IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 能美防災株式会社の特許一覧

特許7170443警報装置及びその警報音の周波数の設定方法
<>
  • 特許-警報装置及びその警報音の周波数の設定方法 図1
  • 特許-警報装置及びその警報音の周波数の設定方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】警報装置及びその警報音の周波数の設定方法
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20221107BHJP
   G08B 23/00 20060101ALI20221107BHJP
   G10K 15/04 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
G08B17/00 C
G08B23/00 520D
G10K15/04 304F
G10K15/04 304D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018136054
(22)【出願日】2018-07-19
(65)【公開番号】P2020013397
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002169
【氏名又は名称】彩雲国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 康之
(72)【発明者】
【氏名】樋口 燿
【審査官】大橋 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-221405(JP,A)
【文献】国際公開第2018/056358(WO,A1)
【文献】特開2009-104496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 17/00-25/00
G10K 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防火対象物で発生した火災を報知するための警報音を発する警報装置であって、音響特性が異なる複数のタイプのある警報装置において、
前記警報音は、複数の周波数がそれぞれ一定の固定音として順次発せられるものを含み、
前記複数の周波数は、前記複数のタイプの警報装置のうち2つ以上に共通して使用され、相対的に音圧が最も低くなるタイプの警報装置における、そのピークとなる音圧に対応する周波数を基準に、その周波数を最低又は最高の周波数とする範囲内から決定されることを特徴とする警報装置。
【請求項2】
防火対象物で発生した火災を報知するための警報音を発する警報装置であって、筐体と回路基板とが共通するが音響特性が異なる複数のタイプのある警報装置において、
前記警報音は、複数の周波数がそれぞれ一定の固定音として順次発せられるものと、時間経過に伴って周波数が変化するスイープ音と、を含み、前記固定音の間に前記スイープ音が発せられ
前記複数の周波数は、前記複数のタイプの警報装置のうち2つ以上に共通して使用されることを特徴とする警報装置。
【請求項3】
防火対象物で発生した火災を報知するための警報音を発する警報装置であって、筐体と回路基板とが共通するが音響特性が異なる複数のタイプのある警報装置において、
前記警報音は、複数の周波数がそれぞれ一定の固定音として順次発せられるものを含み、
前記複数の周波数は、前記複数のタイプの警報装置のうち2つ以上に共通して使用され、
前記固定音の複数の周波数の間には、次式によって求められる値W(Hz)を最大とする周波数幅があることを特徴とする警報装置。
【数1】
ここで、式中のnは整数である。
【請求項4】
防火対象物で発生した火災を報知するための警報音を発し、音響特性が異なる複数のタイプのある警報装置における警報音の周波数の設定方法であって、
ここで、前記警報装置は、前記警報音が、複数の周波数がそれぞれ一定の固定音として順次発せられるものを含み、前記複数の周波数が、前記複数のタイプの警報装置のうち2つ以上に共通して使用されるものであり、
前記固定音の複数の周波数を決定する段階として、
相対的に音圧が最も低くなるタイプの警報装置における、そのピークとなる音圧に対応する周波数を基準に、その周波数を最低又は最高の周波数とする範囲内から、前記複数の周波数を決定する段階、又は、
相対的に音圧が最も低くなるタイプの警報装置における、そのピークとなる音圧に対応する周波数を基準に、その周波数が間にある周波数の範囲内から、前記複数の周波数を決定する段階、を含むことを特徴とする警報音の周波数の設定方法。
【請求項5】
防火対象物で発生した火災を報知するための警報音を発する警報装置であって、音響特性が異なる複数のタイプのある警報装置において、
前記警報音は、複数の周波数がそれぞれ一定の固定音として順次発せられるものを含み、
前記複数の周波数は、前記複数のタイプの警報装置のうち2つ以上に共通して使用され、相対的に音圧が最も低くなるタイプの警報装置における、そのピークとなる音圧に対応する周波数を基準に、その周波数が間にある周波数の範囲内から決されることを特徴とする警報装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、警報音を発して火災発生の警報を行う警報装置及びその警報音の周波数の設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火災発生の警報を行う警報装置には種々のものがあるが、警報音を発して警報を行うものとして、「非常警報設備」と呼ばれるものがある。
【0003】
非常警報設備は、起動装置、音響装置、表示灯を備え、火災が発生したときに、起動装置が操作されると、音響装置から警報音を発するように構成される(例えば、特許文献1参照)。なお、表示灯は、赤色に点灯して起動装置の位置を示すためのものである。
【0004】
そして、非常警報設備においては、警報音として、周波数が一定の固定音と、時間経過に伴って周波数が変化するスイープ音とが用いられる。
【0005】
ここで、非常警報設備には、非常電源(二次電池)をさらに備える複合装置と呼ばれるものの場合、起動装置、音響装置、表示灯を備える前記の「普通型」のものの他に、増設音響装置と呼ばれる「増設型」のものがある。増設音響装置は、警報音を発する音響装置はあるが、起動装置と表示灯はないものであり、他の非常警報設備に連動して警報音を発するものである。さらに、非常警報設備は、いずれも、筐体が設置面に設置されることにより防火対象物に設置されるものであるが、設置面に対する筐体の設置の態様として、普通型にも増設型にも、筐体が設置面に埋め込まれるように設置される「埋込型」のものと、筐体が設置面から露出するように設置される「露出型」のものとがある。また、非常警報設備において、普通型、増設型共に、屋内にも屋外にも設置されるものであり、屋内用の防水構造のないものと、屋外用の防水構造のある「防雨型」のものがある(「防雨型」として、例えば、特許文献1参照)。なお、増設型は、屋外だけに設置されるものであり、防水構造のある「防雨型」のものだけである。
【0006】
つまり、非常警報設備には、「複合装置」と呼ばれるものの場合、装置の構造の違い(防水構造の有無の違いと表示灯の有無の違い)と、設置の態様の違い(筐体の埋め込みと露出の違い)とにより、例えば、装置の構造が普通型で、設置の態様が埋込型の組み合わせ(以下、「普通型・埋込型」という。)、装置の構造が普通型で、設置の態様が露出型の組み合わせ(以下、「普通型・露出型」という。)、装置の構造が普通型の防雨型で、設置の態様が埋込型の組み合わせ(以下、「防雨型・埋込型」という。)、装置の構造が普通型の防雨型で、設置の態様が露出型の組み合わせ(以下、「防雨型・露出型」という。)、装置の構造が増設型で、設置の態様が埋込型の組み合わせ(以下、「増設型・埋込型」という。)、装置の構造が増設型で、設置の態様が露出型の組み合わせ(以下、「増設型・露出型」という。)等の複数のタイプがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平10-11679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非常警報設備には、前記の通り、複数のタイプがある。筐体と回路基板は通常、各タイプに共通の同一のものが使用される。また、警報音の周波数は、固定音の周波数もスイープ音の周波数(範囲)も、基板上で設定される。すなわち、警報音の周波数は通常、固定音の周波数もスイープ音の周波数も、各タイプに共通の同一のものが使用される。
【0009】
なお、非常警報設備において、警報音は90dB以上の音圧(以下、「音圧レベル」ともいう。)のものとする必要がある(「非常警報設備の基準(消防庁告示)」)。
【0010】
従来、固定音の周波数は、具体的には、使用に適した帯域におけるピークとなる音圧レベルに対応する周波数の中心値に設定していた。その周波数は本来、各タイプで音圧レベルがピークとなる周波数とするのが望ましい。
【0011】
しかしながら、装置の構造の違いと設置の態様の違いとにより、各タイプで、音響特性は異なり、周波数ごとの音圧レベルは異なる。すなわち、各タイプで固定音の音圧レベルがピークとなる周波数は異なる。
【0012】
そのため、従来、固定音の周波数として設定されていたものには、各タイプの固定音の音圧レベルがピークとなる周波数とは異なるという問題があり、各タイプの固定音の音圧レベルがピークよりも低くなるという問題がある。
【0013】
固定音の周波数を各タイプのそれぞれで、固定音の音圧レベルがピークとなるものに設定することにすれば、前記の問題を解消することはできるが、製造が煩雑になるという別の問題を生じさせることになる。
【0014】
ここで、非常警報設備には、非常電源のない「一体型」と呼ばれるものもある。また、非常警報設備と同様の構造を有するものとして、自動火災報知設備に設けられ、地区音響装置と発信機を備える機器収容箱と呼ばれるものもある。一体型の非常警報設備や機器収容箱においても、前記で説明したのと同様の問題がある。
【0015】
この発明は、以上の事情に鑑み、音響特性が異なる複数のタイプのある警報装置において、警報音の音圧を上げることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明は、防火対象物で発生した火災を報知するための警報音を発する警報装置であって、音響特性が異なる複数のタイプのある警報装置において、前記警報音は、複数の周波数がそれぞれ一定の固定音として順次発せられるものを含み、前記複数の周波数は、前記複数のタイプの警報装置のうち2つ以上に共通して使用され、相対的に音圧が最も低くなるタイプの警報装置における、そのピークとなる音圧に対応する周波数を基準に、その周波数を最低又は最高の周波数とする範囲内から決定されることを特徴とする警報装置である。
【0017】
また、この発明は、防火対象物で発生した火災を報知するための警報音を発する警報装置であって、筐体と回路基板とが共通するが音響特性が異なる複数のタイプのある警報装置において、前記警報音は、複数の周波数がそれぞれ一定の固定音として順次発せられるものと、時間経過に伴って周波数が変化するスイープ音と、を含み、前記固定音の間に前記スイープ音が発せられ、前記複数の周波数は、前記複数のタイプの警報装置のうち2つ以上に共通して使用されることを特徴とする警報装置である。
【0018】
また、この発明は、防火対象物で発生した火災を報知するための警報音を発する警報装置であって、筐体と回路基板とが共通するが音響特性が異なる複数のタイプのある警報装置において、前記警報音は、複数の周波数がそれぞれ一定の固定音として順次発せられるものを含み、前記複数の周波数は、前記複数のタイプの警報装置のうち2つ以上に共通して使用され、前記固定音の複数の周波数の間には、次式によって求められる値W(Hz)を最大とする周波数幅があることを特徴とする警報装置である。
【数1】
ここで、式中のnは整数である。
【0019】
また、この発明は、防火対象物で発生した火災を報知するための警報音を発し、音響特性が異なる複数のタイプのある警報装置における警報音の周波数の設定方法であって、ここで、前記警報装置は、前記警報音が、複数の周波数がそれぞれ一定の固定音として順次発せられるものを含み、前記複数の周波数が、前記複数のタイプの警報装置のうち2つ以上に共通して使用されるものであり、前記固定音の複数の周波数を決定する段階として、相対的に音圧が最も低くなるタイプの警報装置における、そのピークとなる音圧に対応する周波数を基準に、その周波数を最低又は最高の周波数とする範囲内から、前記複数の周波数を決定する段階、又は、相対的に音圧が最も低くなるタイプの警報装置における、そのピークとなる音圧に対応する周波数を基準に、その周波数が間にある周波数の範囲内から、前記複数の周波数を決定する段階、を含むことを特徴とする警報音の周波数の設定方法である。
【0020】
また、この発明は、防火対象物で発生した火災を報知するための警報音を発する警報装置であって、音響特性が異なる複数のタイプのある警報装置において、前記警報音は、複数の周波数がそれぞれ一定の固定音として順次発せられるものを含み、前記複数の周波数は、前記複数のタイプの警報装置のうち2つ以上に共通して使用され、相対的に音圧が最も低くなるタイプの警報装置における、そのピークとなる音圧に対応する周波数を基準に、その周波数が間にある周波数の範囲内から決されることを特徴とする警報装置である。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、音響特性が異なる複数のタイプのある警報装置において、警報音として固定音を、複数の周波数で順次発することができ、複数の音圧で順次発することができる。
【0022】
したがって、この発明によれば、音響特性が異なる複数のタイプのある警報装置において、警報音の音圧を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】この発明が適用可能な装置の一例を示した図であり、非常警報設備(複合装置)の(a)が正面図、(b)が側面図である。
図2】この発明が適用可能な装置の音響特性が異なる複数のタイプのものにおける固定音の周波数と音圧レベルの関係を示したグラフである。なお、グラフは、測定値をそのまま表したものではなく、各タイプの音圧レベルの変化を単純化して表したものである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明の実施形態について、図面を参照しつつ、非常警報設備(複合装置)に適用する場合を例に説明する。なお、この発明は、非常警報設備(一体型)および地区音響装置と発信機を備える機器収容箱にも適用可能である。
【0025】
[非常警報設備の基本構成]
まず、図1を参照しつつ、この発明が適用可能な装置の一例である非常警報設備(複合装置)について簡単に説明する。
【0026】
図1において、非常警報設備1は、筐体2と、起動装置3と、音響装置4と、表示灯5とを備えると共に、複合装置であるので、非常用電源(二次電池)を筐体2に内蔵してさらに備える(図示省略)。
【0027】
非常警報設備1において、筐体2は、各機器が内蔵されるボックス形状をなす部分の前面にパネル2aを有する。パネル2aには、起動装置3の操作部となる押しボタンスイッチ3aと、音響装置4の音孔4aと、表示灯5のグローブ5aとが設けられる。
【0028】
非常警報設備1は、防火対象物で発生した火災を報知するため、火災発生時、起動装置3の押しボタンスイッチ3aが押されることにより、装置が起動し、音響装置4から音孔4aを通じて警報音を発する。
【0029】
ここで、非常警報設備1は、装置の構造としては、前記の「普通型」に該当する。すなわち、非常警報設備1に対し、防水構造を加えたものが前記の「防雨型」に該当し、起動装置3と表示灯5のないものとしたのが前記の「増設型(増設音響装置)」に該当する。さらに、それぞれの設置の態様として、設置面に対し、筐体2のボックス形状をなす部分が埋め込まれる(パネル2aは露出する)前記の「埋込型」に該当するものと、そのボックス形状をなす部分が露出する前記の「露出型」に該当するものとがある。
【0030】
つまり、非常警報設備1には、「増設型(増設音響装置)」を含めて、装置の構造の違いと設置の態様の違いにより、前記の「普通型・埋込型」、「普通型・露出型」、「防雨型・埋込型」、「防雨型・露出型」、「増設型・埋込型」、「増設型・露出型」等に該当する複数のタイプがある。さらに、各タイプにおける筐体と回路基板は同一のものが共通して使用されるが、前記で説明した通り、装置の構造の違いと設置の態様の違いにより、各タイプで、警報音に対する音響特性は異なり、警報音の周波数ごとの音圧レベルは異なる。
【0031】
[複数の周波数の固定音]
非常警報設備1において、警報音は、複数の周波数がそれぞれ一定の固定音として順次発せられるものを含んでいる。それら固定音の複数の周波数は、例えば、前記の音響特性が異なる各タイプのような複数のタイプのうちの少なくとも2つに共通のものとして使用される。これにより、音響特性が異なる複数のタイプにおいて、固定音を、複数の周波数で順次発することができ、複数の音圧レベルで順次発することができる。なお、「順次」とは順番である必要はなく、複数の周波数を異なるタイミングで使用していくことである。
【0032】
ここで、図2は、音響特性が異なる複数のタイプにおける固定音の周波数と音圧レベルの関係を示したグラフである。このグラフは、非常警報設備の前記の各タイプにおける測定値に基づくものであるが(音圧レベルは騒音計により測定)、前記の通り、測定値をそのまま表したものではなく、各タイプの音圧レベルの変化を測定値に基づいて単純化して表したものである。各タイプにおける音圧レベルがピークとなる周波数が縦の破線である。
【0033】
図2において、グラフ1は普通型・埋込型のタイプに、グラフ2は防雨型・埋込型のタイプに、グラフ3は増設型・埋込型のタイプに、グラフ4は普通型・露出型のタイプに、グラフ5は防雨型・露出型のタイプに、グラフ6は増設型・露出型のタイプにそれぞれ対応する。
【0034】
なお、固定音の周波数を選択する帯域として適しているのは、通常、例えば、100Hz~4000Hzである。図2は、その帯域中、1900Hz~2200Hzの範囲における音圧レベルの変化を示している。図2の周波数の範囲内において、各タイプの音圧レベルは90dB以上の基準を満たしているが、ピークとなる音圧レベルに対応する周波数はそれぞれ異なる(縦の破線参照)。固定音の複数の周波数は、例えば、前記の帯域から選択されるが、その詳細な方法は後記で説明する。
【0035】
[固定音の基準周波数]
各タイプのピークとなる音圧レベルが最も低いタイプ(タイプの数が2つの場合、ピークとなる音圧レベルが低い方のタイプ。以下、同じ。)における、その最も低い音圧レベルに対応する周波数(近接する周波数を含む。)を、固定音の複数の周波数の基準周波数として選択することができる。そのようにすることで、音圧レベルが最も低いタイプにおいて、その基準として選択する周波数を音圧レベルがピークとなる周波数に対応させることができる。
【0036】
この基準周波数を基準として、固定音の複数の周波数は、所定の周波数の範囲内から選択することができる。具体的には、固定音の複数の周波数は、例えば、基準周波数が最高又は最低となる所定の周波数の範囲内から選択することができ、また、基準周波数が間にある所定の周波数の範囲内から選択することができる。
【0037】
図2のグラフは、ピークとなる音圧レベルが最も低いグラフ6のタイプにおける、そのピークとなる音圧レベルに対応する周波数を、固定音の複数の周波数の基準周波数として選択する場合を示している。そして、その基準周波数を、固定音の複数の周波数のうちの1つであり、基準周波数側の周波数である第1の鳴動周波数として選択する場合を示している(縦の実線参照)。第1の鳴動周波数は、グラフ1~5の他のタイプにおいては、それぞれの音圧レベルがピークとなる周波数とは異なっている。しかしながら、第1の鳴動周波数に対応する音圧レベルは、いずれも、グラフ6のタイプの音圧レベルよりも高くなっている。図2のグラフ上、第1の鳴動周波数は、例えば、2070Hz程度であるが、第1の鳴動周波数として実際に使用する周波数は、実際の測定値に基づいて決定される。なお、図2のグラフの例の場合、基準周波数自体を固定音の複数の周波数のうちの基準周波数側の周波数として選択しているが、基準周波数自体ではなく、それに近接する周波数を基準周波数側の周波数として選択してもよい。
【0038】
[固定音の周波数幅]
固定音の複数の周波数間の周波数幅(周波数差)は、人の聴覚では違いが判別できない程度の範囲内とすることができる。すなわち、固定音の複数の周波数は、人の聴覚では違いが判別できない程度の周波数幅の範囲内から選択することができる。そのようにすることで、固定音を複数の周波数で発するようにしていても、人が音程の違いを気が付き難くすることができ、違和感を覚えるのを防ぐことができる。
【0039】
ここで、人の聴覚では違いが判別できない程度の周波数幅について説明する。
【0040】
まず、(1)ISOにより1953年に規定された基準周波数(ピアノの49鍵目のラの周波数)は440Hzである。(2)1オクターブ高い音は周波数が倍である。(3)1オクターブ低い音は周波数が半分である。(4)1オクターブを均等な周波数比で分立することで音律とすることができる(12平均律)。これら4点より、ある任意の周波数xHzは次式の音階の間に存在するといえる(式中、nは整数である。)。
【数2】
発明者等による実験によれば、固定音の周波数が2270Hzである場合、その周波数から20Hz程度の差までは明確な違いを感じ取るのは難しかった(実験は、非常警報設備1と同様の装置を使用して行い、必要な測定は騒音計により行った。)。
実験の結果より、音律間aを等分した際に20Hzとなる値を求めると、次式の通りとなる。
【数3】
そして、周波数幅W(Hz)は音階の幅をaで割ったものであるため、任意の周波数xが440×2n/12 ≦x<440×2(n+1)/12の範囲にあるとき、周波数幅W(Hz)は、次式によって表すことができる。
【数4】
したがって、人の聴覚では違いが判別できない程度の周波数幅の最大値は、前記の式によって求められる周波数幅W(Hz)ということができる。
【0041】
つまり、固定音の複数の周波数間の周波数幅は、基準周波数を基準に、前記の式によって求められる、人の聴覚では違いが判別できない程度の周波数幅W(Hz)を最大値とする範囲内で選択することができる。具体的には、例えば、基準周波数が最低又は最高となる周波数幅W(Hz)を最大値とする範囲内で選択するか、基準周波数が間にあると共に、最低と最高の間が周波数幅W(Hz)を最大値とする範囲内で選択することができる。
【0042】
なお、前記の式によって求められる周波数幅W(Hz)は、最大値であり、それ以下の20Hz以下で任意の値とすることができ、例えば、15Hzや10Hzとすることができる。
【0043】
そして、図2のグラフの例は、基準周波数でもある第1の鳴動周波数が最高となる、周波数幅W(Hz)を最大値とする範囲内から、複数の周波数のうちの他のもう1つの周波数であり、基準周波数側ではない側の周波数である第2の鳴動周波数を選択する場合を示している。具体的には、第1の鳴動周波数との間の周波数幅を15Hzとし、その周波数分、第1の鳴動周波数よりも小さい、例えば、2055Hz程度を第2の鳴動周波数として選択する場合を示している。なお、図2のグラフの例は、固定音の複数の周波数として、2つの周波数を使用しているが、3つ以上の周波数を使用してもよい。
【0044】
図2のグラフの例の場合、グラフ1~5のタイプにおいては、いずれも、音圧レベルが第1の鳴動周波数に対応するものよりも第2の鳴動周波数に対応するものの方がピークに近づいている。すなわち、音圧レベルが第1の鳴動周波数の固定音よりも第2の鳴動周波数の固定音の方が高くなっている。グラフ6においては、音圧レベルが第1の鳴動周波数の固定音の方が第2の鳴動周波数の固定音よりも高いが、第1の鳴動周波数の固定音の音圧レベルはピークの音圧レベルである。
【0045】
つまり、図2のグラフの例は、前記のように固定音の複数の周波数を選択することで、固定音のピークとなる音圧レベルが最も低いグラフ6のタイプにおいては、第1の鳴動周波数の固定音をピークの音圧レベルで発することができると共に、他のグラフ1~5のタイプにおいては、いずれも、第2の鳴動周波数の固定音を第1の鳴動周波数の固定音よりもピークに近づけることができ、より高い音圧レベルで発することができることを示している。
【0046】
固定音のピークとなる音圧レベルが最も低いタイプにおける、その音圧レベルに対応する周波数と、他のタイプにおける、固定音のピークとなる音圧レベルに対応する周波数との関係によって、固定音の複数の周波数を、基準周波数が最低又は最高となる所定の周波数幅の範囲内で選択するか、基準周波数が間にある所定の周波数幅の範囲内で選択するかを選ぶことができる。
【0047】
例えば、図2のグラフの例のように、固定音のピークとなる音圧レベルが最も低いタイプに対し、他のタイプにおける固定音のピークとなる音圧レベルに対応する周波数がいずれも低い側にある場合には、固定音の複数の周波数を、基準周波数が最高となる所定の周波数幅の範囲内で選択する。逆に、他のタイプにおける固定音のピークとなる音圧レベルに対応する周波数がいずれも高い側にある場合には、固定音の複数の周波数を、基準周波数が最低となる所定の周波数幅の範囲内で選択する。いずれの場合においても、前記のように、固定音のピークとなる音圧レベルが最も低いタイプにおいては、基準周波数側の周波数の固定音をピーク又はそれに近い音圧レベルで発することができると共に、他のタイプにおいては、基準周波数側ではない側の周波数の固定音を、基準周波数側の周波数の固定音よりも各ピークに近づけることができ、より高い音圧レベルで発するようにすることができる。なお、固定音のピークとなる音圧レベルが最も低いタイプに対し、他のタイプにおける固定音のピークとなる音圧レベルに対応する周波数が低い側と高い側の両方にある場合には、その分布に応じて適宜、固定音の複数の周波数を、基準周波数が最低又は最高となる所定の周波数幅の範囲内で選択するか、基準周波数が間にある所定の周波数幅の範囲内で選択すればよい。
【0048】
[固定音の複数の周波数の設定方法]
この発明においては、固定音の複数の周波数の設定方法としては、例えば、次の段階のいずれかを含むものとすることができる。
段階S:相対的に音圧が最も低くなるタイプの警報装置における、そのピークとなる音圧に対応する周波数を基準に、その周波数を最低又は最高の周波数とする範囲内から、前記複数の周波数を決定する。
段階S’:相対的に音圧が最も低くなるタイプの警報装置における、そのピークとなる音圧に対応する周波数を基準に、その周波数が間にある範囲内から、前記複数の周波数を決定する。
そして、段階S及びS’のいずれにおいても、前記の周波数幅W(Hz)を求める式によって求めることのできる周波数幅の範囲内から決定することができる。
【0049】
[スイープ音]
警報音として、前記の複数の周波数の固定音の間には、時間経過に伴って周波数が変化するスイープ音(例えば、500Hz~4000Hzで変化するスイープ音)を発するようにすることができる。そのようにすることにより、人が固定音の音程の違いをより気が付き難くすることができ、違和感を覚えるのをより防ぐことができる。例えば、図2のグラフの例のように、固定音の周波数を2つにする場合には、第1の鳴動周波数の固定音、スイープ音、第2の鳴動周波数の固定音、スイープ音の順で、それを一単位として繰り返して発するようにすることができる。なお、各音の間にはもちろん、無音状態を介在させてもよい。
【0050】
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変更をすることが可能である。
【符号の説明】
【0051】
1:非常警報設備 2:筐体 2a:パネル 3:起動装置
3a:押しボタンスイッチ 4:音響装置 4a:音孔 5:表示灯
5a:グローブ
グラフ1:普通型・埋込型 グラフ2:防雨型・埋込型
グラフ3:増設型・埋込型 グラフ4:普通型・露出型
グラフ5:防雨型・露出型 グラフ6:増設型・露出型
図1
図2