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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】キャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 41/04 20060101AFI20221107BHJP
   B65D 51/24 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
B65D41/04 500
B65D51/24 200
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018027404
(22)【出願日】2018-02-19
(65)【公開番号】P2019142535
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】中村 泰士
(72)【発明者】
【氏名】荻島 敦子
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-128998(JP,A)
【文献】特開平04-327128(JP,A)
【文献】特開昭62-267028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 39/00-55/16
B65D 1/00- 1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状部と、前記筒状部の一方の開口端を塞ぐ天蓋部と、を有し、
前記筒状部の外周壁の把持部に、前記天蓋部側から見て時計回り方向に下るように傾斜した第1の稜線と、前記天蓋部側から見て反時計回り方向に下るように傾斜した第2の稜線と、前記外周壁の周方向に延びる2~5本の第3の稜線又は谷線とが形成され、
前記第1の稜線と前記第2の稜線とが、前記外周壁の前記第3の稜線又は谷線以外の部分で交差し、
前記外周壁に、前記第1の稜線、前記第2の稜線、及び、前記第3の稜線又は谷線によって囲まれた複数の三角面及び六角面が形成されている、キャップ。
【請求項2】
前記筒状部の高さ方向における前記第3の稜線の位置を、内容物を計量する位置に合わせ、第3の稜線を計量目盛としても機能させた計量キャップである、請求項1に記載のキャップ。
【請求項3】
前記筒状部が、筒状部本体と、前記筒状部本体と前記天蓋部とを接続し、かつ前記天蓋部に向かうにしたがって外径が小さくなる縮径部と、を有し、
前記筒状部本体と前記縮径部との境界に沿って周方向に延びる第4の稜線が形成され、
前記筒状部の外周壁の前記第4の稜線よりも下端側に前記第3の稜線又は谷線が形成されている、請求項1又は2に記載のキャップ。
【請求項4】
前記筒状部が、前記天蓋部に向かうにしたがって外径が小さくなる縮径部を有しない筒状である、請求項1又は2に記載のキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
液状物(液体洗剤、液体漂白剤、液体柔軟剤、溶剤等)、粉粒物(粒状洗剤、粒状漂白剤、粒状調味料等)等の内容物を収納する容器には、容器本体の口部に回旋により着脱可能に螺着されるキャップが設けられている。キャップを回旋により容器本体から着脱する際には手指が滑ることがある。特に衣類用液体洗剤等に用いられている計量キャップは略回転体形状のものが多く、また濡れた手で使用する場面が多いため、キャップを着脱する際に手指が滑りやすい。
【0003】
回旋方向の滑り止め機能を有するキャップとして、キャップの筒状部の外周壁に、天蓋部側から見て時計回りの方向に下るように傾斜した第1の稜線と、反時計回りの方向に下るように傾斜した第2の稜線とが形成されたキャップが提案されている(特許文献1、2)。前記キャップの外周壁には、これらの稜線によって複数の多角面が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-151132号公報
【文献】特開2015-128998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1、2のような従来のキャップでは、容器本体の口部からキャップを上方に抜き取る際に手指が滑るおそれがある。特に計量キャップは金型からの抜きを考慮してキャップ天面に向かってやや縮径された形状のものが多く、キャップの高さ方向に対する滑り止め機能も重要である。
また、商品性を高める目的から、キャップの意匠性をさらに高めることも重要である。
【0006】
本発明は、回旋方向及び高さ方向の滑り止め機能を有し、意匠性に優れたキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の構成を有する。
[1]筒状部と、前記筒状部の一方の開口端を塞ぐ天蓋部と、を有し、
前記筒状部の外周壁の把持部に、前記天蓋部側から見て時計回り方向に下るように傾斜した第1の稜線と、前記天蓋部側から見て反時計回り方向に下るように傾斜した第2の稜線と、前記外周壁の周方向に延びる第3の稜線又は谷線とが形成され、
前記外周壁に、前記第1の稜線、前記第2の稜線、及び、前記第3の稜線又は谷線によって囲まれた複数の多角面が形成されている、キャップ。
[2]前記第1の稜線と前記第2の稜線とが交差している、[1]に記載のキャップ。
[3]前記第1の稜線と前記第2の稜線とが、前記外周壁の前記第3の稜線又は谷線以外の部分で交差している、[2]に記載のキャップ。
【発明の効果】
【0008】
本発明のキャップは、回旋方向及び高さ方向の滑り止め機能を有し、意匠性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施形態のキャップを示す斜視図である。
図2図1のキャップの平面図である。
図3図1のキャップの正面図である。
図4】本発明の第2の実施形態のキャップを示す斜視図である。
図5図4のキャップの平面図である。
図6図4のキャップの正面図である。
図7】本発明の第3の実施形態のキャップを示す斜視図である。
図8図7のキャップの平面図である。
図9図7のキャップの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の用語の定義は、本明細書及び特許請求の範囲にわたって適用される。
「透明」とは、可視光を透過することを意味する。よって、可視光を透過する点では、「半透明」は、透明に包含される。
「多角面」とは、3つ以上の角を有する面を意味する。多角面の辺は、直線に限定されず、湾曲していてもよい。筒状部の外周壁に配置された複数の多角面の形状、サイズ等は、すべて同じであってもよく、一部又は全部で異なっていてもよい。
「稜線」とは、隣り合う多角面が交わってできる山の頂部の連なりの線分を意味する。「谷線」とは、隣り合う多角面が交わってできる谷の底部の連なりの線分を意味する。ここで「交わる」とは、隣り合う多角面が出会って少なくとも1つの辺を共有することを意味する。稜線及び谷線は、直線に限定されず、屈折又は湾曲していてもよい。
「第1の稜線」とは、天蓋部側から見て時計回りの方向に下るように傾斜した、すなわち筒状部の側方から見て左下がりに傾斜した稜線である。筒状部の外周壁に複数の第1の稜線が形成されている場合、筒状部の軸線方向に対する第1の稜線の傾斜角は、すべて同じであってもよく、一部又は全部で異なっていてもよい。
「第2の稜線」とは、天蓋部側から見て反時計回りの方向に下るように傾斜した、すなわち筒状部の側方から見て右下がりに傾斜した稜線である。筒状部の外周壁に複数の第2の稜線が形成されている場合、筒状部の軸線方向に対する第2の稜線の傾斜角は、すべて同じであってもよく、一部又は全部で異なっていてもよい。
「第3の稜線又は谷線」とは、外周壁の把持部に周方向に延びる稜線又は谷線である。第3の稜線又は谷線は、筒状部の軸線方向を鉛直方向と一致させたときの水平方向に対して、傾斜していてもよい。筒状部の外周壁の把持部に複数の第3の稜線又は谷線が形成されている場合、水平方向に対する第3の稜線又は谷線の傾斜角は、すべて同じであってもよく、一部又は全部で異なっていてもよい。
「把持部」とは、筒状部の外周壁における手指で把持される部分であって、筒状部の軸線方向における、外周壁の下端から、筒状部の高さに対して95%までの領域を意味する。上筒部、下筒部、及び上筒部の下端から外方に張り出すフランジ部を有する計量キャップの場合の「把持部」は、上筒部の軸線方向における、上筒部の外周壁の下端から、筒状部の高さに対して95%までの領域とする。
「縮径部」とは、筒状部において天蓋部に接続する部分であって、天蓋部に向かうにしたがって外径が小さくされることによって、縮径部以外の筒状部本体に比べ、外周壁が筒状部の軸線方向に対して傾斜している部分を意味する。縮径部以外の筒状部本体は、縮径部に比べて小さい傾斜角で、外周壁が筒状部の軸線方向に対して傾斜していてもよい。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、本発明のキャップの第1の実施形態を示す斜視図である。図2は、第1の実施形態のキャップの平面図である。図3は、第1の実施形態のキャップの正面図である。
なお、以下の説明において例示される図の寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0012】
キャップ1は、容器(図示略)の計量キャップとして用いられるものである。
キャップ1は、キャップ本体10と、キャップ本体10の外壁面から外方に延設された螺合部40とが一体成形されたものである。
キャップ本体10の外径は、特に限定されず、例えば、2~5cmとされる。
螺合部40の外径は、特に限定されず、例えば、3~7cmとされる。
【0013】
キャップ本体10は、円筒状の上筒部12(筒状部)と、上筒部12の一方の開口端を塞ぐ、上面側から見て多角面の天蓋部14と、上筒部12の他方の開口端から上筒部12の軸線方向に延設された円筒状の下筒部16とを有する有蓋筒状のものである。
【0014】
上筒部12は、上筒部本体12aと、天蓋部14に接続する縮径部12bとから構成される。縮径部12bは、天蓋部14に向かうにしたがって外径が小さくされることによって、上筒部本体12aに比べ、外周壁20が上筒部12の軸線方向に対して傾斜している。上筒部本体12aは、天蓋部14に向かうにしたがって外径が小さくなるように、縮径部12bに比べて小さい傾斜角で、外周壁20が上筒部12の軸線方向に対してわずかに傾斜している。
【0015】
上筒部12の外周壁20の把持部20aには、複数の第1の稜線22と、複数の第2の稜線24と、複数の第3の稜線26が形成されている。把持部20aは、上筒部12の軸線方向における、外周壁20の下端から、上筒部12の高さHに対して95%までの領域である。
【0016】
第1の稜線22は、天蓋部14側から見て時計回りの方向に下るように上筒部12の軸線方向に対して傾斜している。第2の稜線24は、天蓋部14側から見て反時計回り方向に下るように上筒部12の軸線方向に対して傾斜している。第1の稜線22及び第2の稜線24は、上筒部12の外周壁20の上端から下端まで形成されている。
第3の稜線26は、外周壁20の把持部20aに周方向に延びるように閉じて形成されている。
上筒部12の外周壁20には、上筒部本体12aと縮径部12bとの境界線に沿って周方向に延びる第4の稜線28も形成されている。
【0017】
第1の稜線22と第2の稜線24とは、上筒部12の上端及び下端のそれぞれにおいて周方向に交互に位置するように形成されている。各々の第1の稜線22は、複数の第2の稜線24と交差している。各々の第2の稜線24は、複数の第1の稜線22と交差している。また、第1の稜線22と第2の稜線24は、それぞれ第3の稜線26及び第4の稜線28と交差している。
【0018】
この例の第1の稜線22と第2の稜線24とは、外周壁20の第3の稜線26及び第4の稜線28以外の部分で交差している。すなわち、第1の稜線22及び第2の稜線24と第3の稜線26とは、第1の稜線22と第2の稜線24との交点以外の部分で交差している。また、第1の稜線22及び第2の稜線24と第4の稜線28とは、第1の稜線22と第2の稜線24との交点以外の部分で交差している。
【0019】
第1の稜線22は、第3の稜線26及び第4の稜線28と交差しているため、第3の稜線26及び第4の稜線28との交点で屈折しながら下るように傾斜している。同様に、第2の稜線24は、第3の稜線26及び第4の稜線28と交差しているため、第3の稜線26及び第4の稜線28との交点で屈折しながら下るように傾斜している。
第3の稜線26及び第4の稜線28は、天蓋部14側から見て第1の稜線22及び第2の稜線24との交点で屈折しながら周方向に延びている。
【0020】
キャップ1では、上筒部12の外周壁20の把持部20aに、天蓋部14側から見て時計回り又は反時計回りの方向に下るように傾斜した第1の稜線22及び第2の稜線24が形成されているため、キャップ1の着脱時にキャップ1の回旋方向における手指の滑りが抑制される。また、外周壁20の把持部20aに、第1の稜線22及び第2の稜線24に加えて、周方向に延びる第3の稜線26が形成されているため、キャップ1の着脱時にキャップ1の高さ方向(筒状部の軸線方向)における手指の滑りが抑制される。
【0021】
本発明において、外周壁の把持部に形成する第1の稜線の数は、6~36本が好ましく、8~18本がより好ましく、9~15本がさらに好ましい。第1の稜線の数が前記範囲の下限値以上であれば、キャップ1の回旋方向における滑り止め効果がより高くなる。第1の稜線の数が前記範囲の上限値以下であれば、キャップ1を把持した際に指に痛みを感じさせない効果がより高くなる。
【0022】
本発明において、外周壁の把持部に形成する第2の稜線の数は、6~36本が好ましく、8~18本がより好ましく、9~15本がさらに好ましい。第2の稜線の数が前記範囲の下限値以上であれば、キャップ1の回旋方向における滑り止め効果がより高くなる。第2の稜線の数が前記範囲の上限値以下であれば、キャップ1を把持した際に指に痛みを感じさせない効果がより高くなる。
第1の稜線22と第2の稜線24の数は、同じであっても、異なっていてもよいが、滑り止め効果及び美麗化効果がより高い点から、同じであることが好ましい。
【0023】
第1の稜線22の上筒部12の軸線方向に対する傾斜角θは、5~30°が好ましく、7~25°がより好ましく、10~20°がさらに好ましい。傾斜角θが前記範囲の下限値以上であれば、キャップ1の高さ方向における滑り止め効果がより高くなる。傾斜角θが前記範囲の上限値以下であれば、キャップ1の回旋方向における滑り止め効果がより高くなる。
【0024】
第2の稜線24の上筒部12の軸線方向に対する傾斜角θは、傾斜角θと同様の理由から、5~30°が好ましく、7~25°がより好ましく、10~20°がさらに好ましい。
傾斜角θと傾斜角θは、同じであってもよく、異なっていてもよいが、滑り止め効果及び美麗化効果がより高い点から、同じであることが好ましい。
【0025】
この例の複数の第1の稜線22は、外周壁20の周方向において等間隔に形成されている。同様に、複数の第2の稜線24も、外周壁20の周方向において等間隔に形成されている。
なお、本発明において、第1の稜線及び第2の稜線はそれぞれ、等間隔に形成されていなくてもよい。本発明では、滑り止め効果及び美麗化効果がより高い点から、複数の第1の稜線及び第2の稜線は、それぞれ等間隔に形成されていることが好ましい。
【0026】
本発明のキャップにおける第1の稜線及び第2の稜線は、キャップを把持した瞬間に必ず手指が第1の稜線や第2の稜線に引っ掛かるように形成しなくてもよい。キャップを把持した瞬間には手指が第1の稜線や第2の稜線に引っ掛かっていない場合も、キャップを回旋する際に僅かに滑った手指が第1の稜線や第2の稜線に引っ掛かることで、手指がそれ以上回旋方向に滑ることが抑制される。キャップの回旋方向の手指の滑りを最小限に抑えられる点、及び美麗化効果がより高い点では、第1の稜線及び第2の稜線は、前記した範囲の本数で、かつ等間隔に形成されていることがより好ましい。
【0027】
第3の稜線26は、外周壁20の周方向において全周にわたって形成され、閉じた環状になっている。本発明では、高さ方向の滑り止め効果及び美麗化効果がより高い点から、筒状部の外周壁の周方向に全周にわたって、第3の稜線が環状に閉じて形成されていることが好ましい。
【0028】
第3の稜線26は、この例では2本であるが、2本には限定されず、1本であってもよく、3本以上であってもよい。
本発明において、外周壁の把持部に形成する第3の稜線の数は、1~6本が好ましく、2~5本がより好ましく、3~4本がさらに好ましい。第3の稜線の数が前記範囲の下限値以上であれば、キャップ1の高さ方向における滑り止め効果がより高くなる。第3の稜線の数が前記範囲の上限値以下であれば、キャップ1を把持した際に指に痛みを感じさせない効果がより高くなる。
【0029】
第3の稜線の水平方向に対する傾斜角θは、30°以下が好ましく、20°以下がより好ましく、10°以下がさらに好ましく、0°が特に好ましい。傾斜角θが上限値以下であれば、キャップ1の高さ方向における滑り止め効果及び美麗化効果がより高くなる。
【0030】
本実施形態のように、キャップ1が後述するフランジ部42を有する場合、最もフランジ部42に近い第3の稜線26とフランジ部42との距離Dは、5mm以上が好ましく、7mm以上がより好ましく、10mm以上がさらに好ましい。距離Dが下限値以上であれば、外周壁の把持部を手指で把持した際に手指が第3の稜線に引っ掛かりやすく、高さ方向における滑り止め効果が得られやすい。
距離Dの上限値は、筒状部の高さH(把持部の高さ)に応じて適宜設定すればよい。
【0031】
この例の複数の第3の稜線26は、高さ方向において等間隔に形成されている。
なお、本発明において、第3の稜線は、等間隔に形成されていなくてもよい。本発明では、滑り止め効果及び美麗化効果がより高い点から、複数の第3の稜線が等間隔に形成されていることが好ましい。
【0032】
本発明のキャップにおける第3の稜線は、キャップを把持した瞬間に必ず手指が第3の稜線に引っ掛かるように形成しなくてもよい。キャップを把持した瞬間には手指が第3の稜線に引っ掛かっていない場合も、キャップの着脱時において高さ方向に僅かに滑った手指が第3の稜線に引っ掛かることで、手指がそれ以上高さ方向に滑ることが抑制される。キャップの高さ方向の手指の滑りを最小限に抑えられる点、及び美麗化効果がより高い点では、第3の稜線は、前記した範囲の本数で、かつ等間隔に形成されていることがより好ましい。
【0033】
本発明のキャップでは、第3の稜線の水平方向に対する傾斜角θを0°とし、さらに筒上部の高さ方向における第3の稜線の位置を、内容物を計量する位置に合わせることにより、第3の稜線を計量目盛として機能させることもできる。第3の稜線を計量目盛としても機能させる態様は、計量時に内容物の液面を視認しやすくなる点で有利である。
【0034】
上筒部12の外周壁20には、第1の稜線22、第2の稜線24、第3の稜線26及び第4の稜線28によって囲まれた第1の三角面32、第2の三角面34、及び六角面36がそれぞれ複数形成されている。外周壁20にこのような複数の多角面が形成されていることで、外周壁20の表面で光が複雑に屈折や乱反射を起こすため、高い美麗化効果が得られる。
【0035】
第1の三角面32は、天蓋部14から離れるにしたがって上筒部12の周方向の幅が広くなる三角形である。第2の三角面34は、天蓋部14から離れるにしたがって上筒部12の周方向の幅が狭くなる三角形である。
六角面36は、内方に向かって凹んだ凹面になっている。凹面は、内方に向かって凹んだ面であればよく、その凹形状は特に限定されない。
【0036】
複数の第1の三角面32及び第2の三角面34の形状及びサイズは、同じであってもよく、異なっていてもよいが、美麗化効果がより高い点から、同じであることが好ましい。
複数の六角面36の形状及びサイズは、同じであってもよく、異なっていてもよいが、美麗化効果がより高い点から、同じであることが好ましい。
【0037】
本発明において、筒状部の外周壁に形成される多角面の数は、72~432が好ましく、96~216がより好ましく、108~180がさらに好ましい。多角面の数が前記範囲の下限値以上であれば、キャップ1の回旋方向及び高さ方向における滑り止め効果がより高くなる。また、光の屈折や乱反射による美麗化効果がより高くなる。多角面の数が前記範囲の上限値以下であれば、キャップ1を把持した際に指に痛みを感じさせない効果がより高くなる。また、多角面一つ一つの大きさが形状を視認可能な適度な大きさとなり、より高い意匠性が得られる。
【0038】
上筒部12には、キャップ本体10に収納した内容物の量を示す複数の目盛(図示略)が形成されている。各目盛は、天蓋部14から下筒部16に向かう距離を示す計量線と数字と容量を示す単位とからなる。目盛としては、例えば、レーザー印字、印刷(シルクスクリーン印刷、タンポ印刷等)によって形成された印字、又は凸条もしくは凹条等が挙げられる。
【0039】
螺合部40は、上筒部12の下端から外方に張り出すフランジ部42と、フランジ部42の周縁から上筒部12と反対側に上筒部12の軸線方向に延設された、キャップ本体10と同軸の外筒部44とを有する。
【0040】
外筒部44の内周壁には、容器本体のネジ部と螺合するネジ部(図示略)が形成されている。
外筒部44の外周壁には、上筒部12の軸線方向に延びる複数の凸条が周方向に複数並んで形成されたローレット部46、及び、ローレット部46に隣接する、凸条が形成されていない平滑部48が形成されている。
【0041】
上筒部12の外周壁20における把持部20aを手指で把持し、軸線を中心にしてキャップ1を回旋させることで、螺合部40の部分で容器本体(図示略)の口部に対してキャップ1を螺着又は螺脱できる。
内容物を計量する際は、キャップ1を容器本体から螺脱し、容器本体から内容物を注ぎ出し、注ぎ出した内容物を下筒部16の開口端からキャップ本体10内に注ぎ入れる。この際、目盛が形成された上筒部12を手で塞がないように螺合部40を把持することで、目盛と内容物とを照合できる。このとき、ローレット部46に手指を当接させることで手指の滑りが抑制され、キャップ1を落下させることなく、内容物を計量できる。
【0042】
キャップ1は、キャップ1内に注ぎ入れた内容物を視認しやすい点、及び光の屈折及び乱反射による美麗化効果が高い点から、少なくとも上筒部12が透明であることが好ましく、全体が透明であることがより好ましい。なお、透明でなくても乱反射による美麗化効果は得られるため、キャップ1は、透明でなくてもよい。
【0043】
キャップ1の材料としては、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)、ポリスチレン等が挙げられる。キャップ1の材料は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
キャップ1の製造方法は、特に限定されず、例えば、射出成形が挙げられる。
【0044】
以上説明したように、キャップ1にあっては、上筒部12の外周壁20の把持部20aに第1の稜線22、第2の稜線24及び第3の稜線26が形成され、それらによって複数の第1の三角面32、第2の三角面34、及び六角面36が形成されている。そのため、キャップ1の着脱時における回旋方向及び高さ方向の滑り止め効果が得られるうえ、美麗化効果が高く意匠性に優れる。
【0045】
(第2の実施形態)
本発明のキャップは、筒状部の外周壁の把持部において、第1の稜線と第2の稜線が交差し、かつ第1の稜線と第2の稜線の交点で第3の稜線又は谷線が第1の稜線及び第2の稜線に交差していてもよい。例えば、本発明のキャップは、図4~6に例示したキャップ2であってもよい。
図4は、本発明のキャップの第2の実施形態を示す斜視図である。図5は、第2の実施形態のキャップの平面図である。図6は、第2の実施形態のキャップの正面図である。図4~6における図1~3と同じ部分には同符号を付して説明を省略する。
【0046】
キャップ2は、キャップ本体10Aと、キャップ本体10Aの外壁面から外方に延設された螺合部40とが一体成形されたものである。
【0047】
キャップ本体10Aは、以下に示す点以外は、キャップ1におけるキャップ本体10と同じ態様である。
キャップ本体10Aでは、第3の稜線26の代わりに第3の谷線26Aが形成され、第3の谷線26A及び第4の稜線28が、それぞれ第1の稜線22及び第2の稜線24の交点を通過するように第1の稜線22及び第2の稜線24に交差している。
第1の稜線22と第2の稜線24とは、上筒部12の上端において周方向の位置が一致している。
【0048】
第3の谷線26Aは、天蓋部14側から見て第1の稜線22及び第2の稜線24との交点で屈折しながら周方向に延びている。
第3の谷線26Aの数、水平方向に対する傾斜角、フランジ部との距離等の好ましい態様は、キャップ1における第3の稜線26の好ましい態様と同じである。
【0049】
上筒部12の外周壁20には、第1の稜線22、第2の稜線24、第3の谷線26A及び第4の稜線28によって囲まれた第1の三角面32A及び第2の三角面34Aがそれぞれ複数形成されている。
【0050】
第1の三角面32Aは、天蓋部14から離れるにしたがって上筒部12の周方向の幅が広くなる三角形である。第2の三角面34Aは、天蓋部14から離れるにしたがって上筒部12の周方向の幅が狭くなる三角形である。
複数の第1の三角面32A及び第2の三角面34Aの形状及びサイズは、同じであってもよく、異なっていてもよいが、美麗化効果がより高い点から、同じであることが好ましい。
【0051】
第3の谷線26Aの上下の第1の三角面32A及び第2の三角面34Aは、第3の谷線26Aに向かうにしたがって沈むような形状になっている。
この例では、第1の三角面32Aはほぼ上筒部12の軸線方向に沿っており、第2の三角面34Aが上筒部12の軸線方向に対して傾斜した状態になっている。これにより、キャップ2は、成形時の金型からの抜きが容易になっている。
【0052】
キャップ2においても、キャップ1と同様に、上筒部12の外周壁20の把持部20aに、第1の稜線22及び第2の稜線24に加えて、周方向に延びる第3の谷線26Aが形成されているため、キャップ2の着脱時にキャップ2の回旋方向及び高さ方向における手指の滑りが抑制される。また、外周壁20に複数の第1の三角面32A及び第2の三角面34Aが形成されているため、美麗化効果が高く、意匠性に優れる。
【0053】
(第3の実施形態)
本発明のキャップは、筒状部の外周壁の把持部において、第1の稜線と第2の稜線が交差していなくてもよい。例えば、本発明のキャップは、図7~9に例示したキャップ3であってもよい。
図7は、本発明のキャップの第3の実施形態を示す斜視図である。図8は、第3の実施形態のキャップの平面図である。図9は、第3の実施形態のキャップの正面図である。図7~9における図1~3と同じ部分には同符号を付して説明を省略する。
【0054】
キャップ3は、キャップ本体10Bと、キャップ本体10Bの外壁面から外方に延設された螺合部40とが一体成形されたものである。
【0055】
キャップ本体10Bは、以下に示す点以外は、キャップ1におけるキャップ本体10と同じ態様である。
キャップ本体10Bでは、第1の稜線22と第2の稜線24が互いに交差していない。第1の稜線22及び第2の稜線24は、上筒部12の外周壁20の周方向において、交互に形成されている。
【0056】
上筒部12の外周壁20には、第1の稜線22、第2の稜線24、第3の稜線26及び第4の稜線28によって囲まれた、第1の台形面38Aと第2の台形面38Bが形成されている。
第1の台形面38Aは、天蓋部14から離れるにしたがって上筒部12の周方向の幅が広くなっている。第2の台形面38Bは、天蓋部14から離れるにしたがって上筒部12の周方向の幅が狭くなっている。
【0057】
キャップ3においても、キャップ1と同様に、上筒部12の外周壁20の把持部20aに、第1の稜線22及び第2の稜線24に加えて、周方向に延びる第3の稜線26が形成されているため、キャップ3の着脱時にキャップ3の回旋方向及び高さ方向における手指の滑りが抑制される。また、外周壁20に複数の第1の台形面38A及び第2の台形面38Bが形成されているため、美麗化効果が高く、意匠性に優れる。
【0058】
本発明では、キャップ1、2のように、筒状部の外周壁の把持部において、第1の稜線と第2の稜線が交差していることが好ましい。これにより、より多くの稜線及び谷線を付与でき、筒状部の外周壁に形成できる多角面の数がより多くなることで、滑り止め効果及び美麗化効果がより高くなる。
また、本発明では、稜線及び谷線の合計数が同じ場合でも外周壁に形成できる多角面の数が多く、複雑な模様を形成でき、美麗化効果がより高くなる点で、第1の稜線と第2の稜線とが、外周壁の第3の稜線又は谷線以外の部分で交差している態様が好ましい。すなわち、美麗化効果がより高い点では、第2の実施形態のキャップ2に比べて第1の実施形態のキャップ1の方が好ましい。
【0059】
成形時の金型からの抜きが容易な点では、第1の実施形態のキャップ1に比べて第2の実施形態のキャップ2の方が好ましい。
本発明では、筒状部の外周壁に形成される多角面の軸線方向の上端と筒状部の軸線との距離が、多角面の軸線方向の下端と筒状部の軸線との距離と同等か、それよりも小さいことが好ましい。これにより、成形時の金型からの抜きが容易になる。
【0060】
(他の実施形態)
なお、本発明のキャップは、筒状部の外周壁の把持部に第1の稜線、第2の稜線及び第3の稜線又は谷線が形成され、それらによって外周壁に複数の多角面が形成されたものであればよく、図示例のキャップ1~3には限定されない。
【0061】
本発明のキャップは、図示例のようなキャップ本体と螺合部とからなる二重筒構造のものに限定されず、筒状部の開口端近傍の内周壁にネジ部を設けた単筒構造のものであってもよい。二重筒構造の場合、外筒部の外周壁にローレット部が形成されていなくてもよい。
本発明のキャップは、容器本体の口部に着脱可能に取り付けられキャップであればよく、計量キャップに限定されない。
本発明のキャップは、縮径部を有するものに限定はされず、縮径部を有しなくてもよい。
【0062】
天蓋部は、図示例のような平面形状に限定はされず、軸線方向に漸次縮径する半球形状であってもよい。
筒状部の外周壁に形成される多角面は、三角面、台形面及び六角面には限定されず、ひし形面、平行四辺形面、五角面等であってもよい。
複数の多角面の形状、サイズ等は、すべて同じであってもよく、一部又は全部で異なっていてもよい。
第1の稜線と第2の稜線は、筒状部の周方向に交互に形成されているものに限定はされず、第1の稜線又は第2の稜線の一部が並んで形成されたものであってもよく、筒状部の周方向に直交する方向に延びる稜線が途中に形成されたものであってもよい。
第3の稜線又は谷線は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、外周壁の周方向において、一部が途切れた開いた形状になっていてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1~3…キャップ、10,10A,10B…キャップ本体、12…上筒部(筒状部)、14…天蓋部、16…下筒部、20…外周壁、20a…把持部、22…第1の稜線、24…第2の稜線、26…第3の稜線、26A…第3の谷線、28…第4の稜線、32,32A…第1の三角面、34,34A…第2の三角面、36…六角面、38A…第1の台形面、38B…第2の台形面、40…螺合部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9