(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】膜を有する触媒ウォールフロー型フィルター
(51)【国際特許分類】
B01J 35/04 20060101AFI20221107BHJP
B01D 39/20 20060101ALI20221107BHJP
B01D 46/00 20220101ALI20221107BHJP
B01D 46/42 20060101ALI20221107BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20221107BHJP
B01J 23/40 20060101ALI20221107BHJP
B01J 29/74 20060101ALI20221107BHJP
B01J 29/76 20060101ALI20221107BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20221107BHJP
F01N 3/022 20060101ALI20221107BHJP
F01N 3/035 20060101ALI20221107BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20221107BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20221107BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
B01J35/04 301E
B01J35/04 301C
B01J35/04 301G
B01D39/20 D
B01D46/00 302
B01D46/42
B01D53/94 222
B01D53/94 241
B01J23/40 A
B01J29/74 A
B01J29/76 A ZAB
B01J37/02 301Z
F01N3/022 C
F01N3/035 A
F01N3/08 B
F01N3/24 E
F01N3/28 301P
F01N3/28 301Q
(21)【出願番号】P 2017567471
(86)(22)【出願日】2016-06-27
(86)【国際出願番号】 GB2016051918
(87)【国際公開番号】W WO2017001829
(87)【国際公開日】2017-01-05
【審査請求日】2019-03-22
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-02
(32)【優先日】2015-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チャンドラー, ガイ リチャード
(72)【発明者】
【氏名】フィリップス, ポール リチャード
【合議体】
【審判長】三崎 仁
【審判官】河本 充雄
【審判官】関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-532049(JP,A)
【文献】米国特許第8071037(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00-38/74
B01D53/86,53/94
B01D46/00-46/54
F01N 3/00- 3/38, 9/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排出処理システムにおける使用のための触媒ウォールフローモノリスであって、
多孔質基材を含み、間に縦方向を規定する第一の面及び第二の面並びに縦方向に延びる第一及び第二の複数のチャネルを有し、
第一の複数のチャネルが、第一の複数の内部表面を提供し、第一の面で開いており、第二の面で閉じており、第二の複数のチャネルが、第二の面で開いており、第一の面で閉じており、
第一の触媒材料が多孔質基材内に分布しており、
微多孔膜が第一の複数の内部表面の縦方向に延びる第一の部分上の第一の複数のチャネルに提供され、且つ、
第一の部分が、第一の複数のチャネルの75から95%の長さにわたって、第一の面から延び
ており、
前記微多孔膜の孔サイズは、スート粒子が前記微多孔膜を通過できないサイズである、モノリス。
【請求項2】
第一の部分が、第一の複数のチャネルの80から90%の長さに延びる、請求項1に記載の触媒ウォールフローモノリス。
【請求項3】
微多孔膜が、第一の面に隣接する領域で最も大きくなるように、縦方向に沿って減少する厚さを有する、請求項1又は2に記載の触媒ウォールフローモノリス。
【請求項4】
多孔質基材が、第一の面から縦方向に延びる第一のセクションと、第二の面から第一の面へ縦方向に延びる第二のセクションとを有し、第一の触媒材料が第二のセクション全体に分布している、請求項1から3のいずれか一項に記載の触媒ウォールフローモノリス。
【請求項5】
縦方向の第一のセクションの長さと縦方向の第二のセクションの長さとの比が5:95から15:85である、請求項4に記載の触媒ウォールフローモノリス。
【請求項6】
微多孔膜が、第一の触媒材料とは異なる第二の触媒材料を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の触媒ウォールフローモノリス。
【請求項7】
灰を捕捉するための微多孔膜上のコーティングを更に含み、コーティングがセリアを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の触媒ウォールフローモノリス。
【請求項8】
触媒的尿素加水分解のための微多孔膜上のコーティングを更に含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の触媒ウォールフローモノリス。
【請求項9】
微多孔膜が、最大80μmの平均厚さを有する、請求項1から8のいずれか一項に記載のウォールフローモノリス。
【請求項10】
多孔質基材全体に分布している触媒材料が、CHA、LEV、ERI、DDR、KFI、EAB、PAU、MER、AEI、GOO、YUG、GIS、VNI及びAFT構造ファミリーより選択される小細孔ゼオライトから選択されている、請求項1から9のいずれか一項に記載の触媒ウォールフローモノリス。
【請求項11】
燃焼排気ガスの流れを処理するための排気処理システムであって、請求項1から10のいずれか一項に記載の触媒ウォールフローモノリスを含み、第二の面が第一の面の下流部である、システム。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の触媒ウォールフローモノリスの製造のための方法であって、
間に縦方向を規定する第一の面及び第二の面並びに縦方向に延びる第一及び第二の複数のチャネルを有する多孔質基材を提供することであって、第一の複数のチャネルが、第一の面で開いており、第二の面で閉じており、第二の複数のチャネルが、第二の面で開いており、第一の面で閉じており、第一の複数のチャネルが第一の複数の内部表面を提供し、第二の複数のチャネルが第二の複数の内部表面を提供する、こと;
多孔質基材に第一の触媒材料を含有するウォッシュコートを浸透させて多孔質基材内に分布する第一の触媒材料を提供すること;並びに
第一の複数の内部表面上に微多孔膜を形成することを含む、方法。
【請求項13】
NO
x及び粒子状物質を含む燃焼排気ガスの流れを処理するための方法であって、排気流に請求項1から11のいずれか一項に記載のモノリスを通過させることを含み、第二の面が第一の面の下流部である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車内燃機関排気システムのような排出処理システムにおける使用に適した触媒ウォールフローモノリスに関する。モノリスは、エンジン排気流を修正する有効な方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンを含む内燃機関からの排出は、世界各国の政府によって制定された法律によって制限されている。製造業者は、エンジン設計と排気ガス後処理の組合せを通じて、これらの法的要件を満たすことを模索している。排気ガス後処理を実行するために使用される排気システムは、一般に、そのような法律によって制限される排気ガス種の割合を低減する特定の反応を実行するように設計された一連の触媒及び/又はフィルターを含む。
【0003】
ディーゼルエンジン排気流は、一酸化炭素(「CO」)、未燃焼炭化水素(「HC」)及び窒素酸化物(「NOx」)のような気体放出だけでなく、いわゆる微粒子又は微粒子状物質と呼ばれる凝縮相材料(液体及び固体)を含有する不均一混合物である。しばしば、組成物が配置される触媒組成物及び基材は、これらの排気成分の一部又は全部を無害成分に転化するためにディーゼルエンジン排気システムに提供される。例えば、ディーゼル排気システムは、一又は複数のディーゼル酸化触媒、スートフィルター及びNOxの還元のための触媒を含有することができる。
【0004】
ディーゼル排気流の全粒子状物質排出物は、固体の乾燥した炭素質画分、いわゆるスート画分を含む。この乾燥した炭素質は、ディーゼル排気に一般的に関連する目に見えるスート排出に寄与する。
【0005】
粒子状物質を多く低減するために使用される一つの重要な後処理技術は、ディーゼル粒子フィルターである。ハニカムウォールフロー型フィルター、巻かれた又は充填された繊維フィルター、オープンセルフォーム、焼結金属フィルターなどの、ディーゼル排気流から粒子状物質を除去するのに有効な多くの公知のフィルター構造がある。しかしながら、下記のセラミックウォールフロー型フィルターが最も注目を集める。これらのフィルターは、ディーゼル排気流からの粒子状材料の90%超を除去することができる。フィルターは排気流から粒子を除去するための物理的構造であり、蓄積粒子はエンジン上のフィルターからの背圧を増加させる。したがって、蓄積粒子は、許容可能な背圧を維持するために、フィルターから連続的又は定期的に燃焼されなければならない。残念ながら、カーボンスート粒子は、酸素リッチ(リーン)排気条件下で燃焼するためには500℃を超える温度を必要とする。この温度は、ディーゼル排気流に典型的に存在する温度よりも高い。
【0006】
したがって、フィルターの再生を促進するためには、蓄積されたスートを積極的に燃焼させる必要がある。活性フィルター再生の一形態は、フィルター温度を上昇させるために、排気ガス中に追加の炭化水素燃料を間欠的に導入し、これを燃焼させることである。追加の炭化水素燃料の燃焼は、フィルターを適切な燃焼促進触媒でコーティングすることによって、フィルター自体に対して行うことができる。適切に触媒されたフィルターは、しばしばキャタライズドスートフィルター又はCSFと称される。
【0007】
粒子状物質を十分な速度で除去(燃焼)させることを可能にするために、活性再生の間、CSFは約600℃の温度に到達する必要がありうる。しかしながら、能動的再生事象中に、低排気ガス流の期間が生じる場合、例えばエンジン/車両がアイドル状態になるとき、低減されたガス流は熱がCSFから除去されることを防止する。これにより、フィルターの一部が1000℃を超える温度に達することがある。そのような高温は、二つの大きな問題を引き起こす可能性がある。第一に、触媒は焼結してその表面積を減少させることができ、結果として触媒活性が失われる。第二に、基材内に高い温度勾配が生じて、熱膨張の差によって引き起こされる機械的応力が生じる。極端な条件下では、熱勾配及び応力によって基材がひび割れし、それにより、CSFの完全性が失われる可能性がある。
【0008】
したがって、CSFの活性再生を制御して、粒子状物質を除去するのに十分に高い温度に達するが、触媒及び/又はフィルター基材に損傷を与えるほど高くはないようにすることが課題である。
【0009】
上記のように、ディーゼル排気流はNOxも含有する。リーン排気条件の定常源に適用された実績のあるNOx除害技術は、選択的触媒還元(SCR)である。このプロセスにおいて、NOxは、典型的には卑金属で構成される触媒上でアンモニア(NH3)を用いて窒素(N2)に還元される。この技術は、90%超のNOx削減が可能であり、したがって、積極的なNOx削減目標を達成するための最良の手法の一つである。SCRは、排気温度が触媒の活性温度範囲内にある限り、NOxの効率的な変換を提供する。
【0010】
排気の別個の構成要素に対処するための触媒をそれぞれ含む別個の基材は、排気システムに提供することができる。しかしながら、システムの全体的なサイズを縮小し、システムのアセンブリを容易にし、システムの全体的なコストを低減するために、より少ない基材を使用することが望ましい。この目標を達成するための一手法は、NOxの無害成分への変換に有効な触媒組成物でスートフィルターをコーティングすることである。この手法では、キャタライズドスートフィルターは、排気流の粒子成分の除去及び排気流のNOx成分の窒素への変換という二の触媒機能を前提としている。
【0011】
NOx削減目標を達成することができるコーティングされたスートフィルターは、スートフィルター上にSCR触媒組成物を十分に担持する必要がある。排気流の特定の有害成分への曝露を通じて経時的に生じる組成物の触媒有効性が徐々に失われると、SCR触媒組成物のより高い触媒担持の必要性が増す。しかしながら、より高い触媒担持量を有するコーティングされたスートフィルターの調製は、排気システム内の容認できないほど高い背圧をもたらす可能性がある。ウォールフロー型フィルター上のより高い触媒担持を可能にしながら、フィルターが許容可能な背圧を達成する流れ特性を維持することを可能にするコーティング技術が望ましい。
【0012】
ウォールフロー型フィルターをコーティングする際の考慮すべき追加の態様は、適切なSCR触媒組成物の選択である。第一に、触媒組成物は、フィルター再生の特徴であるより高温への長時間の曝露後でさえSCR触媒活性を維持するように耐久性でなければならない。例えば、粒子状物質のスート画分の燃焼は、しばしば700℃を超える温度をもたらす。このような温度は、多くの一般的に使用されるSCR触媒組成物、例えば、バナジウムとチタンとの混合酸化物の触媒的な有効性を低くする。第二に、SCR触媒組成物は、好ましくは、車両が作動する可変温度範囲に対応できるように、十分に広い作動温度範囲を有する。300℃未満の温度は、典型的には、例えば充填量の低い状態又は始動時に起こる。SCR触媒組成物は、好ましくは、より低い排気温度でさえ、NOx還元目標を達成するために排気のNOx成分の還元を触媒化することができる。
【0013】
米国特許第8617476号は、チャネル壁に担持されたゼオライトの量及び壁の熱伝導率によって特徴付けられるハニカムフィルターを開示している。
【0014】
米国特許第8398925号は、内燃機関のための微粒子フィルター基材を開示している。そのフィルター基材は、異なる密度の領域を有するウォッシュコートでコーティングされている。
【0015】
国際公開第2005016497号は、排気処理システムを開示している。
【0016】
米国特許公開第2012/0247092号は、排気制御のための多成分フィルターを開示している。
【0017】
米国特許第2014/0140899号は、触媒化微粒子フィルターを開示している。
【0018】
国際公開第2011140248号は、キャタライズドスートフィルター及び排気処理システムを開示している。
【0019】
米国特許第5221484号は、触媒濾過システム及び方法を記載する。
【0020】
したがって、改善されたウォールフローモノリスを提供すること及び/又は先行技術に関連する問題の少なくともいくつかに取り組むこと、又は少なくとも、商業的に有用な代替物を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0021】
第一の態様によれば、排出処理システムにおける使用のための触媒ウォールフローモノリスであって、
多孔質基材を含み、間に縦方向を規定する第一の面及び第二の面並びに縦方向に延びる第一及び第二の複数のチャネルを有し、
第一の複数のチャネルが、第一の複数の内部表面を提供し、第一の面で開き、第二の面で閉じ、第二の複数のチャネルが、第二の面で開き、第一の面で閉じ、
第一の触媒材料が多孔質基材内に分布しており、
微多孔膜が第一の複数の内部表面の縦方向に延びる第一の部分上の第一の複数のチャネルに提供され、
第一の部分が、第一の複数のチャネルの75から95%の長さにわたって、第一の面から延びるモノリスが提供される。
【0022】
本発明を更に説明する。以下の文脈において、本発明の異なる態様がより詳細に記載される。そのように記載される各態様は、反することが明らかに示されていない限り、任意の他の態様(複数可)と組み合わせてもよい。特に、好ましい又は有利であるとされる任意の特徴は、好ましい又は有利であると示される他の任意の特徴(複数可)と組み合わせてもよい。
【0023】
本発明の発明者は、本明細書で説明されるような微多孔膜を提供することによって、スート沈着位置を指示することが可能であることを発見した。微多孔膜は、回収されるスート粒子よりも小さなサイズの孔を有するコーティングである。これは、膜が、処理のための気体のスルーフローを容認するが、膜により保護されたエリアにおける多孔質基材のより大きな孔の中のスートの蓄積を防ぐことを意味する。したがって、微多孔膜の提供は、使用におけるそれらの領域の背圧の蓄積を妨げる。
【0024】
発明者は、フィルターの後部へ進むスートの量を制御する場合、スート再生を行うときに、使用中に蓄積する状況に基づき、後方よりも前方でより多くのスートが燃焼すること発見した。典型的には、従来のフィルターにおいて、より多くのスートが後部で蓄積し、重大な温度勾配をもたらし、装置の寿命を減少させる。フィルターの後部でのスート沈着を防ぐことは、再生中のフィルターの後部に達する温度を減少することができ、フィルター損傷に関するフィルターの耐久性を改善する。
【0025】
したがって、本発明は、排出処理システムにおける使用のための触媒ウォールフローモノリスに関する。ウォールフローモノリスは、ディーゼルパーティキュレートフィルターにおける使用に関する当該技術分野でよく知られている。それらは、排気ガス(粒子状物質を含む)の流れを多孔質材料で形成された壁を通過するよう強制することにより作用する。好ましくは、モノリスはSCR触媒を含むフィルターである。
【0026】
モノリスは、第一の面及び第二の面の間の縦方向を規定する第一の面及び第二の面を有する。使用において、第一の面は排気ガスのための入口面となり、第二の面は処理された排気ガスのための出口面となる。
【0027】
ウォールフローモノリスは、従来のように、縦方向に延びる第一及び第二の複数のチャネルを有する。第一の複数のチャネルは、第一の面で開いており、第二の面で閉じている。第二の複数のチャネルは、第二の面で開いており、第一の面で閉じている。チャネルは、好ましくは互いに平行であってチャネル間に一定の壁の厚さを提供する。その結果、複数のチャネルの一つに入るガスは、チャネル壁を通って他の複数のチャネルに拡散することなく、モノリスから出ることができない。チャネルは、チャネルの開口端部へのシーラント材料の導入によって閉じられる。好ましくは、第一の複数のチャネルの数は、第二の複数のチャネルの数に等しく、各複数は、モノリス全体に均等に分布する。
【0028】
第一の複数のチャネルは第一の複数の内部表面を提供する。第二の複数のチャネルは第二の複数の内部表面を提供する。
【0029】
処理されるガスのチャネル壁の通過を容易にするために、モノリスは多孔質基材から形成されている。基材はまた、触媒材料を保持するための担体としても作用する。多孔質基材を形成するのに適した材料は、セラミック様の材料、例えば、コーディエライト、α-アルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、ムライト、スポジュメン、アルミナ-シリカ-マグネシア若しくはケイ酸ジルコニウム、又は多孔質、耐火性金属を含む。ウォールフロー基材はまた、セラミック繊維複合材料から形成されてもよい。好ましいウォールフロー基材はコーディエライト及び炭化ケイ素から形成される。そのような材料は、排気流を処理する際に直面する環境、特に高温に耐えることができ、十分に多孔質に作製されうる。多孔質モノリス基材の製造におけるそのような材料及びそれらの使用は当該技術分野でよく知られている。
【0030】
触媒ウォールフローモノリスを提供するために、触媒材料は多孔質基材に、典型的にはウォッシュコートの形態で塗布されなければならない。塗布は、「オンウォール」塗布又は「インウォール」塗布として特徴づけられうる。前者は、本明細書で説明される微多孔膜のような、チャネルの表面上にコーティング層を形成することにより特徴づけられている。後者は、触媒材料を多孔質材料内の孔に浸透させることにより特徴づけられている。「インウォール」又は「オンウォール」塗布のための技術は、塗布される材料の粘度、塗布技術(例えば噴霧又は浸漬)及び異なる溶媒の存在に依拠しうる。かかる塗布技術は、当該技術分野で知られている。ウォッシュコートの粘度は、例えば、その固体含有量に影響を受ける。また、ウォッシュコートの粒子サイズ分布(比較的平坦な分布は、粒子サイズ分布に鋭いピークを有する細かく粉砕されたウォッシュコートとは異なる粘度を与える)、並びにグアーガム及び他のゴムのようなレオロジー調整剤の影響を受ける。適切なコーティング法は国際公開第2011/080525号、同第1999/047260号及び同第2014/195685号に記載されており、それらは参照により本明細書に援用される。
【0031】
触媒材料としての使用のための触媒は、ゼオライト、例えばZSM-5、モルデナイト、ガンマゼオライト及びベータゼオライト又はそれら二以上の混合物を含む。ゼオライトは、例えばV、Cu、Ce、Fe若しくはPt又はそれら二以上で金属化されているか又はされていないことがある。金属化されている場合、金属は、既知の技術、例えば含浸又はイオン交換を使用して塗布されることがある。好ましくは、モノリスは選択的触媒還元フィルター(SCR)である。NOx還元に適した触媒は、当該技術分野で知られており、例えば、国際公開第2009/001131号、同第2010/043891号及び同第2008/106519に記載されている。有利には、SCRモノリスは、排気流のNOxを還元すること及び単一ユニットにおける粒子状物質を除去することの両方ができる。
【0032】
好ましくは、触媒材料は小細孔ゼオライトを含む。リーンバーン内燃機関の排気ガスにおけるNOxを処理するための特定用途を有する小細孔ゼオライトは、CHA、LEV、ERI、DDR、KFI、EAB、PAU、MER、AEI、GOO、YUG、GIS、VNI及びAFT構造ファミリーより選択されるゼオライトを含む。適切な例は国際公開第2008/132452号に記載されており、それは参照により本明細書に援用される。CHA及びAEIファミリーからの小細孔ゼオライトは、特に好まれる。小細孔ゼオライトは、好ましくは、任意選択的にCeを含む、Cu及び/又はFeで金属化される。あるいは、小細孔ゼオライトは、貴金属(金、銀及び白金族金属を含む)で、好ましくは白金族金属、より好ましくはパラジウム又は白金、最も好ましくはパラジウムで金属化されうる。
【0033】
好ましくは、触媒材料は多孔質基材全体に分布している。即ち、好ましくは、触媒材料は、多孔質基材全体に一様に且つ均一に分布している。
【0034】
しかしながら、いくつかの実施態様において、本発明のモノリスは、触媒材料で満たされた多孔質基材もセクションのみを有するように処理されている。特に、第一の面から縦方向に延びる第一のセクション及び第二の面から第一の部分に縦方向に延びる第二のセクションが存在しうる。言い換えれば、(排気ガスの流れに対して)モノリスの一端部は第一のセクションを形成し、他の端部の残部は第二のセクションを形成する。これらの実施態様において、第二のセクションは触媒材料を含有する。好ましくは、触媒材料は多孔質基材の第二のセクション全体に分布している。即ち、好ましくは、触媒材料は、セクション全体に一様に且つ均一に分布している。この実施態様において、好ましくは、第一のセクションは、多孔質基材内にあらゆる触媒材料(又は実際には、あらゆる追加材料)を含有しない。
【0035】
好ましくは、縦方向の第一のセクションの長さと縦方向の第二のセクションの長さとの比は、5:95から15:85、好ましくは約10:90である。
【0036】
典型的には、第一の部分及び第二の部分の間の境界線は、第一及び第二の面に平行な平面にある。これは、ウォッシュコーティングプロセスを容易にする。しかしながら、円錐形の境界線のような、モノリスの断面にわたって変化する境界線を有することも可能である。モノリスの中心部分で温度上昇が認められるため、これは、有利には、モノリス内の第二の部分の体積を増加させるのに使用されてもよい。
【0037】
微多孔膜は、第一の複数のチャネルに提供され、第一の複数の内部表面をコーティングする。好ましくは、微多孔質コーティングは、第二の複数の表面上に提供されない。本明細書に記載される第一の態様において、膜は、第一のチャネルの75から95%の長さ、好ましくは80から90%の長さで提供される。この長さは、第一の複数のチャネルの第一の面から内部シール端部への空洞の内のり長さである。コーティングが第一の面から延びるため、これは、チャネルの後部はコーティングされないことを意味する。第二の態様によれば、複数の第一の内部表面は完全にコーティングされる。
【0038】
微多孔膜は、ポリマー膜及び無機膜を含む多種多様の材料から作製されうる。使用されうる無機膜は焼結金属及びセラミック膜を含む。セラミック膜は、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ、ジルコン、コーディエライト、ムライト、スピネル、炭化ケイ素、窒化シリコン、及びそれらの混合物を含み、熱焼結により又は反応性無機結合剤で結合されうる。
【0039】
微多孔膜の孔サイズは、スート粒子が膜を通過できないようなサイズである。好ましくは、膜コーティングの平均孔直径は、約0.1ミクロンから5ミクロン、より好ましくは0.2から1ミクロンである。
【0040】
触媒膜は、透過性、半透過性、又は非透過性膜の形態であってもよい。本明細書で使用する場合、膜は触媒コーティングであり、コーティングの厚さは、膜が配置される壁の厚さの約0.1から15%である。膜はまた、全体としてフィルターに充填された触媒材料の総重量に基づき、約5~40%の触媒材料を含有しうる。
【0041】
膜は、多孔質壁の入口又は出口側にあってもよい。膜は、入口面又は出口面のどちらかから測定される、フィルターの長さの100%をカバーしてもよく、又はフィルターの長さの10~90%のみをカバーしてもよい。例えば、膜はフィルターの長さの10~25%、25~50%、50~75%、35~75%、又は75~70%をカバーしうる。
【0042】
一実施態様において、好ましくは、微多孔膜は、第一の面に隣接する領域で最も大きくなるように、縦方向に沿って減少する厚さを有する。膜はまた、フィルターの入口端部へ向かっている高濃度の触媒を有する触媒濃度勾配を含んでもよい。
【0043】
従来技術を使用して、微多孔膜としてかかる「オンウォール」塗布を基材の特定部分にのみ提供することが可能である。例えば、保護ポリマーコーティング(ポリビニルアセテート等)は、膜がそこに形成しないように、残りの部分に塗布することができる。一旦、例えば減圧下で残りのウォッシュコートが除去されると、保護ポリマーコーティングは燃焼されうる。
【0044】
微多孔膜は噴霧又は浸漬法により塗布することができるが、それを形成するのに使用される材料は、上記のような厚い粘性のコーティング溶液を使用するなどのいくつかの技術の一つによって多孔質基材に浸潤することを実質的に防止することができる。
【0045】
疑義を避けるために、微多孔性コーティングが表面領域内に延び、基材の表面近くの孔に浸透することが認められている。これは、膜が基材に接着するために必要でありうる。好ましくは、第一の複数のチャネルの表面上の膜は、チャネル壁の厚さの25%未満、好ましくは10%未満、好ましくは5%未満まで浸透する。
【0046】
好ましくは、微多孔膜は第一の触媒材料とは異なる第二の触媒材料、好ましくはスート燃焼促進剤触媒を含む。最も好ましい例は、セリア上のCu、Ce/Zr、又はセリアである。
【0047】
特定の態様において、微多孔膜は、灰、Na、Pt、硫黄酸化物、Feのような触媒毒を吸着するか又はそうでなければ捕捉するための材料を含有する。そのようなものの一つはセリアである。別の例は、生ゼオライト(例えばH型ゼオライト)である。
【0048】
特定の態様において、微多孔膜は尿素加水分解のための触媒を含有する。適切なコーティング材料は米国特許第8071037号に開示されている。
【0049】
好ましくは、多孔質壁と組み合わせた第一及び第二の複数のチャネルの平均断面幅のセル数は、1平方インチ当たり(CPSI)、100から600になる。チャネルは、一定の幅であってもよく、各複数のチャネルは、均一なチャネル幅を有してもよい。しかしながら、好ましくは、使用時に入口として機能する複数のチャネルは、出口として機能する複数のチャネルよりも大きな平均断面幅を有する。好ましくは、差は少なくとも10%である。これにより、フィルターにおける灰貯蔵容量が増加し、再生頻度を低くすることができる。非対称フィルターは国際公開第2005/030365号に記載されており、それは参照により本明細書に援用される。
【0050】
好ましくは、隣接するチャネル間の基材の平均最小厚さ(即ち壁厚)は、8から20ミリ(ここで、「ミリ」は1/1000インチである)(0.02から0.05センチ)である。チャネルは、好ましくは平行であり、好ましくは一定幅を有するため、隣接するチャネル間の最小壁厚は好ましくは一定である。理解されるように、平均最小距離を測定して、再現性のある測定を保証することが必要である。例えば、チャネルが、円形の断面を有し、密集している場合、隣接する二のチャネルの間で壁が最も薄いときに明確な点が一つある。壁厚は、好ましくは壁の多孔性及び/又は平均孔サイズに関連する。例えば、孔の大きさを意味する壁の厚さは10から50である。
【0051】
好ましくは、縦方向に直交する平面内で、モノリスは1平方インチ当たり100から500チャネル、好ましくは200から400チャネルを有する。例えば、第一の面上で、開口第一チャネル及び閉鎖第二チャネルの密度は、1平方インチ当たり200から400チャネルである。チャネルは、長方形、正方形、円形、楕円形、三角形、六角形、又はその他多角形の断面を有しうる。
【0052】
更なる態様によれば、排出処理システムにおける使用のための触媒ウォールフローモノリスであって、
多孔質基材を含み、間に縦方向を規定する第一の面及び第二の面並びに縦方向に延びる第一及び第二の複数のチャネルを有し、
第一の複数のチャネルが、第一の複数の内部表面を提供し、第一の面で開いており、第二の面で閉じており、第二の複数のチャネルが、第二の面で開いており、第一の面で閉じており、
第一の触媒材料が多孔質基材全体に分布しており、
微多孔膜が、第一の複数のチャネルに提供され、第一の複数の内部表面をコーティングし、
微多孔膜が、閉鎖した第二の面に隣接する領域で最も大きくなるように、縦方向に沿って増加する厚さを有する、モノリスが提供される。
【0053】
好ましくは、微多孔膜は、閉鎖した第二の面に隣接する領域において、使用中の背圧が第一の面に隣接する領域の背圧よりも少なくとも20%大きくなるような厚さを有する。
【0054】
更なる態様によれば、燃焼排気ガスの流れを処理するための排気処理システムであって、本明細書に記載されるような触媒ウォールフローモノリスを含み、第一の面が第二の面の上流であるシステムが提供される。
【0055】
更なる態様によれば、本明細書に記載されるような触媒ウォールフローモノリスの製造のための方法であって、
間に縦方向を規定する第一の面及び第二の面並びに縦方向に延びる第一及び第二の複数のチャネルを有する多孔質基材を提供し、第一の複数のチャネルが、第一の面で開いており、第二の面で閉じており、第二の複数のチャネルが第二の面で開いており、第一の面で閉じており、第一の複数のチャネルが第一の複数の内部表面を提供し、第二の複数のチャネルが第二の複数の内部表面を提供すること;
多孔質基材に第一の触媒材料を含有するウォッシュコートを浸透させて多孔質基材内に分布する第一の触媒材料を提供すること;並びに
第一の複数の内部表面上に微多孔膜を形成すること
を含む方法が提供される。
【0056】
第一及び第二基材部分の間の所望の境界がスラリーの表面にあるように、基材を触媒スラリーの一部に垂直に含浸させることによって、基材の選択的浸透が可能である。試料を約30秒間スラリー中に放置する。基材はスラリーから除去され、余分なスラリーは、最初にチャネルから排出することを可能にすることによって、次いで圧縮空気を(スラリー浸透の方向に対して)吹き付け、次いで、スラリーの浸透の方向から真空を引き抜くことによって、ウォールフロー基材から除去される。この技術を使用することにより、触媒スラリーは基材の第一の部分の壁に浸透するが、孔は、過度の背圧が最終基材に蓄積する程度まで吸蔵されない。
【0057】
コーティングされた基材は、典型的には約100℃で乾燥し、より高い温度(例えば300から450℃)で焼成される。焼成後、触媒担持は、基材のコーティングされた重量及びコーティングされていない重量の計算を通じて決定されうる。当業者には明らかであるように、触媒担持は、コーティングスラリーの固形物含有量を変更することにより修正されうる。あるいは、コーティングスラリー中の基材の繰り返しの浸漬を行い、続いて上記のように過剰のスラリーを除去することができる。
【0058】
微多孔膜のコーティングは、上記並びに国際公開第2011/080525号、同第1999/047260号及び同第2014/195685号に記載されるように形成される。コーティングがチャネル表面の全長に沿って形成するのを防ぐために、第一の部分の表面は、ポリビニルアセテートのような保護ポリマーフィルムで予備コーティングされてもよい。これは、触媒材料が第一の部分の表面に接着するのを防ぐ。保護ポリマーコーティングは、次いで、燃焼されてもよい。
【0059】
本開示は、特に、以下に詳述される四の好ましい実施態様を包含する。
【0060】
第一の好ましい態様によれば、排出処理システムにおける使用のための触媒ウォールフローモノリスであって、
多孔質基材を含み、間に縦方向を規定する第一の面及び第二の面並びに縦方向に延びる第一及び第二の複数のチャネルを有し、
第一の複数のチャネルが、第一の複数の内部表面を提供し、第一の面で開いており、第二の面で閉じており、第二の複数のチャネルが、第二の面で開いており、第一の面で閉じており、
第一の触媒材料が多孔質基材全体に分布しており、
微多孔膜が第一の複数の内部表面の縦方向に延びる第一の部分上の第一の複数のチャネルに提供され、
第一の部分が第一の面から第一の複数のチャネルの80から90%の長さに延びるモノリスが提供される。
【0061】
微多孔膜の形態でオンウォールコーティングを提供することにより、これは、大部分のチャネルのために壁へのスート堆積を防止し、従って、オンウォールコーティングがある場合、スート充填背圧はより低い。これらの領域のスートは表面層を形成するが、ガス流に対して同じ阻害効果を有しない。後部ゾーンにおける領域は微多孔性コーティングを有しておらず、スートが壁の孔内に堆積することができ、その結果、後部より高い背圧が生じる。使用中の初期充填後、この上昇した背圧は、チャネルの後部に充填されるスートの相対量を減少させる。これは、積極的なスート再生中のその領域における発熱を必然的に減少させ、クラッキング/ピーク温度に対するフィルターの耐久性を改善する。
【0062】
第二の好ましい態様によれば、排出処理システムにおける使用のための触媒ウォールフローモノリスであって、
多孔質基材を含み、間に縦方向を規定する第一の面及び第二の面並びに縦方向に延びる第一及び第二の複数のチャネルを有し、
第一の複数のチャネルが、第一の複数の内部表面を提供し、第一の面で開いており、第二の面で閉じており、第二の複数のチャネルが、第二の面で開いており、第一の面で閉じており、
第一の触媒材料が多孔質基材全体に分布しており、
微多孔膜が第一の複数の内部表面の縦方向に延びる第一の部分上の第一の複数のチャネルに提供され、
第一の部分が、第一の複数のチャネルの75から95%の長さにわたって、第一の面から延び、
微多孔膜が、第一の面に隣接する領域で最も大きくなるように、縦方向に沿って減少する厚さを有する、モノリスが提供される。
【0063】
この実施態様は、第一の実施態様と同様に作用する。微多孔膜は、チャネルの第一の部分における壁にスートが入るのを防ぐのに役立つ。しかしながら、微多孔膜の厚さを減少させることによって、徐々に増加する量のスートが多孔質基材に入る。これは、チャネルの後部に向かうチャネル5における背圧を増加させる。これは、熱再生時に生じる温度勾配を更に減少させるのに役立つ。
【0064】
第三の好ましい態様によれば、排出処理システムにおける使用のための触媒ウォールフローモノリスであって、
多孔質基材を含み、間に縦方向を規定する第一の面及び第二の面並びに縦方向に延びる第一及び第二の複数のチャネルを有し、
第一の複数のチャネルが、第一の複数の内部表面を提供し、第一の面で開いており、第二の面で閉じており、第二の複数のチャネルが、第二の面で開いており、第一の面で閉じており、
第一の触媒材料が多孔質基材内に分布しており、
微多孔膜が第一の複数の内部表面の縦方向に延びる第一の部分上の第一の複数のチャネルに提供され、
第一の部分が、第一の複数のチャネルの75から95%の長さにわたって、第一の面から延び、
多孔質基材が、第一の面から縦方向に延びる第一のセクション及び第二の面から第一の面へ縦方向に延びる第二のセクションを有し、第一の触媒材料が第二のセクション全体に分布しており、縦方向における第一のセクションの長さと縦方向における第二のセクションとの長さの比が5:95から15:85である、モノリスが提供される。
【0065】
その結果、第一のセクションは高い多孔性を有するため、このセクションにおける背圧は非常に低い。したがって、このセクションにおける微多孔膜の表面上のスート蓄積は増大し、結果として後部のスート充填量が減少し、耐久性が向上する。
【0066】
第四の好ましい態様によれば、排出処理システムにおける使用のための触媒ウォールフローモノリスであって、
多孔質基材を含み、間に縦方向を規定する第一の面及び第二の面並びに縦方向に延びる第一及び第二の複数のチャネルを有し、
第一の複数のチャネルが、第一の複数の内部表面を提供し、第一の面で開いており、第二の面で閉じており、第二の複数のチャネルが、第二の面で開いており、第一の面で閉じており、
第一の触媒材料が多孔質基材全体に分布しており、
微多孔膜が第一の複数のチャネルに提供され、第一の複数の内部表面をコーティングし、
微多孔膜が、閉鎖した第二の面に隣接する領域で最も大きくなるように、縦方向に沿って増加する厚さを有する、モノリスが提供される。
【0067】
本発明者らは、スート堆積を防止するのに必要なレベルを超えて余分なオンウォールコーティングが後部で増加するとき、コーティングは第一のチャネルの後部における背圧を増加させることに直接的な影響を及ぼしうることを発見した。すなわち、コーティングの厚さは、後部におけるスートの堆積を抑えるのに十分な背圧を提供することができる。特に、コーティングは、スートが充填された背圧が、後部セクションにおけるコーティング厚さの増加により、前部よりも後部で20%高いように十分でなければならない。これは、モノリスの後部に向かってスート堆積を減少させ、再生中にこの部分で過度の熱蓄積を防止するのに役立つ。
【0068】
更なる態様によれば、NOx及び粒子状物質を含む燃焼排気ガスの流れを処理するための方法であって、排気流に本明細書に記載のモノリスを通過させることを含み、第二の面が第一の面の下流である方法が提供される。
【0069】
本発明のための排気システムは、内燃機関、特にリーンバーン内燃機関、特にディーゼルエンジンのためのものである。
【0070】
次に、以下の非限定的な図面に関して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【
図1】本発明によるウォールフローモノリスフィルター1を概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示されるウォールフローモノリスフィルター1のA-A線断面図である。
【
図3A-C】本明細書に記載される微多孔膜の位置及び相対的な厚さの異なる実施態様を示す。
【
図4】本発明によるウォールフローモノリスフィルター1を概略的に示す斜視図である。
【
図5】本明細書に記載される微多孔膜の位置及び相対的な厚さの実施態様を示す。
【
図6】ディーゼルエンジンのための排気ガス処理システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0072】
本発明によるウォールフローモノリス1が
図1及び
図2に示される。それは、モノリス1の縦方向(
図1A内の両側矢印「a」により示される。)に互いに平行に配置された多数のチャネルを含む。多数のチャネルはチャネル5の第一のサブセット及びチャネル10の第二のサブセットを含む。
【0073】
チャネルは、チャネル10の第二のサブセットがチャネル5の第一のサブセットよりも狭くなるように描かれている。これは、フィルター内の灰貯蔵容量を増加させることが分かっている。ただし、チャネルは、代わりに、同じサイズであってもよい。
【0074】
チャネル5の第一のサブセットは、ウォールフローモノリス1の第一の端面15上の端部で開いており、第二の端面25上の端部でシール材20によってシールされている。
【0075】
一方、チャネル10の第二のサブセットは、ウォールフローモノリス1の第二の端面25上の端部で開いており、第一の端面15上の端部でシール材20によってシールされている。
【0076】
ウォールフローモノリス1の多孔質材料40には、チャネル壁35の孔内にゼオライトのような触媒材料が提供されている。これは、当該技術分野で知られ、本明細書の他の箇所で論じられているように、ウォッシュコート塗布法を用いて提供されうる。好ましくは、触媒材料は、以下に記載されるような特定の実施形態を除いて、多孔質材料40全体に分布している
【0077】
チャネル5の第一のサブセットのチャネル壁35には、その少なくとも一部上に微多孔膜36が提供されている。チャネル10の第二のサブセットのチャネル壁はコーティングされていない。
図2は、ウォールフロー型フィルターがどのように機能するかを示しているが、微多孔膜36を示していない。微多孔膜36の実施態様は、
図3A~
図3C及び
図4に示されている。
【0078】
ウォールフローモノリスが尿素SCR装置に使用されるとき、チャネル5の第一のサブセットに導入された排気ガスG(
図2において、「G」は排気ガスを示し、矢印は排気ガスの流れ方向を示す。)は、チャネル5aとチャネル10a及び10bとの間に介在するチャネル35を通過して、モノリス1から流出する。これにより、排気ガスにおける粒子状物質がチャネル壁35に捕捉される。
【0079】
モノリス1のチャネル壁35に担持されたゼオライトは、アンモニア等の還元剤と組み合わせてNOxに作用してNOxをN2に還元する触媒還元のための触媒として機能する。
【0080】
したがって、ウォールフローモノリス1が尿素SCR装置に使用されるとき、セル壁35に担持されたゼオライトの作用と、排気ガスがセル壁35を通過する間に尿素SCR装置の尿素噴霧ノズルから噴霧される尿素水由来のアンモニアの作用により、排気ガス中のNOxがN2に還元される。
【0081】
図3Aにおいて、微多孔性コーティングは、(第一の端面15からチャネルの密封端まで測定され、第一の端面15から出発する)チャネル長の約90%が微多孔性コーティングを有するように、チャネル5の第一のサブセットのチャネル壁35上に提供される。コーティングの厚さは、実質的には均一である。
【0082】
本発明者らは、チャネル5に沿って、しかしチャネル5の全長よりも短い間、オンウォールコーティングを提供することによって、チャネル5内のスートの蓄積に影響を及ぼすことがあることを見出した。特に、従来のコーティングされていないウォールフローモノリスにおいて、スートは、特に、チャネルの端部に向かって堆積する傾向がある。これが燃焼再生工程によって除去されるとき、追加のスートの存在は、モノリス内の急な温度勾配をもたらす。これは、フィルターのひび割れ及び有効寿命の著しい短縮をもたらす。
【0083】
微多孔膜36の形態でオンウォールコーティングを提供することにより、これは、大部分のチャネルのために壁へスートが入るのを停止し、従って、オンウォールコーティングがある場合、スート充填背圧はより低い。これらの領域のスートは表面層を形成するが、ガス流に対して同じ阻害効果を有しない。後部ゾーンにおける領域は微多孔性コーティングを有しておらず、スートが壁の孔内に堆積することができ、その結果、後部より高い背圧が生じる。初期充填後、この上昇した背圧は、チャネル5の後部に充填されるスートの相対量を減少させる。これは、積極的なスート再生中のその領域における発熱を必然的に減少させ、クラッキング/ピーク温度に対するフィルターの耐久性を改善する。
【0084】
図3Bにおいて、微多孔性コーティングは、(第一の端面15からチャネルの密封端まで測定され、第一の端面15から出発する)チャネル長の90%が微多孔性コーティングを有するように、チャネル5の第一のサブセットのチャネル壁35上に提供される。コーティングの厚さは、コーティングが第一の端面15の近くで最も厚くなるように、チャネル5に沿って減少する。
【0085】
上記の実施態様で説明されるように、微多孔膜36は、チャネル5の第一の部分における壁にスートが入るのを防ぐのに役立つ。しかしながら、微多孔膜36の厚さを減少させることによって、徐々に増加する量のスートが多孔質基材に入る。これは、チャネルの後部に向かうチャネル5における背圧を増加させる。これは、熱再生時に生じる温度勾配を更に減少させるのに役立つ。
【0086】
図3Cにおいて、微多孔性コーティングは、(第一の端面15からチャネルの密封端まで測定され、チャネル5の第一の端部から出発する)チャネル長の90%が微多孔性コーティングを有するように、チャネル5の第一のサブセットのチャネル壁35上に提供される。コーティングの厚さは、実質的には均一である。しかしながら、この実施態様における多孔質基材40は、二のセクションに分けられる。触媒材料を含まない第一の面から出発する第一のセクション50と、触媒材料を有する第二のセクション51(残部)が全体に分布する。
【0087】
その結果、第一のセクション50は高い多孔性を有するため、背圧は非常に低い。したがって、微多孔膜36の表面上のスート蓄積は増大し、結果として後部のスート充填量が減少し、耐久性が向上する。
【0088】
図4は、本発明によるウォールフローモノリスフィルター1を概略的に示す斜視図である。ウォールフローモノリスは、第一のセクション50及び第二のセクション51を示す。
【0089】
図5において、微多孔性コーティングは、(第一の端面15からチャネルの密封端まで測定される)チャネル長の100%が微多孔性コーティングを有するように、チャネル5の第一のサブセットのチャネル壁35上に提供される。チャネル5上のコーティングの厚さは、第二の端面25の近くで最も厚くなる。触媒材料は多孔質物質全体に分布している。
【0090】
本発明者らは、スート堆積を防止するのに必要なレベルを超えて余分なオンウォールコーティングが後部で増加するとき、コーティングは第一のチャネルの後部における背圧を増加させることに直接的な影響を及ぼしうることを発見した。特に、コーティングは、スートが充填された背圧が、後部セクションにおけるコーティング厚さの増加により、前部よりも後部で20%高いように十分でなければならない。これは、モノリスの後部に向かってスート堆積を減少させ、再生中にこの部分で過度の熱蓄積を防止するのに役立つ。
【0091】
図6に示される排気ガス処理システム100の実施態様において、アンモニア還元剤105は、ウォールフローモノリス1の上流の排気ガス110の流れに注入される。排気ガス110は、エンジンからダクト120を通って排気システム125へ送られる。アンモニア還元剤105は、(コントローラー135により決定されるように)必要に応じて、貯蔵容器130から注入ノズル140を通って分配され、SCR装置として機能するモノリス1に達する前に排気ガスと混合する。
【0092】
ウォールフローモノリスは単一成分として本明細書に記載されることに留意すべきである。それにもかかわらず、排出処理システムを形成するとき、使用されるモノリスは、複数のチャネルを一緒に接着することによって、又は本明細書に記載されるような複数の小さなモノリスを一緒に接着することによって形成されうる。そのような技術は、当該技術分野においてよく知られており、排出処理システムの適切なケーシング及び構成も同様である。
【0093】
膜は、多孔質壁の入口又は出口側にあってもよい。膜は、フィルターの長さの10~90%をカバーしてもよく、入口面又は出口面のどちらかから測定する。例えば、膜はフィルターの長さの10~25%、25~50%、50~75%、35~75%、又は75~70%をカバーしうる。
【0094】
膜の触媒及び/又は吸着剤材料は、ここで規定されるようなSCR触媒、NOxトラップ、スート酸化触媒、加水分解触媒、並びにV、Pt、Pd、Rh、Ru、Na、Cu、Fe、Co、Nu及びCrのような金属又は灰及び/若しくは硫黄酸化物のような毒物のための吸着剤を含みうる。触媒及び/又は吸着剤材料の例は、金属充填ゼオライト、例えばCu/CHA、Cu/AEI、Fe/CHA、Pd/CHA等、H型ゼオライト、担持白金族金属等を含む。
【0095】
好ましくは、膜は、触媒と、任意選択的に結合剤(例えば、金属酸化物粒子)、繊維(例えば、ガラス又はセラミック不織繊維)、マスキング剤、レオロジー調整剤及び孔形成剤のような一又は複数の他の構成要素とを含有する触媒ウォッシュコートとして塗布される。
【0096】
膜におけるこれらの特徴の全て又は任意の組み合わせは、スート充填背圧(特にフィルター効率との組合せ)を改善し、フィルター再生中の発熱を低減し、フィルターの熱的及び機械的耐久性を改善し(例えば、亀裂、剥離などを回避する)、急激な温度上昇から温度感受性の触媒を保護し、全体的な及び重量に基づく触媒性能を改善し、N2O形成を低減し、よりよいNH3の利用を可能にし、Pt、灰、硫黄酸化物、Na、Fe等の毒物を捕捉し、揮発によって金属の潜在的な損失を緩和することができる。
【0097】
本発明の好ましい実施態様が本明細書で詳細に説明されているが、当業者には、本発明の範囲又は添付の特許請求の範囲から逸脱することなく変更が可能であることが理解されるであろう。