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特許7170612異方性導電フィルムの製造方法及び異方性導電フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】異方性導電フィルムの製造方法及び異方性導電フィルム
(51)【国際特許分類】
   H01R 11/01 20060101AFI20221107BHJP
   H01B 5/16 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
H01R11/01 501C
H01B5/16
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019168643
(22)【出願日】2019-09-17
(62)【分割の表示】P 2018086166の分割
【原出願日】2013-08-23
(65)【公開番号】P2020074267
(43)【公開日】2020-05-14
【審査請求日】2019-09-17
【審判番号】
【審判請求日】2021-08-17
(31)【優先権主張番号】P 2012184886
(32)【優先日】2012-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】弁理士法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠原 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 恭志
【合議体】
【審判長】小川 恭司
【審判官】平瀬 知明
【審判官】尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-286457(JP,A)
【文献】国際公開第2007/125993(WO,A1)
【文献】特開2011-71108(JP,A)
【文献】特開2011-70931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 11/01
H01B 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主として絶縁性樹脂からなる第1接続層と第2接続層とが積層された異方性導電フィルムであって、
第1接続層中に導電粒子が一定の間隔をあけて存在しており、
第2接続層とは反対側の第1接続層の表面に、主として絶縁性樹脂からなる第3接続層が積層されており、第1接続層と第2接続層と第3接続層とは、互いに同様な絶縁性樹脂から形成されており、
隣接する導電粒子の間の中央領域の第3接続層厚が、導電粒子近傍の第3接続層厚よりも厚くなっており、
導電粒子が、第3接続層側に第1接続層から突出し食い込んでおり、
第3接続層側に第1接続層から突出している導電粒子とは別の導電粒子が異方性導電接続用導電粒子として第3接続層に存在している異方性導電フィルム。
【請求項2】
第1接続層における導電粒子近傍の絶縁性樹脂が、異方性導電フィルムの平面方向に対し傾斜している請求項1記載の異方性導電フィルム。
【請求項3】
第1接続層中に導電粒子が配列している請求項1又は2記載の異方性導電フィルム。
【請求項4】
第1接続層中に導電粒子が50~40000個/mm2の個数密度で存在している請求項1~3のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項5】
第1接続層が光重合性樹脂を含む請求項1~4のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の異方性導電フィルムで第1電子部品を第2電子部品に異方性導電接続してなる接続構造体。
【請求項7】
請求項1~5のいずれかに記載の異方性導電フィルムで第1電子部品を第2電子部品に異方性導電接続する、接続構造体の製造方法。
【請求項8】
請求項1~5のいずれかに記載の異方性導電フィルムで第1電子部品を第2電子部品に異方性導電接続する接続方法であって、
第2電子部品に対し、異方性導電フィルムをその第1接続層の起伏を有している側から仮貼りし、仮貼りされた異方性導電フィルムに対し、第1電子部品を搭載し、第1電子部品側から熱圧着する接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方性導電フィルムの製造方法及び異方性導電フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ICチップなどの電子部品の実装に異方性導電フィルムは広く使用されており、近年では、高密度実装への適用の観点から、接続信頼性や絶縁性の向上、粒子捕捉効率の向上、製造コストの低減等を目的に、異方性導電接続用の導電粒子を単層で絶縁性接着層に配列させた異方性導電フィルムが提案されている(特許文献1)。
【0003】
この異方性導電フィルムは、以下のように作成されている。即ち、まず、開口を有する転写型の当該開口に導電粒子を保持させ、その上から転写用の粘着層が形成された粘着フィルムを押し当て、粘着層に導電粒子を一次転写させる。次に、粘着層に付着した導電粒子に対し、異方性導電フィルムの構成要素となる高分子膜を押し当て、加熱加圧することにより導電粒子を高分子膜表面に二次転写させる。次に、導電粒子が二次転写された高分子膜の導電粒子側表面に、導電粒子を覆うように接着層を形成することにより異方性導電フィルムが作成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特願2010-33793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、開口を有する転写型を用いて作成した特許文献1の異方性導電フィルムの場合、一次転写並びに二次転写が順調に推移する限り、異方性導電フィルムの接続信頼性、絶縁性、粒子捕捉効率についてはある程度の向上が期待可能かもしれないが、一般的には、二次転写し易くするために、一次転写用の粘着フィルムとして比較的粘着力が低いものを使用し、しかも導電粒子と粘着フィルムとの接触面積を小さくしている。このため、一次転写操作~二次転写操作の際に、一次転写しない導電粒子の発生、一次転写した後に粘着フィルムからの導電粒子の剥落や粘着フィルム上での導電粒子の位置ズレ等が生じ、全体の作業効率が低下するということが懸念されている。
【0006】
他方、一次転写作業を更に高速且つ円滑に進行させるために、粘着フィルムの粘着力をある程度強くして導電粒子を粘着フィルムに安定的に保持しようとすると、高分子膜への二次転写が困難になり、それを避けるために高分子膜の膜性を強くすると、異方性導電フィルムの導通抵抗が増大し、導通信頼性も低下するという問題があった。このように、開口を有する転写型を用いて異方性導電フィルムを作成しようとしても、実際のところ、一次転写並びに二次転写が順調に推移するとは限らず、そのため、異方性導電フィルムに対しては、良好な接続信頼性、良好な絶縁性、及び良好な粒子捕捉効率を同時に実現することが依然として強く求められているのが現状である。
【0007】
本発明の目的は、以上の従来の技術の問題点を解決することであり、開口を有する転写型を利用して導電粒子が単層で配列された異方性導電フィルムを製造する際に、良好な接続信頼性、良好な絶縁性、及び良好な粒子捕捉効率を示す異方性導電フィルムを製造できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、開口を有する転写型を用いて異方性導電フィルムを作成する際に、転写型として光透過性のものを使用し、また、導電粒子を一旦粘着フィルムに一次転写させることなく、異方性導電フィルムを構成する絶縁性樹脂層に転写型から直接単層で配列するように転写させ、しかも、隣接する導電粒子間の中央領域の絶縁性樹脂層厚が、導電粒子近傍の絶縁性樹脂層厚よりも薄くなるように転写させ、更に、光透過性の転写型を介して紫外線照射することにより、導電粒子を保持する絶縁性樹脂を光硬化させ、加えて、導電粒子が単層で配列しているその絶縁性樹脂層の両面を、接着層として機能する絶縁性の樹脂層で挟持することにより、上述の目的が達成されることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、本発明は、第1接続層が、主として絶縁性樹脂からなる第2接続層と第3接続層とに挟持された3層構造の異方性導電フィルムの製造方法であって、以下の工程(A)~(F)を有する製造方法を提供する。
【0010】
<工程(A)>
開口が形成された光透過性の転写型の開口内に導電粒子を配置し、開口が形成された転写型の表面に、剥離フィルム上に形成された光重合性絶縁性樹脂層を対向させる工程。
【0011】
<工程(B)>
剥離フィルム側から光重合性絶縁性樹脂層に対して圧力をかけ、開口内に光重合性絶縁性樹脂を押し込んで光重合性絶縁性樹脂層の表面に導電粒子を転着させ、それにより、光重合性絶縁性樹脂層の平面方向に導電粒子が単層で配列された構造であって、隣接する導電粒子間の中央領域の光重合性絶縁性樹脂層厚が、導電粒子近傍の光重合性絶縁性樹脂層厚よりも薄くなっている構造の第1接続層を形成する工程。
【0012】
<工程(C)>
光透過性の転写型側から、第1接続層に対して紫外線を照射する工程。
【0013】
<工程(D)>
剥離フィルムを第1接続層から除去する工程。
【0014】
<工程(E)>
光透過性の転写型と反対側の第1接続層の表面に主として絶縁性樹脂からなる第2接続層を形成する工程。
【0015】
<工程(F)>
第2接続層と反対側の第1接続層の表面に、主として絶縁性樹脂からなる第3接続層を形成する工程。
【0016】
また、本発明は、上述の製造方法で得られた異方性導電フィルムで第1電子部品を第2電子部品に異方性導電接続する接続方法であって、
第2電子部品に対し、異方性導電フィルムをその第3接続層側から仮貼りし、仮貼りされた異方性導電フィルムに対し、第1電子部品を搭載し、第1電子部品側から熱圧着する接続方法、及びこの接続方法により得られる異方性導電接続構造体を提供する。
【0017】
更に、本発明は、第1接続層が、主として絶縁性樹脂からなる第2接続層と第3接続層とに挟持された3層構造の異方性導電フィルムであって、
第1接続層と第3接続層の境界が起伏しており、
第1接続層が、絶縁性樹脂層の第3接続層側の平面方向に導電粒子が単層で配列された構造を有し、隣接する導電粒子間の中央領域の絶縁性樹脂層厚が、導電粒子近傍の絶縁性樹脂層厚よりも薄くなっている異方性導電フィルムを提供する。
【0018】
この異方性導電フィルムとしては、第1接続層が、アクリレート化合物と熱又は光ラジカル重合開始剤とを含む熱又は光ラジカル重合型樹脂層又はそれを熱又は光ラジカル重合させたもの、またはエポキシ化合物と熱又は光カチオン若しくはアニオン重合開始剤とを含む熱又は光カチオン若しくはアニオン重合型樹脂層又はそれを熱又は光カチオン重合若しくはアニオン重合させた態様が好ましい。また、導電粒子が、第3接続層に食い込んでいる態様が好ましい。更に、第1接続層において、導電粒子と第1接続層の第2接続層側表面との間に位置する領域の第1接続層の硬化率が、互いに隣接する導電粒子間に位置する領域の第1接続層の硬化率よりも低い態様が好ましい。加えて、第1接続層の最低溶融粘度が、第2接続層及び第3接続層のそれぞれの最低溶融粘度よりも高い態様が好ましい。また、第1接続層の最低溶融粘度の、第2接続層及び第3接続層のそれぞれの最低溶融粘度に対する比が1:4~400である態様が好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、第1接続層が絶縁性の第2接続層と第3接続層とに挟持された3層構造の異方性導電フィルムの製造方法である。この製造方法においては、開口を有する転写型を用いて異方性導電フィルムを作成する際に、導電粒子を一旦粘着フィルムに一次転写させることなく、異方性導電フィルムを構成する第1接続層となる光重合性絶縁性樹脂層に転写型から直接単層で配列するように転写させる。しかも、隣接する導電粒子間の中央の光重合性絶縁性樹脂層厚が、導電粒子近傍の光重合性絶縁性樹脂層厚よりも薄くなるように(換言すれば、導電粒子を第1接続層から突起させるように)転写させる。この突起を、ICチップ等の電子部品が搭載される配線基板など側に配置される第3接続層側に配置すれば、粒子捕捉効率を向上させることが可能となる。また、光透過性の転写型を介して紫外線照射することにより、導電粒子を保持している第1接続層となる光重合性絶縁性樹脂層を転写型に保持したまま光硬化させることができ、紫外線が導電粒子で遮られた光重合性絶縁性樹脂層部分の硬化率を相対的に小さくすることができる。これにより、導電粒子の平面方向への過度の移動を防止しつつ、押し込み性を向上させ、良好な接続信頼性、良好な絶縁性、及び良好な粒子捕捉効率を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A図1Aは、本発明の異方性導電フィルム製造方法の工程(A)の説明図である。
図1B図1Bは、本発明の異方性導電フィルム製造方法の工程(A)の説明図である。
図2A図2Aは、本発明の異方性導電フィルム製造方法の工程(B)の説明図である。
図2B図2Bは、本発明の異方性導電フィルム製造方法の工程(B)の説明図である。
図3図3は、本発明の異方性導電フィルム製造方法の工程(C)の説明図である。
図4図4は、本発明の異方性導電フィルム製造方法の工程(D)の説明図である。
図5図5は、本発明の異方性導電フィルム製造方法の工程(E)の説明図である。
図6図6は、本発明の異方性導電フィルム製造方法の工程(F)により得られた、本発明の異方性導電フィルムの断面図である。
図7図7は、本発明の製造方法により得られた異方性導電フィルムの部分断面図である。
図8図8は、本発明の異方性導電フィルムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<<異方性導電フィルムの製造方法>>
以下、本発明の異方性導電フィルムの製造方法を工程毎に詳細に説明する。
【0022】
次に、本発明の異方性導電フィルムの製造方法の一例を説明する。この製造方法は、以下の工程(A)~(F)を有する。以下工程毎に説明する。
【0023】
<工程(A)>
図1Aに示すように、開口21が形成された光透過性の転写型20の開口21内に導電粒子4を配置し、図1Bに示すように、開口21が形成された転写型20の表面に、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム等の剥離フィルム22上に形成された光重合性絶縁性樹脂層10を対向させる。
【0024】
なお、転写型20の光透過性とは、紫外線を透過させる性質を意味する。透過のレベルとしては特に制限はないが、光重合を迅速に進行させる観点から、分光光度計により測定した際の紫外線透過率(測定波長365nm;光路長1.0cm)が70%以上であることが好ましい。
【0025】
転写型20としては、例えば、紫外線透過性のガラスなどの透明無機材料やポリメタクリレート等の有機材料に対し、フォトリソグラフ法等の公知の開口形成方法によって開口を形成したものである。このような転写型20は、板状、ロール状等の形状をとることができる。
【0026】
転写型20の開口21は、その内部に導電粒子を収容するものである。開口21の形状としては、円柱状、四角柱等の多角柱状、四角錐等の角錐状等を例示することができる。
【0027】
開口21の配列としては、格子状、千鳥状等の規則的な配列とすることが好ましい。
【0028】
開口21の深さに対する導電粒子4の平均粒径の比(=導電粒子の平均粒径/開口の深さ)は、転写性向上と導電粒子保持性とのバランスから、好ましくは0.4~3.0、より好ましくは0.5~1.5である。
【0029】
また、導電粒子4の平均粒径に対する開口21の径の比(=開口の径/導電粒子の平均粒径)は、導電粒子の収容のしやすさ、絶縁性樹脂の押し込みやすさ等のバランスから、好ましくは1.1~2.0、より好ましくは1.3~1.8である。
【0030】
なお、転写型20の開口21の径と深さは、レーザー顕微鏡で測定することができる。
【0031】
転写型20の開口21内に導電粒子4を収容する手法としては、特に限定されるものではなく、公知の手法を採用することができる。例えば、乾燥した導電粒子粉末またはこれを溶媒中に分散させた分散液を転写型20の開口形成面上に散布または塗布した後、ブラシやブレードなどを用いて開口形成面の表面をワイプすればよい。
【0032】
<工程(B)>
次に、図2Aに示すように、剥離フィルム22側から光重合性絶縁性樹脂層10に対して圧力をかけ、開口21内に光重合性絶縁性樹脂を押し込んで光重合性絶縁性樹脂層10の表面に導電粒子4を埋め込むように転着させる。これにより、図2Bに示すように、光重合性絶縁性樹脂層10の平面方向に導電粒子4が単層で配列された構造であって、隣接する導電粒子4間の中央領域の光重合性絶縁性樹脂層厚t1が、導電粒子4の近傍の光重合性絶縁性樹脂層厚t2よりも薄くなっている第1接続層1を形成する。
【0033】
ここで、隣接する導電粒子4間の中央領域の光重合性絶縁性樹脂層厚t1を、導電粒子4近傍の光重合性絶縁性樹脂層厚t2に対して、薄くしすぎると異方性導電接続の際に導電粒子4が移動しすぎる傾向があり、厚すぎると押し込み性が低下する傾向があり、いずれも粒子捕捉効率が低下することが懸念されるので、好ましくは0.2~0.8、より好ましくは0.3~0.7とする。
【0034】
また、光重合性絶縁性樹脂層厚t1の絶対厚としては、薄すぎると第1接続層1を形成し難くなることが懸念されるので、好ましくは0.5μm以上である。厚すぎると絶縁性樹脂層が異方性導電接続の際に接続領域から排除され難くなって導通不良が生ずることが懸念されるので、好ましくは6μm以下である。
【0035】
また、隣接する導電粒子4間の中央領域とは、隣接する導電粒子間距離の中間点を含み、光重合性絶縁性樹脂層10の中で厚みが薄く形成されている領域であり、また、導電粒子4の近傍とは、第1接続層1の層厚方向で導電粒子4に接する線分付近の位置を意味する。
【0036】
このような数値範囲に調整する方法としては、開口径、開口深さ、導電粒子径、開口間隔、圧力値、光重合性絶縁性樹脂の組成等を調整することにより行うことができる。
【0037】
なお、図8に示すように、導電粒子を含む樹脂層の厚みが平面方向で大きく変動し、その結果、当該樹脂層が分断されるように存在している場合には、導電粒子4間の絶縁性樹脂層厚が実質的に0となってもよい。実質的に0とは導電粒子を含む絶縁性樹脂層が個々に独立して存在している状態を意味する。このような場合、良好な接続信頼性、良好な絶縁性、及び良好な粒子捕捉効率を実現するためには、導電粒子4の中心を通る垂線と絶縁性樹脂層厚が最も薄い位置との最短距離L1、L2、L3、L4・・を制御することで好ましく行うことができる。即ち、この最短距離L1、L2、L3、L4・・・が長くなると、第1接続層1の樹脂量が相対的に増大し、生産性が向上し、導電粒子4の流動を抑制できる。他方、この最短距離L1、L2、L3、L4・・・が短くなると、第1接続層1の樹脂量が相対的に減少し、粒子間距離を容易に制御することができる。換言すれば、導電粒子の位置合わせの精度を向上させることができる。好ましい最短距離L1、L2、L3、L4・・・は、導電粒子4の粒子径の好ましくは0.5倍より大きく1.5倍未満の範囲である。
【0038】
導電粒子4間の絶縁性樹脂層厚を実質的に0とする手法としては、発明の効果を損なわない範囲で、種々の手法を採用することができる。例えば、工程(B)で形成した光重合性絶縁性樹脂層10の表面を、スキージ等を用いて転写型20の表面まで掻き取る手法を採用することができる。
【0039】
また、図8に示すように、導電粒子4が第1接続層1に埋没していてもよい。浅く埋没するか深く埋没するかという埋没の程度は、第1接続層の形成時の材料の粘度や、導電粒子を配列した転写型の開口の形状、大きさ等によって変化するが、特に、開口の基底径と開口径との関係で制御することができる。例えば、基底径は導電粒子径の1.1倍以上2倍未満とし、開口径を導電粒子径の1.3倍以上3倍未満とすることが好ましい。
【0040】
なお、本発明の効果を損なわない範囲で、図8において点線で示すように、導電粒子4′が第3接続層3に存在していてもよい。通常、全導電粒子数に対する第3接続層3に存在する導電粒子数の割合は、好ましくは1~50%、より好ましくは5~40%である。特に、第1接続層1中の導電粒子4の数と、第3接続層3の導電粒子4′の数とがほぼ同一になると、隣接する粒子は互いに異なる樹脂層に存在するため、複数の導電粒子の連結が抑制されながら且つ局所的に高い導電粒子密度を実現できるという効果が期待できる。このため、本発明は、平面に配列した粒子に関し、任意の導電粒子に隣接する導電粒子が前記任意の導電粒子とは異なる層に存在して配列している態様も包含する。
【0041】
なお、第3接続層3に導電粒子4′が存在するようになるのは、転写型の開口の内部に収容された導電粒子以外に、転写型の表面に導電粒子が存在したまま第1接続層の形成操作、およびそれに続く第3接続層3の形成操作を行った場合である。このように開口部以外の転写型表面などに導電粒子が一定以上に存在することは、実用上避けることが困難であるため、これが製品性能を損なうほどの悪影響を及ぼさないのであれば、結果として不良品の発生を低下させ、歩留まりの向上に寄与する。
【0042】
<工程(C)>
次に、図3に示すように、光透過性の転写型20側から、第1接続層1に対し、紫外線を照射する。これにより、第1接続層1を構成する光重合性絶縁性樹脂10を重合硬化させて導電粒子4を第1接続層1に安定的に保持させることができ、しかも、導電粒子4で紫外線が遮られていた導電粒子4の下方領域1Xの光重合性絶縁性樹脂の硬化率を、その周囲の領域1Yの硬化率に比べ相対的に低くすることができ、異方性導電接続の際の導電粒子4の押し込み性を向上させることができる。こうすることにより、異方性導電接続の際に、導電粒子の位置ズレを防止しつつ(換言すれば、粒子捕捉効率を向上させつつ)、導電粒子の押し込み性を向上させ、導通抵抗値を低下させ、良好な導通信頼性を実現する
ことができる。
【0043】
なお、紫外線照射条件としては、公知の条件の中から適宜選択することができる。
【0044】
ここで、硬化率は重合に寄与する官能基(例えばビニル基)の減少比率として定義される数値である。具体的には、硬化後のビニル基の存在量が硬化前の20%であれば、硬化率は80%となる。ビニル基の存在量の測定は、赤外吸収スペクトルのビニル基の特性吸収分析により行うことができる。
【0045】
このように定義される、領域1Xの硬化率は好ましくは40~80%であり、他方、領域1Yの硬化率は好ましくは70~100%である。
【0046】
また、レオメーターで測定した、第1接続層1の最低溶融粘度は、第2接続層2及び第3接続層3のそれぞれの最低溶融粘度よりも高いことが好ましい。具体的には[第1接続層1の最低溶融粘度(mPa・s)]/[第2接続層2又は第3接続層3の最低溶融粘度(mPa・s)]の数値が、低すぎると粒子捕捉効率が低下し、ショート発生の確率が上昇する傾向があり、高すぎると導通信頼性が低下する傾向があるので、好ましくは1~1000、より好ましくは4~400である。なお、それぞれの好ましい最低溶融粘度は、前者については、低すぎると粒子捕捉効率が低下する傾向があり、高すぎると導通抵抗値が大きくなる傾向があるので、好ましくは100~100000mPa・s、より好ましくは500~50000mPa・sである。後者については、低すぎるとリールにした際に樹脂のはみ出しが生ずる傾向があり、高すぎると導通抵抗値が高くなる傾向があるので、好ましくは0.1~10000mPa・s、より好ましくは1~1000mPa・sで
ある。
【0047】
<工程(D)>
次に、図4に示すように、剥離フィルム22を第1接続層1から除去する。除去の手法には特に制限はない。
【0048】
<工程(E)>
続いて、図5に示すように、光透過性の転写型20と反対側の第1接続層1の表面に主として絶縁性樹脂からなる第2接続層2を形成する。
【0049】
第2接続層2は、第1接続層1の導電粒子4が突出していない側の表面に位置するものであり、通常、ICチップのバンプ等の高い位置精度でアライメントが必要な端子側に配される層である。第1接続層1における導電粒子4と第2接続層2との間の硬化率の低い領域1Xは、硬化率がそれ以外の領域1Yよりも低いので、異方性導電接続の際に排除され易い一方、導電粒子が硬化率の高い領域1Yで囲まれているので意図しない移動が起き難くなっている。従って、導電粒子の位置ズレを防止しつつ(換言すれば、粒子捕捉効率を向上させつつ)、導電粒子の押し込み性を向上させ、導通抵抗値を低下させ、良好な導通信頼性を実現することができる。
【0050】
第2接続層2の層厚は、薄すぎると樹脂充填不足による導通不良が生ずることが懸念され、厚すぎると圧着時に樹脂のはみ出しが生じ、圧着装置を汚染することが懸念されるので、好ましくは5~20μm、より好ましくは8~15μmである。
【0051】
<工程(F)>
次に、図6に示すように、第2接続層2と反対側の第1接続層1の表面(導電粒子が突出している面)に、主として絶縁性樹脂からなる第3接続層3を形成することにより異方性導電フィルム100が得られる。これにより、第1接続層と第3接続層の境界が起伏した状態、換言すればその形状が波型ないしは凹凸型となる。このように、フィルム内に存在する層に起伏のある形状を適用することで、接合時の主にバンプに対しての接触面積を増加させる確率を高めることができ、その結果、接着強度の向上が期待できる。また、このように起伏が存在することによって、上述した第3接続層3に粒子が存在する状態が得られやすくなる。第1接続層1の起伏が隆起していない部分に存在する粒子が、第3接続層3を設ける過程でそちらに移動するからである。
【0052】
第3接続層3は、通常、配線基板のベタ電極などの相対的に高いアライメント精度が要求されない端子側に配されるものである。この第3接続層3は、第1接続層1の導電粒子4の突出している側に配置されている。従って、異方性導電接続の際に、第1接続層1の導電粒子4は、配線基板等の電極にすぐに突き当たり変形するので、異方性導電接続の際の絶縁性樹脂が流動しても、意図しない位置へ移動し難い。従って、導電粒子の位置ズレを防止しつつ(換言すれば、粒子捕捉効率を向上させつつ)、導電粒子の押し込み性を向上させ、導通抵抗値を低下させ、良好な導通信頼性を実現することができる。
【0053】
第3接続層3の層厚は、薄すぎると第2電子部品に仮貼りする際の貼付け不良が生ずることが懸念され、厚すぎると導通抵抗値が大きくなる傾向があるので、好ましくは0.5~6μm、より好ましくは1~5μmである。
【0054】
<<第1、2及び3接続層並びに導電粒子の構成素材>>
本発明の製造方法により得られた図6に示す異方性導電フィルム100は、既に説明したように、第1接続層1が、主として絶縁性樹脂からなる第2接続層2と第3接続層3とに挟持された3層構造を有する。この第1接続層1は、異方性導電フィルム100の製造の際に使用した転写型の開口パターンに応じて、光重合性絶縁性樹脂層10の第3接続層3側に突出するように平面方向に導電粒子4が単層で配列されている構造を有する。この場合、導電粒子が平面方向に一定の間隔をあけて規則的に配列されている均等の状態で配列されていることが好ましい。また、隣接する導電粒子4間の中央領域の光重合性絶縁性樹脂層厚t1が、導電粒子4の近傍の光重合性絶縁性樹脂層厚t2よりも薄くなっている構造を有する。このため、接続すべき端子間に存在せずに利用されなかった導電粒子4は、図7に示すような挙動を示す。即ち、異方性導電接続の際の加熱加圧により、導電粒子4間の相対的に薄い絶縁性樹脂層は、溶断して導電粒子4を被覆して被覆層1dを形成する。よって、ショートの発生が大きく抑制される。
【0055】
<第1接続層>
このような第1接続層1を構成する光重合性絶縁性樹脂層10としては、公知の絶縁性樹脂層を適宜採用することができる。例えば、アクリレート化合物と熱又は光ラジカル重合開始剤とを含む熱又は光ラジカル重合型樹脂層又はそれを熱又は光ラジカル重合させたもの、またはエポキシ化合物と熱又は光カチオン若しくはアニオン重合開始剤とを含む熱又は光カチオン若しくはアニオン重合型樹脂層又はそれを熱又は光カチオン重合若しくはアニオン重合させたものを採用することができる。
【0056】
中でも、第1接続層1を構成する光重合性絶縁性樹脂層10として、アクリレート化合物と熱ラジカル重合開始剤とを含む熱ラジカル重合型樹脂層を採用してもよいが、アクリレート化合物と光ラジカル重合開始剤とを含む光ラジカル重合型樹脂層を採用することが好ましい。これにより、光ラジカル重合型樹脂層に紫外線を照射して光ラジカル重合させて第1接続層1を形成することができる。
【0057】
<アクリレート化合物>
第1接続層1を構成する光重合性絶縁性樹脂層10に使用するアクリレート化合物としては、従来公知のラジカル重合性アクリレートを使用することができる。例えば、単官能(メタ)アクリレート(ここで、(メタ)アクリレートにはアクリレートとメタクリレートとが包含される)、二官能以上の多官能(メタ)アクリレートを使用することができる。本発明においては、接着剤を熱硬化性とするために、アクリル系モノマーの少なくとも一部に多官能(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。
【0058】
単官能(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-メチルブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、2-メチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ブチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、モルホリン-4-イル(メタ)アクリレート等が挙げられる。二官能(メタ)アクリレートとしては、ビスフェノールF―EO変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA-EO変性ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエン(メタ)アクリレート等が挙げられる。三官能(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO変性(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。四官能以上の(メタ)アクリレートとしては、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等が挙げられる。その他に、多官能ウレタン(メタ)アクリレートも使用することができる。具体的には、M1100、M1200、M1210、M1600(以上、東亞合成(株))、AH-600、AT-600(以上、共栄社化学(株))等が挙げられる。
【0059】
第1接続層1を構成する光重合性絶縁性樹脂層10におけるアクリレート化合物の含有量は、少なすぎると第2接続層2との最低溶融粘度差をつけにくくなる傾向があり、多すぎると硬化収縮が大きくなって作業性が低下する傾向があるので、好ましくは2~70質量%、より好ましくは10~50質量%である。
【0060】
<光ラジカル重合開始剤>
光ラジカル重合開始剤としては、公知の光ラジカル重合開始剤の中から適宜選択して使用することができる。たとえは、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンジルケタール系光重合開始剤、リン系光重合開始剤等が挙げられる。具体的には、アセトフェノン系光重合開始剤として、2-ヒドロキシ-2-シクロへキシルアセトフェノン(イルガキュア(IRGACURE)184、BASFジャパン社製)、α-ヒドロキシ-α,α′-ジメチルアセトフェノン(ダロキュア(DAROCUR)1173、BASFジャパン社製)、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(イルガキュア(IRGACURE)651、BASFジャパン社製)、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン(ダロキュア(DAROCUR)2959、BASFジャパン社製)、2-ヒドロキシ-1-{4-[2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル]-ベンジル}フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(イルガキュア(IRGACURE)127、BASFジャパン社製)等が挙げられる。ベンジルケタール系光重合開始剤として、ベンゾフェノン、フルオレノン、ジベンゾスベロン、4-アミノベンゾフェノン、4,4′-ジアミノベンゾフェノン、4-ヒドロキシベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4′-ジクロロベンゾフェノン等が挙げられる。また、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1(イルガキュア(IRGACURE)369、BASFジャパン社製)も使用することができる。リン系光重合開始剤として、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(イルガキュア(IRGACURE)819、BASFジャパン社製
)、(2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド(ダロキュア(DAROCUR)TPO、BASFジャパン社製)等が挙げられる。
【0061】
光ラジカル重合開始剤の使用量は、アクリレート化合物100質量部に対し、少なすぎると、光ラジカル重合が十分に進行しない傾向があり、多すぎると剛性低下の原因となることが懸念されるので、好ましくは0.1~25質量部、より好ましくは0.5~15質量部である。
【0062】
<熱ラジカル重合開始剤>
また、熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物やアゾ系化合物等が挙げられるが、気泡の原因となる窒素を発生しない有機過酸化物を好ましく使用することができる。
【0063】
有機過酸化物としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(tert-ヘキシルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(tert-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、イソブチルパーオキサイド、過酸化ラウロイル、琥珀酸パーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、オクタノイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカルボネート、ジノルマルプロピルパーオキシジカルボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカルボネート、ジ-2-エトキシエチルパーオキシジカルボネート、ジ-2-メトキシブチルパーオキシジカルボネート、ビス-(4-tert-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカルボネート、(α,α-ビス-ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、パーオキシネオデカン酸クミルエステル、パーオキシネオデカン酸オクチルエステル、パーオキシネオデカン酸ヘキシルエステル、パーオキシネオデカン酸-tert-ブチルエステル、パーオキシピバリン酸-tert-ヘキシルエステル、パーオキシピバリン酸-tert-ブチルエステル、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、パーオキシ-2-エチルヘキサン酸-tert-ヘキシルエステル、パーオキシ-2-エチルヘキサン酸-tert-ブチルエステル、パーオキシ-2-エチルヘキサン酸-tert-ブチルエステル、パーオキシ-3-メチルプロピオン酸-tert-ブチルエステル、パーオキシラウリン酸-tert-ブチルエステル、tert-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、tert-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカルボネート、tert-ブチルパーオキシイソプロピルカルボネート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、過酢酸-tert-ブチルエステル、過安息香酸-tert-ヘキシルエステル、過安息香酸-tert-ブチルエステルなどが挙げられる。有機過酸物に還元剤を添加し、レドックス系重合開始剤として使用してもよい。
【0064】
アゾ系化合物としては、1,1-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2′-アゾビス(2-メチル-ブチロニトリル)、2,2′-アゾビスブチロニトリル、2,2′-アゾビス(2,4-ジメチル-バレロニトリル)、2,2′-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、2,2′-アゾビス(2-アミジノ-プロパン)塩酸塩、2,2′-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]塩酸塩、2,2′-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]塩酸塩、2,2′-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2′-アゾビス[2-メチル-N-(1,1-ビス(2-ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2′-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2′-アゾビス(2-メチル-プロピオンアミド)二水塩、4,4′-アゾビス(4-シアノ-吉草酸)、2,2′-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2′-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチルエステル(ジメチル2,2′-アゾビス(2-メチルプロピオネート))、シアノ-2-プロピルアゾホルムアミドなどが挙げられる。
【0065】
熱ラジカル重合開始剤の使用量は、少なすぎると硬化不良となり、多すぎると製品ライフの低下となるので、アクリレート化合物100質量部に対し、好ましくは2~60質量部、より好ましくは5~40質量部である。
【0066】
<エポキシ化合物>
また、第1接続層1を構成する光重合性絶縁性樹脂層10を、エポキシ化合物と熱又は光カチオン若しくはアニオン重合開始剤とを含有する熱又は光カチオン若しくはアニオン重合型樹脂層、又はそれらを熱又は光ラジカル重合させたものから構成してもよい。
【0067】
第1接続層1を構成する光重合性絶縁性樹脂層10に、エポキシ化合物と熱カチオン重合開始剤とを含有する熱カチオン重合型樹脂を含有させる場合、エポキシ化合物としては、分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物もしくは樹脂が好ましく挙げられる。これらは液状であっても、固体状であってもよい。具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ヘキサヒドロビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールA、ジアリルビスフェノールA、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、クレゾール、テトラブロモビスフェノールA、トリヒドロキシビフェニル、ベンゾフェノン、ビスレゾルシノール、ビスフェノールヘキサフルオロアセトン、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン、ビキシレノール、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどの多価フェノールとエピクロルヒドリンとを反応させて得られるグリシジルエーテル、またはグリセリン、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、チレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの脂肪族多価アルコールとエピクロルヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエーテル;p-オキシ安息香酸、β-オキシナフトエ酸のようなヒドロキシカルボン酸とエピクロルヒドリンとを反応させて得られるグリシジルエーテルエステル、あるいはフタル酸、メチルフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラハイドロフタル酸、ヘキサハイドロフタル酸、エンドメチレンテトラハイドロフタル酸、エンドメチレンヘキサハイドロフタル酸、トリメリット酸、重合脂肪酸のようなポリカルボン酸から得られるポリグリシジルエステル;アミノフェノール、アミノアルキルフェノールから得られるグリシジルアミノグリシジルエーテル;アミノ安息香酸から得られるグリシジルアミノグリシジルエステル;アニリン、トルイジン、トリブロムアニリン、キシリレンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、ビスアミノメチルシクロヘキサン、4,4′-ジアミノジフェニルメタン、4,4′-ジアミノジフェニルスルホンなどから得られるグリシジルアミン;エポキシ化ポリオレフィン等の公知のエポキシ樹脂類が挙げられる。また、3、4-エポキシシクロヘキセニルメチル-3′,4′-エポキシシクロヘキセンカルボキシレート等の脂環式エポキシ化合物も使用することができる。
【0068】
<熱カチオン重合開始剤>
熱カチオン重合開始剤としては、エポキシ化合物の熱カチオン重合開始剤として公知のものを採用することができ、例えば、熱により、カチオン重合型化合物をカチオン重合させ得る酸を発生するものであり、公知のヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、フェロセン類等を用いることができ、温度に対して良好な潜在性を示す芳香族スルホニウム塩を好ましく使用することができる。熱カチオン系重合開始剤の好ましい例としては、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロボレート、トリフェニルスルフォニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルフォニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルフォニウムヘキサフルオロボレートが挙げられる。具体的には、(株)ADEKA製のSP-150、SP-170、CP-66、CP-77;日本曹達(株)製のCI-2855、CI-2639;三新化学工業(株)製のサンエイドSI-60、SI-80;ユニオンカーバイド社製のCYRACURE-UVI-6990、UVI-6974等が挙げられる。
【0069】
熱カチオン重合開始剤の配合量は、少なすぎると熱カチオン重合が十分に進行しない傾向があり、多すぎると剛性低下の原因となることが懸念されるので、エポキシ化合物100質量部に対し、好ましくは0.1~25質量部、より好ましくは0.5~15質量部である。
【0070】
<熱アニオン重合開始剤>
熱アニオン重合開始剤としては、エポキシ化合物の熱アニオン重合開始剤として公知のものを採用することができ、例えば、熱により、アニオン重合性化合物をアニオン重合させ得る塩基を発生するものであり、公知の脂肪族アミン系化合物、芳香族アミン系化合物、二級又は三級アミン系化合物、イミダゾール系化合物、ポリメルカプタン系化合物、三フッ化ホウ素-アミン錯体、ジシアンジアミド、有機酸ヒドラジッド等を用いることができ、温度に対して良好な潜在性を示すカプセル化イミダゾール系化合物を好ましく使用することができる。具体的には、旭化成イーマテリアルズ(株)製ノバキュアHX3941HP等が挙げられる。
【0071】
熱アニオン重合開始剤の配合量は、少なすぎても硬化不良となる傾向があり、多すぎても製品ライフが低下する傾向があるので、エポキシ化合物100質量部に対し、好ましくは2~60質量部、より好ましくは5~40質量部である。
【0072】
<光カチオン重合開始剤及び光アニオン重合開始剤>
エポキシ化合物用の光カチオン重合開始剤又は光アニオン重合開始剤としては、公知のものを適宜使用することができる。
【0073】
<導電粒子>
第1接続層1を構成する導電粒子4としては、従来公知の異方性導電フィルムに用いられているものの中から適宜選択して使用することができる。例えばニッケル、コバルト、銀、銅、金、パラジウムなどの金属粒子、金属被覆樹脂粒子などが挙げられる。2種以上を併用することもできる。
【0074】
導電粒子4の平均粒径としては、小さすぎると配線高さのばらつきに対応できず、導通抵抗が上昇する傾向があり、大きすぎるとショートの発生原因となる傾向があるので、好ましくは1~10μm、より好ましくは2~6μmである。平均粒径は、一般的な粒度分布測定装置により測定することができる。
【0075】
このような導電粒子4の第1接続層1中の存在量は、少なすぎると粒子捕捉効率が低下して異方性導電接続が難しくなり、多すぎるとショートの発生が懸念されるので、好ましくは1平方mm当たり50~40000個、より好ましくは200~20000個である。
【0076】
<第1接続層におけるその他の成分>
第1接続層1には、必要に応じて、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂などの膜形成樹脂を併用することができる。
【0077】
第1接続層1を構成する光重合性絶縁性樹脂層10は、アクリレート化合物と光ラジカル重合開始剤からなる光ラジカル重合型樹脂層を光ラジカル重合させたものである場合、光重合性絶縁性樹脂層10に、更にエポキシ化合物と熱カチオン重合開始剤とを含有させることが好ましい。この場合、後述するように、第2接続層2並びに第3接続層3もエポキシ化合物と熱カチオン重合開始剤とを含有する熱カチオン重合型樹脂層とすることが好ましい。これにより、層間剥離強度を向上させることができる。
【0078】
第1接続層1においては、図6に示すように、導電粒子4は、第3接続層3に食い込んでいる(換言すれば、導電粒子4が第1接続層1の表面に露出している)ことが好ましい。導電粒子がすべて第1接続層1に埋没していると、絶縁性樹脂層の排除不足により導通信頼性が低下することが懸念されるからである。食い込みの程度は、小さすぎると粒子捕捉効率が低下する傾向があり、大きすぎると導通抵抗が上昇する傾向があるので、好ましくは導電粒子の平均粒子径の10~90%、より好ましくは20~80%である。
【0079】
<第2接続層及び第3接続層>
第2接続層2及び第3接続層3は、いずれも主として絶縁性樹脂から形成されるものである。絶縁性樹脂としては、公知の絶縁性樹脂の中から、適宜選択して使用することができる。第1接続層1の光重合性絶縁性樹脂層10と同様な材質から形成することができる。
【0080】
第3接続層3は、第1接続層1の導電粒子4側に位置するものであり、通常、ICチップのバンプ等の高い位置精度でアライメントが必要な端子側に配される層である。他方、第2接続層2は、通常、ガラス基板のベタ電極などの相対的に高いアライメント精度が要求されない端子側に配されるものである。
【0081】
第3接続層3の層厚は、薄すぎると樹脂充填不足による導通不良が生ずることが懸念され、厚すぎると圧着時に樹脂のはみ出しが生じ、圧着装置を汚染することが懸念されるので、好ましくは5~20μm、より好ましくは8~15μmである。他方、第2接続層2の層厚は、薄すぎると第2電子部品に仮貼りする際の貼付け不良が生ずることが懸念され、厚すぎると導通抵抗値が大きくなる傾向があるので、好ましくは0.5~6μm、より好ましくは1~5μmである。
【0082】
<<異方性導電フィルムの用途>>
このようにして得られた異方性導電フィルムは、ICチップ、ICモジュールなどの第1電子部品と、フレキシブル基板、ガラス基板などの第2電子部品とを熱又は光により異方性導電接続する際に好ましく適用することができる。このようにして得られる接続構造体も本発明の一部である。この場合、配線基板などの第2電子部品に対し、異方性導電フィルムをその第2接続層側から仮貼りし、仮貼りされた異方性導電フィルムに対し、ICチップなどの第1電子部品を搭載し、第1電子部品側から熱圧着することが、接続信頼性を高める点から好ましい。光により接続する場合は、熱圧着と併用させてもよい。
【実施例
【0083】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0084】
実施例1~6
表1に示す配合組成に従い、アクリレート及び光ラジカル重合開始剤等を酢酸エチル又はトルエンにて固形分が50質量%となるように混合液を調製した。この混合液を、厚さ50μmの剥離処理ポリエチレンテレフタレートフィルム(剥離PETフィルム)に、乾燥厚が5μmとなるように塗布し、80℃のオーブン中で5分間乾燥することにより、第1接続層となる光ラジカル重合型の絶縁性樹脂層を形成した。
【0085】
次に、直径5.5μmで深さ4.5μmの円柱状の開口が縦横9μmピッチで設けられているガラス製の紫外線透過性転写型を用意し、各開口に平均粒径4μmの導電粒子(Ni/Auメッキ樹脂粒子、AUL704、積水化学工業(株))を一つずつ収容した。この転写型の開口形成面に対し、第1接続層用の絶縁性樹脂層を対向させ、剥離フィルム側から、60℃で0.5MPaという条件で加圧することにより導電粒子を絶縁性樹脂層に押し込んだ。これにより、隣接する導電粒子間の中央領域の光重合性絶縁性樹脂層厚t1(図2B参照)が、導電粒子近傍の光重合性絶縁性樹脂層厚t2(図2B参照)よりも薄くなっている絶縁性樹脂層を形成した。表1に、電子顕微鏡を使用し、隣接する導電粒子間の中央領域の光重合性絶縁性樹脂層厚t1、並びに導電粒子近傍の光重合性絶縁性樹脂層厚t2とを測定した結果を示す。また、t1のt2に対する割合[t1/t2]を算出した結果も併せて示す。
【0086】
次に、この紫外線透過性転写型側から光ラジカル重合型の絶縁性樹脂層に対し、波長365nm、積算光量4000mJ/cm2の紫外線を照射することにより、表面に導電粒子が固定された第1接続層を形成した。
【0087】
次に、第1接続層に貼り付いている剥離PETフィルムを引きはがし、第1接続層を露出させた。
【0088】
次に、熱硬化性樹脂及び潜在性硬化剤等を酢酸エチル又はトルエンにて固形分が50質量%となるように混合液を調製した。この混合液を、厚さ50μmの剥離PETフィルムに、乾燥厚が12μmとなるように塗布し、80℃のオーブン中で5分間乾燥することにより、第2接続層を形成した。同様の操作により乾燥厚3μmの第3接続層を形成した。
【0089】
このようにして得られた第1接続層の露出面に、剥離PETフィルムに形成された第2接続層を、60℃で0.5MPaという条件でラミネートし、転写型から積層体を取り外した。取り外された積層体の第1接続層の導電粒子突出面に、第3接続層を同様にラミネートすることにより異方性導電フィルムを得た。
【0090】
比較例1
実施例1と同様に第1接続層の前駆層である光ラジカル重合型の絶縁性樹脂層を形成した。
【0091】
次に、直径5.5μmで深さ4.5μmの円柱状の開口が縦横9μmピッチで設けられているガラス製の紫外線透過性の転写型を用意し、各開口に平均粒径4μmの導電粒子(Ni/Auメッキ樹脂粒子、AUL704、積水化学工業(株))を一つずつ収容した。この転写型の開口形成面に対し、第1接続層用の絶縁性樹脂層を対向させ、剥離フィルム側から、40℃で0.1MPaという相対的に弱い条件で加圧することにより導電粒子を絶縁性樹脂層表面に転写した。導電粒子が転写されたこのフィルムを取り出し、導電粒子を絶縁性樹脂層中に、樹脂層の表面が平坦となるように完全に押し込んだ。
【0092】
次に、この紫外線透過性転写型側から導電粒子が埋め込まれた光ラジカル重合型の絶縁性樹脂層に対し、波長365nm、積算光量4000mJ/cm2の紫外線を照射することにより平坦な第1接続層を形成した。
【0093】
次に、第1接続層に貼り付いている剥離PETフィルムを引きはがし、第1接続層を露出させた。
【0094】
この第1接続層に対し、実施例1と同様に作成した3μm厚の第3接続層と12μm厚の第2接続層とをラミネートすることにより異方性導電フィルムを得た。
【0095】
比較例2
表1の第1接続層用の樹脂組成物に実施例1で使用したものと同じ導電粒子を均一に分散した混合物から、厚さ6μmの導電粒子含有樹脂フィルムを作成した。この導電粒子含有樹脂フィルム中の導電粒子の存在量は、1平方mm当たり20000個であった。このフィルムに対し、実施例1と同様に作成した厚さ12μmの第2接続層を、60℃で0.5MPaという条件で貼り付けることにより2層構造の異方性導電フィルムを作成した。
【0096】
<評価>
得られた異方性導電フィルムにおける導電粒子間の平面方向均等配列について、平面均等配列が形成されている場合にはその適用があり(有)とし、それ以外を適用なし(無)とする。また、導電粒子近傍の絶縁性樹脂層厚について、導電粒子間の中間領域の絶縁性樹脂層厚(層厚0も含む)よりも大きい場合には、導電粒子近傍の絶縁性樹脂層厚の増大があり(有)とし、それ以外の場合をなし(無)とした。その結果を表1に示す。なお、異方性導電フィルムの構成層数も併せて示す。
【0097】
得られた異方性導電フィルムを用いて、0.5×1.8×20.0mmの大きさのICチップ(バンプサイズ30×85μm:バンプ高さ15μm、バンプピッチ50μm)を、0.5×50×30mmの大きさのコーニング社製のガラス配線基板(1737F)に180℃、80MPa、5秒という条件で実装して接続構造サンプル体を得た。この接続構造サンプル体の接続部の断面を電子顕微鏡で観察したところ、図7に示したように、導電粒子の周囲に絶縁性樹脂層が存在していることが確認できた。
【0098】
得られた接続構造サンプル体について、以下に説明するように、「最低溶融粘度」、「粒子捕捉効率」、「導通信頼性」及び「絶縁性」を試験評価した。得られた結果を表1に示す。
【0099】
「最低溶融粘度」
接続構造サンプル体を構成する第1接続層及び第2接続層のそれぞれの最低溶融粘度を、回転式レオメータ(TA Instruments社)を用い、昇温速度10℃/分;測定圧力5g一定;使用測定プレート直径8mmという条件で測定した。
【0100】
「粒子捕捉効率」
“加熱・加圧前の接続構造サンプル体のバンプ上に存在する理論粒子量”に対する“加熱・加圧後(実際の実装後)の接続構造サンプル体のバンプ上で実際に捕捉されている粒子量”の割合を以下の数式に従って求めた。実用上、40%以上であることが望ましい。
【0101】
【数1】
【0102】
「導通信頼性」
接続構造サンプル体を、85℃、85%RHの高温高湿環境下に放置し、初期と500時間経過後の導通抵抗値を測定した。実用上、500時間経過後でも抵抗値10Ω以下であることが望ましい。
【0103】
「絶縁性」
7.5μmスペースの櫛歯TEGパターンのショート発生率を求めた。実用上、100ppm以下であることが望ましい。
【0104】
【表1】
【0105】
表1から分かるように、実施例1~6の異方性導電フィルムについては、粒子捕捉効率、導通信頼性、絶縁性の各評価項目についてはいずれも実用上好ましい結果を示した。なお、実施例1~4の結果から、第1、第2、第3接続層がいずれも同じ硬化系であると、それらの層同士が反応するので、導電粒子の押し込み性が若干低下して導通抵抗値が上昇する傾向があることがわかる。また、第1接続層がカチオン重合系であると、ラジカル重合系よりも耐熱性が改善されるので、やはり導電粒子の押し込み性が若干低下して導通抵抗値が上昇する傾向があることがわかる。
【0106】
それに対し、比較例1の異方性導電フィルムについては、第1接続層において、隣接する導電粒子間の中央領域の絶縁性樹脂層厚が、導電粒子近傍の絶縁性樹脂層厚よりも薄くなっていないので、導通抵抗性能が大きく低下してしまった。従来の2層構造の比較例2の異方性導電フィルムについては、粒子捕捉効率が大きく低下し、絶縁性にも問題があった。
【0107】
実施例7~8
表2に示すように第1接続層を形成する際に、剥離フィルム側からの加圧条件を調整することにより、隣接する導電粒子間の中央領域の光重合性絶縁性樹脂層厚t1(図2B参照)を、導電粒子近傍の光重合性絶縁性樹脂層厚t2(図2B参照)に対して表2の割合[t1/t2]となるようにすること以外、実施例1と同様に異方性導電フィルムを製造した。
【0108】
<評価>
得られた異方性導電フィルムにおける導電粒子間の平面方向均等配列について、実施例1と同様に評価した。得られた結果を表2に示す。なお、異方性導電フィルムの構成層数も併せて示す。
【0109】
得られた異方性導電フィルムを用いて、実施例1と同様に接続構造サンプル体を得た。この接続構造サンプル体の接続部の断面を電子顕微鏡で観察したところ、図7に示したように、導電粒子の周囲に絶縁性樹脂層が存在していることが確認できた。
【0110】
得られた接続構造サンプル体について、以下に説明するように、実施例1と同様に「最低溶融粘度」、「粒子捕捉効率」、及び「絶縁性」を試験評価した。なお、「導通信頼性」については、以下に説明するように試験評価した。得られた結果を表2に示す。
【0111】
「導通信頼性」
接続構造サンプル体を、85℃、85%RHの高温高湿環境下に放置し、100時間間隔で取り出して導通抵抗の上昇を確認した。導通抵抗が50Ωを超えた時間を不良発生時間とした。実用上、1000時間以上であることが望ましい。
【0112】
【表2】
【0113】
表2の結果からわかるように、隣接する導電粒子間の中央領域の光重合性絶縁性樹脂層厚t1を、導電粒子近傍の光重合性絶縁性樹脂層厚t2(図2B参照)に対する割合[t1/t2]を0.2~0.8とすることにより、導通信頼性、絶縁性、粒子捕捉効率のいずれの項目についても良好な結果が得られた。また、[t1/t2]の数値が小さくなるにつれ特に絶縁性が向上する傾向があった。
【0114】
実施例9~20
表3に示すように第1接続層を形成する際に、剥離フィルム側からの加圧条件を調整することにより、隣接する導電粒子間の中央領域の光重合性絶縁性樹脂層厚t1(図2B参照)を、導電粒子近傍の光重合性絶縁性樹脂層厚t2(図2B参照)に対して表2の割合[t1/t2]となるように、必要に応じて第1接続層形成後に、公知のワイプ手段、例えばスキージなどを用いて、第1接続層の表面をワイプすること以外、実施例1と同様に異方性導電フィルムを製造した。
【0115】
<評価>
得られた異方性導電フィルムにおける導電粒子間の平面方向均等配列について、平面均等配列が形成されている場合にはその適用があり(有)とし、それ以外を適用なし(無)とする。また、導電粒子近傍の絶縁性樹脂層厚について、導電粒子間の中間領域の絶縁性樹脂層厚(層厚0も含む)よりも大きい場合には、導電粒子近傍の絶縁性樹脂層厚の増大があり(有)とし、それ以外の場合をなし(無)とした。その結果を表1又は表2に示す。なお、異方性導電フィルムの構成層数も併せて示す。
【0116】
なお、実施例9~20については、全導電粒子中の第3接続層に存在する導電粒子の割合を光学顕微鏡で用いて200μm×200μmの面積を計測し、得られた結果を表3に示した。第3接続層に存在する導電粒子の割合による影響を確認した。割合の数値が0の場合が、第1接続層のみに導電粒子が存在する場合であり、割合の数値が1の場合が、第3接続層3のみに導電粒子が存在する場合である。
【0117】
得られた異方性導電フィルムを用いて、実施例1と同様に接続構造サンプル体を得た。この接続構造サンプル体の接続部の断面を電子顕微鏡で観察したところ、図7に示したように、導電粒子の周囲に絶縁性樹脂層が存在していることが確認できた。
【0118】
得られた接続構造サンプル体について、以下に説明するように、実施例1と同様に「最低溶融粘度」、「粒子捕捉効率」、及び「絶縁性」を試験評価した。なお、「導通信頼性」については、以下に説明するように試験評価した。得られた結果を表3に示す。
【0119】
「導通信頼性」
接続構造サンプル体を、85℃、85%RHの高温高湿環境下に放置し、100時間間隔で取り出して導通抵抗の上昇を確認した。導通抵抗が50Ωを超えた時間を不良発生時間とした。実用上、1000時間以上であることが望ましい。
【0120】
【表3】
【0121】
表3の結果からわかるように、隣接する導電粒子間の中央領域の光重合性絶縁性樹脂層厚t1を、導電粒子近傍の光重合性絶縁性樹脂層厚t2(図2B参照)に対する割合[t1/t2]を0.2~0.8とすることにより、導通信頼性、絶縁性、粒子捕捉効率のいずれの項目についても良好な結果が得られた。また、[t1/t2]の数値が小さくなるにつれ特に絶縁性が向上する傾向があった。
【0122】
光重合性絶縁性樹脂層厚t1を0にした場合(実施例9、13、17)でも、光重合性絶縁性樹脂層厚t2の厚みを比較的厚く、好ましくは導電粒子径の等倍より大きく、3倍未満、より好ましくは1.25~2.2倍に設定しておくと、導通信頼性、絶縁性、粒子捕捉効率のいずれの項目についても良好な結果が得られた。なお、光重合性絶縁性樹脂層厚t2の厚みを厚くすると、全導電粒子中の第3接続層に存在する導電粒子の割合が増大する傾向にあることがわかる。全導電粒子の過半数が第3接続層側に存在しても、異方性導電フィルムの性能としては特に問題はないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0123】
第1接続層が絶縁性の第2接続層と第3接続層とに挟持された3層構造の本発明の異方性導電フィルムは、第1接続層が、絶縁性樹脂層の第3接続層側の平面方向に導電粒子が単層で配列された構造を有し、隣接する導電粒子間の中央の絶縁性樹脂層厚が、導電粒子近傍の絶縁性樹脂層厚よりも薄くなっている構造を有する。このため、導電粒子が単層で配列された異方性導電フィルムにおいて、良好な接続信頼性、良好な絶縁性、及び良好な粒子捕捉効率を実現できる。よって、ICチップなどの電子部品の配線基板への異方性導電接続に有用である。
【符号の説明】
【0124】
1 第1接続層
1X 第1接続層における硬化率の低い領域
1Y 第1接続層における硬化率の高い領域
2 第2接続層
3 第3接続層
4 導電粒子
10 光重合性絶縁性樹脂層
20 光透過性の転写型
21 開口
22 剥離フィルム
100 異方性導電フィルム
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8