(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】記録紙搬送装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 23/192 20060101AFI20221107BHJP
B41J 15/16 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
B65H23/192
B41J15/16
(21)【出願番号】P 2018226761
(22)【出願日】2018-12-03
【審査請求日】2021-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507351883
【氏名又は名称】シチズン・システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小味山 剛男
(72)【発明者】
【氏名】松嶋 厳
(72)【発明者】
【氏名】安田 洋之
(72)【発明者】
【氏名】清水 克宣
【審査官】沖 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-168076(JP,A)
【文献】特開2007-106554(JP,A)
【文献】特開平10-129904(JP,A)
【文献】特開2013-001549(JP,A)
【文献】特開2015-117079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 7/00- 7/20
B65H 23/18-23/198
B65H 26/00-26/08
B65H 43/00-43/08
B41J 11/00-11/70
B41J 15/00-15/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール紙から供給される記録紙を搬送する搬送ローラと、
前記ロール紙と前記搬送ローラとの間の前記記録紙のたるみを検出するたるみ検出手段と、
前記たるみ検出手段が前記記録紙のたるみを検出した場合、前記記録紙のたるみがなくなる際の前記搬送ローラの回転速度を、通常時より遅い速度に制御する速度制御部と、を備え、
前記たるみ検出手段は、前記記録紙のバックフィードの有無及び距離を検出するバックフィード検出部であり、
前記速度制御部は、前記バックフィード検出部の検出値に基づいて、前記搬送ローラの回転速度を制御する
と共に、
前記搬送ローラの通常時の回転速度を示した加速曲線のデータを記憶する記憶部を有し、
前記バックフィード検出部が、前記記録紙のバックフィードを検出した場合、
前記速度制御部が、前記加速曲線に従って、前記搬送ローラの回転駆動の加速を開始し、
前記搬送ローラの回転速度が所定の速度に達したら、前記速度制御部が、前記搬送ローラの回転駆動を前記加速曲線に基づく速度よりも遅い速度に制御し、
前記記録紙の搬送距離が、前記バックフィードの距離に達したら、前記速度制御部が、前記加速曲線に基づく前記搬送ローラの回転駆動の加速を再開する
ことを特徴とする記録紙搬送装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の記録紙搬送装置を備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール紙から繰り出された記録紙の記録紙搬送装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ロール紙から繰り出された記録紙の効率的な使用のために、ロール紙をバックフィードさせることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、印字終了後、次の印字開始時までに、切断後のロール紙先端を所定距離バックフィードさせるバックフィード機構を設ける構成が開示されている。これにより、無駄な用紙の排出を防ぎ、効率的な用紙の使用を可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ロール紙から繰り出された記録紙をバックフィードさせると、記録紙には、たるみが形成される。しかしながら、特許文献1には、ロール紙から繰り出された記録紙のたるみに関する記載がない。そのため、特許文献1に記載の構成では、たるみが形成された状態からたるみがない状態に変化した時に、搬送ローラに過大な負荷がかかる、という問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、搬送ローラに過大な負荷をかけることなく、たるみが形成された記録紙を搬送可能な記録紙搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の記録紙搬送装置及び画像形成装置は、
ロール紙から供給される記録紙を搬送する搬送ローラと、
前記ロール紙と前記搬送ローラとの間の前記記録紙のたるみを検出するたるみ検出手段と、
前記たるみ検出手段が前記記録紙のたるみを検出した場合、前記記録紙のたるみがなくなる際の前記搬送ローラの回転速度を、通常時より遅い速度に制御する速度制御部と、を備え、
前記たるみ検出手段は、前記記録紙のバックフィードの有無及び距離を検出するバックフィード検出部であり、
前記速度制御部は、前記バックフィード検出部の検出値に基づいて、前記搬送ローラの回転速度を制御すると共に、
前記搬送ローラの通常時の回転速度を示した加速曲線のデータを記憶する記憶部を有し、
前記バックフィード検出部が、前記記録紙のバックフィードを検出した場合、
前記速度制御部が、前記加速曲線に従って、前記搬送ローラの回転駆動の加速を開始し、
前記搬送ローラの回転速度が所定の速度に達したら、前記速度制御部が、前記搬送ローラの回転駆動を前記加速曲線に基づく速度よりも遅い速度に制御し、
前記記録紙の搬送距離が、前記バックフィードの距離に達したら、前記速度制御部が、前記加速曲線に基づく前記搬送ローラの回転駆動の加速を再開する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように構成された本発明の記録紙搬送装置及び画像形成装置は、搬送ローラに過大な負荷をかけることなく、たるみが形成された記録紙を搬送することができる。
また、たるみ検出手段は、記録紙のバックフィードの有無及び距離を検出するバックフィード検出部であり、速度制御部は、バックフィード検出部の検出値に基づいて、搬送ローラの回転速度を制御すると共に、搬送ローラの通常時の回転速度を示した加速曲線のデータを記憶する記憶部を有し、バックフィード検出部が、記録紙のバックフィードを検出した場合、速度制御部が、加速曲線に従って、搬送ローラの回転駆動の加速を開始し、搬送ローラの回転速度が所定の速度に達したら、速度制御部が、搬送ローラの回転駆動を加速曲線に基づく速度よりも遅い速度に制御し、記録紙の搬送距離が、バックフィードの距離に達したら、速度制御部が、加速曲線に基づく搬送ローラの回転駆動の加速を再開することで、バックフィードにより発生する記録紙のたるみによって、搬送ローラに急激に大きな負荷がかかることを軽減し、印字の乱れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1のサーマルプリンタの前カバーが閉位置の状態を示す斜視図である。
【
図2】実施例1のサーマルプリンタの前カバーが開位置の状態を示す斜視図である。
【
図3】実施例1のサーマルプリンタの前カバーが閉位置の状態の構成を示す断面図である。
【
図4】実施例1の記録紙搬送装置の機能構成を示す機能構成図である。
【
図6】実施例1の速度調整処理を示すフローチャートである。
【
図7】実施例1の速度調整処理により制御された記録紙の搬送速度を示すグラフである。
【
図8】実施例2のサーマルプリンタの前カバーが閉位置の状態の構成を示す断面図である。
【
図9】実施例2の記録紙搬送装置の機能構成を示す機能構成図である。
【
図10】実施例2の速度調整処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明による記録紙搬送装置及び画像形成装置を実現する実施形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
実施例1における記録紙搬送装置及び画像形成装置は、感熱紙に印刷を行う感熱式のサーマルプリンタに適用される。
【0012】
[サーマルプリンタの構成]
図1は、実施例1のサーマルプリンタの前カバーが閉位置の状態を示す斜視図である。
図2は、実施例1のサーマルプリンタの前カバーが開位置の状態を示す斜視図である。
図3は、実施例1のサーマルプリンタの前カバーが閉位置の状態の構成を示す断面図である。以下、
図1~
図3に基づいて、実施例1のサーマルプリンタの構成を説明する。
【0013】
なお、サーマルプリンタ1の幅方向を幅方向Xとし、サーマルプリンタ1の前後方向を前後方向Yとし、サーマルプリンタ1の上下方向を上下方向Zとする。また、前後方向Yのうち、前方向を前方向Fとし、後方向を後方向Bとする。
【0014】
画像形成装置としてのサーマルプリンタ1は、
図1に示すように、筺体本体2と、前カバー3と、を備える筺体1Aを有する。
【0015】
筺体本体2は、
図2に示すように、サーマルプリンタ1の前側に開口部2aを有する箱状に形成される。前カバー3は、開口部2aの下側の縁に軸支され、開口部2aを閉塞する閉位置と、開口部2aを開放する開位置と、を回動可能とする。前カバー3は、起立した状態から前方向Fに倒れた状態になって開位置となり、倒れた状態から起立した状態になって閉位置となり、前方向Fに開閉可能とする。
【0016】
筺体本体2の内部には、
図3に示すように、収容部10と、サーマルヘッドユニット5と、が設けられる。
【0017】
収容部10は、底仕切部11と、後仕切部12と、上仕切部13と、から構成され、ロール紙Rを収容可能とする。ロール紙Rは、長尺状の連続紙がロール状に巻かれたものである。
【0018】
底仕切部11は、筺体本体2の底面の付近に、サーマルプリンタ1の前方向Fに向けて下方に傾斜した斜面で形成される。後仕切部12は、底仕切部11の後側の端部から起立して形成される。上仕切部13は、後仕切部12の上端から前方向Fに向けて延在して形成される。
【0019】
前カバー3が閉位置の状態において、前カバー3に取り付けられたプラテンローラ4は、サーマルヘッドユニット5と対向するように配置される。サーマルヘッドユニット5がプラテンローラ4に当接する方向に付勢された状態で、サーマルヘッドユニット5は、記録紙Pに感熱印刷を行う。
【0020】
前カバー3の裏面には、搬送ローラとしてのプラテンローラ4と、カッターユニット6と、が取り付けられる。
【0021】
プラテンローラ4は、駆動部22としてのステッピングモータと、駆動検出部21と、に接続される。プラテンローラ4は、駆動部22により、正回転することで、ロール紙Rから繰り出された記録紙Pを排出口7に搬送する。また、プラテンローラ4は、駆動部22により、逆回転することで、記録紙Pをバックフィードする。
【0022】
駆動検出部21は、例えば、ステッピングモータに駆動用のパルス信号を出力するモータドライバと、このパルス信号の数(パルス数)をカウントしてステッピングモータの回転を制御する制御部(CPU)から構成される。
【0023】
カッターユニット6は、プラテンローラ4による記録紙Pの搬送方向Gにおいて、プラテンローラ4より下流に配置される。カッターユニット6は、プラテンローラ4と、搬送方向Gにおいて、距離L1(実施例1では、10[mm])離れて配置される。カッターユニット6は、搬送された記録紙Pを切断する。
【0024】
このように構成されたサーマルプリンタ1は、プラテンローラ4が正回転することで、ロール紙Rから記録紙Pが繰り出される。ロール紙Rから繰り出された記録紙Pは、搬送方向Gに搬送され、サーマルヘッドユニット5によって、感熱印刷が行われる。感熱印刷が行われた記録紙Pは、プラテンローラ4により、カッターユニット6の位置まで搬送された記録紙Pを切断する。
【0025】
すなわち、記録紙Pは、カッターユニット6によって、サーマルヘッドユニット5から、前方向Fに距離L1だけ離間した位置で切断される。仮に、この状態から感熱印刷を行うと、記録紙Pは、カッターユニット6によって切断された位置からサーマルヘッドユニットまでの距離L1の部分が余白となり、この余白に続く記録紙Pの後方向Bの部分が、次に感熱印刷が行われる領域になる。
【0026】
このような無駄な余白が生じないように記録紙Pを効率的に使用する際には、記録紙Pを切断後、プラテンローラ4を逆回転させてバックフィードさせる。例えば、切断された記録紙Pの先端を、カッターユニット6による切断位置から、距離L1より若干短い距離L2(実施例1では8[mm])だけ、プラテンローラ4を逆回転させてバックフィードする。その後、再びプラテンローラ4を正回転させながら感熱印刷を行う。これにより、切断された記録紙Pの端部を距離L2だけサーマルヘッドユニット5側に戻すことができる。そのため、距離L1から距離L2の差分(実施例1では2[mm])が適切な余白となり、記録紙Pを効率的に使用することができる。また、バックフィードした際には、記録紙Pには、たるみBが形成される。
【0027】
[記録紙搬送装置の機能構成]
図4は、実施例1の記録紙搬送装置の機能構成を示す機能構成図である。以下、
図4に基づいて、実施例1の記録紙搬送装置の機能構成を説明する。
【0028】
記録紙搬送装置20は、駆動検出部21と、制御部30と、駆動部22と、を備える。
【0029】
駆動検出部21は、駆動部22に出力された駆動信号のパルス数を検出する。駆動検出部21が検出した検出値は、制御部30に送信される。
【0030】
制御部30は、記憶部31と、たるみ検出手段としてのバックフィード検出部32と、速度制御部33と、を備える。なお、制御部30は、記録紙搬送装置20の全体の制御を司る。
【0031】
記憶部31は、駆動検出部21が検出した検出値を記憶する。また、記憶部31は、通常時の記録紙Pの搬送速度を示した用紙送りの加速曲線Cを表すデータを記憶する。通常時とは、記録紙PにたるみBが存在しない状態をいう。なお、加速曲線Cについては、後述する。
【0032】
バックフィード検出部32は、パルス数に基づいて、バックフィードの有無や、バックフィードした距離を検出する。
【0033】
速度制御部33は、加速曲線Cを参照して、駆動部22を制御する。また、速度制御部33は、後述する速度調整処理の処理結果に基づいて駆動部22を制御する。
【0034】
[加速曲線]
図5は、実施例1の加速曲線Cを示すグラフである。以下、
図5に基づいて、実施例1の加速曲線Cを説明する。
【0035】
図5に示すように、加速曲線Cは、たるみBが形成されていない通常時における、記録紙Pの搬送速度の変化を示す。
【0036】
加速曲線Cは、搬送距離が0[mm]のとき、搬送速度は0[mm/sec]であり、搬送距離が長くなるに従って、搬送速度は上昇し、最大搬送速度は最大搬送速度Vmaxとなる。すなわち、加速曲線Cは、通常時における記録紙Pの搬送速度の立ち上がり特性を示す。なお、実施例1では、最大搬送速度Vmaxの値は200~400[mm/sec]の値の範囲であり、例えば、350[mm/sec]に設定されている。
【0037】
なお、記録紙Pの搬送速度は、プラテンローラ4の回転速度に対応し、記録紙Pの搬送速度が上がると、プラテンローラ4の回転速度も上がるようになっている。さらに、
図5に示す加速曲線Cは、たるみBが形成されていない通常時だけではなく、たるみBが形成された場合の記録紙Pの搬送速度の制御にも用いられる。但し、この場合は、後述するように、加速曲線Cに基づいて記録紙Pの搬送速度を最大搬送速度Vmaxまで加速する途中で、一時的に記録紙Pの搬送速度を等速にする制御を行う。
【0038】
[速度調整処理]
図6は、実施例1の速度調整処理を示すフローチャートである。以下、
図6に基づいて、実施例1の速度調整処理を説明する。
【0039】
速度調整処理は、例えばサーマルプリンタ1の電源を投入すると開始される。
図6に示すように、速度調整処理が開始されると(スタート)、バックフィード検出部32は、バックフィードが実行されたか否かを判断する(ステップS101)。バックフィードが実行されていないと判断した場合(ステップS101でNO)、ステップS101に戻る。一方、バックフィードが実行されたと判断した場合(ステップS101でYES)、ステップS102に進む。
【0040】
次いで、バックフィード検出部32は、バックフィードが実行された距離を検出する(ステップS102)。検出方法としては例えばバックフィードに要したステッピングモータのステップ数を検出する。次いで、ステッピングモータを正回転させて印字を行う際には、速度制御部33は、加速曲線Cに基づいて、プラテンローラ4の正回転を開始する(ステップS103)。すなわち、ステップS103では、記録紙Pの搬送速度の加速が開始されることになる。
【0041】
次いで、速度制御部33は、記録紙Pの搬送速度が所定の速度Vbf(実施例1では、50~100[mm/sec]の範囲であり、例えば、80[mm/sec])に達したか否かを判断する(ステップS104)。なお、所定の速度Vbfは、50~100[mm/sec]が、記録紙PのたるみBがない状態に変化しても、プラテンローラ4にかかる負荷を抑制することができる好ましい値である。記録紙Pの搬送速度が所定の速度Vbfに達していないと判断した場合(ステップS104でNO)、ステップS104に戻る。一方、記録紙Pの搬送速度が所定の速度Vbfに達していると判断した場合(ステップS104でYES)、ステップS105に進む。
【0042】
次いで、速度制御部33は、プラテンローラ4の回転駆動の加速を中断する(ステップS105)。すなわち、ステップS105では、記録紙Pの搬送の加速が中断され、記録紙Pが等速度Vbfで搬送されることになる。
【0043】
次いで、制御部30は、バックフィードが実行された距離L2(実施例1では、8[mm])まで記録紙Pを搬送したか否かを判断する(ステップS106)。この際、プラテンローラ4が逆回転して、距離L2のバックフィードが実行されていた(ステップS101でYESの)場合には、記録紙Pには、たるみBが形成される。このたるみBが形成された状態で、プラテンローラ4が正回転して、搬送方向Gに記録紙Pが距離L2搬送されると、たるみBがなくなることになる。
【0044】
記録紙Pをバックフィードした距離L2まで搬送していないと判断した場合、ステップS106に戻る。一方、記録紙Pを距離L2まで搬送したと判断した場合、ステップS107に進む。
【0045】
次いで、速度制御部33は、加速曲線Cに基づいて、プラテンローラ4の回転駆動の加速を再開する(ステップS107)。この際、プラテンローラ4の回転駆動の加速を中断してから再開するまでの間は、プラテンローラ4の回転駆動を等速度に維持して、加速曲線Cを横軸方向に平行移動させるように制御する。すなわち、ステップS107では、記録紙Pの搬送の速度が等速度の状態から加速が再開されることになる。つまり、速度制御部33は、記録紙Pをバックフィードすることにより発生するたるみBが無くなるまで、プラテンローラ4の回転速度を通常時より遅い速度にして印字を行うという制御を行う。その後、たるみが無くなった際には加速を再開し、バックフィードなしの場合の最大搬送速度Vmaxまで加速した状態で用紙を送り、感熱印刷を行う。
【0046】
次いで、制御部30は、記録紙Pの搬送を終了するか否かを判断する(ステップS108)。記録紙Pの搬送を終了しないと判断した場合(ステップS108でNO)、ステップS108に戻る。一方、記録紙Pの搬送を終了すると判断した場合(ステップS108でYES)、速度調整処理を終了する。
【0047】
[速度調整処理により制御された記録紙Pの搬送]
図7は、実施例1の速度調整処理により制御された記録紙Pの搬送速度を示すグラフである。以下、
図7に基づいて、実施例1の速度調整処理により制御された記録紙Pの搬送を説明する。
【0048】
プラテンローラ4が逆回転してバックフィードが距離L2(実施例1では、8[mm])だけ実行された場合に、印字を開始するとする。まず、
図7に示すように、プラテンローラ4が正回転して、加速曲線Cに沿って記録紙Pの搬送の加速が開始される。
【0049】
次に、記録紙Pの搬送速度が、前述の所定の速度Vbfに達すると、記録紙Pの搬送の加速が中断され、記録紙Pは等速度で搬送される。
【0050】
次に、記録紙Pの搬送距離が前述の距離L2に達すると、加速曲線Cに沿って記録紙Pの搬送の加速が再開される。すなわち、記録紙Pの搬送距離が距離L2に達すると、加速曲線Cの中断された部分から、加速曲線Cに沿って記録紙Pの搬送の加速が再開される。言い換えると、記録紙PのたるみBがなくなる際の、プラテンローラ4の回転速度は、通常時のプラテンローラ4の回転速度より遅くなる。
【0051】
そして、記録紙Pの搬送速度が、前述の最大搬送速度Vmaxに達するまで、加速される。
【0052】
[記録紙搬送装置及び画像形成装置の作用]
実施例1の記録紙搬送装置及び画像形成装置の作用を説明する。実施例1の記録紙搬送装置20は、ロール紙Rから供給される記録紙Pを搬送する搬送ローラ(プラテンローラ4)と、ロール紙Rと搬送ローラ(プラテンローラ4)との間の記録紙PのたるみBを検出するたるみ検出手段(バックフィード検出部32)と、たるみ検出手段(バックフィード検出部32)が記録紙PのたるみBを検出した場合、記録紙PのたるみBがなくなる際の搬送ローラ(プラテンローラ4)の回転速度を、通常時より遅い速度に制御する速度制御部33と、を備える(
図4)。
【0053】
これにより、記録紙PにたるみBがある状態から、記録紙PにたるみBがない状態に変化する時の、搬送ローラ(プラテンローラ4)の回転速度を通常時より遅くすることができる。記録紙PにたるみBがある状態から、たるみBがない状態に変化する時、すなわち、たるんだ記録紙Pがピンと張る際に、瞬間的に搬送ローラ(プラテンローラ4)に大きな負荷がかかるが、その負荷はロール紙Rの直径が大きいほど(記録紙Pの質量が大きいほど)、また記録紙Pを送る速度が大きいほど(搬送速度が大きいほど)、大きくなる。つまり、記録紙Pの搬送速度を遅くする事で、搬送ローラ(プラテンローラ4)に急激に大きな負荷がかかることを軽減することができる。その結果、印字の乱れを防止することができる。
【0054】
実施例1の記録紙搬送装置20では、たるみ検出手段は、記録紙Pのバックフィードの有無及び距離を検出するバックフィード検出部32であり、速度制御部33は、バックフィード検出部32の検出値に基づいて、搬送ローラ(プラテンローラ4)の回転速度を制御する(
図4)。
【0055】
これにより、バックフィードした距離に応じてたるみBの発生量を推定し、記録紙PのたるみBがなくなる際を判断することができる。そのため、記録紙PのたるみBがなくなる際の搬送ローラ(プラテンローラ4)の回転速度を調整することができる。その結果、バックフィードにより発生する記録紙PのたるみBにより、搬送ローラ(プラテンローラ4)に急激に大きな負荷がかかることを軽減し、印字の乱れを防止することができる。
【0056】
実施例1の記録紙搬送装置20は、搬送ローラ(プラテンローラ4)の通常時の回転速度を示した加速曲線Cのデータを記憶する記憶部31を有し、バックフィード検出部32が、記録紙Pのバックフィードを検出した場合、速度制御部33が、加速曲線Cに従って、搬送ローラ(プラテンローラ4)の回転駆動の加速を開始し、搬送ローラ(プラテンローラ4)の回転速度が所定の速度に達したら、速度制御部33が、搬送ローラ(プラテンローラ4)の回転駆動の加速を中断し、記録紙Pの搬送距離が、バックフィードの距離に達したら、速度制御部33が、加速曲線Cに従って、搬送ローラ(プラテンローラ4)の回転駆動の加速を再開する(
図6)。
【0057】
これにより、速度制御部33は、記録紙PのたるみBの量にかかわらず、1つの加速曲線Cに基づいて、記録紙PのたるみBがなくなる際の搬送ローラ(プラテンローラ4)の回転速度を制御することができる。そのため、バックフィードの距離が変わったとしても、記録紙PのたるみBがなくなる際の搬送ローラ(プラテンローラ4)の回転速度を容易に制御することができる。
【実施例2】
【0058】
実施例2の記録紙搬送装置及び画像形成装置は、たるみ検出手段が異なる点で、実施例1の記録紙搬送装置及び画像形成装置と相違する。
【0059】
[サーマルプリンタの構成]
図8は、実施例2のサーマルプリンタの前カバーが閉位置の状態の構成を示す断面図である。以下、
図8に基づいて、実施例2の記録紙搬送装置の構成を説明する。なお、上記実施例で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一の符号を用いて説明する。
【0060】
実施例2のサーマルプリンタ101は、テンションローラ115を備える。テンションローラ115は、ロール紙Rから繰り出された、たるみBのない状態の記録紙Pを下方から支持する。
【0061】
テンションローラ115には、テンション検出部121が接続される。テンション検出部121は、例えば荷重センサで構成され、テンションローラ115に加わる記録紙Pの張力により与えられる力を検出する。
【0062】
[記録紙搬送装置の機能構成]
図9は、実施例2の記録紙搬送装置の機能構成を示す機能構成図である。以下、
図9に基づいて、実施例2の記録紙搬送装置の機能構成を説明する。
【0063】
記録紙搬送装置120は、テンション検出部121と、制御部130と、駆動部22と、を備える。
【0064】
テンション検出部121は、テンションローラ115に加わる記録紙Pの張力により与えられる力(テンション)を検出する。テンション検出部121が検出した検出値は、制御部30に送信される。
【0065】
制御部130は、記憶部131と、たるみ検出手段としてのたるみ検出部132と、速度制御部133と、を備える。
【0066】
記憶部131は、テンション検出部121が検出した検出値を記憶する。また、記憶部131は、通常時の記録紙Pの搬送速度を示した加速曲線Cを記憶する。
【0067】
たるみ検出部132は、テンションに基づいて、たるみBの有無を検出する。すなわち、たるみ検出部132は、テンションが所定の閾値以上の場合、たるみBが発生していると判断する。一方、たるみ検出部132は、テンションが所定の閾値未満の場合、たるみBが発生していないと判断する。
【0068】
速度制御部133は、加速曲線Cを参照して、駆動部22を制御する。また、速度制御部133は、後述する速度調整処理の処理結果に基づいて駆動部22を制御する。
【0069】
[速度調整処理]
図10は、実施例2の速度調整処理を示すフローチャートである。以下、
図10に基づいて、実施例2の速度調整処理を説明する。
【0070】
速度調整処理は、例えばサーマルプリンタ101の電源を投入すると開始される(スタート)。
図10に示すように、速度調整処理が開始されると、たるみ検出部132は、テンションが所定の閾値より低いか否かを判断する(ステップS201)。テンションが所定の閾値より高いと判断した場合(ステップS201でNO)、ステップS201に戻る。一方、テンションが所定の閾値より低いと判断した場合(ステップS201でYES)、ステップS202に進む。
【0071】
次いで、速度制御部133は、加速曲線Cに基づいて、プラテンローラ4の回転を開始する(ステップS202)。すなわち、ステップS202では、記録紙Pの搬送の加速が開始されることになる。
【0072】
次いで、速度制御部133は、記録紙Pの搬送速度が所定の速度Vbfに達したか否かを判断する(ステップS203)。記録紙Pの搬送速度が所定の速度Vbfに達していないと判断した場合(ステップS203でNO)、ステップS203に戻る。一方、記録紙Pの搬送速度が所定の速度Vbfに達していると判断した場合(ステップS203でYES)、ステップS204に進む。
【0073】
次いで、速度制御部133は、プラテンローラ4の回転駆動の加速を中断する(ステップS204)。すなわち、ステップS204では、記録紙Pの搬送速度の加速が中断され、記録紙Pが等速度で搬送されることになる。
【0074】
次いで、たるみ検出部132は、テンションが所定の閾値に達したか否かを判断する(ステップS205)。テンションが所定の閾値に達していない判断した場合(ステップS205でNO)、ステップS205に戻る。一方、テンションが所定の閾値に達した判断した場合(ステップS205でYES)、ステップS206に進む。
【0075】
次いで、速度制御部133は、加速曲線Cに基づいて、プラテンローラ4の加速を再開する(ステップS206)。言い換えると、ステップS206では、記録紙Pの搬送速度の加速が再開されることになる。すなわち、速度制御部133は、記録紙PのたるみBがなくなる際の、プラテンローラ4の回転速度を、通常時より遅い速度に制御する。
【0076】
次いで、制御部130は、記録紙Pの搬送を終了するか否かを判断する(ステップS207)。記録紙Pの搬送を終了しないと判断した場合(ステップS207でNO)、ステップS207に戻る。一方、記録紙Pの搬送を終了すると判断した場合(ステップS207でYES)、速度調整処理を終了する。
【0077】
[記録紙搬送装置及び画像形成装置の作用]
実施例2の記録紙搬送装置及び画像形成装置の作用を説明する。実施例2の記録紙搬送装置120は、たるみ検出手段は、ロール紙Rと搬送ローラ(プラテンローラ4)との間の記録紙Pのテンションを検出するテンション検出部121であり、速度制御部133は、テンション検出部121の検出値に基づいて、搬送ローラ(プラテンローラ4)の回転速度を制御する(
図9)。
【0078】
これにより、テンションに基づいてたるみBが生じている状態を判定し、記録紙PのたるみBがなくなる際を判断することができる。そのため、記録紙PのたるみBがなくなる際の搬送ローラ(プラテンローラ4)の回転速度を調整することができる。その結果、記録紙PのたるみBにより、搬送ローラ(プラテンローラ4)に急激に大きな負荷がかかることを軽減し、印字の乱れを防止することができる。
【0079】
なお、他の構成及び作用効果については、上記実施例と略同様であるので説明を省略する。
【0080】
以上、本発明の画像形成装置を実施例1及び実施例2に基づき説明してきた。しかし、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、各実施例の組み合わせや、設計の変更や、追加等は許容される。
【0081】
実施例1及び実施例2では、記録紙PのたるみBがなくなる際の、プラテンローラ4の回転速度を、通常時より遅い速度に制御する例を示した。この記録紙PのたるみBがなくなる際には、記録紙PのたるみBがなくなった直後も含めてもよい。例えば、実施例1及び実施例2において、等速度Vbfにより、記録紙Pの搬送距離が距離L2を僅かに越える距離まで搬送してもよい。これにより、確実に記録紙PのたるみBをなくしてから、記録紙Pの搬送の加速を行うことができる。また、これにより、記録紙PにたるみBがなくなった瞬間と、さらにその直後まで、プラテンローラ4の回転速度を、通常時より遅い速度に制御することができる。そのため、搬送ローラに急激に大きな負荷がかかることをさらに軽減することができる。
【0082】
実施例1及び実施例2では、1つの加速曲線Cを使用する例を示した。しかし、たるみBが解消するまでの加速曲線と、たるみBが解消された後の加速曲線とで、別々のものを使用してもよい。この場合、たるみBが解消するまでの加速曲線は、記録紙PのたるみBがなくなる際だけ、プラテンローラ4の回転速度を、通常時より遅い速度に制御するようにしてもよい。
【0083】
さらに、実施例1及び実施例2では、加速曲線Cにおいて、記録紙Pの搬送速度が、所定の速度Vbfに達してから、所定の速度Vbfによる等速度で記録紙Pを搬送する例を示した。しかし、加速曲線Cにおいて、記録紙Pの搬送は、所定の速度Vbfよりも遅い別の所定の速度VbfLに達したときから、僅かに加速を続け、記録紙PのたるみBがなくなる際に所定の速度Vbfに達するようにすることもできる。この場合も、記録紙PにたるみBがなくなった瞬間に、プラテンローラ4の回転速度を、通常時より遅い速度に制御することができる。
【0084】
実施例1及び実施例2では、本発明を前側が開く前カバー3を備える画像形成装置に適用する例を示した。しかし、本発明は、上側が開く上カバーを備える画像形成装置に適用することもできる。
【0085】
実施例1及び実施例2では、本発明を感熱紙に印刷を行う感熱式のサーマルプリンタ1に適用する例を示した。しかし、本発明は、インクリボンを使用するサーマルプリンタに適用することができる。また、本発明は、インパクト方式のプリンタ、レーザプリンタ、インクジェットプリンタ、プロッタ、ワードプロセッサ、ファクシミリ、複写機等、またはこれら2つ以上の機能を備えた複合機等の画像形成装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 画像形成装置
4 プラテンローラ(搬送ローラの一例)
20 記録紙搬送装置
32 バックフィード検出部(たるみ検出手段の一例)
33 速度制御部
121 テンション検出部(たるみ検出手段の一例)
B たるみ
C 加速曲線
P 記録紙
R ロール紙