(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】微生物に対する、分子の阻害能力を特徴付けるための、方法およびデバイス
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/18 20060101AFI20221107BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
C12Q1/18
C12M1/34 B
(21)【出願番号】P 2017549847
(86)(22)【出願日】2015-11-30
(86)【国際出願番号】 FR2015053258
(87)【国際公開番号】W WO2016097518
(87)【国際公開日】2016-06-23
【審査請求日】2018-09-13
【審判番号】
【審判請求日】2020-11-30
(32)【優先日】2014-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】304043936
【氏名又は名称】ビオメリュー
【氏名又は名称原語表記】BIOMERIEUX
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】トゥールノー, マウト
(72)【発明者】
【氏名】マエー, ピエール
【合議体】
【審判長】上條 肇
【審判官】川合 理恵
【審判官】長井 啓子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-255445(JP,A)
【文献】特表2008-523820(JP,A)
【文献】特表2009-529670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
あらかじめ決定されたタイプの微生物に対する、分子の阻害能力を定量化する数量
を決定するための方法であって、
- それぞれが、前記タイプの微生物の少なくとも1つ、該微生物のための栄養培地、および試料中に存在する前記タイプの微生物につき初期量の該分子を含む、複数の試料を調製すること(50)であって、前記初期量は、あらかじめ決定された試料の区分けに応じて、範囲
内で増加する、複数の試料を調製すること(50)、
- 試料をインキュベーションすること、
- 各試料について、あらかじめ決定されたインキュベーション時間の時間に応じて、試料中の微生物の増殖を測定すること(50)、および
- 試料中の微生物の増殖の測定値に応じて、数量
を決定すること(52)
を含む方法であり、
数量
の決定(52)が、
- 各試料について、試料中の微生物の増殖の測定値に基づいて前記タイプの微生物の増殖を反映する値の計算(66)、
- 試料の区分けに応じた、試料について計算された値の区分け(68)、および
- 区分けされた値の変動に応じた数量
の決定(70)
を含むことにより特徴付けられ、
- 微生物の増殖を、
・ 第一の、期間λの遅滞フェーズ、
・ それに続く第二の、対数空間において最大傾斜μの指数関数的増殖フェーズ、および
・ それに続く第三の、最大値Aの静止フェーズ
を含む時間に応じて、増殖のモデルによりモデル化すること
を含み、
時間に応じた前記タイプの微生物の増殖を反映する値が、最大傾斜μの推定値および/または遅滞フェーズλの期間の推定値であることにより特徴付けられ
、
- 数量
が、試料中の微生物の増殖が少なくとも部分的に阻害される、範囲
を含むこと、
- 試料の区分けに応じた初期量の該分子が、
・ 数個の試料について一定であり、試料中の微生物の増殖の阻害がないように選択される範囲
の下限
に等しい第一の部分、
・ それに続く、
から
へ狭義増加する、第二の部分、
・ それに続く、数個の試料について一定であり、試料中の微生物の増殖の完全な阻害があるように選択される範囲
の上限
に等しい第三の部分
を含むこと、
- 範囲
の決定が、
・ 前記変動がおおよそ静止する2つの端のゾーンの間に区分けされた値の変動における移行ゾーンを同定すること、及び
・ 同定された移行ゾーンの試料に対応する範囲であるように、範囲
を決定すること
を含む、方法。
【請求項2】
移行ゾーンの同定が、区分けされた値の変動の2つの変曲点を決定することを含み、移行ゾーンが決定された2つの変曲点により境界を示されることにより特徴付けられる、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
移行ゾーンの同定が、2つの端の直線的セグメントおよび該2つの端の直線的セグメントの間の中間の直線的セグメントのみを含む区分的線形連続関数により、区分けされた値の変動をモデル化することを含み、中間の直線的セグメントが移行ゾーンであることにより特徴付けられる、請求項
1または
2に記載の方法。
【請求項4】
数量
が、微生物の増殖を完全に阻害する、分子の最小の初期数量Q
MICを含むこと、および前記初期の最小阻害量Q
MICが、範囲
の上限
と等しく選択されることにより特徴付けられる、請求項
1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
の下限
が、抗生物質のゼロ量であることにより特徴付けられる、請求項1から
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
- 試料中の細菌の増殖の測定、および前記測定値に応じた数量
の決定が、試料のインキュベーション時間に応じた数量
の数列が得られるように、インキュベーション時間を増加させるために行われること、
- 方法が、インキュベーション時間に応じた前記数列の安定性の分析を含むこと、並びに
- 数量
が、数列が安定化した後の数列の値であること、
により特徴付けられる、請求項1から
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
試料がそれぞれ、初期に少なくとも100の微生物、および好ましくは少なくとも500の微生物を含むことにより特徴付けられる、請求項1から
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
試料がそれぞれ、微生物の増殖を阻害することができる第二の異なる分子の初期量、とりわけ、全ての試料について同一の初期量を含むことにより特徴付けられる、請求項1から
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記タイプの微生物につき最小量の分子が、試料中の分子の濃度であり、試料中の前記タイプの微生物の初期濃度が、試料の区分けに応じて一定であることにより特徴付けられる、請求項1から
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
微生物が細菌であり、分子が抗生物質であることにより特徴付けられる、請求項1から
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
微生物が酵母またはカビであり、分子が抗真菌剤であることにより特徴付けられる、請求項1から
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
栄養培地が、蛍光性分子の形態で、該微生物により代謝され得る要素を含むこと、および試料中の微生物の増殖の測定が、試料の蛍光の測定であることにより特徴付けられる、請求項1から
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
試料の吸光度が後者中に存在する微生物の数量に応じて変動すること、および試料中の微生物の増殖の測定が光学密度の測定であることにより特徴付けられる、請求項1から
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
複数の試料の産生が、オイル中に試料を形成する液滴列の調製を含むことにより特徴付けられる、請求項1から
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
あらかじめ決定されたタイプの微生物に対する、分子の阻害能力を定量化する数量
を推定するためのデバイスであって、
- 複数の試料を調製するための手段であって、それぞれが前記タイプの微生物の少なくとも1つ、該微生物のための栄養培地、および試料中に存在する前記タイプの微生物につき初期量の該分子を含み、前記初期量が、試料のあらかじめ決定された区分けに応じて範囲
内で増加する手段、
- 試料をインキュベーションするための手段、
- あらかじめ決定されたインキュベーション時間の時間に応じて各試料中の微生物の増殖を測定するための手段、ならびに
- 試料中の微生物の増殖の測定値に応じて、数量
を決定するための計算手段
を含むデバイスであって、該計算手段が、
- 各試料について、試料中の微生物の増殖の測定値に応じて前記タイプの微生物の増殖を反映する値の計算、
- 試料の区分けに応じた、試料について計算された値の区分け、および
- 区分けされた値の変動に応じた数量
の決定
を行うことができることにより特徴付けられ
、
- 数量
が、試料中の微生物の増殖が少なくとも部分的に阻害される、範囲
を含むこと、
- 試料の区分けに応じた初期量の該分子が、
・ 数個の試料について一定であり、試料中の微生物の増殖の阻害がないように選択される範囲
の下限
に等しい第一の部分、
・ それに続く、
から
へ狭義増加する、第二の部分、
・ それに続く、数個の試料について一定であり、試料中の微生物の増殖の完全な阻害があるように選択される範囲
の上限
に等しい第三の部分
を含むこと、
- 範囲
の決定が、
・ 前記変動がおおよそ静止する2つの端のゾーンの間に区分けされた値の変動における移行ゾーンを同定すること、及び
・ 同定された移行ゾーンの試料に対応する範囲であるように、範囲
を決定すること
を含む、
デバイス。
【請求項16】
請求項1から
14のいずれか一項に記載の方法を実行するのに適していることにより特徴付けられる、請求項
15に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物の増殖に対する分子の阻害能力、とりわけ細菌の増殖に対する抗生物質の阻害能力および酵母またはカビの増殖に対する抗真菌剤の阻害能力の分析の分野に関連する。
【背景技術】
【0002】
細菌に対する抗生物質の活性は、とりわけ「最小阻害濃度」またはMICによって特徴付けられ、それは、細菌の集団と混合されその増加を完全に阻害する、抗生物質の最小濃度として定義される。
【0003】
MICを測定するために使用される第一の技術は、例えば実験室技術者のため、初期濃度の細菌であって前記濃度が全てのチューブについて同一であるもの、細菌のための栄養培地、およびラックに配置されるチューブの順番に応じて増加する初期濃度の抗生物質を含む、数個の透明な壁で囲まれたチューブを調製することからなる。チューブが抗生物質の濃度勾配をもって調製された後、技術者は、次に、チューブをインキュベーターに置く。チューブ内の抗生物質の濃度が、細菌の増殖を阻害するのに低すぎる場合、チューブ内に濁度が現れ、濁度は細菌の集団が増加するにつれてより大きくなる。与えられたインキュベーション時間の後、実験室技術者は、次に、チューブを視覚的に調査し、いかなる濁度も示さないチューブの中で最も低い抗生物質濃度に等しい、MICを同定する。かかる方法の精密でない性質は、すぐに評価され得るであろう。調製されるチューブの数が、非常に少なく(通常10未満)、それは、MICに対して高い正確さを与えないというだけでなく、加えて、後者の同定は、チューブ中の濁度の存在または非存在について、技術者の判断に依存する。
【0004】
デバイスおよび方法は、従って試料中の抗生物質の濃度に対しての精密さおよび試料中の細菌の増殖の検出の頑健性のいずれをも増加させるため、開発されてきた。より具体的には、デバイスは、現在、大量の細菌試料を調製する能力があり、そのそれぞれが、それら自身の抗生物質濃度を含み得るし、それらは、たとえば蛍光または光学密度といった、試料中の細菌集団のサイズに依存する数量を自動的にかつ正確に測定する能力がある。とりわけ、L. Baraban et al.による論文「Millifluidic droplet analyser for microbiology」, Lab on Chip, 2011, 11, 4057に記載されているデバイスは、マイクロリットルより少ない体積を有する液滴列を産生し、細菌、栄養培地および抗生物質の構成が精密に調整され得る。かかるデバイスは、とりわけ、それぞれが、固定された初期の総数の細菌、および列中の液滴の位置に応じて減少する初期濃度の抗生物質を含む、一定な体積の数百から数千の液滴の列を産生することを可能にする。
【0005】
図1における概略図を参照すると、このデバイス10は、液滴列の産生のため、以下を含む:
- 制御可能なフロー速度を有し、それぞれ、細菌の水溶液、栄養の水溶液および抗生物質の水溶液を含有する、3つのシリンジ12、14、16。シリンジ12、14、16は、制御された方法で、それらの内容物をジャンクション18に注入し、そこでそれらが混合されて水溶液が形成される。;および
- 制御可能なフロー速度を有し、それぞれ、第一のオイルおよび第二のオイルを含有する、2つのシリンジ20、22であって、それは、水溶液と混ざらず、かつ互いに混ざらない。これらのシリンジの内容物は、ジャンクション24のレベルで注入される。このジャンクションは、ジャンクション18からの水溶液も受け取り、透明なメインチューブ26に開いている。たとえばヒドロフルオロエーテルタイプ、とりわけHFE-7500(登録商標)といった第一のオイルは、その中にジャンクション18からの水溶液の液滴が預けられる連続媒体として役立つ。第二の、ミネラル、オイルは、液滴を引き離すための要素を形成するために使用される。とりわけ、水溶液の各液滴が第一のオイル中に形成された後、第二のオイルの液滴が第一のオイル中に預けられる。
【0006】
図2を参照すると、シリンジ12、14、16、20、22は、体積、およびチューブ26における細菌溶液の液滴の引き離しのいずれに関しても一様である列を得るためにコンピューターにより制御されている。
図2は、第一のオイル28中に連続して形成され、第二のオイルからなる液滴S
k-1、S
k、S
k+1に間隔を空けることにより互いから離れた、細菌溶液の3つの液滴G
k-1、G
kおよびG
k+1を示す。特に注目すべきは、液滴G
k-1、G
kおよびG
k+1が液滴列中のそれらの位置により自然に、あるいは整数またはインデックスkにより同等に参照されることである。整数「1」は従って分析器により調査される列中で、最初に形成された液滴に対応する。最初の3つのシリンジ12、14、16の内容物は、コンピューターの制御下で、以下を含む液滴を与える:
- 曲線30により示されるように、同一の初期濃度
の細菌または一定の初期数N
0の細菌;
- および、曲線32により示されるように、液滴列中の液滴の位置kに応じて減少する初期濃度
の抗生物質。
【0007】
液滴中の細菌集団の検出のためのセクションのため、デバイス10は、以下を含む:
- メインチューブ26と平行な第二チューブ28、チューブ26または第二チューブ28のいずれかにシリンジ20からオイルを注入するための制御可能なバルブ30、ならびにメインチューブ26の初めと終わりにそれぞれ配置され、開位置および閉位置の間で制御可能な2つのバルブ32、34。従って、バルブ30、32、34は、コンピューター制御下で、メインチューブ26において逆方向の2つのフロー「A」および「B」を定義することを可能にし、従って透明なチューブ26における液滴の往復運動36を定義することを可能にする;および
- 特定の波長における液滴の蛍光を測定するため、チューブ26の反対側に配置された検出システム38。
【0008】
とりわけ、液滴中に含有される細菌は、自然にまたは人為的に(たとえば蛍光性タンパク質をコードする遺伝子の、細菌のゲノム中における組み込みにより)のいずれかで蛍光性である分子を含む。変形として、液滴の栄養培地は、蛍光性分子の形態の、細菌により代謝され得る要素を含む。従って、液滴の蛍光は、それが含有する細菌の数に直接的に依存する。検出システム38は、蛍光性分子の蛍光波長を励起しこの励起により誘導された蛍光を測定するために、メインチューブ26上に光スポットを形成する要素および回路のセットを含む。従って、液滴G
k-1、G
kおよびG
k+1,の左方向の動きを説明する
図3Aを参照すると、それらのそれぞれがシステム38の検出スポット35を通過する。システム28の前の、液滴G
k-1、G
kおよびG
k+1の通過により誘導される測定シグナルは、
図3Bに説明されるようなシグナル、すなわちおよそストローブパルス
の形態のパルス列を生成する。
【0009】
デバイス10は、液滴のセットの、迅速なスポット35の通過を許す。全ての液滴の、スポット35の通過は、実際に1分未満かかり得る。スポット35の前の通過の頻度および/または測定の頻度は、その部分として、往復運動のスピードと独立して制御され得る。細菌のため、たとえば液滴の蛍光が1時間につき約8回あるいは7から8分ごとに約2hから16h測定される。
【0010】
操作中、デバイス10は、従って、メインチューブ26中に、N個の液滴の列を産生し、その後、シリンジ20およびバルブ30、32は、チューブ26における液滴の往復運動を生み出すように制御され、そのため、液滴のそれぞれが、その蛍光を測定する検出器システム28の前を一定の間隔ごとに通過する。測定サイクルは、従って、それらを測定するための、スポット35を介する液滴のセットの通過からなる。測定サイクル「p」の間、液滴は異なる時点で測定され、液滴「k」の測定の時点は、
に等しい。時点
に関して、それは、p回目のサイクルの間の最後の液滴の測定の時点、すなわち、p回目の測定サイクルの間の往復運動の方向に応じた測定
または
の時点である。
【0011】
測定シグナルは、その後、それぞれ測定されたパルス
から値
、たとえば、各パルスのプラトーの平均値まで減らすよう、コンピューターにより処理され、このように生成された値
は、それらの取得時点
とともにコンピューターに保存される。値
は、従って液滴中に含有される細菌の数量を代表する。従って、各液滴kについて、時点
までの、測定時点
のセットに対応する測定値
のセットが生成される。とりわけ、各取得時点
は、液滴の具体的なインキュベーション時間に対応する。
【0012】
図4Aおよび4Bは、たとえば、それぞれ第一の測定サイクルについて、および
分に対応する測定サイクルについて、液滴k
の数kに応じた値
を示す。これらの図は、濃度10
-4μg.mL
-1未満の精密さで一定の間隔ごとに0.0015μg.mL
-1から0.03μg.mL
-1へ変動する濃度の抗生物質「セフォタキシム」(またはCTX)とともに、それぞれ初期に1000のE. coli細菌を含む1300の液滴の産生に対応する。これらの図から、液滴のいくつかについて、それらの測定値
は、それらのそれぞれの初期の時点
に対して増加し、従って、これは、それらが含有する細菌の集団の増殖を指し、推論として、それらが含有する抗生物質の初期濃度がこの増殖を完全に阻害するのに不十分であったことを指すことを理解することができる。
図5は、0から1400分の間の測定時点のセットに応じた同じ現象を説明する。
【0013】
その結果、最小阻害濃度MICは、十分であると評価される時間の間、液滴をインキュベーションし、その後、最後の測定サイクルpの液滴を、2つのセット、すなわち、その測定シグナル
がそれらの初期のシグナル
とおおよそ同一のままであるものおよびそれらの測定シグナル
がそれらの初期のシグナル
より大きいものに分けることにより決定される。数
は、従って、これらの2つのセットに液滴を分けることにより決定される。濃度勾配は、液滴の数kに応じて定義されるため、MIC濃度は、その結果、数
の液滴中の、抗生物質の初期濃度に等しい。
【0014】
本発明者らは、先ほど記載されたデバイスを使用してMIC濃度を決定するため試験を実施し、これらの試験は
図6A~6Cにおいて説明された。後者は、ゲンタマイシン(
図6A)、クロラムフェニコール(
図6B)またはナリジクス酸(
図6C)の存在下で、E. coli株の5のリプリケート(「リプリケート1」から「リプリケート5」)について実施された試験を説明する。これらの図において、横座標は液滴のインキュベーション時間(分)を示し、縦座標は、上記の液滴セットの「カッティング」により決定されたMIC濃度(μg.mL
-1)を示す。座標(MIC
p、t
p)を有する曲線の点は、従って、測定サイクルpの間に取得された液滴の
値に応じたMIC濃度の決定を表す。試験のために使用されたE. coliの株は、対象となる3つの抗生物質についてMICが知られている、参照ATCC25922の公知の株である。これらの図における点線は、フランス政府により認められたMIC濃度または「規制」MIC(ゲンタマイシンについて0.5μg.mL
-1、クロラムフェニコールについて4μg.mL
-1およびナリジクス酸について2μg.mL
-1)を表し、規制MICのまわりの灰色のバンドは任意の技術によるMICの測定が規制に従うとみなされるための、許容範囲に対応する。規制MIC濃度は、規制により固定された18から24hまでのインキュベーション時間の間、上記の手作業により決定され、許容範囲は、この濃度のまわりの希釈+1/-1に対応する。
【0015】
これらの結果に基づいて、「カッティング」方法により決定されたMIC濃度の収束がなく、長時間増加が継続することが、具体的に留意されるであろう。MIC濃度のこの挙動は、使用された蛍光検出のタイプにより、部分的に説明され得る。実際に、静菌性抗生物質の文脈において、測定される蛍光が栄養培地の消化の後に細菌により拒まれた分子のものである場合、これらの分子の数量は増加し得るが、一方細菌の総数は、安定なままである。しかしながら、これは、MIC濃度の挙動を非常に部分的に説明するのみであろう。いかなる理論にも束縛されることなしに、本発明者らは、上記のものなどのデバイスが、MIC濃度の決定のための参照技術によりマスクされた現象を明らかにすると考える。論文「Millifluidic droplet analyser for microbiology」に記載されるものと同様に正確なデバイスにより生成されるデータ、あるいはそれらの初期の内容を精密に制御することにより多数の「インキュベーター」を生成する能力がある、他の任意の同様のデバイスのデータに応じた、「真の」最小阻害濃度(「規制」MICに対立するものとして)の精密かつ頑強な決定は、従ってさらなる問題を引き起こし、従って実際のところは難しい。
【0016】
この同じ発見は、微生物(細菌、酵母、カビなど)に対する分子の阻害能力を特徴付けるために使用される任意の数量、たとえば細菌の増殖速度、増殖の遅滞フェーズ、体積による最大細菌総数、部分的に阻害性である抗生物質の濃度範囲などに対して適用するであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本願発明の課題は、たとえば真のMIC濃度といった、微生物に対する分子の阻害能力の、より頑強かつより精密な決定を提案することにより前述の問題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この目的のため、本発明は、
- それぞれが、前記タイプの微生物の少なくとも1つ、該微生物のための栄養培地、および試料中に存在する前記タイプの微生物につき初期量の該分子を含む複数の試料を調製することであって、前記初期量は、試料のあらかじめ決定された区分けに応じて
の範囲内で増加する、複数の試料を調製すること;
- 試料をインキュベーションすること;
- 各試料について、あらかじめ決定されたインキュベーション時間の時間に応じて試料中の微生物の増殖を測定すること;および
- 試料中の微生物の増殖の測定値に応じて数量
を決定すること、
を含む、あらかじめ決定されたタイプ微生物に対する、分子の阻害能力を定量化する数量
を決定するための方法に関連する。
【0019】
本発明によれば、数量
の決定は、以下を含む:
- 各試料について、試料中の微生物の増殖の測定値に応じて、前記タイプの微生物の増殖を反映する値を計算すること;
- 試料の区分けに応じた、試料について計算された値を区分けすること;および
- 区分けされた値の変動に応じた数量
を決定すること。
【0020】
言い換えれば、数量
の決定は、値
、または、たとえば、時間
もしくは与えられたサイクルPについてのこれらの値に応じて計算された、細菌集団のサイズといった、直接的にそれらに関連する他のいかなる数量についても行われない。細菌の増殖のダイナミクスについての情報は、値
に応じて最初に決定され、それは、その後、処理されて数量
を決定するこの情報である。
【発明の効果】
【0021】
この情報は、細菌の挙動の先行知識に基づいて、とりわけ、本発明者らが、そのために増殖のダイナミクスについての情報を含有する少なくとも1つのパラメーターを同定する増殖モデルを使用して、有利に探索される。下に詳細に提示されるように、数量
の決定は、その結果、素早く、より精密にかつ再現可能に起こる。さらに、処理全体が自動化され、従って、操作者による解釈にほとんど依存しない。
【発明を実施するための形態】
【0022】
一態様によれば、
- 微生物の増殖は、
・ 第一の、期間λの遅滞フェーズ、
・ それに続く、第二の、対数空間において最大傾斜μの指数関数的増殖フェーズ、および
・ それに続く、第三の、最大値Aの静止フェーズ、
を含む時間に応じた増殖のモデルによりモデル化され、
- かつ、時間に応じた前記タイプの微生物の増殖を反映する値は、最大傾斜μの推定値および/または遅滞フェーズλの期間の推定値である。
【0023】
言い換えれば、増殖プロファイルは、論文「Modeling and predictive microbiology: development of a new tool for the food-processing industry」博士論文、クロード・ベルナール・リヨン第1大学、1995において、Rosso Lにより提案されたものに対応する。傾斜μおよび遅滞フェーズλは、実際に、それぞれ細菌の増殖のダイナミクスと直接的に結び付けられる。
【0024】
一態様によれば、
- 数量
は、その間に試料中の微生物の増殖が少なくとも部分的に阻害される範囲
を含み、
- 試料の区分けに応じた、該分子の初期量は、
・ 数個の試料の間で一定であり、試料中の微生物の増殖の阻害がないように選択される範囲
の下限
に等しい第一の部分、
・ それに続く、
から
へ狭義増加する第二の部分、
・ それに続く、数個の試料の間で一定であり、試料中の微生物の増殖の完全な阻害があるように選択される範囲
の上限
に等しい第三の部分、
を含み、
- 範囲
の決定が、
・ 前記変動がおおよそ静止する2つの端のゾーンの間に区分けされた値の変動における移行ゾーンを同定すること、および
・ 同定された移行ゾーンの試料に対応する範囲として、範囲
を決定すること、
を含む。
【0025】
言い換えれば、試料の具体的な設計のため、それは、それにおける範囲
をより簡便に同定することが可能である。全くない阻害効果と完全な阻害効果との間の、分子の阻害効果の移行ゾーンであるこの範囲は、それ自身において有用な数量
であり、さらにたとえばMIC濃度といった他のタイプの有用な情報を含む。
【0026】
とりわけ、移行ゾーンの同定は、区分けされた値の変動の2つの変曲点の決定を含み、移行ゾーンは、決定された2つの変曲点により境界を示される。とりわけ、移行ゾーンの同定は、2つの端の直線的セグメントおよび該2つの端の直線的セグメントの間の中間の直線的セグメントのみを含む区分的線形連続関数により、区分けされた値の変動をモデル化することを含み、中間の直線的セグメントが移行ゾーンである。
有利な態様によれば、数量
は、微生物の増殖を完全に阻害する、最小初期数量の分子Q
MICを含み、前記初期最小阻害量Q
MICは、範囲
の上限
と等しいよう選択される。
【0027】
一態様によれば、範囲
の下限
は、ゼロ数量の、たとえば抗生物質といった分子である。
【0028】
一態様によれば:
- 試料中の細菌の増殖の測定および前記測定値に応じた数量
の決定は、試料のインキュベーション時間に応じた数量
の数列を得るよう、インキュベーション時間を増加させるために行われ、
- 該方法は、インキュベーション時間に応じた前記数列の安定性の分析を含み;かつ
- 数量
は、数列が安定化した後の数列の値である。
【0029】
言い換えれば、本発明は、収束している数量
に対応する数列を決定することを可能にし、それは安定性試験を採用することを可能にし、従って、試験が、検出ならびにインキュベーションのおよび/またはデータ処理の自動停止を許す。とりわけ、推定値の正確さは、数列の長さとともに増加する。
【0030】
一態様によれば、試料は、それぞれ初期に少なくとも100の微生物、好ましくは少なくとも500の微生物を含む。言い換えれば、細菌の最小初期数を提供することは、具体的な細菌の具体的な特性に悪影響を及ぼすことを回避する。当然ながら、たとえば、細菌のヘテロ耐性現象などの研究のために、具体的にこの微生物に対する分子の効果を知ることを望む場合、本発明のため、より小さな集団あるいは1の微生物でさえ、研究することも可能である。
【0031】
一態様によれば、試料は、それぞれ微生物の増殖を阻害する能力がある、異なる第二の分子の初期量、とりわけ、全ての試料について同一の初期量を含む。言い換えれば、本発明は、たとえば抗生物質といった阻害剤間の相乗効果を研究することを可能にする。
【0032】
一態様によれば、前記タイプの微生物につき最小量の分子は、試料中の該分子の濃度であり、試料中の前記タイプの微生物の初期濃度は、試料の区分けに応じて一定である。
【0033】
一態様によれば、微生物は細菌であり、かつ分子が抗生物質である。変形として、微生物は、酵母またはカビであり、かつ分子が抗真菌剤である。
【0034】
一態様によれば、栄養培地は、蛍光性分子の形態での、微生物により代謝され得る要素を含み、試料中の微生物の増殖の測定は、試料の蛍光の測定である。変形として、試料の吸光度が、後者中で、存在する微生物の数量に応じて変えられ、その際、試料中の微生物の増殖の測定は、光学密度の測定である。
【0035】
一態様によれば、複数の試料の調製は、オイル中で試料を形成する液滴列の調製を含む。
【0036】
本発明は、あらかじめ決定されたタイプの微生物に対する、分子の阻害能力を定量化することにより、数量
を推定するためのデバイスであって、
- 複数の試料を調製するための手段それぞれが、前記タイプの微生物の少なくとも1つ、該微生物のための栄養培地、および試料中に存在する前記タイプの微生物につき初期量の該分子を含み、前記初期量は、試料のあらかじめ決定された区分けに応じて、範囲
内で増加する手段、
- 試料をインキュベーションするための手段、
- あらかじめ決定されたインキュベーション時間の時間に応じて各試料中の微生物の増殖を測定するための手段、および
- 試料中の微生物の増殖の測定値に応じて、数量
を決定するための計算手段、
を含むデバイスにも関連する。
【0037】
本発明によれば、計算手段は:
- 各試料について、試料中の微生物の増殖の測定値に応じた、前記タイプの微生物の増殖のパラメトリックモデルのパラメーターの値の計算;
- 試料の区分けに応じた、試料について計算された値の区分け;および
- 区分けされた値の変動に応じた、数量
の決定を実行することができる。
【0038】
とりわけ、デバイスは、前述のタイプの方法を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本発明は、以下に与えられ、添付の図により支持される記載を読むことに基づいてより良く理解されるであろう。
【
図1】論文「Millifluidic droplet analyser for microbiology」において記載された分析器の単純化された概略図である。
【
図2】
図1の分析器により産生された液滴の例である。
【
図3】
図1の分析器による蛍光シグナルの生成を記載するスキームである。
【
図4】AおよびBは、それぞれ0分および400分において、産生された液滴の数に応じた蛍光測定値のプロットである;
【
図5】産生された液滴の数および時間に応じた蛍光測定値のプロットである;
【
図6A】1つの抗生物質を用いてE. coliについて行われた試験に対し、先行技術のカッティング方法による最小阻害濃度の決定を説明する図である。
【
図6B】Aと異なる1つの抗生物質を用いてE. coliについて行われた試験に対し、先行技術のカッティング方法による最小阻害濃度の決定を説明する図である。
【
図6C】A及びBと異なる1つの抗生物質を用いてE. coliについて行われた試験に対し、先行技術のカッティング方法による最小阻害濃度の決定を説明する図である。
【
図7】本発明による方法の一態様のフローチャートである。
【
図8】は、本発明による方法の間に生成された液滴中の抗生物質の初期濃度プロファイルを説明する図である。
【
図9】
図8におけるプロファイルに応じて生成された、
図1の分析器のシリンジのフロー速度の設定を説明する図である。
【
図10】時間に応じた、
図9における設定により産生された液滴の蛍光測定値のプロットである;
【
図11】異なる測定時点についての、液滴の数に応じた、蛍光の測定値を説明する図である。
【
図12】AおよびBは、2つの異なる試験について、液滴中の抗生物質、真の初期濃度の推定を説明する図である。
【
図13】栄養の存在下で、かつ時間に応じた細菌の増殖を説明する図である。
【
図14】液滴の数に応じた、細菌の最大増殖速度の数列への蛍光測定値の変換を説明する図である。
【
図15】液滴の数に応じた、細菌の増殖の遅滞フェーズ時間の数列への蛍光測定値の変換を説明する図である。
【
図16】AおよびBは、それぞれ、最大増殖速度の数列、および区分的線形関数による最大増殖速度の数列の近似値における、移行フェーズを説明する図である。
【
図17】最大増殖速度の数列上に得られる、移行ゾーンを説明する図である。
【
図18】遅滞フェーズ時間の数列上に得られる、移行ゾーンを説明する図である。
【
図19A】
図6AにおいてE. coliについて1つの抗生物質を用いて行われた試験について、本発明による、最小阻害濃度の決定を説明する図である。
【
図19B】
図6BにおいてE. coliについて1つの抗生物質を用いて行われた試験について、本発明による、最小阻害濃度の決定を説明する図である。
【
図19C】
図6CにおいてE. coliについて1つの抗生物質を用いて行われた試験について、本発明による、最小阻害濃度の決定を説明する図である。
【実施例】
【0040】
本発明の詳細な記載
態様例
本発明による方法の態様は、
図7中のフローチャートに関連してここで記載されるであろう。この方法のステップは、
図8~19に説明される。方法は、論文「Millifluidic droplet analyser for microbiology」において記載され、
図1に関連して上記に簡潔に記載されたデバイス10の手段による、細菌の増殖の最小阻害濃度MICの決定のために適用される。このデバイスの構成要素の制御および測定値の処理は、たとえばコンピューターといった従来のデータ処理ユニットの手段により行われる。
【0041】
方法は、50での、抗生物質の勾配の存在下での細菌の増殖についての実験データの生成、および、52での、MIC濃度を決定するよう生成されたデータの分析を含む。
【0042】
生成ステップ50は、データの生成のためパラメーターを決定する、第一のステップ54を含む。ステップ54は、とりわけ、MIC濃度を包含する、すなわち
であると推測される、濃度範囲
の定義を含む。この範囲は、先行研究に応じて、とりわけ、規制MIC濃度または臨床研究に応じて決定される。とりわけ、濃度
は、抗生物質が細菌の増殖を完全に阻害しかつMIC濃度を上回る、濃度である。変形として、下記の方法は、範囲
を調整するために役立つ。たとえば、決定されたMIC濃度が最大濃度
から非常に離れている場合、後者は減少され、方法は、もう一度、実行される。同様に、MIC濃度が、最大濃度
と近すぎる場合、後者は増加され、方法は再度開始される。好ましくは、最小濃度
は、細菌が多かれ少なかれ自由に増殖できることが保証されるよう選択され、前記自由増殖は、その後に下記により詳細に説明されるであろうデータ処理に活用される。たとえば、濃度
は0に等しい。
【0043】
その後に産生される液滴の数kに応じた抗生物質の初期濃度プロファイル
は、その結果、
図8に説明されるように生成される。このプロファイルは、
- その間、
である第一のプラトー
;
- それに続く、その間濃度
が最小濃度
から最大濃度
へ線形的に増加する、すなわち、
である、ランプ
;
- それに続く、その間
である、第二のプラトー
;
を含む。
【0044】
プラトー
の長さは、続いて生成されたデータにおいて、数kに応じて、おおよそ傾きゼロをもつ直線の一部を自動的に同定するように選択される。これらの長さは、たとえば、使用されるアルゴリズムの正確さに依存する。本発明者らは、しかしながら、約100の液滴に等しいプラトー長が良質な同定を許すことに気付いた。ランプ
の長さに関して、それは、液滴を産生するためのデバイスにより課される制限の中で、MIC濃度のため所望される精密さに応じて定義される。
【0045】
シリンジ12、14、16のためのフロー速度設定は、その結果、56において、抗生物質の初期濃度プロファイル
に応じて生み出される。これらの設定は、
図9において説明される。とりわけ、細菌溶液のシリンジ12のフロー速度設定は、おおよそ同じ初期数の細菌を含む液滴を産生するために一定である。この数は、有利には、各細菌の具体的な特性に悪影響を及ぼさないよう、500より大きく、たとえば1000細菌である。抗生物質のシリンジ16のフロー速度設定は、その部分についてはプロファイル
に従い、栄養培地のシリンジ18のフロー速度設定は、一定の体積の液滴を産生するために、逆のプロファイルを有する。
【0046】
平行して、細菌の、栄養培地のおよび抗生物質の溶液が調製され、その後それらのそれぞれのシリンジに置かれる。有利には、かつ任意には、知られた濃度の、たとえばスルホローダミンといった蛍光性マーカーも抗生物質溶液に加えられる。有利には細菌集団を測定するために使用されるものとは異なる波長で、その蛍光が検出システム28により測定され得るこのマーカーは、下記に詳細に説明されるであろうように、各液滴における抗生物質の真の濃度を決定することを可能にする。この追加の蛍光は、たとえば文献「Millifluidic droplet analyser for microbiology」に記載されるような、測定される波長を選択するための、例えばフィルタセットが備えられた、検出システム38により測定される。
【0047】
次のステップ60において、デバイス10は、従ってN個の液滴列を産生するために定義されるフロー速度設定に応じて制御され、各液滴の蛍光は、上記の往復運動を使用して、一定の間隔ごとに測定される。60においてもまだ、検出システム28からの測定シグナルは、処理され、取得時点
について、各液滴の蛍光値
が生成され、保存される。数量
の例は、異なる測定サイクルの間の液滴の数に応じて(
図11)あるいは時間
に応じて(
図10)のいずれかで、
図10および11に説明される。
【0048】
その部分について、データ処理ステップ52は、62において、液滴における抗生物質の真の初期濃度の推定を含む。実際のところは、フロー速度設定および真のフロー速度の間には差異があり、そのため所望のプロファイル
および真の濃度プロファイルの間に差異がある。とりわけ、真のプロファイルは、全くの線形ではないかもしれない。抗生物質の真の濃度は、液滴のインキュベーションの開始時に測定されたスルホローダミンの蛍光
から推定される。測定サイクルLは、とりわけ細菌の遅滞フェーズ内であって、たとえば第一の測定サイクルである。この時点で、細菌は増殖し始めてしまっておらず、それらは液滴中に一定またはゼロの蛍光を誘導する。値
の間の蛍光の変動は、従って抗生物質の溶液に加えられたスルホローダミンの蛍光に対応する。スルホローダミンの蛍光からスルホローダミンの濃度がわかり、従って、スルホローダミンの蛍光は、抗生物質
の初期濃度に比例する。
【0049】
真の濃度の推定値
は、とりわけ、以下により計算される:
- 平滑化された測定値
を得るために、測定値
に対して、たとえば一般的なLoess平滑化フィルタといった平滑化フィルタを適用すること;
- 平滑化された測定値において、抗生物質勾配の開始および終わりを同定すること、たとえば、平滑化された測定値の最小値
が同定され、勾配の開始は、液滴の
である最も少ない数であって、その平滑化された測定
が値
よりX%高い(たとえば1%高い)ものとして同定される。同様に、平滑化された測定値の最大値
が同定され、勾配の終わりは、液滴の
である最も大きい数であって、その平滑化された測定値
が値
よりもX%低い(たとえば99%である)ものとして同定される。当然ながら、勾配の開始および終わりを決定するためのいかなる方法も使用され得る;
を置くこと、推定された濃度
は、上記のように後の使用のため、保存される。
【0050】
従って、知られた濃度
は、範囲
内の蛍光勾配の、範囲
内の濃度勾配
への線形変換のための固定点として役立つ。とりわけ、これは、液滴産生におけるエラーにより誘導された初期濃度の真のプロファイルの非線形性を保つことを可能にする。
図12Aおよび12Bは、それぞれE. coliの2つの株に対して実施された2つの実験のための濃度プロファイル
の推定を説明する。ノイズのある曲線は、測定された蛍光
を表し、ノイズのある曲線に重ねられた平滑化された曲線(ボールド)は、平滑化された蛍光
に対応し、値
で固定された曲線(細線で示される)は、推定された濃度
である。これらの図、特に
図12Bは、デバイス10の不完全性により生じる測定された蛍光、および濃度の推定値
の、考慮すべき非線形性を示し、これは、スケーリングファクター内での蛍光プロファイルを再現する。
【0051】
処理52は、測定ステップ60と平行に実行される、すなわち各回、ステップ64も含み、新規の測定サイクルPは、下記の終了基準が満たされない限りの間、新規の液滴蛍光測定値
を提供する。従って、ステップ64のトリガーがひかれる時、先行測定サイクル1、2、…、P-1に対応する測定値
は、各液滴kについてすでに保存されている。
【0052】
より具体的には、各液滴kについて、ステップ64は、該液滴の、新規の蛍光測定値
と、
保存された数列
との連結に由来する、数列
を、液滴kにおける、
の間のインキュベーション期間の細菌の増殖ダイナミクスについての情報を含有する値
に変換する第一のステップ66を含む。この変換の目的は、時点
の測定サイクルのために、このサイクルの遂行までの蛍光のヒストリーを考慮することであり、一方で、このヒストリーを、有利には増殖モデルを介して、質的に適させる。
【0053】
このヒストリーは、栄養培地における細菌の増殖モデル、より好ましくは時間に応じた細菌集団の自然対数を説明する、
図13におけるモデルにより、有利に考慮される。知られているように、細菌の増殖は、以下を含む:
- 細菌が、それらが栄養培地を使用するために必要とするであろう酵素を合成する間であって、細菌の細胞分裂のない期間λの、第一の遅滞フェーズ;
- それに続く、指数関数的増殖フェーズ:加速後、増殖が最大増殖速度μに到達するか、同等に、増殖曲線が最大傾斜μを有する;
- それに続く、栄養培地の枯渇に対応する、静止フェーズ。増殖は減速しておおよそゼロになり、細菌集団は、値Aでおおよそ安定化される。静止フェーズには、ここには示さない減退フェーズが続き、栄養の完全な枯渇が続く。
【0054】
遅滞、増殖および静止フェーズは、たとえば下記表における、一つのおよび/または他の時間的モデル
により推定される。
【表1】
【0055】
各測定サイクルPについて、および各液滴kについて、ステップ66は、従って、液滴について測定された蛍光
に応じたダイナミクスについての情報を含有するモデル
のパラメーターの少なくとも1つ、とりわけこの数列(
のため最大傾斜
および/または遅滞時間
、を同定することからなる。測定値
のベクトルおよび測定値
の推定のベクトルとの差異により形成される推定誤差を最小化することからなる、モデル
のパラメーターの同定は、たとえば非線形最小二乗によるといった、同定のドメインから自体公知の方法で行われる。
【0056】
変形として、パラメーターは、たとえば数列
をスプライン近似する方法によって多項式を計算することにより、モデル
を使用せずに同定される。パラメーターλおよびμは、その結果、たとえば有限差分方法により、実験的に推定される。たとえば、最大傾斜μは、数列を近似する多項式の微分係数を計算し、傾斜μとして微分係数の最大値を選択することにより得られる。別の変形として、モデルまたはアプローチは混合され得る。
【0057】
細菌の集団の増殖のパラメーターの同定は、先行技術によりよく知られている。たとえば、この同定は、URL http://cran.r-project.org/web/packages/grofit/index.htmlよりダウンロード可能でありKahm M. et alによる文献「grofit: Fitting Biological Growth Curve with R」, Journal of Statistical Software, Vol. 33(7), February 2010に記載された「grofit」ソフトウェアパッケージを使用して行われ得る。
【0058】
パラメーターの計算は、統計学的性質であるため、同定は、測定値の最小数を取得してから実行することが好ましい。測定サイクルの最小数は、たとえば10に等しく、従って、ステップ64は、この最小数に到達したら、測定サイクルについて実行される。
【0059】
細菌の増殖のパラメーターの計算のステップ66の終わりに、従って、以下の数列が生成される:
数列
および数列
は、液滴の数kに応じて、6時間に等しい時点
について、それぞれ
図14および15において説明される。
【0060】
処理52は、68において、たとえば数列
といった決定されたパラメーターの数列の少なくとも1つに応じて、時点
について、真の最小阻害濃度
の決定を継続する。この決定は、濃度MIC
を含むパラメーターの数列における移行ゾーンの探索に基づく。このゾーンは、抗生物質が細菌の増殖に対して観察可能な阻害効果を有する最小幅の、抗生物質の初期濃度の範囲として定義される。
図14における液滴数kに応じた数列
を説明する
図16Aを参照すると、曲線
は、
である範囲
にわたり、おおよそ一定であり、
に等しいことが観察される。同様に、曲線
は、
である範囲
にわたり、おおよそゼロである。範囲
は、従って移行ゾーンに対応し、この範囲の上限は、必要とされる濃度
に対応する。
【0061】
ステップ66において、移行ゾーン
の同定は、任意の公知の数学方法、とりわけ曲線上の変曲点を同定するための、従って移行ゾーンの端に位置する2つの変曲点を同定するための任意の方法により行われ得る。
【0062】
たとえば、曲線
は、
の関係に応じて、区分的線形連続関数
に近似される。
式中、パラメーター
、a、b、c、dおよび
の値は、数列
と数列
との間の推定誤差を最小化する最適化問題の最適解として、自体公知の方法において計算される。
【0063】
数列
の他の近似値は、たとえば多項式近似(とりわけスプラインの方法により得られる)が可能である。
【0064】
ステップ64は、その結果、70において、
の関係に応じて、液滴数
に対応する抗生物質の初期濃度の決定および保存を継続する。
【0065】
次のステップ72において、濃度
の安定性試験が行われる。試験は、たとえば、最後の蛍光測定サイクルT、たとえば最後の3サイクルについて計算された濃度
から形成される数列が安定であるかどうかを検証するといったことからなる。たとえば、最後の測定時点Tについて、S%たとえば5%未満変動する場合、濃度は、安定であるとみなされる。安定性試験は、とりわけ、もっとも早い時点で処理を終了することを可能にし、そのため、最小インキュベーション時間を事前に選択する必要がない。
【0066】
図17および18は、それぞれ、
図14および15における数列
について、範囲
の計算を説明する。数列
について決定される範囲
は、[157; 196]に等しく、それは濃度範囲[0.97; 2.17]に対応する。数列
について決定される範囲
は、[189; 199]に等しく、それは濃度範囲[0.97; 2.3]に対応する。留意すべきは、2つのパラメーターについて決定される数
は、非常に近い(それぞれ196および199)ことである。その一部分として、範囲
は、その移行ゾーンが、数列
の移行ゾーンより急激である、数列
により、より高い精度で決定される。
【0067】
濃度
が安定でない場合、ステップ72は、新規の蛍光測定値に応じて濃度
を計算するために、ステップ66にループバックする。対照的に、濃度
が安定である場合、74において、測定の終了がその結果、命令される。計算され保存された、最後の濃度
は、従って、測定の目的である細菌のための、抗生物質の最小阻害濃度である。
【0068】
図19Aから19Cは、先ほど記載された態様の結果を説明する。測定値の生成は、
図6Aから6Cに関連して記載されたものである。より具体的には、これらの図において記載された測定値は、上記処理ステップ52において、濃度
を計算するために数列
を使用してデータを処理する対象を形成する。理解できるとおり、濃度
は、規制MICの許容範囲内である安定な値に素早く到達する。
図19Bにおけるリプリケート3について、
の具体的な形態は、事後的に、検出された液滴産生システムのキャリブレーションエラーからもたらされる。
【0069】
変形
本発明の具体的な態様が記載されてきた。むろん、本発明は、この態様に制限されない。とりわけ、以下の変形の単独または組合せは、本発明の一部分を形成する。
【0070】
態様は、適用のため、細菌の増殖を阻害する抗生物質の最小濃度および阻害濃度の範囲の推定に記載された。本発明は、抗生物質の阻害能力の特徴である他の数量の決定に対しても適用する。
【0071】
具体的な態様が記載され、細菌の増殖に対する抗生物質の阻害能力の分析に対して適用された。本発明は、微生物に対する任意の分子の阻害能力の分析、とりわけ、カビ、真菌または酵母に対する抗真菌剤の阻害効果の分析に対して、同じように適用する。
【0072】
単一のタイプの抗生物質が試料中に存在する際の具体的な態様が記載されてきた。変形として、試料は、既知の濃度の第二の抗生物質を含み得る。抗生物質の相乗作用の調査は、このように着手され得る。たとえば、本発明による方法は、異なる濃度の第二の抗生物質のため実行される。
【0073】
具体的な特性に悪影響を及ぼすことを回避するため、細菌が初期に多数である態様が、記載されてきた。変形として、より少ない細菌の総数または単一の細菌でさえもが後者を具体的に研究するために試料中に存在する。
【0074】
抗生物質の初期濃度の勾配が生成される態様が記載されてきた。変形として、抗生物質の濃度は一定であって細菌の濃度勾配が生成される。一般に、本発明は、従って、最小量
および最大量
の間の、微生物につき初期量の分子の勾配の形成に関連する。
【0075】
初期値から最終的な値へ線形的に増加する勾配が記載されてきた。線形勾配は、各濃度ゾーンが等しい重要性を有すると考えられることを許す。他のタイプの、とりわけ非線形の勾配は、当然ながら可能である。たとえば、限られた数の濃度値(たとえば約10)のため多数の液滴(たとえば数10~約100)が生成されるプラトー勾配が、問題となる抗生物質の濃度範囲
にわたり分布する。有利には、これらの濃度値は、単一の実験において微量希釈実験の複数回の繰り返し(プラトーあたりの滴数に依存して、数10から約100)を行うために、CA-SFM(Antibiogram Committee of the French Society of Microbiology)またはEUCAST(European Committee on Antimicrobial Susceptibility Testing)などの微量希釈による参照方法の適用に関連する規制当局の推奨に応じて選択される。
【0076】
蛍光測定値
の処理が、記載されてきた。当然ながら、本発明は、たとえば細菌の数といった、測定値
から全単射的に推定される任意の値に対して実行される処理に対しても適用され、それは自体公知の方法で
に応じて計算される。
【0077】
増殖モデルのパラメーターの計算は、たとえばMICといった数量の決定において、細菌増殖のヒストリーを考慮するために記載されてきた。
【0078】
変形として、ヒストリーは、時間に応じた測定
の変動
を計算することにより考慮される。たとえば、この変動
に等しいか、平均
に等しいか、あるいは
に等しい。
に応じた
の計算は、値
に関連して記載されたものと同一にまたは同様に行われる。
【0079】
さらに、パラメーター(
に応じた数量の決定が、記載されてきた。変形として、たとえばMICといった数量は、パラメーターのセットの各パラメーターについて計算され得、最終的なMICは、計算されたMIC値に応じて、あるいは計算されたMIC値から選択されて、計算される。たとえば、最終的なMICは、MICの平均値に等しい。
【0080】
それにおいて、MICが、安定であるとみなされる計算された最終値と等しい態様が、記載されてきた。変形として、該方法は、MICが収束した後、数回のサイクルの間継続し、最終的なMICは、収束が得られた後、計算されたMICの値の平均として計算される。
【0081】
態様は、論文「Millifluidic droplet analyser for microbiology」において記載された分析器を使用して記載されてきた。当然ながら、本発明は、阻害剤の勾配および/または前記阻害剤感受性の微生物の勾配を有する複数の試料を産生するいかなるタイプのデバイスおよび方法に対しても適用する。とりわけ、本発明は、たとえば同じ体積をもたない試料に対して適用する。
【0082】
MIC、すなわち、真であるとみなされるMICの決定が記載されてきており、後者は、範囲
の上限に等しい。当然ながら、たとえばフランス政府またはUS政府により定められた規制MICは、この範囲からもあるいは代替的に推定され得る。実際に、範囲の決定が安定であるので、この範囲および規制MICの間の、対応表または他の任意の適した転換ルールを決定することが可能である。例として、微生物が、ヒトにより許容できる分子の臨界濃度でのMICを比較する規制区分けにより、分子に対して感受性、中間または耐性であるかどうかを決定することが可能である。このタイプの規制区分けは、たとえばCA-SFM (Antibiogram Committee of the French Society of Microbiology)またはEUCAST (European Committee on Antimicrobial Susceptibility Testing)により確立されている。
<さらなる実施態様>
[実施態様1]
あらかじめ決定されたタイプの微生物に対する、分子の阻害能力を定量化する数量
を決定するための方法であって、
- それぞれが、前記タイプの微生物の少なくとも1つ、該微生物のための栄養培地、および試料中に存在する前記タイプの微生物につき初期量の該分子を含む、複数の試料を調製すること(50)であって、前記初期量は、あらかじめ決定された試料の区分けに応じて、範囲
内で増加する、複数の試料を調製すること(50)、
- 試料をインキュベーションすること、
- 各試料について、あらかじめ決定されたインキュベーション時間の時間に応じて、試料中の微生物の増殖を測定すること(50)、および
- 試料中の微生物の増殖の測定値に応じて、数量
を決定すること(52)
を含む方法であり、
数量
の決定(52)が、
- 各試料について、試料中の微生物の増殖の測定値に基づいて前記タイプの微生物の増殖を反映する値の計算(66)、
- 試料の区分けに応じた、試料について計算された値の区分け(68)、および
- 区分けされた値の変動に応じた数量
の決定(70)
を含むことにより特徴付けられる、方法。
[実施態様2]
- 微生物の増殖を、
・ 第一の、期間λの遅滞フェーズ、
・ それに続く第二の、対数空間において最大傾斜μの指数関数的増殖フェーズ、および
・ それに続く第三の、最大値Aの静止フェーズ
を含む時間に応じて、増殖のモデルによりモデル化すること、
- 並びに、時間に応じた前記タイプの微生物の増殖を反映する値が、最大傾斜μの推定値および/または遅滞フェーズλの期間の推定値であること
により特徴付けられる、実施態様1に記載の方法。
[実施態様3]
- 数量
が、試料中の微生物の増殖が少なくとも部分的に阻害される、範囲
を含むこと、
- 試料の区分けに応じた初期量の該分子が、
・ 数個の試料について一定であり、試料中の微生物の増殖の阻害がないように選択される範囲
の下限
に等しい第一の部分、
・ それに続く、
から
へ狭義増加する、第二の部分、
・ それに続く、数個の試料について一定であり、試料中の微生物の増殖の完全な阻害があるように選択される範囲
の上限
に等しい第三の部分
を含むこと、
- 範囲
の決定が、
・ 前記変動がおおよそ静止する2つの端のゾーンの間に区分けされた値の変動における移行ゾーンを同定すること、
・ 同定された移行ゾーンの試料に対応する範囲であるように、範囲
を決定すること
を含むこと、
により特徴付けられる、実施態様1または2に記載の方法。
[実施態様4]
移行ゾーンの同定が、区分けされた値の変動の2つの変曲点を決定することを含み、移行ゾーンが決定された2つの変曲点により境界を示されることにより特徴付けられる、実施態様3に記載の方法。
[実施態様5]
移行ゾーンの同定が、2つの端の直線的セグメントおよび該2つの端の直線的セグメントの間の中間の直線的セグメントのみを含む区分的線形連続関数により、区分けされた値の変動をモデル化することを含み、中間の直線的セグメントが移行ゾーンであることにより特徴付けられる、実施態様3または4に記載の方法。
[実施態様6]
数量
が、微生物の増殖を完全に阻害する、分子の最小の初期数量Q
MIC
を含むこと、および前記初期の最小阻害量Q
MIC
が、範囲
の上限
と等しく選択されることにより特徴付けられる、実施態様3、4または5に記載の方法。
[実施態様7]
の下限
が、抗生物質のゼロ量であることにより特徴付けられる、実施態様1から6のいずれか一項に記載の方法。
[実施態様8]
- 試料中の細菌の増殖の測定、および前記測定値に応じた数量
の決定が、試料のインキュベーション時間に応じた数量
の数列が得られるように、インキュベーション時間を増加させるために行われること、
- 方法が、インキュベーション時間に応じた前記数列の安定性の分析を含むこと、並びに
- 数量
が、数列が安定化した後の数列の値であること、
により特徴付けられる、実施態様1から7のいずれか一項に記載の方法。
[実施態様9]
試料がそれぞれ、初期に少なくとも100の微生物、および好ましくは少なくとも500の微生物を含むことにより特徴付けられる、実施態様1から8のいずれか一項に記載の方法。
[実施態様10]
試料がそれぞれ、微生物の増殖を阻害することができる第二の異なる分子の初期量、とりわけ、全ての試料について同一の初期量を含むことにより特徴付けられる、実施態様1から9のいずれか一項に記載の方法。
[実施態様11]
前記タイプの微生物につき最小量の分子が、試料中の分子の濃度であり、試料中の前記タイプの微生物の初期濃度が、試料の区分けに応じて一定であることにより特徴付けられる、実施態様1から10のいずれか一項に記載の方法。
[実施態様12]
微生物が細菌であり、分子が抗生物質であることにより特徴付けられる、実施態様1から11のいずれか一項に記載の方法。
[実施態様13]
微生物が酵母またはカビであり、分子が抗真菌剤であることにより特徴付けられる、実施態様1から11のいずれか一項に記載の方法。
[実施態様14]
栄養培地が、蛍光性分子の形態で、該微生物により代謝され得る要素を含むこと、および試料中の微生物の増殖の測定が、試料の蛍光の測定であることにより特徴付けられる、実施態様1から13のいずれか一項に記載の方法。
[実施態様15]
試料の吸光度が後者中に存在する微生物の数量に応じて変動すること、および試料中の微生物の増殖の測定が光学密度の測定であることにより特徴付けられる、実施態様1から13のいずれか一項に記載の方法。
[実施態様16]
複数の試料の産生が、オイル中に試料を形成する液滴列の調製を含むことにより特徴付けられる、実施態様1から15のいずれか一項に記載の方法。
[実施態様17]
あらかじめ決定されたタイプの微生物に対する、分子の阻害能力を定量化する数量
を推定するためのデバイスであって、
- 複数の試料を調製するための手段であって、それぞれが前記タイプの微生物の少なくとも1つ、該微生物のための栄養培地、および試料中に存在する前記タイプの微生物につき初期量の該分子を含み、前記初期量が、試料のあらかじめ決定された区分けに応じて範囲
内で増加する手段、
- 試料をインキュベーションするための手段、
- あらかじめ決定されたインキュベーション時間の時間に応じて各試料中の微生物の増殖を測定するための手段、ならびに
- 試料中の微生物の増殖の測定値に応じて、数量
を決定するための計算手段
を含むデバイスであって、該計算手段が、
- 各試料について、試料中の微生物の増殖の測定値に応じて前記タイプの微生物の増殖を反映する値の計算、
- 試料の区分けに応じた、試料について計算された値の区分け、および
- 区分けされた値の変動に応じた数量
の決定
を行うことができることにより特徴付けられるデバイス。
[実施態様18]
実施態様2から16のいずれか一項に記載の方法を実行するのに適していることにより特徴付けられる、実施態様17に記載のデバイス。