IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リンテック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-外光利用型表示体 図1
  • 特許-外光利用型表示体 図2
  • 特許-外光利用型表示体 図3
  • 特許-外光利用型表示体 図4
  • 特許-外光利用型表示体 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】外光利用型表示体
(51)【国際特許分類】
   G09F 13/16 20060101AFI20221107BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20221107BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20221107BHJP
   G02B 5/12 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
G09F13/16 F
G02B5/02 B
G02B5/00 Z
G02B5/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018210020
(22)【出願日】2018-11-07
(65)【公開番号】P2020076870
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100176407
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 理啓
(72)【発明者】
【氏名】倉本 達己
(72)【発明者】
【氏名】草間 健太郎
【審査官】小池 俊次
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-125176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 13/16
G02B 5/02
G02B 5/00
G02B 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再帰性反射材と、
前記再帰性反射材よりも視認者側に位置する光拡散フィルムと、
前記再帰性反射材と前記光拡散フィルムとの間、または前記光拡散フィルムよりも視認者側に位置する装飾層と
を備えた外光利用型表示体であって、
前記光拡散フィルムが、フィルム内に屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い複数の領域を備えた内部構造を有しており、
前記外光利用型表示体の視認者側の表面に対して、当該表面の法線方向を0°として-70°~70°の入射角度で光線を照射したときに測定される最大ヘイズ値の90%を閾値とし、前記閾値以上のヘイズ値を示す入射角度の角度範囲が、5°以上、80°以下であり、
前記外光利用型表示体の視認者側の表面に対して、当該表面の法線方向を0°として0°の入射角度で光線を照射したときに測定されるゲインが1以上となる反射光の開き角が、30°以上である
ことを特徴とする外光利用型表示体。
【請求項2】
前記外光利用型表示体の視認者側の表面に対して、当該表面の法線方向を0°として20°の入射角度で光線を照射したときに測定されるゲインが1以上となる反射光の開き角が、30°以上であることを特徴とする請求項1に記載の外光利用型表示体。
【請求項3】
前記光拡散フィルムにおける内部構造が、屈折率が相対的に低い領域中に、屈折率が相対的に高い複数の柱状物をフィルム膜厚方向に林立させてなるカラム構造、および屈折率が異なる複数の板状領域をフィルム面に沿った任意の一方向に交互に配置してなるルーバー構造の少なくとも一方を有することを特徴とする請求項1または2に記載の外光利用型表示体。
【請求項4】
前記光拡散フィルムにおける内部構造が、前記カラム構造を有し、
視認者側に近い位置における前記カラム構造の前記柱状物が延在する方向と、前記外光利用型表示体の視認者側の表面の法線方向とがなす鋭角側の角度が、1°以上、50°以下であることを特徴とする請求項に記載の外光利用型表示体。
【請求項5】
前記光拡散フィルムにおける内部構造が、前記ルーバー構造を有し、
視認者側に近い位置における前記ルーバー構造の前記板状領域が表示体厚さ方向に傾斜する方向と、前記外光利用型表示体の視認者側の表面の法線方向とがなす鋭角側の角度が、1°以上、80°以下であることを特徴とする請求項に記載の外光利用型表示体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部から入射して来る光を利用して、所定の表示機能を発揮する外光利用型表示体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光拡散特性を有する面や鏡面反射面に対して文字や画像を印刷したり、あるいは、これらの面に対して文字や画像を印刷した透明もしくは半透明のフィルムを貼合したりしてなる外光利用型の表示体が、看板や標識として用いられている。
【0003】
かかる外光利用型の表示体は、各種照明の光、太陽直射光、拡散天空光、あるいは、建造物、路面等からの二次的散乱光といった外光を光源として利用し、所望の表示光を散乱発光させることにより、所定の表示機能を発揮する。
【0004】
このような外光利用型の表示体として、特許文献1には、所望の図柄等が印刷された表示体の表示面に、樹脂中に微粒子を分散させてなり、表面に凹凸面が形成された光拡散フィルムを積層させることが提案されている。
【0005】
また、特許文献2には、プリズム、コーナーキューブアレイ、マイクロビーズ等を用いた再帰性反射面の前面に、所望の図柄等が印刷された印刷層を積層してなる再帰反射性の外光利用型の表示体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-109414号公報
【文献】特表2003-531396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載される表示体では、当該表示体に照射された光は、拡散しながら反射されることとなる。このような表示体を例えば道路標識として使用する場合、車のヘッドライトによって当該道路標識を照らしたとしても、その光の多くが当該道路標識にて拡散反射され、車の方向に戻る光の量はわずかとなる。そのため、運転者は当該道路標識を明るく視認することが困難となる。
【0008】
また、特許文献2に記載されるような表示体の場合、当該表示体に照射された光は、基本的に、光が入射した方向に近い方向に再帰性反射することとなる。このような表示体を例えば道路標識として使用する場合、車のヘッドライトを光源とする光は、厳密には、当該ヘッドライトを中心とする領域に再帰性反射することとなる。そのため、当該ヘッドライトから所定の距離離れて位置する運転者には十分な光がかえらず、運転者は、当該道路標識を明るく視認しにくいものとなる。また、道路標識とヘッドライトとを結ぶ線分と、道路標識と運転者とを結ぶ線分とのなす鋭角は、当該道路標識に車が近づくほど大きくなる。そのため、道路標識と車とが近くなるほど、運転者は、再帰性反射した光が照射される領域から外れやすくなり、運転者が道路標識を更に視認しにくくなる。
【0009】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、表示特性に優れた外光利用型表示体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、再帰性反射材と、前記再帰性反射材よりも視認者側に位置する光拡散フィルムと、前記再帰性反射材と前記光拡散フィルムとの間、または前記光拡散フィルムよりも視認者側に位置する装飾層とを備えた外光利用型表示体であって、前記光拡散フィルムが、フィルム内に屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い複数の領域を備えた内部構造を有しており、前記外光利用型表示体の視認者側の表面に対して、当該表面の法線方向を0°として-70°~70°の入射角度で光線を照射したときに測定される最大ヘイズ値の90%を閾値とし、前記閾値以上のヘイズ値を示す入射角度の角度範囲が、5°以上、80°以下であることを特徴とする外光利用型表示体を提供する(発明1)。
【0011】
上記発明(発明1)に係る外光利用型表示体は、再帰性反射材と、所定の内部構造を有する光拡散フィルムとを備えるとともに、ヘイズ値に関する角度範囲が上述した範囲であることにより、当該外光利用型表示体に入射した光が、基本的には再帰性反射しながらも、所定の程度拡散しながら光源方向に戻ることとなる。そのため、車の運転者と当該車のヘッドライトとの位置関係のように、視認者と光源とが所定の距離離れて位置する場合であっても、視認者が外光利用型表示体を明るく視認することができる。そのため、当該外光利用型表示体は、表示特性に優れる。
【0012】
上記発明(発明1)においては、前記外光利用型表示体の視認者側の表面に対して、当該表面の法線方向を0°として0°の入射角度で光線を照射したときに測定されるゲインが1以上となる反射光の開き角が、30°以上であることが好ましい(発明2)。
【0013】
上記発明(発明1,2)においては、前記外光利用型表示体の視認者側の表面に対して、当該表面の法線方向を0°として20°の入射角度で光線を照射したときに測定されるゲインが1以上となる反射光の開き角が、30°以上であることが好ましい(発明3)。
【0014】
上記発明(発明1~3)においては、前記光拡散フィルムにおける内部構造が、屈折率が相対的に低い領域中に、屈折率が相対的に高い複数の柱状物をフィルム膜厚方向に林立させてなるカラム構造、および屈折率が異なる複数の板状領域をフィルム面に沿った任意の一方向に交互に配置してなるルーバー構造の少なくとも一方を有することが好ましい(発明4)。
【0015】
上記発明(発明4)においては、前記光拡散フィルムにおける内部構造が、前記カラム構造を有し、視認者側に近い位置における前記カラム構造の前記柱状物が延在する方向と、前記外光利用型表示体の視認者側の表面の法線方向とがなす鋭角側の角度が、1°以上、50°以下であることが好ましい(発明5)。
【0016】
上記発明(発明4)においては、前記光拡散フィルムにおける内部構造が、前記ルーバー構造を有し、視認者側に近い位置における前記ルーバー構造の前記板状領域が表示体厚さ方向に傾斜する方向と、前記外光利用型表示体の視認者側の表面の法線方向とがなす鋭角側の角度が、1°以上、80°以下であることが好ましい(発明6)。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る外光利用型表示体は、表示特性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施形態に係る外光利用型表示体の断面図である。
図2】本発明の第2の実施形態に係る外光利用型表示体の断面図である。
図3】変角ヘイズメーターの測定結果のグラフの例を示す図である。
図4】カラム構造の一例を概略的に示す斜視図である。
図5】ルーバー構造の一例を概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の一実施形態に係る外光利用型表示体は、再帰性反射材と、再帰性反射材よりも視認者側に位置する光拡散フィルムと、再帰性反射材と光拡散フィルムとの間、または光拡散フィルムよりも視認者側に位置する装飾層とを備えている。
【0020】
図1および図2には、本実施形態に係る外光利用型表示体の態様の一例が示される。特に、図1では、再帰性反射材11と、当該再帰性反射材11の片面側に積層された光拡散フィルム12と、当該光拡散フィルム12における再帰性反射材11とは反対の面側に積層された装飾層13とを備える第1の実施形態に係る外光利用型表示体1Aが示される。
【0021】
また、図2には、再帰性反射材11と、当該再帰性反射材11の片面側に積層された装飾層13と、当該装飾層13における再帰性反射材11とは反対の面側に積層された光拡散フィルム12とを備える第2の実施形態に係る外光利用型表示体1Bが示される。
【0022】
本実施形態における光拡散フィルム12は、フィルム内に屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い複数の領域を備えた内部構造を有している。そして、本実施形態に係る外光利用型表示体1A,1B(以下、単に「表示体1A,1B」という場合がある。)では、外光利用型表示体1A,1Bの視認者側の表面に対して、当該表面の法線方向を0°として-70°~70°の入射角度で光線を照射したときに測定される最大ヘイズ値の90%を閾値とし、その閾値以上のヘイズ値を示す入射角度の角度範囲は、5°以上、80°以下となっている。
【0023】
上記の構成および物性を有する表示体1A,1Bは、入射された光を基本的には再帰性反射させながらも、所定の範囲に拡散させて反射させることができる。すなわち、外光利用型表示体にて反射した光は、その光の光源に対し、当該光源を中心としながらも所定範囲に拡散して戻ることとなる。そのため、光源と視認者とが多少離れている場合であっても、視認者には十分な光が戻ることとなり、これにより視認者は表示体1A,1Bを明るく視認することが可能となる。
【0024】
また、表示体1A,1Bでは、反射される光が十分に拡散した状態で、光源に戻ることとなるため、道路標識と車との距離が近づいていく場合のように、表示体1A,1Bと光源とを結ぶ線分と、表示体1A,1Bと視認者とを結ぶ線分とのなす角度が次第に開いていく場合であっても、視認者が、表示体1A,1Bから戻ってくる光の照射領域内に留まり易くなり、これにより、視認者が表示体1A,1Bを明るく視認することができる。
【0025】
また、本実施形態に係る外光利用型表示体1A,1Bでは、上述した通り、視認者と光源とが所定の距離離れている場合であっても良好な視認が可能となるため、表示体1A,1Bを道路標識として使用した場合には、前後または左右に位置する車のヘッドライトや、道路のわきに位置する街灯を、自身が道路標識を視認するための光源として利用することも可能となる。また、歩道を歩く歩行者が、車道を走る車のヘッドライトを光源として利用することも可能となる。
【0026】
以上説明した通り、本実施形態に係る外光利用型表示体1A,1Bは、表示特性に優れる。
【0027】
1.外光利用型表示体の物性
本実施形態に係る外光利用型表示体1A,1Bでは、前述した通り、表示体1A,1Bの視認者側の表面に対して、当該表面の法線方向を0°として-70°~70°の入射角度で光線を照射したときに測定される最大ヘイズ値の90%を閾値とし、その閾値以上のヘイズ値を示す入射角度の角度範囲(以下、便宜的に「変角ヘイズ角度範囲」という場合がある。)が、5°以上、80°以下である。なお、上記のヘイズ値の測定は、変角ヘイズメーターを使用して測定することができ、具体的な測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0028】
上述した変角ヘイズ角度範囲について、図3を用いて説明する。図3には、変角ヘイズメーターの測定により得られるグラフの一例が示される。一般的に、変角ヘイズメーターによる測定では、入射光の入射角度を変更しながら、各入射角度に対するヘイズ値(%)が取得され、上記グラフは、その入射角度を横軸とし、取得されるヘイズ値を縦軸としたものである。なお、上記グラフは、一般的な測定結果を示したものに過ぎず、本実施形態に係る表示体1A,1Bまたは従来の表示体による測定結果と結び付けられないものとする。
【0029】
図3のグラフにおいて、前述した変角ヘイズ角度範囲を特定する方法を以下に説明する。まず、-70°から70°の測定範囲内でヘイズ値が最大となった点について、そのヘイズ値を特定する。図3では、入射角度0°のときに測定された95%というヘイズ値が最大となっている。この最大値の90%の値(すなわち95%×0.9=85.5%)が閾値となる。続いて、当該閾値以上のヘイズ値が測定された入射角度の範囲を特定する。図3では、入射角度-11°から10°の間において、ヘイズ値が閾値(85.5%)以上となっている。これらの入射角度からその差分を算出することで、図3のグラフにおける変角ヘイズ角度範囲は、21°(=10°-(-11°))と特定される。
【0030】
変角ヘイズ角度範囲が80°を超えると、表示体に対して照射された光は過度に拡散して反射されるものとなり、視認者に対して十分な光をかえすことができない。そのため、この場合、視認者は表示体を明るく視認できないものとなる。このような観点から、変角ヘイズ角度範囲は、65°以下であることが好ましく、特に50°以下であることが好ましい。
【0031】
一方、変角ヘイズ角度範囲が5°未満であると、表示体に対して照射された光は、殆ど拡散することなく、光源に対して再帰性反射することとなる。そのため、光源から所定の距離離れて位置する視認者は、当該表示体を明るく視認できないものとなる。このような観点から、最大ヘイズ値の90%閾値以上のヘイズ値を示す入射角度の角度範囲は、10°以上であることが好ましく、特に20°以上であることが好ましい。
【0032】
また、本実施形態に係る外光利用型表示体1A,1Bでは、表示体1A,1Bの視認者側の表面に対して、当該表面の法線方向を0°として0°の入射角度で光線を照射したときに測定されるゲインが1以上となる反射光の開き角が、30°以上であることが好ましく、特に40°以上であることが好ましく、さらには50°以上であることが好ましい。上記開き角が30°以上であることで、表示体1A,1Bからの光源に戻る光が、十分に広い範囲に向けて、十分な光量で照射されるものとなる。これにより、表示体1A,1Bが、より優れた表示特性を示すものとなる。なお、上記開き角の上限値については、特に限定されないものの、例えば、160°以下であってよく、特に140°以下であってよく、さらには100°以下であってよい。
【0033】
さらに、本実施形態に係る外光利用型表示体1A,1Bでは、表示体1A,1Bの視認者側の表面に対して、当該表面の法線方向を0°として20°の入射角度で光線を照射したときに測定されるゲインが1以上となる反射光の開き角が、30°以上であることが好ましく、特に45°以上であることが好ましく、さらには60°以上であることが好ましい。上記開き角が30°以上であることで、表示体1A,1Bに対して正面から入射されず、入射角度20°といった傾きを有する光が入射された場合であっても、表示体1A,1Bからの光源に戻る光が、十分に広い範囲に向けて、十分な光量で照射されるものとなる。これにより、表示体1A,1Bが、より優れた表示特性を示すものとなる。なお、上記開き角の上限値については、特に限定されないものの、例えば、180°以下であってよく、特に160°以下であってよく、さらには120°以下であってよい。
【0034】
なお、上述した、入射角度0°の場合における開き角は、小型散乱測定器(LIGHT TEC社製,製品名「Mini-Diff」)を用いて、次の通り測定されたものとする。まず、表示体1A,1Bにおける視認者側の面の法線を基準として、当該面の任意の一点(入射点)に対し0°の入射角度にて光線を照射する。そして、この入射光を含む平面を仮想面として想定したときに、上記入射点から射出され上記仮想面上を進む反射光の輝度を、十分な角度範囲(例えば-90°から90°)で測定する。
【0035】
一方、標準拡散板を測定対象として上記と同様に輝度を測定する。そして、標準拡散板から測定された輝度を基準として、表示体1A,1Bから測定された輝度のゲインを算出する。次いで、当該ゲインの値が1以上となる射出角度の範囲を特定し、その範囲の端点となる2つの角度の差分を算出し、開き角とする。
【0036】
また、入射角度20°の場合における開き角についても上記と同様に測定されるものであるが、表示体1A,1Bに対して照射する光の角度は、0°から20°に変更される。
【0037】
2.外光利用型表示体を構成する各部材
(1)再帰性反射材
再帰性反射材11としては、再帰性反射を行うことができ、それにより前述した効果の達成を可能とするものであれば特に限定されず、従来公知のものを使用することができる。
【0038】
例えば、再帰性反射材11として、反射面に多数のコーナーキューブが配置されたもの(コーナーキューブ型、プリズムレンズ型)、反射面に多数のガラスビーズが配置され、その上に空間を設けながら透明な樹脂フィルムで覆った構造を有するもの(カプセルレンズ型)、多数のガラスビーズが透明樹脂シート内に封入された構造を有するもの(封入レンズ型)、多数のガラスビーズが反射面に露出して配置されるもの(露出レンズ型)等を使用することができる。
【0039】
再帰性反射材11の厚さは、特に制限されず、例えば、0.01mm以上であってよく、特に0.1mm以上であってよい。また、当該厚さは、例えば、1mm以下であってよく、特に0.5mm以下であってよい。
【0040】
(2)光拡散フィルム
光拡散フィルム12としては、その内部に、屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い複数の領域を備えた内部構造を有するとともに、前述した変角ヘイズ角度範囲の達成を可能とするものである限り、特に限定されない。
【0041】
本実施形態における光拡散フィルム12の好ましい例としては、その内部に、屈折率が相対的に低い領域中に、屈折率が相対的に高い複数の柱状物をフィルム膜厚方向に林立させてなるカラム構造を有するもの、または、屈折率が異なる複数の板状領域をフィルム面に沿った任意の一方向に交互に配置してなるルーバー構造を有するものが挙げられる。
【0042】
(2-1)カラム構造を有する光拡散フィルム
図4は、上述したカラム構造を概略的に示した斜視図である。図4に示されるように、カラム構造113では、屈折率が相対的に高い柱状物112が厚さ方向に複数林立し、その周囲を、屈折率が相対的に低い領域114を埋める構造となっている。なお、図4では、柱状物112が、カラム構造113内の厚さ方向全域に存在するものとして描かれているものの、カラム構造113の厚さ方向の上端部および下端部の少なくとも一方に、柱状物112が存在しないものとなっていてもよい。
【0043】
光拡散フィルム12がこのようなカラム構造113を有する場合、表示体1A,1Bに照射された光は、光拡散フィルム12に対して一方の面(図4中、例えば上側の面)から入射し、カラム構造113内を透過し、他方の面(図4中、例えば下側の面)から射出された後、再帰性反射材11にて反射され、上記他方の面から再度光拡散フィルム12内に入り、カラム構造113内を透過した後、上記一方の面から射出されることとなる。ここにおいて、光拡散フィルム12に入射された光は、光拡散フィルム12内における屈折率が相対的に高い柱状物112と、屈折率が相対的に低い領域114とからなるカラム構造113を通過することにより、拡散しながら射出されるものとなる。なお、カラム構造113によって生じる拡散は、後述するルーバー構造によって生じる拡散とは異なり、射出される光の進行方向が所定の方向のみに制限されない。このような、カラム構造113によって生じる拡散は、一般的に等方性拡散と呼ばれる。
【0044】
カラム構造113においては、屈折率が相対的に高い柱状物112の屈折率と、屈折率が相対的に低い領域114の屈折率との差が、0.01以上であることが好ましく、特に0.05以上であることが好ましく、さらには0.1以上であることが好ましい。上記差が0.01以上であることで、効果的な拡散を行うことが可能となる。なお、上記差の上限は特に限定されず、例えば、0.3以下であってもよい。
【0045】
上述した柱状物112は、光拡散フィルム12の一方の面から他方の面に向かって、直径が増加する構造を有していることが好ましい。このような構造を有する柱状物112は、一方の面から他方の面に向かって直径がほぼ変化しない柱状物と比較して、柱状物の軸線方向と平行な光の進行方向を変更させ易くなり、これにより、光拡散フィルム12が効果的に光を拡散させることが可能となる。
【0046】
また、柱状物112を、軸線方向に水平な面で切断したときの断面における、直径の最大値は、0.1μm以上であることが好ましく、特に0.5μm以上であることが好ましく、さらには1μm以上であることが好ましい。また、当該最大値は、15μm以下であることが好ましく、特に10μm以下であることが好ましく、さらには5μm以下であることが好ましい。直径の最大値が上記範囲であることで、光拡散フィルム12が効果的に光を拡散させることが可能となる。なお、柱状物112の断面形状については、特に限定されるものではないが、例えば、円、楕円、多角形、異形等とすることが好ましい。
【0047】
カラム構造113においては、隣接する柱状物112間の距離が、0.1μm以上であることが好ましく、特に0.5μm以上であることが好ましく、さらには1μm以上であることが好ましい。また、上記距離は、15μm以下であることが好ましく、特に10μm以下であることが好ましく、さらには5μm以下であることが好ましい。隣接する柱状物112間の距離が上記範囲であることで、光拡散フィルム12が効果的に光を拡散させることが可能となる。
【0048】
カラム構造113の厚さは、20μm以上であることが好ましく、特に50μm以上であることが好ましく、さらには80μm以上であることが好ましい。また、当該厚さは、700μm以下であることが好ましく、特に400μm以下であることが好ましく、さらには200μm以下であることが好ましい。カラム構造113の厚さが上記範囲であることで、カラム構造113内を透過する光が良好にその進行方向を変更できるものとなり、その結果、光拡散フィルム12が効果的に光を拡散させることが可能となる。
【0049】
また、カラム構造113では、柱状物112が、光拡散フィルム12のフィルム膜厚方向に対して一定の傾斜角にて林立していてもよい。このときの傾斜角、すなわち、カラム構造113の柱状物112が延在する方向と、光拡散フィルム12の視認者側の表面の法線方向とがなす鋭角側の角度は、1°以上であることが好ましく、特に5°以上であることが好ましく、さらには10°以上であることが好ましい。また、上記角度は、50°以下であることが好ましく、特に40°以下であることが好ましく、さらには30°以下であることが好ましい。柱状物112が上記範囲で傾斜していることにより、そのようなカラム構造113を備える光拡散フィルム12では、透過する光を所定の方向に偏らせながら拡散させることが可能となる。このような光拡散フィルム12を備える表示体1A,1Bは、反射光を所定の方向に偏らせることが適した用途に使用し易いものとなる。これにより、表示体1A,1Bの表示特性をさらに向上させることが可能となる。
【0050】
なお、以上のカラム構造113の内部構造に係る寸法や所定の角度等は、光学デジタル顕微鏡を用いてカラム構造113の断面を観察することにより測定することができる。
【0051】
カラム構造113を有する光拡散フィルム12の材料としては、所望のカラム構造113を形成することが可能である限り、特に限定されず、従来公知のものを使用することができる。好ましくは、カラム構造113を有する光拡散フィルム12は、複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステル(A)と、ウレタン(メタ)アクリレート(B)と、光重合開始剤(C)とを含有する光拡散フィルム用組成物を硬化させてなるものであることが好ましい。
【0052】
上述した光拡散フィルム用組成物を硬化させる場合、上記(メタ)アクリル酸エステル(A)が、ウレタン(メタ)アクリレート(B)よりも速い速度で重合するものとなり、両成分の共重合を効果的に低減することができる。その結果、形成された光拡散フィルム12内においては、ウレタン(メタ)アクリレート(B)に由来した屈折率が相対的に低い領域114中に、上記(メタ)アクリル酸エステル(A)に由来した屈折率が相対的に高い複数の柱状物112を林立させてなるカラム構造113が効率よく形成される。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語も同様である。
【0053】
また、(メタ)アクリル酸エステル(A)が複数の芳香環を含有するものであることにより、(メタ)アクリル酸エステル(A)が、重合前の状態においては、ウレタン(メタ)アクリレート(B)と十分な相溶性を有する一方で、重合が進行するにしたがって、ウレタン(メタ)アクリレート(B)との相溶性が低下し、カラム構造113が効率よく形成されるものと推定される。
【0054】
さらに、(メタ)アクリル酸エステル(A)が複数の芳香環を含有するものであることにより、(メタ)アクリル酸エステル(A)とウレタン(メタ)アクリレート(B)とが十分な屈折率差を有し易いものとなる。
【0055】
上述した(メタ)アクリル酸エステル(A)としては、例えば、(メタ)アクリル酸ビフェニル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸アントラシル、(メタ)アクリル酸ベンジルフェニル、(メタ)アクリル酸ビフェニルオキシアルキル、(メタ)アクリル酸ナフチルオキシアルキル、(メタ)アクリル酸アントラシルオキシアルキル、(メタ)アクリル酸ベンジルフェニルオキシアルキル等、または、これらの芳香環上の水素原子の一部がハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロゲン化アルキル等によって置換されたもの等を挙げることができる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸ビフェニルが好ましく、その具体例としては、o-フェニルフェノキシエトキシエチルアクリレートを使用することが好ましい。
【0056】
上述した(メタ)アクリル酸エステル(A)の分子量は、200~2500であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル(A)の分子量が上記範囲であることにより、所望のカラム構造113をより効率的に形成することが可能となる。
【0057】
上述した(メタ)アクリル酸エステル(A)の屈折率は、1.50~1.65であることが好ましい。上記屈折率がこれらの範囲であることで、(メタ)アクリル酸エステル(A)とウレタン(メタ)アクリレート(B)とが十分な屈折率差を有し易いものとなる。なお、本明細書における屈折率は、JIS K0062-1992に準じて測定することができる。
【0058】
光拡散フィルム用組成物中における、上述した(メタ)アクリル酸エステル(A)の含有量は、ウレタン(メタ)アクリレート(B)100質量部に対して、25質量部以上であることが好ましく、特に40~400質量部であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル(A)の含有量が上記範囲であることで、所望の柱状物112を備えるカラム構造113を形成し易いものとなる。
【0059】
ウレタン(メタ)アクリレート(B)は、イソシアナート基を少なくとも2つ含有する化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとを反応させて得られるものであることが好ましい。
【0060】
ウレタン(メタ)アクリレート(B)の重量平均分子量は、4000~10万であることが好ましい。ウレタン(メタ)アクリレート(B)の重量平均分子量が上記範囲であることで、所望のカラム構造113をより効率的に形成することが可能となる。
【0061】
上述したウレタン(メタ)アクリレート(B)の屈折率は、1.40~1.54であることが好ましい。上記屈折率がこれらの範囲であることで、(メタ)アクリル酸エステル(A)とウレタン(メタ)アクリレート(B)とが十分な屈折率差を有し易いものとなる。
【0062】
ここで、(メタ)アクリル酸エステル(A)とウレタン(メタ)アクリレート(B)との屈折率差は、0.01~0.3であることが好ましい。このような屈折率差となることにより、カラム構造113において柱状物112と領域114とが良好な屈折率を有し易いものとなる。
【0063】
光重合開始剤(C)は、α-ヒドロキシアセトフェノン型光重合開始剤、α-アミノアセトフェノン型光重合開始剤およびアシルフォスフィンオキサイド型重合開始剤からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0064】
光拡散フィルム用組成物中における、光重合開始剤(C)の含有量は、上述した(メタ)アクリル酸エステル(A)およびウレタン(メタ)アクリレート(B)の合計量100質量部に対して、0.2~10質量部であることが好ましい。光重合開始剤(C)の含有量が上記範囲であることで、所望の柱状物112を備えるカラム構造113を形成し易いものとなる。
【0065】
(2-2)ルーバー構造を有する光拡散フィルム
図5には、ルーバー構造の概略が示される。図5に示されるように、ルーバー構造123では、屈折率が相対的に高い板状領域122が、フィルム面に沿った一方向に交互に配置しており、それらの間を、屈折率が相対的に低い領域124が埋める構造となっている。なお、図5では、板状領域122が、ルーバー構造123内の厚さ方向全域に存在するものとして描かれているものの、ルーバー構造123の厚さ方向の上端部および下端部の少なくとも一方に、板状領域122が存在しないものとなっていてもよい。
【0066】
光拡散フィルム12がこのようなルーバー構造123を有する場合、表示体1A,1Bに照射された光は、光拡散フィルム12に対して一方の面(図5中、例えば上側の面)から入射し、ルーバー構造123内を透過し、他方の面(図5中、例えば下側の面)から射出された後、再帰性反射材11にて反射され、上記他方の面から再度光拡散フィルム12内に入り、ルーバー構造123内を透過した後、上記一方の面から射出されることとなる。ここにおいて、光拡散フィルム12に入射された光は、光拡散フィルム12内における屈折率が相対的に高い板状領域122と、屈折率が相対的に低い領域124とからなるルーバー構造123を通過することにより、拡散しながら射出されるものとなる。なお、ルーバー構造123を有する光拡散フィルム12は、板状領域122の配列方向に垂直な方向に対する拡散が生じ易いという性質を有する。このような、射出される光の進行方向が主として所定の方向のみとなる拡散を、一般的に異方性拡散という。
【0067】
ルーバー構造123においては、屈折率が相対的に高い板状領域122の屈折率と、屈折率が相対的に低い領域124の屈折率との差が、0.01以上であることが好ましい。上記差が0.01以上であることで、ルーバー構造123を備える光拡散フィルム12が効果的に光を拡散させることが可能となる。なお、上記差の上限は特に限定されず、例えば、0.3以下であってもよい。
【0068】
ルーバー構造123においては、個々の板状領域122の厚さ(配列方向の長さ)が、0.1μm以上であることが好ましく、特に0.5μm以上であることが好ましく、さらには1.0μm以上であることが好ましい。また、上記厚さは、15μm以下であることが好ましく、特に10μm以下であることが好ましく、さらには5μm以下であることが好ましい。また、隣接する板状領域122の間隔も、上記と同様の範囲であることが好ましい。板状領域122の厚さおよび隣接する板状領域122の間隔がそれぞれ上記範囲であることで、ルーバー構造123内を透過する光が良好にその進行方向を変更できるものとなり、その結果、光拡散フィルム12が効果的に光を拡散させることが可能となる。
【0069】
ルーバー構造123の厚さは、30μm以上であることが好ましく、特に50μm以上であることが好ましく、さらには80μm以上であることが好ましい。また、当該厚さは、500μm以下であることが好ましく、特に300μm以下であることが好ましく、さらには200μm以下であることが好ましい。ルーバー構造123の厚さが上記範囲であることで、ルーバー構造123内を透過する光が良好にその進行方向を変更できるものとなり、その結果、光拡散フィルム12が効果的に光を拡散させることが可能となる。
【0070】
ルーバー構造123では、板状領域122が、その配列方向に沿って傾斜していてもよい。その場合における傾斜角、すなわち板状領域122が表示体1A,1Bの厚さ方向に傾斜する方向と、表示体1A,1Bの視認者側の表面の法線方向とがなす鋭角側の角度は、1°以上であることが好ましく、5°以上であることがより好ましく、特に10°以上であることが好ましく、さらには20°以上であることが好ましい。また、上記傾斜角は、80°以下であることが好ましく、特に60°以下であることが好ましく、さらには45°以下であることが好ましい。板状領域122が上記範囲で傾斜していることにより、そのようなルーバー構造123を備える光拡散フィルム12では、透過する光を所定の方向に偏らせながら拡散させることが可能となる。そのため、当該光拡散フィルム12を備える表示体1A,1Bは、反射光を所定の方向に偏らせることに適した用途に使用し易いものとなる。これにより、表示体1A,1Bの表示特性をさらに向上させることが可能となる。
【0071】
以上のように、ルーバー構造123を様々な組み合わせで積層することで、拡散の程度、拡散の方向などを調整することが容易となる。
【0072】
なお、以上のルーバー構造123の内部構造に係る寸法や所定の角度等は、光学デジタル顕微鏡を用いてルーバー構造123の断面を観察することにより測定することができる。
【0073】
ルーバー構造123を有する光拡散フィルム12の材料としては、所望のルーバー構造123を形成することが可能なものである限り特に限定されず、従来公知のものを使用することができる。特に、ルーバー構造123を有する光拡散フィルム12は、複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステル(A)と、ウレタン(メタ)アクリレート(B)と、光重合開始剤(C)とを含有する光拡散フィルム用組成物を硬化させてなるものであることが好ましい。これらの成分の詳細は、前述した通りである。
【0074】
(3)装飾層
装飾層13としては、文字や図柄等により表示内容を表すことができるとともに、前述した効果を達成できるものであれば特に限定されず、従来公知のものを使用することができる。
【0075】
例えば、装飾層13としては、透明あるいは半透明の樹脂シート上に、文字や図柄等を構成するインキを印刷したものであってもよい。また、装飾層13は、再帰性反射材11または光拡散フィルム12に対して上記インキが印刷されたものであってもよい。
【0076】
装飾層13の厚さは、特に限定されないものの、例えば、10μm以上であることが好ましく、特に20μm以上であることが好ましい。また、当該厚さは、1000μm以下であることが好ましく、特に500μm以下であることが好ましい。
【0077】
(4)保護層
本実施形態に係る外光利用型表示体1A,1Bは、視認者側の最表面に、保護層を備えることも好ましい。表示体1A,1Bが保護層を備えることにより、内部に存在する光拡散フィルム12等を、外的な衝撃から良好に保護することが可能となる。これにより、表示体1A,1Bが耐候性に優れたものとなり、表示特性を良好に維持し易くなる。
【0078】
保護層は、透光性を有するとともに、所望の強度を有するものである限り限定されず、好ましくは透明樹脂板からなることが好ましい。このような透明樹脂板の成分としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、非晶性ポリオレフィン系樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられる。
【0079】
保護層の厚さは、求められる透光性および保護性能により適宜調整することができ、例えば、1μm以上であってよく、特に10μm以上であってよい。また、当該厚さは、10mm以下であってよく、特に1mm以下であってよい。
【0080】
(5)粘着剤層
本実施形態に係る外光利用型表示体1A,1Bでは、前述した再帰性反射材11、光拡散フィルム12、装飾層13、および所望により設けられる保護層の積層状態を、所望の手段によって保持することができる。例えば、これらの層は、粘着剤層によって互いに貼合された状態で、保持されてもよい。特に、再帰性反射材11、光拡散フィルム12、保護層等のように、予め形成された部材を用いて表示体1A,1Bを製造する場合には、これらの層をその他の層に対して粘着剤層を用いて貼合することが好ましい。なお、装飾層13については、予め形成されたものを用いる場合には、それを粘着剤層を用いてその他の層に貼合してもよいし、あるいは印刷によりその他の層上に設けてもよい。また、保護層については、上述の通り粘着剤層を用いて貼合するかわりに、保護層を形成するための組成物をその他の層上に塗工し、得られた塗膜を硬化することで設けてもよい。
【0081】
かかる粘着剤層を構成する粘着剤としては、各部材を良好に保持するための粘着性を有するとともに、前述した効果を達成できるための十分な透明性を有するものであれば特に制限されず、従来公知のものを使用することができる。例えば、当該粘着剤としては、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤等を使用することができ、中でも、十分な粘着性および透明性を達成し易いアクリル系粘着剤が好ましい。
【0082】
粘着剤層の厚さは、十分な粘着性を達成できるものである限り特に限定されず、例えば1μm以上であることが好ましく、特に3μm以上であることが好ましい。また、当該厚さは、100μm以下であることが好ましく、特に30μm以下であることが好ましい。
【0083】
(6)表面反射調整層
本実施形態に係る外光利用型表示体1A,1Bでは、視認者側の最表面に、表面反射調整層を備えることも好ましい。表示体1A,1Bが、表面反射調整層を備えることにより、表示体1A,1Bの視認者側の表面に照射された光が、当該表面おいて正反射することが低減される。これにより、表示体1A,1B内の再帰性反射材11に到達する光が増加し、結果として、視認者が表示体1A,1Bをより明るく視認することが可能となる。
【0084】
表面反射調整層としては、表示体1A,1Bの表面における光の正反射を抑制しながらも、所定の光を表示体1A,1Bの内部に透過させることが可能な層であれば特に限定されない。例えば、表面反射調整層は、視認者に対して近位に位置する低屈折率層と、視認者に対して遠位に位置する高屈折率層とが積層されてなる構成を有するものであってもよく、低屈折率層単層であってもよく、または、防眩性層であってもよい。
【0085】
表面反射調整層が高屈折率層と低屈折率層とが積層されてなる構成を有するものである場合、当該高屈折率層は、屈折率が1.56~1.90であることが好ましい。なお、上記高屈折率層の屈折率、および後述する低屈折率層の屈折率は、JIS K7142:2014に準拠して、アッベ屈折計により測定した値である。
【0086】
上記高屈折率層は、活性エネルギー線硬化型化合物を含有する組成物を、活性エネルギー線を照射することで硬化させた硬化物により構成されたものであることが好ましい。当該活性エネルギー線硬化型化合物としては、例えば光重合性モノマーおよび/または光重合性プレポリマーを挙げることができる。
【0087】
上記光重合性モノマーの例としては、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能アクリレートが挙げられる。これらの光重合性モノマーは1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、上記光重合性プレポリマーと併用してもよい。
【0088】
また、上記重合性化合物は、所望により光重合開始剤を併用することができる。この場合、光重合開始剤の配合量は、上記光重合性モノマーおよび/または光重合性プレポリマー100質量部に対して、通常0.2~10質量部の範囲で適宜選択される。
【0089】
また、上記高屈折率層は、屈折率を調整するための材料として、金属酸化物を含有することが好ましい。当該金属酸化物の例としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化ハフニウム、酸化セリウム、酸化錫、酸化ニオブ、スズドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)等が挙げられる。これらの金属酸化物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、屈折率の観点から、酸化チタンおよび/または酸化ジルコニウムを用いることが好ましい。
【0090】
上記高屈折率層中における金属酸化物の含有量は、例えば、活性エネルギー線硬化型化合物100質量部に対して、50~1000質量部であることが好ましい。なお、上記高屈折率層は、所望により、活性エネルギー線硬化型化合物および金属酸化物以外の添加剤を含有してもよい。
【0091】
上記低屈折率層は、屈折率が1.30~1.50であることが好ましい。
【0092】
また、上記低屈折率層も、活性エネルギー線硬化型化合物を使用することにより形成されることが好ましい。詳細は、高屈折率層に記載したことと同様である。
【0093】
さらに、上記低屈折率層は、屈折率を調整するために、シリカゾル、多孔質シリカ微粒子、中空シリカ微粒子などを含有することが好ましい。
【0094】
上記シリカゾルとしては、シリカ微粒子が、アルコール系やセロソルブ系の有機溶剤中にコロイド状態で懸濁してなるコロイダルシリカを好適に用いることができる。上記シリカ微粒子の平均粒径は、5~100nmであることが好ましい。なお、上記平均粒径は動的光散乱法により求めることができる。
【0095】
上述した中空シリカ微粒子や多孔質シリカ微粒子とは、空気を含有する独立気泡および/または連続気泡を有するシリカ微粒子をいう。中空シリカ微粒子および多孔質シリカ微粒子の平均粒径は、5~300nmであることが好ましい。また、中空シリカ微粒子および多孔質シリカ微粒子が有する空隙の平均孔径は、10nm~100nmであることが好ましい。なお、上記平均粒径は動的光散乱法により求めることができる。
【0096】
上記のシリカゾル、中空シリカ微粒子および多孔質シリカ微粒子の活性エネルギー線硬化型化合物に対する配合割合は、例えば、活性エネルギー線硬化型化合物100質量部に対して、50~500質量部であることが好ましい。
【0097】
高屈折率層と低屈折率層とが積層されてなる構成を有する表面反射調整層の形成方法としては、以下のような例が挙げられる。まず、高屈折率層を構成する材料と有機溶剤とを含有する高屈折率層用の塗布液を調製するとともに、低屈折率層を構成する材料と有機溶剤とを含有する低屈折率層用の塗布液を調製する。続いて、表面反射調整層を形成しようとする表面(例えば、光拡散フィルム12における視認者側の面)に対し、高屈折率層用の塗布液を塗布し、得られた塗膜を乾燥させた後、乾燥後の当該塗膜に対して活性エネルギー線を照射して硬化させることで、高屈折率層を形成する。続いて、当該高屈折率層における視認者側の面に対して、同様に、低屈折率層用の塗布液を塗布し、得られた塗膜を乾燥させ、活性エネルギー線を照射することで低屈折率層を形成し、これにより、高屈折率層と低屈折率層とが積層されてなる構成を有する表面反射調整層を形成することができる。
【0098】
3.外光利用型表示体の製造方法
本実施形態に係る外光利用型表示体1A,1Bの製造方法としては、再帰性反射材11、光拡散フィルム12、装飾層13、および所望により設けられる保護層を所定の順に積層することができ、得られた表示体1A,1Bが前述した効果を達成できるものとなる限り特に限定されない。
【0099】
一例として、再帰性反射材11、光拡散フィルム12、装飾層13、および所望により保護層をそれぞれ用意し、これらの層を、所定の積層順となるように、別途用意した粘着剤層を備える粘着シートを用いて貼合することが好ましい。
【0100】
再帰性反射材11、光拡散フィルム12、装飾層13、保護層、および粘着シートは、それぞれ従来公知の製造方法によって製造することができる。また、これらは市販されるものを使用してもよい。
【0101】
以下では、光拡散フィルム12の製造方法について、より詳しく説明する。最初に、工程シートの片面に、前述した光拡散フィルム用組成物を塗布し、塗膜を形成する。
【0102】
上記工程シートとしては、プラスチックフィルム、紙のいずれも使用することができる。このうち、プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル系フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィン系フィルム、トリアセチルセルロースフィルム等のセルロース系フィルム、およびポリイミド系フィルム等が挙げられる。また、紙としては、例えば、グラシン紙、コート紙、およびラミネート紙等が挙げられる。また、工程シートとしては、熱や活性エネルギー線に対する寸法安定性に優れたプラスチックフィルムであることが好ましい。このようなプラスチックフィルムとしては、上述したもののうち、ポリエステル系フィルム、ポリオレフィン系フィルムおよびポリイミド系フィルムが好ましく挙げられる。
【0103】
また、上記工程シートに対しては、硬化した塗膜を工程シートから剥離し易くするために、工程シートにおける光拡散フィルム用組成物の塗布面側に、剥離層を設けることが好ましい。かかる剥離層は、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、アルキッド系剥離剤、オレフィン系剥離剤等、従来公知の剥離剤を用いて形成することができる。
【0104】
上述した塗布の方法としては、例えば、ナイフコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ダイコート法、およびグラビアコート法等が挙げられる。また、光拡散フィルム用組成物は、必要に応じて溶剤を用いて希釈してもよい。
【0105】
上述した塗膜を形成した後、得られた塗膜と工程シートとの積層体に対し、活性エネルギー線を照射して塗膜を硬化させる。ただし、このとき、形成しようとする内部構造に応じて、所定の活性エネルギー線を照射する。
【0106】
具体的には、前述したカラム構造113を形成する場合には、上記積層体に対して、光線の平行度が高い平行光を照射する。ここで、平行光とは、発せられる光の方向が、いずれの方向から見た場合であっても広がりを持たない略平行な光を意味する。このような平行光は、例えば、レンズや遮光部材といった公知の手段を用いて用意することができる。照射の際には、コンベア等を用いて積層体をその長手方向に移動させながら、上記平行光を照射することが好ましい。なお、上記平行光の照射角度を調整することで、カラム構造113内に形成される柱状物112の傾斜角度を調整することもできる。
【0107】
上記活性エネルギー線とは、電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものをいい、具体的には、紫外線や電子線などが挙げられる。活性エネルギー線の中でも、取扱いが容易な紫外線が特に好ましい。
【0108】
活性エネルギー線として紫外線を用い、カラム構造113を形成する場合、その照射条件としては、塗膜表面におけるピーク照度を0.1~10mW/cmとすることが好ましい。なお、ここでいうピーク照度とは、塗膜表面に照射される活性エネルギー線が最大値を示す部分での測定値を意味する。さらに、塗膜表面における積算光量を、5~200mJ/cmとすることが好ましい。
【0109】
また、活性エネルギー線として紫外線を用い、カラム構造113を形成する場合、上記積層体に対する、活性エネルギー線の光源の相対的な移動速度は、0.1~10m/分とすることが好ましい。
【0110】
一方、前述したルーバー構造123を形成する場合には、活性エネルギー線の光源として線状光源を用い、積層体表面に対して幅方向(TD方向)にはランダムかつ流れ方向(MD方向)には略平行な帯状(ほぼ線状)の光を照射する。なお、上記光の照射角度を調整することで、ルーバー構造123内に形成される板状領域122の傾斜角度を調整することもできる。
【0111】
活性エネルギー線として紫外線を用い、ルーバー構造123を形成する場合、その照射条件としては、塗膜表面におけるピーク照度を0.1~50mW/cm以下とすることが好ましい。さらに、塗膜表面における積算光量を、5~300mJ/cm以下とすることが好ましい。また、上記積層体に対する、活性エネルギー線の光源の相対的な移動速度は、0.1~10m/分以下とすることが好ましい。
【0112】
また、カラム構造113およびルーバー構造123を所望の組み合わせで積層した構成を有する光拡散フィルム12を製造する場合には、これらの構造を順次形成することで、当該光拡散フィルム12を得ることができる。すなわち、一層目となる構造を上述した方法により形成した後、完成した当該構造上に二層目となる構造を上述した方法により形成し、必要に応じてそれを繰り返すことで、上述した光拡散フィルム12を得ることができる。
【0113】
なお、より確実な硬化を完了させる観点から、前述したような平行光や帯状の光を用いた硬化を行った後に、通常の活性エネルギー線(平行光や帯状の光に変換する処理を行っていない活性エネルギー線,散乱光)を、積層体に対して照射することも好ましい。このとき、均一に硬化させる観点から、塗膜表面に対して、剥離シートを積層してもよい。
【0114】
4.外光利用型表示体の使用
本実施形態に係る外光利用型表示体1A,1Bは、一般的な外光利用型表示体と同様に使用することができる。例えば、表示体1A,1Bは、各種照明の光や太陽光等の外光に曝される場所に設置し、これらの外光を光源として視認者に対して表示機能を発揮する用途に使用することができる。
【0115】
本実施形態に係る外光利用型表示体1A,1Bは、前述した通り、光源からの入射光を、基本的に再帰性反射させながらも、所定の範囲に拡散させながら視認者に到達させることができる。
【0116】
このように、表示体1A,1Bに照射された入射光は基本的に再帰性反射することから、表示体1A,1Bは、光源と視認者とが比較的近くに位置するような用途に使用することが好適である。例えば、光源が表示体よりも上方に位置し、視認者が表示体よりも下方に位置するといった位置関係となる用途よりも、光源と視認者とがともに表示体よりも下方に位置するといった位置関係の用途に使用することの方が、再帰性反射した光を視認者が視認し易くなるため好ましい。
【0117】
さらに、上述の通り、表示体1A,1Bによって再帰性反射した光は、所定の範囲に拡散しながら進むこととなるため、光源と視認者とが比較的近くに位置しながらも、所定の距離離れているような用途に使用することが好適である。
【0118】
以上のことから、本実施形態に係る外光利用型表示体1A,1Bは、道路標識として特に好適に使用することができる。道路標識は、通常、光源となるヘッドライトと視認者となる運転者とが、道路標識を基準にすると同一の方向に位置しながらも、ヘッドライトと運転者とは互いに離れて位置するものとなるため、本実施形態に係る外光利用型表示体1A,1Bの上述した効果を好適に享受することができる。
【0119】
このように、表示体1A,1Bを道路標識として使用する場合には、表示体1A、1Bにおいて再帰性反射した光が、少なくとも天地方向に拡散するように(光拡散フィルム12による拡散方向が天地方向となるように)、表示体1A,1Bを配置して使用することが好ましい。また、表示体1A,1Bの表示面が地面に対してほぼ垂直となるように設置する場合には、光拡散フィルム12内の内部構造(例えば、カラム構造113の柱状物112またはルーバー構造123の板状領域122)が、地面に対して水平に延在するように配置するか、視認者側に傾斜するように配置して使用することが好ましい。このように配置することにより、再帰性反射した光をより効率的に視認者に届けることが可能となる。
【0120】
また、本実施形態に係る外光利用型表示体1A,1Bは、建植型駅名標(ホーム上、人の視線と同等の高さに設置される駅名標)としても好適に使用することができる。このような建植型駅名標では、その周囲に照明が設けられていない場合、列車の乗客は、夜間、列車からの光を利用して当該駅名標を視認することとなる。ここで、列車から周囲に対して照射される光には、進行方向を照らすためのライトの他、進行方向に対して側面に位置する窓や乗降のためのドアから漏れる光等が存在する。これらの中でも、ホームに存在する建植型駅名標に対して、最も高い光量にて照射される光は、ドアから漏れる光となる。そして、列車の乗客は、通常、窓ごしに建植型駅名標を視認することとなる。すなわち、一般的な建植型駅名標では、光源となるドアからの光と、視認者となる乗客とが、建植型駅名標を基準にすると同一の方向に位置しながらも、互いに離れて位置するものとなる。そのため、建植型駅名標としての利用においては、本実施形態に係る外光利用型表示体1A,1Bの上述した効果を好適に享受することができる。
【0121】
また、本実施形態における光拡散フィルム12は、前述した通り、等方性拡散を行うもの(カラム構造113を有するもの)であってもよく、異方性拡散を行うもの(ルーバー構造123を有するもの)であってもよい。光拡散フィルム12が等方性拡散を行うものである場合、当該光拡散フィルム12を備える表示体1A,1Bは、当該表示体1A,1Bと、光源または視認者との位置関係が、特別に制限されない用途に使用することが好ましい。例えば、表示体1A,1Bを、その表示面が地面に対してほぼ垂直となるように設置したときに、光源および視認者が、当該表示体1A,1Bの水平方向付近に位置することもあれば、当該表示体1A,1Bの垂直方向付近に位置することもあるといった場合に使用することが好ましい。このような表示体1A,1Bによれば、表示体1A,1Bと、光源および視認者との位置関係に依らず、優れた表示特性を発揮することができる。このように、等方性拡散を行う光拡散フィルム12を備えた表示体1A,1Bは、斜め方向からの視認性にも優れたものとなるため、当該表示体1A,1Bを道路標識として使用する場合には、複数車線に設置される道路標識や車線の標識を歩行者も確認するような道路標識としての使用にも好適なものとなる。
【0122】
一方、光拡散フィルム12が異方性拡散を行うものである場合、当該光拡散フィルム12を備える表示体1A,1Bは、遠距離からも近距離からも再帰性反射した光を視認し易いものとなる。このような表示体1A,1Bは、例えば、当該表示体1A,1Bと、光源または視認者との位置関係が限定され易い用途に使用することが好適となる。例えば、表示体1A,1Bを道路標識として使用する場合、主要な光源となるヘッドライトおよび視認者となる運転者は、ともに道路標識の垂直方向(天地方向)付近に位置するものとなる。そのため、道路標識としては、異方性拡散を行う光拡散フィルム12を使用するとともに、その主要な拡散方向が、地面に対して垂直方向(天地方向)となるように設定された表示体1A,1Bを使用することが好ましい。また、表示体1A,1Bを建植型駅名標として使用する場合、主要な光源となるドアからの光は、建植型駅名標の水平方向付近から入射し、そして、当該建植型駅名標の水平方向付近に位置する乗客に対して反射光を照射することとなる。そのため、建植型駅名標としては、異方性拡散を行う光拡散フィルム12を使用するとともに、その主要な拡散方向が、地面に対して水平方向となるように設定された表示体1A,1Bを使用することが好ましい。
【0123】
本実施形態における光拡散フィルム12が、透過光を所定の方向に偏らせながら拡散させることができるもの(前述したような、傾斜した柱状物112を含むカラム構造113を備えるもの、傾斜した板状領域122を含むルーバー構造123を備えるもの等)である場合、このような光拡散フィルム12を備える表示体1A,1Bは、主要な光源や視認者との位置関係や表示の目的等に応じて、反射光を偏らせる方向を調整して使用することが好ましい。例えば、このような表示体1A,1Bを、交通量が比較的少なく、そのため視認者が乗車する自動車のヘッドライトのみが光源となることが多い道路における道路標識として使用する場合には、当該ヘッドライトからの光が道路標識にて反射した後、その運転者に対してより向かうように配置することが好ましい。例えば、光拡散フィルム12内の板状領域122や柱状物112が表示体1A,1Bの表面の法線方向よりも光源側に傾くよう配置することが好ましい。また、交通量が比較的多く、多数の自動車のヘッドライトを光源として利用できる道路における道路標識として表示体1A,1Bを使用する場合には、反射光が無駄に空方向に向かわないようにするために、表示体1A,1Bからの反射光が下方向に偏って拡散するように設置することが好ましい。
【0124】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0125】
例えば、図1に示される表示体1Aにおいては、再帰性反射材11と光拡散フィルム12の間、光拡散フィルム12と装飾層13との間、および装飾層13における光拡散フィルム12とは反対の面側には、前述した効果を損なわない限り、その他の部材を積層することができる。また、図2に示される表示体1Bにおいては、再帰性反射材11と装飾層13の間、装飾層13と光拡散フィルム12との間、および光拡散フィルム12における装飾層13とは反対の面側には、前述した効果を損なわない限り、その他の部材を積層することができる。
【実施例
【0126】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0127】
〔実施例1〕
1.光拡散フィルム用組成物の調製
ポリプロピレングリコールと、イソホロンジイソシアナートと、2-ヒドロキシエチルメタクリレートとを反応させて得られた、重量平均分子量が9,900のポリエーテルウレタンメタクリレート(B成分)100質量部(固形分換算値;以下同じ)に対し、分子量268のo-フェニルフェノキシエトキシエチルアクリレート(A成分)150質量部と、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(C成分)20質量部(A成分およびB成分の合計量100質量部に対して8質量部)とを添加した後、80℃の条件下にて加熱混合を行い、光拡散フィルム用組成物を得た。
【0128】
なお、上記A成分および上記B成分の屈折率は、アッベ屈折計(アタゴ社製,製品名「アッベ屈折計DR-M2」,Na光源,波長589nm)を用いてJIS K0062-1992に準じて測定したところ、それぞれ1.58および1.46であった。
【0129】
2.光拡散フィルムの形成
得られた光拡散フィルム用組成物を、工程シートとしての、長尺のポリエチレンテレフタレートシートの片面に塗布し、塗膜を形成した。これにより、当該塗膜と工程シートとからなる積層体を得た。
【0130】
続いて、得られた積層体を、コンベア上に載置した。このとき、積層体における塗膜側の面が上側となるとともに、工程シートの長手方向がコンベアの流れ方向と平行になるようにした。そして、積層体を載置したコンベアに対して、線状の高圧水銀ランプに集光用のコールドミラーが付属した紫外線照射装置(アイグラフィックス社製,製品名「ECS-4011GX」)を設置した。当該装置は、帯状(ほぼ線状)に集光された紫外線を対象に照射することができる。なお、上記装置の設置の際には、上記高圧水銀ランプの長手方向と、コンベアの流れ方向とが直交するように上記紫外線照射装置を設置した。また、上記塗膜の表面と高圧水銀ランプとの距離は、2000mmとなるようにした。
【0131】
さらに、高圧水銀ランプの長手方向から眺めた場合において、積層体表面に対する法線を基準として、積層体に対して高圧水銀ランプから照射される紫外線の照射角度が0°となるように設定した。なお、ここにおける照射角度とは、積層体における高圧水銀ランプの直下の位置を基準として、コンベアの流れの下流側に向けて紫外線を照射した場合には、積層体表面に対する法線と当該紫外線とのなす鋭角をプラスの表記にて記載したものとし、コンベアの流れの上流側に向けて紫外線を照射した場合には、積層体表面に対する法線と当該紫外線とのなす鋭角をマイナスの表記にて記載したものとする。
【0132】
その後、コンベアを作動させて、積層体を1.0m/分の速度で移動させながら、塗膜表面におけるピーク照度1.26mW/cm、積算光量23.48mJ/cmの条件で紫外線を照射することにより、積層体中の塗膜を硬化させた(当該硬化を、便宜的に「一次硬化」という場合がある。)。
【0133】
続いて、上記塗膜を十分に硬化させる観点から、積層体における塗膜側の面に、厚さ38μmの紫外線透過性を有する剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET382050」,紫外線照射側の表面における中心線平均粗さ:0.01μm,ヘイズ値:1.80%,像鮮明度:425,波長360nmの透過率84.3%)を積層した後、当該剥離シートを介して、塗膜に対して、ピーク照度13.7mW/cm、積算光量213.6mJ/cmの条件で紫外線(散乱光)を照射することで、積層体中の塗膜を硬化させた(当該硬化を、便宜的に「二次硬化」という場合がある。)。なお、上述したピーク照度および積算光量は、受光器を取り付けたUV METER(アイグラフィックス社製,製品名「アイ紫外線積算照度計UVPF-A1」)を上記塗膜の位置に設置して測定したものである。
【0134】
以上の一次硬化および二次硬化により、上述した塗膜が硬化してなる、厚さ165μmの光拡散フィルムが形成された。これにより、剥離シートと、光拡散フィルムと、工程シートとがこの順に積層されてなる積層体を得た。なお、光拡散フィルムの厚さは、定圧厚さ測定器(宝製作所社製,製品名「テクロック PG-02J」)を用いて測定したものである。
【0135】
形成された光拡散フィルムの断面の顕微鏡観察等を行ったところ、光拡散フィルムの内部に、複数の板状領域をフィルム面に沿った一方向に交互に配置してなるルーバー構造が形成されていることが確認された。特に、当該板状領域は、光拡散フィルムの厚さ方向に対して傾斜していない(傾斜角0°)ことが確認された。
【0136】
3.粘着剤層の形成
アクリル酸n-ブチル90質量部およびアクリル酸10質量部を共重合させてなる、重量平均分子量(Mw)40万の(メタ)アクリル酸エステル重合体と、架橋剤としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートとを混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトンで希釈することにより粘着性組成物の塗布溶液を得た。
【0137】
得られた粘着性組成物の塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET752150」)の剥離処理面に、ナイフコーターで塗布し、得られた塗膜を90℃で1分間加熱処理した。その後、23℃、50%RHの条件下で7日間養生することにより、剥離シートと、厚さ25μmの粘着剤層とからなる粘着シートを作製した。
【0138】
4.外光利用型表示体の作製
上記工程2にて得られた、剥離シートと光拡散フィルムと工程シートとからなる積層体から剥離シートを剥離し、露出した光拡散フィルムの露出面に、上記工程3にて得られた粘着シートにおける粘着剤層側の面を貼合した。これにより、工程シートと、光拡散フィルムと、粘着剤層と、剥離シートとが順に積層されてなる積層体を得た。
【0139】
続いて、当該積層体から剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層の露出面に、シート状の再帰性反射材(日本カーバイト工業社製,製品名「ニッカライト クリスタル・グレード」,プリズムレンズ型)における反射面を貼合した。さらに、これによって得られる積層体から工程シートを剥離することで、再帰性反射材と、粘着剤層と、光拡散フィルムとがこの順に積層されてなる(試験用)外光利用型表示体を得た。
【0140】
なお、製造された外光利用型表示体は、後述する試験例に係る評価をより効率的に行う観点から装飾層を有さない態様としているものの、装飾層を有する態様であっても、基本的に、後述する試験例において同様の結果が得られることを別途確認している。
【0141】
〔実施例1-2〕
活性エネルギー線硬化型化合物としてのジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業社製,製品名「A-DPH」)10質量部と、金属酸化物としての酸化チタンスラリー(テイカ社製,製品名「ND176」)4.25質量部とを、メチルエチルケトンおよびシクロヘキサノンを31:28の質量比で混合した溶媒中で均一に混合し、固形分約0.80質量%の高屈折率層用塗布液を調製した。
【0142】
また、活性エネルギー線硬化型化合物としてのジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業社製,製品名「A-DPH」)10質量部と、中空シリカゾル(日揮触媒化成社製,製品名「スルーリア4320」,平均粒径60nmの中空シリカ微粒子20質量%,メチルイソブチルケトン80質量%)100質量部と、光重合開始剤(BASF社製,製品名「イルガキュア907」)0.3質量部とを、メチルエチルケトンおよびシクロヘキサノンを91:90の質量比で混合した溶媒中で均一に混合し、固形分約1.7質量%の低屈折率層用塗布液を調製した。
【0143】
続いて、実施例1と同様に作製した外光利用型表示体における再帰性反射材側の面に、上述の通り調製した高屈折率層用塗布液をマイヤーバーで塗布し、得られた塗膜を50℃のオーブンで1分間乾燥させた後、窒素雰囲気下にて高圧水銀ランプで200mJ/cmの紫外線を照射することで高屈折率層を形成した。さらに、当該高屈折率層における再帰性反射材とは反対側の面に、上述の通り調製した低屈折率層用塗布液をマイヤーバーで塗布し、前記高屈折率層を形成したのと同様に処理することにより低屈折率層を形成した。これにより、低屈折率層および高屈折率層からなる表面反射調整層と、再帰性反射材と、粘着剤層と、光拡散フィルムとがこの順に積層されてなる(試験用)外光利用型表示体を得た。
【0144】
〔実施例2〕
一次硬化における照射角度を15°に変更した以外、実施例1と同様に(試験用)外光利用型表示体を製造した。
【0145】
なお、製造された外光利用型表示体における光拡散フィルムでは、板状領域が傾斜したルーバー構造が形成されていることが確認された。特に、このルーバー構造では、板状領域が外光利用型表示体の長手方向に対して傾斜しており、その傾斜角は、光拡散フィルムの厚さ方向を0°として、15°であった。
【0146】
〔実施例2-2〕
実施例2と同様に作製した外光利用型表示体における再帰性反射材側の面に対し、実施例1-2と同様にして、高屈折率層および低屈折率層からなる表面反射調整層を形成することで(試験用)外光利用型表示体を得た。
【0147】
〔実施例3〕
一次硬化における照射角度を33°に変更した以外、実施例1と同様に(試験用)外光利用型表示体を製造した。
【0148】
なお、製造された外光利用型表示体における光拡散フィルムでは、板状領域が傾斜したルーバー構造が形成されていることが確認された。特に、このルーバー構造では、板状領域が外光利用型表示体の長手方向に対して傾斜しており、その傾斜角は、光拡散フィルムの厚さ方向を0°として、30°であった。
【0149】
〔実施例3-2〕
実施例3と同様に作製した外光利用型表示体における再帰性反射材側の面に対し、実施例1-2と同様にして、高屈折率層および低屈折率層からなる表面反射調整層を形成することで(試験用)外光利用型表示体を得た。
【0150】
〔実施例4〕
上記工程2における、塗膜の一次硬化を後述の通り変更するとともに、二次硬化におけるピーク照度および積算光量をそれぞれ10mW/cmおよび積算光量150mJ/cmに変更した以外、実施例1と同様に(試験用)外光利用型表示体を製造した。
【0151】
一次硬化は、中心光線平行度を±3°以内に制御した紫外線スポット平行光源(ジャテック社製)を用いて、平行光を照射することにより行った。特に、当該照射は、平行度が2°以下の平行光(主ピーク波長365nm、その他254nm、303nm、313nmにピークを有する高圧水銀ランプからの紫外線)を、照射角度がほぼ0°となるように照射した。また、ピーク照度は2.00mW/cm、積算光量は53.13mJ/cm、光源と塗膜表面との距離は240mmとし、積層体との移動速度は0.2m/分とした。
【0152】
製造された実施例4に係る外光利用型表示体では、光拡散フィルム内に、厚さ方向に複数の柱状物を林立させてなるカラム構造が形成されていることが確認された。特に、当該柱状物は、光拡散フィルムの厚さ方向に対して傾斜していない(傾斜角0°)ことが確認された。
【0153】
〔実施例4-2〕
実施例4と同様に作製した外光利用型表示体における再帰性反射材側の面に対し、実施例1-2と同様にして、高屈折率層および低屈折率層からなる表面反射調整層を形成することで(試験用)外光利用型表示体を得た。
【0154】
〔実施例5〕
一次硬化における照射角度を15°に変更した以外、実施例4と同様に(試験用)外光利用型表示体を製造した。
【0155】
製造された実施例5に係る外光利用型表示体では、光拡散フィルム内に、厚さ方向に複数の柱状物を林立させてなるカラム構造が形成されていることが確認された。特に、このカラム構造では、柱状物が光拡散フィルムの厚さ方向に対して傾斜しており、その傾斜角は、光拡散フィルムの厚さ方向を0°として、15°であった。
【0156】
〔実施例5-2〕
実施例5と同様に作製した外光利用型表示体における再帰性反射材側の面に対し、実施例1-2と同様にして、高屈折率層および低屈折率層からなる表面反射調整層を形成することで(試験用)外光利用型表示体を得た。
【0157】
〔比較例1〕
シート状の再帰性反射材(日本カーバイト工業社製,製品名「ニッカライト クリスタル・グレード」,プリズムレンズ型)を用意し、当該再帰性反射材単体を、比較例1に係る(試験用)外光利用型表示体とした。
【0158】
〔比較例2〕
実施例4と同様にして、傾斜角0°のカラム構造(便宜的に「第一カラム構造」という。)を備える光拡散フィルムを、その両面に工程シートおよび剥離シートがそれぞれ積層された状態で製造した。続いて、当該光拡散フィルムにおける剥離シートを剥離して露出した面に対し、実施例4と同様にして、カラム構造(便宜的に「第二カラム構造」という。)を形成した。但し、当該第二カラム構造を形成する際には、一次硬化における照射角度を10°に変更した。この第二カラム構造では、柱状物が光拡散フィルムの厚さ方向に対して傾斜しており、その傾斜角は、光拡散フィルムの厚さ方向を0°として、10°であることが確認された。
【0159】
以上のようにして得られた、第一カラム構造(傾斜角0°)と第二カラム構造(傾斜角10°)とが積層してなる光拡散フィルムを用いる以外、実施例1と同様に(試験用)外光利用型表示体を製造した。なお、当該表示体は、光拡散フィルムにおける第二カラム構造側の面が、再帰性反射材に対して近位となるように積層した。
【0160】
〔試験例1〕(反射特性の評価)
実施例1、2、3、4および5、ならびに比較例1および2で得られた外光利用型表示体における光拡散フィルム側の面(比較例1については、再帰性反射材の反射面)に対し、所定の入射角度にて光を照射した場合における、種々の出射角度における反射の程度を、小型散乱測定器(LIGHT TEC社製,製品名「Mini-Diff」)を用いて測定した。
【0161】
具体的には、測定する面の法線を基準として、測定面の任意の一点(入射点)に対し0°の入射角度にて光を照射した。そして、この入射光を含むとともに、外光利用型表示体の長手方向に平行な仮想的な平面(仮想面)を想定したときに、上記入射点から射出され上記仮想面上を進む反射光の輝度を、出射角度-80°から80°までの範囲で10°おきに測定した。なお、ここにおける出射角度は、入射点を基準として、光拡散フィルムの形成時に使用したコンベアの流れ方向の上流側に反射した光については、外光利用型表示体に対する法線と反射光とがなす鋭角をマイナスの表記にて示したものとし、上記コンベアの流れ方向の下流側に反射した光については、外光利用型表示体に対する法線と反射光とがなす鋭角をプラスの表記にて示したものとする。なお、後述する試験例2における、照射光の入射角度の傾斜方向等も同様に表記する。
【0162】
さらに、上記の通り測定された輝度に基づいて、標準拡散板を測定対象として上記と同様に測定された輝度を基準とするゲインを算出した。その結果を表1に示す。なお、表1では、ゲインが1.0以上となった欄を灰色に塗りつぶす処理を施している。
【0163】
また、実施例および比較例で得られた全ての外光利用型表示体について、入射角度を20°に変更した以外は、上記と同様に測定を行い、ゲインを算出した。その結果を表2に示す。なお、表2では、ゲインが1.0以上となった欄を灰色に塗りつぶす処理を施している。
【0164】
〔試験例2〕(変化ヘイズ値の測定)
実施例1、2、3、4および5、ならびに比較例2にて作製した外光利用型表示体について、変角ヘイズメーター(東洋精機製作所社製,製品名「ヘイズガードプラス、変角ヘイズメーター」)を用いて、ヘイズ値(%)を測定した。具体的には、光拡散フィルムの法線に対する入射角度を、光拡散フィルムの長手方向に沿って-70~70°の範囲(法線から±70°の範囲)で変えながら光線を照射し、これらの入射角度ごとにヘイズ値(%)を測定した。なお、測定の際には、外光利用型表示体における光拡散フィルム側の面に対して入射光を照射した。
【0165】
続いて、-70~70°の角度範囲にて測定されたヘイズ値の最大値(最大ヘイズ値)を特定するとともに、当該最大ヘイズ値に0.9を乗じてなる値(最大ヘイズ値×90%)を閾値とし、当該閾値以上のヘイズ値を示す角度範囲の起点の角度(スタート角度)および終点の角度(エンド角度)を特定した。さらに、スタート角度とエンド角度との角度差を算出し、その角度範囲を変角ヘイズ角度範囲とした。以上のように特定された、ヘイズ値の最大値、閾値、スタート角度、エンド角度、および変角ヘイズ角度範囲を表3に示す。
【0166】
【表1】
【0167】
【表2】
【0168】
【表3】
【0169】
表1および表2によると、実施例に係る外光利用型表示体では、比較例1に係る外光利用型表示体と比較して、より広い出射角度に対して、より高いゲインで光を射出できることがわかった。また、実施例に係る外光利用型表示体では、比較例2に係る外光利用型表示体と比較して、入射角度と同じ出射角度(0°または20°)付近に向けて、より高いゲインにて光を射出できることがわかった。すなわち、実施例に係る外光利用型表示体では、入射した光を基本的に再帰性反射させながらも、所定の範囲に拡散させて射出できることがわかった。
【0170】
また、光拡散フィルム内のルーバー構造またはカラム構造が所定の角度傾斜している実施例2、3および5に係る外光利用型表示体では、そのような傾斜が生じてない実施例1および2に係る外光利用型表示体と比較して、ピークの位置やその形状も所定の角度範囲ずれることがわかった。
【0171】
また、表2において、表面反射調整層を備える外光利用型表示体と、表面反射調整層を備えない外光利用型表示体との比較(例えば、実施例1の外光利用型表示体と、実施例1-2の外光利用型表示体との比較)から、表面反射調整層が存在することで、入射角度20°の入射光が正反射したときの出射角度(-20°)に係るゲインが大きく低減したとともに、再帰性反射したときの出射角度(20°)に係るゲインおよび当該角度付近の出射角度に係るゲインが増大した。このことから、表面反射調整層を設けることで、外光利用型表示体の表面にて発生する光の正反射を抑制し、視認者が外光利用型表示体をより明るく視認できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0172】
本発明の外光利用型表示体は、道路標識や建植型駅名標として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0173】
1A,1B…外光利用型表示体
11…再帰性反射材
12…光拡散フィルム
13…装飾層
112…屈折率が相対的に高い柱状物
113…カラム構造
114…屈折率が相対的に低い領域
122…屈折率が相対的に高い板状領域
123…ルーバー構造
124…屈折率が相対的に低い領域
図1
図2
図3
図4
図5