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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】感熱転写媒体
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/385 20060101AFI20221107BHJP
   B41M 5/395 20060101ALI20221107BHJP
   B41M 5/42 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
B41M5/385 300
B41M5/395 300
B41M5/42 300
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019019804
(22)【出願日】2019-02-06
(65)【公開番号】P2020124892
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】306029349
【氏名又は名称】ゼネラル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮城 貫志
(72)【発明者】
【氏名】青野 康大
(72)【発明者】
【氏名】下島 琢磨
【審査官】中山 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-71217(JP,A)
【文献】特開2000-141922(JP,A)
【文献】特開2017-177706(JP,A)
【文献】特開平10-151871(JP,A)
【文献】特開平11-221972(JP,A)
【文献】特開2016-22722(JP,A)
【文献】特開2003-25733(JP,A)
【文献】特開2003-80847(JP,A)
【文献】特開2016-196175(JP,A)
【文献】特開平7-329430(JP,A)
【文献】特開平5-330248(JP,A)
【文献】特開2019-171712(JP,A)
【文献】特開2020-19216(JP,A)
【文献】特開平7-314908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/035
B41M 5/26-5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材上に設けられた、熱転写可能な白色層とを含み、前記白色層は、カオリン、酸化チタン、および塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合樹脂を含んでいる感熱転写媒体。
【請求項2】
前記カオリンの割合は、前記カオリンと酸化チタンの総量中の5質量%以上、30質量%以下である請求項1に記載の感熱転写媒体。
【請求項3】
前記カオリンは、湿式カオリンである請求項1または2に記載の感熱転写媒体。
【請求項4】
前記塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合樹脂は、酢酸ビニル含量が10質量%以上、22質量%以下の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の感熱転写媒体。
【請求項5】
前記基材上に、剥離層を介して、前記白色層が設けられている請求項1ないし4のいずれか1項に記載の感熱転写媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱転写媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱転写リボン等の感熱転写媒体を用いた熱転写印刷によれば、たとえば、インクジェット印刷法や電子写真法を利用した印刷などでは得ることのできない、隠蔽性のある白色の印刷をすることができる。
熱転写印刷によって白色の印刷をするための感熱転写媒体としては、白色顔料をバインダ樹脂によって結着した白色層(インク層)を、基材上に、熱転写可能な状態で積層したものを用いるのが一般的である。
【0003】
また白色顔料としては、それ自体が高い隠ぺい率と明度とを有し、白色度に優れた酸化チタン等の無機系の白色顔料が好適に用いられる。
しかし、白色顔料として酸化チタンのみを用いた白色層は、一般に、層自体の厚みが小さいこと、バインダ樹脂が無色透明ないしは無色半透明であること、そして酸化チタンの粒子形状が球状であることが相まって、酸化チタン間の隙間を光が透過しやすい。
【0004】
そして、酸化チタン間の隙間を、とくに白色層の厚み方向に光が透過することで、白色層の全体での隠蔽性が低下し、下地の色に影響されて、後述するように隠ぺい率と明度から評価される印刷の白色度が低下する傾向がある。
白色層の全体での隠蔽性を向上し、下地の色に影響されるのを抑制して、印刷の白色度を高めるためには、白色層中に含まれる酸化チタンの割合を多くして、酸化チタン間の隙間を小さくすることが考えられる。
【0005】
しかし、その場合には相対的にバインダ樹脂の割合が少なくなるため、白色層は、柔軟性や基材に対する追従性が低くなる傾向がある。
そして、たとえば、感熱転写媒体の取り扱い時に応力が加わる等した際に、白色層が不用意に基材から剥離する、いわゆる溢れ(こぼれ)を生じやすいという課題がある。
とくに白色顔料として、比重が大きく重い酸化チタンを使用した場合に、かかる課題を生じやすい。
【0006】
そのため感熱転写媒体には、応力が加わる等しても白色層が溢れにくいことが求められる。
特許文献1では、酸化チタンなどの白色顔料とともに、樹脂製の中空微粒子を併用することが検討されている。
中空微粒子は樹脂からなり、かつ中空状であるため、酸化チタン等の白色顔料よりも軽量で、しかも柔軟でもある。
【0007】
また中空微粒子は、基本的に無色透明ないし無色半透明の樹脂からなるが、バインダ樹脂中に分散させると、当該樹脂と、バインダ樹脂や中空内の気体との屈折率の違い等によって光の乱反射を生じて、白色を呈する。
したがって、白色顔料とともに中空微粒子を併用することで、印刷の白色度をあまり低下させずに、白色層の柔軟性や基材に対する追従性を向上して、溢れを抑制できることが期待される。
【0008】
しかし、白色顔料とともに中空微粒子を併用する場合には、両者を良好に結着し、保持するため、特許文献1に記載されているように、バインダ樹脂を多量に配合しなければならない。
しかも中空微粒子は、上記のように基本的に無色透明ないし無色半透明の樹脂からなるため、それ自体は隠蔽性を有さず光を透過する。
【0009】
そのため、特許文献1の構成では、白色顔料の割合が相対的に少なくなることと相まって、依然として、白色層の全体での隠蔽性が低下したり、印刷の白色度が低下したりするのを抑制することはできない。
よって感熱転写媒体には、白色層の溢れを抑制しながら、なおかつ白色層の隠蔽性と、印刷の白色度とを現状よりも向上することが求められる。
【0010】
また感熱転写媒体には、熱転写印刷時に、印刷した熱転写領域に掠れが生じたりしないことも求められる。
とくに、バーコードやQRコード(登録商標)等を印刷する場合は、データ読み取りの精度を高めるために、バーコードの細線やQRコード(登録商標)のドットを、掠れを生じることなく鮮明に印刷できることが必要とされる。
【0011】
そのため感熱転写媒体には、熱転写印刷時の熱感度を向上して掠れを抑制することも求められる。
さらに近時、感熱転写媒体を、とくに屋外などの、耐候性が求められる用途で使用されることの多い塩化ビニル系樹脂等の表面への印刷に用いることが検討されている。
したがって、感熱転写媒体には、上記塩化ビニル系樹脂等の表面への印刷の定着性や耐擦過性に優れることも求められる。
【0012】
しかし、従来の感熱転写媒体では、白色層が中空微粒子を含む、含まないにかかわらず、これらの要求に十分に対応できていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開平7-314908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、白色層の溢れを生じにくい上、掠れを生じにくく鮮明で、しかも高い白色度を有するとともに、とくに塩化ビニル系樹脂等の表面に対する定着性、耐擦過性にも優れた白色の印刷が可能な感熱転写媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、基材と、前記基材上に設けられた、熱転写可能な白色層とを含み、前記白色層は、カオリン、酸化チタン、および塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合樹脂を含んでいる感熱転写媒体である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、白色層の溢れを生じにくい上、掠れを生じにくく鮮明で、しかも高い白色度を有するとともに、とくに塩化ビニル系樹脂等の表面に対する定着性、耐擦過性にも優れた白色の印刷が可能な感熱転写媒体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上述したように、本発明の感熱転写媒体は、基材と、当該基材上に設けられた、熱転写可能な白色層とを含み、上記白色層は、カオリン、酸化チタン、および塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合樹脂(以下「塩酢ビ系樹脂」と略記する場合がある。)を含んでいることを特徴とするものである。
上記本発明の感熱転写媒体においては、一般に鱗片状ないし薄片状を呈するカオリンが、たとえば、液状の塗材を基材上に塗工して白色層を形成する際に加えられる応力等によって、主に白色層の面方向に配向された状態で、当該白色層中に分散される。
【0018】
そして、白色層の面方向に配向、分散されたカオリンが、それ自体が白色で、かつ隠蔽性を有することも相まって、酸化チタン間の隙間を白色層の厚み方向に遮って、上記隙間を光が白色層の厚み方向に透過するのを抑制することができる。
そのため、カオリンを併用することで、酸化チタンの割合を増加させることなく白色層の隠蔽性を高めて、白色度に優れた白色の印刷をすることが可能となる。
【0019】
また、バインダ樹脂としての塩酢ビ系樹脂は、当該塩酢ビ系樹脂中に含まれる塩化ビニル成分が、とくに塩化ビニル系樹脂等の表面に対する親和性に優れるため、当該塩化ビニル系樹脂等の表面に対する印刷の定着性や耐擦過性を向上することができる
また、塩酢ビ系樹脂中の酢酸ビニル成分は、当該塩酢ビ系樹脂の柔軟性、粘着性、密着性などを高めて、塩酢ビ系樹脂による、酸化チタンおよびカオリンの結着性、保持性を向上するとともに、白色層の全体での柔軟性を高めるために機能する。
【0020】
そのため、印刷の白色度を高めるために、酸化チタンとカオリンとを目いっぱい配合しても、白色層の溢れを抑制することができる。
さらに酢酸ビニル成分は、熱転写印刷時の熱感度を向上して掠れを抑制したりするためにも機能する。
したがって、本発明の感熱転写媒体によれば、白色層の溢れを生じにくい上、掠れを生じにくく鮮明で、しかも高い白色度を有するとともに、とくに塩化ビニル系樹脂等の表面に対する定着性、耐擦過性にも優れた白色の印刷が可能となる。
【0021】
《基材》
基材としては、従来同様に、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエステル、トリアセテート等の樹脂のフィルムや、コンデンサー紙、グラシン紙等の薄葉紙、あるいはセロファン等が挙げられる。
中でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルのフィルムが、機械的強度、寸法安定性、耐熱性、価格等の見地から好ましい。
【0022】
基材の厚みは、たとえば、熱転写プリンタの仕様等に応じて任意に設定できるものの、1μm以上、とくに2μm以上であるのが好ましく、10μm以下、とくに8μm以下であるのが好ましい。
厚みをこの範囲とすることで、基材の強度(引張強度等)を確保しながら、熱転写プリンタのサーマルヘッドによって基材の背面側から加えられる熱を、当該基材を通して白色層にできるだけ効率よく伝達して、熱転写印刷時の熱感度を向上することができる。
【0023】
そのため、掠れを生じにくくして、鮮明な印刷をすることができる。
基材の、白色層を形成する側の表面には、従来同様に、離型処理をしてもよい。
《背面層》
基材の、白色層を形成する側と反対面(背面)には、サーマルヘッドと接触する当該背面の耐熱性、滑り性、耐擦過性等を向上するため、従来同様に、背面層を形成してもよい。
【0024】
背面層は、従来同様に形成できる。
すなわち背面層は、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン・フッ素共重合樹脂、ニトロセルロース樹脂、シリコーン変性ウレタン樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂等によって形成できる。
また背面層には、必要に応じて滑剤を含有させても良い。
【0025】
背面層は、上記樹脂等を溶剤に溶解または分散させた塗材を、基材の背面に塗布したのち乾燥させて形成することができる。
また、いわゆるホットメルト塗工により、上記樹脂等の混合物を加熱して溶融させた状態で基材の背面に塗布したのち冷却、固化させて背面層を形成することもできる。
背面層の厚みは、やはり熱転写プリンタの仕様等に応じて任意に設定できるものの、単位面積あたりの固形分量で表して0.05g/m以上、とくに0.1g/m以上であるのが好ましく、0.5g/m以下、とくに0.4g/m以下であるのが好ましい。
【0026】
厚みをこの範囲以上とすることで、基材の背面に、背面層として良好に機能する連続した層を形成して、当該背面層を設けることによる上述した効果を十分に確保することができる。
一方、背面層の厚みを上記の範囲以下とすることで、サーマルヘッドによって基材の背面側から加えられる熱を、当該背面層と基材とを通して白色層にできるだけ効率よく伝達して、熱転写印刷時の熱感度を向上することができる。
【0027】
そして、掠れを生じにくくして、鮮明な印刷をすることができる。
《剥離層》
白色層は、当該白色層自体に熱転写性を付与することで、基材上に直接に積層してもよいし、熱転写性を有する剥離層を介して、基材上に積層してもよい。
とくに、後者のように機能を分離して、それぞれの機能に優れた剥離層と白色層とを形成することが好ましい。
【0028】
剥離層としては、従来同様に、感熱転写媒体を熱転写印刷に使用するまでの間、白色層を基材の表面に固定し続けるとともに、サーマルヘッドによる基材の背面側からの加熱によって溶融または軟化して、白色層を基材から剥離させる機能を有する層が挙げられる。
剥離層を形成する材料としては、従来同様に、ワックスや熱可塑性樹脂などを用いることができる。
【0029】
このうちワックスとしては、たとえば、ポリエチレンワックス、カルナバワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等が挙げられる。
また、熱可塑性樹脂としては、たとえば、ポリエチレン系共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、塩化ビニル系(共)重合体、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0030】
上記ワックスや熱可塑性樹脂などの1種または2種以上を用いることができる。
とくにワックスが好ましい。
またワックスには、熱転写前の白色層の溢れ防止するために、エチレン酢酸ビニル樹脂(EVA)等の熱可塑性樹脂を添加してもよい。
剥離層は、上述した機能を良好に発現させることを考慮すると、融点または軟化点が50℃以上、とくに60℃以上であるのが好ましく、150℃以下、とくに120℃以下であるのが好ましい。
【0031】
融点または軟化点が上記の範囲にある剥離層を形成するためには、例示のワックスや熱可塑性樹脂の中から、融点または軟化点が当該範囲にあるものを選択して使用すればよい。
また、ワックスや熱可塑性樹脂の2種以上を併用して、融点または軟化点が上記の範囲に入るように調整してもよい。
【0032】
剥離層には、ワックスや熱可塑性樹脂に加えて、さらに他の成分を含有させてもよい。
他の成分としては、たとえば、有機また無機の充てん剤、熱硬化性樹脂、高級脂肪酸、高級アルコール、高級脂肪酸エステル、アミド類、高級アミン、オイル、界面活性剤等の1種または2種以上が挙げられる。
このうち界面活性剤は、剥離層の剥離性を調整するためのもので、界面活性剤としては、たとえば、ポリオキシエチレン鎖含有化合物等が挙げられる。
【0033】
また剥離層には、白色層の隠蔽性と、印刷の白色度とを補助するために、酸化チタン等の白色の顔料を含有させてもよい。
剥離層は、そのもとになるワックス等を溶剤に溶解または分散させた塗材を、基材の表面に塗布したのち乾燥させて形成することができる。
また、ホットメルト塗工により、上記ワックス等の混合物を加熱して溶融させた状態で基材の表面に塗布したのち冷却、固化させて剥離層を形成することもできる。
【0034】
剥離層の厚みは、やはり熱転写プリンタの仕様等に応じて任意に設定できるものの、単位面積あたりの固形分量で表して0.1g/m以上、とくに0.2g/m以上であるのが好ましく、3g/m以下、とくに2g/m以下であるのが好ましい。
厚みをこの範囲以上とすることで、基材の表面に、剥離層として良好に機能する連続した層を形成することができる。
【0035】
また、剥離層の厚みを上記の範囲以下とすることで、サーマルヘッドによって基材の背面側から加えられる熱を、当該剥離層を通して白色層にできるだけ効率よく伝達することもできる。
したがって、剥離層の厚みを上記の範囲とすることで、熱転写印刷時の熱感度を向上でき、掠れを生じにくくして、鮮明な印刷をすることができる。
【0036】
《白色層》
〈カオリン〉
白色層に含まれるカオリンとしては、たとえば、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイト、加水ハロイサイト等の1種または2種以上を含み、天然に産出する粘土(白陶土、カオリンクレー)を精製して製造される各種のカオリンが挙げられる。
【0037】
具体的には、たとえば、精製方法によって分類される湿式カオリン、焼成カオリン、乾式カオリン等の1種または2種以上を用いることができる。
中でも、水を利用して精製、漂白して不純物を除去した湿式カオリンや、当該湿式カオリンを焼成した焼成カオリンが、明度や白色度に優れるため好ましく、とくに、バインダ樹脂としての塩酢ビ系樹脂に対する分散性にも優れた湿式カオリンが好ましい。
【0038】
湿式カオリンが、焼成カオリンよりも塩酢ビ系樹脂に対する分散性に優れているのは、湿式カオリンの方が含水率が高いため、含水分と、塩酢ビ系樹脂の末端基である塩素原子との相性が良いことが原因と考えられる。
そして、後述する実施例の結果からも明らかなように、湿式カオリンを選択して用いることで、当該湿式カオリンを白色層中に良好に分散させて、当該白色層の隠蔽性と、印刷の白色度とをさらに向上することができる。
【0039】
また同系、つまり同じ精製方法によって製造されるカオリンの中では、平均粒子径が大きいものを選択して用いるのが好ましい。
同系のカオリンの中でも平均粒子径が大きいものほど、先に説明した、酸化チタン間の隙間を白色層の厚み方向に遮って、上記隙間を光が白色層の厚み方向に透過するのを抑制する効果に優れているためである。
【0040】
このことも、後述する実施例の結果から明らかである。
カオリンの具体例としては、これに限定されないが、たとえば、下記の各種カオリンが挙げられる。
(湿式カオリン)
山陽クレー工業(株)製のBIカオリン(平均粒子径:3μm)、AAカオリン(平均粒子径:5μm)。
【0041】
イメリス カオリン社製のHydrite(登録商標)シリーズのうちTS90(平均粒子径:0.2μm)、TS90S(平均粒子径:0.2μm)、UF90(平均粒子径:0.2μm)、UF90S(平均粒子径:0.2μm)、PXNLC(平均粒子径:0.4μm)、PXNLCS(平均粒子径:0.4μm)、R(平均粒子径:0.45μm)、R-A(平均粒子径:0.45μm)、RS(平均粒子径:0.5μm)、RS-A(平均粒子径:0.5μm)、121S(平均粒子径:1.0μm)、Flat D(平均粒子径:4.0μm)、Flat DS(平均粒子径:4.0μm)。
【0042】
(焼成カオリン)
イメリス カオリン社製のPole Star 400(平均粒子径:0.6μm)、NeoGen 2000(平均粒子径:0.7μm)、OpTiMax 0425(平均粒子径:0.8μm)、NeoGen MX(平均粒子径:1.1μm)、Glomax(登録商標)LL(平均粒子径:1.5μm)。
【0043】
竹原化学工業(株)製のSatintone No.5(平均粒子径:0.8μm)、Satintone W(平均粒子径:1.4μm)、Glomax LL(平均粒子径:1.5μm)。
上記カオリンの1種または2種以上を用いることができる。
〈酸化チタン〉
酸化チタン(二酸化チタン、TiO)としては、たとえば、硫酸法、塩素法等の製造方法によって製造された、ルチル型、アナターゼ型等の各種の酸化チタンが、いずれも使用可能である。
【0044】
ただし、白色層の隠蔽性を高めて、良好な白色度を有する印刷をすることを考慮すると、酸化チタンとしては、平均粒子径が0.2μm以上であるものを選択して用いるのが好ましい。
また、前述したように酸化チタンは比重が大きいため、白色層のもとになる塗材中や白色層中での分散性を向上したり、白色層の溢れを抑制したりするためには、上記の範囲でも小径でより軽い、平均粒子径が0.5μm以下の酸化チタンを選択して用いるのが好ましい。
【0045】
酸化チタンの具体例としては、これに限定されないが、たとえば、いずれもルチル型である、石原産業(株)製の、下記の各種グレードの酸化チタンが挙げられる。
(硫酸法酸化チタン)
R-780(平均粒子径:0.24μm)、R-780-2(平均粒子径:0.24μm)、R-850(平均粒子径:0.24μm)、PF-736(平均粒子径:0.24μm)、PF-737(平均粒子径:0.21μm)、PF-742(平均粒子径:0.25μm)、R-820(平均粒子径:0.26μm)、R-830(平均粒子径:0.25μm)、R-930(平均粒子径:0.25μm)、R-980(平均粒子径:0.24μm)、R-550(平均粒子径:0.24μm)、R-630(平均粒子径:0.24μm)、R-680(平均粒子径:0.21μm)。
【0046】
(塩素法酸化チタン)
CR-58(平均粒子径:0.28μm)、CR-58-2(平均粒子径:0.28μm)、CR-85(平均粒子径:0.25μm)、PF-690(平均粒子径:0.21μm)、PF-691(平均粒子径:0.21μm)、PF-711(平均粒子径:0.25μm)、PF-739(平均粒子径:0.25μm)、PC-3(平均粒子径:0.21μm)、CR-95(平均粒子径:0.28μm)、CR-953(平均粒子径:0.28μm)、CR-97(平均粒子径:0.25μm)、UT771(平均粒子径:0.25μm)、PFC105(平均粒子径:0.28μm)、CR-60(平均粒子径:0.21μm)、CR-60-2(平均粒子径:0.21μm)、CR-63(平均粒子径:0.21μm)、CR-67(平均粒子径:0.21μm)、CR-50(平均粒子径:0.25μm)、CR-50-2(平均粒子径:0.25μm)、CR-57(平均粒子径:0.25μm)、CR-Super70(平均粒子径:0.25μm)、CR-80(平均粒子径:0.25μm)、CR-90(平均粒子径:0.25μm)、CR-90-2(平均粒子径:0.25μm)、CR-93(平均粒子径:0.28μm)。
【0047】
上記酸化チタンの1種または2種以上を用いることができる。
〈塩酢ビ系樹脂〉
塩酢ビ系樹脂としては、繰り返し単位として塩化ビニルと酢酸ビニルとを少なくとも含む、種々の塩酢ビ系樹脂を用いることができる。
塩酢ビ系樹脂の具体例としては、これに限定されないが、たとえば、日信化学工業(株)製のソルバイン(登録商標)シリーズの、下記の各種グレードの塩酢ビ系樹脂などが挙げられる。
【0048】
(Aタイプ)
A〔組成:塩化ビニル92質量%、酢酸ビニル3質量%、ビニルアルコール5質量%、重合度:420、重量平均分子量Mw:7.3×10、ガラス転移温度Tg:76℃〕、AL〔組成:塩化ビニル93質量%、酢酸ビニル2質量%、ビニルアルコール5質量%、重合度:300、重量平均分子量Mw:5.3×10、ガラス転移温度Tg:76℃〕、TA5R〔組成:塩化ビニル88質量%、酢酸ビニル1質量%、ビニルアルコール11質量%、重合度:300、重量平均分子量Mw:6.1×10、ガラス転移温度Tg:78℃〕、TAO〔組成:塩化ビニル91質量%、酢酸ビニル2質量%、ビニルアルコール7質量%、重合度:360、重量平均分子量Mw:4.6×10、ガラス転移温度Tg:77℃〕。
【0049】
(Cタイプ)
C〔組成:塩化ビニル87質量%、酢酸ビニル13質量%、重合度:420、重量平均分子量Mw:7.5×10、ガラス転移温度Tg:70℃〕、CL〔組成:塩化ビニル86質量%、酢酸ビニル14質量%、重合度:300、重量平均分子量Mw:5×10、ガラス転移温度Tg:70℃〕、CLL2〔組成:塩化ビニル84質量%、酢酸ビニル16質量%、重合度:260、重量平均分子量Mw:3.9×10、ガラス転移温度Tg:70℃〕、CH〔組成:塩化ビニル86質量%、酢酸ビニル14質量%、重合度:650、重量平均分子量Mw:9.5×10、ガラス転移温度Tg:73℃〕、CN〔組成:塩化ビニル89質量%、酢酸ビニル11質量%、重合度:750、重量平均分子量Mw:9.9×10、ガラス転移温度Tg:75℃〕、CNL〔組成:塩化ビニル90質量%、酢酸ビニル10質量%、重合度:200、重量平均分子量Mw:3.5×10、ガラス転移温度Tg:76℃〕、C5R〔組成:塩化ビニル79質量%、酢酸ビニル21質量%、重合度:350、重量平均分子量Mw:5.8×10、ガラス転移温度Tg:68℃〕。
【0050】
(Mタイプ)
M5〔組成:塩化ビニル85質量%、酢酸ビニル14質量%、ジカルボン酸1質量%、重合度:430、重量平均分子量Mw:6.9×10、ガラス転移温度Tg:69℃〕。
(その他)
TA3〔組成:塩化ビニル83質量%、酢酸ビニル4質量%、ヒドロキシアルキルアクリレート13質量%、重合度:350、重量平均分子量Mw:6.4×10、ガラス転移温度Tg:65℃〕。
【0051】
中でも、繰り返し単位として第3成分を含まず、塩化ビニルと酢酸ビニルのみを含む塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂(以下「塩酢ビ樹脂」と略記する場合がある。)が好ましい。
また塩酢ビ樹脂としては、酢酸ビニル含量が5質量%以上、中でも8質量%以上、とくに10質量%以上で、かつ25質量%以下、とくに22質量%以下であるものを選択して用いるのが好ましい。
【0052】
酢酸ビニル含量がこの範囲未満である塩酢ビ樹脂では、酢酸ビニル成分による、前述した各種の効果が十分に得られない場合がある。
すなわち、塩酢ビ系樹脂の柔軟性、粘着性、密着性などを高めて、酸化チタンおよびカオリンの結着性、保持性を向上する機能や、白色層の全体での柔軟性を向上する機能が不十分になって、白色層が溢れやすくなる場合がある。
【0053】
また、白色層の膜切れを良くしたり、熱転写印刷時の熱感度を向上したりする機能も不十分になって、掠れを生じやすくなる場合もある。
一方、酢酸ビニル含量が上記の範囲を超える場合には、相対的に塩化ビニル成分の割合が少なくなるため、当該塩化ビニル成分による、塩化ビニル系樹脂等の表面に対する印刷の定着性や耐擦過性を向上する効果が十分に得られなくなる場合がある。
【0054】
これに対し、酢酸ビニル含量が上記の範囲である塩酢ビ樹脂を選択して用いることにより、より一層、白色層の溢れを生じにくい上、掠れを生じにくく、鮮明で、塩化ビニル系樹脂等の表面に対する定着性、耐擦過性にも優れた印刷が可能となる。
また、塩酢ビ樹脂としては、重合度が200以上、450以下、とくに350以下で、かつ重量平均分子量Mwが3.5×10以上、7.5×10以下、とくに5.8×10以下であるものを選択して用いるのが好ましい。
【0055】
重合度および/または重量平均分子量Mwがこの範囲未満である塩酢ビ樹脂では、酸化チタンおよびカオリンの結着性、保持性が低下して、白色層の溢れを生じやすくなる場合がある。
一方、重合度および/または重量平均分子量Mwが上記の範囲を超える塩酢ビ樹脂では、熱転写印刷時の熱感度が低下して掠れを生じやすくなる場合がある。
【0056】
また、重合度および/または重量平均分子量Mwが上記の範囲を超える塩酢ビ樹脂は、白色層を構成する溶剤に溶けにくくなる。また、白色層のもとになる塗材の安定性が低下して、経時劣化しやすくなる場合もある。
これに対し、重合度と重量平均分子量Mwがともに上記の範囲である塩酢ビ樹脂を選択して用いれば、掠れを生じにくく、鮮明で、しかも塩化ビニル系樹脂等の表面に対する定着性、耐擦過性にも優れた印刷が可能となる。
【0057】
また、さらに溢れを生じにくい上、白色層を構成する溶剤に溶けやすくしたり、白色層のもとになる塗材の安定性を向上して、経時劣化しにくくすることもできる。
〈各成分の割合〉
カオリンの割合は、カオリンと酸化チタンの総量中の2.5質量%以上、とくに4.5質量%以上であるのが好ましく、36質量%以下、とくに30質量%以下であるのが好ましい。
【0058】
カオリンの割合がこの範囲未満では、当該カオリンを酸化チタンと併用することによる、前述した、酸化チタンの割合を増加させることなく白色層の隠蔽性を高めて、白色度に優れた白色の印刷をする効果が十分に得られず、印刷の白色度が低下する場合がある。
また、隠蔽性を維持するため、相対的に、比重の大きい酸化チタンの割合を多くすると、塩酢ビ系樹脂による結着性、保持性の能力を超えてしまって、白色層が溢れやすくなる場合もある。
【0059】
一方、カオリンの割合が上記の範囲を超える場合には、やはり印刷の白色度が低下する場合がある。
つまり、カオリンの明度や白色度が酸化チタンに比べて低いこと、相対的に酸化チタンの割合が少なくなること、そして多量のカオリン同士が白色層中で凝集しやすく、凝集すると分布にムラを生じて隠蔽性が低下することが相まって、印刷の白色度が低下する。
【0060】
これに対し、カオリンの割合を上記の範囲とすることにより、より一層、白色層の溢れを生じにくくできる上、当該白色層の隠蔽性を高めて、さらに白色度に優れた白色の印刷をすることが可能となる。
なおカオリンの割合は、白色層を形成する固形分の総量中の2質量%以上、中でも3質量%以上、とくに4質量%以上であるのが好ましく、30質量%以下、中でも26質量%以下、とくに25質量%以下であるのが好ましい。
【0061】
また、酸化チタンの割合は、白色層を形成する固形分の総量中の50質量%以上、中でも58質量%以上、とくに60質量%以上であるのが好ましく、90質量%以下、とくに88質量%以下であるのが好ましい。
塩酢ビ系樹脂による結着性、保持性によって白色層の溢れを抑制したり、塩化ビニル系樹脂等の表面に対する白色層の定着性、耐擦過性を向上したりすることを考慮すると、塩酢ビ系樹脂の割合は、できるだけ多いことが望ましい。
【0062】
しかし、白色層の隠蔽性と、印刷の白色度とを保つためには、酸化チタンおよびカオリンを優先して配合するために、塩酢ビ系樹脂の割合は、できるだけ少なくすることが肝要である。
これらの、相反する要求のバランスをとるためには、塩酢ビ系樹脂の割合は、白色層を形成する固形分の総量中の4.8質量%以上、とくに6質量%以上であるのが好ましく、22質量%以下、とくに20質量%以下であるのが好ましい。
【0063】
塩酢ビ系樹脂の割合がこの範囲未満では、当該塩酢ビ系樹脂による、酸化チタンおよびカオリンの結着性、保持性を向上する機能や、白色層の全体での柔軟性を向上する機能が不十分になって、白色層が溢れやすくなる場合がある。
また、熱転写印刷時の熱感度が低下して掠れを生じやすくなったり、塩化ビニル系樹脂等の表面に対する白色層の定着性、耐擦過性が低下したりする場合もある。
【0064】
一方、塩酢ビ系樹脂の割合が上記の範囲を超える場合には、相対的に酸化チタンおよびカオリンの割合が少なくなるため白色層の隠蔽性が低下し、下地の色に影響されて、印刷の白色度が低下する場合がある。
これに対し、塩酢ビ系樹脂の割合を上記の範囲とすることにより、より一層、白色層の溢れを生じにくい上、掠れを生じにくく、鮮明で、塩化ビニル系樹脂等の表面に対する定着性、耐擦過性にも優れた印刷が可能となる。
【0065】
また、白色層の隠蔽性を高めて、さらに白色度に優れた白色の印刷をすることも可能となる。
〈他の成分〉
白色層には、白の色味を調製するために、白以外の任意の色の顔料を少量、添加することもできる。
【0066】
また、先に説明したように白色層自体に熱転写性を付与する場合は、当該白色層に、前述した剥離層を形成するワックスや熱可塑性樹脂を配合してもよい。
白以外の顔料やワックス、熱可塑性樹脂等の割合は、任意に設定することができる。
〈形成方法、厚み〉
白色層は、上記各成分を任意の溶剤に溶解または分散させた塗材を、基材の表面に形成した剥離層の上に、あるいは基材の表面に直接に塗布したのち、乾燥させて形成することができる。
【0067】
白色層の厚みは、感熱転写媒体の用途等に応じて任意に設定できるものの、単位面積当たりの固形分量で表して2g/m以上、とくに3g/m以上であるのが好ましく、6g/m以下、とくに5g/m以下であるのが好ましい。
白色層の厚みをこの範囲以上とすることで、当該白色層の全体での隠蔽性を向上し、下地の色に影響されるのを抑制して、印刷の白色度を高めることができる。
【0068】
また、白色層の厚みを上記の範囲以下とすることで、当該白色層の、熱転写印刷時の熱感度を向上して掠れを生じにくくして、鮮明な印刷をすることができる。
《接着層》
塩化ビニル系樹脂等の、塩酢ビ系樹脂との親和性、接着性を有する樹脂の表面へ印刷する場合は、塩酢ビ系樹脂の機能によって、白色層を直接に熱転写印刷できるため、接着層は不要である。
【0069】
しかし印刷する表面が、とくに塩酢ビ系樹脂と親和性、接着性の低い樹脂やガラス、あるいは金属等の表面である場合は、白色層の上に、熱転写印刷時の熱によって粘着性を示す感熱性の接着層を設けてもよい。
感熱性の接着層は、たとえば、エポキシ樹脂によって形成できる。
また接着層には、白色層の隠蔽性と、印刷の白色度とを補助するために、酸化チタン等の白色の顔料を含有させてもよい。
【0070】
本発明の感熱転写媒体の構成は、以上で説明した例のものには限定されない。
たとえば、背面層、接着層は省略してもよい。
また、先に説明したように、白色層自体に熱転写性を付与して、剥離層を省略してもよい。
その他、本発明の要旨を変更しない範囲で、種々の変更を施すことができる。
【実施例
【0071】
以下に本発明を、実施例、比較例に基づいてさらに説明するが、本発明の構成は、これらの例によって限定されるものではない。
〈実施例1〉
(基材および背面層)
基材としては、背面に、シリコーン系樹脂からなる背面層を形成した、厚み5μmのPETフィルムを用意した。
【0072】
(剥離層)
カルナバワックスとEVAとを溶剤に溶解して調製した塗材を、基材の、背面層を形成した側と反対面である表面に塗布したのち乾燥させて、単位面積あたりの固形分量が1.0g/mである剥離層を形成した。
(白色層)
下記の各成分を、溶剤としてのメチルエチルケトン(MEK)30.0質量部と配合して、白色層用の塗材を調製した。
【0073】
【表1】
【0074】
表1中の各成分は、下記のとおり。
カオリン:湿式カオリン、山陽クレー工業(株)製のBIカオリン(平均粒子径:3μm)
酸化チタン:石原産業(株)製のR-550(平均粒子径:0.24μm)
塩酢ビ系樹脂:日信化学工業(株)製のソルバインCL〔塩酢ビ樹脂、組成:塩化ビニル86質量%、酢酸ビニル14質量%、重合度:300、重量平均分子量Mw:5×10、ガラス転移温度Tg:70℃〕
次いで上記塗材を、先に形成した剥離層の上に塗布したのち乾燥させて、単位面積当たりの固形分量が5g/mの白色層を形成して、感熱転写媒体を作製した。
【0075】
白色層におけるカオリンの割合は、カオリンと酸化チタンの総量中の9.7質量%、白色層を形成する固形分の総量中の8.8質量%、酸化チタンの割合は、上記固形分の総量中の82.4質量%、塩酢ビ系樹脂の割合は、固形分の総量中の8.8質量%であった。
〈実施例2〉
塩酢ビ系樹脂として、塩化ビニル含量が75質量%、酢酸ビニル含量が25質量%である塩酢ビ樹脂(試作品)を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして白色層を形成し、感熱転写媒体を作製した。
【0076】
白色層におけるカオリンの割合は、カオリンと酸化チタンの総量中の9.7質量%、白色層を形成する固形分の総量中の8.8質量%、酸化チタンの割合は、上記固形分の総量中の82.4質量%、塩酢ビ系樹脂の割合は、固形分の総量中の8.8質量%であった。
〈実施例3〉
塩酢ビ系樹脂として、日信化学工業(株)製のソルバインC5R〔組成:塩化ビニル79質量%、酢酸ビニル21質量%、重合度:350、重量平均分子量Mw:5.8×10、ガラス転移温度Tg:68℃〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして白色層を形成し、感熱転写媒体を作製した。
【0077】
白色層におけるカオリンの割合は、カオリンと酸化チタンの総量中の9.7質量%、白色層を形成する固形分の総量中の8.8質量%、酸化チタンの割合は、上記固形分の総量中の82.4質量%、塩酢ビ系樹脂の割合は、固形分の総量中の8.8質量%であった。
〈実施例4〉
塩酢ビ系樹脂として、日信化学工業(株)製のソルバインCNL〔組成:塩化ビニル90質量%、酢酸ビニル10質量%、重合度:200、重量平均分子量Mw:3.5×10、ガラス転移温度Tg:76℃〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして白色層を形成し、感熱転写媒体を作製した。
【0078】
白色層におけるカオリンの割合は、カオリンと酸化チタンの総量中の9.7質量%、白色層を形成する固形分の総量中の8.8質量%、酸化チタンの割合は、上記固形分の総量中の82.4質量%、塩酢ビ系樹脂の割合は、固形分の総量中の8.8質量%であった。
〈実施例5〉
塩酢ビ系樹脂として、塩化ビニル含量が95質量%、酢酸ビニル含量が5質量%である塩酢ビ樹脂(試作品)を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして白色層を形成し、感熱転写媒体を作製した。
【0079】
白色層におけるカオリンの割合は、カオリンと酸化チタンの総量中の9.7質量%、白色層を形成する固形分の総量中の8.8質量%、酸化チタンの割合は、上記固形分の総量中の82.4質量%、塩酢ビ系樹脂の割合は、固形分の総量中の8.8質量%であった。
〈比較例1〉
塩酢ビ系樹脂に代えて同量のエポキシ樹脂〔三菱ケミカル(株)製のjER(登録商標)1002〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして白色層を形成し、感熱転写媒体を作製した。
【0080】
白色層におけるカオリンの割合は、カオリンと酸化チタンの総量中の9.7質量%、白色層を形成する固形分の総量中の8.8質量%、酸化チタンの割合は、上記固形分の総量中の82.4質量%、エポキシ樹脂の割合は、固形分の総量中の8.8質量%であった。
〈比較例2〉
カオリンを配合せず、酸化チタンの量を15.5質量部としたこと以外は実施例1と同様にして白色層を形成し、感熱転写媒体を作製した。
【0081】
白色層におけるカオリンの割合は0.0質量%、酸化チタンの割合は、白色層を形成する固形分の総量中の91.2質量%、塩酢ビ系樹脂の割合は、固形分の総量中の8.8質量%であった。
〈実施例6〉
カオリンの量を0.4質量部、酸化チタンの量を15.1質量部としたこと以外は実施例1と同様にして白色層を形成し、感熱転写媒体を作製した。
【0082】
白色層におけるカオリンの割合は、カオリンと酸化チタンの総量中の2.6質量%、白色層を形成する固形分の総量中の2.4質量%、酸化チタンの割合は、上記固形分の総量中の88.8質量%、塩酢ビ系樹脂の割合は、固形分の総量中の8.8質量%であった。
〈実施例7〉
カオリンの量を0.7質量部、酸化チタンの量を14.8質量部としたこと以外は実施例1と同様にして白色層を形成し、感熱転写媒体を作製した。
【0083】
白色層におけるカオリンの割合は、カオリンと酸化チタンの総量中の4.5質量%、白色層を形成する固形分の総量中の4.1質量%、酸化チタンの割合は、上記固形分の総量中の87.1質量%、塩酢ビ系樹脂の割合は、固形分の総量中の8.8質量%であった。
〈実施例8〉
カオリンの量を4.5質量部、酸化チタンの量を11.0質量部としたこと以外は実施例1と同様にして白色層を形成し、感熱転写媒体を作製した。
【0084】
白色層におけるカオリンの割合は、カオリンと酸化チタンの総量中の29.0質量%、白色層を形成する固形分の総量中の26.5質量%、酸化チタンの割合は、上記固形分の総量中の64.7質量%、塩酢ビ系樹脂の割合は、固形分の総量中の8.8質量%であった。
〈実施例9〉
カオリンの量を5.5質量部、酸化チタンの量を10.0質量部としたこと以外は実施例1と同様にして白色層を形成し、感熱転写媒体を作製した。
【0085】
白色層におけるカオリンの割合は、カオリンと酸化チタンの総量中の35.5質量%、白色層を形成する固形分の総量中の32.4質量%、酸化チタンの割合は、上記固形分の総量中の58.8質量%、塩酢ビ系樹脂の割合は、固形分の総量中の8.8質量%であった。
〈比較例3〉
カオリンの量を15.5質量部として、酸化チタンを配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして白色層を形成し、感熱転写媒体を作製した。
【0086】
白色層におけるカオリンの割合は、カオリンと酸化チタンの総量中の100.0質量%、白色層を形成する固形分の総量中の91.2質量%、酸化チタンの割合は0.0質量%、塩酢ビ系樹脂の割合は、固形分の総量中の8.8質量%であった。
〈実施例10〉
カオリンとして、イメリス カオリン社製のHydrite TS90(湿式カオリン、平均粒子径:0.2μm)を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして白色層を形成し、感熱転写媒体を作製した。
【0087】
白色層におけるカオリンの割合は、カオリンと酸化チタンの総量中の9.7質量%、白色層を形成する固形分の総量中の8.8質量%、酸化チタンの割合は、上記固形分の総量中の82.4質量%、塩酢ビ系樹脂の割合は、固形分の総量中の8.8質量%であった。
〈実施例11〉
カオリンとして、イメリス カオリン社製のNeoGen MX(焼成カオリン、平均粒子径:1.1μm)を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして白色層を形成し、感熱転写媒体を作製した。
【0088】
白色層におけるカオリンの割合は、カオリンと酸化チタンの総量中の9.7質量%、白色層を形成する固形分の総量中の8.8質量%、酸化チタンの割合は、上記固形分の総量中の82.4質量%、塩酢ビ系樹脂の割合は、固形分の総量中の8.8質量%であった。
〈実施例12〉
カオリンとして、イメリス カオリン社製のNeoGen 2000(焼成カオリン、平均粒子径:0.7μm)を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして白色層を形成し、感熱転写媒体を作製した。
【0089】
白色層におけるカオリンの割合は、カオリンと酸化チタンの総量中の9.7質量%、白色層を形成する固形分の総量中の8.8質量%、酸化チタンの割合は、上記固形分の総量中の82.4質量%、塩酢ビ系樹脂の割合は、固形分の総量中の8.8質量%であった。
〈比較例4〉
カオリンに代えて、鱗片状の軽質炭酸カルシウムを同量配合したこと以外は実施例1と同様にして白色層を形成し、感熱転写媒体を作製した。
【0090】
白色層における軽質炭酸カルシウムの割合は、軽質炭酸カルシウムと酸化チタンの総量中の9.7質量%、白色層を形成する固形分の総量中の8.8質量%、酸化チタンの割合は、上記固形分の総量中の82.4質量%、塩酢ビ系樹脂の割合は、固形分の総量中の8.8質量%であった。
〈実施例13〉
カオリンの量を1.55質量部、酸化チタンの量を14.65質量部、塩酢ビ系樹脂の量を0.8質量部としたこと以外は実施例1と同様にして白色層を形成し、感熱転写媒体を作製した。
【0091】
白色層におけるカオリンの割合は、カオリンと酸化チタンの総量中の9.6質量%、白色層を形成する固形分の総量中の9.1質量%、酸化チタンの割合は、上記固形分の総量中の86.2質量%、塩酢ビ系樹脂の割合は、固形分の総量中の4.7質量%であった。
〈実施例14〉
カオリンの量を1.5質量部、酸化チタンの量を14.2質量部、塩酢ビ系樹脂の量を1.3質量部としたこと以外は実施例1と同様にして白色層を形成し、感熱転写媒体を作製した。
【0092】
白色層におけるカオリンの割合は、カオリンと酸化チタンの総量中の9.6質量%、白色層を形成する固形分の総量中の8.8質量%、酸化チタンの割合は、上記固形分の総量中の83.5質量%、塩酢ビ系樹脂の割合は、固形分の総量中の7.6質量%であった。
〈実施例15〉
カオリンの量を1.35質量部、酸化チタンの量を12.35質量部、塩酢ビ系樹脂の量を3.3質量部としたこと以外は実施例1と同様にして白色層を形成し、感熱転写媒体を作製した。
【0093】
白色層におけるカオリンの割合は、カオリンと酸化チタンの総量中の9.9質量%、白色層を形成する固形分の総量中の7.9質量%、酸化チタンの割合は、上記固形分の総量中の72.6質量%、塩酢ビ系樹脂の割合は、固形分の総量中の19.4質量%であった。
〈実施例16〉
カオリンの量を1.3質量部、酸化チタンの量を12.0質量部、塩酢ビ系樹脂の量を3.7質量部としたこと以外は実施例1と同様にして白色層を形成し、感熱転写媒体を作製した。
【0094】
白色層におけるカオリンの割合は、カオリンと酸化チタンの総量中の9.8質量%、白色層を形成する固形分の総量中の7.6質量%、酸化チタンの割合は、上記固形分の総量中の70.6質量%、塩酢ビ系樹脂の割合は、固形分の総量中の21.8質量%であった。
〈比較例5〉
カオリンを配合せず、酸化チタンの量を16.2質量部、塩酢ビ系樹脂の割合を0.8質量部としたこと以外は実施例1と同様にして白色層を形成し、感熱転写媒体を作製した。
【0095】
白色層におけるカオリンの割合は0.0質量%、酸化チタンの割合は、白色層を形成する固形分の総量中の95.3質量%、塩酢ビ系樹脂の割合は、固形分の総量中の4.7質量%であった。
〈白色度評価〉
(隠ぺい率測定)
各実施例、比較例で作製した感熱転写媒体を、それぞれ熱転写プリンタ〔ゼブラ・テクノロジーズ社製のZebra 110Xi4〕に使用して、厚み5μmの透明のPETフィルムの表面に、白色層を熱転写印刷した。
【0096】
次いで、熱転写印刷した白色層を上にした状態で、PETフィルムを、日本工業規格JIS K5600-4-1:1999「塗料一般試験方法-第4部:塗料の四角特性-第1節:隠ぺい力(淡彩色塗料用)」において規定された、白部と黒部が隣接して印刷された隠ぺい率試験紙の表面に重ねて固定した。
そしてPETフィルム上の白色層の、隠ぺい率試験紙の白部と黒部に対応する領域について、それぞれ4箇所ずつ、分光測色計〔ビデオジェット・エックスライト(株)製のX-Rite eXact〕を用いて測色して、CIE表色系のうちXYZ表色系の三刺激値Yを求めた。
【0097】
次に、白部に対応する4箇所の三刺激値Yの平均値をY、黒部に対応する4箇所の三刺激値Yの平均値をYとして、隠ぺい率Y/Yを百分率で計算した。
(明度測定)
上記各実施例、比較例で作製した感熱転写媒体を、それぞれ上記熱転写プリンタに使用して、厚み5μmの透明のPETフィルムの表面に、白色層を熱転写印刷した。
【0098】
次いで、熱転写印刷した白色層について、上記分光測色計を用いて測色して、CIE1976(L*,a*,b*)色空間のL値を求めた。
(白色度評価)
上記隠蔽率Y/Y(%)とL値とから、下記の基準で、熱転写印刷した白色層の白色度を評価した。
【0099】
◎:隠蔽率Y/Yが70%以上で、かつL値が90以上であった。
○:隠蔽率Y/Yが70%以上で、かつL値が80以上、90未満、または隠蔽率Y/Yが60%以上、70%未満で、かつL値が90以上であった。
△:隠蔽率Y/Yが60%以上、70%未満で、かつL値が80以上、90未満であった。
【0100】
×:隠蔽率Y/Yが60%未満、および/またはL値が80未満であった。
〈溢れ評価〉
各実施例、比較例で作製した感熱転写媒体の白色層を黒綿棒で1回こすったのち、当該黒綿棒および白色層を観察した。そして、下記の基準で白色層の溢れにくさを評価した。
×:綿棒に、白色層から溢れた粉が付着するとともに、白色層に筋が見られた。
【0101】
△:綿棒に、白色層から溢れた粉が僅かに付着したが、白色層に筋などの変化は見られなかった。
○:綿棒には粉は付着しておらず、白色層にも筋などの変化は見られなかった。
〈熱感度評価〉
各実施例、比較例で作製した感熱転写媒体を、前述した熱転写プリンタに使用し、サーマルヘッドに印加するエネルギー値を、上記熱転写プリンタにあらかじめ設定された1~30の30段階のうち15(低値とする)、および30(高値とする)のいずれかに設定して、印字速度4inch/secでバーコードを印刷したのち、バーコードの状態を観察した。
【0102】
そして、下記の基準で、熱転写印刷時の熱感度を評価した。
○:サーマルヘッドに印加するエネルギーが低値、高値のいずれでも、印刷したバーコードに掠れは見られなかった。
△:サーマルヘッドに印加するエネルギーが低値では、印刷したバーコードに掠れが見られたが、エネルギーが高値では、印刷したバーコードに掠れは見られなかった。
【0103】
×:サーマルヘッドに印加するエネルギーを高値にしても、印刷したバーコードに掠れが見られた。
〈定着性、耐擦過性評価〉
各実施例、比較例で作製した感熱転写媒体を、前述した熱転写プリンタに使用して、塩ビニル系樹脂の表面にバーコードを印刷し、印刷したバーコードを、エタノールを染み込ませた綿で10回擦過したのち、バーコードの状態を観察した。
【0104】
そして、下記の基準で、印刷の定着性、耐擦過性を評価した。
○:擦過前後でバーコードの状態に変化は見られなかった。
△:擦過するとバーコードが僅かに薄くなったが、前述した白色度評価をすると「△」以上を維持していた。
×:擦過するとバーコードの全体、もしくは一部分が消えてしまった。
【0105】
以上の結果を、表2~5に示す。
【0106】
【表2】
【0107】
【表3】
【0108】
【表4】
【0109】
【表5】
【0110】
表2~表5の実施例1~16、比較例1~4の結果より、少なくともカオリン、酸化チタン、および塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合樹脂によって白色層を形成することにより、当該白色層の溢れを生じにくい上、熱感度に優れ、掠れを生じにくく、しかも高い白色度を有するとともに、とくに塩化ビニル系樹脂等の表面に対する定着性、耐擦過性にも優れた白色の印刷が可能となることが判った。
【0111】
ただし、実施例1~5の結果より、上記の効果をさらに向上することを考慮すると、塩酢ビ系樹脂としては、酢酸ビニル含量が5質量%以上、中でも8質量%以上、とくに10質量%以上で、かつ25質量%以下、とくに22質量%以下であるものを選択して用いるのが好ましいことが判った。
また実施例1、実施例13~16の結果より、上記の効果をさらに向上することを考慮すると、塩酢ビ系樹脂の割合は、白色層を形成する固形分の総量中の4.8質量%以上、とくに質量%以上であるのが好ましく、22質量%以下、とくに20質量%以下であるのが好ましいことが判った。
【0112】
実施例1、実施例6~9の結果より、とくに、印刷の白色度をさらに向上することを考慮すると、カオリンの割合は、カオリンと酸化チタンの総量中の2.5質量%以上、とくに4.5質量%以上であるのが好ましく、36質量%以下、とくに30質量%以下であるのが好ましいことが判った。
また実施例1、実施例10~12の結果より、印刷の白色度をさらに向上することを考慮すると、カオリンとしては、明度や白色度に優れる湿式カオリン、焼成カオリンが好ましく、とくに塩酢ビ系樹脂に対する分散性にも優れた湿式カオリンが好ましいこと、同系のカオリンでは、平均粒子径が大きいものを用いるのが好ましいことが判った。