IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニーの特許一覧

特許7170544半結晶性ポリ乳酸系フィルムを含むグラフィック物品
<>
  • 特許-半結晶性ポリ乳酸系フィルムを含むグラフィック物品 図1
  • 特許-半結晶性ポリ乳酸系フィルムを含むグラフィック物品 図2
  • 特許-半結晶性ポリ乳酸系フィルムを含むグラフィック物品 図3
  • 特許-半結晶性ポリ乳酸系フィルムを含むグラフィック物品 図4
  • 特許-半結晶性ポリ乳酸系フィルムを含むグラフィック物品 図5
  • 特許-半結晶性ポリ乳酸系フィルムを含むグラフィック物品 図6
  • 特許-半結晶性ポリ乳酸系フィルムを含むグラフィック物品 図7
  • 特許-半結晶性ポリ乳酸系フィルムを含むグラフィック物品 図8
  • 特許-半結晶性ポリ乳酸系フィルムを含むグラフィック物品 図9
  • 特許-半結晶性ポリ乳酸系フィルムを含むグラフィック物品 図10
  • 特許-半結晶性ポリ乳酸系フィルムを含むグラフィック物品 図11
  • 特許-半結晶性ポリ乳酸系フィルムを含むグラフィック物品 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】半結晶性ポリ乳酸系フィルムを含むグラフィック物品
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20221107BHJP
   B41M 1/30 20060101ALI20221107BHJP
   C09D 11/02 20140101ALI20221107BHJP
   C08L 67/04 20060101ALI20221107BHJP
   C08L 31/04 20060101ALI20221107BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20221107BHJP
【FI】
B32B27/36
B41M1/30 Z
C09D11/02
C08L67/04 ZBP
C08L31/04 D
C08L101/16
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018566820
(86)(22)【出願日】2017-06-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-10
(86)【国際出願番号】 US2017036686
(87)【国際公開番号】W WO2017222824
(87)【国際公開日】2017-12-28
【審査請求日】2020-06-08
(31)【優先権主張番号】62/352,639
(32)【優先日】2016-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ,ニン
(72)【発明者】
【氏名】ニールセン,ジョン エー.
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-006615(JP,A)
【文献】特開2011-136428(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101397394(CN,A)
【文献】特表2006-503172(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0287237(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0296015(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0257676(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/00
B41M 1/00
C08J 5/18
C08L 67/00
C08L 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のフィルム層を含む物品であって、前記第1のフィルム層は、
半結晶性ポリ乳酸ポリマーを、単独で、又は非晶質ポリ乳酸ポリマーと組み合わせて含むポリ乳酸ポリマーと、
10~50重量%の範囲の量で存在する、25℃~50℃のTgを有するポリ酢酸ビニルポリマーと、
5~35重量%の範囲の量で存在する可塑剤と、
を含み、
前記ポリ酢酸ビニルポリマー及び前記可塑剤の重量は、前記ポリ乳酸ポリマー、ポリ酢酸ビニルポリマー及び可塑剤の総量を基準としたものであり、
前記第1のフィルム層は、80℃で24時間経時劣化させたときに可塑剤の移行を呈さず、
前記物品はグラフィックフィルムである、物品。
【請求項2】
前記フィルム層の主表面に近接するグラフィックを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記グラフィックが、前記フィルム層の主表面上に配置されている、請求項1又は2に記載の物品。
【請求項4】
前記グラフィックが、乾燥及び/又は硬化したインク層を含む、請求項3に記載の物品。
【請求項5】
前記インク層が、乾燥及び/若しくは硬化した放射線硬化インク、有機溶媒系インク、又は水系インクである、請求項のいずれか一項に記載の物品。
【請求項6】
前記グラフィック上に配置されたトップコート層か、又は接着剤層により前記グラフィックに接着しているカバーフィルムを更に含む、請求項2~5のいずれか一項に記載の物品。
【請求項7】
前記カバーフィルムが、半結晶性ポリ乳酸ポリマーを含む、請求項6に記載の物品。
【請求項8】
前記ポリ酢酸ビニルポリマーが、75,000g/モル~750,000g/モルの範囲の分子量を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の物品。
【請求項9】
核形成剤を、0.01重量%~1重量%の範囲の量で更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の物品。
【請求項10】
前記フィルムは、50%~600%の引張伸び、および50MPa~750MPaの引張弾性率を有する請求項1~9のいずれか一項に記載の物品。
【請求項11】
前記フィルムが、以下の特性:
i)前記フィルムは、少なくとも-5℃および30℃未満のTgを有する、
ii)前記フィルムは、1回目の加熱走査で10J/gより大きく、かつ40J/g未満の、正味融解吸熱量ΔHnm1を有する、
iii)前記フィルムは、動的機械分析により決定される引張貯蔵弾性率が、2℃/分の速度で加熱したときに、-40℃~125℃の温度範囲で少なくとも10MPaおよび10,000MPa未満である、
iv)前記フィルムは、動的機械分析により決定される引張貯蔵弾性率が、2℃/分の速度で加熱したときに、25℃~80℃の温度範囲で少なくとも5、6、7、8、9又は10MPaである、
のいずれか1つ又は組み合わせによって更に特徴付けられる、請求項1~10のいずれか一項に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一実施形態において、半結晶性ポリ乳酸ポリマーと、少なくとも25℃のTgを有するポリ酢酸ビニルポリマーと、可塑剤と、を含む第1のフィルム層を含む物品であって、グラフィックフィルムである、物品が記載される。
【図面の簡単な説明】
【0002】
図1】様々なグラフィックフィルムの模式的断面図である。
図2】様々なグラフィックフィルムの模式的断面図である。
図3】様々なグラフィックフィルムの模式的断面図である。
図4】様々なグラフィックフィルムの模式的断面図である。
図5】様々なグラフィックフィルムの模式的断面図である。
図6】様々なグラフィックフィルムの模式的断面図である。
図7】様々なグラフィックフィルムの模式的断面図である。
図8】様々なグラフィックフィルムの模式的断面図である。
図9】冷却中の鋭い結晶化ピーク発熱線を示す、核形成剤を含む組成物の代表的なDSCプロファイルである。
図10】冷却中に結晶化ピーク発熱を示さなかった、核形成剤を含まない組成物の代表的なDSCプロファイルである。
図11】実施例12の動的機械分析の結果を示す。
図12】実施例16の動的機械分析の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0003】
本明細書に記載されるグラフィック物品は、少なくとも1つの層、すなわちポリ乳酸(polylactic acid「PLA」)ポリマーフィルムを含む第1のフィルム層を含む。乳酸は、コーンスターチ又は甘蔗糖の細菌発酵によって得られる再生可能材料であり、したがって、天然の材料、言い換えれば「バイオマス」材料であると考えられる。乳酸には、L-乳酸((S)-乳酸としても知られる)及びD-乳酸((R)-乳酸としても知られる)の2種類の光学異性体があり、以下に示す。
【化1】
【0004】
乳酸のポリエステル化により、ポリ乳酸ポリマーが得られる。
【0005】
より典型的には、乳酸は、典型的には、以下に示すように、環状ラクチドモノマーに変換され、ラクチドは開環重合する。
【化2】
【0006】
得られるポリマー材料は、典型的にはポリラクチドポリマーと呼ばれる。
【0007】
結晶化度、ひいては多くの重要な特性は、使用されるL環状ラクチドモノマーに対する、D及び/又はメソ-ラクチドの比によって主に調節される。同様に、乳酸の直接ポリエステル化によって調製されたポリマーでは、結晶化度は、L-乳酸から誘導された重合単位に対する、D-乳酸から誘導された重合単位の比によって主に調節される。
【0008】
本明細書に記載のグラフィック物品の第1のフィルム層は、一般に、単独で又は非晶質PLAポリマーと組み合わせて、半結晶性PLAポリマーを含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、半結晶性PLAポリマーは、典型的に、少なくとも90、91、92、93、94、又は95重量%のL-乳酸誘導重合単位(例えばL-ラクチド)と、10、9、8、7、6、又は5重量%以下のD-乳酸誘導重合単位(例えばD-ラクチド及び/又はメソ-ラクチド)とを含む。更にその他の実施形態では、半結晶性PLAポリマーは、少なくとも96重量%の、L-乳酸から誘導された重合単位(例えばL-ラクチド)、及び4、3、又は2重量%未満の、D-乳酸から誘導された重合単位(例えばD-ラクチド及び/又はメソ-ラクチド)を含む。同様に、フィルムは、フィルム中の半結晶性PLAポリマーの濃度に応じて、更に低濃度の、D-乳酸から誘導された重合単位(例えばD-ラクチド及び/又はメソ-ラクチド)を含む。例えば、フィルム組成物が、約2重量%のD-ラクチド及び/又はメソ-ラクチドを有する、半結晶性PLAを15重量%含む場合、フィルム組成物は、約0.3重量%のD-ラクチド及び/又はメソ-ラクチドを含む。フィルムは、一般に、9、8、7、6、5、4、3、2、1.5、1.0、0.5、0.4、0.3、0.2、又は0.1重量%以下の、D-乳酸から誘導された重合単位(例えばD-ラクチド及び/又はメソ-ラクチド)を含む。半結晶性PLAの好適例としては、Natureworks(商標)Ingeo(商標)4042D及び4032Dが挙げられる。これらのポリマーは、約200,000g/モルの分子量Mw;約100,000g/モルのMn;及び約2.0の多分散度を有するものとして文献に記載されている。
【0010】
あるいは、半結晶性PLAポリマーは、少なくとも90、91、92、93、94、又は95重量%の、D-乳酸から誘導された重合単位(例えばD-ラクチド)、及び10、9、8、7、6、又は5重量%以下の、L-乳酸から誘導された重合単位(例えばL-ラクチド及び/又はメソ-ラクチド)を含み得る。更にその他の実施形態では、半結晶性PLAポリマーは、少なくとも96重量%の、D-乳酸から誘導された重合単位(例えばD-ラクチド)、及び4、3、又は2重量%未満の、L-乳酸から誘導された重合単位(例えばL-ラクチド及び/又はメソ-ラクチド)を含む。同様に、フィルムは、フィルム中の半結晶性PLAポリマーの濃度に応じて、更に低濃度の、L-乳酸から誘導された重合単位(例えばL-ラクチド及び/又はメソ-ラクチド)を含む。例えば、フィルム組成物が、約2重量%のL-ラクチド及び/又はメソ-ラクチドを有する、半結晶性PLAを15重量%含む場合、フィルム組成物は、約0.3重量%の、L-ラクチド及び/又はメソ-ラクチドを含む。フィルムは、一般に、9、8、7、6、5、4、3、2、1.5、1.0、0.5、0.4、0.3、0.2、又は0.1重量%以下の、L-乳酸から誘導された重合単位(例えばL-ラクチド及び/又はメソ-ラクチド)を含む。このような半結晶性PLAの例は、「Synterra(商標)PDLA」として入手可能である。
【0011】
第1のフィルム層は、半結晶性PLAとブレンドされた非晶質PLAポリマーを更に含んでもよい。有機溶媒系インクによるフィルムの印刷適性を改善するために、非晶質PLAポリマーを含めることが好ましい場合がある。
【0012】
いくつかの実施形態において、非晶質PLAは、典型的に、90重量%以下のL-乳酸誘導重合単位と、10重量%超のD乳酸誘導重合単位(例えばD-乳酸ラクチド及び/又はメソ-ラクチド)とを含む。いくつかの実施形態では、非晶質PLAは、少なくとも80又は85重量%の、L-乳酸から誘導された重合単位(例えばL-ラクチド)を含む。いくつかの実施形態において、非晶質PLAは、20又は15重量%以下のD-乳酸誘導重合単位(例えばD-ラクチド及び/又はメソ-ラクチド)を含む。好適な非晶質PLAとしては、Natureworks(商標)Ingeo(商標)4060Dグレードが挙げられる。このポリマーは、約180,000g/モルの分子量Mwを有することが文献に記載されている。
【0013】
あるいは、非晶質PLAは、典型的には、90重量%以下の、D-乳酸から誘導された重合単位、及び10重量%より多い、L乳酸から誘導された重合単位(例えばL-乳酸ラクチド及び/又はメソ-ラクチド)を含む。いくつかの実施形態では、非晶質PLAは、少なくとも80又は85重量%の、D-乳酸から誘導された重合単位(例えばD-ラクチド)を含む。いくつかの実施形態では、非晶質PLAは、20又は15重量%以下の、L-乳酸から誘導された重合単位(例えばL-ラクチド及び/又はメソ-ラクチド)を含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、半結晶性PLAポリマー及び非晶質PLAポリマーは両方とも、一般に、高濃度のL-乳酸誘導重合単位(例えばL-ラクチド)とともに、低濃度のD-乳酸誘導重合単位(例えばD-ラクチド)を含む。
【0015】
他の実施形態において、半結晶性PLAポリマー及び非晶質PLAポリマーは両方とも、一般に、高濃度の、D-乳酸誘導重合単位(例えばD-ラクチド)とともに、低濃度のL-乳酸誘導重合単位(例えばL-ラクチド)を含む。
【0016】
PLAポリマーは、好ましくは、210℃、質量2.16kgで、25、20、15、又は10g/分以下のメルトフローレート(ASTM D1238に従って測定される)を有する「フィルムグレード」ポリマーである。いくつかの実施形態では、PLAポリマーは、210℃で10又は9g/分未満のメルトフローレートを有する。メルトフローレートは、PLAポリマーの分子量に関連している。PLAポリマーは典型的には、ポリスチレン標準物質を用いてゲル浸透クロマトグラフィによって測定される、少なくとも50,000g/モル、75,000g/モル、100,000g/モル、125,000g/モル、150,000g/モルの重量平均分子量(Mw)を有する。いくつかの実施形態では、分子量(Mw)は、400,000g/mol、350,000g/mol又は300,000g/mol以下である。
【0017】
PLAポリマーは、典型的には、約25~150MPaの範囲の引張強度、約1000~7500MPaの範囲の引張弾性率、及び少なくとも3、4、又は5から約10又は15%までの範囲の引張伸びを有する。いくつかの実施形態では、PLAポリマーの破断点引張強度は少なくとも30、35、40、45又は50MPaである。いくつかの実施形態では、PLAポリマーの引張強度は125、100又は75MPa以下である。いくつかの実施形態では、PLAポリマーの引張弾性率は少なくとも1500、2000、2500又は3000MPaである。いくつかの実施形態では、PLAポリマーの引張弾性率は7000、6500、6000、5500、5000、又は4000MPa以下である。このような引張及び伸び特性は、ASTM D882によって測定することができ、典型的には、このようなPLAポリマーの製造業者又は供給業者から報告されている。
【0018】
PLAポリマーは一般に、以下の実施例に記載されているとおり示差走査熱量測定(DSC)により決定することができる、約50~65℃の範囲のガラス転移温度Tgを有する。いくつかの実施形態では、Tgは少なくとも51、52、53、54又は55℃である。
【0019】
半結晶性PLAポリマーは、典型的には、140~175℃、180℃、185℃又は190℃の範囲の(例えばピーク)融点を有する。いくつかの実施形態では、(例えばピーク)融点は少なくとも145、150又は155℃である。典型的には半結晶性PLAを、単独で、又は非晶質PLAポリマーと組み合わせて含むPLAポリマーは、180、190、200、210、220又は230℃の温度で溶融加工することができる。
【0020】
一実施形態では、PLAポリマーは結晶化してステレオコンプレックスを形成することができる(Macromolecules,1987,20(4),pp904~906)。PLAステレオコンプレックスは、PLLA(主としてL-乳酸又はL-ラクチド単位から重合したPLAホモポリマー)を、PDLA(主としてD-乳酸又はD-ラクチド単位から重合したPLAホモポリマー)とブレンドすると形成される。PLAのステレオコンプレックス結晶は、この結晶の融解温度が210~250℃の範囲であるため検討対象となる。ステレオコンプレックスPLA結晶の融解温度が高くなると、PLA系材料の熱安定性が向上する。PLAステレオコンプレックス結晶により、PLAホモポリマーの結晶体が有効に核生成することも知られている(Polymer,Volume 47,Issue 15,12 July 2006,Page 5430)。この核生成効果は、PLA系材料の全体の結晶化度を増加させ、したがって材料の熱安定性が向上する。
【0021】
第1のフィルム層は典型的に、PLAポリマー、第2の(例えばポリ酢酸ビニル)ポリマー、及び可塑剤の総重量を基準として、少なくとも40、45又は50重量%の量で、半結晶性PLAポリマー又は半結晶性PLAと非晶質PLAとのブレンドを含む。PLAポリマーの総量は典型的に、PLAポリマー、第2の(例えばポリ酢酸ビニル)ポリマー、及び可塑剤の総重量の、90、85、80、75、又は70重量%以下である。
【0022】
フィルム組成物が半結晶性PLAと非晶質PLAとのブレンドを含む場合、半結晶性PLAの量は、典型的には、PLAポリマー、第2の(例えばポリ酢酸ビニル)ポリマー、及び可塑剤の総重量に基づいて、少なくとも5、10、15又は20重量%である。いくつかの実施形態では、非晶質PLAポリマーの量は、PLAポリマー、第2の(例えばポリ酢酸ビニル)ポリマー、及び可塑剤の総重量に基づいて、10、15、25又は30重量%から、50、55又は60重量%以下の範囲である。非晶質PLAポリマーの量は、結晶性ポリマーの量より多くもよい。
【0023】
フィルム組成物は、ポリ酢酸ビニルポリマーなどの第2のポリマーを更に含む。第2のポリマーは、可塑剤の濃度(下記の実施例に記載の試験方法によって決定される)を可塑剤の移行なしで増加させることができるように、PLAと可塑剤との相溶性を改善できる。
【0024】
第2の(例えばポリ酢酸ビニル)ポリマーは、少なくとも25、30、35又は40℃のTgを有する。第2の(例えばポリ酢酸ビニル)ポリマーのTgは、典型的には80、75、70、65、60、55、50又は45℃以下である。
【0025】
第2の(例えばポリ酢酸ビニル)ポリマーは、典型的には、少なくとも50,000g/モル、75,000g/モル、100,000g/モル、125,000g/モル、150,000g/モル、175,000g/モル、200,000g/モル、225,000g/モル又は250,000g/モルの、重量又は数平均分子量(ポリスチレン標準物質を用いたサイズ排除クロマトグラフィにより決定される)を有する。いくつかの実施形態において、分子量(Mw)は、2,000,000g/モル、1,500,000g/モル、1,000,000g/モル、750,000g/モル、500,000g/モル、450,000g/モル、400,000g/モル、350,000g/モル又は300,000g/モル以下である。いくつかの実施形態では、第2の(例えばポリ酢酸ビニル)ポリマーの分子量は、PLAポリマーの分子量より高い。一実施形態では、第2の(例えばポリ酢酸ビニル)ポリマーは、10~50又は100mPasの範囲の、20℃での10重量%の酢酸エチル溶液中での粘度を有するものとして特徴付けることができる。別の実施形態では、第2の(例えばポリビニル)アセテートポリマーは、5~20mPasの範囲の、20℃での5重量%の酢酸エチル溶液中での粘度を有するものとして特徴付けることができる。
【0026】
いくつかの有利な実施形態では、第2のポリマーが、ポリ酢酸ビニルポリマーである。ポリ酢酸ビニルポリマーは、典型的にはホモポリマーである。しかし、ポリ酢酸ビニルポリマーのTgが前述の範囲内であるという条件で、ポリマーは、比較的低濃度の、他のコモノマーから誘導された繰り返し単位を含んでもよい。他のコモノマーとしては、例えば、アクリル酸及びメチルアクリレートなどのアクリルモノマー、塩化ビニル及びビニルピロリドンなどのビニルモノマー、並びにエチレンなどのC~Cアルキレンモノマーが挙げられる。ポリ酢酸ビニルポリマーの、他のコモノマーから誘導された繰り返しの総濃度は、典型的には、10、9、8、7、6、又は5重量%以下である。いくつかの実施形態では、ポリ酢酸ビニルポリマーの、他のコモノマーから誘導された繰り返しの総濃度は、典型的には、4、3、2、1又は0.5重量%以下である。ポリ酢酸ビニルポリマーは、典型的には、低レベルで加水分解されている。ビニルアルコール単位に加水分解されたポリ酢酸ビニルポリマーの重合単位は、一般に、ポリ酢酸ビニルポリマーの、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1又は0.5モル%以下である。
【0027】
ポリ酢酸ビニルポリマーは、様々な供給元から市販されており、Wackerから商品名VINNAPAS(商標)で、Vinavil Americas Corporation,West Chicago,ILから商品名VINAVILで市販されている。PLAと組み合わせる前、このようなポリ酢酸ビニルポリマーは、(例えば白色の)固体粉末又は無色のビーズ形態であることが多い。いくつかの実施形態では、ポリ酢酸ビニルポリマー(PLAポリマーと組み合わせる前は例えば粉末)は水再分散性ではない。
【0028】
単一の第2の(例えばポリ酢酸ビニル)ポリマー又は2種以上の第2の(例えばポリ酢酸ビニル)ポリマーの組み合わせを利用することができる。
【0029】
本明細書に記載されている第1のフィルム層中に存在する第2の(例えばポリ酢酸ビニル)ポリマーの総量は、PLAポリマー、第2の(例えばポリ酢酸ビニル)ポリマー、及び可塑剤の総重量を基準として、少なくとも約10重量%であり、典型的には約50、45、又は40重量%以下である。いくつかの実施形態では、第2の(例えばポリ酢酸ビニル)ポリマーの濃度は、少なくとも15又は20重量%の量で存在する。
【0030】
いくつかの実施形態において、第1のフィルム層は、典型的には、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、又は20℃未満のTgを有し、(実施例に記載されている試験方法に従って)80℃で24時間経時劣化させたときに可塑剤の移行を呈さない。この特性は、第2の(例えばポリ酢酸ビニル)ポリマーが含まれることに起因する。
【0031】
第1のフィルム層は、可塑剤を更に含む。フィルム組成物中の可塑剤の総量は、典型的には、PLAポリマー、第2の(例えばポリ酢酸ビニル)ポリマー、及び可塑剤の総重量に基づいて、約5重量%~約35、40、45又は50重量%の範囲である。いくつかの実施形態では、可塑剤の濃度は、フィルム組成物の少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15重量%である。
【0032】
PLAを可塑化可能な様々な可塑剤が、当該技術分野において記載されている。可塑剤は一般に25℃で液体であり、典型的には、約200g/モル~10,000g/モルの範囲の分子量を有する。いくつかの実施形態では、可塑剤の分子量は5,000g/モル以下である。他の実施形態では、可塑剤の分子量は、4,000、3,000、2,000又は1,000g/モル以下である。可塑剤の様々な組み合わせを利用することができる。
【0033】
可塑剤は、好ましくは、1つ以上のアルキルエステル基若しくは脂肪族エステル基又はエーテル基を含む。典型的には、多官能性エステル及び/又はエーテルが好ましい。これらとしては、アルキルリン酸エステル、ジアルキルエーテルジエステル、トリカルボン酸エステル、エポキシ化油及びエステル、ポリエステル、ポリグリコールジエステル、アルキルアルキルエーテルジエステル、脂肪族ジエステル、アルキルエーテルモノエステル、クエン酸エステル、ジカルボン酸エステル、植物油及びそれらの誘導体、並びにグリセリンのエステルが挙げられる。このような可塑剤には一般に、芳香族基及びハロゲン原子がなく、生分解性であることが予期される。このような可塑剤は、通常、C~C10の炭素鎖長を有する、直鎖又は分枝アルキル末端基を更に含む。
【0034】
一実施形態では、可塑剤は、以下の式(I)
【化3】
[式中、
Rは独立して、同じであっても又は異なっていてもよいアルキル基であり、
R’はH又は(C~C10)アシル基である]で表されるバイオ系クエン酸系可塑剤である。
【0035】
Rは、典型的には、独立して、C~C10の炭素鎖長を有する直鎖又は分枝アルキル基である。いくつかの実施形態では、RはC~C又はC~C直鎖アルキル基である。いくつかの実施形態では、R’はアセチルである。他の実施形態において、少なくとも1つのRは、C以上の炭素鎖長を有する分枝アルキル基である。いくつかの実施形態では、分枝アルキル基は8以下の炭素鎖長を有する。
【0036】
代表的なクエン酸系可塑剤としては、例えば、トリエチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート、トリヘキシルシトレート、アセチルトリヘキシルシトレート、トリオクチルシトレート、アセチルトリオクチルシトレート、ブチリルトリヘキシルシトレート、アセチルトリス-3-メチルブチルシトレート、アセチルトリス-2-メチルブチルシトレート、アセチルトリス-2-エチルヘキシルシトレート、及びアセチルトリス-2-オクチルシトレートが挙げられる。他の代表的なクエン酸系可塑剤は、Vertellus Specialties,Incorporated(Indianapolis,IN)から商品名CITROFLEX A-4 PLASTICIZERで入手可能なアセチルトリ-n-ブチルシトレートである。
【0037】
別の実施形態では、可塑剤は、ポリエチレングリコール骨格及びエステルアルキル末端基を含む。ポリエチレングリコール部分の分子量は、典型的には少なくとも100、150又は200g/モル、かつ1,000g/モル以下である。いくつかの実施形態では、ポリエチレングリコール部分は、900、800、700、又は600g/モル以下の分子量を有する。例としては、Hallstar,Chicago,ILから商品名「TegMeR(商標)809」で販売されているポリエチレングリコール(400)ジエチルヘキサノエート、及びHallstar,Chicago,ILから商品名「TegMeR(商標)804」で販売されているテトラエチレングリコールジエチルヘキサノエートが挙げられる。
【0038】
別の実施形態において、可塑剤は、Eastman,Kingsport,TNからAdmex(商標)6995として市販されているものなどの、ポリマーアジペート(すなわち、アジピン酸から誘導されたポリエステル)として特徴付けることができる。
【0039】
別の実施形態では、可塑剤は、米国特許第8,158,731号に記載されているものなど、置換又は非置換の脂肪族ポリエステルであり、本明細書に参照により組み込まれる。
【0040】
いくつかの実施形態では、脂肪族ポリエステル可塑剤は、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、及び/又はセバシン酸から誘導し得る繰り返し単位を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるポリマーブレンドのポリエステルは、1,3-プロパンジオール及び/又は1,2-プロパンジオールから誘導し得る繰り返し単位を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるポリマーブレンドのポリエステルは、1-オクタノール、1-デカノール、及び/又はそれらの混合物から誘導し得る1つ又は2つの停止剤単位を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるポリマーブレンドのポリエステルは、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、及び/又はセバシン酸から誘導し得る繰り返し単位と、1,3-プロパンジオール及び/又は1,2-プロパンジオールから誘導し得る繰り返し単位と、1-オクタノール、1-デカノール、及び/又はそれらの混合物から誘導し得る1つ又は2つの停止単位とを含む。
【0041】
いくつかの実施形態において、脂肪族ポリエステル可塑剤は、以下の式を有する。
【化4】
[式中、nは1~1000であり、Rは、共有結合及び1~18個の炭素原子を有する置換又は非置換の脂肪族炭化水素基からなる群から選択され、Rは1~20個の炭素原子を有する置換又は非置換の脂肪族炭化水素基であり、Xは、-OH、-OC-R-COH及び-OC-R-COからなる群から選択され、Xは、-H、-R-OH、及びRからなる群から選択され、Rは1~20個の炭素原子を有する置換又は非置換の脂肪族炭化水素基である]を有する。いくつかの実施形態において、ポリエステルは上記式を有し、ただし、Xが-OH又はOC-R-COHである場合、XはRであることを条件とする。
【0042】
繰り返し単位の数nは、脂肪族ポリエステル可塑剤が前述の分子量を有するように選択される。
【0043】
いくつかの実施形態では、R、R及び/又はRはアルキル基である。Rアルキル基は、例えば、1~18個の炭素原子、1~10個の炭素原子、1~8個の炭素原子、2~7個の炭素原子、2~6個の炭素原子、2~5個の炭素原子、2~4個の炭素原子、及び/又は3個の炭素原子を有し得る。例えば、Rは、-(CH-、-(CH-、-(CH-及び-(CH-からなる群から選択することができる。Rアルキル基は、例えば、1~20個の炭素原子、1~10個の炭素原子、1~8個の炭素原子、2~7個の炭素原子、2~6個の炭素原子、2~5個の炭素原子、2~4個の炭素原子、及び/又は3個の炭素原子を有し得る。例えば、Rは、-(CH-、-CHCH(CH)-及び-CH(CH)CH-からなる群から選択することができる。Rアルキル基は、例えば、1~20個の炭素原子、1~18個の炭素原子、2~16個の炭素原子、3~14個の炭素原子、4~12個の炭素原子、6~12個の炭素原子、8~12個の炭素原子、及び/又は8~10個の炭素原子を有し得る。例えば、Rはまた、-(CHCH及び--(CHCHを含む混合であってもよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、Rは、1~10個の炭素を有するアルキル基であり、Rは1~10個の炭素を有するアルキル基であり、Rは1~20個の炭素を有するアルキル基である。他の実施形態では、Rは、2~6個の炭素を有するアルキル基であり、Rは2~6個の炭素を有するアルキル基であり、Rは8~12個の炭素を有するアルキル基である。更に他の実施形態では、Rは、2~4個の炭素を有するアルキル基であり、Rは2~3個の炭素を有するアルキル基であり、Rは8~10個の炭素を有するアルキル基である。更に他の実施形態において、Rは、-(CH-、-(CH-、-(CH-、及び-(CH-からなる群から選択され、Rは、-(CH-、-CHCH(CH)-、及び-CH(CH)CH-からなる群から選択され、Rは、-(CHCH及び-(CHCHを含む混合物である。
【0045】
脂肪族ポリエステル可塑剤は、約0~約20、又はそれ以上の酸価を有し得る。ポリエステルの酸価は、ポリエステル試料1g中の遊離酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数を測定する、既知の方法によって測定することができる。
【0046】
酸価が低い可塑剤は、典型的に、フィルムの貯蔵寿命安定性及び/又は耐久性にとって好ましい。いくつかの実施形態では、可塑剤の酸価は、10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1以下であることが好ましい。
【0047】
脂肪族ポリエステル可塑剤は、約0~約110、例えば、約1~約40、約10~約30、約15~約25、約30~約110、約40~約110、約50~約110、及び/又は約60~約90の水酸基価を有し得る。ポリエステルはまた、約110より高い水酸基価を有し得る。ポリエステルの水酸基価は、ASTM試験方法D4274に記載されている方法などの、水酸基を測定する既知の方法により測定できる。
【0048】
1つの代表的な脂肪族ポリエステル可塑剤は、Hallstar,Chicago,ILから商品名HALLGREEN R-8010(商標)として販売されている。
【0049】
いくつかの実施形態において、可塑剤化合物は、典型的に、水酸基をほとんど又は全く有さない。いくつかの実施形態において、可塑剤化合物の総重量に対する水酸基の重量%百分率は10、9、6、7、6、5、4、3、2、1重量%以下である。いくつかの実施形態では、可塑剤化合物は水酸基を含まない。よって本実施形態では、可塑剤はグリセロールでも水でもない。
【0050】
結晶化速度を加速するために、核形成剤もまた、PLAフィルム組成物中に存在してよい。好適な核形成剤としては、例えば無機鉱物、有機化合物、有機酸及びイミドの塩、PLAの加工温度より高い融点を有する微細化結晶性ポリマー、並びに前述のものの2つ以上の組み合わせが挙げられる。好適な核形成剤は典型的には、少なくとも25ナノメートル、又は少なくとも0.1ミクロンの平均粒径を有する。2種以上の異なる核形成剤の組み合わせを使用してもよい。
【0051】
有用な核形成剤の例としては、例えば、タルク(含水ケイ酸マグネシウム-HMg(SiO又はMgSi10(OH))、シリカ(SiO)、チタニア(TiO)、アルミナ(Al)、酸化亜鉛、サッカリンナトリウム塩、ケイ酸カルシウム、安息香酸ナトリウム、チタン酸カルシウム、芳香族スルホン酸塩誘導体、窒化ホウ素、銅フタロシアニン、フタロシアニン、サッカリンナトリウム塩、アイソタクチックポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレートなどが挙げられる。
【0052】
有機核形成剤が存在する場合、核形成剤は、典型的には、フィルム組成物の総重量に基づいて、少なくとも約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.1、0.15又は0.2重量%から、約1、2、3、4又は5重量%以下の範囲の濃度である。核形成剤が、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛及びタルクなどの無機酸化物充填剤である場合、濃度はより高くてもよい。
【0053】
一実施形態では、核形成剤は、フェニルホスホン酸亜鉛、フェニルホスホン酸マグネシウム、4-tert-ブチルフェニルホスホン酸二ナトリウム、及びジフェニルホスフィン酸ナトリウムなどのリン含有芳香族有機酸の塩として特徴付けることができる。
【0054】
1つの有利な核形成剤は、以下の化学式
【化5】
を有するフェニルホスホン酸亜鉛であり、日産化学工業から商品名「Ecopromote」で入手可能である。
【0055】
いくつかの実施形態では、無機充填剤を使用して、保管及び輸送中にフィルムの層又はロールがブロッキング又はスティッキングするのを防ぐことができる。無機充填剤としては、表面改質されているか、又はされていないかのいずれかの、粘土及び鉱物が挙げられる。例としては、タルク、ケイソウ土、シリカ、マイカ(雲母)、カオリン、二酸化チタン、パーライト、及びウォラストナイトが挙げられる。
【0056】
有機バイオマテリアル充填剤としては、改質されているか、又はされていないかのいずれかの、様々な林産物及び農産物が挙げられる。例としては、セルロース、コムギ、デンプン、変性デンプン、キチン、キトサン、ケラチン、農産物から誘導されたセルロース系材料、グルテン、穀粉及びグアーガムが挙げられる。「穀粉」という用語は、一般に、1種の同じ植物資源に由来するタンパク質含有画分及びデンプン含有画分を有するフィルム組成物に関し、タンパク質含有画分及びデンプン含有画分は互いに分離されてない。穀粉中に存在する典型的なタンパク質は、グロブリン、アルブミン、グルテニン、セカリン、プロラミン、グルテリンである。典型的な実施形態では、第1のフィルム層は、穀粉などの有機バイオマテリアル充填剤をほとんど又は全く含まない。よって、有機バイオマテリアル充填剤(例えば、穀粉)の濃度は、典型的には、全フィルム組成物の10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1重量%未満である。
【0057】
いくつかの実施形態では、第1のフィルム層は、脂肪酸誘導体などのブロッキング防止剤を含む。1つの好適なブロッキング防止剤は、Sukano Polymers Corporation(Duncan,SC)から商品名SUKANO DCS511で入手可能なものなど、PLAポリマー、5~10重量%の脂肪酸誘導体及び20~40重量%のシリカの混合物である。
【0058】
第1のフィルム層は、任意選択で1種以上の従来の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、抗酸化剤、安定剤、紫外線吸収剤、潤滑剤、加工助剤、静電気防止剤、着色剤、耐衝撃助剤、充填剤(例えばケイソウ土)、艶消し剤、難燃剤(例えばホウ酸亜鉛)、顔料(例えば二酸化チタン)などが挙げられる。充填剤又は顔料のいくつかの例としては、酸化亜鉛、二酸化チタンなどの無機酸化物材料、シリカ、カーボンブラック、炭酸カルシウム、三酸化アンチモン、金属粉末、雲母、黒鉛、タルク、セラミック微小球、ガラス又はポリマービーズ又は気泡、繊維、デンプンなどが挙げられる。
【0059】
存在する場合、添加剤の量は、少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4又は0.5重量%であり得る。いくつかの実施形態において、添加剤の量は、フィルム組成物全体の25、20、15、10又は5重量%以下である。他の実施形態では、添加剤の濃度は、全フィルム組成物の40、45、50、55又は約65重量%以下の範囲であり得る。
【0060】
第1のPLA系フィルムは、本明細書に記載されているように、モノリシックフィルムであっても多層フィルムのフィルム層であってもよい。第1のPLA系フィルム又はフィルム層は、典型的に無配向であるが、任意選択で配向されていてもよい。
【0061】
フィルムがモノリシックフィルムである場合、フィルムの厚さは、典型的に、少なくとも10、15、20、又は25ミクロン(1mil)~500ミクロン(20mil)の厚さである。いくつかの実施形態では、フィルムの厚さは2500、2000、1500、1000、800、400、300、200、150又は50ミクロン以下である。フィルムは、特に50milより厚い厚さでは、枚葉の形態であってもよい。(例えばより薄い)フィルムは、ロール品の形態であってもよい。
【0062】
フィルムが多層フィルムのフィルム層である場合、多層フィルムは、典型的に、前述のとおりの厚さを有する。しかし、フィルム層の厚さは、10ミクロン未満であってもよい。一実施形態では、本明細書に記載のフィルム組成物を含むフィルム層は外層であり、すなわち換言すればスキン層である。スキン層の上に第2のフィルム層が配置されている。第2のフィルム層は、典型的にはスキン層と異なる組成を有する。いくつかの実施形態において、第2のフィルムは、第1のフィルム層とは異なる組成を有するPLA系フィルムである。
【0063】
本明細書に記載の第1のフィルム組成物の調製において、PLA、PVAcなどの第2のポリマー、可塑剤、核形成剤等は加熱され(例えば、180~250℃)、当業者に既知である任意の好適な手段を用いて十分に混合される。例えば、フィルム組成物は、(例えば、Brabender)混合機、押出成形機、混練機などを使用して混合してもよい。
【0064】
混合の後、フィルム組成物は、プロセスの規模及び利用可能な設備を考慮に入れて、既知のフィルム形成技術を使用して(例えばキャスト)フィルムに形成してもよい。いくつかの実施形態では、PLA系フィルム組成物をプレス機に送り、次に圧縮し固化して枚葉のPLAフィルムを形成する。他の実施形態では、PLA系フィルム組成物は、ダイを通して、好適な冷却温度に維持されたキャスティングロール上に押し出して、連続長のPLA系フィルムを形成することができる。いくつかの実施形態において、フィルム押出し中、キャスティングロール温度は、キャスティングロール上でPLAフィルムの結晶体を維持するために、好ましくは80~120℃に維持される。
【0065】
本明細書に記載のPLA系フィルムは、様々なグラフィック物品に使用することができる。いくつかの実施形態において、PLAフィルムは、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルムと同様の又は更に良好な特性を有し、したがってPVCフィルムの代わりに使用することができる。したがって、本明細書に記載のフィルム及び物品は、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルムもフタレート系可塑剤も含まなくてよい。
【0066】
フィルム及びフィルム組成物は、実施例に記載の試験方法により決定される様々な特性を有することができる。
【0067】
第1のPLA系フィルムは、一般に、約-20℃、-15℃、又は-10℃~40℃の範囲、すなわちPLAポリマー及び第2の(例えばポリ酢酸ビニル)ポリマーの両方のTgより低いガラス転移温度を有する。いくつかの実施形態において、フィルムは、少なくとも-5、-4、-3、-2、-1又は0℃のガラス転移温度を有する。いくつかの実施形態において、フィルムは、35℃又は30℃又は25℃未満のガラス転移温度を有する。いくつかの実施形態において、フィルムは、20℃、19℃、又は18℃未満のガラス転移温度を有する。
【0068】
第1のPLA系フィルムは、典型的に、少なくとも約150℃又は155℃~約165℃、170℃、175℃、180℃、185℃又は190℃の範囲に及ぶ、融解温度Tm1又はTm2を有する。更に、フィルム組成物は、80℃、90℃、又は100℃~最大120℃、130℃、又は140℃の範囲に及ぶ、結晶化ピーク温度Tを有し得る。
【0069】
正味の融解吸熱量は、融解吸熱エネルギーから結晶化発熱エネルギーを減じたものである(後述の実施例において更に詳細に記載されているとおり)。フィルム組成物(すなわち、溶融プレスされてフィルムになっていない、小型混練機から採取した)の正味の融解吸熱量は、2回目の加熱走査により決定するが、一方、(例えば溶融プレスされた)フィルムの正味の融解吸熱量は、1回目の加熱走査により決定する。米国特許第6,005,068号によれば、PLAフィルムは、約10J/g未満の正味の融解吸熱量を示す場合、非晶質とみなされる。フィルムが核形成剤を含む場合などの有利な実施形態では、フィルムの正味の融解エンタルピーであるΔHnm2及びΔHnm1はそれぞれ、10、11、12、13、14又は15J/gより大きく、かつ40、39、38、37、36又は35J/g未満である。
【0070】
一実施形態では、第1のPLA系フィルムは、-10~30℃のTg、及び前述のとおりの10J/gより大きくかつ40J/g未満の正味融解吸熱量ΔHnm1を有する。このようなフィルムは室温で柔軟であり、図11の動的機械分析(DMA)の結果により示されるように、高温までの加熱時に比較的高い機械的特性、例えば弾性率を有する。この実施形態において、フィルムは、引張貯蔵弾性率が、2℃/分の速度で加熱したときに、-40℃~125℃の温度範囲で少なくとも10MPa、典型的には10,000MPa未満である(すなわち、引張貯蔵弾性率は、2℃/分の速度で-40~125℃に加熱したとき、10MPa未満には低下しない)。いくつかの実施形態において、フィルムは、動的機械分析により決定される引張貯蔵弾性率が、2℃/分の速度で加熱したときに、25℃~80℃の温度範囲で少なくとも5、6、7、8、9、又は10MPaである。対照的に、図12に示すように、フィルムが非常に低い正味融解吸熱量を有する場合、温度が室温23℃を超えて上昇したとき、弾性率などの機械的特性は劇的に低下した。
【0071】
第1のPLA系フィルムは、後述の実施例に更に記載されているように、標準引張試験を利用して評価することができる。フィルムの引張強度は、典型的には少なくとも5又は10MPaであり、かつ典型的には、フィルムを製造するために利用されるPLA及び第2の(例えばポリ酢酸ビニル)ポリマーの引張強度未満である。いくつかの実施形態では、引張強度は、45、40、35、34、33、32、31、又は30MPa以下である。フィルムの伸びは、典型的には、フィルムを製造するために利用されるPLA及び第2の(例えばポリ酢酸ビニル)ポリマーの伸びより大きい。いくつかの実施形態では、伸びは、少なくとも30、40又は50%である。他の実施形態においては、伸びは、少なくとも100%、150%、200%、250%又は300%である。いくつかの実施形態において、伸びは、600%又は500%以下である。フィルムの引張弾性率は、典型的には少なくとも50、100、又は150MPaである。いくつかの実施形態において、引張弾性率は、少なくとも200、250又は300MPaである。いくつかの実施形態では、引張弾性率は、1000MPa、750MPa又は650MPa以下である。
【0072】
いくつかの実施形態において、第1のPLA系フィルム層は透明であり、可視光線透過率は少なくとも90パーセントである。第1のフィルム層は、透明である場合、フィルム内の任意の層(バッキング、カバーフィルム、又は中間層(すなわち、最外層間の層)など)に用いることができる。他の実施形態において、第1のPLA系フィルム層は、不透明(例えば白色)又は反射性であり、典型的にバッキング又は中間層として利用される。
【0073】
フィルムは、任意選択で、第1のフィルム層に近接する第2の(例えば、フィルム)層を更に含む。典型的な実施形態において、第2の層は、第1のフィルム層と異なる。第2の層が透明であり、少なくとも90パーセントの可視光線透過率を有する場合、第2の層は、バッキング、カバーフィルム、又は中間層などの、グラフィック物品の任意の層として利用することができる。第2の(例えば、フィルム)層が不透明(例えば白色)又は反射性である場合、第2の層は、典型的に、バッキング又は中間層として利用される。グラフィックフィルムは、2つ以上の第2の層を含んでいてもよい。一実施形態において、PLA系フィルムは、本明細書に記載のように、バッキング及びカバーフィルムとして利用され、グラフィックはバッキングとカバーフィルムとの間に配置されている。
【0074】
第2の層は第1のフィルム層と接触していてもよく、又はプライマー若しくは接着促進処理剤が第1のフィルム層と第2の(例えば、フィルム)層との間に配置されていてもよい。いくつかの実施形態において、接着剤組成物の層は、第1のPLA系フィルム層又は第2の(例えば、フィルム)層に近接している。接着剤は、典型的に、第1のフィルム層又は第2の層上に直接配置される。あるいは、第1のフィルム層又は第2の層と接着剤層との間に、プライマー又は接着促進処理剤が配置されてもよい。
【0075】
グラフィック物品は、接着剤(例えば感圧性接着剤)を更に含むテープ又はシートであってよい。PLA系フィルム101は、一方の主表面に配置されたグラフィック110と、バッキングと対向する主表面106に配置された接着剤(例えば感圧性接着剤)とを含む、(図1に示されている)バッキングフィルムとして特徴付けることができる。感圧性接着剤層は、典型的に、取り外し可能な剥離ライナーを更に含む。
【0076】
別の実施形態において、接着剤組成物の十分に透過的な層が、第1のフィルム層と第2の(例えばフィルム)層との間に配置されてもよい。第1のフィルム層は、バッキング、カバーフィルム、又はバッキング及びカバーフィルムの両方であってよい。グラフィックは、典型的にはカバーフィルムの下に、又は接着剤及びカバーフィルムの下に位置決めされる。したがって、グラフィックは、カバーフィルムを通して、及び任意に接着剤を通して見える。
【0077】
PLA系フィルムは、隣接する感圧性接着剤層とより良好に接着させるために、通常の表面処理に供してもよい。表面処理としては、例えば、オゾンへの曝露、火炎への曝露、高圧電撃曝露、電離放射線処理、及び他の化学的又は物理的な酸化処理が挙げられる。化学的表面処理としてはプライマーが挙げられる。好適なプライマーの例としては、塩素化ポリオレフィン、ポリアミド、米国特許第5,677,376号、同第5,623,010号に開示されている変性ポリマー、並びに国際公開第98/15601号及び国際公開第99/03907号に開示されているもの、並びに他の変性アクリルポリマーが挙げられる。一実施形態において、プライマーは、3M Companyから「3M(商標)Primer94」として販売されている、アクリレートポリマー、塩素化ポリオレフィン及びエポキシ樹脂を含む有機溶媒系プライマーである。
【0078】
天然又は合成のゴム系感圧接着剤、アクリル感圧接着剤、ビニルアルキルエーテル感圧接着剤、シリコーン感圧接着剤、ポリエステル感圧接着剤、ポリアミド感圧接着剤、ポリα-オレフィン、ポリウレタン感圧接着剤、及びスチレンブロックコポリマー系感圧接着剤などの様々な(例えば感圧)接着剤を、PLA系フィルムに適用することができる。感圧性接着剤は、一般に、動的機械分析により測定可能な貯蔵弾性率(E’)が、室温(25℃)、周波数1Hzで、3×10ダイン/cm未満である。
【0079】
ある実施形態では、感圧性接着剤は、天然ゴム系である場合があり、これは、天然ゴムエラストマーが、接着剤のエラストマー成分の少なくとも約20重量%を、構成することを意味する(充填剤、粘着付与剤などを全く含まない)。更なる実施形態では、天然ゴムエラストマーは、接着剤のエラストマー成分の少なくとも約50重量%、又は少なくとも約80重量%を構成する。いくつかの実施形態では、天然ゴムエラストマーは、1つ以上のブロックコポリマー熱可塑性エラストマー(例えば、Kraton Polymers(Houston,TX)から商品名KRATONで入手可能な一般的種類)と混合され得る。特定の実施形態では、天然ゴムエラストマーは、少なくとも1つの粘着付与樹脂とともに、天然ゴムエラストマーと組み合わせて、スチレン-イソプレンラジカルブロックコポリマーと混合してもよい。この種類の接着剤組成物は、米国特許公開第2003/0215628号(Maら)において更に詳細に開示されており、参照により組み込まれる。
【0080】
感圧性接着剤は、有機溶媒系、水性エマルション、(例えば米国特許第6,294,249号に記載されているものなどの)ホットメルト、感熱性、並びに化学線(例えば電子ビーム、紫外線)硬化性感圧接着剤であってもよい。感熱接着剤は、感圧性接着剤について先に記載したのと同じ分類のものから調製することができる。しかし、それらの成分及び濃度は、接着剤が感圧性ではなく感熱性であるか、又はこれらの組み合わせになるように選択される。
【0081】
いくつかの実施形態では、この接着剤層は、再配置可能な接着剤層である。用語「再配置可能」とは、少なくとも初期において、接着能を実質的に損なわずに、基材に繰り返し接着し、取り外すことが可能であることを指す。再配置可能な接着剤は通常、少なくとも初期において、従来の強力な粘着性のPSAの剥離強度よりも低い、基材表面に対する剥離強度を有する。好適な再配置可能接着剤は、ともにMinnesota Mining and Manufacturing Company,St.Paul,Minnesota,USAによって製造される、CONTROLTAC Plusフィルムブランド及びSCOTCHLITE Plusシート材料ブランドに使用される接着剤タイプを含む。
【0082】
接着剤層は、構造化した接着剤層、又は少なくとも1つの微細構造化した表面を有する接着剤層も有し得る。このような構造化した接着剤層を含むフィルム物品を、基材表面に適用すると、チャネル又は同様構造のネットワークがフィルム物品と基材表面との間に存在する。このようなチャネル又は同様構造の存在により、接着剤層を通って水平方向に空気がとおり抜けることができ、これにより、適用中のフィルム物品及び表面基材の下から空気を抜くことができる。
【0083】
トポロジー的構造化した接着剤はまた、再配置可能な接着剤を提供するのにも使用され得る。例えば、比較的大規模な接着剤エンボス加工によって、感圧性接着剤/基材接触面積が永続的に低減することにより、感圧性接着剤の接着強度も低減することが記載されている。様々なトポロジーとしては、凹面及び凸面のV字溝、ダイヤモンド、カップ、半球、コーン、噴火口形、及びその他の3次元形状で、接着剤層の底表面よりも有意に小さな上表面を有するものが挙げられる。一般に、これらのトポロジーは、平滑な表面の接着剤層に比べ、より低い剥離接着値を有する、接着シート、フィルム及びテープを提供する。多くの場合において、このトポロジー的構造化した表面の接着剤はまた、接触時間の増加に伴う接着の構築が遅いことも示されている。
【0084】
微細構造化した接着表面を有する接着剤層には、接着表面の機能部分全体にわたって均一に分布し、かつ接着表面から外向きに突出した、接着剤又は複合接着剤「ペグ」が含まれ得る。このような接着剤層を備えたフィルム物品は、基材表面上に配置したときに、再配置可能なシート材料を提供する(米国特許第5,296,277号を参照)。このような接着剤層は、保管及び加工中に接着剤ペグを保護するため、一致した微細構造化した剥離ライナーも必要とする。微細構造化した接着表面の形成は、例えば、対応する微細エンボス型付模様(micro-embossed pattern)の剥離ライナー上に接着剤をコーティングすることによって、又は、国際公開第98/29516号に記載されているとおり、対応する微細エンボス型付模様の剥離ライナーに対して、接着剤(例えばPSA)を押し付けることによって、達成することもできる。
【0085】
望ましい場合、接着剤層は、複数の接着剤サブ層を含んでもよく、組み合わせた接着層アセンブリを得ることができる。例えば、接着剤層は、連続的又は不連続なPSAの被覆層又は再配置可能な接着剤とともに、ホットメルト接着剤のサブ層を含み得る。
【0086】
アクリル感圧接着剤は、溶液重合、塊状重合、又は乳化重合などのフリーラジカル重合技術によって製造することができる。アクリルポリマーは、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、又はグラフトポリマーなどの任意の種類のものであってよい。重合は、一般に使用される重合開始剤及び連鎖移動剤のいずれを用いてもよい。
【0087】
アクリル感圧接着剤は、1~14個の炭素原子、好ましくは平均4~12個の炭素原子を含有する(例えば非第三級)アルコールから得られる、1つ以上の(メタ)アクリレートエステルモノマーである重合単位を含む。モノマーの例としては、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、3-メチル-1-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール;3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノール、3-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノール、イソオクチルアルコール、2-エチル-1-ヘキサノール、1-デカノール、2-プロピルヘプタノール、1-ドデカノール、1-トリデカノール、1-テトラデカノールなどの非第三級アルコールと、アクリル酸又はメタクリル酸のいずれかとのエステルが挙げられる。
【0088】
アクリル系感圧性接着剤は、1つ以上の低Tg(メタ)アクリレートモノマーの重合単位を含み、すなわち、反応してホモポリマーを形成する(メタ)アクリレートモノマーは、0℃以下のTを有する。いくつかの実施形態において、低Tgモノマーは、-5℃以下、又は-10℃以下のTを有する。これらのホモポリマーのTgは、多くの場合に-80℃以上、-70℃以上、-60℃以上、又は-50℃以上である。
【0089】
低Tgモノマーは、次の式
C=CRC(O)OR
[式中、RはH又はメチルであり、Rは1~22個の炭素を有するアルキル、又は2~20個の炭素及び酸素若しくは硫黄から選択される1~6個のヘテロ原子を有するヘテロアルキルである]を有し得る。アルキル基又はヘテロアルキル基は、直鎖、分枝、環状、又はこれらの組み合わせであり得る。
【0090】
例示的な低Tgモノマーとしては、例えば、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、n-ペンチルアクリレート、イソアミルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-メチルブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、4-メチル-2-ペンチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレート、デシルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソトリデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、及びドデシルアクリレートが挙げられる。
【0091】
低Tgヘテロアルキルアクリレートモノマーとしては、2-メトキシエチルアクリレート及び2-エトキシエチルアクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0092】
典型的な実施形態において、アクリル系感圧性接着剤は、6~20個の炭素原子を含むアルキル基を有する、少なくとも1つの低Tgモノマーの重合単位を含む。いくつかの実施形態では、低Tgモノマーは、7個又は8個の炭素原子を含む、アルキル基を有する。例示的なモノマーとしては、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、及び、2-オクチル(メタ)アクリレートなどの、(メタ)アクリル酸と再生可能資源から誘導されたアルコールとのエステルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
アクリル感圧接着剤は、典型的には、重合単位の総重量(即ち、無機充填剤又は他の添加剤を除く)に基づいて、少なくとも50、55、60、65、70、75、80、85、90重量%以上の、0℃未満のTgを有する単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合単位を含む。
【0094】
アクリル系感圧性接着剤は、少なくとも1つの高Tgモノマーを更に含んでもよく、すなわち、反応してホモポリマーを形成する(メタ)アクリレートモノマーは、0℃を超えるTgを有する。高Tgモノマーは、より典型的には、5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、又は40℃を超えるTgを有する。高Tg一官能価アルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、t-ブチルアクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、s-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ベンジルメタクリレート、3,3,5トリメチルシクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、N-オクチルアクリルアミド、及びプロピルメタクリレート又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0095】
アクリル感圧接着剤は、極性モノマーの重合単位を更に含んでもよい。代表的な極性モノマーとしては、例えば、酸官能性モノマー(例えばアクリル酸、メタクリル酸)、ヒドロキシル官能性(メタ)アクリレート)モノマー、窒素含有モノマー(例えばアクリルアミド)、及びそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、アクリル感圧接着剤は、少なくとも0.5、1、2又は3重量%、かつ典型的には10重量%以下の、アクリルアミドなどの極性モノマー及び/又は(メタ)アクリル酸などの酸官能性モノマーの重合単位を含む。
【0096】
感圧性接着剤は、必要に応じて1種以上の好適な添加剤を更に含んでもよい。添加剤の例は、架橋剤(例えば多官能性(メタ)アクリレート架橋剤(例えばTMPTA)、エポキシ架橋剤、イソシアネート架橋剤、メラミン架橋剤、アジリジン架橋剤など)、粘着付与剤(例えば、フェノール変性テルペン並びにロジンのグリセロールエステル及びロジンのペンタエリスリトールエステルなどのロジンエステル、並びにC5及びC9炭化水素粘着付与剤)、増粘剤、可塑剤、充填剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、静電気防止剤、界面活性剤、均染剤、着色剤、難燃剤、及びシランカップリング剤である。
【0097】
(例えば、感圧性)接着剤層は、様々な一般的なコーティング方法、(例えばグラビア)ローラーコーティング、フローコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、ナイフコーティング、(例えばロータリ又はスリット)ダイコーティング、(例えばホットメルト)押出コーティング、及び印刷によって、フィルム上に配置することができる。接着剤は、本明細書に記載のPLAフィルムに直接適用してもよく、又は剥離ライナーを使用して転写コーティングしてもよい。剥離ライナーを使用する場合は、接着剤は、ライナー上にコーティングしてフィルムに積層するか、又は、フィルム上にコーティングしてその後に接着剤層に剥離ライナーが適用される。接着剤層は、連続層として、又はパターン化不連続層として、適用することができる。接着剤層は、典型的には、約5~50μmの厚さを有する。
【0098】
剥離ライナーは、典型的には、オルガノシリコーン化合物、フルオロポリマー、ポリウレタン及びポリオレフィンなどの低表面エネルギー化合物でコーティング又は変性された、紙又はフィルムを含む。この剥離ライナーはまた、接着剤をはじく化合物を添加したか、又は添加していない、ポリエチレン、ポリプロピレン、PVC、ポリエステルから製造されたポリマーシートであり得る。上述のように、剥離ライナーは、接着剤層に対して構造を付与するための、微細構造化した又は微細エンボス型付模様を有し得る。
【0099】
いくつかの実施形態において、シート又はテープグラフィック物品は、シート又はテープがロール状になっているときに、感圧性接着剤の最も外側の(露出)表面が低接着性バックサイズに接触するように、PLA系フィルムの第1の主面上に設けられた低接着性バックサイズを備える。一実施形態において、PLA系フィルムは、カバーフィルムである。この実施形態において、グラフィックは低接着性バックサイズに接触しない。
【0100】
様々な低接着性バックサイズ組成物、例えばシリコーン、ポリエチレン、ポリカルバメート、ポリアクリルなどが当該技術分野で記載されている。
【0101】
低接着性バックサイズの組成物(例えば、感圧性接着剤の組成物と組み合わされる)は、適切なレベルの剥離をもたらすように選択される。いくつかの実施形態では、低接着性バックサイズは、ちょうど米国特許公開第2014/0138025号に記載されているようにその上に配設された塗料を定着させる能力を、高めることもできる。
【0102】
低接着性バックサイズに含むために好適であり得る、例示的な材料の一般的な分類としては、例えば、(メタ)アクリルポリマー、ウレタンポリマー、ビニルエステルポリマー、ビニルカルバメートポリマー、フッ素含有ポリマー、シリコーン含有ポリマー、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0103】
いくつかの実施形態では、低接着性バックサイズは、有機溶媒系溶液又は水性エマルションである。
【0104】
いくつかの実施形態では、低接着性バックサイズは、アクリル接着剤と同じ(メタ)アクリレートモノマーから調製され得るアクリル組成物を含み得る。しかし、低接着性バックサイズ組成物は、典型的には、低濃度の、オクタデシルアクリレートなどの低Tgモノマーと、高濃度の、アクリル酸などの高Tgモノマーとを含む。いくつかの実施形態では、低接着性バックサイズは、オクタデシルアクリレートなどの低Tgモノマーの重合単位を少なくとも40、45又は50重量%~約60重量%の範囲で含む。本明細書に記載の低接着性バックサイズに関する重量%は、別段の記載がない限り、有機溶媒又は水性溶媒を全く含まない総固形分に対してである。
【0105】
このような組成物は、米国特許第3,011,988号(Luedkeら)に更に詳述されており、参照によりに組み込まれる。
【0106】
いくつかの実施形態では、低接着性バックサイズは、例えば、結晶性ポリマーセグメントを生じる大量のモノマー単位を含む組成物において、識別可能な結晶融点(T)を含む場合がある。このようなTは、Tの代わりに、又はこれと一緒に存在し得る。いくつかの実施形態において、Tは、存在する場合、20℃~60℃の範囲であり得る。
【0107】
いくつかの実施形態では、低接着性バックサイズは、少なくともいくつかの(メタ)アクリル酸基を含み得る。いくつかの実施形態では、(メタ)アクリル酸基の濃度は、少なくとも2、3、4又は5重量%から10、15又は20重量%の範囲である。
【0108】
いくつかの実施形態では、低接着性バックサイズは、シリコーン含有材料を含み得る。様々な実施形態では、このような材料は、非シリコーン(例えば、(メタ)アクリレート)側鎖を有するシリコーン主鎖、シリコーン側鎖を有する非シリコーン(例えば、(メタ)アクリレート)主鎖、シリコーン単位及び非シリコーン(例えば、(メタ)アクリレート)単位を含むコポリマー主鎖などを含み得る。シリコーンポリ尿素材料、シリコーンポリ尿素ポリウレタン材料、シリコーンポリオキサミド材料、シロキサンイニファータ誘導組成物などがまた好適であり得る。
【0109】
ある実施形態では、低接着性バックサイズのシリコーン含有材料は、式I
【化6】
【0110】
ある実施形態では、低接着性バックサイズのシリコーン含有材料は、式IIa、IIb、若しくはIIc
【化7】
の一般式を有する、メルカプト官能性シリコーンマクロマー、又はこれらの混合物の反応生成物を含む。
【0111】
メルカプト官能性シリコーンマクロマー、及びこのようなマクロマーを使用する低接着性バックサイズ組成物の製造の更なる詳細は、米国特許第5,032,460号(Kantnerら)に見出すことができ、本明細書に参照により組み込まれる。
【0112】
様々な実施形態では、上記のシリコーンマクロマーのいずれかが、メタ(アクリル)モノマー、及び/又は任意の他のビニルモノマーと組み合わせて使用され得る。このようなモノマーは、例えば、上記のガラス転移温度の範囲のいずれかを達成するために使用され得る。いくつかの実施形態では、(例えば式IIaの)シリコーンマクロマーは、全反応物の約15~35重量%で使用され得、反応物の残部は、少なくとも1つの高T(メタ)アクリルモノマー、少なくとも1つの低T(メタ)アクリルモノマー、及び少なくとも1つの(メタ)アクリル酸モノマーを含む。特定の実施形態では、低Tモノマーはメチルアクリレートであり、高Tモノマーはメチルメタクリレートであり、(メタ)アクリル酸モノマーはメタクリル酸である。更なる実施形態では、このような組成物において、(例えば式IIaの)シリコーンマクロマーは、約20~30重量%で使用される。
【0113】
シリコーンマクロマーを含むいくつかの実施形態では、低接着性バックサイズは、少なくとも2、3、4又は5重量%から10、15又は20重量%の範囲の(メタ)アクリル酸基を含む。
【0114】
いくつかの実施形態において、感圧性接着剤及び低接着性バックサイズの成分は、存在する場合、典型的に、表面への良好な接着をもたらし、同時に(例えば目に見える)残留物を残すことなく中程度の力で除去可能であるように選択される。
【0115】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるグラフィック物品は、第2の層を更に含む。第2の層は接着剤とPLA系フィルムとの間に配置されたバッキングであってもよく、かつ/又は第2の層はPLA系バッキングフィルム上に配置された透過性カバーフィルムであってもよい。
【0116】
バッキングは、様々な可撓性及び非可撓性(例えば予備成形されたウェブ)の基材を含むことができ、それには、ポリマーフィルム、金属箔、発泡体、紙、及びこれらの組み合わせ(例えば、金属化ポリマーフィルム)が挙げられるが、これらに限定されない。ポリマーフィルムとしては、例えば、ポリオレフィン、例えば、ポリプロピレン(例えば二軸配向された)、ポリエチレン(例えば高密度又は低密度)、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、ポリメチル(メタ)アクリレート(PMMA)、ポリビニルブチラール、ポリイミド、ポリアミド、フルオロポリマー、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、エチルセルロース、及びポリ乳酸(PLA)などのバイオ系材料が挙げられる。
【0117】
別の実施形態において、第1のPLA系フィルム又はバッキングは、金属又は金属酸化物層を更に含んでもよい。金属の例としては、アルミニウム、ケイ素、マグネシウム、パラジウム、亜鉛、スズ、ニッケル、銀、銅、金、インジウム、ステンレス鋼、クロム、チタンなどが挙げられる。金属酸化物層に用いられる金属酸化物の例としては、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化カルシウム、酸化カドミウム、酸化銀、酸化金、酸化クロム、酸化ケイ素、酸化コバルト、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、酸化白金、酸化パラジウム、酸化ビスマス、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化バリウムなどが挙げられる。これらの金属及び金属酸化物は、単独で、又は2つ以上の組み合わせで使用することができる。これらの金属及び/又は金属酸化物の層は、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング、及びCVD(Chemical Vapor Deposition)などの公知の方法により形成することができる。金属及び/又は金属酸化物層の厚さは、典型的には、少なくとも5nmから、100又は250nm以下の範囲である。
【0118】
バッキングの厚さは、典型的には、少なくとも10、15、20又は25ミクロン(1ミル)、かつ典型的には500ミクロン(20ミル)以下の厚さである。いくつかの実施形態では、バッキングの厚さは、400、300、200又は100ミクロン以下である。第1のフィルム層及び第2の(例えばフィルム)層の厚さは、バッキングと同じであってもよい。しかし、第1及び/又は第2の(例えばフィルム)層は、特にバッキングと組み合わせて用いる場合、10ミクロン未満でよい。いくつかの実施形態では、第1及び/又は第2のフィルム層は、典型的には少なくとも250nm、500nm、750nm、又は1ミクロンである。バッキング及び全体としてのフィルムは、典型的には巻取り品(roll-good)の形態であるが、個別の枚葉の形態であってもよい。
【0119】
いくつかの実施形態において、第2の(例えばフィルム)層は、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリルポリマー、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー)樹脂等の熱可塑性ポリマーである。
【0120】
いくつかの実施形態において、フィルム全体、第1のフィルム層、カバーフィルム、及び/又はバッキングは形状適合性(conformable)である。「適合」とは、フィルムを湾曲部若しくは突起の周りに引き延ばせるよう、又はフィルムを破損若しくは剥離することなく凹みに押し入れられるように、基材表面上の湾曲部、凹み又は突起に適応可能であるように、フィルム又はフィルム層が十分に柔軟かつ可撓性であることを意味する。また、適用後にフィルムが基材表面から剥離又は遊離(ポップアップと呼ばれる)しないことが望ましい。
【0121】
好適で適合している第2のフィルム層としては、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、可塑化ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、フルオロポリマーなどが挙げられる。例えば、熱可塑性ポリウレタン及びセルロースエステルを含め、他のポリマーブレンドも場合により好適である。
【0122】
いくつかの実施形態では、フィルムは、テープを、テープの湾曲部分の引き延ばされた領域の引き裂きなしに略平坦な平面にある(例えば曲率半径7.5cmの)連続的な湾曲形状に湾曲させることができることを意味する、「横方向に湾曲可能」となるように十分に適合している。横方向に湾曲可能なテープの例が、米国特許公開第2014/0138025号の図15に示されている。
【0123】
接着剤でコーティングされたグラフィック物品は、平滑面及び粗面の両方に対して良好な接着性を呈し得る。様々な粗面が知られており、例えば、「ノックダウン(knock down)」及び「オレンジピール」などのテクスチャのある乾燥壁、シンダーブロック、粗い(例えばブラジル)タイル並びにテクスチャのあるセメントが挙げられる。ステンレス鋼、ガラス、及びポリプロピレンなどの平滑な表面は、光干渉法(optical inferometry)により測定できる平均表面粗さ(Ra)が100nm未満であるのに対し、粗面は、平均表面粗さ(Ra)が1ミクロン(1000nm)、5ミクロン、又は10ミクロンよりも大きい。シールセメントは止水剤の厚さに応じて粗面又は平滑表面を有し得る。セメント止水剤は、典型的には、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ケイ酸ナトリウム又はメチルメタクリレートを含む。
【0124】
いくつかの好ましい実施形態において、フィルムは、例えば広告又は装飾を目的として、窓、建物、舗道、又は車両(自動車、バン、バス、トラック、路面電車など)等に対し、意匠、例えば画像、グラフィック、文字列及び/又は情報(コードなど)を適用するために使用されるグラフィックフィルムである。このような意匠、画像、文章などを、本明細書においてまとめて「グラフィック」と呼ぶ。表面(例えば車両)の多くは、不規則及び/又は非平坦である。1つの実施形態において、グラフィックフィルムは装飾用テープである。
【0125】
いくつかの実施形態において、物品は、典型的に(例えばシール)セメント又は他の床面に接着するフロアマーキンググラフィックフィルムテープである。
【0126】
グラフィックフィルムを作製する方法は、典型的に、本明細書に記載された第1のPLA系フィルムを準備し;フィルム上にグラフィックを提供することを含む。PLA系フィルムは、典型的に、グラフィックフィルムを準備する前に焼鈍される。フィルムは、製造時点で又はフィルム上にグラフィックを提供する直前に、印刷などによって焼鈍することができる。焼鈍条件は、120°Fで約12時間から約200°Fで約20分間までの範囲で様々であってよい。いくつかの実施形態では、フィルムの貯蔵及び/又は輸送環境が十分なアニールを提供する。
【0127】
様々な方法を使用し、フィルム上にグラフィックを提供することができる。典型的な技法としては、例えば、インクジェット印刷、熱溶融転写、フレキソ印刷、昇華法、スクリーン印刷、静電印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、又は他の印刷プロセスが挙げられる。
【0128】
グラフィックは、単色であっても、複数色であってもよい。セキュリティマーキングの場合、グラフィックは、可視光領域の波長で見た場合、はっきり見えなくなり得る。グラフィックは、連続的な層であっても、非連続的な層であってもよい。
【0129】
図1を参照すると、グラフィック物品は、第1のPLA系フィルム層101の主表面に近接するグラフィック110を含む。第1のフィルム層(101、201、301、401、501、601、701、801)は、モノリシックフィルム、又は前述した、半結晶性ポリ乳酸ポリマー、少なくとも25℃のTgを有するポリ酢酸ビニルポリマー、及び可塑剤を含むフィルム層であり得る。別の実施形態において、図2を参照すると、グラフィック210は、(例えば透明な)インク受容(例えばコーティング)層220上に配置されていてもよい。この実施形態において、インク受容(例えばコーティング)層220は、第1のフィルム層201上に配置されており、典型的には第1のフィルム層201に接触して配置されている。図示されていないが、図3~8の各実施形態は、任意選択で、グラフィックと第1のフィルム層との間にインク受容層を更に含んでもよい。グラフィック(110、210、310、410、510、610、710)は、典型的に、第1のフィルム層又はインク受容層220に恒久的に接着している。
【0130】
インク受容層は、インクのプライマーとして特徴付けできる。いくつかの実施形態において、インク受容層を、透き通った、又は無色のインクとして特徴付けできる。
【0131】
様々な他のインク受容(例えばコーティング)層は公知であり、米国特許第7,025,453号、同第6,881,458号、及び同第6,846,075号に記載されているものが挙げられ、その全容が本明細書に参照により組み込まれる。透明なインクをインク受容層として用いてもよい。
【0132】
いくつかの実施形態において、第1のPLA系フィルム層(101、201、501、601、701、801)は、バッキングとして特徴付けることができる。第1のフィルム層の対向する主表面(例えば、図1の106)は、典型的に、(例えば、感圧性)接着剤により目標表面に接着される。感圧性接着剤は、典型的には、上記のとおり、取り外し可能な剥離ライナーによって被覆される。
【0133】
別の実施形態において、第1のPLA系フィルム層(301、401、601)は、カバーフィルムとして特徴付けることができる。(例えば逆像)グラフィック(310、410、610)は、カバーフィルムを通して目視される。
【0134】
グラフィック物品は、上記のとおり、追加の第2の層を更に含んでもよい。
【0135】
一実施形態において、図3に示すように、グラフィック物品は、第1のPLA系フィルム層301(例えば、カバーフィルム)と、第1のフィルム層301の主表面に近接したグラフィック310と、グラフィック310と対向する表面上に配置されたバッキング350とを含む。
【0136】
別の実施形態において、図4に示すように、グラフィック物品は、第1のPLA系フィルム層401(例えば、カバーフィルム)と、第1のフィルム層401の主表面に近接したグラフィック410と、(例えば、逆像)フィルム(410と一緒の401)をバッキング450に接着させる(例えば、感圧性)接着剤430とを含む。
【0137】
別の実施形態において、グラフィック物品は、図5に示すように、第1のPLA系フィルム層501と、第1のフィルム層501の主表面に近接したグラフィック510と、グラフィック510と対向する表面上に配置されたトップコート又はカバーフィルム550とを含む。
【0138】
別の実施形態において、図6に示すように、グラフィック物品は、第1のPLA系(例えば、透明)フィルム層601bと、第1のフィルム層601の主表面に近接したグラフィック610と、(例えば、十分に透過的な)第1のPLA系フィルム層(例えば、カバーフィルム)601aをグラフィック610の対向する表面上に接着させる(例えば、感圧性)接着剤630とを含む。
【0139】
別の実施形態において、図7に示すように、グラフィック物品は、(例えば、十分に透過的な)第1のPLA系フィルム層701a(例えば、カバーフィルム)と、第1のフィルム層701aの主表面に近接した(例えば、逆像)グラフィック710と、(例えば、逆像)フィルム(710と一緒の701)を第1のフィルム層(例えば、バッキング)701bに接着させる(例えば、感圧性)接着剤730とを含む。
【0140】
図7~8の実施形態において、第1のフィルム層(例えば、バッキング)601b及び701b、並びに(例えば、十分に透過的な)カバーフィルム601a及び701aは、前述した、半結晶性ポリ乳酸ポリマーと、少なくとも25℃のTgを有するポリ酢酸ビニルポリマーと、可塑剤と、を含む。
【0141】
バッキング(例えば、350、450)は、前述した、可撓性基材及び非可撓性基材のいずれであってもよい。いくつかの実施形態において、バッキングは、上記のとおり、形状適合性のフィルム層である。更に、トップコート又はカバーフィルム550は、前述したように、十分に透過的な(例えば、低表面エネルギーの)ハードコート、形状適合性フィルム等のいずれであってもよい。1つの実施形態において、トップコートは、(例えば着色)グラフィック上に適用されている透明なインクを含む。
【0142】
図1~7の各実施形態において、グラフィックは、前述した、半結晶性ポリ乳酸ポリマーと、少なくとも25℃のTgを有するポリ酢酸ビニルポリマーと、可塑剤と、を含む第1のフィルム層上に配置されており、又はグラフィックはインク受容層上に配置されており、ここで、インク受容層はPLA系フィルム上に配置されている。
【0143】
ただし、他の実施形態において、グラフィックは第2のフィルム上に配置されており、第2のフィルムは、前述した、半結晶性ポリ乳酸ポリマーと、少なくとも25℃のTgを有するポリ酢酸ビニルポリマーと、可塑剤と、を含まない。あるいは、グラフィックは、第2のフィルム上に配置されたインク受容層上に配置されている。次いで、第2のフィルムを、前述したPLA系フィルムに接着させる。例えば、一実施形態において、図8に示すように、グラフィック物品は、(例えば、十分に透過的な)カバーフィルム850と、カバーフィルム850の主表面に近接した(例えば、逆像)グラフィック810と、(例えば、逆像)カバーフィルム(810と一緒の850)を第1のフィルム層(例えば、バッキング)801に接着させる(例えば、感圧性)接着剤830とを含む。この実施形態において、第1のフィルム層801は、本明細書に記載したPLA系フィルムを含み、カバーフィルム850は、様々な形状適合性フィルムなどの様々なポリマー材料を含む。
【0144】
図示されていない別の実施形態において、グラフィックフィルムは、グラフィック410と接着剤430の順序が相互に入れ替えられることを除いて、図4と同じである。グラフィックフィルムは、前述した、PLA系フィルムを含む第1のフィルム層(例えばカバーフィルム)に接着剤で接着したグラフィックを含む、第2の(例えばバッキング)フィルム450を含む。
【0145】
グラフィックフィルムが、グラフィックと組み合わせた前述のPLA系フィルムを含む、他の様々な配置を行うことができる。
【0146】
グラフィックは、典型的には、乾燥及び若しくは硬化したインク層を含む。乾燥したインク層は、例えば、有機溶媒系インク又は水系インクをはじめとする、広範なインク組成物に由来するものであってよい。また、乾燥又は硬化したインク層は、広範な放射線(例えば紫外線)硬化性インクに由来するものであってもよい。
【0147】
着色したインクは、典型的には、液体キャリア(liquid carrier)中に分散した顔料及び/又染料などの着色剤を含む。液体キャリアは、水、有機モノマー、放射線硬化性インクの場合の重合性反応性希釈剤、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。例えば、ラテックスインクは、典型的には、水及び(例えば非重合性)有機共溶媒を含む。
【0148】
広範な有機及び無機顔料が、インクにおける使用の技術分野において公知である。好適な顔料としては、アゾ顔料[縮合及びキレートアゾ顔料など]、多環式顔料[フタロシアニン、アントラキノン、キナクリドン、チオインジゴイド、イソインドリノン、及びキノフタロンなど]、ニトロ顔料、昼光蛍光顔料、カーボネート、クロメート、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、並びにカーボンブラックが挙げられるが、これらに特に限定されない。1つの実施形態において、顔料は、白色顔料[二酸化チタンなど]以外である。インク組成物に用いる顔料としては、カーボンブラック、並びにシアン色、マゼンタ色、及び黄色のインクの製造が可能な顔料を、挙げることができる。好適な市販の顔料としては、例えば、ピグメントレッド81、ピグメントレッド122、ピグメントイエロー13、ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー17、ピグメントイエロー74、ピグメントイエロー83、ピグメントイエロー128、ピグメントイエロー138、ピグメントオレンジ5、ピグメントオレンジ30、ピグメントオレンジ34、ピグメントブルー15:4、及びピグメントブルー15:3が挙げられる。
【0149】
いくつかの実施形態において、インクジェット印刷インクなどの顔料分散粒子は、インクを流動性とし、インクジェット機器、特にインクジェット印刷ノズルを通すのに十分に小さく、典型的には、その径が約10~約50ミクロンの範囲、より典型的には約30ミクロン以下である。いくつかの実施形態において、顔料分散粒子の径は、50nm~約200nmの範囲、より典型的には120nm以下である。スクリーン印刷インク、及び上記のとおり、他の印刷技法に用いる材料には、より大きな顔料粒子を用いてもよい。しかし、より小さい径の顔料粒子によってもまた、典型的には最高の色の濃さをもたらす。
【0150】
インクの有機溶媒は、単一溶媒であっても、溶媒のブレンドであってもよい。好適な溶媒としては、アルコール[イソプロピルアルコール(IPA)又はエタノールなど]、ケトン[メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジイソブチルケトン(DIBK)、シクロヘキサノン又はアセトンなど]、エーテル[テトラエチレングリコールジメチルエーテル、及びジエチレングリコールジエチルエーテルなどのジアルキレングリコールジアルキルエーテルなど]、芳香族炭化水素[トルエンなど]、イソホロン、ブチロラクトン、N-メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、エステル[ラクテート、アセテート[エチル3-エトキシプロピオネート、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート[3Mから商品名「3M Scotchcal Thinner CGS10」(「CGS10」)で市販のものなど]、2-ブトキシエチルアセテート[3Mから商品名「3M Scotchcal Thinner CGS50」(「CGS50」)ので市販のものなど]、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート(DEアセテート)、エチレングリコールブチルエーテルアセテート(EBアセテート)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(DPMA)、イソ-アルキルエステル[イソヘキシルアセテート、イソヘプチルアセテート、イソオクチルアセテート、イソノニルアセテート、イソデシルアセテート、イソドデシルアセテート、イソトリデシルアセテート又は他のイソ-アルキルエステルをはじめとするもの]など]、これらの組み合わせなどが挙げられる。
【0151】
インク組成物、特に屋外使用に対して耐久性のあるインク組成物は、典型的に、ポリマーバインダーを更に含む。バインダーは、インクの揮発性成分の蒸発後、そのバインダーにより、第1のフィルム層上に沈着した顔料のフィルムが形成されるので、典型的には顔料粒子と親和性がある。好適なバインダーとしては、ビニル含有ポリマー、アクリル含有ポリマー、ウレタン含有ポリマー、それらの混合物、並びにそのような部分を複数(ウレタン及び(メタ)アクリレート部分の両方など)含有するバインダーが挙げられる。放射線硬化性インクの場合、バインダーは、インク硬化中に反応性希釈剤の重合から形成されてよい。
【0152】
いくつかの実施形態において、インク層はインクジェット印刷層である。インクジェット印刷は、コンピュータ制御されたノズルを通し、インクの液滴を噴霧することによって印刷する方法である。インクジェット印刷インクの粘度は、典型的には、プリントヘッド操作温度にて、約3~約30センチポワズの範囲である。このようなインクの粘度は、好ましくは、所望のインクジェット温度(典型的には、周囲温度~約65℃)にて、約25又は約20センチポワズ未満である。インクジェット組成物は、特徴として低表面張力特性を有するよう調整されている。好ましい配合物の表面張力は、プリントヘッド操作温度下にて、約20mN/m~約50mN/mの範囲、より好ましくは約22mN/m~約40mN/mの範囲である。更に、インクジェットインクは、典型的には、ニュートン粘度特性を有し、又は実質的にニュートン式粘度特性を有する。
【0153】
インクジェット印刷は、原理的には、4色、すなわち、シアン色、マゼンタ色、黄色、及び黒色(CMYK)の使用に拠る。しかし、画像解像度の向上のため、上記で特定されたいくつかのプリンタに、より低濃度の関連するシアン色及びマゼンタ色のインクである、「淡シアン」及び「淡マゼンタ」と呼ばれる追加の2色が更に加えられてもよい。
【0154】
1つの実施形態において、インクジェットインクは、着色剤(例えば顔料)を1~5重量部、オリゴマー又はポリマーバインダーを1~10重量部、及び様々な有機溶媒(上記のとおり、例えばジエチレングリコールジエチルエーテル、γ-ブチロラクトン、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、及びジアルキレングリコールジアルキルエーテルをはじめとするもの)を115部以下含む、溶媒系インクである。1つの実施形態において、インクジェットインクは、ジエチレングリコールジエチルエーテル(例えば40~50重量%)、γ-ブチロラクトン(例えば20重量%未満)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(例えば10~20重量%)、及びジアルキレングリコールジアルキルエーテル(例えば15~25量%)を含む。
【0155】
別の実施形態において、インクジェットインクは、水系インク、又は換言すれば水性インクジェットインクであってもよい。液体媒体は、典型的には、蒸留水及び/又は脱イオン水を、少なくとも50重量%、60重量%、70重量%、又は80重量%含んでおり、水を、1種以上の水混和性有機溶媒との組み合わせで含んでもよい。
【0156】
1つの実施形態において、水性インクジェットインクの液体媒体は、水(例えば60~90%)、2-ピロリドンなどの有機溶媒(15%以下)、及びカーボンブラックなどの着色剤(5%以下)を含む。
【0157】
他の実施形態において、水性インクジェットインクは、ラテックスバインダーなどのポリマーバインダーを更に含み、典型的には乳化重合により形成される。1つの実施形態において、ラテックスバインダーは、ガラス転移温度Tgがより高い第1のモノマー、及びガラス転移温度Tgがより低い第2のモノマーの、乳化重合により形成される。モノマーのガラス転移温度とは、より具体的には、特定のモノマーから形成されたホモポリマーのガラス転移温度を指す。1つの実施形態において、ラテックスバインダーは、ガラス転移温度Tgが約70℃より高い第1のモノマーから形成される。第1のモノマーは、スチレン、置換スチレン、メチルメタクリレート、又はそれらの混合物を含んでもよい。置換スチレンとしては、アルキル置換スチレン、ハロゲン置換スチレンなどが挙げられる。好ましい実施形態において、第1のモノマー又はその混合物の平均ガラス転移温度Tgは、約100℃以上である。ラテックスバインダーの第2のモノマーのガラス転移温度Tgは、典型的には、約0℃未満である。第2のモノマーは、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、オクチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレートなどのアルキルアクリレートを含んでもよい。いくつかの実施形態において、第2のモノマーのガラス転移温度Tgは、約-25℃又は-50℃未満である。第1及び第2のモノマーの比を変更することができ、それにより、ラテックスバインダーのガラス転移温度Tgは、約0℃~70℃の範囲となる。
【0158】
ラテックスバインダーを調製するための反応媒体には、所望の粒径を得るため、電荷安定剤及び/又は乳化剤を用いてもよい。ラテックスバインダーの平均粒径は、典型的には、20nm~500nmであり、いくつかの実施形態において、100nm~300nmである。ラテックスバインダーの重量平均分子量は、10,000~5,000,000g/モルの範囲でよい。メタクリル酸、アクリル酸、及び/又はそれらの(例えばナトリウム)塩など、様々な電荷安定剤が公知である。また、脂肪酸(例えばラウリル酸)エーテルサルフェートなど、様々な乳化重合乳化剤も公知である。
【0159】
また、ラテックスインク組成物は、典型的には、分散剤、及び/又は保湿剤(共溶媒とも呼ばれるもの)も含む。非ポリマー分散剤としては、ナフタレンスルホン酸、ナトリウムリグノサルフェート、グリセロールステアレート、及びホスフェート含有界面活性剤が挙げられる。多数のポリマー分散剤が公知である。このようなポリマーは、典型的には、水親和性のための親水性部分、及び顔料との相互作用のための疎水性部分の両方を含むものが好ましい。
【0160】
1つの実施形態において、水性インクジェットインク組成物は、顔料、共溶媒、分散剤、及びラテックスバインダーを含んでもよい。水性組成物は、顔料を1%から、10%、15%、又は20%、共溶媒を少なくとも5%又は10%以上、30%、40%、又は50%以下の範囲、分散剤を0.01%から、5又は10%の範囲、及びラテックスバインダーを1%又は2%以上、5、10、15、又は20%以下の範囲で、含む。
【0161】
米国特許第9,175,181号、及び同第6,498,202号に記載されているものなど、様々な水性ラテックス(例えばインクジェット)インクが公知である。
【0162】
「放射線硬化性」インクは、主鎖から直接的又は間接的にペンダントとなっている官能性(functionality)を有する成分が含まれ、好適な硬化エネルギー源に曝露すると反応(例えば、架橋)する。好適な放射線架橋性基(radiation crosslinkable group)としては、エポキシ基、(メタ)アクリレート基、オレフィン系炭素-炭素二重結合、アリルオキシ基、α-メチルスチレン基、(メタ)アクリルアミド基、シアネートエステル基、ビニルエーテル基、これらの組み合わせなどが挙げられる。典型的には、フリーラジカル重合性基が好ましい。無論、(メタ)アクリル部分がとりわけ好ましい。本明細書で使用するとき、用語「(メタ)アクリル」は、アクリル及び/又はメタクリルを包含する。
【0163】
放射線硬化性官能性を架橋させるために使用されるエネルギー源は、化学線(例えば、紫外(UV)又は可視のスペクトル領域に波長を有する放射線)、加速粒子(例えば、電子ビーム(EB)放射)、熱(例えば、熱又は赤外線放射)などであってもよく、UV及びEBが好ましい。好適な化学線源としては、水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、タングステンフィラメントランプ、レーザー、電子ビームエネルギー、発光ダイオード、太陽光などが挙げられる。
【0164】
放射線硬化性材料は、放射線硬化性部分の観点から、モノ-、ジ-、トリ-、テトラ-、又はそれ以外の多官能性のものであってよい。放射線硬化性材料は、直鎖、分枝状、及び/又は環状であってよく、分枝状材料の粘度は、同等の分子量の直鎖のものより低くなりやすい。
【0165】
放射線硬化性材料は、モノマーである場合、反応性希釈剤と呼ぶ場合がある。様々な反応性希釈剤が好適であり、それには、アクリレートモノマー[ヘキサンジオールジアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、及びトリメチロールプロパントリアクリレートなど]、並びにビニルモノマー[ビニルカプロラクタムなど]が挙げられる。
【0166】
いくつかの実施形態において、放射線硬化性インクは、そのような反応性希釈剤モノマーを、少なくとも25、30、35、40重量%であり、90重量%以下の範囲、又はそれ以上で、含む。
【0167】
放射線硬化性インクは、任意に、有機溶媒を、少なくとも5、10、15、又は30重量%であり、50重量%以下の範囲で更に含んでもよい。
【0168】
1つの実施形態において、放射線硬化性インクは、(テトラヒドロフルフリル)アルコール及びアクリレートとビニルモノマーとの混合物などの、有機溶媒(例えば30~45重量%)を含む。例えば、モノマーは、ビニルカプロラクタム(例えば10~20重量%)、イソボルニルアクリレート(例えば10~20重量%)、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート(例えば1~5重量%)、及び環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(trimetholpropane formal acrylate)(例えば1~5重量%)、を含有してもよい。
【0169】
他の実施形態において、放射線硬化性インク組成物は、1つ以上のポリマーバインダーを更に含む。ポリマーバインダーは、数平均分子量(Mn)が少なくとも3,000、4,000、5,000、又は6,000g/モル以上であり、10,000又は15,000g/モル以下の範囲の、オリゴマー又はマクロモノマーであってよい。あるいは、ポリマーバインダーの分子量は、より高くてもよい。
【0170】
いくつかの実施形態において、ポリマーバインダーは、メチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、又はイソブチルメタクリレート/イソオクチルアクリレート繰り返し単位を含む。ポリマーバインダーは、メチル/メタクリレート繰り返し単位及びメタクリル酸末端基を有してもよい。ポリマーバインダーは、インクの、少なくとも10、15、20、又は25重量%であり、35、40、45、50、55、又は60重量%の量で存在してもよい。
【0171】
水系、溶媒系、及び放射線硬化性インクは、様々な任意による添加剤を含んでもよい。このような任意による添加剤としては、1つ以上の流動性制御剤、潤滑性改変剤(slip modifier)、チキソトロピック剤、界面活性剤(例えばフルオロケミカル)、発泡剤、消泡剤(例えばシリカ及びシリコーンオイル)、流動性若しくは他のレオロジー制御剤、ワックス、オイル、酸化防止剤、放射線硬化性インクの場合の光開始剤及び光開始剤安定剤、分散剤、光沢剤、殺菌剤、殺細菌剤、有機及び/又は無機充填剤粒子、レベリング剤(leveling agent)、乳白剤、帯電防止剤、分散剤などが挙げられる。特に太陽光に曝露される屋外環境において、意匠、画像等の耐久性を高めるために、加水分解安定剤、熱安定剤、紫外線安定剤、及びフリーラジカル捕捉剤などの、様々な市販の安定化化学物質を添加することができる。
【0172】
結晶質及び非晶質シリカ、ケイ酸アルミニウム、及び炭酸カルシウムなど、無機充填剤を含めることで、表面粗さの増大、光沢の低下、及びドットゲインの向上が得られる。無機充填剤の濃度は、典型的には約0.1重量%~約10重量%、好ましくは約0.5重量%~約5重量%である。粒径は、好ましくは1ミクロン未満、より好ましくは0.5ミクロン未満、とりわけ好ましくは約0.2ミクロン未満である。
【0173】
代表的なインクジェット印刷インクとしては、例えば、HP Latex 360 Printer(HP 83 Inks)、Roland XR-640(Roland ESL4 Eco Inks)、及びEFI VUTEk GS3250LX Pro(EFI VUTEk GSLXr 3M(商標)SuperFlex UV Ink)が挙げられる。
【0174】
別の実施形態において、グラフィックは、スクリーン印刷インクを含む。スクリーン印刷は、スキージの使用により、メッシュ生地及びステンシルのアセンブリにインクを通させて印刷する方法である。また、スクリーン印刷インクは、液体キャリア中に分散(例えば40~60重量%)したポリマーバインダー、着色剤(着色インクの場合)、並びに上記の任意による添加剤及び無機充填剤も含む。しかし、スクリーン印刷インクには、より高分子量のポリマーバインダーを用いてもよい。更に、スクリーン印刷インクは、典型的には、40%より多い固形分を含有し、粘度が、インクジェット印刷インクの粘度より、少なくとも2ケタ高い。
【0175】
いくつかの実施形態において、スクリーン印刷インクは、アクリル及び/又はビニルポリマーバインダーを含む、有機溶媒系スクリーン印刷インクであってよい。好適なアクリルポリマーバインダーとしては、メチルメタクリレートポリマー及びコポリマーが挙げられる。いくつかの実施形態において、スクリーン印刷インクは、アクリルポリマーバインダーを5~10重量%含んでもよい。好適なビニルポリマーバインダーとしては、酢酸ビニル、ビニルアルコール、及び塩化ビニルのコポリマーが挙げられる。いくつかの実施形態において、スクリーン印刷インクは、ビニルポリマーバインダーを10~20重量%含んでもよい。
【0176】
スクリーン印刷インクは、ポリマー可塑剤及びフタレート(例えばジウンデシルフタレート)をはじめとする、可塑剤を15重量%以下、着色剤(例えば顔料)、並びに上記のとおりの無機充填剤を1~5重量%、更に含んでもよい。有機溶媒系スクリーン印刷インクは、上記のとおりの有機溶媒を40~60重量%含む。1つの実施形態において、スクリーン印刷インクは、シクロヘキサン(例えば35~45重量%)、エチル3-エトキシプロピオネート(例えば10~20重量%)、及び2-ブトキシエチルアセテート(例えば5~10重量%)、を含む。
【0177】
他の実施形態において、スクリーン印刷インクは、液体キャリアとしての反応性希釈剤中に分散した少なくとも1つのポリマー、着色剤(着色インクの場合)、並びに上記の任意による添加剤及び無機充填剤を含む、放射線硬化性インクである。1つの実施形態において、放射線硬化性スクリーン印刷インクは、メチルメタクリレートポリマーを10~20重量%、着色剤(例えば顔料)、上記のとおりの無機充填剤を5重量%以下、及び反応性希釈剤の混合物を90重量%以下、含む。一実施形態において、放射線硬化性スクリーン印刷インクは、(例えば、30~40重量%の)芳香族(メタ)アクリレートモノマー、例えば、フェノキシエチルアクリレート、(例えば、5~15重量%の)脂肪族ウレタンアクリレート、(例えば、10~20重量%の)ビニルカプロラクタム、(例えば、1~5重量%の)1-プロパノン,2-(ジメチルアミノ)-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-2-(フェニルメチル)、(例えば1~5重量%の)1-ブタノン,2-(ジメチルアミノ)-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-2-(フェニルメチル)、(例えば1~5重量%の)ジエチレングリコールエチルエーテルアクリレート、及び(例えば1~5重量%の)プロポキシル化グリセロールトリアクリレートを含む。
【0178】
スクリーン印刷インクの好適な例としては、3M(商標)Screen Printing UV Ink 9802 Opaque Black、3M(商標)Scotchlite(商標)Transparent Screen Printing Ink 2905Black、及び米国特許第6,232,359号に記載されているものが挙げられる。
【0179】
好ましい実施形態において、色濃度は、SCOTCHCAL IJ 170-10キャストビニルフィルムにより得ることができる色濃度の少なくとも80、85、90、95、又は100%である。
【0180】
本発明の目的及び利点を以下の実施例で更に例示する。これらの実施例において列挙される特定の材料及び量、並びにその他の条件及び詳細は、本発明を過度に制限しないように使用されるべきである。
【実施例
【0181】
別途注記のない限り、材料の量は、重量基準で又は重量百分率(重量%)で列挙されている。
【0182】
材料
INGEO4032D-半結晶性ポリ乳酸(PLA)(2重量%のD-ラクチド;重量平均分子量約200,000g/モル)をNatureworks,LLC,Minnetonka,MNから購入した。
INGEO4060D-非晶質ポリ乳酸(PLA)(10重量%のD-ラクチド;重量平均分子量約180,000g/モル)をNatureworks,LLC,Minnetonka,MNから購入した。
VINNAPAS UW 4 FS-ポリ酢酸ビニル(Tg=42℃;重量平均分子量約280,000g/モル)をWacker,Germanyから入手した。
VINNAPAS UW 25 FS-ポリ酢酸ビニル(Tg=42℃;重量平均分子量約480,000g/モル)をWacker,Germanyから入手した。
CITROFLEX A4-アセチルクエン酸トリブチル可塑剤をVertellus Performance Materials,Bayonne,NJ.から入手した。
TEGMER 804-テトラエチレングリコールジエチルヘキサノエート可塑剤をHallstar,Chicago,IL.から入手した。
TEGMER809-PEG400ジエチルヘキサノエートエステル可塑剤をHallstar,Chicago,IL.から入手した。
ADMEX 6995-ポリマーアジペート可塑剤(重量平均分子量約3200g/モル)をEastman Chemical Company,Kingsport,TN.から入手した。
Ecopromote-フェニルホスフィン酸亜鉛、核形成剤は、Nissan Chemical Industrials(日本)から入手した。
TITANIUM DIOXIDE-二酸化チタンマスターバッチ(IngeoPLA4032Dに50重量%添加)をClariant Corporation,Minneapolis,MN.から入手した。
【0183】
試料調製
溶融混合
15cm二軸小型混練機を含むホットメルト押出機(DSM XPLORE)内で、PLA、PVAc、可塑剤及び核形成剤を、100RPMで200℃にて10分間混合し、次いで、混合室の弁を開けて試料を回収することにより、試料を調製した。混練した試料を、80℃での経時劣化試験、示差走査熱分析(differential scanning calorimetry、「DSC」)特性決定に供し、引張試験用に溶融プレスしてフィルムにした。
【0184】
フィルム作製のための溶融プレス
10mil(約250マイクロメートル)厚のスペーサーを間に入れて、2枚のポリテトラフルオルエチレンシートの間に、混練した試料を挟んだ。テフロンシートを金属シートの間に挟んだ。間に試料を配置した金属シートを、(Carverから販売されている)液圧プレスの圧盤の間に挟み、圧盤を340°F(171℃)まで加熱した。各試料を、圧力をかけずに8分間予備加熱し、次いで、300ポンド/平方インチ(約2.1ニュートン/平方ミリメートル)の圧力で5分間プレスした。次いで、金属プレートを液圧プレスから取り出し、空気冷却させた。
【0185】
試験方法
経時劣化試験
混練した試料(約0.2グラム)をシンチレーションバイアルに入れて、経時劣化試験中に可塑剤が蒸発することを防ぎ、オーブン内で80℃にて24時間経時劣化させた。次いで、80℃で経時劣化させた後、可塑剤の移行があるかどうかを確認するために、試料表面を検査した。油性表面を有する試料は不合格とし、非油性表面を有する試料を合格とした。
【0186】
DSC-示差走査熱量測定
各試料のガラス転移温度、結晶化温度、結晶化度は、特に指定がない限り、ASTM D3418-12に従って、TA INSTRUMENTS DIFFERENTIAL SCANNING CALORIMETERを使用して測定した。1回目の加熱走査において各試料(4~8mg)を10℃/分で-60℃から200℃まで加熱し、2分間保持して熱履歴を消去し、次いで、1回目の冷却走査において5℃/分で-60℃まで冷却させ、2回目の加熱走査において10℃/分で200℃まで加熱した。1回目の加熱走査を使用して、フィルムのTmを決定した。2回目の加熱走査を使用して、フィルムのTgを決定した。様々なパラメータを、以下に定義するとおりDSCから得た。
- ASTM D3418-12においてTmgと記載されている、2回目の加熱走査の中間温度を指す。
- ASTM D3418-12においてTpcと記載されている、1回目の冷却走査の結晶化ピーク温度を指す。
m1及びTm2-ASTM D3418-12においてそれぞれTpmと記載されている、1回目及び2回目の加熱走査の融解ピーク温度を指す。
【0187】
2回目の冷却走査中に形成された結晶性材料と関連する、正味融解吸熱量ΔHnm2を、以下の式を用いて計算することによって、組成物の結晶化能力を決定した。
ΔHnm2=ΔHm2-ΔHcc2
(式中、ΔHm2は、2回目の加熱走査の融解吸熱量の質量正規化エンタルピー(mass normalized enthalpy)であり、ΔHcc2は、(ASTM D3418-12の第11節に記載されている)2回目の加熱走査の結晶化発熱量の質量正規化エンタルピーである)核形成剤を含む組成物では、ΔHcc2は検出されなかったため、ΔHnm2=ΔHm2であった。
【0188】
正味の融解吸熱量ΔHnm1は、(例えば溶融プレスにより調製された)フィルムにおける結晶化度と関連する。以下の式を用いて、ΔHnm1を計算した。
ΔHnm1=ΔHm1-ΔHcc1
(式中、ΔHm1は、1回目の加熱走査の融解吸熱量の質量正規化エンタルピーであり、ΔHcc1は、(ASTM D3418-12の第11節に記載されている)1回目の加熱走査の結晶化発熱量の質量正規化エンタルピーである)核形成剤を含むフィルムでは、ΔHcc1は検出されなかったため、ΔHnm1=ΔHm1であった。
【0189】
発熱及び吸熱に伴うエンタルピーの絶対値(すなわち、ΔHm1、ΔHm2、ΔHcc1、及びΔHcc2を計算に用いた。
【0190】
引張試験
フィルム試料を、0.5インチ(約1.2cm)幅のストリップに切断した。INSTRON3365引張試験機を用いて、フィルム押出しの機械方向(MD)及び横方向(TD)に沿って引張試験を行う。最初のグリップ距離は1インチ(約2.5cm)であり、引張速度は1インチ/分(約2.5cm/分)(すなわち、100%ひずみ/分)であった。5個の試料複製の平均として、試験結果を報告した。ASTM D882-10の11.3及び11.5節に記載されているように、引張強度(名目)、引張伸び(破断点伸び百分率)、及び引張弾性率を決定した。
【0191】
動的機械分析(DMA)
TA Instrumentsから「DMA Q800」として販売されているフィルム引張固定治具を利用して、動的機械分析(DMA)を行い、フィルムの物理的特性について温度の関数として特性を決定した。試料を、2℃/分の速度、1ラジアン/秒の周波数及び0.1%の引張ひずみで、-40℃の温度から140℃まで加熱した。
【0192】
印刷性能分析
ASTM D7305-08a「印刷物の反射濃度に関する標準試験方法」による絶対印刷濃度試験法及び測定ヘッド上に5mmの開口部を有するGRETAG SPM 50 LT分光濃度計を使用して、印刷性を評価した。較正プラークを使用して分光応答を較正し、2%以内の精度を有することが判明した。白色着色紙剥離ライナー上の25マイクロメートル(0.001インチ)厚アクリル系感圧接着剤層の積層体を、室温でニップロール積層し、以下のフィルムにして、接着剤及びフィルムの表面が一緒に接合してフィルム物品を形成するようにした。以下の様々なプリンタを使用して、少なくとも15cmを覆う原色バーにより、フィルム物品の露出表面を印刷した。
・3M(商標)ピエゾインクジェットインクシリーズ1500v2を使用する VUTEK ULTRAVU II Model 150 SCプリンタ(EFI Corporation、Meredith,N.H.の一部門、VUTEKから入手)、
・Eco-Sol Max 2インクを使用するSOLJET PRO4 XR-640プリンタ(Roland DGA Corporation,Irvine,C.A.から入手)、
・HPラテックスインクを使用するHP LATEX 360プリンタ(The Hewlett-Packard Company,Palo Alto,C.A.から入手)。
【0193】
印刷後、カラーバーの印刷濃度を測定する前に、最短24時間、試料を空気乾燥させた。
【0194】
実施例のフィルムの印刷濃度を対照例1の印刷濃度で除算し、結果を基準性能の百分率として表すことにより、実施例のフィルムのインク色濃度を対照例1のインク色濃度と比較した。100%の達成は、基準彩度を示す。100%より高い値は、より高い彩度を表し、100%未満の値は、より低い彩度を表す。合計色濃度は、シアン色、マゼンタ色、黄色、及び黒色についての測定の和である。
【0195】
実施例及び(「C」で示される)対照例の組成物において利用した成分のそれぞれの重量%を表1に示す。例えば、実施例8は、ポリ乳酸ポリマー、ポリ酢酸ビニルポリマー、及び可塑剤の総重量を基準として、70重量%のPLA4032、15重量%のPVAc、15重量%のCITROFLEX A4を含有する。実施例8は、組成物の総重量を基準として、0.2重量%のEcopromoteを更に含有していた。組成物のTg及び経時劣化の結果もまた、以下のとおり表1に報告する。
【表1】
【0196】
表1に示されるように、比較例C1、C4及びC5は経時劣化試験に合格したが、比較例C2、C3、C6及びC7は経時劣化試験に不合格であった。試料のTgは25℃まで低下し得る(比較C5により示されるように)が、それでも25℃以上では経時劣化試験に合格する(比較例C6及びC7により示されるように)。組成物がPLA、可塑剤及びPVAcを含んでいた場合、Tgは25℃より低温まで低下し、かつ経時劣化試験に合格し得る。
【0197】
実施例及び対照例(「C」で示す)の組成物において使用されている成分のそれぞれの重量%、DSCの結果を以下の表2に示す。
【表2】
【0198】
実施例12の組成物の代表的なDSCプロファイルを図9に示す。このDSCプロファイルは、冷却中の鋭い結晶化ピーク発熱を示す。図10に示すように、実施例16の組成物は、冷却中に結晶化を全く示さなかった。
【0199】
溶融プレスフィルム試料及び(「C」で示される)対照試料を調製するために組成物中で利用されている成分のそれぞれの重量%、DSC及びこれらのフィルムの引張試験結果を以下の表3に示す。
【表3】
【0200】
表3のフィルムのTgもDSCにより測定すれば、表2の組成物と同じであり得た。実施例12及び16は、前述の動的機械分析に従って試験した。実施例12の結果を図11に示し、実施例16の結果を図12に示す。
【0201】
前述のPLA系フィルムは、バッキング、中間層、又はカバーフィルムとして、様々なグラフィック物品に利用することができる。特に放射線硬化性インクで印刷することにより、グラフィックをPLA系フィルム上に提供することができる。
【0202】
実施例22
二軸スクリュー押出機(ゾーン1:250°F又は121℃;ゾーン2及び3:390°F又は199℃;ゾーン4及び5:350°F又は177℃)及び水中ペレタイザーを使用して、以下の組成を有する予備混合及び易流動性PLAペレットを調製した。
【表4】
【0203】
直径2インチ(約5.1cm)のねじ及び78インチ(198cm)の長さを有する、一軸スクリュー押出機(Gloucester Engineering押出機、Gloucester、M.A.)に、予備混合PLAペレットを供給した。冷却供給口、及び以下の近似ゾーン及びダイ温度:Z1:166℃(330°F);Z2:168℃(335°F);Z3:171℃(340°F);Z4:174℃(345°F);及びダイ:177℃(350°F)を用いて、14rpmの速度で押出機を操作した。0.004インチ(0.102mm)ダイギャップを通して、30インチ(76.2cm)幅ポリエステルキャリアフィルム上に、フィルムを押し出し、約0.002インチ(0.051mm)の厚さ及び約30インチ(76.2cm)の幅を有するフィルム製品を得た。オーブン内で60℃(140°F)にて、約3時間、オフラインでフィルムを熱的に焼鈍し、結晶化を行った。試験前にフィルム製品からポリエステルキャリアを除去した。
【表5】
表4において、MD=機械方向;TD=横方向である。
【0204】
様々なインクを用いて、代表的なフィルム実施例を印刷し、前述のように印刷濃度を評価した。試験結果を、以下の表に示す。
【表6】
【表7】
【表8】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12