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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】ダンパ装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/139 20060101AFI20221107BHJP
   F16F 15/30 20060101ALI20221107BHJP
   F16F 15/134 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
F16F15/139 C
F16F15/30 U
F16F15/30 W
F16F15/134 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018138128
(22)【出願日】2018-07-24
(65)【公開番号】P2020016264
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】上原 宏
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-101785(JP,A)
【文献】特開平04-272545(JP,A)
【文献】特開昭62-233538(JP,A)
【文献】特開昭62-002038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/139
F16F 15/30
F16F 15/134
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転部材と
前記第1回転部材と相対回転可能に配置された第2回転部材と、
前記第1回転部材に対して前記第2回転部材を回転自在に支持する軸受と、
前記第1回転部材からのトルクを前記第2回転部材側に伝達する複数の弾性部材を有するダンパ部と、
前記軸受の径方向外方に配置され、前記第1回転部材と前記第2回転部材との相対回転時に第1ヒステリシストルクを発生する第1ヒステリシストルク発生機構と、
を備え、
前記第1回転部材は、それぞれ円板状の第1プレート及び第2プレートを有し、前記第2プレートは、前記第2回転部材が配置されている前記第1プレートの軸方向第1側に配置され、外周部が前記第1プレートの外周部に固定されており、
前記第1ヒステリシストルク発生機構は、前記第2プレートと前記第2回転部材との軸方向間に配置されている、
ダンパ装置。
【請求項2】
内部に粘性流体が充填されるチャンバを有する第1回転部材と
前記第1回転部材と相対回転可能に配置された第2回転部材と、
前記第1回転部材に対して前記第2回転部材を回転自在に支持する軸受と、
前記第1回転部材からのトルクを前記第2回転部材側に伝達する複数の弾性部材を有するダンパ部と、
前記ダンパ部の軸方向第1側であって前記軸受の径方向外方に配置され、前記第1回転部材と前記第2回転部材との相対回転時に第1ヒステリシストルクを発生する第1ヒステリシストルク発生機構と、
前記ダンパ部の軸方向第2側であって前記第1ヒステリシストルク発生機構の径方向内方に配置され、所定の角度範囲内において第2ヒステリシストルクを発生する第2ヒステリシストルク発生機構と、
前記チャンバに外部から流体が侵入するのを遮断するシール部と、
を備えたダンパ装置。
【請求項3】
前記軸受は、前記複数の弾性部材の径方向内方に配置されている、請求項1又は2に記載のダンパ装置。
【請求項4】
前記第1ヒステリシストルク発生機構は、
摩擦面を有する環状の摩擦部材と、
前記摩擦部材の摩擦面を、前記第1回転部材及び前記第2回転部材の一方に押圧するための付勢部材と、
を有する、
請求項1から3のいずれかに記載のダンパ装置。
【請求項5】
前記第1回転部材及び前記第2回転部材の一方は、前記摩擦部材の摩擦面が押圧される被押圧面を有し、
前記摩擦面及び前記被押圧面は屈曲している、
請求項4に記載のダンパ装置。
【請求項6】
前記第2回転部材は、前記第2プレートの前記軸方向第1側に配置された円板状の第3プレートを有し、
前記第1ヒステリシストルク発生機構は、前記第2プレートと前記第3プレートとの軸方向間に配置されている、
請求項1に記載のダンパ装置。
【請求項7】
前記ダンパ部の弾性部材は、複数の外周側弾性部材と、前記外周側弾性部材の径方向内方に配置された複数の内周側弾性部材と、を有し、
前記ダンパ部は、前記外周側弾性部材と前記内周側弾性部材とを連結する中間部材を有し、
前記第1回転部材と前記中間部材との間に配置され、前記第1回転部材と前記中間部材との相対回転時に第3ヒステリシストルクを発生する第3ヒステリシストルク発生機構をさらに備えている、
請求項1からのいずれかに記載のダンパ装置。
【請求項8】
前記第1ヒステリシストルク発生機構の径方向内方に設けられ、前記チャンバと前記チャンバ外部とを連通する通気路をさらに備えた、
請求項2に記載のダンパ装置。
【請求項9】
前記通気路に設けられ、前記チャンバ外部から内部への通気を許可し、逆を禁止する一方向弁をさらに備えた、請求項に記載のダンパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンのクランクシャフトには、エンジンの燃焼変動に起因する振動を吸収するために、フライホイールが装着されている。さらに、フライホイールの軸方向トランスミッション側にはクラッチ装置が設けられている。クラッチ装置はクラッチディスク組立体及びクラッチカバー組立体を有している。
【0003】
クラッチディスク組立体は、捩り振動を吸収・減衰するためのダンパ装置を有している。クラッチカバー組立体は、クラッチディスク組立体の摩擦連結部をフライホイールに押圧する。
【0004】
一方、特許文献1に示されるように、ダンパ装置を、フライホイール組立体に設けた構造も知られている。特許文献1のフライホイール組立体は、第1フライホイール及び第2フライホイールを有している。第1フライホイールは、エンジンのクランクシャフトに固定される。第2フライホイールは、第1フライホイールに回転自在に支持されており、第1フライホイールとダンパ装置を介して回転方向に弾性的に連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-247723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、ダンパ装置にはヒステリシストルク発生機構が設けられている。特許文献1のヒステリシストルク発生機構は、第2フライホイールを第1フライホイールに対して支持する軸受と軸方向に並べて配置されている。
【0007】
この特許文献1のヒステリシストルク発生機構では、摩擦面積を大きく確保することができず、ヒステリシストルク発生機構を構成する部材の摩耗が進みやすい。部材の摩耗が大きくなると、設定された所望のヒステリシストルクが得られず、回転変動による振動を減衰する性能が低下する。
【0008】
本発明の課題は、フライホイール組立体等の装置に搭載されたダンパ装置において、ヒステリシストルク発生機構を構成する部材の摩耗を抑え、振動減衰性能の低下を抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係るダンパ装置は、第1回転部材と、第2回転部材と、軸受と、ダンパ部と、第1ヒステリシストルク発生機構と、を備えている。第2回転部材は第1回転部材と相対回転可能に配置されている。軸受は第1回転部材に対して第2回転部材を回転自在に支持する。ダンパ部は第1回転部材と第2回転部材とを回転方向に弾性的に連結する複数の弾性部材を有する。第1ヒステリシストルク発生機構は、軸受の径方向外方に配置され、第1回転部材と第2回転部材との相対回転時に第1ヒステリシストルクを発生する。
【0010】
この装置では、例えば、第1回転部材に入力された動力は、ダンパ部を介して第2回転部材に伝達される。この動力伝達時において、第1ヒステリシストルク発生機構によって第1ヒステリシストルクが発生され、これにより回転変動による振動が減衰される。
【0011】
ここでは、第1ヒステリシストルク発生機構が軸受の径方向外方に配置されているので、所望のヒステリシストルクを得るために必要な摩擦力を小さくすることができる。更には、第1ヒステリシストルク発生機構を構成する摩擦部材等の径を大きくすることができる。このため、摩擦面積を大きく確保でき、必要な摩擦力を得るための面圧を小さくできる。したがって、従来装置に比較して摩擦部材等の摩耗を抑えることができる。
【0012】
(2)好ましくは、軸受は複数の弾性部材の径方向内方に配置されている。この場合は、特に第2回転部材の慣性量を大きく確保することができ、振動減衰性能を向上することが容易になる。
【0013】
(3)好ましくは、第1ヒステリシストルク発生機構は、環状の摩擦部材と、付勢部材と、を有する。摩擦部材は摩擦面を有する。付勢部材は、摩擦部材の摩擦面を、第1回転部材及び第2回転部材の一方に押圧する。
【0014】
ここでは、付勢部材によって、摩擦部材の摩擦面が第1回転部材及び第2回転部材の一方に押圧される。これにより、第1回転部材と第2回転部材の相対回転時に第1ヒステリシストルクが発生する。
【0015】
(4)好ましくは、第1回転部材及び第2回転部材の一方は、摩擦部材の摩擦面が押圧される被押圧面を有している。そして、摩擦面及び被押圧面は屈曲している。
【0016】
ここでは、摩擦面を屈曲させることによって、同じ径であっても摩擦面積をより大きくすることができる。したがって、摩擦部材の摩耗をさらに抑えることができる。
【0017】
(5)好ましくは、第1回転部材は、それぞれ円板状の第1プレート及び第2プレートを有している。第2プレートは、第2回転部材が配置されている第1プレートの軸方向第1側に配置され、外周部が第1プレートの外周部に固定されている。そして、第1ヒステリシストルク発生機構は、第2プレートと第2回転部材との軸方向間に配置されている。
【0018】
ここでは、第1ヒステリシストルク発生機構を構成する部材の配置が容易で、広く摩擦面積を容易に確保できる。
【0019】
(6)好ましくは、第2回転部材は、第2プレートの軸方向第1側に配置された円板状の第3プレートを有している。そして、第1ヒステリシストルク発生機構は、第2プレートと第3プレートとの軸方向間に配置されている。
【0020】
ここでは、第2プレートと第3プレートとの間に第1ヒステリシストルク発生機構が配置されているので、第1ヒステリシストルク発生機構を構成する部材の配置が容易で、広い摩擦面を容易に確保できる。
【0021】
(7)好ましくは、ダンパ部は、弾性部材を保持するとともに第2回転部材に連結された保持プレートを有し、保持プレートは第1回転部材と軸方向に対向して配置されている。そして、第1ヒステリシストルク発生機構は、第1回転部材と保持プレートとの間に配置されている。
【0022】
(8)好ましくは、第1回転部材は、内部に粘性流体が充填されるチャンバを有している。
【0023】
(9)好ましくは、チャンバに外部から流体が侵入するのを遮断するシール部を有する。
【0024】
(10)好ましくは、第1ヒステリシストルク発生機構の径方向内方に配置され、所定の角度範囲内において第2ヒステリシストルクを発生する第2ヒステリシストルク発生機構をさらに備えている。
【0025】
ここでは、第2ヒステリシストルク発生機構によって第2ヒステリシストルクが得られるので、回転変動の振動減衰性能を向上させることができる。
【0026】
(11)好ましくは、第1ヒステリシストルク発生機構はダンパ部の軸方向第1側に配置され、第2ヒステリシストルク発生機構はダンパ部の軸方向第2側に配置されている。
【0027】
(12)好ましくは、ダンパ部の弾性部材は、複数の外周側弾性部材と、外周側弾性部材の径方向内方に配置された複数の内周側弾性部材と、を有している。また、ダンパ部は、外周側弾性部材と内周側弾性部材とを連結する中間部材を有している。そして、第1回転部材と中間部材との間に配置され、第1回転部材と中間部材との相対回転時に第3ヒステリシストルクを発生する第3ヒステリシストルク発生機構をさらに備えている。
【0028】
ここで、第1ヒステリシストルク発生機構に加えて第3ヒステリシストルク発生機構を設けることで、摩擦部材等の摩耗をより抑えることができる。
【0029】
(13)好ましくは、第1ヒステリシストルク発生機構の径方向内方に設けられ、チャンバとチャンバ外部とを連通する通気路をさらに備えている。
【0030】
ここでは、作動中において、密閉されたチャンバ内は負圧になる可能性がある。しかし、通気路が設けられているので、チャンバ内が負圧になるのが防止される。
【0031】
(14)好ましくは、通気路に設けられ、チャンバ外部から内部への通気を許可し、逆を禁止する一方向弁をさらに備えている。
【0032】
ここでは、チャンバ内部が負圧になるのを防止でき、かつチャンバ内の粘性流体が流出するのを避けることができる。
【発明の効果】
【0033】
以上のような本発明では、フライホイール組立体等の装置に搭載されたダンパ装置において、ヒステリシストルク発生機構を構成する部材の摩耗を抑え、振動減衰性能の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の第1実施形態によるダンパ装置を備えたフライホイール組立体の断面図。
図2図1の上側半分の部分拡大図。
図3図1の下側半分の部分拡大図
図4図1のフライホイール組立体の正面図。
図5】第1及び第2ヒステリシストルク発生機構の断面図。
図6】本発明の第2実施形態の図2に相当する図。
図7】本発明の第3実施形態の図2に相当する図。
図8】本発明の第4実施形態の要部を示す概略断面図。
図9】本発明の第5実施形態のシール構造を示す概略断面図。
図10】第5実施形態の変形例を示す図。
図11】第5実施形態の別の変形例を示す図。
図12】第5実施形態のさらに別の変形例を示す図。
図13】摩擦部材の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
-第1実施形態-
[全体構成]
図1は、本発明の第1実施形態によるダンパ装置を備えたフライホイール組立体の断面図である。図1のO-Oがフライホイール組立体の回転軸線であり、図1の左側にはエンジン(図示せず)が配置され、右側にはトランスミッション(図示せず)が配置される。
【0036】
フライホイール組立体1は、エンジン側のクランクシャフト10からのトルクを図示しないクラッチ装置を介してトランスミッション側の入力シャフトに伝達するための装置であり、回転変動による捩り振動を吸収し、減衰する機能を有している。フライホイール組立体1は、主に、第1フライホイール2(第1回転部材の一例)と、第2フライホイール3(第2回転部材の一例)と、ダンパ部4と、第1ヒステリシストルク発生機構5と、第2ヒステリシストルク発生機構6と、を有している。
【0037】
[第1フライホイール2]
第1フライホイール2は、クランクシャフト10に連結可能である。第1フライホイール2は、図2に示すように、円板状のフライホイール本体11(第1プレートの一例)と、円板状のプレート12(第2プレートの一例)と、を有している。
【0038】
フライホイール本体11は、内周側筒状部11aと、外周側筒状部11bと、を有している。
【0039】
内周側筒状部11aは、フライホイール本体11の内周端部からトランスミッション側に突出して形成されている。そして、この内周側筒状部11aはボルト13(図1及び図3参照)によりクランクシャフト10の先端に固定されている。内周側筒状部11aの外周面には軸受14が装着されている。
【0040】
外周側筒状部11bは、フライホイール本体11の外周端部からトランスミッション側に突出して形成されている。そして、外周側筒状部11bの先端にプレート12が固定されている。外周側筒状部11bの外周面には、リングギア15が固定されている。
【0041】
また、フライホイール本体11とプレート12とにより、第1フライホイール2の内部にはチャンバCが形成されている。このチャンバCの内部には、グリス等の粘性流体が充填されている。
【0042】
なお、フライホイール本体11には、組付け作業用の孔11cが形成されているが、この孔11cには蓋部材17が装着されている。また、軸受14は、開口端部にシール部材が設けられた封止型の軸受である。また、第1フライホイール2と第2フライホイール3との間には図示しないシール機構が設けられている。これらにより、内部の粘性流体が流出しないように、チャンバC内の空間は密封されている。
【0043】
なお、第1フライホイール2と第2フライホイール3との間に設けられた第1ヒステリシストルク発生機構5にシール機能を持たせることもできる。
【0044】
[第2フライホイール3]
第2フライホイール3の側面には、図示しないクラッチ装置が装着される。第2フライホイール3は、環状かつ円板状の部材であり、第1フライホイール2のトランスミッション側に、プレート12に対向して配置されている。
【0045】
第2フライホイール3の内周部には、エンジン側に突出する筒状部3aが形成されている。この筒状部3aの内周面と、第1フライホイール2の内周側筒状部11aの外周面と、の間に軸受14が設けられている。第2フライホイール3は、この軸受14により、第1フライホイール2に対して相対回転自在に支持されている。
【0046】
[ダンパ部4]
ダンパ部4は、第1フライホイール2のチャンバC内に配置され、第1フライホイール2と第2フライホイール3とを回転方向に弾性的に連結している。図1図4に示すように、ダンパ部4は、8つの外周側トーションスプリング21及び6つの内周側トーションスプリング22と、中間部材23と、出力フランジ24と、第1及び第2ストッパ機構25,26と、を有している。なお、各トーションスプリングについては、以下、単に「スプリング」と記す。
【0047】
<外周側スプリング21及び内周側スプリング22>
図4に示すように、外周側スプリング21は円周方向に並べて配置されている。隣接する外周側スプリング21の間には中間スプリングシート27が配置されており、4つの外周側スプリング21は直列に作用する。4つの外周側スプリング21の円周方向の端部には、2つの端部スプリングシート28が配置されている。各スプリングシート27,28には、外周側スプリング21の端部が挿入される筒状部が形成されている。
【0048】
図4に示されていない他の4つの外周側スプリング21についても同様である。すなわち、他の4つの外周側スプリング21は中間スプリングシート27を介して直列に作用する。また、他の4つの外周側スプリング21の円周方向の端部には端部スプリングシート28が配置されている。
【0049】
6つの内周側スプリング22は外周側スプリング21の径方向内方において、円周方向に並べて配置されている。内周側スプリング22の剛性は、外周側スプリング21の剛性よりも低い。
【0050】
<中間部材23>
中間部材23は、外周側スプリング21と内周側スプリング22とを直列に連結する。図2及び図3に示すように、中間部材23は、軸方向に対向する円板状の第1サイドプレート31及び第2サイドプレート32を有している。各サイドプレート31,32は、6つの保持部31a,32aと、2つの支持部31b,32b(図3及び図4参照)と、を有している。
【0051】
第1サイドプレート31の保持部31a及び第2サイドプレート32の保持部32aは、軸方向に対向して配置されており、内周側スプリング22を保持している。これにより、内周側スプリング22は径方向及び軸方向の移動が規制されている。
【0052】
支持部31b,32bは、それぞれ対応するサイドプレート31,32の外周部からさらに径方向外方に突出して形成されている。2つの支持部31b,32bは回転軸を挟んで対向して配置されている。
【0053】
また、図3及び図4に示すように、フライホイール本体11のトランスミッション側の側面には、第1サイドプレート31の支持部31bと軸方向に対向する突起11dが形成されている。また、プレート12のエンジン側の側面には、第2サイドプレート32の支持部32bに対向する突起12dが形成されている。これらの突起11d,12dは、外周側スプリング21を支持する端部スプリングシート28と回転方向に当接可能である。
【0054】
<出力フランジ24>
図2図4に示すように、出力フランジ24は、中間部材23を構成する第1及び第2サイドプレート31,32の軸方向間に配置されている。出力フランジ24は、中間部材23と相対回転可能であり、内周端部はリベット34により第2フライホイール3の筒状部3aに固定されている。したがって、出力フランジ24は第2フライホイール3とは相対回転不能である。
【0055】
出力フランジ24は、6つの窓部24aと、内歯24bと、を有している。窓部24aは、円周方向に並べて配置されており、内周側スプリング22が収容されている。内歯24bは、出力フランジ24の内周端部に形成されており、後述するハブリング41と噛合可能である。
【0056】
<第1及び第2ストッパ機構25,26>
前述のように、中間スプリングシート27及び端部スプリングシート28は、外周側スプリング21の端部が挿入される筒状部を有している。図4に示すように、隣接するスプリングシート27,28の径方向外方の先端面は当接可能である。そして、フライホイール本体11と中間部材23とが所定角度だけ相対回転すると、隣り合うスプリングシート27,28の筒状部の先端が当接する。すなわち、隣り合うスプリングシート27,28の先端部により、外周側スプリング21の作動範囲を制限する第2ストッパ機構26が構成されている。
【0057】
また、図4に示すように、出力フランジ24の外周面には、円周方向に所定の長さを有し、径方向外方に開く切欠24cが形成されている。この切欠24cの内部に、中間部材23に固定されたストッパ36(図2及び図4参照)が収容されている。したがって、中間部材23と出力フランジ24とが所定角度だけ相対回転すると、切欠24cの端面にストッパ36が当接する。すなわち、切欠24c(その端面)及びストッパ36により第1ストッパ機構25が構成されており、これにより、内周側スプリング22の作動範囲が制限される。
【0058】
[第1ヒステリシストルク発生機構5]
第1ヒステリシストルク発生機構5は、軸受14の径方向外方に配置されている。第1ヒステリシストルク発生機構5は、図5に示すように、第1摩擦部材38と、第1コーンスプリング39(付勢部材の一例)と、を有している。
【0059】
第1摩擦部材38は、環状に形成され、トランスミッション側の側面が、第2フライホイール3の側面3b(被押圧面の一例)に当接する摩擦面38aとなっている。第1摩擦部材38の外周部には、エンジン側に突出する複数の係合突起38bが形成されている。係合突起38bは、第1フライホイール2のプレート12に形成された係合孔12aに外周面及び側面が隙間なく係合している。したがって、第1摩擦部材38は、第1フライホイール2に対して相対回転不能であり、第2フライホイール3に対して相対回転可能である。
【0060】
第1コーンスプリング39は、プレート12と第1摩擦部材38との軸方向間に、圧縮された状態で配置されている。したがって、この第1コーンスプリング39によって、第1摩擦部材38の摩擦面38aは第2フライホイール3の被押圧面3bに押圧されている。
【0061】
以上の構成により、第1ヒステリシストルク発生機構5は、第1フライホイール2と第2フライホイール3との相対回転時に、摩擦面38aと被押圧面3bとが摩擦接触し、第1ヒステリシストルクを発生する。
【0062】
[第2ヒステリシストルク発生機構6]
第2ヒステリシストルク発生機構6は、図5に示すように、径方向において軸受14とほぼ同じ位置に、すなわち、第1ヒステリシストルク発生機構5の径方向内方に配置されている。第2ヒステリシストルク発生機構6は、第1フライホイール2と出力フランジ24とが所定の角度を超えて相対回転した際に、第2ヒステリシストルクを発生する。第2ヒステリシストルク発生機構6は、ハブリング41と、第2摩擦部材42と、第2コーンスプリング43と、を有している。
【0063】
ハブリング41は、環状の部材であり、図4に示すように、外周面に複数の歯41aを有している。ハブリング41は、フライホイール本体11の内周側筒状部11aの外周面に相対回転可能に装着され、トランスミッション側の側面が軸受14の内輪に対して、スペーサを介するなどして摩擦係合している。ハブリング41の歯41aは、出力フランジ24の内歯24bに対して所定の隙間G(歯41aの両側を合わせた隙間)を介して噛み合っている。したがって、フライホイール本体11と出力フランジ24との相対回転が隙間Gに相当する角度θgの範囲内では、フライホイール本体11とハブリング41とは相対回転しない。しかし、フライホイール本体11と出力フランジ24との相対回転が角度θgを超えると、ハブリング41は出力フランジ24とともに回転する。この場合は、フライホイール本体11とハブリング41とは相対回転する。
【0064】
第2摩擦部材42は、環状に形成され、トランスミッション側の側面が、ハブリング41の側面(被押圧面)41bに当接する摩擦面42aとなっている。第2コーンスプリング43は、フライホイール本体11の側面と第2摩擦部材42との軸方向間に、圧縮された状態で配置されている。したがって、この第2コーンスプリング43によって、第2摩擦部材42の摩擦面42aはハブリング41の被押圧面41bに押圧されている。
【0065】
以上の構成により、フライホイール本体11と出力フランジ24との相対回転が角度θgを超えると、第2摩擦部材42の摩擦面42aとハブリング41の被押圧面41bとが摩擦接触し、第2ヒステリシストルク発生機構6は第2ヒステリシストルクを発生する。
【0066】
[動作]
<トルクの伝達>
エンジンのクランクシャフト10からのトルクは、第1フライホイール2のフライホイール本体11に入力され、ダンパ部4を介して第2フライホイール3へ伝達される。
【0067】
具体的には、ダンパ部4では、内周側スプリング22は外周側スプリング21に比較して低剛性であるために、内周側スプリング22が外周側スプリング21よりも大きく圧縮される。
【0068】
なお、中間部材23と出力フランジ24との捩り角度(相対回転角度)が所定の大きさになると、第1ストッパ機構25が作動し、内周側スプリング22の圧縮は停止する。また、第1フライホイール2と中間部材23との捩り角度が所定の大きさになると、第2ストッパ機構26が作動し、外周側スプリング21の圧縮は停止する。
【0069】
このようにして、入力されたトルクは、外周側スプリング21、中間部材23、内周側スプリング22、出力フランジ24、及び第2フライホイール3を介して、図示しないクラッチディスク組立体及びトランスミッションの入力シャフトに出力される。
【0070】
<第1ヒステリシストルク発生機構5の作動>
ダンパ部4の作動時、すなわち、内周側スプリング22及び外周側スプリング21の少なくとも一方が圧縮されている状態では、第1フライホイール2のプレート12と第2フライホイール3とが相対回転する。したがって、第1ヒステリシストルク発生機構5が作動し、第1ヒステリシストルクが発生する。
【0071】
ここで、第1ヒステリシストルク発生機構5は軸受14の径方向外方に配置されているので、第1摩擦部材38の径を大きくすることができる。このため、必要な摩擦力が小さくなり、軸方向荷重を小さくできる。さらには、摩擦面積が大きくなり、必要なヒステリシストルクを得るための面圧を小さくできる。したがって、第1摩擦部材38の摩耗を抑えることができる。
【0072】
<第2ヒステリシストルク発生機構6の作動>
伝達トルクあるいはトルク変動が小さく、第1フライホイール2(すなわちフライホイール本体11)と出力フランジ24の捩り角度(相対回転角度)がθg以下では、ハブリング41はフライホイール本体11と連れ回っており、第2ヒステリシストルク発生機構6は作動しない。
【0073】
一方、フライホイール本体11と出力フランジ24の捩り角度がθgを超えると、ハブリング41の歯41aとは出力フランジ24の内歯24bとが噛み合い、ハブリング41は出力フランジ24とともに回転する。この状態では、第2摩擦部材42とハブリング41とは相対回転する。このため、第2ヒステリシストルク発生機構6が作動し、第2ヒステリシストルクが発生する。
【0074】
第2ヒステリシストルク発生機構6は、従来装置と同様に装置の内周部に配置されている。このため、摩擦面積を大きく確保することは困難である。しかし、出力フランジ24の内歯24bとハブリング41の歯41aとの隙間を大きくすることにより、作動期間が短くなり、摩耗を抑えることができる。また、第1ヒステリシストルク発生機構5によって捩り振動を減衰することができるので、第2ヒステリシストルク発生機構6の第2ヒステリシストルクを小さくしても振動減衰性能が低下するのを抑えることができる。したがって、第2ヒステリシストルク発生機構6の第2摩擦部材42の面圧を小さくでき、第2摩擦部材42の摩耗を抑えることができる。
【0075】
ここで、第1ヒステリシストルク発生機構5はダンパ部4のトランスミッション側に配置され、第2ヒステリシストルク発生機構6はダンパ部4のエンジン側に配置されている。そして、各ヒステリシストルク発生機構5,6には付勢部材としてのコーンスプリング39,43が設けられている。このため、各ヒステリシストルク発生機構5,6を構成する部材の軸方向の振動を抑えることができ、各ヒステリシストルク発生機構5,6によって安定したヒステリシストルクを得ることができる。
【0076】
-第2実施形態-
図6に本発明の第2実施形態を示す。この第2実施形態では、第1実施形態の構成に加えて、第3ヒステリシストルク発生機構45を有している。
【0077】
第3ヒステリシストルク発生機構45は、第1フライホイール2のフライホイール本体11と、中間部材23の第1サイドプレート31の内周端部との軸方向間に配置されている。また、第3ヒステリシストルク発生機構45は、軸受14の径方向外方で、かつ第2ヒステリシストルク発生機構6よりさらに径方向外方に配置されている。
【0078】
第3ヒステリシストルク発生機構45は、第3摩擦部材47と、第3コーンスプリング48と、を有している。第3摩擦部材47は、環状に形成され、フライホイール本体11のトランスミッション側の側面に当接している。第3コーンスプリング48は、第3摩擦部材47と第1サイドプレート31との軸方向に配置され、第3摩擦部材47をフライホイール本体11の側面に押圧している。
【0079】
この第3ヒステリシストルク発生機構45を設けることによって、振動減衰性能をより向上することができる。また、第3摩擦部材47は比較的径方向外方に配置されているので、摩擦面積を大きく確保でき、より摩耗を抑えることができる。
【0080】
-第3実施形態-
図7に本発明の第3実施形態を示している。第3実施形態のダンパ装置50は、第1フライホイール51と、第2フライホイール52と、軸受53と、ダンパ部54と、第1ヒステリシストルク発生機構55と、第2ヒステリシストルク発生機構56と、を有している。
【0081】
第1フライホイール51は、第1実施形態と基本的に同様の構成であり、第1フライホイール本体58及びプレート59を有している。第1実施形態と比較して、プレート59の形状のみが異なっており、プレート59は第1実施形態のプレート12より径方向内方に延びている。
【0082】
第2フライホイール52は、円板状の第2フライホイール本体61と、筒状部材62と、を有している。筒状部材62は、第2フライホイール本体61の内周端にボルト63により固定されている。
【0083】
軸受53は、第1フライホイール本体58の内周側筒状部58aの外周面に装着され、第2フライホイール52の筒状部材62を支持している。すなわち、第2フライホイール52は、軸受53により第1フライホイール51に回転自在に支持されている。
【0084】
ダンパ部54は、外周側スプリング21と、内周側スプリング22と、これらのスプリング21,22を連結する連結部材65と、フロート部材66と、を有している。外周側スプリング21及び内周側スプリング22については、第1実施形態と同様の構成である。
【0085】
連結部材65は、軸方向に間隔をあけて互いに固定された第1サイドプレート68及び第2サイドプレート69を有している。第1サイドプレート68及び第2サイドプレート69は、第1実施形態のサイドプレート31,32と同様に、内周側スプリング22を保持する保持部を有している。
【0086】
第2サイドプレート69は、内周端部をエンジン側に折り曲げられて形成された支持部69aを有している。支持部69aの内周面には、第1実施形態の出力フランジ24の内歯24bと同様の内歯が形成されている。また、この支持部69aのトランスミッション側の側面に、第2フライホイール52の筒状部材62の先端が溶接されている。
【0087】
以上のように、連結部材65は、第2フライホイール52に固定され、外周側スプリング21及び内周側スプリング22の出力側の部材として機能する。すなわち、連結部材65は、第2フライホイール52とともに、第1フライホイール51に対して相対回転可能な第2回転部材の一例である。
【0088】
フロート部材66は、第1サイドプレート68及び第2サイドプレート69に対して相対回転自在であり、内周側スプリング22を保持する機能を有している。フロート部材66の内周端面は、第2サイドプレート69の支持部69aの外周面に支持され、径方向に位置決めされている。
【0089】
第1ヒステリシストルク発生機構55は、軸受53の径方向外方に配置されている。第1ヒステリシストルク発生機構55は、第1摩擦部材71と、第1コーンスプリング72(付勢部材の一例)と、を有している。
【0090】
第1摩擦部材71は、環状に形成され、エンジン側の側面が、第2サイドプレート69の側面に当接する摩擦面71aとなっている。第1摩擦部材71の外周部には、トランスミッション側に突出する複数の係合突起71bが形成されている。係合突起71bは、第1フライホイール51のプレート59に形成された係合孔59aに、外周面及び側面が隙間なく係合している。したがって、第1摩擦部材71は、第1フライホイール51に対して相対回転不能であり、第2サイドプレート69に対して相対回転可能である。
【0091】
第1コーンスプリング72は、プレート59と第1摩擦部材71との軸方向間に、圧縮された状態で配置されている。したがって、この第1コーンスプリング72によって、第1摩擦部材71の摩擦面71aは第2サイドプレート69の側面に押圧されている。
【0092】
以上の構成により、第1ヒステリシストルク発生機構55は、第1フライホイール51と第2サイドプレート69(すなわち第2フライホイール52)との相対回転時に第1ヒステリシストルクを発生する。
【0093】
ここで、第1摩擦部材71の摩擦面71aが第1コーンスプリング72によって第2サイドプレート69の側面に押圧され、係合突起71bは、内周面を除いて係合孔59aに隙間なく係合している。したがって、第1ヒステリシストルク発生機構55は、この部分を通してチャンバC内に外部からの流体等が侵入するのを防止するシール機能も有している。
【0094】
第2ヒステリシストルク発生機構56を含めて、他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0095】
この第3実施形態では、ダンパ部54が作動して外周側スプリング21及び内周側スプリング22の少なくともいずれかが伸縮する際には、第1ヒステリシストルク発生機構55が作動し、第1ヒステリシストルクが発生する。第1実施形態と同様に、第1ヒステリシストルク発生機構55は軸受53の径方向外方に配置されているので、第1摩擦部材71の径を大きくすることができる。このため、摩擦面積が大きくなり、必要なヒステリシストルクを得るための面圧を小さくできる。したがって、第1摩擦部材71の摩耗を抑えることができる。
【0096】
-第4実施形態-
図8に本発明の第4実施形態を示している。この第4実施形態では、第1実施形態の構成に加えて、通気路75と、一方向弁76を、をさらに備えている。
【0097】
通気路75は、第1ヒステリシストルク発生機構5及び第2ヒステリシストルク発生機構6の径方向内方である、フライホイール本体11の内周側筒状部11aに径方向に延びる形状で設けられている。通気路75は、チャンバCとチャンバCの外部とを連通する。一方向弁76は、通気路75に設けられ、チャンバCの外部からチャンバCの内部への通気を許可し、逆を禁止する。
【0098】
本装置の作動中においては、摩擦熱の影響でチャンバ内が100℃を超える事がある。チャンバCは基本的に密閉されているが、内部気体の微小なリークが存在するので、本装置が急冷されるような状態になるとチャンバC内部が負圧になる。負圧が大きくなると、特に外周側スプリング21の作動が損なわれるおそれがある。また、負圧が大きくなると、各シール部を外気が通過し、チャンバ内に異物が侵入するおそれがある。そこで、通気路75及び一方向弁76を設けることによって、チャンバC内から粘性流体が流出するのを防止し、かつチャンバCの内部が負圧になるのを防止している。
【0099】
なお、通気路75は、内周側筒状部11aとは異なる部材に設けることもできるが、内周側筒状部11aに設けることで、特に渡河時などに通気路75が水に浸かりにくくなり、チャンバCの内部に水が侵入する危険性を低減できる。また、通気路75は、径方向に延びる形状とは異なる形状で構成することもできるが、径方向に延びる形状とすることにより、チャンバCの内部の粘性流体は遠心力により内周側に流出し難くなる。その他、通気路75は、フライホイール本体11の内周側筒状部11aにおいて径方向から軸方向に屈曲するような形状で構成することもできる。また、通気路75の途中等にフィルタを設けることが好ましい。
【0100】
-第5実施形態-
図9に本発明の第5実施形態を示している。この実施形態では、シール構造89を設けている。
【0101】
具体的には、図9の第1ヒステリシストルク発生機構83は、第1フライホイール2のプレート12と、第2フライホイール80と、の軸方向間に配置されている。第1ヒステリシストルク発生機構83は、第1摩擦部材84と第1コーンスプリング85とを有している。
【0102】
第1摩擦部材84は、環状の部材であり、摩擦面84a及び係合突起84bを有している。摩擦面84aは第2フライホイール80の側面に当接する。係合突起84bは、プレート12に形成された係合孔12aに係合している。したがって、第1摩擦部材84は、プレート12に対して相対回転不能であり、第2フライホイール80に対して相対回転可能である。
【0103】
第1コーンスプリング85は、プレート12と第2フライホイール80との軸方向間に配置され、第1摩擦部材84の摩擦面84aを第2フライホイール80の側面に押圧している。第1コーンスプリング85の外周端部はプレート12に固定され、内周端が第1摩擦部材84を付勢している。
【0104】
また、シール構造89は、補助部材81とシール用コーンスプリング87とを備えている。補助部材81は、第2フライホイール80のエンジン側の側面に装着され、外周部がプレート12の内周端部と軸方向に対向するように配置されている。そして、この補助部材81とプレート12との軸方向間に、シール用コーンスプリング87が配置されている。シール用コーンスプリング87は、プレート12に固定された固定端部87aと、補助部材81に圧接された圧接端部87bと、チャンバCに通じる側の面87cと、外部に通じる側の面87dと、を備えている。そして、シール用コーンスプリング87は、チャンバCに通じる側の面87cで補助部材81に圧接するように構成されている。
【0105】
このため、チャンバCが負圧になると、外部に通じる側の面87dに気圧差が作用し、チャンバCに通じる側の面87cの圧接が強まる。したがって、シール構造89では、チャンバCに大きな負圧が発生しても、一点鎖線で示すように、外部からの流体等は、シール用コーンスプリング87及び補助部材81によってチャンバCの内部に侵入するのが防止される。
【0106】
図9に示したシール構造の変形例を、図10図11図12に示している。
【0107】
図10に示すシール構造は、シール用コーンスプリング92が、補助部材81とプレート12との間ではなく、プレート12と第2フライホイール80との軸方向間に配置されている。そして、固定端部92aがプレート12に固定され、圧接端部92bが第2フライホイール80に圧接されている。
【0108】
図11に示すシール構造は、図10と同様に、シール用コーンスプリング94がプレート12と第2フライホイール80との軸方向間に配置されている。そして、固定端部94aが第2フライホイール80に固定され、圧接端部94bがプレート12に圧接されている。
【0109】
図12にシール構造は、図9と同様に、シール用コーンスプリング96が補助部材81とプレート12との軸方向間に配置されている。そして、固定端部96aが補助部材81に固定され、圧接端部96bがプレート12に圧接されている。
【0110】
以上の変形例のいずれの場合も、チャンバCに通じる側の面92c,94c,96cを対応する部材に圧接することにより、外部からの流体等がチャンバCの内部に侵入することを防止できる。なお、以上のシール構造は、第1実施形態から第4実施形態のいずれにも適用することができる。
【0111】
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0112】
(a)前記実施形態では、摩擦部材を環状の平板で形成したが、図13に示すように、摩擦部材90を屈曲した形状にしてもよい。この場合は、摩擦部材90が当接する相手側部材も同様の形状にする必要がある。
【0113】
この例の摩擦部材90では、同径の摩擦部材に比較して摩擦面積を大きく確保することができる。また、コーンスプリング(図示せず)の付勢力P0は、ヒステリシストルクを発生するための垂直抗力P1と、摩擦面に沿った力P2と、の合力になるので、垂直抗力P1は付勢力P0よりも小さくなる。したがって、同じコーンスプリングを用いた場合、屈曲した摩擦部材を用いると、平板状の摩擦部材に比較して面圧が小さくなり、摩耗を抑えることができる。
【0114】
(b)ダンパ部の構成は前記実施形態に限定されない。例えば、スプリングの個数や配置等について、種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0115】
1 フライホイール組立体
50 ダンパ装置
2,51 第1フライホイール(第1回転部材)
3,52 第2フライホイール(第2回転部材)
11,58 フライホイール本体(第1プレート)
12,59 プレート(第2プレート)
14,53 軸受
4,54 ダンパ部
5,55,83 第1ヒステリシストルク発生機構
6,56 第2ヒステリシストルク発生機構
21 外周側スプリング(弾性部材)
22 内周側スプリング(弾性部材)
23 中間部材
65 連結部材
31,32,68,69 サイドプレート(保持プレート)
38,71,84 第1摩擦部材
90 摩擦部材
39,85 第1コーンスプリング
42 第2摩擦部材
43 第2コーンスプリング
45 第3ヒステリシストルク発生機構
75 通気路
76 一方向弁
87,92,94,96 シール用コーンスプリング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13