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特許7170391ラミネート用水性プライマーと水性白色インクジェット用インク組成物セット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】ラミネート用水性プライマーと水性白色インクジェット用インク組成物セット
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/54 20140101AFI20221107BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20221107BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20221107BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20221107BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
C09D11/54
C09D11/30
B41J2/01 501
B41M5/00 120
B41M5/00 132
B32B27/00 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017245612
(22)【出願日】2017-12-21
(65)【公開番号】P2019112504
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋一
(72)【発明者】
【氏名】森安 員揮
(72)【発明者】
【氏名】高橋 恵理
(72)【発明者】
【氏名】佐野 孝明
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-183112(JP,A)
【文献】特開2013-199603(JP,A)
【文献】特開2013-194222(JP,A)
【文献】特開2016-193980(JP,A)
【文献】国際公開第2015/068292(WO,A1)
【文献】特開2013-230638(JP,A)
【文献】特開2016-079390(JP,A)
【文献】特開2017-088646(JP,A)
【文献】特開2012-251062(JP,A)
【文献】特開2017-008292(JP,A)
【文献】特開2011-105915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00-11/54
B41J 2/01
B41M 1/00-99/00
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系樹脂及び/又は酢酸ビニル系樹脂、塩素化ポリオレフィン、及びカルシウム塩を含有する水性プライマー組成物と、
伸び率が500~1500%であるポリエステル系ポリウレタン樹脂エマルジョンを水性白色インクジェット用インク組成物中、固形分で0.1~10.0質量%、顔料分散剤としてスチレンアクリル樹脂、ワックスエマルジョン及び酸化チタンを含有する水性白色インクジェット用インク組成物
との組み合わせを含むインクセット。
【請求項2】
樹脂フィルム用である請求項1に記載のインクセット。
【請求項3】
包装袋用樹脂フィルムの片面に、
アクリル系樹脂及び/又は酢酸ビニル系樹脂、塩素化ポリオレフィン、及びカルシウム塩を含有する層と、
伸び率が500~1500%であるポリエステル系ポリウレタン樹脂を0.5~50.0質量%、顔料分散剤としてスチレンアクリル樹脂、アクリル樹脂、ワックス及び酸化チタンを含有する白色印刷層
を順に形成してなる包装袋用樹脂フィルム。
【請求項4】
包装袋用樹脂フィルムの片面に、
アクリル系樹脂及び/又は酢酸ビニル系樹脂、塩素化ポリオレフィン、及びカルシウム塩を含有する層と、
白色以外の色を有する印刷層と、
伸び率が500~1500%であるポリエステル系ポリウレタン樹脂を0.5~50.0質量%、顔料分散剤としてスチレンアクリル樹脂、アクリル樹脂、ワックス及び酸化チタンを含有する白色印刷層
を順に形成してなる包装袋用樹脂フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネート用水性プライマーと水性白色インクジェット用インク組成物セットに関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂フィルム印刷用水性白色インクジェット用インク組成物は知られているが、このような水性白色インクジェット用インク組成物を用いて、食品包装用等のラミネート用樹脂フィルムに印刷を行う場合、依然ラミネート加工適性が低く、ラミネート強度が不足していた。ラミネート強度が不足すると、水性インクジェット用インク組成物からなる層と、ラミネート層や樹脂フィルムとの間で層間剥離を発生する恐れがある。
樹脂フィルム上に水性インクジェット用インク組成物を用いて印刷する際に、予めカルシウムイオン等を含有するプライマーを塗布しておくことは特許文献1に記載されたように公知である。
また一方のインクが特定の官能基を有する反応性化合物を含有し、他方のインクがその官能基と反応性の官能基を有する化合物を含有する2種のインクを、重ねて印刷することによって、ラミネート加工を行い得るようなインクセットは特許文献2に記載されるように公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-196177号公報
【文献】特開2014-065826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の発明は、単に樹脂フィルム上に印刷を行うときに使用するプライマーとインクジェット用インク組成物であり、裏刷り用として使用できるものではなく、かつその後にラミネートを行なうものでもない。
また上記特許文献2に記載の発明はラミネート用のインクジェット用インク組成物の組み合わせではあるものの、プライマーを用いるものではなく、2種のインクを重ねて印刷を行うに過ぎないものである。
そうすると、ラミネート用の水性インクジェット用インキ組成物において、特定のプライマー組成物との組み合わせ使用によって、ラミネート適性等を向上させることを達成できていなかった。
そして、本発明は、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ナイロン等の樹脂フィルムへ、酸化チタン等を含有する水性白色インクジェット用インク組成物による印刷物のラミネート強度や耐ブロッキング適性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意研究した結果、特定の組成のプライマーと、特定の組成の水性白色インクジェット用インク組成物の組み合わせとしたインクセットを使用することにより、上記課題を解決しうることを見出し、以下の通りの本発明を完成するに至った。
1.アクリル系樹脂及び/又は酢酸ビニル系樹脂、及びカルシウム塩を含有する水性プライマー組成物と、
伸び率が500~1500%であるポリエステル系ポリウレタン樹脂エマルジョンを水性白色インクジェット用インク組成物中、固形分で0.1~10.0質量%、ワックスエマルジョン及び酸化チタンを含有する水性白色インクジェット用インク組成物
との組み合わせを含むインクセット。
2.水性プライマー組成物が塩素化ポリオレフィンを含有する1に記載のインクセット。
3.樹脂フィルム用である1又は2に記載のインクセット。
4.包装袋用樹脂フィルムの片面に、
アクリル系樹脂及び/又は酢酸ビニル系樹脂、及びカルシウム塩を含有する層と、
伸び率が500~1500%であるポリエステル系ポリウレタン樹脂を0.5~50.0質量%、アクリル樹脂、ワックス及び酸化チタンを含有する白色印刷層
を順に形成してなる包装袋用樹脂フィルム。
5.包装袋用樹脂フィルムの片面に、
アクリル系樹脂及び/又は酢酸ビニル系樹脂、及びカルシウム塩を含有する層と、
白色以外の色を有する印刷層と、
伸び率が500~1500%であるポリエステル系ポリウレタン樹脂を0.5~50.0質量%、アクリル樹脂、ワックス及び酸化チタンを含有する白色印刷層
を順に形成してなる包装袋用樹脂フィルム。
【発明の効果】
【0006】
本発明の水性白色インクジェット用インク組成物は保存安定性及び吐出安定性に優れ、ポリプロピレンやポリエチレンテレフタレート等の樹脂フィルム面に印刷を行った後の印刷面の樹脂フィルムに対するラミネート強度も向上した。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<水性プライマー組成物>
本発明における水性プライマー組成物は下記の成分を任意の手段により混合することにより得ることができる。
(アクリル系樹脂)
本発明におけるアクリル系樹脂はエマルジョン又は水溶液の形態で配合される。そのようなアクリル系樹脂としては、単量体として、(メタ)アクリル酸及び(無水)マレイン酸等の不飽和カルボン酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸オレイル、(メタ)アクリル酸エイコシル等の脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-3-ヒドロキシプロピル等のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル、オレフィン系化合物等、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、t-ブチルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、フルオロスチレン、スチレン等のスチレン系単量体、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ベンジル系単量体、(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸フェニル系単量体等を重合してなる樹脂である。これらのアクリル系樹脂は、単独で用いてもよく、また2種類以上組み合わせて用いてもよい。
アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は-30~120℃が好ましく、重量平均分子量は3000~50000が好ましく、酸価は30~500mgKOH/gが好ましい。
プライマー組成物中のアクリル系樹脂の配合量は固形分として1~20質量%が好ましい。
【0008】
(酢酸ビニル系樹脂)
本発明における酢酸ビニル系樹脂はエマルジョン又は水溶液の形態で配合される。そのような酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニル単量体が50モル%以上である樹脂である。酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルホモポリマーや、酢酸ビニルと、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマーおよびその無水物等とのコポリマーを採用でき、必要に応じて部分けん化又はけん化度100%けん化してもよい。
酢酸ビニル系樹脂の重量平均分子量は3000~50000が好ましく、プライマー組成物中の酢酸ビニル系樹脂の配合量は固形分として1~20質量%が好ましい。
【0009】
(カルシウム塩)
カルシウム塩としては有機酸及び無機酸のいずれのカルシウム塩でも良い。具体的な有機酸としては、脂肪酸アニオンRCOO-におけるRの炭素数が1以上30以下であるものを好ましく挙げることができる。このような脂肪酸として、酢酸、プロピオン酸、オクチル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等が挙げられる。これらの中でも、脂肪酸アニオンRCOO-におけるRの炭素数が1以上10以下であるものがより好ましく、1以上5以下であるものがさらに好ましい。このような脂肪酸としては、酢酸等が挙げられる。
また無機酸のカルシウム塩としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等のカルシウム塩が好ましく、中でも塩酸や硝酸のカルシウム塩がより好ましい。
【0010】
プライマー組成物全体に対するカルシウム塩の添加量は、0.3~5.0質量%である。添加量をこの範囲とすることにより、プライマー層上に形成した水性インクジェット用インク組成物を速やかに凝集させることができる。そして、その結果としてプライマー層と水性インクジェット用インク組成物層の間をより密着に積層させることができる。
【0011】
(塩素化ポリオレフィン)
本発明中にて使用してもよい塩素化ポリオレフィンはエマルジョン形態でプライマーに配合される。その原料として使用されるポリオレフィンは、特に限定されないが、結晶性ポリプロピレン、非晶質ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合物、エチレン-プロピレン-ジエン共重合物、エチレン-プロピレン-α-オレフィン共重合物、プロピレン-α-オレフィン共重合物、エチレン-酢酸ビニル共重合物などを例示することができる。
なお、ポリ塩化ビニルを包含してもしなくてもよい。
本発明の組成物中の塩素化ポリオレフィンの含有量は、好ましくは0.2質量%以上であり、さらに好ましくは0.3~20質量%、より好ましくは1.5~15質量%である。0.2質量%未満であると、プライマー組成物の基材に対する密着性が低下する可能性がある。
【0012】
エチレン-プロピレン-α-オレフィン共重合物、プロピレン-α-オレフィン共重合物は、それぞれ、主体としてのエチレン-プロピレン、プロピレンと、α-オレフィンとが共重合して得られる樹脂である。共重合物の形態に特に制限はなく、ブロック共重合物及びランダム共重合物などを例示することができる。α-オレフィン成分としては、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテンなどを例示することができる。なお、プロピレン-α-オレフィン共重合物を原料として用いた場合、プロピレン成分の含有量は50モル%以上であることが被印刷物であるポリオレフィン樹脂に対する密着性の点から好ましい。
【0013】
エチレン-酢酸ビニル共重合物は、エチレンと酢酸ビニルモノマーを共重合して得られる樹脂である。エチレン-酢酸ビニル共重合物のエチレンと酢酸ビニルとのモル比は特に限定されないが、酢酸ビニル成分が5~45モル%であることが、極性物質との接着性、塗膜強度の点から好ましい。
【0014】
本発明中の塩素化ポリオレフィンの原料として使用されるポリオレフィン樹脂は、1種類単独であってもよいし、2種類以上の組み合わせであってもよい。また、ポリオレフィン樹脂の融点は、100~180℃であることが好ましく、120~170℃であることがより好ましい。
本発明中の塩素化ポリオレフィンの塩素化度は、通常、10~50であり、好ましくは15~40、より好ましくは20~30、更に好ましくは20~25である。塩素化度が10~50であることにより、ポリオレフィン系基材との付着性を良好に保つことができる。塩素含有率はJIS-K7229に準じて測定した値である。
【0015】
本発明中の塩素化ポリオレフィンの重量平均分子量は特に限定されないが、3,000~200,000であることが好ましい。重量平均分子量が3,000以上であることにより、塩素化ポリオレフィンの凝集力及び基材への密着性を良好に保つことができる。200,000以下であることにより単官能モノマーとの相溶性を良好に保つことができる。
なお、本発明中の塩素化ポリオレフィンの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定されたポリスチレン樹脂を標準とした値である。
【0016】
塩素化ポリオレフィンには、通常、安定剤が添加される。安定剤としてはエポキシ化合物が例示される。エポキシ化合物は、特に限定されないが、塩素化樹脂と相溶するエポキシ化合物が好ましい。エポキシ化合物としては、エポキシ当量が100から500程度で、一分子当たり1個以上のエポキシ基を有する化合物が例示できる。エポキシ化合物としては例えば、以下の化合物が挙げられる:天然の不飽和基を有する植物油を、過酢酸などの過酸でエポキシ化して得られるエポキシ化植物油(エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油など);オレイン酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸等の、不飽和脂肪酸をエポキシ化したエポキシ化脂肪酸エステル類;エポキシ化テトラヒドロフタレートなどのエポキシ化脂環化合物;ビスフェノールA又は多価アルコールとエピクロルヒドリンとを縮合して得られる、例えば、ビスフェノールAグリシジルエーテル、エチレングリコールグリシジルエーテル、プロピレングリコールグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等のエーテル類;及び、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、sec-ブチルフェニルグリシジルエーテル、tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、フェノールポリエチレンオキサイドグリシジルエーテル等に代表される、モノエポキシ化合物類。安定剤としては、ポリ塩化ビニル樹脂の安定剤として使用されている安定剤も例示される。さらに該安定剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸鉛等の金属石鹸類、ジブチル錫ジラウレート、ジブチルマレート等の有機金属化合物類、ハイドロタルサイト類化合物が挙げられる。安定剤は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。安定剤を添加する場合の添加量は、塩素化ポリオレフィンに対し 1~20重量%(固形分換算)であることが好ましい。
本発明中の塩素化ポリオレフィンは、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体が導入されている酸変性塩素化ポリオレフィンであってもよい。α,β-不飽和カルボン酸及びその誘導体としては、例えばマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、無水ハイミック酸、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体の導入量は特に制限されないが、塩素化ポリオレフィン100重量%に対し0~20重量%が好ましく、0~10重量%であることがより好ましい。
【0017】
(その他の成分)
本発明における水性プライマー組成物には、水溶性溶剤、ワックス、防腐剤、シリコン・フッ素界面活性剤、架橋剤、可塑剤、中和するためのpH調整剤等を配合することができる。
【0018】
<水性白色インクジェット用インク組成物>
本発明の水性白色インクジェット用インク組成物は、予め白色ベースインクを調製し、これに下記のポリエステル系ポリウレタン樹脂エマルジョン、ワックスエマルジョン、界面活性剤、水及び水溶性有機溶剤を配合して得ることができる。
(白色ベースインク)
白色ベースインクは、アクリル系樹脂水溶液を主とする樹脂ワニスに、白色顔料等の顔料を白色ベースインク中10~50質量%となるように配合し、さらに水や水溶性有機溶媒を配合して得ることができる。
【0019】
(ポリエステル系ポリウレタン樹脂エマルジョン)
ポリエステル系ポリウレタン樹脂エマルジョンはその伸び率が500~1500%であることが必要であり、エマルジョンの形態で水性白色インクジェット用インク組成物に配合される。伸び率が500未満又は1500%を超えると、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムに対するラミネート強度に劣る。
そして本発明における水性白色インクジェット用インク組成物中のポリエステル系ポリウレタン樹脂エマルジョンの固形分濃度は0.1~10.0質量%、各効果をバランス良く向上させるために好ましくは3.0~7.0質量%である。0.1質量%未満であると延伸ポリプロピレンやPETのフィルムに対するラミネート強度に劣り、10.0質量%を超えると保存安定性や吐出安定性に劣ることになる。
また、水性白色インクジェット用インク組成物からなる乾燥被膜中のポリエステル系ポリウレタン樹脂エマルジョンに由来する固形分の濃度は、乾燥された被膜中0.5~50.0質量%とすることが必要である。0.5質量%未満であると延伸ポリプロピレンやPETのフィルムに対するラミネート強度に劣り、50.0質量%を超えるような水性白色インクジェット用インク組成物は、保存安定性や吐出安定性に劣ることになる。
本発明におけるポリエステル系ポリウレタン樹脂エマルジョンの伸び率は、ポリエステル系ポリウレタン樹脂エマルジョンを予備乾燥として室温×15時間、本乾燥として80℃×6時間、120℃×20分の条件で乾燥させて得た膜厚500μmの被膜を、引張試験機ゲージ長20mm及び引張速度100mm/分の条件下で測定し、下記式により算出された値を採用することができる。
(被膜の表面が断裂するまでの被膜の長さ/引張試験を行う前の長さ)×100(%)
【0020】
このようなポリエステル系ポリウレタンとしては、脂肪族ポリエステル系ポリウレタン樹脂エマルジョン及び芳香族ポリエステル系ポリウレタン樹脂エマルジョンのいずれでも良い。
ポリエステル系ポリウレタンの原料であるポリエステルは、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸などの脂肪族酸、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、ジメチルイソフタル酸、テレフタル酸、ジメチルテレフタル酸などの芳香族酸、トリメリット酸、無水テトラヒドロフタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸などの多塩基酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、ジメチルプロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのジオールやグリコール類から得られたポリエステルを採用できる。
また、グリコール類を開始剤として得られるポリγ-ブチロラクトンやポリε-カプロラクトンなどの開環重合ポリエステルポリオール、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオールなどのポリ炭酸エステルジオール等のラクトンポリエステルポリオールもポリエステルとして使用できる。
【0021】
ポリエステル系ポリウレタンの原料であるジイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート化合物、リジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート化合物、イソフォロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの無黄変型ジイソシアネート化合物、ダイマー酸ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0022】
さらにポリエステル系ポリウレタンを得るために、鎖伸長剤として、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジメチルプロパンジオール、ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのグリコール類、グリセリン、トリメチロールプロパンなどのトリオール類、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジンおよびヒドラジン誘導体化合物、ピペラジンおよびピペラジン化合物、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ジフェニルメタンジアミン、キシレンジアミン、イソホロンジアミンなどのアミン化合物を採用することができる。
【0023】
ポリエステル系ポリウレタンは、上記の原料から従来公知の方法によって得られるが、例えば、上記分子量500~5,000の末端OH基含有ポリエステルポリオールと、イソシアネート化合物とから、有機溶剤中で末端NCOのプレポリマーを調製し、得られたプレポリマーを鎖伸長剤によってポリマー化することによって得られる。
そしてポリエステル系ポリウレタンの重量平均分子量は、芳香族ポリエステル系ポリウレタンが1万~20万、好ましくは5万~10万、脂肪族ポリエステル系ポリウレタンが1万~30万、好ましくは5万~20万である。
このようなポリエステル系ポリウレタンとしては、スーパーフレックス740(アニオン性、平均粒子径0.20μm、最低造膜温度5℃以下、伸度1300%)、同500M(非イオン性、平均粒子径0.14μm、最低造膜温度5℃以下、伸度1100%)、同840、及びインプラニールDL1380を使用することができる。
ウレタン樹脂エマルジョンであっても、例えばポリエーテル系ポリウレタン樹脂エマルジョンやポリカーボネート系ポリウレタン樹脂エマルジョンを使用すると、PETフィルムへのラミネート強度に劣ることになる。
また本発明中のポリエステル系ポリウレタンに代えてアクリル樹脂エマルジョンを配合すると、延伸ポリプロピレンやPETのフィルムに対するラミネート強度に劣る。そのため、たとえポリエステル系ポリウレタンを含有させていても、アクリル樹脂エマルジョンを含有させないほうが良い可能性が高い。
【0024】
(ワックスエマルジョン)
本発明の水性白色インクジェット用インク組成物は、さらに、ワックスエマルジョンを含むことが好ましい。
前記ワックスエマルジョンは、印刷物の耐ブロッキング性を向上させる効果を有する。
このようなワックスエマルジョンとしては、パラフィンワックスやポリエチレンワックスのエマルジョンが好ましく、特に好ましくはパラフィンワックスエマルジョンである。パラフィンワックスエマルジョンの具体例としては、AQUACER539(BYK社製)である。またポリエチレンワックスエマルジョン、AQUACER507、同515、同531(いずれもBYK社製)、ハイテックE-6314(固形分35%、ノニオン乳化ポリエチレンワックスエマルジョン、東邦化学工業(株)製)、ハイテックE-1000(固形分35%、ノニオン乳化ポリエチレンワックスエマルジョン、東邦化学工業(株)製)などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
(アセチレンジオール系界面活性剤)
本発明中の水性白色インクジェット用インク組成物には、アセチレンジオール系界面活性剤として、アセチレンジオール骨格を有する化合物を配合できる。本発明の水性インクジェット用インク組成物の印刷(記録)画像のベタ埋まりを良好にする効果を有する。
【0026】
前記アセチレンジオール系界面活性剤の具体例としては、エアープロダクツ社製のサーフィノール104E、サーフィノール104H、サーフィノール104A、サーフィノール104BC、サーフィノール104DPM、サーフィノール104PA、サーフィノール104PG-50、サーフィノール420、サーフィノール440、サーフィノール465、日信化学工業社製のオルフィンE1004、オルフィンE1010、オルフィンE1020、オルフィンPD-001、オルフィンPD-002W、オルフィンPD-004、オルフィンPD-005、オルフィンEXP.4001、オルフィンEXP.4200、オルフィンEXP.4123、オルフィンEXP.4300などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
(水溶性有機溶剤)
本発明中の水性白色インクジェット用インク組成物には、下記のような水溶性有機溶剤を配合できる。
メタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、n-ノニルアルコール、n-デカノール、またはこれらの異性体、シクロペンタノール、シクロヘキサノール等のモノアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール等のジオール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、テトラプロピレングリコール、チオジグリコール等、さらにこれらのアルコールのモノアルキルエステル、モノアルキルエーテル又はジアルキルエーテル等やグリセリン。
アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類。
イソプロピルエーテル、n-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4-ジオキサン等のエーテル類。
プロピレンカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、乳酸エチル、酪酸エチル、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等のエステル類、及びε-カプロラクトン、ε-カプロラクタム等の環状エステル等。
上記窒素含有化合物の例としては、尿素、ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、オクチルピロリドン等が挙げられる。
【0028】
水溶性有機溶剤はこれらを1種以上使用されるものであり、水溶性有機溶剤を配合するときには、水性白色インクジェット用インク組成物中の10~60質量%となるように配合され、好ましくは20~50質量%、さらに好ましくは、20~40質量%となるように配合される。
【0029】
(顔料)
本発明の水性白色インクジェット用インク組成物を構成する顔料としては、従来から白色インク組成物に使用されている酸化チタン、亜鉛華、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の白色顔料を使用することができる。
水性白色インクジェット用インク組成物中の白色顔料の含有量としては、求める白色の程度、隠蔽性等を考慮して任意に選択できるが、1.0~15質量%が好ましい。
なお、白色の色相等を調整するために、白色といえる範囲内において、従来公知の他の顔料を併用することもできる。
従来公知の無機顔料の具体例としては、カーボンブラックリトポン、酸化鉄、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、カオリナイト、モンモリロナイト、タルク、シリカ、アルミナ、カドミウムレッド、べんがら、モリブデンレッド、クロムバーミリオン、モリブデートオレンジ、黄鉛、クロムイエロー、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー、酸化クロム、ビリジアン、コバルトグリーン、チタンコバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、群青、ウルトラマリンブルー、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット、マイカ等が例示できる。
有機顔料の具体例としては、アゾ系、アゾメチン系、ポリアゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アンスラキノン系、インジゴ系、チオインジゴ系、キノフタロン系、ベンツイミダゾロン系、イソインドリン系、イソインドリノン系等の有機顔料が挙げられ、具体的な例をカラーインデックスで示すと、ピグメントブラック7、ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、60、ピグメントグリーン7、36、ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、149、168、177、178、179、206、207、209、242、254、255、ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、94、95、109、110、117、120、125、128、137、138、139、147、148、150、151、154、155、166、168、180、185、ピグメントオレンジ36、43、51、55、59、61、71、74等が挙げられる。
【0030】
(顔料分散剤)
次に、本発明の水性白色インクジェット用インク組成物を構成する顔料分散剤としては、公知の顔料分散剤を用いることができる。顔料分散剤は、顔料に親和する基と、溶剤などに親和する基の双方を有している。
本発明では、溶剤などに親和する基が、樹脂であることが好ましく、例えば、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、マレイン酸樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、αオレフィンマレイン酸樹脂、ウレタン樹脂、エステル樹脂等が挙げられる。顔料分散体を安定化させるという観点から、アクリル樹脂、スチレン-アクリル酸ラウロイル-アクリル酸共重合体等のスチレンアクリル樹脂を使用することが好ましい。
顔料に親和する基としては、顔料の構造もしくは、顔料の構造・極性に近い基が用いられ、それは例えばカルボキシル基、アミノ基等である。
【0031】
(アクリル系樹脂)
本発明の水性白色インクジェット用インク組成物には、水性樹脂ワニスに由来するもの、又は由来しないものとして、上記顔料分散剤として使用したアクリル樹脂以外に、アクリル系樹脂をエマルジョン又は水溶液の形態で配合することができる。そのアクリル系樹脂としては、上記水性プライマー組成物において配合するアクリル系樹脂を構成する単量体と同様の単量体を重合して得ることができる。
これらのアクリル系樹脂は、単独で用いてもよく、また2種類以上組み合わせて用いてもよいが、本発明による効果を毀損しない範囲で配合することが必要である。
【0032】
アクリル系樹脂の使用量は、水性白色インクジェット用インク組成物全量に対して好ましくは0.2~5.0質量%で、より好ましくは0.8~4.0質量%、さらに好ましくは1.0~2.0質量%である。
アクリル系樹脂の合計使用量が0.2質量%未満では基材との定着性が充分でなく、滲みが発生する可能性があり、一方5.0質量%を超えると固形分が増え過ぎるため、吐出安定性が低下する可能性がある。
【0033】
なお、これらの性能が低下しない範囲内で、上記アクリル系樹脂以外の水溶性又は水溶性有機溶媒に溶解する樹脂、例えば、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル系樹脂及びエチレン-酢酸ビニル系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂、スチレン-マレイン酸系樹脂、セルロース系樹脂、マレイン酸樹脂等を併用することも可能である。
【0034】
(その他成分)
さらに、本発明の水性白色インクジェット用インク組成物には、本発明による効果を損なわない範囲において、必要に応じて、他の樹脂を添加でき、さらにアセチレン系等の界面活性剤、可塑剤、表面調整剤、紫外線防止剤、光安定化剤、酸化防止剤等の種々の添加剤を使用することができる。
また、アジピン酸ヒドラジド等のヒドラジン基を少なくとも2個有するヒドラジン誘導体を添加することもできる。その場合には、コロナ放電処理、プラズマ処理等により、表面に水酸基等の極性基が形成されたフィルム表面に対して、その極性基とヒドラジド基の反応に基づいて、水性白色インクジェット用インク組成物からなる被膜の密着性を向上させることができる。
【0035】
(水性白色インクジェット用インク組成物の製造)
次に、これらの材料を用いて本発明の水性白色インクジェット用インク組成物を製造する方法について説明する。
本発明の水性白色インクジェット用インク組成物は、白色顔料ベースインクを得る工程及び水性白色インクジェット用インク組成物を得る工程において、独立して、例えば、湿式サーキュレーションミル、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、DCPミル、アジテータ、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー(マイクロフルイダイザー、ナノマイザー、アルティマイザー、ジーナスPY、DeBEE2000等)、パールミル等の分散機を使用して分散混合して得ることができる。
なお、インクセットとして、各色の水性インクジェット用インク組成物を備えることができる。イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの他に、グリーン、パープル等や、それらの淡色も必要に応じて備えてもよい。
【0036】
<水性白色インクジェット用インク組成物の使用方法>
本発明の水性白色インクジェット用インク組成物は、樹脂フィルム上にベタ印刷することができ、ベタ印刷ではない印刷を行うこともできる。
さらにインクセットを構成するインクジェット用インク組成物としても良い。そのときの使用方法は、例えば以下の通りである。
袋状の包装容器等を構成する樹脂フィルムの片面の全面又は一部に対して、水性プライマー組成物を任意の印刷手段又は塗布手段によって塗布・乾燥する。
得られたプライマー層上に対して、白色以外のカラー水性インクジェット用インク組成物を用いて任意の装置によりインクジェット印刷を行う。多色刷りの印刷を行う場合には、各色を任意の順にインクジェット印刷を行う。次いで水性白色インクジェット用インク組成物を用いて任意の装置によりインクジェット印刷を行う。
続いて、必要に応じて接着剤層を介在させて、該包装容器の内面側になる樹脂フィルムを白色水性インクジェット用インク組成物の層の上にラミネートする。
得られた積層フィルムを任意の手段によって袋等に加工する。
【実施例
【0037】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を、「部」は質量部を意味する。
<水性樹脂ワニス>
ガラス転移温度40℃、重量平均分子量30,000、酸価185mgKOH/gの、アクリル酸/アクリル酸n-ブチル/ベンジルメタクリレート/スチレン共重合体20質量部を水酸化カリウム2.5質量部と水77.5質量部との混合溶液に溶解させて、固形分20%の水性樹脂ワニスを得た。
【0038】
<白色顔料ベースインクの調製>
上記水性樹脂ワニスの40.0質量部に水20.0質量部を加え混合し、顔料分散用樹脂ワニスを調製した。このワニスに、更に酸化チタン(商品名 R-960、デュポン社製)の40質量部を加え、攪拌混合後、湿式サーキュレーションミルで練肉を行い、白色顔料ベースインクを調製した。
表2に示す配合となるように、各種顔料インクベースを用いて、実施例1~6、比較例1~8の水性白色インクジェット用インク組成物を調整した。
【0039】
<界面活性剤>
サーフィノール465(有効成分100%、HLB13、エアープロダクツ社製)
<樹脂エマルジョン>
インプラニール DL1380(ポリエステル系ウレタンエマルジョン、住化コベストロウレタン社製)
スーパーフレックス 740(ポリエステル系ウレタンエマルジョン、第一工業製薬社製)
スーパーフレックス 500M(ポリエステル系ウレタンエマルジョン、第一工業製薬社製)
スーパーフレックス 840(ポリエステル系ウレタンエマルジョン、第一工業製薬社製)
スーパーフレックス 210(ポリエステル系ウレタンエマルジョン、第一工業製薬社製)
インプラニール DLP-R(ポリエステル系ウレタンエマルジョン、住化コベストロウレタン社製)
スーパーフレックス 130(ポリエーテル系ウレタンエマルジョン、第一工業製薬社製)
スーパーフレックス 460(ポリカーボネート系ウレタンエマルジョン、第一工業製薬社製)
ヨドゾール AD137(アクリルエマルジョン、ヘンケル社製)
【0040】
<ワックスエマルジョン>
AQUACER539(固形分35%、BYK社製)
【0041】
<水性白色インクジェット用インク組成物の印刷評価>
(保存安定性)
表2に記載の実施例1~6、比較例1~8の水性白色インクジェット用インク組成物をガラス瓶に充填し、60℃で7日間静置した後、水性顔料型インクジェット用インク組成物の粘度を測定して、保存安定性を評価した。
評価基準
○:初期粘度からの変化率が10%未満のもの
△:初期粘度からの変化率が10%以上、15%未満のもの
×:初期粘度からの変化率が15%以上のもの
【0042】
(吐出安定性)
実施例1~6、比較例1~8の水性白色インクジェット用インク組成物を、エプソン社製プリンターPX105により、写真用紙〈光沢〉(セイコーエプソン社製)に印字を行い、吐出安定性を評価した。
評価基準
○:印字の乱れがなく、安定して吐出できるもの
△:多少印字の乱れがあるものの、吐出できるもの
×:印字の乱れがあり、安定して吐出できないもの
【0043】
(耐ブロッキング性)
片面にコロナ放電処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡(株)製、E-5102、厚さ12μm、以後PETフィルムと記載)の処理面、又は片面にコロナ放電処理を施した二軸延伸ポリプロピレンフィルム(商品名:パイレン P-2161、厚さ25μm、東洋紡(株)製、以後OPPフィルムと記載)の処理面にプライマーを塗布し、実施例1~6、比較例1~8のインク組成物をエプソン社製プリンターPX105のカートリッジに詰めて印刷後、印刷面とフィルム裏面を重ね合わせて、それに9.8×104Pa(1kgf/cm)の圧力をかけた。24時間放置後剥離し、耐ブロッキング性を評価した。
○:印刷被膜の剥離が全くない
×:印刷被膜が剥離し、剥離抵抗が強く感じられる
【0044】
(ラミネート強度:ドライラミネート法)
上記PETフィルムとOPPフィルムに表1に記載のプライマーを塗布し、該プライマーによる層の上に、実施例1~6、比較例1~8の水性白色インクジェット用インク組成物をエプソン社製プリンターPX105のカートリッジに詰めて印刷後、印刷層上にイソシアネート系接着剤(武田薬品工業(株)、タケネートA-385/タケラックA-50酢酸エチル溶液)を塗布し、ドライラミネート機にてCPPフィルムを積層し、ラミネート加工物を得た。これらのドライラミネート加工物を40℃で3日経時後、試料を15mm幅の短冊状に切断し(株)安田精機製作所製剥離試験機を用いてT型剥離強度を測定した。
評価基準
○:剥離強度が100g/15mm幅以上
△:剥離強度が50g/15mm幅以上、100g/15mm未満
×:剥離強度が50g/15mm幅以下
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
本発明に基づく各実施例によれば、保存安定性、吐出安定性、耐ブロッキング性、ラミネート強度に優れた。
これに対して、ポリエステル系ポリウレタン樹脂エマルジョンを使用しない比較例1及び7によれば、OPP及びPETフィルムに対するラミネート強度に劣っていた。またポリエステル系ポリウレタン樹脂エマルジョンを過剰に配合した比較例2によれば保存安定性と吐出安定性に劣っていた。
さらにポリエステル系ポリウレタン樹脂エマルジョンの伸び率が本発明の範囲外である比較例3及び4、さらにポリウレタン樹脂エマルジョンであるが、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂エマルジョンやポリカーボネート系ポリウレタン樹脂エマルジョンを添加した比較例5及び6によれば、PETフィルムへのラミネート強度に劣っていた。またポリエステル系ポリウレタン樹脂エマルジョンの伸び率が本発明の範囲内であっても、ワックスエマルジョンを使用しない比較例8によれば耐ブロッキング性に劣っていた。