(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】軌道識別装置
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20221107BHJP
B61L 23/00 20060101ALI20221107BHJP
G06T 7/60 20170101ALI20221107BHJP
G06V 20/56 20220101ALI20221107BHJP
【FI】
G06T7/00 650Z
B61L23/00 Z
G06T7/60 200J
G06V20/56
(21)【出願番号】P 2018088340
(22)【出願日】2018-05-01
【審査請求日】2021-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】二神 拓也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 雄介
(72)【発明者】
【氏名】堀江 勝大
(72)【発明者】
【氏名】小林 広幸
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 直人
(72)【発明者】
【氏名】服部 陽平
【審査官】岡本 俊威
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-076147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00- 7/90
B61L 23/00
G06V 20/56-20/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の進行方向の領域を撮像することで得られる撮像画像を取得する画像取得部と、
前記撮像画像から、線路らしさを表す特徴量を抽出する特徴量抽出部と、
前記特徴量に基づいて前記撮像画像から前記線路を検出する線路検出部と、
を備え、
前記線路検出部は、
前記撮像画像の下端側に予め設定された初期エリアの下端と上端との間で延びる前記線路らしさが最も高い線分を前記特徴量に基づいて特定し、特定した前記線分を前記線路の一部の初期部分として検出する初期検出部と、
前記初期部分の上端を起点とし、当該起点よりも上側に設定された探索エリア内から選択される複数の候補点と、検出済みの前記線路の上端と、を結ぶ複数の線分候補のうち、前記線路らしさが最も高い1つの線分候補を前記特徴量に基づいて決定し、決定した前記1つの線分候補を前記線路の一部の途中部分として検出し、当該途中部分の上端を次の起点とする、という処理を繰り返し実行することで、検出済みの前記線路の上端が所定の位置に達するまで前記途中部分を繰り返し検出する二次検出部と、
を備える、軌道識別装置。
【請求項2】
前記二次検出部は、直近に検出された前記線路の一部の前記撮像画像上での位置および角度のうち少なくとも一方に基づいて、次の前記探索エリアを設定する、
請求項1に記載の軌道識別装置。
【請求項3】
前記二次検出部は、前記複数の線分候補上における前記特徴量の平均値に基づいて、前記探索エリア内で前記線路らしさが最も高い点を決定する、
請求項1または2に記載の軌道識別装置。
【請求項4】
前記探索エリアは、前記撮像画像の左右方向を長手方向とし、前記撮像画像の上下方向を短手方向とする長方形形状に設定される、
請求項1~3のいずれか1項に記載の軌道識別装置。
【請求項5】
前記線路検出部は、
前記撮像画像の上端側に設定される消失点エリアから、前記撮像画像上における前記線路の消失点の候補としての複数の消失点候補を前記特徴量に基づいて特定し、特定した前記複数の消失点候補と、検出済みの前記線路の上端と、の間の領域を補完する複数の補間曲線を取得し、取得した前記複数の補間曲線のうち、前記線路らしさが最も高い補間曲線に基づいて、前記線路のうち未検出の部分を検出する補間検出部
をさらに備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の軌道識別装置。
【請求項6】
前記補間検出部は、前記線路らしさが最も高い補間曲線を近似する複数の線分を、前記未検出の部分として検出する、
請求項5に記載の軌道識別装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、軌道識別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラによって得られた撮像画像に、所定のアルゴリズムの画像処理を施すことで、鉄道車両が走行する線路を撮像画像から検出する技術が知られている。このような従来のアルゴリズムとして、たとえば、予め設定された放物線状の複数の線路の候補から、線路らしさを表す尺度として設定された特徴量が最も大きい候補を、所定のエリアごとに順次探索することで、単一の経路を構成する線路を検出する、というアルゴリズムが知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】“Rail Extraction for Driver Support in Railways”,Conference:Intelligent Vehicles Symposium(IV),2011 IEEE
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来のアルゴリズムは、放物線状の複数の候補の全ての特徴量を計算し、比較を行うため、計算量が増大しやすく、処理に時間がかかりやすい。また、撮像画像の上側(奥側)の領域では、線路の幅が小さくなり、線路の候補の探索の対象となるエリアも小さくなるので、局所的なノイズなどの影響により、精度が低下しやすい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態にかかる軌道識別装置は、画像取得部と、特徴量抽出部と、線路検出部と、を備える。画像取得部は、鉄道車両の進行方向の領域を撮像することで得られる撮像画像を取得する。特徴量抽出部は、撮像画像から、線路らしさを表す特徴量を抽出する。線路検出部は、特徴量に基づいて撮像画像から線路を検出する。線路検出部は、初期検出部と、二次検出部と、を備える。初期検出部は、撮像画像の下端側に予め設定された初期エリアの下端と上端との間で延びる線路らしさが最も高い線分を特徴量に基づいて特定し、特定した線分を線路の一部の初期部分として検出する。二次検出部は、初期部分の上端を起点とし、当該起点よりも上側に設定された探索エリア内から選択される複数の候補点と、検出済みの線路の上端と、を結ぶ複数の線分候補のうち、線路らしさが最も高い1つの線分候補を特徴量に基づいて決定し、決定した1つの線分候補を線路の一部の途中部分として検出し、当該途中部分の上端を次の起点とする、という処理を繰り返し実行することで、検出済みの線路の上端が所定の位置に達するまで途中部分を繰り返し検出する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、実施形態にかかる軌道識別装置を含む車両システムの概略構成を示した例示的かつ模式的なブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態にかかる軌道識別装置を含む車両システムが有する機能を示した例示的かつ模式的なブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態にかかる撮像画像の例を示した例示的かつ模式的な図である。
【
図4】
図4は、実施形態にかかる初期検出部を説明するための例示的かつ模式的な図である。
【
図5】
図5は、実施形態にかかる二次検出部を説明するための例示的かつ模式的な図である。
【
図6】
図6は、実施形態にかかる補間検出部を説明するための例示的かつ模式的な図である。
【
図7】
図7は、実施形態にかかる補間検出部が実施しうる補間曲線の近似の例を説明するための例示的かつ模式的な図である。
【
図8】
図8は、実施形態にかかる近似された補間曲線の例を示した例示的かつ模式的な図である。
【
図9】
図9は、実施形態にかかる軌道識別装置を含む車両システムが実行する一連の処理を示した例示的かつ模式的なフローチャートである。
【
図10】
図10は、実施形態にかかる線路の検出処理の詳細を示した例示的かつ模式的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。以下に記載する実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、あくまで一例であって、以下の記載内容に制限されるものではない。
【0008】
<実施形態>
まず、実施形態の構成について説明する。
【0009】
図1は、実施形態にかかる軌道識別装置120を含む車両システム100の概略構成を示した例示的かつ模式的なブロック図である。車両システム100は、線路RLに沿って運行する鉄道車両RVの安全運転を実現するために鉄道車両RVに搭載されたシステムである。なお、
図1では、鉄道車両RVの進行方向がDとして例示されている。
【0010】
図1に示されるように、車両システム100は、撮像装置110と、軌道識別装置120と、障害物検知装置130と、通知装置140と、を有している。撮像装置110は、軌道識別装置120と障害物検知装置130とに接続されている。また、障害物検知装置130は、軌道識別装置120と通知装置140とに接続されている。
【0011】
撮像装置110は、鉄道車両RVの進行方向Dの領域(R0で示される範囲)を撮像するカメラである。実施形態では、撮像装置110によって得られる撮像画像に線路RLが写り込むように、撮像装置110の設置位置および設置角度が設定されている。
【0012】
軌道識別装置120は、撮像装置110によって得られた撮像画像から線路RLを検出する(詳細は後述する)。
【0013】
障害物検知装置130は、撮像装置110によって得られた撮像画像と、軌道識別装置120の検出結果と、に基づいて、線路RLの周辺に存在する障害物(注視が必要な注視物)に関する情報(たとえば障害物の有無や当該障害物までの距離など)を検出する。
【0014】
通知装置140は、障害物検知装置130の検知結果を、鉄道車両RVの乗員(運転士など)に通知する。なお、通知の方法は、画像を用いた視覚に訴える方法であってもよいし、音声を用いた聴覚に訴える方法であってもよいし、振動などを用いた触覚に訴える方法であってもよいし、これらを併用した方法であってもよい。
【0015】
ここで、実施形態において、軌道識別装置120および障害物検知装置130は、いずれも、プロセッサやメモリなどといったハードウェアを有したコンピュータとして構成される。したがって、軌道識別装置120および障害物検知装置130は、それぞれのプロセッサによってメモリなどに記憶された所定のコンピュータプログラムを実行することで、以下に説明するような機能を実現することが可能である。
【0016】
図2は、実施形態にかかる軌道識別装置120を含む車両システム100が有する機能を示した例示的かつ模式的なブロック図である。なお、実施形態では、
図2に示される各機能が、専用のハードウェア(回路)のみによって実現されていてもよい。
【0017】
図2に示されるように、軌道識別装置120は、画像取得部121と、特徴量抽出部122と、線路検出部123と、記憶部124と、を有している。また、障害物検知装置130は、機能的構成として、検知領域取得部131と、障害物検知部132と、を有している。
【0018】
画像取得部121は、撮像装置110によって得られた撮像画像を取得する。たとえば、画像取得部121は、次の
図3に示されるような画像300を撮像画像として取得する。
【0019】
図3は、実施形態にかかる撮像画像の例を示した例示的かつ模式的な図である。
図3に示される画像300には、一例として、一対のレール301aおよび301bによって構成された線路301が写り込んでいる。
図3に示されるように、画像300上においては、遠近法により、線路301の幅(一対のレール301aおよび301bの間の間隔)が、下側(手前側)から上側(奥側)に向かうにしたがって徐々に小さくなっていく。
【0020】
図2に戻り、特徴量抽出部122は、画像取得部121により取得された撮像画像から、線路RLらしさを表す尺度として設定された特徴量を抽出する。特徴量としては、たとえば輝度に基づく所定方向における輝度の勾配を用いてもよい。所定方向とは、たとえば、撮像画像に写った線路RLの延びる方向と交差する方向(
図3に示される例においてたとえば左右方向)である。
【0021】
線路検出部123は、特徴量抽出部122により抽出された特徴量に基づいて、画像取得部121により取得された撮像画像から線路RLを検出する。
【0022】
ところで、従来、撮像画像から線路RLを検出するためのアルゴリズムとして、たとえば、予め設定された放物線状の複数の線路RLの候補から、線路RLらしさを表す尺度として設定された特徴量が最も大きい候補を、所定のエリアごとに順次探索することで、単一の経路を構成する線路RLを検出する、というアルゴリズムが知られている。
【0023】
このような従来のアルゴリズムは、放物線状の複数の候補の全ての特徴量を計算し、比較を行うため、計算量が増大しやすく、処理に時間がかかりやすい。また、撮像画像の上側(奥側)の領域では、線路RLの幅が小さくなり、線路RLの候補の探索の対象となるエリアも小さくなるので、局所的なノイズなどの影響により、精度が低下しやすい。
【0024】
そこで、実施形態にかかる線路検出部123は、以下に説明するような構成により、撮像画像から線路RLをより高速に、かつより精度よく検出する。
【0025】
すなわち、実施形態にかかる線路検出部123は、撮像画像から線路RLをより高速に、かつより精度よく検出するための構成として、線路RLのうち撮像画像の下端から当該下端よりも上方の所定位置までの部分を線分の集合として検出する初期検出部123aおよび二次検出部123bと、線路RLの残りの部分を後述する補間曲線に基づいて検出する補間検出部123cと、を有している。
【0026】
図4は、実施形態にかかる初期検出部123aを説明するための例示的かつ模式的な図である。
図4に示されるように、実施形態にかかる初期検出部123aは、撮像画像としての画像300の下端側に予め設定された初期エリアとしての領域401aおよび401bの下端と上端との間で延びる線路らしさが最も高い線分を特徴量に基づいて特定し、特定した線分(太線参照)を、線路301の一部の初期部分として検出する。なお、初期エリアに関する情報や、検出済みの線路RLに関する情報は、軌道識別装置120の記憶部124(
図2参照)に記憶される。そして、実施形態では、初期部分として特定された線分の上端P1aおよびP1bを起点として、次に説明するような処理が二次検出部123bにより実行される。
【0027】
図5は、実施形態にかかる二次検出部123bを説明するための例示的かつ模式的な図である。
図5に示されるように、実施形態にかかる二次検出部123bは、まず、上記の初期部分の上端P1aおよびP1bを起点とし、当該起点としての上端P1aよりも上側に設定された探索エリア501a内から、起点としての上端P1aに対する終点の候補としての複数の候補点P2a、P2a´、およびP2a´´を選択するとともに、起点としての上端P1bよりも上側に設定された探索エリア501b内から、起点としての上端P1bに対する終点の候補としての複数の候補点P2b、P2b´、およびP2b´´を選択する。
【0028】
そして、二次検出部123bは、上記のように選択した複数の候補点と、検出済みの線路RLの上端と、を結ぶ複数の線分候補のうち、線路RLらしさが最も高い1つの線分候補を特徴量に基づいて決定し、決定した1つの線分候補を、線路RLの一部の途中部分として検出する。たとえば、
図5に示される例では、初期部分の上端P1aと探索エリア501aの上端の候補点P2aとの間で延びる太線と、初期部分の上端P1bと探索エリア501bの上端の候補点P2bとの間で延びる太線とが、線路RLらしさが最も高い線分候補として決定され、途中部分として検出される。
【0029】
そして、二次検出部123bは、上記で検出した途中部分の上端を次の起点として同様の処理を繰り返し実行する、つまり途中部分の上端を次の起点とした次の探索エリアの決定および当該次の探索エリアから選択される複数の候補点に基づく線路RLの一部(次の途中部分)の検出を繰り返し実行することで、検出済みの線路RLの上端が所定の位置に達するまで、途中部分を繰り返し検出する。なお、
図5においては、簡単化のため、探索エリア501aおよび501b以降の探索エリアなどの図示が省略されている。
【0030】
ここで、実施形態において、線路RLらしさが最も高い点は、たとえば、検出済みの線路RLの一部(
図5に示される例では初期部分)の特徴量と、探索エリア(
図5に示される例では501aおよび501b)の特徴量(の平均値など)と、のうち少なくとも一方に基づいて特定される。このような構成によれば、検出済みの線路RLとの類似度と、探索エリア内における線路RLらしさと、のうち少なくとも一方を考慮して、線路RLらしさが最も高い点を適切に決定することができる。
【0031】
また、実施形態において、探索エリア(
図5に示される例では501aおよび501b)は、直近に検出された線路RLの一部(
図5に示される例では初期部分)の撮像画像(
図5に示される例では300)上での位置および角度のうち少なくとも一方に基づいて決定される。このような構成によれば、直近に検出された線路RLとの連続性を考慮して、次の線路RLの候補点を含んでいる可能性が高いエリアを、次の探索エリアとして精度良く決定することができる。
【0032】
また、実施形態において、探索エリア(
図5に示される例では501aおよび501b)は、撮像画像(
図5に示される例では300)の左右方向を長手方向とし、撮像画像(
図5に示される例では300)の上下方向を短手方向とする長方形形状に設定される。このような構成によれば、線路RLがカーブしている場合でも線路RLの全体を含みやすく、かつ計算で扱いやすい形状の探索エリアを設定することができる。
【0033】
なお、二次検出部123bによる検出は、検出済みの線路RLの上端が撮像画像(
図5に示される例では300)における線路RLの消失点の高さに到達するまで、すなわち線路RLの全体の検出が完了するまで繰り返されてもよいが、実施形態では、一例として、検出済みの線路RLの上端が所定の位置に達したタイミングで、二次検出部123bによる検出から、次に説明するような補間検出部123cによる検出に処理が切り替わるものとする。
【0034】
図6は、実施形態にかかる補間検出部123cを説明するための例示的かつ模式的な図である。
図6に示される例は、上端PNaおよびPNbの高さまでの線路RLが二次検出部124bにより検出済みになっており、当該上端PNaおよびPNbの高さ以降の線路RLが補間検出部123cにより検出されるという状況を表している。
【0035】
図6に示されるように、補間検出部123cは、まず、撮像画像としての画像300の上端側に設定される消失点エリア600から、線路RLの消失点の候補としての点(消失点候補)P600~P602を、画像300の(消失点エリア600の)特徴量に基づいて特定する。
【0036】
そして、補間検出部123cは、上記のように特定した複数の点P600~P602と、検出済みの線路RLの上端PNaおよびPNbと、の間の領域を補完する複数の補間曲線を取得する。
図6に示される例では、消失点候補としての点P601を基準とした補間曲線としての曲線La1およびLa2と、消失点候補としての点P602を基準とした補間曲線としての曲線La2およびLb2とが例示されている。なお、
図6に示される例において、点P601およびP602以外の消失点候補が存在しうるとともに、曲線La1、Lb1、La2、およびLb2以外の補間曲線が存在しうることは言うまでもない。
【0037】
そして、補間検出部123cは、上記のように取得した複数の補間曲線のうち、線路RLらしさが最も高い1つの補間曲線(
図6には不図示の点P600を基準とした補間曲線)に基づいて、線路RLのうち未検出の部分を検出する。このような構成によれば、線路RLのうち初期検出部123aおよび二次検出部123bにより未検出の部分を、補間曲線に基づいて、より高速に、かつより精度良く検出することができる。
【0038】
ここで、実施形態において、補間検出部123cは、計算をさらに高速化するため、上記の補間曲線をそのまま線路RL(の一部)として検出するのではなく、上記の補間曲線を計算で扱いやすい複数の線分で近似し、当該複数の線分を線路RL(の一部)として検出しうる。
【0039】
図7は、実施形態にかかる補間検出部123cが実施しうる補間曲線の近似の例を説明するための例示的かつ模式的な図であり、
図8は、実施形態にかかる近似された補間曲線の例を示した例示的かつ模式的な図である。
図7および
図8に示される例では、線路RLらしさが最も高い補間曲線を構成可能な消失点候補としての点P701(
図6に示される点P600に対応)を基準とした補間曲線としてのLaおよびLbが、所定の高さ(Lx参照)の点PxaおよびPxbで二分される。そして、
図7および
図8に示される例では、検出済みの線路RLの上端PNaおよびPNbよりも上側に位置する未検出の線路RLが、点PxaおよびPxbと上端PNaおよびPNbとを結ぶ線分と、点PxaおよびPxbと線路RLを構成するレール301aおよび301bの終端とをそれぞれ結ぶ線分と、の集合(折れ線)として検出される。
【0040】
なお、
図7および
図8には、補間曲線を二分して近似する折れ線が未検出の線路RLとして検出される例が示されているが、実施形態では、補間曲線を3つ以上の区間に分けて近似する折れ線が未検出の線路RLとして検出されてもよい。また、
図7および
図8には、補間曲線を近似する複数の線分により折れ線が構成される例が示されているが、実施形態では、補間曲線を近似する複数の線分が直線状に並ぶこともありうる。
【0041】
また、
図7および
図8には、線路RLの消失点に対応した点P701と、二次検出部123bにより検出した線路RLの途中部分の上端PNaおよびPNbと、の間が補間曲線で補間される例が示されている。しかしながら、実施形態は、二次検出部123bによる途中部分の検出を実施せず、点P701と、初期検出部123aにより検出された初期部分の上端P1aおよびP1b(
図5および
図6参照)と、の間を補間曲線で補間する構成であってもよい。
【0042】
このようにして、実施形態にかかる線路検出部123(初期検出部123a、二次検出部123b、および補間検出部123c)は、所定の画像処理により、撮像画像から線路RLを検出する。
【0043】
図2に戻り、検知領域取得部131は、撮像装置110によって得られた撮像画像と、軌道識別装置120の検出結果と、に基づいて、障害物を検知(監視)する対象となる検知領域を取得する。検知領域とは、たとえば、線路RLの周辺の予め設定された範囲の領域である。
【0044】
そして、障害物検知部132は、検知領域取得部131により取得された検知領域を監視することで、当該検知領域から、障害物に関する情報(たとえば障害物の有無や障害物までの距離など)を検知する。
【0045】
次に、第1実施形態の制御動作について説明する。
【0046】
図9は、実施形態にかかる軌道識別装置120を含む車両システム100が実行する一連の処理を示した例示的かつ模式的なフローチャートである。この
図9に示される処理フローは、たとえば鉄道車両RVの走行中に所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0047】
図9に示される処理フローでは、まず、S901において、軌道識別装置120の画像取得部121は、撮像装置110によって得られた撮像画像を取得する。前述したように、ここで取得される撮像画像には、線路RLが写り込んでいる。
【0048】
そして、S902において、軌道識別装置120の特徴量抽出部122および線路検出部123は、次の
図10に示されるような処理を実行することで、S901で取得された撮像画像から、線路RLを検出する。
【0049】
図10は、実施形態にかかる線路RLの検出処理の詳細を示した例示的かつ模式的なフローチャートである。
【0050】
図10に示される処理フローでは、まず、S1001において、特徴量抽出部122は、S901で取得された撮像画像から、線路RLらしさを表す尺度としての特徴量を抽出する。
【0051】
そして、S1002において、線路検出部123の初期検出部123aは、S1001で抽出された特徴量に基づき、前述したようなアルゴリズムで、S901で取得された撮像画像の初期エリア内の線分を、線路RLの一部(初期部分)として検出する(
図4参照)。
【0052】
そして、S1003において、線路検出部123の二次検出部123bは、検出済みの線路RLの上端を起点とし、当該起点よりも上側に設定された次の探索エリアから、起点に対する終点の候補となる複数の候補点を、S1001で抽出された特徴量に基づいて選択する。
【0053】
そして、S1004において、二次検出部123bは、検出済みの線路RLの上端と、S1003で選択された複数の候補点と、を結ぶ複数の線分候補を取得する。
【0054】
そして、S1005において、二次検出部123bは、S1004で特定された複数の線分候補から、最も線路RLらしい1つの線分候補を、S1001で抽出された特徴量に基づいて決定し、決定した1つの線分候補を、線路RLの一部(途中部分)として検出する(
図5参照)。
【0055】
そして、S1006において、二次検出部123bは、S1005の処理により所定の位置まで線路RLの検出が完了したか否か、より具体的にはS1005で検出した途中部分の上端が所定の位置(高さ)に達したか否かを判断する。
【0056】
S1006において、所定の位置まで線路RLの検出が完了していないと判断された場合、S1003に処理が戻る。一方、S1006において、所定の位置まで線路RLの検出が完了したと判断された場合、S1007に処理が進む。
【0057】
S1007において、線路検出部123の補間検出部123cは、撮像画像の上端側に設定される消失点エリアから、撮像画像上における線路RLの消失点の候補としての複数の消失点候補を、S1001で抽出された特徴量に基づいて特定する(
図6参照)。
【0058】
そして、S1008において、補間検出部123cは、S1007で特定した複数の候補点の各々と、検出済みの線路(途中部分)の上端と、の間の領域を補完する複数の補間曲線を取得する(
図6参照)。
【0059】
そして、S1009において、補間検出部123cは、S1001で抽出された特徴量に基づき、S1008で取得した複数の補間曲線のうち、最も線路RLらしい1つの補間曲線を決定し、決定した1つの補間曲線に基づいて、未検出の線路RLを検出する。この時、補間検出部123cは、線路RLらしさが最も高い補間曲線を複数の線分で近似し、当該複数の線分で構成される直線または折れ線を、未検出の線路RLとして検出してもよい(
図7および
図8参照)。
【0060】
S1009の処理が終了すると、
図9に示される処理フローに処理が戻る。つまり、S1009の処理が終了すると、
図9に示されるS902の処理が終了し、S903に処理が進む。
【0061】
S903において、障害物検知装置130の検知領域取得部131は、S902の検出結果に基づき、障害物を検知する対象となる検知領域を取得する。前述したように、このS903で取得される検知領域は、たとえば、鉄道車両RVが走行する可能性のある全ての線路RLの周辺の予め設定された範囲の領域である。
【0062】
そして、S904において、障害物検知装置130の障害物検知部132は、S903で取得された検知領域を監視することで、当該検知領域から、障害物に関する情報(たとえば障害物の有無や障害物までの距離など)を検知する。
【0063】
そして、S905において、通知装置140は、S904での検知結果を、鉄道車両RVの乗員(運転士など)に通知する。なお、前述したように、通知の方法は、画像を用いた視覚に訴える方法であってもよいし、音声を用いた聴覚に訴える方法であってもよいし、振動などを用いた触覚に訴える方法であってもよいし、これらを併用した方法であってもよい。
【0064】
以上説明したように、実施形態にかかる軌道識別装置120は、鉄道車両RVの進行方向の領域を撮像することで得られる撮像画像を取得する画像取得部121と、撮像画像から、線路RLらしさを表す特徴量を抽出する特徴量抽出部122と、特徴量に基づいて撮像画像から線路RLを検出する線路検出部123と、を有しており、線路検出部123は、初期検出部123aと、二次検出部123bと、を有している。初期検出部123aは、撮像画像の下端側に予め設定された初期エリアの下端と上端との間で延びる線路RLらしさが最も高い線分を特徴量に基づいて特定し、特定した線分を線路RLの一部の初期部分として検出する。二次検出部123bは、初期部分の上端を起点とし、当該起点よりも上側に設定された探索エリア内から選択される複数の候補点と、検出済みの線路RLの上端と、を結ぶ複数の線分候補のうち、線路RLらしさが最も高い1つの線分候補を特徴量に基づいて決定し、決定した1つの線分候補を線路RLの一部の途中部分として検出し、当該途中部分の上端を次の起点とする、という処理を繰り返し実行することで、検出済みの線路RLの上端が所定の位置に達するまで途中部分を繰り返し検出する。このような構成によれば、たとえば放物線の集合として線路RLを検出する従来のようなアルゴリズムに比べて、計算で扱いやすい線分の集合として線路RLを検出する分、撮像画像から線路RLをより高速に、かつより精度よく検出することができる。
【0065】
また、実施形態にかかる線路検出部123は、上記の初期検出部123aおよび二次検出部123bに加えて、撮像画像の上端側に設定される消失点エリアから、撮像画像上における線路RLの消失点の候補としての複数の消失点候補を特徴量に基づいて特定し、特定した複数の消失点候補と、検出済みの途中部分の上端と、の間の領域を補完する複数の補間曲線を取得し、取得した複数の補間曲線のうち、線路RLらしさが最も高い補間曲線に基づいて、線路RLのうち未検出の部分を検出する補間検出部123cをさらに有する。このような構成によれば、所定の補間曲線を計算により求めることで、撮像画像から線路RLをより高速に、かつより精度よく検出することができる。
【0066】
なお、実施形態にかかる線路検出部123は、二次検出部123bを含まない、初期検出部123aおよび補間検出部123cのみを含んだ構成であってもよい。この場合、補間検出部123cは、撮像画像の上端側に位置する、線路RLの消失点に対応した1つの点を特徴量に基づいて特定し、特定した1つの点と同じ高さの複数の候補点と、初期部分の上端と、の間の領域の少なくとも一部を補完する複数の補間曲線を取得し、取得した複数の補間曲線のうち、線路RLらしさが最も高い補間曲線に基づいて、線路RLのうち初期部分以外の残りの部分の少なくとも一部を検出する。このような構成によっても、撮像画像から線路RLをより高速に、かつより精度よく検出することができる。
【0067】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態およびその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
120 軌道識別装置
121 画像取得部
122 特徴量抽出部
123 線路検出部
123a 初期検出部
123b 二次検出部
123c 補間検出部