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特許7170647薬物送達面積が増大したインプラント型装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】薬物送達面積が増大したインプラント型装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/844 20130101AFI20221107BHJP
【FI】
A61F2/844
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019541181
(86)(22)【出願日】2018-08-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 IN2018050510
(87)【国際公開番号】W WO2019030770
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-05-18
(31)【優先権主張番号】201721012262
(32)【優先日】2017-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】519269329
【氏名又は名称】エンビジョン サイエンティフィック プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドシ、マニシュ インデュラル
(72)【発明者】
【氏名】ソジトラ、プラカシュ ナンジバーイ
(72)【発明者】
【氏名】ドシ、パース マニシュ
(72)【発明者】
【氏名】シャー、ディネシュ
【審査官】鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-299901(JP,A)
【文献】特表2008-510593(JP,A)
【文献】特表2012-527942(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0276280(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105943209(CN,A)
【文献】独国特許出願公開第102007034991(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/844
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルーン上に装着された予備クリンプ済みステントをコーティングする方法であって、
この方法は、
バルーンアセンブリ上にステントアセンブリをクリンプし、バルーン上に装着された予備クリンプ済みステントを形成することであって、このステントアセンブリが、複数のストラット構成要素内に画定された相互接続された空間領域を備える当該複数のストラット構成要素を含むこと、および
バルーン上に装着されたこの予備クリンプ済みステントの外面をコーティングし、薬物送達医療装置を形成することであって、バルーンアセンブリの複数の部分がこのコーティングに曝され、それによって前記薬物送達医療装置の外側に完全な被覆が与えられ、均質な円筒形のコーティングを形成することを含
前記コーティングは、1種以上の薬物と1種以上のポリマーとのマトリックスを含む組成物から構成されており、
前記コーティングのみが、前記薬物送達医療装置の外側に存在する、
上記方法。
【請求項2】
バルーン上に装着された前記予備クリンプ済みステントが、スプレーコーティングの方法によってコーティングされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スプレーコーティングが、軸方向および回転方向における1種以上の薬物およびポリマーの有機溶媒可溶性マトリックスのコーティングを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記コーティング溶液が高速蒸発溶媒に溶解された1種以上の薬物および1種以上のポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
バルーン上に装着された前記予備クリンプ済みステントの外面をコーティングすることにより、バルーン上に装着された前記予備クリンプ済みステントの内側表面が、コーティングされていない状態がもたらされる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
バルーン上に装着され、コーティングされて薬物送達医療装置を形成する予備クリンプ済みステントであって、
前記薬物送達医療装置の外側は、前記コーティングによって完全な被覆を与えられており、かつ前記コーティングは、1種以上の薬物と1種以上のポリマーとのマトリックスを含む組成物から構成されており、
前記コーティングのみが、前記薬物送達医療装置の外側に存在し、
このバルーン上に装着され、コーティングされた予備クリンプ済みステントは、バルーン上に装着された予備クリンプ済みステントのバルーンアセンブリの膨張/拡張時に、血管内腔の周囲領域を覆う1種以上の薬物と1種以上のポリマーとの前記マトリックスの均質な円筒形コーティングを含む、
上記コーティングされた予備クリンプ済みステント。
【請求項7】
前記均一な円筒形のコーティングが、前記体腔内の損傷に対処する、請求項6に記載のバルーン上に装着され、コーティングされた前記予備クリンプ済みステント。
【請求項8】
前記薬物が、抗再狭窄剤、抗増殖剤、抗炎症剤、抗血栓剤、抗酸化剤、免疫抑制剤、細胞増殖抑制剤および細胞毒性剤のうちの少なくとも1つから選択される、請求項6に記載のバルーン上に装着され、コーティングされた前記予備クリンプ済みステント。
【請求項9】
前記薬物が、シロリムス、タクロリムス、パクリタキセル、ベータ-エスタジオール、ラパマイシン、エベロリムス、エチルラパマイシン、ゾタロリムス、ABT-578、Biolimus A9、ならびに、ラパマイシン、マイトマイシン、ミオマイシン、ノボリムス、ペルミロラストカリウム、アルファ-インターフェロン、生理活性RGDおよびそれらの塩、エステルまたは類似体のうちの少なくとも1つから選択される、請求項6に記載のバルーン上に装着され、コーティングされた前記予備クリンプ済みステント。
【請求項10】
前記少なくとも1種のポリマーが、グリコリドおよびラクチドのホモポリマー、コポリマー;トリメチレンカーボナート、ε-カプロラクトンおよびポリジオキサノンのコポリマー;ポリグリコール酸(PGA);(乳酸/グリコール酸)コポリマー(PLGA);ポリ(エチレングリコール)(PEG);ポリグラクチン;ポリグリコナート;ポリジキサノン;ポリグレカプロン;ポリグリコリド;ポリラクチド;ポリヒドロキシブチラート;ポリ(グリコリド-E-カプロラクトン);ポリ(グリコリドトリメチレンカーボナート);ポリ(L-乳酸-L-リシン)コポリマー;チロシン系ポリアリラート;ポリイミノカーボナート;ポリカーボナート;ポリ(D;L-ラクチド-ウレタン);ポリ(エステルアミド);ポリ-P-ジオキサノン;ヒアルロン酸;キチン;キトサン;ポリ-L-グルタミン酸;ポリ-L-リシン;ポリホスファゼン;ポリ[ビス(カルボキシラトフェノキシ)ホスファゼン];およびそれらの組み合わせの少なくとも1種である、請求項5に記載のバルーン上に装着された予備クリンプ済みステントをコーティングする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して薬物送達医療装置に関する。より具体的には、本発明は、血管の管腔内の標的病変の最大カバー面積を提供する、増大した薬物送達面積を有する均質にコーティングされたインプラント可能な(埋め込み型)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冠動脈疾患(CAD)の治療において、ベアメタルステントから薬物溶出ステントへの着実な移行が見られ、薬物溶出ステント(DES)はベアメタルステントよりも実質的に高い割合で再狭窄を減少させるので、大きな進歩が見られた。DESインプラント後の血流の再確立および再発率の最小化のために閉塞した動脈を再び開く目的で主に使用されるこれらの薬物溶出ステントは、それらが示す大きな改善を伴う利点を覆いかつそれを上回るいくつかの制限がある。DESに関連する制限は、少数を挙げると、糖尿病患者、急性心筋梗塞患者、分岐部病変および慢性完全閉塞(CTO)のような特定の適応症において特に起こる。例えば、糖尿病患者に関連する糖尿病足(膝患者より下)には、DESに関連する制限を受ける。
【0003】
現在利用可能なDESは、ステントの金属表面にコーティングされているため、血管壁にインプンラントされたときに、動脈の管腔(内腔)の12~20%のみがステントの管腔への接触面積を表す薬物と共に送達され、それにより未処理で薬物が不足している残りの領域が放置される。さらに、低い生物学的利用能および低い親油性を有する薬物は血管壁における拡散制限を強める。未処理の領域および拡散の制限の結果として、再閉塞がしばしば患者において起こり、閉塞(blockage)および再閉塞の速度は患者の体の状態および生理機能に依り患者ごとに異なる。例えば、糖尿病患者は、非糖尿病患者よりも高い閉塞率を有し、そして、拡散した増殖性を有しかつ持続性疾患タイプの糖尿病患者は、狭窄した管腔直径および管腔長さが薬物の薬物送達をさらに複雑にするが、これは未解決の問題である。
【0004】
さらに、送達される薬物の生物学的利用能の観点からは、薬物がステント上にのみコーティングされることを考慮すると、送達される薬物はステントがカバーすることができるのと同程度にすぎないため、最小の薬物が送達される。薬物の高い生物学的利用能および拡大された拡散は、この原因においてしばしば妥協される。例えば、既存のDESによって送達されるリムスベースの薬物は安全であることが証明されているが、これらの薬物は他の薬物と比較して貯蔵寿命が短く、したがって局所再狭窄を強める。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、血管管腔/動脈の全領域に薬物を送達するのに効率的であり、それによって再狭窄および制御されない細胞増殖が生じるのを防ぐのに有効な、増大した領域をベースとする改善された薬物送達装置が、当技術分野において必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による実施形態を詳細に説明する前に、それらの実施形態は主に、医療装置上の均質な薬物コーティングを有する、改良されたインプラント可能な薬物送達装置の構成要素の組み合わせにあることに留意されたい。したがって、これらの構成要素は、当業者(本明細書の詳細な説明の利益を受ける者)にとって容易に明らかになる詳細で開示を曖昧にしないように、本発明の実施形態を理解することに関連する特定の詳細のみを含んで記載されている。
【0007】
本明細書において、用語「含む」(comprises)、「含む」(comprising)、または任意の他のそれらの変形は、構成要素のリストを含むプロセス、方法、物品、または装置が、それらの構成要素のみを含むではなく、リストに明記されていないか、あるいはそのプロセス、方法、物品、または装置に固有の他の構成要素を含んでもよいように、非排他的な包含を網羅することを意図する。「~を含む」によって修飾される構成要素は、それ以上の制約なしに、その構成要素を含むプロセス、方法、物品または装置におけるさらなる同一の要素の存在を排除するものではない。
【0008】
さらに、本発明による実施形態を詳細に説明する前に、本発明を説明するために使用される全ての科学技術用語は、当業者によって理解されるのと同じ意味を有することに留意されたい。
【0009】
本発明の様々な実施形態は、血管の管腔領域全体への薬物送達を可能にし、それによって管腔領域内の病変を全体的に治療し、薬物送達領域を増大させることを可能にする、改良されたインプラント可能な薬物送達装置を提供する。より具体的には、改良されたインプラント可能な薬物送達装置は、バルーンアセンブリに装着された、コーティングされた予備クリンプ済み(pre-crimped:予めクリンプされた)ステントアセンブリであり、バルーンに装着された予備クリンプ済みステントのコーティングは1種以上の薬物と1種以上のポリマーのマトリックスの均質円筒コーティングを含み、これは、バルーン上に装着された予備クリンプ済みステントのバルーンアセンブリの膨張/拡張時に、血管の管腔の円周領域をカバーする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、典型的なコーティング構成におけるステントおよびバルーン上の均質な薬物およびポリマーマトリックスのコーティングを表す。
【0011】
図2図2aは、拡張されたバルーンを用いて得られたコーティング形成物の断面図を表し、図2bは、冠状血管系において薬物送達領域が増大されたインプラント可能な装置を用いた後に得られたコーティング形成物の断面図を表す。
【0012】
図3図3は、試料のHPLC分析結果に基づくグラフを表わす。
【0013】
図4図4は、試料に関する対照/標準溶液のHPLC分析に基づくグラフを表わす。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明によれば、冠状動脈および末梢血管動脈内の治療部位に薬物を送達する、薬物送達領域が増大したインプラント型装置が提供される。バルーン上に装着された、コーティングされた予備クリンプ済みステントは、単一の統合された薬物送達医療装置を構成する。バルーンアセンブリに装着されたステントアセンブリは、複数のストラット構成要素内に画定された複数の相互接続された空間領域を有する複数のストラット構成要素を含み、それによってメッシュ様構造を作り出す。バルーン上に装着されたステントアセンブリのクリンプ付け(crimping:クリンピング)は、ステントクリンピング装置を使用する機構および手動クリンピング方法論を含む既知の方法によって行われる。
【0015】
従って、バルーン上に装着された予備クリンプ済みステントのコーティングは、バルーン上に装着されて既に予備クリンプされたステントをコーティングする方法を含む。コーティングは、ステントアセンブリの複数のストラット(strut:支柱)構成要素および複数のストラット構成要素内に画定された複数の相互接続された空間領域を通して半径方向に延びて露出するバルーンアセンブリの領域の反管腔側面を含む外面をカバーし、これによってバルーン上に装着された予備クリンプ済みステントの外面をコーティングし、ここでバルーンアセンブリの複数の部分がコーティングに曝される。
【0016】
バルーン上に装着された予備クリンプ済みステント上のコーティングは、1種以上の薬物と1種以上のポリマーとの有機溶媒可溶性マトリックスを含む。
【0017】
前記の1種以上の薬物は、抗再狭窄剤、抗増殖剤、抗炎症剤、抗血栓剤、ならびに、抗酸化剤、免疫抑制剤、細胞増殖抑制剤および細胞傷害剤を含むが、これらに限定されない群から選択される。より具体的には、1つまたは複数の薬物は、シロリムス、タクロリムス、パクリタキセル、ベータ・エスタジオール、ラパマイシン、エベロリムス、エチルラパマイシン、ゾタロリムス、ABT-578、BiolimusA9、およびラパマイシンやマイトマイシンの類似体、ミノマイシン、ノボリムス、ペミロラストカリウム、アルファ-インターフェロン、生物活性RGD、ならびにそれらの塩、エステルまたは類似体を含むが、これらに限定されない群から選択される。
【0018】
別の例示的な実施形態において、薬物は、シロリムス、タクロリムス、パクリタキセル、ヘパリン、ベータ・エスタジオール、ラパマイシン、エベロリムス、エチルラパマイシン、ゾタロリムス、ABT-578、BiolimusA9、ドセタキセルおよびマイトマイシンのうちの1種または複数種を含み得るが、これらに限定されない。
【0019】
前記の1種または複数種のポリマーは、下記を含むがこれらに限定されない群から選択される:グリコリドおよびラクチドのホモポリマー、コポリマー;トリメチレンカーボナート、ε-カプロラクトンおよびポリジオキサノンのコポリマー;ポリグリコール酸(PGA);(乳酸/グリコール酸)コポリマー(PLGA);ポリ(エチレングリコール)(PEG);ポリグラクチン;ポリグリコナート;ポリジキサノン;ポリグレカプロン;ポリグリコリド;ポリラクチド;ポリヒドロキシブチラート;ポリ(グリコリド-E-カプロラクトン);ポリ(グリコリドトリメチレンカーボナート);ポリ(L-乳酸-L-リシン)コポリマー;チロシン系ポリアリラート;ポリイミノカーボナート;ポリカーボナート;ポリ(D;L-ラクチド-ウレタン);ポリ(エステルアミド);ポリ-P-ジオキサノン;ヒアルロン酸;キチン;キトサン;ポリ-L-グルタミン酸;ポリ-L-リシン;ポリホスファゼン;ポリ[ビス(カルボキシラトフェノキシ)ホスファゼン]およびそれらの組み合わせ。好ましい実施形態では、バルーン上に装着された予備クリンプ済みステントをコーティングするために、ポリ-Lラクチドファミリーの生分解性ポリマーマトリックスが1種以上の薬物と共に用いられる。
【0020】
バルーン上に装着された予備クリンプ済みステントをコーティングする方法は、バルーン上に装着された予備クリンプ済みステント上にコーティング溶液をスプレーコーティングすることを含み、ここではインプラント可能な装置がコーティング機に設置される。コーティング機は、スプレーノズルユニット、保護管、マンドレル固定具およびホルダーを含むが、これらに限定されない。スプレーノズルユニットは、低沸点溶媒に溶解した1種以上の薬物および1種以上の生分解性ポリマーのマトリックスを含むコーティング溶液をスプレーするために使用される。さらに、予め調製済みのコーティング溶液をスプレーノズルユニットに付随する供給カップに注ぐ。
【0021】
コーティングの例を考えると、バルーンに装着された予備クリンプ済みステント(2.25×20mmの寸法)がコーティング機に設置される。1種以上の薬物および1種以上のポリマーのコーティング溶液を調製し、そして1mlのコーティング溶液を、0.5~4.0psiの不活性ガス圧を含む特定の条件で、コーティング機に装着された予備クリンプ済みステントシステムに噴霧する。このとき、コーティング機は5~40rpmの速度で回転する。コーティング溶液をスプレーコーティングする際に、コーティングを室温で5分間乾燥させ、それによってコーティング溶液中の残留溶媒を蒸発させることができる。
【0022】
コーティング機は回転可能なマンドレルを有することができる。薬物送達用の挿入可能な医療装置は、回転可能なマンドレルに装着され、この回転式マンドレルと共に回転されてもよい。薬物送達用の挿入可能な医療装置の外面はスプレーノズルユニットに露出されてもよく、それによって、ステントアセンブリの複数のストラット構成要素および複数のストラット構成要素内に画定された複数の相互接続された空間領域を通して半径方向に延びて露出するバルーンアセンブリの領域の反管腔側面をコーティングし、そうしてバルーン上に装着された予めクリンプされたステントの外面をコーティングする。
【0023】
バルーン上に装着された、予備クリンプ済みおよびコーティング済みの挿入可能なステントを体腔内に配置すると、バルーン上に装着された予備クリンプ済みステント内のバルーンは、6~9気圧の公称圧力範囲で拡張される。バルーンひいてはステントの拡張時に、バルーン上に装着された予備クリンプ済みステントの外面上のコーティングが拡張し、体腔内の標的病変に対処するためのコーティングの均質な円筒形フィルム(薄膜)形成が起こる。2.25×20mmの寸法のステントの例を考えると、コーティング上の0.7マイクログラム/平方ミリメートル~1.8マイクログラム/平方ミリメートルの範囲の薬物濃度が体腔内の標的部位に送達される態様が挙げられ、このようにして薬物送達領域が増大することになる。
【0024】
バルーン上の予備クリンプ済みステントアセンブリは、均質な薬物および関連するポリマーコーティング、ステントおよびバルーンの外面に適用された均質な薬物コーティングをさらに含み、それによって薬物送達医療装置の外側に完全な被覆が与えられる。バルーン上に装着された予備クリンプ済み及びコーティング済みのステント内のバルーンの膨張時に、コーティングは、複数のストラット構成要素ならびに複数のストラット構成要素内に画定された複数の相互接続された空間領域上に見出される。
【0025】
好ましい実施形態では、バルーン上に装着された予備クリンプ済みステント上のコーティングは、ポリ-Lラクチドファミリーのコポリマーの生分解性マトリックスから選択されたポリマーマトリックスから溶出されたシロリムス薬を含む。バルーン上に装着された予備クリンプ済みステント内のステントアセンブリは、ステントの反管腔側面上にコーティングを有するコバルトクロムステントであり、バルーンは予めクリンプされた状態にある。ステントおよびバルーンの反管腔側面上のコーティングは、複数のストラット構成要素の反管腔側面および側面上のコーティング、ならびにステントアセンブリの複数のストラット内に画定された複数の相互接続された空間領域を通して露出されたバルーン表面の半径方向延在部上のコーティングを含む。薬物送達装置が体腔内で使用されると、ポリ-Lラクチドの生分解性マトリックスは加水分解により天然の乳酸に分解され、この天然の乳酸は最終的に体腔内で6~8ヶ月の期間内に二酸化炭素および水に代謝される。
【0026】
Poly-L Lactideファミリーのコポリマーの生分解性マトリックスから溶出されたシロリムス薬を含む予備クリンプ済みステント上のコーティングは、コーティング溶液から調製される。一実施形態では、シロリムスを50mlのメタノールに溶解させ、シロリムスをメタノールに完全に溶解させた後、ポリ-Lラクチドファミリーのコポリマーの生分解性マトリックスから選択されたポリマーも、シロリムスおよびメタノールを含有する溶液に添加する。次の工程において、シロリムスおよび選択されたポリマーを含む溶液は、超音波洗浄機を使用することによって脱気される。
【0027】
図1を参照すると、バルーン上に装着され、コーティングされた予備クリンプ済みステントが、典型的なコーティング構成で示されている。図2aは、膨張/拡張したバルーンを用いて得られたコーティング形成物の断面図を表し、図2bは、インプラント可能な装置が冠状血管系に用いられた後に得られたコーティング形成物の断面図を表している。
【0028】
本発明の例示的実施形態によれば、1種または複数の薬物および関連する生分解性ポリマーマトリックスの均質コーティングは、バルーン上に予備クリンプされたステントの外面をカバーし、薬物送達用のインプラント可能な装置は、冠状動脈/血管系内に展開される。バルーンの膨張が45秒から60秒の範囲で起こる標的部位に薬物送達装置を展開する典型的な手順では、薬物およびポリマーマトリックスコーティングの均質な円筒形フィルム(薄膜)形成が、血管の湿潤状態で起こる。冠状血管または末梢血管用途におけるステントの留置中は、45秒から60秒の範囲の典型的な膨張期間が維持される。図2aに示すように、動脈壁の壁と接触している黒丸は、コーティングされたバルーンの拡張時の均質な円筒形フィルム形成を表し、それによって最大のカバー面積を有するように病変全体に薬物を送達する。
【0029】
様々な実施形態は、体腔内の複数の病巣に対処する方法を含み、これらの複数の病巣は複数の病状に関連する。病状は、再狭窄、閉塞した体腔、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞および体腔内のプラーク蓄積のうちの1つ以上であり得る。体腔は、例えば、血管、尿道、食道、尿管および胆管であり得る。好ましい実施形態では、バルーン上に装着されコーティングされた予備クリンプ済みステントは、糖尿病患者の冠状動脈/末梢動脈の病変に対処する。
【0030】
一実施形態では、バルーン上に装着された予備クリンプ済みステントの外面上のコーティングは、ステントアセンブリの内面上のコーティングの欠如を確実にし、したがって複数のストラット構成要素の管腔側面はコーティングを欠く。複数のストラット構成要素の管腔側面の下のバルーンの部分もまたコーティングを欠き、それゆえ、特に冠状動脈または末梢動脈において再内皮化(reendothelialization)プロセスを加速する。
【0031】
管腔と接触している均質な円筒形フィルム(薄膜)形成物は、冠状動脈または末梢動脈の管腔内に有利に保持され、それによって円周形状を提供する。この円周形状は、数日から数ヶ月の間の適切な薬物のバースト放出および持続放出を容易にし、それによって再狭窄または狭窄の再発の病状を持つ糖尿病患者をサポートし、さらに管腔内の細胞の制御されない増殖を防止する。
【実施例
【0032】
一例では、バルーン上に装着されたコーティングされた予備クリンプ済みステントは、サイズ3.00×20mmの予備クリンプ済みステントを含む。コーティング溶液に用いられるシロリムスの量/重量は5mgであり、これは正確な秤量天秤に従って秤量した値である。コーティング溶液は、25mlのメタノールを添加した琥珀色の100ml標準計量フラスコ中に溶解した5mgのシロリムスを含む。得られたコーティング溶液を超音波洗浄器中で2分間超音波処理し、超音波処理した後、コーティング溶液を脱気する。コーティング溶液の脱気後のコーティング溶液の理論上の標準溶液濃度は50μg/mlであり、対照/標準もまた比較分析のために調製される。
【0033】
従って、バルーン上に装着された予備クリンプ済みステントは、コーティング溶液を含む10mlの琥珀色の標準計量フラスコに浸される。コーティング溶液をシリンジフィルターを使用して0.45メンブランフィルターで濾過し、さらなる分析のためにHPLCバイアルに充填する。分析のためのHPLCシステムは、UV-VIS検出器およびカラム:BDS HYPERSIL C18を含み、ここで寸法は250×4.6mmを含み、5μmの粒子サイズが使用された。操作パラメータは、1ml/分の流速、277nmの最大波長、20μlのオートサンプラー注入容量、40℃(±2℃)のカラム温度、15℃(±1℃)のサンプル温度および12分の運転時間をさらに含む。
【0034】
図3は、試料のHPLC分析結果に基づくグラフの例示である。図3を参照すると、コーティング溶液の注入後の薬物による平均面積被覆率は878217である。
【0035】
図4は、対照/標準溶液のHPLC分析に基づくグラフの例示である。図4を参照すると、対照/標準溶液に関する平均面積被覆率は3147981である。
【0036】
標準溶液/対照に関する試料用のバルーン上に装着された予備クリンプ済みステント上にコーティングされた薬物の量は、次式を用いて計算される。
【数1】
【0037】
従って、試料の平均面積被覆率および標準溶液/対照の平均面積被覆率を使用して計算された薬物含有量は、3.00×20mm寸法の予備クリンプ済みステントの136.56μgである。
【0038】
別の実施形態では、バルーン上に装着された予備クリンプ済みステントアセンブリの、薬物送達領域が増大した均質にプレコーティングされた埋め込み可能な装置が、急性心筋梗塞(AMI)患者および血栓含有病変(TCL)患者の治療に用いられる。AMI患者およびTCL患者を治療する既存の方法論は、血栓を溶解するためにストレプトキナーゼを提供することによる血栓溶解を含む。別の方法では、血栓吸引カテーテルを使用して病変から血栓を吸引した後にDESのインプラントを行う。これらの方法論は、インプラント後に血栓を除去するのに成功しているが、ステント血栓または病巣内部の破片に起因して、流れがないまたは遅い流れの状況がしばしば生じる。DESのインプラント時に急性血栓形成が再発する傾向が高いことを考慮すると、DESのインプラント後に亜急性または遅発性血栓を回避する必要がある。したがって、本発明による薬物送達用のインプラント可能な装置を使用すると、均質な円筒形フィルム(薄膜)形成の適度な引張強度は、管腔における急性、亜急性および後期の血栓形成の発生に抵抗し、さらに緩慢な流動および非流動の状態が取り除かれる。
【0039】
本発明の様々な実施形態は、有利なことに、薬物および関連ポリマーマトリックスのコーティングの周方向の適度な引張強度のフィルム(薄膜)形成を提供し、それにより再狭窄のない状態で管腔内の病変部を最大限にカバーし、かつその血管の管腔領域内の急性、亜急性および後期の血栓形成を防止する。したがって、本発明は、薬物溶出ステントの利点と薬物溶出バルーンの利点とを組み合わせて、管腔内での薬物の利用可能性を高める。
【0040】
当業者であれば、本明細書に記載の上記の利点および他の利点は単なる例示であり、本発明の様々な実施形態のすべての利点の完全な表現を意味するものではないことを理解するであろう。
【0041】
先行の仮明細書において、本発明の特定の実施形態が説明された。しかしながら、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく本発明に対して様々な修正および変更を加えることができることを理解するであろう。したがって、仮明細書は、限定的な意味ではなく例示的な意味のものと看做されるべきであり、そのような修正はすべて本発明の範囲内に含まれることが意図されている。
本発明に包含され得る諸態様または諸実施形態は、以下のように要約される。
[1].
バルーン上に装着された予備クリンプ済みステントをコーティングする方法であって、
この方法は、
バルーンアセンブリ上にステントアセンブリをクリンプし、バルーン上に装着された予備クリンプ済みステントを形成することであって、このステントアセンブリが、複数のストラット構成要素内に画定された相互接続された空間領域を備える当該複数のストラット構成要素を含むこと、および
バルーン上に装着されたこの予備クリンプ済みステントの外面をコーティングすることであって、バルーンアセンブリの複数の部分がこのコーティングに曝されて、均質な円筒形のコーティングを形成することを含む、上記方法。
[2].
バルーン上に装着された前記予備クリンプ済みステントが、スプレーコーティングの方法によってコーティングされる、上記[1]項に記載の方法。
[3].
前記スプレーコーティングが、軸方向および回転方向における1種以上の薬物およびポリマーの有機溶媒可溶性マトリックスのコーティングを含む、上記[1]項に記載の方法。
[4].
前記コーティングが、1種以上の薬物と1種以上のポリマーとのマトリックスを含む組成物を含む、上記[1]項に記載の方法。
[5].
前記コーティング溶液が高速蒸発溶媒に溶解された1種以上の薬物および1種以上のポリマーを含む、上記[1]項に記載の方法。
[6].
バルーン上に装着された前記予備クリンプ済みステントの外面をコーティングすることにより、バルーン上に装着された前記予備クリンプ済みステントの内側表面が、コーティングされていない状態がもたらされる、上記[1]項に記載の方法。
[7].
バルーン上に装着され、コーティングされた予備クリンプ済みステントであって、
このバルーン上に装着され、コーティングされた予備クリンプ済みステントは、バルーン上に装着された予備クリンプ済みステントのバルーンアセンブリの膨張/拡張時に、血管内腔の周囲領域を覆う1種以上の薬物と1種以上のポリマーとのマトリックスの均質な円筒形コーティングを含む、
上記コーティングされた予備クリンプ済みステント。
[8].
前記均一な円筒形のコーティングが、前記体腔内の損傷に対処する、上記[6]項に記載のバルーン上に装着され、コーティングされた前記予備クリンプ済みステント。
[9].
前記薬物が、抗再狭窄剤、抗増殖剤、抗炎症剤、抗血栓剤、抗酸化剤、免疫抑制剤、細胞増殖抑制剤および細胞毒性剤のうちの少なくとも1つから選択される、上記[6]項に記載のバルーン上に装着され、コーティングされた前記予備クリンプ済みステント。
[10].
前記薬物が、シロリムス、タクロリムス、パクリタキセル、ベータ-エスタジオール、ラパマイシン、エベロリムス、エチルラパマイシン、ゾタロリムス、ABT-578、Biolimus A9、ならびに、ラパマイシン、マイトマイシン、ミオマイシン、ノボリムス、ペルミロラストカリウム、アルファ-インターフェロン、生理活性RGDおよびそれらの塩、エステルまたは類似体のうちの少なくとも1つから選択される、上記[6]項に記載のバルーン上に装着され、コーティングされた前記予備クリンプ済みステント。
[11].
前記少なくとも1種のポリマーが、グリコリドおよびラクチドのホモポリマー、コポリマー;トリメチレンカーボナート、ε-カプロラクトンおよびポリジオキサノンのコポリマー;ポリグリコール酸(PGA);(乳酸/グリコール酸)コポリマー(PLGA);ポリ(エチレングリコール)(PEG);ポリグラクチン;ポリグリコナート;ポリジキサノン;ポリグレカプロン;ポリグリコリド;ポリラクチド;ポリヒドロキシブチラート;ポリ(グリコリド-E-カプロラクトン);ポリ(グリコリドトリメチレンカーボナート);ポリ(L-乳酸-L-リシン)コポリマー;チロシン系ポリアリラート;ポリイミノカーボナート;ポリカーボナート;ポリ(D;L-ラクチド-ウレタン);ポリ(エステルアミド);ポリ-P-ジオキサノン;ヒアルロン酸;キチン;キトサン;ポリ-L-グルタミン酸;ポリ-L-リシン;ポリホスファゼン;ポリ[ビス(カルボキシラトフェノキシ)ホスファゼン];およびそれらの組み合わせの少なくとも1種である、上記[6]項に記載のバルーン上に装着された予備クリンプ済みステントをコーティングする方法。
図1
図2
図3
図4