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特許7170630電解槽と結合された水素化物タンクを含む水の高温可逆電解用システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】電解槽と結合された水素化物タンクを含む水の高温可逆電解用システム
(51)【国際特許分類】
   C25B 15/02 20210101AFI20221107BHJP
   C25B 1/042 20210101ALI20221107BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20221107BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20221107BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20221107BHJP
   H01M 8/04007 20160101ALI20221107BHJP
   H01M 8/2432 20160101ALI20221107BHJP
   H01M 8/065 20160101ALI20221107BHJP
   H01M 8/0656 20160101ALI20221107BHJP
   C01B 3/56 20060101ALI20221107BHJP
   C01B 3/06 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
C25B15/02
C25B1/042
C25B9/00 A
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
H01M8/00 Z
H01M8/04007
H01M8/2432
H01M8/065
H01M8/0656
C01B3/56 Z
C01B3/06
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2019515352
(86)(22)【出願日】2017-09-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-05
(86)【国際出願番号】 FR2017052478
(87)【国際公開番号】W WO2018051041
(87)【国際公開日】2018-03-22
【審査請求日】2020-09-09
(31)【優先権主張番号】1658750
(32)【優先日】2016-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン・ラクロワ
(72)【発明者】
【氏名】アルバン・シェーズ
(72)【発明者】
【氏名】ジュリー・クレン
(72)【発明者】
【氏名】マガリ・レティエ
(72)【発明者】
【氏名】ギレム・ルー
【審査官】萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0081859(US,A1)
【文献】特表2012-501525(JP,A)
【文献】特開2014-095118(JP,A)
【文献】特開2010-232165(JP,A)
【文献】特開2016-098387(JP,A)
【文献】特表2016-522166(JP,A)
【文献】特開2010-262808(JP,A)
【文献】特開2015-115306(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0224193(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105576273(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00-15/08
H01M 8/00-8/2495
C01B 3/00-3/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
-水素の生成、故に電気の貯蔵のために固体酸化物電解槽(SOEC)モードで、及び/又は、水素の消費、故に電気の引出しのために固体酸化物形燃料電池(SOFC)モードに従って作動するように構成された、高温可逆電解槽(11)を形成する装置であって、前記高温可逆電解槽(11)は、2~15barの圧力下で作動するように構成されている、装置と、
-前記高温可逆電解槽(11)と熱的に結合され、前記高温可逆電解槽(11)の固体酸化物電解槽(SOEC)モードでは水素化物の形態で水素を貯蔵し、及び/又は、前記高温可逆電解槽(11)の固体酸化物形燃料電池(SOFC)モードでは水素を放出するように構成された水素化物タンク(12)と、
を含むことを特徴とする、水の高温可逆電解用システム(10)であって、
前記高温可逆電解槽(11)が固体酸化物電解槽(SOEC)モードで作動するように構成されている場合には、前記高温可逆電解槽(11)に入ることが意図された加圧蒸気を生成するために水素の吸収中に前記水素化物タンク(12)によって放出された熱の回収を可能にするように、また、前記高温可逆電解槽(11)が固体酸化物形燃料電池(SOFC)モードで作動するように構成されている場合には、前記水素化物タンク(12)からの水素の脱着を可能にするために前記高温可逆電解槽(11)を出る流れによって放出された熱の回収を可能にするように構成され
前記高温可逆電解槽(11)は、固体酸化物電解槽(SOEC)モードで作動するように構成されており、前記高温可逆電解用システムは、そして、
-蒸気発生器(18)であって、水素の吸収中に前記水素化物タンク(12)によって放出され、また、熱伝達流体(FC)によって前記蒸気発生器(18)に供給される熱を用いて、前記高温可逆電解槽(11)用の蒸気を生成することを目的とする、蒸気発生器(18)
を含み、
前記高温可逆電解用システムは、前記高温可逆電解槽(11)を出る水素(H )及び酸素(O )の流れを用いて、前記高温可逆電解用システム(10)の入口における水(H tоtal )を予熱し、かつ前記高温可逆電解槽(11)に入る蒸気を過熱することを可能にする、前記蒸気発生器(18)の上流及び下流の熱交換器(16、17、20、21)をそれぞれ含む、システム(10)。
【請求項2】
前記高温可逆電解槽(11)は、カソード(2.1、2.2)、アノード(4.2)、及び前記カソードと前記アノードとの間に挿入された電解質(3.2)によってそれぞれ形成された基本固体酸化物電気化学セル(C1、C2)と、2つの隣接する基本セル間にそれぞれ配置された複数の電気的及び流体的相互接続体(5)と、のスタックを含むことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記システムはまた、
-前記高温可逆電解槽(11)内の未反応蒸気と前記高温可逆電解槽(11)によって生成された水素(H)とを受け取り、未反応水(Hrecоv)を凝縮させて前記システム(10)内で再利用できるようにするように意図された、相分離器(13)に結合された凝縮器(23)
を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記システムはまた、
-前記システム(10)の入口における水(Htоtal)を2~15barの圧力に圧縮するように意図された圧縮ポンプ(14)
を含むことを特徴とする、請求項の何れか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記システムはまた、
-蒸気のさらなる過熱を提供する、前記高温可逆電解槽(11)の上流における電気加熱要素(22)
を含むことを特徴とする、請求項の何れか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記システムはまた、
-前記水素化物タンク(12)の上流及び相分離器(13)の下流における、前記水素化物タンク(12)に貯蔵する前に水素(H)に含まれる湿気を除去することを可能にするように意図された乾燥機(24)
を含むことを特徴とする、請求項の何れか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記高温可逆電解槽(11)は、加圧固体酸化物形燃料電池(SOFC)モードで作動するように構成されており、前記システム(10)は、そして、
-前記高温可逆電解槽(11)を出る少なくとも1つの流れを用いて前記高温可逆電解槽(11)に入る少なくとも1つの流れを予熱するように意図された、少なくとも1つの熱交換器(30、38、47、90)
を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項8】
前記高温可逆電解槽(11)は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)モードで作動するように構成されており、前記システム(10)は、そして、
-少なくとも1つの熱伝達流体(FC)を用いて前記高温可逆電解槽(11)を出る少なくとも1つの流れから来る高温熱を回収するように意図された、少なくとも1つの熱交換器(31、39、49、91)
を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の、又は請求項に記載のシステム。
【請求項9】
前記高温可逆電解槽(11)は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)モードで作動するように構成されており、前記システム(10)は、水素回路と一次空気回路とからなる「圧縮空気再循環システム」であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項10】
前記高温可逆電解槽(11)は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)モードで作動するように構成されており、前記システム(10)は、「三流」相互接続体(5)を使用する、水素回路と、一次空気回路と、冷却回路とからなる「三流システム」であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項11】
前記水素回路は、
-2~15barの圧力範囲にわたって、前記水素化物タンク(12)から来る水素と前記高温可逆電解槽(11)内の未消費水素(H2residuel)の全リサイクルとを混合するための手段(M1)と、
-前記高温可逆電解槽(11)を出る水素流(H)を用いて前記高温可逆電解槽(11)に入る水素流(H2tоtal)を予熱するように意図された熱交換器(30)と、
-少なくとも1つの熱伝達流体(FC)を用いて前記高温可逆電解槽(11)を出る水素流(H)から高温熱を回収するように意図された、熱回収要素を形成する熱交換器(31)と、
を含むことを特徴とする、請求項又は10に記載のシステム。
【請求項12】
前記システムはまた、相分離器(34)を出る水素流(H)によって熱回収要素を形成する熱交換器(31)を出る水素流(H)を冷却し、生成された水の回収を可能にするように意図された熱交換器(33)を含むことを特徴とする、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記一次空気回路は、
-前記高温可逆電解槽(11)を出る空気流を用いて前記高温可逆電解槽(11)に入る空気流を予熱するように意図された熱交換器(38)と、
-少なくとも1つの熱伝達流体(FC)を用いて前記高温可逆電解槽(11)を出る空気流から来る高温熱を回収するように意図された、熱回収要素を形成する熱交換器(39)と、
を含むことを特徴とする、請求項に記載のシステム。
【請求項14】
前記システムはまた、前記熱回収要素を形成する熱交換器(39)を出る空気流と補足酸素(FO2)とを混合するための手段であって、前記高温可逆電解槽(11)に入る全空気流を形成する、混合手段(M1)を含むことを特徴とする、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記システムはまた、
-混合手段(M1)によって混合された全空気流を冷却することを可能にする、熱交換器(40)及び冷却装置(41)と、
-予熱のために前記熱交換器(40)に注入する前に前記冷却装置(41)を出る空気を圧縮することを可能にする圧縮ポンプ(42)と、
を含むことを特徴とする、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記一次空気回路は、
-前記高温可逆電解槽(11)を出る空気流を用いて前記高温可逆電解槽(11)に入る空気流を予熱するように意図された熱交換器(47)と、
-少なくとも1つの熱伝達流体(FC)を用いて前記高温可逆電解槽(11)を出る空気流から来る熱を回収するように意図された、熱回収要素を形成する熱交換器(49)と、
を含むことを特徴とする、請求項10に記載のシステム。
【請求項17】
前記冷却回路は、
-前記高温可逆電解槽(11)を出る熱流(Fhоt)を用いて前記高温可逆電解槽(11)に入る流れ(Fincоming)を予熱するように意図された熱交換器(90)と、
-少なくとも1つの熱伝達流体(FC)を用いて前記高温可逆電解槽(11)を出る熱流(Fhоt)から来る熱を回収するように意図された、熱回収要素を形成する熱交換器(91)と、
-前記熱交換器(91)を出る熱流(Fhоt)を冷却するように意図された、熱交換器(92)及び冷却装置(93)と、
-前記熱交換器(92)を出る熱流(Fhоt)を冷却するために、前記熱交換器(92)及び過冷却装置(93)を出る流れを圧縮して圧縮流体流(Fcompressed)を形成するように意図された、圧縮ポンプ(94)と、
を含むことを特徴とする、請求項10に記載のシステム。
【請求項18】
水の高温可逆電解による電気の貯蔵及び/又は電気の引出しのための方法であって、請求項1~17の何れか1項に記載の水の高温可逆電解用システム(10)を用いて実施され、
-前記高温可逆電解槽(11)が固体酸化物電解槽(SOEC)モードである場合に、前記高温可逆電解槽(11)に入るように意図された加圧蒸気を生成するために水素の吸収中に前記水素化物タンク(12)によって放出された熱を回収するステップと、
-前記高温可逆電解槽(11)が固体酸化物形燃料電池(SOFC)モードで作動するように構成されている場合に、前記水素化物タンク(12)からの水素の脱着を可能にするために前記高温可逆電解槽(11)を出る流れによって放出された熱を回収するステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項19】
電気貯蔵モードに従って実施され、前記高温可逆電解槽(11)は、固体酸化物電解槽(SOEC)モードで作動するように構成されており、水素を生成することで電気を貯蔵するために蒸気の高温電解反応を行うステップを含むことを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1~4の何れか1項に記載の水の高温可逆電解用システム(10)を用いて実施され、以下の一連のステップ:
-注入水(HO)と相分離器(13)からの再循環水(Hrecоv)とを含む前記システム(10)の全水(Htоtal)を圧縮ポンプ(14)内に導入し、2~15barの圧力にするステップと、
-前記高温可逆電解槽(11)を出る水素(H)及び酸素(O)の流れを用いて、前記システム(10)の入口における水(Htоtal)の予熱を可能にするために、熱交換器(16、17)を通して前記システム(10)の全水(Htоtal)を循環させるステップと、
-前記システム(10)の入口における水(Htоtal)を蒸気発生器(18)内に導入し、水素の吸収中に前記水素化物タンク(12)によって放出され、また、熱伝達流体(FC)によって前記蒸気発生器(18)に供給される熱を用いて前記高温可逆電解槽(11)用の加圧蒸気を生成するステップと、
-前記高温可逆電解槽(11)を出る水素(H)及び酸素(O)の流れを用いて、前記高温可逆電解槽(11)に入る前に蒸気の過熱を可能にするために熱交換器(20、21)を通して蒸気を循環させるステップと、
-電気加熱要素を使用することによって前記高温可逆電解槽(11)の作動温度に到達するように蒸気を追加で過熱するステップと、
-水素(H)及び酸素(O)の流れを生成するために前記高温可逆電解槽(11)に加圧蒸気を導入するステップと、
-熱交換器(16、17、20、21)を用いて水素(H)及び酸素(O)の流れを冷却するステップと、
-前記相分離器(13)内で未反応の加圧蒸気を凝縮させて、前記システム(10)内に再導入される再循環水(Hrecоv)を生成するステップと、
-生成及び乾燥された水素(H)を前記水素化物タンク(12)内に貯蔵するステップと、
を含むことを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
電気引出しモードに従って実施され、前記高温可逆電解槽(11)は固体酸化物形燃料電池(SOFC)に従って作動するように構成されており、水素を引き出すことで電気を生成するために蒸気の高温電解の逆反応を生じさせるステップを含むことを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
請求項を引用する、請求項1115の何れか1項に記載の水の高温可逆電解用システム(10)を用いて実施され、以下の一連のステップ:
・水素(H)回路用:
-混合手段(M1)を用いて、前記水素化物タンク(12)から来る水素と前記高温可逆電解槽(11)内の未消費水素(H2residuel)の全リサイクルとを混合するステップ、
-熱交換器(30)を通して全水素(H2tоtal)を注入し、前記高温可逆電解槽(11)を出る水素流(H)によってそれを予熱することを可能にするステップ、
-全水素(H2tоtal)を前記高温可逆電解槽(11)内に、その消費と、水、電気、及び熱の生成とのために注入するステップ、
-予熱熱交換器(30)によって、前記高温可逆電解槽(11)を出る水素流を冷却するステップ、
-熱伝達流体(FC)との交換により熱の回収を可能にする、熱回収要素を形成する熱交換器(31)によって、前記予熱熱交換器(30)を出る水素流を冷却するステップ、
-相分離器(34)から来る、生成された水流から水素流(H2residuel)を分離するステップ、
-水頭損失の値に対してのみそれを再圧縮することによって、未消費水素を再循環させるステップ、
・一次空気回路用:
-前記高温可逆電解槽(11)に入る圧縮空気によって冷却されるように、冷却熱交換器(38)を通して前記高温可逆電解槽(11)を出る空気を注入するステップ、
-熱伝達流体(FC)が通過する熱回収要素を形成する熱交換器(39)を通して、前記冷却熱交換器(38)を出る空気を注入するステップ、
-混合手段(M1)によって、熱回収要素を形成する熱交換器(39)を出る空気と、追加の圧縮空気流(FO2)とを混合するステップ、
-水頭損失を補填し、かつ混合手段(M1)の下流の冷却熱交換器(40)に注入される圧縮空気を得るために、混合物を熱交換器(40)、次いで冷却装置(41)、次いで圧縮ポンプ(42)に注入するステップ、
-前記冷却熱交換器(40)から来る空気を熱交換器(38)内に注入して予熱し、次いで、それを2~15barの目標圧力で前記高温可逆電解槽(11)内に注入するステップ、
を含むことを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
請求項10を引用する、請求項111216及び17の何れか1項に記載の水の高温可逆電解用システム(10)を用いて実施され、以下の一連のステップ:
・水素(H)回路用:
-混合手段(M1)を用いて、2~15barの目標圧力で、前記水素化物タンク(12)から来る水素と前記高温可逆電解槽(11)内の未消費水素(H2residuel)の全リサイクルとを混合するステップ、
-熱交換器(30)を通して2~15barの目標圧力で全水素(H2tоtal)を注入し、前記高温可逆電解槽(11)を出る水素流(H)によってそれを予熱することを可能にするステップ、
-2~15barの目標圧力で全水素(H2tоtal)を前記高温可逆電解槽(11)内に、その消費と、水、電気、及び熱の生成とのために注入するステップ、
-予熱熱交換器(30)によって、前記高温可逆電解槽(11)を出る水素流を冷却するステップ、
-熱伝達流体(FC)との交換により熱の回収を可能にする、熱回収要素を形成する熱交換器(31)によって、前記予熱熱交換器(30)を出る水素流を冷却し、ステップ、
-相分離器(34)から来る、生成された水流から水素流(H2residuel)を分離するステップ、
-アセンブリの水頭損失の値に対してのみそれを再圧縮することによって、未消費水素を再循環させるステップ、
・一次空気回路用:
-周囲空気(Fair1)を圧縮ポンプ(48)内に注入し、2~15barの圧力にするステップと、
-前記高温可逆電解槽(11)を出る空気流を用いて、予熱熱交換器(47)に入る空気を予熱するステップ、
-前記目標圧力で前記高温可逆電解槽(11)に入る予熱空気を注入するステップ、
-前記予熱熱交換器(47)内で前記高温可逆電解槽(11)を出る空気を冷却するステップ、
-少なくとも1つの熱伝達流体(FC)を用いて熱を得るために、熱回収要素である熱交換器(49)を通して前記予熱熱交換器(47)を出る空気を冷却するステップ、
-出て行く空気(Fair2)を排出する前に、熱回収要素を形成する熱交換器(47)を出る空気をガスタービン(43)内に注入するステップ、
・冷却回路:
-前記高温可逆電解槽(11)に入る流体(Fincоming)によって、予熱熱交換器(90)を通して前記高温可逆電解槽(11)を出る熱流(Fhоt)を冷却するステップ、
-少なくとも1つの熱伝達流体(FC)を用いて、熱回収要素を形成する熱交換器(91)内で前記予熱熱交換器(90)を出る流れを冷却するステップ、
-再圧縮流体流(Fcompressed)によって熱交換器(92)内で、前記熱回収要素を形成する熱交換器(91)を出る流れを全て冷却するステップ、
-再圧縮流体流(Fcompressed)が通過する前記熱交換器(92)を出る流れを過冷却装置(93)内、次いで圧縮ポンプ(94)内に注入するステップ、
-2~15barの目標圧力で前記高温可逆電解槽(11)に入る前に、前記高温可逆電解槽(11)を出る流れによって前記圧縮ポンプ(94)を出る流れを予熱するステップ、
を含むことを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水の高温電解(HTE)、特に高温水蒸気電解(HTSE)の一般分野に関する。
【0002】
それはまた、固体酸化物形燃料電池(SOFC)の分野にも関する。
【0003】
より具体的には、本発明は、水素の生成及び/又は消費をもたらす、水の可逆電解による電気の貯蔵及びその供給、又はその引出しに関する。
【0004】
従って、本発明は、可逆電解槽を形成する装置と、前記電解槽と熱的に結合された水素化物タンクと、を含む水の高温可逆電解用システム、並びに関連する可逆電解プロセスを提案する。
【背景技術】
【0005】
水を電気分解するためには、典型的には600~950℃の間の高温で行うのが有利であるが、なぜなら、液体水よりも水蒸気を電気分解することがより有利であり(15%)、また、反応に必要なエネルギーの一部を、電気よりも安価である熱によって供給することができるからである。
【0006】
水の高温電解(HTE)を実施するために、基本パターンのスタックからなる高温固体酸化物電解槽(SOEC)を使用することが知られており、基本パターンのスタックはそれぞれ、互いに重ね合わされた3つのアノード/電解質/カソード層と、バイポーラプレート又は相互接続体(interconnector)とも呼ばれる金属合金相互接続プレートと、からなる固体酸化物電解セルを含む。固体酸化物形燃料電池(SOFC)は、同じ種類の基本パターンのスタックからなる。
【0007】
相互接続体又は相互接続プレートとも呼ばれる電気的及び流体的相互接続装置が、高温固体酸化物電解槽(SOEC)又は固体酸化物形燃料電池(SOFC)の基本パターンのスタック内の基本パターンを有する各電気化学セルを電気的観点から直列に、及び流体的観点から並列に接続することを確実にすることで各セルの製造を組み合わせる装置であることは、明記されるべきである。相互接続体はこのようにして、電流を供給及び収集する機能を確実にし、分配及び/又は収集のためのガス循環区画を画定する。
【0008】
より具体的には、相互接続体は、各セルの近傍における電流の通過及びガスの循環の両方(具体的には:HTE電解に対して注入された水蒸気、HTE電解に対して抽出された水素及び酸素;SOFCセルに対して注入された水素及びSOFCセルに対して抽出された水を含む空気及び燃料)を確実にするように、また、セルのアノード側及びカソード側でそれぞれガスを循環させるための区画であるアノード区画とカソード区画とを分離するように設計される。
【0009】
高温水蒸気電解(HTSE)の場合、水蒸気(HO)がカソード区画内に注入される。セルに印加された電流の影響下で、水素電極(カソード)と電解質との間の界面において、水蒸気の形態で水分子の解離が生じる:この解離は、二水素ガス(H)と酸素イオン(O2-)とを生成する。二水素(H)が収集され、水素区画の出口で排出される。酸素イオン(O2-)は電解質を通って移動し、電解質と酸素電極(アノード)との間の界面において再結合して二酸素(O)を形成する。空気などの排出ガスは、アノードで循環することができ、従って、ガス形態で発生した酸素をアノードで収集することができる。
【0010】
固体酸化物形燃料電池(SOFC)の動作を確実にするために、空気(酸素)がセルのカソード区画内に注入され、水素がアノード区画内に注入される。空気の酸素は解離して、O2-イオンになる。これらのイオンは、電解質内でカソードからアノードへと移動して、同時に電気を生成しながら水素を酸化して水を形成する。SOFCスタックでは、SOEC電解と全く同じように、水蒸気が二水素(H)区画内で見られる。極性だけが反転している。
【0011】
例として、図1は、高温固体酸化物電解槽(SOEC)の動作原理の概略図を示す。そのような電解槽は、電流の影響下で水素(及び酸素)を生成するための電気化学的装置である。これらの電解槽では、水の高温電解が水蒸気を用いて行われる。従って、このような電解槽の機能は、以下の電気化学反応に従って、水蒸気を水素及び酸素に転化することである:
2HO→2H+O
【0012】
この反応は、電解槽のセル内で電気化学的に起こる。図1に概略的に示すように、各基本電解セル1は、固体電解質3の両側に配置されたカソード2とアノード4とによって形成される。2つの電極(カソード及びアノード)2及び4は、多孔質材料から作られた電子伝導体及び/又はイオン伝導体であり、電解質3は、ガス、電子絶縁体及びイオン伝導体に対して不浸透性である。電解質3は、特にアニオン伝導体、より具体的にはO2-イオンのアニオン伝導体であり得、電解槽はそして、プロトン電解質(H)とは対照的に、アニオン電解槽と呼ばれる。
【0013】
電気化学反応は、各電子伝導体とイオン伝導体との間の界面で起こる。
【0014】
カソード2において、半反応は以下の通りである:
2HO+4e→2H+2O2-
【0015】
アノード4において、半反応は以下の通りである:
2O2-→O+4e
【0016】
2つの電極2及び4の間に挿入された電解質3は、アノード4とカソード2との間に印加された電位差によって作り出される電界の影響下で、O2-イオンの移動の場所である。
【0017】
図1の括弧内に示すように、カソード入口の水蒸気は水素Hを伴うことができ、出口で生成及び回収される水素は水蒸気を伴うことができる。同様に、点線で示すように、生成された酸素を放出させるために、空気などの排出ガスを入口に注入することもできる。排出ガスの注入は、温度調節器として作用するという追加の機能を有する。
【0018】
基本電解槽、又は電解反応器は、カソード2と、電解質3と、アノード4とを有する上記のような基本セルと、電気的、油圧的(hydraulic)及び熱的分配機能を提供する2つのモノポーラ接続体と、からなる。
【0019】
生成される水素及び酸素の流量を増加させるために、複数の基本電解セルを互いの上に積み重ね、相互接続体又はバイポーラ相互接続プレートと通常呼ばれる相互接続装置でそれらを分離することが知られている。アセンブリは、電解槽(電解反応器)の電気供給及びガス供給を支持する2つの端部相互接続プレートの間に配置されている。
【0020】
従って、高温固体酸化物電解槽(SOEC)は、互いの上に積み重ねられた少なくとも1つの、一般的には複数の電解セルを含み、各基本セルは、電解質、カソード及びアノードから形成されており、電解質はアノードとカソードとの間に挿入されている。
【0021】
上記のように、1つ又は複数の電極と電気的に接触している流体的及び電気的相互接続装置は、一般に、電流を供給及び収集する機能を果たし、また、1つ又は複数のガス循環区画を画定する。
【0022】
従って、いわゆるカソード区画の機能は、電流及び水蒸気を分配し、並びに、接触しているカソードで水素を回収することである。
【0023】
いわゆるアノード区画の機能は、電流を分配し、また、接触しているアノードで酸素を、場合により排出ガスを用いて回収することである。
【0024】
図2は、従来技術による高温固体酸化物電解槽(SOEC)の基本パターンの分解図を示す。この電解槽は、相互接続体5と交互に積み重ねられた固体酸化物(SOEC)型の複数の基本電解セルC1、C2を含む。各セルC1、C2は、カソード2.1、2.2と、アノード(セルC2のアノード4.2のみが示されている)と、からなり、それらの間に電解質が配置されている(セルC2の電解質3.2のみが示されている)。
【0025】
相互接続体5は、相互接続体5と隣接するカソード2.1との間、及び相互接続体5と隣接するアノード4.2との間の容積によってそれぞれ画定される、カソード区画50とアノード区画51との間の分離を確実にする金属合金製の構成要素である。それはまた、セルへのガスの分配を確実にする。各基本パターンへの水蒸気の注入は、カソード区画50内で起こる。カソード2.1、2.2における生成された水素及び残留水蒸気の収集は、それによる水蒸気の解離の後、セルC1、C2の下流のカソード区画50内で行われる。アノード4.2で生成された酸素の収集は、それによる水蒸気の解離の後、セルC1、C2の下流のアノード区画51内で起こる。相互接続体5は、隣接する電極と、すなわちアノード4.2とカソード2.1との間で直接接触することによって、セルC1とC2との間の電流の通過を確実にする。
【0026】
図3は、従来技術による固体酸化物形燃料電池(SOFC)の基本パターンの分解図を示す。図2と同じ基本パターンが、基本スタックC1、C2のセル及び相互接続体5を有するSOFC燃料電池に対して与えられる。そして、図2を参照して上述した電解槽のカソード2.1、2.2が、SOFCセルに対するアノードとして使用され、アノード4.1、4.2がカソードとして使用される。従って、SOFCセルモードでの動作のために、各基本パターンへの酸素を含む空気の注入は、カソード区画51となった区画で起こる。アノードで生成された水の収集は、セルC1、C2の上流の各アノード区画50内にアノード2.2において注入された二水素Hと電解質3.2を通過したO2-イオンの水への再結合後、セルC1、C2の下流のアノード区画50となった区画で起こる。水の再結合で生じた電流は、相互接続体5によって収集される。
【0027】
高温固体酸化物電解槽(SOEC)の動作条件は固体酸化物形燃料電池(SOFC)の動作条件と非常に類似しているため、同じ技術的制約が見られる:すなわち、主に、異なる材料(セラミック及び金属合金)のスタックの温度及び熱サイクルにおける機械強度、アノード区画及びカソード区画の不浸透性の維持、金属相互接続体のエイジングに対する抵抗性、及びスタックの様々な界面におけるオーム損失の最小化。
【0028】
重大な制約は、水素の酸化反応が非常に発熱性である固体酸化物形燃料電池(SOFC)、又は全体的な反応が動作電位に応じて発熱性、吸熱性、又は一般に等温性(自熱運転)であり得る高温水電解槽(HTE)の熱的動作条件を最も良好に管理することである。
【0029】
特に、固体酸化物形燃料電池(SOFC)の高発熱反応のためには、システムを冷却するための手段を提供することが必要である。従って、(スタック内の反応によって消費される流入反応物質の割合として定義される)燃料利用率に悪影響を及ぼすことなく、冷却を可能にし、また、スタック内の温度勾配を制限するために、主な可能な調整変数は、電気化学反応の必要条件に関する、カソード側での空気流量である。この技術は、低圧では比較的許容可能な状態であるが、高圧では、SOFCセルの上流で圧縮されるべきガスの量の増加から生じるガス圧縮機の過剰消費が、全体的なエネルギー効率にとって急速に法外なものとなる。
【0030】
この種の技術に対して、特にSOFCセル中での水素の発熱酸化反応中にシステムのこのような冷却を可能にするための代替の解決策が従来技術において既に考えられている。
【0031】
従って、温度をシステムの許容限度内に維持するための電解槽に関する多数の特許文献が既に存在する。従って、例えば、熱交換フィンを形成するために相互接続プレートを延ばすことを提案する特許文献1、又は輻射による熱伝達を改善するように輪郭を描かれた厚い相互接続プレートを提示している特許文献2など、スタックとそれを含むエンクロージャとの間の熱交換を強調している特許文献が存在する。他の特許文献は、例えば特許文献3のように、発生した熱を除去するために、スタック内で直接カソードガス及びアノードガスとは異なる熱伝達流体を使用する可能性を強調している。
【0032】
システムレベルでのスタックの熱管理のために、特許文献4は、セルに熱慣性を提供することで反応熱を容易に除去するために、車載システムにおける、SOFCセルを通って注入される非反応性熱伝達流体(空気、蒸気など)の使用について記載している。その目的は、熱伝達流体の加熱を利用する下流のタービンによって追加の電気を発生させる可能性を伴って、セルの効果的な冷却を達成することである。さらに、流入ガスを予熱することを可能にするために、熱伝達流体の一部がセルの入口に再循環される。
【0033】
しかしながら、前記の特許文献4は、電気を生成する下流のタービンを用いる以外には、SOFCセルによって生成される過剰な熱の利用について言及していない。さらに、それは、熱伝達流体がセルからどのように熱を除去するかを示していない。前記文献の発明は、中型及び/又は大電力の静止システムとは対照的に、車載システム、従って小電力システムに特有のものである。さらに、特許文献4に記載されている車載システムは、高圧で作動することを意図しておらず、代わりに、僅かに加圧された周囲空気又はセル周囲の空気流によって加圧された空気を使用する。
【0034】
さらに、特許文献5はまた、放電モードにおいて蓄熱材料で使用される熱を貯蔵し、次いで充電モードにおいて電解槽で水を加熱するためにそれを使用することができるSOFCセルについて記載している。
【0035】
さらに、多くの刊行物が水素電池システムの試験に関連している。一例として、非特許文献1では、セル内での電気化学反応によって生成された水の凝縮後の未消費水素の完全な再循環を可能にしながら、水素電池と水素化物タンクとを結合することが考えられている。従って、水素システム転化率を100%に近づけることが可能であるように見える。
【0036】
それにもかかわらず、この解決策は低圧運転のためにのみ考案されたものであり、再循環水素の再圧縮には関連しない。その中の熱統合は制限されている。脱着のための熱の回収を可能にするためにアセンブリが提供されるが、それは、100%の転化率を目標とするよりもむしろ、セルの出口での未反応水素の燃焼を含む。
【0037】
特に加圧運転における、想定される反応の発熱性を特に打ち消すために、高温水電解槽(HTE)及び固体酸化物形燃料電池(SOFC)の熱的動作条件の管理を改善する必要性が依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0038】
【文献】米国特許出願公開第2006/0105213号明細書
【文献】国際公開第2013/060869号
【文献】英国特許出願公開第2,151,840号明細書
【文献】米国特許出願公開第2009/0263680号明細書
【文献】米国特許出願公開第2004/0081859号明細書
【非特許文献】
【0039】
【文献】「固体酸化物形燃料電池と水素化マグネシウムタンクとの結合及び熱的統合(Coupling and thermal integration of a solid-oxide fuel cell with a magnesium hydride tank)」、B.Delhomme、A.Lanzini、国際水素エネルギー学会誌、2013年、38、4740~4747頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0040】
本発明は、上述の要求に少なくとも部分的に対処し、従来技術の欠点を克服することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0041】
従って、本発明は、その態様の1つによれば、
-水素の生成、故に電気の貯蔵のために固体酸化物電解槽(SOEC)モードで、及び/又は、水素の消費、故に電気の引出しのために固体酸化物形燃料電池(SOFC)モードに従って作動するように構成された、高温可逆電解槽を形成する装置であって、前記可逆電解槽は、2~15bar、特に8~12barの圧力下で作動するように構成されている、装置と、
-前記可逆電解槽と熱的に結合され、前記可逆電解槽の固体酸化物電解槽(SOEC)モードでは水素化物の形態で水素を貯蔵し、及び/又は、前記可逆電解槽の固体酸化物形燃料電池(SOFC)モードでは水素を放出するように構成された水素化物タンクと、
を含むことを特徴とする、水の高温可逆電解用システムに関し、
前記システムは、可逆電解槽が固体酸化物電解槽(SOEC)モードで作動するように構成されている場合には、可逆電解槽に入ることが意図された加圧蒸気を生成するために水素の吸収中に水素化物タンクによって放出された熱の回収を可能にするように、また、可逆電解槽が固体酸化物形燃料電池(SOFC)モードで作動するように構成されている場合には、水素化物タンクからの水素の脱着を可能にするために可逆電解槽を出る流れによって放出された熱の回収を可能にするように構成されている。
【0042】
有利には、本発明によるシステムの動作は、液体水のみが圧縮されるため、ガス圧縮作業、特に水素圧縮を制限することを可能にする。本発明によるシステムはまた、液体水を圧縮するように意図された圧縮機を含んでもよい。従って、これにより、可逆電解槽が大気圧で作動されるシステムに関する効率を改善することが可能になる。加圧下での電解槽の動作はまた、特にセル内の反応種の拡散限界現象を減少させることによって、その性能を向上させることも可能にする。
【0043】
本発明による可逆電解システムはまた、単独で又は任意の可能な技術的組み合わせで採用される、以下の特徴のうちの1つ又は複数も含み得る。
【0044】
用語「可逆電解」及び「可逆電解槽」は、それぞれ、水の電気化学的高温電解反応(THE)が一方向及び/又は他方向で実施できること、すなわち、システムの動作モードに応じて水素の生成及び/又は水素の消費を可能にできること、また、可逆電解槽が貯蔵モード及び/又は引出しモードで作動できることを意味する。より具体的には、貯蔵モードでは、水素の生成、従って電気エネルギーの貯蔵が可能になる。反対に、引出しモードでは、水素の消費、従って電気エネルギーの引出し(又は供給)が可能になる。
【0045】
さらに、本明細書全体を通して、用語「上流」及び「下流」は、考慮される流れの流れ方向、すなわち、上流から下流への方向に関して考慮されるべきである。
【0046】
もちろん、本発明によるシステムは、モジュール式設計を有してもよい。特に、それは、複数の可逆電解槽及び/又は水素化物タンクを含むことができる。従って、前記電解槽及び/又は水素化物タンクの全部又は一部は、特に所望の電力範囲に従って活性化させることができる。
【0047】
可逆電解槽は、非常に具体的には、カソード、アノード、及びカソードとアノードとの間に挿入された電解質によってそれぞれ形成された基本固体酸化物電気化学セルと、2つの隣接する基本セル間にそれぞれ配置された複数の電気的及び流体的相互接続体と、のスタックを含むことができる。
【0048】
各相互接続体は、従来技術に記載されているような従来型のものであってもよく、又は、いわゆる「三流(three-stream)」相互接続体であってもよい。特に、各相互接続体は、熱伝達流体として作用する第3の異なる流体を用いてカソードガスとアノードガスとの間の熱交換を可能にするスタックアーキテクチャを統合することができる。この熱伝達流体は、とりわけ上述の特許文献1又は特許文献2において提案されているように、スタックが適切な熱交換を可能にするアーキテクチャを有するという条件で、エンクロージャ内を循環することができる。前記熱伝達流体はまた、上述の特許文献3において提案されているように、スタック内を異なるチャネルで循環することもできる。エンクロージャは圧力下での動作を可能にし、特に、ガイドラインDESP97/23/CEに従って、2~15barの間での動作を可能にすることにも留意すべきである。
【0049】
さらに、可逆電解槽は、固体酸化物電解槽(SOEC)モードで作動するように構成することができ、そして、システムは蒸気発生器を含み、それは、水素の吸収中に水素化物タンクによって放出され、また、熱伝達流体によって蒸気発生器に供給される熱を用いて、可逆電解槽用の蒸気を生成することを目的としている。
【0050】
本システムはまた、可逆電解槽を出る水素及び酸素の流れを用いて、システムの入口における水を予熱し、及び/又は可逆電解槽に入る蒸気を過熱することを可能にする、1つ又は複数の熱交換器を含むことができる。本システムは特に、可逆電解槽を出る水素及び酸素の流れを用いて、システムの入口における水を予熱し、かつ可逆電解槽に入る蒸気を過熱することを可能にする、蒸気発生器の上流及び下流の熱交換器をそれぞれ含んでもよい。
【0051】
本システムはまた、可逆電解槽内の未反応蒸気と可逆電解槽によって生成された二水素とを受け取り、未反応水を凝縮させてシステム内で再利用できるようにするように意図された、相分離器に結合された凝縮器を含むことができる。生成された二水素はそして、相分離器で収集され、水素化物タンクに送られることができる。
【0052】
本システムはまた、システムの入口で水を2~15bar、特に8~12barの圧力に圧縮するように意図された圧縮ポンプを含んでもよい。
【0053】
本システムはまた、可逆電解槽の上流に電気加熱要素を含んでもよく、特に800℃までの蒸気のさらなる過熱を提供する。
【0054】
本システムはまた、水素化物タンクの上流及び凝縮器の下流に、水素化物タンク内に貯蔵する前に二水素に含まれる湿気の除去を可能にするように意図された乾燥機を含んでもよい。
【0055】
本システムはまた、相分離器の上流に、可逆電解槽から来る未反応蒸気の凝縮を提供するように意図された、凝縮器に接続された冷却ユニットを含んでもよい。
【0056】
加えて、可逆電解槽はまた、加圧固体酸化物形燃料電池(SOFC)モードで作動するように構成することもでき、そして、システムは、可逆電解槽を出る少なくとも1つの流れを用いて可逆電解槽に入る少なくとも1つの流れを予熱するように意図された、少なくとも1つの熱交換器を含むことができる。
【0057】
可逆電解槽は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)モードで作動するように構成することができ、システムはまた、特に水素化物タンクからの水素の脱着を可能にするために、少なくとも1つの熱伝達流体を用いて可逆電解槽を出る少なくとも1つの流れから来る高温熱を回収するように意図された、少なくとも1つの熱交換器を含むことができる。
【0058】
有利には、固体酸化物形燃料電池(SOFC)モードと固体酸化物電解槽(SOEC)モードとの間に、圧抜き(depressurization)は存在しない。
【0059】
可逆電解槽は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)モードで作動するように構成されてもよく、システムは、二水素回路と一次空気回路とからなる「圧縮空気再循環システム」であってもよい。
【0060】
可逆電解槽は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)モードで作動するように構成されてもよく、システムはまた、「三流」相互接続体を使用する、二水素回路と、一次空気回路と、冷却回路とからなる「三流システム」であってもよい。
【0061】
二水素回路は、
-2~15barの圧力範囲にわたって、水素化物タンクから来る水素と可逆電解槽内の未消費水素の全リサイクルとを混合するための手段と、
-可逆電解槽を出る二水素流を用いて可逆電解槽に入る二水素流を予熱するように意図された熱交換器と、
-少なくとも1つの熱伝達流体を用いて可逆電解槽を出る二水素流から高温熱を回収するように意図された、熱回収要素を形成する熱交換器と、
を含むことができる。
【0062】
本システムはまた、相分離器を出る水素流によって熱回収要素を形成する熱交換器を出る二水素流を冷却し、生成された水の回収を可能にするように意図された熱交換器を含んでもよい。
【0063】
「圧縮空気再循環システム」の場合、一次空気回路は、
-2~15barの空気を提供するための空気圧縮機と、
-可逆電解槽を出る空気流を用いて可逆電解槽に入る空気流を予熱するように意図された熱交換器と、
-少なくとも1つの熱伝達流体を用いて可逆電解槽を出る空気流から来る高温熱を回収するように意図された、熱回収要素を形成する熱交換器と、
を含むことができる。
【0064】
本システムはまた、2~15barの圧力で、熱回収要素を形成する熱交換器を出る空気流と補足酸素とを混合するための手段であって、可逆電解槽に入る全空気流を形成する、混合手段を含むことができる。
【0065】
本システムはまた、
-混合手段によって混合された全空気流を冷却することを可能にする、熱交換器及び冷却装置と、
-予熱のために熱交換器に注入する前に冷却装置を出る空気を圧縮することを可能にする圧縮ポンプであって、システムの水頭損失(head loss)を補填し、圧力を正しい入力レベル(2~15bar)に上げることを可能にする、圧縮ポンプと、
を含むことができる。
【0066】
「三流」システムの場合、一次空気回路は、
-2~15barの空気を提供するための空気圧縮機と、
-可逆電解槽を出る空気流を用いて可逆電解槽に入る圧縮空気流を予熱するように意図された熱交換器と、
-少なくとも1つの熱伝達流体を用いて可逆電解槽を出る空気流から来る高温熱を回収するように意図された、熱回収要素を形成する熱交換器と、
を含むことができる。
【0067】
「三流」システムの場合、冷却回路はまた、
-可逆電解槽を出る熱流を用いて可逆電解槽に入る加圧熱伝達流を予熱するように意図された熱交換器と、
-少なくとも1つの熱伝達流体を用いて可逆電解槽を出る熱流から来る高温熱を回収するように意図された、熱回収要素を形成する熱交換器と、
-熱交換器を出る熱流を冷却するように意図された、熱交換器及び過冷却装置とも呼ばれる冷却装置と、
-熱交換器を出る熱流を冷却するために、熱交換器及び過冷却装置を出る流れを圧縮して2~15barの範囲にわたって圧縮流体流を形成するように意図された圧縮ポンプであって、システムの水頭損失のみを補填し、圧力を正しい入力レベル(2~15bar)に上げることを可能にする、圧縮ポンプと、
を含むことができる。
【0068】
さらに、本発明は、その別の態様によれば、水の高温可逆電解による電気の貯蔵及び/又は電気の引出しのための方法に関し、上述のような水の高温可逆電解用システムを用いて実施され、また、
-加圧可逆電解槽が固体酸化物電解槽(SOEC)モードで作動する場合に、可逆電解槽に入るように意図された加圧蒸気を生成するために水素の吸収中に水素化物タンクによって放出された熱を回収するステップと、
-加圧可逆電解槽が固体酸化物形燃料電池(SOFC)モードで作動するように構成されている場合に、水素化物タンクからの水素の脱着を可能にするために可逆電解槽を出る流れによって放出された熱を回収するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0069】
本方法は、電気貯蔵モードに従って実施することができ、高温可逆電解槽は、固体酸化物電解槽(SOEC)モードで作動するように構成されており、そして本方法は、水素を生成することで電気を貯蔵するために加圧蒸気の高温電解反応を行うステップを含むことができる。
【0070】
本方法は、水の高温可逆電解用システムを用いて、貯蔵モードに従って特に実施することができ、以下の一連のステップ:
-注入水と相分離器からの再循環水とを含むシステムの全水を圧縮ポンプ内に導入し、2~15bar、特に8~12barの圧力にするステップと、
-可逆電解槽を出る水素及び酸素の流れを用いて、システムの入口における水の予熱を可能にするために熱交換器を通してシステムの全水を循環させるステップと、
-システムの入口における水を蒸気発生器内に導入し、水素の吸収中に水素化物タンクによって放出され、また、熱伝達流体によって蒸気発生器に供給される熱を用いて可逆電解槽用の加圧蒸気を生成するステップと、
-可逆電解槽を出る水素及び酸素の流れを用いて、可逆電解槽に入る前に蒸気の過熱を可能にするために熱交換器を通して蒸気を循環させるステップと、
-電気加熱要素を使用することによって電解槽の作動温度に到達するように蒸気を追加で過熱するステップと、
-水素及び酸素の流れを生成するために可逆電解槽内に加圧蒸気を導入するステップと、
-熱交換器を用いて水素及び酸素の流れを冷却するステップと、
-相分離器内で未反応の加圧蒸気を凝縮させて、システム内に再導入される再循環水を生成するステップと、
-生成及び乾燥された水素を水素化物タンク内に貯蔵するステップと、
を含むことができる。
【0071】
有利には、電解槽とタンクとの間に、水素の圧縮は存在しない。
【0072】
本方法はまた、電気引出しモードに従って実施することもでき、高温可逆電解槽は加圧固体酸化物形燃料電池(SOFC)に従って作動するように構成されており、そして本方法は、水素を消費することで電気を引き出すために蒸気の高温電解の逆反応を生じさせるステップを含んでもよい。
【0073】
本方法はまた、水の高温可逆電解用の「圧縮空気再循環システム」を用いて、引出しモードに従って特に実施することができ、そして、以下の一連のステップ:
・二水素回路用:
-混合手段を用いて、2~15barの目標圧力で、水素化物タンクから来る水素と可逆電解槽内の未消費水素の全リサイクルとを混合するステップ、
-熱交換器を通して全水素を注入し、可逆電解槽を出る水素流によってそれを予熱することを可能にするステップ、
-全水素を可逆電解槽内に、その消費と、水、電気、及び熱の生成とのために注入するステップ、
-予熱熱交換器によって、可逆電解槽を出る水素流を冷却するステップ、
-熱伝達流体との交換により熱の回収を可能にする、熱回収要素を形成する熱交換器によって、予熱熱交換器を出る水素流を冷却し、ステップ、
-凝縮器から来る生成された水流から水素流を分離するステップ、
-水頭損失の値に対してのみそれを再圧縮することによって、未消費水素を再循環させるステップ、
・一次空気回路用:
-可逆電解槽に入る圧縮空気によって冷却されるように、冷却熱交換器を通して可逆電解槽を出る空気を注入するステップ、
-熱伝達流体が通過する熱回収要素を形成する熱交換器を通して、冷却熱交換器を出る空気を注入するステップ、
-混合手段によって、熱回収要素を形成する熱交換器を出る空気と、追加の圧縮空気流とを混合するステップ、
-水頭損失を補填し、かつ混合手段の下流の冷却熱交換器に注入される圧縮空気を得るために、前記混合物を熱交換器、次いで冷却装置、次いで圧縮ポンプに注入するステップ、
-冷却熱交換器から来る空気を熱交換器内に注入して予熱し、次いで、それを2~15barの目標圧力で可逆電解槽内に注入するステップ、
を含むことができる。
【0074】
本方法はまた、水の高温加圧可逆電解用の「三流システム」を用いて、引出しモードに従って特に実施することができ、そして以下の一連のステップ:
・二水素回路用:
-混合手段を用いて、水素化物タンクから来る水素と可逆電解槽内の未消費水素の全リサイクルとを混合するステップ、
-熱交換器を通して2~15barの目標圧力で全水素を注入し、可逆電解槽を出る水素流によってそれを予熱することを可能にするステップ、
-2~15barの目標圧力で全水素を可逆電解槽内に、その消費と、水、電気、及び熱の生成とのために注入するステップ、
-予熱熱交換器によって、可逆電解槽を出る水素流を冷却するステップ、
-熱伝達流体との交換により熱の回収を可能にする、熱回収要素を形成する熱交換器によって、予熱熱交換器を出る水素流を冷却し、ステップ、
-相分離器から来る生成された水流から水素流を分離するステップ、
-アセンブリの水頭損失の値に対してのみそれを再圧縮することによって、未消費水素を再循環させるステップ、
・一次空気回路用:
-周囲空気を圧縮ポンプ内に注入し、2~15bar、特に8~12barの圧力にするステップと、
-可逆電解槽を出る空気流を用いて、予熱熱交換器に入る空気を予熱するステップ、
-目標圧力で可逆電解槽に入る予熱空気を注入するステップ、
-予熱熱交換器内で可逆電解槽を出る空気を冷却するステップ、
-少なくとも1つの熱伝達流体を用いて熱を得るために、熱回収要素を形成する熱交換器を通して予熱熱交換器を出る空気を冷却するステップ、
-熱回収要素を形成する熱交換器を出る空気をガスタービン内に注入して、出て行く空気を排出するステップ、
・冷却回路:
-可逆電解槽に入る流体によって、予熱熱交換器を通して可逆電解槽を出る熱流を冷却するステップ、
-少なくとも1つの熱伝達流体を用いて、熱回収要素を形成する熱交換器内で予熱熱交換器を出る流れを冷却するステップ、
-再圧縮流体流によって熱交換器内で、熱回収要素を形成する熱交換器を出る流れを全て冷却するステップ、
-再圧縮流体流が通過する熱交換器を出る流れを過冷却装置とも呼ばれる冷却装置内、次いで圧縮ポンプ内に注入するステップ、
-2~15bar、特に8~12barの目標圧力で可逆電解槽に入る前に、可逆電解槽を出る流れによって圧縮ポンプを出る流れを予熱するステップ、
を含むことができる。
【0075】
本発明による加圧可逆電解システム及び電解プロセスは、単独で又は他の特徴との技術的に可能な組み合わせに従って採用される、本明細書中に示された特徴のうちの何れか1つを含むことができる。
【0076】
本発明は、その実施形態の非限定的な実施例の以下の詳細な説明を読み、並びに添付の図面の概略図及び部分図を精査することによって、より良く理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
図1】高温固体酸化物電解槽(SOEC)の動作原理を示す概略図である。
図2】従来技術による相互接続体を含む高温固体酸化物電解槽(SOEC)の一部の概略分解図である。
図3】従来技術による相互接続体を含む固体酸化物形燃料電池(SOFC)の一部の概略分解図である。
図4】固体酸化物電解槽(SOEC)モードに従って作動する高温可逆電解槽を含む、本発明による水の高温可逆電解用システムの一例を示すブロック図である。
図5】消費された総電力の関数としての、水素生成モード及び116kW ACの公称値で作動している本発明によるシステムのLHV効率の変化を示すグラフである。
図6】固体酸化物形燃料電池(SOFC)モードに従って作動する高温可逆電解槽を含む、本発明による水の高温可逆電解用のいわゆる「圧縮空気再循環」システムの一例の二水素回路を示すブロック図である。
図7図6のシステムの一次空気回路を示すブロック図である。
図8図6及び図7に対応するプロセスの正味電力、及び64kWの公称電力の関数としての本発明によるシステムの空気流量の変化を示すグラフである。
図9】プロセスの正味電力の関数としての図8のプロセスのLHV効率の変化を示すグラフである。
図10】プロセスの正味電力の関数としての図8のプロセスの二水素消費量の変化を示すグラフである。
図11】固体酸化物形燃料電池(SOFC)モードに従って作動する高温可逆電解槽を含む、本発明による水の高温可逆電解用のいわゆる「三流」システムの一例の二水素回路を示すブロック図である。
図12図11のシステムの一次空気回路を示すブロック図である。
図13図11のシステムの冷却回路を示すブロック図である。
図14】対応するプロセスの正味電力の関数としての、本発明によるシステムの一次空気流量及び冷却空気流量の変化を示すグラフである。
図15】プロセスの正味電力(AC)の関数としての図14のプロセスのLHV効率の変化を示すグラフである。
図16図14のプロセスの正味電力の関数としての二水素消費量の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0078】
これらの図の全てにおいて、同じ参照符号は、同一又は同等の要素を示すことができる。
【0079】
さらに、図をより見やすくするために、図に示された異なる部分は、必ずしも一定の縮尺に従って示されていない。
【0080】
図1図3は、従来技術及び本発明の技術的文脈に関する部分において、既に上で説明されている。
【0081】
全ての図について、提示された装置の動作を説明するために、明確さ及び正確さの目的で、水蒸気HOの供給、二水素H、酸素O、空気及び電流の分配及び回収を示す記号及び矢印が示されていることが明記される。
【0082】
さらに、所与の電解セルの全ての構成要素(アノード/電解質/カソード)はセラミックであることに留意すべきである。高温電解槽の動作温度は、典型的には600~1000℃の間である。
【0083】
図4を参照すると、ブロック図の形で、水素の生成、故に電気の貯蔵のために固体酸化物電解槽(SOEC)モードに従って作動する高温可逆電解槽11を含む、本発明による水の高温可逆電解用システム10の例が示されている。さらに、システム10は、2~15bar、さらには8~12barの圧力下で作動する。
【0084】
可逆電解槽11は水素化物タンク12と熱的に結合され、水素化物の形態で水素を貯蔵することを可能にする。図4に示される本発明によるシステム10の動作原理は、貯蔵モードに関する部分で以下に説明される。
【0085】
本発明による水の高温可逆電解用システム10は、使用のための複数の可能性を有することができる。
【0086】
特に、非限定的に、システム10は可逆モードで、すなわち電気の貯蔵及び引出しの両方のために作動することができる。この場合、電解プロセスの可逆性によって供給される前に、大量の電気の貯蔵を達成することができる。
【0087】
システム10はまた、非可逆モードで、すなわち電気化学電解反応の2つの可能な方向のうちの1つのみに専念する動作に従って作動してもよい。
【0088】
より具体的には、システム10はこうして、貯蔵モードでのみ作動することができる:そのような場合、システムは、水素化物タンク12を満たす水素の生成、並びに酸素又は富化空気の供給専用のステーションと同様である。この場合、システムは、例えば、建設車両などの水素自動車用の充電ステーションとして機能することができる。
【0089】
システム10はまた、引出しモードでのみ作動してもよい:そのような場合、システムは、水素化物タンク12及び/又は別のプロセスから水素を供給することができる、電気の生成専用のステーションと同様である。別のプロセスから来る水素が使用される場合、それは水素化物タンクを介して注入されてもよく、その場合、後者はバッファタンクとして、又は水素化物タンクのすぐ下流で作用する。水素化物貯蔵庫からの水素が使用されない場合、交換器31、39(空気再循環システムの場合、図6及び図7)又は31、42及び91(三流システムの場合、図11図12及び図13)で回収された熱を除去しなければならず、システム外の他のプロセスで使用することができる。
【0090】
システム10が、電気を貯蔵するため又は電気を引き出すための非可逆動作モードに従って使用される場合、システム10の特定の要素、特に特定の交換器ネットワークは使用されないことがある。
【0091】
以下では、図4図16を参照して、本発明によるシステム10の2つの主な動作モード、すなわち貯蔵モードと引出しモードとを説明する。より具体的には、図4及び図5は貯蔵モードによるシステム10の動作モードに関し、図6図16は引出しモードによるシステム10の動作に関する。
【0092】
[貯蔵モード]
本発明によるシステム10の電気貯蔵モードは、固体酸化物電解槽(SOEC)の動作構成において可逆電解槽11を使用する。図4に示すように、またこのタイプの電解槽の上記の説明によれば、SEOC電解槽11は、一般にSOEC電解槽11のカソードCと呼ばれるカソード、一般にSOEC電解槽11のアノードAと呼ばれるアノード、各セルのカソードとアノードとの間に挿入された電解質によってそれぞれ形成された基本固体酸化物電気化学セルと、一般にSEOC電解槽11の三流相互接続体F3と呼ばれる2つの隣接する基本セル間にそれぞれ配置された複数の電気的及び流体的相互接続体と、のスタックを含む。しかしながら、好ましくは、前記三流相互接続体F3は、本発明によるシステム10の貯蔵モードでは使用されない。また、三流相互接続体F3の動作に関連する部分は、図4において点線で表されている。
【0093】
固体酸化物電解槽(SOEC)は、酸素生成側で空気を掃気しても掃気しなくても作動することができる。従って、それらは、必要とされるものに応じて、ほぼ純粋な酸素及び富化空気の両方を提供することができる。本明細書に記載のシステム10の例では、貯蔵モードにおいて空気の掃気がないため、圧力下での想定される動作のための前記ガスの圧縮が回避され、従って、圧縮されたほぼ純粋な酸素の生成が得られると考えられている。
【0094】
本発明によるシステム10の貯蔵モードは、電気に基づいて、水素化物タンク12に貯蔵される加圧水素を生成することを目的としている。
【0095】
有利には、SOEC電解槽11は、2~15bar、さらには8~12barの範囲の圧力下で作動するように構成される。実際、SOEC電解槽11内において加圧下で作動することにより、生成された水素を圧縮する作業を制限することが可能になるが、なぜなら、液体水を圧縮することは水素を圧縮するよりもはるかに少ないエネルギーを必要とするからである。
【0096】
しかしながら、貯蔵庫とは異なる圧力で電解槽に作用することを想定することは可能である。この代替案は、しかしながら、電解槽と貯蔵庫との間に圧縮機(貯蔵庫が電解槽より高い圧力にある場合)又は膨張弁(貯蔵庫がより低い圧力にある場合)を必要とするであろう。水素化物中の水素の吸収からの水頭(head)は、あらゆる場合において、蒸気発生器の必要性を満たすために使用されるであろう。
【0097】
貯蔵モードでの動作は、以下に説明される。従って、図4に示されるように、矢印FH2Oで表される脱塩水(demineralized water)HOは、相分離器13からのプロセスの回収水HrecovとM1中で混合される。次いで、前記水HO+Hrecovの全Htotalは、圧縮ポンプ14によって圧縮され、2~15bar、さらには8~12barの作動圧力にされる。
【0098】
次いで、全水Htotalは、分離器15によって2つの流れf1及びf2に分離され、各流れf1、f2は、冷却酸素O及び水素Hの流れがそれぞれ通過する熱交換器16及び17によって、それぞれ飽和まで予熱される。
【0099】
次いで、2つの熱交換器16及び17を通して予熱された水は、M2で再混合され、次いで、熱伝達流体FCを用いて、水素の吸収中に水素化物タンク12で回収された熱(例えば、水素化マグネシウム型の水素化物の場合、約75kJ/モル)によって、蒸気発生器18で沸騰される。水素化物によって放出される熱が、電解槽の入口で考慮される圧力で水の沸点より高い温度になるように、システム10の金属水素化物及び圧力範囲を選択することも適切であり、例えば、水素化マグネシウムは、380℃、10barで収着平衡にある。
【0100】
次いで、蒸気は分離器19によって2つの流れf3及びf4に再び分離され、各流れf3、f4はそれぞれ、SOEC電解槽SOEC11を出る熱い酸素O及び水素Hの流れがそれぞれ通過する熱交換器20及び21によって、それぞれ670~750℃の間に過熱される。
【0101】
過熱蒸気の2つの流れf3及びf4は、次いでM3で再混合され、そして電気加熱要素22は、それが入る前にSOEC電解槽11の動作の700~800℃の蒸気の最終過熱を提供する。
【0102】
それぞれアノードA及びカソードCからの酸素O及び水素Hは、それぞれ、流れf3及びf4の入口での蒸気を用いた熱交換器20及び21によって、次いでそれぞれ、流れf1及びf2の水を用いた熱交換器16及び17によって、最初に冷却される。
【0103】
矢印FO2で表されるように、酸素Oは次いで、貯蔵又は除去される。
【0104】
水素Hに関しては、凝縮器23が未反応蒸気の凝縮を確実にし、次いでこの水は、その再循環のためにM1におけるプロセスの出発点に送られる前に、相分離器13で収集される。水素Hの乾燥は、水素化物タンク12に送られてその中に貯蔵される前に乾燥機24で完了され、それは次いで、蒸気発生器18のための熱伝達流体FCループによって回収される熱を生成する。乾燥機24は、シリカゲル又は極低温トラップ(cryogenic trap)など、異なるタイプであってもよい。しかしながら、それが水素化物貯蔵タンク12に入る前に、水素H中に存在する湿気を除去できなければならない。実際、前記化合物は水と強く反応するため、それはタンク12を損傷し、そして強い熱放出を生じさせる。
【0105】
システム10はまた、発熱モードでSOEC電解槽11と共に作動してもよく、すなわち、セルを出るガスはそれらに入るガスよりも高温であり、その場合、電気加熱要素22はSOEC電解槽11の動作中に必要ないことに留意すべきである。
【0106】
システム10はまた、吸熱モードでSOEC電解槽11と共に作動してもよく、すなわち、セルを出るガスはそれらに入るガスよりも低温であり、その場合、電気加熱要素22は、補填するためにより高い電力で作動することに留意すべきである。
【0107】
有利には、SOEC電解槽11と水素化物タンク12との間の熱的結合は、多くの利点を提供する。特にそれは、蒸気発生器18のエネルギー要件を供給することを可能にすることで、システム10の外部で電気タイプの又はガス燃焼による供給源を使用する必要がないようにすることを可能にし、それにより、貯蔵モードにおける電解プロセスの効率を向上させることを可能にする。さらに、そのような熱的結合はまた、水素化物タンクと低温電解との間の結合の場合のように、水素化物タンク12から来る熱を除去する必要性の回避を可能にする。そうでなければ、これは無視できないエネルギーコストを有するであろうし、それは前記熱を貯蔵するための手段が使用されない場合にプロセスの効率を低下させる可能性があり、その場合、空気冷却塔のような熱除去要素が必要であろう。有利には、タンク内に貯蔵する前の水素の圧縮を避けるために、電気分解は加圧下で行われる。
【0108】
[実施形態の例]
高温可逆電解槽11は、スタックを含むエンクロージャを含む。
【0109】
ここで、貯蔵モードにおいて水素化物タンク12に熱的に結合されたSOEC電解槽11の実施形態の一例を説明する。
【0110】
以下の例で引用されている様々な値は、電解セル並びに補助要素(ポンプ、コンバータなど)の熱力学モデルに基づいて、ProsimPlusソフトウェアを使用して実行されたシミュレーションからの結果である。この例におけるシステム10の目的は、水素化マグネシウムMgHに吸収された水素を供給することである。水素化物タンク12内における水素化物の貯蔵は、10barの圧力で起こる。生成モードにおけるシステムの電力範囲は、115~116.5kWの間であり、得られるシステム効率の範囲は、86.4~87.5%LHVの間(生成されたガス状水素のより低い発熱量とシステムの電力消費量との間の比)である。電解槽スタック単独の効率は、97.5%LHVである。
【0111】
システム10は従って、水素化マグネシウムMgH型の水素化物による水素の貯蔵を含む。それは約35℃、10barの圧力下で冷たい水素を吸収することで、75kW/Hモルのエネルギーを熱の形で放出する。
【0112】
水素吸収によって放出された熱は、蒸気発生器18に供給するために、オイルを含む熱伝達流体FCループ上で回収される。電解槽11における利用率は、蒸気発生器18に完全に供給するのに十分な熱、すなわち10℃の過熱を伴う水の全沸騰を発生させるために、水素化物タンク12での貯蔵に対して、十分高く、約60℃で維持される。
【0113】
この例では、電解槽11は、セルの許容限度内、すなわち12~48NmL/分/cmの範囲内の流量で、熱中性電圧に制御される。従って、生成された酸素は実質的に純粋であるため、アノード側での掃気はない。熱中性システムは、電解槽11の出口において入口と等しい温度を得ることを可能にするため、セル内の冷却の問題はない。図4においてF3で表される三流相互接続体の第3のチャネルは、ここでは使用されていない。熱中性電圧に対する制限は、吸熱モード又は発熱モードでの動作に関して、貯蔵モードでシステムにアクセス可能な電力範囲を制限する効果を有し、より広いアクセス可能範囲を提供する。
【0114】
システム10の効率の計算において、生成された水凝縮を伴って生成された水素によって潜在的に放出されることができる総燃焼熱(HHV)、又は生成された水凝縮を伴わずに生成された水素によって潜在的に放出されることができる総燃焼熱(LHV)が、全システムのレベルでその生成に必要な電気エネルギー(AC)と比較された。水素のより低い発熱量(LHV)及びより高い発熱量(HHV)は、それぞれ244及び286kJ/モルである。
【0115】
図5は、kW ACで表される総消費電力Dcの関数としての、116kW ACの公称値を有するシステムに対して水素生成モードで作動するシステム10の効率Rの変化を示すグラフである。
【0116】
LHV曲線に対する効率Rは、より具体的には次の式で計算される:
R=[生成されたHの流量*LHV]/電気消費量。
【0117】
効率で考慮される電気消費量は、電解セル自体の消費量を含み、それに補助要素(ポンプ、加熱及び冷却ユニット、及びパワーエレクトロニクス)の消費量が加えられる。
【0118】
従って、貯蔵モードでのシステム10のアセンブリは、蒸気発生器18に供給するための熱源を提供することによって水素化物上の水素吸収からの熱を効率的に利用することを可能にし、それによって、前記熱を除去しなければならない低温電解(PEM、アルカリ)を使用するプロセスと比較して少なくとも15%の電気消費量節約を可能にする。これは、低温プロセスと比較した高温電解のより高い電気効率と組み合わせて、効率に対して示される高い値を説明する。
【0119】
効率はまた、従来システムよりも高いが、なぜなら、それは水素化物に吸収される水素を生成することで、蒸気発生器に供給するために使用される熱を放出するからである。水素化物によって供給される熱が存在しないシステムの場合、高温ユーティリティを用いて蒸気発生器によって必要とされる熱をシステムに供給することが必要となり、それは、LHV及びHHV効率をそれぞれ約15及び17ポイント低下させるであろう。
【0120】
[引出しモード]
本発明によるシステム10の電気引出しモードは、固体酸化物形燃料電池(SOFC)の動作構成において可逆電解槽11を使用する。
【0121】
この引出しモードにおいて、目的は、より高い効率で電気を提供し、場合により、暖房ネットワーク、とりわけ例えば住居、農業用乾燥機などの暖房ネットワークに供給することを可能にする低温熱を提供するという目的を有して、約2~15barの間の圧力下で燃料電池11内において水素を消費することである。
【0122】
引出しモードでは、システム10は、それぞれ空気再循環システム及び三流システムと呼ばれる2つの異なるシステムの形態をとることができる。それらについて、以下に説明する。
【0123】
[空気再循環システム]
このシステム10は、図6及び図7に示されている。この場合、システム10は、三流相互接続体を有していない。図6及び図7に見られるように、燃料電池11は、上述のようにアノードA及びカソードCを含むが、第3の熱伝達流体チャネルを含まない。
【0124】
前記システム10において、燃料電池11の冷却は、カソード側の圧縮空気流によってのみ提供され、その結果、水素酸化反応の発熱性のために大きく設計されている。水素化物タンク内における水素の脱着は、出て行く流体からの熱の収集によって確実にされる。
【0125】
以下では、二水素H回路の動作について説明し、続いて、一次空気回路の動作について説明する。
【0126】
[二水素H回路]
この回路は、図6を参照して説明される。前記図6において、点線で表された部分は、図7を参照して以下に説明される一次空気回路を指す。有利には、二水素回路Hは、燃料電池11において再循環される未消費水素を許容するループを形成する。このようにして、100%に近い水素の転化率が得られる。
【0127】
空気再循環システム10の引出しモードにおける二水素H回路の動作を、以下に説明する。2~15bar、さらには8~12barの圧力下で、水素化物タンク12から来る水素Hは、M1において、燃料電池11内の未消費水素H2residuelの全リサイクルと混合される。
【0128】
次いで、全水素流H2totalが、熱交換器30を通過して、燃料電池11の出て行くガスHによって予熱される。次いで、それは燃料電池11内に注入され、その中で酸化されて、水、電気及び熱を生成する。
【0129】
燃料電池11の出口において、水素流Hは、流入ガスH2totalによって熱交換器30を通って冷却され、次いでそれは、400℃を超える温度で熱を回収するための要素を形成する熱交換器31を通過し、それをとりわけ例えばオイル、空気、蒸気などの熱伝達流体FCと交換することによって、熱を回収することを可能にする。
【0130】
水素H及び蒸気の流れは、熱交換器33を通過して、相分離器34を出る水素流Hによって冷却される。熱交換器33を通過した後、流れHは凝縮器35、次いで相分離器34を通過し、矢印FH2Oで表される生成された水HOの回収を可能にし、また、可能な利用のためのその除去を可能にする。
【0131】
分離器34の出口において、幾らかの水の痕跡を含むことがある乾燥水素Hは、水素化物タンク12からの水素とM1で混合される前に、熱交換器33を通過する流入水素流Hによって加熱され、次いで、回路の水頭損失を補填するために圧縮ポンプ36に送られる。
【0132】
水素化物タンク12は、300~400℃程度の所望の温度範囲内、及び2~数ダースbar程度の所望の圧力範囲内で水素を供給することができる任意の種類のタンクとすることができる。しかしながら、水素化物が貯蔵モードで蒸気発生器18として作用するのに十分な水素化物吸収温度を有し、そしてセルがその動作時点で必要な水素量の脱着を可能にするのに十分な熱量を放出することが必要である。
【0133】
二水素回路Hはまた、貯蔵庫の水素中に存在し得る窒素又はアルゴンなどの任意の中性ガスを除去することができるように、パージ弁を有してもよい。
【0134】
[一次空気回路]
この回路は、図7に示されている。前記図7において、点線で表された部分は、図6を参照して上述した二水素H回路を指す。一次圧縮空気回路は、燃料電池11に酸素Oを供給すること、並びに電池11によって生成された熱を除去することを目的とする。
【0135】
空気再循環システム10の引出しモードにおける一次圧縮空気回路の動作を、以下に説明する。燃料電池11を出た空気は、熱交換器38を通過して、燃料電池11に入る空気によって冷却される。
【0136】
次いで、空気流は、400℃を超える温度で熱を回収するための要素を形成する熱交換器39を通過し、オイルを含む熱伝達流体FCがそれ自体を通過する。
【0137】
空気は次いで、M1において矢印FO2で表される酸素O流と混合され、次いで再圧縮空気を用いて熱交換器40を通して冷却され、第2の冷却装置41において再圧縮温度まで冷却され、次いで圧縮ポンプ42において圧縮される。再圧縮は水頭損失の値のみに対するものであり、空気が再循環されなかった場合に行われるであろう2~15barの完全な再圧縮ではなく、それは、本発明によって提供される実質的な利益を表す。
【0138】
圧縮空気は次いで、カソードC内に注入される前に、熱交換器40及び38を通過することによって、燃料電池11の入口の温度にされる。
【0139】
使用される水素化物、及び所望の動作範囲に応じて、脱着のために回収される熱は不十分であり得る。水素駆動バーナーを追加し、熱伝達流体FCが失われた熱を回収することを可能にすることが次に考えられ得る。追加の電気加熱要素も使用することができるが、引出しモードでの動作中は電気代が高くなる可能性があるため効率が悪く、これはシステムの効率に影響を与える。
【0140】
さらに、上述の高温熱交換器38及び39で追加の熱を回収する必要がある場合、考慮した交換器の上流に位置する燃焼チャンバーで水素の一部を燃焼させることができる。この燃焼チャンバーは、例えば、一次空気回路の熱交換器39の上流に配置され得、熱伝達流体FC回路に交換器を追加しないことを可能にするが、再圧縮の前にこのように生成された水を凝縮することを必要にする。前記再圧縮は冷却下で行われるので、設計が制限されるという問題が存在する可能性がある。燃焼チャンバーはまた、水素及び空気回路とは独立したバーナー上に配置することもでき、このアセンブリは、適用するのは簡単であるがエネルギー的に効率的ではないが、なぜなら、熱伝達流体FCによって収集される燃焼エネルギーの一部を制限するという欠点を有して、空気を予熱しなければならないからである。
【0141】
有利には、空気再循環システムは、貯蔵モードで水素を生成するために、電気の起源に応じて、潜在的に脱炭酸及び/又は再生可能な電気を生成することを可能にする。さらに、水素化物タンク12内の水素の脱着に必要な高温熱を生成することを可能にし、燃料電池11がそれ自体で十分に提供しない場合、少量の水素を燃焼させる可能性がある。これにより、システム10の外部に高温の熱源を設ける必要がなくなる。さらに、公称値付近で広い電力範囲及び/又は熱出力範囲、すなわちこの場合は75~100%が可能になる。最後に、O富化に関連するその再循環による空気のより低い圧縮のために、以下に説明される三流システムに関して効率の僅かな改善が得られる。三流システムでは、空気の一部のみが再循環される。
【0142】
[実施形態の例]
ここで、空気再循環システム10を用いた、引出しモードにおける水素化物タンク12と熱的に結合されたSOFC燃料電池11の実施形態の一例を説明する。以下の例で引用される異なる値は、スタックセル並びに補助要素(ポンプ、コンバータなど)の熱力学モデルに基づいて、ProsimPlusソフトウェアを使用して実行されたシミュレーションからの結果である。
【0143】
この例のシステム10の目的は、高効率及び広い電力範囲で電気を提供することである。水素化物タンク12内での水素化物の貯蔵は、10barの圧力で行われる。発電電力(AC、ネットワーク内で注入可能)の範囲は、燃料電池11に対して49.5~65.3kW、及び51.2~68.2kWであり(LHV効率は、最小電力での動作に対する72%から最大電力での動作に対する66%まで変動する)、そのシステムに対して得られた電気効率の範囲は、59.5~60.5%LHV(タンクを出た水素のより低い発熱量)である。オイルループで収集された熱が十分ではないシステムでは、Hバーナーが脱着熱の補完として使用される。
【0144】
システム10は従って、10barの圧力及び380℃で水素化マグネシウムMgH型の水素化物による水素の貯蔵を含み、放出されたHのモル当たり75kJを消費する。交換器で回収された高温熱は、水素を脱着するために、並びにプロセス中の熱損失を打ち消すために使用される。水素化物タンク12は、75kJ/(脱着されたHのモル)に等しい及び380℃を超える温度での脱着エネルギーの供給を必要とする。高温の交換器を挟むことを考慮すると、この目的のために400℃を超えるプロセスの熱のみを回収することができる。セル11及びタンク12における、補填すべき2.7kWのプロセスにおける熱損失もまた、考慮に入れられる。
【0145】
高温の交換器で回収された熱が不足している場合、脱着された水素の一部は燃焼されて、追加のエネルギーを供給する。
【0146】
異なる流体の流量は以下のように設定された:水素Hについては、流量は一定であり、12NmL/分/(セルのcm)に設定された;一次空気については、流量はセル11内の温度上昇を150℃に制限するのに十分である。
【0147】
さらに、冷却戦略は以下の通りである:セル11に入る水素の温度は一定であり、700℃に等しい;セル11に入る空気の温度は一定であり、600℃に等しい;セルの出口での温度は一定に保たれ、2つの流れに対して850℃に等しい;一次空気流量は、セルの出口での温度を一定に、48NmL/分/(セルのcm)の最大流量に保つように調整される。
【0148】
得られた結果は図8のグラフに示されており、これは、kWで表されるプロセスの電力Pの関数としてNmL/分/(セルのcm)で表される空気流量Daの変化を示し、また図9では、kWで表されるプロセスの正味電力Pの関数としてパーセントで表される引出しモードにおけるプロセスの電気効率Rの変化を示し、最後に図10では、kWで表されるプロセスの正味電力Pの関数としてg/hで表される二水素消費量CH2の変化を示す。前記図10において、曲線Caは、総H消費量Hを表し、曲線Cbは、追加の熱を提供するために燃焼されたHの消費量を表す。
【0149】
プロセスの正味電力Pは、セル11及び関連するタービン(一次空気回路)の発電量ACとして定義され、そこから圧縮機及び再循環装置の消費量が差し引かれる。
【0150】
プロセスの効率Rは、以下のように定義される:
R=ネットワーク内に注入されたACでのプロセスPの正味電力/[LHVH2*消費されたHの流量]
【0151】
プロセスの正味電力はセルによって生成される電力に対応し、そこから補助要素(圧縮機、冷却ユニット及びパワーエレクトロニクス)の消費量が差し引かれる。
【0152】
システム10は従って、高い電気効率を維持しながら、広い電力範囲にわたって作動することを可能にする。
【0153】
本プロセスは従って、水素を脱着するために外部熱供給を伴うことなく、強みとして高い水素貯蔵密度(MgH型の水素化物では5重量%の水素が得られる)を有する水素化物タンク12の貯蔵を利用することができ、これは、低温セルシステム(PEMなど)のような従来のシステムでは行うことができない。
【0154】
[三流システム]
このシステム10は、図11図12及び図13に示されている。この場合、本発明によるシステム10のSOEC燃料電池11は、(カソード流及びアノード流とは異なる冷却流体との熱交換を可能にする)上述の三流相互接続体5を含み、燃料電池11におけるその存在は、図11図12及び図13において参照符号F3によって示されている。さらに、前記図に見られるように、燃料電池11は上述のように、アノードAとアノードCとを含む。図11図12及び図13の異なる回路において以下で参照される熱伝達流体は、水素化物タンク12からの水素の脱着に必要な熱の供給を確実にするために共有される。
【0155】
以下では、二水素H回路の動作について説明し、続いて一次空気回路の動作について説明し、最後に三流相互接続体によって可能である冷却回路の動作について説明する。
【0156】
[二水素H回路]
この回路は、図11に示されている。前記図11において、点線で表された部分は、図12及び図13を参照して以下に説明される一次空気回路及び冷却回路を指す。有利には、二水素回路Hは、燃料電池11における未消費水素の再循環を可能にするループを形成する。このようにして、100%に近い水素の転化率が得られる。
【0157】
三流システム10の引出しモードにおける二水素回路Hの動作は、有利には、空気再循環システム10について上述したものと実際上同様である。
【0158】
従って、図6の実施形態の例についての上記の説明を参照されたい。
【0159】
[一次空気回路]
この回路は、図12に示されている。前記図12において、点線で表された部分は、図11及び図13を参照してそれぞれ上及び下で説明される、二水素H回路及び冷却回路を指す。一次空気回路は、燃料電池11に酸素Oを供給することを目的としている。
【0160】
三流システム10の引出しモードにおける一次空気回路の動作を、以下に説明する。矢印Fair1で表される周囲空気は、圧縮ポンプ48内で、2~15bar、さらには8~12barの作動圧力まで圧縮される。次いで、前記空気は、カソードCのレベルで燃料電池11内に注入される前に、燃料電池11を出るガスによって熱交換器47を通して予熱される。
【0161】
使い尽くされ(depleted)加熱された空気は、燃料電池11を出た後、燃料電池11に入る空気が循環する熱交換器47によって冷却される。
【0162】
その後、空気は、熱伝達流体FCを用いて熱を回収するために、熱回収要素を形成する熱交換器49を通過する。
【0163】
次に、残りの熱を除去するための可能な冷却の後に、矢印Fair2によって表される大気中に送り返される前に、最大の初期圧縮作業を回復するために、空気はタービン43を通過する。
【0164】
圧縮ポンプ48及びタービン43は、機械エネルギーの回収を最大にするために、共通の軸を有することができる。
【0165】
さらに、セル11によって供給される熱が要件を満たすのに不十分である場合に追加の熱を提供するために、熱交換器47と熱交換器49との間に位置するHタッピングに関連するバーナーを設けることが可能である。
【0166】
[冷却回路]
この回路は、図13に示されている。前記図13において、点線で表された部分は、図11及び図12を参照して上述した二水素H回路及び一次空気回路を指す。より冷たいガスで冷却する回路もまた、セル11を冷却するのに役立つ。それは、圧縮の必要性を制限するために閉回路で作動する。
【0167】
三流システム10の引出しモードにおける冷却回路の動作を、以下に説明する。高温流Fhotは燃料電池11を出た後、燃料電池11に入る流入流体Fincomingによって、ガス/ガス熱交換器90を通って冷却される。その後、流れはさらに、熱伝達流体FCを用いて熱を回収する担当を行う、熱回収要素を形成する別の熱交換器91を通過する。
【0168】
流れは次いで、回路の水頭損失を打ち消すために、再圧縮流体Fcompressedによって別のガス/ガス熱交換器92を通って完全に冷却され、次いで、圧縮ポンプ94によって圧縮される前に、過冷却のためにさらに別の装置93を通過する。
【0169】
次いで、圧縮ガス状流体は、燃料電池11内に注入される前に、熱交換器92及び90で電池11を出る流れによって予熱される。
【0170】
第3のチャネルF3として使用される流体は、考慮されるプロセスの温度範囲及び圧力範囲内の任意の非凝縮性ガスであり得ることに留意されたい。それはまた、それが接触するプロセスの様々な材料に対して非腐食性でなければならない。これらの条件を満たすように空気を選択することが好ましいが、なぜなら、それは、特定の貯蔵を必要としないという利点を有するからである。
【0171】
第3のチャネルF3は、特許文献3と同様のスタック内に一体化された熱交換器、又は、対流交換によるエンクロージャとの交換用に最適化されたスタックが使用される場合には、特許文献1に記載されたものと同様のスタックを含むエンクロージャ、又は、放射交換によるエンクロージャとの交換用に最適化されたスタックが使用される場合には、特許文献2に記載されたものと同様のスタックを含むエンクロージャを表してもよい。
【0172】
システム10はまた、それが空気に対応しない場合には、流体タンクと、システム10によって必要とされる流量が増加した場合にループに正しい圧力で流体を加えることを可能にする圧縮機と、ループ内の冷却流体の流量を減らすことを可能にする、流体タンクにパージするためのパージ弁と、を含むことができる。
【0173】
システム10はまた、熱伝達流体が空気である場合には、システム10によって必要とされる熱伝達流体の流量が増加した場合にループに正しい圧力で空気を加えることを可能にする圧縮機と、ループ内の冷却空気の流量を減らすことを可能にする、大気にパージするためのパージ弁と、を含むことができる。
【0174】
さらに、高温熱交換器31、49及び91で追加の熱を回収する必要がある場合、水素化物タンク12からの水素の一部を燃焼剤として一次サイクルの空気と混合させ、考慮される交換器の上流に位置する燃焼チャンバーで燃焼させることができる。
【0175】
有利には、三流システムは、水素を生成するのに使用される電気の起源に応じて、潜在的には脱炭酸及び/又は再生可能である電気を生成することを可能にする。さらに、水素化物タンク12内の水素の脱着に必要な熱を発生させることを可能にし、燃料電池11がそれ自体で十分に提供しない場合には、少量の水素を燃焼させる可能性を有する。これにより、システム10の外部における高温熱源の必要性がなくなる。さらに、公称値付近の広い電力範囲及び/又は熱出力範囲(本明細書に記載の例では45~105%)が可能になる。
【0176】
最後に、上述のように、カソード空気の圧縮、故に圧縮機の消費の増加により空気再循環システムよりも低い効率が得られるが、この解決法は酸素の貯蔵を必要としない。それはまた、より高い最大空気流量(カソード空気及び熱伝達流体)に起因してより良好な最大電流密度を可能にし、それはシステムのより良好な冷却を確実にする。
【0177】
[実施形態の例]
ここでは、三流システム10を用いた、引出しモードにおける水素化物タンク12に熱的に結合されたSOFC燃料電池11の実施形態を説明する。以下の例で引用されている様々な値は、スタックセル並びに補助要素(ポンプ、コンバータなど)の熱力学モデルに基づいて、ProsimPlusソフトウェアを使用して実行されたシミュレーションからの結果である。この例におけるシステム10の目的は、より高い効率及び広い電力範囲で電気を提供することである。水素化物タンク12内での水素化物の貯蔵は、10barの圧力で行われる。発電電力の範囲は、燃料電池11に対して、ネットワーク内に注入可能な28~68kW AC、及び33.5~77.6kWであり(LHV効率は、最小電力での動作に対する83%から最大電力での動作に対する63%まで変化する)、得られた効率の範囲は50~54%LHV(導入された水素のより低い発熱量)である。脱着熱の補完としてHバーナーが使用される。選択された冷却流体は空気である。
【0178】
システム10は従って、10barの圧力及び380℃で水素化マグネシウムMgH型の水素化物による水素の貯蔵を含み、放出されたHのモル当たり75kJを消費する。交換器で回収された熱は、水素を脱着するために、並びにプロセス中の熱損失を打ち消すために使用される。水素化物タンク12は、75kJ/(脱着されたHのモル)に等しい及び380℃を超える温度での脱着エネルギーの供給を必要とする。高温の交換器を挟むことを考慮すると、この目的のために400℃を超えるプロセスの熱のみを回収することができる。セル11及びタンク12における、補填すべき2.7kWのプロセスにおける熱損失もまた、考慮に入れられる。
【0179】
交換器で回収された熱が不足している場合、脱着された水素の一部は、一次空気回路の熱回収要素を形成する熱交換器の上流で燃焼される。
【0180】
異なる流体の流量は以下のように設定された:水素Hについては、流量は一定であり、12NmL/分/(セルのcm)に設定された;一次空気については、最大流量は17NmL/分/(セルのcm)である;冷却空気については、流量は0~48NmL/分/(セルのcm)である。
【0181】
さらに、冷却戦略は以下の通りである:セル11に入る水素の温度は一定であり、700℃に等しい;セル11に入る一次空気及び冷却空気の温度は一定であり、600℃に等しい;セルの出口での温度は一定に保たれ、850℃に等しい;低電力では、冷却空気流量はカットされ、一次空気流量は、セルの出口で正しい温度を得るために調整される;電力が増加すると、一次空気流量は17NmL/分/(セルのcm)に達するように増加され、次いで、一次空気流量は48NmL/分/(セルのcm)の最大流量まで増加される。
【0182】
得られた結果は図14のグラフに示されており、これは、kWで表されるプロセスの正味電力(AC)Pの関数としてNmL/分/(セルのcm)で表される一次空気流量Dprimary air及び冷却空気流量Dcooling airの変化を示し、また図15では、kWで表されるプロセスの前記正味電力(AC)Pの関数としてパーセントで表されるプロセスの電気効率Rの変化を示し、最後に図16では、kWで表されるプロセスの正味電力Pの関数としてkg/hで表される二水素消費量CH2の変化を示す。前記図16において、曲線Caは、総H消費量を表し、曲線Cbは、追加の熱を提供するために燃焼されたHの消費量を表す。
【0183】
プロセスの正味電力Pは、セル11及び関連するタービン(一次空気回路)の電気生成量として定義され、そこから圧縮機及び再循環器の消費量が差し引かれる。合計はシステムの出口に対して、すなわちAC電力で計算される。
【0184】
プロセスの電気効率Rは、以下のように定義される:
R=プロセスの正味電力P/[LHVH2*消費されたHの流量]
【0185】
プロセスの正味電力はセル及びタービンの生産量に対応し、そこからシステムの消費量、すなわち圧縮機、冷却ユーティリティ及びパワーエレクトロニクスの消費量が差し引かれる。
【0186】
システム10は拡張された電力範囲を提案するが、なぜなら、最適効率を公称(63.9kWの正味電力で54.12%)とすることにより、公称の44~106%の利用可能な電力範囲が得られるからである。
【0187】
本プロセスは従って、水素を脱着するために外部熱供給を伴うことなく、強みとして高い水素貯蔵密度(MgH型の水素化物では5重量%の水素が得られる)を有する素化物タンク12の貯蔵を利用することができ、これは、低温セルシステム(PEMなど)のようなより従来のシステムでは行うことができない。
【0188】
上述の空気再循環システム及び三流システムでは、スタックのセル11の劣化を制限するために、H利用率(セル11によって消費される流入水素の割合)は80%未満であることが好ましいことに留意されたい。さらに、空気流量は、燃料電池11の出口における酸素O含有量が少なくとも10%となるように選択されることが好ましい。大幅な冷却が必要な場合は、平均して最大約48NmL/分/(セルのcm)まで空気流量を増やすことができる。
【0189】
さらに、空気再循環システム及び三流システムの両方について、二水素H流量の選択に関する変動する電力需要に対応するためのシステム10の管理は、水素H回路上において3つの主な方法、すなわち:
-一定の利用率:消費される水素の割合が一定に保たれるように水素流量が調整される。この構成は、燃料電池の各チャネルによって許容される異なるガス(水素、空気及び冷却流体)の最大流量によって制限される;
-一定の水素H流量:燃料電池に入る水素の流量は一定に保たれ、それは、電力の増加と共に利用率を増加させる効果を有する。この構成は、劣化を抑えるために、セルで許容される最大利用率によって制限される;
-可変の水素流量H及び電力:システムは、セルに入る水素流量及び消費される水素の割合の両方を修正する。この構成は、特に空気流及び冷却流体流の管理に関して高度な命令及び制御を必要とするが、上記の2つのモードよりも広い電力応答範囲を提供する;
で行うことができる。
【0190】
一次空気流量の選択は、使用されるシステムに直接依存する。温度上昇を比較的一定に、かつ150℃未満に保つように維持することが好ましい。空気流量はまた、酸素の供給を確実にしなければならず、そして、燃料電池の出口で10%の酸素を下回らないように提供され続けなければならない。
【0191】
三流システムに対する冷却流体流量の選択は、燃料電池内の温度上昇を最大加熱よりも下に維持するように調整される。
【0192】
さらに、引出しモードに関する上記の例では、水素の脱着に必要な熱の追加は、単純な回収によっては提供することができないが、水素の一部を燃焼させることによって確実にされる。電気が引出しモードでの動作中に高いコストを有する可能性があるとしても、電気加熱による供給を想定することも可能であり、これはシステムの効率に影響を与えるであろう。
【0193】
さらに、システム10はダウングレードモードで作動されてもよい。特に、貯蔵モードでは、生成された水素は、水素化物タンク12内での貯蔵以外の他の目的に使用することができる。これはしかしながら、水を蒸発させ、かつタンクによって供給される熱の不足を補うための熱源を必要し、それは生成された水素を吸収しない。それは、システムの効率を著しく低下させる電源、又は例えば付属のプロセスによって供給される外部電源であり得る。引出しモードでは、水素化物タンク12が使い果たされると、例えば液体又は圧力貯蔵によって、別の水素源を使用することができる。そして、除去しなければならない余分な熱が存在する。それは、例えば都市暖房ネットワークへの注入によって、とりわけ第三者システムによる使用によってシステムから排出することができ、又はプロセスによって除去することができるが、その場合、例えばエアクーラーなどの追加の冷却システムが必要である。
【0194】
さらに、上に提示した三流システムでは、反応に必要な酸素を提供するために、カソードの空気は開放サイクルで作動する。しかしながら、空気再循環システムについて説明したのと同様の空気再循環を伴う動作も考えられ得る。これにより、カソード側の空気を圧縮する作業を減らすことが可能になり、従って効率が僅かに向上するであろう。冷却流体の流量が48NmL/分/(セルのcm)の2倍になるため、これはまた、考えられる2つのシステムで得られるよりも高い電流密度での動作を可能にするであろう。しかしながら、これは、カソードでの反応によって消費される量を補うために、酸素の貯蔵を必要とするであろう。
【0195】
エネルギー貯蔵に対して使用される設備の効率に対応する、完全な貯蔵サイクル(87%の電気の吸収される水素への変換の最適効率(LHV))、それに続く完全な引出しサイクル(吸収された水素の電気への変換の最適効率は、三流システムの場合には54%、空気再循環システムの場合には60%である)によって表される、設備の貯蔵の電気効率が考慮される場合、47%の電気貯蔵効率(三流システム)及び52%の電気貯蔵効率(空気再循環システム)が得られる。これは、約20%のシステム効率を有する(PEM又はアルカリ型の電解槽、及びPEMセルからなる)低温貯蔵チェーンから期待できる効率よりも高い。
【0196】
もちろん、本発明は上記実施形態例に限定されない。当業者によって様々な修正がなされ得る。
【0197】
本発明は、多数の産業技術分野、そして主に水素の形態での電気エネルギーの貯蔵に適用することができる。そして、システム10、特に電解槽11及び水素化物タンク12の寸法は、電力供給要件及び利用可能な電源に応じて選択される。
【0198】
システム10は、電気生成を保証するために、有利には、例えば光起電力型及び/又は風力タービン型の再生可能エネルギーと組み合わせることができる。そのような場合、再生可能エネルギー生産の最初の供給源が例えば太陽光発電のために夜間に低すぎる場合に電気を生成し、過剰に生成されている場合にはそれを水素の形態で貯蔵する、ネットワーク注入プロファイルが提供され得る。
【0199】
水素化物に吸収された水素の生成専用のシステム10を設計することが可能であり、満タンになったときにタンク12を取り替えるが、それにもかかわらず、例えば従来の市場において電気の価格が高い場合には、電気を生成する可能性を有する。
【0200】
さらに、上述した貯蔵及び引出しモードは、独立して、また異なる用途のために使用されてもよい。例えば、水素化物に貯蔵された水素は、水素輸送モードを構成する。従って、このプロセスを介して、統合された効率的な生成プロセスを用いて水素消費者に供給することが可能であり、そして顧客サイトでの水素の引出しは、廃熱などの外部熱供給から利益を得ることができる。
【符号の説明】
【0201】
1 基本電解セル
2 カソード
3 電解質
4 アノード
5 相互接続体
10 システム
11 高温可逆電解槽
12 水素化物タンク
13、34 相分離器
14、36、42、48、94 圧縮ポンプ
15、19 分離器
16、17、20、21、30,31、33、38、39、40、47、49、90、91、92 熱交換器
18 蒸気発生器
22 電気加熱要素
35 凝縮器
41 第2の冷却装置
43 タービン
50、51 カソード区画又はアノード区画
93 過冷却のための装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16