(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】ガス絶縁変圧器
(51)【国際特許分類】
H01F 27/32 20060101AFI20221107BHJP
H01F 30/10 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
H01F27/32 130
H01F27/32 140
H01F30/10 H
(21)【出願番号】P 2018204035
(22)【出願日】2018-10-30
【審査請求日】2021-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中澤 義基
(72)【発明者】
【氏名】高野 啓
(72)【発明者】
【氏名】森 繁和
(72)【発明者】
【氏名】松岡 綾
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-052938(JP,A)
【文献】特開平09-326321(JP,A)
【文献】実開昭60-169822(JP,U)
【文献】実開昭56-129717(JP,U)
【文献】特開平05-234776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/28-27/32、30/10、37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄心を内側に配置した第1絶縁筒と、
前記第1絶縁筒の外周面に配置され、電気絶縁性を有するバリアと、
前記第1絶縁筒の径方向において前記バリアの外側に配置され、前記第1絶縁筒の軸方向に伸びる第1レールと、
前記径方向において前記第1レールの外側に配置され、
前記第1絶縁筒の周方向に巻回された円板巻線と、
前記径方向において前記第1レールの外側に配置され、前記軸方向において前記円板巻線の端部に配置されるスペーサと、を有し、
前記第1レールは、前記径方向の外側面が前記径方向の外側に突出する第1凸部と、前記径方向の外側面が前記径方向の内側に窪む第1凹部と、を有し、
前記スペーサは、前記第1凸部と係合し、
前記円板巻線は、前記第1凹部の前記径方向の外側面と当接する、
ガス絶縁変圧器。
【請求項2】
前記径方向における前記第1凹部の厚さは、Q以下である、
請求項1に記載のガス絶縁変圧器。
ただし、Qは、前記径方向において前記円板巻線から前記バリアに向かう距離であって、
【数1】
を満たす実効電離係数α´(E,P)がガス圧力Pにかかわらず一定となる距離である。
Eは電界、Kはストリーマ係数、積分は電気力線上の距離積分である。
【請求項3】
前記径方向における前記第1凹部の厚さは、5mm以下である、
請求項1に記載のガス絶縁変圧器。
【請求項4】
前記軸方向における前記第1凹部の高さは、前記円板巻線の高さより大きく、
前記軸方向における前記第1凹部の高さと前記円板巻線の高さとの差分は、ゼロより大きく、
複数の前記スペーサが、前記軸方向に隣り合う前記円板巻線の間に配置され、
前記複数のスペーサの前記軸方向の端部に下端スペーサが配置され、
前記下端スペーサの前記軸方向の一部が前記第1凹部に配置され、
前記軸方向の一部が前記第1凹部に配置される前記
下端スペーサの前記軸方向の厚さは、前記差分より大きい、
請求項1から3のいずれか1項に記載のガス絶縁変圧器。
【請求項5】
前記第1凹部の前記径方向の外側面において、前記軸方向の端部が前記軸方向の中央部より前記径方向の内側に窪んで形成される、
請求項1から4のいずれか1項に記載のガス絶縁変圧器。
【請求項6】
前記第1絶縁筒の前記径方向の内側に配置された第2絶縁筒と、
前記第1絶縁筒と前記第2絶縁筒との間に配置された第2レールと、を有し、
前記第2レールは、前記径方向の外側面が前記径方向の外側に突出する第2凸部と、前記径方向の外側面が前記径方向に窪む第2凹部と、を有し、
前記第2凸部および前記第2凹部は、前記軸方向に並んで形成され、
前記第2凸部は、前記軸方向において前記第1凸部と異なる位置に配置される、
請求項1から5のいずれか1項に記載のガス絶縁変圧器。
【請求項7】
前記第1絶縁筒の前記径方向の内側に配置された第2絶縁筒と、
前記第1絶縁筒と前記第2絶縁筒との間に配置された第2レールと、を有し、
前記第2レールは、前記径方向の外側面が前記径方向の外側に突出する第2凸部と、前記径方向の外側面が前記径方向に窪む第2凹部と、を有し、
前記第2凸部および前記第2凹部は、前記軸方向に並んで形成され、
前記第2凸部は、前記周方向において前記第1凸部と異なる位置に配置される、
請求項1から5のいずれか1項に記載のガス絶縁変圧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ガス絶縁変圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
タンク内に絶縁ガスを封入したガス絶縁変圧器が利用されている。絶縁ガスであるSF6は地球温暖化係数が高い。SF6の代替ガスとして、ドライエア、N2またはCO2などの利用が検討されている。代替ガスの絶縁性能はSF6よりも低いので、絶縁距離が大きくなり、ガス絶縁変圧器が大型化する。代替ガスを利用する場合でも小型化できるガス絶縁変圧器が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、代替ガスを利用する場合でも小型化することができるガス絶縁変圧器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のガス絶縁変圧器は、第1絶縁筒と、バリアと、第1レールと、円板巻線と、スペーサと、を持つ。第1絶縁筒は、鉄心を内側に配置する。バリアは、第1絶縁筒の外周面に配置され、電気絶縁性を有する。第1レールは、第1絶縁筒の径方向においてバリアの外側に配置される。第1レールは、第1絶縁筒の軸方向に伸びる。円板巻線は、径方向において第1レールの外側に配置される。円板巻線は、第1絶縁筒の周方向に巻回される。スペーサは、径方向において第1レールの外側に配置される。スペーサは、軸方向において円板巻線の端部に配置される。第1レールは、第1凸部と、第1凹部と、を有する。第1凸部は、径方向の外側面が径方向の外側に突出する。第1凹部は、径方向の外側面が径方向の内側に窪む。スペーサは、第1凸部と係合する。円板巻線は、第1凹部の径方向の外側面と当接する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1の実施形態のガス絶縁変圧器の側面断面図。
【
図2】
図1のII-II線におけるP部の平面断面図。
【
図3】
図2のIII-III線における側面断面図。
【
図5】ドライエアの場合の実効電離係数の分布を示すグラフ。
【
図6】N
2の場合の実効電離係数の分布を示すグラフ。
【
図7】CO
2の場合の実効電離係数の分布を示すグラフ。
【
図8】第1の実施形態の第1変形例のガス絶縁変圧器の側面断面図。
【
図9】第1の実施形態の第2変形例のガス絶縁変圧器の側面断面図。
【
図10】第2の実施形態のガス絶縁変圧器の側面断面図。
【
図11】第2の実施形態の第1変形例のガス絶縁変圧器の平面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態のガス絶縁変圧器を、図面を参照して説明する。
本願において、極座標系のZ方向、R方向およびθ方向が以下のように定義される。Z方向は第1高圧絶縁筒の軸方向である。例えば、Z方向は鉛直方向であり、+Z方向は上方向である。R方向は第1高圧絶縁筒の径方向であり、+R方向は外側の方向である。例えば、R方向は水平方向である。θ方向は第1高圧絶縁筒の周方向である。
【0008】
(第1の実施形態)
第1の実施形態のガス絶縁変圧器について説明する。
図1は、第1の実施形態のガス絶縁変圧器の側面断面図である。
図1は、
図2のI-I線における側面断面図である。ガス絶縁変圧器(静止誘導電器)1は、変圧器2と、タンク4と、を有する。
タンク4は、内部に変圧器2を収容する。タンク4の内部空間5には、特定ガスが封入される。特定ガスは、SF
6より地球温暖化係数が低いガスである。例えば特定ガスは、ドライエア、N
2もしくはCO
2などの自然由来ガス、またはこれらの混合ガスである。
【0009】
変圧器2は、鉄心6と、低圧コイル90と、低圧絶縁筒92と、円板巻線10と、第1高圧絶縁筒12と、を有する。
鉄心6は、磁性材料により円柱状に形成される。鉄心6の軸方向は、Z方向と平行に配置される。
【0010】
低圧コイル90は、例えば、絶縁被覆された導線をθ方向に巻回して形成される。導線は、厚さ方向をR方向に一致させて、R方向に積層するように巻回される。低圧コイル90は、鉄心6と同軸状に配置される。低圧コイル90は、鉄心6の外周からR方向に所定距離を置いて配置される。複数の低圧コイル90が、Z方向に並んで配置される。複数の低圧コイル90は、直列に接続される。
【0011】
低圧絶縁筒92は、電気絶縁性材料により円筒状に形成される。低圧絶縁筒92は、R方向において鉄心6と低圧コイル90との間に配置される。低圧絶縁筒92は、鉄心6および低圧コイル90と同軸状に配置される。低圧絶縁筒92は、鉄心6と低圧コイル90との間の絶縁距離を確保する。
【0012】
円板巻線(高圧コイル)10は、絶縁被覆された導線をθ方向に巻回して形成される。導線は、厚さ方向をR方向に一致させて、R方向に積層するように巻回される。円板巻線10は、低圧コイル90と同軸状に配置される。円板巻線10は、低圧コイル90の外周からR方向に所定距離を置いて配置される。複数の円板巻線10が、Z方向に並んで配置される。複数の円板巻線10は、直列に接続される。
【0013】
第1高圧絶縁筒12は、電気絶縁性材料により円筒状に形成される。第1高圧絶縁筒12は、R方向において低圧コイル90と円板巻線10との間に配置される。第1高圧絶縁筒12は、低圧コイル90および円板巻線10と同軸状に配置される。第1高圧絶縁筒12は、低圧コイル90と円板巻線10との間の絶縁距離を確保する。
【0014】
図2は、
図1のII-II線におけるP部の平面断面図である。P部は、第1高圧絶縁筒12および円板巻線10が配置される部分である。
図3は、
図2のIII-III線における側面断面図である。
図3に示されるように、変圧器2は、バリア15と、スペーサ30と、第1レール20と、をさらに有する。
【0015】
バリア15は、電気絶縁性材料によりフィルム状に形成される。例えばバリア15は、PET、PEN、PTFEなどのプラスチック材料により形成される。バリア15は、第1高圧絶縁筒12の外周面上に配置される。
円板巻線10の周囲には、前述された特定ガスが配置される。特定ガスは、地球温暖化係数が高いSF6の代替ガスであり、SF6より電気絶縁性能が低い。バリア15は、後述されるように、円板巻線10からの部分放電を抑制する。
【0016】
スペーサ30は、電気絶縁性材料により平板状に形成される。例えばスペーサ30は、形状加工が容易なプレスボードなどにより形成される。複数のスペーサ30がZ方向に積層され、Z方向に隣り合う円板巻線10の間に配置される。スペーサ30は、円板巻線10のセクション間の絶縁距離を確保する。
図4は、
図3のIV-IV線における平面断面図である。
図4に示されるように、スペーサ30は、R方向と平行に配置される。スペーサ30は、θ方向において間欠的に配置される。例えばスペーサ30は、θ方向において等角度間隔で配置される。
【0017】
スペーサ30は、-R方向の端部にスペーサ側係合部を有する。スペーサ側係合部は、第1レール20に形成されるレール側係合部と係合する。スペーサ側係合部およびレール側係合部は、それぞれ鍵型に形成されて相互に係合する。スペーサ側係合部は、レール挿入部33と、係合凹部34と、を有する。
【0018】
レール挿入部33は、スペーサ30をZ方向に貫通して形成される。レール挿入部33は、スペーサ30の-R方向の端部から+R方向に所定長さで形成される。レール挿入部33は、スペーサ30のθ方向の中央部に所定幅で形成される。
係合凹部34は、スペーサ30をZ方向に貫通して形成される。係合凹部34は、レール挿入部33の+R方向の端部に形成される。係合凹部34は、レール挿入部33からθ方向の両側に所定長さで形成される。
【0019】
第1レール20は、プレスボードなどの電気絶縁性材料により形成される。第1レール20は、Z方向に伸びる。第1レール20は、バリア15の外周面に配置される。第1レール20は、θ方向において間欠的に配置される。例えば第1レール20は、θ方向において等角度間隔で配置される。
【0020】
図3に示されるように、第1レール20は、第1凸部23と、第1凹部21と、を有する。第1凸部23および前記第1凹部21は、Z方向に並んで形成される。第1凸部23および前記第1凹部21のθ方向の幅は同等である。第1凸部23の+R方向の面は、第1凹部21の+R方向の面より、+R方向に配置される。すなわち、第1凸部23の+R方向の面は+R方向に突出する。逆に、第1凹部21の+R方向の面は、第1凸部23の+R方向の面より、-R方向に配置される。すなわち、第1凹部21の+R方向の面は-R方向に窪む。第1凹部21のR方向の厚さは、第1凸部23のR方向の厚さより小さい。
【0021】
図4に示されるように、第1凸部23はスペーサ30と係合する。第1凸部23のZ方向の高さは、Z方向に積層された複数のスペーサ30の高さと同等である。第1凸部23は、+R方向の端部にレール側係合部を有する。レール側係合部は、係合凸部24を有する。係合凸部24は、第1凸部23の+R方向の端部に形成される。係合凸部24は、第1凸部23からθ方向の両側に所定長さで形成される。
スペーサ30のレール挿入部33の内側に、第1レール20の第1凸部23が配置される。これにより、スペーサ30がθ方向に位置決めされる。スペーサ30の係合凹部34に、第1凸部23の係合凸部24が配置される。これにより、スペーサ30がR方向に位置決めされる。
【0022】
図3に示されるように、第1凹部21は、円板巻線10の-R方向の端部を収容する。第1凹部21のZ方向の高さは、円板巻線10のZ方向の高さと同等である。円板巻線10は、第1凹部21の+R方向の面と当接する(
図2参照)。前述されたように、第1凹部21の+R方向の面は、第1凸部23の+R方向の面より、-R方向に配置される。第1凹部21のR方向の厚さは、第1凸部23のR方向の厚さより小さい。これにより、円板巻線10とバリア15とのR方向における距離が短くなる。
【0023】
円板巻線10からの放電は、電子の増幅により発生する。電子の増幅は、実効電離係数との相関を有する。実効電離係数は、数式1で表されるストリーマ条件式を満たすように分布する。
【0024】
【数1】
ただし、α´(E,P)は実効電離係数、Eは電界、Pは特定ガスのガス圧力、Kはストリーマ係数、積分は電気力線上の距離積分である。
【0025】
円板巻線10および低圧コイル90を同軸円筒状に模擬した場合のストリーマ条件式が検討される。このストリーマ条件式を満たす実効電離係数が、円板巻線10から低圧コイルに向かう距離に対してプロットされる。これにより、
図5-7の実効電離係数の分布を示すグラフが作成される。
図5は、特定ガスがドライエアの場合の実効電離係数の分布を示すグラフである。同様に、
図6はN
2の場合であり、
図7はCO
2の場合である。各図には、特定ガスの圧力が異なる場合のグラフが重なって示される。
【0026】
一般に、実効電離係数が正で大きい場合に、電子が増幅されて放電が発生しやすい。
図5-7によれば、円板巻線10からの距離がQの位置で、特定ガスの圧力にかかわらず実効電離係数が一定となる。実効電離係数は、円板巻線10からの距離がQ以下になると急激に増加する。そこで、円板巻線10からの距離がQ以下の位置に、バリア15が配置される。そのため、第1レール20の第1凹部21のR方向における厚さが、Q以下に形成される。これにより、電子の増幅が制限されて、円板巻線10からの放電が抑制される。
図5-7によれば、実効電離係数は、円板巻線10からの距離が5mm以下になると急激に増加する。そこで、第1凹部21のR方向における厚さが、5mm以下に形成されてもよい。
【0027】
以上に詳述されたように、ガス絶縁変圧器1は、第1高圧絶縁筒12と、バリア15と、第1レール20と、円板巻線10と、スペーサ30と、を持つ。第1高圧絶縁筒12は、鉄心6を内側に配置する。バリア15は、第1高圧絶縁筒12の外周面に配置され、電気絶縁性を有する。第1レール20は、R方向においてバリアの外側に配置される。第1レール20は、Z方向に伸びる。円板巻線10は、R方向において第1レール20の外側に配置される。円板巻線10は、θ方向に巻回される。スペーサは、R方向において第1レール20の外側に配置される。スペーサ30は、Z方向において円板巻線10の端部に配置される。第1レール20は、第1凸部23と、第1凹部21と、を有する。第1凸部23は、R方向の外側面がR方向の外側に突出する。第1凹部21は、R方向の外側面がR方向の内側に窪む。スペーサ30は、第1凸部23と係合する。円板巻線10は、第1凹部21のR方向の外側面と当接する。
【0028】
第1凹部21は、R方向の外側面がR方向の内側に窪む。円板巻線10は、第1凹部21のR方向の外側面と当接する。第1凹部21の厚さが小さいので、円板巻線10とバリア15との距離が短くなる。円板巻線10の近傍における電子の増幅がバリア15によって制限され、円板巻線10からの放電が抑制される。これにより、円板巻線10と低圧コイルとの間の絶縁距離が短くなる。したがって、特定ガスとしてSF6の代替ガスを利用する場合でも、ガス絶縁変圧器1が小型化される。
【0029】
R方向における第1凹部21の厚さは、Q以下である、ただし、Qは、R方向において円板巻線10からバリア15に向かう距離である。Qは、数式1を満たす実効電離係数α´(E,P)がガス圧力Pにかかわらず一定となる距離である。
R方向における第1凹部21の厚さは、5mm以下でもよい。
一般に、実効電離係数が正で大きい場合に、電子が増幅されて放電が発生しやすい。円板巻線10からの距離がQ以下の領域で、実効電離係数が急激に増加する。第1凹部21の厚さをQ以下とすることで、円板巻線10からの放電が効果的に抑制される。第1凹部21の厚さを5mm以下とした場合も同様である。
【0030】
第1の実施形態の第1変形例のガス絶縁変圧器について説明する。
図8は、第1の実施形態の第1変形例のガス絶縁変圧器の側面断面図である。
図8は、
図2のIII-III線に相当する部分における側面断面図である。第1変形例のガス絶縁変圧器101aのうち、第1の実施形態と同様である部分の説明は省略される。
【0031】
ガス絶縁変圧器101aにおいて、第1凹部21のZ方向の高さH2は、円板巻線10のZ方向の高さH1より大きい。すなわち、Z方向における第1凹部21の高さH2と円板巻線10の高さH1との差分Dは、ゼロより大きい。これにより、第1凹部21の内側における円板巻線10の+Z方向に、第1空間21Bが形成される。第1空間21Bの存在により、円板巻線10を第1凹部21に巻回するとき、円板巻線10が第1凸部23と干渉しにくい。したがって、円板巻線10の巻回が容易になる。
【0032】
複数のスペーサ30がZ方向に積層されて、Z方向に隣り合う円板巻線10の間に配置される。複数のスペーサ30のうち大部分のスペーサ30は、第1凸部23と係合する。複数のスペーサ30の-Z方向の端部に下端スペーサ30Bが配置される。ガス絶縁変圧器101aでは、下端スペーサ30Bの-Z方向の少なくとも一部が、第1凹部21に配置される。下端スペーサ30BのZ方向の厚さTは、差分Dより大きい。これにより、下端スペーサ30Bの+Z方向の少なくとも一部が、第1凸部23と係合する。下端スペーサ30Bは、他のスペーサ30と同様に、θ方向およびR方向に位置決めされる。したがって、下端スペーサ30Bの脱落が防止される。
下端スペーサ30Bは、他のスペーサ30とは異なる厚さで一体に形成されてもよい。下端スペーサ30Bは、複数のスペーサ30をZ方向に積層し相互に固定して形成されてもよい。
【0033】
以上のように、ガス絶縁変圧器101aでは、Z方向における第1凹部21の高さH1と円板巻線10の高さH2との差分Dが、ゼロより大きい。これにより、円板巻線10の巻回が容易になる。
また、第1凹部21に配置される下端スペーサ30BのZ方向の厚さTは、差分Dより大きい。これにより、下端スペーサ30Bの脱落が防止される。
【0034】
第1の実施形態の第2変形例のガス絶縁変圧器について説明する。
図9は、第1の実施形態の第2変形例のガス絶縁変圧器の側面断面図である。
図9は、
図2のIII-III線に相当する部分における側面断面図である。第2変形例のガス絶縁変圧器101bのうち、第1の実施形態と同様である部分の説明は省略される。
【0035】
ガス絶縁変圧器101bにおいて、第1凹部21に第2空間21Cが形成される。第1凹部21の+R方向の表面に溝部が形成され、溝部の内側が第2空間21Cとして機能する。溝部は、θ方向に沿って第1凹部21の全幅に形成される。溝部は、第1凹部の+Z方向および-Z方向の両端部に形成される。
【0036】
円板巻線10の-R方向とZ方向との角部10Cの周囲には電界集中が発生しやすい。円板巻線10の電界は、第1レール20の内部には分布せず、第1レール20の外部の空間に分布する。ガス絶縁変圧器101bでは、角部10Cの周囲に第2空間21Cが配置される。円板巻線10の電界は、第2空間21Cの内部に分散される。これにより、角部10Cの周囲の電界集中が緩和される。
【0037】
以上のように、ガス絶縁変圧器101bでは、第1凹部21のR方向の外側面におけるZ方向の端部が、Z方向の中央部よりR方向の内側に窪んで形成される。これにより、円板巻線10の角部10Cの周囲の電界集中が緩和される。
【0038】
(第2の実施形態)
第2の実施形態のガス絶縁変圧器について説明する。
図10は、第2の実施形態のガス絶縁変圧器の側面断面図である。
図10は、
図2のIII-III線に相当する部分における側面断面図である。第2の実施形態のガス絶縁変圧器201は、円板巻線10と低圧コイル90(
図1参照)との間に、複数の絶縁筒12,48,58を有する。第2の実施形態のガス絶縁変圧器201のうち、第1の実施形態と同様である部分の説明は省略される。
【0039】
円板巻線10と低圧コイルとの電位差が大きい場合には、両者間の絶縁距離の確保が必要になる。この場合、円板巻線10と低圧コイルとの間に、複数の絶縁筒が配置される。ガス絶縁変圧器201は、第1高圧絶縁筒12に加えて、第2高圧絶縁筒48と、第3高圧絶縁筒58と、を有する。
【0040】
第2高圧絶縁筒48および第3高圧絶縁筒58は、第1高圧絶縁筒12と同様に形成される。第2高圧絶縁筒48および第3高圧絶縁筒58は、第1高圧絶縁筒12と共に、円板巻線10および低圧コイルと同軸状に配置される。第2高圧絶縁筒48および第3高圧絶縁筒58は、第1高圧絶縁筒12と共に、R方向において円板巻線10と低圧コイルとの間に配置される。第2高圧絶縁筒48は、第1高圧絶縁筒12の-R方向に配置される。第3高圧絶縁筒58は、第2高圧絶縁筒48の-R方向に配置される。
【0041】
ガス絶縁変圧器201は、複数の絶縁筒のR方向の相対位置を規制するため、複数のレールを有する。ガス絶縁変圧器201は、第1レール20に加えて、第2レール40と、第3レール50と、をさらに有する。
【0042】
第2レール40および第3レール50は、第1レール20と同様に形成される。第2レール40は、R方向において第1高圧絶縁筒12と第2高圧絶縁筒48との間に配置される。第3レール50は、R方向において第2高圧絶縁筒48と第3高圧絶縁筒58との間に配置される。第2レール40および第3レール50は、θ方向において間欠的に配置される。第1レール20、第2レール40および第3レール50は、θ方向において同じ位置に配置される。
【0043】
第2レール40は、第2凸部43と、第2凹部41と、を有する。第2凸部43は、第1高圧絶縁筒12および第2高圧絶縁筒48に当接して、両者のR方向の相対位置を規制する。第3レール50は、第3凸部53と、第3凹部51と、を有する。第3凸部53は、第2高圧絶縁筒48および第3高圧絶縁筒58に当接して、両者のR方向の相対位置を規制する。
【0044】
各レールの凸部は、R方向に隣り合うレールの凸部と、Z方向において異なる位置に配置される。第2凸部43は、Z方向において第1凸部23と異なる位置に配置される。第2凸部43は、R方向において第1凹部21と並んで配置される。第3凸部53は、Z方向において第2凸部43と異なる位置に配置される。第3凸部53は、Z方向において第1凸部23と同等の位置に配置される。
これにより、複数のレールの凸部および凹部が交互に、R方向に並んで配置される。すなわち、第1凹部21、第2凸部43および第3凹部51が、R方向に並んで配置される。また、第1凸部23、第2凹部41および第3凸部53が、R方向に並んで配置される。
【0045】
円板巻線10の電界は、レールの内部には分布せず、レールの外部の空間に分布する。複数のレールの凸部がZ方向およびθ方向において同じ位置に配置されると、その位置におけるレールの外部の空間が極めて少なくなる。そのため、その僅かな空間に電界が集中する可能性がある。これに対して、ガス絶縁変圧器201は、複数のレールの凸部がZ方向の異なる位置に配置される。これにより、Z方向の各位置においてレールの外部の空間が確保される。したがって、円板巻線10の電界集中が緩和される。
【0046】
ガス絶縁変圧器201は、円板巻線10と低圧コイルとの間に、3個の絶縁筒および3個のレールを有する。これに対してガス絶縁変圧器は、円板巻線10と低圧コイルとの間に、4個以上の絶縁筒および4個以上のレールを有してもよい。
【0047】
以上のように、ガス絶縁変圧器201は、第2高圧絶縁筒48と、第2レール40と、を有する。第2高圧絶縁筒48は、第1高圧絶縁筒12のR方向の内側に配置される。第2レール40は、第1高圧絶縁筒12と第2高圧絶縁筒48との間に配置される。第2レール40は、第2凸部43と、第2凹部41と、を有する。第2凸部43は、R方向の外側面がR方向の外側に突出する。第2凹部41は、R方向の外側面がR方向の内側に窪む。第2凸部43および第2凹部41は、Z方向に並んで形成される。第2凸部43は、Z方向において第1凸部23と異なる位置に配置される。
これにより、Z方向の各位置においてレールの外部の空間が確保される。したがって、円板巻線10の電界集中が緩和される。
【0048】
第2の実施形態の第1変形例のガス絶縁変圧器について説明する。
図11は、第2の実施形態の第1変形例のガス絶縁変圧器の平面断面図である。
図11は、
図3のIV-IV線に相当する部分における平面断面図である。第1変形例のガス絶縁変圧器201aのうち、第2の実施形態と同様である部分の説明は省略される。
【0049】
図11に示されるように、各レールの凸部は、R方向に隣り合うレールの凸部と、θ方向において異なる位置に配置される。第2凸部43は、θ方向において第1凸部23と異なる位置に配置される。第3凸部53は、θ方向において第2凸部43と異なる位置に配置される。第3凸部53は、θ方向において第1凸部23と同等の位置に配置される。なお第1凸部23、第2凸部43および第3凸部53は、Z方向において同じ位置に配置される。
【0050】
ガス絶縁変圧器201aは、複数のレールの凸部がθ方向の異なる位置に配置される。これにより、θ方向の各位置においてレールの外部の空間が確保される。したがって、円板巻線10の電界集中が緩和される。
【0051】
第2の実施形態では、各レールの凸部が、R方向に隣り合うレールの凸部と、Z方向において異なる位置に配置され、θ方向において同じ位置に配置される。第2の実施形態の第1変形例では、各レールの凸部が、R方向に隣り合うレールの凸部と、Z方向において同じ位置に配置され、θ方向において異なる位置に配置される。これに対して、各レールの凸部は、R方向に隣り合うレールの凸部と、Z方向およびθ方向の両方向において異なる位置に配置されてもよい。
【0052】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、円板巻線10と当接する第1凹部21を持つ。これにより、代替ガスを利用する場合でも、ガス絶縁変圧器を小型化することができる。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0054】
D…差分、R…径方向、Z…軸方向、θ…周方向、1,101a,101b,201,201a…ガス絶縁変圧器、6…鉄心、10…円板巻線(コイル)、12…第1高圧絶縁筒(第1絶縁筒)、15…バリア、20…第1レール、21…第1凹部、23…第1凸部、30…スペーサ、40…第2レール、41…第2凹部、43…第2凸部、48…第2高圧絶縁筒(第2絶縁筒)。