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特許7170476放熱部材形成用組成物、放熱部材およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】放熱部材形成用組成物、放熱部材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/28 20060101AFI20221107BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20221107BHJP
   C08F 2/48 20060101ALI20221107BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20221107BHJP
   H01L 23/373 20060101ALI20221107BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20221107BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
C08F20/28
C08F2/44 A
C08F2/48
H01L23/36 Z
H01L23/36 M
B32B27/20 Z
B32B27/00 M
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018172980
(22)【出願日】2018-09-14
(65)【公開番号】P2020045386
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】倉田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】福元 彰朗
(72)【発明者】
【氏名】安齋 剛史
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-102542(JP,A)
【文献】特開2002-308919(JP,A)
【文献】特開2011-132367(JP,A)
【文献】特開昭59-187014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F2/00-2/60
C08F6/00-246/00;301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性の樹脂成分と、
金属酸化物又は水酸化金属からなるフィラーと
を含有し、
前記樹脂成分が極性モノマーを含み、
前記極性モノマーがアクリル酸2-ヒドロキシエチルまたはアクリル酸4-ヒドロキシブチルであり、
前記樹脂成分中における前記極性モノマーの割合が20質量%以上であり、
前記フィラーが酸化アルミニウムからなり、
前記フィラーを85質量%以上、96質量%以下含有する
ことを特徴とする放熱部材形成用組成物。
【請求項2】
請求項に記載の放熱部材形成用組成物を硬化させてなる放熱部材。
【請求項3】
23℃の酢酸エチルに24時間浸漬した後の残存率が90質量%以上であることを特徴とする請求項に記載の放熱部材。
【請求項4】
前記フィラーの平均粒径が、放熱部材の厚さ未満であることを特徴とする請求項2または3に記載の放熱部材。
【請求項5】
シート状であることを特徴とする請求項2~4のいずれか一項に記載の放熱部材。
【請求項6】
第1の剥離シートに対して、請求項1に記載の放熱部材形成用組成物を塗布する工程と、
前記放熱部材形成用組成物の塗布層に第2の剥離シートを積層する工程と、
前記放熱部材形成用組成物を硬化させる工程と
を備えたことを特徴とする放熱部材の製造方法。
【請求項7】
前記放熱部材形成用組成物が活性エネルギー線硬化性であり、前記放熱部材形成用組成物を活性エネルギー線の照射により硬化させることを特徴とする請求項に記載の放熱部材の製造方法。
【請求項8】
請求項2~5のいずれか一項に記載の放熱部材の少なくとも一の面に粘着剤層を有する粘着剤層付き放熱部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱部材形成用組成物、放熱部材およびその製造方法、ならびに粘着剤層付き放熱部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、熱電変換デバイス、光電変換デバイス、大規模集積回路等の半導体デバイスなどの電子デバイス等において、発熱した熱を逃がすために、熱伝導性を有する放熱部材が用いられている。例えば、半導体デバイスから発生する熱を効率良く外部に放熱するための方法として、半導体デバイスとヒートシンクとの間に、熱伝導性に優れるシート状の放熱部材(放熱シート)を設けることが行われている。
【0003】
上記のような放熱シートは、特許文献1に例示されるように、樹脂、放熱フィラーおよび溶剤を必須成分とする塗布液を、剥離フィルムに塗工し、乾燥することにより製造される。また、必要に応じて、上記塗布液の塗布層に対してさらに剥離フィルムが積層される。ここで、放熱シートの熱伝導率を高めるためには、放熱フィラーの配合量を多くすることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3312723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の方法により放熱シートを製造すると、塗布液の乾燥後に得られる放熱シートの表面が荒れて凹凸ができてしまう。この場合、放熱シートと被着体との接触面積が減少し、熱伝導性が低下するという問題がある。
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、再現性よく高い熱伝導率を示す放熱部材を得ることのできる放熱部材形成用組成物、再現性よく高い熱伝導率を示す放熱部材およびその製造方法、ならびに当該放熱部材を有する粘着剤層付き放熱部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、硬化性の樹脂成分と、金属酸化物又は水酸化金属からなるフィラーとを含有し、前記樹脂成分が極性モノマーを含み、前記樹脂成分中における前記極性モノマーの割合が20質量%以上であることを特徴とする放熱部材形成用組成物を提供する(発明1)。
【0008】
上記発明(発明1)に係る放熱部材形成用組成物は、金属酸化物又は水酸化金属からなるフィラーと極性モノマーとの組み合わせにより、溶剤を使用しなくても、低粘度で、フィラーの分散性が良く、塗工性に優れる。それによって、良好な再現性をもって高い熱伝導率を示す放熱部材を得ることができる。
【0009】
上記発明(発明1)においては、前記フィラーを30質量%以上、96質量%以下含有することが好ましい(発明2)。
【0010】
上記発明(発明1,2)においては、前記極性モノマーが、水酸基含有モノマーであることが好ましい(発明3)。
【0011】
第2に本発明は、前記放熱部材形成用組成物(発明1~3)を硬化させてなる放熱部材を提供する(発明4)。
【0012】
上記発明(発明4)に係る放熱部材は、23℃の酢酸エチルに24時間浸漬した後の残存率が90質量%以上であることが好ましい(発明5)。
【0013】
上記発明(発明4,5)においては、前記フィラーの平均粒径が、放熱部材の厚さ未満であることが好ましい(発明6)。
【0014】
上記発明(発明4~6)に係る放熱部材は、シート状であることが好ましい(発明7)。
【0015】
第3に本発明は、第1の剥離シートに対して無溶剤系の硬化性の放熱部材形成用組成物を塗布する工程と、前記放熱部材形成用組成物の塗布層に第2の剥離シートを積層する工程と、前記放熱部材形成用組成物を硬化させる工程とを備えたことを特徴とする放熱部材の製造方法を提供する(発明8)。
【0016】
上記発明(発明8)においては、前記放熱部材形成用組成物が活性エネルギー線硬化性であり、前記放熱部材形成用組成物を活性エネルギー線の照射により硬化させることが好ましい(発明9)。
【0017】
第4に本発明は、前記放熱部材(発明4~7)の少なくとも一の面に粘着剤層を有する粘着剤層付き放熱部材を提供する(発明10)。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る放熱部材形成用組成物および放熱部材の製造方法によれば、再現性よく高い熱伝導率を有する放熱部材を得ることができる。また、本発明に係る放熱部材および粘着剤層付き放熱部材は、再現性よく高い熱伝導率を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る放熱部材(剥離シート付き)の断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る粘着剤層付き放熱部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔放熱部材形成用組成物〕
本発明の一実施形態に係る放熱部材形成用組成物(以下「放熱部材形成用組成物C」という場合がある。)は、硬化性の樹脂成分(A)と、金属酸化物又は水酸化金属からなるフィラー(B)とを含有する。そして樹脂成分(A)は極性モノマーを含有し、樹脂成分(A)中における極性モノマーの割合は、20質量%以上である。
【0021】
上記放熱部材形成用組成物Cは、金属酸化物又は水酸化金属からなるフィラーと極性モノマーとの組み合わせにより、溶剤を使用しなくても、低粘度で、フィラーの分散性が良く、塗工性に優れる。それにより、良好な再現性をもって高い熱伝導率を示す放熱部材(特にシート状の放熱部材)を得ることができる。
【0022】
溶剤を使用しない放熱部材形成用組成物Cは、環境問題や作業環境対策の観点からも好ましいものである。ただし、本発明は、本発明で所望する効果が得られる限り、放熱部材形成用組成物Cに溶剤を添加して使用することを排除するものではない。
【0023】
1.各成分
(1)樹脂成分(A)
本実施形態における樹脂成分(A)は、硬化性の樹脂成分である。硬化性の種類としては、活性エネルギー線硬化性、熱硬化性等が挙げられるが、中でも、取り扱い容易性の観点から活性エネルギー線硬化性が好ましい。
【0024】
本実施形態における樹脂成分(A)は、極性モノマーを含有する。極性モノマーは、極性基として水酸基、カルボキシル基、アミノ基およびアミド基から選らばれる少なくとも1種を含むモノマーであることが好ましく、特に、極性基とともに(メタ)アクリロイル基を含有する(メタ)アクリロイル基含有モノマーであることが好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル及びメタクリロイルの両方を意味する。他の類似用語も同様である。
【0025】
かかる極性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸;(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピル等の(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノアルキル;N-メチロールメタクリルアミド等のアクリルアミド類などが挙げられる。これらの極性モノマーは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
上記の中でも、水酸基を有するモノマー(水酸基含有モノマー)であることが好ましい。水酸基含有モノマーによれば、金属酸化物又は水酸化金属からなるフィラー(B)との組み合わせにおいて、当該フィラー(B)の分散性が良く、また、得られる放熱部材形成用組成物Cの粘度を効果的に低減させることができる。これによって、より高い熱伝導率を有する放熱部材をより良好な再現性をもって製造することができる。
【0027】
水酸基含有モノマーとしては、水酸基を有する(メタ)アクリロイル基含有モノマーであることが好ましく、具体的には、上記の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが好ましい。中でも、粘度低減効果または塗工性の観点から、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルまたは(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルが好ましく、特に、アクリル酸2-ヒドロキシエチルまたはアクリル酸4-ヒドロキシブチルが好ましい。
【0028】
なお、水酸基を有する(メタ)アクリロイル基含有モノマー(特に(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルおよび(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル)の粘度は、一般的に500mPa・s以下であり、相当低い値を示す。
【0029】
樹脂成分(A)中における極性モノマーの割合は、再現性よく高い熱伝導率を得るために、20質量%以上であることを要し、好ましくは40質量%以上であり、特に好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上である。樹脂成分(A)中における極性モノマーの割合の上限値は100質量%である。
【0030】
樹脂成分(A)は、得られる放熱部材の粘着性、柔軟性などの他の特性を発現させるために、上記極性モノマー以外のモノマー(その他のモノマー)およびオリゴマーの少なくとも1種を含有してもよい。
【0031】
上記のその他のモノマーとしては、前述した極性基を有しない(メタ)アクリロイル基含有モノマー(以下「(メタ)アクリロイル基含有モノマーM」という場合がある。)であることが好ましい。この(メタ)アクリロイル基含有モノマーMは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0032】
(メタ)アクリロイル基含有モノマーMとしては、例えば、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく挙げられる。アルキル基は、直鎖状または分岐鎖状であってもよい。アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、形成される放熱部材に柔軟性を付与する観点から、アルキル基の炭素数が1~10の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、特に、種々の被着体に対する高粘着力発現の観点から、アルキル基の炭素数が4~8のアクリル酸アルキルエステルが好ましい。具体的には、例えば、ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、もしくは2-エチルヘキシルアクリレートが好ましく挙げられる。
【0033】
また、(メタ)アクリロイル基含有モノマーMとしては、分子内に脂環式構造を有する(メタ)アクリレート(脂環式構造含有(メタ)アクリレート)も好ましく挙げられる。脂環式構造含有(メタ)アクリレートは、脂環式構造が嵩高く、形成されるポリマー間に適切な距離を与え、得られる放熱部材に柔軟性を付与することができる。
【0034】
脂環式構造含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、柔軟性付与の観点から、ジシクロペンタニルアクリレート、アダマンチルアクリレート、もしくはイソボルニルアクリレートが好ましい。
【0035】
(メタ)アクリロイル基含有モノマーMとして、上記の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、脂環式構造含有(メタ)アクリレートとを併用する場合、それらの質量比は、90:1~50:50であることが好ましく、特に90:10~60:40であることが好ましく、さらには80:20~70:30であることが好ましい。
【0036】
上記オリゴマーは、前述した極性基を有するものであってもよいし、前述した極性基を有しないものであってもよい。
【0037】
上記オリゴマーとしては、ラジカル重合性基を有する、ポリエステル系、エポキシ系、ウレタン系、ポリエーテル系、ポリブタジエン系、シリコーン系等のオリゴマーが挙げられる。これらの中でも、柔軟性付与および凝集力向上の観点から、ラジカル重合性基を有するウレタンオリゴマー(重合性ウレタンオリゴマー)が好ましい。
【0038】
上記の粘度にするためにも、重合性ウレタンオリゴマーの重合平均分子量の上限値は、100,000以下であることが好ましく、特に50,000以下であることが好ましく、さらには20,000以下であることが好ましい。一方、重合性ウレタンオリゴマーの重合平均分子量の下限値は、1,000以上であることが好ましく、3,000以上であることがより好ましく、特に5,000以上であることが好ましく、さらには8,000以上であることが好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0039】
重合性ウレタンオリゴマーは、多官能であることが好ましく、また、重合性ウレタンオリゴマーが有する重合性基は、末端、特に両末端に存在することが好ましい。当該重合性基の種類としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が好ましく、特に(メタ)アクリロイル基が好ましい。すなわち、重合性ウレタンオリゴマーは、ウレタンアクリレート系オリゴマーであることが好ましい。
【0040】
ウレタンアクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリアルキレンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ヒドロキシ基末端を有する水添イソプレン、ヒドロキシ基末端を有する水添ブタジエンといった化合物と、ポリイソシアネートとの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸誘導体でエステル化することにより得ることができる。
【0041】
ウレタンアクリレート系オリゴマーの中でも、フィラー(B)の分散性の観点から、特にポリエーテルウレタンアクリレートが好ましい。
【0042】
上記オリゴマーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、上記オリゴマーは、上記の(メタ)アクリロイル基含有モノマーMと併用することも好ましい。
【0043】
樹脂成分(A)が、極性モノマーと、(メタ)アクリロイル基含有モノマーMとを含有する場合、樹脂成分(A)中における極性モノマーの割合は、20質量%以上であることが好ましく、特に40質量%以上であることが好ましい。一方、当該割合は、80質量%以下であることが好ましく、特に60質量%以下であることが好ましい。また、樹脂成分(A)中における(メタ)アクリロイル基含有モノマーMは、20質量%以上であることが好ましく、特に40質量%以上であることが好ましい。一方、当該割合は、80質量%以下であることが好ましく、特に60質量%以下であることが好ましい。各成分が上記の割合であると、粘度を低く抑えつつ、粘着性および柔軟性を効果的に向上させることができる。
【0044】
樹脂成分(A)が、極性モノマーと、(メタ)アクリロイル基含有モノマーMと、オリゴマーとを含有する場合、樹脂成分(A)中における極性モノマーの割合は、20質量%以上であることが好ましく、特に30質量%以上であることが好ましく、さらには35質量%以上であることが好ましい。一方、当該割合は、80質量%以下であることが好ましく、特に60質量%以下であることが好ましく、さらには50質量%以下であることが好ましい。また、樹脂成分(A)中における(メタ)アクリロイル基含有モノマーMの割合は、10質量%以上であることが好ましく、特に20質量%以上であることが好ましく、さらには40質量%以上であることが好ましい。一方、当該割合は、70質量%以下であることが好ましく、特に60質量%以下であることが好ましく、さらには50質量%以下であることが好ましい。また、樹脂成分(A)中におけるオリゴマーの割合は、1質量%以上であることが好ましく、特に5質量%以上であることが好ましく、さらには10質量%以上であることが好ましい。一方、当該割合は、50質量%以下であることが好ましく、特に40質量%以下であることが好ましく、さらには20質量%以下であることが好ましい。各成分が上記の割合であると、粘度を低く抑えつつ、粘着性および柔軟性を効果的に向上させることができる。
【0045】
放熱部材形成用組成物C中における樹脂成分(A)の含有量は、4質量%以上であることが好ましく、特に8質量%以上であることが好ましく、さらには12質量%以上であることが好ましい。これにより、放熱部材形成用組成物Cの粘度を低く維持して塗工性をより良好なものとすることができ、得られる放熱部材は再現性よく高い熱伝導率を有するものとなる。一方、樹脂成分(A)の含有量は、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、特に30質量%以下であることが好ましく、さらには15質量%以下であることが好ましい。これにより、フィラー(B)の含有量を確保して、得られる放熱部材の放熱性を優れたものにすることができる。
【0046】
(2)フィラー(B)
放熱部材形成用組成物Cが含有するフィラー(B)は、金属酸化物又は水酸化金属からなる。かかる材料は、熱伝導性、すなわち放熱性に優れるとともに、極性モノマーを20質量%以上含有する樹脂成分(A)に対する分散性に優れる。
【0047】
なお、「金属酸化物又は水酸化金属からなる」は、「金属酸化物又は水酸化金属のみからなる」を意味するものではなく、フィラーが所望の放熱性および樹脂成分に対する分散性を有する限り、金属酸化物及び水酸化金属以外の成分を含有していてもよいことを意味するものである。
【0048】
金属酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化鉄等が挙げられる。また、水酸化金属としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。それらの中でも、放熱性および分散性に優れる酸化アルミニウム(アルミナ)が特に好ましい。また、酸化アルミニウムは、導電性を有しないことから、絶縁性が要求される用途のときには、その観点からも好ましい。なお、上記フィラー(B)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0049】
フィラー(B)の形状としては、例えば、粒状、針状、板状、鱗片状、不定形等があり、粒状には、丸み状、真球状、多角形状等がある。なお、本明細書における「丸み状」とは、全体的に丸みを帯びた形状を意味し、球状、楕円球状、卵状等の形状を含むものであるが、必ずしも表面が曲面状のみの形状を意味するのではなく、表面に平面を有する形状をも含むものである。
【0050】
上記の中でも、少なくとも丸み状または真球状の粒状フィラーを使用することが好ましく、粒状フィラーと不定形フィラーとを組み合わせて使用することも好ましい。粒状フィラーと不定形フィラーとを組み合わせる場合、丸み状または真球状のフィラーと不定形フィラーとを組み合わせて使用することが好ましく、特に丸み状のフィラーと不定形フィラーとを組み合わせて使用することが好ましい。これらの場合、得られる放熱部材におけるフィラー(B)の充填率が向上し、放熱部材において効率的な熱伝導経路が形成され、結果として、放熱部材がより優れた放熱性を有するものとなる。
【0051】
フィラー(B)の平均粒径は、目的とする放熱部材の厚さ未満であることが好ましい。これにより、得られる放熱部材における熱伝導率を、良好な再現性をもってより高くすることができる。
【0052】
フィラー(B)が粒状である場合、その平均粒径は、8μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがより好ましく、特に25μm以上であることが好ましく、さらには30μm以上であることが好ましい。また、上記平均粒径は、100μm以下であることが好ましく、特に70μm以下であることが好ましく、さらには40μm以下であることが好ましい。粒状フィラーの平均粒径が上記範囲にあることで、得られる放熱部材におけるフィラー(B)の充填率を高くすることができ、再現性よく放熱性がより優れたものとなる。
【0053】
フィラー(B)の形状が不定形である場合、その平均粒径は、0.1μm以上であることが好ましく、特に0.5μm以上であることが好ましく、さらには1.0μm以上であることが好ましい。また、上記平均粒径は、7μm以下であることが好ましく、特に4μm以下であることが好ましく、さらには2μm以下であることが好ましい。不定形フィラーの平均粒径が上記範囲にあることで、得られる放熱部材におけるフィラー(B)の充填率を高くすることができ、再現性よく放熱性がより優れたものとなる。
【0054】
なお、本明細書におけるフィラーの平均粒径とは、電子顕微鏡で無作為に選んだフィラー20個の長軸径を測定し、その算術平均値として算出される粒径をいう。
【0055】
放熱部材形成用組成物C中におけるフィラー(B)の含有量は、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、特に70質量%以上であることが好ましく、さらには85質量%以上であることが好ましい。これにより、得られる放熱部材におけるフィラー(B)の充填率を高くすることができ、放熱性がより優れたものとなる。一方、フィラー(B)の含有量は、96質量%以下であることが好ましく、特に92質量%以下であることが好ましく、さらには88質量%以下であることが好ましい。これによって、より高い熱伝導率を有する放熱部材を良好な再現性をもって得ることができる。
【0056】
(3)光重合開始剤(C)
樹脂成分(A)が活性エネルギー線硬化性のものであり、その硬化のための活性エネルギー線として紫外線を用いる場合には、放熱部材形成用組成物Cは、さらに光重合開始剤(C)を含有することが好ましい。このように光重合開始剤(C)を含有することにより、樹脂成分(A)を効率良く重合させることができ、また重合硬化時間および活性エネルギー線の照射量を少なくすることができる。
【0057】
このような光重合開始剤(C)としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリ-ブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p-ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
放熱部材形成用組成物C中における光重合開始剤(C)の含有量は、樹脂成分(A)100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、特に0.5質量部以上であることが好ましい。また、光重合開始剤(C)の含有量は、10質量部以下であることが好ましく、特に5質量部以下であることが好ましい。
【0059】
(4)各種添加剤
放熱部材形成用組成物Cには、所望により、各種添加剤、例えば粘着付与剤、難燃剤、酸化防止剤、光安定剤、軟化剤、防錆剤などを添加することができる。
【0060】
2.放熱部材形成用組成物の調製
放熱部材形成用組成物Cは、樹脂成分(A)としての各成分と、フィラー(B)とを混合するとともに、所望により光重合開始剤(C)および添加剤を加えることで製造することができる。
【0061】
ここで、本実施形態に係る放熱部材形成用組成物Cは、樹脂成分(A)とフィラー(B)との組み合わせにより、フィラー(B)を多量に含有しても、粘度が低く、塗工性に優れる。そのため、放熱部材形成用組成物Cは、溶剤等を添加することなく、そのまま塗布液として使用することができる。すなわち、本実施形態に係る放熱部材形成用組成物Cは、溶剤を含有しないことが好ましい。これにより、塗布後における溶剤を揮発させる乾燥工程が不要となり、乾燥に伴う表面の荒れが防止され、より高い熱伝導率を有する放熱部材を得ることができる。
【0062】
〔放熱部材〕
本実施形態に係る放熱部材は、前述した実施形態に係る放熱部材形成用組成物Cを硬化させてなるものである。本実施形態に係る放熱部材の形状は特に限定されず、シート状、板状、ブロック状等であってもよいが、塗工によって製造することのできるシート状であることが好ましい。以下、シート状の放熱部材を例に挙げて説明する。
【0063】
図1に示すように、一例としての本実施形態に係る放熱部材1の一方の面(図1では上側の面)には、第1の剥離シート11aが積層されており、放熱部材1の他方の面(図1では下側の面)には、第2の剥離シート11bが積層されている。各剥離シート11a,11bは、それらの剥離面が放熱部材1に接するように、放熱部材1に積層されている。なお、本明細書における剥離シートの剥離面とは、剥離シートにおいて剥離性を有する面をいい、剥離処理を施した面および剥離処理を施さなくても剥離性を示す面のいずれをも含むものである。
【0064】
1.各部材
(1)放熱部材
本実施形態における放熱部材1は、前述した実施形態に係る放熱部材形成用組成物Cを硬化させてなるものであり、本実施形態ではシート状となっている。
【0065】
放熱部材1の厚さ(JIS K7130に準じて測定した値)は、下限値として1μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、特に20μm以上であることが好ましく、さらに段差や粗面への追従性を発揮させる場合は100μm以上であることが好ましい。放熱部材1の厚さの下限値が上記であると、所望の放熱性を発揮し易い。また、放熱性に優れた粒径を有するフィラー(B)を、放熱部材1の表面から突出させることなく放熱部材1中に充填することができ、放熱部材1の熱伝導率を高く維持することができる。
【0066】
また、放熱部材1の厚さは、上限値として1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましく、特に300μm以下であることが好ましく、さらに放熱性を最大限高める場合は40μm以下であることが好ましい。放熱部材1の厚さの上限値が上記であると、放熱部材形成用組成物Cの一回の塗工で製造することができるとともに、薄型が要求されるデバイス等への使用に好適なものとなる。なお、放熱部材1は単層で形成してもよいし、複数層を積層して形成することもできる。
【0067】
放熱部材1は、23℃の酢酸エチルに24時間浸漬した後の残存率(溶剤浸漬後残存率)が、90質量%以上であることが好ましく、特に94質量%以上であることが好ましく、さらには96質量%以上であることが好ましい。これにより、放熱部材1は凝集力の非常に高いものとなり、フィラー(B)が熱により配置を変えて放熱性に変化が生じるといった現象を有効に防止することができる。すなわち、繰り返し加熱の下でも熱伝導率の再現性がより優れたものとなる。なお、当該溶剤浸漬後残存率の上限値は、特に限定されないが、100質量%以下であることが好ましく、特に99質量%以下であることが好ましい。ここで、本明細書における放熱部材の溶剤浸漬後残存率の測定方法の詳細は、後述する試験例に示す通りである。
【0068】
放熱部材1の23℃、50%RHにおける熱伝導率(ISO 22007-3に準じて測定した値)は、1.5W/m・K以上であることが好ましく、特に1.8W/m・K以上であることが好ましく、さらには2.0W/m・K以上であることが好ましい。これにより、放熱部材1は放熱性に優れるということができる。前述した放熱部材形成用組成物Cを硬化させてなる放熱部材1は、上記の熱伝導率を満たすことが可能である。なお、放熱部材1の23℃、50%RHにおける熱伝導率の上限値は特に限定されないが、通常は14W/m・K以下であることが好ましく、特に7W/m・K以下であることが好ましい。
【0069】
また、放熱部材1の任意の10サンプルについて上記熱伝導率を測定して得られる最大値と最小値との差(幅)は、0.7W/m・K以下であることが好ましく、0.4W/m・K以下であることがより好ましく、特に0.3W/m・K以下であることが好ましく、さらには0.2W/m・K以下であることが好ましい。これによって、熱伝導率の再現性が良いということができる。
【0070】
(2)剥離シート
剥離シート11a,11bとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が用いられる。また、これらの架橋フィルムも用いられる。さらに、これらの積層フィルムであってもよい。
【0071】
上記剥離シート11a,11bの剥離面(特に放熱部材1と接する面)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。
【0072】
剥離シート11a,11bの厚さについては特に制限はないが、通常20~150μm程度である。
【0073】
2.放熱部材の製造
本発明の一実施形態に係る放熱部材の製造方法は、第1の剥離シートに対して無溶剤系の硬化性の放熱部材形成用組成物を塗布し、その塗布層に第2の剥離シートを積層し、そして放熱部材形成用組成物を硬化させることにより、放熱部材を製造する。この方法によれば、放熱部材形成用組成物が無溶剤系であるため、塗布後における溶剤を揮発させる乾燥工程が不要となり、乾燥に伴う表面の荒れが防止され、高い熱伝導率を示す放熱部材を得ることができる。
【0074】
上記無溶剤系の硬化性の放熱部材形成用組成物としては、前述した放熱部材形成用組成物Cが好ましい。これにより、良好な再現性をもって高い熱伝導率を示す放熱部材を得ることができる。放熱部材形成用組成物Cが活性エネルギー線硬化性の場合、放熱部材1の一製造例としては、一方の剥離シート11a(または11b)の剥離面に、放熱部材形成用組成物Cを塗工することで塗布層を形成する。次いで、当該塗布層に他方の剥離シート11b(または11a)の剥離面を重ね合わせて圧着する。その後、塗布層に対して所定量の活性エネルギー線を照射して放熱部材形成用組成物Cを硬化させ、放熱部材1を形成する。
【0075】
塗布層に対する活性エネルギー線の照射は、一方の剥離シート11a(または11b)越しに行ってもよいし、両方の剥離シート11a,11b越しに行ってもよい。放熱部材形成用組成物Cを効率良く確実に硬化させるためには、両方の剥離シート11a,11b越しに活性エネルギー線を照射することが好ましい。
【0076】
なお、第1の剥離シート11aと第2の剥離シート11bとの間における所望の位置(例えば、剥離シート11a,11bが長尺の場合、長手方向に沿った両端縁部;剥離シート11a,11bが矩形の場合、各辺の端縁部)には、所定の厚さを有するスペーサを介在させてもよい。その状態で、第1の剥離シート11a/放熱部材形成用組成物Cの塗布層/第2の剥離シート11bの積層体を圧着することにより、放熱部材形成用組成物Cの塗布層の厚さをスペーサの厚さに合わせることができ、所望の厚さの放熱部材1を容易に形成することが可能となる。
【0077】
上記放熱部材形成用組成物Cの塗布液を塗布する方法としては、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を利用することができる。
【0078】
ここで、活性エネルギー線とは、電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものをいい、具体的には、紫外線や電子線などが挙げられる。活性エネルギー線の中でも、取扱いが容易な紫外線が特に好ましい。
【0079】
紫外線の照射は、高圧水銀ランプ、フュージョンHランプ、キセノンランプ等によって行うことができ、紫外線の照射量は、照度が50~300mW/cm程度であることが好ましい。また、光量は、50~2000mJ/cmであることが好ましく、100~1000mJ/cmであることがより好ましく、200~600mJ/cmであることが特に好ましい。一方、電子線の照射は、電子線加速器等によって行うことができ、電子線の照射量は、1~1000krad程度が好ましい。活性エネルギー線の照射量が上記範囲にあることにより、放熱シート形成用組成物C1を効率良く硬化させることができる。
【0080】
なお、放熱部材形成用組成物Cの硬化は、活性エネルギー線の照射および加熱処理により行うこともできるが、活性エネルギー線の照射のみを行うことが好ましい。これにより、放熱部材形成用組成物Cの塗布対象としての樹脂フィルム等の熱劣化、熱収縮等を防ぐことができる。また、加熱しないことにより、放熱部材形成用組成物C中の揮発成分の加熱による消失を抑制することができる。
【0081】
〔粘着剤層付き放熱部材〕
本発明の一実施形態に係る粘着剤層付き放熱部材は、前述した実施形態に係る放熱部材の少なくとも一の面に粘着剤層を有するものである。例えば、シート状または板状の放熱部材の場合には、その一方の主面または両方の主面に粘着剤層を有するものであり、ブロック状の放熱部材の場合には、例えばその最も大きい面積を有する面に粘着剤層を有するものである。以下、シート状の放熱部材の両方の主面に粘着剤層を有する場合を例に挙げて説明する。
【0082】
図2に示すように、本発明の一実施形態に係る粘着剤層付き放熱部材2は、放熱部材1と、放熱部材1の一方の面(図2では上側の面)に積層された第1の粘着剤層21aと、放熱部材1の他方の面(図2では下側の面)に積層された第2の粘着剤層21bと、第1の粘着剤層21aにおける放熱部材1側とは反対側の面に積層された剥離シート22aと、第2の粘着剤層21bにおける放熱部材1側とは反対側の面に積層された剥離シート22bとを備えている。各剥離シート22a,22bは、それらの剥離面が粘着剤層21a,21bに接するように、粘着剤層21a,21bに積層されている。
【0083】
放熱部材1は、前述した実施形態に係る放熱部材1である。また、剥離シート22a,22bは、前述した実施形態における剥離シート11a,11bと同様のものである。
【0084】
第1の粘着剤層21aおよび第2の粘着剤層21bを構成する粘着剤の種類は、特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等のいずれであってもよい。また、当該粘着剤は、エマルション型、溶剤型または無溶剤型のいずれでもよく、架橋タイプまたは非架橋タイプのいずれであってもよい。それらの中でも、粘着物性等に優れるアクリル系粘着剤が好ましい。
【0085】
また、アクリル系粘着剤としては、活性エネルギー線硬化性のものであってもよいし、活性エネルギー線非硬化性のものであってもよいが、製造工程簡略化の観点から、活性エネルギー線非硬化性のアクリル系粘着剤であることが好ましい。活性エネルギー線非硬化性のアクリル系粘着剤としては、特に架橋タイプのものが好ましく、さらには熱架橋タイプのものが好ましい。
【0086】
なお、第1の粘着剤層21aおよび第2の粘着剤層21bを構成する粘着剤は、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよく、被着体の種類に応じて適宜設計すればよい。
【0087】
また、第1の粘着剤層21aおよび第2の粘着剤層21bは、所望の粘着力が得られる限り、熱伝導性に優れるフィラーを含有してもよい。
【0088】
第1の粘着剤層21aおよび第2の粘着剤層21bの厚さは、それぞれ1μm以上であることが好ましく、特に5μm以上であることが好ましく、さらには10μm以上であることが好ましい。これにより、好ましい粘着力を得ることが可能となる。また、第1の粘着剤層21aおよび第2の粘着剤層21bの厚さは、それぞれ100μm以下であることが好ましく、特に50μm以下であることが好ましく、さらには20μm以下であることが好ましい。これにより、放熱部材1の熱伝導性・放熱性を妨げることを抑制することができる。
【0089】
第1の粘着剤層21aおよび第2の粘着剤層21bの23℃、1Hzでの貯蔵弾性率は、それぞれ10MPa以下であることが好ましく、特に1MPa以下であることが好ましく、さらには0.2MPa以下であることが好ましい。これにより、粘着剤層付き放熱部材2が被着体に対して追従し易く、また密着し易くなる。また、上記貯蔵弾性率は、それぞれ0.01MPa以上であることが好ましく、特に0.07MPa以上であることが好ましく、さらには0.12MPa以上であることが好ましい。これにより、第1の粘着剤層21aおよび第2の粘着剤層21bの強度が確保され、粘着剤層付き放熱部材2の耐久性が良好なものとなる。
【0090】
上記粘着剤層付き放熱部材2の一例としての製造方法を説明する。
まず、剥離シート22aの剥離面上に第1の粘着剤層21aが形成された第1の粘着シートと、剥離シート22bの剥離面上に第2の粘着剤層21bが形成された第2の粘着シートとを用意する。これらは、常法によって製造することができる。
【0091】
次いで、剥離シート11a,11bを剥離した状態の放熱部材1を用意し、第1の粘着シートを、第1の粘着剤層21aを介して放熱部材1の一方の面に貼付する。また、第2の粘着シートを、第2の粘着剤層21bを介して放熱部材1の他方の面に貼付する。これにより、上記の粘着剤層付き放熱部材2を得ることができる。
【0092】
本実施形態に係る粘着剤層付き放熱部材2のステンレススチール(SUS304,#360研磨)に対する粘着力は、1N/25mm以上であることが好ましく、特に4N/25mm以上であることが好ましく、さらには8N/25mm以上であることが好ましい。これにより、発熱する部材や放熱する部材に対する接着性が確保される。また、上記粘着力は、50N/25mm以下であることが好ましく、特に40N/25mm以下であることが好ましく、さらには30N/25mm以下であることが好ましい。これにより、良好なリワーク性が得られ、貼合ミスが生じた場合でも貼り直しが可能となる。この粘着力は、基本的にはJIS Z0237:2009に準じた180度引き剥がし法により測定した粘着力をいい、具体的な測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0093】
本実施形態に係る粘着剤層付き放熱部材2は、例えば、発熱する部材、例えば、各種半導体デバイス、LED発光素子、光ピックアップ、パワートランジスタ等の電子デバイスを、放熱性を有する基板等に接着したり、それら発熱する部材に対してヒートシンク等を接着するのに好適である。また、発熱する部材は、モバイル端末、ウェアラブル端末等の各種電子機器のほか、バッテリー、電池、モーター、エンジンなどであってもよい。被着体の材料は、金属、セラミックス、ガラス、半導体、プラスチック、グラファイト、カーボンナノファイバー等のいずれであってもよいが、伝熱性を有する材料であることが好ましい。
【0094】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0095】
例えば、粘着剤層付き放熱部材2における剥離シート22a,22bのいずれか一方は省略されてもよい。また、粘着剤層付き放熱部材2における放熱部材1と粘着剤層21a,21bとの間には、他の層が介在していてもよい。
【実施例
【0096】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0097】
〔実施例1〕
1.放熱部材形成用組成物の調製
樹脂成分(A)としてのアクリル酸2-ヒドロキシエチル100質量部と、フィラー(B)としてのアルミナフィラー(昭和電工社製,製品名「AS-400」;平均粒径35μmの丸み状フィラーと平均粒径1.5μm不定形フィラーとの混合品)400質量部と、光重合開始剤(C)としての1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン3質量部とを混合し、ディスパーにより1分間撹拌することで放熱部材形成用組成物を得た。
【0098】
2.放熱部材の製造
上記工程1で得られた放熱部材形成用組成物を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(第1の剥離シート;リンテック社製,製品名「SP-PET751031」)の剥離処理面に、アプリケーターにより塗工した。
【0099】
次いで、上記で得られた剥離シート上の塗布層と、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(第2の剥離シート;リンテック社製,製品名「SP-PET751130」)とを、当該剥離シートの剥離処理面が塗布層に接触するように貼合し、ハンドローラー(1.25kg)を使用して圧着した。
【0100】
その後、上記2枚の剥離シートの各面側から、塗布層に対し、それぞれ1回ずつ下記の条件で活性エネルギー線(紫外線)を照射して、放熱部材形成用組成物の塗布層を硬化させ、厚さ150μmのシート状の放熱部材を形成した。
<活性エネルギー線照射条件>
・高圧水銀ランプ使用
・照度180mW/cm,光量230mJ/cm
・UV照度・光量計はアイグラフィックス社製「UVPF-A1」を使用
【0101】
〔実施例2〕
樹脂成分(A)として、アクリル酸2-ヒドロキシエチル100質量部の替わりに、アクリル酸4-ヒドロキシブチル100質量部を使用する以外、実施例1と同様にして放熱部材を製造した。
【0102】
〔実施例3〕
樹脂成分(A)として、アクリル酸2-ヒドロキシエチル100質量部の替わりに、アクリル酸4-ヒドロキシブチル50質量部およびアクリル酸2-エチルヘキシル50質量部を使用する以外、実施例1と同様にして放熱部材を製造した。
【0103】
〔実施例4〕
重量平均分子量9,200のポリプロピレングリコール1モルと、イソホロンジイソシアネート2モルと、アクリル酸2-ヒドロキシエチル2モルとを重合させ、ウレタンアクリレート系オリゴマーとしての、重量平均分子量9,900のポリエーテルウレタンアクリレートを得た。
【0104】
なお、ポリプロピレングリコールおよびポリエーテルウレタンアクリレートの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて、下記条件に沿って測定した標準ポリスチレン換算値である。
<測定条件>
・測定装置:東ソー社製,HLC-8320
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK gel superH-H
TSK gel superHM-H
TSK gel superH2000
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0105】
樹脂成分(A)として、アクリル酸2-ヒドロキシエチル100質量部の替わりに、アクリル酸4-ヒドロキシブチル37質量部、アクリル酸2-エチルヘキシル35質量部、アクリル酸イソボルニル12質量部、および上記で得られたポリエーテルウレタンアクリレート16質量部を使用する以外、実施例1と同様にして放熱部材を製造した。
【0106】
〔実施例5〕
アルミナフィラーの配合量を667質量部に変更する以外、実施例2と同様にして放熱部材を製造した。
【0107】
〔実施例6〕
フィラー(B)として、実施例1のアルミナフィラーに替えて、アルミナフィラー(昭和電工社製,製品名「AS-40」;平均粒径28μmの丸み状フィラーと平均粒径1.5μm不定形フィラーとの混合品)を使用する以外、実施例2と同様にして放熱部材を製造した。
【0108】
〔実施例7〕
フィラー(B)として、実施例1のアルミナフィラーに替えて、アルミナフィラー(昭和電工社製,製品名「A20S」;平均粒径22μmの真球状フィラー)を使用する以外、実施例2と同様にして放熱部材を製造した。
【0109】
〔実施例8〕
フィラー(B)として、実施例1のアルミナフィラーに替えて、アルミナフィラー(昭和電工社製,製品名「AS50」;平均粒径10μmの丸み状フィラー)を使用する以外、実施例2と同様にして放熱部材を製造した。
【0110】
〔実施例9〕
放熱部材形成用組成物を塗工するアプリケーターを調節することにより、得られる放熱部材の厚さを30μmとする以外、実施例8と同様にして放熱部材を製造した。
【0111】
〔実施例10〕
23℃、1Hzでの貯蔵弾性率(G’)が0.15MPaであるアクリル系粘着剤層(厚さ15μm)が剥離シートの剥離面上に設けられている粘着シート(リンテック社製,製品名「MO-P011-15」)を2枚用意した。
【0112】
実施例1で製造した放熱部材から両面の剥離シートを剥離し、当該放熱部材の両面それぞれに、上記アクリル系粘着剤層を介して粘着シートを貼付した。これにより、剥離シート/粘着剤層/放熱部材/粘着剤層/剥離シートからなる両面粘着剤層付き放熱部材を得た。
【0113】
〔比較例1〕
フィラーとして、実施例1のアルミナフィラー400質量部に替えて、窒化ホウ素フィラー(昭和電工社製,製品名「UHP-2」;平均粒径10μmの鱗片状フィラー)227質量部を使用する以外、実施例1と同様にして放熱部材を製造した。なお、窒化ホウ素の227質量部は、当該窒化ホウ素と樹脂成分との体積割合が等しくなる分量である。
【0114】
〔比較例2〕
窒化ホウ素フィラーの配合量を80質量部に変更する以外、比較例1と同様にして放熱部材を製造した。
【0115】
〔比較例3〕
窒化ホウ素フィラーの配合量を57質量部に変更する以外、比較例1と同様にして放熱部材を製造した。
【0116】
〔比較例4〕
樹脂成分(A)として、アクリル酸2-ヒドロキシエチル100質量部の替わりに、アクリル酸2-エチルヘキシル100質量部を使用する以外、実施例1と同様にして放熱部材を製造した。
【0117】
〔比較例5〕
樹脂成分(A)として、アクリル酸2-ヒドロキシエチル100質量部の替わりに、アクリル酸n-ブチル100質量部を使用する以外、実施例1と同様にして放熱部材を製造した。
【0118】
〔試験例1〕(粘度の評価)
実施例および比較例で調製した放熱部材形成用組成物について、その粘度が製造ラインにおいて撹拌混合が可能な程度に低い(〇)か、当該撹拌混合に適しない程度に高い(×)かを、撹拌棒を使用して判断した。結果を表1に示す。
【0119】
〔試験例2〕(塗工性の評価)
実施例および比較例で調製した放熱部材形成用組成物をアプリケーターにより塗工したときの状況を判断するとともに、アプリケーターにより塗工して得られた塗布層に、スジがないかどうかを目視により判断した。そして、以下の基準に基づいて塗工性を評価した。結果を表1に示す。
○:スジが無く均一な面が形成された。
△:スジが発生した。
×:放熱部材形成用組成物の粘度が高く塗工できなかった。
【0120】
なお、放熱部材形成用組成物が塗工できなかった比較例1、4および5については、溶剤浸漬後残存率の測定以外の試験を行わなかった。
【0121】
〔試験例3〕(溶剤浸漬後残存率の測定)
実施例および比較例で得られた放熱部材を40mm×40mmのサイズに裁断し、両面の剥離シートを剥がして、ポリエステル製メッシュ(メッシュサイズ200)に包み、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、放熱部材のみの質量を算出した。このときの質量をM1とする。
【0122】
次に、上記ポリエステル製メッシュに包まれた放熱部材を、室温下(23℃)で酢酸エチルに24時間浸漬させた。その後、放熱部材を取り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、24時間風乾させ、さらに80℃のオーブン中にて12時間乾燥させた。乾燥後、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、放熱部材のみの質量を算出した。このときの質量をM2とする。溶剤浸漬後残存率(%)は、(M2/M1)×100で表される。これにより、放熱部材の溶剤浸漬後残存率を導出した。結果を表1に示す。
【0123】
〔試験例4〕(熱伝導率の測定)
実施例および比較例で得られた放熱部材について、23℃、50%RHの環境下にて、熱拡散率・熱伝導率測定装置(アイフェイズ社製,製品名「ai-phase mobile」)を使用し、ISO 22007-3に準拠して熱伝導率(W/m・K)の測定を行った。なお、測定は、それぞれ10サンプルについて行い、それらの最大値、最小値、および最大値と最小値との差(幅)を求めた。結果を表1に示す。
【0124】
〔試験例5〕(放熱性の評価)
試験例4において測定した熱伝導率が最大値を示した各例に係る放熱部材のサンプルから10mm×25mmの大きさの放熱部材を切り出し、これをサンプルとした。厚さ1mmのアルミニウム板(パルテック社製,製品名「アルミニウム合金板 A1050P」)の上に上記サンプルを載置し、さらに当該サンプルの上にLED発光素子(IPF社製LEDヘッドランプバルブ「H4 24V 6500K 34VHLB」から取り外したLED発光素子)を載置した。
【0125】
次いで、上記LED発光素子に電圧24V、電流3Aの電気を通して当該LED発光素子を発光させた。それと同時に、アルミニウム板の下方5mmの位置から、空冷ファン(Nidec社製,製品名「D02X-05TS1 02」)によって当該アルミニウム板を冷却した。そして、発光から210秒後における上記LED発光素子の温度を、上記LED発光素子の上方35cmの位置からサーモカメラ(テストー社製,製品名「testo 870-1 サーモグラフィー」)によって測定した。その測定温度が80℃以下であれば、放熱性に優れているということができる。結果を表1に示す。
【0126】
なお、実施例10で得られた両面粘着剤層付き放熱部材については、両面の剥離シートを剥離し、露出した両面の粘着剤層を介して、LED発光素子をアルミニウム板に貼合した。
【0127】
また、比較例6として、アルミニウム板の上にLED発光素子を直接載置し、上記と同様にしてLED発光素子の温度を測定した。
【0128】
〔試験例6〕(粘着力の測定)
実施例10で得られた両面粘着剤層付き放熱部材から一方の剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を、易接着層を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製,東洋紡社製,製品名「PET A4300」,厚さ:25μm)の易接着層に貼合した。その積層体を、幅25mm、長さ100mmに裁断し、これをサンプルとした。そして、当該サンプルから他方の剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を、ステンレススチール板(SUS304,#360研磨)に貼付した。
【0129】
貼付後1分以内に、引張試験機(オリエンテック社製,製品名「テンシロン」)を用い、剥離速度300mm/min、剥離角度180°の条件で粘着力(N/25mm)を測定した。ここに記載した以外の条件はJIS Z0237:2009に準拠して、測定を行った。その結果、実施例10の両面粘着剤層付き放熱部材の粘着力は、10N/25mmであった。
【0130】
〔試験例7〕(接着耐久性の評価)
実施例10で得られた両面粘着層付き放熱部材を、試験例5と同様に配置し、LED発光素子を5時間発光させた。その後、アルミニウム板/両面粘着層付き放熱部材/LED発光素子の積層体を逆さまに向けて、その状態で両面粘着層付き放熱部材およびLED発光素子がアルミニウム板から剥がれ落ちないことを確認した。
【0131】
【表1】
【0132】
表1から分かるように、実施例で調製した放熱部材形成用組成物は、粘度が低く、塗工性に優れていた。また、実施例で製造した放熱部材は、熱伝導性・放熱性に優れ、また、熱伝導性についてロット間誤差が少なく、再現性に優れていた。さらに、実施例で製造した放熱部材は、溶剤浸漬後残存率が高く、繰り返し加熱の下での熱伝導率の再現性に優れるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明に係る放熱部材および粘着剤層付き放熱部材は、例えば、発熱する電子デバイスと放熱性の基板またはヒートシンクとの間に介在させて、当該電子デバイスを冷却するのに好適に使用することができる。また、本発明に係る放熱部材形成用組成物および放熱部材の製造方法は、上記の放熱部材を製造するのに好適である。
【符号の説明】
【0134】
1…放熱部材
11a…第1の剥離シート
11b…第2の剥離シート
2…粘着剤層付き放熱部材
21a,21b…粘着剤層
22a,22b…剥離シート
図1
図2