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特許7170563コイン形非水電解質二次電池用正極及びこれを用いたコイン形非水電解質二次電池とコイン形非水電解質二次電池用正極の製造方法
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  • 特許-コイン形非水電解質二次電池用正極及びこれを用いたコイン形非水電解質二次電池とコイン形非水電解質二次電池用正極の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】コイン形非水電解質二次電池用正極及びこれを用いたコイン形非水電解質二次電池とコイン形非水電解質二次電池用正極の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/131 20100101AFI20221107BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20221107BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20221107BHJP
   H01M 4/1391 20100101ALI20221107BHJP
【FI】
H01M4/131
H01M4/62 Z
H01M4/525
H01M4/1391
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019045409
(22)【出願日】2019-03-13
(65)【公開番号】P2020149828
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】澤山 拓海
【審査官】立木 林
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-136093(JP,A)
【文献】特開平11-016567(JP,A)
【文献】特開平09-219190(JP,A)
【文献】特開2000-011998(JP,A)
【文献】特開昭60-140662(JP,A)
【文献】特開2000-353517(JP,A)
【文献】特開2018-120739(JP,A)
【文献】特開2005-275244(JP,A)
【文献】特開2005-331807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遷移金属複合酸化物からなる正極活物質と、導電助剤と、前記正極活物質と前記導電助剤に加えてフッ素樹脂またはポリフッ化ビニリデンの少なくとも1種からなるバインダーを含んでなる顆粒状の合剤と、疎水性シリカからなる滑剤とを含み、前記合剤と前記滑剤からなるペレット形状の圧縮成型体からなることを特徴とするコイン形非水電解質二次電池用正極。
【請求項2】
前記顆粒状の合剤の粒径が75~500μmであり、前記滑剤の比表面積が90~130m/gであり、前記合剤の総質量に対する前記滑剤の質量比が0.5~2質量%であることを特徴とする請求項1に記載のコイン形非水電解質二次電池用正極。
【請求項3】
前記正極活物質がリチウム遷移金属複合酸化物からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコイン形非水電解質二次電池用正極。
【請求項4】
前記正極活物質がコバルト酸リチウムからなることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のコイン形非水電解質二次電池用正極。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のコイン形非水電解質二次電池用正極を備えたことを特徴とするコイン形非水電解質二次電池。
【請求項6】
遷移金属複合酸化物からなる正極活物質と、導電助剤と、フッ素樹脂またはポリフッ化ビニリデンの少なくとも1種からなるバインダーを混合して水を添加し、造粒して粒径75~500μmの顆粒状の合剤を形成し、この顆粒状の合剤に疎水性シリカからなる滑剤を添加して混合し、圧縮成型することによりペレット状とすることを特徴とするコイン形非水電解質二次電池用正極の製造方法。
【請求項7】
前記滑剤の比表面積が90~130m/gであり、前記合剤の総質量に対する前記滑剤の質量比を0.5~2質量%となるように前記滑剤を添加することを特徴とする請求項6に記載のコイン形非水電解質二次電池用正極の製造方法。
【請求項8】
前記正極活物質としてリチウム遷移金属複合酸化物を用いることを特徴とする請求項6または請求項7に記載のコイン形非水電解質二次電池用正極の製造方法。
【請求項9】
前記正極活物質としてコバルト酸リチウムを用いることを特徴とする請求項6または請求項7に記載のコイン形非水電解質二次電池用正極の製造方法。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイン形非水電解質二次電池用正極及びこれを用いたコイン形非水電解質二次電池とコイン形非水電解質二次電池用正極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電池缶にペレット状電極を収容してなるコイン形非水電解質二次電池において、電極の結着剤としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂を用いた構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、正極及び負極と、支持塩を溶解した有機溶媒からなる電解液と、セパレーターと、封口ガスケットと、正極缶及び負極缶を有する非水質電解液電池が記載されている。この非水電解液電池において、前記正極が正極活物質と導電剤および結着剤を含有する正極合剤を加圧成型してなる加圧成型体から構成されている。
【0003】
前記PTFEは、熱的、化学的、電気的に安定であることが知られており、PTFEからなる結着剤は、粉体の状態で用いられ、活物質や導電助剤などの他の粉末材料と混錬することで、PTFEの粒子が微細な繊維状となり、各粉末材料同士を大きな結着力で結着させることができる(特許文献2参照)。
【0004】
特許文献2には、電極用の混練物としてPTFE微粒子を含有する水性分散液からなる結着剤が開示されている。特許文献2においては、水性分散液に非イオン系界面活性剤を添加し、混練することでPTFE微粒子を繊維化し、大きな結着力を生じさせることができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-147159号公報
【文献】特開2000-160118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、電池用のペレット状電極を作製する場合には、活物質、導電助剤、結着剤を混合して顆粒状の二次粒子を作製し、この二次粒子を金型に充填してプレス成型することが一般的である。
しかし、上述のPTFEからなる結着剤は化学的に安定である一方で結着力が強いため、正極をペレット状に成型する場合、金型への充填性が悪くなるおそれを有する上に、金型からの離型性が悪くなる問題がある。
【0007】
本願発明は、このような従来の問題に鑑み、安定した物性を示す合剤と滑剤を含み、成型時の金型からの離型性に優れるようにしたコイン形非水電解質二次電池用正極と該正極を備えたコイン形非水電解質二次電池を効率よく提供すること、及び、コイン形非水電解質二次電池用正極の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)前記課題を解決するため、本発明の一形態に係るコイン形非水電解質二次電池用正極は、遷移金属複合酸化物からなる正極活物質と、導電助剤と、前記正極活物質と前記導電助剤に加えてフッ素樹脂またはポリフッ化ビニリデンの1種以上からなるバインダーを含んでなる顆粒状の合剤と、疎水性シリカからなる滑剤とを含み、前記合剤と前記滑剤からなるペレット形状の圧縮成型体からなる。
【0009】
フッ素樹脂またはポリフッ化ビニリデンの1種以上からなるバインダーを用いることで正極活物質と導電助剤の効果的な結合状態を得ることができる。このため、本構造の正極を備えた電池を構成した場合、充分な放電容量と大きな電流供給が可能となる。
また、安定した物性を示す合剤に加え、疎水性シリカからなる滑剤を含んでいるので、成型時の金型に対する良好な離型性を確保できる。また、金型に対する充填性にも優れる。
【0010】
(2)前記課題を解決するため、本発明の一形態に係るコイン形非水電解質二次電池用正極は、前記顆粒状の合剤の粒径が75~500μmであり、前記滑剤の比表面積が90~130m/gであり、前記合剤の総質量に対する前記滑剤の質量比が0.5~2質量%であることを特徴とする。
【0011】
合剤の総質量に対し質量比で0.5~2質量%の好適な量の滑剤を含んでいるので、金型に対する充填性に優れるとともに、成型後の金型からの離型性に優れる。また、顆粒状の合剤の粒径が75~500μmの範囲であれば、成型時に充分に圧密された成型体を得ることができる。
よって金型からの離型時に型崩れやクラック等を生じていない正極を効率良く得ることができ、正極生産時の歩留まりが向上する。
また、本構造の正極を備えた電池を構成した場合、充分な放電容量と大きな電流供給が可能な電池を提供できる。
【0012】
(3)前記一形態のコイン形非水電解質二次電池用正極では、前記正極活物質がリチウム遷移金属複合酸化物からなることを特徴とする。
(4)前記一形態のコイン形非水電解質二次電池用正極では前記正極活物質がコバルト酸リチウムからなることを特徴とする。
(5)本形態のコイン形非水電解質二次電池では、(1)~(4)のいずれか一項に記載のコイン形非水電解質二次電池用正極を備えたことを特徴とする。
【0013】
コバルト酸リチウムからなる正極活物質であれば、充分な放電容量と大きな電流供給が可能な正極と電池を構成可能であり、化学的安定性を要求されるコバルト酸リチウムを活物質として用いる電池構造であっても、安定した電池を提供できる。
【0014】
(6)本形態に係るコイン形非水電解質二次電池用正極の製造方法では、遷移金属複合酸化物からなる正極活物質と、導電助剤と、前記正極活物質および前記導電助剤に加え、フッ素樹脂またはポリフッ化ビニリデンの少なくとも1種からなるバインダーを混合して水を添加し、造粒して粒径75~500μmの顆粒状の合剤を形成し、この顆粒状の合剤に疎水性シリカからなる滑剤を添加して混合し、圧縮成型することによりペレット状とすることを特徴とする。
【0015】
(7)本形態の製造方法において、前記滑剤の比表面積が90~130m/gであり、前記合剤の総質量に対する前記滑剤の質量比を0.5~2質量%となるように前記滑剤を添加することが好ましい。
(8)本形態の製造方法において、前記正極活物質としてリチウム遷移金属複合酸化物を用いることが好ましい。
(9)本形態の製造方法において、前記正極活物質としてコバルト酸リチウムを用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本形態によれば、フッ素樹脂またはポリフッ化ビニリデンからなるバインダーを用いることで正極活物質と導電助剤の効果的な結合状態を得ることができる。このため、本構造の正極を備えた電池を構成した場合、充分な放電容量と大きな電流供給が可能となる。その上、合剤に加えて疎水性シリカからなる滑剤を含んでいるので、金型に対する充填性の改善と離型性の改善をいずれも実現でき、割れなどの欠陥を生じていない正極を容易に作製することができる。
特に、合剤の総質量に対し質量比で0.5~2質量%の好適な量の滑剤を含んでいる構造であれば、金型に対する充填性に優れ、金型からの離型性にも優れた正極を得ることができる。
【0017】
本形態の製造方法によれば、正極活物質と、導電助剤に対し、フッ素樹脂またはポリフッ化ビニリデンの少なくとも1種からなるバインダーを混合して水を添加し、造粒して粒径75~500μmの顆粒状の合剤を形成できる。そして、この顆粒状の合剤に疎水性シリカからなる滑剤を添加して混合し、圧縮成型してペレット状とすることができる。
この製造方法であれば、良好な離型性を有し、金型から成型物を容易に分離できるので、クラックなどを生じることなく良好な歩留まりでコイン形非水電解質二次電池用正極を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の一実施形態である非水電解質二次電池を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態である非水電解質二次電池の例を挙げ、その構成について図1を参照しながら詳述する。
以下の説明では、ボタン形またはコイン形の電気化学セルとして、非水電解質二次電池の一種であるリチウムイオン二次電池(以下、単に「電池」という。)を例に挙げて説明する。なお、以下で説明する非水電解質二次電池とは、具体的には、正極または負極として用いる活物質と電解質とが容器内に収容されてなる非水電解質二次電池である。
また、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更し表示しているため、各部材の相対的な大きさが図面に示す形態に限らないのは勿論である。
【0020】
図1に示す本実施形態の非水電解質二次電池1は、いわゆるコイン(ボタン)型の電池である。この非水電解質二次電池1は、収納容器2内に、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極10と、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極20と、正極10と負極20との間に配置されたセパレーター30と、少なくとも支持塩及び有機溶媒を含む電解質(電解液)50とを備える。
より具体的に本実施形態の非水電解質二次電池1は、有底円筒状の正極缶12と、正極缶12の開口部12aにガスケット40を介在して固定され、正極缶12との間に収容空間を形成する有蓋円筒状(ハット状)の負極缶22とを有する。そして、正極缶12の開口部12aの周縁を内側、即ち、負極缶22側にかしめることで収容空間を密封する収納容器2が構成されている。
【0021】
本実施形態の非水電解質二次電池1は、正極10が、コバルト酸リチウム(LiCoO)などのリチウム遷移金属酸化物からなる正極活物質と、導電助剤と、バインダー(結着剤)を含み、負極20が、チタン酸リチウムなどからなる負極活物質と、グラファイトからなる導電助剤と、バインダー(結着剤)とを含んで構成される電池である。
なお、正極活物質とするリチウム遷移金属酸化物は、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、チタン酸リチウム(LiTi12)、マンガン酸リチウム(LiMn12)などであっても良い。また、負極活物質は珪素(Si)、Si酸化物(SiO)、チタン酸リチウム(LiTi12)、炭素(C)、リチウム-アルミニウム(Li-Al)合金などであっても良い。
以下に、非水電解質二次電池1の各部の詳細構造について説明する。
【0022】
収納容器2によって密封された収容空間には、正極缶12側に設けられる正極10と、負極缶22側に設けられる負極20とがセパレーター30を介し対向配置され、さらに、電解質(電解液)50が充填されている。
また、図1に示すように、ガスケット40は、正極缶12の内周面に沿って狭入されるとともに、セパレーター30の外周と接続され、セパレーター30を保持している。
また、正極10、負極20及びセパレーター30には、収納容器2内に充填された電解質(電解液)50が含浸されている。
【0023】
図1に示す例の非水電解質二次電池1においては、正極10が、正極集電体14を介し正極缶12の内面に電気的に接続され、負極20が、負極集電体24を介し負極缶22の内面に電気的に接続されている。本実施形態においては、図1に例示するような正極集電体14及び負極集電体24を備えた非水電解質二次電池1を例に挙げて説明しているが、これには限定されず、例えば、正極缶12が正極集電体を兼ねるとともに、負極缶22が負極集電体を兼ねた構成を採用しても構わない。
【0024】
本実施形態の非水電解質二次電池1は、前記のように概略構成されることにより、正極10と負極20の一方から他方へリチウムイオンが移動することで、電荷を蓄積(充電)するか電荷を放出(放電)できる電池である。
【0025】
(正極缶及び負極缶)
本実施形態において、収納容器2を構成する正極缶12は、上述したように、有底円筒状に構成され、平面視で円形の開口部12aを有する。このような正極缶12の材質としては、従来公知のものを何ら制限無く用いることができ、例えば、NAS64等のステンレス鋼を例示できる。
【0026】
また、負極缶22は、上述したように、有蓋円筒状(ハット状)に構成され、その先端部22aが、開口部12aから正極缶12に入り込むように構成される。このような負極缶22の材質としては、正極缶12の材質と同様、従来公知のステンレス鋼が挙げられ、例えば、SUS304-BA等を用いることができる。また、負極缶22には、例えば、ステンレス鋼に銅やニッケル等を圧接してなるクラッド材を用いることもできる。
【0027】
図1に示すように、正極缶12と負極缶22は、ガスケット40を介在させた状態で、正極缶12の開口部12aの周縁を負極缶22側にかしめ固定されている。このため、非水電解質二次電池1を、収容空間が形成された状態で密封保持する。このため、正極缶12の最大内径は、負極缶22の最大外径よりも大きい寸法とされている。
【0028】
なお、正極缶12、負極缶22に用いられる金属板材の板厚は、一般に0.1~0.3mm程度であり、例えば、正極缶12や負極缶22の全体における平均板厚で0.20mm程度として構成することができる。
【0029】
また、図1に示す例においては、負極缶22の先端部22aが折り返し形状とされているが、これには限定されず、例えば、金属板材の端面が先端部22aとされた、折り返し形状を有しない形状においても、本発明を適用することが可能である。
【0030】
また、本実施形態で詳述する構成を適用することが可能な非水電解質二次電池としては、例えば、コイン型非水電解質二次電池の一般的なサイズである920サイズ(外径φ9.5mm×高さ2.0mm)や621サイズ(外形φ6.8mm×高さ2.1mm)の他、各種サイズの電池を挙げることができる。
【0031】
(ガスケット)
ガスケット40は、図1に示すように、正極缶12の内周面に沿って円環状に形成され、その環状溝41の内部に負極缶22の先端部22aが配置されている。
また、例えば、ガスケット40の材質は、熱変形温度が230℃以上の樹脂であることが好ましい。ガスケット40に用いる樹脂材料の熱変形温度が230℃以上であれば、非水電解質二次電池1を高温環境下で使用又は保管した場合や、非水電解質二次電池1の使用中における発熱が生じた場合でも、ガスケットが著しく変形して電解質50が漏出するのを防止できる。
【0032】
このようなガスケット40の材質としては、例えば、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリフェニルサルファイド(PPS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド、液晶ポリマー(LCP)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリエーテルニトリル樹脂(PEN)、ポリエーテルケトン樹脂(PEK)、ポリアリレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂(PES)、ポリアミノビスマレイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やエチレン-テトラフルオロエチレン(ETFE)等のフッ素樹脂等のプラスチック樹脂が挙げられる。これらの中でも、ガスケット40に、PP、PPS、PEEKのうちの何れかを用いることが、高温環境下における使用や保管時にガスケットが著しく変形するのを防止でき、非水電解質二次電池の封止性がさらに向上する観点から好ましい。
【0033】
また、ガスケット40には、上記材料にガラス繊維、マイカウイスカー、セラミック微粉末等を、30質量%以下の添加量で添加したものも好適に用いることができる。このような材質を用いることで、高温によってガスケットが著しく変形し、電解液50が漏出するのを防止できる。
【0034】
また、ガスケット40の環状溝の内側面には、さらに、シール剤を塗布してもよい。このようなシール剤としては、アスファルト、エポキシ樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチルゴム系接着剤等を用いることができる。また、シール剤は、環状溝41の内部に塗布した後、乾燥させて用いる。
【0035】
なお、ガスケット40は、正極缶12と負極缶22との間に挟まれ、その少なくとも一部が圧縮された状態となるが、この際の圧縮率は特に限定されず、非水電解質二次電池1の内部を確実に封止でき、且つ、ガスケット40に破断が生じない範囲とすればよい。
【0036】
(電解質)
本実施形態の非水電解質二次電池1は、電解質(電解液)50として、少なくとも有機溶媒及び支持塩を含むものを用いる。そして、電解液50の場合、有機溶媒として、環状カーボネート溶媒であるプロピレンカーボネート(PC)、環状カーボネート溶媒であるエチレンカーボネート(EC)、鎖状カーボネート溶媒であるエチルメチルカーボネート(EMC)のいずれかまたは混合溶媒を用いることが好ましい。あるいは電解質として、イオン液体や固体電解質を用いても良い。
電解液の場合、通常、支持塩を、有機溶媒等の非水溶媒に溶解させたものからなり、電解液に求められる耐熱性や粘度等を勘案して、その特性が決定される。
【0037】
電解液50に用いられる支持塩としては、非水電解質二次電池において、電解液に支持塩として添加される公知のLi化合物を用いることができ、特に限定されない。例えば、支持塩としては、熱的安定性等を考慮し、六フッ化燐酸リチウム(LiPF)、リチウムテトラフルオロボレート、リチウムビスパーフルオロメチルスルホニルイミド、リチウムビスパーフルオロエチルスルホニルイミド、リチウムビストリフルオロメタンスルホンイミド(Li(CFSON)等が挙げられる。これらの中でも、特に、Li(CFSON、又は、LiPFを支持塩として用いることが、電解液の耐熱性が高められ、高温時の容量の減少が抑制できる点から好ましい。
また、支持塩は、上記のうちの1種を単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
電解液50中の支持塩の含有量は、支持塩の種類等を勘案するとともに、後述の正極活物質の種類を勘案して決定でき、例えば、1~2mol/Lが好ましく、1.2~1.8mol/Lがより好ましく、概ね1.5mol/Lとすることが特に好ましい。
なお、電解液50中の支持塩濃度が高過ぎても、あるいは低過ぎても、電導度の低下が起き、電池特性に悪影響を及ぼすおそれがあることから、電解液50中の支持塩の含有量は、上記範囲に規制することが好ましい。
【0039】
(正極)
本実施形態の非水電解質二次電池1においては、正極10の一例として、コバルト酸リチウム(LiCoO)からなる正極活物質と、導電助剤とバインダー(結着剤)とを含む合剤と、滑剤からなるものを用いることができる。
【0040】
正極10に、コバルト酸リチウムからなる正極活物質を用いるとともに、後述する負極20を、負極活物質としてチタン酸リチウム(LiTi12)を含むものとすることで、動作電圧が2V以上と高く、また、高容量であるCTL電池を構成することができる。
なお、正極活物質は上述の組み合わせが望ましいが、先に記載した正極10の説明において列挙した他のリチウム遷移金属複合酸化物を用いても良い。
【0041】
正極活物質としてコバルト酸リチウムなどのリチウム遷移金属酸化物を用いる場合、以下に説明するように造粒し、75~500μm程度の粒径の顆粒状の合剤として、滑剤を添加してからペレット状に成型することが好ましい。
顆粒状の合剤を作製する場合に用いるコバルト酸リチウムの粒子径(D50)は、特に限定されないが、例えば、2~20μmが好ましく、4~8μmがより好ましい。
なお、本発明における「正極活物質の粒子径(D50)」とは、レーザー回折法を用いて測定される粒子径であってメジアン径を意味する。
【0042】
正極10中の正極活物質の含有量は、非水電解質二次電池1に要求される放電容量等を勘案して決定され、例えば、50~95質量%の範囲が好ましい。正極活物質の含有量が、上記好ましい範囲の下限値以上であれば、充分な放電容量が得られやすく、好ましい上限値以下であれば、正極10を成型しやすい。
【0043】
正極10は、導電助剤(以下、正極10に用いられる導電助剤を「正極導電助剤」ということがある)を含有する。
正極導電助剤としては、例えば、グラファイト、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の炭素質材料が挙げられる。
正極導電助剤は、上記のうちの1種を単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、正極10中の正極導電助剤の含有量は、4~40質量%が好ましく、7~20質量%がより好ましい。正極導電助剤の含有量が、上記好ましい範囲の下限値以上であれば、充分な導電性が得られやすい。加えて、電極をペレット状に成型する場合に成型しやすくなる。一方、正極10中の正極導電助剤の含有量が、上記好ましい範囲の上限値以下であれば、正極10に充分な放電容量が得られやすい。
【0044】
正極10は、バインダー(以下、正極10に用いられるバインダーを「正極バインダー」ということがある。)を含有する。
正極バインダーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂あるいはポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなることが好ましい。
正極バインダーにPTFEを用いることで、繊維状のPTFEにより、正極活物質と導電助剤を効果的に結合できる。
また、正極バインダーにPVDFを用いることで、この正極バインダーが、正極活物質を包みながら、導電助剤を引っ張るという作用が得られるので、正極活物質と導電助剤とが効果的に結合する。従って、正極バインダーとして、PTFE、又は、PVDFを用いることで、充分な放電容量が得られ、且つ、大きな電流を供給することが可能になる。上述のような効果がより顕著に得られる観点からは、正極バインダーとしてPTFEを用いることがより好ましい。
また、正極バインダーは、上記のうちの1種を単独で用いてもよく、あるいは、2種を組み合わせて用いてもよい。正極10中の正極バインダーの含有量は、例えば、1~20質量%とすることができる。
【0045】
滑剤としては、粒子同士の結着性を抑制するものを選択することができ、疎水性ヒュームドシリカなどの疎水性シリカからなる滑剤を用いることができる。疎水性ヒュームドシリカは表面をジメチルクロロシランなどの各種シランで処理した疎水性シリカの一種で、比表面積(BET)が90~130m/gのものである。上述の滑剤を微量添加することで、顆粒状の合剤が金型内で多少すべることができる状態となり、成型後の離型性が向上する。
なお、本形態で用いる疎水性シリカは、疎水性ヒュームドシリカに限るものではなく、ヒュームドシリカ(火炎法シリカ)以外のアーク法により製造されるシリカ等としてもよい。
【0046】
正極10における滑剤の含有量は、合剤の総質量に対し質量比で0.5~2.0質量%の範囲とすることができる。滑剤の含有量が0.5質量%未満であると、金型からの離型性が悪化する。また、金型への充填性も悪化する。滑剤の含有量が2.0質量%を超えると、電極中の活物質の量が相対的に減ることになるから、電池とした場合に充分な特性(容量)が得られ難くなる。このため、滑剤の添加量は上述の範囲内でも低い方が望ましく、例えば、滑剤の含有量を1質量%程度とすることでも充分な効果が得られる。
【0047】
正極10の大きさは、非水電解質二次電池1の大きさに応じて決定される。
また、正極10の厚さも、非水電解質二次電池1の大きさに応じて決定され、非水電解質二次電池1が、各種電子機器向けのコイン型のものであれば、例えば、厚さ300~1000μm程度に形成される。
【0048】
「正極の製造方法」
正極10を製造するには、上述の粒径の正極活物質に対し、上述の量の導電助剤とバインダーを混合した混合物に対し水を加えて混合して造粒し、粒径75~500μm程度の顆粒状の正極合剤を得る。この正極合剤に対し、所定量の滑剤を添加混合した混合物を金型に投入し、金型内でペレット状に加圧成型することで正極10を得ることができる。
上記の加圧成型時の圧力は、正極導電助剤の種類等を勘案して決定され、例えば0.2~5ton/cmとすることができる。
【0049】
造粒の際、例えば、コバルト酸リチウムの粒子に上述の導電助剤粉末とバインダーを所定の割合で混合し、混合物の総重量に対し10~30%程度の水を加え、全体をミキサーにかけて10分~数10分程度混練することで造粒できる。この造粒処理後、造粒物を乾燥することにより、75~500μm程度の粒径の顆粒状の造粒物を得ることができる。
なお、造粒後、乾燥させた造粒物には、75μm未満の微細な粒子も含まれているので、これらの微細な粒子を除去する目的で乾燥後の造粒物を篩にかけて分粒し、75~500μm程度の粒径の顆粒状の合剤を得ることが好ましい。
【0050】
前記顆粒状の合剤の粒径が75μm未満であると、合剤を金型に供給する際に、配管中で微粉状となった合剤が詰まってしまい供給できなくなってしまう問題がある。
前記顆粒状の合剤の粒径が500μmを超える粒径であると、金型に充填される合剤量にばらつきが生じ、正極の重量ばらつきが大きくなる問題がある。
【0051】
この顆粒状の合剤の総質量に対し、質量比で0.5~2質量%の滑剤を添加混合し、金型に投入して上述した所定の圧力で加圧することでペレット状の正極10を製造することができる。
【0052】
合剤の質量に対し質量比で0.5~2.0質量%の滑剤を添加してから金型に投入することで投入性が良好となり、金型内部の隅々に合剤を円滑に充填することができる。また、成型後、正極10を金型から取り出す場合、良好な離型性でもって正極10を取り出すことができる。このため、離型時に正極10にクラックなどの欠陥部分を生じさせることなく安全に金型から取り出すことができる。このため、正極10を製造する場合の歩留まりを向上できる。
【0053】
正極集電体14としては、従来公知のものを用いることができ、炭素を導電性フィラーとする導電性樹脂接着剤等が挙げられる。
【0054】
(負極)
本実施形態の非水電解質二次電池1においては、負極20の一例として、チタン酸リチウム(LiTi12)からなる負極活物質と、グラファイトからなる導電助剤と、バインダーとを含むものを用いる。
【0055】
負極20に、チタン酸リチウムからなる負極活物質を用いるとともに、正極10として、コバルト酸リチウムからなる正極活物質を含むものを用いることで、動作電圧が2V以上と高く、また、高容量であるCTL電池を構成することができる。なお、負極活物質は上述の組み合わせが望ましいが、先に記載した負極20の説明において列挙した他の物質を用いても良い。
【0056】
負極活物質としてチタン酸リチウムを用いる場合、その粒子径(D50)は、特に限定されず、例えば、3~7μmが好ましく、4~6μmがより好ましい。
負極活物質の粒子径(D50)が、上記好ましい範囲の下限値未満であると、非水電解質二次電池が高温に曝された際に反応性が高まるために扱いにくくなり、また、上限値を超えると、放電レートが低下するおそれがある。
【0057】
負極20中の負極活物質の含有量は、非水電解質二次電池1に要求される放電容量等を勘案して決定され、50質量%以上が好ましく、60~80質量%がより好ましい。
負極20において、上記材料からなる負極活物質の含有量が、上記好ましい範囲の下限値以上であれば、充分な放電容量が得られやすく、また、上限値以下であれば、負極20を成型しやすい。
【0058】
負極20は、導電助剤(以下、負極20に用いられる導電助剤を「負極導電助剤」ということがある)として、グラファイトを、負極20の全質量に対して7質量%以上10質量%未満で含む。本実施形態の非水電解質二次電池1は、正極10における正極活物質としてコバルト酸リチウムを、負極20における負極活物質としてチタン酸リチウムをそれぞれ用い、さらに、負極中に含まれるグラファイト(導電助剤)の含有量を上記範囲に制限することで、非水電解質二次電池1としての充分な容量を確保しつつ、負極中における電流の流れが良好になる。これにより、小型サイズであっても、充分な放電容量が得られ、且つ、大電流を供給することが可能になる。
【0059】
なお、負極20中におけるグラファイト(導電助剤)の含有量が7質量%未満であると、導電性が低下し、放電電流特性も低下する。
一方、負極20中におけるグラファイト(導電助剤)の含有量が10質量%以上であると、負極20中における負極活物質の含有量が相対的に減少するため、放電容量が低下する。
また、上記の作用がより顕著に得られる観点から、負極10中における、グラファイトからなる導電助剤の含有量は、負極20の全質量に対して8~9質量%の範囲であることがより好ましい。
【0060】
負極20は、バインダー(以下、負極20に用いられるバインダーを「負極バインダー」ということがある)を含有する。
負極バインダーとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PA)、ポリイミド(PI)、ポリイミドアミド(PAI)等が挙げられ、中でも、PA等のアクリル系ポリマーを用いることが好ましい。
【0061】
また、負極バインダーは、1種を単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、負極バインダーにPAを用いる場合には、このPAを、予め、pH3~10に調整しておくことが好ましい。この場合のpHの調整には、例えば、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物や水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属水酸化物を用いることができる。
負極20中の負極バインダーの含有量は、例えば1~20質量%とされる。
なお、負極20の大きさ、厚さについては、正極10の大きさ、厚さと同様である。
すなわち、負極20の厚さは、非水電解質二次電池1の大きさに応じて決定され、非水電解質二次電池1が、各種電子機器向けのコイン型のものであれば、例えば、厚さ300~1000μm程度に形成される。
【0062】
負極20を製造する方法としては、例えば、負極活物質として上記材料を用い、必要に応じ負極導電助剤、及び/又は、負極バインダーとを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤を任意の形状に加圧成型する方法を採用することができる。
この場合の加圧成型時の圧力は、負極導電助剤の種類等を勘案して決定され、例えば0.2~5ton/cmとすることができる。
【0063】
また、負極集電体24は、正極集電体14と同様の材料を用いて構成することができる。例えば、炭素を導電性フィラーとする導電性樹脂接着剤等を例示できる。
【0064】
(セパレーター)
セパレーター30は、正極10と負極20との間に介在され、大きなイオン透過度を有するとともに耐熱性に優れ、かつ、所定の機械的強度を有する絶縁膜が用いられる。
セパレーター30としては、従来から非水電解質二次電池のセパレーターに用いられ、上記特性を満たす材質からなるものを何ら制限無く適用でき、例えば、アルカリガラス、ホウ珪酸ガラス、石英ガラス、鉛ガラス等のガラス、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミド、ポリイミド(PI)、アラミド、セルロース、フッ素樹脂、セラミックス等の樹脂からなる不織布や繊維等が挙げられる。セパレーター30としては、上記の中でも、ポリプロピレン(PP)樹脂のような多孔性高分子材料からなるものが、充分な機械強度を確保しながら、大きなイオン透過度を有するセパレーターが得られ、非水電解質二次電池の内部抵抗が低減されて放電容量がさらに向上することから、特に好ましい。
セパレーター30の厚さは、非水電解質二次電池1の大きさや、セパレーター30の材質等を勘案して決定され、例えば、5~300μm程度とすることができる。
【0065】
[非水電解質二次電池の用途]
本実施形態の非水電解質二次電池1は、上述したように、小型サイズであっても、充分な放電容量が得られ、且つ、大電流を供給することが可能なものなので、例えば、アラーム等の各種機能を備えたウォッチや、各種小型電子機器等の電源用途において好適に用いられる。
【0066】
以上説明したように、本発明の実施形態である正極10を用いて構成した非水電解質二次電池1によれば、正極10における正極活物質としてコバルト酸リチウムを、負極20における負極活物質としてチタン酸リチウムをそれぞれ用いているので、非水電解質二次電池としての充分な容量を確保しつつ、小型サイズであっても、充分な放電容量が得られ、且つ、大電流を供給することが可能になる。
さらに、上述の構造では、正極10を構成する顆粒状の合剤に対し0.5~2%の好適な範囲の滑剤を含有させて成型するので、金型に合剤を円滑に投入できるとともに、成型後に成型物を取り出す場合の離型性に優れる。このため離型時にクラックなどの生じていない良品としての正極10を確実に得ることができる。
このため、0.5~2%の好適な範囲の滑剤を含有させることでペレット状の正極10を製造する場合の歩留まり向上に寄与する。
【実施例
【0067】
正極合剤として、質量比でコバルト酸リチウム(LiCoO)90%、グラファイト粉末(日本黒鉛製SP-270)8.0%、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)2.0%を混合し、20%の水を加えてミキサーにより撹拌混合し、乾燥した。
この撹拌混合処理により、粒径75μm未満の微細粒子と、粒径75~500μmの造粒体の混合粒子を得ることができた。この混合粒子の中から篩い分けにより粒径75~500μmの顆粒状の造粒体からなる合剤を選別した。
【0068】
この顆粒状の合剤を74mg秤量し、合剤の総重量に対する質量比で滑剤(疎水性ヒュームドシリカ;日本アエロジル(株)製R972)を0.5質量%混合添加した実施例1の混合物と、滑剤を1質量%混合添加した実施例2の混合物と、滑剤を2質量%添加混合した実施例3の混合物を得た。
ここで用いた疎水性ヒュームドシリカの比表面積(BET)は、110±20m/gである。これらの混合物を別々に秤量して個々に金型に投入し、6tの圧力で加圧成型し、実施例1、2、3の円板状ペレット状正極(φ6.3×t0.7mm)を製造した。
また、滑剤を混合することなく前記造粒体をそのまま金型に投入し、前記実施例と同等条件で加圧し、比較例1のペレット状正極を製造した。
実施例1、2、3の正極と比較例1の正極について金型からの離型性を調べた結果を以下の表1にまとめて示す。
【0069】
【表1】
【0070】
表1において、付着ありとは、成型物そのものがパンチ(杵)の先端に付着したことを意味する。この付着を生じると、連続生産する場合、次回成型時の合剤と一緒に付着物がプレスされてしまうおそれがある。
表1に示す結果が示すように滑剤を添加していない混合物を直接金型に投入し加圧成型した比較例1の正極の場合、正極が金型に付着し、離型することが難しかった。
これに対し実施例1~3の正極はいずれも金型への付着が発生せず、問題なく金型から取り出すことができた。
以上の結果から、粒径75~500μmの顆粒状の合剤を金型に投入して正極を成型する場合、滑剤を0.5~2.0質量%の範囲で添加混合してから成型することで良好な離型性でもって成型できることが明らかとなった。
【0071】
実施例1、2、3に用いた粒径75~500μmの顆粒状の混合物について、JISR9301-2-2:1999に定めされている方法により安息角を測定したところ、いずれも30°であった。
安息角が30°であることから、金型に投入した場合に金型内部の隅々まで投入しやすい混合物であり、目的の成型物としての形状を得やすい混合物であると判断できる。
【符号の説明】
【0072】
1…非水電解質二次電池、2…収容容器、10…正極、12…正極缶、
14…正極集電体、20…負極、22…負極缶、24…負極集電体、
30…セパレーター、40…ガスケット、50…電解質(電解液)。
図1