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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】組電池装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6555 20140101AFI20221107BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20221107BHJP
   H01M 10/653 20140101ALI20221107BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20221107BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20221107BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20221107BHJP
   H01M 10/6568 20140101ALI20221107BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20221107BHJP
【FI】
H01M10/6555
H01M10/647
H01M10/653
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/615
H01M10/6568
H01M10/6556
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018150970
(22)【出願日】2018-08-10
(65)【公開番号】P2019117784
(43)【公開日】2019-07-18
【審査請求日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】P 2017250566
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】金井 俊典
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 克昌
(72)【発明者】
【氏名】古川 裕一
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-123308(JP,A)
【文献】特開2016-212980(JP,A)
【文献】特開2017-220539(JP,A)
【文献】特開2006-144030(JP,A)
【文献】特開2012-094313(JP,A)
【文献】特開2006-244756(JP,A)
【文献】国際公開第2010/058587(WO,A1)
【文献】特表2015-514601(JP,A)
【文献】国際公開第2010/029977(WO,A1)
【文献】特開2009-187781(JP,A)
【文献】特開2012-248374(JP,A)
【文献】特開2013-016351(JP,A)
【文献】特開2012-156124(JP,A)
【文献】特開2009-087738(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0273400(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/6555
H01M 10/647
H01M 10/653
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/615
H01M 10/6568
H01M 10/6556
H01M 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の角形単電池からなる組電池と、外部に伝熱面を有するとともに、内部に伝熱媒体が流通する伝熱媒体流通路を有する伝熱器と、伝熱器の伝熱媒体流通路内を流れる伝熱媒体の有する冷熱または温熱を組電池の各単電池に伝える熱伝導部材とよりなる組電池装置であって、
組電池を構成する全単電池が、1つの面が伝熱器の伝熱面側を向くとともに伝熱器の伝熱面との間に間隔をおいた状態で積層状に配置されており、
熱伝導部材が、アルミニウムと炭素粒子とが複合化されている複合材を含む板状の複合体を有し、単電池の伝熱器側を向いた第1受熱面に接触する第1単電池側接触部と、単電池の第1受熱面に隣接する第2受熱面に接触する第2単電池側接触部と、両単電池側接触部間に単電池から伝熱器側に突出するように設けられ、かつ伝熱器の伝熱面に接触する伝熱器側接触部とよりなり、熱伝導部材の第1単電池側接触部と伝熱器側接触部とが両者に一体化された第1連結部により連結され、熱伝導部材の第2単電池側接触部と伝熱器側接触部とが両者に一体化された第2連結部により連結され、第1単電池側接触部、第1連結部および第2連結部によって、ばね状弾性を有し、かつ単電池の前記第1受熱面と伝熱器の伝熱面とが接近するような力を受けた際に弾性変形する変形部が形成されている組電池装置。
【請求項2】
熱伝導部材の第1連結部、第2連結部および伝熱器側接触部によって、伝熱器側接触部を頂点とする略V字形の変形部が形成されている請求項1記載の組電池装置。
【請求項3】
組電池の単電池が、端子が設けられた第1の端面とは反対側の第2の端面が伝熱器の伝熱面側を向いており、単電池の第2端面が前記第1受熱面となり、単電池の側面における積層方向に対をなす2つの面のうちのいずれか一方の面が前記第2受熱面となっており、各単電池に1つの熱伝導部材が配置され、一端の熱伝導部材を除いた他の熱伝導部材の第2単電池側接触部が、組電池の隣り合う単電池間に配置されている請求項1または2記載の組電池装置。
【請求項4】
組電池の単電池が、端子が設けられた第1の端面とは反対側の第2の端面が伝熱器の伝熱面側を向いており、単電池の第2端面が前記第1受熱面となり、単電池の側面における積層方向と直交する方向に対をなす2つの面が前記第2受熱面となっており、各単電池に2つの熱伝導部材が配置され、各単電池の第1受熱面に2つの熱伝導部材の第1単電池側接触部が接触するとともに、同じく第2受熱面に2つの熱伝導部材の第2単電池側接触部が接触している請求項1または2記載の組電池装置。
【請求項5】
組電池の単電池の側面における積層方向と直交する方向に対をなす2つの面のうちのいずれか一方の面が前記第1受熱面となっており、単電池の側面における積層方向に対をなす2つの面のうちのいずれか一方の面が前記第2受熱面となっており、各単電池に1つの熱伝導部材が配置され、一端の熱伝導部材を除いた他の熱伝導部材の第2単電池側接触部が、組電池の隣り合う単電池間に配置されている請求項1または2記載の組電池装置。
【請求項6】
伝熱器が1つの伝熱面を有し、伝熱器の伝熱面が設けられた側のみに組電池が配置されている請求項1~5のうちのいずれかに記載の組電池装置。
【請求項7】
伝熱器が互いに反対側を向いた2つの伝熱面を有し、伝熱器の両側に組電池が配置されている請求項1~5のうちのいずれかに記載の組電池装置。
【請求項8】
前記炭素粒子が、カーボンナノチューブ、グラフェン、黒鉛粒子および炭素繊維からなる群より選択される少なくとも1種類からなる請求項1~7のうちのいずれかに記載の組電池装置。
【請求項9】
前記複合体の複合材が、アルミニウムマトリックスおよびアルミニウムマトリックス中に分散した炭素粒子からなる請求項1~8のうちのいずれかに記載の組電池装置。
【請求項10】
前記複合体の複合材が、前記アルミニウムマトリックスを構成するアルミニウム材料中に前記炭素粒子が面方向に分散した複数の炭素粒子分散層と、前記アルミニウムマトリックスを構成するアルミニウム材料で形成された複数のアルミニウム層とを有し、前記炭素粒子分散層と前記アルミニウム層とが、前記複合体の厚さ方向に交互に積層状に配列されている請求項9記載の組電池装置。
【請求項11】
前記熱伝導部材が、前記複合体の両面に単層または複層の樹脂フィルム層が接着剤層で接着された積層材である請求項1~10のうちのいずれかに記載の組電池装置。
【請求項12】
前記樹脂フィルム層がポリエチレンテレフタレートフィルムとナイロンフィルムの複層の樹脂フィルム層であり、前記ナイロンフィルムが複合体側に配置されている請求項11に記載の組電池装置。
【請求項13】
前記接着剤層がウレタン系接着剤層である請求項11または12に記載の組電池装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、組電池装置に関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【背景技術】
【0003】
たとえばハイブリッド自動車、電気自動車等の電動機駆動用バッテリー装置として、たとえばリチウムイオン二次電池などの各種の二次電池からなる複数個の小型単電池を直列または並列に接続して組電池の形態としたものが用いられている。特に、電気自動車においては航続距離の延長のニーズから組電池の大容量化が求められるので、複数の組電池が直列または並列に接続されるように組み合わされている。
【0004】
ところで、二次電池は、使用温度によって性能や寿命が変化するので、長時間にわたって効率良く使用するためには適正な温度で使用する必要がある。
【0005】
そこで、上述したような組電池におけるすべての単電池の温度差を小さくすることを目的として、頂壁外面が平坦な伝熱面となっているとともに、内部に冷媒が流通する冷媒通路を有する金属製冷却部材を備えている冷却装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1記載の冷却装置においては、組電池が冷却部材の伝熱面上に、シリコン樹脂などの合成樹脂からなる熱伝導シートを介して載置され、冷却部材の冷媒通路を流れる冷媒から冷却部材の頂壁および熱伝導シートを介して組電池に伝わる冷熱によって組電池が冷却されるようになっており、組電池の冷却効率をあげるには、冷却部材の伝熱面と熱伝導シートとの密着性および組電池の受熱面と熱伝導シートとの密着性を向上させる必要がある。
【0007】
ところで、上述した組電池においては、各単電池が変形したり、少なくとも一部の単電池が上下方向にずれて受熱面に段差が生じたりすることがある。したがって、これらの変形や段差を吸収して組電池の受熱面と熱伝導シートとの密着性を向上させるためには、熱伝導シートの肉厚を比較的厚くする必要がある。しかしながら、合成樹脂からなる熱伝導シートの熱伝導率は比較的低いので、熱伝導シートの肉厚を厚くすると、組電池の受熱面と冷却部材の伝熱面との間の熱伝導性が低下し、組電池の単電池を効率良く冷却することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第6020942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明の目的は、上記問題を解消し、組電池を構成する全単電池を効率良く冷却または加熱しうる組電池装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0011】
1)複数の角形単電池からなる組電池と、外部に伝熱面を有するとともに、内部に伝熱媒体が流通する伝熱媒体流通路を有する伝熱器と、伝熱器の伝熱媒体流通路内を流れる伝熱媒体の有する冷熱または温熱を組電池の各単電池に伝える熱伝導部材とよりなる組電池装置であって、
組電池を構成する全単電池が、1つの面が伝熱器の伝熱面側を向くとともに伝熱器の伝熱面との間に間隔をおいた状態で積層状に配置されており、
熱伝導部材が、アルミニウムと炭素粒子とが複合化されている複合材を含む板状の複合体を有し、単電池の伝熱器側を向いた第1受熱面に接触する第1単電池側接触部と、単電池の第1受熱面に隣接する第2受熱面に接触する第2単電池側接触部と、両単電池側接触部間に単電池から伝熱器側に突出するように設けられ、かつ伝熱器の伝熱面に接触する伝熱器側接触部とよりなり、熱伝導部材の第1単電池側接触部と伝熱器側接触部とが両者に一体化された第1連結部により連結され、熱伝導部材の第2単電池側接触部と伝熱器側接触部とが両者に一体化された第2連結部により連結され、第1単電池側接触部、第1連結部および第2連結部によって、ばね状弾性を有し、かつ単電池の前記第1受熱面と伝熱器の伝熱面とが接近するような力を受けた際に弾性変形する変形部が形成されている組電池装置。
【0012】
2)熱伝導部材の第1連結部、第2連結部および伝熱器側接触部によって、伝熱器側接触部を頂点とする略V字形の変形部が形成されている上記1)記載の組電池装置。
【0013】
3)組電池の単電池が、端子が設けられた第1の端面とは反対側の第2の端面が伝熱器の伝熱面側を向いており、単電池の第2端面が前記第1受熱面となり、単電池の側面における積層方向に対をなす2つの面のうちのいずれか一方の面が前記第2受熱面となっており、各単電池に1つの熱伝導部材が配置され、一端の熱伝導部材を除いた他の熱伝導部材の第2単電池側接触部が、組電池の隣り合う単電池間に配置されている上記1)または2)記載の組電池装置。
【0014】
4)組電池の単電池が、端子が設けられた第1の端面とは反対側の第2の端面が伝熱器の伝熱面側を向いており、単電池の第2端面が前記第1受熱面となり、単電池の側面における積層方向と直交する方向に対をなす2つの面が前記第2受熱面となっており、各単電池に2つの熱伝導部材が配置され、各単電池の第1受熱面に2つの熱伝導部材の第1単電池側接触部が接触するとともに、同じく第2受熱面に2つの熱伝導部材の第2単電池側接触部が接触している上記1)または2)記載の組電池装置。
【0015】
5)組電池の単電池の側面における積層方向と直交する方向に対をなす2つの面のうちのいずれか一方の面が前記第1受熱面となっており、単電池の側面における積層方向に対をなす2つの面のうちのいずれか一方の面が前記第2受熱面となっており、各単電池に1つの熱伝導部材が配置され、一端の熱伝導部材を除いた他の熱伝導部材の第2単電池側接触部が、組電池の隣り合う単電池間に配置されている上記1)または2)記載の組電池装置。
【0016】
6)伝熱器が1つの伝熱面を有し、伝熱器の伝熱面が設けられた側のみに組電池が配置されている上記1)~5)のうちのいずれかに記載の組電池装置。
【0017】
7)伝熱器が互いに反対側を向いた2つの伝熱面を有し、伝熱器の両側に組電池が配置されている上記1)~5)のうちのいずれかに記載の組電池装置。
【0018】
8)前記炭素粒子が、カーボンナノチューブ、グラフェン、黒鉛粒子および炭素繊維からなる群より選択される少なくとも1種類からなる上記1)~7)のうちのいずれかに記載の組電池装置。
【0019】
9)前記複合体の複合材が、アルミニウムマトリックスおよびアルミニウムマトリックス中に分散した炭素粒子からなる上記1)~8)のうちのいずれかに記載の組電池装置。
【0020】
10)前記複合体の複合材が、前記アルミニウムマトリックスを構成するアルミニウム材料中に前記炭素粒子が面方向に分散した複数の炭素粒子分散層と、前記アルミニウムマトリックスを構成するアルミニウム材料で形成された複数のアルミニウム層とを有し、前記炭素粒子分散層と前記アルミニウム層とが、前記複合体の厚さ方向に交互に積層状に配列されている上記9)記載の組電池装置。
【0021】
11)前記熱伝導部材が、前記複合体の両面に単層または複層の樹脂フィルム層が接着剤層で接着された積層材である上記1)~10)のうちのいずれかに記載の組電池装置。
【0022】
12)前記樹脂フィルム層がポリエチレンテレフタレートフィルムとナイロンフィルムの複層の樹脂フィルム層であり、前記ナイロンフィルムが複合体側に配置されている上記11)に記載の組電池装置。
【0023】
13)前記接着剤層がウレタン系接着剤層である上記11)または12)に記載の組電池装置。
【発明の効果】
【0024】
上記1)~13)の組電池装置によれば、伝熱器の伝熱媒体流通路に伝熱媒体を流すことによって、伝熱媒体の有する冷熱または温熱が、熱伝導部材の伝熱器側接触部、第1連結部および第1単電池側接触部を介して単電池の第1受熱面に伝えられるとともに、伝熱器側接触部、第2連結部および第2単電池側接触部を介して単電池の第2受熱面に伝えられ、単電池が冷却または加熱される。しかも、熱伝導部材が、単電池の伝熱器側を向いた第1受熱面に接触する第1単電池側接触部と、単電池の第1受熱面に隣接する第2受熱面に接触する第2単電池側接触部と、両単電池側接触部間に単電池から伝熱器側に突出するように設けられ、かつ伝熱器の伝熱面に接触する伝熱器側接触部とよりなり、熱伝導部材の第1単電池側接触部と伝熱器側接触部とが両者に一体化された第1連結部により連結され、熱伝導部材の第2単電池側接触部と伝熱器側接触部とが両者に一体化された第2連結部により連結され、第1単電池側接触部、第1連結部および第2連結部によって、ばね状弾性を有し、かつ単電池の前記第1受熱面と伝熱器の伝熱面とが接近するような力を受けた際に弾性変形する変形部が形成されているので、組電池の各単電池が変形したり、一部の単電池の第1受熱面が他の単電池の第1受熱面とずれていたとしても、変形部が弾性変形し、組電池の各単電池の第1受熱面と熱伝導部材の第1単電池側接触部との間に接触不良が生じることが防止され、その結果組電池の各単電池と、伝熱器の伝熱面との間の熱伝導部材を介しての熱伝導性の低下が抑制される。したがって、組電池を構成する全単電池を効率良く冷却または加熱することが可能になる。
【0025】
また、熱伝導部材がアルミニウムと炭素粒子とが複合化されている複合材を含む板状の複合体によって形成されているので、特許文献1記載の合成樹脂からなる熱伝導シートに比べて熱伝導率が極めて高くなり、伝熱器と組電池の単電池との間の熱伝導性が優れたものになる。したがって、組電池の単電池を効率良く冷却または加熱することができる。
【0026】
上記2)の組電池装置によれば、比較的簡単な構成で、変形部を形成することができる。
【0027】
上記7)の組電池装置によれば、1つの伝熱器で多くの単電池を冷却することが可能になり、部品点数が少なくなる。
【0028】
上記8)の組電池装置によれば、複合体の熱伝導率を向上させることができる。また、複合体におけるアルミニウムと炭素粒子との複合化を確実に行うことができる。
【0029】
上記9)の組電池装置によれば、アルミニウムマトリックス中での炭素粒子の偏りが少なくなり、複合体の熱伝導性が全体に均一となる。
【0030】
上記10)の組電池装置によれば、複合材の炭素粒子分散層と前記アルミニウム層とが、板状複合体の厚さ方向の全体にわたって交互に積層状に配列されているので、炭素粒子分散層の厚みをなるべく薄くしつつ、炭素粒子分散層の数を多くすることが可能になり、複合体の熱伝導率を効果的に高めることができる。
【0031】
上記11)の組電池装置によれば、熱伝導部材が複合体の両面に樹脂フィルム層を接着した積層材であるから、熱伝導性に優れるとともに、絶縁性、耐突き刺し性、耐食性、耐摩耗性、耐擦過性、耐水性、耐薬品性、発塵防止性が向上し、十分な曲げ強度及びバネ弾性も付与されている。
【0032】
上記12)の組電池装置によれば、熱伝導部材として用いる積層材がナイロンフィルムを備えているから耐突き刺し性をさらに向上させることができるとともに、該ナイロンフィルムにポリエチレンテレフタレートフィルムを組み合わせているから耐水性を向上させることができる。
【0033】
上記13)の組電池装置によれば、熱伝導部材として用いる積層材において、接着剤層がウレタン系接着剤層で形成されているから、樹脂フィルム層の樹脂種を問わず、高い接着強度を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】この発明による組電池装置を部分的に示す側面図である。
図2図1のII-II線矢視図である。
図3図1の組電池装置に用いられる熱伝導部材の一部分を示す拡大断面図である。
図4】この発明による組電池装置の他の実施形態を示す図2に相当する正面図である。
図5】この発明による組電池装置のさらに他の実施形態を示す平面図である。
図6図1の組電池装置において熱伝導部材として用いる積層材の第1実施形態を示す断面図である。
図7図1の組電池装置において熱伝導部材として用いる積層材の第2実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0036】
以下の説明において、各図面に関する説明において、各図面の上下を上下というものとする。
【0037】
また、全図面を通じて同一物および同一部分には同一符号を付す。
【0038】
図1および図2はこの発明による組電池装置を示し、図3図1および図2の組電池装置に用いられる熱伝導部材の構成を示す。
【0039】
図1および図2において、組電池装置(1)は、たとえば複数の角形リチウムイオン二次電池などの扁平状角形単電池(3)からなる組電池(2)と、組電池(2)の下方に配置され、かつ外部に伝熱面(5)を有するとともに内部に伝熱媒体が流通する伝熱媒体流通路(6)を有する伝熱器(4)と、伝熱器(4)の伝熱媒体流通路(6)内を流れる伝熱媒体の有する冷熱または温熱を組電池(2)の各単電池(3)に伝える熱伝導部材(7)とよりなる。
【0040】
組電池(2)を構成する単電池(3)は、一定の高さ(図1の上下方向の寸法)、一定の厚み(図1の左右方向の寸法)および一定の幅(図2の左右方向の寸法)を有する扁平な角柱状であって、1対の端子(8)が突出状に設けられた上端面(9)(第1の端面)と、下端面(11)(第2の端面)と、厚み方向の異なる方向(図1の左右方向)を向いた1対の第1垂直面(12a)および幅方向の異なる方向(図2の左右方向)を向いた1対の第2垂直面(12b)からなる側面(12)とを有している。全単電池(3)は、1つの面、すなわち下端面(11)が伝熱器(4)の伝熱面(5)側を向くとともに伝熱器(4)の伝熱面(5)との間に間隔をおいた状態で厚み方向に積層状に配置されており、端子(8)を利用して全ての単電池(3)が直列状または並列状に接続されることにより組電池(2)が構成されている。ここでは、単電池(3)の伝熱器(4)側を向いた下端面(11)が第1受熱面(13)となり、第1受熱面(13)に隣接する一方(図1の左方)の第1垂直面(12a)が第2受熱面(14)となっている。
【0041】
伝熱器(4)は金属、たとえばアルミニウムを用いて扁平状に形成されており、一定の高さ(図1の上下方向の寸法)、一定の長さ(図1の左右方向の寸法)および一定の幅(図2の左右方向の寸法)を有し、上面が伝熱面(5)となっている。伝熱媒体流通路(6)は伝熱器(4)の長手方向に延びており、伝熱器(4)の幅方向に並んで複数形成されている。伝熱媒体流通路(6)には、組電池(2)を構成する単電池(3)に冷熱を付与したり、温熱を付与したりする伝熱媒体が流れるようになっている。
【0042】
熱伝導部材(7)は、アルミニウムと炭素粒子とが複合化されることにより形成された複合材を含む板状の複合体(20)を用いて形成されており、各単電池(3)毎に1つずつ配置されている。熱伝導部材(7)は、各単電池(3)の伝熱器(4)側を向いた第1受熱面(13)に接触する第1単電池側接触部(15)と、各単電池(3)の第1受熱面(13)に隣接する第2受熱面(14)に接触する第2単電池側接触部(16)と、両単電池側接触部(15)(16)間に各単電池(3)から伝熱器(4)側に突出するように設けられ、かつ伝熱器(4)の伝熱面(5)に接触する伝熱器側接触部(17)とよりなる。一端の熱伝導部材(7)を除いた他の熱伝導部材(7)の第2単電池側接触部(16)は、組電池(2)の隣り合う単電池(3)の近接する2つの第1垂直面(12a)間に配置されている。熱伝導部材(7)の第1単電池側接触部(15)と伝熱器側接触部(17)とは両者に一体化された第1連結部(18)により連結され、熱伝導部材(7)の第2単電池側接触部(16)と伝熱器側接触部(17)とは両者に一体化された第2連結部(19)により連結されており、第1単電池側接触部(15)、第1連結部(18)および第2連結部(19)によって、ばね状弾性を有し、かつ単電池(3)の第1受熱面(13)と伝熱器(4)の伝熱面(5)とが接近するような上下方向の力を受けた際に弾性変形する変形部(10)が形成されている。第1連結部(18)、第2連結部(19)および伝熱器側接触部(17)は、伝熱器側接触部(17)を頂点とする略V字形となっている。
【0043】
図3に示すように、熱伝導部材(7)を形成する複合体(20)は、アルミニウムマトリックス(22)、およびアルミニウムマトリックス(22)中に分散した炭素粒子(23)を含む板状の複合材(21)と、複合材(21)の互いに反対側を向いた2つの主面(21a)を覆うアルミニウム製の主面表皮層(24)からなる。複合材(21)は、アルミニウムと炭素粒子(23)とが複合化されることにより形成されている。
【0044】
複合材(21)は、アルミニウムマトリックス(22)を構成するアルミニウム材料中に炭素粒子(23)が平面方向に分散した複数の炭素粒子分散層(25)と、アルミニウムマトリックス(22)を構成するアルミニウム材料で形成された複数のアルミニウム層(26)とを積層状に備えている。
【0045】
炭素粒子分散層(25)とアルミニウム層(26)は、複合材(21)の厚さ方向の全体に亘って交互に積層された状態に配列されており、上下両端のうちの下端にアルミニウム層(26)が存在し、同上端に炭素粒子分散層(25)が存在するように配列されている。各炭素粒子分散層(25)において、炭素粒子(23)はアルミニウムマトリックス(22)中において複合材(21)の面方向に分散しており、複合材(21)の厚さ方向には殆ど分散していない。各アルミニウム層(26)中には炭素粒子(23)は実質的に存在していない。そして、複数の炭素粒子分散層(25)と複数のアルミニウム層(26)とが、たとえば焼結複合化により接合一体化されている。炭素粒子分散層(25)の厚さは、限定されるものではないが、1~100μmであることが好ましい。アルミニウム層(26)の厚さは限定されるものではないが、5~200μmであることが好ましい。
【0046】
複合体(20)の主面表皮層(24)は、複合材(21)とは別個に形成されかつ複合材(21)に、たとえば焼結により接合一体化されたアルミニウム板(27)からなる。すなわち、図3の上側の主面表皮層(24)は同図上端の炭素粒子分散層(25)と接合一体化され、同図の下側の主面表皮層(24)は同図下端のアルミニウム層(26)と接合一体化されている。なお、主面表皮層(24)は必ずしも必要としない。
【0047】
複合材(21)に用いられる炭素粒子の種類は限定されるものではないが、なるべく高い熱伝導率を有するもの、即ち高熱伝導性のものを用いることが望ましい。特に、炭素粒子としては、天然黒鉛粒子および人造黒鉛粒子が用いられることが好ましい。天然黒鉛粒子としては、鱗片状黒鉛粒子等が用いられる。人造黒鉛粒子としては、等方性黒鉛粒子、異方性黒鉛粒子、熱分解黒鉛粒子等が用いられる。炭素粒子が天然黒鉛粒子および人造黒鉛粒子である場合、平均粒子径が10μm以上3mm以下の天然黒鉛粒子および人造黒鉛粒子が好適に用いられる。
【0048】
また、複合材(21)の炭素粒子としては、炭素繊維、カーボンナノチューブおよびグラフェンからなる群より選択される少なくとも一種が用いられることもある。炭素繊維としては、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維などが用いられる。カーボンナノチューブとしては、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、気相成長炭素繊維(VGCF(登録商標))等が用いられる。炭素粒子が炭素繊維である場合、平均繊維長が10μm以上2mm以下の短炭素繊維が特に好適に用いられる。炭素粒子がカーボンナノチューブである場合、平均長さが1μm以上10μm以下のカーボンナノチューブが特に好適に用いられる。
【0049】
図示は省略したが、複合体(20)の製造方法は、アルミニウムマトリックス(22)を構成する材料からなるアルミニウム箔の片面に塗工液を塗布して炭素粒子層が形成された塗工箔を得る工程と、複数の塗工箔を炭素粒子層が同方向を向くように積層した状態の積層体を形成する工程と、当該積層体の積層方向の一端に位置しかつアルミニウム箔における炭素粒子層が外側を向いた塗工箔の炭素粒子層の上に、一方の主面表皮層(24)となるアルミニウム板(27)を積層するとともに、前記積層体の積層方向の他端に位置しかつアルミニウム箔における炭素粒子層が設けられていない側の面に他方の主面表皮層(24)となるアルミニウム板(27)を積層する工程と、前記積層体および主面表皮層(24)となるアルミニウム板(27)を、加圧加熱焼結装置などによって所定の焼結雰囲気(例:非酸化雰囲気)中にて加熱することにより焼結し、これにより複数の塗工箔を一括して焼結一体化するとともに、両アルミニウム板(27)と塗工箔とを焼結一体化する工程とを含む。
【0050】
塗工液は、炭素粒子(23)とバインダとバインダ用溶剤とを混合状態に含有するものであり、たとえば炭素粒子(23)とバインダと溶剤とを混合容器内に入れて撹拌混合器により撹拌混合することにより得られる。なお必要に応じて、塗工液には分散剤、表面調整剤などが添加される。
【0051】
バインダは、炭素粒子(23)にアルミニウム箔の片面への付着力を付与して炭素粒子(23)がアルミニウム箔から脱落するのを抑制するためのものである。バインダは通常、有機樹脂等の樹脂からなる。具体的には、バインダとして、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、アクリル系樹脂などを使用できる。
【0052】
溶剤はバインダを溶解するものである。具体的には、溶剤として、親水性溶剤(例:イソプロピルアルコール、水)、有機溶剤などを使用できる。
【0053】
撹拌混合器としては、ディスパー、プラネタリーミキサー、ビーズミルなどを使用できる。
【0054】
前記積層体および両アルミニウム板(27)の焼結方法は、真空ホットプレス法、放電プラズマ焼結法(SPS法)、熱間静水圧焼結法(HIP法)、押出法、圧延法などから選択される。なお、放電プラズマ焼結法はパルス通電焼結法とも呼ばれている。
【0055】
積層体中に存在するバインダは、この工程において積層体の温度が略室温から積層体の焼結温度まで上昇するように積層体を加熱する途中で昇華または分散等により消失して積層体から除去される。
【0056】
積層体および両アルミニウム板(27)を焼結する工程では、積層体が上述のように加熱されることにより、アルミニウム箔の金属材料の一部が炭素粒子層内に浸透して炭素粒子層内に存在する微細な空隙(例:炭素粒子層中の炭素粒子(23)間の隙間)に充填されて、当該空隙が略消滅する。これにより、複合材(21)の密度が上昇するとともに複合材(21)の強度が向上する。
【0057】
また、アルミニウム箔を構成する材料の一部が炭素粒子層内に浸透することによって、炭素粒子層中の炭素粒子(23)が、得られた複合体(20)の複合材(21)のアルミニウムマトリックス(22)中において平面方向に分散した状態になり、炭素粒子層が複合材(21)の炭素粒子分散層(25)になり、アルミニウム箔が複合材(21)のアルミニウム層(26)になる。さらに、アルミニウム板(27)が主面表皮層(24)になる。
【0058】
したがって、複合材(21)においては、炭素粒子分散層(25)とアルミニウム層(26)は、上述したように複合材(21)の厚さ方向の全体に亘って交互に積層された状態に配列する。こうして、複合体(20)が作られる。
【0059】
上述した複合材(21)を含む複合体(20)は熱伝導性に優れている。そして、この複合体(20)に樹脂フィルム層を積層することによって、熱伝導部材に絶縁性、耐突き刺し性、耐食性、耐摩耗性、耐水性(耐湿性)、耐薬品性、耐擦過性、耐発塵性を向上させ、また十分な曲げ強度およびバネ弾性を付与できる。本発明においては、熱伝導部材として複合体(20)の両面に単層または複層の樹脂フィルム層を接着剤層で接着した積層材を用いることを推奨する。また、図3の複合体(20)はアルミニウム-カーボンの複合材(21)の両面にアルミニウム製の主面表皮層(24)を有しているが、複合体は、複合材(21)の片面にのみ主面表皮層(24)を有する複合体、および複合材(21)の単独材からなる複合体のどちらかに変更することもできる。
【0060】
以下に、積層材の2つの実施形態について図6、7を参照しつつ詳述する。
【0061】
図6に積層材の第1実施形態に示す。この積層材(51)は、複合体(20)の第1面に第1接着剤層(61)で接着された第1樹脂フィルム層(71)が積層され、第2面に第2接着剤層(62)で接着された第2樹脂フィルム層(72)が積層されている。前記第1樹脂フィルム層(71)と第2樹脂フィルム層(72)は同種の樹脂フィルム層であることには限定されず、異種の樹脂フィルム層であってもよい。
【0062】
図7に積層材の第2実施形態に示す。この積層材(52)は、複合体(20)の両面に複層の樹脂フィルム層が積層されている。即ち、前記複合体(20)の第1面に第1接着剤層(61)で接着された第1樹脂フィルム層(71)が積層され、この第1樹脂フィルム層(71)の外面に、第1樹脂フィルム層とは異種の第3樹脂フィルム層(73)が第3接着剤層(63)で接着されている。また、前記複合体(20)の第2面に第2接着剤層(62)で接着された第2樹脂フィルム層(72)が積層され、この第2樹脂フィルム層(72)の外面に、第2樹脂フィルム層(72)とは異種の第4樹脂フィルム層(74)が第4接着剤層(64)で接着されている。第1樹脂フィルム層(71)と第2樹脂フィルム層(73)は同種の樹脂フィルム層であってもよいし、異種の樹脂フィルム層であってもよい。同様に、第3樹脂フィルム層(73)と第4樹脂フィルム層(74)は同種の樹脂フィルム層であってもよいし、異種の樹脂フィルム層であってもよい。また、複層のフィルム層は3層以上であってもよい。さらに、層第1面側の樹脂フィルム層と第2面側の樹脂フィルムの積層数が異なる場合も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0063】
本発明において、前記第1樹脂フィルム層(71)、第2樹脂フィルム層(72)、第3樹脂フィルム層(73)および第4樹脂フィルム層(74)としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ナイロンフィルム(中でも二軸延伸ナイロンフィルムが好ましい)、ポリスチレン(PS)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリイミド(PI)フィルム、ポリカーボネート(PC)フィルム、アクリル樹脂フィルム、エポキシ樹脂フィルム等が挙げられる。これらの樹脂フィルムを複合体に積層することによって、熱伝導部材に、絶縁性、耐突き刺し性、耐摩耗性、耐水性(耐湿性)、耐薬品性、耐擦過性、耐発塵性が向上し、十分な曲げ強度、バネ弾性を付与できる。また、図7の複層の樹脂フィルムの場合は特性の異なる樹脂フィルムを組み合わせることが好ましい。例えば、ナイロンフィルムは耐突き刺し性が他のフィルムよりも優れているが吸湿性がやや高いので、耐水性(耐湿性)の高いポリエチレンテレフタレートフィルムを組み合わせることによって、熱伝導部材に両方の樹脂フィルムの優れた特性を付与できる。また、ナイロンフィルムおよびポリエチレンテレフタレートフィルムを積層する場合は、積層体(20)側の第1樹脂フィルム層(71)および第2樹脂フィルム層(72)としてナイロンフィルムを用い、外面に露出する第3樹脂フィルム層(73)および第4樹脂フィルム層(74)として耐水性に優れたポリエチレンテレフタレートフィルムを用いることが好ましい。
【0064】
前記第1樹脂フィルム層(71)、第2樹脂フィルム層(72)、第3樹脂フィルム層(73)および第4樹脂フィルム層(74)の厚さは、いずれも、5μm~200μmの範囲に設定されるのが好ましく、中でも10μm~50μmが特に好ましい。
【0065】
前記第1接着剤層(61)、第2接着剤層(62)、第3接着剤層(63)および第4接着剤層(64)を形成する接着剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体等が挙げられ、その他CPP(キャスティングポリプロピレン)を用いてもよい。中でも、ウレタン系樹脂を用いるのが好ましく、この場合には樹脂フィルム層の樹脂種を問わず高い接着強度を確保できる。また、ウレタン樹脂系接着剤は安価であるからコスト面でも有利である。
【0066】
上記接着剤を用いて積層を行う際の積層手法としては、湿式の場合には、特に限定されるものではないが、例えば、ディップコート、スピンコート、グラビア印刷、ダイコーター、ナイフコーター、3本ロール(オフセットタイプ)、スリットコーター、ロールコーター(2本ロール)、スプレーコート、カーテンコート、リバースロールコーター、コンマコーター(カンマコーター)等の塗工方法が挙げられる。また、乾式の場合には、特に限定されるものではないが、例えば、ドライラミネート法、ヒートラミネート法、ホットプレス法等が挙げられる。
【0067】
上述した組電池装置(1)において、組電池(2)を構成するすべての単電池(3)を冷却する場合、伝熱器(4)の伝熱媒体流通路(6)に冷却液を供給する。すると、冷却液が伝熱器(4)の伝熱媒体流通路(6)を流れている間に、冷却液の有する冷熱が、熱伝導部材(7)の伝熱器側接触部(17)、第1連結部(18)および第1単電池側接触部(15)を経て単電池(3)の第1受熱面(13)に伝えられるとともに、熱伝導部材(7)の伝熱器側接触部(17)、第2連結部(19)および第2単電池側接触部(16)を経て単電池(3)の第2受熱面(14)に伝えられ、組電池(2)のすべての単電池(3)が冷却される。
【0068】
寒冷地において、使用開始前に単電池(3)を適正温度まで加熱する必要がある場合には、伝熱器(4)の伝熱媒体流通路(6)に温熱を供給しうる伝熱媒体である高温の加熱液を供給する。すると、加熱液が伝熱器(4)の伝熱媒体流通路(6)を流れている間に、加熱液の有する温熱が、冷却の場合と同様にして組電池(2)の単電池(3)の両受熱面(13)(14)に伝えられ、組電池(2)のすべての単電池(3)が適正温度に加熱される。
【0069】
図1に示すように、少なくとも一部の単電池(3)が上下方向にずれて組電池(2)の下面に段差が発生している場合、熱伝導部材(7)が変形部(10)が組電池(2)の下面の形状に追従して弾性変形し、組電池(2)の各単電池(3)の第1受熱面(13)と熱伝導部材(7)の第1単電池側接触部(15)との間、および熱伝導部材(7)の伝熱器側接触部(17)と伝熱器(4)の伝熱面(5)との間に接触不良が生じることが防止される。したがって、組電池(2)を構成する全単電池(3)を効率良く冷却または加熱することが可能になる。
【0070】
図4はこの発明による組電池装置の他の実施形態を示す。
【0071】
図4に示す組電池装置(30)の場合、組電池(2)の単電池(3)の側面(12)における2つの第2垂直面(12b)がそれぞれ第2受熱面(14)となっている。熱伝導部材(7)は各単電池(3)毎に2つずつ配置されており、各単電池(3)の第1受熱面(13)の図4の左右両側部分にそれぞれ2つの熱伝導部材(7)の第1単電池側接触部(15)が接触するとともに、両第2受熱面(14)にそれぞれ1つの熱伝導部材(7)の第2単電池側接触部(16)が接触している。すなわち、図4左側の熱伝導部材(7)の第1単電池側接触部(15)が各単電池(3)の図4左側部分に接触するとともに、第2単電池側接触部(16)が各単電池(3)の図4左側の第2受熱面(14)に沿って面接触し、図4右側の熱伝導部材(7)の第1単電池側接触部(15)が各単電池(3)の図4右側部分に接触するとともに、第2単電池側接触部(16)が各単電池(3)の図4右側の第2受熱面(14)に沿って面接触している。
【0072】
組電池装置(30)のその他の構成は、図1図3に示す組電池装置(1)と同様である。
【0073】
図5はこの発明による組電池装置のさらに他の実施形態を示す。
【0074】
図5に示す組電池装置(40)の場合、伝熱器(4)が互いに反対側(図5の上下両側)を向いた2つの伝熱面(5)を有しており、伝熱器(4)の両側にそれぞれ組電池(2)が配置されている。また、各組電池(2)の単電池(3)の側面(12)における伝熱器(4)の伝熱面(5)側を向いた一方の第2垂直面(12b)(図5上側の組電池(2)の単電池(3)では下方を向いた第2垂直面(12b)、同図下側の組電池(2)の単電池(3)では上方を向いた第2垂直面(12b))がそれぞれ第1受熱面(13)となっており、第1受熱面(13)に隣接する一方(図5の右方)の第1垂直面(12a)が第2受熱面(14)となっている。
【0075】
熱伝導部材(7)は、両組電池(2)の各単電池(3)毎に1つずつ配置されている。熱伝導部材(7)は、各単電池(3)の伝熱器(4)側を向いた第1受熱面(13)に接触する第1単電池側接触部(15)と、各単電池(3)の第1受熱面(13)に隣接する第2受熱面(14)に接触する第2単電池側接触部(16)と、両単電池側接触部(15)(16)間に各単電池(3)から伝熱器(4)側に突出するように設けられ、かつ伝熱器(4)の伝熱面(5)に接触する伝熱器側接触部(17)とよりなる。一端の熱伝導部材(7)を除いた他の熱伝導部材(7)の第2単電池側接触部(16)は、組電池(2)の隣り合う単電池(3)の近接する2つの第1垂直面(12a)間に配置されている。
【0076】
組電池装置(40)のその他の構成は、図1図3に示す組電池装置(1)と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0077】
この発明による組電池装置は、たとえばリチウム二次電池からなる組電池に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0078】
(1)(30)(40):組電池装置
(2):組電池
(3):単電池
(4):伝熱器
(5):伝熱面
(6):伝熱媒体流通路
(7):熱伝導部材
(8):端子
(9):上端面(第1の端面)
(10):変形部
(11):下端面(第2の端面)
(12):側面
(12a):第1垂直面
(12b):第2垂直面
(13):第1受熱面
(14):第2受熱面
(15):第1単電池側接触部
(16):第2単電池側接触部
(17):伝熱器側接触部
(18):第1連結部
(19):第2連結部
(20):複合体
(21):複合材
(22):アルミニウムマトリックス
(23):炭素粒子
(24):主面表皮層
(25):炭素粒子分散層
(26):アルミニウム層
(27):アルミニウム板
(51)(52):積層材
(61):第1接着剤層(接着剤層)
(62):第2接着剤層(接着剤層)
(63):第3接着剤層(接着剤層)
(64):第4接着剤層(接着剤層)
(71):第1樹脂フィルム層(樹脂フィルム層)
(72):第2樹脂フィルム層(樹脂フィルム層)
(73):第3樹脂フィルム層(樹脂フィルム層)
(74):第4樹脂フィルム層(樹脂フィルム層)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7