側面(22a)の間の間隔よりも長く、
前記ブシュ(23)は、前記内プレート(22)の外側面(22a)より所定量突出したブシュ突出部を有し、前記ブシュ突出部の端面(23b)が前記外プレート(27)の内側面(27b)に当接可能に構成され、前記内プレートの外側面(22a)と前記外プレートの内側面(27b)との間に所定の隙間(F)を保持し、
前記内プレートの外側面及び前記外プレートの内側面は、平坦面であり、
前記ブシュ突出部(23a)の突出長さは、前記所定の隙間(F)に対して79~91[%]の範囲内にあり、
前記所定の隙間(F)は、上記1対の外プレート(27,27)の内側面の間隔(E)に対して7~18[%]の範囲にあり、
前記所定の隙間(F)を通して、外部から供給された潤滑油(O)を前記ブシュ突出部(23a)の周りに溜めて油溜り(35)を形成し、該油溜りの潤滑油(O)を前記ブシュの端面(23b)と前記外プレート(27)の内側面(27b)との間を通って前記ブシュ(23)と前記ピン(29)との間の軸受部(11)に供給してなる、
ことを特徴とするノンシールローラチェーンにある。
【0012】
例えば図5を参照して、前記ブシュ突出部(23a)に、該ブシュ(23)の内周面と外周面とを連通する連通部(31)を形成してなる。
【0013】
前記連通部は、前記ブシュの端面(23b)から形成された所定深さの溝(31)である。
【0014】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲に記載の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る本発明によると、ブシュを内プレートの外側面より突出し、該突出したブシュの端面を外プレートの内側面に当接して、内プレートと外プレートとの間の隙間を所定量確保したので、簡単な構成でありながら、該所定の隙間へ向けての潤滑油の供給を容易かつ確実にすると共に、該所定の隙間に保持し得る潤滑油量を確保し、潤滑油を軸受部に容易かつ確実に供給することができると共に、潤滑油の飛散による周囲の汚れ及び搬送物品への付着を低減することができる。外部から供給される潤滑油は、ブシュ突出部との間の粘着力により該ブシュ突出部の周りに油溜りとなって保持され、かつ該油溜りを形成する前記所定の間隔は、外プレート内側面間隔に対して7~18[%]の広い間隔であり、上記油溜りに保持される潤滑油は多く、該油溜りに保持された多量の潤滑油は、ブシュ端面と外リンクプレート内側面との間の狭い隙間による毛細管現象により確実に軸受部に導入される。これにより、軸受部は、充分な量の潤滑油により潤滑され、かつ該軸受部の潤滑油は、チェーンの屈曲及びピンに対するブシュの長手方向振動により上記油溜りに保持される多量の潤滑油と適宜循環され、該軸受部の摩擦損を低減すると共に、潤滑不良によるチェーンの早期摩耗及び錆の発生を抑制できる。また、上記油溜りに多量の潤滑油を保持し得ることにより、給油間隔を長くして、管理を容易、簡略化することが可能となり、かつ上記油溜りの潤滑油は、ブシュ突出部との間の粘着力に、内プレート及び外プレートとの間の粘着力が相俟って保持され、シールリング等の別部材及び特別の構造を必要とせず、構成が簡単であると共に、シールリング等による摩擦損がなく、伝動効率、搬送効率を向上することができる。
【0016】
また、前記ブシュ突出量は、前記所定の間隔に対して79~91[%]であるので、上記所定の間隔が外リンクプレート幅に対して7~18[%]であることと相俟って、上記ブシュ突出部周りの油溜りに多量の潤滑油を保持することができ、かつブシュの端面と外リンクプレート内側面との間の狭い間隔による毛細管現象及びブシュ長手方向振動によるポンプ作用によって、潤滑油を軸受部に供給しかつ循環することができる。また、内リンクプレートの内側面の間隔に基づき規定されるスプロケットとの噛合い幅に対して、ブシュとピンとによる軸受部の長さを長くし、上述した軸受部の潤滑を確実にすると共に、ピン長手方向の振動を所定量に保つことができる。
【0017】
請求項に係る本発明によると、ブシュ突出部に連通部を形成したので、ブシュ端面が外プレートの内側面に当接して所定の隙間を確保できるものでありながら、該所定の隙間に供給された潤滑油を上記連通部を通って確実に軸受部に導くことができる。これにより、例えば滴下給油等による潤滑油の供給量を増加することと相俟って該軸受部に十分な量の潤滑油を供給して、ローラチェーンの走行速度を上げることが可能となり、例えば搬送ローラチェーンに適用して、物品の搬送能力を向上することができる。
【0018】
請求項に係る本発明によると、前記連通部が溝であるので、簡単に形成することができ、かつ溝の数、溝幅等を調整することにより、軸受部への潤滑油量を簡単に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態によるローラチェーンを示す正面図。
図2】その一部断面した平面図。
図3】その拡大した断面図。
図4】従来のチェーンと本発明に係るチェーンとの摩耗伸び性能の比較を示す図。
図5】一部変更した断面図。
図6】従来のローラチェーンを示す拡大した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に沿って本発明の実施の形態について説明する。ローラチェーン21は、図1及び図2に示すように、1対の内プレート22,22の両端部をブシュ23,23で結合し、かつ該ブシュ23にローラ25を回転自在に被嵌した内リンク26と、2枚の外プレート27,27の両端部をピン29,29で連結した外リンク30とを、前記ブシュ23にピン29を嵌挿することにより交互に連結して無端状にして構成される。
【0021】
図3に詳示するように、前記ブシュ23は、内プレート22の外側面22aより所定量突出して該内プレート22に固定されている。内プレート22の外側面22a及び内側面並びに外プレート27の外側面及び内側面27bは、それぞれ全面に亘って平坦面からなり、所定板厚の平滑なプレート部材からなる。
【0022】
前記内プレート22から突出したブシュ23の左右突出部23a,23aの端面23bは、外プレート27の内側面27bに当接して、前記内プレート22の平坦な外側面22aと外プレート27の平坦な内側面27bとの間に比較的広い所定の隙間Fを形成する。即ち、ローラチェーン21は、内プレート22及び外プレート27が、従来の標準ローラチェーン1と同じ板厚及び同じ形状のものが用いられ、内プレート22の両内側面間の間隔である内幅Bが、従来の標準ローラチェーン1の内幅と同じであるが、外プレート27の両外側面間の間隔である外幅Iは、従来の標準ローラチェーンより大きくなる。
【0023】
具体的には、上記ローラチェーン21は、内プレート22の内側面間隔をB、外プレート27の内側面間隔をE、ブシュ23の内プレート22の外側面からの突出量をG、内プレート22の外側面と外プレート27の内側面との間の所定の隙間をFとすると、上記所定の隙間Fは、外プレート内側面間隔Eに対して7~18[%]、好ましくは12~15[%]であり、上記突出量Gは、上記所定の隙間Fに対して79~91[%]、好ましくは89~91[%]にある。
【0024】
本ローラチェーン21は、以上のような構成からなるので、従来と同じスプロケット等の装置に巻掛けられて走行する。該ローラチェーン21は、動力伝達又は物品搬送にあって、内リンク26と外リンク30との間に比較的広い所定の隙間Fが存在していても、ブシュの突出部23aの端面23bが外プレート27の内側面27bに当接するため、内リンク26及び外リンク30が幅方向に大きくガタつくことはない。
【0025】
該ローラチェーン21の走行中滴下給油等により、又は走行に際して油差し給油等により、上記比較的広い所定の隙間Fから潤滑油Oが供給される。この際、潤滑油Oは、上記所定の隙間Fに滴下ノズル又は油差しの給油口を合せて容易にかつ周囲に潤滑油を零すことなく確実に給油することができる。該隙間Fに供給された潤滑油Oは、平坦な内プレート22の外側面22aと外プレート27の内側面27bとの間の所定の隙間Fに粘着力(表面張力)により保持される。即ち、外部から供給された潤滑油Oは、上記広い所定の隙間F(=0.07~0.18E)に両プレートとの間の粘着力、特にブシュ突出部23aとの粘着力により保持され、油溜り35となって充分な量が確保される。ブシュ突出部23aの周りの油溜り35に溜められた該潤滑油Oは、該ブシュ端面23bと外プレート内側面27bとの間の隙間(F―G)に毛細管現象により、並びにブシュ23のピン29に対する軸方向の相対移動(振動)によるポンプ作用及び内リンク26と外リンク30との屈曲により、ブシュ23の端面23bと外プレート27の内側面27bとの間の隙間から軸受部11に導かれ、ピン29とブシュ23との間を十分な潤滑状態で滑らかに摺接する。これにより、本ローラチェーン21は、上記軸受部11に十分な潤滑油が確保された状態で走行し、潤滑不足による早期疲労又は錆の発生を防止して、精度の高い走行を長期に亘って維持することができる。
【0026】
特に、上記ローラチェーン21が缶等の物品の搬送用に用いられる場合、滴下給油又は強制ポンプ潤滑を適用してその滴下量を多めに設定し、前記比較的広い隙間Fから上記滴下された多目の潤滑油は、該隙間Fに保持されつつ前記軸受部11に導かれ、該充分な量の潤滑油Oの基で、上記ローラチェーン21の搬送スピードを上げて搬送能力を高めることが可能となる。またこの際、前記所定の隙間Fに多目の潤滑油Oを保持することができ、滴下給油等から多目に供給された潤滑油が周囲に飛散して装置を汚したり、物品に付着して後処理を面倒にすることを低減することができる。
【0027】
前記所定の隙間Fが、外プレート内側面間隔Eに対して7[%]より小さいと、該所定の隙間Fに対する容易かつ確実な潤滑油Oの供給及び油溜り35による潤滑油の確保が不充分となり、18[%]より大きいと、上記内プレート外側面22a及び外プレート内側面27bとの粘着力(表面張力)による潤滑油の保持が不充分となり、潤滑油の飛散を生じ易い。また、前記ブシュ突出部23aの突出量Gが、上記所定の隙間Fに対して、79[%]より小さいと、チェーンの幅方向ガタが大きくなり、ローラチェーンによる滑らかな搬送及び駆動に支障を来たす虞があり、91[%]より大きいと、ブシュ端面23bと外プレート内側面27bとの隙間が小さくなって、上記所定の隙間Fによるブシュ周りの油溜り35から軸受部11への潤滑油の送り込みが不充分となる。
【0028】
上述した内プレート外側面22aからの所定突出量Gのブシュ23の突出により、ブシュ23とピン29との間の軸受部11が軸方向に長くなり、上記充分な潤滑油による広い面積での潤滑により、上述したローラチェーンの潤滑が確実になる。
【0029】
図4は、従来の標準ローラチェーン(細線)と本発明に係るローラチェーン(太線)との摩耗伸びを比較した図である。該比較試験の条件は、給油量;72cm、給油間隔;2時間30分、雰囲気温度;210°C、回転数;460rpm、張力;150kgfである。本発明に係るローラチェーンは、従来のローラチェーンに比して約3倍の摩擦伸び性能を有する。
【0030】
前記実施の形態にあっては、ブシュ23の端面23bが全周面にて外プレート27の内側面27bに当接又は接近するため、その隙間から軸受部11に導かれる潤滑油の量が制限される可能性がある。該制限を解消した実施の形態を図5に沿って説明する。なお、図3に示す実施の形態と同一部分は、同一符号を付して説明を省略する。ブシュ23の突出部23aに、端面23bから幅方向内側に向けて所定深さの溝31を所定数形成する。ブシュ23の端面23bは、上記溝31以外の部分で外プレート27の内側面27bに当接して前記所定の隙間Fは維持される。該隙間Fに保持された潤滑油Oは、前述したブシュ端面23bと外プレート内側面27bとの隙間以外にも、上記溝31を介して軸受部11に導かれる。これにより、比較的大量の潤滑油が滑らかにかつ確実に軸受部11に導かれ、上述したローラチェーン21のスピードアップに対応した潤滑油量を軸受部11に確実かつ正確に供給することが可能となる。
【0031】
前記ブシュ突出部23aに形成される溝31の数、溝幅及び溝形状は、ブシュ突出部23aとの潤滑油の粘着力、即ち前記所定の隙間Fに基づくブシュ突出部周りの油溜りの保持力と、軸受部11に必要とされる潤滑油量とを勘案して適宜設定される。また、溝31を、幅方向に対して斜めに形成して、供給潤滑油量を確保してもよい。前記溝に代えて、前記ブシュ突出部23aに貫通孔を形成してもよく、要は、前記ブシュ突出部の内周面と外周面とを連通する連通部を形成すればよく、該連通部(31)を通って、潤滑油が前記所定の隙間Fから軸受部11に導かれる。
【0032】
なお、上述した実施の形態は、単列ローラチェーンに適用して説明したが、これに限るものではなく、単列ローラチェーンを幅方向に複数並設した2列等の複列ローラチェーンにも同様に適用可能である。この場合、外プレートの内側は、中間プレートになる。
【符号の説明】
【0033】
11 軸受部
21 ローラチェーン
22 内プレート
22a 外側面
23 ブシュ
23a 突出部
23b 端面
25 ローラ
26 内リンク
27 外プレート
27b 内側面
29 ピン
30 外リンク
31 連通部(溝)
35 油溜り
E 外プレート内側面間隔
F 所定の隙間
G ブシュ突出量
O 潤滑油
図1
図2
図3
図4
図5
図6