(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】原子炉圧力容器の点検装置及び点検方法
(51)【国際特許分類】
G21C 17/013 20060101AFI20221107BHJP
G21C 17/01 20060101ALI20221107BHJP
G21C 17/003 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
G21C17/013
G21C17/01
G21C17/003 100
(21)【出願番号】P 2018208021
(22)【出願日】2018-11-05
【審査請求日】2021-03-03
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【氏名又は名称】原 拓実
(74)【代理人】
【識別番号】100118474
【氏名又は名称】寺脇 秀▲徳▼
(74)【代理人】
【識別番号】100141911
【氏名又は名称】栗原 譲
(72)【発明者】
【氏名】浦口 晃平
(72)【発明者】
【氏名】亀山 育子
(72)【発明者】
【氏名】藤田 友基
(72)【発明者】
【氏名】森川 史和
(72)【発明者】
【氏名】小林 徳康
(72)【発明者】
【氏名】土橋 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 淳介
(72)【発明者】
【氏名】今崎 一人
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-102527(JP,A)
【文献】特開2007-256262(JP,A)
【文献】特開昭55-018962(JP,A)
【文献】特開2014-163901(JP,A)
【文献】実開昭54-063896(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 17/013
G21C 17/01
G21C 17/003
G21C 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉圧力容器の検査対象部の非破壊検査を行う探傷プローブと、直線状のアームと、
前記アームを前後移動又は回転駆動させる駆動部と、前記駆動部に設けられたベースプレ
ートと、前記ベースプレートに設けられ、前記検査対象部近傍に配置されたコアスプレイ
配管を把持する把持固定部と、を有する原子炉圧力容器の点検装置であって、
前記アームの先端部と前記探傷プローブは所定の湾曲度を有する相互に離間して設けた
複数の湾曲アームによって接続され、前記アームは着脱可能に前記駆動部に装着されてい
ることを特徴とする原子炉圧力容器の点検装置。
【請求項2】
前記検査対象部は、原子炉圧力容器の給水ノズルであることを特徴とする請求項1記載
の原子炉圧力容器の点検装置。
【請求項3】
原子炉圧力容器の給水ノズルの非破壊検査を行う探傷プローブと、直線状のアームと、
前記アームを前後移動又は回転駆動させる駆動部と、前記駆動部に設けられたベースプレ
ートと、前記ベースプレートに設けられ、前記給水ノズルに接続された給水スパージャー
の下部に隣接して配置されたコアスプレイ配管を把持する把持固定部と、を有する原子炉
圧力容器の点検装置であって、
前記アームの先端部と前記探傷プローブは所定の湾曲度を有する
相互に離間して設けた
複数の湾曲アームによって接続され、前記アームは着脱可能に前記駆動部に装着されてい
ることを特徴とする原子炉圧力容器の点検装置。
【請求項4】
前記複数の湾曲アームのうち、1つの湾曲アームには探傷プローブを取付け、他方の湾
曲アームには補修工具を取付けたことを特徴とする請求項
3記載の原子炉圧力容器の点検
装置。
【請求項5】
前記探傷プローブを備えたアームの代わりに、補修工具を備えたアームを前記駆動部に
装着することを特徴とする請求項1乃至
3のいずれかに記載の原子炉圧力容器の点検装置
。
【請求項6】
請求項1乃至
5のいずれかに記載の点検装置を用いて、この点検装置の把持固定部によ
って原子炉圧力容器内に配置されたコアスプレイ配管に把持固定されて原子炉圧力容器の
給水ノズルコーナー部の点検作業を行うことを特徴とする原子炉圧力容器の点検方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、原子炉圧力容器の点検装置及び点検方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、高経年化した原子力発電プラントでは、原子炉圧力容器内のノズルコーナー部等に代表される原子炉炉内構造物の健全性を評価するために、点検装置を用いて表面検査や体積検査等の非破壊検査を実施している。
【0003】
例えば、
図4に示すように、原子炉圧力容器1の炉心5の上方に形成されている給水ノズル2の近傍を点検する際は、オペレーティングフロアから、水が満たされた原子炉圧力容器1の内部に天井クレーン等で点検装置10を吊下ろし(図示せず)、次いで、給水ノズル2の近傍まで点検装置10を移動させた後、原子炉圧力容器1内の給水スパージャー3やその直下に配置されたコアスプレイ(CS)配管4等の炉内構造物を利用して点検装置10を固定させたり、吸着手段によって点検装置10を所望の位置に吸着固定させることにより(図示せず)、給水ノズル2のコーナー部等の非破壊検査を実施している。
【0004】
しかしながら、給水ノズル2のコーナー部等の狭隘部を点検する際は、給水ノズル2内に配置されたサーマルスリーブ18や給水スパージャー3等が給水ノズル2の近傍に存在するため、点検装置10が検査対象部へアクセスすることが困難となっている。
【0005】
そこで、給水ノズル2のコーナー部等のアクセスが困難な狭隘部を非破壊検査するために、複数の駆動部を有する点検装置やオフセットアーム等の検査用アームを有する点検装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来のオフセットアームを有する点検装置は、原子炉圧力容器1の内周面に設けられた給水スパージャー3等を避けて点検装置の先端に設けられた探傷プローブを狭隘なコーナー部に近接させるために、2つのオフセットアーム、具体的には、シングルオフセットアームとダブルオフセットアームを使用してノズルコーナー部の全周にわたる探傷検査を行っている。
【0008】
しかしながら、給水ノズル2のコーナー部の全周にわたる探傷検査を行う際には、2つのオフセットアームを交換する必要があり、非破壊検査に要する時間が長期化するという課題があった。
【0009】
また、非破壊検査後に検査対象部を補修する必要が生じた場合、点検装置10の代わりに、研磨工具等が取付られた補修装置を用いる必要があり、その交換作業に時間を要するとともに、補修装置を検査対象部に再度位置決めする必要がある等、さらに点検補修作業が長期化するという課題があった。
【0010】
本発明の実施形態は、上記課題を解決するためになされたもので、給水ノズル部近傍等の狭隘部の非破壊検査を短時間で行うことができるとともに、補修作業が必要となる場合も、該当場所の補修作業を効率的に行うことができる原子炉圧力容器の点検装置及び点検方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本実施形態に係る原子炉圧力容器の点検装置は、原子炉圧
力容器の検査対象部の非破壊検査を行う探傷プローブと、直線状のアームと、前記アーム
を前後移動又は回転駆動させる駆動部と、前記駆動部に設けられたベースプレートと、前
記ベースプレートに設けられ、前記検査対象部近傍に配置されたコアスプレイ配管を把持
する把持固定部と、を有する原子炉圧力容器の点検装置であって、前記アームの先端部と
前記探傷プローブは所定の湾曲度を有する相互に離間して設けた複数の湾曲アームによっ
て接続され、前記アームは着脱可能に前記駆動部に装着されていることを特徴とする。
また、本実施形態に係る原子炉圧力容器の点検装置は、原子炉圧力容器の給水ノズルの
非破壊検査を行う探傷プローブと、直線状のアームと、前記アームを前後移動又は回転駆
動させる駆動部と、前記駆動部に設けられたベースプレートと、前記ベースプレートに設
けられ、前記給水ノズルに接続された給水スパージャーの下部に隣接して配置されたコア
スプレイ配管を把持する把持固定部と、を有する原子炉圧力容器の点検装置であって、前
記アームの先端部と前記探傷プローブは所定の湾曲度を有する相互に離間して設けた複数
の湾曲アームによって接続され、前記アームは着脱可能に前記駆動部に装着されているこ
とを特徴とする。
【0012】
また、本実施形態に係る原子炉圧力容器の点検方法は、本実施形態に係る点検装置を用いて、この点検装置の把持固定部によって原子炉圧力容器内に配置されたコアスプレイ配管に把持固定されて原子炉圧力容器の給水ノズルコーナー部の点検作業を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の実施形態によれば、原子炉圧力容器の給水ノズル部近傍等の狭隘部の非破壊検査を短時間で効率的に行うことができるとともに、補修作業が必要となる場合も、該当場所の補修作業を効率的に行うことができる。
さらに、コアスプレイ配管を把持して給水ノズルの非破壊検査を行うことによって、給水スパージャーを避けて非破壊検査を短時間で効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】第1の実施形態に係る点検装置を給水ノズル部に設置した際の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る原子炉圧力容器の点検装置及び点検方法の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
[第1の実施形態]
第1の実施形態に係る原子炉圧力容器の点検装置について、
図1、
図2及び
図4により説明する。
なお、本実施形態では、検査対象部として、給水ノズル2のコーナー部2a近傍の狭隘部を探傷検査する例について説明するが、他の炉内構造物に対しても適用できることはもちろんである。
【0017】
(全体構成)
図4は点検対象の給水ノズル2を含む原子炉圧力容器1の構成図で、炉心5と、原子炉圧力容器1の内周に配置され、給水ノズル2にサーマルスリーブ18を介して接続された給水スパージャー3及びCS配管(コアスプレイ配管)4等からなる炉内構造物と、点検装置10と、が図示されている。
なお、点検作業中は、原子炉圧力容器1は水で満たされているとともに、炉心5の上部に設けられている蒸気乾燥器や気水分離器等は取外されている。
【0018】
給水ノズル2の点検作業を実施する際、点検装置10は原子炉圧力容器1の上方のオペレーティングフロアから天井クレーン等を含む遠隔操作装置により、原子炉圧力容器1の内部の給水ノズル2の近傍に吊下げ、移動される(図示せず)。
【0019】
(点検装置)
点検装置10は、
図1に示すように、直線状のアーム12と、例えば電磁力等によってアーム12を前後移動又は回転動作させる駆動部13と、超音波、渦電流等により検査対象部の表面欠陥の有無を検査する探傷プローブ11と、アーム12の先端部と探傷プローブ11とに接続され、所定の湾曲度を有する湾曲アーム12aと、駆動部13に取付けられたベースプレート14と、ベースプレート14に取付けられた一対の把持固定部15a、15bと、から構成される。
把持固定部15a、15bは、それぞれ電動モータ等によって開閉駆動される一対のグリップ部16a、16bを有している。
【0020】
また、アーム12は駆動部13に着脱可能に装着されており、他の点検器具を備えたアームや、後述する補修工具を備えたアームと交換可能に構成されている。なお、アームを他のアームと交換する際は、点検装置10が原子炉圧力容器1内に吊下げられた状態で、遠隔操作装置(図示せず)により交換作業が行われる。
【0021】
また、アーム12の前後移動及び回転駆動手段として、電磁力による駆動手段の他に、電動モータや油圧等を用いた駆動手段、又は伸縮回転自在なテレスコープ等を用いた駆動手段等が用いられる。
さらに、探傷プローブ11に検査探傷面との距離測定用のセンサを設け、探傷プローブ11の位置状態を確認するようにしてもよい。
【0022】
(作用)
本実施形態の点検装置10を用いて、給水ノズル2のコーナー部2a近傍のサーマルスリーブ18が配置された狭隘部を非破壊検査する際、まず、遠隔操作装置により(図示せず)、原子炉圧力容器1内の水中に吊下げ保持された点検装置10を給水ノズル2に近接させる。
次に、湾曲アーム12aの先端に取付けられた探傷プローブ11が給水ノズル2のコーナー部2aに位置するように点検装置10を位置決めする。
【0023】
その際、各把持固定部15a、15bのグリップ部16a、16bは、
図1に示すように、開状態で給水スパージャー3の下方に配置されたCS配管4に接近し、その後、
図2に示すように、グリップ部16a、16bを閉操作させてCS配管4を把持する。これにより、点検装置10はCS配管4に強固に固定されることになる。
【0024】
次に、駆動部13によりアーム12を軸方向に前後移動させる等して、探傷プローブ11を給水ノズル2のコーナー部2aの狭隘部にセットする。
そして、その状態で駆動部13によりアーム12を回転動作させると、探傷プローブ11は旋回し、コーナー部2a付近の狭隘部周面の非破壊検査を行う。
【0025】
その際、探傷プローブ11が狭隘部の周面に沿って回転移動できるように、探傷プローブ11は所定の湾曲度を有する湾曲アーム12aによりアーム12に接続されているため、アーム12を回転駆動させることで、探傷プローブ11をコーナー部2aの狭隘部周面に沿って移動せることが可能となり、これにより狭隘部の探傷検査を短時間で実施することができる。
【0026】
(効果)
本実施形態によれば、アーム12の先端に所定の湾曲度を持った湾曲アーム12aを設けたことで、アーム12を前後移動又は回転駆動するだけで、給水ノズル2のコーナー部2a近傍の狭隘部の全周にわたる非破壊検査を短時間で実施することができる。
【0027】
また、アーム12と駆動部13を着脱可能としたことで、把持固定部15a、15bをCS配管4に把持固定した状態で、アーム12だけを交換することが可能となるため、例えば、形状の異なる探傷プローブ11を有するアーム12と簡便に交換することができる。
【0028】
[第2の実施形態]
第2の実施形態に係る原子炉圧力容器の点検装置20について、
図3により説明する。
本第2の実施形態では、
図3に示すように、点検装置20には、それぞれ探傷プローブ11a、11bが取付けられた2つの湾曲アーム12a、12bが、アーム12に対して略180度対向するように設けられている。
【0029】
アーム12は駆動部13に着脱可能に装着されているため、単一の湾曲アーム12aを有するアーム12が駆動部13に装着されている場合は、それを駆動部13から取外して、本第2の実施形態の2つの探傷プローブ11a、11bを有するアーム12を駆動部13に装着する。なお、このようなアーム12の着脱作業は、遠隔装置(図示せず)により行われる。
【0030】
また、2つの湾曲アーム12a、12bを、適宜な駆動機構を用いて、駆動部13によりそれぞれ独立して操作可能にしてもよい。
本実施形態によれば、それぞれ探傷プローブ11a、11bが取付られた2つの湾曲アーム12a、12bを用いることで、探傷検査時間の短縮化及び効率化を図ることができる。
【0031】
また、アーム12と駆動部13は着脱可能に構成されているため、探傷対象物の設置場所や形状に応じて、異なる種類又は形状の探傷プローブを有するアーム12に交換することで、探傷作業の短縮化や効率化を図ることができる。
【0032】
なお、2つの湾曲アーム12a、12bのうち、1つは探傷プローブ11を取付け、他方は後述する補修工具を取付けるようにしてもよい。これにより、探傷と補修作業を同時に行うことができる。
【0033】
[第3の実施形態]
探傷検査の結果、研磨等の補修作業が必要となった場合には、先端にブラシ等の補修工具が取付けられた補修作業用のアーム12を駆動部13に装着することも可能である。
【0034】
これにより、点検装置10を一旦原子炉圧力容器1内の所定位置に設置した後は、点検用と補修作業用のアーム12を適宜交換するだけで、位置決め作業を繰り返す必要がなく、点検作業又は補修作業を行うことができるため、点検及び補修作業の短縮化と効率化を図ることができる。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
【0035】
例えば、上記実施形態では、原子炉圧力容器内の給水ノズル近傍の狭隘部の探傷を行う例について説明したが、必ずしも狭隘部に限定されず、原子炉圧力容器の内周面や炉内配管の外周面等に適用可能であり、さらに、他の技術分野における構造物の非破壊検査にも適用できる。
【0036】
また、これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0037】
1…原子炉圧力容器、2…給水ノズル、2a…コーナー部、3…給水スパージャー、4…CS配管(コアスプレイ配管)、5…炉心、10、20…点検装置、11、11a、11b…探傷プローブ、12…アーム、12a、12b…湾曲アーム、13…駆動部、14…ベースプレート、15、15a、15b…把持固定部、16a、16b…グリップ部、18…サーマルスリーブ