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特許7170532血液由来のがんの治療における使用を目的とする免疫チェックポイント阻害物質
<図1>
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】血液由来のがんの治療における使用を目的とする免疫チェックポイント阻害物質
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20221107BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20221107BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
A61K39/395 U ZNA
A61K39/395 T
A61P35/02
A61P43/00 121
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018505586
(86)(22)【出願日】2016-08-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-10-25
(86)【国際出願番号】 EP2016068726
(87)【国際公開番号】W WO2017021526
(87)【国際公開日】2017-02-09
【審査請求日】2019-08-02
(31)【優先権主張番号】62/201,461
(32)【優先日】2015-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512244819
【氏名又は名称】アムゲン リサーチ (ミュンヘン) ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】AMGEN Research(Munich)GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】フィードラー ウォルター
(72)【発明者】
【氏名】ウェルブロック ジャスミン
(72)【発明者】
【氏名】スタム ホーク
(72)【発明者】
【氏名】クリングラー フェリックス
【審査官】原口 美和
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-523034(JP,A)
【文献】国際公開第2008/044754(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/089169(WO,A1)
【文献】Immunology and Cell Biology,2014年,Vol. 92,pp. 237-244
【文献】Immunology and Cell Biology,2012年,Vol. 90,pp. 109-115
【文献】LEUKEMIA,2015年08月04日,V30 N2,P484-491,https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26239198
【文献】ONCOIMMUNOLOGY,2013年10月,VOL:2, NR:10,P.E26286-1/3,http://dx.doi.org/10.4161/onci.26286
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
A61P 35/02
A61P 43/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD112(ネクチン-2、PVRL2)に対する阻害物質、および、CD155(PVR)対する阻害物質を含む、T細胞の免疫機能の回復機構及び活性化機構を介してがんの増殖を阻害することによる、急性骨髄性白血病(AML)の治療における使用のための医薬組成物であって、該阻害物質抗体であり、CD112に特異的に結合する該抗体がL-14であり、CD155に特異的に結合する該抗体がD171であり、かつ、該医薬組成物が、T細胞と会合し(engage)、CD3イプシロン結合ドメインと、CD33、CD19、及びFlt3からなる群から選択される表面分子を標的とする追加の結合ドメインとを含む二重特異性単鎖Fv(scFv)抗体構築物と組み合わせて使用される、前記医薬組成物。
【請求項2】
CD112に対する前記阻害物質が、CD112とTIGITとの間の相互作用を阻害するか、または、CD155に対する前記阻害物質が、CD155とTIGITとの間の相互作用を阻害する請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
CD112に対する前記阻害物質が、CD112の細胞内シグナル伝達を調節する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
CD155に対する前記阻害物質が、CD155の細胞内シグナル伝達を調節する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
T細胞と会合し(engage)、CD3イプシロン結合ドメインと、CD33、CD19、及びFlt3からなる群から選択される表面分子を標的とする追加の結合ドメインとを含む抗体構築物が、SEQ ID NO:15~37に示される分子から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、血液由来のがん、具体的にはAMLの治療における使用を目的とする免疫チェックポイント阻害物質を提供する。本発明は、それぞれ当該免疫チェックポイント阻害物質、及びCAR T細胞、またはT細胞と会合する(engage)能力を有する抗体構築物を含む医薬組成物にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
免疫チェックポイントの遮断は、治療的抗腫瘍免疫を活性化するための最も有望な手法の1つである。免疫チェックポイントは、自己寛容の維持、ならびに付随する組織損傷を最小化するための末梢組織における生理学的な免疫応答の持続期間及び強度の調節に不可欠な、免疫系に張り巡らされた膨大な阻害経路を指す。
【0003】
一般に、T細胞は、TCRを介してその同種抗原を最初に認識するまでは、こうしたリガンド-受容体相互作用に応答しない。リガンドの多くが複数の受容体に結合し、その中には、同時刺激性シグナルを送達するものもあれば、阻害性シグナルを送達するものある。一般に、CD28と細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA4)とのペアなどの、同一の1つまたは複数のリガンドに結合する同時刺激型受容体と阻害型受容体とのペアは、ナイーブT細胞及び休止T細胞上に発現する同時刺激型受容体とは異なる発現動力学を示すが、阻害型受容体は、通常、T細胞の活性化後に上方制御される。同時刺激型受容体と阻害型受容体との両方に結合する膜結合型リガンドの重要ファミリーの1つは、B7ファミリーである。B7ファミリーのメンバー及びその既知のリガンドはすべて、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する。B7ファミリーのメンバーであると同定されて間もないものでは、その受容体の多くが未だ同定されていない。同種TNF受容体ファミリー分子に結合するTNFファミリーのメンバーは、制御性のリガンド-受容体ペアの第2のファミリーに相当する。こうした受容体は、その同種リガンドが結合すると、同時刺激性シグナルを主に送達する。
【0004】
T細胞の活性化を制御する別の主要なカテゴリーのシグナルは、微小環境において可溶性サイトカインから生じる。T細胞とAPCとの間のコミュニケーションは双方向的である。場合によっては、これは、リガンド自体がAPCにシグナルを送ると生じる。他の場合では、活性化したT細胞は、CD40Lなどの、APCに存在する同種受容体に結合するリガンドを上方制御する。
【0005】
しかしながら、腫瘍は、特に、腫瘍抗原に特異的なT細胞に対抗するための主な免疫耐性機構として、ある特定の免疫チェックポイント経路を勝手に利用する。免疫チェックポイントの多くが、リガンド-受容体相互作用によって開始することから、抗体による遮断、またはリガンドもしくは受容体の組換え体による調節が可能である。CTLA4抗体は、FDAによる認可を得るための、このクラスの最初の免疫治療剤であった。PD-1などの、さらなる免疫チェックポイントタンパク質の遮断剤に関する予備臨床的な知見は、持続的な臨床応答を得るための潜在力を有する抗腫瘍免疫を増進する幅広く多様な機会が存在することを示している。
【0006】
したがって、がん免疫療法では、免疫系、特にT細胞による殺傷に対する新生物細胞及びがん細胞の感受性を向上させることが可能な薬剤の開発にも焦点が置かれる。このことは、例えば、免疫チェックポイントタンパク質(リガンドもしくは受容体またはそれらの両方のいずれか)を妨害することによって達成できる。免疫チェックポイント分子に関する知見、ならびに免疫チェックポイント分子がどのがん細胞によって使用されるかという知見は増えるものの、後にがん細胞になる新生物細胞のどれがどの免疫チェックポイント分子を使用し得ることで免疫系を回避し、それによって無制御に増殖する能力を得るのかということは知られていない。例えば、血液由来のがん、具体的には、急性骨髄性白血病(AML)は、免疫系を回避することで知られるものの1つである。免疫チェックポイントタンパク質が関与し得ると推測されるものの、このことに関する証拠は未だ存在しない。したがって、免疫系の殺傷機構のアクセスに対する血液由来のがん細胞の感受性を向上させるために、免疫チェックポイントタンパク質の影響を無効にする手段及び方法を提供する必要があるが、未だ対処されないままである。
【0007】
したがって、本出願の根底に存在する技術的な問題は、この対処されない必要性を充足することであり、すなわち、体の免疫系による殺傷に対する血液由来のがん細胞、具体的にはAML細胞の感受性を向上させる手段及び方法を提供することである。解決策は、一般に、血液由来のがん、具体的にはAMLの治療を目的とする、免疫チェックポイントリガンドであるCD112、CD155、その受容体であるTIGIT、免疫チェックポイントリガンドであるガレクチン-9、及び/またはその受容体であるTIM-3の阻害物質を提供することである。当該解決策はまた、特許請求の範囲において反映、説明において具体化、添付の実施例において例示、及び図において例示される。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、リンパ腫または白血病などの血液由来のがん、具体的にはAMLの治療における使用を目的とする、免疫系の調節化合物に関する。さらに、本発明は、当該免疫調節化合物とキメラ抗原受容体T細胞(CAR T細胞)とを含む医薬組成物に関する。さらに、本発明は、当該免疫調節化合物と、T細胞と会合する能力を有する抗体構築物とを含む医薬組成物を提供する。
【0009】
この点に関して、本発明は、血液由来のがんの治療、具体的には、AMLの治療において、免疫回避機構を獲得したがん細胞を治療するために、多様な阻害物質による影響を受け得る新たな免疫チェックポイントを提供する必要性に着目している。具体的には、本発明者らは、血液由来のがん、具体的にはAMLの治療のための特異的な標的となり得る新たな免疫チェックポイントタンパク質として、CD112、CD155、TIGIT、ガレクチン-9、及びTIM-3を発見した。したがって、CD112、CD155、TIGIT、ガレクチン-9、及び/またはTIM-3に対する阻害物質は、AML細胞の細胞溶解を顕著に増加させた。さらに、キメラ抗原受容体T細胞(CAR T細胞)と組み合わせるか、またはCD3とCD33とに対する二重特異性を有する、二重特異性のT細胞誘導(bispecific T-cell-engaging)(BiTE)抗体構築物であるAMG330などの、T細胞と会合する能力を有する抗体構築物と組み合わせると、当該免疫チェックポイント阻害が与える影響の有効性がさらに向上し得ることを発明者らは発見した。したがって、本発明の化合物及び組成物は、血液由来のがん、具体的にはAMLを有する患者に新規の治療選択肢を与え、それによって、体の防御力による殺傷に対する血液由来のがん細胞の感受性を向上させる有望な方法を提供する。したがって、本発明は、抗腫瘍免疫を増進する幅広く多様な機会を示し、持続性のある臨床応答を達成するための潜在力を有すると思われる化合物及び組成物を提供する。
【0010】
第1の態様では、本発明は、血液由来のがん、具体的には急性骨髄性白血病(AML)の治療方法における使用を目的とする、CD112(ネクチン-2、PVRL2)、CD155(PVR)、ガレクチン-9、TIM-3、及び/またはTIGITに対する阻害物質に関する。第1の群のそのような阻害物質は、本明細書に記載の免疫チェックポイントタンパク質リガンドと免疫チェックポイントタンパク質受容体との間の相互作用を阻害する。したがって、CD112に対する本発明の阻害物質は、CD112とTIGITとの間の相互作用を阻害すると想定される。CD155に対する本発明の阻害物質は、CD155とTIGITとの間の相互作用を阻害すると想定される。TIGITに対する本発明の阻害物質は、TIGITとCD112との間の相互作用を阻害すると想定される。TIGITに対する本発明の阻害物質は、TIGITとCD155との間の相互作用を阻害すると想定される。ガレクチン-9に対する本発明の阻害物質は、ガレクチン-9とTIM-3との間の相互作用を阻害すると想定される。TIM-3に対する本発明の阻害物質は、TIM-3とガレクチン-9との間の相互作用を阻害すると想定される。本発明の阻害物質は、抗体構築物であり得る。
【0011】
本発明の阻害物質は、CAR T細胞をさらに含み得ることも想定される。本発明の阻害物質は、T細胞と会合する能力を有する抗体構築物も含み得る。T細胞と会合する能力を有する抗体構築物は、好ましくは、CD3結合ドメインと、AML細胞上に発現した表面分子を標的とする追加の結合ドメインとを含む。当該表面分子は、CD33、CD19、及びFlt3からなる群から選択され得る。T細胞と会合する能力を有する抗体構築物は、好ましくは、CD3イプシロンに結合する能力を有する結合分子である。本発明の阻害物質は、免疫賦活剤をさらに含み得る。
【0012】
追加の群の免疫チェックポイント阻害物質は、本明細書に記載の免疫チェックポイントタンパク質の発現を低減する。したがって、CD112に対する本発明の阻害物質は、CD112の発現を低減すると想定される。CD155に対する本発明の阻害物質は、CD155の発現を低減すると想定される。TIGITに対する本発明の阻害物質は、TIGITの発現を低減すると想定される。ガレクチン-9に対する本発明の阻害物質は、ガレクチン-9の発現を増加させると想定される。TIM3に対する本発明の阻害物質は、TIM-3の発現を増加させると想定される。本発明の阻害物質としては、iRNAが想定される。本発明の阻害物質は、CD112、CD155、TIGIT、ガレクチン-9、及び/またはTIM-3をノックアウトすると想定される。ノックアウトは、CRISPR/cas9手法によって達成され得る。
【0013】
別の群の免疫チェックポイント阻害物質は、本明細書に記載の免疫チェックポイントタンパク質の細胞内シグナル伝達を調節する。したがって、CD112に対する本発明の阻害物質は、CD112の細胞内シグナル伝達を調節すると想定される。CD155に対する本発明の阻害物質は、CD155の細胞内シグナル伝達を調節すると想定される。TIGITに対する本発明の阻害物質は、TIGITの細胞内シグナル伝達を調節すると想定される。ガレクチン-9に対する本発明の阻害物質は、ガレクチン-9の細胞内シグナル伝達を調節すると想定される。TIM-3に対する本発明の阻害物質は、TIM-3の細胞内シグナル伝達を調節すると想定される。
【0014】
追加の態様では、本発明は、CD112(ネクチン-2、PVRL2)、CD155(PVR)、ガレクチン-9、TIM-3、及び/またはTIGITに対する阻害物質と、CAR T細胞とを含む医薬組成物に関する。CD112(ネクチン-2、PVRL2)、CD155(PVR)、ガレクチン-9、TIM-3、及び/またはTIGITに対する当該阻害物質は、抗体構築物であり得る。
【0015】
追加の態様では、CD112(ネクチン-2、PVRL2)、CD155(PVR)、ガレクチン-9、TIM-3、及び/またはTIGITに対する阻害物質と、T細胞と会合する能力を有する抗体構築物とを含む医薬組成物が提供される。T細胞と会合する能力を有する当該抗体構築物は、CD3結合ドメインと、AML細胞上に発現した表面分子を標的とする追加の結合ドメインとを含み得る。
【0016】
本明細書で使用される「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」という単数形は、別段の記載がない限り、複数の参照を含むことに留意されなくてはならない。したがって、例えば、「試薬」に対する参照は、1つまたは複数のそのような異なる試薬を含み、「方法」に対する参照は、本明細書に記載の方法のための改変またはそれとの置き換えが可能な、当業者に知られる同等の段階及び方法に対する参照を含む。
【0017】
別段の記載がない限り、一連の要素に先行する「少なくとも」という用語は、一連の各要素を指すと理解されることになる。当業者であれば、単に日常の実験法を使用するだけで、本明細書に記載の発明の特定の実施形態に対する多くの同等形態を認識するか、または思いつくことが可能であろう。そのような同等形態は、本発明によって包含されることが意図される。
【0018】
本明細書で使用される「及び/または」という用語は、記載箇所を問わず、「及び」、「または」、及び「当該用語によって連結される要素のすべてまたは任意の他の組み合わせ」という意味を含む。
【0019】
本明細書で使用される「約(about)」または「約(approximately)」という用語は、所与の値または範囲の20%以内を意味し、好ましくは、10%以内、及びより好ましくは、5%以内を意味する。しかしながら、当該用語は、具体的な数字も含み、例えば、約20は、20を含む。
【0020】
「未満」または「超」という用語は、具体的な数を含む。例えば、20未満は、以下を意味する。同様に超(more than)または超(greater than)は、それぞれ以上(more than or equal to)または以上(greater than or equal to)を意味する。
【0021】
本明細書及び後に続く特許請求の範囲を通じて、別段の記載がない限り、「含む(comprise)」という言葉、ならびに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」などの変形形態は、記載の整数もしくは段階、または整数もしくは段階の群を含むが、任意の他の整数もしくは段階、または整数もしくは段階の群を除外しないことを暗示すると理解されることになる。本明細書で使用されるとき、「含む(comprising)」という用語は、「含む(containing)」もしくは「含む(including)」という用語で置き換えることができ、または本明細書での使用によっては、「有する」という用語で置き換えることができる。
【0022】
本明細書で使用されるとき、「からなる」は、請求要素において特定されない要素、段階、または成分をいずれも除外する。本明細書で使用されるとき、「から本質的になる」は、請求の基礎及び新規の特性に実質的に影響を与えない材料または段階を除外しない。
本明細書のそれぞれの実例では、「含む」、「から本質的になる」、及び「からなる」という用語はいずれも、残りの二つの用語のいずれかで置き換えてよい。
【0023】
本発明は、本明細書に記載の特定の方法論、プロトコール、材料、試薬、及び物質等に限定されず、したがって変わり得るものであると理解されるべきである。本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態の説明のみを目的としており、本発明の範囲の限定は意図されず、本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0024】
本明細書の文章を通じて引用される刊行物及び特許(特許、特許出願、科学的刊行物、製造者の仕様書、説明書等をすべて含む)はすべて、記載箇所を問わず、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。先行発明であるという理由によって、そのような開示に先行する権利が本発明に付与されないことを本明細書の記載内容が認めると解釈されることにはならない。参照によって組み込まれる材料が本明細書と矛盾または一致しない範囲では、本明細書が任意のそのような材料に優先することになる。
【0025】
最後に、本明細書に開示の本発明の実施形態は、本発明の原理の例示であると理解されることになる。用いられ得る他の改変は、本発明の範囲に入る。したがって、例として、限定はされないが、本明細書の教示内容に従って本発明の代替形態を利用してよい。したがって、本発明は、詳細に示され説明されるものに限定されない。
[本発明1001]
血液由来のがん、具体的には急性骨髄性白血病(AML)の治療方法における使用を目的とする、CD112(ネクチン-2、PVRL2)、CD155(PVR)、ガレクチン-9、TIM-3、及び/またはTIGITに対する阻害物質。
[本発明1002]
CD112に対する前記阻害物質が、CD112とTIGITとの間の相互作用を阻害する、本発明1001の使用による阻害物質。
[本発明1003]
CD155に対する前記阻害物質が、CD155とTIGITとの間の相互作用を阻害する、本発明1001の使用による阻害物質。
[本発明1004]
TIGITに対する前記阻害物質が、TIGITとCD112との間の相互作用を阻害する、本発明1001の使用による阻害物質。
[本発明1005]
TIGITに対する前記阻害物質が、TIGITとCD155との間の相互作用を阻害する、本発明1001の使用による阻害物質。
[本発明1006]
ガレクチン-9に対する前記阻害物質が、ガレクチン-9とTIM-3との間の相互作用を阻害する、本発明1001の使用による阻害物質。
[本発明1007]
TIM-3に対する前記阻害物質が、TIM-3とガレクチン-9との間の相互作用を阻害する、本発明1001の使用による阻害物質。
[本発明1008]
抗体構築物である、前記本発明のいずれかの使用による阻害物質。
[本発明1009]
CAR T細胞をさらに含む、前記本発明のいずれかの使用による阻害物質。
[本発明1010]
T細胞と会合する(engage)能力を有する抗体構築物をさらに含む、本発明1001~1008のいずれかの使用による阻害物質。
[本発明1011]
免疫賦活剤をさらに含む、前記本発明のいずれかの使用による阻害物質。
[本発明1012]
前記抗体構築物が、CD3結合ドメインと、AML細胞上に発現した表面分子を標的とする追加の結合ドメインとを含む、本発明1010の使用による阻害物質。
[本発明1013]
前記表面分子が、CD33、CD19、及びFlt3からなる群から選択される、本発明1012の使用による阻害物質。
[本発明1014]
前記抗体構築物が、CD3イプシロンに結合する能力を有する結合分子である、本発明1010の使用による阻害物質。
[本発明1015]
CD112に対する前記阻害物質が、CD112の発現を低減する、本発明1001の使用による阻害物質。
[本発明1016]
CD155に対する前記阻害物質が、CD155の発現を低減する、本発明1001の使用による阻害物質。
[本発明1017]
TIGITに対する前記阻害物質が、TIGITの発現を低減する、本発明1001の使用による阻害物質。
[本発明1018]
ガレクチン-9に対する前記阻害物質が、ガレクチン-9の発現を低減する、本発明1001の使用による阻害物質。
[本発明1019]
TIM3に対する前記阻害物質が、TIM-3の発現を低減する、本発明1001の使用による阻害物質。
[本発明1020]
iRNAである、本発明1015~1019のいずれかの阻害物質。
[本発明1021]
CD112、CD155、TIGIT、ガレクチン-9、及び/またはTIM-3をノックアウトする、本発明1015~1019のいずれかの阻害物質。
[本発明1022]
前記ノックアウトがCRISPR/cas9手法によって達成される、本発明1021の阻害物質。
[本発明1023]
CD112に対する前記阻害物質が、CD112の細胞内シグナル伝達を調節する、本発明1001の使用による阻害物質。
[本発明1024]
CD155に対する前記阻害物質が、CD155の細胞内シグナル伝達を調節する、本発明1001の使用による阻害物質。
[本発明1025]
TIGITに対する前記阻害物質が、TIGITの細胞内シグナル伝達を調節する、本発明1001の使用による阻害物質。
[本発明1026]
ガレクチン-9に対する前記阻害物質が、ガレクチン-9の細胞内シグナル伝達を調節する、本発明1001の使用による阻害物質。
[本発明1027]
TIM-3に対する前記阻害物質が、TIM-3の細胞内シグナル伝達を調節する、本発明1001の使用による阻害物質。
[本発明1028]
CD112(ネクチン-2、PVRL2)、CD155(PVR)、ガレクチン-9、TIM-3、及び/またはTIGITに対する阻害物質と、CAR T細胞とを含む、医薬組成物。
[本発明1029]
前記阻害物質が抗体構築物である、本発明1028の医薬組成物。
[本発明1030]
CD112(ネクチン-2、PVRL2)、CD155(PVR)、ガレクチン-9、TIM-3、及び/またはTIGITに対する阻害物質と、T細胞と会合する能力を有する抗体構築物とを含む、医薬組成物。
[本発明1031]
前記抗体構築物が、CD3結合ドメインと、AML細胞上に発現した表面分子を標的とする追加の結合ドメインとを含む、本発明1029の医薬組成物。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】異なるAML細胞株でのPVR、PVRL2、及びガレクチン-9のタンパク質発現を健康なドナーに由来するPBMCのものと比較したものを示す。タンパク質の発現は、FACSによって決定した。調べたAML細胞株はすべて、PVR及びPVRL2のタンパク質発現に対してほぼ100%陽性である。対照的に、健康なドナーに由来するPBMCでは、その52%及び40%のみが、それぞれPVR及びPVRL2を発現する。PVR及びPVRL2のタンパク質密度(MFIによる想定)は、PBMCでは非常に低密度であるのと比較して非常に高い。ガレクチン-9のタンパク質発現及び密度は低く、健康なドナーに由来するPBMCのものと同等である。左カラムは、PVRの発現を示し、中央カラムは、PVRL2の発現を示し、右カラムは、ガレクチン-9の発現を示す。
図2】AML患者の初代芽球によるPVR及びPVRL2のタンパク質発現を示す。デノボAML患者のMNCを単離し、それぞれCD33とPVRまたはPVRL2とを同時染色した。CD33集団の中でPVRまたはPVRL2の陽性細胞が占める割合がここでは示される。左カラムは、PVRL2の発現を示し、右カラムは、PVRの発現を示す。
図3】PVRに対する遮断抗体及びPVRL2に対する遮断抗体をAMG330と組み合わせて使用し、PBMCに由来する細胞傷害性を測定したインビトロアッセイを示す。
図4】細胞傷害性アッセイ(細胞株MV441)においてPVR遮断抗体が殺傷を増進することを示す。PVR遮断抗体であるD171は、24時間後に用量依存的様式で細胞の殺傷を有意に増進する。下のグラフは実験1を示し、上のグラフは実験2を示す。
図5】PVRの遮断がMV4-11細胞の細胞溶解の有意な増加につながることを示す。PVR-Abは、AMG330単独と同等の作用を有する。AMG330とPVR-Abとの組み合わせでは、相加作用を見ることができる。
図6】細胞傷害性アッセイ(細胞株KG-1)においてPVR遮断抗体が殺傷を増進することを示す。PVR遮断抗体であるD171は、24時間後に用量依存的様式で細胞の殺傷を有意に増進する。下のグラフは実験1を示し、上のグラフは実験2を示す。
図7】PVRの遮断がKG-1細胞の細胞溶解の有意な増加につながることを示す。PVR-Abは、AMG330単独と同等の作用を有する。AMG330とPVR-Abとの組み合わせでは、相加作用を見ることができる。
図8】細胞傷害性アッセイ(細胞株MV4-11)においてPVRL2遮断抗体が殺傷を増進することを示す。PVRL2抗体であるL-14は、24時間後に細胞の殺傷を有意に増進する。下のグラフは、実験2を示し、上のグラフは、実験1を示す。
図9】PVRL2の遮断がMV4-11細胞の細胞溶解の有意な増加につながることを示す。AMG330とPVRL2-Abとの組み合わせでは、相加作用を見ることができる。
図10】細胞傷害性アッセイ(細胞株Kasumi-1)においてPVRL2遮断抗体が殺傷を増進することを示す。PVRL2抗体であるL-14は、24時間後に細胞の殺傷を有意に増進する。下のグラフは、実験1を示し、中央のグラフは、実験3を示し、上のフラフは、実験2を示す。
図11】PVRL2の遮断がKasumi-1細胞の細胞溶解の有意な増加につながることを示す。PVRL2-Abは、AMG330単独の処理と比較して、細胞溶解に対して類似の作用を誘起する。AMG330とPVRL2-Abとの組み合わせでは、相加作用を見ることができる。
図12】細胞傷害性アッセイ(細胞株UKE-1)においてPVRL2遮断抗体が殺傷を増進することを示す。PVRL2抗体であるL-14は、24時間後に細胞の殺傷を有意に増進する。下のグラフは、実験2を示し、上のグラフは、実験1を示す。
図13】AMG330とPVRL2遮断抗体との両方を組み合わせると、UKE-1における細胞傷害性に有意な増加が生じることを示す。
図14】ガレクチン-9の遮断がMV4-11細胞の細胞溶解の有意な増加につながることを示す。AMG330と9M1-3-Abとの組み合わせでは、相加作用を見ることができる。
図15】ガレクチン-9の遮断がKG-1細胞の細胞溶解の有意な増加につながることを示す。AMG330と9M1-3-Abとの組み合わせでは、相加作用を見ることができる。
図16】PVR及びPVRL2がAML細胞株及び初代CD33AML芽球に高度に発現することを示す。AML細胞株(n=8;A、B)及び未治療患者に由来するCD33AML芽球(n=17;C、D)での、CD33陽性細胞に占める割合、ならびに発現強度の尺度としての蛍光強度比率の中央値によって、PVR及びPVRL2のタンパク質発現が示される。黒の破線は、中央値を示す。
図17】PVR及びPVRL2の遮断がAML細胞株の溶解を増加させることを示す。AML細胞株であるMV4-11(A)、TF-1(B)、Molm-13(C)、Kasumi-1(D)のHD-PBMC媒介性の溶解を24時間後に測定した。結果は、遮断抗体無しの対照に基準化した死滅標的細胞の変化倍率(FC)の平均値±SDとして示される。統計解析には、マン・ホイットニーのU検定を実施した(#p≦0.05;p≦0.001;n≧3)。
図18】BiTE(登録商標)抗体構築物であるAMG330のT細胞媒介性の溶解が、PVR遮断抗体及びPVRL2遮断抗体の追加添加によって有意に増進することを示す。PVRまたはPVRL2に対する遮断抗体の存在下または非存在下で、HD-PBMC及びAMG330と共にMV4-11細胞(A)、TF-1細胞(B)、Molm-13細胞(C)、Kasumi-1細胞(D)をインキュベートした。結果は、遮断抗体無しの対照に基準化した死滅標的細胞の変化倍率(FC)の平均値±SDとして示される。統計解析には、マン・ホイットニーのU検定を実施した(#p≦0.05、p≦0.001、n≧3)。
図19】PVRの遮断及びPVRL2の遮断による細胞溶解の増加が特異的であり、ADCCを介して媒介されないことを示す。A、Bでは、ADCCの寄与を除外するために、細胞株MV4-11(A)及び細胞株TF-1(B)を使用し、AMG330の追加添加を実施または実施せずに、CD3+T細胞と、同一の健康なドナーに由来するPBMCとの抗白血病作用の比較分析を実施した。結果は、死滅標的細胞の平均値±SDとして示される(n=2)。C、Dでは、AMG330の存在下または非存在下で、CD117を標的とする抗体の用量を漸増させてKasumi-1細胞をインキュベートした(n=2、+2μg/mL、++10μg/mL、+++50μg/mL)。結果は、対照に基準化した死滅標的細胞の変化倍率(FC)の平均値±SDとして示される。E、Fでは、HD-PBMCに存在するFcγ受容体をポリクローナルヒトIgGで飽和させたものと、飽和処理無しのHD-PBMCとを調製し、これらをMV4-11細胞に対するエフェクター細胞として使用して比較した。結果は、死滅標的細胞の平均値±SDとして示される(n=3)。
図20】PVRとPVRL2とをダブルノックアウトした細胞が抗体作用をインビトロで再現させ、ヒトT細胞で再構成されたNSGマウスの生存時間をインビボで延長させることを示す。Aでは、CRISPR/Cas9を使用することによって、PVRとPVRL2とをダブルノックアウトしたMV4-11のポリクローナル集団を産生させた。AMG330の存在下または非存在下で、MV4-11の野生型細胞またはダブルノックアウト細胞のいずれかをHD-PBMCと共に24時間インキュベートした。統計解析には、マン・ホイットニーのU検定を実施した(#p≦0.05、p≦0.001、n=3)。Bでは、MV4-11の野生型(WT)細胞またはPVRとPVRL2とをダブルノックアウト(KO)した細胞のいずれかを免疫不全NSGマウスに移植し、当該マウスをヒトT細胞で再構成した。プラセボ(WTはn=13及びKOはn=12)または15μg/kgのAMG330(WTはn=12及びKOはn=15)のいずれかを腹腔内に毎日投与して処理を実施した。ログ・ランク検定を実施した:WTプラセボとKOプラセボとの比較(p<0.001)、WT AMG330とKO AMG330との比較(p<0.001)、WTプラセボとWT AMG330との比較(p=0.003)、KOプラセボとKO AMG330との比較(p=0.027)。Cは、CRISPR/Cas9で産生させたノックアウト細胞の増殖能力を示す。MV4-11のPVRとPVRL2とをダブルノックアウトした細胞の増殖速度を、MV4-11の野生型細胞の増殖能力と比較した。Vi-Cell(商標)XR自動細胞カウンター(Beckman Coulter)を使用し、2日目及び4日目に細胞数を測定した(n=3)。
図21】CRISPR/Cas9媒介性にPVRとPVRL2とをダブルノックアウトした細胞のゲノム解析を示す。MV4-11細胞におけるPVR及びPVRL2のCRISPR/Cas9媒介性のノックアウトをゲノムレベルで検証するために、サブクローニング及び配列決定によっていくつかの単一細胞の対応ゲノムセクションを解析した。タンパク質配列に対する影響を含む3つの異なるノックアウトクローンのゲノムにおける変化が、それぞれPVR(A)及びPVRL2(B)について示される。野生型配列が一番上に示され、標的部位は青、PAM配列は緑で示される。PVRL2については、標的領域及びPAM配列は、PVRL2のガイドRNAが認識する逆平行DNA鎖として逆相補的配向で示される。サブクローン内の欠失は赤の破線として示され、挿入は赤で示される。WT=野生型、KO=ダブルノックアウト、PAM=プロトスペーサー隣接モチーフ、AA=アミノ酸。
【発明を実施するための形態】
【0027】
詳細な説明
下記の説明は、本発表内容の理解に有用であり得る情報を含む。下記の説明は、本明細書で提供される情報のいずれかが、今回請求される発明に先行する技術もしくは関連技術であると認めるものではなく、または具体的もしくは暗示的に参照される刊行物のいずれかかが先行技術であると認めるものではない。
【0028】
本発明は、CD112(ネクチン-2、PVRL2)、CD155(PVR)、ガレクチン-9、TIM-3、及び/またはTIGITに対する免疫チェックポイント阻害物質が、血液由来のがん、具体的には免疫回避機構を有する急性骨髄性白血病(AML)の治療に効率的に使用することができ、それによってがん治療において新しくかつ非常に効率的な免疫療法的手法を提供するという驚くべき知見に少なくとも部分的に基づく。この点に関して、さまざまな白血病細胞株を用いたインビトロの試験において、免疫チェックポイントリガンドであるCD112及びCD155ならびにその受容体であるTIGIT、免疫チェックポイントリガンドであるガレクチン-9及びその受容体であるTIM-3が、血液由来のがん、具体的にはAMLの治療に非常に適した標的であることを発明者らは発見した。CD112及びCD155は、免疫チェックポイントタンパク質リガンドであり、一方、その受容体はTIGITである。ガレクチン-9もまたリガンドであり、TIM-3がその受容体である。
【0029】
免疫チェックポイントリガンドであるPVR及びPVRL2、ならびにその受容体であるTIGITが、AML患者における全生存に対して負の予後的影響を与えると思われることを本発明者らは見出した(データ未掲載)。さらに、本発明者らは、PVL、PVRL2、またはTIGITの遮断がAML細胞の有意な殺傷につながることを明らかにした(図3~13)。したがって、本発明者らは、血液由来のがんの治療、具体液には、AMLの治療における新たな標的としてPVR、PVRL2、及びTIGITに着目すると共に、PVR、PVRL2、及び/またはTIGITの免疫阻害性シグナルを効率的に阻害し、それによってT細胞の免疫機能の回復機構及び活性化機構を介してがん細胞の増殖を阻害する物質を提供する。さらに、免疫チェックポイントリガンドであるガレクチン-9及びその受容体であるTIM-3が、T細胞活性及び腫瘍発生に対して、正の予後的影響を与えると説明するデータと、負の予後的影響を与えると説明するデータとが当該技術分野において存在しており、データに矛盾が生じている。発現試験では、ガレクチン-9及びTIM-3ががん患者に対してむしろ正の予後的影響を与えるということが強調されるように思われるものの(データ未掲載)、本発明者らは、ガレクチン-9及びTIM-3の遮断がAML細胞の有意な殺傷につながることを明らかにした(図14及び15を参照のこと)。したがって、本発明は、ガレクチン-9/TIM-3の相互作用による免疫阻害性シグナルを効率的に阻害し、それによってT細胞の回復及び活性化を介してがん細胞の増殖を阻害する物質をさらに提供する。
【0030】
本発明者らが示すように、調べたAML細胞株はすべて、PVR及びPVRL2のタンパク質発現に対してほぼ100%陽性である。対照的に、健康なドナーに由来するPBMCでは、その52%及び40%のみが、それぞれPVR及びPVRL2を発現する(図1)。さらに、PVR及びPVRL2のタンパク質密度は、PBMCでは非常に低密度であるのと比較して非常に高い。さらに、ガレクチン-9のタンパク質発現及び密度は低く、健康なドナーに由来するPBMCのものと同等である。AMLの初代芽球もまた、PVR及びPVRL2のタンパク質発現を示す。したがって、デノボAML患者のMNCを単離し、それぞれCD33とPVRまたはPVRL2とを同時染色した。本明細書では、CD33集団の中でPVRまたはPVRL2の陽性細胞が占める割合を見ることができる(図2)。
【0031】
本明細書に開示されるように、PVR及びPVRL2とその受容体であるTIGITとの相互作用、ならびにガレクチン-9とその受容体であるTIM-3との相互作用は、免疫抑制性シグナルとして、または免疫阻害性シグナルとしてさえ作用し、したがってAMLにおいて免疫回避機構として機能する。前述の内容によれば、CD112、CD155、TIGIT、ガレクチン-9、及び/またはTIM-3に対する本発明の免疫チェックポイント阻害物質は、CD112とTIGITとの間の相互作用、CD155とTIGITとの間の相互作用、ならびに/またはガレクチン-9とTIM-3との間の相互作用を阻害または困難にすることになり、それによってがん特異的免疫応答を促進することが意図される。同様に、CD155に対する本発明の免疫チェックポイント阻害物質は、CD155とTIGITとの間の相互作用を阻害するか、またはCD155とTIGITとの間の相互作用をより困難にすることが意図される。また、TIGITに対する本発明の免疫チェックポイント阻害物質は、TIGITとCD112及び/またはCD155との間の相互作用を阻害するか、またはTIGITとCD112及び/またはCD155との間の相互作用をより困難にすることが意図される。さらに、ガレクチン-9に対する本発明の免疫チェックポイント阻害物質は、ガレクチン-9とTIM-3との間の相互作用を阻害するか、またはガレクチン-9とTIM-3との間の相互作用をより困難にすることが意図される。同様に、TIM-3に対する本発明の免疫チェックポイント阻害物質は、TIM-3とガレクチン-9との間の相互作用を阻害するか、またはTIM-3とガレクチン-9との間の相互作用をより困難にすることが意図される。
【0032】
本明細書で使用される「阻害する」または「阻害」という用語は、本発明の阻害物質が、標的タンパク質、すなわち、免疫チェックポイントリガンドであるCD112及びCD155、ならびにその受容体であるTIGIT、免疫チェックポイントリガンドであるガレクチン-9及び/またはその受容体であるTIM-3を遮断、部分的に遮断、妨害、低減(decrease)、抑制、低減(reduce)、または不活性化する能力を指す。したがって、「阻害する」という用語は、当該リガンドまたは受容体の活性の完全及び/または部分的な消失を包含し得ることを当業者であれば理解している。当該リガンドまたは受容体の活性は、リガンド/受容体タンパク質の活性部位への化合物の結合によって、または阻害される第1のタンパク質を活性化する第2のタンパク質の無能化などの他の手段によって抑制または阻害され得る。例えば、CD112とTIGITとの間の相互作用、CD155とTIGITとの間の相互作用、ならびにガレクチン-9とTIM-3との間の相互作用の完全及び/または部分的な阻害は、細胞溶解の顕著な増加、すなわち、血液由来のがんの標的細胞、具体的にはAMLの標的細胞の死滅細胞率の顕著な増加によって示され得る。
【0033】
本明細書で使用される「血液由来のがん」という用語は、具体的には白血病及びリンパ腫を含み、例えば、ホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫を含む。当該用語は、骨髄異形成症候群(MDS)及び多発性骨髄腫(MM)も含む。
【0034】
本出願の免疫チェックポイント阻害物質は、血液由来のがんの治療を目的として使用される他に、口腔がんまたは膵がんなどの固形腫瘍の治療にも使用され得る(Thijssen et al.(2015),Biochim Biophys 1855,235-247)。
【0035】
「急性骨髄性白血病(Acute myeloid leukemia)」は、急性骨髄球性白血病、急性骨肉腫性白血病(acute myelogenous leukemia)、急性顆粒球性白血病、急性非リンパ性白血病、または単に「AML」とも呼ばれ、一般に、骨髄におけるがん性の未成熟骨髄芽球、赤血球、または血小板の過剰産生及び/または蓄積によって典型的には特徴付けられる急性形態の白血病を指す。「急性」は、この白血病が、治療されなければ急速に進行し得、2~3ヶ月でおそらく致命的となるであろうことを意味する。「骨髄性」は、この白血病の発症源の細胞型を指す。AMLの症例のほとんどは、白血球(リンパ球以外)となるであろう細胞から生じるが、AMLには異なるサブタイプが存在する。AMLは、骨髄が発症源であるが、ほとんどの症例で、血液へと急速に移行する。本明細書で使用される「AML」という用語は、急性、難治性、及び再発性のAMLを含む。本明細書で使用される「難治性AML」という用語は、化学療法及び/または造血幹細胞移植(HSCT)などの、通常または標準のAML治療に対してAMLが抵抗性であることを意味し、すなわち、通常または標準のAML治療では、すべてのAML患者を最終的に治療することができないことを意味する。本明細書で使用される「再発性AML」という用語は、患者が寛解を享受した後、AML疾患の徴候及び症状が再発することを示す。例えば、化学療法及び/またはHSCTを使用する通常のAML治療の後、AML患者は、AMLの徴候または症状を伴うことなく寛解へと向かい得、2~3年間は寛解の状態にとどまるが、再発に苦しみ、再びAMLの治療が必要になる。本明細書で使用される「AML」という用語は、AMLを有する患者における微小残存病変(MRD)も含み、すなわち、治療の間、または治療後に患者が寛解状態にあるとき、少数のがん性骨髄系細胞が患者に残って存在することも含む。
【0036】
本明細書で使用されるとき、「免疫チェックポイント阻害物質」という用語は、免疫チェックポイントタンパク質であるCD112、CD155、TIGIT、ガレクチン-9、及び/またはTIM-3に対する作用に適しており、それによってCD112とTIGITとの間の相互作用による免疫阻害性シグナル、CD155とTIGITとの間の相互作用による免疫阻害性シグナル、ならびに/またはガレクチン-9とTIM-3との間の相互作用による免疫阻害性シグナルを阻害または抑制する任意の結合薬剤または化合物を指す。本明細書で使用されるとき、「免疫阻害性シグナル」という用語は、本発明の免疫チェックポイントリガンドと免疫チェックポイント受容体との間の相互作用であって、それによって、関与する腫瘍細胞に対する関与するT細胞の免疫活性を低減し、生物の免疫防御機構からの腫瘍細胞の回避を可能にする、相互作用を指す。したがって、CD112、CD155、TIGIT、ガレクチン-9、及び/またはTIM-3を標的とする本発明の阻害物質は、本発明の免疫チェックポイントリガンドと免疫チェックポイント受容体との間のこの免疫阻害性シグナルを阻害し、それによってT細胞による関与する腫瘍細胞の攻撃及び排除を可能にする。したがって、本発明の阻害物質は、本発明の免疫チェックポイントリガンドとその受容体との間の免疫阻害性シグナルを低減または阻害する能力を有する。したがって、本発明の阻害物質は、T細胞応答を活性化してがん細胞に向かわせることによって「免疫増強」活性を示す。具体的には、免疫増強活性を有する本発明の阻害物質は、CD112とTIGITとの間の免疫阻害性シグナルの強度を低減または阻害する能力を有する。本発明の免疫増強活性を有する阻害物質は、CD155とTIGITとの間の免疫阻害性シグナルの強度を低減または阻害する能力を有するとさらに想定される。本発明の免疫増強活性を有する阻害物質は、ガレクチン-9とTIM-3との間の免疫阻害性シグナルの強度を低減または阻害する能力を有するとさらに想定される。
【0037】
本発明によれば、それぞれの免疫チェックポイント標的タンパク質に対する本発明の免疫チェックポイント阻害物質の結合は、当該標的タンパク質の細胞内シグナル伝達を調節する。したがって、CD112に対する阻害物質は、CD112の細胞内シグナル伝達を調節すると想定される。同様に、CD155に対する阻害物質は、CD155の細胞内シグナル伝達を調節すると想定される。同様に、TIGITに対する阻害物質は、TIGITの細胞内シグナル伝達を調節すると想定される。同様に、ガレクチン-9に対する阻害物質は、ガレクチン-9の細胞内シグナル伝達を調節すると想定される。同様に、TIM-3に対する阻害物質は、TIM-3の細胞内シグナル伝達を調節すると想定される。本明細書で使用されるとき、「調節する」または「調節」という用語は、本発明の免疫チェックポイントタンパク質、すなわち、CD112、CD155、TIGIT、ガレクチン-9、及び/またはTIM-3の細胞内シグナルの増加、低減、あるいは変更を含む。この点に関して、この免疫チェックポイントタンパク質と直結する細胞内シグナル経路は、増進、妨害、または完全に阻止され得、それによって細胞の活性化、増殖、及び悪性増殖を含む、下流のシグナル伝達要素のレベル、量、及び/または活性に変化が生じる。
【0038】
本明細書に開示されるように、本発明のCD112、CD155、TIGIT、ガレクチン-9、及び/またはTIM-3に対する阻害物質は、血液由来のがん、具体的には急性骨髄性白血病(AML)の治療に使用することができる。血液由来のがんは、骨髄が発症源の血液細胞のがんであり、典型的には、白血病及びリンパ腫が含まれる。血液由来のがんの症例では、骨髄は、正常な血液細胞を締め出す異常な細胞を造り始める。同様に、本明細書に開示の阻害物質は、腫瘍細胞でのCD112、CD155、及び/またはガレクチン-9の発現増加によって特徴付けられる任意の種類の血液由来のがんの治療に特に有用である。具体的には、本明細書に開示の阻害物質は、によって特徴付けられる任意の種類の血液由来のがんの治療に特に有用である。したがって、本発明の阻害物質は、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、骨髄異形成症候群(MSまたは脊髄形成異常症)、及び骨髄増殖性新生物(myeloproliferative neoplasm)(MPN)などの腫瘍細胞でのCD112、CD155、及び/またはガレクチン-9の発現増加によって特徴付けられる他の血液由来のがんの治療にも使用し得ると想定される。本発明の阻害物質は、CD112、CD155、及び/またはガレクチン-9の発現増加によって特徴付けられる固形腫瘍の治療に使用することができるとさらに想定される。この点に関して、本明細書に開示の阻害物質は、腫瘍細胞上に発現した免疫チェックポイントリガンドであるCd112、CD155、及び/またはガレクチン-9と、本明細書の他の箇所に記載のT細胞上に発現したその免疫チェックポイント受容体であるTIGIT及びTIM-3と、の間の相互作用に使用することができる。
【0039】
本発明においてさまざまな白血病細胞株を対象としたFACS分析及びインビトロの細胞傷害性アッセイ試験によって示されるように、PVRに対する抗体及びPVRL2に対する抗体は、こうした免疫チェックポイントリガンドの遮断に非常に適しており、それによってAML細胞の細胞溶解を有意に増加させる(図3~13)。したがって、本発明の阻害物質は、抗体構築物であることが好ましい。本開示の意味における「抗体構築物」という用語は、本発明の免疫チェックポイント分子に(特異的に)結合する能力、それと(特異的に)相互作用する能力、またはそれを(特異的に)認識する能力を有する、抗体に基づく「結合分子」または「結合薬剤」を示す。抗体構築物は、AMLがん標的細胞に存在する表面分子、またはT細胞に存在する受容体複合体と結合/相互作用することができる。好ましい結合分子は、抗体である。
【0040】
「抗体」という用語は、構造及び/または機能が、例えば、全長免疫グロブリン分子または全免疫グロブリン分子といった抗体の構造及び/または機能に基づく分子を指す。本発明によれば、血液由来のがん、具体的にはAMLの治療における使用を目的とする抗体は、本発明の免疫チェックポイントリガンドと免疫チェックポイント受容体との間の相互作用を特異的に阻害する阻害抗体である。この点に関して、本明細書に開示の抗体は、CD112とTIGITとの間の相互作用を特異的に阻害すると想定される。本明細書に開示の抗体は、CD155とTIGITとの間の相互作用を特異的に阻害するとも想定される。本明細書に開示の抗体は、ガレクチン-9とTIM-3との間の相互作用を特異的に阻害するとさらに想定される。具体的には、本発明の免疫チェックポイントリガンドと免疫チェックポイント受容体との間の相互作用を阻害するとき、本発明の抗体は、CD112/TIGIT間、CD55/TIGI間、及び/またはガレクチン-9/TIM-3間の免疫阻害性相互作用を阻害し、それによってリガンド-受容体相互作用のシグナルを阻害する。したがって、本明細書に開示の抗体は、それ自体が本発明の免疫チェックポイントリガンドまたは免疫チェックポイント受容体に結合し、当該リガンドと受容体との間の免疫阻害性シグナルの獲得を、不可能ではないにしても、困難なものにする。前述の内容によれば、本発明の方法及び使用において有用な抗体の例には、抗CD112抗体、抗CD112抗体、抗TIGIT抗体、抗ガレクチン-9抗体、及び抗TIM-3抗体が含まれる。本発明に従って使用することができ、それによって本明細書の他の箇所に開示の免疫チェックポイントリガンドと免疫チェックポイント受容体との間の相互作用を阻害する膨大な数のさまざまな阻害抗体を当業者であれば知っている。
【0041】
「抗体」という用語の定義は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、ヒト化抗体、及びヒト抗体などの実施形態、ならびに数ある中でも特に、Fab断片のような抗体断片を含む。抗体の断片または誘導体には、F(ab’)断片、Fv断片、scFv断片、または他のV領域もしくはドメインとは独立して抗原もしくはエピトープに特異的に結合し、単に1つの可変ドメイン(VHH、VH、またはVLであり得る)のみを含む、ドメイン抗体もしくはナノボディ(nanobody)、単一可変ドメイン抗体もしくは免疫グロブリン単一可変ドメインなどの単一ドメイン抗体がさらに含まれる。例えば、前出のHarlow and Lane(1988)and(1999)、Kontermann and Dubel,Antibody Engineering,Springer,2nd ed.2010、及びLittle,Recombinant Antibodies for Immunotherapy,Cambridge University Press 2009を参照のこと。そのような免疫グロブリン単一可変ドメインには、単離された抗体単一可変ドメインポリペプチドだけでなく、抗体単一可変ドメインポリペプチド配列の1つまたは複数の単量体を含む、より大きなポリペプチドも含まれる。上記の定義による1価の抗体断片は、本発明と関連する結合ドメインの1つの実施形態を説明するものである。そのような1価の抗体断片は、特定の抗原に結合するものであり、「抗原結合ドメイン」、「抗原結合断片」、または「抗体結合領域」と呼ぶこともできる。
【0042】
本明細書で提供されるこの定義によれば、抗体という用語は、「抗体構築物」という用語に包含され得る。当該用語は、ダイアボディ(diabody)または二重親和性再標的指向化(Dual-Affinity Re-Targeting)(DART)抗体も含む。(二重特異性)単鎖ダイアボディ、タンデム型ダイアボディ(Tandab’s)、「ミニボディ」がさらに想定され、こうしたものは、下記の構造によって例示される:(VH-VL-CH3)、(scFv-CH3)、または(scFv-CH3-scFv)、「Fc DART」抗体及び「IgG DART」抗体、ならびにトリアボディ(triabody)などのマルチボディ(multibody)。免疫グロブリン単一可変ドメインには、単離された抗体単一可変ドメインポリペプチドだけでなく、抗体単一可変ドメインポリペプチド配列の1つまたは複数の単量体を含む、より大きなポリペプチドも含まれる。
【0043】
さまざまな手順が当該技術分野において知られており、そのような抗体構築物(抗体及び/または断片)の産生に使用してよい。したがって、(抗体)誘導体は、ペプチド模倣によって産生させることができる。さらに、単鎖抗体の産生について説明される手法(数ある中でも特に、米国特許第4,946,778号、前出のKontermann and Dubel(2010)、及び前出のLittle(2009)を参照のこと)を、選択ポリペプチドに特異的な単鎖抗体の産生に適応させることができる。また、ポリペプチドに特異的なヒト化抗体及び本発明の融合タンパク質を発現させるために遺伝子導入動物を使用してよい。モノクローナル抗体の調製には、細胞株の連続培養によって産生する抗体が得られる任意の手法を使用することができる。そのような手法の例には、ハイブリドーマ手法(Kohler and Milstein Nature 256(1975),495-497)、トリオーマ手法、ヒトB細胞ハイブリドーマ手法(Kozbor,Immunology Today 4(1983),72)、及びヒトモノクローナル抗体を産生させるためのEBV-ハイブリドーマ手法(Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.(1985),77-96)が含まれる。CD3イプシロンなどの、標的ポリペプチドのエピトープに結合するファージ抗体の効率を上げるために、BIAcoreシステムにおいて用いられる表面プラズモン共鳴を使用することができる(Schier,Human Antibodies Hybridomas 7(1996),97-105、Malmborg,J.Immunol.Methods 183(1995),7-13)。本発明の関連では、「抗体」という用語は、抗体構築物を含むことも想定され、こうした抗体構築物は、本明細書で後述される宿主において発現され得るものであり、例えば、数ある中でも特に、ウイルスまたはプラスミドベクターを介して遺伝子導入及び/または形質導入され得る抗体構築物である。
【0044】
さらに、本明細書で用いられる「抗体」という用語は、記載の抗体と同一の特異性を示す、本明細書に記載の抗体の誘導体またはバリアントにも関する。「抗体バリアント」の例には、非ヒト抗体のヒト化バリアント、「親和性成熟」抗体(例えば、Hawkins et al.J.Mol.Biol.254,889-896(1992)及びLowman et al.,Biochemistry 30,10832-10837(1991)を参照のこと)、ならびにエフェクター機能が変更された抗体変異体(例えば、米国特許第5,648,260号、前出のKontermann and Dubel(2010)、及び前出のLittle(2009)を参照のこと)が含まれる。
【0045】
本明細書で使用されるとき、「抗原結合ドメイン」、「抗原結合断片」、及び「抗体結合領域」という用語は、抗体と抗原との間の特異的結合に関与するアミノ酸を含む、抗体分子の一部分を指す。抗体が特異的に認識して結合する抗原の一部分は、本明細書で上に記載される「エピトープ」と称される。上述のように、抗原結合ドメインは、典型的には、抗体軽鎖可変領域(VL)及び抗体重鎖可変領域(VH)を含み得るが、両方を含む必要はない。Fd断片は、例えば、2つのVH領域を有し、未変化の抗原結合ドメインの抗原結合機能を幾分か保持することが多い。抗体の抗原結合断片の例には、(1)VLドメイン、VHドメイン、CLドメイン、及びCH1ドメインを有する1価の断片であるFab断片、(2)ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を有する2価の断片であるF(ab’)2断片、(3)2つのVHドメイン及びCH1ドメインを有するFd断片、(4)抗体の単一アームのVLドメイン及びVHドメインを有するFv断片、(5)dAb断片(Ward et al.,(1989)Nature 341:544-546)(VHドメインを有する)、(6)単離された相補性決定領域(CDR)、ならびに(7)単鎖Fv(scFv)が含まれる。Fv断片の2つのドメインであるVL及びVHは、別々の遺伝子によってコードされるが、組換えの方法を使用し、それらをVL領域とVH領域とが対になって1価の分子を形成する単一のタンパク質鎖にすることが可能な合成リンカーによって、それらを連結することができる。(単鎖Fv(scFv)として知られ、例えば、Huston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci USA 85:5879-5883を参照のこと)。こうした抗体断片は、当業者に知られる通常の手法を使用して得られ、断片は、未変化の抗体と同一の様式で機能が評価される。
【0046】
(合成)リンカーが使用される場合、このリンカーは、好ましくは、第1のドメイン及び第2のドメインのそれぞれがお互いに独立してその異なる結合特異性を確実に保持し得るために十分な長さ及び配列を有する。最も好ましくは、添付の実施例に記載されるように、本発明の抗体構築物は、「二重特異性単鎖抗体構築物」であり、より好ましくは、二重特異性単鎖Fv(scFv)である。二重特異性単鎖分子は、当該技術分野において知られており、WO99/54440、Mack,J.Immunol.(1997),158,3965-3970、Mack,PNAS,(1995),92,7021-7025、Kufer,Cancer Immunol.Immunother.,(1997),45,193-197、Loffler,Blood,(2000),95,6,2098-2103、Bruhl,Immunol.,(2001),166,2420-2426、Kipriyanov,J.Mol.Biol.,(1999),293,41-56において説明されている。本発明と関連してCD33を標的とする化合物は二重特異性単鎖分子であり、その例の1つは、AMG330であり、これは、添付の実施例においても使用されている。AMG330の配列は、WO2008/119567において最初に説明された。本明細書に記載の抗体構築物に含まれる当該可変ドメインは、追加のリンカー配列によって連結され得る。本発明による「ペプチドリンカー」という用語は、本発明の抗体構築物の第1のドメインのアミノ酸配列と第2のドメインのアミノ酸配列とがお互いに連結されるアミノ酸配列を定義する。そのようなペプチドリンカーに必須の技術特徴は、当該ペプチドリンカーがどのような重合活性も含まないことである。ペプチドリンカーに好ましいアミノ酸残基には、Gly、Ser、及びThrが含まれ、5~25残基のアミノ酸長によって特徴付けられる。適したペプチドリンカーには、米国特許第4,751,180号及び同第4,935,233号、またはWO88/09344において説明されるものが含まれる。ペプチドリンカーの好ましい実施形態は、Gly-Gly-Gly-Gly-Serというアミノ酸配列、すなわちGlySer(SEQ ID NO:9)またはそのポリマー、すなわち(GlySer)x(xは、1以上の整数(例えば、2または3)である)によって特徴付けられる。このリンカー配列の変種も好ましく、このリンカー配列には、
などの例が含まれる。当該ペプチドリンカーの特徴は、二次構造形成を促進しないことである。こうした特徴は、当該技術分野において知られており、例えば、Dall’Acqua et al.(Biochem.(1998)37,9266-9273)、Cheadle et al.(Mol Immunol(1992)29,21-30)、及びRaag and Whitlow(FASEB(1995)9(1),73-80)において説明されている。どのような二次構造形成も促進しないペプチドリンカーが好ましい。当該ドメインのお互いの連結は、例えば、実施例に記載のように、遺伝子工学によってなし得る。融合し、機能可能なように連結された二重特異性単鎖構築物の調製方法、及び哺乳動物細胞または細菌におけるその発現方法は、当該技術分野においてよく知られている(例えば、WO99/54440、またはSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,2001)。
【0047】
ペプチドリンカーは、本発明の抗体構築物において少なくとも2つの結合ドメインを連結し、こうしたペプチドリンカーには、アミノ酸残基を少数のみ含むペプチドリンカーが好ましく、そのアミノ酸残基数は、例えば、12以下である。したがって、アミノ酸残基数が、12、11、10、9、8、7、6、または5であるペプチドリンカーが好ましい。有するアミノ酸残基数が4以下の想定ペプチドリンカーが含むアミノ酸残基数は、4、3、2、または1であり、Gly含量が高いリンカーが好ましい。当該「ペプチドリンカー」との関連において特に好ましい「単一」アミノ酸は、Glyである。したがって、当該ペプチドリンカーは、単一のアミノ酸であるGlyからなり得る。
【0048】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られた抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、天然に生じる可能性のある、少量存在し得る変異及び/または翻訳後修飾(例えば、異性化、アミド化)を除いて同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原部位を標的としている。さらに、典型的には異なる決定基(エピトープ)を標的とする異なる抗体を含む通常の(ポリクローナル)抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体はそれぞれ、抗原に存在する単一の決定基を標的とする。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマの培養によってそれが合成され、他の免疫グロブリンが混入しないという点において有利である。「モノクローナル」という修飾語句は、実質的に均一な抗体集団から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体産生が必要になると解釈されることにはならない。例えば、本発明に従って使用されることになるモノクローナル抗体は、Kohler et al.,Nature,256:495(1975)によって最初に説明されたハイブリドーマ法によって調製され得るか、または組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照のこと)によって調製され得る。「モノクローナル抗体」は、例えば、Clackson et al.,Nature,352:624-628(1991)、及びMarks et al.,J.Mol.Biol.,222:581-597(1991)において説明される手法を使用し、ファージ抗体ライブラリーからも単離され得る。
【0049】
「ヒト抗体」という用語は、例えば、Kabat et al.(前出のKabat et al.(1991)を参照のこと)によって説明されるものを含む、当該技術分野において知られるヒト生殖系列の免疫グロブリン配列に実質的に対応する可変領域及び定常領域を有する抗体を含む。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列の免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロの無作為もしくは部位特異的な変異導入またはインビボの体細胞変異によって導入される変異)を例えば、CDR、特に、CDR3に含み得る。ヒト抗体では、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、またはそれより多くの位置が、ヒト生殖系列の免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基と交換され得る。本明細書で使用されるヒト抗体の定義は、完全ヒト型抗体も企図し、こうした完全ヒト型抗体には、Xenomiceなどのシステムを使用する技術の使用によって得ることができるもののような、抗体のヒト配列が非人工的及び/または遺伝的に変わっただけのものが含まれることが強調される。
【0050】
「抗体バリアント」の例には、非ヒト抗体のヒト化バリアント、「親和性成熟」抗体(例えば、Hawkins et al.J.Mol.Biol.254,889-896(1992)及びLowman et al.,Biochemistry 30,10832-10837(1991)を参照のこと)、ならびにエフェクター機能が変更された抗体変異体(例えば、米国特許第5,648,260号、前出のKontermann and Dubel(2010)、及び前出のLittle(2009)を参照のこと)が含まれる。本明細書で使用される「インビトロで産生した抗体」は、可変領域(例えば、少なくとも1つのCDR)のすべてまたは一部が、非免疫細胞選択(例えば、インビトロのファージディスプレイ、タンパク質チップ、または候補配列の抗原への結合能力を試験することができる任意の他の方法)において産生する抗体を指す。したがって、免疫細胞におけるゲノム再編成によって産生した配列は、好ましくは、この用語から除外される。VHとVLとが共に対になることによって単一の抗原結合部位が形成される。VHに最も近いCHドメインは、CH1と呼ばれる。L鎖はそれぞれ、1つの共有ジスルフィド結合によってH鎖に連結され、一方、2つのH鎖は、H鎖のアイソタイプに応じて1つまたは複数のジスルフィド結合によってお互いに連結される。VHドメイン及びVLドメインは、フレームワーク領域と呼ばれる相対的に保存された配列の4つの領域(FR1、FR2、FR3、及びFR4)からなり、こうしたフレームワーク領域は、超可変配列(相補性決定領域、CDR)の3つの領域の骨格を形成する。CDRは、抗体と抗原との特異的相互作用に関与する残基のほとんどを含む。CDRは、CDR1、CDR2、及びCDR3と称される。したがって、重鎖に存在するCDR構成成分は、H1、H2、及びH3と称され、一方、軽鎖に存在するCDR構成成分は、L1、L2、及びL3と称される。
【0051】
「可変」という用語は、その配列において可変性を示し、特定の抗体の特異性及び結合親和性の決定に関与する、免疫グロブリンドメインの一部分を指す(すなわち、「可変ドメイン(複数可)」)。可変性は、抗体の可変ドメインを通じて均等には分布しておらず、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のそれぞれのサブドメインに集中している。こうしたサブドメインは、「超可変」領域または「相補性決定領域」(CDR)と呼ばれる。可変ドメインにおいて、より保存された(すなわち、非超可変)部分は、「フレームワーク」領域(FRM)と呼ばれる。天然に生じる重鎖及び軽鎖の可変ドメインはそれぞれ、3つの超可変領域によって連結された、大部分がβ-シートの立体配置をとる4つのFRM領域を含んでおり、こうした超可変領域は、β-シート構造を連結し、場合によっては、その一部を形成するループを形成する。それぞれの鎖における超可変領域はFRMによって近接近して一緒に束ねられ、もう一方の鎖に由来する超可変領域と共に抗原結合部位の形成に寄与する(前出のKabat et al.を参照のこと)。定常ドメインは、抗原結合に直接的には関与しないが、例えば、抗体依存性細胞介在性細胞傷害及び補体活性化などの、さまざまなエフェクター機能を示す。
【0052】
「CDR」、及びその複数形の「CDR」という用語は、そのうち3つが軽鎖可変領域の結合特性を構成(CDRL1、CDRL2、及びCDRL3)し、そのうち3つが重鎖可変領域の結合特性を構成(CDRH1、CDRH2、及びCDRH3)する相補性決定領域(CDR)を指す。CDRは、抗体分子の機能活性に寄与し、骨格領域またはフレームワーク領域を含むアミノ酸配列によって分離される。CDRの境界及び長さの正確な定義は、異なる分類及び番号付けシステムに依存する。したがって、CDRは、Kabat、Chothia、コンタクト(contact)、または本明細書に記載の番号付けシステムを含む、任意の他の境界定義によって称され得る。境界は異なるものの、こうしたシステムはそれぞれ、可変配列内にいわゆる「超可変領域」を構成するものにおいてある程度の重なりを有している。したがって、こうしたシステムによるCDRの定義は、隣接するフレームワーク領域に関して長さ及び境界域が異なり得る。例えば、Kabat、Chothia、及び/またはMacCallum(前出のKabat et al.、Chothia et al.,J.MoI.Biol,1987,196:901、及びMacCallum et al.,J.MoI.Biol,1996,262:732)を参照のこと。しかしながら、いわゆるKabatシステムによる番号付けが好ましい。軽鎖のCDR3、及び特に重鎖のCDR3は、軽鎖可変領域内及び重鎖可変領域内において抗原結合の最も重要な決定因子を構成し得る。いくつかの抗体構築物では、重鎖CDR3は、抗原と抗体との接触の主要領域を構成すると思われる。抗体の結合特性の変更、またはどの残基が抗原結合に寄与するかの決定に、CDR3単独を変化させるインビトロの選択スキームを使用することができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の結合分子は、単離されたタンパク質であるか、または実質的に純粋なタンパク質である。「単離された」タンパク質は、その天然の状態では通常つながりのある材料の少なくとも幾分かが取り除かれており、例えば、所与の試料において総タンパク質の少なくとも約5重量%、または少なくとも約50重量%を構成する。単離されたタンパク質は、状況に応じて、総タンパク質含量の5~99.9重量%を構成し得ると理解される。例えば、タンパク質は、そのタンパク質の濃度レベルが高まって調製されるように、誘導性プロモーターまたは高発現プロモーターの使用を介して濃度を顕著に高めて調製され得る。定義は、当該技術分野において知られる多種多様な生物及び/または宿主細胞における抗原結合タンパク質の産生を含む。
【0054】
本明細書に開示されるように、本発明の実験結果は、免疫チェックポイントであるCD112、CD155、TIGIT、ガレクチン-9、及びTIM-3を標的とする抗体の阻害作用を具体的に示している。しかしながら、CD112とTIGITとの間の免疫阻害性シグナル、CD155とTIGITとの間の免疫阻害性シグナル、ならびに/またはガレクチン-9とTIM-3との間の免疫阻害性シグナルを阻害することができる任意の他の物質が類似の作用を有することになる。そのような作用を有する物質には、例えば、可溶性CD112、可溶性CD155、可溶性TIGIT、可溶性ガレクチン-9、可溶性TIM-3、C112アンタゴニスト、CD155アンタゴニスト、TIGITアンタゴニスト、ガレクチン-9アンタゴニスト、TIM-3アンタゴニスト、CD112とTIGITとの間の相互作用、CD155とTIGITとの間の相互作用、ならびに/またはガレクチン-9とTIM-3との間の相互作用を阻害する物質、CD112産生阻害物質、CD155産生阻害物質、TIGIT産生阻害物質、TIGIT産生阻害物質、TIM-3産生阻害物質、ならびにTIGITまたはTIM-3による細胞内阻害性シグナル阻害物質が含まれる。
【0055】
したがって、本発明のCD112阻害物質、CD155阻害物質、TIGIT阻害物質、ガレクチン-9阻害物質、及び/またはTIM-3阻害物質には、タンパク質または非タンパク質である化合物または薬剤が含まれる。この点に関して、CD112、CD15、TIGIT、ガレクチン-9、及び/またはTIM-3に結合するタンパク質及びポリペプチドまたは誘導体には、D112、CD155、TIGIT、ガレクチン-9、またはTIM-3のそれぞれの部分的なタンパク質であって、CD112とTIGITとの間の免疫阻害性シグナル、CD155とTIGITとの間の免疫阻害性シグナル、ならびに/またはガレクチン-9とTIM-3との間の免疫阻害性シグナルを誘導しない、部分的なタンパク質が含まれる。TIGITまたはTIM-3の免疫阻害性シグナルの誘導には、免疫チェックポイント受容体の近傍にTIGITまたはTIM-3が存在することが不可欠であり、そのため、TIGITまたはTIM-3は、腫瘍またはがん細胞におけるCD112、CD155(TIGIT)、またはガレクチン-9(TIM-3)との相互作用によって支配されている。したがって、細胞外ドメインのみの部分でありTIGITまたはTIM-3と相互作用する部分を有する可溶性のCD112、CD155、またはガレクチン-9は、CD112、CD155、またはガレクチン-9の免疫阻害性シグナルを阻害することができる。一方、類似の構造を有する部分でありCD122、CD155、またはガレクチン-9と相互作用することができる部分を有する可溶性のTIGITまたはTIM-3は、免疫阻害性シグナルを阻害することができる。こうした可溶性タンパク質は、CD122、CD155、TIGIT、ガレクチン-9、またはTIM-3への結合に必要かつ十分な細胞外領域さえ含めばよく、よく知られた発現手法及び精製手法によって調製することができる。
【0056】
CD112、CD155、TIGIT、ガレクチン-9、またはTIM-3の相互作用阻害物質がタンパク質またはポリペプチドであり、相互作用に必須の領域が、ポリペプチドのみによって構成されると共に、相互作用に必須の領域が、連続したポリペプチドのみによって構成されるのであれば、そのようなポリペプチド断片は、相互アンタゴニスト(mutual antagonist)となり得る。さらに、このポリペプチド断片が化学的に改変された分子群、またはポリペプチド断片の空間構造に基づいてコンピュータによって設計された分子群から、活性が向上したアンタゴニストを同定することができる。また、タンパク質における相互作用領域の立体解析データに基づいてコンピュータによって設計された分子群から、最良のアンタゴニストを、より効率的に選択することができる。
【0057】
血液由来のがん、具体的には本明細書に開示のAMLの治療における使用を目的とする阻害物質は、小分子阻害物質であるとさらに想定される。「小分子」という用語は、低分子量を有する分子を意味し、典型的には、1000Da未満の分子量を有する分子を意味する。本明細書で使用されるそのような小分子は、通常は有機化学によって合成されるが、植物、真菌、及び微生物などの天然供給源からも単離し得る、低分子量を有する有益な薬剤を指す。本発明の範囲内で血液由来のがんの治療に使用されるとき、そのような小分子は、小分子薬物とも呼ばれる。小分子薬物の一般的な送達経路は、経口、注射、経肺、及び経皮である。
【0058】
CD112に対する本発明の阻害物質は、CD112の発現を低減するとさらに想定される。同様に、CD155に対する本発明の阻害物質は、CD155の発現を低減する。同様に、TIGITに対する本発明の阻害物質は、TIGITの発現を低減する。同様に、ガレクチン-9に対する本発明の阻害物質は、ガレクチン-9の発現を低減する。同様に、TIM-3に対する本発明の阻害物質は、TIM-3の発現を低減する。したがって、本明細書では、例えば、CD112、CD155、TIGIT、ガレクチン-9、及びTIM-3をコードする遺伝子といった標的遺伝子の発現の低減に適したアンチセンス分子を調製するための核酸配列(例えば、治療的核酸分子、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチドをコードするDNA、またはアンチセンスオリゴヌクレオチドを産生するベクター)の使用についてさらに開示される。本明細書で使用されるとき、「発現を低減する」という用語は、本発明の阻害物質が標的遺伝子、すなわち、CD112、CD155、TIGIT、ガレクチン-9、及びTIM-3をコードする遺伝子の発現を特異的かつ転写後の様式で低減または遮断する能力を指す。この点に関して、本発明は、がん細胞においてCD112、CD155、TIGIT、ガレクチン-9、及び/またはTIM-3の発現を低減する能力を有するヌクレオチドに関する。当該ヌクレオチドは、mRNAを標的とする配列によって特徴付けられ得ると共に、標的mRNAと少なくとも50%の配列同一性、または少なくとも70%の配列同一性、または少なくとも80%の配列同一性、または少なくとも90%の配列同一性を有することによって特徴付けられる。ヌクレオチドに基づく阻害物質を調製するために使用することのできるRNA配列がこの目的に特に有用である。約2残基のヌクレオチドの3’オーバーハングを有する21~23残基のヌクレオチドのRNA二本鎖(低分子干渉RNAまたはsiRNAと呼ばれる)は、RNA干渉(RNAi)と呼ばれる転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)機構を介して哺乳動物細胞における遺伝子発現の配列特異的な阻害を媒介することが示されている。したがって、RNAiは、疾患を引き起こす遺伝子のインビボのサイレンシングを介する最も有望な新規の治療方針の1つであると考えられる。したがって、本発明の好ましい実施形態では、CD112、CD155、TIGIT、ガレクチン-9、及び/またはTIM-3の発現を低減する能力を有するヌクレオチドは、RNAi(iRNA)である。RNAiの合成手法、及び例として、例えば、Santel et al.2006,Gene Therapy 13,1360-1370において説明されるリポソーム製剤を使用し、こうした構築物をインビボで腫瘍細胞に送達する手法を当業者であればいくつか知っている。この点に関して、二本鎖RNAは、関心対象の遺伝子に相補的な配列を用いて最初に合成されてから細胞または生物に導入され、その際、外来性の遺伝的材料として認識され、RNAi経路を活性化する。RNAiは、遺伝子の発現を完全に無効にはし得ないため、この手法は、遺伝子の発現を完全に排除する「http://en.wikipedia.org/wiki/Gene_knockout」の手順と区別するために、「遺伝子ノックダウン」と称されることがある。
【0059】
したがって、CD112、CD155、TIGIT、ガレクチン9、及び/またはTIM-3の発現を低減する本発明の阻害物質は、CD112、CD155、TIGIT、ガレクチン-9、及び/またはTIM-3をノックアウトするとさらに想定される。本明細書で使用されるとき、「ノックアウト」という用語は、野生型の動物と比較して、単一細胞、選択細胞、または哺乳動物のすべての細胞のCD112、CD155、TIGIT、ガレクチン-9、及び/またはTIM-3をコードする内在性遺伝子によってコードされるポリペプチドの少なくとも一部の発現が完全に低減されること指す。哺乳動物は、内在性遺伝子の一方の対立遺伝子が破壊された「ヘテロ接合体ノックアウト」であり得る。あるいは、哺乳動物は、内在性遺伝子の両方の対立遺伝子が破壊された「ホモ接合体ノックアウト」であり得る。CD112、CD155、TIGIT、ガレクチン-9、及び/またはTIM-3をコードする複数の遺伝子、好ましくは、2つの遺伝子が「ノックアウト」されることも想定される。この場合、哺乳動物は、「ダブルノックアウト」された哺乳動物である。本発明に従い、本発明者らは、CRISPR/Cas9手法を使用すると、AML細胞株においてPVR及びPVRL2を特異的にシングルノックアウトまたはダブルノックアウトできることを示した。したがって、本発明は、CD112、CD155、TIGIT、ガレクチン-9、及び/またはTIM-3をノックアウトする、CD112、CD155、TIGIT、ガレクチン-9、及び/またはTIM-3に対する阻害物質も示し、当該ノックアウトは、CRISPR/cas9手法によって達成される。しかしながら、血液由来のがん細胞、具体的にはAML細胞における免疫チェックポイントのノックアウトに適用可能なさまざまな異なる手法を当業者であれば知っている。したがって、本発明の範囲に入るノックアウト手法には、遺伝子の不活性化を生じさせる任意の遺伝子配列変更手法、または発生の間の選択した時期に発現を不活性化することができ、その結果、遺伝子機能の消失が生じる手法が含まれる。
【0060】
本発明の免疫チェックポイント阻害物質は、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞をさらに含み得る。CAR T細胞は、モノクローナル抗体の特異性がT細胞に移植されるように操作された受容体(キメラ抗原受容体)を提示し、そのコード配列の導入は、レトロウイルスベクターによって促進される。こうしたCARによって、腫瘍細胞に存在する特定のタンパク質(抗原)をT細胞が認識することが可能になる。本発明によれば、CAR T細胞は、好ましくは、血液由来のがん細胞に存在する特定のタンパク質をT細胞が認識することを可能にするCARを提示する。好ましくは、本発明のCAR T細胞は、血液由来のがん細胞の表面、具体的にはAML細胞の表面に存在するCD33を認識する能力を有する。この点に関して、CD33などの、血液由来のがん細胞上に発現した特定の表面分子を標的とするCAR T細胞を追加することによって、CD112、CD155、TIGIT、ガレクチン-9、及び/またはTIM-3に対する阻害物質の細胞傷害作用を増進することができる。したがって、CD112、CD155、TIGIT、ガレクチン-9、及び/またはTIM-3に対する本発明の阻害物質は、CAR T細胞を含むと想定される。当該CAR T細胞は、好ましくは、血液由来のがん細胞上、具体的にはAML細胞上に発現した表面分子を標的とする結合ドメインを含む。当該表面分子は、好ましくは、CD33、CD19、またはFlt3である。したがって、本発明の阻害物質は、CD33を標的とする結合ドメインを有するCAR T細胞を含み得る。本発明の阻害物質は、CD19を標的とする結合ドメインを有するCAR T細胞をさらに含み得る。本発明の阻害物質は、Flt3を標的とする結合ドメインを有するCAR T細胞も含み得る。当該表面分子を標的とする、いわゆる第1世代、第2世代、及び第3世代のCAR T細胞を産生させるさまざまな手法を当業者であれば知っている。
【0061】
いくつかの実施形態では、本明細書の他の箇所に記載の免疫チェックポイント阻害物質は、T細胞と会合する抗体構築物をさらに含み得る。T細胞と会合するそのような抗体構築物は、好ましくは、二重特異性のT細胞エンゲージャー(engager)(BiTE抗体構築物)であり、すなわち、T細胞抗原及び腫瘍抗原に結合する二重特異性抗体である。BiTE抗体構築物は、標的腫瘍細胞の指向化された溶解を誘導することが示されており、したがって、がん及び他の障害に対する大きな治療可能性を与えるものでもある。1つの可能な手法は、CD3と、シアル酸結合レクチンであるCD33とに対する二重特異性を有する、二重特異性のT細胞誘導抗体構築物であるAMG330であり、CD33は、AML芽球及び白血病幹細胞の表面での発現頻度が高いものである。AMG330は、急性骨髄性白血病(AML)の治療を目的として開発されたものであり、間もなく第I相試験にいて評価されることになる(Friedrich et al.2014,American Association for Cancer Research,1549-1557)。
【0062】
本発明による二重特異性T細胞エンゲージャーは、異なる抗体構築物の形式であり得、そのような形式には、例えば、ジ-scFvまたはビ(ス)-scFv、(scFv)-Fc、scFv-ジッパー、(scFab)、Fab、Fab、ダイアボディ、単鎖ダイアボディ、タンデム型ダイアボディ(Tandab’s)、タンデム型ジ-scFv、タンデム型トリ-scFv、「ミニボディ」が含まれ、こうしたものは、下記の構造によって例示される:(VH-VL-CH3)、(scFv-CH3)、((scFv)-CH3+CH3)、((scFv)-CH3)、または(scFv-CH3-scFv)、トリアボディまたはテトラボディなどのマルチボディ、及び他のV領域またはドメインとは独立して抗原またはエピトープに特異的に結合し、結合ドメインの1つまたは両方において単に1つの可変ドメイン(VHH、VH、またはVLであり得る)のみを含む、ナノボディまたは二重特異性の単一可変ドメイン抗体などの二重特異性の単一ドメイン抗体。T細胞誘導分子/二重特異性抗体に含まれる結合ドメインは、典型的には、抗体軽鎖可変領域(VL)及び抗体重鎖可変領域(VH)を含み得るが、両方を含む必要はない。Fd断片は、例えば、2つのVH領域を有し、未変化の抗原結合ドメインの抗原結合機能を幾分か保持することが多い。抗体断片、抗体バリアント、または結合ドメインの形式の追加の例には、(1)VLドメイン、VHドメイン、CLドメイン、及びCH1ドメインを有する1価の断片であるFab断片、(2)ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を有する2価の断片であるF(ab’)2断片、(3)2つのVHドメイン及びCH1ドメインを有するFd断片、(4)抗体の単一アームのVLドメイン及びVHドメインを有するFv断片、(5)dAb断片(Ward et al.,(1989)Nature 341:544-546)(VHドメインを有する)、(6)単離された相補性決定領域(CDR)、ならびに(7)単鎖Fv(scFv)が含まれ、好ましくは、後者である(例えば、scFVライブラリーから得られたもの)。本発明による抗体構築物の実施形態の例は、例えば、WO00/006605、WO2005/040220、WO2008/119567、WO2010/037838、WO2013/026837、WO2013/026833、US2014/0308285、US2014/0302037、WO2014/144722、WO2014/151910、及びWO2015/048272において説明されている。
【0063】
この点に関して、本発明者らは、AMG330も存在させて、PVR及びPVRL2を遮断することの治療作用をインビトロの殺傷アッセイにおいて試験した(図3~13)。それによって、AMG330がPVR遮断抗体及び/またはPVRL2遮断抗体の細胞傷害性を有意に増進し得ることが見出され、これは驚くべきことであった。したがって、CD112、CD155、TIGIT、ガレクチン-9、及び/またはTIM-3に対する本発明の阻害物質は、T細胞と会合する能力を有する抗体構築物をさらに含み得ると想定される。当該抗体構築物は、好ましくは、CD3結合ドメインと、血液由来のがん細胞上、具体的にはAML細胞上に発現した表面分子を標的とする追加の結合ドメインと、を含む。当該表面分子は、CD33、CD19、及びFlt3からなる群から選択される。前述の内容によれば、本発明は、血液由来のがん、具体的にはAMLの治療方法における使用を目的とする、CD112、CD155、ガレクチン-9、TIM-3、及び/またはTIGITに対する阻害物質を提供し、当該阻害物質は、CD3結合ドメイン及びCD33結合ドメインを有する、抗体構築物を含む。本発明は、血液由来のがん、具体的にはAMLの治療方法における使用を目的とする、CD112、CD155、ガレクチン-9、TIM-3、及び/またはTIGITに対する阻害物質をさらに提供し、当該阻害物質は、CD3結合ドメイン及びCD19結合ドメインを有する、抗体構築物を含む。本発明は、血液由来のがん、具体的にはAMLの治療方法における使用を目的とする、CD112、CD155、ガレクチン-9、TIM-3、及び/またはTIGITに対する阻害物質も提供し、当該阻害物質は、CD3結合ドメイン及びFlt3結合ドメインを有する、抗体構築物を含む。当該抗体構築物は、好ましくは、CD3イプシロンに結合する能力を有する結合分子である。
【0064】
したがって、CD33、CD19、またはFlt3を標的とする本明細書に記載の抗体構築物は、血液由来のがんの表面細胞に存在する細胞表面分子であるCD33、CD19、またはFlt3と、T細胞の細胞表面に存在するCD3と、に結合するその機能とは別に、追加の機能を有すると想定される。この形式では、化合物は、がんの標的細胞の細胞表面に存在するCD33、CD19、またはFlt3への結合を介して細胞を標的化し、CD3への結合を介して細胞傷害性T細胞の活性を媒介すると共に、追加の機能を提供することによって多機能性を有する化合物であり、こうした追加の機能は、NK細胞のようなエフェクター細胞の動員を介して抗体依存性細胞傷害を媒介する完全機能異性のFc定常ドメイン、アルブミン結合ドメインなどの半減期延長ドメイン、もしくは抗体依存性細胞傷害を欠くが、化合物の分子量を増加させる改変Fc定常ドメイン、標識(蛍光等)の媒介、例えば、毒素もしくは放射性核種などの治療薬剤の媒介、及び/または血中半減期の増進手段などである。血液由来のがんの標的細胞の表面に存在するCD33、CD19、またはFlt3と、T細胞の細胞表面に存在するCD3と、を標的とする二重特異性抗体構築物の例は、例えば、SEQ ID NO:15~37に示される分子である。
【0065】
本発明による「に結合する(能力を有する)」、「特異的に認識する」、「対する」、及び「と反応する」という用語は、結合ドメインが、1つまたは複数、好ましくは、少なくとも2残基、より好ましくは、少なくとも3残基、及び最も好ましくは、少なくとも4残基のアミノ酸のエピトープと特異的に相互作用する能力を有することを意味する。本明細書で使用される「特異的に相互作用する」、「特異的に結合する(specifically binding)」、または「特異的に結合する(specifically bind(s))」という用語は、結合ドメインが、特定のタンパク質または抗原に対して認識可能な親和性を示し、一般に、CD33、CD19、Flt3、またはCD3以外のタンパク質または抗原には顕著な反応性を示さないことを意味する。「認識可能な親和性」は、約10-6M(KD)またはそれより強い親和性を有する結合を含む。好ましくは、結合親和性が約10-12~10-8M、約10-12~10-9M、約10-12~10-10M、約10-11~10-8Mであり、好ましくは、約10-11~10-9Mであるとき、結合は特異的であると考えられる。結合ドメインが、標的と特異的に反応または結合するかどうかは、数ある中でも特に、当該結合ドメインと標的タンパク質または抗原との反応と、当該結合ドメインとCD33、CD19、Flt3、またはCD3以外のタンパク質または抗原との反応と、を比較することによって容易に試験することができる。好ましくは、本発明の結合ドメインは、CD33、CD19、Flt3、またはCD3以外のタンパク質または抗原に本質的に結合しないか、またはそれに結合する能力を有さない(すなわち、第1の結合ドメインは、CD33、CD19、またはFlt3以外のタンパク質に結合する能力を有さず、第2の結合ドメインは、CD3以外のタンパク質に結合する能力を有さない)。「本質的に結合しない」または「結合する能力を有さない」という用語は、本発明の結合ドメインが、CD33、CD19、Flt3、またはCD3以外の別のタンパク質または抗原に結合せず、すなわち、CD33、CD19、Flt3、またはCD3に対する結合をそれぞれ100%に設定した場合、CD33、CD19、Flt3、またはCD3以外のタンパク質または抗原との反応性が、30%以下であり、好ましくは、20%以下、より好ましくは、10%以下、特に好ましくは、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、または5%以下であることを意味する。CD33、CD19、またはFLT3を標的とする本明細書に記載の化合物は、追加のドメインも含み得、こうした追加のドメインは、例えば、分子の単離において役立つか、または分子の薬物動態プロファイルの適合と関連する。
【0066】
本明細書に記載のCD33、CD19、またはFLT3と、CD3とに結合する標的指向化化合物は、細菌において産生させることができる。発現の後、標的指向化化合物、好ましくは、抗体構築物は、可溶性画分においてE.coli細胞のペーストから単離され、例えば、親和性クロマトグラフィー及び/またはサイズ排除を介して精製することができる。最終的な精製は、例えば、CHO細胞において発現した抗体の精製プロセスと同様に実施することができる。原核生物に加えて、糸状菌または酵母などの真核微生物は、CD33、CD19、またはFLT3を標的とする本明細書に記載の化合物に適したクローニング宿主または発現宿主である。綿、トウモロコシ、ジャガイモ、ダイズ豆、ペチュニア、トマト、シロイヌナズナ(Arabidopsis)、及びタバコの植物細胞培養物も宿主として利用することができる。植物細胞培養におけるタンパク質の産生において有用なクローニングベクター及び発現ベクターは当業者に知られている。例えば、Hiatt et al.,Nature(1989)342:76-78、Owen et al.(1992)Bio/Technology 10:790-794、Artsaenko et al.(1995)The Plant J 8:745-750、及びFecker et al.(1996)Plant Mol Biol 32:979-986を参照のこと。
【0067】
本明細書に記載のCD112とTIGITとの相互作用、CD155とTIGITとのとの相互作用、ならびに/またはガレクチン-9とTIM-3との相互作用を阻害する物質は、直接的に選別することができる。そのような物質は、例えば、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチドもしくはポリヌクレオシド、非ペプチド化合物、有機合成化合物、または天然物(例えば、発酵産物、細胞抽出物、植物抽出物、及び動物組織抽出物)のライブラリーから同定することができる。したがって、本明細書では、血液由来のがん、具体的にはAMLの治療方法における使用を目的とする、CD112、CD155、TIGIT、ガレクチン-9、及び/またはTIM-3に対する阻害物質の選別方法がさらに開示される。記載の選別方法は、血液由来のがん細胞、具体的にはAML細胞の細胞機能の測定方法によって実行することができる。この点に関して、その表面にCD112、CD155、またはガレクチン-9を発現する細胞を選別方法に使用することができる。そのような細胞には、白血球、単球、マクロファージもしくは抗原提示細胞、上皮細胞、腫瘍細胞、がん細胞、またはそうしたものの細胞株が含まれる。
【0068】
本明細書では、免疫賦活剤を含む本発明の阻害物質がさらに開示される。本明細書で使用される「免疫賦活剤」という用語は、本発明の阻害物質の免疫増強作用を付加的に刺激し、それによって、関与する腫瘍細胞に対する関与するT細胞の細胞傷害活性を増進する任意のアジュバントを指す。がん患者は、その腫瘍細胞を攻撃する能力を有するT細胞を有しており、がん細胞の出現は、がん細胞の免疫監視の欠如であるという相当な証拠が存在する。免疫監視は、がん細胞が出現するとすぐにそれを破壊するための、自身の免疫系の能力である。免疫賦活剤は、体の免疫防御を整える非特異的な薬剤である。この点に関して、アジュバント様薬剤の腫瘍への直接注射、レバミソールを用いた経口治療、インターロイキン-2(IL-2)、T細胞の強力な増殖因子、インターロイキン-15(IL-15)、またはアルファ-インターフェロン(IFN-α)に関して成功事例がいくつか報告されているが、いくつか例を挙げたに過ぎない。
【0069】
本明細書に記載されるように、CD112、CD155、TIGIT、ガレクチン-9、及び/またはTIM-3に対する阻害物質は、血液由来のがん、具体的にはAMLの治療方法における使用に対する適性が高くあり得る。したがって、本発明は、血液由来のがん、具体的にはAMLに苦しむ対象の治療方法も本明細書に開示し、方法は、それを必要とする対象に対する、CD112、CD155、TIGIT、ガレクチン-9、及び/またはTIM-3に対する阻害物質の治療上有効な量での投与を含む。
【0070】
本明細書で使用される「治療する(treat)」、「治療(treating)」、または「治療(treatment)」という用語は、血液由来のがん、具体的にはAMLの進行の低減、安定化、または阻害を意味する。治療を必要とする者には、当該疾患に既に苦しんでいる者が含まれる。好ましくは、治療は、血液由来のがん細胞の増殖活性を低減または阻害し、それによって当該がん細胞の溶解を増進する。「治療する(treat)」、「治療(treating)」、または「治療(treatment)」は、生物における病的状態の鈍化(低下)または少なくとも部分的な軽減もしくは抑止を目的とする治療的な治療を指す。治療を必要とする者には、疾患を既に有する者、ならびに疾患を有することが想定される者が含まれる。「投与」という用語は、生物の細胞または組織に化合物を取り込ませる方法に関する。
【0071】
血液由来のがん、具体的には本発明に記載のAMLからの対象の治療における使用を目的とする化合物は、一般に、治療上有効な量で対象に投与される。当該治療上有効な量は、血液由来のがん、具体的にはAMLの症状の阻害または軽減に十分なものである。「治療作用」または「治療上有効」は、使用を目的とする化合物が、研究者、獣医、医師、または臨床医が対象としている組織、系、動物、またはヒトの生物学的または医学的な応答を誘発するであろうことを意味する。さらに、「治療上有効」という用語は、疾患を誘起またはそれに寄与する因子の阻害を指す。「治療上有効な量」という用語は、投与されると、化合物の量が治療中の疾患の進行の顕著な改善に十分であることを含む。治療上有効な量は、化合物、疾患及びその重症度、ならびにそうした対象の個々の因子に応じて変わることになる。したがって、本発明の化合物は、すべての症例で治療上に有効となることはない。この理由は、対象が当該化合物に応答し得るかということとは無関係に、本明細書に開示の方法が100%安全な予測を提供することは不可能なためであり、個々の因子が関与するためでもある。血液由来のがん、具体的にはAMLに苦しむ対象の治療における使用を目的とする化合物が、治療上有効となるかとは無関係に、年齢、体重、総体的な健康、性別、食事、薬物相互作用、及び同様のものが、総体的な影響を与え得ると予測されることになる。好ましくは、血液由来のがん、具体的にはAMLに苦しむ対象の治療に使用される化合物の治療上有効な量は、体重kg当たり約0.01mg~体重kg当たり約1gであり、体重kg当たり約0.02mg、約0.03mg、約0.04mg、約0.05mg、約0.06mg、約0.07mg、約0.08mg、約0.09mg、約0.1mg、約0.2mg、約0.3mg、約0.4mg、約0.5mg、約0.6mg、約0.7mg、約0.8mg、約0.9mg、約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約6mg、約7mg、約8mg、約9mg、約10mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、または約900mgなどである。さらにより好ましくは、血液由来のがん、具体的にはAMLに苦しむ対象の治療に使用される化合物の治療上有効な量は、体重kg当たり約0.01mg~体重kg当たり約100mgであり、体重kg当たり約0.1mg~体重kg当たり約10mgなどである。化合物の治療上有効な量は、治療されることになる対象の種に応じて、そこに含まれる活性化合物の量に関して変わることになる。
【0072】
本明細書で使用される「対象」という用語は、個体とも称され、哺乳動物を指す。哺乳動物は、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、サル、ウマ、またはヒトのいずれか1つであり得る。したがって、本発明の哺乳動物は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物であり得る。したがって、この文書に記載の方法、使用、及び組成物は、一般に、ヒト及び非ヒト哺乳動物の両方に適用可能である。対象が本明細書に記載の疾患の治療を受け得るヒトである場合、対象は、「患者」とも称される。本明細書の「患者」に対して開示される内容は、一群の患者にも準用される。
【0073】
血液由来のがん、具体的には本発明によるAMLに苦しむ対象の治療における使用を目的とする阻害物質の投与は、当該技術分野において知られる任意の方法によって実施することができる。いくつかの実施形態では、投与は、経口的、非経口的、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内点滴によって、移植によって、腔内もしくは膀胱内への点滴によって、眼内、動脈内、病巣内、経皮的、または粘膜への適用によって、あるいはそれらを組み合わせて実施されるが、いくつか例を挙げたに過ぎない。
【0074】
本発明の範囲では、例えば、使用される阻害物質の治療作用は、例えば、白血球(white blood cell)(WBC、または白血球(leukocyte))の数及び差異を使用する、当該技術分野において利用可能な手法を使用し、患者における血液由来のがん細胞の数を評価することによって検出されると想定される。白血球の計数は、血球計算盤(ノイバウエル計算盤(Neubauer chamber))において手作業で実施するか、または自動化された計数器で実施することができる。差異の決定には、一滴の血液をガラススライドに薄く引き伸ばして空気乾燥させ、ロマノフスキー(Romanofsky)染色、最も一般的には、ライト(Wright)またはメイ・グリュンワルド・ギムザ(May-Grunewald-Giemsa)の手法による染色を実施することができる。その後、Blumenreich MS.The White Blood Cell and Differential Count.In:Walker HK,Hall WD,Hurst JW,editors.Clinical Methods:The History,Physicals,and Laboratory Examinations.3rd edition.Boston:Butterworths;1990.Chapter 153において説明される形態検査及び/または組織化学を使用し、細胞の計数及び分類分けが実施される。あるいは、白血球のそれぞれの亜集団の絶対細胞数を計算するために、血液試料から白血球が単離され、白血球の細胞表面マーカーに対する蛍光標識抗体で染色された後、フローサイトメトリーによって分析される。さらに、またはあるいは、それぞれの患者の全身外観を評価することも可能であり、これは、治療が有効であるかどうかを医師が評価するためにも役立つことになる。血液由来のがん、具体的には本発明の方法または使用との関連において本明細書に開示のAMLの治療における使用を目的とする化合物の治療作用を医師が確認可能となるであろう多数の他の方法を当業者であれば知っている。
【0075】
本発明の阻害物質は、全く製剤化することなく直接的に投与することが可能な一方で、本発明の別の態様では、化合物は、好ましくは、医薬的または獣医学的に許容可能な担体、希釈剤、または賦形剤、及び本発明の化合物、好ましくは、本発明の免疫グロブリンを含む、医薬的または獣医学的な製剤組成物の形態で用いられる。本発明の化合物と組み合わせて使用される担体は、水に基づくものであり、水溶液を形成する。水性担体溶液の代替は、本発明の化合物を含む、油に基づく担体溶液である。水に基づく溶液または油に基づく溶液のいずれも増粘剤をさらに含むことで、リニメント剤、クリーム、軟膏、ゲル、または同様のものの粘性を有する組成物を与える。適した増粘剤は当業者によく知られている。本発明の代替の実施形態では、S100A12:TLR4/MD2/CD14が媒介する本明細書の他の箇所に開示の炎症性障害の治療における使用を目的とする化合物を含む固体担体を使用することもできる。これによって、代替の実施形態を、スティック状塗布器、パッチ、または坐剤を介して適用することが可能になる。固体担体は、増粘剤をさらに含むことで、ワックスまたはパラフィンの粘稠度を有する組成物を与える。
【0076】
血液由来のがん、具体的にはAMLに苦しむ対象の治療における使用を目的とする本発明の阻害物質と組み合わせて追加のAML治療を使用することも考えられる。追加のAML治療は、一般に、本発明の使用及び方法の前、それと同時、及び/またはその後に適用することができる。
【0077】
造血幹細胞移植(HSCT)は、一般的なAML治療である。用語は、一般に、通常は骨髄または血液に由来する造血幹細胞の移植を指し、自家(すなわち、幹細胞は患者に由来する)HSCT及び同種(すなわち、幹細胞はドナーに由来する)HSCTを含む。AML治療には同種HSCTが一般に好ましい。本発明の使用及び方法は、HSCTの前もしくは後、またはそれらの両方、あるいは2つのHSCT治療の間に適用することができるとも想定される。
【0078】
本発明の方法に従って治療される患者(または患者の群)は、化学療法治療も受け得る。本発明の関連では、「化学療法治療」は、抗新生物剤を用いた治療、または複数のこうした薬剤を標準化治療レジメンに組み込んだものを指す。本発明の関連では、「化学療法治療」という用語は、小サイズの有機分子、ペプチド、オリゴヌクレオチド、及び同様のものを含む任意の抗新生物剤を含む。化学療法の定義に含まれる薬剤は、限定はされないが、例えば、メクロレタミン、シクロホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、イホスファミド、ブスルファン、N-ニトロソ-N-メチルウレア(MNU)、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、セムスチン(MeCCNU)、ホテムスチン、ストレプトゾトシン、ダカルバジン、ミトゾロミド、テモゾロミド、チオテパ、マイトマイシン(mytomycin)、ジアジコン(AZQ)、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、プロカルバジン、及びヘキサメチルメラミンといったアルキル化剤、例えば、メトトレキサート、ペメトレキセド、フルオロウラシル、カペシタビン、シタラビン、ゲムシタビン、デシタビン、ビダーザ(Vidaza)、フルダラビン、ネララビン、クラドリビン、クロファラビン、ペントスタチン、チオグアニン、メルカプトプリンといった代謝拮抗剤、例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン、ビンフルニン、パクリタキセル、ドセタキセル、ポドフィロトキシンといった微小管阻害物質、例えば、イリノテカン、トポテカン、エトポシド、ドキソルビシン、ミトキサントロン、テニポシド、ノボビオシン、メルバロン、アクラルビシンといったトポイソメラーゼ阻害物質、例えば、アクチノマイシン、ブレオマイシン、プリカマイシン、マイトマイシン(mitomycin)、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ピラルビシン、アクラルビシン、及びミトキサントロンといった細胞傷害性抗生物質であるが、いくつか例を挙げたに過ぎない。しかしながら、本発明は、こうした化学療法剤に限定されず、他のDNA損傷剤の使用も伴い得ると当業者であれば理解するであろう。本発明による当該組み合わせは、組み合わせ製剤、またはお互い別々のものとして投与することができる。
【0079】
追加のAML治療には、放射線療法も含まれる。例えば、脳及び脊髄のくも膜下腔内の化学療法及び/または放射線療法によってCNSにおける悪性細胞の伝播を阻止するための、CNSの治療及び予防も想定される。
本明細書に開示の阻害物質の治療的な成功は、本明細書に記載の免疫チェックポイントを阻害し、それによってT細胞の抗がん活性の増進が生じることによる当該阻害物質の免疫増強活性に(部分的に)基づき得ると本発明者らは推測するため、T細胞の活性化及び/または増殖の誘導物質及び促進物質、CAR T細胞、ドナーT細胞、抗細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)抗体、ならびに他のものも想定される。
【0080】
別の態様によれば、本発明は、本明細書の他の箇所に記載のCD112(ネクチン-2、PVRL2)、CD155(PVR)、ガレクチン-9、TIM-3、及び/またはTIGITに対する免疫チェックポイント阻害物質と、本明細書の他の箇所に記載のCAR T細胞とを含む医薬組成物を提供する。別の態様では、本発明は、本明細書の他の箇所に記載のCD112(ネクチン-2、PVRL2)、CD155(PVR)、ガレクチン-9、TIM-3、及び/またはTIGITに対する免疫チェックポイント阻害物質と、本明細書の他の箇所に記載のT細胞と会合する能力を有する抗体構築物とを含む医薬組成物を提供する。
【0081】
当該医薬組成物は、医薬的に有効な希釈剤、担体、可溶化剤、乳化剤、保存剤、及び/またはアジュバントと共に、本明細書に記載の1つまたは複数の免疫チェックポイント阻害物質、CAR T細胞、及び/または抗体構築物を治療上有効な量で含み得る。本明細書に記載の医薬組成物には、限定はされないが、液体組成物、凍結組成物、及び凍結乾燥組成物が含まれる。好ましくは、製剤材料は、用いられる用量及び濃度においてレシピエントに対して無毒である。
【0082】
本明細書で使用される「医薬組成物」という用語は、患者、好ましくは、ヒト患者に対する投与を目的とする組成物に関する。好ましくは、医薬組成物は、担体、安定剤、及び/または賦形剤の適した製剤を含む。好ましい実施形態では、医薬組成物は、非経口、経皮、腔内、動脈内、くも膜下腔内、及び/もしくは鼻腔内への投与、または組織への直接的な注射による投与を目的とする組成物を含む。当該組成物は、注入または注射を介して患者に投与されると具体的には想定される。適した組成物の投与は、さまざまな方法によって実施され得るものであり、例えば、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、局所、または皮内への投与によって実施され得る。具体的には、本発明は、適した組成物の無中断投与を提供する。非限定例として、無中断、すなわち、連続的な投与は、WO2015/036583において説明される、患者の体への治療薬剤の流入の計量を目的とする患者着用の小型ポンプシステムによって実現され得る。
【0083】
本発明の組成物は、医薬的に許容可能な担体をさらに含み得る。適した医薬担体の例は、当該技術分野においてよく知られており、例えば、リン酸緩衝生理食塩水といった溶液、水、油/水乳濁液などの乳濁液、さまざまな型の湿潤剤、無菌溶液、リポソーム等が含まれる。そのような担体を含む組成物は、よく知られる通常の方法によって製剤化することができる。製剤は、糖質、緩衝溶液、アミノ酸、及び/またはサーファクタントを含み得る。糖質は、非還元糖、好ましくは、トレハロース、スクロース、オクタサルフェート、ソルビトール、またはキシリトールであり得る。一般に、本明細書で使用される「医薬的に許容可能な担体」は、医薬的な投与に適合する溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤のいずれか及びすべて意味する。医薬的に活性な物質のためのそのような媒体及び薬剤の使用は、当該技術分野においてよく知られている。許容可能な担体、賦形剤、または安定剤は、用いられる用量及び濃度においてレシピエントに対して無毒であり、こうしたものには、追加の緩衝剤、保存剤、共溶媒、アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤、EDTAなどのキレート剤、金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体)、ポリエステルなどの生分解性ポリマー、ナトリウムなどの造塩対イオン、多価糖アルコール、アラニン、グリシン、アスパラギン、2-フェニルアラニン、及びスレオニンなどのアミノ酸、トレハロース、スクロース、オクタサルフェート、ソルビトール、またはキシリトール、スタキオース、マンノース、ソルボース、キシロース、リボース、ミオイニシトース(myoinisitose)、ガラクトース、ラクチトール、リビトール、ミオイニシトール(myoinisitol)、ガラクチトール、グリセロール、シクリトール(例えば、イノシトール)、ポリエチレングリコールなどの糖または糖アルコール、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、[アルファ]-モノチオグリセロール、及びチオ硫酸ナトリウムなどの含硫還元剤、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン、または他の免疫グロブリンなどの低分子量タンパク質、ならびにポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマーが含まれる。そのような製剤は、ポンプシステム使用及び/または未使用で静脈内または皮下に実施され得る連続投与を目的として使用され得る。アミノ酸は、荷電アミノ酸であり得、好ましくは、リジン、リジンアセテート、アルギニン、グルタメート、及び/またはヒスチジンであり得る。サーファクタントは、好ましくは、>1.2KDの分子量を有する界面活性剤、及び/または好ましくは、>3KDの分子量を有するポリエーテルであり得る。好ましい界面活性剤の例は、限定はされないが、Tween20、Tween40、Tween60、Tween80、またはTween85である。好ましいポリエーテルの例は、限定はされないが、PEG3000、PEG3350、PEG4000、またはPEG5000である。本発明において使用される緩衝系は、好ましくは、5~9のpHを有し得、クエン酸塩、コハク酸塩、リン酸塩、ヒスチジン、及び酢酸塩を含み得る。
【0084】
本発明の医薬組成物は、例えば、本明細書に記載の種間特異性を示す本明細書に記載のポリペプチドを、その用量を増やしながら、例えば、マカクといった非チンパンジー霊長類に投与することによる用量漸増試験によって決定することができる適切な用量で対象に投与することができる。上記のように、本明細書に記載の種間特異性を示す、CD33を標的とする本明細書に記載の組成物は、非チンパンジー霊長類における前臨床試験の形態と同一の形態で、ヒトにおいて薬物として有利に使用することができる。組成物またはこうした組成物は、追加の他のタンパク質性薬物及び非タンパク質性薬物と組み合わせて投与することもできる。こうした薬物は、時宜を得るように定義された間隔及び用量で、本明細書に定義される本明細書に記載のポリペプチドを含む組成物と同時に投与され得るか、または当該ポリペプチドの投与前もしくは投与後に、別々に投与され得る。投与レジメンは、担当医及び臨床的な因子によって決定されることになる。医学分野ではよく知られることであるが、任意の1患者に対する投与量は、患者のサイズ、体表面積、年齢、投与されることになる特定の化合物、性別、投与の時間及び経路、総体的な健康、ならびに同時に投与中の他の薬物を含む多くの因子に依存する。
【0085】
非経口投与を目的とする調製物には、無菌の水性溶液または非水性溶液、懸濁液、及び乳濁液が含まれる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、及びオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルである。水性担体には、生理食塩水及び緩衝媒体を含む、水、アルコール/水性溶液、乳濁液、または懸濁液が含まれる。非経口媒体には、塩化ナトリウム溶液、ブドウ糖リンゲル液、ブドウ糖及び塩化ナトリウム、乳酸リンゲル液、または固定油が含まれる。静脈内用媒体には、液体及び栄養の補充剤、電解質補充剤(ブドウ糖リンゲル液に基づくものなど)、ならびに同様のものが含まれる。例えば、抗微生物剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガス、及び同様のものなどの保存剤及び他の添加剤も存在し得る。さらに、本発明の組成物は、例えば、好ましくはヒト起源の血清アルブミンまたは免疫グロブリンのようなタンパク質性担体を含み得る。本発明の組成物は、本明細書に定義される本明細書に記載のポリペプチドに加えて、組成物の意図される使用に応じて、生物学的な活性な薬剤をさらに含み得ると想定される。そのような薬剤は、胃腸管系に作用する薬物、サイトスタティカ(cytostatica)として作用する薬物、高尿酸血症を予防する薬物、免疫反応を阻害する薬物(例えば、副腎皮質ステロイド)、炎症反応を調節する薬物、循環器系に作用する薬物、及び/または当該技術分野において知られるサイトカインなどの薬剤であり得る。CD33を標的とする化合物、及び少なくとも1つのエピジェネティック因子を単一または別々の製剤において含む本発明の組成物は、追加の同時治療、すなわち、別の抗がん薬物と組み合わせて適用されることも想定される。
【0086】
本明細書に定義される医薬組成物の生物学的活性は、例えば、細胞傷害性アッセイによって決定することができ、これについては、WO99/54440またはSchlereth et al.(Cancer Immunol.Immunother.20(2005),1-12)といった例において説明されている。本明細書で使用される「効力」または「インビボの効力」は、例えば、標準化されたNCI応答基準を使用した、本発明の医薬組成物による治療に対する応答を指す。本発明の医薬組成物を使用する治療の成功またはインビボの効力は、その意図される目的に対する組成物の有効性を指し、すなわち、その所望の作用、すなわち、例えば、腫瘍細胞といった病的細胞の枯渇を引き起こす組成物の能力を指す。インビボの効力は、それぞれの疾患実体向けに確立された標準的な方法によって監視し得、こうした方法には、限定はされないが、白血球の計数、差異、蛍光活性化細胞選別、骨髄穿刺が含まれる。さらに、さまざまな疾患特異的臨床化学パラメーター、及び他の確立された標準的な方法が使用され得る。さらに、コンピュータ断層撮影、X線、核磁気共鳴断層撮影(例えば、National Cancer Institute-criteria based response assessment[Cheson BD,Horning SJ,Coiffier B,Shipp MA,Fisher RI,Connors JM,Lister TA,Vose J,Grillo-Lopez A,Hagenbeek A,Cabanillas F,Klippensten D,Hiddemann W,Castellino R,Harris NL,Armitage JO,Carter W,Hoppe R,Canellos GP.Report of an international workshop to standardize response criteria for non-Hodgkin’s lymphomas.NCI Sponsored International Working Group.J Clin Oncol.1999 Apr;17(4):1244])、ポジトロン放出断層撮影スキャニング、白血球の計数、差異、蛍光活性化細胞選別、骨髄穿刺、リンパ節生検/組織学、及びさまざまなリンパ腫特異的臨床化学パラメーター(例えば、乳酸脱水素酵素)、ならびに他の確立された標準的な方法が使用され得る。
【0087】
本発明の医薬組成物などの薬物の開発における別の主要な課題は、薬物動態特性の予測可能な調節である。この目的のためには、薬物候補の薬物動態プロファイル、すなわち、特定の薬物が所与の状態を治療する能力に影響する薬物動態パラメーターのプロファイルを確立することができる。薬物がある特定の疾患実体を治療する能力に影響する、薬物の薬物動態パラメーターには、限定はされないが、半減期、分布量、肝臓初回通過代謝、及び血清結合度が含まれる。上述のパラメーターのそれぞれが、所与の薬物物質の効力に影響をし得る。「半減期」は、投与薬物の50%が、例えば、代謝、排出等といった生物学的プロセスを介して排出される時間を意味する。「肝臓初回通過代謝」は、薬物が肝臓と最初に接触するとき、すなわち、それが最初に肝臓を通過する間に代謝されることになる傾向が意図される。「分布量」は、例えば、細胞内空間及び細胞外空間、組織、ならびに臓器等のような体のさまざまなコンパートメント全体にわたる薬物の残留度合い、ならびにこうしたコンパートメント内の薬物の分布を意味する。「血清結合度」は、薬物がアルブミンなどの血清タンパク質と相互作用してそれに結合し、その結果、薬物の生物学的活性の減少または低下が生じる傾向を意味する。
【0088】
薬物動態パラメーターには、所与の量の投与薬物の生物学的利用性、遅延時間(Tlag)、Tmax、吸収速度、作用発現増加(more onset)、及び/またはCmaxも含まれる。「生物学的利用性」は、血液コンパートメントにおける薬物量を意味する。「遅延時間」は、薬物投与と、血液または血漿におけるその検出及び測定可能性と間の時間の遅延を意味する。「Tmax」は、薬物の最大血中濃度に達した時間であり、「Cmax」は、所与の薬物で得られた最大血中濃度である。その生物学的作用に必要な血中または組織中の薬物濃度に達する時間は、すべてのパラメーターによって影響される。
【0089】
本明細書で使用される「毒性」という用語は、有害事象または重度の有害事象において明らかになる薬物の毒性作用を指す。こうした副事象は、投与後の、全身における薬物耐容性の欠如、及び/または局所的な耐性の欠如を指し得る。毒性は、薬物によって引き起こされる催奇作用または発がん作用も含み得る。
【0090】
本明細書で使用される「安全性」、「インビボの安全性」、または「耐容性」という用語は、投与直後(局所耐性)、及び薬物の長期適用期間に、重度の有害事象を誘導することのない薬物投与を定義する。「安全性」、「インビボの安全性」、または「耐容性」は、例えば、治療期間及び経過観察期間に一定間隔で評価することができる。測定は、例えば、臓器所見といった臨床評価、及び実験室での異常性の選別を含む。臨床評価が実施され得、NCI-CTC及び/またはMedDRAの基準に従って逸脱~正常の知見を記録/符号化するものであり得る。臓器所見には、アレルギー/免疫学、血液/骨髄、不整脈、凝固、及び同様のものなどの基準が含まれ得、こうした基準は、例えば、Common Terminology Criteria for adverse events v3.0(CTCAE)において示されている。試験され得る実験室パラメーターには、例えば、血液学、臨床化学、凝固プロファイル、及び尿検査、ならびに血清、血漿、リンパ液、または髄液などの他の体液の検査、アルコール検査、ならびに同様のものが含まれる。したがって、安全性は、例えば、物理的検査、画像技術(すなわち、超音波、X線、CTスキャン、磁気共鳴画像法(MRI)、技術的な機器を用いる他の測定(すなわち、心電図))、バイタルサイン、実験室パラメーターの測定、及び有害事象の記録によって評価することができる。例えば、本発明による使用及び方法での非チンパンジー霊長類における有害事象は、病理組織学的及び/または組織化学的な方法によって検査され得る。
【0091】
「有効用量」または「有効投与量」という用語は、所望の作用の達成または少なくとも部分的な達成に十分な量として定義される。「治療上有効な用量」という用語は、疾患に既に苦しんでいる患者における疾患及びその合併症の治癒または少なくとも部分的な抑止に十分な量として定義される。この使用に有効な量は、疾患の重症度、及び対象自身の免疫系の総体的な状況に依存することになる。「患者」という用語は、予防的または治療的な治療のいずれかを受けるヒト及び他の哺乳動物対象を含む。本明細書で使用される「有効かつ無毒な用量」という用語は、主な毒性作用を伴わないか、または本質的に伴わずに病的細胞の枯渇、腫瘍の排除、腫瘍の縮小、または疾患の安定化を誘起するのに十分な高用量である、医薬組成物(すなわち、CD112、CD155、TIGIT、ガレクチン-9、及び/またはTIM-3に対する阻害物質、ならびにCAR T細胞、またはT細胞と会合する抗体構築物を単一または別々の製剤において含む医薬組成物)の耐容用量を指す。そのような有効かつ無毒な用量は、例えば、当該技術分野において説明される用量漸増試験によって決定し得るものであり、重度の有害副事象を誘導する用量(用量制限毒性、DLT)未満であるべきである。
【0092】
上記の用語は、例えば、preclinical safety evaluation of biotechnology-derived pharmaceuticals S6;ICH Harmonised Tripartite Guideline;ICH Steering Committee meeting on July 16,1997においても言及されている。本明細書で他の箇所に記載の、本発明の阻害物質、及びCAR T細胞または抗体構築物を含む医薬組成物の適切な投与量または治療上有効な量は、治療されることになる状態、状態の重症度、治療歴、ならびに患者の既往歴、及び治療薬剤に対する応答に依存することになる。1回の投与または一連の投与にわたって適切な用量が患者に投与され得るように、担当医の判断に従って適切な用量を調節することができる。医薬組成物は、必要に応じて、唯一の治療として投与するか、または抗がん治療などの追加治療と組み合わせて投与することができる。
【0093】
本発明の医薬組成物は、非経口投与、すなわち、皮下、筋肉内、静脈内、関節内、及び/または滑液嚢内への投与に特に有用である。非経口投与は、ボーラス注射または持続注入によるものであり得る。医薬組成物が凍結乾燥されているのであれば、凍結乾燥材料は、適切な液体において投与前に最初に再構成される。凍結乾燥材料は、例えば、注射用静菌水(BWFI)、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、または凍結乾燥前にタンパク質が存在したものと同一の製剤において再構成され得る。
【0094】
CD112に対する遮断抗体及びCD155に対する遮断抗体の単独使用によって細胞溶解が単に減少するのと比較して、本発明の阻害物質と、二重特異性抗体構築物であるAMG330とを組み合わせると、AML細胞の細胞溶解が用量依存的様式で有意に増加することが本発明と関連して見出されたことは驚くべきことであった(図3~13)。この知見は、CD112、CD155、TIGIT、ガレクチン-9、及び/またはTIM-3に対する阻害物質と、CD33、CD19、またはFlt3を標的とするT細胞エンゲージャーと、を組み合わせれば、いずれかの治療を別々に施したときと比較して、相乗的に有効性が高まるであろうことを支持する。したがって、CD112、CD155、TIGIT、ガレクチン-9、及び/またはTIM-3に対する1つまたは複数の阻害物質と、CD33、CD19、またはFlt3を標的とする本明細書に記載のT細胞エンゲージャーと、を組み合わせて実施される記載の投与は、二重特異性のT細胞エンゲージャーが所与の時点で有効となる用量を低減し得るものである。少なくとも二重特異性である多特異性の構築物によるT細胞の動員を介して標的細胞が溶解するように再指向化するには、細胞溶解性シナプスの形成、ならびにパーフォリン及びグランザイムの送達が必要である。関与するT細胞は、標的細胞を連続的に溶解させる能力を有し、ペプチド抗原のプロセシング及び提示、またはクローンT細胞の分化を妨害する免疫回避機構による影響を受けない。例えば、WO2007/042261またはWO2008/119567を参照のこと。
【0095】
本明細書に記載の製剤は、それを必要とする患者における本明細書に記載の病理学的な医学状態の治療、寛解、及び/または予防における医薬組成物として有用である。「治療」という用語は、治療的な治療と、予防的または防止的な処置と、の両方を指す。治療は、疾患/障害、疾患/障害の症状、または疾患/障害に対する素因を有する患者に由来する体、単離組織、または細胞に対する製剤の適用または投与を含み、こうした適用または投与は、疾患、疾患の症状、または疾患に対する素因の治癒、回復、軽減、緩和、変更、治療、寛解、改善、またはそれに影響を与えることを目的とする。「治療を必要とする」者は、障害を既に有する者、ならびに障害が予防されることになる者を含む。「疾患」という用語は、本明細書に記載のタンパク質製剤を用いた治療から利益を享受するであろう任意の状態である。これには、哺乳動物を問題の疾患に罹り易くする病理学的な状態を含む慢性及び急性の障害または疾患が含まれる。本明細書では、治療されることになる疾患/障害の例には、限定はされないが、本明細書に記載の血液由来のがん、具体的には、AMLなどの骨髄性白血病が含まれる。
【0096】
医薬組成物は、例えば、組成物のpH、モル浸透圧濃度、粘性、透明性、色調、等張性、匂い、無菌性、安定性、溶出速度または放出速度、吸収または浸透の改変、維持、または保存を目的とする製剤材料を含み得る。そのような実施形態では、適した製剤材料には、限定はされないが、アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、プロリン、もしくはリジンなど)、抗微生物剤、抗酸化剤(アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム、もしくは亜硫酸水素ナトリウムなど)、緩衝液(ホウ酸塩、炭酸水素塩、トリス-HCl、クエン酸塩、リン酸塩、もしくは他の有機酸など)、かさ増し剤(マンニトールもしくはグリシンなど)、キレート剤(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)など)、複合化剤(カフェイン、ポリビニルピロリドン、ベータ-シクロデキストリン、もしくはヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリンなど)、増量剤、単糖、二糖、及び他の糖質(グルコース、マンノース、もしくはデキストリンなど)、タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなど)、着色剤、香味剤、及び希釈剤、乳化剤、親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど)、低分子量ポリペプチド、造塩対イオン(ナトリウムなど)、保存剤(塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸、もしくは過酸化水素など)、溶媒(グリセリン、プロピレングリコール、もしくはポリエチレングリコールなど)、糖アルコール(マンニトールもしくはソルビトールなど)、懸濁剤、サーファクタントもしくは湿潤剤(プルロニック、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート20などのポリソルベート、ポリソルベート、トリトン(triton)、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサパル(tyloxapal)など)、安定性増進剤(スクロースもしくはソルビトールなど)、浸透圧増進剤(アルカリ金属ハロゲン化物(好ましくは、塩化ナトリウムもしくは塩化カリウム)、マンニトール、ソルビトールなど)、送達媒体、希釈剤、賦形剤、ならびに/または医薬的アジュバントが含まれる。REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,18”Edition,(A.R.Genrmo,ed.),1990,Mack Publishing Companyを参照のこと。
【0097】
最適な医薬組成物は、例えば、意図される投与経路、送達形式、及び所望の投与量に応じて、当業者によって決定されることになる。例えば、前出のREMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCESを参照のこと。ある特定の実施形態では、そのような組成物は、本明細書に記載の抗原結合タンパク質の物理的状態、安定性、インビボの放出速度、及びインビボの排出速度に影響し得る。ある特定の実施形態では、医薬組成物における主要な媒体または担体は、水性または非水性のいずれかの性質を有し得る。例えば、適した媒体または担体は、注射用水、生理食塩水、または人工的な脳脊髄液であり得、こうしたものには、非経口投与向けの組成物で一般的な他の材料が添加される可能性がある。血清アルブミンと混合された中性の緩衝生理食塩水または生理食塩水は、媒体の追加例である。特定の実施形態では、医薬組成物は、約pH7.0~8.5のトリス緩衝液、または約pH4.0~5.5の酢酸緩衝液を含み、ソルビトールまたは適したその代替物をさらに含み得る。本発明のある特定の実施形態では、本明細書に記載のヒト抗体もしくは抗原結合断片または本明細書に記載の抗体構築物の組成物は、所望の純度を有する選択組成物と、任意選択の製剤化薬剤(前出のREMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES)と、を混合することによって保存を目的として凍結乾燥ケーキまたは水性溶液の形態において調製され得る。さらに、ある特定の実施形態では、CD112、CD155、TIGIT、ガレクチン-9、及び/またはTIM-3に対する阻害物質、ならびにCAR T細胞、またはT細胞と会合する抗体構築物は、スクロースなどの適切な賦形剤を使用し、凍結乾燥物として製剤化され得る。
【0098】
本明細書に記載の医薬組成物は、非経口送達を目的として選択することができる。あるいは、組成物は、吸入、または経口などの、消化管を介した送達を目的として選択してよい。そのような医薬的に許容可能な組成物の調製は、当該技術分野において知られた技術である。製剤成分は、好ましくは、投与部位に許容可能な濃度で存在する。ある特定の実施形態では、生理学的pHまたは若干低めのpH、典型的には、約5~約8のpH範囲内に組成物を維持するために緩衝液が使用される。
【0099】
当業者には追加の医薬組成物が明らかであろう。こうした追加の医薬組成物には、本明細書に記載のCD112、CD155、TIGIT、ガレクチン-9、及び/またはTIM-3に対する阻害物質、ならびにCAR T細胞、またはT細胞と会合する抗体構築物を、持続送達製剤または制御送達製剤に含めた製剤が含まれる。リポソーム担体、生物侵食性微粒子または多孔性ビーズ、及びデポ注射などの、さまざまな他の持続送達手段または制御送達手段の製剤化手法もまた、当業者に知られている。例えば、国際特許出願第PCT/US93/00829号を参照のこと。当該文献では、医薬組成物の送達を目的とする多孔性ポリマー微粒子の制御放出について説明されており、当該文献は参照によって組み込まれる。持続放出調製物は、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルといった形成物品の形態の半透性ポリマーマトリックスを含み得る。持続放出マトリックスには、ポリエステル、ヒドロゲル、ポリ乳酸(米国特許第3,773,919号及び欧州特許出願公開第EP058481号において開示されており、こうした文献はそれぞれ、参照によって組み込まれる)、L-グルタミン酸とガンマエチル-L-グルタメートとのコポリマー(Sidman et al.,1983,Biopolymers 2:547-556)、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート(Langer et al.,1981,J.Biomed.Mater.Res.15:167-277、及びLanger,1982,Chem.Tech.12:98-105)、エチレンビニルアセテート(前出のLanger et al.,1981)、またはポリ-D(-)-3-ヒドロキシブタン酸(欧州特許出願公開第EP133,988号)が含まれ得る。持続放出組成物は、当該技術分野において知られるいくつかの方法のいずれかによって調製することができるリポソームも含み得る。例えば、Eppstein et al.,1985,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.82:3688-3692、欧州特許出願公開第EP036,676号、同第EP088,046号、及び同第EP143,949号を参照のこと。こうした文献は、参照によって組み込まれる。
【0100】
インビボ投与に使用される医薬組成物は、典型的には、無菌調製物として提供される。無菌化は、無菌濾過膜に通す濾過によって達成することができる。組成物が凍結乾燥されるとき、この方法を使用する無菌化は、凍結乾燥及び再構成の前または後のいずれかに実施され得る。非経口投与を目的とする組成物は、凍結乾燥形態または溶液で保存することができる。非経口組成物は、一般に、無菌のアクセスポートを有する容器に充填され、こうした容器は、例えば、皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有する静脈注射用溶液のバッグまたはバイアルである。例えば、製剤のイオン強度及び/もしくは等張性の調節、ならびに/または本発明による組成物のタンパク質もしくは他の成分の溶解性及び/もしくは物理的安定性の改善のために、本発明のある特定の実施形態に応じて塩が使用され得る。よく知られていることであるが、イオンは、タンパク質表面の荷電残基に結合し、タンパク質における荷電基及び極性基を遮蔽して、その静電相互作用、誘因相互作用、及び反発的相互作用の強度を低減することによってタンパク質の未変性状態を安定化することができる。イオンは、具体的には、タンパク質の変性したペプチド結合(--CONH)に結合することによって、タンパク質の変性状態を安定化することもできる。さらに、タンパク質における荷電基及び極性基とのイオン性相互作用は、分子間静電相互作用も低減することができ、それによって、タンパク質の凝集及び不安定性を阻止または低減する。
【0101】
イオン及びタンパク質に対するその作用について多数の分類順位付けが行われており、こうした分類順位付けを、本発明による医薬組成物の製剤化において使用することができる。1つの例は、ホフマイスター(Hofmeister)シリーズであり、これは、イオン性溶質及び極性の非イオン性溶質を、溶液におけるタンパク質の立体構造安定性に対するその作用によって順位付けしたものである。安定化溶質は、「コスモトロピック」と称される。不安定化溶質は、「カオトロピック」と称される。コスモトロープ(Kosmotrope)は、一般に、溶液からタンパク質を沈殿(「塩析」)させるために高濃度(例えば、>1モル濃度の硫酸アンモニウム)で使用される。カオトロープ(Chaotrope)は、一般に、タンパク質を変性及び/または可溶化(「塩溶」)するために使用される。ホフマイスターシリーズでは、「塩溶」及び「塩析」に対するイオンの相対有効性によってその位置が定義される。
【0102】
本発明のさまざまな実施形態による製剤において、かさ増し剤、安定剤、及び抗酸化剤として、ならびに他の標準的な用途で、遊離アミノ酸を使用することができる。リジン、プロリン、セリン、及びアラニンは、製剤におけるタンパク質の安定化に使用することができる。グリシンは、ケーキの正しい構造及び特性を確保するために凍結乾燥において有用である。アルギニンは、液体製剤及び凍結乾燥製剤の両方において、タンパク質の凝集阻害に有用であり得る。メチオニンは、抗酸化剤として有用である。ポリオールには、例えば、マンニトール、スクロース、及びソルビトールといった糖、ならびに例えば、グリセロール及びプロピレングリコールなどの多価アルコール、ならびに本明細書で議論される目的では、ポリエチレングリコール(PEG)及び関連物質が含まれる。ポリオールは、コスモトロピックである。ポリオールは、液体製剤及び凍結乾燥製剤の両方における、物理的及び化学的な分解プロセスからのタンパク質の保護に有用な安定剤である。ポリオールは、製剤の浸透圧の調節にも有用である。
【0103】
製剤は、1つまたは複数の抗酸化剤をさらに含み得る。環境中の酸素及び温度を適切なレベルに維持し、光への曝露を避けることによって、医薬製剤におけるタンパク質の有害な酸化はある程度阻止することができる。抗酸化賦形剤もまた、タンパク質の酸化的分解を阻止するために使用することができる。この点に関して有用な抗酸化剤には、還元剤、酸素/フリーラジカルスカベンジャー、及びキレート剤が含まれる。本発明による治療タンパク質製剤における使用を目的とする抗酸化剤は、好ましくは水溶性であり、製品の有効期間を通じてその活性を維持する。この点に関して、EDTAは、本発明による好ましい抗酸化剤である。
【0104】
抗酸化剤は、タンパク質を損ない得るものである。例えば、特にグルタチオンなどの還元剤は、分子内ジスルフィド結合を破壊し得る。したがって、本発明における使用を目的とする抗酸化剤は、とりわけ、それ自体が製剤におけるタンパク質を損なう可能性が排除されるか、または十分に低減されるように選択される。本発明による製剤は、タンパク質補因子である金属イオンであって、ある特定のインスリン懸濁液の形成に必須の亜鉛などの、タンパク質配位錯体の形成に必須となる、金属イオンを含み得る。金属イオンは、タンパク質を分解する何らかのプロセスも阻害し得る。しかしながら、金属イオンは、タンパク質を分解する物理的及び化学的なプロセスも触媒する。
【0105】
予測され得ることではあるが、凍結乾燥製剤と比較すると、保存剤を含む液体製剤の開発は、より難易度が高い。凍結乾燥製品は、保存剤を含めずに凍結乾燥し、保存剤を含む希釈剤で使用時に再構成することができる。これによって、保存剤がタンパク質に触れる時間が短縮され、関連する安定性の危険がかなり最小化される。液体製剤では、保存剤の有効性及び安定性は、製品の全有効期間(約18~24ヶ月)にわたって維持されるべきである。留意すべき重要な点は、保存剤の有効性は、活性薬物及びすべての賦形剤成分を含む最終製剤において示されるべきであるということである。
【0106】
医薬組成物が製剤化されると、溶液、懸濁液、ゲル、乳濁液、固体、結晶、または脱水粉末もしくは凍結乾燥粉末として無菌バイアルにおいて保存され得る。そのような製剤は、即時使用が可能な形態か、または投与前に再構成される形態(例えば、凍結乾燥品)のいずれかで保存され得る。本発明は、単一用量の投与単位を得るためのキットも提供する。本発明のある特定の実施形態では、単一チャンバー及び複数チャンバーを有する充填済シリンジ(例えば、液体シリンジ及び凍結乾燥シリンジ(lyosyringe))を含むキットが提供される。CD112、CD155、TIGIT、ガレクチン-9、及び/またはTIM-3に対する阻害物質、ならびにCAR T細胞、またはT細胞と会合する抗体構築物を含む医薬組成物の治療上有効な量は、例えば、治療の内容及び目的に依存することになる。治療に適した投与量レベルの一部は、送達される分子、本明細書に記載の組成物が使用される徴候、投与経路、ならびに患者のサイズ(体重、体表、もしくは臓器サイズ)及び/または状態(年齢及び総体的な健康)に応じて変わることになると当業者であれば理解するであろう。ある特定の実施形態では、最適な治療作用を得るために、医師は投与量の力価を判断して投与経路を改変し得る。典型的な投与量の範囲は、上述の因子に応じて、約0.1μg/kg~最大約30mg/kg以上であり得る。特定の実施形態では、投与量の範囲は、1.0μg/kg~最大約20mg/kgであり得、任意選択で、10μg/kg~最大約10mg/kg、または100μg/kg~最大約5mg/kgであり得る。
【0107】
本明細書の他の箇所に記載のCD112、CD155、TIGIT、ガレクチン-9、及び/またはTIM-3に対する阻害物質、ならびにCAR T細胞、またはT細胞と会合する抗体構築物を含む本発明の医薬組成物の治療上有効な量では、好ましくは、疾患症状の重症度の減少、疾患症状を伴わない期間の頻度もしくは持続期間の増加、または疾患苦痛に起因する機能障害もしくは能力障害の予防がもたらされる。CD112、CD155、及びまたはガレクチン-9を発現する腫瘍を治療するために、治療上有効な量の本明細書に開示の組成物は、好ましくは、未治療の患者と比較して、細胞の増殖または腫瘍の増殖を少なくとも約20%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%阻害する。化合物が腫瘍の増殖を阻害する能力は、ヒト腫瘍における効力を予測する動物モデルにおいて評価され得る。
【0108】
本発明の医薬組成物は、医療機器を使用して投与され得る。医薬組成物を投与するための医療機器の例は、米国特許第4,475,196号、同第4,439,196号、同第4,447,224号、同第4,447,233号、同第4,486,194号、同第4,487,603号、同第4,596,556号、同第4,790,824号、同第4,941,880号、同第5,064,413号、同第5,312,335号、同第5,312,335号、同第5,383,851号、及び同第5,399,163号において説明されており、こうした文献はすべて、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0109】
本明細書に記載の免疫チェックポイント阻害物質、ならびに本明細書に記載のそれに関する実施形態はすべて、白血病またはリンパ腫などの血液由来のがん、具体的にはAMLの治療方法において適用され得ることに留意されるべきであり、当該治療方法は、それを必要とする対象に対する当該阻害物質の治療上有効な量での投与を含む。
【0110】
同様に、本明細書に記載の免疫チェックポイント阻害物質、ならびに本明細書に記載のそれに関する実施形態はすべて、白血病またはリンパ腫などの血液由来のがん、具体的にはAMLの治療を目的とする医薬組成物の調製に使用され得る。
【実施例
【0111】
下記の実施例は、本発明の特定の実施形態または特徴の例示を目的として提供される。こうした実施例は、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。実施例は、例示を目的として含まれており、本発明は、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0112】
新たにAMLの診断を受け、これまでに治療を受けたことのない140人の患者(AMLSG07-04、NCT00151242)に由来する試料を使用し、免疫チェックポイント分子であるPVR、PVRL2、及びガレクチン-9(Gal-9)の発現をRT-qPCRによって分析した。発現と、患者背景(年齢、核型、FLT3の変異状況)及び臨床的な生存データと、には多変量コックス回帰による相関が存在した。患者の大多数が、PVR(94%)、PVRL2(95%)、及びGal-9(92%)のmRNA発現を示した。全生存に対する多変量ステップワイズコックス回帰では、好ましくない核型、PVRの高発現、及びGal-9の高発現が、独立した予後マーカーとして同定された(核型について、p<0.001、HR:2.10、CI 1.39-3.15、PVRについて、p=0.001、HR:1.64、CI 1.21-2.21、及びGal-9について、p<0.001、HR:0.67、CI 0.54-0.84)。PVRとPVRL2との間の相関が高かったため(ピアソンのrho=0.827、p<0.001)、ステップワイズプロセスの間にPVRL2を除外した。それにもかかわらず、PVRを多変量コックス回帰から除外したとしても、核型及びGal-9に追加したステップワイズ手順では、PVRL2は依然として有意な項であった(PVRL2について、p=0.003、HR:1.58、CI 1.17-2.13)。291人のAML患者のマイクロアレイに基づく遺伝子発現及び臨床データを含む第2の独立した患者コホート(Verhaak et.al.,Haematologica 2009;94)では、CD80、CD86、またはPD-L1の発現とは対照的に、PVRの高発現及びPVRL2の高発現は、全生存の不良と関連していた(ログ・ランク検定でそれぞれp=0.003及びp=0.032)。インビトロの殺傷アッセイでは、7-AADによる染色を使用し、PVRの遮断及びPVRL2の遮断の治療作用をFACSによって試験した。AML細胞株であるMV4-11、Kasumi-1、及びMolm-13を、PVRに対する遮断抗体、PVRL2に対する遮断抗体、またはそれらの両方と共に事前にインキュベートしてから、AMG330の存在下または非存在下で、健康なドナーの末梢血単核球(PBMC)と共に24時間、共培養した。
【0113】
AMG330の非存在下では、MV4-11の細胞殺傷は、12.6±4.7%(対照)から、33.0±8.8%(PVR)、40.4±10.4%(PVRL2)、及び56.0±12.0%(両方(PVR+PVRL2))へと増加した。AMG330が準最適濃度(0.1ng/ml)で存在すると、MV4-11の細胞溶解は、29.4±9.0%(AMG330単独)、49.7±12.6%(AMG330+PVR)、57.9±11.3%(AMG330+PVRL2)、及び70.0±9.8%(AMG330+PVR+PVRL2、n=4、すべての比較についてp<0.05)であった。Kasumi-1及びMolm-13について同等の結果が認められ、両方のチェックポイント阻害物質による遮断が最も有効な処理であったが、PVRに対する抗体とPVRL2に対する抗体との相加作用をすべての場合で立証することはできなかった(データ未掲載)。手法の特異性の確認、及び抗体依存性細胞傷害(ADCC)によって生じる作用の除外を目的として、CRISPR/Cas-9によって、細胞株MV4-11のPVRとPVRL2とをダブルノックアウトしたもの産生させた。PVRとPVRL2とをダブルノックアウトした細胞では、野生型細胞と比較して、殺傷の有意な増加が観測された(40.5±8.1%と25.9±9.1との比較、n=3、p<0.001)。CD117に対する無関係な抗体を使用した実験、または精製IgG抗体によるFcy受容体の遮断によってADCCを除外した実験を追加で実施し、PVR/PVRL2の遮断の機能的な関連性を確認した。
【0114】
免疫チェックポイントリガンドであるPVR及びPVRL2の発現は、AML患者に対して予後不良をもたらすものであり、これは恐らく、免疫回避に起因するものである。さらに、PBMCによるAML細胞の殺傷が、こうした新規のチェックポイント阻害物質による遮断よって増強され得ることを我々は示すことができた。さらに、PVR遮断抗体及び/またはPVRL2遮断抗体をAMG330に追加することによって、細胞傷害性が増進し得る。したがって、PVRの遮断及びPVRL2の遮断は、AMLの治療に有望な標的となる。
【0115】
AMLにおけるPVR、PVRL2、及びガレクチン-9の予後的影響
LightCycler96(Roche,Basel,Switzerland)を使用し、デノボAMLを有する140人の患者におけるPVR、PVRL2、及びガレクチン-9のmRNA発現を定量RT-PCRにおいて分析した。グリセルアルデヒド3-リン酸脱水素酵素(GAPDH)を参照遺伝子として用いた。プライマーは下記のものを使用した:PVRフォワード
、PVRリバース
、PVRL2フォワード
、PVRL2リバース
、ガレクチン-9フォワード
、ガレクチン-9リバース
、GAPDHフォワード
、GAPDHリバース
。それぞれの遺伝子についてカットオフを定義し、AML患者のコホートを低発現者と高発現者とに分割して比較した。多変量コックス回帰を使用すると、遺伝子発現と、患者の背景(年齢、核型、FLT3の変異状況)及び臨床的な生存データと、には相関が存在した。統計解析は、SPSS17(SPSS Inc,Chicago,IL)を用いて実施した。
【0116】
PVR、PVRL2、及びガレクチン-9のタンパク質発現
下記の抗体を使用し、AML細胞株及び初代AML細胞におけるPVR及びPVRL2のタンパク質発現をフローサイトメトリー(FACSCalibur及びCellQuestProソフトウェア、BD Biosciences)において分析した:一次抗体として、マウス抗PVRクローンD171(Thermo(商標)Scientific(商標)Lab Vision,Waltham,MA)及びマウス抗PVRL2クローンL14(Bottino et al,J Exp Med 2003;198:557-567)、ならびに二次抗体として、抗マウスAPC抗体。ガレクチン-9は、直接的にAPC標識されたマウス抗ヒト抗体(クローン9M1-3、Biozol,Eching,Germany)を用いて染色した。
【0117】
T細胞によって誘導されるAML細胞溶解
健康なドナーに由来するバフィーコートをT細胞源として使用した。Ficoll-Paqueを用いた遠心分離を使用し、単核球(MNC)画分を単離した。AML細胞は、CellTracker(商標)Green CMFDA色素(LifeTechnologies)で事前に1時間染色し、細胞培養培地で2回洗浄した。事前染色したAML標的細胞と、T細胞を含むMNC画分とを、1:6の比で混合し、96ウェルプレートに播種した(ウェル当たり200.000個の細胞)。
【0118】
PVR遮断抗体クローンであるD171(4~20μg/ml、Thermo(商標)Scientific(商標)Lab Vision)と共に、PVRL2遮断抗体クローンであるL14(5~20μlの細胞培養上清、Bottino et al,J Exp Med 2003;198:557-567)と共に、ガレクチン-9遮断抗体である9M3-1(10~50μg/ml、Biozol,Eching,Germany)と共に、または抗体添加無しで、細胞混合物を事前に2時間インキュベートした。2時間後、100~500pg/mlのAMG330を培養物に添加した。
24時間後、細胞混合物を7-AADで染色し、FACSCalibur及びCellQuestProソフトウェア(BD Biosciences)を使用し、フローサイトメトリーを介して分析した。CellTracker(商標)Green CMFDA色素による染色に基づき、AML標的細胞をゲートした。殺傷率は、標的細胞ゲート内に占める7-AAD陽性細胞の割合として決定した。
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