(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】ニアアイビューイング用ウェアラブルディスプレイ
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20221107BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
(21)【出願番号】P 2019548530
(86)(22)【出願日】2017-11-28
(86)【国際出願番号】 US2017063389
(87)【国際公開番号】W WO2018098461
(87)【国際公開日】2018-05-31
【審査請求日】2020-11-17
(32)【優先日】2016-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519191846
【氏名又は名称】アマルガメイテッド ヴィジョン エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケスラー デヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】デヴィス アダム
【審査官】横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-050374(JP,A)
【文献】特開2004-287435(JP,A)
【文献】特開昭59-164518(JP,A)
【文献】特表2007-512581(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0338658(US,A1)
【文献】特開2005-148655(JP,A)
【文献】特表2004-538501(JP,A)
【文献】特開2001-356295(JP,A)
【文献】特表2009-533715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/00-30/60
H04N 5/64-5/655
G02B 26/10-26/12
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
看者が着用する光学装置であって、
変調ビームが走査鏡に向かうように励振しうるレーザ光源と、
前記走査鏡に向かう前記変調ビームの経路上にある対物レンズと、を備え、それら対物レンズ及び走査鏡によりその変調ビームに係る湾曲焦点面が画定され、
前記走査鏡在の第1瞳を看者の眼レンズ在の第2瞳へと中継するよう配置された瞳リレー光学系を備え、その瞳リレー光学系により第1瞳・第2瞳間光路が画定され、その光路が、
(i)前記走査鏡側からの前記変調ビーム由来の入射光のうち略半分を通すよう配置されており前記第1瞳と光学的に同心の第1曲率中心を有する湾曲鏡面と、
(ii)前記走査鏡から光を受け取るよう前記光路上に配置されており、第1偏光の入射光を前記湾曲鏡面へ反射させるよう且つその第1偏光に直交する第2偏光の入射光を通すよう形成されている第1偏光子であって、前記瞳リレー光学系により画定された前記光路により前記変調ビームが第1偏光子へと2回差し向けられ、第1偏光子上に2回に亘り入射した前記変調ビームが平行化されて前記第2瞳へと向かう、第1偏光子と、
(iii)前記第1偏光子と前記湾曲鏡面の間に配置された1つの1/4波長板と、を備える、
光学装置。
【請求項2】
請求項1の光学装置であって、前記瞳リレー光学系が、更に、前記変調ビームの経路上に配置された第2偏光子を備え、第1偏光の入射光を反射させるよう且つ第2偏光の入射光を通すようその第2偏光子が形成されている光学装置。
【請求項3】
請求項1の光学装置であって、前記瞳リレー光学系が、更に、前記変調ビームの経路上に配置された第2偏光子を備え、
前記光路から誤った方向に向けられた偏光を除去するようその第2偏光子が形成されている光学装置。
【請求項4】
請求項1の光学装置であって、前記第1偏光子が偏光ビームスプリッタである光学装置。
【請求項5】
請求項1の光学装置であって、前記第1偏光子がワイヤグリッド偏光子である光学装置。
【請求項6】
請求項1の光学装置であって、前記焦点面が前記湾曲鏡面と光学的に同心である光学装置。
【請求項7】
請求項1の光学装置であって、前記湾曲鏡面、第1偏光子、および1/4波長板が1つのユニットの一部として形成されている光学装置。
【請求項8】
請求項1の光学装置であって、前記湾曲鏡面の前記第1曲率中心が、さらに前記第2瞳と光学的に同心である光学装置。
【請求項9】
請求項1の光学装置であって、前記瞳リレー光学系は、看者の眼レンズの対物焦点距離内に配置されるように構成される光学装置。
【請求項10】
看者が着用する光学装置であって、
対物レンズを介しビームスプリッタへと変調ビームを差し向けるように励振しうるレーザ光源を備え、そのビームスプリッタによりそのビームのうち一部分が走査鏡へと差し向けられ、それら対物レンズ及び走査鏡によりその変調ビームに係る湾曲焦点面が画定され、
前記走査鏡在の第1瞳を看者の眼レンズ在の第2瞳へと中継するよう配置された瞳リレー光学系を備え、その瞳リレー光学系により第1瞳・第2瞳間光軸沿いに延びる光路が画定され、その光路が、
(i)前記湾曲焦点面からの光の経路上にある第1レンズと、
(ii)前記走査鏡側からの前記変調ビーム由来の入射光のうち略半分を通し且つ前記第2瞳在の第1曲率中心を有する湾曲鏡面と、
(iii)前記走査鏡からの光の経路上に配置されており、第1偏光の入射光を前記湾曲鏡面に向かう前記光軸に対してある収束角で反射させるよう、且つ、第2偏光の入射光を通すように形成されている第1偏光子であって、第2偏光は第1偏光に直交しており、第1偏光子上に2回に亘り入射した前記変調ビームは平行化されて前記第2瞳に向かう、第1偏光子と、
(iv)前記第1偏光子と前記湾曲鏡面の間に配置された1つの第1の1/4波長板と、を備える、
光学装置。
【請求項11】
請求項10の光学装置であって、前記ビームスプリッタが偏光ビームスプリッタである光学装置。
【請求項12】
請求項11の光学装置であって、更に、前記ビームスプリッタ・前記走査鏡間光路に配置された第2の1/4波長板を備える光学装置。
【請求項13】
請求項10の光学装置であって、更に、前記ビームスプリッタ・前記第1レンズ間光軸に沿って配置された第2の1/4波長板を備える光学装置。
【請求項14】
請求項10の光学装置であって、前記レーザ光源からの光が円偏光されている光学装置。
【請求項15】
看者が着用する光学装置であって、
変調ビームを対物レンズを介し走査鏡へと差し向け湾曲像を形成させるように励振しうるレーザ光源と、
前記走査鏡在の第1瞳を看者の眼レンズ在の第2瞳へと中継するよう配置された瞳リレー光学系と、を備え、その瞳リレー光学系が、
(i)前記走査鏡からの光の経路上に配置されており、第1偏光の入射光を反射させるよう且つその第1偏光に直交する第2偏光の入射光を通すように形成された第1偏光子であって、第1偏光子上に2回に亘り入射した光が平行化されて前記第2瞳へと向かう、第1偏光子と、
(ii)前記第1偏光子からの入射光のうち略半分を通す湾曲鏡面であって、前記第1瞳及び第2瞳が両方とも湾曲鏡面の曲率の中心に対して光学的に同心にあり、湾曲像が湾曲鏡面の焦点面に形成される、湾曲鏡面と、
(iii)前記第1偏光子・前記湾曲鏡面間光路にある1つの1/4波長板と、を備える光学装置。
【請求項16】
請求項15の光学装置であって、更に、前記瞳リレー光学系のうちある部分又は全体を看者の眼レンズの対物焦点距離内に配するマウントを、備える光学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、「ニアアイビューイング用ウェアラブルディスプレイ」(WEARABLE DISPLAY FOR NEAR-TO-EYE VIEWING)と題するDavid Kessler et al.名義の2016年11月28日付米国特許暫定出願第62/426655号の利益を主張する出願であるので、その全容を本願に繰り入れることにする。
【0002】
(技術分野)
本発明は、総じてニアアイ(near-to-eye)ディスプレイに関し、より具体的には同心デザインを呈する瞳リレー構成を採る結像装置を採用したディスプレイに関する。
【背景技術】
【0003】
画像コンテンツをウェアラブル(着用可能)な装置から提供するため多数の策が提案されている。その装置を着用している看者(viewer)向けに画像コンテンツを表示するため様々な種類のゴーグル、眼鏡その他の装置が発表されている。それらの装置のうち完全没入型のものでは、装置着用時に看者が見られるのはその装置が生成した像だけで、外界を見る能力がないため、仮想現実(VR)表示が提供される。また、現実世界の見え具合が異なる別のデザインでは、生成した像を現実世界の像の上に重ねることで拡張現実(AR)又は複合現実表示とされるか、或いは生成した像を何らかの方法で用い看者の視野内にある現実世界可視コンテンツが補強される。
【0004】
ウェアラブル表示装置は情報提示及び補強画像表示に関し相当な展望をもたらす装置であり、それにより多くの分野で性能及び効率を高めることができ、またそれを助けとして看者による視野内可視コンテンツの把握を増進することができる。医療及び歯科医療では、例えば、事前格納済、付随的に後処理済、或いは別観点から現在取得中の画像コンテンツをビューイング(看取/眺望)する能力を助けとして、医療従事者が、診断及び処置を助けるであろう詳細なデータをより正確に得ることができる。現状では高コストな3D結像システムからしか入手できない結像データを、さほど高価でないウェアラブル結像器具上でのビューイングに使用可能なフォーマットにて提供することで、活発な臨床環境にてこの情報を医療従事者に与えることが可能となる。その空間把握性が高く関連細部提示に秀でる立体結像は、医用画像案内又は医用データを用い患者を処置する者だけでなく他分野習熟者にとっても、ひときわ有用たりうる。加えて、非立体的2D画像コンテンツの提示であっても、それを提供するアイウェアにより阻害なく一次視野の明澄可視性が実現されるのであれば、例えば患者観察及び遠隔医療での使用並びに遠隔診断又は施療案内での使用を含め、様々な機能との関連で有用たりうる。
【0005】
多くの装置がウェアラブルディスプレイとの関連で提案されているが、装置サイズ、かさばり及び不便さ、部材及び像の配置、貧弱な画質、眼疲労その他の難点があるため、看者にとりそうした装置は何となく煩わしい。より自然なビューイング体験を提供するより賢明な策が構想され、また画質向上を目指す様々な進歩が導入されているとはいえ、それらの策の多くに係るフォームファクタ(外形因子)がやはり、それらの装置に関し広範採用を勝ち取ること、とりわけ長期使用に関するそれ又は仕事若しくはレクリエーション活動時のそれを困難化させている。それらのサイズ及び見た目がかさばっていることも、やはり、多くの人々に向けたウェアラブル結像装置の訴求力を制限する重大な要因であると考えられる。
【0006】
長年に亘る設計努力と最適化、例えば小型化と結像テクノロジ改良の積み重ねにもかかわらず、人間工学的に許容でき高画質なウェアラブル表示装置を設計することは、明らかに継続的難題のままとなっている。ウェアラブル表示装置を自然な「感触」があり容易に着用及び使用できるものにするための上首尾策を、捉えられないままとなっている。こうしたことからお察し頂けるように、高画質が提供され、軽量であり、安価であり、使いやすく、従来のデザインと比べ人間工学的に侵襲的でも面倒でもなく、且つ一次視野を阻害又は削減することなく拡張表示機会が提供されるような、単眼又は立体表示用ウェアラブルデバイスを求める需要が存している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第3748015号明細書
【文献】米国特許第8274720号明細書
【文献】米国特許出願公開第2011/0242635号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は直接的仮想網膜表示の分野、より一般にはウェアラブル装置からの仮想又は拡張現実ビューイングのための仮想画像提示として知られている分野を、進歩させることにある。本件開示の諸実施形態では、好適画質が得られ視野に対する看者の視認性がほとんど又は全く阻害されないウェアラブルビューイング装置が提供される。本件開示の諸実施形態によれば、在来ヘッドマウントディスプレイ(HMD)に多々ある光学的、生理学的及び人間工学的制約を減らす改良されたビューイング装置を提供することができる。本件開示の諸実施形態によれば、広い視野を有し、走査、ビーム幅調整及び関連する光学部材からなり多目的使用が可能な配列を有し、その配列が超ニアアイ結像配列をなしているウェアラブルビューイング装置、例えば目の対物焦点距離内に光学部材がある諸実施形態を、提供することができる。
【0009】
これらの目的は専ら実証例として与えられており、その種の目的を以て本発明の1個又は複数個の実施形態での例とすることができる。本件技術分野に習熟した者(いわゆる当業者)にとっては、それら以外の望ましい目的や、本願記載の発明により本質的に実現される長所は、想起可能であり又は明白であろう。本発明は添付する特許請求の範囲によって定義される。以下の記載において、光に関する「偏向」という用語は、「偏光」を意味している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本件開示の一態様によれば、
ビームが走査鏡に向かうように励振しうるレーザ光源と、
その走査鏡と光学的に同心であり且つ部分透過性な湾曲鏡面と、
それら走査鏡・湾曲鏡面に配置されており第1偏向軸を有する第1偏光子と、
それら偏光子・湾曲鏡面間に配置された1/4波長板と、
その湾曲鏡の下流に配置されており第1偏向軸に直交する第2偏向軸を有する第2偏光子と、
を備えるニアアイビューイング用光学装置が提供される。
【0011】
本件開示の代替態様によれば、看者が着用する光学装置であって、
変調ビームが走査鏡に向かうように励振しうるレーザ光源と、
その走査鏡に向かう変調ビームの経路上にある対物レンズと、を備え、
それら対物レンズ及び走査鏡によりその変調ビームに係る湾曲焦点面が画定され、
走査鏡在の第1瞳を看者の眼レンズ在の第2瞳へと中継するよう配置された瞳リレー光学系を備え、それら第1瞳・第2瞳間光軸に沿い延びる光路がその瞳リレー光学系により画定され、その光路が、
(i)変調ビーム由来の入射光のうち略半分を通すよう配置されており第1瞳在の第1曲率中心を有する湾曲鏡面と、
(ii)走査鏡からの光を受け取るよう光路上に配置されており、且つ第1偏向の入射光は湾曲鏡面へと反射させその第1偏向に直交する第2偏向の入射光は通すよう形成されている第1偏光子と、を備え、瞳リレー光学系により画定された光路によって変調光ビームが第1偏光子に2回差し向けられ、第1偏光子上に2回に亘り入射した変調光ビームが平行化され第2瞳へと差し向けられるものが、提供される。
【0012】
本発明の上述その他の目的、特徴及び長所は、添付図面に描かれている通り、本発明の諸実施形態についての後掲のより具体的な記述から明らかとなろう。図中の諸要素は必ずしも互いに同縮尺ではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1B】前方を見ている起立看者の縦視野並びにその通常視野及び周辺視野を示す模式的側面図である。
【
図1C】前方を見ている着席看者の縦視野並びにその通常視野及び周辺視野を示す模式的側面図である。
【
図1D】目の諸部分並びにその目の対物及び対像焦点距離を示す断面図である。
【
図1E】本件開示の実施形態に係る画像源の構成諸部材を示す模式図である。
【
図1F】結像装置のアイピースに関し従来の「パンケーキ型」デザインを示す模式図である。
【
図2A】本件開示の実施形態に係るニアアイビューイング用結像装置における瞳リレーの構成諸部材を示す斜視図である。
【
図2B】本件開示の瞳リレー実施形態に係るニアアイビューイング用結像装置の構成諸部材を示す側面図である。
【
図2C】ニアアイビューイング用瞳リレーの代替的実施形態の側面図である。
【
図3A】本件開示の実施形態に係る走査及びプリフォーカス用入射光学系を示す模式図である。
【
図3B】本件開示の実施形態に係る走査及びプリフォーカス用入射光学系を示す模式図である。
【
図3C】その入射光学系に係る面及びレンズ特性のリストである。
【
図4A】「パンケーキ」型光学構成を有する瞳リレーを用いたニアアイビューイング用結像装置に係る構成の側面外観を示す図である。
【
図4B】
図4Aの屈折型構成に係る面及びレンズ特性のリストである。
【
図4C】瞳リレーを用いるニアアイビューイング用結像装置に係る構成の斜視外観を示す図である。
【
図5A】看者の顔上にある結像装置の側面外観を示す図である。
【
図5B】看者の顔上にある結像装置の正面外観を示す図である。
【
図6A】本件開示の代替的実施形態に係る瞳リレーを採用する結像装置の模式的側面外観を示す図である。
【
図6B】本件開示の代替的実施形態に係る瞳リレーを採用する結像装置の模式的側面外観を示す図である。
【
図6C】本発明の他の実施形態に係る結像装置における瞳リレーの斜視外観を示す図である。
【
図7A】看者の目に対する結像装置の外観を示す図である。
【
図7B】看者の目に対する結像装置の別方向外観を示す図である。
【
図7C】看者の目に対する結像装置の別方向外観を示す図である。
【
図7D】看者の目に対する結像装置の別方向外観を示す図である。
【
図8A】歪み補正用ビームスプリッタ付対称配列の模式的側面外観を示す図である。
【
図8C】非補正時に
図4Aの実施形態に係る走査により生じうる台形歪みを示す図である。
【
図8D】その歪みに関し果たされた補正を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願中に設けた図面は、本発明に従い動作原理及び個別光路沿い部材間関係を例証するため与えられたものであり、実際のサイズ又は縮尺を示す意図で描かれてはいない。基礎構造関係又は動作原理を強調するため、幾らか誇張が必要とされたところがある。記載実施形態の実現に必要であろう幾つかの従来部材、例えば電力供給、外装及び搭載に用いられる支援部材が図面に示されていないのは、本発明についての記述を簡略化するためである。後掲の図面及び文章中、類似部材には類似する参照符号を割り振ってあり、既に記述されている部材の構成部材並びに配列又は相互作用に関する類似記述が省かれているところもある。
【0015】
語「第1」、「第2」等が用いられている場合、それは必ずしも何らかの順序関係又は優劣関係を表していないが、ある要素又は期間を別のそれからよりはっきり区別するため用いられているところもある。語「複数」は少なくとも2個を意味している。
【0016】
本件開示の文脈上、語「励振しうる」は、パワー受給時にまた付随的には許可信号受信時に機能を実行するよう稼働される部材又は装置のことを述べている。
【0017】
本件開示の文脈上、位置指示語例えば「上」及び「下」、「上方」及び「下方」並びにそれに類する表現は、アセンブリ又は構造の様々な面又は外観を差別化すべく記述的に用いられており、光学装置のそのアセンブリについて何か必須な姿勢を述べてはいない。本願中の用語「上流」及び「下流」はそれら自身の在来用法を有するものであり、光が光路沿いに進む際の光源又は調光若しくは方向転換部材の相対位置を表している。
【0018】
本件開示の文脈上、語「結合された」の意図は、2個以上の部材間に機械的連携、連結、関係、結合又はリンクがあり、ある部材の配置がそれの結合先部材の空間配置に影響することを、指し示すことにある。機械的結合のため2個の部材を直接接触状態にする必要はなく、逆に1個又は複数個の介在部材を通じリンクさせることもできる。
【0019】
本件開示の文脈上、句「左目像」は看者の左目中に形成された虚像のことを述べており、「右目像」は看者の右目中に形成された対応する虚像のことを述べている。句「左目」及び「右目」を形容句として用い、立体像対の各画像を形成する結像部材を区別してもよく、そうした考え方は立体結像分野習熟者には広範にご理解されている。
【0020】
光学的瞳リレーシステムにより光軸が画定され、また第1位置在の第1瞳にて入射したビームを第2瞳位置へと伝える光路が画定される。即ち、第1位置在のアパーチャ(開口)から出てくる走査ビームは、皆、それ相応の倍率で差し向け第2位置にて重ならせることができる。本件開示の諸実施形態では瞳拡大が必要でなく、本願記載の瞳リレー光学系は1:1リレーとすることができる。とはいえ付加的な拡大を施してもよい。第1瞳,第2瞳それぞれの位置におけるビーム角は同一ではなく、リレーシステムへの入射瞳ではビームが発散的、出射瞳ではビームが平行となる。瞳リレーシステムにおける入射瞳及び出射瞳は光学部材により明瞭に画定される。
【0021】
周知の通り光学システムには二組の共役面がある。一組目の共役面はその光学システムの物面及び像面で構成され、二組目の共役面は入射瞳及び出射瞳で構成される。指定がなければ、結像議論時には、共役面とは物面及び像面のことであると理解される。語「瞳リレー」を、光学分野及び本件開示にて用いられるところに従い用いることで、その光学システムの主機能が入射瞳を出射瞳へと結像させることであると強調される。結像を瞳リレー光学系を用い実現できること、しかしその動作原理が第1瞳の第2瞳への中継に依拠することは、光学デザイン技術習熟者にはなじみ深いことである。
【0022】
光学システムに係る収差補正条件は、そのシステムが物対像のイメージャであるのかそれとも瞳リレーであるのかにより異なる。結像システムは一般に非コヒーレント光と併用されるので、物点間位相差はほとんど又は全く関心事にならない。しかしながら瞳リレーでは入射瞳での位相が考察対象となる。典型的には、瞳リレーは入射瞳を中心としある画角をなす平行化ビームを受け入れ、通常は平行化され出射瞳を中心としている出射ビームをもたらすので、入射ビームの位相の劣化を伴わない。
【0023】
光学設計習熟者には周知の通り、二組の共役面に対応する二組の収差を補正する必要があろう。光学系習熟者の間では、出射瞳に対する入射瞳の共役に関わる一組の収差が「瞳収差」と称されている。例えば、周知な結像システムたる「オフナーシステム」が、「単位パワー結像カタプトリックアナスティグマート」(Unit Power Imaging Catoptric Anastigmat)と題するOffner名義の特許文献1にて開示されている。オフナーシステムは像平面にある弧に亘り補正されるよう設計される。しかしながらリレーとしては補正されず、入来する平行化ビームは軸上でさえも強く劣化することとなる。「同心アフォーカルビームリレー」(Concentric Afocal Beam Relay)と題するKessler名義の特許文献2では、オフナーイメージャをアフォーカル(無限焦点)瞳リレーに転換するのに必要な諸工程及び大規模修正が論ぜられている。
【0024】
注目すべきことに、大抵の瞳リレーはアフォーカルである。即ち、瞳リレーでは入射ビーム及び出射ビームが共に平行化ビームである。そのシステムは、典型的には屈折力を有していないが、通常は二群で構成されていて、その双方が光屈折力を有し、その光学系群それぞれがフォーカル(有限焦点)なものである。それら二群の組合せによりアフォーカルなリレーがもたらされる要領は、アフォーカルなケプラー式望遠鏡が中間焦点面を伴う2個の正群で構成されるのと同じ要領であり、それら二群はそれ自身の二通りの焦点距離により大きく分離される。
【0025】
本件開示の諸実施形態に係る瞳リレーはフォーカルである。フォーカル瞳リレーにより、集束入射ビームを受け入れ平行化ビームを出射する光路が画定される。一般に、フォーカル瞳リレーでは、備わる複数個のレンズ素子及び関連する光学的構成諸部材を少数個の群に編成し、群をなしている素子を一体接合又は密接一体クラスタ化することができる。こうした特徴があるので、用いられる群例えば鏡が隔たり合っているアフォーカルリレーに比べ、フォーカル瞳リレーはコンパクトになる。アフォーカルリレーの一例がOka名義の特許文献3にて与えられている。注記すべきことに、光路は光軸を追うけれども全点でその光軸に対し共線的であるとは限らない。光軸は、2個の瞳を結ぶ1本の非分岐線となりうるほか、後掲の諸実施形態に記載の通り、方向が異なる多数の直線セグメントを有し屈曲しているもの、例えば鏡又は反射偏光子光学系を用いるそれとなることもある。
【0026】
一般に、結像光学系に比した瞳リレーの特徴は、その入射瞳及び出射瞳が光学システム幾何により明瞭に画定されることにある。本件開示のフォーカル瞳リレー光学系は結像タスクにとりひときわ意義のある二通りの機能、即ち(i)走査鏡が位置する入射瞳を看者の目の虹彩の位置にある出射瞳と共役化する、並びに(ii)湾曲している入射焦点面を平行化する、という機能を実行する。
【0027】
フォーカル瞳リレーとは対照的に、アフォーカルリレーでは第1の機能(i)、即ち入射及び出射瞳の共役化しか提供されない。平行化がアフォーカルリレーにて提供されないのは、入射ビームが既に平行化されているため及びそのリレーシステムに光屈折力がないためである。
【0028】
語「斜め」は、本件開示にて用いられるところによれば、平行でも直交でもない角度関係、即ち90°の整数倍でない角度関係を表している。実際のところ、2個の光学面が平行又は直交から少なくとも±約2°以上ずれていれば、それらは互いに斜めであると考えられる。同様に、直線及び平面が平行又は直交から少なくとも±約2°以上ずれていれば、それらは互いに斜めであると考えられる。実質的に平行な平面は平行に対し±2°の範囲内である。同様に、実質的に平行なビームは平行に対し±約2°の範囲内である。
【0029】
本件開示の文脈上、語「約」は、計測との関連で用いられている場合、計測誤差及び不正確さに係り実際上許容される期待公差の範囲内、という意味である。ある医療従事者による計測と別の医療従事者によるそれとで異なるであろうから、例えば特定の看者の視野の広がり具合を求める際の計測差異に関しては、幾ばくかの穏当な公差が許容されねばならない。
【0030】
微小電気機械システム(MEMS)デバイスは多数の機械部材を有し、それらにより小型機械素子及び小型電気機械素子からなるシステム(即ちデバイス及び構造)を提供するものであり、半導体デバイス形成用のそれに類する微細製造技術を用い作成される。MEMSデバイスは、可動素子を有していない比較的単純な構造から、集積微細電子回路の制御下にある複数個の可動素子を伴う極めて複雑な電気機械システムまで、多岐に亘りうる。MEMSデバイスでは、その素子のうち少なくとも幾つかが、その素子自体が可動か否かは別として、機械的機能を有する。MEMSデバイスのことを「微細機械加工デバイス」、即ち微細システムテクノロジを用い形成され動作するデバイスとも呼ぶことができる。個別のMEMS素子の物理寸法は、1μmをずっと下回る寸法から数mmに及びうる。本件開示の文脈上、MEMSデバイスにより提供される機械可動素子例えばリフレクタ(反射器)は、光を時間的及び空間的に変調することでラスタ走査パターンを用い虚像を提供するよう励振しうるものである。
【0031】
実像を形成する方法とは対照的に、虚像は表示面上には形成されない。即ち、虚像があるように見えたところに表示面を配置したとしても、その面上に像が形成されることはなかろう。虚像を形成する光学システムによりビューイングパラメタ、例えば遠点からの見かけ上の角度幅やその他の特性も決定される。虚像表示には、拡張現実及び仮想現実ビューイング向けの多数の生来的長所がある。例えば、虚像のサイズは表示面のサイズや在処で制限されない。加えて、虚像の発生元たる物が小さくてもよく、例えば拡大鏡によりその物の虚像をもたらせばよい。おわかり頂けるように、ある程度の距離だけ離れて見えるところに虚像を形成することで、実像投射システムに比べ、より現実的な視覚体験を提供することができる。実像形成時には、スクリーンその他のディスプレイでの偽像を補償しなければならないことがあったが、変調光のみを用い虚像を提供すれば、補償する必要性が全くなくなる。
【0032】
従来用法における語「視野」(FOV)は、比較的正常な視力を有する看者が昼光ビューイング条件下で利用可能な視野全体に、広く関連付けられている。視野は、通常、横(水平)方向及びそれに直交する縦(垂直)方向に沿い計測される。
図1Aは、本件開示に従い横視野の角度区分がどのように定義されるかを示したものである。単眼での横視野の限界は、概ね、120°より僅かに広く中央横視線S1を中心とするものと考えられ、線16及び18間に収まっている。横FOVにおける記号認識は、概ね、横視線S1から±約30°以内の領域内であると考えられ、線56及び58間に収まっている。
【0033】
本願にて縦視野と称している計測対象が
図1Bに模式的に示されている。図示の横視線S1は、起立看者では水平線に対し概ね約0°をなし延び、真の水平線からの差異が±約2°以内の線である。横視線は第1眼位(primary position of the eye)として定義されており、この眼位では網膜平面(retinal plane)が視覚頭部横断平面(transverse visual head plane)と同一平面になる。この平面は、目の第1網膜平面(principal retinal plane)、動眼神経核(oculomolar nucleus)及びカルシミン皮質(calcimine cortex)により定義されている。定義によれば、それは外眼角外耳道線(canthomeafal line)に対し定常的な関係を有していて、リスティングの平面(Listing's plane)に対し垂直である。正常視力を有する成人看者では、縦方向の全FOVが、概ね、水平線に対し約60°上方(+60°と表現)から約75°下方(-75°と表現)まで延びており、虚像表示向けの通常「使用可能」縦視野(FOV)F1は、典型的には、横視線S1に対し+25°上方から-30°下方までの角度範囲内として定義されるものと考えられる。
【0034】
視野の諸部分を互いに区別することができる。中心視野(foveal vision)は、網膜錐体密度が最高であるため最高の視力を呈するところであり、人間の視野の中心部分が包括されている。この領域は私たちの視神経のうち約50%を使用する。傍中心視野(parafoveal vision)は、網膜錐体濃度が高いため高質視力だけでなく色覚をももたらすところであり、従って、概ね、視線に対し±約5°以内の角度をなすものと考えられる。約10°に亘るこの傍中心視野は、総じてその視線を中心とする円状であり、22インチ(1インチ=約2.5cm)の距離にて約4インチの直径を呈する。成人看者に関する近似としては、この領域は、腕を長く伸ばし手に持ったときの、標準的なコンパクトディスク(CD)やディジタルビデオディスク(DVD)の表面よりも、僅かに小さくなるであろう。この領域外の視野は周辺であると考えられ、もたらされる視覚情報はかなり少ない。人間の目の網膜桿体分布からすると、大半の周辺視覚情報は傍中心視野を越え最初の約20°以内に存する。
【0035】
本願記載の諸実施形態に関しては、通常使用可能縦FOV F1が傍中心FOVよりも広く、視線に対しおよそ+25~-30°の範囲内に存するものと、定義されている。FOV F1は概ね色識別性限度内にあるものと考えられ、この領域の遙か外側にある視角では色識別性がかなり劣化する。
図1B及び
図1Cに示すように、通常縦FOV F1の下部、即ち前方横視線S1より下方の部分は、横視線S1に対し角度θ以内に収まっている。看者の+60~-75°縦視野限界内にある領域だが、通常縦FOV F1より上方又は下方の諸領域内にある領域は、「縦周辺視覚」野或いは単純に周辺縦視野であると考えられ、それぞれ上部F2A,下部F2Bを伴っている。
【0036】
図1Bに示す周辺縦視野の二部分のうち、上部F2Aは視線S1より上方にあり、それに対応する下部F2Bは横視線S1より下方にある。上部F2Aは、視線S1から約60°のところを示す線12と、視線S1の上方約25~30°にあるFOV F1上部境界線と、の間に存している。周辺縦視野の下部F2Bは、-約30°下方まで延びるFOV F1より下方にあり、視線S1から-約75°のところを示す線14が部分F2Bの境界とされている。即ち、周辺縦FOVの下部F2Bは、横視線S1に対しおよそ-30~-75°の間に存している。
【0037】
視線S1は概ね頭部姿勢に追従する。例えば着席看者では、基準となる視線S1が水平線から約15°下方に偏倚する傾向となる。傍中心視野及び周辺視野を画定している他の縦座標及び角度は皆、
図1Cに模式的に示されている通り、然るべく偏倚する。本件開示の文脈上、縦視野に関し基準とされる視線S1は、起立看者では水平線相当であり、着席看者では水平線から約15°傾斜していると考えられる。この視線のことを以下の記述では横視線と称している。
【0038】
断面側面図たる
図1Dに示されているように、人間の目Eの光学システムは、主にレンズ(水晶体)24及び角膜28を伴う光学部材と考えられるものであり、レンズ24、角膜28及び周囲媒質の幾何形状により決まる焦点距離を有している。正常視力で視力非矯正の成人では、目Eの前方焦点距離F
oが約16.7mmとなる。正常で非矯正の成人では、目Eの後方焦点距離F
iが約22.3mmとなる。前方焦点距離F
oは気中、後方焦点距離F
iは目Eの屈折性液体媒質中であり、後者により実光学距離寸法が
図1Dに示す如く効果的に短縮される。虹彩、即ち目の瞳を結像システムに仕立てそのアパーチャを約7mm未満に制限するそれは、明瞭性に鑑み
図1Dに示されていない。高輝度照明条件下では、瞳直径が虹彩により制御され、平均して僅か約2.5mmとなる。「正常」な目であれば、遠方物体からの平行光線を網膜26上へと合焦させることで、無限遠由来と考えられる平行光線を目Eの後部にある網膜26上の一点に合焦させ、そこで視覚情報の処理を開始させることができる。他方で、物を目Eに近づけていくと、筋肉の働きによりレンズ24の形状が変わり、光線によって網膜26上に倒立実像が形成されることとなる。レンズ前方にある理論的合焦領域が対物結像ゾーンである。
【0039】
模式的ブロック図たる
図1Eに、本件開示の実施形態に係る変調ビーム形成用画像発生器212の構成諸部材を示す。制御論理プロセッサ20は、メモリ又は他の何らかの画像源から例えば無線伝送(例.Bluetooth(登録商標))を介し画像データを取得し、看者の各目内に像を形成するのに必要なタイミング信号及び制御信号を提供する。制御論理プロセッサ20は、カラー画像コンテンツを提供すべくライトモジュール30と信号通信してモジュール30からの光を変調させる。周波数、持続時間、強度及び色の変調が行われる。ある実施形態では、ライトモジュール30が赤色、緑色及び青色のレーザダイオード32r、32g及び32bそれぞれにより変調光を提供し、光路に沿い且つ付随的な対物レンズL10を介し光導波路、例えば光ファイバ40に結合させる。この変調ビームの特徴はレーザ光パルスで色、持続時間及び強度を変化させうることにある。認知可能な像を形成するにはこの光でラスタ走査する必要がある。光ファイバ40は、この光源光を、MEMS走査器50に、例えば付随的なコリメータレンズL12を介し差し向ける。その付随的なコリメータレンズL12によって、焦点に加えビームサイズを改変することができる。その代わりに付随的なビームエクスパンダを用いることもできる。励振時には、後に詳述の如くラスタ走査パターンに従い、入射レンズ240を介し光ファイバ40からの光を反射させることで、MEMS走査器50が走査する。電力は電源22例えば電池により供給される。
【0040】
立体結像を実行する諸実施形態では、光ファイバ40及び走査器50を目E毎に設ければよい(明瞭性に鑑み
図1Eには単眼Eに係るシステムしか示されていない)。同じライトモジュール30を用いて両目向けに像を生成すること、例えば左目及び右目変調光を同期生成することもできるし、それに代え、目E毎に別々のライトモジュール30を設け、それに相応しい画像処理論理を制御論理プロセッサ20により提供し、且つその光路に相応しい光扱い部材で左目像及び右目像それぞれを形成することもできる。
【0041】
ライトモジュール30は、入力画像データに従い変調光ビームを生成する市販のモジュール状部材、例えば米国ワシントン州レドモンド所在のMicrovision, Inc.発のピコプロジェクタ(商品名)デバイスとすることができる。一例としては、このデバイスでは、3個の原色レーザダイオードからの638nm(赤色)、517nm(緑色)及び450nm(青色)の光を用い像が形成される。原色に代え他の波長を用いることもできる。それらのレーザは低パワークラス1デバイスにすることができ、それらの光は、有害と思われるエネルギレベルになる懸念無しで看者の目に差し向けることができる。各原色レーザからの光を別々に提供することで、赤色、緑色及び青色ビームが矢継ぎ早に提供されるようにすることができる。これに代え、相異なる原色波長を結合させてカラー像を形成することもできる。ビーム結合技術の例としてはダイクロイック結合器の使用を伴うものがある。光ビームのスポットサイズを互いに異ならせることで、例えば効率を改善することができる。後に詳述する通り、光ビームを平行化して最小好適サイズにすることや、光ビームを拡大して小型又は大型MEMS走査鏡に満ちさせることができる。ビームを略ガウス的なプロファイルから平頂プロファイルへと変換することで、ビームホモジニティを改善することができる。
【0042】
一例に係る光ファイバ40をシングルモード光ファイバとすることができる。この種の光導波路は、後述の通り、看者の顔の向かい側に走査器50をフィットさせるのに用いられるバンド内に、容易に嵌め込むことができる。その光ファイバに角度付その他の有形終端部を設け、例えば後方反射防止に役立てることができる。1本のファイバを用いて、全てのレーザダイオード32r,32g,32bから光を案内することができる。或いは、3本のファイバを用いつなぎ合わせることで、走査器50に備わる光出射部にて1本のファイバを形成することもできる。
【0043】
具体的なウェアラブル結像装置にて用いられる走査器50の光学的構成諸部材は多様たりうるものであり、MEMS走査器に加え、別の種類の反射型及び屈折型リレー光学系、光屈折力を提供可能又は不能な屈曲光学系、並びに画像コンテンツを目E内へと走査供給するのに用いられる他の諸部材が、それに含まれうる。走査器50の一部となりうる代替的諸部材について、本件開示の後掲の諸実施形態との関連で述べることにする。
【0044】
模式図たる
図1Fに、看者向け像形成を意図したアイピースに備わる在来「パンケーキ」型光学システム90の分解外観を示す。この光学システムでは、偏向を用い変調ビームの光路をそれ自身の上に折り重ねており、また湾曲鏡M1付反射集束光学系が採用されている。湾曲鏡M1により光軸OAが画定されている。従来型画像源60たる陰極線管その他の放射面が二次元(2D)像野を提供する。画像源60は湾曲鏡M1の前方焦点面に位置している。平行化ビームが個々の野点から目Eに供給される。この在来パンケーキ型光学系デザインでは、倍率が非常に高くて実質的には無限大であると考えることができる。
【0045】
パンケーキ型システム90が稼働する際には、まず、無偏向光であるCRTその他の画像源60からの変調ビームが偏光子POL1により直線偏向され、1/4波長板QWP1により左旋円偏向光に変換される。その光は半透明な湾曲鏡M1に通され、半分の光が反射されて失われる。鏡M1は「部分透過」又は「半透過」又は「半透明」であると考えられるものであり、それによりQWP1からの入射光のうち少なくとも約35%を透過させることができるので、好ましくはピーク効率を狙い入射光のうち50%を透過させ50%を反射させる。部分透過又は半透明湾曲鏡を透過するのは高々入射光の65%である。
【0046】
透過した円偏向光は、もう一つのQWP2に通されて垂直直線偏向光になり、反射偏光子たる偏向ビームスプリッタPBS1へと差し向けられ、そこでその光の大半が湾曲鏡M1の方へと遡行反射される。PBS1からの反射光はQWP2を再び通って右旋円偏向光になる。湾曲鏡M1は再びその光のうち約半分を反射させ他の半分を透過により失わせる。鏡M1からの反射偏向光は今や左旋円偏向光となっており、1/4波長板QWP2により水平偏向光へと変換され、反射偏光子又は偏向ビームスプリッタPBS1、更には付随的な浄化偏光子POL3を介し、看者の目E内へと通される。1/4波長板(QWP)内を光が通過するたびにその位相が45°位相分だけ遅れ偏向状態が変化する。
【0047】
見た目に複雑な偏向及び光差し向け機構であるにもかかわらず、パンケーキ型光学系は良好に機能するけれども、光源60にて原発生した光のうち75%超という多大な損失が代償となる。この不効率さ及び顕著な光損失故に、パンケーキ型光学構成は、多くの用途で従来型変調光源と併用不能になっている。とはいえ、本願出願人が認識したところによれば、レーザ及びMEMS変調併用時の高レベルな光減衰が許される場合、即ち看者用アイボックスに供給される光エネルギを制限することが望まれる場合には、この光学的構成は有用たりうる。
【0048】
有益なことに、この構成では軸上鏡が用いられているので、その鏡への入射ビームを出射ビームから分離させるために他の手段を設ける必要がなく、且つ像形成用光路の一部分又は他部分を屈曲させる必要性がない。従来技術では、目・鏡間光路方向転換用にビームスプリッタが採用され、その方向転換が例えばGoogle, Inc.によるGoogle-Glass(登録商標)システムに倣い、或いは湾曲鏡を傾けることで行われていたため、大きな軸外収差が入り込んでいた。
【0049】
このように、パンケーキ型デザインには、傾斜鏡システムに比べ広視野(FOV)に亘り高分解能である、という長所がある。このパンケーキ型光学デザインは、スプリッタを用いた単一鏡システムに比べ小さく、そのアイレリーフが良好になる。
【0050】
[実施形態#1]
斜視図たる
図2A及び側面図たる
図2Bに、本件開示の実施形態に係る1:1瞳リレー装置250の配列を用いたニアアイビューイング用結像装置200の構成諸部材を示す。本実施形態では、「パンケーキ型」光学構成を光リレーシステムとして採用し、そのシステムにてビーム整形及び集束用反射部材を用い光軸を画定し且つ入射瞳を出射瞳へと中継している。
図2A及び
図2Bに示されている配列では、結像装置200により、画像発生器212在の入射瞳P1が看者の目E在の出射瞳P2へと中継される。言い換えれば、結像装置200により、焦点面214在の湾曲像(焦点面214に生成された像はその光学系に対し「物」位置を占める)が網膜R在の像野へと運ばれる。即ち、瞳リレー光学系としての役割に加え、装置200では更に、画像発生器212からの集束走査変調ビームにより生じ焦点面214に形成された実像である湾曲空中「物」を、網膜Rへと結像させる。
【0051】
画像発生器212は、入射瞳P1在の走査鏡により集束変調光ビームを差し向けることで焦点面214に湾曲空中像を形成し、それを結像装置200による以後の結像で「物」とする態で、実現されている。空中像における変調光は直線偏向光であり、第1偏向の光を透過させその第1偏向に直交する第2偏向の光を反射する偏光子210へと差し向けられる。そこを透過した変調光は、相応な位相遅延を施す1/4波長板216を介し、部分反射(公称50%反射)部分透過(公称50%透過)性であり一種のビームスプリッタとして働く湾曲鏡220へと差し向けられ、それによりその変調光ビームが集束される。鏡220による一部の光の反射はその光の円偏向を反転させるものであり、その光は1/4波長板216を透過しつつ逆方向に伝搬していく。鏡220を透過した光は偏向し円偏光子230により吸収される。鏡220からの反射光はその円偏向が変化しており、偏光子210により反射され1/4波長板216内に戻っていく。この光のうち一部分が湾曲鏡220内を伝搬し、通り抜けて付随的な円偏光子230による洗浄に供される。この洗浄は、直交方向の偏向を有しており画像ゴースト発生を引き起こしかねないあらゆる漏洩光を除去するのに、役立つ。結像装置200からの平行光は、看者の目E内に差し向けられ、出射瞳P2に至り、最終的には看者の網膜Rに至って図示の如く像を形成する。
【0052】
図2Bのパンケーキ型光学システムは、
図2Aの配列と同じく素子210、216、220及び230を有する瞳リレー装置250である。この第1実施形態では構成部材間にエア空間が存在しているので、語「エアパンケーキ」をこの光学配列に適用することができる。
【0053】
偏光子210は走査鏡からの光路上に配置されており、光軸OAに対し発散的な第1角度で入射した第1偏向の入射光を湾曲鏡220の表面の方へと透過させるよう、形成されている。その際、偏光子210は、鏡220からの入射光のうち、透過入射光の第1偏向と直交する第2偏向を有し且つ偏光子表面法線に対し第2角度をなすものを、反射させる。偏光子210及び湾曲鏡220は、協働して変調ビームを偏光子210に2回差し向けるよう光路沿いに配置されている。即ち、偏光子210は湾曲鏡220に至りそこから戻ってくる光路上にあり、その光路を湾曲鏡220の方へと折り返させている。光はその偏光子からの2回出射により平行化され、瞳P2の方向へと且つ光軸OAに対し収束的な態で差し向けられる。
【0054】
パンケーキ型構成によりアイピースを形成しそれにより光源光を平行化する従来配列とは違い、本件開示の諸実施形態では、パンケーキ型光学系を用い
図2B中の走査鏡212が観察者の虹彩232へと中継される。これにより、
図2A上の入射瞳P1がその走査鏡にあり出射瞳P2が目にある瞳リレーが形成される。ここでのパンケーキ瞳倍率は有限であり、例えば-約1が望ましい。
【0055】
焦点面214在の湾曲像と鏡220は、湾曲鏡220により画定される瞳P1と実質的に同心であり、焦点面214在の像と鏡220とで画像発生器212在の湾曲中心又は軸が共有されている。画像発生器212に備わる走査鏡の回動軸と、湾曲鏡220の曲率中心とが、同じ線沿いに所在している。
【0056】
本件開示の文脈上、2個の造作物が瞳P1又はP2と「実質的に同心」であると考えられるのは、それらが同一且つ共通の湾曲軸及び曲率中心を共有しており、その度合がそれら2個の湾曲造作物の径方向距離のうち大きい方の20%以内であるため、それらに対応する曲率中心間の距離に差があってもそれが僅かであり、その軸又は中心からの径方向距離のうち大きい方の20%以内になるときである。
【0057】
偏光子210及び230は、例えば、米国ユタ州オレム所在のMoxtek Inc.発のデバイス等、ワイヤグリッド偏光子とすることができる。
【0058】
本件開示の諸実施形態の瞳リレー光学系により画定される光路のデザインは、本質的に無収差である。軸外ビームが軸上ビームのそれと厳密に同一の光学系に出会うので、一般に光学システム性能を制限するところの軸外収差、例えばコマ収差、非点収差及び歪みが現れない。即ち、本ディスプレイシステムでは広いFOVを提供することができる。ある実施形態によれば、
図2A及び
図2Bに示すシステムのFOVが横方向には43°、縦方向には28°となる。
【0059】
なお、
図2A及び
図2Bのいずれでも、網膜Rが平坦面として理想表現されているが、これはこのモデルにおける眼レンズが理想的な近軸レンズとして表現されているからである。より現実的な眼モデルを用い目を表現する際には、網膜を湾曲網膜として表現する。
【0060】
図2A及び
図2Bに示されている実施形態を、
図2Cに示す如く、光軸OAに沿い鏡220の湾曲が反転している1:1瞳リレーと、併用することもできる。瞳リレー装置260では、焦点面214に形成される空中像が円偏向光で組成される。通常は、その光のうち半分が半透明湾曲鏡220により却けられ、半分が透過される。透過した部分はQWP216内を通って直線偏向光になり、ひいては反射偏光子210から湾曲鏡220へと遡行反射される。この光は平行化され、その偏光子210を介し虹彩232の方へ透過する直交偏向の態で、偏光子210を介し瞳P2へと差し戻される。付随的な浄化偏光子236を用いることで、反射偏光子を介し漏れてくることがある誤偏向光を除去することもできる。湾曲鏡220は、瞳P2に中心があり又はそれと同心な曲率半径を有している。
図2Aの実施形態と同様、偏光子210上に初めて入射した光は光軸OAに対し発散的である。偏光子210上に2回に亘り入射した光は平行化されて光軸OA沿いに差し向けられる。
【0061】
図2A~
図2Cの配列を用いた別の実施形態では、湾曲鏡220を、50-50半透明鏡ではないものの、第1偏向の光を透過させ且つそれに直交する偏向状態の光を反射する湾曲反射偏光子として動作させる。平坦反射偏光子210が半透明鏡で以て置換される。結像技術習熟者であれば、湾曲鏡220を反射偏光子として用いまた平坦半透明鏡を用い付加的な変形をなし得ることを察知できよう。
【0062】
[入射光学系]
模式的側面図たる
図3A及び展開図たる
図3Bに、本件開示の諸実施形態に従い、光をプリフォーカス(予合焦)させ偏光子210その他の瞳リレー構成部材に差し向ける入射光学系240を示す。対物レンズ244は、生成された変調光ビームの経路上に位置し、そのビームを走査鏡242へと差し向けている。レンズ244は、その入射ビームを拡大すること並びにそれを走査鏡242・瞳リレー間位置に合焦させることでその変調光を調光し、それにより焦点面214(
図2A,
図2B)を画定し形成させる。対物レンズ244は、後に示すように、複合レンズ(cemented doublet)の形態又は分離形態をなし2個の素子で構成することができる。相異なる波長を有する3本以上のレーザビームが用いられる場合、既製の複合レンズを用いそのリレーの軸色を補正することができる。システムの残りの部分が対称的且つ反射性であり、且つ軸色が入射光学系により補正されるので、このシステムでは軸又は横色収差が現れない。
図2A,
図2B,
図2C及び後続の図に示される諸実施形態では、入射光学系240により光が合焦され、それにより焦点面214に湾曲空中像が形成される。走査鏡242を用いることで、光路を屈曲させること並びに差し向けられた光ビームから2D像を形成することができる。
【0063】
専ら例として、
図3Cに、本件開示の実施形態に係る入射光学系240向けの面及びレンズ特性を列挙する。
【0064】
その光源は走査レーザその他の固体光源とすることができる。
【0065】
[実施形態#2]
図4A~
図4Iに、本件開示の実施形態に係るニアアイビューイング用結像装置400における全ガラスパンケーキ型構成の瞳リレー装置450の諸種外観を示す。前述した
図2A及び
図2Bの実施形態と同様、装置450は有限共役瞳リレーであり-約1の倍率で稼働する。焦点面414とレンズL1の湾曲入射面92は瞳P1と実質的に同心である。レンズL1の出射面420とレンズL3の出射面94は瞳P2と実質的に同心である。瞳リレー装置450により画定される光路上では、偏光子430が、光軸OAに対し発散角をなす第1偏向の光を受光し、レンズL2上に形成された部分反射湾曲面420へとその光を遡行反射させ、その面がその光を収束させる。QWP424内2回通過により光ビームの偏向が変化し、偏光子430では第1偏向状態に直交する第2偏向状態となる。偏光子430は、今や平行化され瞳P2へと向かっている返戻光を透過させる。
【0066】
瞳リレー装置450の一部分又は全部分を目の対物焦点距離たる16.7mm以内に配置することができる。この可能性は後述する他の瞳リレー装置諸実施形態にも当てはまる。
【0067】
図4Bに、本件開示の実施形態に係る結像装置400向けのレンズ及び偏光子面の例を列挙する。
【0068】
図4Cは、入射光学系240が走査鏡242の片側に配置された結像装置400を示す斜視図である。
【0069】
本件開示の実施形態におけるレンズL1、L2及びL3は球形でないこともある。
図4Dに結像装置400の縦外観を示す。走査方向は紙面に直交している。
【0070】
図4Eに結像装置400の横外観を示す。走査方向は横方向であり紙面に対し平行な面に沿っている。
【0071】
図4Fに示すように、光路を屈曲させることで、全長を縮め装置設置空間を減らすことができる。屈曲鏡454,456が例として示されている。
【0072】
図4Gに、
図4Aのパンケーキ配列的瞳リレー装置450の分解外観と、その光学システムにより画定される光路に沿った偏向状態とを示す。入射瞳P1在の走査鏡412は、光を差し向けることで焦点面414に湾曲空中物を形成する。その光は円偏向光であり、入射ビーム段階で円偏向であったか、或いは直線偏向光として入射され走査鏡412後段の付随的な1/4波長板(QWP)(図示せず)により円偏向されたものである。この光は第1レンズL1内で屈折され、部分反射面420を介し第2レンズL2に至る。次いでその光が1/4波長板QWP424を通り抜けて直線偏向光になる(
図4Gには垂直偏向として示されている)。この光は反射偏光子430に出会って遡行反射され、QWP424を再度通過して面420に向かう。次いで、その光のうち約半分がその半透明面420により反射される。レンズL2の湾曲面420におけるこの反射により、その合焦個所たる焦点面414在空中物に発するビームが平行化される。次いで、その平行化光がQWP424を通過し、この3回目の通過により直線偏向光になる(
図4Gには水平偏向光として示されている)。この光は偏光子430及び第3レンズL3を通り抜ける。この出射光が面420から出射瞳P2在の虹彩440へと向かう。付随的に、浄化用直線吸収偏光子(図示せず)を、レンズL3と瞳P2在の虹彩との間に配置することができる。焦点面414とレンズL1の入射面96は入射瞳P1と実質的に同心である。出射面98及び100と鏡面420は瞳P2と実質的に同心である。虹彩440は瞳P2にある。焦点面414は、鏡420の前方焦点面を偏光子430で反射させたところにある。
【0073】
【0074】
図5A,
図5Bに、順に、看者の顔上にある結像装置400の側面外観,正面外観を示す。従来のマウント、例えば眼鏡フレーム、バンドその他の構造(図示せず)を準備し、看者の目付近、例えば眼レンズの焦点距離以内のところに結像装置400を位置決めすることができる。
【0075】
[モノセントリック実施形態]
図6A及び
図6Bに、結像装置600の模式的側面外観を二通りの構成につき示す。
図6Aでは、画像発生器212即ち入射瞳P1在走査鏡からの光が入射光学系240により対角偏向ビームスプリッタ610へと差し向けられ、そこから光が1/4波長板616を介し差し向けられて、瞳P2と同心な球面湾曲鏡620に至っている。QWP616を2回通っているので、光の偏向は今や入射ビームのそれに対し直交している。PBS610を透過した光は、目Eに位置する瞳P2へと差し向けられる。
図2Aの実施形態と同様、偏光子、ここでは偏向ビームスプリッタ610上に当初入射する変調光ビームは発散的であり、第1偏向を有している。その偏向ビームスプリッタ610に戻ってくる光は平行化されており、第1偏向に対し直交する第2偏向を有している。
【0076】
図6Bは
図6Aに似ているが、瞳P1からの光がまずは透過しその後PBS610から反射される点で異なっている。
【0077】
【0078】
【0079】
偏光子610は、例えば、米国ユタ州オレム所在のMoxtek Inc.,発のデバイス等、ワイヤグリッド偏光子とすることができる。
【0080】
図6A~
図6Dの実施形態は光学的にモノセントリックであり、その入射瞳P1(画像発生器212)及び出射瞳P2双方が湾曲鏡620の曲率中心と光学的に同心である。
図6A及び
図6Bから見て取れるように、瞳P1及びP2は鏡620に対し同じ光学的位置にある。
【0081】
図7A~
図7Dに、看者の目に対する結像装置600の諸外観を示す。
【0082】
[対称実施形態]
模式的側面図たる
図8A及び斜視図たる
図8Bに、
図4Aの結像システムにビームスプリッタ110が付された対称的修正配列を示す。ビームスプリッタ110、例えば偏向ビームスプリッタは台形歪みを補正するのに役立つ。
図4Cの如く角度を付けて走査鏡242に入射ビームをアプローチさせると台形歪みが引き起こされることがあり、
図8C中の像野輪郭にそれが示されている。
図8Cに示す未補正台形歪みは、入射角が軸から見て25°であるときのものであり、43°×25°の視野に亘っている。破線は無歪み時の視野を示している。この歪みは、結像システムに送られてきた画像データを電子的に修正することで、或いは僅かに非球面的な歪み補正素子(図示せず)を走査鏡242とリレー450の光学系との間に付加することで、補正することができる。ビームスプリッタ110が走査鏡242内に0°角入射する光路を画定しているので、
図8C上に示されている歪みが低減されて
図8D上に示す如くより対称的になる。対物レンズ244は2個のレンズ素子を有しており、それらはエアギャップにより空間的に隔てられている。ビームスプリッタ110が偏向ビームスプリッタPBSとして設けられている場合、それに由来する損失を低減するのに、付随的な1/4波長板246が役立つ。第2の1/4波長板248は、ビームスプリッタ110からの光を円偏向光へと逆変化させる。鏡220は
図4A上の鏡面420と同じく半透過鏡とすることができ、もう1個の1/4波長板252がそれに後続している。鏡220から反射された軸上光はビームスプリッタ110により反射及び廃棄される。素子L1、鏡220、1/4波長板252及び偏光子230を単体の複合ユニットにしてもよい。その複合ユニットとレンズL2との間にエアギャップがあってもよい。
【0083】
図8A及び
図8Bに示されている実施形態では、ライトモジュール30からの入射変調ビームがS偏向とされる。瞳リレー装置450により画定される光路上では、この光が偏向ビームスプリッタ110により反射され、1/4波長板(QWP)246を介し走査鏡242へと差し向けられて、円偏向光になる。走査鏡242はその変調ビームをQWP246を介し遡行反射させ、それによりその変調ビームの偏向をP偏向状態へと変化させる。そのP偏向光はビームスプリッタ110内及びQWP248内を透過し、それによりその偏向状態が円偏向に変化する。この光がレンズL1を介し運ばれる。その光のうち一部分が光軸OAに沿い半透過鏡220から遡行反射される。その反射光は再びQWP248を通ってS偏向になり、ひいてはビームスプリッタ110により反射及び廃棄される。一方で、変調ビームのうち半透過鏡220内を透過した部分は別のQWP252内に通され、それによりその偏向がS偏向状態へと変化する。この発散光は偏光子230により反射され、次いで鏡220により反射され、今や平行になったそれが瞳P2へと差し向けられる。その平行化変調光は、QWP252への2回通過を受けP偏向へと変化し、偏光子230を介し出射レンズL2へと通される。
【0084】
本件開示の装置によれば、仮想現実(VR)又は拡張現実(AR)ビューイング、並びに複合現実及びスマートガラスビューイングに適する光学装置が提供される。その結像配列は、その光学的対称性故に、本質的に無収差である。本装置は、アイピースの使用例えばカタプトリック光学系の使用に依拠するAR又はVR光学構成とも、LCOS(液晶オンシリコン)ディスプレイ、マイクロミラーデバイスアレイを用い像を形成するデバイス等といった画像源を平行化及び拡大する屈折性光学システムとも異なっている。
【0085】
本件開示のある実施形態では、水平軸に沿い少なくとも約40°のFOVがもたらされる。それにより比較的細い光ビームがもたらされるため、本件開示の結像装置では、看者の目の動きを検出する視線追跡ハードウェハが必要になることがある。対応する補正を実行することで目の動きに関し補償することができる。
【0086】
本件開示のある実施形態によれば、ビームが走査鏡に向かうように励振しうるレーザ光源と、その走査鏡と光学的に同心で部分透過性な湾曲鏡面と、走査鏡・湾曲鏡面間に配置されており第1偏向軸を有する第1偏光子と、偏光子・湾曲鏡面間に配置された1/4波長板と、湾曲鏡より下流に配置されており第1偏向軸に直交する第2偏向軸を有する第2偏光子と、を備えるニアアイビューイング用光学装置が提供される。
【0087】
本願中の用語「例示的」は、「例、事例又は例証として働く」ことを意味している。本願にて「例示的」と記載されているいずれの態様も、他の諸態様に比し好ましく又は有益であると解されるとは限らない。
【0088】
現下の好適実施形態に対する具体的な参照で以て本発明を詳述してきたが、ご理解頂けるように、本発明の神髄及び技術的範囲内で変形及び修正を実行することができる。例えば、上掲の記述では片目向けの像形成に焦点を絞ってきたが、直ちにご理解頂けるように、立体結像技術習熟者にとりなじみ深い方法を用い右目像及び左目像双方に係る画像コンテンツを形成し協調させるのに必要な立体像を、対応する諸素子及び論理回路を用い形成することができる。形成される像を立体像とすることも、或いはモノスコープ表示のため両目に同じ画像コンテンツが供給されるビオキュラ像とすることもできる。
【0089】
本願記載の諸実施形態は、従って、あらゆる意味で例証的であり限定的ではないと考えられる。本発明の技術的範囲は添付する特許請求の範囲により示されており、その均等物の意味及び範疇に収まる改変はいずれもそれに包含されるものと考えている。