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特許7170640フルオロポリマー組成物及びコーティング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】フルオロポリマー組成物及びコーティング
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/18 20060101AFI20221107BHJP
   C08L 29/10 20060101ALI20221107BHJP
   C08K 5/06 20060101ALI20221107BHJP
   C09D 127/18 20060101ALI20221107BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20221107BHJP
【FI】
C08L27/18
C08L29/10
C08K5/06
C09D127/18
C09D7/20
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019530774
(86)(22)【出願日】2017-12-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-14
(86)【国際出願番号】 US2017065288
(87)【国際公開番号】W WO2018107017
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-12-07
(31)【優先権主張番号】16203046.4
(32)【優先日】2016-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(72)【発明者】
【氏名】アラン ベーシュエレ
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-182381(JP,A)
【文献】特開2005-220161(JP,A)
【文献】国際公開第2019/073934(WO,A1)
【文献】特開昭64-075573(JP,A)
【文献】特表2004-527596(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
C09D 127/18
C09D 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の溶媒に溶解した、5~25重量%の少なくとも1種のフルオロポリマー含む組成物であって、前記溶媒は、分枝状の部分フッ素化エーテルを含み、前記部分フッ素化エーテルは、下記式:
2p+1-O-C2q+1
(式中、qは、1~5の整数であり、pは、5~11の整数である)に相当し、
前記フルオロポリマーは、コポリマーであって、前記コポリマーの総重量に基づいて、少なくとも90重量%、テトラフルオロエテン(TFE)及び1種以上のペルフルオロ化アルキルエーテルから誘導される単位を含、前記ペルフルオロ化アルキルエーテルは、下記一般式:
-O-(CF-CF=CF
(式中、nは1又は0であり、Rは、酸素原子が1個以上介在していてもよいペルフルオロアルキル残基を表す)に相当し、
前記フルオロポリマーは、TFEから誘導される単位を少なくとも50重量%含有し、且つ前記TFEから誘導される単位と前記ペルフルオロ化アルキルエーテルから誘導される単位のモル比は、1:1~4:1である、組成物。
【請求項2】
前記組成物は、20℃+/-2℃で2,000mPas未満の粘度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記C2p+1-単位は分枝状である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記フルオロポリマーが、前記フルオロポリマーの総重量に基づいて、69~73%のフッ素を含有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
10~15重量%の、前記溶媒に溶解したフルオロポリマーを含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項6】
前記フルオロポリマーは、硬化性エラストマーであり、かつ1種以上の硬化部位モノマーから誘導される単位を更に含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項7】
前記フルオロポリマーは、フルオロエラストマーであり、かつ過酸化物硬化系に対して反応性である1つ以上の硬化部位を含有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項8】
前記フルオロポリマーは、硬化性フルオロエラストマーであり、かつ1種以上の硬化部位モノマーから誘導される硬化部位を含有し、前記硬化部位は、ニトリル基、ヨウ素基、臭素基、及びこれらの組み合わせを含有する硬化部位から選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項9】
前記フルオロポリマーは、硬化性ペルフルオロエラストマーであり、かつ非フッ素化又は部分フッ素化コモノマーから誘導される繰り返し単位は含有しないが、ペルフルオロ化、部分フッ素化若しくは非フッ素化硬化部位モノマーから誘導される単位、並びに/又はペルフルオロ化、部分フッ素化及び非フッ素化されたビスオレフィン、ビスオレフィン-エーテル、及びビスオレフィン-ポリエーテルから選択される1種以上の改質剤モノマーから誘導される単位は含有してもよい、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項10】
前記フルオロポリマーは、硬化性フルオロエラストマーであり、かつ硬化部位を更に含み、前記組成物は、前記フルオロエラストマーを硬化させるための少なくとも1種の硬化剤を更に含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物は、含浸、スプレーコーティング、溶媒キャスティング、バーコーティング、スクリーン印刷、3D印刷、塗装、ディップコーティング、及びローラーコーティング用のコーティング組成物から選択されるコーティング組成物である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項12】
前記フルオロポリマーを前記溶媒中に溶解させることを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物の製造方法。
【請求項13】
前記フルオロポリマーを硬化させるために好適な1種以上の硬化剤を前記組成物に添加することを更に含み、前記1種以上の硬化剤は、前記フルオロポリマーを前記溶媒中に溶解させる前、その後、又はそれと同時に前記フルオロポリマーに添加してもよく、前記フルオロポリマーは硬化性である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物から得られるコーティングを含む、物品。
【請求項15】
コーティングされた基材の製造方法であって、
(i)請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物を前記基材に適用することと、
(ii)前記溶媒を除去することと、
を含む、製造方法。
【請求項16】
前記組成物を硬化させることをさらに含み、前記硬化は、前記溶媒の除去の後、前記溶媒の除去と同時、又は前記溶媒の除去の前に行ってもよい、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基材をコーティングするために特に好適なフルオロポリマー組成物、コーティングされた物品、並びに組成物及びコーティングを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロポリマー、特に、テトラフルオロエテン(TFE)含有量の高いポリマーなどの高フッ素化ポリマーは、それらが化学的及び熱的に不活性であるために、商業的に優れた成功を収めている。フルオロポリマーは、高温及び/又はアグレッシブな化学物質などの過酷な環境に遭遇する広範な用途において使用される。ポリマーの典型的な最終用途としては、エンジン用のシール、油井掘削装置におけるシール、及び高温で又は化学的にアグレッシブな環境で動作する工業機器用のシーリング要素が挙げられるが、これらに限定されない。
【0003】
高フッ素化ポリマーの優れた特性は、主として、これらの組成物中のポリマー主鎖の大部分を構成する共重合したペルフルオロ化モノマー単位の安定性及び不活性に起因する。このようなモノマーとしては、テトラフルオロエテン及び他のペルフルオロ化α-オレフィンが挙げられる。
【0004】
しかしながら、高フッ素化ポリマー、特にペルフルオロエラストマーは、溶媒中で溶解しにくく、コーティング組成物を調製するのが困難である。したがって、これらのポリマーを含有する物品は、典型的には、ポリマーを型成形することによって調製される。国際特許出願第2008/094758(A1)号では、ある特定のペルフルオロ化液体がペルフルオロエラストマーを溶解させると報告されており、コーティング組成物の製造用に提案されている。
【0005】
基材をコーティングするための、溶解した高フッ素化ポリマーを含む更なる組成物を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0006】
したがって、一態様において、少なくとも1種のフルオロポリマー及び少なくとも1種の溶媒を含む組成物であって、溶媒は、分枝状の部分フッ素化エーテルを含み、部分フッ素化エーテルは、下記式:
Rf-O-R
(式中、Rfは、エーテル酸素が1回以上介在していてもよいペルフルオロ化アルキル基及び部分フッ素化アルキル基から選択され、Rは、部分フッ素化アルキル基及び非フッ素化アルキル基から選択される)に相当し、
フルオロポリマーは、少なくとも90重量%(100重量%であるポリマーの総重量に基づいて)の、テトラフルオロエテン(TFE)及び1種以上のペルフルオロ化アルキルエーテルから誘導される単位を含むコポリマーであり、ペルフルオロ化アルキルエーテルは、下記一般式:
-O-(CF-CF=CF
(式中、nは1又は0であり、Rは、酸素原子が1個以上介在していてもよいペルフルオロアルキル残基を表す)に相当する、組成物が提供される。
【0007】
別の態様において、フルオロポリマーを溶媒中に溶解させることを含む、上記組成物の製造方法が提供される。
【0008】
更なる態様において、上記組成物から得られるコーティングを含む物品が提供される。
【0009】
更に別の態様において、コーティングの製造方法であって、
(i)上記の組成物を基材に適用することと、
(ii)溶媒を除去し、任意に、フルオロポリマーが硬化性である場合は組成物を硬化させることであって、任意選択の硬化工程は、溶媒除去の後、それと同時又はその前に行ってもよい、硬化させることと、
を含む、製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示のいずれかの実施形態を詳細に説明するのに先立ち、本開示はその用途において以下の説明に示される構造の詳細及び構成部品の配置に限定されるものではないということが理解されるべきである。本発明は、他の実施形態も可能であり、様々な方法で実践又は実行することが可能である。また、本明細書において使用される語法及び専門用語は説明を目的としたものであることを理解されたい。「からなる」の使用とは対照的に、「含む」、「含有する」、「備える」、又は「有する」及びその変化形の使用は、これらの語の後に列挙される要素及びその均等物に加えて更なる要素を包含することを意味する。「1つの(a)」又は「1つの(an)」の使用は、「1つ以上の」を包含することを意味する。物理的特性又は濃度を表す、本明細書に記載されている数値範囲は、その範囲の下限値から上限値の、端点を含む全値を包含することを意図する。例えば、1%~50%の濃度範囲は略記であり、例えば2%、40%、10%、30%、1.5%、3.9%等の1%~50%の間の値を明確に開示することを意図する。
【0011】
別途記載のない限り、その組成物の重量パーセントとして表される組成物の成分の総量は合計100%になり、すなわち組成物の総重量は、別途記載のない限り、常に100重量%である。
【0012】
別途記載のない限り、その組成物のモルパーセントとして表される組成物の成分の総量は合計100%になり、すなわち組成物の総モル量は、別途記載のない限り、常に100モル%である。
【0013】
本明細書で使用するとき、「部分フッ素化アルキル」という用語は、炭素鎖に結合した全てではないがいくつかの水素がフッ素で置換されているアルキル基を意味する。例えば、FHC-基又はFHC-基は、部分フッ素化メチル基である。残りの水素原子が他の原子、例えば塩素、ヨウ素及び/又は臭素などの他のハロゲン原子で部分的又は完全に置換されているアルキル基もまた、少なくとも1つの水素がフッ素で置換されている限り、「部分フッ素化アルキル」という用語に包含される。例えば、式FClC-又はFHClC-の残基もまた、部分フッ素化アルキル残基である。
【0014】
本明細書で使用する「部分フッ素化エーテル」は、少なくとも1つの部分フッ素化基を含有するエーテル、又は1つ以上のペルフルオロ化基及び少なくとも1つの非フッ素化基若しくは少なくとも1つの部分フッ素化基を含有するエーテルである。例えば、FHC-O-CH、FC-O-CH、FHC-O-CFH、及びFHC-O-CFが、部分フッ素化エーテルの例である。残りの水素原子が他の原子、例えば塩素、ヨウ素及び/又は臭素などの他のハロゲン原子で部分的又は完全に置換されているエーテル基もまた、少なくとも1つの水素がフッ素で置換されている限り、「部分フッ素化アルキル」という用語に包含される。例えば、式FClC-O-CF又はFHClC-O-CFのエーテルもまた、部分フッ素化エーテルの例である。
【0015】
本明細書では、「ペルフルオロ化アルキル」又は「ペルフルオロアルキル」という用語を使用して、そのアルキル鎖に結合した全ての水素原子がフッ素原子で置換されているアルキル基を表す。例えば、FC-は、ペルフルオロメチル基を表す。
【0016】
「ペルフルオロ化エーテル」は、全ての水素原子がフッ素原子で置換されているエーテルである。ペルフルオロ化エーテルの例は、FC-O-CFである。
【0017】
フルオロポリマー組成物
本明細書に記載のフルオロポリマー組成物は、基材をコーティングするのに好適であり、コーティング組成物、すなわち基材をコーティングするための組成物として好適であり得る。これらの組成物は、溶媒及びフルオロポリマーの含有量並びに任意選択の添加剤の有無に応じて、様々な粘度を有するように配合され得る。こうした組成物は、典型的には、フルオロポリマーを含有するか又はその溶液であり、液体又はペーストの形態であり得る。とはいうものの、組成物は、分散又は懸濁した材料を含有することがあるが、これらの材料は、好ましくは添加剤であり、本明細書に記載されている種類のフルオロポリマーではない。好ましくは、組成物は液体であり、より好ましくは、本明細書に記載の溶媒中に溶解した本明細書に記載の1種以上のフルオロポリマーを含有する溶液である。
【0018】
本明細書に記載のフルオロポリマー組成物は、基材をコーティングするのに好適であり、それらの粘度を調整して、スプレーコーティング又は印刷(これらに限定されないが例えば、インク印刷、3D印刷、スクリーン印刷)、塗装、含浸、ローラーコーティング、バーコーティング、ディップコーティング、及び溶媒キャスティングが挙げられるがこれらに限定されない、様々なコーティング方法によって適用可能にすることができる。
【0019】
フルオロポリマー組成物は、例えば、0.01~55重量%又は0.01~45重量%のフルオロポリマー(全組成物の重量に対して)、例えば5~50重量%又は10~45重量%を含み得る。
【0020】
フルオロポリマー組成物は、液体であってもよい。液体は、例えば、室温(20℃+/-2℃)で2,000mPas未満の粘度を有し得る。一実施形態において、組成物はペーストである。ペーストは、例えば、室温(20℃+/2℃)で2,000~100,000mPasの粘度を有し得る。
【0021】
本開示によるフルオロポリマー組成物用のフルオロポリマーは、コポリマーであり、2種以上のペルフルオロ化コモノマーから誘導される繰り返し単位を主に、又はそれだけを含む。コモノマーは、テトラフルオロエテン(TFE)及び下記一般式:
-O-(CF-CF=CF
[式中、nは、1(アリルエーテル)又は0(ビニルエーテル)であり、Rfは、酸素原子が1個以上介在していてもよいペルフルオロアルキル残基を表す]から選択される1種以上の不飽和ペルフルオロ化アルキルエーテルを含む。Rfは、最大10個の炭素原子、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の炭素原子を含んでいてもよい。好ましくは、Rfは最大8個、より好ましくは最大6個の炭素原子、最も好ましくは3又は4個の炭素原子を含む。一実施形態において、Rfは3個の炭素原子を有する。別の実施形態において、Rfは1個の炭素原子を有する。Rfは直鎖状でも分枝状でもよく、環状単位を含んでいても含んでいなくてもよい。Rfの具体例としては、以下を含むがこれらに限定されない1つ以上のエーテル官能基を有する残基が挙げられる。
-(CF)-O-C
-(CF-O-C
-(CFr3-O-CF
-(CF-O)-C
-(CF-O)-C
-(CF-O)-CF
-(CFCF-O)-C
-(CFCF-O)-C
-(CFCF-O)-CF
【0022】
Rfの他の具体例としては、エーテル官能基を含有しない残基が挙げられ、-C、-C、-C、-CF(式中、C及びC残基は分枝状又は直鎖状であってもよいが、好ましくは直鎖状である)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0023】
好適なペルフルオロ化アルキルビニルエーテル(PAVE)及びペルフルオロ化アルキルアリルエーテル(PAAE)の具体例としては、ペルフルオロ(メチルビニル)エーテル(PMVE)、ペルフルオロ(エチルビニル)エーテル(PEVE)、ペルフルオロ(n-プロピルビニル)エーテル(PPVE-1)、ペルフルオロ-2-プロポキシプロピルビニルエーテル(PPVE-2)、ペルフルオロ-3-メトキシ-n-プロピルビニルエーテル、ペルフルオロ-2-メトキシ-エチルビニルエーテル、CF=CF-O-CF-O-C5、CF=CF-O-CF-O-C、CF-(CF-O-CF(CF)-CF-O-CF(CF)-CF-O-CF=CF及びそれらのアリルエーテル同族体が挙げられるが、これらに限定されない。アリルエーテルの具体例としては、CF=CF-CF-O-CF、CF=CF-CF-O-C、CF=CF-CF-O-(CF-O-CFが挙げられる。
【0024】
更なる例としては、欧州特許出願第1,997,795(B1)号に記載のビニルエーテルが挙げられるが、これに限定されない。
【0025】
上記のようなペルフルオロ化エーテルは、例えば、Anles Ltd.(St.Petersburg,Russia)及び他の企業から市販されているか、あるいは米国特許第4,349,650号(Krespan)若しくは欧州特許第1,997,795号に記載の方法に従って、又は当業者に知られているその改変によって調製することができる。
【0026】
本開示によるフルオロポリマーは、コポリマーであり、テトラフルオロエテン(TFE)と、上記の不飽和ペルフルオロ化アルキルエーテルのうちの1種以上と、を含むペルフルオロ化コモノマーから誘導される繰り返し単位を主に、又はそれだけを含む。本明細書で使用する「主に」は、ポリマーの総重量に基づいて少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、又は少なくとも97重量%を意味する。フルオロポリマーは、TFEから誘導される単位を少なくとも50重量%を含有し得る。TFEから誘導される単位と上記のペルフルオロ化アルキルエーテルから誘導される単位のモル比は、例えば、1:1~4:1であり得る。
【0027】
フルオロポリマーは熱可塑性であってもよいが、好ましい実施形態では、フルオロポリマーはエラストマーである。エラストマーは、典型的には、非晶質である。エラストマーは、26℃未満、又は20℃未満、0℃未満、例えば-40℃~20℃、又は-50℃~15℃、又は-55℃~10℃のガラス転移温度(Tg)を有し得る。フルオロエラストマーは、典型的には、約2~約150、例えば10~t100、又は20~70のムーニー粘度(121℃でのML1+10)を有し得る。
【0028】
フルオロポリマーは、好ましくは、硬化性エラストマーであり、1つ以上の硬化部位を含有する。硬化部位は、硬化剤又は硬化系の存在下で反応してポリマーを架橋する官能基である。硬化部位は、典型的には、硬化部位又はその前駆体を既に含有する官能性コモノマーである、硬化部位モノマーを共重合させることによって導入される。
【0029】
特に好ましい実施形態において、硬化性フルオロエラストマーは、硬化性ペルフルオロエラストマー、例えば、当該技術分野において知られているFFKMタイプのペルフルオロエラストマーである。ペルフルオロエラストマーは、ペルフルオロ化コモノマーから誘導される繰り返し単位だけを含むが、硬化部位モノマー、及び必要であれば改質モノマーから誘導される単位を含有してもよい。硬化部位モノマー及び改質モノマーは、部分的にフッ素化されていてもよく、フッ素化されていなくてもよく、又はペルフルオロ化されていてもよく、好ましくはペルフルオロ化されている。ペルフルオロエラストマーは、69~73重量%のフッ素(ポリマーの総量に基づいて)を含有し得る。フッ素含有量は、コモノマー及びそれらの量を適宜選択することによって達成することができる。フッ素含有量は、モノマーの量を測定し、それらのフッ素含有量を計算することによって、すなわち、例えば硬化部位モノマー、改質剤及び連鎖移動剤(CTA)のような他の構成成分からのフッ素含有量に対する寄与を除外することによって、名目上のフッ素含有量として求めることができる。
【0030】
硬化性フルオロエラストマー組成物は、本明細書に記載の硬化性フルオロエラストマーを硬化させるための1種以上の硬化系を含んでもよい。しかしながら、保護コーティングは、フルオロポリマーを基材に適用し、例えば乾燥によって、溶媒を除去することによってその前に達成してもよい。硬化は、十分な保護コーティングを達成するために必要とされなくてもよいが、コーティングの機械的特性を提供又は増大させるために必要とされてもよい。したがって、本開示の一実施形態において、フルオロポリマー組成物は、硬化剤も硬化系も含まない。別の実施形態において、フルオロポリマー組成物は、硬化性フルオロエラストマーを含有し、硬化剤又は硬化系を含む。フルオロポリマー組成物はまた、化学線を使用して硬化させてもよく、例えば電子ビーム硬化であるがこれに限定されない。硬化剤又は硬化系は、化学線、例えば電子ビーム照射によってフルオロポリマー組成物を硬化させるために必要とされなくてもよいが、硬化剤又は硬化系は、例えばデュアル硬化系を可能にするために添加されてもよい。
【0031】
コモノマーは、本明細書に記載の特性、例えば、上記のような、例えば0℃未満のガラス転移温度(Tg)及び/又は(ポリマーの総重量に基づいて)69~73重量%のフッ素含有量を有する硬化性フルオロポリマーを生成するような量で使用される。
【0032】
典型的には、ペルフルオロエラストマーは、TFE及び1つ以上のPAVE、PAAE、又はこれらの組み合わせから誘導される繰り返し単位だけを含有する。共重合したペルフルオロ化エーテル単位は、ポリマー中に存在する全モノマー単位の約10~約50mol%、好ましくは約15~約35mol%を構成し得る。
【0033】
フルオロポリマーは、単峰性又は二峰性又は多峰性の分子量分布(weight distribution)を有し得る。フルオロポリマーは、コアシェル構造を有していても、有していなくてもよい。コアシェルポリマーとは、重合の終わりに近づくと、典型的にはコモノマーの少なくとも50モル%が消費された後に、コモノマーの組成、又はコモノマーの比、又は反応速度を変更して、異なる組成のシェルを形成させるポリマーのことである。
【0034】
フルオロポリマーは、バルク、懸濁、溶液、又は水性乳化重合などの当該技術分野において既知の方法によって調製することができる。例えば、重合プロセスは、モノマー単独の、又は有機溶媒若しくは水中の溶液、エマルション若しくは分散液としての、フリーラジカル重合によって実施することができる。シード重合は、使用されてもよく、使用されなくてもよい。使用可能な硬化性フルオロエラストマーとしては、市販のフルオロエラストマー、特にペルフルオロエラストマーも挙げられる。
【0035】
使用される硬化性フルオロポリマーは、典型的には、180℃で1分未満の硬化開始期間(onset of cure)(Ts2)を有し得る。
【0036】
硬化部位及び硬化部位モノマー
本明細書に記載の硬化性フルオロポリマーは、少なくとも1つ以上の硬化部位を更に含む。硬化部位は、硬化剤又は硬化系と反応し、それによってポリマーは架橋(硬化)される。硬化性エラストマーは、例えば過酸化物硬化性であってもよく、過酸化物硬化系に対して反応性である硬化部位を含有してもよい。硬化部位は、硬化部位モノマー、すなわち、以下に記載されるような官能性モノマー、官能性連鎖移動剤、及び出発分子(starter molecule)を使用することによって、ポリマー中に導入され得る。過酸化物硬化性硬化部位の代わりに又はそれに加えて、フルオロエラストマーは、他の硬化系に対して反応性である硬化部位を含有してもよい。当該技術分野で広く使用されている例としては、ニトリル又はニトリル基を含有する硬化部位が挙げられる。このような硬化部位は、例えば、アンモニアを生成する硬化系、並びに過酸化物硬化に対して反応性である。
【0037】
好適な硬化部位はヨウ素原子を含む。ヨウ素含有硬化部位末端基は、重合でヨウ素含有連鎖移動剤を使用することによって導入することができる。ヨウ素含有連鎖移動剤については、以下でより詳細に説明する。加えて、ヨウ素末端基を導入するために、以下に記載されるようなハロゲン化レドックス系を使用することもできる。
【0038】
硬化性フルオロエラストマーはまた、末端位置での硬化部位に加えて、又はその代替として、主鎖中に又はペンダント基(pending group)として、硬化部位を含有してもよい。ポリマー主鎖内の硬化部位は、好適な硬化部位モノマーを使用することによって導入することができる。硬化部位モノマーは、硬化部位として作用することができる1つ以上の官能基、又はあまり好ましくはないが、硬化部位に変換可能な前駆体を含有するモノマーである。
【0039】
ヨウ素硬化部位に加えて、他の硬化部位、例えばBr含有硬化部位又は1つ以上のニトリル基を含有する硬化部位もまた存在してもよい。Br含有硬化部位は、Br含有硬化部位モノマーによって導入され得る。ニトリル含有硬化部位は、典型的には、ニトリル基を含有する硬化部位モノマーによって導入される。
【0040】
硬化部位コモノマーの例としては、例えば以下が挙げられる。
(a)例えば以下の式を有するものを含む、ブロモ-又はヨード-(ペル)フルオロアルキル-(ペル)フルオロビニルエーテル。
ZRf-O-CX=CX
式中、各Xは同一であっても異なっていてもよく、H又はFを表し、ZはBr又はIであり、Rfは、任意に塩素原子及び/又はエーテル酸素原子を含有するC1~C12(ペル)フルオロアルキレンである。好適な例としては、ZCF-O-CF=CF、ZCFCF-O-CF=CF、ZCFCFCF-O-CF=CF、CFCFZCF-O-CF=CF、又はZCFCF-O-CFCFCF-O-CF=CF(式中、ZはBr又はIを表す);並びに
(b)以下の式を有するものなどの、ブロモ-又はヨードペルフルオロオレフィン:
Z’-(Rf)-CX=CX
(式中、各Xは、独立してH又はFを表し、Z’はBr又はIであり、Rfは、任意に塩素原子を含有するC~C12ペルフルオロアルキレンであり、rは0又は1である);並びに
(c)臭化ビニル、ヨウ化ビニル、4-ブロモ-1-ブテン、及び4-ヨード-1-ブテンなどの、非フッ素化ブロモ及びヨード-オレフィンが挙げられる。
【0041】
具体例としては、XがHである(b)に従う化合物、例えばXがHであり、RfがC1~C3ペルフルオロアルキレンである化合物が挙げられるが、これらに限定されない。特定の例としては、ブロモ-若しくはヨード-トリフルオロエテン、4-ブロモ-ペルフルオロブテン-1、4-ヨード-ペルフルオロブテン-1、又はブロモ-若しくはヨード-フルオロオレフィン、例えば1-ヨード,2,2-ジフルロロ(difluroro)エテン、1-ブロモ-2,2-ジフルオロエテン、4-ヨード-3,3,4,4,-テトラフルオロブテン-1、及び4-ブロモ-3,3,4,4-テトラフルオロブテン-1、6-ヨード-3,3,4,4,5,5,6,6-オクタフルオロヘキセン-1が挙げられる。
【0042】
典型的には、フルオロポリマー中のヨウ素、臭素又はそれらの組み合わせの量は、フルオロポリマーの総重量に対して、0.001~5重量%、好ましくは0.01~2.5重量%、又は0.1~1重量%又は0.2~0.6重量%である。一実施形態において、硬化性フルオロポリマーは、本フルオロポリマーの総重量に基づいて、0.001~5重量%、好ましくは0.01~2.5重量%、又は0.1~1重量%、より好ましくは0.2~0.6重量%のヨウ素を含有する。
【0043】
上記のI及び/又はBr硬化部位に加えて、又は代替として、硬化性フルオロポリマーはニトリル含有硬化部位を含有してもよい。ニトリル含有硬化部位は、他の硬化系、限定されるものではないが例えば、ビスフェノール硬化系、過酸化物硬化系又はトリアジン硬化系に対して反応性であってもよい。ニトリル含有硬化部位モノマーの例は、以下の式に相当する:
CF=CF-CF-O-Rf-CN;
CF=CFO(CFCN、
CF=CFO[CFCF(CF)O](CFOCF(CF)CN、
CF=CF[OCFCF(CF)]O(CFCN;
(式中、rは、2~12の整数を表し、pは、0~4の整数を表し、kは、1又は2を表し、vは、0~6の整数を表し、uは、1~6の整数を表し、Rfは、ペルフルオロアルキレン又は二価ペルフルオロエーテル基である)。ニトリル含有フッ素化モノマーの具体例としては、ペルフルオロ(8-シアノ-5-メチル-3,6-ジオキサ-1-オクテン)、CF=CFO(CFCN、及びCF=CFO(CFOCF(CF)CNが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
硬化部位コモノマーから誘導される単位の量は、所望の架橋密度によって決まる。硬化部位モノマーは、使用されるコモノマーの総量に基づいて、0~10重量%の量で、典型的には10重量%未満、又は更には5重量%未満の量で使用され得る。
【0045】
フルオロエラストマーはまた、デュアル硬化型であってもよい。フルオロエラストマーはまた、異なる硬化系に対して反応性である異なる硬化部位を含有してもよい。
【0046】
ハロゲン化連鎖移動剤を使用することによって末端硬化部位を導入し得ることが企図される。連鎖移動剤は、成長するポリマー鎖と反応し、連鎖成長を停止させることができる化合物である。フルオロエラストマーの製造に関して報告されている連鎖移動剤の例としては、式RIを有するものが挙げられ、式中、Rは、1~12個の炭素原子を有する、x価のフルオロアルキル又はフルオロアルキレン基であり、これは、1個以上のエーテル酸素が介在していてもよく、また、塩素原子及び/又は臭素原子を含有してもよい。RはRfであり得、Rfは、エーテル酸素が1個以上介在していてもよいx価の(ペル)フルオロアルキル又は(ペル)フルオロアルキレン基であり得る。例としては、1個以上のカテナリー(catenary)エーテル酸素を含有していてもよい、α-ωジヨードアルカン、α-ωジヨードフルオロアルカン、及びα-ωジヨードペルフルオロアルカンが挙げられる。「α-ω」は、ヨウ素原子が、分子の末端位置にあることを表す。かかる化合物は、一般式X-R-Yによって表すことができ、X及びYはIであり、Rは上記の通りである。具体例としては、ジヨードメタン、α-ω(又は1,4-)ジヨードブタン、α-ω(又は1,3-)ジヨードプロパン、α-ω(又は1,5-)ジヨードペンタン、α-ω(又は1,6-)ジヨードヘキサン、及び1,2-ジヨードペルフルオロエタンが挙げられる。他の例としては、以下の式のフッ素化ジヨードエーテル化合物が挙げられる。
-CF(I)-(CX-(CXCXR)-O-R”f-O-(CXR’CX-(CX-CF(I)-R’
(式中、Xは、F、H、及びClから独立して選択され、R及びR’は、F及び1~3個の炭素を有する一価ペルフルオロアルカンから独立して選択され、Rは、F、又は1~3個の炭素を含む部分フッ素化若しくはペルフルオロ化アルカンであり、R’’は、1~5個の炭素を有する二価フルオロアルキレン又は1~8個の炭素及び少なくとも1つのエーテル結合を有する二価フッ素化アルキレンエーテルであり、kは0又は1であり、n、m、及びpは、0~5の整数から独立して選択され、n+mは少なくとも1であり、p+qは少なくとも1である)。
【0047】
硬化系
本明細書に記載のフルオロポリマー組成物は、例えば過酸化物硬化系を含む、硬化性フルオロエラストマーを硬化させるための1つ以上の硬化系を含有してもよい。他の硬化系としては、以下に記載されるような窒素ベースの硬化系が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
過酸化物硬化系は、典型的には、有機過酸化物を含む。過酸化物は、活性化された際に、フッ素化ポリマーを硬化させて、架橋(硬化)フルオロポリマーを形成する。好適な有機過酸化物は、硬化温度でフリーラジカルを生成するものである。例としては、ジアルキルペルオキシド又はビス(ジアルキルペルオキシド)、例えば、ペルオキシ酸素に結合した第三級炭素原子を有するジ-tert-ブチルペルオキシドが挙げられる。具体例としては、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3及び2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジクミルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルベンゾエート、α,α’-ビス(t-ブチルペルオキシ-ジイソプロピルベンゼン)、及びジ[1,3-ジメチル-3-(t-ブチルペルオキシ)-ブチル]カーボネートが挙げられる。概ね、フルオロポリマー100部当たり約1~5部の過酸化物を使用することができる。
【0049】
硬化剤はまた、担体、例えばシリカ含有担体上に存在してもよい。
【0050】
過酸化物硬化系はまた、加えて1種以上の助剤を含んでもよい。典型的には、助剤としては、過酸化物と協働して、有用な硬化をもたらすことのできる多価不飽和化合物が挙げられる。これらの助剤は、典型的には、フルオロポリマー100部当たり0.1~10部、好ましくはフルオロポリマー100部当たり2~5部の量で添加することができる。有用な助剤の例には、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、トリ(メチルアリル)イソシアヌレート、トリス(ジアリルアミン)-s-トリアジン、トリアリル-ホスファイト、(N,N’)-ジアリルアクリルアミド、ヘキサアリルホスホラミド、(N,N,N,N)-テトラアルキルテトラフタルアミド、(N,N,N’,N-テトラアリルマロンアミド、トリビニルイソシアヌレート、2,4,6-トリビニルメチルトリシロキサン、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、ジアリル-フタレート、及びトリ(5-ノルボルネン-2-メチレン)シアヌレートが挙げられる。特に有用なのは、トリアリルイソシアヌレートである。
【0051】
ニトリル硬化部位のための好適な硬化系は、当該技術分野において知られており、アミジン、アミドキシム、及び該当部分が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2008/094758(A1)号に記載されている他のものが挙げられるが、これらに限定されない。これらの硬化系としては、複素環式第二級アミンから選択される窒素含有求核化合物;グアニジン;40℃~330℃の温度でin situで分解してグアニジンを生成する化合物;40℃~330℃の温度でその場で分解して第一級アミン又は第二級アミンを生成する化合物;式R-NH-Rの求核化合物(式中、Rは、H-、C~C10脂肪族炭化水素基、又はα位に水素原子を有するアリール基であり、Rは、C~C10脂肪族炭化水素基、α位に水素原子を有するアリール基、-CONHR、-NHCO、又は-OH’であり、Rは、C~C10脂肪族炭化水素基である);及び式HN=CRNRの置換アミジン(式中、R、R、Rは、独立して、H-、アルキル又はアリール基であり、R、R及びReのうちの少なくとも1つはH-ではない)を挙げることができる。
【0052】
本明細書で使用するとき、「複素環式第二級アミン」は、環内に含有される少なくとも1つの第二級アミン窒素を有する芳香族又は脂肪族環状化合物を指す。このような化合物としては、例えば、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、3-ピロリン、及びピロリジンが挙げられる。
【0053】
本開示に含まれるグアニジンは、グアニジン由来の化合物、すなわち、ジフェニルグアニジン、ジフェニルグアニジンアセテート、アミノブチルグアニジン、ビグアニジン、イソペンチルグアニジン、ジ-σ-トリルグアニジン、o-トリルビグアニド、及びトリフェニルグアニジンなどであるがこれらに限定されない、-NHCNHNH-基を含有する化合物である。
【0054】
40℃~330℃の温度でin situで分解して、第一級又は第二級アミンのいずれかを生成する化合物としては、二置換又は多置換尿素(例えば、1,3-ジメチル尿素);N-アルキル又は-ジアルキルカルバメート(例えば、N-(tert-ブチルオキシカルボニル)プロピルアミン);二置換又は多置換チオ尿素(例えば、1,3-ジメチル-チオ尿素);アルデヒド-アミン縮合生成物(例えば、1,3,5-トリメチルヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン);N,N’-ジアルキルフタルアミド誘導体(例えば、N,N’-ジメチルフタルアミド);及びアミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
式R-NH-Rの求核化合物の例示的な例としては、アニリン、t-ブチルカルバゼート(butylcarbazate)、及びC~C10脂肪族第一級アミン(メチルアミンなど)が挙げられるが、これらに限定されない。式HN=CRNRの置換アミジンの例示的な例としては、ベンズアミジン及びN-フェニルベンズアミジンが挙げられる。
【0056】
これらの求核化合物の大部分は、ポリマー鎖結合ニトリル基の三量体化を触媒してトリアジン環を形成し、それによってフルオロエラストマーを架橋することによって、硬化剤として作用すると考えられる。
【0057】
窒素含有求核化合物は、単独で、又は互いに組み合わせて、又は他の加硫剤(curative)と組み合わせて使用することができる。他の加硫剤と組み合わせて使用される場合、窒素含有求核化合物が存在し得るレベルは、概ね、ペルフルオロエラストマー100部当たり求核化合物0.01~5部である。好ましくは、ペルフルオロエラストマー100部当たり求核化合物0.05~3.0部が使用され得る。ペルフルオロエラストマー100部当たり5部を超える求核化合物を含有する硬化性ペルフルオロエラストマー組成物は、概ねスコーチしやすくなる可能性があり、高ムーニー粘度の組成物をもたらす可能性がある。
【0058】
単独で、又は上述した窒素含有加硫剤のうちの1つ以上と組み合わせて使用されてもよく、かつペルフルオロエラストマーを架橋できる他の加硫剤としては、有機スズ化合物又はある特定のアミノ基含有ベンゼン化合物が挙げられる。好適な有機スズ化合物としては、アリル-、プロパルギル-、トリフェニル-、及びアレニルスズス加硫剤が挙げられる。別のタイプの加硫剤としては、下記式
【化1】
及び
【化2】
のビス(アミノフェノール)及びビス(アミノチオフェノール)、並びに下記式
【化3】
のテトラアミンが挙げられ、式中、Aは、SO、O、CO、炭素原子1~6個のアルキル、炭素原子1~10個のペルフルオロアルキル、又は2つの芳香環を連結する炭素-炭素結合である。上記の式XI及び式XII中のアミノ基及びヒドロキシル基は、A基に対してメタ位及びパラ位に互換的に存在する。好ましくは、2番目の硬化剤は、2,2-ビス[3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン;4,4’-スルホニルビス(2-アミノフェノール);3,3’-ジアミノベンジジン;及び3,3’,4,4’-テトラアミノベンゾフェノンからなる群から選択される化合物である。これらの硬化剤の1番目のものは、ジアミノビスフェノールAFと呼ばれる。硬化剤は、米国特許第3,332,907号(Angelo)に開示されているように調製することができる。ジアミノビスフェノールAFは、4,4’-[2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチリデン]ビスフェノール(すなわち、ビスフェノールAF)を、好ましくは硝酸カリウム及びトリフルオロ酢酸でニトロ化した後、好ましくは溶媒としてエタノール及び触媒として触媒量のパラジウム炭素を用いて、接触水素化することによって調製することができる。
【0059】
加硫剤の適切なレベルは、硬化特性、例えば、硬化性組成物の最大可動ダイレオメーター(MDR)トルクに達する時間及び最小ムーニースコーチを考慮することによって選択することができる。最適レベルは、ペルフルオロエラストマーと加硫剤との特定の組み合わせ、及び硬化エラストマーの所望の特性により決定する。
【0060】
改質モノマー:
フルオロポリマーは、少なくとも1種の改質モノマーから誘導される単位を含有してもよく、又は含有しなくてもよい。改質モノマーは、ポリマー構造中に分岐部位を導入することができる。典型的には、改質モノマーは、ビスオレフィン、ビスオレフィンエーテル又はポリエーテルである。ビスオレフィン及びビスオレフィン(ポリ)エーテルは、ペルフルオロ化されていても、部分フッ素化されていても、又はフッ素化されていなくてもよい。好ましくは、これらは、ペルフルオロ化されている。好適なペルフルオロ化ビスオレフィンエーテルとしては、以下の一般式で表されるものが挙げられる。
CF=CF-(CF-O-(Rf)-O-(CF-CF=CF
式中、n及びmは、互いに独立して1又は0のいずれかであり、Rfは、1個以上の酸素原子が介在していてもよい、最大30個の炭素原子を含む、ペルフルオロ化された、直鎖状又は分枝状、環状又は非環状の、脂肪族又は芳香族の炭化水素残基を表す。特定の好適なペルフルオロ化ビスオレフィンエーテルは、以下の式で表されるジ-ビニルエーテルである。
CF=CF-O-(CF-O-CF=CF
式中、nは1~10、好ましくは2~7の整数であり、例えば、nは、1、2、3、4、5、6、又は7であり得る。より好ましくは、nは、例えば1、3、5、又は7などの奇数を表す。
【0061】
更なる具体例としては、以下の一般式に従うビスオレフィンエーテルが挙げられる。
CF=CF-(CF-O-(CF-O-(CF-CF=CF
式中、n及びmは、独立して1又は0のいずれかであり、pは1~10又は2~6の整数である。例えば、nは、1、2、3、4、5、6、又は7、好ましくは1、3、5、又は7を表すように選択され得る。
【0062】
更なる好適なペルフルオロ化ビスオレフィンエーテルは、以下の式で表すことができる。
CF=CF-(CF-O-(RafO)(RbfO)-(CF-CF=CF
式中、Raf及びRbfは、1~10個の炭素原子、特に2~6個の炭素原子の、異なる直鎖状又は分枝状ペルフルオロアルキレン基であり、これは、1個以上の酸素原子が介在していても介在していなくてもよい。Raf及び/又はRbfはまた、ペルフルオロ化フェニル又は置換フェニル基であってもよく、nは、1~10の整数であり、mは、0~10の整数であり、好ましくは、mは0である。p及びqは互いに独立して、1又は0のいずれかである。
【0063】
かかる改質剤は、当該技術分野において公知の方法で調製することができ、また、例えばAnles Ltd,(St.Petersburg,Russia)から市販されている。
【0064】
好ましくは、改質剤は使用されないか、又は少量だけ使用される。典型的な量としては、ポリマーの総重量に基づいて0~5%、又は0~1.4%が挙げられる。改質剤は、例えば、フルオロポリマーの総重量に基づいて約0.1%~約1.2%又は約0.3%~約0.8%の量で存在し得る。
【0065】
ペルフルオロ化ビスオレフィンエーテルのみを例示してきたが、部分フッ素化又は非フッ素化同族体並びにビスオレフィン類似体もまた使用されてもよい。改質剤の組み合わせもまた使用することができる。
【0066】
任意選択の非フッ素化又は部分フッ素化コモノマー
フルオロポリマーは、部分フッ素化又は非フッ素化コモノマー及びこれらの組み合わせを含有してもよいが、好ましくはない。典型的な部分フッ素化コモノマーとしては、1,1-ジフルオロエテン(フッ化ビニリデン、VDF)及びフッ化ビニル(VF)又はトリフルオロクロロエテン又はトリクロロフルオロエテンが挙げられるが、これらに限定されない。非フッ素化コモノマーの例としては、エテン及びプロペンが挙げられるが、これらに限定されない。これらのコモノマーから誘導される単位の量は、0~8%、又は0~5%、又は0~1%を含み、好ましくは0%(ポリマーの重量に基づく重量パーセント)である。
【0067】
溶媒
フルオロポリマー組成物は、少なくとも1種の溶媒を含有する。溶媒は、フルオロポリマーを溶解させることができる。溶媒は、組成物の総重量に基づいて少なくとも約25重量%の量で存在し得る。溶媒は、組成物の重量に基づいて約25~99.99重量%、例えば約30~95重量%、又は50~90重量%の量で存在してもよい。
【0068】
溶媒は周囲条件で液体であり、典型的には50℃を超える沸点を有する。好ましくは、溶媒は、容易に除去することができるように、200℃未満の沸点を有する。
【0069】
組成物は、組成物の総重量に基づいて約0.01~約55重量%、又は組成物の重量に基づいて、0.01~45重量%、又は約0.1~約45重量%、又は約10~40重量%のフルオロポリマーを含有し得る。溶媒及びフルオロポリマーの最適な量は、最終用途によって決まり得、様々であり得る。例えば、薄いコーティングを提供するためには、溶媒中の非常に希薄なフルオロポリマー溶液、例えば、0.01重量%~5重量%の量が望ましいことがある。また、スプレーコーティングでの用途には、高粘度の溶液よりも低粘度の組成物が好ましいことがある。溶液中のフルオロポリマーの濃度は、粘度に影響を及ぼし、適宜調整され得る。本開示の利点は、高濃度のフルオロポリマーを含むにもかかわらずなお低粘度の透明な液体組成物をもたらす溶液、例えば、約5~55重量%又は5~25重量%を含有する組成物もまた調製できることである。
【0070】
溶媒は、部分フッ素化エーテル又は部分フッ素化ポリエーテルを含む。部分フッ素化エーテル又はポリエーテルは、直鎖状、環状、又は分枝状であってもよい。好ましくは、分枝状である。好ましくは、部分フッ素化エーテル又はポリエーテルは、非フッ素化アルキル基及びペルフルオロ化アルキル基を含み、より好ましくは、ペルフルオロ化アルキル基は分枝状である。
【0071】
本開示の一実施形態において、部分フッ素化エーテル又はポリエーテルは、下記式に相当する:
Rf-O-R
(式中、Rfは、エーテル酸素が1個以上介在していてもよいペルフルオロ化又は部分フッ素化アルキル基であり、Rは、非フッ素化又は部分フッ素化アルキル基である)。典型的には、Rfは、1~12個の炭素原子を有し得る。Rfは、第一級、第二級、又は第三級フッ素化又はペルフルオロ化アルキル残基であってもよい。これは、Rfが第一級アルキル残基である場合、エーテル原子に連結した炭素原子は2個のフッ素原子を含有し、フッ素化又はペルフルオロ化アルキル鎖の別の炭素原子に結合していることを意味する。その場合、RfはR -CF-に相当し、このポリエーテルは、一般式:R -CF-O-Rで表すことができる。
【0072】
Rfが第二級アルキル残基である場合、エーテル原子に連結した炭素原子はまた、1個のフッ素原子、並びに部分及び/又はペルフルオロ化アルキル鎖の2個の炭素原子にも連結しており、Rfは(R )CF-に相当する。このポリエーテルは、(R )CF-O-Rに相当するであろう。
【0073】
Rfが第三級アルキル残基である場合、エーテル原子に連結した炭素原子はまた、部分及び/又はペルフルオロ化アルキル鎖の3個の炭素原子にも連結しており、Rfは(R )-C-に相当する。このポリエーテルは、(R )-C-ORに相当する。R 、R 、R 、R 、R 、R は、Rfの定義に対応し、エーテル酸素が1個以上介在していてもよいペルフルオロ化又は部分フッ素化アルキル基である。これらは、直鎖状又は分枝状又は環状であってもよい。また、ポリエーテルの組み合わせを使用してもよく、第一級、第二級及び/又は第三級アルキル残基の組み合わせもまた使用してもよい。
【0074】
本開示の好ましい実施形態において、部分フッ素化エーテル又はポリエーテルは、下記式に相当する:
CpF2p+1-O-CqH2q+1
(式中、qは1~5の整数、例えば1、2、3、4又は5であり、pは5~11の整数、例えば5、6、7、8、9、10又は11である)。好ましくは、C2p+1は分枝状である。好ましくは、C2p+1は分枝状であり、qは1、2又は3である。
【0075】
このような溶媒は、例えば、3M Company(St.Paul,USA)からNOVECという商品名で市販されている。
【0076】
部分フッ素化エーテル及びポリエーテルは、単独で使用されてもよく、又はこれらは、フルオロケミカル溶媒又は非フルオロケミカル溶媒であってもよい他の溶媒と組み合わせて存在してもよい。
【0077】
添加剤
硬化性フルオロエラストマーを含有する組成物は、当該技術分野において既知の添加剤を更に含有してもよい。例としては、酸受容体が挙げられる。かかる酸受容体は、無機酸受容体、又は無機酸受容体及び有機酸受容体のブレンドであってもよい。無機受容体の例としては、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、第二リン酸鉛、酸化亜鉛、炭酸バリウム、水酸化ストロンチウム、炭酸カルシウム、ハイドロタルサイトなどが挙げられる。有機受容体としては、エポキシ、ステアリン酸ナトリウム、及びシュウ酸マグネシウムが挙げられる。特に好適な酸受容体としては、酸化マグネシウム及び酸化亜鉛が挙げられる。酸受容体のブレンドも同様に使用することができる。酸受容体の量は、概して、使用される酸受容体の性質によって決まる。典型的には、使用される酸受容体の量は、フッ素化ポリマー100部当たり0.5~5部である。
【0078】
フルオロポリマー組成物は、安定剤、可塑剤、滑剤、フィラー、及び加工助剤などの、フルオロポリマーの加工及びコンパウンド化において典型的に利用される更なる添加剤を含有してもよいが、但し、意図される使用条件で十分な安定性を有することを条件とする。添加剤の特定の例としては、カーボンブラック、グラファイト、ススなどの炭素粒子が挙げられる。更なる添加剤としては、顔料、例えば酸化鉄、二酸化チタンが挙げられるが、これらに限定されない。他の添加剤としては、粘土、二酸化ケイ素、硫酸バリウム、シリカ、ガラス繊維、又は当該技術分野で既知の及び使用されている他の添加剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
フルオロポリマー組成物の調製
フルオロポリマー組成物は、ポリマー、任意選択の硬化系、及び任意選択の添加剤並びに溶媒を混合することによって調製され得る。好ましくは、フルオロポリマーは、最初に他の固体成分と、特に硬化系と一緒にコンパウンドされる。コンパウンド化は、従来のゴム加工設備において実施して、固体混合物、すなわち、当該技術分野において「コンパウンド」とも呼ばれる追加の成分を含有する固体ポリマーを提供することができる。典型的な設備は、ゴム用ロール機、バンバリーミキサなどの密閉式ミキサ、及び混合押出成形機が挙げられる。混合中に、構成成分及び添加剤を、得られるフッ素化ポリマー「コンパウンド」又はポリマーシート全体にわたって均一に分散させる。次いで、コンパウンドを、好ましくは、例えばより小さく切断することによって微粉砕し、その後溶媒中に溶解させる。
【0080】
コーティングの製造方法
コーティングは、フルオロポリマー組成物を基材に添加し、溶媒を除去することによって調製することができる。一実施形態では、コーティングは、硬化させずに調製することができ、組成物は硬化剤を含まなくてもよい。一実施形態では、コーティングは、化学線、例えば電子ビーム照射によって硬化させて調製することができ、組成物は硬化剤を含まなくてもよい。別の実施形態では、組成物は、硬化性フルオロポリマー及び1種以上の加硫剤を含有する。組成物は、コーティングされる基材に組成物が適用された後に硬化させることができる。硬化前に、溶媒は、例えば蒸発、乾燥のために、又は溶媒を気化させることによって、減少又は完全に除去され得る。
【0081】
硬化は、硬化系及び使用される硬化部位に好適な条件によって達成され得る。使用される硬化部位及び硬化系に応じて、硬化は、硬化性フルオロエラストマー組成物を熱処理することによって、又は室温で、又は照射、例えば紫外線硬化若しくは化学線、例えば電子ビーム硬化によって、達成され得る。硬化は、硬化フルオロエラストマーを形成するのに有効な温度でかつ有効な時間行われる。条件の最適化は、フルオロエラストマーをその機械的特性及び物理的特性に関して検査することによって試験することができる。硬化は、加圧下で又は加圧なしでオーブン内で実施され得る。硬化プロセスを確実に完全に終了させるために、高温及び又は高圧で後硬化サイクルを適用してもよい。後硬化は、170℃~250℃の温度で0.1~24時間にわたって実施することができる。硬化条件は、使用される硬化系によって決まる。
【0082】
組成物は、基材の含浸、基材上への印刷(例えば、スクリーン印刷)、又は基材のコーティング、例えば、これらに限定はされないがスプレーコーティング、塗装ディップコーティング、ローラーコーティング、バーコーティング、溶媒キャスティング、ペーストコーティングなど、に使用することができる。好適な基材は、任意の固体表面を含むことができ、とりわけ、ガラス、プラスチック、複合材、金属、合金、木材、紙から選択される基材を含み得る。コーティングは、組成物が顔料、例えば、二酸化チタン又はグラファイト若しくはススのような黒色フィラーを含有する場合は着色されていてもよく、又は顔料又は黒色フィラーが存在しない場合は無色であってもよい。
【0083】
コーティング前に基材の表面を前処理するために、接着剤(bonding agent)及びプライマーを使用してもよい。例えば、金属表面へのコーティングの接着は、接着剤又はプライマーを適用することによって改善させることができる。例としては、市販のプライマー又は接着剤、例えば、CHEMLOKという商品名で市販されているものが挙げられる。本明細書に記載の組成物のコーティングを含有する物品としては、含浸された布地、例えば保護服が挙げられるが、これらに限定されない。布地は織布又は不織布を含み得る。他の物品としては、腐食性環境に曝される物品、例えば、化学処理において使用されるシール及びシール部品並びにバルブ、例えば、これらに限定はされないが化学反応器、型、例えばエッチング用の化学処理設備の部品若しくはライニング、又は特に腐食性物質若しくは炭化水素燃料若しくは溶媒;燃焼機関、電極、燃料輸送、酸及び塩基用容器並びに酸及び塩基用輸送システム、電気セル、燃料セル、電解セル用のバルブ、ポンプ及び管類並びにエッチングにおいて又はそのために使用される物品が挙げられる。
【0084】
本明細書に記載の組成物の利点は、厚みのあるコーティング又は薄いコーティングの調製に使用可能であることである。別の利点は、より均質なコーティングを提供することができ、例えば、これらに限定はされないが腐食又は化学分解(degradation:劣化)から、基材をより良好に保護できるようになることである。
【0085】
以下の実施例は、記載されている特定の実施例及び実施形態に本開示を限定することを意図せずに、本開示を更に説明するために提供するものである。
【0086】
方法
I含有量:
ヨウ素含有量は、Enviroscience(Dusseldorf,Germany)製のASC-240Sオートサンプラー、Enviroscience AQF-2100F燃焼ユニット(ソフトウェア:「NSX-2100、バージョン1.9.8」;三菱ケミカルアナリテック)Enviroscience GA-210ガス吸収ユニット、及びMetrohm「881 compac IC pro」液体クロマトグラフィー分析器(ソフトウェア:Metrohm「Magic IC Net2.3」)を用いた元素分析により測定することができる。
【0087】
ガラス転移温度(Tg):
Tgは、例えば、TA Instruments Q200変調DSCを用いた示差走査熱量測定によって測定することができる。測定条件は、-150℃~50℃、2~3℃/分の加熱速度であった。変調振幅は、60秒周期で毎分±1℃であった。中間点Tg(℃)を報告する。
【0088】
ムーニー粘度:
ムーニー粘度は、ASTM D1646-07(2012)に従って、1分間の予熱及び121℃で10分間の試験で決定することができる(121℃でのML 1+10)。
【0089】
粘度:
Brookfield粘度は、室温(20~22℃)でスピンドル3を使用してBrookfield粘度計LVにおいて測定することができる。
【実施例
【0090】
実施例1
この実施例では、透明なコーティングを調製した。
【0091】
まず、PFE40Zという商品名(3M Company(St.Paul,MN,USA)から入手可能)の硬化性ペルフルオロポリマー100重量部を、Trigonoxという商品名(AkzoNobel Functional Chemicals(The Netherlands)から入手可能)のペルオキシド加硫剤0.5重量部、及び助剤0.5重量部(例えばLehman&Vossから入手可能)と混合することによって、ペルフルオロエラストマー組成物を調製した。
【0092】
このコンパウンドした配合物を、約0.5cmのサイズの小片に切断した。これらの小片を溶媒である部分フッ素化ポリエーテル(1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-4-(トリフルオロメチル)-ペンタン)のビーカーに添加した。溶媒は、15重量%のペルフルオロエラストマーを含有する溶液にするための量で添加した。ビーカーをローラーミキサー上に置き、連続的に一晩混合した。ペルフルオロエラストマーは完全に溶解した。溶液は、600mPasの粘度を有した。
【0093】
次いで、溶液を、15cm×7.5cmの寸法のアルミニウムQパネル(Labomatから入手)の一部にバーコーティングし、オーブン内で5分間140℃で硬化させ、更に200℃で15分間、後硬化させた。
【0094】
次いで、アルミニウムパネルを33%水酸化ナトリウム溶液のビーカー中に30分間入れ、その後取り出した。エラストマー溶液でコーティングされたアルミニウムパネルには変化は見られず、一方、パネルのコーティングされていない部分は腐食し、部分的に溶解していた。
【0095】
実施例2
この実施例では、3M Company(St.Paul,MN,USA)から市販されている黒色ペルフルオロエラストマー化合物であるPFE 7502 BZを使用したことを除いて実施例5と同様に、黒色コーティングを調製した。このコンパウンドした配合物を、約0.5cmのサイズの小片に切断した。これらの小片を、溶媒(3-エトキシ-1,1,1,2,3,4,4,5,5,6,6,6-ドデカフルオロ-2-トリフルオロメチル-ヘキサン)のビーカーに添加した。溶媒は、10重量%のペルフルオロエラストマー化合物を含有する組成物にするための量で添加した。ビーカーをローラーミキサー上に置き、連続的に一晩撹拌した後、化合物は溶解しており、溶液が形成された。得られた配合物の粘度は、900mPasであった。
【0096】
次いで、コーティング組成物を15cm×7.5cmの寸法のアルミニウムのシート上に、標準的なバーコーターを用いてバーコーティングし、オーブン内で140℃で5分間硬化させ、所望により200℃で15分間更に後硬化させた。黒色コーティングを得た。
【0097】
比較例1
この実施例では、透明なコーティングを調製した。ポリマー組成物は、実施例1に記載のとおり配合した。コンパウンドした配合物を、約0.5cmのサイズの小片に切断した。これらの小片を溶媒(FC-43、ヘプタコサフルオロトリブチルアミン)のビーカーに添加した。溶媒は、15重量%のペルフルオロエラストマー含有量を有する組成物にするための量で添加した。ビーカーをローラーミキサー上に置き、連続的に一晩混合した。ペルフルオロエラストマーは、溶媒中に完全には溶解しなかった。
【0098】
比較例2
比較例1と同様のポリマー組成物を、比較例1に示す手順と類似の溶媒として直鎖状部分フッ素化エーテル(HCHC-O-(CF-CF)に供した。ポリマーは完全には溶解しなかった。
【0099】
実施例3
1.5部のTRIGONOX及び2.5部のTAICを100部のペルフルオロエラストマーに添加したことを除いて、実施例1と同様にしてポリマー組成物を調製した(実施例3a)。2.5部のTAICを100部のフルオロエラストマーに添加し、TRIGONOXを添加しなかったことを除いて、実施例1と同様にして別のポリマー組成物を調製した。実施例3cでは、エラストマーのみを100重量部使用し、TRIGONOXもTAICも添加しなかった。溶液をシリコーンライナー上にコーティングし、キャビネット内で24時間乾燥させた後、オーブン内で1時間、60℃に加熱した。得られたコーティングの厚さは、約50ミクロンであった。サンプルを電子ビーム硬化(10Mrad、220kV)に供し、硬化させた。これらのコーティングのうち、室温で168時間にわたって溶媒中に戻した後、溶媒中に再溶解したものはなかった。