(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】電流検出装置、電流検出システム、及び電流検出装置の校正方法
(51)【国際特許分類】
G01R 19/00 20060101AFI20221107BHJP
G01R 35/00 20060101ALI20221107BHJP
G01R 15/18 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
G01R19/00 N
G01R35/00 E
G01R15/18 A
(21)【出願番号】P 2018021224
(22)【出願日】2018-02-08
【審査請求日】2021-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【氏名又は名称】小室 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】指田 和之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健一
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 和彦
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-250976(JP,A)
【文献】特開平8-292213(JP,A)
【文献】特表2014-522980(JP,A)
【文献】特開2013-160638(JP,A)
【文献】特開平11-98602(JP,A)
【文献】特開平9-304441(JP,A)
【文献】特開平2-143174(JP,A)
【文献】特開平1-187469(JP,A)
【文献】特開2006-38799(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0160298(US,A1)
【文献】特開2012-184985(JP,A)
【文献】特表2011-513706(JP,A)
【文献】特開2003-315376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 19/00
G01R 15/00
G01R 31/28
G01R 35/00
H03M 3/00
H03K 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体の周囲に設けられたロゴスキーコイルからの出力信号に基づいて、前記導体に流れる電流を検出する電流検出装置であって、
前記出力信号を積分する積分回路と、
前記積分回路により積分された出力信号を増幅する増幅回路と、
前記増幅回路から得られる増幅信号に基づいて前記導体に流れる電流を検出する検出処理部と、
校正モード時において、前記導体に電流が流れていない状態で前記増幅回路から得られる増幅信号の電圧値が所定値になるよう前記増幅信号のオフセットを調整するとともに、前記導体に予め設定された電流値が流れている状態で前記増幅回路から得られる増幅信号の電圧値が所定値になるように前記増幅回路のゲインを調整する校正部と、
を備え
、
前記校正部は、前記増幅信号のオフセットを調整した後において、前記導体に予め設定された電流値を流す制御を行う、
ことを特徴とする電流検出装置。
【請求項2】
前記校正部は、
不揮発性メモリと、
前記増幅回路のゲインを制御するゲイン制御部と、
を備え、
前記ゲイン制御部は、前記校正モード時において、前記増幅信号の電圧値が前記所定値になるように前記増幅回路のゲインを調整し、調整後の前記ゲインに関する制御情報を前記不揮発性メモリに格納することを特徴とする請求項1に記載の電流検出装置。
【請求項3】
前記ゲイン制御部は、通常動作モードにおいて、前記不揮発性メモリに格納されている前記制御情報に基づいて、前記増幅回路のゲインを制御することを特徴とする請求項2に記載の電流検出装置。
【請求項4】
導体の周囲に設けられたロゴスキーコイルと、
前記ロゴスキーコイルからの出力信号に基づいて前記導体に流れる電流を検出する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電流検出装置と、
を備え、
前記ロゴスキーコイルは、前記導体が形成された多層基板の内層に配置されていることを特徴とする電流検出システム。
【請求項5】
導体の周囲に設けられたロゴスキーコイルからの出力信号を積分する積分回路と、前記積分回路により積分された出力信号を増幅する増幅回路と、前記増幅回路から得られる増幅信号に基づいて前記導体に流れる電流を検出する検出処理部と、を備える電流検出装置の校正方法であって、
校正モード時において、前記導体に電流が流れていない状態で前記増幅回路から得られる増幅信号の電圧値が所定値になるよう前記増幅信号のオフセットを調整するとともに、前記導体に予め設定された電流値が流れている状態で前記増幅回路から得られる増幅信号の電圧値が所定値になるように前記増幅回路のゲインを調整する校正ステップを含
み、
前記校正ステップは、前記増幅信号のオフセットを調整した後において、前記導体に予め設定された電流値を流す制御を行う、
ことを特徴とする電流検出装置の校正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流検出装置、電流検出システム、及び電流検出装置の校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ロゴスキーコイルを用いた交流電流(被測定電流)の電流検出装置が知られている。この電流検出装置では、ロゴスキーコイルから出力される出力電圧を、複数のオペアンプ(演算増幅器)を用いて積分するとともに所定の電圧レベルに増幅することで増幅信号を生成する。そして、電流検出装置は、生成した増幅信号を所定の電流値に変換することで、被測定電流を演算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、演算増幅器には、温度依存性を有する入力オフセット電圧が存在するため、増幅信号にばらつきが発生する。また、ロゴスキーコイルの個体差による出力電圧のばらつき(例えば、ロゴスキーの作り方等による出力電圧のばらつき)が発生するため、結果的に増幅信号にばらつきが発生する。したがって、上述した増幅信号のばらつきによって被測定電流を正確に測定することができないという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、ロゴスキーコイルを用いて被測定電流を正確に測定する電流検出装置、電流検出システム、及び電流検出装置の校正方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、導体の周囲に設けられたロゴスキーコイルからの出力信号に基づいて、前記導体に流れる電流を検出する電流検出装置であって、前記出力信号を積分する積分回路と、前記積分回路により積分された出力信号を増幅する増幅回路と、前記増幅回路から得られる増幅信号に基づいて前記導体に流れる電流を検出する検出処理部と、校正モード時において、前記導体に予め設定された電流値が流されることで前記増幅回路から得られる増幅信号の電圧値が所定値になるように前記増幅回路のゲインを調整することで、前記増幅信号のオフセットを調整する校正部と、を備えることを特徴とする電流検出装置である。
【0007】
本発明の一態様は、上述の電流検出装置であって、前記校正部は、不揮発性メモリと、前記増幅回路のゲインを制御するゲイン制御部と、を備え、前記ゲイン制御部は、前記校正モード時において、前記増幅信号の電圧値が前記所定値になるように前記増幅回路のゲインを調整し、調整後の前記ゲインに関する制御情報を前記不揮発性メモリに格納する。
【0008】
本発明の一態様は、上述の電流検出装置であって、前記ゲイン制御部は、通常動作モードにおいて、前記不揮発性メモリに格納されている前記制御情報に基づいて、前記増幅回路のゲインを制御する。
【0009】
本発明の一態様は、導体の周囲に設けられたロゴスキーコイルと、上述の電流検出装置と、を備え、前記ロゴスキーコイルは、前記導体が形成された多層基板の内層に配置されていることを特徴とする電流検出システムである。
【0010】
本発明の一態様は、導体の周囲に設けられたロゴスキーコイルからの出力信号を積分する積分回路と、前記積分回路により積分された出力信号を増幅する増幅回路と、前記増幅回路から得られる増幅信号に基づいて前記導体に流れる電流を検出する検出処理部と、を備える電流検出装置の校正方法であって、校正モード時において、前記導体に予め設定された電流値が流されることで前記増幅回路から得られる増幅信号の電圧値が所定値になるように前記増幅回路のゲインを調整することで、前記増幅信号のオフセットを調整する校正ステップを含むことを特徴とする電流検出装置の校正方法である。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、ロゴスキーコイルを用いて被測定電流を正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電流検出装置を備えた電流検出システムAの概略構成の一例を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る電流検出装置4における校正モードの動作の流れを説明する図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る電流検出装置4における通常動作モードの動作の流れを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る電流検出装置を、図面を用いて説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る電流検出装置を備えた電流検出システムAの概略構成の一例を示す図である。
この電流検出システムAは、導体Dに流れる電流(以下、「被測定電流」という。)を検出するシステムである。本実施形態では、被測定電流は、電源Eから抵抗Rを介して導体Dに流れる電流であって、スイッチング素子SWのオンオフ動作により交流に変換される。
【0015】
電流検出システムAは、制御部1、スイッチング素子2、ロゴスキーコイル3、及び電流検出装置4を備える。
【0016】
制御部1は、スイッチング素子SWのゲート端子に第1駆動信号を出力することで、スイッチング素子SWを導通状態又は非導通状態に制御する。例えば、第1駆動信号は、PWM(Pulse Width Modulation)信号である。
【0017】
また、制御部1は、電流検出装置4から校正開始信号を取得した場合には、第1駆動信号とは異なる第2駆動信号をスイッチング素子SWのゲート端子に出力することで、スイッチング素子SWを導通状態又は非導通状態に制御する。第2駆動信号とは、例えば、第1駆動信号とは異なるデューティ比のPWM信号である。なお、第1駆動信号と第2駆動信号とを区別しない限り、単に「駆動信号」と称する。
【0018】
スイッチング素子2は、制御部1の出力とスイッチング素子SWのゲート端子との間に接続されている。このスイッチング素子2が導通状態又は非導通状態に制御されることで、制御部1からスイッチング素子SWのゲート端子への駆動信号の出力が制御される。このスイッチング素子2の導通状態又は非導通状態は、電流検出装置4に制御されてもよいし、制御部1に制御されてもよい。
【0019】
ロゴスキーコイル3は、導体Dの周囲に設けられている。例えば、ロゴスキーコイル3は、導体Dが形成された多層基板の内層に配置されている。
本実施形態では、ロゴスキーコイル3は、スイッチング素子SWのソース端子と電源Eの負極端子との間の導体Dの周囲に配置され、当該導体Dに流れる被測定電流を検出する。ロゴスキーコイル3は、一端が電流検出装置4に接続され、他端が電源Eの負極端子に接続されている。ロゴスキーコイル3は、検出結果を出力信号として電流検出装置4に出力する。
【0020】
電流検出装置4は、ロゴスキーコイル3からの出力信号に基づいて導体Dに流れる被測定電流値を検出する。以下に、電流検出装置4の構成について、説明する。
【0021】
電流検出装置4は、積分回路5、増幅回路6、検出処理部7、及び校正部8を備える。
【0022】
積分回路5は、リセット機能を有し、ロゴスキーコイル3から出力される出力信号を積分する。具体的には、積分回路5は、抵抗51、オペアンプ52、コンデンサ53、及びリセットスイッチ54を備える。
【0023】
抵抗51は、ロゴスキーコイル3の一端とオペアンプ52の反転入力端子との間に接続されている。また、コンデンサ53は、オペアンプ52の反転入力端子と、オペアンプ52の出力端子との間に接続されている。
【0024】
オペアンプ52は、抵抗51及びコンデンサ53が接続されることにより、積分回路として機能する。オペアンプ52は、反転入力端子に抵抗51を介してロゴスキーコイル3の一端が接続され、非反転入力にロゴスキーコイル3の他端が接続されている。
オペアンプ52は、ロゴスキーコイル3から反転入力端子に入力した出力信号を積分し、積分した出力信号を出力端子から増幅回路6に出力する。
【0025】
リセットスイッチ54は、コンデンサ53と並列に、オペアンプ52の反転入力端子と、オペアンプ52の出力端子との間に接続されている。リセットスイッチ54は、積分回路5の出力電位をリセットするスイッチである。このリセットスイッチ54の制御端子には、制御部1の出力端子が接続されている。そして、リセットスイッチ54は、制御部1からの駆動信号により導通状態に制御される。なお、リセットスイッチ54は、積分回路5をリセットする際(コンデンサ53の電荷を放電する際)に、導通状態(オン状態)に制御される。
【0026】
増幅回路6は、積分回路5により積分された出力信号を所定のゲインで増幅する。この増幅回路6のゲインは、校正部8により調整される。増幅回路6は、所定のゲインで増幅した出力信号を増幅信号として検出処理部7に出力する。
【0027】
検出処理部7は、増幅回路6から得られる増幅信号に基づいて導体Dに流れる被測定電流値を検出する。例えば、検出処理部7は、増幅信号の電圧値を取り込み、その取り込んだ電圧値をデジタル値に変換した後に、所定の演算処理を行うことにより、被測定電流値を算出する。
【0028】
校正部8は、増幅回路6から出力される増幅信号の電圧値を校正する。これは、積分回路5や増幅回路6の入力オフセットやロゴスキーコイル3からの出力信号の電圧値のばらつきにより、結果的に増幅信号の電圧値にばらつきが発生し、被測定電流を正確に測定することができないためである。したがって、校正部8は、検出処理部7で被測定電流値が検出される通常動作モードの前に、増幅回路6から出力される増幅信号の電圧値を校正する。なお、校正部8による増幅信号の電圧値を校正するモードを校正モードと称する。
【0029】
以下に、本発明の一実施形態に係る校正部8の構成について説明する。
校正部8は、ゲイン制御部9及び不揮発性メモリ10を備える。
ゲイン制御部9は、増幅回路6のゲインを制御する。具体的には、ゲイン制御部9は、CPU11及び校正回路12を備える。
【0030】
CPU11は、通常動作モードから校正モードに移行すると、制御部1に校正モードの開始を示す校正開始信号を出力する。これにより、制御部1から第2駆動信号を出力させる。すなわち、CPU11は、予め設定されたデューティ比の駆動信号である第2駆動信号でスイッチング素子SWをスイッチングさせることで、導体Dに予め設定された電流値(以下、「基準電流値」という。)を流す。なお、この基準電流値の情報は、不揮発性メモリ10に予め格納されている。また、CPU11は、通常動作モードから校正モードに移行すると、校正回路12に校正開始信号を出力する。
【0031】
CPU11は、校正モード時において、増幅回路6から出力される増幅信号の電圧値を読み取る。すなわち、CPU11は、導体Dに基準電流値が流れている場合において、増幅回路6から出力される増幅信号の電圧値を読み取る。そして、CPU11は、読み取った電圧値をデジタル値に変換した後に、所定の演算処理を行うことにより、電流値に変換する。この所定の演算処理とは、検出処理部7における演算処理と同様である。したがって、校正部8及びCPU11に、同一の電圧値の信号を入力すれば、校正部8及びCPU11のそれぞれにおいて同一の電流値が得られることになる。
【0032】
CPU11は、上記演算処理で得られた電流値と不揮発性メモリ10に格納されている基準電流値とを比較して、その比較結果を校正回路12に出力する。例えば、この比較結果とは、上記演算処理で得られた電流値と不揮発性メモリ10に格納されている基準電流値との差分値(以下、「電流差分値」という。)である。
【0033】
CPU11は、電流差分値がゼロ又はゼロと同視し得る所定範囲内に収まった場合には、校正モードの終了を示す校正終了信号を制御部1及び校正回路12に出力する。制御部1は、校正終了信号を取得すると、第2駆動信号の出力を停止する。
【0034】
校正回路12は、校正開始信号を取得した場合には、CPU11からの比較結果に基づいて、増幅回路6のゲインを調整することで、増幅信号のオフセットを調整する。具体的には、校正回路12は、CPU11から出力される電流差分値が0になるように増幅回路6のゲインを調整する。すなわち、校正回路12は、校正モードにおいて、増幅回路6から得られる増幅信号の電圧値が所定値になるよう増幅回路6のゲインを調整する。増幅回路6におけるゲインの調整方法については、特に限定されない。例えば、増幅回路6のゲイン調整の抵抗として電子ボリュームが用いられる場合には、校正回路12は、電子ボリュームに印加する電圧を調整することで、増幅回路6におけるゲインを調整する。
【0035】
校正回路12は、CPU11から校正終了信号を取得した場合には、増幅回路6のゲインの調整を停止するとともに、調整後の増幅回路6のゲインに関する制御情報を不揮発性メモリ10に格納する。このゲインに関する制御情報とは、例えば、電子ボリュームに印加する電圧値である。
【0036】
校正回路12は、電流検出装置4が通常動作モードで動作する場合には、不揮発性メモリ10に格納されている制御情報を読み取り、その読み取った制御情報に基づいて、増幅回路6のゲインを制御する。
【0037】
以下に、本発明の一実施形態に係る電流検出装置4の動作の流れについて説明する。まず、電流検出装置4における校正モードの動作の流れについて、説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る電流検出装置4における校正モードの動作の流れを説明する図である。
【0038】
ゲイン制御部9は、校正モードに移行すると、制御部1に校正開始信号を出力する(ステップS101)。これにより、制御部1からスイッチSWのゲート端子に第2駆動信号が出力され、導体Dに基準電流値が流れる。
【0039】
ゲイン制御部9は、導体Dに基準電流値が流れている場合において、増幅回路6から出力される増幅信号の電圧値を読み取る。そして、ゲイン制御部9は、読み取った電圧値を所定の演算処理により電流値に変換し(ステップS102)、その変換した電流値が不揮発性メモリ10に格納されている基準電流値になるように、増幅回路6のゲインを調整する(ステップS103)。
【0040】
ゲイン制御部9は、所定の演算処理により変換した電流値が基準電流値か否かを判定する(ステップS104)。換言すれば、ゲイン制御部9は、増幅信号の電圧値が所定値か否かを判定する。
ゲイン制御部9は、所定の演算処理により変換した電流値が基準電流値であると判定した場合には、増幅回路6のゲインの調整を終了し、当該調整後のゲインに関する制御情報を不揮発性メモリ10に格納する(ステップS105)。そして、ゲイン制御部9は、校正モードを終了する。なお、ゲイン制御部9は、所定の演算処理により変換した電流値が基準電流値でないと判定した場合には、ステップS103に移行し、増幅回路6のゲインの調整を継続する。
【0041】
次に、本発明の一実施形態に係る電流検出装置4における通常動作モードの動作の流れについて、説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係る電流検出装置4における通常動作モードの動作の流れを説明する図である。
【0042】
通常動作モードにおいて、制御部1からスイッチング素子SWのゲート端子に第1駆動信号が出力される。したがって、導体Dに被測定電流が流れる。
ゲイン制御部9は、通常動作モードに移行した場合には、不揮発性メモリ10に格納されている制御情報を読み出し(ステップS201)、読み出した制御情報に基づいて、増幅回路6のゲインを制御する(ステップS202)。これにより、増幅信号のオフセットが校正モードにより調整された状態となる。
【0043】
通常動作モードにおいて、導体Dに被測定電流が流れると、ロゴスキーコイル3は当該被測定電流を検出し、検出した被測定電流を微分した波形の電圧信号である出力信号を積分回路5に出力する。ロゴスキーコイル3から出力された出力信号は、積分回路5で積分される。そして、積分回路5で積分された出力信号は、増幅回路6において、校正モードで調整されたゲインで増幅され、増幅信号として検出処理部7に出力される。
【0044】
検出処理部7は、増幅回路6から得られる増幅信号の電圧値を読み取り、読み取った電圧値を所定の演算処理を行うことにより電流値に変換することで被測定電流値を検出する(ステップS203)。
【0045】
なお、校正部8は、内部に、コンピュータシステムを有していてもよい。そして、上述した校正部8の処理過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。
【0046】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0047】
例えば、校正回路12は、増幅回路6のゲインを調整する場合において、CPU11から取得した差分値に応じて、変化させるゲインの値を調整してもよい。例えば、校正回路12は、差分値が大きい場合には、調整する値を大きく設定してもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、校正モードにおいて、導体Dに基準電流値の電流を流すことで増幅回路6から得られる増幅信号の電圧値が所定値になるように増幅回路6のゲインを調整する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、導体Dに電流が流れていない状態において検出処理部7及びCPU11で得られる電流値が予め設定された値(例えば、ゼロ)になるように調整する、いわゆるゼロ点校正を行ってもよい。この場合には電流検出装置4は、校正モードにおいて、基準電流値の電流を流す前に、上記ゼロ点校正を実施する。すなわち、電流検出装置4は、ゼロ点校正を実施した後において、導体Dに基準電流値の電流を流すことで増幅回路6から得られる増幅信号の電圧値が所定値になるように増幅回路6のゲインを調整する。
例えば、ゼロ点校正を行う場合には、校正部8は、導体Dに電流が流れていない状態において増幅回路6から得られる増幅信号の電圧値がゼロになるように校正することで、ゼロ点校正を行ってもよい。また、CPUI1及び検出処理部7は、導体Dに電流が流れていない状態において、増幅回路6から得られる増幅信号の電圧値を電流値に変換する場合に、当該電流値をゼロと設定することでゼロ点校正してもよい。
【0049】
以上、説明したように、本発明の一実施形態に係る電流検出装置4は、導体Dの周囲に設けられたロゴスキーコイル3からの出力信号に基づいて、導体Dに流れる電流を検出する電流検出装置である。そして、電流検出装置4は、校正モード時において、導体Dに予め設定された電流値(基準電流値)が流されることで増幅回路6から得られる増幅信号の電圧値が所定値になるように増幅回路6のゲインを調整することで、増幅信号のオフセットを調整する校正部8を備える。
【0050】
このような構成によれば、電流検出装置4内に用いられている積分回路5や増幅回路6のばらつきやロゴスキーコイルの個体差による出力電圧のばらつき等により増幅信号の電圧値にばらつきが発生する場合であっても、校正部8により簡易に校正することができる。これにより、被測定電流を正確に測定することができる。
【0051】
また、校正部8は、校正モード時において、増幅信号の電圧値が所定値になるように増幅回路6のゲインを調整し、調整後のゲインに関する制御情報を不揮発性メモリ10に格納する。そして、校正部8は、通常動作モードにおいて、不揮発性メモリ10に格納されている制御情報に基づいて、増幅回路6のゲインを制御する。
【0052】
このような構成によれば、被測定電流を測定する度に、校正モードを実行する必要がなく、例えば、ロゴスキーコイル3に電流検出装置4を取り付けた場合における最初の電流検出装置4の起動時に校正モードを実行すればよい。
【符号の説明】
【0053】
A 電流検出システム
1 制御部
2 スイッチング素子
3 ロゴスキーコイル
4 電流検出装置
5 積分回路
6 増幅回路
7 検出処理部
8 校正部
9 ゲイン制御部
10 不揮発性メモリ