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  • -下水管路用管継手構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】下水管路用管継手構造
(51)【国際特許分類】
   F16L 21/04 20060101AFI20221107BHJP
   F16L 58/10 20060101ALI20221107BHJP
   E03F 3/04 20060101ALI20221107BHJP
   E03C 1/12 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
F16L21/04
F16L58/10
E03F3/04 Z
E03C1/12 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018163267
(22)【出願日】2018-08-31
(65)【公開番号】P2020034139
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100112575
【弁理士】
【氏名又は名称】田川 孝由
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 隆
(72)【発明者】
【氏名】八重垣 淳平
(72)【発明者】
【氏名】山田 祥延
(72)【発明者】
【氏名】小林 真
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-104433(JP,A)
【文献】実開平03-023283(JP,U)
【文献】特開2014-167350(JP,A)
【文献】特開2003-278991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 21/04
F16L 58/10
E03F 3/04
E03C 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の鋳鉄管(P1)の受口(1)内に他の鋳鉄管(P2)の挿し口(2)を挿入し、その受口(1)の内周面と挿し口(2)の外周面との間の環状空間(a)にゴム輪(3)を介在させた下水管路用管継手構造において、
前記挿し口先端面(2a)と前記受口(1)の奥端面(1a)との間に防食性弾性部材(11)を圧接して介在して、挿し口(2)の先端面(2a)と受口(1)の奥端面(1a)との隙間からは、下水のみならず、硫化水素等の腐食性気体も挿し口(2)の外面と受口(1)の内面との間に入り込まないようにし、かつ、その防食性弾性部材(11)は、挿し口先端面(2a)を被うとともに挿し口(2)及び受口(1)の内周面(b)に突出しないようになっている下水道用管継手構造。
【請求項2】
筒状の継ぎ輪(20)の一端の受口(21)に一鋳鉄管(P)の挿し口(2)を挿入し、前記継ぎ輪(20)の他端の受口(22)にも他の鋳鉄管(P)の挿し口(2)を挿入し、前記各受口(21、22)の内周面と各挿し口(2)の外周面との間の環状空間(a)にゴム輪(3)を挿し口(2)を受口(21、22)内に突出させた状態でそれぞれ介在させた下水管路用管継手構造において、
前記挿し口先端面(2a)に防食性弾性部材(31)を設け、その防食性弾性部材(31)は、挿し口先端面(2a)を被うとともに挿し口内周面に突出しないようになっており、かつ、前記防食性弾性部材(31)によって、挿し口(2)の先端面(2a)及びその前記突出させた挿し口(2)の外周面が下水から隔離され、その挿し口(2)外周面と継ぎ輪(20)の受口(21、22)の内周面の間(c)には、下水のみならず、硫化水素等の腐食性気体も入り込まないようになっている下水管路用管継手構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の管継手構造がK形又はT形である下水管路用管継手構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、下水管路における管継手構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一の鋳鉄管の受口内に他の鋳鉄管の挿し口を挿入し、その受口の内周面と挿し口の外周面との間の環状空間にゴム輪を介在させた管継手構造はよく知られている。
また、筒状の継ぎ輪の一端受口に一の鋳鉄管の挿し口を挿入し、前記継ぎ輪の他端受口にも他の鋳鉄管の挿し口を挿入し、前記各受口の内周面と各挿し口の外周面との間の環状空間にゴム輪をそれぞれ介在させた管継手構造もよく知られている(本願図2,特許文献1図3(B)等参照)。
これらの構造において、前記挿し口の外周に環状の押し輪を取り付け、その押し輪で前記ゴム輪を前記環状空間内に押し込んで固定するものもある(本願図1、同図2、特許文献1図1(B)、同図3(B)等参照)。
このような管継手において、挿し口先端面の防食を防ぐため、その先端面に防食コアを設けた技術がある(特許文献1、図1図7等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-115395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、下水管路(下水道)は、上水管路(上水道)等と異なり、水以外に種々の異物や硫化水素(HS)等の腐食性気体が存在する。
このため、前記防食コアによって、その下水管路を構成する挿し口先端面を防食することが考えられる。
しかし、従来の防食コア等による防食構造は、その防食コアが挿し口内周面から内側に突出しており、その突出部に異物が引っかかる場合がある(特許文献1図1(B)、図3(B)等参照)。引っかかった異物が留まれば、流れの妨げとなるとともに、硫化水素(HS)等が発生し、腐食の原因となる。
因みに、前記特許文献1の管継手構造は、上水管路用であり、異物や異臭は殆ど無く、防食コアが流通経路内に(挿し口及び受口の内面から)突出していても、異物が引っかかることもない。
【0005】
この発明は、以上の実情に鑑み、下水管路において、流れを妨げることなく、挿し口先端面及び外周面の防食を図るとともに、その挿し口先端面との隙間から管継手内(挿し口と受口の間)に硫化水素(HS)等が入り込まないようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するため、この発明は、一の鋳鉄管の受口内に他の鋳鉄管の挿し口を挿入し、その受口の内周面と挿し口の外周面との間の環状空間にゴム輪を介在させた下水管路用管継手構造において、前記挿し口先端面と前記受口の奥端面との間に防食性弾性部材を介在し、その防食性弾性部材は、挿し口先端面を被うとともに挿し口及び受口の内面に突出しないようになっている構成を採用したものである。
【0007】
また、筒状の継ぎ輪の一端の受口に一の鋳鉄管の挿し口を挿入し、前記継ぎ輪の他端の受口にも他の鋳鉄管の挿し口を挿入し、前記各受口の内周面と各挿し口の外周面との間の環状空間にゴム輪をそれぞれ介在させた下水管路用管継手構造において、前記挿し口先端面に防食性弾性部材を設け、その防食性弾性部材は、挿し口先端面を被うとともに挿し口内面に突出しないようになっている構成を採用したものである。
【0008】
これらの構成からなる下水管路用管継手構造は、防食性弾性部材によって挿し口先端面及び受口内面の防食が図られ、その防食性弾性部材は挿し口内面に突出していないため、下水の流れを妨げることはなく、異物が引っかかることもない。
【0009】
前記各管継手構造は、一の鋳鉄管の受口内に他の鋳鉄管の挿し口を挿入し、その受口の内周面と挿し口の外周面との間の環状空間にゴム輪を介在させた、種々の下水管路用管継手構造に採用できる。例えば、K形管継手構造やT形管継手構造等に採用できる。
【発明の効果】
【0010】
この発明は、以上のように構成したので、下水管路において、管継手をなす挿し口先端面及び受口内面の防食を有効に達成するとともに、下水の流れを妨げることもない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】この発明の下水管路用管継手構造の一実施形態の要部断面図
図2】同他の実施形態の要部断面図
図3】各図は防食性弾性部材の各例を示す要部断面図
図4】各図は防食性弾性部材のさらに各例を示す要部断面図
図5】同さらに他の実施形態の要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明の実施形態の管継手構造を図1に示し、この実施形態の管継手はK形であって、一のダクタイル鋳鉄管P1の受口1内に他のダクタイル鋳鉄管P2(以下、P1とP2を総称して適宜にPとする。)の挿し口2を挿入し、その受口1の内周面と挿し口2の外周面との間の環状空間aにゴム輪3を介在させ、挿し口2の外周に環状の押し輪4を取り付けて、その押し輪4でゴム輪3を環状空間内aに押し込んで固定した構成である。そのゴム輪3の押し込みは、受口1のフランジ5から押し輪4にT字ボルト6を挿通し、そのボルト6にナット7をねじ込んで行う。そのねじ込み度合いによって押し込み度合いを調整する。
鋳鉄管P(P1,P2)はその内周面にエポキシ樹脂等からなる防食層8が形成され、受口1の内周面には塗料等からなる塗装層9が施されて内面防食がされている。その防食層8の厚みは、適宜に設定すれば良いが、例えば、300μm以上とする。挿し口2の先端外周面にも塗装層9を施すことができる。その挿し口の塗装層9の厚みは、100μm程度とする。
【0013】
この発明は、その挿し口2の先端面2aと受口1の奥端面1aとの間に、断面ほぼ長方形の円環状のNBR(ニトリルゴム)等からなる防食性弾性部材11を介在した点が特徴である。
この防食性弾性部材11は、受口1及び挿し口2の内周面bからそれより内側(図1において下側)に突出しない形状とされている。この実施形態では、挿し口2の防食層8を除いた内面までとしているが、前記内周面bまでの管径方向の厚みを有するものとすることができる。
また、防食性弾性部材11の管長さ方向の厚みtは、挿し口2の受口1への挿入代(入り代)に影響せず、挿し口先端面2aと受口奥端面1aが防食性弾性部材11を介して適切な圧接力をもって圧接するように実験等によって適宜に設定する。防食性弾性部材11は挿し口2の先端面に接着剤等で固定したものとすることができる。このように固定すれば、挿し口2の受口1への挿入時、挿し口2から防食性弾性部材11が離脱することがない。防食性弾性部材11は受口1の奥端面1aに接着剤等によって固定することもできる。また、防食性弾性部材11は接着剤を使用せずに挿し口先端面2aと受口奥端面1aで挟み込んで圧接することのみによって固定することもできる。
【0014】
この実施形態の管継手構造は以上の構成であり、この管路内に下水が流れると、挿し口先端面2aと受口1の奥端面1aとの間に圧接して介在した、防食性弾性部材11によって、挿し口2の先端面2aと受口1の奥端面1aとの隙間からは、下水のみならず、硫化水素等の腐食性気体も挿し口2の外面と受口1の内面との間に入り込まない。このため、その挿し口2の外面と受口1の内面とが腐食することが抑制される。このとき、受口1の内周面及び挿し口2の外周面は塗装層9が施されて防食が施されているが、厚さ:100μm程度であるため、防食性弾性部材11の存在は、その受口1内面及び挿し口2外面の防食には有効である。
また、防食性弾性部材11は、挿し口2内周面及び受口直管部の内周面bから突出して
いないため、下水の流れを妨げることはなく、異物が引っかかることもない。
【0015】
この発明の他の実施形態の管継手構造を図2に示す。この実施形態の管継手もK形であって、筒状のダクタイル鋳鉄製継ぎ輪20の一端受口21に一のダクタイル鋳鉄管Pの挿し口2を挿入し、前記継ぎ輪20の他端受口22にも他のダクタイル鋳鉄管Pの挿し口2を挿入し、前記各受口21、22の内周面と各挿し口2、2の外周面との間の環状空間aにゴム輪3を挿し口2を受口21、22内に突出させた状態でそれぞれ介在させ、前記挿し口2の外周に環状の押し輪4を取り付けて、その押し輪4で前記ゴム輪3を前記環状空間a内に押し込んで固定した構造である。そのゴム輪3の押し込みは、同様に、受口21、22のフランジ25から押し輪4にT字ボルト6を挿通し、そのボルト6にナット7をねじ込んで行う。そのねじ込み度合いによって押し込み度合いを調整する。
鋳鉄管Pは、同様に、その内面にエポキシ樹脂等からなる防食層8が形成されている。受口21、22の内周面及び挿し口2の外周面には前記塗料等からなる塗装層9を適宜に施して防食を行うことができる。
【0016】
この実施形態においても、その挿し口2の先端面2aに円環状のNBR(ニトリルゴム)等の防食性弾性部材31を接着剤等で固着した点が特徴である。
この防食性弾性部材31は、挿し口2の内周面bからそれより内側に突出しない形状とされている。また、受口1に向かう内外の円弧状リップ片32、33を全周に亘って有している。この両リップ片32、33は、その一方32が挿し口2の先端外周面に圧接し、他方33が継ぎ輪20の内周面に圧接する。
【0017】
この実施形態の管継手構造は以上の構成であり、この管路内に下水が流れると、防食性弾性部材31によって、挿し口2の先端面2a及び前記突出させた挿し口2の外周面が下水から隔離され、その挿し口2外周面と継ぎ輪20の受口21、22の内周面の間cには、下水のみならず、硫化水素等の腐食性気体も入り込まない。このため、その間cの挿し口2の外面と受口21、22の内面が腐食することが抑制される。
【0018】
図1の実施形態において、防食性弾性部材11の断面形状としては、前記の形状に限定されず、図3(a)~(f)に記載の形状(11a、11b、11c、11d、11e、11f)等が考えられる。すなわち、前記防食性弾性部材11の受口1側一端をアールカット11図1参照)することに加え、さらに受口2側に延ばしたり(図3(a)、符号11a))、扇形としたり(同図(b))、平板11c前面に円形部分11cを連結したり(同図(c))、その円形部分11cを中空11dとしたり(同図(d))、同円形を半円形としたり(同図(e))、図3(a)に挿し口2の先端外周全面を被う部分11fを加えたり(同図(f))等とすることができる。
【0019】
図2の実施形態において、防食性弾性部材31の断面形状としては、前記の形状に限定されず、図4(a)~(g)に記載の形状31(31a、31b、31c)等が考えられる。すなわち、リップ片33を扇状としたり(同図(a))、山状としたり(同図(b))、山状バルブ付状としたり(同図(c))、同図(d)~同(g)に示すように、挿し口2の先端部にゴム等からなる断面L字状の防食性弾性部材31を取り付け(固定し)、挿し口2先端外周面と継ぎ輪20の受口21、22の内面の間にOリング35を嵌め込んだり(同図(d))、挿し口2と受口21、22の間にライナ36、対向する挿し口2、2の先端面の間にライナ37をそれぞれ嵌め込んだり(同図(e))、同図(e)において、ライナ36を継ぎ輪20の受口21、22の両端に至るもの(内面スリーブ)としたり(同図(f))、両挿し口2、2の間に一方の防食性弾性部材31から他の防食性弾性部材31の外面に至るリップ片38を有するものとしたり(同図(g))等とすることができる。Oリング35、ライナ36、37、リップ片38は当然にゴム等からなる防食性弾性部材とする。但し、同図(d)、(e)、(f)、(g)における防食性弾性部材31の外周部31dをゴムではなくプラスチック材とすれば、滑りが良く、受口21、22への挿し口2の挿入がし易い(同図(e)、(f)参照)。このとき、挿し口2先端面2aとライナ37との間、又は挿し口先端面2a同士の間の介在部分31eは弾性を有するものとする。
【0020】
前記各実施形態の管継手はK形であったが、一のダクタイル鋳鉄管の受口内に他のダクタイル鋳鉄管の挿し口を挿入し、その受口の内周面と挿し口の外周面との間の環状空間にゴム輪を介在させた構成の種々の管継手構造において、この発明を採用できることは勿論である。例えば、図5に示すT形管継手構やNS形やGX形管継手構造においても採用することができる。NS形やGX形管継手構造において採用すれば、特殊押し輪の離脱防止機能によって固定されるため、防食性弾性部材は地震の影響を受けにくくずれる恐れも極めて少ない。
また、前記実施形態はダクタイル鋳鉄管であったが、他の鋳鉄管でもこの発明を採用できることは言うまでもない。さらに、防食性弾性部材11、11a、11b、11c、11d、11e、11f、31、31a、31b、31cはゴムに限らず、樹脂等の弾性を有するものであれば、その材料は任意である。 このように、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図されることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0021】
1 受口
1a 受口奥端面
2 挿し口
2a 挿し口先端面
3 ゴム輪
4 押し輪
5 受口のフランジ
6 T字ボルト
7 T字ボルトの締結用ナット
8 防食層(コーティング層)
9 塗装層
11、11a、11b、11c、11d、11e、11f、31、31a、31b、31c 防食性弾性部材
20 継ぎ輪
21、22 継ぎ輪の受口
25 継ぎ輪のフランジ
P、P1、P2 鋳鉄管
a 環状空間
b 挿し口内面
c 挿し口外周面と受口内周面の間の空間
図1
図2
図3
図4
図5