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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】X線CT装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20221107BHJP
【FI】
A61B6/03 330A
A61B6/03 321Q
A61B6/03 375
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018166736
(22)【出願日】2018-09-06
(65)【公開番号】P2020039382
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】潟山 一樹
(72)【発明者】
【氏名】森野 克人
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-135447(JP,A)
【文献】特開2000-325341(JP,A)
【文献】特開2014-236869(JP,A)
【文献】特開2008-049197(JP,A)
【文献】特開2002-112996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線照射部と、
X線検出部と、
被検体を載置可能な天板と、
前記X線照射部、前記X線検出部、及び前記天板を制御してヘリカルスキャンを実行させると共に、前記ヘリカルスキャンの中断指示を受け付けると、当該ヘリカルスキャンを中断させるスキャン制御部と、
前記ヘリカルスキャンの中断指示を受け付けると、前記中断指示の時刻、又は、造影剤の注入開始時刻からの経過時間に応じて、中断後のアクション候補を決定する決定部と、
前記アクション候補を表示部に表示させる表示制御部と、
を有するX線CT装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記アクション候補として、前記スキャン制御部によって中断された前記ヘリカルスキャンの継続スキャンと、前記スキャン制御部によって中断された前記ヘリカルスキャンの再スキャンと、前記スキャン制御部によって中断された前記ヘリカルスキャンの次のヘリカルスキャンへのスキップとのいずれかを前記表示部に選択可能なように表示させる、
請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記ヘリカルスキャンの中断指示を受け付けると、前記スキャン制御部によって中断された前記ヘリカルスキャンの継続スキャンの開始位置を算出する算出部をさらに有し、
前記表示制御部は、前記開始位置を前記表示部に表示させる、
請求項2に記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記算出部は、予め設定された距離及び時間の少なくとも一方に基づいて、中断位置からの戻りの距離を算出し、前記中断位置から前記戻りの距離の分だけ戻った位置を、前記継続スキャンの開始位置とする、
請求項3に記載のX線CT装置。
【請求項5】
前記ヘリカルスキャンの中断前に収集された生データに基づいて再構成処理を行って第1のCT画像データを生成すると共に、前記ヘリカルスキャンの前記継続スキャンによって収集された生データに基づいて再構成処理を行って第2のCT画像データを生成し、前記第1及び第2のCT画像データの重複部分を除いたデータを生成する再構成処理部をさらに有する、
請求項3又は4に記載のX線CT装置。
【請求項6】
1つの検査に複数のヘリカルスキャンを含む場合、所定のヘリカルスキャンで中断指示があり前記継続スキャンが実行されたとき、以降のヘリカルスキャンのスキャン範囲を、前記所定のヘリカルスキャンで実行されたスキャン範囲に合わせた範囲として算出する算出部をさらに有する、
請求項2に記載のX線CT装置。
【請求項7】
前記算出部は、選択指示に従って、前記以降のヘリカルスキャンのスキャン範囲を、前記所定のヘリカルスキャンで実行されたスキャン範囲に合わせた範囲として算出する、
請求項6に記載のX線CT装置。
【請求項8】
1つのヘリカルスキャンで複数の中断指示がある場合、2回目以降の中断後のスキャンの開始位置を、前回の中断後のスキャンの開始位置として算出する算出部をさらに有する、
請求項2に記載のX線CT装置。
【請求項9】
前記決定部は、前記経過時間が所定の時間以内か否かを判断し、
前記表示制御部は、前記決定部によって前記所定の時間以内であると判断される場合は、前記継続スキャンを推奨する表示を行う、
請求項2乃至8のうちいずれか1項に記載のX線CT装置。
【請求項10】
前記決定部は、前記経過時間が所定の時間を超えるか否かを判断し、
前記表示制御部は、前記決定部によって前記所定の時間を超えると判断される場合は、前記再スキャンを推奨する表示を行う、
請求項2乃至9のうちいずれか1項に記載のX線CT装置。
【請求項11】
前記決定部は、前記ヘリカルスキャンの中断指示を受け付けると、前記経過時間を逐次算出し、
前記表示制御部は、前記経過時間を表示部に逐次表示させる、
請求項2乃至10のうちいずれか1項に記載のX線CT装置。
【請求項12】
X線照射部及びX線検出部を含む架台装置と、被検体を載置可能な天板とに対する制御方法であって、
ヘリカルスキャンを実行させるステップと、
前記ヘリカルスキャンの中断指示を受け付けると、当該ヘリカルスキャンを中断させるステップと、
前記ヘリカルスキャンの中断指示を受け付けると、前記中断指示の時刻、又は、造影剤の注入開始時刻からの経過時間に応じて、中断後のアクション候補を決定するステップと、
前記アクション候補を表示部に表示させるステップと、
を有する制御方法。
【請求項13】
X線照射部と、X線検出部と、被検体を載置可能な天板とを制御してヘリカルスキャンを実行させると共に、前記ヘリカルスキャンの中断指示を受け付けると、当該ヘリカルスキャンを中断させるスキャン制御部と、
前記ヘリカルスキャンの中断指示を受け付けると、前記中断指示の時刻、又は、造影剤の注入開始時刻からの経過時間に応じて、中断後のアクション候補を決定する決定部と、
前記アクション候補を表示部に表示させる表示制御部と、
を有する医用画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線CT(Computed Tomography)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体の体内組織が画像化された医用画像データを生成する医用画像診断装置が存在する。医用画像診断装置としては、X線CT装置及びMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置等が挙げられる。X線CT装置は、被検体にX線を照射することでX線検出器が検出した検出データを前処理することで生データを生成し、生データに基づいて、被検体のアキシャル断層又は3次元のCT画像データを生成する。
【0003】
従来のX線CT装置において、検出データを収集するスキャン中に、スキャン対象の患者が動いた場合や、患者が何か訴えている場合等には、スキャンに支障が生じ、又は、技師等の操作者が安全性を確認する必要がある。そのため、操作者が、スキャン中断操作を行い、中断中に患者の状況等を確認した後で、異常が解消されたと判断すると、X線CT装置は、再スキャン又は継続スキャンを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-225605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ヘリカルスキャン中断後の適切なアクション候補を操作者に提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係るX線CT装置は、X線照射部と、X線検出部と、天板と、スキャン制御部と、決定部と、表示制御部とを有する。天板は、被検体を載置可能である。スキャン制御部は、X線照射部、X線検出部、及び天板を制御してヘリカルスキャンを実行させると共に、ヘリカルスキャンの中断指示を受け付けると、当該ヘリカルスキャンを中断させる。決定部は、ヘリカルスキャンの中断指示を受け付けると、中断指示の時刻、又は、造影剤の注入開始時刻からの経過時間に応じて、中断後のアクション候補を決定する。表示制御部は、アクション候補を表示部に表示させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係るX線CT装置の構成を示す概略図。
図2図2は、実施形態に係るX線CT装置の機能を示すブロック図。
図3図3は、実施形態に係るX線CT装置の動作の一部をフローチャートとして示す図。
図4図4は、実施形態に係るX線CT装置の動作の一部をフローチャートとして示す図。
図5図5は、実施形態に係るX線CT装置において、逆戻りの距離の算出方法を説明するための図。
図6図6は、実施形態に係るX線CT装置において、アクション候補の表示画面の例を示す図。
図7図7は、実施形態に係るX線CT装置において、アクション候補の表示画面の例を示す図であって、ヘリカルスキャンの中断からの経過時間の変化を示す図。
図8図8は、複数の範囲要素を含むスキャン計画範囲におけるアクション候補を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、X線CT装置の実施形態について詳細に説明する。
【0009】
なお、X線CT装置によるデータ収集方式には、X線源とX線検出器とが1体として被検体の周囲を回転する回転/回転(R-R:Rotate/Rotate)方式や、リング状に多数の検出素子がアレイされ、X線管のみが被検体の周囲を回転する固定/回転(S-R:Stationary/Rotate)方式等の様々な方式がある。いずれの方式でも本発明を適用可能である。以下、実施形態に係るX線CT装置では、現在、主流を占めている第3世代の回転/回転方式を採用する場合を例にとって説明する。
【0010】
1.実施形態
図1は、実施形態に係るX線CT装置の構成を示す概略図である。図2は、実施形態に係るX線CT装置の機能を示すブロック図である。
【0011】
図1は、実施形態に係るX線CT装置1を示す。X線CT装置1は、架台装置10、寝台装置30、及びコンソール装置40を備える。架台装置10及び寝台装置30は、検査室に設置される。架台装置10は、寝台装置30に載置された被検体(例えば、患者)Pに関するX線の検出データ(「純生データ」とも呼ばれる)を取得する。図1において、説明の便宜上、架台装置10を左側の上下に複数描画しているが、実際の構成としては、架台装置10は1つである。
【0012】
コンソール装置40は、検査室に隣接する制御室に設置される。コンソール装置40は、複数ビュー分の検出データに対して前処理を施すことで生データを生成し、生データに対して再構成処理を施すことでCT画像データを再構成して表示する。
【0013】
架台装置10は、X線源(例えば、X線管)11、X線検出器12、回転部(例えば、回転フレーム)13、X線高電圧装置14、制御装置15、ウェッジ16、コリメータ17、データ収集回路(DAS:Data Acquisition System)18を備える。なお、架台装置10は、架台部の一例である。
【0014】
X線管11は、回転フレーム13に備えられる。X線管11は、X線高電圧装置14からの高電圧の印加により、陰極(フィラメント)から陽極(ターゲット)に向けて熱電子を照射することでX線を発生する真空管である。例えば、X線管11には、回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管がある。
【0015】
なお、実施形態においては、一管球型のX線CT装置にも、X線管とX線検出器との複数のペアを回転リングに搭載したいわゆる多管球型のX線CT装置にも適用可能である。また、X線を発生させるX線源は、X線管11に限定されるものではない。例えば、X線管11に替えて、電子銃から発生した電子ビームを収束させるフォーカスコイル、電磁偏向させる偏向コイル、患者Pの半周を囲い偏向した電子ビームが衝突することによってX線を発生させるターゲットリングを含む第5世代方式によりX線を発生させてもよい。なお、X線管11は、X線照射部の一例である。
【0016】
X線検出器12は、X線管11に対向するように回転フレーム13に備えられる。X線検出器12は、X線管11から照射されたX線を検出し、当該X線量に対応した検出データを電気信号としてDAS18に出力する。X線検出器12は、例えば、X線管の焦点を中心として1つの円弧に沿ってチャネル方向に複数のX線検出素子が配列された複数のX線検出素子列を有する。X線検出器12は、例えば、チャネル方向に複数のX線検出素子が配列されたX線検出素子列がスライス方向(列方向、row方向)に複数配列された構造を有する。
【0017】
また、X線検出器12は、例えば、グリッドと、シンチレータアレイと、光センサアレイとを有する間接変換型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有し、シンチレータは入射X線量に応じた光子量の光を出力するシンチレータ結晶を有する。グリッドは、シンチレータアレイのX線入射側の面に配置され、散乱X線を吸収する機能を有するX線遮蔽板を有する。なお、グリッドはコリメータ(1次元コリメータ又は2次元コリメータ)と呼ばれる場合もある。光センサアレイは、シンチレータからの光量に応じた電気信号に変換する機能を有し、例えば、光電子増倍管(フォトマルチプライヤー:PMT)等の光センサを有する。
【0018】
なお、X線検出器12は、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であっても構わない。また、X線検出器12は、X線検出部の一例である。
【0019】
回転フレーム13は、X線管11及びX線検出器12を対向支持する。回転フレーム13は、後述する制御装置15による制御の下、X線管11及びX線検出器12を一体として回転させる円環状のフレームである。なお、回転フレーム13は、X線管11及びX線検出器12に加えて、X線高電圧装置14やDAS18を更に備えて支持する場合もある。また、回転フレーム13は、回転部の一例である。
【0020】
このように、X線CT装置1は、X線管11とX線検出器12とを対向させて支持する回転フレーム13を患者Pの周りに回転させることで、複数ビュー、即ち、患者Pの360°分の検出データを収集する。なお、CT画像データの再構成方式は、360°分の検出データを用いるフルスキャン再構成方式には限定されない。例えば、X線CT装置1は、半周(180°)+ファン角度分の検出データに基づいてCT画像データを再構成するハーフ再構成方式を採ってもよい。
【0021】
X線高電圧装置14は、回転フレーム13、又は、回転フレーム13を回転可能に支持する非回転部分(例えば図示しない固定フレーム)に備えられる。X線高電圧装置14は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有する。X線高電圧装置14は、後述する制御装置15による制御の下、X線管11に印加する高電圧を発生する機能を有する高電圧発生装置(図示省略)と、後述する制御装置15による制御の下、X線管11が照射するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置(図示省略)を有する。高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であっても構わない。なお、図1において、説明の便宜上、X線高電圧装置14が、X線管11に対してx軸の正方向の位置に配置されているが、X線管11に対してx軸の負方向の位置に配置されてもよい。
【0022】
制御装置15は、処理回路及びメモリと、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構とを有する。処理回路及びメモリの構成については、後述するコンソール装置40の処理回路44及びメモリ41と同等であるので説明を省略する。
【0023】
制御装置15は、コンソール装置40又は架台装置10に取り付けられた、後述する入力インターフェースからの入力信号を受けて、架台装置10及び寝台装置30の動作制御を行う機能を有する。例えば、制御装置15は、入力信号を受けて回転フレーム13を回転させる制御や、架台装置10をチルトさせる制御や、寝台装置30及び天板33を動作させる制御を行う。なお、架台装置10をチルトさせる制御は、架台装置10に取り付けられた入力インターフェースによって入力される傾斜角度(チルト角度)情報により、制御装置15がX軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム13を回転させることによって実現される。なお、制御装置15は架台装置10に設けられてもよいし、コンソール装置40に設けられてもよい。なお、制御装置15は、制御部の一例である。
【0024】
また、制御装置15は、コンソール装置40や架台装置10に取り付けられた、後述する入力インターフェースから入力された撮像条件に基づいて、X線管11の回転角度や、後述するウェッジ16及びコリメータ17の動作を制御する。
【0025】
ウェッジ16は、X線管11のX線出射側に配置されるように回転フレーム13に備えられる。ウェッジ16は、制御装置15による制御の下、X線管11から照射されたX線量を調節するためのフィルタである。具体的には、ウェッジ16は、X線管11から患者Pに照射されるX線が予め定められた分布になるように、X線管11から照射されたX線を透過して減衰させるフィルタである。例えば、ウェッジ16(ウェッジフィルタ(Wedge Filter)、ボウタイフィルタ(bow-tie filter)は、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウムを加工したフィルタである。
【0026】
コリメータ17は、X線絞り又はスリットとも呼ばれ、X線管11のX線出射側に配置されるように回転フレーム13に備えられる。コリメータ17は、制御装置15による制御の下、ウェッジ16を透過したX線の照射範囲を絞り込むための鉛板等であり、複数の鉛板等の組合せによってX線の照射開口を形成する。
【0027】
DAS18は、回転フレーム13に備えられる。DAS18は、制御装置15による制御の下、X線検出器12の各X線検出素子から出力される電気信号に対して増幅処理を行う増幅器と、制御装置15による制御の下、電気信号をデジタル信号に変換するA/D(Analog to Digital)変換器とを有し、増幅及びデジタル変換後の検出データを生成する。DAS18によって生成された、複数ビュー分の検出データは、コンソール装置40に転送される。
【0028】
ここで、DAS18によって生成された検出データは、回転フレーム13に設けられた発光ダイオード(LED)を有する送信機から光通信によって架台装置10の固定フレームに設けられたフォトダイオードを有する受信機に送信され、コンソール装置40に転送される。なお、回転フレーム13から架台装置10の固定フレームへの検出データの送信方法は、前述の光通信に限らず、非接触型のデータ伝送であれば如何なる方式を採用しても構わない。また、回転フレーム13は、回転部の一例である。
【0029】
寝台装置30は、基台31、寝台駆動装置32、天板33及び支持フレーム34を備える。寝台装置30は、スキャン対象である患者Pを載置可能であり、制御装置15による制御の下、患者Pを移動させる装置である。
【0030】
基台31は、支持フレーム34を鉛直方向(y軸方向)に移動可能に支持する筐体である。寝台駆動装置32は、患者Pが載置された天板33を天板33の長軸方向(z軸方向)に移動するモータ又はアクチュエータである。支持フレーム34の上面に設けられた天板33は、患者Pを載置可能な形状を有する板である。
【0031】
なお、寝台駆動装置32は、天板33に加え、支持フレーム34を天板33の長軸方向(z軸方向)に移動させてもよい。また、寝台駆動装置32は、寝台装置30の基台31ごと移動させてもよい。本発明を立位CTに応用する場合、天板33に相当する患者移動機構を移動する方式であってもよい。また、ヘリカルスキャンや位置決め等のためのスキャノ撮影等、架台装置10の撮像系と天板33の位置関係の相対的な変更を伴う撮影を実行する場合は、当該位置関係の相対的な変更は天板33の駆動によって行われてもよいし、架台装置10の固定部の走行によって行われてもよく、またそれらの複合によって行われてもよい。
【0032】
なお、実施形態では、非チルト状態での回転フレーム13の回転軸又は寝台装置30の天板33の長手方向をz軸方向、z軸方向に直交し、床面に対し水平である軸方向をx軸方向、z軸方向に直交し、床面に対し垂直である軸方向をy軸方向とそれぞれ定義するものとする。
【0033】
コンソール装置40は、メモリ41、ディスプレイ42、入力インターフェース43、及び処理回路44を備える。なお、コンソール装置40は架台装置10とは別体として説明するが、架台装置10にコンソール装置40又はコンソール装置40の各構成要素の一部が含まれてもよい。また、以下の説明では、コンソール装置40が単一のコンソールで全ての機能を実行するものとするが、これらの機能は、複数のコンソールが実行してもよい。なお、コンソール装置40は、医用画像処理装置の一例である。
【0034】
メモリ41は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等によって構成される。メモリ41は、USB(Universal Serial Bus)メモリ及びDVD(Digital Video Disk)等の可搬型メディアによって構成されてもよい。メモリ41は、処理回路44において用いられる各種処理プログラム(アプリケーションプログラムの他、OS(Operating System)等も含まれる)や、プログラムの実行に必要なデータを記憶する。また、OSに、操作者に対するディスプレイ42への情報の表示にグラフィックを多用し、基礎的な操作を入力インターフェース43によって行うことができるGUI(Graphic User Interface)を含めることもできる。
【0035】
メモリ41は、例えば、前処理前の検出データや、前処理後かつ再構成前の生データや、生データに基づく再構成後のCT画像データを記憶する。前処理は、検出データに対する、対数変換処理、オフセット補正処理、チャンネル間の感度補正処理、ビームハードニング処理等のうち少なくとも1つを意味する。また、インターネット等の通信ネットワークを介してX線CT装置1と接続可能なクラウドサーバがX線CT装置1からの保存要求を受けて検出データ、生データ、又はCT画像データを記憶するように構成されてもよい。なお、メモリ41は、記憶部の一例である。
【0036】
ディスプレイ42は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ42は、処理回路44によって生成されたCT画像データや、ユーザからの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を出力する。例えば、ディスプレイ42は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、OLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ等である。また、ディスプレイ42は、架台装置10に設けられてもよい。また、ディスプレイ42は、デスクトップ型でもよいし、コンソール装置40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしてもよい。なお、ディスプレイ42は、表示部の一例である。
【0037】
入力インターフェース43は、技師等の操作者によって操作が可能な入力デバイスと、入力デバイスからの信号を入力する入力回路とを含む。入力デバイスは、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン(例えば、後述する「スキャン中断ボタン」)、ジョイスティック、操作面に触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等によって実現される。入力デバイスが操作者から入力操作を受け付けると、入力回路は当該入力操作に応じた電気信号を生成して処理回路44に出力する。また、入力インターフェース43は、架台装置10に設けられてもよい。また、入力インターフェース43は、コンソール装置40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されてもよい。なお、入力インターフェース43は、入力部の一例である。
【0038】
処理回路44は、X線CT装置1の全体の動作を制御する。処理回路44は、専用又は汎用のCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processor Unit)、又はGPU(Graphics Processing Unit)の他、ASIC、及び、プログラマブル論理デバイス等を意味する。プログラマブル論理デバイスとしては、例えば、単純プログラマブル論理デバイス(SPLD:Simple Programmable Logic Device)、複合プログラマブル論理デバイス(CPLD:Complex Programmable Logic Device)、及び、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:Field Programmable Gate Array)等が挙げられる。
【0039】
また、処理回路44は、単一の回路によって構成されてもよいし、複数の独立した処理回路要素の組み合わせによって構成されてもよい。後者の場合、メモリは処理回路要素ごとに個別に設けられてもよいし、単一のメモリが複数の処理回路要素の機能に対応するプログラムを記憶するものであってもよい。
【0040】
処理回路44は、メモリ41に記憶されたプログラムを実行することで、スキャン制御機能441、前処理機能442、再構成処理機能443、表示制御機能444、決定機能445、及び算出機能446を実現する。なお、機能441~446の全部又は一部は、コンソール装置40のプログラムの実行により実現される場合に限定されるものではなく、コンソール装置40にASIC等の回路として備えられる場合であってもよい。また、機能441~446の全部又は一部は、コンソール装置40のみならず、制御装置15に備えられる場合もある。
【0041】
スキャン制御機能441は、予め設定されたスキャン条件に従って制御装置15を介してX線管11及びX線検出器12等を制御することでヘリカルスキャン(「スパイラルスキャン」とも呼ばれる)を実行させ、制御装置15から複数ビュー分の検出データを収集する機能を含む。例えば、スキャン条件は、照射X線に関する、管電流mA、管電圧kV、X線強度制御条件(モジュレーション条件)、X線管11(又は、回転フレーム13)の回転速度等や、スキャン計画によって設定されるスキャン範囲(以下、「スキャン計画範囲」という)等を含む。
【0042】
ここで、ヘリカルスキャンでは、天板33に載置された患者Pをらせん状(ヘリカル)に撮影する。ヘリカルスキャンでは、固定フレームに対して、患者Pが載置された天板33をz方向に移動させながらX線照射及びデータ収集を行う。又は、ヘリカルスキャンでは、患者Pが載置された天板33に対して、固定フレームをz方向に移動させながらX線照射及びデータ収集を行う。
【0043】
また、スキャン制御機能441は、ヘリカルスキャンの中断指示を受け付けると、当該ヘリカルスキャンを中断させる機能を含む。例えば、スキャン制御機能441は、技師等の操作者によって、入力インターフェース43の入力デバイスとしてのスキャン中断ボタンが押下されることにより、ヘリカルスキャンの中断指示を受け付ける。なお、スキャン制御機能441は、スキャン制御部の一例である。
【0044】
前処理機能442は、スキャン制御機能441によって収集された複数ビュー分の検出データに対して前処理を施すことで複数ビュー分の生データを生成する機能を含む。なお、前処理機能442は、前処理部の一例である。
【0045】
再構成処理機能443は、前処理機能442によって生成された複数ビュー分の生データに基づいて、画像再構成処理によりCT画像データを生成する機能を含む。画像再構成法としては、コンボリューション補正逆投影(CBP:Convolution Back Projection)法やフィルタ補正逆投影(FBP:Filtered Back Projection)法に代表される解析的手法と、代数的手法とが知られており、それらが利用される。代数的手法は一般に反復法を用いて再構成画像を求めることから、逐次近似再構成(IR:Iterative Reconstruction)法と呼ばれる。
【0046】
また、再構成処理機能443は、CT画像データをメモリ41に記憶させる機能や、CT画像データをネットワークインターフェース(図示省略)を介して外部装置に送信する機能を含む場合もある。なお、再構成処理機能443は、再構成処理部の一例である。
【0047】
表示制御機能444は、再構成処理機能443によって生成されたCT画像データをCT画像としてディスプレイ42に表示させる機能を含む。なお、表示制御機能444は、表示制御部の一例である。
【0048】
決定機能445は、ヘリカルスキャンの中断指示を受け付けると、中断指示時刻からの経過時間に応じて、中断後のアクション候補を決定する機能を含む。又は、決定機能445は、造影剤が注入された状態で行われるヘリカルスキャンの中断指示を受け付けると、患者Pへの造影剤の注入開始時刻からの経過時間に応じて、中断後のアクション候補を決定する機能を含む。又は、決定機能445は、ヘリカルスキャンの中断指示を受け付けると、患者用のマイク(図示省略)等による患者Pの異常の検知時刻からの経過時間に応じて、中断後のアクション候補を決定する機能を含む。例えば、決定機能444は、技師等の操作者によって、入力インターフェース43の入力デバイスとしてのスキャン中断ボタンが押下されることにより、ヘリカルスキャンの中断指示を受け付ける。なお、決定機能445は、決定部の一例である。
【0049】
算出機能446は、決定機能445によって決定された各アクション候補に対応するパラメータを算出する機能を含む。例えば、算出機能446は、ヘリカルスキャンの中断指示を受け付けると、中断されたヘリカルスキャンの継続スキャンの開始位置を算出する機能を含む。なお、算出機能446は、算出部の一例である。
【0050】
表示制御機能444は、決定機能445によって決定された複数のアクション候補、又は、算出機能446によって算出された継続スキャンの開始位置をディスプレイ42に表示させる機能を含む。また、表示制御機能444は、複数のアクション候補と共に、算出機能446によって生成されたパラメータをディスプレイ42に表示させる機能を含んでもよい。なお、表示制御機能444が制御装置15に備えられる場合、表示制御機能444は、回転フレーム13を支持する固定フレーム(図示省略)上の操作パネルに表示してもよい。
【0051】
なお、機能441~446の詳細については、図3図8を用いて後述する。
【0052】
図3及び図4は、X線CT装置1の動作をフローチャートとして示す図である。図3及び図4において、「ST」に数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。
【0053】
まず、図3を用いてX線CT装置1の動作について説明する。
【0054】
ヘリカルスキャンの実行予定の患者Pを天板33に載置させた状態で、操作者が入力インターフェース43を操作する。スキャン制御機能441は、予め設定されたスキャン条件に従って制御装置15を介してX線管11及びX線検出器12等を制御することで、ヘリカルスキャンを開始させる(ステップST1)。スキャン制御機能441は、ヘリカルスキャンにより、制御装置15から複数ビュー分の検出データを収集することができる。なお、ステップST1によるヘリカルスキャンの実行に先立って行われるプリスキャン(「スキャノ撮影」又は「スカウト撮影」とも呼ばれる)については、説明を省略する。
【0055】
スキャン制御機能441は、技師等の操作者によってのスキャン中断ボタンが押下されたか、つまり、ヘリカルスキャンの中断指示を受け付けたか否かを判断する(ステップST2)。ステップST2の判断にてNO、つまり、ヘリカルスキャンの中断指示を受け付けていないと判断される場合、スキャン制御機能441は、ステップST1によって開始されたヘリカルスキャンを終了するか否かを判断する(ステップST3)。ステップST4の判断にてNO、つまり、ヘリカルスキャンを終了しないと判断する場合、ステップST2の判断に戻る。このように、スキャン制御機能441は、ヘリカルスキャン中に中断指示を受け付けなければ、ヘリカルスキャンの終了(ステップST4)まで、ステップST2,ST3の判断を繰り返すことになる。
【0056】
ステップST3の判断にてYES、つまり、ヘリカルスキャンを終了すると判断する場合、スキャン制御機能441は、天板33に載置された患者と同一患者について、次のヘリカルスキャンを行うか否かを判断する(ステップST5)。ここで、スキャン制御機能441は、ステップST5において、外部装置、例えばRIS(Radiology Information System)やMWM(Modality Worklist Management)サーバから送信された、患者に係る検査オーダに基づいて、当該患者に係る次のヘリカルスキャンが存在するか否かを判断する。検査オーダは、患者情報や検査条件等を含む。
【0057】
ステップST5の判断にてYES、つまり、天板33に載置された患者と同一患者について、次のヘリカルスキャンを行うと判断された場合、スキャン制御機能441は、予め設定されたスキャン条件に従って制御装置15を介してX線管11及びX線検出器12等を制御することで、ボリュームスキャン及びヘリカルスキャン等のヘリカルスキャンを開始させる(ステップST1)。
【0058】
一方で、ステップST5の判断にてNO、つまり、天板33に載置された患者と同一患者について、次のヘリカルスキャンを行わないと判断された場合、スキャン制御機能441は、天板33に載置された患者についての全てのヘリカルスキャンが終了されたと判断する。天板33に載置された患者は、天板33から降ろす。
【0059】
以上のように、1患者に係る検査オーダに含まれる1又は複数の全てのヘリカルスキャンにおいて1度も中断指示が受け付けられない場合は、当該患者に対して、1又は複数のヘリカルスキャンが継続して行われる。
【0060】
前処理機能442は、ステップST1によって開始されたヘリカルスキャン中、又は、ヘリカルスキャンの終了後に、ヘリカルスキャンによって収集された複数ビュー分の検出データに対して前処理を施すことで複数ビュー分の生データを生成する。再構成処理機能443は、ステップST1によって開始されたヘリカルスキャン中、又は、ヘリカルスキャンの終了後に、複数ビュー分の生データに基づいて、画像再構成処理によりCT画像データを生成する。再構成処理機能443は、CT画像データをメモリ41に記憶させたり、CT画像データをネットワークインターフェース(図示省略)を介して外部装置に送信したりする。
【0061】
続いて、1患者に係る検査オーダに含まれる1又は複数のヘリカルスキャンの少なくとも1つにおいて、スキャンの中断指示が受け付けられる場合の動作について説明する。
【0062】
ステップST2の判断にてYES、つまり、ヘリカルスキャンの中断指示を受け付けたと判断される場合、スキャン制御機能441は、図4に進み、当該ヘリカルスキャンを中断させる(ステップST11)。決定機能445は、ヘリカルスキャンの中断指示を受け付けたと判断される場合、中断後のアクション候補を決定する(ステップST12)。
【0063】
ここで、アクション候補は、再スキャン、継続スキャン、及びスキップのうち少なくとも1つを含む。再スキャンは、ステップST11によって中断されたヘリカルスキャンを最初からやり直すことを意味する。継続スキャンは、ステップST11によって中断されたヘリカルスキャンを再開することを意味する。スキップとは、ステップST11によって中断されたヘリカルスキャンを終了させ、検査オーダに含まれる次のヘリカルスキャンを開始することを意味する。検査オーダに次のヘリカルスキャンが含まれない場合は、アクション候補として、スキップは選択されない。以下、決定機能445は、ステップST11によって中断後のアクション候補として、再スキャン、継続スキャン、及びスキップが決定される場合について説明する。
【0064】
算出機能446は、ステップST12によって決定された各アクション候補に対応するパラメータを算出する(ステップST13)。算出機能446は、アクション候補としての継続スキャンについて、パラメータとして、再開後のスキャンの開始位置を決めるための逆戻りの距離を算出する。
【0065】
図5は、逆戻りの距離の算出方法を説明するための図である。
【0066】
図5は、z軸の正方向がヘリカルスキャンのスキャン方向である場合の、患者モデルMに対応するスキャン計画範囲Rを示す。図5の左側に示すように、ヘリカルスキャンの途中において中断が行われたとする。この場合に、継続スキャンが選択されると、スキャン制御機能441は、中断位置(z方向の位置)や、中断位置から操作者が任意に選択した距離の分だけz軸の負方向に戻った位置から、ヘリカルスキャンを再開する方法を採ることができる。しかし、操作者にとって、最適な距離を選択することは困難であり、手間である。
【0067】
そこで、算出機能446は、図5の右側に示すように、逆戻りの距離Dを算出し、中断位置から逆戻りの距離Dだけz軸の負方向に戻った位置を継続スキャンの開始位置とする。スキャン制御機能441は、算出された継続スキャンの開始位置からヘリカルスキャンを再開する。算出機能446は、逆戻りの距離Dを、予め設定された時間、距離、及びそれらの組み合わせを基に算出する。
【0068】
第1に、算出機能446は、逆戻りの距離Dを、予め設定された時間に基づいて算出する。ヘリカルスキャンを途中で中断する必要がある事象が発生した場合(例えば、表示されたCT画像を参照して操作者が異常を確認した場合や、スキャン中の患者が発声した場合等)に、中断判断に要する時間分を戻す等の場合に特に有効である。例えば、操作者がスキャン中断ボタンを押下した中断2秒前に相当する位置(z方向の位置)からスキャンの再開を行うように設定されていたとする。その場合、算出機能446は、ヘリカルピッチ、撮影スライス幅、撮影列数、及び回転速度等を基準にして、中断2秒前の位置を継続スキャンの開始位置として算出し、その開始位置からスキャン計画範囲Rの終了位置までのスキャン条件を決定する。なお、算出機能446によって算出された、中断2秒前に相当する計算上の位置がスキャン計画範囲Rの開始の位置を超えていた場合は、継続スキャンを実行する意味がない。その場合、表示制御機能444は、次のステップST14において、「継続スキャン」がアクション候補として表示されないように制御してもよい。
【0069】
第2に、算出機能446は、逆戻りの距離Dを、予め設定された距離に基づいて算出する。例えば、中断位置から100[mm]手前の距離だけ離れた位置からスキャンの再開を行うように設定されていたとする。その場合、算出機能446は、リアルタイムで表示されている画像位置に相当するz方向の位置から100[mm]手前のz方向の位置を継続スキャンの開始位置として算出し、その開始位置からスキャン計画範囲Rの終了位置までのスキャン条件を決定する。なお、算出機能446によって算出された、中断100[mm]手前の位置がスキャン計画範囲Rの開始の位置を超えていた場合は、継続スキャンを実行する意味がない。その場合、表示制御機能444は、次のステップST14において、「継続スキャン」がアクション候補として表示されないように制御してもよい。
【0070】
第3に、算出機能446は、逆戻りの距離Dを、予め設定された時間及び距離の組み合わせに基づいて算出してもよい。中断位置からの距離を基準として逆戻りの距離Dが算出された場合に、ヘリカルピッチ、撮影列数、及び回転速度等によっては、中断判断までに要する時間よりもきわめて短い場合が有り得るからである。そのような場合には、算出機能446は、距離基準を、時間基準の計算方法に切り替える。一方で、撮影速度が遅い等の場合、秒数ベースだとカバー範囲が少なくなる場合があるので、算出機能446は、逆戻りの距離Dを基準として算出することができる。また、算出機能446は、時間基準で算出された継続スキャンの開始位置と、距離基準で算出された継続スキャンの開始位置とを操作者に提示して、操作者にどちらかを選択させてもよい。
【0071】
図4の説明に戻って、表示制御機能444は、ステップST12によって決定されたアクション候補としての「再スキャン」、「継続スキャン」、及び「スキップ」をディスプレイ42に表示させると共に、各アクション候補のパラメータをディスプレイ42に表示させる(ステップST14)。
【0072】
図6は、アクション候補の表示画面の例を示す図である。
【0073】
図6に示すように、表示画面は、ヘリカルスキャンの中断操作により、ヘリカルスキャン中にスキャンが中断されたことを示す情報と、中断が解かれた後のアクション候補としての「再スキャン」、「継続スキャン」、及び「スキップ」とを含む。また、表示画面は、各アクション候補に対応するパラメータと、各アクション候補の「選択ボタン」とを含む。つまり、表示制御機能444は、ディスプレイ42に、複数のアクション候補「再スキャン」、「継続スキャン」、及び「スキップ」のいずれかを選択可能なように表示させる。
【0074】
アクション候補「再スキャン」のパラメータの一例は、予め設定されたスキャン計画範囲における、スキャン開始位置から中断位置までのスキャン実行範囲(実際に収集されたデータ範囲)である。当該スキャン実行範囲は、図6に示す表示画面の左側において、患者モデル上に予め設定されるスキャン計画範囲(破線)の一部に疎のハッチング領域として示される。
【0075】
ここで、アクション候補「再スキャン」は、決定機能445によって中断指示時刻、又は、患者Pへの造影剤の注入開始時刻からの経過時間が所定の時間以内であると判断された場合に、表示制御機能444は、選択肢として表示されないようにすることもできる。造影のヘリカルスキャンが中断された場合には、経過時間が短すぎると、被曝の点からも、「継続スキャン」の方が適していると考えられるからである。一方で、表示制御機能444は、経過時間が所定の時間以内であると判断された場合に、アクション候補「継続スキャン」を強調表示させてもよい。
【0076】
アクション候補「継続スキャン」のパラメータの一例は、図5を用いて説明したように、逆戻りの距離D(図5に図示)である。逆戻りの距離Dは、図6に示す表示画面の中央において、患者モデル上に予め設定されるスキャン計画範囲(破線)の一部に密のハッチング領域として示される。
【0077】
ここで、アクション候補「継続スキャン」は、決定機能445によって中断指示時刻、又は、患者Pへの造影剤の注入開始時刻からの経過時間が所定の時間を超えると判断された場合に、表示制御機能444は、選択肢として表示されないようにすることもできる。造影のヘリカルスキャンが中断された場合には、経過時間が長すぎると、造影剤の染影がなくなってしまうからである。また、アクション候補「継続スキャン」は、患者用のマイク(図示省略)等による患者Pの異常の検知時刻からの経過時間に応じて、選択肢として表示されないようにすることもできる。「継続スキャン」より「再スキャン」の方が望ましい場合が多いからである。一方で、表示制御機能444は、経過時間が所定の時間を超えると判断された場合に、アクション候補「再スキャン」を強調表示させてもよい。
【0078】
アクション候補「スキップ」のパラメータの一例は、ヘリカルスキャンが中断時刻からの経過時間である。当該経過時間は、図6に示す表示画面の右側において、文字情報「10秒経過」として示される。なお、アクション候補「スキップ」のパラメータは、造影剤の注入開始時刻からの経過時間であってもよい。
【0079】
操作者は、アクション候補及びパラメータを参照しながら、当該患者及び検査目的に応じて次の適切なアクションを選択し、画面上のボタン操作で当該アクションを簡易に選択することができる。また、経験が不足している操作者は、逆戻りの距離(図5に図示する符号「D」相当)を手動設定できずに以前では再スキャンが選択されていた場合であっても、逆戻りの距離Dが自動的に算出されて提示されることで、継続スキャンを選択し易くなる。それにより、患者の被曝量の低減も実現できる。
【0080】
図4の説明に戻って、スキャン制御機能444は、図6に示す表示画面上で、アクション候補の中から任意のアクションの選択を受け付けたか否かを判断する(ステップST15)。ステップST5の判断にてNO、つまり、アクション候補の中から任意のアクションの選択を受け付けていないと判断された場合、決定機能445は、再計算が必要なパラメータについて、パラメータを算出する(ステップST13)。例えば、決定機能445は、アクション候補「スキップ」について、ヘリカルスキャンの中断からの経過時間を再計算する。つまり、表示制御機能444は、経過時間をディスプレイ42に逐次(リアルタイム)表示させることができる。
【0081】
図7は、アクション候補の表示画面の例を示す図であって、ヘリカルスキャンの中断からの経過時間の変化を示す図である。
【0082】
図7は、図6に示す表示画面から20秒経過後の表示画面を示す。図7に示すように、図6に示す表示画面から20秒経過後において、アクション候補「スキップ」のパラメータが、図6の「10秒経過」から「30秒経過」に変化している。
【0083】
X線CT装置の比較例によれば、スキャン中断ボタンが押下されると、スキャン計画範囲のうち再構成が可能な範囲までスキャンが実行されたと判断されればヘリカルスキャンの中断を実行し、次のヘリカルスキャンの準備に入る。しかし、ヘリカルスキャンの中断は想定範囲のスキャンが完了した場合だけでなく、患者の周辺の状況が変わったことによる安全確保やタイミング調整の目的等の場合も多い。そのような場合、操作者は、再スキャンや継続スキャンの実行が可能であるか(再構成に必要なデータが収集できているか)否かについて分からないし、可能である場合にも、再度手動でスキャン範囲等を再設定する必要があるため、大幅なタイムロスとなってしまう。加えて、造影にてヘリカルスキャンを実行する場合には、造影剤が流れてしまうため、ヘリカルスキャンの中断時刻から刻々と進む経過時間の時々で変化する造影状況に合ったアクションを選択できないと、適切な造影効果が得られないという問題がある。
【0084】
図6及び図7に示すような表示画面が表示されると、操作者は、アクション候補やパラメータの表示により、経過時間に基づいて、実行が可能であるアクション候補を容易に把握することができる。特に、操作者は、造影のヘリカルスキャンにおいて、刻々と変化するスキャンの中断時刻からの経過時間を視認することができる。
【0085】
図4の説明に戻って、ステップST5の判断にてYES、つまり、アクション候補の中から任意のアクションの選択を受け付けたと判断された場合、スキャン制御機能441は、受け付けられたアクションが、「再スキャン」又は「継続スキャン」であるか否かを判断する(ステップST17)。ステップST17の判断にてYES、つまり、受け付けられたアクションが、「再スキャン」又は「継続スキャン」であると判断された場合、スキャン制御機能441は、中断された当該ヘリカルスキャンを開始し(ステップST18)、図3に示すステップST2に戻る。
【0086】
具体的には、スキャン制御機能441は、「再スキャン」の場合は、予め設定されたスキャン計画範囲R(図5に図示)の先頭位置からヘリカルスキャンを行うべく、制御回路15を介して天板12をz軸の正方向にスライドさせる。そして、スキャン制御機能441は、スキャン計画範囲Rの先頭位置をX線照射の中心位置に合わせ、当該ヘリカルスキャンをやり直す(ステップST18)。
【0087】
一方、スキャン制御機能441は、「継続スキャン」の場合は、ヘリカルスキャンの中断位置からステップST13によって決定された逆戻りの距離Dの分だけ戻った位置からヘリカルスキャンを行うべく、制御回路15を介して天板12をz軸の正方向にスライドさせる。そして、スキャン制御機能441は、ヘリカルスキャンの中断位置からステップST13によって決定された逆戻りの距離Dの分だけ戻った位置をX線照射の中心位置に合わせ、当該ヘリカルスキャンを再開する(ステップST18)。
【0088】
なお、ステップST18から図3に示すステップST2に戻り、同一スキャンにおいて再びスキャンが中断される場合もある。つまり、ヘリカルスキャンの中断は、スキャンがスキャン計画範囲の終了位置に到達するまで、何度でも実施することができる。その場合、算出機能446は、「継続スキャン」について、2回目以降の中断後のスキャンの開始位置を、前回の中断後のスキャンの開始位置として算出してもよいし、新たに逆戻り距離Dから算出してもよいし、それらを切り替えるようにしてもよい。
【0089】
ステップST17の判断にてNO、つまり、受け付けられたアクションが、「スキップ」であると判断された場合、図3に示すステップST5に戻る。
【0090】
ここで、図4に示すステップST17の判断でNOと判断された後、図3に示すステップST5の判断でYESと判断され、ステップST1でヘリカルスキャンが開始される場合を考える。つまり、ある患者に係る検査オーダに複数、例えば、2個のヘリカルスキャンが含まれる場合に、1個目のヘリカルスキャン(例えば、非造影)の途中でスキャンが中断され、アクション候補「スキップ」が決定された後で(ステップST17)、同一患者について第2のヘリカルスキャン(例えば、造影)を実行する場合を考える。
【0091】
第1に、算出機能446は、各ヘリカルスキャンのスキャン実行範囲を個別に算出する。つまり、算出機能446は、非造影に係るヘリカルスキャンではスキャン計画範囲の途中でスキャンが中断されているが、続く造影に係るヘリカルスキャンについては、スキャンの中断指示がない限り、スキャン計画範囲の全体をスキャン実行範囲として算出する。
【0092】
第2に、算出機能446は、各ヘリカルスキャンのスキャン実行範囲を一致させる。つまり、算出機能446は、非造影に係るヘリカルスキャンでスキャン計画範囲の途中でスキャンが中断されると、続く造影に係るヘリカルスキャンについても、非造影で実行されたスキャン実行範囲のみをスキャン実行範囲とする。
【0093】
なお、第2の場合、算出機能446は、入力インターフェース43を介した操作者の選択指示に従って、2回目以降のヘリカルスキャンのスキャン実行範囲を、以前のヘリカルスキャンで実行されたスキャン実行範囲に合わせた範囲としてもよい。
【0094】
また、継続スキャンが実行された場合の再構成処理について考える。再構成処理機能443は、ヘリカルスキャンの中断前に収集された生データに基づいて再構成処理を行って第1のCT画像データを生成すると共に、ヘリカルスキャンの継続スキャンによって収集された生データに基づいて再構成処理を行って第2のCT画像データを生成する。そして、再構成処理機能443は、第1及び第2のCT画像データの重複部分(図5に図示する符号「D」の範囲)を除いたデータを生成する。
【0095】
以上のように、X線CT装置によれば、ヘリカルスキャンの中断指示時刻又は造影剤の注入開始時刻からの経過時間に応じて、中断後の適切な複数のアクション候補を選択肢として操作者に提示することができる。これにより、操作者は、中断後に可能な次の複数のアクション候補を一覧で参照することができると共に、その中から適切な次のアクションを簡易に選択することができる。
【0096】
2.第1の変形例
図6(又は図7)に示す表示画面は、ヘリカルスキャンの中断時刻からの経過時間に応じて推奨されるアクション候補を表示してもよい。例えば、算出機能446が、ヘリカルスキャンの中断時刻から現在時刻までの経過時間が、予め設定された時間以内であると判断した場合、表示制御機能444は、「継続スキャン」を推奨するような表示を行う。ヘリカルスキャンの中断時刻からの経過時間が設定時間以内であれば、取得されるCT画像間のズレも小さいことが予想されるし、特に造影スキャン等で造影追い越し等の場合においては条件の再設定をすることなく、1回の造影できれいに撮影することが予想されるからである。
【0097】
一方で、算出機能446が、ヘリカルスキャンの中断時刻から現在時刻までの経過時間が、予め設定された時間を超えたと判断した場合、「再スキャン」を推奨するような表示を行う。ヘリカルスキャンの中断時刻からの経過時間が設定時間を超えた場合、時相差や患者の体動等に起因するCT画像間のズレが大きくなることが懸念されるため、再スキャンが望ましいと思われる。
【0098】
なお、推奨表示の一例としては、図6(又は図7)に示す表示画面において、「選択ボタン」を強調表示してもよいし、経過時間を強調表示してもよいし、「推奨」等の文字情報を表示してもよいし、アイコンや図で表示してもよい。また、スピーカ(図示省略)から推奨するアクション候補を示す音声を発声してもよい。
【0099】
以上のように、X線CT装置1の第1の変形例によれば、上述した効果に加え、経験の差によらず、操作者は、ヘリカルスキャンの中断指示時刻又は造影剤の注入開始時刻からの経過時間に応じて推奨される次のアクションを簡易に参照することができる。
【0100】
3.第2の変形例
ヘリカルスキャンのスキャン計画範囲が、複数の範囲要素に分割されている場合がある。その場合の、中断されたヘリカルスキャンに係るアクション候補について考える。
【0101】
図8は、複数の範囲要素を含むスキャン計画範囲におけるアクション候補を説明するための図である。
【0102】
図8の左側に示すように、スキャン計画範囲Rは、z方向に4個の要素を備える。4個の要素のうち、2個目の要素のスキャン途中でスキャンが中断されたとする。ここで、表示画面上に表示される複数のアクション候補の中から「スキップ」が選択されると、右側上段に示すように、算出機能446は、3個目の要素の先頭位置を次のスキャンの開始位置として算出する。スキャン制御機能441は、その開始位置からスキャンを開始する。
【0103】
一方で、表示画面上に表示される複数のアクション候補の中から「継続スキャン」が選択されると、右側下段に示すように、算出機能446は、1個前の要素の先頭位置をスキャン開始位置として算出する。スキャン制御機能441は、その開始位置から継続スキャンを開始する。
【0104】
なお、スキャン制御機能441は、スキャン制御部の一例である。前処理機能442は、前処理部の一例である。再構成処理機能443は、再構成処理部の一例である。表示制御機能444は、表示制御部の一例である。決定機能445は、決定部の一例である。算出機能446は、算出部の一例である。
【0105】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、ヘリカルスキャン中断後の適切なアクション候補を操作者に提示することができる。
【0106】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0107】
1 X線CT装置
11 X線源(X線管)
12 X線検出器
40 コンソール装置(医用画像処理装置)
44 処理回路
441 スキャン制御機能
442 前処理機能
443 再構成処理機能
444 表示制御機能
445 決定機能
446 算出機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8