(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】トーションビーム式サスペンション
(51)【国際特許分類】
B60G 9/04 20060101AFI20221107BHJP
【FI】
B60G9/04
(21)【出願番号】P 2019068055
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】592037790
【氏名又は名称】株式会社エフテック
(74)【代理人】
【識別番号】100145023
【氏名又は名称】川本 学
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【氏名又は名称】来山 幹雄
(74)【代理人】
【識別番号】100182028
【氏名又は名称】多原 伸宜
(72)【発明者】
【氏名】古木 圭
(72)【発明者】
【氏名】関口 亮太
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/121989(WO,A1)
【文献】特開2016-168953(JP,A)
【文献】特開2017-065543(JP,A)
【文献】特開2001-039135(JP,A)
【文献】特開2015-229372(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0255904(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102015209039(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の幅方向における左側で前記車体の長手方向に延在すると共に、前記長手方向の前側で前記車体に支持され、前記長手方向の後側で車輪を支持する左トレーリングアームと、
前記幅方向における右側で前記長手方向に延在すると共に、前記長手方向の前側で前記車体に支持され、前記長手方向の後側で車輪を支持する右トレーリングアームと、
前記幅方向に延在して、前記幅方向に直交する平面で切った縦断面において、互いに対向する一対の壁部及び前記一対の壁部間を連絡する連絡壁部を有する開断面形状を呈すると共に、前記左トレーリングアーム及び前記右トレーリングアームを連結するトーションビームと、
前記左側で前記幅方向に延在すると共に、前記トーションビームの前記一対の壁部及び前記連絡壁部で囲われた内部領域で前記トーションビームに取り付けられる内左取付部、前記左トレーリングアームに取り付けられる外左取付部、並びに前記内左取付部及び前記外左取付部間を連絡する中間左連絡部を有して、前記トーションビーム及び前記左トレーリングアームを連結する左スティフナと、
前記右側で前記幅方向に延在すると共に、前記内部領域で前記トーションビームに取り付けられる内右取付部、前記右トレーリングアームに取り付けられる外右取付部、並びに前記内右取付部及び前記外右取付部間を連絡する中間右連絡部を有して、前記トーションビーム及び前記右トレーリングアームを連結する右スティフナと、
を備え、
前記トーションビームは、前記連絡壁部において、前記内左取付部が前記連絡壁部に溶接される左溶接部分が配される左座部及び前記内右取付部が前記連絡壁部に溶接される右溶接部分が配される右座部を有し、
前記左座部は、前記内部領域から遠ざかる突出方向に前記連絡壁部が突設された部分であり、
前記右座部は、前記突出方向に前記連絡壁部が突設された部分であるトーションビーム式サスペンション。
【請求項2】
前記左溶接部分は、前記連絡壁部及び前記内左取付部の一方に設けられた左プラグ溶接孔に配され、
前記左プラグ溶接孔は、前記突出方向に直交する方向において互いに対向する一対の円弧の径が相違する長孔であり、
前記右溶接部分は、前記連絡壁部及び前記内右取付部の一方に設けられた右プラグ溶接孔に配され、
前記右プラグ溶接孔は、前記突出方向に直交する方向において互いに対向する一対の円弧の径が相違する長孔である請求項1に記載のトーションビーム式サスペンション。
【請求項3】
前記左プラグ溶接孔は、前記内左取付部に設けられ、
前記右プラグ溶接孔は、前記内右取付部に設けられる請求項2に記載のトーションビーム式サスペンション。
【請求項4】
前記左座部は、その一部が前記左プラグ溶接孔に侵入するように前記内部領域に向かって陥設された部分を有し、
前記右座部は、その一部が前記右プラグ溶接孔に侵入するように前記内部領域に向かって陥設された部分を有する請求項3に記載のトーションビーム式サスペンション。
【請求項5】
前記左プラグ溶接孔は、前記左座部に設けられ、
前記右プラグ溶接孔は、前記右座部に設けられる請求項2に記載のトーションビーム式サスペンション。
【請求項6】
前記内左取付部は、その一部が前記左プラグ溶接孔から遠ざかるように前記内部領域に向かって陥設された部分を有し、
前記内右取付部は、その一部が前記右プラグ溶接孔から遠ざかるように前記内部領域に向かって陥設された部分を有する請求項3に記載のトーションビーム式サスペンション。
【請求項7】
前記内左取付部には、前記内左取付部の右端部から前記外左取付部の側に偏位しながら前記連絡壁部と離間して対向するように、前記内左取付部が前記連絡壁部に向かって陥設された部分である左平壁部が設けられると共に、前記内左取付部の前記右端部及び前記左平壁部の間は、左傾斜壁部で連絡され、
前記内右取付部には、前記内右取付部の左端部から前記外右取付部の側に偏位しながら前記連絡壁部と離間して対向するように、前記内右取付部が前記連絡壁部に向かって陥設された部分である右平壁部が設けられると共に、前記内右取付部の前記左端部及び前記右平壁部の間は、右傾斜壁部で連絡される請求項1から6のいずれかに記載のトーションビーム式サスペンション。
【請求項8】
前記左平壁部は、その右端部の前記前側の部分及び前記右端部の前記後側の部分が前記右側に各々張り出した右張出部を有し、
前記右平壁部は、その左端部の前記前側の部分及び前記左端部の前記後側の部分が前記左側に各々張り出した左張出部を有する請求項7に記載のトーションビーム式サスペンション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トーションビーム式サスペンションに関し、特に、四輪自動車等の車両に装着されるトーションビーム式サスペンションに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、四輪自動車等の車両用サスペンション装置に対しては、部品点数が少なく、構造が比較的簡素で、スペース効率に優れるトーションビーム式サスペンションが、小排気量車等を中心に多く採用されてきている。
【0003】
かかるトーションビーム式サスペンションに対しては、その生産性等に不要な影響を与えることを抑制しながら、所要の強度や剛性を確保することが求められているため、左右のトレーリングアームとトーションビームとを、トーションビーム内を延在する補強部材で連結した構成が提案されている。
【0004】
かかる状況下で、特許文献1は、自動車アクスル1に関し、車輌の長手方向に配置された2本の縦支持体(トレーリングアーム)3と、車輌横方向に延びて2本のトレーリングアーム3を互いに結合する横支持体2と、2本のトレーリングアーム3及び横支持体2の間を各々結合する補強シート4と、を備え、補強シート4における横支持体2側の終端領域10内に、横支持体2の金属プロフィール5の底ウェブ7と補強シート4とを結合するプラグ溶接等の点状結合11が設けられた構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者の検討によれば、特許文献1の構成においては、点状結合11を設けることによって、かかる結合箇所に作用する力がより良好に分配されて、補強シート4における横支持体2側の終端領域10に発生する応力を低減することを企図したものであるが、点状結合部11は、車輌の長手方向に延在する楕円や長孔に対して配されて横支持体2の金属プロフィール5における平板状の底ウェブ7に結合されるものであるため、応力の低減度合には自ずと限界があり、この点において改善の余地がある。
【0007】
また、本発明者の検討によれば、トーションビーム式サスペンションにおいては、トーションビームとトレーリングアームとの接合強度及びトーションビームの曲げ剛性を確保した上で、トーションビームの捩り剛性を最適化することが求められるが、トーションビームとトレーリングアームとの接合強度及びトーションビームの曲げ剛性を増強するためにこれらを補強部材で連結する場合に、特に、補強部材の構成を調整してトーションビームの捩り剛性を調整しようとすると、トーションビームと補強部材との結合部分に応力が集中する傾向が強くなってしまう。つまり、かかる事態は、トーションビームの捩り剛性を最適化する際の設計自由度を低く制限するものであるため、トーションビームの捩り剛性を最適化する際の設計自由度を高める新たな構成の実現が待望されている状況にある。
【0008】
本発明は、以上の検討を経てなされたもので、トーションビームとトレーリングアームとを補強部材で連結する場合に、トーションビームとトレーリングアームとの接合強度及びトーションビームの曲げ剛性を確保し、トーションビームと補強部材との結合部分に応力が集中することを抑制した態様で、トーションビームの捩り特性を自由度高く設定することができるトーションビーム式サスペンションを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の目的を達成すべく、本発明の第1の局面におけるトーションビーム式サスペンションは、車体の幅方向における左側で前記車体の長手方向に延在すると共に、前記長手方向の前側で前記車体に支持され、前記長手方向の後側で車輪を支持する左トレーリングアームと、前記幅方向における右側で前記長手方向に延在すると共に、前記長手方向の前側で前記車体に支持され、前記長手方向の後側で車輪を支持する右トレーリングアームと、前記幅方向に延在して、前記幅方向に直交する平面で切った縦断面において、互いに対向する一対の壁部及び前記一対の壁部間を連絡する連絡壁部を有する開断面形状を呈すると共に、前記左トレーリングアーム及び前記右トレーリングアームを連結するトーションビームと、前記左側で前記幅方向に延在すると共に、前記トーションビームの前記一対の壁部及び前記連絡壁部で囲われた内部領域で前記トーションビームに取り付けられる内左取付部、前記左トレーリングアームに取り付けられる外左取付部、並びに前記内左取付部及び前記外左取付部間を連絡する中間左連絡部を有して、前記トーションビーム及び前記左トレーリングアームを連結する左スティフナと、前記右側で前記幅方向に延在すると共に、前記内部領域で前記トーションビームに取り付けられる内右取付部、前記右トレーリングアームに取り付けられる外右取付部、並びに前記内右取付部及び前記外右取付部間を連絡する中間右連絡部を有して、前記トーションビーム及び前記右トレーリングアームを連結する右スティフナと、を備え、前記トーションビームは、前記連絡壁部において、前記内左取付部が前記連絡壁部に溶接される左溶接部分が配される左座部及び前記内右取付部が前記連絡壁部に溶接される右溶接部分が配される右座部を有し、前記左座部は、前記内部領域から遠ざかる突出方向に前記連絡壁部が突設された部分であり、前記右座部は、前記突出方向に前記連絡壁部が突設された部分である。
【0010】
また、本発明は、かかる第1の局面に加え、前記左溶接部分は、前記連絡壁部及び前記内左取付部の一方に設けられた左プラグ溶接孔に配され、前記左プラグ溶接孔は、前記突出方向に直交する方向において互いに対向する一対の円弧の径が相違する長孔であり、前記右溶接部分は、前記連絡壁部及び前記内右取付部の一方に設けられた右プラグ溶接孔に配され、前記右プラグ溶接孔は、前記突出方向に直交する方向において互いに対向する一対の円弧の径が相違する長孔であることを第2の局面とする。
【0011】
また、本発明は、かかる第2の局面に加え、前記左プラグ溶接孔は、前記内左取付部に設けられ、前記右プラグ溶接孔は、前記内右取付部に設けられることを第3の局面とする。
【0012】
また、本発明は、かかる第3の局面に加え、前記左座部は、その一部が前記左プラグ溶接孔に侵入するように前記内部領域に向かって陥設された部分を有し、前記右座部は、その一部が前記右プラグ溶接孔に侵入するように前記内部領域に向かって陥設された部分を有することを第4の局面とする。
【0013】
また、本発明は、かかる第2の局面に加え、前記左プラグ溶接孔は、前記左座部に設けられ、 前記右プラグ溶接孔は、前記右座部に設けられることを第5の局面とする。
【0014】
また、本発明は、かかる第3の局面に加え、前記内左取付部は、その一部が前記左プラグ溶接孔から遠ざかるように前記内部領域に向かって陥設された部分を有し、前記内右取付部は、その一部が前記右プラグ溶接孔から遠ざかるように前記内部領域に向かって陥設された部分を有することを第6の局面とする。
【0015】
また、本発明は、かかる第1から第6のいずれかの局面に加え、前記内左取付部には、前記内左取付部の右端部から前記外左取付部の側に偏位しながら前記連絡壁部と離間して対向するように、前記内左取付部が前記連絡壁部に向かって陥設された部分である左平壁部が設けられると共に、前記内左取付部の前記右端部及び前記左平壁部の間は、左傾斜壁部で連絡され、前記内右取付部には、前記内右取付部の左端部から前記外右取付部の側に偏位しながら前記連絡壁部と離間して対向するように、前記内右取付部が前記連絡壁部に向かって陥設された部分である右平壁部が設けられると共に、前記内右取付部の前記左端部及び前記右平壁部の間は、右傾斜壁部で連絡されることを第7の局面とする。
【0016】
また、本発明は、かかる第7の局面に加え、前記左平壁部は、その右端部の前記前側の部分及び前記右端部の前記後側の部分が前記右側に各々張り出した右張出部を有し、前記右平壁部は、その左端部の前記前側の部分及び前記左端部の前記後側の部分が前記左側に各々張り出した左張出部を有することを第8の局面とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第1の局面における構成によれば、トーションビームが、連絡壁部において、左スティフナの内左取付部が連絡壁部に溶接される左溶接部分が配される左座部及び右スティフナ内右取付部が連絡壁部に溶接される右溶接部分が配される右座部を有し、左座部が、トーションビームの内部領域から遠ざかる突出方向に連絡壁部が突設された部分であり、右座部が、トーションビームの内部領域から遠ざかる突出方向に連絡壁部が突設された部分であることにより、トーションビームとトレーリングアームとを補強部材で連結する場合に、左座部及び右座部を含めた連絡壁部の剛性を高めて、トーションビームと補強部材との結合部分に印加されるべき力を分散させることにより、トーションビームとトレーリングアームとの接合強度及びトーションビームの曲げ剛性を確保し、トーションビームと補強部材との結合部分に応力が集中することを抑制した態様で、トーションビームの捩り特性を自由度高く設定することができる。
【0018】
また、本発明の第2の局面における構成によれば、左溶接部分が、連絡壁部及び内左取付部の一方に設けられた左プラグ溶接孔に配され、左プラグ溶接孔が、突出方向に直交する方向において互いに対向する一対の円弧の径が相違する長孔であり、右溶接部分が、連絡壁部及び内右取付部の一方に設けられた右プラグ溶接孔に配され、右プラグ溶接孔が、突出方向に直交する方向において互いに対向する一対の円弧の径が相違する長孔であることにより、トーションビームと補強部材との結合部分に応力が集中することを確実に抑制しながら、トーションビームの捩り特性を自由度高く設定することができる。
【0019】
また、本発明の第3の局面における構成によれば、左プラグ溶接孔が、内左取付部に設けられ、右プラグ溶接孔が、内右取付部に設けられることにより、一般的には車両の下方に向いた左スティフナ及び右スティフナの側に溶接部を設定することができ、トーションビームと補強部材との結合部分に応力が集中することを確実に抑制しながら、ダストや水分等が溶接部上溜まる事態の発生を抑制することができる。
【0020】
また、本発明の第4の局面における構成によれば、左座部が、その一部が左プラグ溶接孔に侵入するように内部領域に向かって陥設された部分を有し、右座部が、その一部が右プラグ溶接孔に侵入するように内部領域に向かって陥設された部分を有することにより、それらの陥設された部分に排水孔として機能し得る貫通孔を設定することを許容しながら、左座部及び右座部の剛性を高めて、トーションビームと補強部材との結合部分に応力が集中することを確実に抑制することができる。
【0021】
また、本発明の第5の局面における構成によれば、左プラグ溶接孔は、左座部に設けられ、右プラグ溶接孔は、右座部に設けられることにより、一般的には車両の相対的に上方側で周辺部品で覆われた部位に溶接部を設定することができ、トーションビームと補強部材との結合部分に応力が集中することを確実に抑制しながら、車両走行時のチッピング等の異物が溶接部に接触する事態の発生を抑制することができる。
【0022】
また、本発明の第6の局面における構成によれば、内左取付部が、その一部が左プラグ溶接孔から遠ざかるように内部領域に向かって陥設された部分を有し、内右取付部が、その一部が右プラグ溶接孔から遠ざかるように内部領域に向かって陥設された部分を有することにより、それらの陥設された部分に排水孔として機能し得る貫通孔を設定することを許容しながら、内左取付部及び内右取付部の剛性を高めて、トーションビームと補強部材との結合部分に応力が集中することを確実に抑制することができる。
【0023】
また、本発明の第7の局面における構成によれば、内左取付部には、内左取付部の右端部から外左取付部の側に偏位しながら連絡壁部と離間して対向するように、内左取付部が連絡壁部に向かって陥設された部分である左平壁部が設けられると共に、内左取付部の右端部及び左平壁部の間は、左傾斜壁部で連絡され、内右取付部には、内右取付部の左端部から外右取付部の側に偏位しながら連絡壁部と離間して対向するように、内右取付部が連絡壁部に向かって陥設された部分である右平壁部が設けられると共に、内右取付部の左端部及び右平壁部の間は、右傾斜壁部で連絡されることにより、内左取付部及び内右取付部の剛性を高めて、トーションビームと補強部材との結合部分に応力が集中することを確実に抑制することができる。
【0024】
また、本発明の第8の局面における構成によれば、左平壁部が、その右端部の前側の部分及び右端部の後側の部分が右側に各々張り出した右張出部を有し、右平壁部が、その左端部の前側の部分及び左端部の後側の部分が左側に各々張り出した左張出部を有することにより、内左取付部の右端部及び内右取付部の左端部における結合部分を囲ってこれらの剛性を高めて、トーションビームと補強部材との結合部分に応力が集中することをより確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態におけるトーションビーム式サスペンションの部分上面図である。
【
図2】本実施形態におけるトーションビーム式サスペンションの部分背面図である。
【
図3】
図3(a)は、本実施形態におけるトーションビーム式サスペンションの部分底面図であり、
図3(b)は、
図3(a)中のプラグ溶接孔の拡大図である。
【
図6】本実施形態における変形例のトーションビーム式サスペンションの断面図であり、位置的には
図4に相当する。
【
図7】本実施形態における変形例のトーションビーム式サスペンションの断面図であり、位置的には
図5に相当する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、
図1から
図7を適宜参照して、変形例を含む本発明の実施形態におけるトーションビーム式サスペンションにつき詳細に説明する。なお、図中、x軸、y軸及びz軸は、3軸直交座標系を成す。また、x軸の正方向が車体の前方向であり、y軸の正方向が車体の左方向であり、かつ、z軸の正方向が車体の上方向である。また、x軸の方向を長手方向又は前後方向、y軸の方向を幅方向又は左右方向、及びz軸の方向を上下方向と呼ぶことがある。
【0027】
図1は、本実施形態におけるトーションビーム式サスペンションの部分上面図であり、
図2は、本実施形態におけるトーションビーム式サスペンションの部分背面図であり、
図3(a)は、本実施形態におけるトーションビーム式サスペンションの部分底面図であり、
図3(b)は、
図3(a)中のプラグ溶接孔の拡大図である。また、
図4は、
図1のA-A断面図(y-z平面と平行な平面:長手方向に直交する平面で切った縦断面図)であり、
図4は、
図1のB-B断面図(x-z平面と平行な平面:幅方向に直交する平面で切った縦断面図)である。また、
図6は、本実施形態における変形例のトーションビーム式サスペンションの断面図であって位置的には
図4に相当し、
図7は、本実施形態における変形例のトーションビーム式サスペンションの断面図であり、位置的には
図5に相当する。なお、
図1から
図7は、いずれもトーションビーム式サスペンションの左側の構成要素について主として示すものであるが、トーションビーム式サスペンションの右側の構成要素は、左側の構成に対して左右対称な構成を有する。また、図中では、説明の便宜上、トーションビーム式サスペンションの右側の構成要素を括弧付きの符号で示している。
【0028】
まず、本実施形態におけるトーションビーム式サスペンション1の構成について、
図1から
図5を参照しながら、詳細に説明する。
【0029】
トーションビーム式サスペンション1は、図示を省略する自動車等のリヤサイドフレーム等の車体に装着されながら、サスペンションスプリング(以下、スプリングという)、サスペンションダンパ(以下、ダンパという)及び車輪等を支持するものである。
【0030】
具体的には、トーションビーム式サスペンション1は、トーションビーム10、左右一対のトレーリングアーム20、120及び左右一対のスティフナ30、130を主として備える。また、トーションビーム式サスペンション1は、左右一対のスプリングシート80、180及び左右一対のダンパブラケット90、190を備えてもよい。
【0031】
トーションビーム10は、典型的には、プレス成形等により上方に凸の形状を呈した鋼板等の金属板から成る板部材であって、幅方向に延在しながら、アーク溶接等で互いに溶接されることにより、その両端部に左右一対のトレーリングアーム20、120を連結する。
【0032】
詳しくは、トーションビーム10は、幅方向に直交する平面で切った縦断面において、前後方向で対向する前縦壁部11及び後縦壁部12、並びに前縦壁部11及び後縦壁部12の各々の上端部を前後方向で連絡すると共に上方に突出した座部14が設けられた上壁部13を備えて、前縦壁部11、後縦壁部12及び上壁部13で囲われた内部領域Iを画成しながら、下方に開いた開断面形状を呈する。典型的には、前縦壁部11は、上壁部13からやや前方に斜行しながら垂下し、後縦壁部12は、上壁部13からやや後方に斜行しながら垂下する。また、典型的には、トーションビーム式サスペンション1が車重による静止荷重を受けている場合には、上壁部13は、実質的には水平位置にあると考えてよい。なお、必要に応じて、トーションビーム10は、前斜め下方や後斜め下方に向けて開いた開断面形状を呈していてもよい。また、前縦壁部11の下端部及び後縦壁部12の下端部は、典型的には、各々、トーションビーム10の所要の捩り特性との関係で、幅方向の中央部から左方に向かうに従って、徐々に下方に下がるように設定されている。
【0033】
ここで、トーションビーム式サスペンション1は、典型的には、幅方向に直交する平面であって幅方向の中央を通る中央平面に対して、基本的には左右対称な形状を有するものであるから、トーションビーム10は、かかる中央平面に対して、互いに左右対称な形状を有するものであり、座部14も左右対称な一対のものとして上壁部13に設けられる。併せて、左トレーリングアーム20及び右トレーリングアーム120、左スティフナ30及び右スティフナ130、左スプリングシート80及び右スプリングシート180、並びに左ダンパブラケット90及び右ダンパブラケット190は、各々、かかる中央平面に対して、互いに左右対称な形状を有すると共に左右対称な位置に配置される。以下、説明の便宜上、左右一対のトレーリングアーム20、120、左右一対のスティフナ30、130、左右一対のスプリングシート80、180及び左右一対のダンパブラケット90、190に関し、左トレーリングアーム20、左スティフナ30、左スプリングシート80及び左ダンパブラケット90を例に挙げて代表的に説明していく。
【0034】
左トレーリングアーム20は、典型的には、閉断面形状を呈した鋼板等の金属板から成る管状の板部材であって、長手方向に延在する。
【0035】
詳しくは、左トレーリングアーム20においては、その前端部に車体に支持されるための典型的には鋼板等の金属板を丸めたカラー部材100がアーク溶接等で溶接される一方で、その後端部には車輪を支持するための典型的には鋼製等の金属製の車輪支持部材110がその一部が挿入された態様で、アーク溶接等で溶接されている。なお、必要に応じて、左トレーリングアーム20は、鋼板等の金属板から成る平板部材を縦断面略コ字状に成形した2つの構成部品を用意して、これらを幅方向又は上下方向で互いに対向させた態様でアーク溶接等により溶接されて一体化されていてもよいし、鋼管等の金属製の単一のパイプ部材で構成されてもよい。また、車輪支持部材110は、左トレーリングアーム20の後端部に単に突き当てられた態様でアーク溶接等により溶接されていてもよい。
【0036】
左スティフナ30は、典型的には、プレス成形等により成形された鋼板等の金属板から成る板部材であって、トーションビーム10及び左トレーリングアーム20の間を幅方向に延在して配設されると共に、その左端部及び右端部が各々トーションビーム10及び左トレーリングアーム20に対応して溶接されてそれらを連結する。
【0037】
詳しくは、左スティフナ30は、成形物の本体部である底壁部31、底壁部31の前端部から上方に立設された前フランジ32、及び底壁部31の後端部から上方に立設された後フランジ33を備え、前フランジ32及び後フランジ33は、各々、幅方向に延在する。
【0038】
左スティフナ30は、トーションビーム10の左端の外部で左端部である外取付部40を備える。外取付部40は、典型的には、左トレーリングアーム20の外輪郭形状に沿う形状になるように切り欠かれた切り欠き部を有し、かかる切り欠き部が左トレーリングアーム20の外周面に当接した態様でこれにアーク溶接等で溶接される。
【0039】
左スティフナ30は、更に、トーションビーム10の内部で右端部である内取付部50を備える。内取付部50は、トーションビーム10の上壁部13の内壁面の形状に沿う形状になるように成形された底壁部31の右端部、トーションビーム10の前縦壁部11の内壁面の形状に沿う形状になるように成形された前フランジ32の右端部、及びトーションビーム10の後縦壁部12の内壁面の形状に沿う形状になるように成形された後フランジ33の右端部を有する。
【0040】
ここで、内取付部50における底壁部31の右端部では、トーションビーム10の上壁部13に設けられた座部14に対応して、底壁部31の右端部が座部14に当接して溶接される溶接部分Wが設定される。かかる座部14がトーションビーム10の内部領域Iから遠ざかる突出方向(上方向)に向けて上壁部13が突設された部分であることにより、トーションビーム10と左トレーリングアーム20とを左スティフナ30で連結する場合に、座部14を含めた上壁部13の剛性を高めて、トーションビーム10と左スティフナ30との結合部分である溶接部分Wに印加されるべき力を分散させることにより、トーションビーム10と左トレーリングアーム20との接合強度及びトーションビーム10の曲げ剛性を確保し、トーションビーム10と左スティフナ30との溶接部分Wに応力が集中することを抑制した態様で、トーションビーム10の捩り特性を自由度高く設定することができる。また、溶接部分Wに印加されるべき力をより分散させる観点からは、座部14における前端部及び後端部は、前縦壁部11及び後縦壁部12に対応して直接接続し、座部14が前縦壁部11及び後縦壁部12に渡って延在していることが好ましい。
【0041】
また、トーションビーム10と左スティフナ30との溶接部分Wに応力が集中することを確実に抑制する観点からは、溶接部分Wは、内取付部50における底壁部31の右端部を穿孔して座部14に対応するように設けられたプラグ溶接孔34に配されることが好ましい。プラグ溶接孔34が底壁部31に設けられることにより、トーションビーム10と左スティフナ30との溶接部分Wに応力が集中することを抑制しながら、一般的には下方に向いた左スティフナ30の側に溶接部分Wを設定することができ、ダストや水分等が溶接部分W上に溜まる事態の発生を抑制することができる。かかる溶接部Wは、プラグ溶接孔34の少なくとも周壁部と座部14の下壁面部とをアーク溶接等で溶接したプラグ溶接部であり、必要に応じて、プラグ溶接孔34の全体を溶接材で埋めるものであってもよい。また、トーションビーム10と左スティフナ30との溶接部分Wに応力が集中することをより確実に抑制する観点からは、プラグ溶接孔34は、座部14の突出方向である上方向に直交する所定の方向Xにおいて互いに対向する一対の円弧34a、34bを、互いに対向する一対の接続線34c、34dで接続し、かつ、一対の円弧34a、34bの径が相違する長孔であることが好ましい。かかる所定の方向Xは、溶接部分W及びプラグ溶接孔34の周辺の応力バランスを取って、トーションビーム10と左スティフナ30との結合部分である溶接部分Wに印加されるべき力を分散させる観点から決定されるものである。また、典型的には、一対の円弧34a、34bの中心C1、C2同士は、トーションビーム10が捩じられる際(特に、トーションビーム10の幅方向における両端部が逆相に捩られる時)にトーションビームに発生する応力が伝播する方向であって、典型的には前後方向に交差する方向である方向Xと平行な1つの直線L上に配置され、一対の接続線34c、34dは、直線又はプラグ溶接孔34の外方に向かって凸となる曲線であり、プラグ溶接孔34の形状は、いわゆる雫型の先端部を丸めたような直線Lに対して線対称な形状に設定されるものである。また、プラグ溶接孔34の周辺の応力バランスを取る観点からは、一対の円弧34a、34bの内の小径のものは、一対の円弧34a、34bの内の大径のものよりも前縦壁部11及び後縦壁部12のいずれかの側に近付けて配置されることが好ましい。
【0042】
また、座部14は、その一部がプラグ溶接孔34に侵入するように内部領域Iに向かって陥設された陥設部15を有することが好ましい。これにより、陥設部15に排水孔として機能し得る貫通孔16を設定することを許容しながら、座部14の剛性を高めて、トーションビーム10と左スティフナ30との溶接部分Wに応力が集中することを確実に抑制することができる。また、座部14の剛性をより高める観点からは、かかる陥設部15は、プラグ溶接孔34の周壁部に沿って周回するものであることが好ましい。
【0043】
また、内取付部50には、底壁部31の右端部から外取付部40の側に偏位した部位で上壁部13と離間して対向するように、内取付部50が上壁部13に向かって陥設された部分である平壁部35が設けられると共に、内取付部50の右端部及び平壁部35の間は、傾斜壁部36で連絡されることが好ましい。これにより、内取付部50の剛性を高めながら、トーションビーム10と左スティフナ30との溶接部分Wに応力が集中することを確実に抑制することができる。
【0044】
また、平壁部35は、その右端部の前側の部分及び右端部の後側の部分が中間部39Cよりも右側に各々張り出した前張り出し部39F及び後張り出し部39Rを有することが好ましい。これにより、内取付部50の右端部の溶接部分Wを囲ってその部分の剛性をより高めて、トーションビーム10と左スティフナ30との溶接部分Wに印加されるべき力を分散させることができる。
【0045】
左スティフナ30は、更に、外取付部40及び内取付部50を連絡する中間連絡部60を備える。かかる中間連絡部60は、外取付部40から内取付部50に向かうにつれて徐々に上昇しながら幅方向に延在する斜行部である。中間連絡部60がこのような斜行部の態様をとることにより、トーションビーム10の幅方向における縦断面形状の急激な形状変化が抑制され得て、トーションビーム10の形状が変化した部分における応力集中を緩和することができる。
【0046】
また、トーションビーム10の強度や曲げ剛性を向上すると共に、トーションビーム10と左トレーリングアーム20との接合強度を向上する観点からは、トーションビーム10と左スティフナ30とが協働して閉断面部Sを画成し、その画成される閉断面部Sが、中間連絡部60を挟んで外取付部40と内取付部50との間で延在するように設定されていてもよい。
【0047】
また、左スティフナ30においては、前フランジ32及び後フランジ33が、各々対応するトーションビーム10における前縦壁部11の内壁面及び後縦壁部12の内壁面に当接した態様でこれらに対応してアーク溶接等で溶接されていてもよい。
【0048】
左スプリングシート80は、典型的には、プレス成形等により成形された鋼板等の金属板から成る板部材であって、トーションビーム10及び左トレーリングアーム20にアーク溶接等で溶接されると共に、スプリングの下端部を支持するものである。
【0049】
ダンパブラケット90は、典型的には、プレス成形等により成形された鋼板等の金属板から成る板部材であって、左トレーリングアーム20及び左スプリングシート80にアーク溶接等で溶接されると共に、ダンパの下端部を支持するものである。
【0050】
以上の構成を有するトーションビーム式サスペンション1においては、車体に装着される部位として車体取付部B1が設定されると共に、各種の外力印加部品の装着用の取付け部として、車輪側部材を取り付ける車輪側取付部W1、スプリングを取付けるスプリング取付部S1及びダンパを取り付けるダンパ取付部D1が設定されている。
【0051】
詳しくは、車体取付部B1は、左トレーリングアーム20の前端部に設けられたカラー部材100に対応して配置されている。かかる車体取付け部B1においては、左トレーリングアーム20の前端部が、カラー部材100に圧入された図示を省略するブッシュ部材を介して、図示を省略する典型的にはボルト等の締結部材で締結されることにより、車体に装着される。
【0052】
車輪側取付部W1は、左トレーリングアーム20の後端部に設けられた車輪支持部材110に対応して配置されている。かかる車輪側取付部W1においては、いずれも図示を省略する典型的にはベアリング部材が、図示を省略するボルト等の締結部材で車輪支持部材110に締結されることにより装着される。
【0053】
スプリング取付部S1は、左スプリングシート80の底壁部に対応して配置されている。かかるスプリング取付部S1においては、図示を省略するスプリングが、左スプリングシート80の底壁部の上面部に載置されることにより装着される。なお、スプリングの擦れ音等の低減のために、底壁部に円盤状の弾性部材を載置して、その上にスプリングを載置してもよい。
【0054】
ダンパ取付部D1は、ダンパブラケット90の左側壁部及び左スプリングシート80の右側壁部に対応して配置されている。かかるダンパ取付部D1においては、図示を省略するダンパの下端部が、かかる左側壁部及び右側壁部の各々に設けられた貫通孔を介して、図示を省略する典型的にはボルト等の締結部材で締結されることにより装着される。
【0055】
なお、以上の各種の車輪支持部材、ナット部材は、典型的には鋼材等の金属製である。
【0056】
次に、本実施形態におけるトーションビーム式サスペンション1の変形例につき、更に
図6及び
図7をも参照して、詳細に説明する。
【0057】
図6及び
図7に示すように、本変形例におけるトーションビーム式サスペンション1’においては、前述したトーションビーム式サスペンション1に対して、プラグ溶接孔が設けられる部材が変更されていることが主たる相違点であり、残余の構成は原理的に同様である。以下、かかる相違点に着目しながら、左スティフナ30及びその関連する構成を例に挙げて、本変形例の構成につき代表的に説明をする。
【0058】
具体的には、本変形例におけるトーションビーム式サスペンション1’では、トーションビーム10の上壁部13に設けられた座部14を穿孔してプラグ溶接孔17が設けられ、左スティフナ30における内取付部50の底壁部31の右端部が座部14に当接して溶接される溶接部分Wは、プラグ溶接孔17に配される。プラグ溶接孔17が座部14に設けられることにより、一般的には車両の上方側で周辺部品に囲われた部位に溶接部分Wを設定することができ、車両走行時のチッピング等の異物が溶接部分に接触する事態の発生を抑制することができる。また、かかるプラグ溶接孔17は、内取付部50の底壁部31に設けられるプラグ溶接孔34のものと同様な形状等を呈する構成を有する。
【0059】
また、内取付部50は、その一部がプラグ溶接孔17から遠ざかるように内部領域Iに向かって陥設された陥設部37を有することが好ましい。これにより、その陥設部37に排水孔として機能し得る貫通孔38を設定することを許容しながら、内取付部50の剛性を高めて、トーションビーム10と補強部材との溶接の確実性を向上することができる。また、かかる陥設部37は、座部14に設けられる陥設部15のものと同様な形状等を呈する構成を有する。
【0060】
以上の変形例を含む本実施形態のトーションビーム式サスペンション1、1’によれば、トーションビーム10の上壁部13に設けられた座部14に対応して、左スティフナ30の内取付部50における底壁部31の右端部が座部14に当接して溶接される溶接部分Wが設定される。かかる座部14がトーションビーム10の内部領域Iから遠ざかる突出方向(上方向)に上壁部13が突設された部分であることにより、トーションビーム10と左トレーリングアーム20とを左スティフナ30で連結する場合に、座部14を含めた上壁部13の剛性を高めて、トーションビーム10と左スティフナ30との結合部分である溶接部分Wに印加されるべき力を分散させることにより、トーションビーム10と左トレーリングアーム20との接合強度及びトーションビーム10の曲げ剛性を確保し、トーションビーム10と左スティフナ30との溶接部分Wに応力が集中することを抑制した態様で、トーションビーム10の捩り特性を自由度高く設定することができる。
【0061】
また、変形例を含む本実施形態のトーションビーム式サスペンション1、1’によれば、溶接部分Wは、左スティフナ30の内取付部50における底壁部31の右端部を穿孔して座部14に対応するように設けられたプラグ溶接孔34又はトーションビーム10の上壁部13に設けられた座部14を穿孔してプラグ溶接孔17に配される。プラグ溶接孔34が底壁部31に設けられる場合には、溶接部分Wに印加されるべき力を確実に分散させることに加えて、一般的には下方に向いた左スティフナ30の側に溶接部分Wを設定することができ、ダストや水分等が溶接部分W上に溜まる事態の発生を抑制することができる。また、プラグ溶接孔17が座部14に設けられる場合には、溶接部分Wに印加されるべき力を確実に分散させることに加えて、一般的には車両の上方側で周辺部品に囲われた部位に溶接部分Wを設定することができ、車両走行時のチッピング等の異物が溶接部分に接触する事態の発生を抑制することができる。
【0062】
なお、本発明は、部材の種類、形状、配置、個数等は前述の実施形態に限定されるものではなく、その構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上のように、本発明においては、トーションビームとトレーリングアームとを補強部材で連結する場合に、トーションビームとトレーリングアームとの接合強度及びトーションビームの曲げ剛性を確保し、トーションビームと補強部材との結合部分に応力が集中することを抑制した態様で、トーションビームの捩り特性を自由度高く設定することができるトーションビーム式サスペンションを提供することができるものであるため、その汎用普遍的な性格から広範に車両等の移動体のトーションビーム式サスペンションの分野に適用され得るものと期待される。
【符号の説明】
【0064】
1、1’…トーションビーム式サスペンション
10…トーションビーム
11…前縦壁部
12…後縦壁部
13…上壁部
14…座部
15…陥設部
16…貫通孔
17…プラグ溶接孔
20、120…トレーリングアーム
30、130…スティフナ
31…底壁部
32…前フランジ
33…後フランジ
34…プラグ溶接孔
34a、34b…円弧
34c、34d…接続線
35…平壁部
36…傾斜部
37…陥設部
38…貫通孔
39C…中間部
39F…前張り出し部
39R…後張り出し部
40…外取付部
50…内取付部
60…中間連絡部
80、180…スプリングシート
90、190…ダンパブラケット
100…カラー部材
110…車輪支持部材
W…溶接部分
I…内部領域
S…閉断面部
B1…車体取付部
D1…ダンパ取付部
W1…車輪側取付部
S1…スプリング取付部