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特許7170458ボンディング装置、ダイボンダ、及びボンディング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】ボンディング装置、ダイボンダ、及びボンディング方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/52 20060101AFI20221107BHJP
【FI】
H01L21/52 F
H01L21/52 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018151394
(22)【出願日】2018-08-10
(65)【公開番号】P2020027851
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000110859
【氏名又は名称】キヤノンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100148987
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 礼子
(72)【発明者】
【氏名】永元 信裕
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-165230(JP,A)
【文献】特開2005-191073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピックアップ位置において、コレットにてチップを吸着してピックアップし、このコレットをボンディング位置に搬送し、ボンディング位置でコレットを弾性変形させてチップをボンディングすることにより、上下のチップが互いにずれるようにして複数のチップを積層するボンディング装置において、
前記コレットを制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、
ボンディングされている最下位のチップの端部であり、その上にボンディングするチップがはみ出す側の基準位置を特定する基準位置特定部を備え、
前記コレットは、ボンディングするチップを、前記基準位置特定部にて特定された前記基準位置よりもはみ出し側とは反対側において、前記最下位のチップから、ボンディングするチップまでの重なり部分のみを押すことを特徴とするボンディング装置。
【請求項2】
コレットのチップ対応面が、ボンディングされている最下位のチップから、ボンディングするチップまでの重なり部分と同一形状であることを特徴とする請求項1に記載のボンディング装置。
【請求項3】
前記制御手段は、ボンディングされている最下位のチップから、ボンディングするチップまでの重なり部分を押すように、コレットの動きを補正する補正部を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のボンディング装置。
【請求項4】
前記補正部は、ピックアップ直後、ボンディング直前、水平移動時のいずれかであることを特徴とする請求項3に記載のボンディング装置。
【請求項5】
前記補正部は、ボンディングするチップを、ボンディングされている最上位のチップに搭載して、最下位のチップからのはみ出し量だけコレットの水平方向の位置補正を行うものであることを特徴とする請求項3に記載のボンディング装置。
【請求項6】
前記基準位置特定部は、ボンディングされている最下位のチップの画像認識を行って、前記基準位置を認識することを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のボンディング装置。
【請求項7】
ボンディングするチップサイズが、ボンディングされている最上位のチップサイズと異なる場合、前記最上位のチップをボンディングしたコレットのチップ対応面とは異なるサイズのチップ対応面を有するコレットに交換可能であることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のボンディング装置。
【請求項8】
前記請求項1~請求項7に記載のボンディング装置を備えたことを特徴とするダイボンダ。
【請求項9】
ピックアップ位置において、コレットにてチップを吸着してピックアップし、このコレットをボンディング位置に搬送し、ボンディング位置でコレットを弾性変形させてチップをボンディングすることにより、上下のチップが互いにずれるようにして複数のチップを積層するボンディング方法において、
ボンディングされている最下位のチップの端部であり、その上にボンディングするチップがはみ出す側の基準位置を特定し、
前記コレットは、ボンディングするチップを、特定された前記基準位置よりもはみ出し側とは反対側において、前記最下位のチップから、ボンディングするチップまでの重なり部分のみを押すことを特徴とするボンディング方法。
【請求項10】
ボンディングするチップを、ボンディングされている最上位のチップに搭載してチップの吸着を解除し、最下位のチップからのはみ出し量だけコレットの水平方向の位置の補正を行った後、コレットにてボンディングするチップを押しつけることを特徴とする請求項9に記載のボンディング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボンディング装置、ダイボンダ、及びボンディング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の小型、薄型、高密度化を実現するために、特許文献1に示すような、複数の半導体チップ(以下、チップという)を積層するマルチチップパッケージ(積層型半導体装置)がある。 すなわち、特許文献1に記載されている積層型半導体装置は、図9に示すように、基板101やリードフレーム等の上に、同じサイズのチップ102を順にずらして積層し、基板101とチップ102及びチップ間102、102を電気的な接続を行うことにより構成される。半導体装置の製造においては、多数個の素子を一括して造り込まれたウェーハをダイシングして個々のチップに分離し、これを一個ずつ所定位置にボンディングするというチップボンディングの手法が採用されている。
【0003】
ボンディング装置は、例えばフッ素ゴムからなるラバー103(断熱材)と、ラバー103を側面から加圧して保持するホルダー104にて構成されるコレット105を備える。ラバー103は、その下端面に開口した吸着孔(図示省略)を有しており、この吸引孔を介してチップ102が真空吸引され、ラバー103の下端面がチップ対応面となって、チップ対応面にチップ102が吸着する。ラバー103は、コレット105と基板101の傾きや、ボンディングされているチップ102のうねりを吸収するため、弾性変形する。
【0004】
積層型半導体装置の製造方法は、図10に示すように、まず、ピックアップ位置106の上方に配置される確認用カメラにてピックアップすべきチップ102を観察して、コレット105をこのピックアップすべきチップ102の上方に位置させた後、矢印aのようにコレット105を下降させてこのチップ102をピックアップする。その後、矢印bのようにコレット105を上昇させる。
【0005】
次に、ボンディング位置107の上方に配置された確認用カメラにて、ボンディングすべき基板101のボンディング位置107を観察して、コレット105を矢印c方向へ移動させて、このボンディング位置107の上方に位置させた後、コレット105を矢印dのように下降移動させて、このボンディング位置107にチップ102を供給する。また、ボンディング位置107にチップ102を供給した後は、コレット105を矢印eのように上昇させた後、矢印fのように、ピップアップ位置106の上方の待機位置に戻す。
【0006】
すなわち、コレット105を、順次、矢印a、b、c、d、e、fのように移動させることによって、ピックアップ確認用カメラの観察に基づいて位置決めされたチップ102をコレット105でピックアップし、このチップ102をボンディングすることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2013-55133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載されているような積層型半導体装置において積層されるチップは、同じチップサイズのものを、接続端子のみが見える量だけずらして順番に積み上げていくことが一般的である。このため、最下位のチップの端部からのはみ出し量(オーバーハング量)はそれほど大きなものではない。しかしながら、1つのパッケージにおいて、異なるサイズのチップを積層する場合、オーバーハング量が例えば3mm程度と大きくなる場合がある。
【0009】
ところで、チップをボンディング位置にて押し付ける際は、チップ面を全面押し付ける必要があることから、コレットのチップ対応面が、ボンディングするチップと同じサイズか、あるいはボンディングするチップよりも僅かに大きいサイズを有するコレットを使用するのが一般的であった。このため、既にボンディングされているチップとは異なるサイズのチップを積層する場合は、違うサイズのコレットに変更する必要がある。
【0010】
図9に示すように、チップ102がオーバーハングしている状態で、チップ102と同じサイズのチップ対応面を有するコレット105でチップ102の全面を押さえる場合、下にチップ102がある箇所(すなわち、上下においてチップ102が重なっている箇所)は、チップ102は挟み込まれて、コレット105のラバー103はクッションのように弾性変形する。ところが、オーバーハングしている箇所(つまり、上下においてチップ102が重なっておらず、下にチップ102が無い箇所)は、ラバー103は下から反力を受けないため変形しない。これにより、ラバー103が変形する箇所と変形しない箇所の境界でチップ102が折れ曲がって割れCが発生してしまう。
【0011】
これを防止するために、コレットを変形させない荷重で押しつけるように設定しようとすると、チップ間又は基板とチップとの間の接着剤にボイドが発生するおそれがある。また、硬度の高いチップ対応面を有するコレットを使用すると、変形することができずにボイドが発生してしまう。
【0012】
そこで、本発明は斯かる実情に鑑み、複数のチップをずらして積層する場合に、チップに十分な荷重をかけながらもチップの割れが生じないボンディング装置、ダイボンダ、及びボンディング方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のボンディング装置は、ピックアップ位置において、コレットにてチップを吸着してピックアップし、このコレットをボンディング位置に搬送し、ボンディング位置でコレットを弾性変形させてチップをボンディングすることにより、上下のチップが互いにずれるようにして複数のチップを積層するボンディング装置において、前記コレットを制御する制御手段を備え、前記制御手段は、ボンディングされている最下位のチップの端部であり、その上にボンディングするチップがはみ出す側の基準位置を特定する基準位置特定部を備え、前記コレットは、ボンディングするチップを、前記基準位置よりもはみ出し側とは反対側を押し、前記最下位のチップから、ボンディングするチップまでの重なり部分を押すものである。
【0014】
本発明のボンディング装置によれば、ボンディングされている最下位のチップの端部であり、その上にボンディングするチップがはみ出す側の基準位置を特定して、前記最下位のチップから、ボンディングするチップまでの重なり部分をコレットにて押すことができる。すなわち、コレットは、押すべき箇所(つまり、ボンディングされている最下位のチップから、ボンディングしようとするチップまでの重なり部分)のみを押すことができる。これにより、押すべき箇所には十分な荷重をかけることができ、チップのオーバーハング部分(最下位のチップの端部からはみ出した部分)には荷重をかけないものとなる。
【0015】
前記構成において、コレットのチップ対応面が、ボンディングされている最下位のチップから、ボンディングするチップまでの重なり部分と同一形状であるものとしてもよい。この場合の同一形状とは、完全に同一の場合のみではなく、寸法公差内に収まる範囲を含み、幾何公差内に収まる範囲を含むものである。
【0016】
前記構成において、前記制御手段は、ボンディングされている最下位のチップから、ボンディングするチップまでの重なり部分を押すように、コレットの動きを補正する補正部を備えてもよい。この場合、前記補正部は、ピックアップ直後、ボンディング直前、水平移動時のいずれかであってもよい。
【0017】
前記構成において、前記補正部は、ボンディングするチップを、ボンディングされている最上位のチップに搭載して、最下位のチップからのはみ出し量だけコレットの水平方向の位置補正を行った後、コレットにてボンディングするチップを押しつけるように制御するものであってもよい。
【0018】
前記構成において、前記基準位置特定部は、ボンディングされている最下位のチップの画像認識を行って、前記基準位置を認識するものであってもよい。
【0019】
前記構成において、ボンディングするチップサイズが、ボンディングされている最上位のチップサイズと異なる場合、前記最上位のチップをボンディングしたコレットのチップ対応面とは異なるサイズのチップ対応面を有するコレットに交換可能であってもよい。
【0020】
本発明のダイボンダは、前記本発明のボンディング装置を備えたものである。
【0021】
本発明のボンディング方法は、ピックアップ位置において、コレットにてチップを吸着してピックアップし、このコレットをボンディング位置に搬送し、ボンディング位置でコレットを弾性変形させてチップをボンディングすることにより、上下のチップが互いにずれるようにして複数のチップを積層するボンディング方法において、ボンディングされている最下位のチップの端部であり、その上にボンディングするチップがはみ出す側の基準位置を特定し、前記コレットは、ボンディングするチップを、前記基準位置よりもはみ出し側とは反対側を押し、前記最下位のチップから、ボンディングするチップまでの重なり部分を押すものである。
【0022】
前記構成において、ボンディングするチップを、ボンディングされている最上位のチップに搭載してチップの吸着を解除し、最下位のチップからのはみ出し量だけコレットの水平方向の位置の補正を行うものであってもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明のボンディング装置、ダイボンダ、及びボンディング方法は、複数のチップをずらして積層する場合に、ボンディングしようとするチップの押すべき箇所には十分な荷重をかけることができ、オーバーハング部分には荷重がかからないものとなるため、十分な荷重をかけながらも割れが生じることなくチップをボンディングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態のボンディング装置を構成するコレットの簡略側面図である。
図2】本発明の第1実施形態のボンディング装置を構成するコレットの往復動を示す簡略図である。
図3】本発明の第1実施形態のボンディング装置を構成するコレットの往復動において、ピックアップ直後に補正を行う場合を示す簡略図であり、(a)は第1の補正方法、(b)は第2の補正方法である。
図4】本発明の第1実施形態のボンディング装置を構成するコレットの往復動において、水平移動時に補正を行う場合を示す簡略図であり、(a)は第1の補正方法、(b)は第2の補正方法である。
図5】本発明の第1実施形態のボンディング装置を構成するコレットの往復動において、ボンディング直前に補正を行う場合を示す簡略図であり、(a)は第1の補正方法、(b)は第2の補正方法である。
図6】本発明の第1実施形態のボンディング方法を示すフローチャート図である。
図7】本発明の第2実施形態のボンディング装置を構成するコレットの簡略側面図であり、(a)はチップ搭載直後であり、(b)はチップ搭載後におけるコレットの移動後である。
図8】本発明の第2実施形態のボンディング方法を示すフローチャート図である。
図9】従来のボンディング装置を構成するコレットの簡略側面図である。
図10】従来のピックアップ方法の全体を示す簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図1図8に基づいて説明する。
【0026】
本発明のボンディング装置は、接着剤を介してダイ(電子回路を作り込んだシリコン基板のチップ)をリードフレームや基板等に接着するダイボンダに設置される装置である。本発明のボンディング装置は、図1のように、基板1やリードフレーム等の上に、複数(図示例では2つ)の半導体チップ2a、2bを順にずらして積層された積層型半導体装置を形成することができる。図1においては、2aが基板1にボンディングされている最下位の半導体チップであり、2bが2aにボンディングしようとする半導体チップを示している。
【0027】
本発明の第1実施形態のボンディング装置は、図2に示すように、ピックアップ位置3とボンディング位置4との間の移動が可能なボンディングアーム(図示省略)を備え、ボンディングアームの先端部には、半導体チップ2(以下、チップ2という)を吸着するコレット5を保持している。
【0028】
コレット5は、図2の矢印に示すように、ピックアップ位置3とボンディング位置4間を往復動作してチップ2を搬送するものである。コレット5は、図1に示すように、吸着部材6と、吸着部材6を保持する金属製のホルダー7とから構成されている。
【0029】
ホルダー7は、図1に示すように、軸部11と、軸部11の下端部と一体のフランジ部12とを備え、フランジ部12の下面に爪部13を一体に有する。爪部13が吸着部材6の側面を加圧することで、ホルダー7は吸着部材6を保持している。
【0030】
吸着部材6は、肉厚が上下方向に均一な断熱材にて構成されている。より具体的には、吸着部材6は、天然ゴムや合成ゴムのラバー部品であり、例えばフッ素ゴムにて構成される。図1に示すように、吸着部材6の下面は平坦面となっており、この面が、チップ2が当接するチップ対応面8となる。吸着部材6には、チップ対応面8に開口する吸着孔(図示省略)が設けられており、吸着孔に図外の真空発生器が接続されている。この真空発生器の駆動にて吸着孔のエアが吸引されると、チップ2が真空吸引され、チップ対応面8にチップ2が吸着する。なお、この真空吸引が解除されれば、チップ対応面8からチップ2が外れる。
【0031】
吸着部材6のチップ対応面8の形状やサイズは、種々のものとすることができ、ボンディングしようとするチップ2のサイズに応じて選択することができる。例えば、複数のサイズのコレット5を準備し、ボンディングされている最上位のチップサイズと異なるチップサイズのチップをボンディングしようとする場合、ボンディングされている最上位のチップのボンディングに使用していたコレット5から、別のコレット5に交換することができる。
【0032】
本実施形態において、チップ対応面8の形状は、図1に示すように、ボンディングされている最下位のチップ2aから、ボンディングするチップ2bまでの重なり部分と同一形状としている。この場合の重なり部分は、ボンディングされている最下位のチップ2aの端部9から、その上にボンディングされるチップ2bのはみ出し側と反対側の端部15までの範囲である。この場合の同一形状とは、完全に同一の場合のみではなく、寸法公差内に収まる範囲を含み、幾何公差内に収まる範囲を含むものである。
【0033】
すなわち、チップ2bのボンディングに使用するコレット105のチップ対応面8は、ボンディングするチップ2bのサイズよりも小さなサイズであり、より具体的には、図1に示すように、チップ対応面8は、ボンディングするチップ2bのサイズからオーバーハング量Gだけ小さいサイズを有するものである。オーバーハングとは、上下のチップ間において、最下位のチップ2aの端部9から上のチップ2bがはみ出すことであり、オーバーハング量Gとは、そのはみ出し量であって、ボンディングされている最下位のチップ2aの端部9から、その上にボンディングするチップ2bのはみ出し側の端部10までの寸法である。
【0034】
これにより、本実施形態のボンディング装置においてコレット5は、ボンディングされた最下位のチップであるチップ2aから、ボンディングしようとするチップ2bまでの重なり部分のみを押すことができる。従って、押すべき箇所(チップ2aからチップ2bまでの重なり部分)には十分な荷重をかけることができ、上のチップ2bのオーバーハング部分(チップ2bがチップ2aからはみ出している部分)には荷重をかけないものとなる。
【0035】
ピックアップ位置3は、ほぼ常温であり、ピックアップステージ21に多数のチップ2が載置されている。ピックアップステージ21はアライメントステージ(いわゆる中間ステージ)としているが、これに限るものではなく、ボンディングする前にチップ2を載置するためのステージであればよい。ピックアップステージ21上のチップ2の裏面には、加熱することで接着剤として作用するフィルム状接着剤(ダイアタッチフィルム)が貼り付けられている。
【0036】
ピックアップ位置3において、コレット5にてピックアップしたチップ2は、基板1の所定位置(ボンディング位置4)へ搬送される。コレット5は、チップ2に荷重を付与して、コレット5の吸着部材6が弾性変形する。ボンディングされたチップ2は、ボンディングステージ14にて加熱され、ダイアタッチフィルムが接着剤として作用することで、チップ2は基材1にボンディングされる。その後、コレット5は、ピックアップ位置3へ戻り、前記した方法でチップ2をピックアップした後、ボンディングされている最上位のチップ2a上にずらしてチップを積層する。この場合、ボンディングしようとするチップ2bのオーバーハング量Gは予め設定されている。このようにして、コレット5は図2の矢印のようにピックアップ位置3とボンディング位置4とを往復動作して、積層型半導体装置を形成することができる。
【0037】
ボンディング装置は、図1に示すように制御手段16を備え、この制御手段16にてコレット5の動作が制御される。制御手段16は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を中心としてROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等がバスを介して相互に接続されたマイクロコンピューターである。なお、ROMには、CPUが実行するプログラムやデータが格納されている。
【0038】
制御手段16は、基準位置特定部17とオーバーハング量記憶部18と補正部19とを備える。
【0039】
基準位置特定部17は、基準位置Sを特定するものである。基準位置Sとは、ボンディングされている最下位のチップ2aの端部のうち、その上にボンディングするチップ2bがはみ出す側の端部9である。基準位置特定部17は、例えば画像認識により基準位置Sを認識する。すなわち、ボンディング位置4の上方に配置されたカメラ(図示省略)にて撮像された最下位のチップ2aの画像認識を行い、基準位置9のステージ上での位置を認識することができる。
【0040】
オーバーハング量記憶部18は、ユーザが設定したチップ2のオーバーハング量Gを制御手段15に記憶させるものである。
【0041】
補正部19は、基準位置特定部17により特定した基準位置Sと、オーバーハング量記憶部18に記憶されているオーバーハング量Gとに基づいて、ボンディングされている最下位のチップ2aから、ボンディングするチップチップ2bまでの重なり部分を押すように、コレット5の動きを補正するものである。すなわち、図1に示すように、チップ2bをボンディングする際に、吸着部材6の端部20(ボンディングするチップ2bがはみ出す側の吸着部材6の端部)が基準位置Sに対応するように、コレット5の水平方向の移動を補正する。
【0042】
補正部19は、ピックアップ直後、水平移動時、ボンディング直前のいずれかを補正する。ピックアップ直後に補正を行う方法としては、図3(a)に示すように、チップ2をピックアップした直後、矢印C1に示すように、水平方向においてボンディング位置4から離れるように補正したり、図3(b)に示すように、チップ2をピックアップした直後、矢印C2に示すように、水平方向においてボンディング位置4に接近するように補正したりする。
【0043】
水平移動時に補正を行う方法としては、図4(a)の矢印C3に示すように、水平方向の移動量が、仮想線で示す規定の移動量より短くなるように補正したり、図4(b)の矢印C4に示すように、水平方向の移動量が、仮想線で示す規定の移動量より長くなるように補正したりする。
【0044】
ボンディング直前に補正を行う方法としては、図5(a)に示すように、チップ2をボンディング位置4の上方に位置させた後、矢印C5に示すように、水平方向においてピックアップ位置3に接近するように補正したり、図5(b)に示すように、チップ2をボンディング位置4の上方に位置させた後、矢印C6に示すように、水平方向においてピックアップ位置3から離れるように補正したりする。
【0045】
第1実施形態のボンディング装置を使用して、積層型半導体装置を形成するボンディング方法を図6のフローチャートを用いて説明する。
【0046】
まず、チップ2(最下位のチップ2a)を基板1にボンディングする(ステップS1)。すなわち、ピックアップ位置3において、コレット5にてピックアップしたチップ2(2a)は、基板1の所定位置(ボンディング位置4)へ搬送される。コレット5は、チップ2(2a)に荷重を付与して、コレット5の吸着部材6が弾性変形する。ボンディングされたチップ2(2a)は、ボンディングステージ14にて加熱され、ダイアタッチフィルムが接着剤として作用することで、チップ2(2a)は基材1にボンディングされる。この場合、コレット5のチップ対応面8が、チップ2(2a)とほぼ同様の形状を有するコレット5を使用している。
【0047】
予め設定されたオーバーハング量Gから、次に積層するチップ2bをボンディングするためのコレット5を選択する(ステップS2)。すなわち、コレット5のチップ対応面8の形状は、ボンディングされている最下位のチップ2aから、ボンディングするチップ2bまでの重なり部分と同一形状としている。具体的には、図1に示すように、ボンディングするチップ2bのサイズからオーバーハング量Gだけ小さなチップ対応面8の吸着部材6を有するコレット5である。
【0048】
制御手段15は、ボンディングされている最下位のチップ2aの端部9であり、ボンディングするチップ2bがはみ出す側の基準位置Sを特定する(ステップS3)。すなわち、ボンディング位置4の上方に配置されたカメラ(図示省略)にて撮像された最下位のチップ2aの画像認識を行って、基準位置9のステージ上での位置を認識することができる。
【0049】
コレット5は、図1に示すように、吸着部材6の端部20からオーバーハング量Gだけはみ出るようにチップ2(2b)をピックアップ(ステップS4)した後、吸着部材6の端部20が基準位置Sに対応するように、チップ2bをチップ2aに搭載する(ステップS5)。すなわち、ボンディングされている最下位のチップ2(2a)の上に、基準位置Sからオーバーハング量Gだけずらしてチップ2(2b)を積層する。その際、コレット5の動きを補正する必要があれば、補正部19は、ピックアップ直後、水平移動時、ボンディング直前のいずれかを補正する。
【0050】
その後、コレット5は、その位置でチップ2bを押しつけて、図1の矢印に示すように、荷重をかける(ステップS6)。これにより、ボンディングされている最下位のチップ2aから、ボンディングしようとするチップ2bまでの重なり部分のみに、均一に十分な荷重をかけることができる。従って、押すべき箇所(重なり部分)には十分な荷重をかけることができ、上のチップ2bのオーバーハング部分(チップ2bがはみ出している部分)には荷重をかけないものとなる。
【0051】
このようにして、コレット5は図2の矢印のようにピックアップ位置3とボンディング位置4とを往復動作して、必要な数だけチップ2の積層を行い、積層型半導体装置を形成する(ステップS2~ステップS7)。この場合、ボンディングするチップのサイズが、ボンディングされている最上位のチップのサイズと異なる場合(異なるサイズのチップをボンディングしようとする場合)は、ステップS2において、最上位のチップをボンディングしたコレットのチップ対応面とは異なるサイズのチップ対応面を有するコレットに交換する。一方、ボンディングするチップのサイズが、ボンディングされている最上位のチップのサイズと同じである場合(同じチップをボンディングしようとする場合)は、ステップS2において、最上位のチップをボンディングしたコレット5と同様のコレットを使用すればよいため、コレット5を交換する必要はない。
【0052】
第1実施形態のボンディング装置及びボンディング方法は、複数のチップ2をずらして積層する場合に、ボンディングされている最下位2aのチップの端部9であり、その上にボンディングするチップ2bがはみ出す側の基準位置を特定して、最下位のチップ2aから、ボンディングするチップ2bまでの重なり部分をコレット5にて押すことができる。すなわち、コレット5は、押すべき箇所(つまり、ボンディングされている最下位のチップ2aから、ボンディングしようとするチップ2bまでの重なり部分)のみを押すことができる。これにより、ボンディングしようとするチップ2bの押すべき箇所には十分な荷重をかけることができ、オーバーハング部分には荷重がかからないものとなるため、十分な荷重をかけながらも割れが生じることなくチップ2をボンディングすることができる。
【0053】
図7及び図8は第2の実施形態のボンディング装置を示す。図7では、基板1に2つのチップ2(最下位のチップ2a及び最上位のチップ2c)がボンディングされており、その上にチップ2(2b)をボンディングする状態を示す。第2実施形態のコレット25も、吸着部材26と、吸着部材26を保持する金属製のホルダー27とから構成されている。本実施形態でも、吸着部材26のチップ対応面28の形状やサイズは、種々のものとすることができ、ボンディングしようとするチップ2のサイズに応じて選択することができる。本実施形態のチップ対応面28の形状は、図7(a)に示すように、ボンディングするチップ2bのサイズとほぼ同一形状及び同一サイズである。この場合の同一形状とは、完全に同一の場合のみではなく、寸法公差内に収まる範囲を含み、幾何公差内に収まる範囲を含むものである。
【0054】
第2実施形態のボンディング装置は、図7(a)に示すように制御手段29を備え、この制御手段29にてコレット25の動作が制御される。制御手段29は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を中心としてROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等がバスを介して相互に接続されたマイクロコンピューターである。なお、ROMには、CPUが実行するプログラムやデータが格納されている。
【0055】
制御手段29は、基準位置特定部30と、オーバーハング量記憶部31と、補正部32とを備える。基準位置特定部30及びオーバーハング量記憶部31は、前記第1実施形態のものと同様のものである。
【0056】
補正部32は、ボンディングするチップ2bを最上位のチップ2cに搭載して、最下位のチップ2aからのはみ出し量(オーバーハング量)Gだけコレット25の水平方向の位置補正を行う。すなわち、図7(a)のように、コレット25が、オーバーハング量Gだけチップ2bを最下位のチップ2aからはみ出るようにチップ2aの上に搭載すると、補正部32は、オーバーハング量Gだけ図7(a)の矢印の向き(つまり、チップ2bがオーバーハングしている方向と反対の方向)にコレット25を水平移動させる。これにより、図7(b)に示すように、吸着部材6の端部20(ボンディングするチップ2bが最下位のチップ2aからはみ出す側)が基準位置Sに対応した状態で、コレット25がボンディングするチップ2bを押しつける。
【0057】
これにより、本実施形態のボンディング装置においてコレット25は、ボンディングされた最下位のチップ2aから、ボンディングしようとするチップ2bまでの重なり部分のみを押すことができる。従って、押すべき箇所(重なり部分)には均一に十分な荷重をかけることができ、上のチップ2bのオーバーハング部分(チップ2bがはみ出している部分)には荷重をかけないものとなる。
【0058】
第2実施形態のボンディング装置を使用して、積層型半導体装置を形成するボンディング方法を図8のフローチャートを用いて説明する。
【0059】
まず、第1実施形態のステップS1と同様に、チップ2(最下位のチップ2a)を基板1にボンディングする(ステップS11)。次に以下の方法で、チップ2(2c、2b)をボンディングする。チップ2cのボンディング方法と、チップ2bのボンディング方法は同様の方法であり、以下、チップ2bのボンディング方法を説明する。
【0060】
積層するチップ2(2b)をボンディングするためのコレット25を選択する(ステップS12)。本実施形態では、吸着部材26のチップ対応面28の形状は、図7に示すように、ボンディングするチップ2bのサイズとほぼ同一形状及び同一サイズである。このため、ボンディングするチップ2bのサイズが、ボンディングされている最上位のチップ2cのサイズと異なる場合(異なるサイズのチップをボンディングしようとする場合)は、最上位のチップ2cをボンディングしたコレットのチップ対応面とは異なるサイズのチップ対応面を有するコレットに交換する。一方、ボンディングするチップ2bのサイズが、ボンディングされている最上位のチップ2cのサイズと同じである場合(同じチップをボンディングしようとする場合)は、ステップS12において、最上位のチップ2cをボンディングしたコレット25と同様のコレットを使用すればよいため、コレット25を交換する必要はない。
【0061】
第1実施形態のステップS3と同様に、制御手段29は、ボンディングされている最下位のチップ2aの端部9であり、その上にボンディングするチップ2bがはみ出す側の基準位置Sを特定する(ステップS13)。
【0062】
コレット25は、チップ2(2b)をピックアップ(ステップS14)した後、吸着部材6の端部20が基準位置Sからオーバーハング量Gだけはみ出るように、チップ2bを、ボンディングされている最上位のチップ2cに搭載する(ステップS15)。すなわち、制御手段29は、オーバーハング量記憶部31に記憶されているオーバーハング量Gに基づいて、ボンディングされている最上位のチップ2cの上に、基準位置Sからオーバーハング量Gだけずらしてチップ2(2b)を積層する。
【0063】
制御手段29は、オーバーハング量Gだけ図7(a)の矢印の向き(つまり、チップ2bがオーバーハングしている方向と反対の方向)にコレット25を水平移動させる(ステップS16)。これにより、図7(b)に示すように、吸着部材6の端部20が基準位置Sに対応する。
【0064】
その後、コレット25は、その位置でチップ2bを押しつけて、図7(b)の矢印に示すように、荷重をかける(ステップS17)。これにより、ボンディングされている最下位のチップ2aから、ボンディングしようとするチップ2bまでの重なり部分のみに、均一に十分な荷重をかけることができる。従って、押すべき箇所(重なり部分)には十分な荷重をかけることができ、上のチップ2b、2cのオーバーハング部分(チップ2b、2cがはみ出している部分)には荷重をかけないものとなる。
【0065】
このようにして、コレット5はピックアップ位置3とボンディング位置4とを往復動作して、必要な数だけチップ2の積層を行い、積層型半導体装置を形成する(ステップS12~ステップS18)。
【0066】
第2実施形態のボンディング装置及びボンディング方法でも、前記第1実施形態のボンディング装置及びボンディング方法と同様の作用効果を奏する。なお、図7に示すボンディング装置において図1と同様の部材については、図1と同一符号を付してその説明を省略する。
【0067】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、基板に積層するチップの数は問わず、チップの種類数も1種類であっても複数種類であってもよい。すなわち、第1実施形態では、説明を簡単にするため、チップの数を2つとした(つまり、チップ2aは最下位のチップであり、最上位のチップである)が、図7に示すように3つ以上であってもよい。この場合、オーバーハング量は、図7に示すように、最下位のチップ2aの端部9が基準位置Sとなって、この基準位置Sからボンディングするチップ2bがはみ出す量である。従って、コレット5のチップ対応面は、最下位のチップ2aの端部9から、ボンディングするチップ2bの端部15までの範囲を有するサイズとなる。第1実施形態において、コレットの動きを補正しないものであってもよい。
【符号の説明】
【0068】
2 チップ
2a 最下位のチップ
2b ボンディングするチップ
2c 最上位のチップ
3 ピックアップ位置
4 ボンディング位置
5 コレット
9 端部
16、29 制御手段
S 基準位置
17 基準位置特定部
19、32 補正部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10