(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】紙葉類処理装置および紙葉類処理方法
(51)【国際特許分類】
G07D 11/26 20190101AFI20221107BHJP
G07D 11/237 20190101ALI20221107BHJP
G07D 11/60 20190101ALI20221107BHJP
B65G 43/02 20060101ALI20221107BHJP
B65H 5/02 20060101ALI20221107BHJP
B65H 7/14 20060101ALI20221107BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
G07D11/26
G07D11/237
G07D11/60
B65G43/02 Z
B65H5/02 Z
B65H7/14
G06T1/00 430C
(21)【出願番号】P 2019051253
(22)【出願日】2019-03-19
【審査請求日】2021-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関 淳
【審査官】中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-199182(JP,A)
【文献】特開2015-202933(JP,A)
【文献】特開2009-196752(JP,A)
【文献】特開2017-043425(JP,A)
【文献】特開2007-210718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 1/00- 3/16,
7/00-13/00
G07F 19/00
B65G 43/00-43/10
B65H 5/02, 5/06, 5/22,
7/00- 7/20,
29/12-29/24,29/32,
43/00-43/08
G06T 1/00, 1/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路に沿って延在する搬送ベルトを有し、前記搬送ベルトにより紙葉類を搬送する搬送部と、前記搬送ベルトにより搬送される紙葉類および前記搬送ベルトを撮像し前記紙葉類および搬送ベルトの画像を取得可能な画像検出装置を有し、
前記画像検出装置で取得した取得画像に基づいて、前記紙葉類を鑑査する鑑査部と、を具備する鑑査装置を備え、
前記鑑査装置は、
前記取得画像における前記搬送ベルトのベルト画像に基づいて前記搬送ベルトの劣化度を検出可能な画像処理部と、
検出された劣化度に応じて前記搬送ベルトの交換を促す情報を、前記鑑査装置に搭載あるいは接続されたモニタへ発信することが可能な制御部と、
を更に備えている紙葉類処理装置。
【請求項2】
前記画像処理部は、前記ベルト画像の輝度を検出し前記検出された輝度に基づいて前記搬送ベルトの劣化度を判定する劣化度判定ソフトウェアを備えている、請求項1に記載の紙葉類処理装置。
【請求項3】
前記画像処理部は、前記ベルト画像の幅を検出し前記検出された幅に基づいて前記搬送ベルトの劣化度を判定する劣化度判定ソフトウェアを備えている、請求項1に記載の紙葉類処理装置。
【請求項4】
前記画像検出装置は、搬送される前記紙葉類および搬送ベルトに検出光を照射する照明装置と、前記紙葉類および搬送ベルトからの反射光を撮像する撮像装置と、を備えている請求項1から3のいずれか1項に記載の紙葉類処理装置。
【請求項5】
搬送ベルトにより検査領域を通して紙葉類を搬送し、
画像検出装置により、前記検査領域を通過する前記紙葉類および搬送ベルトを撮像し、前記紙葉類および搬送ベルトの画像を取得し、
鑑査装置により、前記画像検出装置で取得した取得画像に基づいて、前記紙葉類を鑑査し、
前記鑑査装置の画像処理部により、前記取得画像における搬送ベルトのベルト画像に基づいて前記搬送ベルトの劣化度を検出し、
前記鑑査装置の制御部により、前記検出された劣化度に応じて前記搬送ベルトの交換を促す情報を発信する
紙葉類処理方法。
【請求項6】
前記画像処理部により、前記ベルト画像の輝度を検出し、前記検出された輝度に基づいて前記搬送ベルトの劣化度を判定する請求項5に記載の紙葉類処理方法。
【請求項7】
前記画像処理部により、前記ベルト画像の幅を検出し、検出された幅に基づいて前記搬送ベルトの劣化度を判定する請求項5に記載の紙葉類処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、紙葉類を処理する紙葉類処理装置および紙葉類処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、銀行や大規模小売業等では日常的に大量の紙幣が扱われ、これら紙幣を金種や、正損(紙幣の汚損度合い)に応じて分類して整理する業務が存在している。このような紙幣の整理業務を自動化する装置として紙葉類処理装置が用いられている。紙葉類処理装置は、例えば、紙幣の券種や正損の度合いを鑑別する鑑査部と、紙幣を金種別などに分類して集積する複数の集積部と、所定の経路を通して紙幣を搬送する搬送機構などを備えている。
鑑査部は、搬送機構により搬送される紙幣の画像を所得する画像読取装置、紙幣の蛍光印刷を検知する蛍光検知装置、その他、種々のセンサを備えて構成されている。画像読取装置は、読み取った画像から、紙幣の券種、紙幣の汚れ、紙幣の傾き等を判別する。
通常、搬送機構は、搬送ベルト、搬送ローラ、搬送ガイド等で構成され、紙幣や媒体を高速で搬送する。この際、紙幣は、搬送ベルト上に載った状態、あるいは、対向する一対の搬送ベルト間に挟まれた状態で、搬送される。鑑査部においては、適切な検知を行うために、紙幣は、搬送機構により所定の位置に、かつ、所定の速度で、安定して搬送される必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-66059号公報
【文献】特開2009-199182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような紙葉類処理装置において、搬送機構のベルトやゴムローラは安定的な搬送、検知性能の維持に必須であるため、定期交換部品として一定の周期で交換される。しかし、交換前にベルト、ゴムローラが劣化あるいは伸びてしまい、安定的な搬送が行えない(ベルトがブレてしまう)事象が発生し、適切に検査を行えない事態が発生する場合がある。逆に、まだ使用可能な状態のベルトあるいはゴムローラを交換し、無駄が生じる場合もある。
この発明の実施形態の課題は、搬送機構の構成部材の適切な交換時期を検出し、検知性能の維持および信頼性の向上を図ることが可能な紙葉類処理装置および処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態によれば、紙葉類処理装置は、鑑査装置を備えている。前記鑑査装置は、搬送路に沿って延在する搬送ベルトを有し、前記搬送ベルトにより紙葉類を搬送する搬送部と、前記搬送ベルトにより搬送される紙葉類および前記搬送ベルトを撮像し前記紙葉類および搬送ベルトの画像を取得可能な画像検出装置を有し、前記取得画像に基づいて、前記紙葉類を鑑査する鑑査部と、を備えている。更に、鑑査装置は、前記取得画像における前記搬送ベルトのベルト画像に基づいて前記搬送ベルトの劣化度を検出可能な画像処理部と、検出された劣化度に応じて前記搬送ベルトの交換を促す情報を、前記鑑査装置に搭載あるいは接続されたモニタへ発信することが可能な制御部と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、実施形態に係る紙葉類処理装置の全体構成を概略的に示す断面図。
【
図2】
図2は、前記紙葉類処理装置の搬送機構および画像検出装置を概略的に示す側面図。
【
図3】
図3は、前記搬送機構および画像検出装置を概略的に示す斜視図。
【
図4】
図4は、前記画像検出装置の画像取得部、制御部、および画像処理部を機能ブロックとして示すブロック図。
【
図5】
図5は、前記紙葉類処理装置における搬送ベルトの劣化度を検出する工程を示すフローチャート。
【
図6】
図6は、前記搬送ベルトおよび紙葉類の取得画像の一例を示す平面図。
【
図7】
図7は、前記取得画像および検出エリアの一例を示す平面図。
【
図8】
図8は、前記搬送ベルトのベルト画像と輝度との関係を示す図。
【
図9】
図9は、前記搬送ベルトのベルト画像のずれ幅と輝度との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら実施形態について、詳細に説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更であって容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の寸法、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0008】
(実施形態)
図1は、紙葉類処理装置の一例として実施形態に係る紙幣処理装置の内部構造を概略的に示す断面図である。図示のように、紙幣処理装置10は、第1モジュールUAと第2モジュールUBとを備えている。第1モジュールUAと第2モジュールUBとは、互いに機械的、かつ、電気的に接続されている。紙幣処理装置10は、第1モジュールUAおよび第2モジュールUB内を通って延在する複数の搬送路12と、処理対象となる複数枚の紙幣Pが積層状態で載置される供給部20と、供給部20から紙幣Pを1枚ずつ取出して搬送路12に送りだす取出し装置21と、を備えている。搬送路12は、図示しない複数枚のガイド板、複数のゲート、搬送ベルト等により規定されている。紙幣処理装置10は、搬送路12に沿って複数枚の紙幣を順次搬送する搬送機構(搬送部)を備えている。搬送機構は、後述するような複数の無端状の搬送ベルト、搬送ローラ、搬送ベルトを駆動する駆動モータ、吸引装置、紙葉類の通過を検知する複数のセンサ等を備えている。
【0009】
紙幣処理装置10は、搬送路に沿って延在する搬送ベルトを有し、搬送ベルトにより紙葉類を搬送する搬送部と、搬送される紙幣Pを1枚ずつ鑑査する鑑査部(鑑査装置)18と、券種ごとに紙幣を集積および施封する複数の集積施封装置22a、22b、22c、22dと、集積施封装置22a~22dの下方に設けられ、施封された紙幣束を排出部24へ搬送する排出搬送機構26と、リジェクト券を回収するリジェクト券排出部27と、リジェクト券を裁断する裁断部28と、バッチカードを回収するバッチカード排出部29と、を備えている。なお、バッチカードとは、紙葉類束と一緒に投入されるカードであり、紙葉類束の情報を示すバーコード、QR(登録商標)コード等が付されたカードである。
【0010】
鑑査装置18は、送られて来た紙幣Pの金種、形状、厚さ、表裏、真偽、正損、2枚取り等を検出し、紙幣を鑑査するもので、これらを検出する種々のセンサ、撮像装置等を有している。一例では、鑑査装置18は、紙幣Pの上面の反射画像情報を検出する第1画像検出装置30と、紙幣Pの下面の反射画像情報を検出する第2画像検出装置32と、紙幣Pの透過画像情報を検知する透過画像検知部34と、紙幣Pの磁気印刷特性を検知する磁気センサ36と、紙幣Pのブリーチ発光特徴や蛍光印刷情報を検知する蛍光検知部38と、紙幣Pの厚さを検知し、テープや複数枚取りを検知する厚さ検知部40と、を備えている。鑑査装置18は、上記種々の検出部および磁気センサの検知情報に基づいて、紙幣Pの金種、形状、厚さ、表裏、真偽、正損、汚損度、2枚取り等を鑑査する。
【0011】
紙幣処理装置10は、鑑査装置18の検出装置あるいは各種センサの検出情報を用いて搬送機構の構成部材、例えば、搬送ベルトの劣化度合い(劣化度)を検出する機能および装置を備えている。一例では、劣化度を検出する検出部(検出装置)は、第1画像検出装置30の取得画像を用いて搬送ベルトの劣化度を検知する構成としている。
図2は、第1画像検出装置30および搬送機構を示す側面図、
図3は第1画像検出装置および搬送機構を示す斜視図である。
図示のように、搬送機構70は、例えばゴムで形成された帯状の一対の第1搬送ベルトBL1と、それぞれ第1搬送ベルトBL1に対向して配置された一対の第2搬送ベルトBL2および一対の第3搬送ベルトBL3と、複数の吸引装置72と、を有している。一対の第1搬送ベルトBL1は、複数のプーリ73に掛け渡された無端ベルトであり、搬送ベルトBL1の所定長さ部分は、搬送路12に沿ってほぼ水平に延在している。一対の第1搬送ベルトBL1は、紙幣Pの幅よりも僅かに狭い間隔を置いて、互いに平行に配置されている。各第1搬送ベルトBL1には、長手方向に所定の間隔を置いて、複数の吸気孔Hが貫通形成されている。
【0012】
第2搬送ベルトBL2は、搬送方向Aにおいて、第1搬送ベルトBL1の上流側に設けられている。第2搬送ベルトBL2は、複数のプーリ74に掛け渡され、所定の長さ部分が第1搬送ベルトBL1に対向して、すなわち、重なって延在している。
第3搬送ベルトBL3は、搬送方向Aにおいて、第1搬送ベルトBL1の下流側に設けられている。第3搬送ベルトBL3は、複数のプーリ76に掛け渡され、所定の長さ部分が第1搬送ベルトBL1に対向して、すなわち、重なって延在している。第2搬送ベルトBL2と第3搬送ベルトBL3とは、搬送方向Aにおいて、紙幣Pの長さよりも大きな間隔を置いて配置されている。第1搬送ベルトBL1上で、第2搬送ベルトBL2と第3搬送ベルトBL3との間の領域は、検査領域を形成している。
複数の吸引装置72は、第2搬送ベルトBL2と第3搬送ベルトBL3との間で、それぞれ第1搬送ベルトBL1の裏面に対向して配置されている。吸引装置72は、第1搬送ベルトBL1の吸気孔Hを通して吸気することにより、紙幣Pを第1搬送ベルトBL1の上面に吸着する機能を有している。
【0013】
紙幣Pは、幅方向の両端部が第1搬送ベルトBL1と第2搬送ベルトBL2との間に挟まれた状態で搬送方向Aに搬送され、続いて、幅方向両端部が第1搬送ベルトBL1の上面に吸着した状態で第1搬送ベルトBL1により検査領域を通して搬送される。検査領域を通過した後、紙幣Pは、第3搬送ベルトBL3と第1搬送ベルトBL1との間に挟まれた状態で更に搬送される。
【0014】
一方、第1画像検出装置30は、検査領域において、第1搬送ベルトBL1の上方に配置された照明装置44および撮像装置46と、第1搬送ベルトBL1の下方に配置された白色基準板48と、を有している。白色基準板48は、例えば、矩形板状に形成され、一対の第1搬送ベルトBL1とほぼ直交して配置されている。白色基準板48の長手方向の両端部は、それぞれ第1搬送ベルトBL1の外側まで延出している。
照明装置44は、一対の第1搬送ベルトBL1の上面、検査領域を通過する紙幣Pの上面、および白色基準板48の全域に向けて検出光を照射する向きに配置されている。照明装置44は、光源として、用途に応じて、可視光を出射するLEDアレイ、近紫外光を出射するLEDアレイ、あるいは近赤外光を出射するLEDアレイを用いている。
【0015】
撮像装置46は、第1搬送ベルトBL1を挟んで白色基準板48と対向する位置に配置されている。撮像装置46は、搬送されている紙幣Pを一次元的に順次撮像するラインイメージセンサ(例えば、モノクロのラインCCDやラインCMOS)、あるいはビデオカメラなどにより構成されている。本実施形態では、撮像装置46はラインイメージセンサを用いている。このラインイメージセンサは、それぞれ受光した光を電気信号、すなわち画像に変換する複数の受光素子(撮像素子、CCD)を有し、これらの受光素子は搬送方向Aとほぼ直交する方向に複数列に並んで配列されている。撮像装置46は、受光素子により、紙幣Pが通過する所定範囲(撮像範囲)を順次撮像し、紙幣Pの上面の画像、および一対の第1搬送ベルトBL1の画像を取得する。
【0016】
図4は、鑑査装置18および第1画像検出装置30の機能ブロックを示すブロック図である。図示のように、鑑査装置18あるいは画像検出装置30は、撮像装置46により撮像した画像を取得する画像取得部14、ソフトウェアを備え、あるいは、ソフトウェアに基づき、取得した画像を処理可能な画像処理部16、および制御部15を有している。
画像取得部14は、アンプ(増幅器)41、アナログ/デジタル変換回路(A/D変換回路)42、および補正回路43を備えている。アンプ41は、撮像装置(ラインイメージセンサ)46の出力信号(画像データ)を増幅して出力する。A/D変換回路42は、入力信号であるアナログ信号をデジタル信号に変換して出力信号として出力する。補正回路43は、予め記憶されている撮像装置46の各撮像素子の特性に基づいて入力信号のムラを補正する。また、補正回路43は、撮像装置12から受信した出力信号のうちの白色基準板48の画像に対応する画素の明るさが規定の明るさの値になるように撮像装置46の感度補正を行なう。
【0017】
画像処理部16は、演算処理部60と、演算処理された画像データを蓄積して格納する画像メモリ51と、基準画像データを格納している基準画像メモリ52を有する判定部66と、を備えている。演算処理部60は、フォームウエアに基づいて取得画像の位置・傾き検出、位置・傾き補正、画像特徴量の演算等を行い、演算処理された画像データを画像メモリ51に送る。
判定部66の基準画像メモリ52は、紙幣Pの各種の判定の基準となる基準画像データを紙幣の種類毎に予め複数記憶している。また、基準画像メモリ52は、第1搬送ベルトBL1の劣化度の基準となるベルト画像の輝度の第1閾値A、および搬送ベルトのずれ幅の基準となる第2閾値Bを格納している。判定部66は、画像メモリ51から読み出した画像データと基準画像メモリ52に格納されている基準画像データとを比較することにより紙幣Pの券種、汚れ度合などを判定する。本実施形態では、判定部66は、画像データの内、第1搬送ベルトBL1の画像(ベルト画像)を検知し、このベルト画像と基準画像メモリ52に格納されている基準画像データとを比較することにより、第1搬送ベルトBL1の劣化度を判定する。一例では、判定部66は、ベルト画像の輝度を検出し、検出されたベルト画像の輝度と基準画像メモリ52に格納されている第1閾値Aとを比較することにより、第1搬送ベルトBL1の劣化度を判定する。更に、判定部66は、ベルト画像の幅方向のずれ幅を検出し、検出されたずれ幅と基準画像メモリ52に格納されている第2閾値Bとを比較することにより、第1搬送ベルトBL1の劣化度を判定する。判定部66は、判定結果を制御部15に送る。
以上のように、判定部66を含む画像処理部16は、搬送ベルトの劣化を判定する画像劣化判定機構を構成している。
【0018】
制御部15は、制御回路53、およびアラーム発信回路56を有している。制御回路53は、撮像装置46、照明装置44、画像取得部14、および画像処理部16の各部を統合的に制御する。例えば、制御回路53は、撮像装置46による撮像範囲の撮像を行なうタイミングを制御する。更に、制御回路53は、画像処理部16から送られた判定結果に応じて、すなわち、搬送ベルトの劣化度に応じて、搬送ベルトの交換時期を算出する。制御回路53は、ベルトの交換時期に達した時点で、ベルトの交換指示をアラーム発信回路56に送る。これに応じて、アラーム発信回路56は、ベルトの交換を促す情報、例えば、アラーム信号を紙幣処理装置10のモニタ68に発信し、モニタ68にベルト交換指示を表示する。
なお、アラーム発信は、モニタに表示する構成に限らず、アラームランプを点灯する、あるいは、アラーム音声を出力する等の構成とすることも可能である。
【0019】
次に、上記のように構成された第1画像検出装置30および鑑査装置18による撮像動作および画像検知動作について説明する。
図5は、第1画像検出装置30および鑑査装置18による撮像動作および第1搬送ベルトBL1の劣化度検出動作を示すフローチャートである。
図示のように、初めに、画像検出装置30により紙幣Pおよび第1搬送ベルトBL1を撮像し、これらの画像を取得する(ステップS1)。この場合、
図2および
図3で示したように、搬送機構70により搬送された紙幣Pが画像検出装置30の検査領域を通過する間、すなわち、白色基準板48上を通過する間、照明装置44から検査光を紙幣P、第1搬送ベルトBL1、および白色基準板48に照射し、その反射光を撮像装置46で受光および撮像する。撮像装置46の出力信号を画像取得部14により増幅および変換することにより紙幣Pの表面の画像および一対の第1搬送ベルトBL1の画像を取得する。
【0020】
図6は、取得した画像の一例を示している。図示のように、取得画像は、紙幣Pの表面画像および一対の第1搬送ベルトBL1の画像を含んでいる。図示の例は、紙幣Pのスライド、スキューが無い状態で撮像した画像の例を示している。図示のように、白色基準板48の上に紙幣Pが無い所は、白色基準板48から反射光による取得画像であり、明画像として読み取られている。第1搬送ベルトBL1は、白色基準板48よりも反射率が低いことから、第1搬送ベルトBL1は、白色基準板48よりもやや暗い画像として読み取られている。
【0021】
図5に示すように、続いて、取得画像を画像処理部16により演算処理する(ステップS2)。画像処理において、演算処理部60は、取得した紙幣画像の境界(輪郭)、すなわち、紙幣画像の側縁(長辺、短辺)を検出し、検出した輪郭と予め記憶されている基準位置とを比較することにより、紙幣画像の位置ずれ(スライド)、および傾き(スキュー)を検出する。演算処理部60は、検出した紙幣Pの位置ずれ、および傾きに応じて取得画像の位置および傾きを補正(アファイン変換)する、すなわち、取得画像中の紙幣Pの長辺および短辺が基準位置と一致するように紙幣画像を補正する。
【0022】
判定部66は、位置および傾きを補正した画像と、基準画像メモリ52に記憶されている紙葉類の各基準画像とを比較し、例えば、画像中の紙幣P上に、所定の情報が印刷されているかを検出することにより紙幣Pの券種を判定し、判定結果を制御部15に出力する。
また、判定部66は、取得画像における第1搬送ベルトBL1の画像(ベルト画像)を検知し(ステップS3)、ベルト画像の輝度を検出および測定する(ステップS4)。同時あるいは続けて、判定部66は、各第1搬送ベルトBL1のベルト画像の幅を検出する(ステップS5)。
【0023】
図8は、第1搬送ベルトBL1の劣化度とベルト画像の輝度との関係を示し、
図9は、第1搬送ベルトBL1の幅方向のずれ幅とベルト画像の輝度との関係を示している。
図8に示すように、汚れ、磨耗、伸び等により第1搬送ベルトBL1の劣化が進行していくと、ベルト画像の輝度が変化する、具体的には、輝度が低下していく。例えば、新品の第1搬送ベルトのベルト画像の輝度に対して、劣化した第1搬送ベルトのベルト画像の輝度は、約D1程度、低くなる。
第1搬送ベルトBL1は、劣化により伸びが生じた場合、ベルト走行時に幅方向に位置ずれが生じる。そのため、
図9に示すように、劣化に伴い、ベルト画像の幅が増大する。例えば、新品の第1搬送ベルトのベルト画像の幅W1に対して、劣化した第1搬送ベルトのベルト画像の幅W2は、W2>W1となる。
【0024】
図7は、取得画像において、ベルト画像検出部64により検知する検知領域A、B、Cを示している。ベルト画像の輝度を検出する場合、各第1搬送ベルトBL1上に位置する検知領域A、Bを検知することにより、それぞれのベルト画像の輝度を検出する。あるいは、ベルト画像検出部64は、所得画像の幅方向全域に亘る検査領域Cを検知することにより、各ベルト画像の輝度、および各ベルト画像の幅を検出することができる。
【0025】
図5に示すように、判定部66は、測定したベルト画像の輝度と基準画像メモリ52に格納されている所定の第1閾値Aとを比較する(ステップS6)。測定輝度が第1閾値A以下の場合、判定部66は第1搬送ベルトBL1が劣化している判定し、判定結果を制御部15に送る。これに応じて、制御部15の制御回路53はアラーム発信指示をアラーム発信回路56に送信する。アラーム発信回路56は、これに応じて、ベルト交換を示唆するベルト交換指示を出力する(ステップ8)。ベルト交換指示は、紙幣処理装置のモニタ68に「ベルト交換指示」を表示する、アラームランプを点灯する、あるいは、アラーム音声を出力する等の種々のアラーム発信方法を採用することが可能である。
ベルト交換指示を発信した後、ベルト画像検知処理を終了する。なお、ステップS6において、検出輝度が第1閾値Aよりも高い場合、ステップS1に戻り、上述した処理を繰り返し実行する。
【0026】
また、判定部66は、検出されたベルト画像の幅と基準画像メモリ52に格納されている所定の第2閾値B(例えば、幅W2)とを比較する(ステップS7)。検出幅が第2閾値B以上の場合、判定部66は第1搬送ベルトBL1が劣化している判定し、判定結果を制御部15に送る。これに応じて、制御部15の制御回路53はアラーム発信指示をアラーム発信回路56に送信する。アラーム発信回路56は、これに応じて、ベルト交換を示唆するベルト交換指示を出力する(ステップ8)。ベルト交換指示を出力した後、ベルト画像検知処理を終了する。なお、ステップS7において、検出幅が第2閾値Bよりも小さい場合、ステップS1に戻る。
ベルト交換後、上述したベルト画像検出動作を随時あるいは定期的に行う。
【0027】
以上のベルト画像検知処理により第1搬送ベルトBL1の劣化度を検出し、適切なベルト交換時期を正確に判断することが可能となる。これにより、劣化した搬送ベルトの使用を防止し、紙葉類の安定的な搬送および正確な鑑査処理を維持することができる。また、搬送ベルトの定期交換等を行う必要がなく、劣化度が進んでいない搬送ベルト、すなわち、まだ使用可能な状態の搬送ベルトを交換してしまう事態を防止し、搬送ベルトを無駄なく使用することが可能となる。更に、搬送ベルトの劣化度の判定は、紙幣処理装置の稼働を停止することなく実行することができ、紙幣処理装置の稼働率を低下させることがない。
以上のことから、本実施形態によれば、搬送機構の構成部材の適切な交換時期を検出し、鑑査装置の検知性能の維持および信頼性の向上を図ることが可能な紙葉類処理装置および紙葉類処理方法を得ることができる。
【0028】
本発明は上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0029】
上述した実施形態において、ベルト画像の輝度および幅の両方を検出し、それぞれの検出結果に応じてベルトの劣化度を判定する構成としているが、これに限らず、いずれか一方の検出結果のみに基づいてベルトの劣化度合いを判定する構成としてもよい。
上述したように、通常、搬送ベルトは、劣化に伴い、画像の輝度が低下するが、搬送ベルトの種類によっては、ベルトの劣化により表面が削れ、光が反射し易くなり、その結果、劣化に伴い画像の輝度が高くなる搬送ベルトが存在する可能性も考えられる。このような搬送ベルトを用いる場合は、予め、第1閾値と異なる第3閾値A2等を登録しておき、
図5のステップ6(S6)において、測定輝度が第3閾値A2以上か否かを判断することにより、搬送ベルトの劣化度を検出すればよい。
【0030】
また、劣化度を検出する対象は、第1搬送ベルトに限らず、搬送機構の他の構成部材、例えば、ゴムローラ(搬送ベルトよりも細いループ状のローラ)としてもよい。搬送ベルトの劣化度は、ベルト画像の輝度、ずれ幅に基づいて検出する構成に限らず、搬送ベルトの他の特徴を検出することにより劣化度を判定することも可能である。例えば、搬送ベルトやゴムローラは、表面が摩耗することで毛羽立状態やサイズが変化する。そのため、取得画像から毛羽立状態を検出し、劣化度合いを判定する構成としてもよく、あるいは、サイズの変化を検出し、劣化度合いを判定する構成としてもよい。また、搬送ベルトに基準マークを付し、この基準マークの通過タイミングを検出することにより、搬送ベルトの伸び、つまり、劣化度合いを判定する構成とすることも可能である。
更に、第1画像検出装置により取得した情報、すなわち、取得画像を利用して搬送ベルトの劣化度を検出する構成としているが、これに限らず、他の検出装置、例えば、第2画像検出装置、透過画像検出装置、磁気センサにより取得した情報を利用して搬送ベルトあるいはゴムローラの劣化度を検出する構成としてもよい。
処理対象となる紙葉類は、紙幣に限らず、有価証券等の他の紙葉類にも適用可能である。
【符号の説明】
【0031】
10…紙幣処理装置、12…搬送路、14…画像取得部、15…制御部、
16…画像処理部、18…鑑査装置、30…第1画像検出装置、
32…第2画像検出装置、44…照明装置、46…撮像装置、38…白色基準板、
64…ベルト画像検出部、66…判定部、70…搬送機構、72…吸引装置、
P…紙葉類(紙幣)、BL1…第1搬送ベルト、BL2…第2搬送ベルト、
BL3…第3搬送ベルト、H…通気孔