(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】感光性フィルム積層体およびその硬化物
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20221107BHJP
G03F 7/09 20060101ALI20221107BHJP
G03F 7/11 20060101ALI20221107BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
G03F7/004 505
G03F7/004 501
G03F7/004 512
G03F7/09 501
G03F7/11 501
H05K3/28 D
H05K3/28 F
(21)【出願番号】P 2018093957
(22)【出願日】2018-05-15
【審査請求日】2021-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2017125569
(32)【優先日】2017-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018030730
(32)【優先日】2018-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】310024066
【氏名又は名称】太陽インキ製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】嶋宮 真梨子
(72)【発明者】
【氏名】舟越 千弘
(72)【発明者】
【氏名】加藤 文崇
(72)【発明者】
【氏名】高橋 元範
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和也
(72)【発明者】
【氏名】荒井 康昭
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 信人
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-027363(JP,A)
【文献】特開2010-201821(JP,A)
【文献】特開2016-148726(JP,A)
【文献】特開2000-063698(JP,A)
【文献】特開2000-269169(JP,A)
【文献】特開2002-216538(JP,A)
【文献】特開平11-060804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004 - 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持フィルムと、感光性樹脂組成物からなる感光性フィルムとを積層してなる感光性フィルム積層体において、
前記感光性樹脂組成物が、少なくともカーボンブラックと、前記カーボンブラックの電荷と反対の電荷を有するフィラーとを含んでな
り、
前記カーボンブラックの配合量が、感光性樹脂組成物中において、固形分換算で、0.5~5質量%であり、
前記カーボンブラックと、前記カーボンブラックの電荷と反対の電荷を有するフィラーとの配合比率が、質量基準において3:97~75:25であることを特徴とする、感光性フィルム積層体。
【請求項2】
前記支持フィルムの厚みが、10~150μmである、請求項
1に記載の感光性フィルム積層体。
【請求項3】
前記支持フィルムが、熱可塑性樹脂フィルムである、請求項1
または2に記載の感光性フィルム積層体。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂フィルムが、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、およびポリスチレンフィルムからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項
3に記載の感光性フィルム積層体。
【請求項5】
前記支持フィルムの算術平均表面粗さRaが、1000nm以下である、請求項1~
4のいずれか一項に記載の感光性フィルム積層体。
【請求項6】
前記感光性フィルムの、前記支持フィルムとは反対の面に積層された保護フィルムをさらに備えてなる、請求項1~
5のいずれか一項に記載の感光性フィルム積層体。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか一項に記載の感光性フィルム積層体を用いて形成されたことを特徴とする、硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性フィルム積層体およびその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子機器などに用いられるプリント配線板において、プリント配線板に電子部品を実装する際には、不必要な部分にはんだが付着するのを防止するために、回路パターンの形成された基板上の接続孔を除く領域にソルダーレジスト層が形成されている。
【0003】
近年の電子機器の軽薄短小化によるプリント配線板の高精度、高密度化に伴い、現在、ソルダーレジスト層は、基板に感光性樹脂組成物を塗布、乾燥し、露光、現像によりパターン形成した後、パターン形成された樹脂を加熱ないし光照射によって本硬化させる、いわゆるフォトソルダーレジストによって形成されるのが主流となっている。
【0004】
また、上記したような液状の感光性樹脂組成物を使用することなく、感光性フィルムを備える、いわゆる感光性フィルム積層体を使用してソルダーレジスト層を形成することも提案されている。このような感光性フィルム積層体は、一般的には、支持フィルム上に感光性樹脂組成物により形成された感光性フィルムを貼り合わせたものであり、必要に応じて感光性フィルム表面には保護フィルムが貼り合わされていることもある。このような感光性フィルム積層体は、使用時に保護フィルムを剥離して配線基板に加熱圧着によりラミネートし、露光前に、または支持フィルム側から露光した後に、支持フィルムを剥離して現像を行うことにより、パターン形成されたソルダーレジスト層を形成することができる。感光性フィルム積層体を用いることにより、ウエットコーティングの場合と比べて、塗布後の乾燥工程を不要にできることに加え、得られたソルダーレジスト層の表面平滑性や表面硬度にも優れる。
【0005】
さらに、近年では、作業性の観点から、感光性フィルムを薄くする傾向にある。それに伴い、ソルダーレジスト層の隠蔽性が低下して、下層である回路の変色等がソルダーレジスト層を介して見えてしまい、外観不良に繋がるという問題が生じていた。そこで、ソルダーレジスト層の隠蔽性を向上させるために、黒色の感光性フィルムとすることが求められていた。また、デザイン性の観点からも黒色の感光性フィルムが求められていた。上記のような黒色の感光性フィルムには、従来、着色剤としてカーボンブラックが用いられている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、カーボンブラックを使用した感光性フィルム積層体においては、支持フィルムを剥離する際に、支持フィルムに微量のカーボンブラックが残る場合がある。また、感光性フィルム表面に保護フィルムが設けられているものがあるが、保護フィルムを剥離して感光性フィルムを使用する際にも同様に、保護フィルムに微量のカーボンブラックが残る場合がある。支持フィルムや保護フィルムに残存した微量のカーボンブラックが周囲に飛散または付着することにより、作業環境を悪化させる恐れがあった。
【0008】
したがって、本発明の目的は、感光性フィルムを形成する感光性樹脂組成物中にカーボンブラックを含んでいても作業環境を悪化させない感光性フィルム積層体を提供することである。また、本発明の別の目的は、前記感光性フィルム積層体を用いて形成された硬化物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、カーボンブラックを含む感光性フィルムにおいて、使用するカーボンブラックの正または負の電荷を有する場合に、負または正の電荷を有するフィラー、すなわち、当該カーボンブラックの電荷とは反対の電荷を有するフィラーをカーボンブラックと併用して感光性フィルムに使用することにより、感光性フィルム中に効果的にカーボンブラックを留まらせることができ、その結果、剥離された支持フィルムや保護フィルムにカーボンブラックが残留しなくなる、との知見を得た。本発明はかかる知見によるものである。
【0010】
すなわち、本発明による感光性フィルム積層体は、支持フィルムと、感光性樹脂組成物からなる感光性フィルムとを積層してなる感光性フィルム積層体において、前記感光性樹脂組成物が、少なくともカーボンブラックと、前記カーボンブラックの電荷とは反対の電荷を有するフィラーとを含んでなることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の態様においては、前記カーボンブラックの配合量が、感光性樹脂組成物中において、固形分換算で、0.3~5質量%であることが好ましい。
【0012】
本発明の態様においては、前記支持フィルムの厚みが、10~150μmであることが好ましい。
【0013】
本発明の態様においては、前記支持フィルムが、熱可塑性樹脂フィルムであることが好ましい。
【0014】
本発明の態様においては、前記熱可塑性樹脂フィルムが、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、およびポリスチレンフィルムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0015】
本発明の態様においては、前記支持フィルムの算術平均表面粗さRaが、1000nm以下であることが好ましい。
【0016】
本発明の態様においては、前記感光性フィルムの、前記支持フィルムとは反対の面に積層された保護フィルムをさらに備えてなることが好ましい。
【0017】
本発明の別の態様による硬化物は、上記感光性フィルム積層体を用いて形成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、感光性フィルムを形成する感光性樹脂組成物中にカーボンブラックが含まれていても作業環境を悪化させない感光性フィルム積層体を実現することができる。さらに、本発明の別の形態によれば、前記感光性フィルム積層体を用いて形成された硬化物を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明による感光性フィルム積層体について説明する。本発明による感光フィルム積層体は、支持フィルムと感光性フィルムとを順に備えた感光性フィルム積層体である。本発明による感光性フィルム積層体は、感光性フィルムの、前記支持フィルムとは反対の面には、さらに保護フィルムが設けられていてもよい。なお、本発明において、「感光性フィルム」とは、感光性樹脂組成物をフィルム形状としたものであり、支持フィルムや保護フィルムといった他の層が積層されていないものをいう。以下、本発明による感光性フィルム積層体を構成する各構成要素について説明する。
【0020】
[支持フィルム]
本発明の感光性フィルム積層体を構成する支持フィルムは、後記する感光性フィルム(すなわち、感光性樹脂組成物からなる層、以下、「感光性樹脂層」と略す場合がある。)を支持するものである。
【0021】
支持フィルムとしては、公知のものであれば特に制限なく使用することができ、例えば、熱可塑性樹脂からなるフィルムを好適に使用することができる。熱可塑性樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等の熱可塑性樹脂からなるフィルムを好適に使用することができる。また、前記熱可塑性樹脂フィルムを使用する場合、フィルムを成膜する際の樹脂中にフィラーを添加(練り込み処理)したり、マットコーティング(コーティング処理)したり、フィルム表面をサンドブラスト処理のようなブラスト処理をしたり、あるいはヘアライン加工、またはケミカルエッチング等の処理を施したものであってもよい。これらの中でも、耐熱性、機械的強度、取扱性等の観点から、ポリエステルフィルムを好適に使用することができる。
【0022】
また、上記したような熱可塑性樹脂フィルムは、強度を向上させる目的で、一軸方向または二軸方向に延伸されたフィルムを使用することが好ましい。
【0023】
また、支持フィルムの表面には、離型処理が施されていてもよい。例えば、ワックス類、シリコーンワックス、アルキッド系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、シリコーン系樹脂等の離型剤を適当な溶剤に溶解または分散して調製した塗工液を、ロールコート法、スプレーコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等の公知の手段により、支持フィルム表面に塗布、乾燥することにより、離型処理を施すことができる。
【0024】
支持フィルムの厚さは、取扱い性の観点より10~150μmの範囲が好ましく、10~100μmの範囲がより好ましく、10~50μmの範囲がさらに好ましい。10~150μmの範囲とすることで、解像性がより向上する。
【0025】
支持フィルムの算術平均表面粗さRaは1000nm以下が好ましく、750nm以下がより好ましく、500nm以下がさらに好ましい。支持フィルムの算術平均表面粗さRaを1000nm以下とすることで、解像性がより向上する。また、表面積が大きくなり過ぎないため、カーボンブラックの脱離のリスクが低減する。上記効果が期待できる観点から、感光性フィルム積層体において、支持フィルムの感光性フィルムと接する面の算術平均表面粗さRaが1000nm以下であることが好ましい。また、本発明の感光性フィルム積層体において、後記する保護フィルムを積層しない場合、支持フィルムの前記感光性フィルムと接する面とは反対の面においても、積層体の巻き取り時に感光性フィルムと接する可能性があるため、かかる場合は、感光性フィルムと接する面とは反対の面側の算術平均表面粗さRaも1000nm以下であることが好ましい。なお、算術平均表面粗さRaは、JIS B0601-1994に準拠した測定装置にて測定された値を意味する。
【0026】
本発明においては、剥離された支持フィルムや保護フィルムにカーボンブラックが残留していないため、微量のカーボンブラックが飛散することを防ぐことができる。特に、支持フィルムは、感光性フィルムを露光により硬化させて硬化被膜とした後に、当該硬化被膜から剥離されるものであり、感光性フィルムを硬化する前に支持フィルムを剥離することは、製造上の通常の工程ではないが、支持フィルムへのカーボンブラックの残留は、感光性フィルムを硬化した後よりも硬化前の方が多いと考えられる。そのため、感光性フィルムから支持フィルムを剥離した際に支持フィルムにカーボンブラックが残留していなければ、実際の製造工程において感光性フィルムを硬化させて硬化被膜とした後に支持フィルムを剥離した場合であっても、支持フィルムにカーボンブラックが残留していないものと考えられる。
【0027】
[感光性フィルム]
本発明の感光性フィルム積層体を構成する感光性フィルムは、感光性樹脂組成物を用いてフィルム形状としたものであって、支持フィルムや保護フィルムといった他の層が積層されていないものをいう。感光性フィルムは、露光、現像することによってパターニングされ、回路基板上に設けられた硬化被膜となる。硬化被膜としては、ソルダーレジスト層であることが好ましい。このような感光性フィルムは感光性樹脂組成物を用いて形成され、感光性樹脂組成物は従来公知のソルダーレジストインキ等を制限なく使用できるが、以下、本発明による感光性フィルムに好ましく使用できる感光性樹脂組成物の一例を説明する。
【0028】
本発明の感光性フィルムを構成する感光性樹脂組成物中には、少なくともカーボンブラックとカーボンブラック以外のフィラーとが含まれる。当該フィラーは、カーボンブラックの正または負の電荷を有する場合に、負または正の電荷を有するものである。すなわち、本発明においては、カーボンブラックの電荷とは反対の電荷を有するフィラーをカーボンブラックと併用して感光性樹脂組成物に用いるものである。本発明者等は鋭意研究した結果、感光性フィルム中に、カーボンブラックと、さらにカーボンブラックと、当該カーボンブラックの電荷とは反対の電荷を有するフィラーとを含ませることにより、剥離された支持フィルムにカーボンブラックが残留しなくなることを見出した。その理由は必ずしも明らかではないが以下のように考えられる。感光性フィルムがカーボンブラックを含む場合、カーボンブラックは正または負の何れかの帯電電位を有しているため、支持フィルムや保護フィルムを剥離する際に、支持フィルムや保護フィルムに静電力によってカーボンブラックが付着するものと考えられる。本発明においては、感光性フィルム中に、カーボンブラックの電荷とは反対の電荷を有するフィラーが含まれるため、当該フィラーとカーボンブラックとの静電力によって、感光性フィルムからカーボンブラックが脱離するのを抑制できるものと考えられる。その結果、支持フィルムや保護フィルムへのカーボンブラックの移行が起こらなくなるものと推測されるが、あくまでも推測の範囲であり、必ずしもこの限りではない。
【0029】
[カーボンブラック]
本発明において使用されるカーボンブラックとは、工業的に品質制御して製造される炭素主体の微粒子であれば、公知慣用のものが使用できる。カーボンブラックには、例えば、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラックなどが含まれる。また、カーボンブラックは、公知の方法により表面処理が施されていても良い。なお、カーボンブラックは、正と負のどちらに帯電していても良い。また、カーボンブラックの粒径は直径3~500nmが好ましい。
【0030】
カーボンブラックが正と負のどちらに帯電しているかは、電荷を測定することで決定できる。電荷の測定は、非接触式の静電気測定器を使用して測定することができる。例えば、株式会社キーエンス製のSK-H050が使用できる。具体的には、静電気測定器を用いて、帯電電位測定モードにて測定できる。このとき、静電気測定器はアース接地していることが望ましい。測定距離、測定範囲、測定精度は任意のモードを選択できるが、高精度モードを選択することが好ましい。静電気測定器は接地している対象に向け、ゼロ点調整を行うことが好ましい。なお、ゼロ点調整は各サンプルの測定毎に行うことが好ましい。帯電状態を確認するサンプルは金属缶に入れて行う。金属缶の種類は、表面処理等がされておらず、導通が取れていれば、特に制限なく使用できる。金属缶は絶縁性の台上に置いて使用する。金属缶は台上に置いた後に除電し、測定が終了するまではサンプル以外が触れないことが好ましい。サンプルは金属匙を使用して、金属缶に入れることができる。金属缶の容量と、サンプル量は、任意のものを使用できるが、金属缶の底面全体に広がるようにすることが好ましい。取扱い性の観点より、20~50mlの金属缶を使用し、3~10gのサンプル量で測定することが好ましい。測定はサンプルの表面について行う。測定は約10秒間行うことが好ましい。このときの測定室内は、温度23~26℃、湿度45~55%の環境であることが好ましい。
【0031】
カーボンブラックの配合量は、感光性樹脂組成物中において、固形分換算で、好ましくは0.3~5質量%、より好ましくは0.5~3質量%、さらに好ましくは1~3質量%である。カーボンブラックの配合量が0.3質量%以上の場合、隠蔽性が向上する。5質量%以下の場合、感光性や解像性がより良好となる。また、カーボンブラックが、より一層、感光性フィルム中に留まりやすくなる。
【0032】
[フィラー]
本発明においては、上記したように、カーボンブラックの電荷とは反対の電荷を有するフィラーを含む。フィラーが正と負のどちらに帯電しているかは、上記と同様に、電荷を測定することで決定できる。カーボンブラックが正の電荷を有する場合には、負の電荷を有するフィラーを用いる。反対に、カーボンブラックが負の電荷を有する場合には、正の電荷を有するフィラーを用いる。本発明において、少なくともカーボンブラックと、カーボンブラックの電荷とは反対の電荷を有するフィラーが1種含まれていれば、さらに別のフィラーが含まれていても良い。
【0033】
フィラーとしては、公知慣用の無機または有機フィラーが使用できるが、特に硫酸バリウム、球状シリカ、酸化チタン、ノイブルグ珪土粒子、およびタルクが好ましく用いられる。なお、フィラーは、カーボンブラックの電荷とは反対の電荷を有するものを少なくとも1種含んでいれば、正と負のどちらに帯電していても良い。また、感光性フィルムに難燃性を付与する目的で、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ベーマイトなども使用することができる。さらに、1個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物や前記多官能エポキシ樹脂にナノシリカを分散したHanse-Chemie社製のNANOCRYL(商品名) XP 0396、XP 0596、XP 0733、XP 0746、XP 0765、XP 0768、XP 0953、XP 0954、XP 1045(何れも製品グレード名)や、Hanse-Chemie社製のNANOPOX(商品名) XP 0516、XP 0525、XP 0314(何れも製品グレード名)も使用できる。これらを単独でまたは2種以上配合することができる。フィラーを含むことにより、得られる硬化物の物理的強度等を上げることができる。
【0034】
フィラーの平均粒径は、0.05~15μmが好ましく、0.1~5μmがより好ましい。この範囲にすることで、カーボンブラックがより効果的に感光性フィルム中に留まりやすくなる。また、解像性や電気特性がより向上する。
【0035】
フィラーの配合量は、感光性樹脂組成物中において、固形分換算で、好ましくは0.05~80質量%、より好ましくは0.1~75質量%、特に好ましくは1~70質量%である。フィラーの配合量が80質量%以下の場合、感光性樹脂組成物の粘度が高くなりすぎず、感光性フィルムにする際の塗り付け性が良く、硬化物が脆くなりにくい。また、フィラーの配合量が0.05質量%以上の場合、カーボンブラックがより感光性フィルム中に留まりやすくなる。
【0036】
感光性樹脂組成物中の、カーボンブラックと、カーボンブラックとは反対の電荷を有するフィラーの配合比率は特に制限はないが、質量部で、カーボンブラック:カーボンブラックとは反対の電荷を有するフィラー=2:98~98:2の割合であることが好ましい。より好ましくは、3:97~75:25であり、さらに好ましくは、4:96~50:50である。この割合で配合されることで、カーボンブラックの脱離がより起きにくくなる。
【0037】
本発明において、感光性樹脂組成物は、上記したカーボンブラックおよびフィラーに加えて、架橋成分を含むことが好ましい。さらに、光重合開始剤を含むことがより好ましい。架橋成分はカルボキシル基含有感光性樹脂や感光性モノマーが好ましく、さらに加熱する場合、熱によって架橋する成分を含むことが好ましい。以下、各成分について説明する。
【0038】
[架橋成分]
架橋成分は架橋する成分であれば特に制限はされず、公知慣用のものを使用することができる。特にカルボキシル基含有感光性樹脂や感光性モノマーが好ましく、さらに加熱する場合、熱によって架橋する成分(以下、熱架橋成分)を含むことが耐熱性、絶縁信頼性等の特性を向上させることにより好ましい。
【0039】
カルボキシル基含有感光性樹脂は、光照射により重合ないし架橋して硬化する成分であり、カルボキシル基が含まれることによりアルカリ現像性とすることができる。また、光硬化性や耐現像性の観点から、カルボキシル基の他に、分子内にエチレン性不飽和結合を有することが好ましい。エチレン性不飽和二重結合としては、アクリル酸もしくはメタアクリル酸またはそれらの誘導体由来のものが好ましい。
【0040】
また、カルボキシル基含有感光性樹脂として、エポキシ樹脂を出発原料として使用していないカルボキシル基含有感光性樹脂やエポキシ樹脂以外の樹脂を合成することにより得られるカルボキシル基含有感光性樹脂を用いることが好ましい。エポキシ樹脂を出発原料として使用していないカルボキシル基含有感光性樹脂やエポキシ樹脂以外の樹脂を合成することにより得られるカルボキシル基含有樹脂は、ハロゲン化物イオン含有量が非常に少なく、絶縁信頼性の劣化を抑えることができ、その結果、電気特性により優れる。カルボキシル基含有感光性樹脂の具体例としては、以下に列挙するような化合物(オリゴマーまたはポリマーのいずれでもよい)が挙げられる。
【0041】
(1)2官能またはそれ以上の多官能(固形)エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸などの2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂、
(2)2官能(固形)エポキシ樹脂の水酸基を、さらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に、(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂、
(3)1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物に、1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸などの不飽和基含有モノカルボン酸とを反応させ、得られた反応生成物のアルコール性水酸基に対して、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、アジピン酸などの多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(4)ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ノボラック型フェノール樹脂、ポリ-p-ヒドロキシスチレン、ナフトールとアルデヒド類の縮合物、ジヒドロキシナフタレンとアルデヒド類との縮合物などの1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物と、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドとを反応させて得られる反応生成物に、(メタ)アクリル酸などの不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(5)1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどの環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に、不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(6)ジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸などのカルボキシル基含有ジアルコール化合物と、ジオール化合物との重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどの分子中に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有ウレタン樹脂、
(7)ジイソシアネートと、カルボキシル基含有ジアルコール化合物と、ジオール化合物との重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物など、分子中に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有ウレタン樹脂、
(8)多官能オキセタン樹脂に、アジピン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸などのジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に、2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂に、さらにグリシジル(メタ)アクリレート、α-メチルグリシジル(メタ)アクリレートなどの1分子中に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基含有感光性樹脂、および
(9)上述した(1)~(8)のいずれかのカルボキシル基含有感光性樹脂に、1分子中に環状エーテル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂、
(10)(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸と、スチレン、α-メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレンなどの不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂に対し、3,4-エポキシシクロヘキシルメタアクリレート等の一分子中に環状エーテル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させたカルボキシル基含有感光性樹脂、
等が挙げられる。なお、ここで(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を総称する用語で、以下他の類似の表現についても同様である。
【0042】
上記したカルボキシル基含有感光性樹脂の中でも、上述したように、エポキシ樹脂を出発原料として用いていないカルボキシル基含有感光性樹脂やエポキシ樹脂以外の樹脂を合成することにより得られるカルボキシル基含有感光性樹脂を好適に用いることができる。従って、上述したカルボキシル基含有感光性樹脂の具体例のうち、(4)~(7)のいずれか1種以上のカルボキシル基含有感光性樹脂を特に好適に用いることができる。半導体パッケージ用ソルダーレジストに求められる特性、すなわち、PCT耐性、HAST耐性、冷熱衝撃耐性を有することができる。
【0043】
このように、エポキシ樹脂を出発原料として用いないことにより、塩素イオン不純物量を例えば100ppm以下と非常に少なく抑えることができる。本発明において好適に用いられるカルボキシル基含有感光性樹脂の塩素イオン不純物含有量は0~100ppm、より好ましくは0~50ppm、さらに好ましくは0~30ppmである。
【0044】
また、エポキシ樹脂を出発原料として用いないことにより、水酸基を含まない(もしくは、水酸基の量が低減された)樹脂を容易に得ることができる。一般的に水酸基の存在は水素結合による密着性の向上など優れた特徴も有しているが、著しく耐湿性を低下させることが知られており、水酸基を含まないカルボキシル基含有感光性樹脂とすることにより、耐湿性を向上させることが可能となる。
【0045】
なお、ホスゲンを出発原料として用いていないイソシアネート化合物、エピハロヒドリンを使用しない原料から合成され、塩素イオン不純物量が0~30ppmのカルボキシル基含有ウレタン樹脂も好適に用いられる。このようなウレタン樹脂において、水酸基とイソシアネート基の当量を合わせることにより、水酸基を含まない樹脂を容易に合成することができる。
【0046】
また、ウレタン樹脂の合成の際に、ジオール化合物としてエポキシアクリレート変性原料を使用することもできる。塩素イオン不純物は入ってしまうが、塩素イオン不純物量をコントロールできるといった点から使用することは可能である。また、前記(10)のカルボキシル基含有感光性樹脂も、塩素イオン不純物が少なく、好適に用いることができる。
【0047】
上記のようなカルボキシル基含有感光性樹脂は、バックボーン・ポリマーの側鎖に多数のカルボキシル基を有するため、アルカリ水溶液による現像が可能である。
【0048】
カルボキシル基含有感光性樹脂の酸価は、40~150mgKOH/gであることが好ましい。カルボキシル基含有感光性樹脂の酸価が40mgKOH/g以上とすることにより、アルカリ現像が良好になる。また、酸価を150mgKOH/gを以下とすることで、良好なレジストパターンの描画をし易くできる。より好ましくは、50~130mgKOH/gである。
【0049】
カルボキシル基含有感光性樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、一般的に2,000~150,000であることが好ましい。重量平均分子量が2,000以上とすることにより、感光性フィルムとした際のタックフリー性能や解像度を向上させることができる。また、重量平均分子量が150,000以下とすることで、現像性や貯蔵安定性を向上させることができる。より好ましくは、5,000~100,000である。
【0050】
カルボキシル基含有感光性樹脂の配合量は、感光性樹脂組成物中において、固形分換算で、20~60質量%であることが好ましい。20質量%以上とすることにより感光性フィルムとした際の塗膜強度を向上させることができる。また60質量%以下とすることで粘性が適当となり加工性が向上する。より好ましくは、30~50質量%である。
【0051】
感光性モノマーとして用いられる化合物としては、例えば、慣用公知のポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、カーボネート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。具体的には、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレート類;エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのジアクリレート類;N,N-ジメチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどのアクリルアミド類;N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリレートなどのアミノアルキルアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス-ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどの多価アルコールまたはこれらのエチレオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、もしくはε-カプロラクトン付加物などの多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、およびこれらのフェノール類のエチレンオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物などの多価アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの多価アクリレート類;前記に限らず、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール、水酸基末端ポリブタジエン、ポリエステルポリオールなどのポリオールを直接アクリレート化、もしくは、ジイソシアネートを介してウレタンアクリレート化したアクリレート類およびメラミンアクリレート、および前記アクリレートに対応する各メタクリレート類のいずれか少なくとも1種から適宜選択して用いることができる。
【0052】
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などの多官能エポキシ樹脂に、アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート樹脂や、さらにそのエポキシアクリレート樹脂の水酸基に、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどのヒドロキシアクリレートとイソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネートのハーフウレタン化合物を反応させたエポキシウレタンアクリレート化合物などを感光性モノマーとして用いてもよい。このようなエポキシアクリレート系樹脂は、指触乾燥性を低下させることなく、光硬化性を向上させることができる。
【0053】
感光性モノマーとして用いられる分子中にエチレン性不飽和基を有する化合物の配合量は、感光性樹脂組成物中に、固形分換算で、好ましくは0.2~60質量%、より好ましくは0.2~50質量%である。エチレン性不飽和基を有する化合物の配合量を0.2質量%以上とすることにより、光硬化性樹脂組成物の光硬化性が向上する。また、配合量を60質量%以下とすることにより、塗膜硬度を向上させることができる。
【0054】
感光性モノマーは、特にエチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有非感光性樹脂を使用した場合、組成物を光硬化性とするために分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(感光性モノマー)を併用する必要があるため、有効である。
【0055】
熱架橋成分としては、熱硬化性樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、アミノ樹脂、マレイミド化合物、ベンゾオキサジン樹脂、カルボジイミド樹脂、シクロカーボネート化合物、多官能エポキシ化合物、多官能オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂などの公知慣用のものが使用できる。これらの中でも好ましい熱架橋成分は、1分子中に複数の環状エーテル基および複数の環状チオエーテル基の少なくともいずれか1種(以下、環状(チオ)エーテル基と略称する。)を有する熱架橋成分である。これら環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分は、市販されている種類が多く、その構造によって多様な特性を付与することができる。
【0056】
分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分は、分子中に3、4または5員環の環状エーテル基、または環状チオエーテル基のいずれか一方または2種類の基を複数有する化合物であり、例えば、分子中に複数のエポキシ基を有する化合物、すなわち多官能エポキシ化合物、分子中に複数のオキセタニル基を有する化合物、すなわち多官能オキセタン化合物、分子中に複数のチオエーテル基を有する化合物、すなわちエピスルフィド樹脂などが挙げられる。
【0057】
多官能エポキシ化合物としては、例えば、三菱ケミカル株式会社製のjER828、jER834、jER1001、jER1004、DIC株式会社製のエピクロン840、エピクロン840-S、エピクロン850、エピクロン1050、エピクロン2055、新日鉄住金化学株式会社製のエポトートYD-011、YD-013、YD-127、YD-128、ダウケミカル社製のD.E.R.317、D.E.R.331、D.E.R.661、D.E.R.664、住友化学工業株式会社製のスミ-エポキシESA-011、ESA-014、ELA-115、ELA-128、旭化成工業株式会社製のA.E.R.330、A.E.R.331、A.E.R.661、A.E.R.664等(何れも商品名)のビスフェノールA型エポキシ樹脂;三菱ケミカル株式会社製のjERYL903、DIC株式会社製のエピクロン152、エピクロン165、新日鉄住金化学株式会社製のエポトートYDB-400、YDB-500、ダウケミカル社製のD.E.R.542、住友化学工業株式会社製のスミ-エポキシESB-400、ESB-700、旭化成工業株式会社製のA.E.R.711、A.E.R.714等(何れも商品名)のブロム化エポキシ樹脂;三菱ケミカル株式会社製のjER152、jER154、ダウケミカル社製のD.E.N.431、D.E.N.438、DIC株式会社製のエピクロンN-730、エピクロンN-770、エピクロンN-865、新日鉄住金化学株式会社製のエポトートYDCN-701、YDCN-704、日本化薬株式会社製のEPPN-201、EOCN-1025、EOCN-1020、EOCN-104S、RE-306、NC-3000H、住友化学工業株式会社製のスミ-エポキシESCN-195X、ESCN-220、旭化成工業株式会社製のA.E.R.ECN-235、ECN-299等(何れも商品名)のノボラック型エポキシ樹脂;DIC株式会社製のエピクロン830、三菱ケミカル株式会社製jER807、新日鉄住金化学株式会社製のエポトートYDF-170、YDF-175、YDF-2004等(何れも商品名)のビスフェノールF型エポキシ樹脂;新日鉄住金化学株式会社製のエポトートST-2004、ST-2007、ST-3000(商品名)等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;三菱ケミカル株式会社製のjER604、新日鉄住金化学株式会社製のエポトートYH-434、住友化学工業株式会社製のスミ-エポキシELM-120等(何れも商品名)のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;株式会社ダイセル製のセロキサイド2021等(商品名)の脂環式エポキシ樹脂;三菱ケミカル株式会社製のYL-933、ダウケミカル社製のT.E.N.、EPPN-501、EPPN-502等(何れも商品名)のトリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;三菱ケミカル株式会社製のYL-6056、YX-4000、YL-6121(何れも商品名)等のビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂またはそれらの混合物;日本化薬株式会社製EBPS-200、旭電化工業株式会社製EPX-30、DIC株式会社製のEXA-1514(商品名)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;三菱ケミカル株式会社製のjER157S(商品名)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;三菱ケミカル株式会社製のjERYL-931等(商品名)のテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;日産化学工業株式会社製のTEPIC等(商品名)の複素環式エポキシ樹脂;日本油脂株式会社製ブレンマーDGT等のジグリシジルフタレート樹脂;新日鉄住金化学株式会社製ZX-1063等のテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;新日鉄住金化学株式会社製ESN-190、ESN-360、DIC株式会社製HP-4032、EXA-4750、EXA-4700等のナフタレン基含有エポキシ樹脂;DIC株式会社製HP-7200、HP-7200H等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、EXA-4816、EXA-4822、EXA-4850シリーズの柔軟強靭エポキシ樹脂;日本油脂株式会社製CP-50S、CP-50M等のグリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;さらにシクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限られるものではない。これらのエポキシ樹脂は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0058】
多官能オキセタン化合物としては、ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4-ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマーまたは共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p-ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、またはシルセスキオキサンなどの水酸基を有する樹脂とのエーテル化物などが挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体なども挙げられる。
【0059】
エピスルフィド樹脂としては、例えば、三菱ケミカル株式会社製のYL7000(ビスフェノールA型エピスルフィド樹脂)などが挙げられる。また、同様の合成方法を用いて、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置き換えたエピスルフィド樹脂なども用いることができる。
【0060】
分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分の配合量は、組成物中に、分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分を含む場合、固形分換算でカルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基1当量に対して、好ましくは0.3当量以上、より好ましくは、0.5~3.0当量となる範囲である。分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分の配合量を0.3当量以上とすることにより、硬化被膜にカルボキシル基が残存せず、耐熱性、耐アルカリ性、電気絶縁性などがより向上する。また、感光性樹脂組成物中にカルボキシル基含有樹脂を含まない場合、分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分の配合量は感光性樹脂組成物中に、固形分換算で20~60質量%であることが好ましい。20質量%以上とすることにより感光性フィルムとした際の塗膜強度を向上させることができる。また60質量%以下とすることで粘性が適当となり加工性が向上する。より好ましくは、30~50質量%である。
【0061】
分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分を使用する場合、熱硬化触媒を配合することが好ましい。そのような熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4-(ジメチルアミノ)-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メトキシ-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物などが挙げられる。また、市販されているものとしては、例えば四国化成工業株式会社製の2MZ-A、2MZ-OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ株式会社製のU-CAT(登録商標)3503N、U-CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U-CATSA102、U-CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物およびその塩)などが挙げられる。特に、これらに限られるものではなく、エポキシ樹脂やオキセタン化合物の熱硬化触媒、もしくはエポキシ基およびオキセタニル基の少なくとも何れか1種とカルボキシル基の反応を促進するものであればよく、単独でまたは2種以上を混合して使用してもかまわない。また、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン、2-ビニル-2,4-ジアミノ-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS-トリアジン誘導体を用いることもでき、好ましくはこれら密着性付与剤としても機能する化合物を熱硬化触媒と併用する。
【0062】
熱硬化触媒の配合量は、組成物中に、分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分を含む場合、固形分換算で、分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分100質量部に対して、好ましくは0.1~20質量部、より好ましくは0.5~15.0質量部である。
【0063】
アミノ樹脂としては、メラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体などのアミノ樹脂が挙げられる。例えばメチロールメラミン化合物、メチロールベンゾグアナミン化合物、メチロールグリコールウリル化合物およびメチロール尿素化合物などがある。さらに、アルコキシメチル化メラミン化合物、アルコキシメチル化ベンゾグアナミン化合物、アルコキシメチル化グリコールウリル化合物およびアルコキシメチル化尿素化合物は、それぞれのメチロールメラミン化合物、メチロールベンゾグアナミン化合物、メチロールグリコールウリル化合物およびメチロール尿素化合物のメチロール基をアルコキシメチル基に変換することにより得られる。このアルコキシメチル基の種類については特に限定されるものではなく、例えばメトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基等とすることができる。特に人体や環境に優しいホルマリン濃度が0.2%以下のメラミン誘導体が好ましい。
【0064】
アミノ樹脂の市販品としては、例えばサイメル300、同301、同303、同370、同325、同327、同701、同266、同267、同238、同1141、同272、同202、同1156、同1158、同1123、同1170、同1174、同UFR65、同300(以上、三井サイアナミッド株式会社製)、ニカラックMx-750、同Mx-032、同Mx-270、同Mx-280、同Mx-290、同Mx-706、同Mx-708、同Mx-40、同Mx-31、同Ms-11、同Mw-30、同Mw-30HM、同Mw-390、同Mw-100LM、同Mw-750LM、(以上、株式会社三和ケミカル製)等を挙げることができる。
【0065】
イソシアネート化合物としては、分子中に複数のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を用いることができる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートまたは脂環式ポリイソシアネートが用いられる。芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、o-キシリレンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネートおよび2,4-トリレンダイマーが挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)およびイソホロンジイソシアネートが挙げられる。脂環式ポリイソシアネートの具体例としてはビシクロヘプタントリイソシアネートが挙げられる。並びに先に挙げられたイソシアネート化合物のアダクト体、ビューレット体およびイソシアヌレート体が挙げられる。
【0066】
ブロックイソシアネート化合物に含まれるブロック化イソシアネート基は、イソシアネート基がブロック剤との反応により保護されて一時的に不活性化された基である。所定温度に加熱されたときにそのブロック剤が解離してイソシアネート基が生成する。
【0067】
ブロックイソシアネート化合物としては、イソシアネート化合物とイソシアネートブロック剤との付加反応生成物が用いられる。ブロック剤と反応し得るイソシアネート化合物としては、イソシアヌレート型、ビウレット型、アダクト型等が挙げられる。ブロックイソシアネート化合物を合成する為に用いられるイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートまたは脂環式ポリイソシアネートが挙げられる。芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネートの具体例としては、先に例示したような化合物が挙げられる。
【0068】
イソシアネートブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、クロロフェノールおよびエチルフェノール等のフェノール系ブロック剤;ε-カプロラクタム、δ-パレロラクタム、γ-ブチロラクタムおよびβ-プロピオラクタム等のラクタム系ブロック剤;アセト酢酸エチルおよびアセチルアセトンなどの活性メチレン系ブロック剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アミルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルエーテル、グリコール酸メチル、グリコール酸ブチル、ジアセトンアルコール、乳酸メチルおよび乳酸エチル等のアルコール系ブロック剤;ホルムアルデヒドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム系ブロック剤;ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系ブロック剤;酢酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系ブロック剤;コハク酸イミドおよびマレイン酸イミド等のイミド系ブロック剤;キシリジン、アニリン、ブチルアミン、ジブチルアミン等のアミン系ブロック剤;イミダゾール、2-エチルイミダゾール等のイミダゾール系ブロック剤;メチレンイミンおよびプロピレンイミン等のイミン系ブロック剤等が挙げられる。
【0069】
ブロックイソシアネート化合物は市販のものであってもよく、例えば、スミジュールBL-3175、BL-4165、BL-1100、BL-1265、デスモジュールTPLS-2957、TPLS-2062、TPLS-2078、TPLS-2117、デスモサーム2170、デスモサーム2265(以上、住化コベストロウレタン株式会社製、商品名)、コロネート2512、コロネート2513、コロネート2520(以上、東ソー株式会社製、商品名)、B-830、B-815、B-846、B-870、B-874、B-882(以上、三井化学株式会社製、商品名)、TPA-B80E、17B-60PX、E402-B80T(以上、旭化成株式会社製、商品名)等が挙げられる。なお、スミジュールBL-3175、BL-4265はブロック剤としてメチルエチルオキシムを用いて得られるものである。
【0070】
感光性樹脂組成物には、水酸基やカルボキシル基とイソシアネート基との硬化反応を促進させるためにウレタン化触媒を配合してもよい。ウレタン化触媒としては、錫系触媒、金属塩化物、金属アセチルアセトネート塩、金属硫酸塩、アミン化合物、およびアミン塩の少なくとも何れか1種から選択されるウレタン化触媒を使用することが好ましい。
【0071】
[光重合開始剤]
本発明において、上記した感光性樹脂組成物を光重合させるために使用される光重合開始剤としては、公知のものを用いることができるが、なかでも、オキシムエステル基を有するオキシムエステル系光重合開始剤、α-アミノアセトフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0072】
オキシムエステル系光重合開始剤としては、市販品として、BASFジャパン株式会社製のCGI-325、IRGACURE(登録商標)OXE01、IRGACURE OXE02、株式会社ADEKA製N-1919、アデカアークルズ(登録商標)NCI-831、常州強力電子新材料社製TR-PBG-304などが挙げられる。
【0073】
また、分子内に2個のオキシムエステル基を有する光重合開始剤も好適に用いることができ、具体的には、下記一般式(I)で表されるカルバゾール構造を有するオキシムエステル化合物が挙げられる。
【化1】
(式中、X
1は、水素原子、炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、フェニル基、フェニル基(炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1~8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)、ナフチル基(炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1~8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)を表し、Y
1、Zはそれぞれ、水素原子、炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、ハロゲン基、フェニル基、フェニル基(炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1~8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)、ナフチル基(炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1~8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)、アンスリル基、ピリジル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基を表し、Arは、炭素数1~10のアルキレン、ビニレン、フェニレン、ビフェニレン、ピリジレン、ナフチレン、チオフェン、アントリレン、チエニレン、フリレン、2,5-ピロール-ジイル、4,4’-スチルベン-ジイル、4,2’-スチレン-ジイルを表し、nは0または1の整数である)
【0074】
特に、上記式中、X1、Y1が、それぞれ、メチル基またはエチル基であり、Zがメチルまたはフェニルであり、nが0であり、Arが、フェニレン、ナフチレン、チオフェンまたはチエニレンであるオキシムエステル系光重合開始剤が好ましい。
【0075】
好ましいカルバゾールオキシムエステル化合物として、下記一般式(II)で表すことができる化合物を挙げることもできる。
【0076】
【化2】
(式中、R
3は、炭素原子数1~4のアルキル基、または、ニトロ基、ハロゲン原子もしくは炭素原子数1~4のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基を表す。
R
4は、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、または、炭素原子数1~4のアルキル基もしくはアルコキシ基で置換されていてもよいフェニル基を表す。
R
5は、酸素原子または硫黄原子で連結されていてもよく、フェニル基で置換されていてもよい炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基で置換されていてもよいベンジル基を表す。
R
6は、ニトロ基、または、X
2-C(=O)-で表されるアシル基を表す。
X
2は、炭素原子数1~4のアルキル基で置換されていてもよいアリール基、チエニル基、モルホリノ基、チオフェニル基、または、下記式(III)で示される構造を表す。)
【化3】
【0077】
その他、特開2004-359639号公報、特開2005-097141号公報、特開2005-220097号公報、特開2006-160634号公報、特開2008-094770号公報、特表2008-509967号公報、特表2009-040762号公報、特開2011-80036号公報記載のカルバゾールオキシムエステル化合物等を挙げることができる。
【0078】
オキシムエステル系光重合開始剤を使用する場合の配合量は、感光性樹脂組成物中に、固形分換算で、0.01~10質量%とすることが好ましい。0.01質量%以上とすることにより、銅上での光硬化性がより確実となり、耐薬品性などの塗膜特性が向上する。また、10質量%以下にすると、ハレーション等が発生しにくく、解像性もより良好となる。より好ましくは、0.05~5質量%である。
【0079】
α-アミノアセトフェノン系光重合開始剤としては、具体的には、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパノン-1、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノンなどが挙げられる。市販品としては、IGM Resins社製Omnirad 907、Omnirad 369、Omnirad 379などが挙げられる。
【0080】
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、具体的には2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。市販品としては、IGM Resins社製Omnirad TPO、Omnirad 819などが挙げられる。
【0081】
また、光重合開始剤としてはYueyang Kimoutain Sci-tech Co.,Ltd.製のJMT-784も好適に用いることができる。
【0082】
オキシムエステル系光重合開始剤以外の光重合開始剤を用いる場合の配合量は、感光性樹脂組成物中に、固形分換算で、0.01~10質量%であることが好ましい。0.01質量%以上とすることにより、銅上での光硬化性がより確実となり、耐薬品性などの塗膜特性が向上する。また、10質量%以下とすることにより、十分なアウトガスの低減効果が得られ、さらに硬化被膜表面での光吸収が抑えられ、深部の硬化性も向上する。より好ましくは0.05~8質量%である。
【0083】
上記した光重合開始剤と併用して、光開始助剤または増感剤を用いてもよい。光開始助剤または増感剤としては、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、3級アミン化合物、およびキサントン化合物などを挙げることができる。これらの化合物は、光重合開始剤として用いることができる場合もあるが、光重合開始剤と併用して用いることが好ましい。また、光開始助剤または増感剤は1種類を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0084】
なお、これら光重合開始剤、光開始助剤、および増感剤は、特定の波長を吸収するため、場合によっては感度が低くなり、紫外線吸収剤として機能することがある。しかしながら、これらは組成物の感度を向上させることだけの目的に用いられるものではない。必要に応じて特定の波長の光を吸収させて、表面の光反応性を高め、レジストのライン形状および開口を垂直、テーパー状、逆テーパー状に変化させるとともに、ライン幅や開口径の加工精度を向上させることができる。
【0085】
本発明による感光性フィルムに使用される感光性樹脂組成物は、上記した成分以外にも、ブロック共重合体、着色剤、エラストマー、熱可塑性樹脂等の他の成分が含まれていてもよい。
【0086】
感光性樹脂組成物には、着色剤が含まれていてもよい。着色剤としては、赤、青、緑、黄などの公知の着色剤を使用することができ、顔料、染料、色素のいずれでもよい。但し、環境負荷低減並びに人体への影響の観点からハロゲンを含有しないことが好ましい。
【0087】
また、感光性樹脂組成物には、得られる硬化物に対する柔軟性の付与、硬化物の脆さの改善などを目的にエラストマーを配合することができる。エラストマーは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上の混合物として使用してもよい。
【0088】
また、得られる硬化物の可撓性、指触乾燥性の向上を目的に慣用公知のバインダーポリマーを使用することができる。
【0089】
また、感光性樹脂組成物には、必要に応じてさらに、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの成分を配合することができる。これらは、電子材料の分野において公知の物を使用することができる。また、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤およびレベリング剤の少なくともいずれか1種、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤、防錆剤、蛍光増白剤などのような公知慣用の添加剤類の少なくとも何れか一種を配合することができる。
【0090】
感光性フィルムは、支持フィルムの一方の面に、上記した感光性樹脂組成物を塗布し、乾燥させて形成することができる。感光性樹脂組成物の塗布性を考慮して、感光性樹脂組成物を有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整し、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等で支持フィルムの一方の面に均一な厚さに塗布し、通常、50~130℃の温度で1~30分間乾燥して有機溶剤を揮発させて、タックフリーの塗膜を得ることができる。塗布膜厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後の膜厚で、5~150μm、好ましくは10~60μmの範囲で適宜選択される。
【0091】
使用できる有機溶剤としては、特に制限はないが、例えば、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤などが挙げることができる。このような有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0092】
有機溶剤の揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブンなど(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用い乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法およびノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
【0093】
[保護フィルム]
本発明による感光性フィルム積層体は、上記した感光性フィルムの表面に塵等が付着するのを防止するとともに取扱性を向上させる目的で、感光性フィルムの支持フィルムとは反対の面に保護フィルムが設けられていてもよい。保護フィルムを備える感光性フィルム積層体は、後述するように、感光性フィルム積層体を使用する際に保護フィルムを剥離するが、感光性フィルムが硬化していない状態で保護フィルムが剥離されることになるため、一般的に、感光性フィルムが硬化して硬化被膜となった後に支持フィルムを剥離する場合よりも、保護フィルムにカーボンブラックが残留し易い。本発明においては、上記したように、感光性フィルム中に、カーボンブラックの電荷とは反対の電荷を有するフィラーがカーボンブラックとともに含まれているため、保護フィルムの剥離時においても、感光性フィルム中に効果的にカーボンブラックを留まらせることができる。
【0094】
保護フィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができるが、保護フィルムと感光性フィルムとの接着力が、感光性フィルムとの接着力よりも小さくなるような材料を選定することが好ましい。また、感光性フィルム積層体の使用時に、保護フィルムを剥離し易くするため、保護フィルムの感光性フィルムと接する面に上記したような離型処理を施してもよい。
【0095】
保護フィルムの厚さは、特に制限されるものではないが概ね10~150μmの範囲で用途に応じて適宜選択される。
【0096】
保護フィルムにおいて、感光性フィルムと接する面側の、算術平均表面粗さRaは、1000nm以下が好ましく、750nm以下より好ましく、500nm以下がさらに好ましい。1000nm以下とすることで、表面積が大きくなり過ぎないため、カーボンブラックの脱離のリスクが低減する。なお、算術平均表面粗さRaは、JIS B0601-1994に準拠した測定装置にて測定された値を意味する。
【0097】
<硬化物およびプリント配線板の製造方法>
本発明の感光性フィルム積層体を用いて硬化物が形成される。かかる硬化物の形成方法および回路パターンが形成された基板上に上記硬化物(硬化被膜)を備えたプリント配線板を製造する方法を説明する。一例として、保護フィルムを備えた感光性フィルム積層体を用いてプリント配線板を製造する方法を説明する。先ず、i)上記した感光性フィルム積層体から保護フィルムを剥離して、感光性フィルムを露出させ、ii)前記回路パターンが形成された基板上に、前記感光性フィルム積層体の感光性フィルムを貼合し、iii)前記感光性フィルム積層体の支持フィルム上から露光を行い、iv)前記感光性フィルム積層体から支持フィルムを剥離して現像を行うことにより、前記基板上にパターニングされた感光性フィルムを形成し、v)前記パターニングされた感光性フィルムを光照射ないし熱により硬化させて、硬化被膜を形成する、ことによりプリント配線板が形成される。なお、保護フィルムが設けられていない感光性フィルム積層体を使用する場合は、保護フィルムの剥離工程(i工程)が不要であることは言うまでもない。以下、各工程について説明する。
【0098】
まず、感光性フィルム積層体から保護フィルムを剥離して感光性フィルムを露出させ、回路パターンが形成された基板上に、感光性フィルム積層体の感光性フィルムを貼合する。回路パターンが形成された基板としては、予め回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素樹脂・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキシド・シアネートエステル等を用いた高周波回路用銅張積層版等の材質を用いたもので全てのグレード(FR-4等)の銅張積層版、その他ポリイミドフィルム、PETフィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。
【0099】
感光性フィルム積層体の感光性フィルムを回路基板上に貼合するには、真空ラミネーター等を用いて、加圧および加熱下で貼合することが好ましい。このような真空ラミネーターを使用することにより、感光性フィルムが回路基板に密着するため、気泡の混入がなく、また、基板表面への穴埋め性も向上する。加圧条件は、0.1~2.0MPa程度であることが好ましく、また、加熱条件は、40~120℃であることが好ましい。
【0100】
次に、感光性フィルム積層体の支持フィルム上から露光(活性エネルギー線の照射)を行う。この工程により、露光された感光性樹脂層のみが硬化する。露光工程は特に限定されるものではなく、例えば、接触式(または非接触方式)により、所望のパターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光してもよいが、直接描画装置により所望パターンを活性エネルギー線により露光してもよい。
【0101】
活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ等を搭載し、350~450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えばコンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)も用いることができる。直描機のレーザー光源としては、最大波長が350~410nmの範囲にあるレーザー光を用いていればガスレーザー、固体レーザーどちらでもよい。画像形成のための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には20~800mJ/cm2、好ましくは20~600mJ/cm2の範囲内とすることができる。
【0102】
露光後、感光性フィルム積層体から支持フィルムを剥離する。この工程において、カーボンブラックの残留有無を確認するための支持フィルムが得られる。支持フィルムの剥離方法は、特に限定されるものではなく、粘着テープやエアーブローを利用したオートピーラー等の機械を用いて剥離する方法、人の手で剥離する方法がある。
【0103】
現像工程は特に限定されるものではなく、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法などを用いることができる。また、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類などのアルカリ水溶液が使用できる。
【0104】
次いで、パターニングされた感光性フィルムを、活性エネルギー線(光)照射ないし熱により硬化させて、硬化物(硬化被膜)を形成する。この工程は本硬化または追加硬化と呼ばれるものであり、感光性フィルム中の未反応モノマーの重合を促進させ、さらには、カルボキシル基含有感光性樹脂とエポキシ樹脂とを熱硬化させて、残存するカルボキシル基の量を低減することができる。活性エネルギー線照射は、上記した露光と同様にして行うことができるが、露光時の照射エネルギーよりも強い条件で行うことが好ましい。例えば、500~3000mJ/cm2とすることができる。また、熱硬化は、100~200℃で20~90分間程度の加熱条件で行うことができる。
【0105】
本発明による感光性フィルム積層体は、プリント配線板用絶縁材料や半導体用絶縁材料、半導体用封止材料として好適に使用でき、ソルダーレジスト層や層間絶縁層の形成用としてより好適に使用でき、ソルダーレジスト層形成用としてさらに好適に使用できる。
【実施例】
【0106】
次に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0107】
<帯電状態の確認方法>
はじめに、静電気測定器(株式会社キーエンス製SK-H050)のアース接続端子をD種接地した。アース接続を行った静電気測定器を起動し、「MODE」から「Static Meter」を選択した。次に、「RANGE」キーにて、高精度モードである「Near」を選択した。尚、測定の応答時間は0.8s、測定領域はΦ60mmとした。次に、「START」キーを押し、測定状態にした。静電気測定器を接地している対象に向け、「ZERO」キーを押した。電位がゼロであることを確認し、「STOP」キーを押し、ゼロ点調整を行った。次に、導通が取れていることを確認し、表面処理等がされていない30ml金属缶を絶縁性の台上に置き、金属缶に向けてブロアタイプのイオナイザ(株式会社キーエンス製SJ-F030)を用いて10秒間、除電した。金属匙を使用してカーボンブラックを5g、金属缶の全体に広がるように入れた。この際、金属缶にはサンプル以外は触れないようにした。その後、静電気測定器のレーザーポインタでカーボンブラックの表面に測定距離を合わせ、「START」キーを押して表面の帯電電位を測定し、10秒後に「STOP」キーを押して測定を終了させた。測定は温度25℃、湿度50%の条件下で行い、測定毎にゼロ点調整を行った。それぞれ得られた帯電電位の最大値、最小値、絶対値を確認した。なお、測定は各サンプルにつき3回ずつ行い、3回の絶対値を平均した値により、正負を判定した。フィラーを測定する場合も同様な操作を行って正負を判定した。
【0108】
<カーボンブラックの帯電状態の確認>
平均粒径24nmのカーボンブラックA、および、平均粒径38nmのカーボンブラックBを準備し、前述した方法にて、カーボンブラックの帯電状態を確認した(カーボンブラックA、およびカーボンブラックBはいずれも粉末状)。その結果、カーボンブラックAは正、カーボンブラックBは負に帯電していることを確認した。
【0109】
<フィラーの帯電状態の確認>
前述した方法にて、後記するフィラーの帯電状態を確認した(当該フィラーはいずれも粉末状)。平均粒径0.55μmの球状シリカは負、平均粒径0.28μmの酸化チタンAは正、平均粒径0.25μmの酸化チタンBは負に帯電していることを確認した。
【0110】
<カルボキシル基含有感光性樹脂の調整>
温度計、窒素導入装置兼アルキレンオキシド導入装置および撹拌装置を備えたオートクレーブに、ノボラック型クレゾール樹脂(昭和電工株式会社製ショーノールCRG951、OH当量:119.4)119.4gと、水酸化カリウム1.19gとトルエン119.4gとを仕込み、撹拌しつつ系内を窒素置換し、加熱昇温した。次に、プロピレンオキシド63.8gを徐々に滴下し、125~132℃、0~4.8kg/cm2で16時間反応させた。その後、室温まで冷却し、この反応溶液に89%リン酸1.56gを添加混合して水酸化カリウムを中和し、不揮発分62.1%、水酸基価が182.2g/eq.であるノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキシド反応溶液を得た。得られたノボラック型クレゾール樹脂は、フェノール性水酸基1当量当りアルキレンオキシドが平均1.08モル付加しているものであった。
【0111】
得られたノボラック型クレゾール樹脂のアルキレンオキシド反応溶液293.0gと、アクリル酸43.2gと、メタンスルホン酸11.53gと、メチルハイドロキノン0.18gとトルエン252.9gとを、撹拌機、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、110℃で12時間反応させた。反応により生成した水は、トルエンとの共沸混合物として、12.6gの水が留出した。その後、室温まで冷却し、得られた反応溶液を15%水酸化ナトリウム水溶液35.35gで中和し、次いで水洗した。その後、エバポレーターにてトルエンをジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート118.1gで置換しつつ留去し、ノボラック型アクリレート樹脂溶液を得た。次に、得られたノボラック型アクリレート樹脂溶液332.5gおよびトリフェニルホスフィン1.22gを、撹拌器、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、テトラヒドロフタル酸無水物62.3gを徐々に加え、95~101℃で6時間反応させて、酸価88mgKOH/gの、不揮発分71%としてカルボキシル基含有感光性樹脂ワニス1を得た。
【0112】
<感光性樹脂組成物1~10の調製>
上記のようにして得られたカルボキシル基含有感光性樹脂ワニス1と、アクリレート化合物として感光性モノマーであるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製KAYARAD DPHA)と、熱硬化性成分であるエポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製EPICLON840-S)およびビフェノールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製NC-3000H)と、光重合開始剤としてBASFジャパン株式会社製IRGACURE OXE02と、熱硬化触媒としてメラミンと、カーボンブラックAまたはカーボンブラックBと、フィラーとして、球状シリカ、酸化チタンA、酸化チタンBから選択される各成分と、を下記表1に示す割合(質量部)にて配合し、攪拌機にて予備混合した後3本ロールミルで混練して、感光性樹脂組成物1~10を調製した。
【0113】
【0114】
[実施例1]
<感光性フィルム積層体の作製>
上記のようにして得られた感光性樹脂組成物1にメチルエチルケトン300gを加えて希釈し、攪拌機で15分間撹拌して塗工液を得た。塗工液を、支持フィルムとして、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製ルミラーT60、Ra=0.03μm)上に塗布し、80℃の温度で15分間乾燥し、厚み20μmの感光性フィルムを形成した。次いで、感光性フィルム上に、保護フィルムとして、厚み15μmのポリプロピレンフィルム(王子エフテックス株式会社製アルファンMA-411、Ra=0.4μm)を貼り合わせて、感光性フィルム積層体を作製した。
【0115】
[実施例2]
実施例1において、感光性樹脂組成物1に代えて、感光性樹脂組成物2を使用した以外は、実施例1と同様にして、感光性フィルム積層体2を得た。
【0116】
[実施例3]
実施例1において、感光性樹脂組成物1に代えて、感光性樹脂組成物3を使用した以外は、実施例1と同様にして、感光性フィルム積層体3を得た。
【0117】
[実施例4]
実施例1において、感光性樹脂組成物1に代えて、感光性樹脂組成物4を使用した以外は、実施例1と同様にして、感光性フィルム積層体4を得た。
【0118】
[実施例5]
実施例1において、感光性樹脂組成物1に代えて、感光性樹脂組成物5を使用した以外は、実施例1と同様にして、感光性フィルム積層体5を得た。
【0119】
[実施例6]
実施例1において、感光性樹脂組成物1に代えて、感光性樹脂組成物6を使用した以外は、実施例1と同様にして、感光性フィルム積層体6を得た。
【0120】
[実施例7]
実施例1において、感光性樹脂組成物1に代えて、感光性樹脂組成物7を使用した以外は、実施例1と同様にして、感光性フィルム積層体7を得た。
【0121】
[比較例1]
実施例1において、感光性樹脂組成物1に代えて、感光性樹脂組成物8を使用した以外は、実施例1と同様にして、感光性フィルム積層体8を得た。
【0122】
[比較例2]
実施例1において、感光性樹脂組成物1に代えて、感光性樹脂組成物9を使用した以外は、実施例1と同様にして、感光性フィルム積層体9を得た。
【0123】
[比較例3]
実施例1において、感光性樹脂組成物1に代えて、感光性樹脂組成物10を使用した以外は、実施例1と同様にして、感光性フィルム積層体10を得た。
【0124】
<試験基板の作製>
FR-4銅張積層板(100mm×150mm×0.8mmt、両面銅箔、銅箔の厚みは両面ともに18μm)表面をメック株式会社製のCZ8101により化学研磨し、基板の化学研磨された表面に、上記のようにして得られた各感光性フィルム積層体から保護フィルムを剥離して露出した感光性フィルムの露出面を貼り合わせ、続いて、真空ラミネーター(株式会社名機製作所製 MVLP-500)を用いて加圧度:0.8Mpa、70℃、1分、真空度:133.3Paの条件で加熱ラミネートして、基板と感光性フィルムとを密着させて試験基板を得た。
【0125】
<カーボンブラックの残留有無の評価>
上記のようにして作製した試験基板から支持フィルムを手で約1秒で剥離し、剥離した支持フィルム、および上記<試験基板の作製>において剥離した保護フィルムを、それぞれ約1×1cm角に切断し、支持フィルムおよび保護フィルムの感光性樹脂と接していた面にPt蒸着をした。Pt蒸着をした面をSEM(走査型電子顕微鏡、日本電子株式会社製JSM-7600)にて観察し、支持フィルムおよび保護フィルムにカーボンブラックが残留しているかどうか確認した。それぞれのフィルムについて、任意の箇所を、加速電圧10kV、測定倍率5万倍で観察を行い、以下の基準にて評価した。
○:測定面積1μm2中にカーボンブラックの粒子が検出されない
×:測定面積1μm2中にカーボンブラックの粒子が1個以上検出される
評価結果は下記の表2に示されるとおりであった。
【0126】
<解像性評価>
カーボンブラックが支持フィルムおよび保護フィルムに残留してない実施例1~7については、さらに解像性評価を行った。上記<試験基板の作製>における加熱ラミネート後、ショートアーク型高圧水銀灯搭載の平行光露光装置を用いて、露光マスクを介して、支持フィルムのポリエチレンテレフタレートフィルム面側から、SRO(ソルダーレジスト開口部)200μmとなるように設計したネガパターンを用いて露光をそれぞれした後、支持フィルムを手で約1秒で剥離して感光性フィルムを露出させた。なお、露光量は、感光性フィルムに接する支持フィルム上から、Stouffer41段を用いて露光した際に7段となる露光量とした。その後、露出した感光性フィルムの露出表面に対し、1重量%Na2CO3水溶液を用いて、30℃、スプレー圧2kg/cm2の条件で60秒現像を行い、パターニングした。続いて、高圧水銀灯を備えたUVコンベア炉にて1J/cm2の露光量でパターニングされた感光性フィルムに照射した後、160℃で60分加熱して追加硬化されて硬化被膜を形成し、基板上に硬化被膜が形成された試験基板を作製した。作製した実施例1~7の各試験基板の開口径200μmの開口部をSEMにより観察し、以下の基準にて評価した。
○:ハレーションおよびアンダーカットが発生せず、良好な開口形状が得られる
×:ハレーションまたはアンダーカットが発生し、良好な開口形状が得られない
評価結果は下記の表2に示されるとおりであった。
【0127】
<電気特性評価>
カーボンブラックが支持フィルムおよび保護フィルムに残留していない実施例1~7については、さらに電気特性評価を行った。ライン/スペース=100/100μmのクシ型電極パターンを用いた以外は、解像性評価と同様にして試験基板を作製し、電気特性評価を行った。評価は、温度130℃、湿度85%の雰囲気下の高温高湿槽に入れ、電圧5.5Vを印加し、槽内HAST試験にて行い、所定時間経過時の槽内絶縁抵抗値を測定し、HAST耐性を評価した。判定基準は以下のとおりである。
○:100時間以上で、槽内絶縁抵抗値が106Ω未満あるいはショート発生。
×:100時間未満で、槽内絶縁抵抗値が106Ω未満あるいはショート発生。
評価結果は下記の表2に示されるとおりであった。
【0128】
【0129】
上記結果から明らかなように、感光性フィルム中に少なくともカーボンブラックを含み、さらにカーボンブラックとは反対の電荷を有するフィラーを含んでなる感光性フィルム積層体は、カーボンブラックの残留有無の評価結果より感光性フィルム中に効果的にカーボンブラックを留まらせることができ、その結果、剥離される支持フィルムおよび保護フィルムにカーボンブラックが残留しなくなることにより作業環境を悪化させないことに加えて、他の評価結果より解像性、電気特性も良好であることがわかる。