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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】反応方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20221107BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
G01N35/10 K
G01N35/10 C
G01N1/00 101K
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019549264
(86)(22)【出願日】2018-10-15
(86)【国際出願番号】 JP2018038299
(87)【国際公開番号】W WO2019078152
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】P 2017200001
(32)【優先日】2017-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000206956
【氏名又は名称】大塚製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】青木 洋一
(72)【発明者】
【氏名】庄司 祐也
(72)【発明者】
【氏名】野田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】岩下 淳夫
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/082069(WO,A1)
【文献】特開平6-213905(JP,A)
【文献】国際公開第2010/038546(WO,A1)
【文献】特開昭59-52760(JP,A)
【文献】特開平4-243548(JP,A)
【文献】実開昭56-48055(JP,U)
【文献】実開昭57-147761(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2001/0017060(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N35/10, G01N1/00, B01L3/02, G01F13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピペットノズルに装着された、液体を吸引または排出するためのピペットチップを用いて、反応場に液体の供給及び前記反応場からの液体の除去を複数回行うことで2以上の物質を反応させる反応工程を含む反応方法であって、
前記ピペットチップを設定温度に従って加熱、保温するヒーターを前記ピペットノズルの先端方向の前記ピペットチップの装着位置に近接して配置し、
前記ピペットチップを前記ピペットノズルに装着するとともに、前記ヒーターにより前記ピペットチップを第一の設定温度で加熱し、
前記第一の設定温度による前記ピペットチップの加熱時間が設定時間を経過した時点で、前記ヒーターを前記第一の設定温度より低い第二の設定温度に切り替えて前記ピペットチップを第二の設定温度で保温し、
前記第二の設定温度に切り替えた時点以降に、前記ピペットノズルの軸方向の前記ピペットチップの先端位置を検出し、
検出した前記先端位置を基準に、前記ピペットノズルの軸方向移動制御により前記ピペットチップの先端位置を制御して前記反応工程を実行し、当該反応工程中の少なくとも前記ピペットチップによる作業工程までは前記ヒーターによる前記第二の設定温度での前記ピペットチップの保温を続行する反応方法。
【請求項2】
前記ピペットチップは樹脂製であり、前記ピペットチップの線膨張係数は、5.8×10-5/℃以上である請求項1に記載の反応方法。
【請求項3】
前記第一の設定温度を、前記第二の設定温度より10~15℃高く設定する請求項1又は請求項2に記載の反応方法。
【請求項4】
前記設定時間を、5~10〔s〕とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の反応方法。
【請求項5】
前記第二の設定温度に切り替えた時点から10~20〔s〕経過後に、前記ピペットチップの先端位置を検出し、検出した前記先端位置を基準に、前記ピペットノズルの移動制御により前記ピペットチップの先端位置を制御して前記反応工程を実行する請求項1から請求項4のうちいずれか一に記載の反応方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピペットノズルに装着された、液体を吸入または排出するためのピペットチップを用いて、2以上の物質を反応させる反応工程を含む反応方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2にも記載されるように、タンパク質やDNAなどの微量の被検出物質を高感度かつ定量的に検出するためにピペットノズル及びこの先端に装着されるピペットチップが利用されている。微量の被検出物質を高感度かつ定量的に検出するためには、検体や標識液を精度よく反応場に供給し、反応場から除去する必要がある。一般的に、検体や標識液の供給および除去には、ピペットチップが使用される。
特許文献1に記載の液体を供給および除去する方法では、ピペットノズルに装着された樹脂製のピペットチップの先端位置をフォトセンサで検出している。そして、ピペットチップの先端位置の情報に基づいて、ピペットノズルの位置を調整して、液体を精度よく供給および除去している。
【0003】
しかし、ピペットチップをピペットノズルに装着してピペットチップの先端位置の検出を行った後であって反応工程開始前に、ピペットチップに温度変化があるとピペットチップが膨張し、先端検知した際の先端位置よりもピペットチップの先端位置が低くなり、送液時にピペットチップの先端が流路底面に近づきすぎて、正常な送液ができなくなる。膨張量によっては、ピペットチップ先端が流路底面により閉塞し、吸引もしくは吐出ができなくなる。その結果、反応及び反応量の測定が正常に行えないという課題がある。
特許文献2に記載の方法では、このようなピペットチップの熱膨張による先端位置ズレの課題に対して、反応工程時の推定温度に基づくか、反応工程時に測定したピペットチップの温度に基づいてピペットチップ先端位置を補正し、送液、吸液時の流路底面からのピペットチップ先端位置を制御することを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-275820号公報
【文献】国際公開第2017/082069号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載の方法によれば、反応工程時の推定温度に基づきピペットチップ先端位置を補正する場合、環境温度次第でズレが生じ得るという課題がある。また、反応工程時に測定したピペットチップの温度に基づいてピペットチップ先端位置を補正する場合、ピペットチップの温度測定手段が必要であることなどの課題が残る。また、推定温度によっても、測定温度によっても反応工程中にピペットチップ先端位置を補正制御するという煩雑さがある。
【0006】
本発明は以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、反応工程中のピペットチップの先端位置を、反応工程前に正確かつ短時間に検出できる反応方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するための請求項1記載の発明は、ピペットノズルに装着された、液体を吸引または排出するためのピペットチップを用いて、反応場に液体の供給及び前記反応場からの液体の除去を複数回行うことで2以上の物質を反応させる反応工程を含む反応方法であって、
前記ピペットチップを設定温度に従って加熱、保温するヒーターを前記ピペットノズルの先端方向の前記ピペットチップの装着位置に近接して配置し、
前記ピペットチップを前記ピペットノズルに装着するとともに、前記ヒーターにより前記ピペットチップを第一の設定温度で加熱し、
前記第一の設定温度による前記ピペットチップの加熱時間が設定時間を経過した時点で、前記ヒーターを前記第一の設定温度より低い第二の設定温度に切り替えて前記ピペットチップを第二の設定温度で保温し、
前記第二の設定温度に切り替えた時点以降に、前記ピペットノズルの軸方向の前記ピペットチップの先端位置を検出し、
検出した前記先端位置を基準に、前記ピペットノズルの軸方向移動制御により前記ピペットチップの先端位置を制御して前記反応工程を実行し、当該反応工程中の少なくとも前記ピペットチップによる作業工程までは前記ヒーターによる前記第二の設定温度での前記ピペットチップの保温を続行する反応方法である。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記ピペットチップは樹脂製であり、前記ピペットチップの線膨張係数は、5.8×10-5/℃以上である請求項1に記載の反応方法である。
【0009】
請求項3記載の発明は、前記第一の設定温度を、前記第二の設定温度より10~15℃高く設定する請求項1又は請求項2に記載の反応方法である。
【0010】
請求項4記載の発明は、前記設定時間を、5~10〔s〕とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の反応方法である。
【0011】
請求項5記載の発明は、前記第二の設定温度に切り替えた時点から10~20〔s〕経過後に、前記ピペットチップの先端位置を検出し、検出した前記先端位置を基準に、前記ピペットノズルの移動制御により前記ピペットチップの先端位置を制御して前記反応工程を実行する請求項1から請求項4のうちいずれか一に記載の反応方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、反応工程前にピペットチップの先端位置を検出する。ピペットチップの先端位置の検出時と反応工程中は第二の設定温度によりピペットチップの温度が維持されるから、反応工程中のピペットチップの先端位置を、反応工程前に正確に検出できる。また、先に第二の設定温度より高い第一の設定温度によるピペットチップの加熱時間があるため、第二の設定温度に切替後早期に温度を収束させることができ、ピペットチップの装着時(ヒーターによる加熱開始時)から短時間でピペットチップの先端位置の検出を行うことができる。
以上のようにして反応工程中のピペットチップの先端位置を、反応工程前に正確かつ短時間に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の反応方法を実施する装置の概要を示す模式図である。
図2】本発明の反応方法の手順であって、制御装置の制御ステップを示すフローチャートである。
図3】比較例1に係り、ピペットチップの先端位置の時間変化を示したグラフである。
図4】比較例2に係り、ピペットチップの先端位置の時間変化を示したグラフである。
図5】比較例3に係り、ピペットチップの先端位置の時間変化を示したグラフである。
図6】比較例4に係り、ピペットチップの先端位置の時間変化を示したグラフである。
図7】比較例5に係り、ピペットチップの先端位置の時間変化を示したグラフである。
図8】比較例6に係り、ピペットチップの先端位置の時間変化を示したグラフである。
図9】本発明例1に係り、ピペットチップの先端位置の時間変化を示したグラフである。
図10】本発明例2に係り、ピペットチップの先端位置の時間変化を示したグラフである。
図11】本発明例3に係り、ピペットチップの先端位置の時間変化を示したグラフである。
図12】本発明例4に係り、ピペットチップの先端位置の時間変化を示したグラフである。
図13】本発明例5に係り、ピペットチップの先端位置の時間変化を示したグラフである。
図14】本発明例6に係り、ピペットチップの先端位置の時間変化を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態について、添付した図面を参照して詳細に説明する。本発明の一実施の形態に係る反応方法は、ピペットノズルに装着された、液体を吸引または排出するためのピペットチップを用いて、反応場への液体の供給および反応場からの液体の除去を複数回行い、2以上の物質を反応させる反応工程を含む。
【0015】
(装置構成概要)
図1に示すようにピペットノズル1の先端部にピペットチップ2が装着される。ヒーター3をピペットノズル1の先端方向のピペットチップ2の装着位置に近接して配置する。ヒーター3は、ピペットノズル1に装着されたピペットチップ2を加温対象とする。
制御装置10は、本実施形態の反応方法を実施する分析装置の動作を司る。本発明に関係するところとしては、制御装置10は、ノズル移動アクチュエーター11を介してピペットノズル1を軸方向Zに移動制御し、検出チップ20の流路底面21に対するピペットチップ2の先端の高さを制御する。また、制御装置10は、ヒーター駆動回路12を介してヒーター3の出力を制御する。また、制御装置10は、先端位置検出手段13を制御して軸方向Zのピペットチップ2の先端位置を検出させ、そのZ軸座標を取得する。先端位置検出手段13としては、特許文献1に記載されるような光学センサーでもよいし、特許文献2に記載されるようなピペットチップ2からの空気圧を測定する構成でもよく、本発明ではピペットチップ2の先端位置を検出する手段や方法は限定されない。
【0016】
ピペットチップ2の線膨張係数は、ピペットチップ2の材料毎に決まる。ピペットチップ2は、容易にかつ安価に製造できる観点から、樹脂製であることが好ましい。ポリプロピレンを用いた場合のピペットチップ2の線膨張係数は、5.8×10-5~12×10-5/℃程度であり、ポリスチレンを用いた場合のピペットチップAの線膨張係数は、6.0×10-5~8.0×10-5/℃程度である。また、ポリエチレンを用いた場合のピペットチップAの線膨張係数は、11×10-5~15×10-5/℃程度であり、低密度ポリエチレンを用いた場合のピペットチップ2の線膨張係数は、16×10-5~20×10-5/℃程度である。さらに、フッ素樹脂を用いた場合のピペットチップ2の線膨張係数は、10×10-5~12×10-5/℃程度である。
【0017】
制御装置10と、ヒーター駆動回路12とは、第一の設定温度と、第二の設定温度とでヒーター3を駆動するように構成されている。第二の設定温度は反応工程中に用いる設定温度であり、反応の種類により設定される。第一の設定温度は予熱に用いる温度である。第一の設定温度は第二の設定温度より高く設定される。
【0018】
(反応方法の手順)
次に図2のフローチャートを参照しつつ本実施形態の反応方法の手順を説明する。制御装置10の制御により以下の手順を実行する。
まず、ピペットチップ2をピペットノズル1に装着する。この時既にヒーター3を第一の設定温度に出力を調整しておく。反応工程に短時間で移行できるようにするためである。
したがって、ピペットチップ2をピペットノズル1に装着するとともに、ヒーター3によりピペットチップ2を第一の設定温度で加熱することが開始される(ステップS1)。
【0019】
第一の設定温度によるピペットチップ2の加熱時間が第一の設定時間を経過した時点(ステップS2でYes)で、ヒーター3を第二の設定温度に切り替えてピペットチップを第二の設定温度で保温する(ステップS3)。ヒーター3の出力を第二の設定温度で維持する。
【0020】
次に、第二の設定温度に切り替えた時点以降に、先端位置検出手段13によりピペットチップ2の先端位置を検出する。ここでは、第二の設定温度に切り替えた時点を始点として第二の設定時間を設定する。すなわち、第二の設定時間が経過した時点(ステップS4でYes)で、先端位置検出手段13によりピペットチップ2の先端位置を検出する。第二の設定時間を0に設定すれば、第二の設定温度に切り替えた時点でピペットチップ2の先端位置を検出することとなる。第二の設定時間を10〔s〕に設定すれば、第二の設定温度に切り替えた時点の10〔s〕後にピペットチップ2の先端位置を検出することとなる。
【0021】
次に、ステップS5で検出した先端位置を基準に、ノズル移動アクチュエーター11を制御してピペットノズル1の軸方向移動制御によりピペットチップ2の先端位置を制御して反応工程を実行する(ステップS6)。反応工程においては、ピペットチップ2の先端開口から液体を検出チップ20に排出したり、検出チップ20から液体をピペットチップ2の先端開口へ吸引したりするが、その際、ステップS5で検出した先端位置を基準に検出チップ20の流路底面21に対するピペットチップ2の先端の高さを、排出や吸引が良好となるよう適切に制御する。
ステップS3で第二の設定温度に切り替えてから、ここまで第二の設定温度を維持する。但し、反応工程中の少なくともピペットチップ2による作業工程までヒーター3による第二の設定温度でのピペットチップ2の保温を続行すればよい。ピペットチップ2による作業が済んだ後は必要ないからである。
【0022】
例えば、以上の第一の設定温度を、第二の設定温度より10~15℃高く設定し、第一の設定時間を5~10〔s〕とし、第二の設定温度を10~20〔s〕とする。
【0023】
(実証実験)
図3から図14は、軸方向Zについてのピペットチップ2の先端位置の時間変化を示したグラフである。図3から図8は比較例に係り、図9から図14は本発明例に係る。但し、反応工程及び反応工程のための基準となる先端検出を行わず、一定の時間レートでピペットチップ2の先端の検出を行ったものである。
グラフのN1,N2,N3は、ピペットチップ2のサンプルの違いによる。
比較例では、ヒーター3を一の設定温度で維持する。比較例では、ピペットチップ2をピペットノズル1に装着した時点(従ってヒーター3による加熱が開始された時点)がグラフ横軸である時間軸の0に相当する。
本発明例では、ヒーター3を第一の設定温度から第二の設定温度に変遷させる。本発明例では、第二の設定温度に切り替えた時点がグラフ横軸である時間軸の0に相当する。
【0024】
各例の詳細条件は以下の通りである。
図3に示す比較例1においては、設定温度を40℃とし、環境温度は10℃である。
図4に示す比較例2においては、設定温度を40℃とし、環境温度は23℃である。
図5に示す比較例3においては、設定温度を40℃とし、環境温度は30℃である。
【0025】
図6に示す比較例4においては、設定温度を45℃とし、環境温度は10℃である。
図7に示す比較例5においては、設定温度を45℃とし、環境温度は23℃である。
図8に示す比較例6においては、設定温度を45℃とし、環境温度は30℃である。
【0026】
図9に示す本発明例1においては、第一の設定温度を50℃、第一の設定時間を5〔s〕、第二の設定温度を40℃とし、環境温度は10℃である。
図10に示す本発明例2においては、第一の設定温度を50℃、第一の設定時間を5〔s〕、第二の設定温度を40℃とし、環境温度は23℃である。
図11に示す本発明例3においては、第一の設定温度を50℃、第一の設定時間を5〔s〕、第二の設定温度を40℃とし、環境温度は30℃である。
【0027】
図12に示す本発明例4においては、第一の設定温度を50℃、第一の設定時間を10〔s〕、第二の設定温度を40℃とし、環境温度は10℃である。
図13に示す本発明例5においては、第一の設定温度を50℃、第一の設定時間を10〔s〕、第二の設定温度を40℃とし、環境温度は23℃である。
図14に示す本発明例6においては、第一の設定温度を50℃、第一の設定時間を10〔s〕、第二の設定温度を40℃とし、環境温度は30℃である。
【0028】
結果はグラフに示す通り、比較例に対し本発明例の方が早期に一定の変動範囲に収束した。詳しく分析すると以下の通りである。
収束点±10μmの範囲に変動量が収束した時点(Tc)を複数サンプルの平均値で計算し、グラフ中と表Iに示した。収束点は最後から10点のデータの平均値とした。表Iにおいて本発明例については第一の設定時間を加算した値を併記する。
【0029】
【表1】
【0030】
*但し、本発明例5,6に関しては、データを取った範囲で最初から収束していたため、より早期に収束していた可能性がある。
【0031】
(まとめ)
図1図2図9から図14に示すように本発明例によれば、ピペットチップ2の先端位置の検出時と反応工程中は第二の設定温度によりピペットチップの温度が維持されるから、反応工程中のピペットチップの先端位置を、反応工程前に正確に検出できる。
また本発明例によれば、先に第二の設定温度より高い第一の設定温度によるピペットチップ2の加熱時間があるため、第二の設定温度に切替後早期に温度を収束させることができ、比較例1-6に比較してもピペットチップの装着時(ヒーターによる加熱開始時)から短時間でピペットチップ2の先端位置の検出を行うことができる。ピペットチップ2の装着当初から第二の設定温度(反応工程時の設定温度)であると、ピペットチップ2の先端位置が収束するまで長時間を要する。本発明では高温予熱期間として第一の設定温度での加熱期間を置き、第二の設定温度での熱環境下での収束点に急速にピペットチップ2を膨張させることで、収束を早期に迎えることができる。これにより早期に先端位置検出、反応工程への移行が可能となる。
本実施形態によれば以上のようにして反応工程中のピペットチップの先端位置を、反応工程前に正確かつ短時間に検出できる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、タンパク質やDNAなどの微量の被検出物質を高感度かつ定量的に検出するための反応方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 ピペットノズル
2 ピペットチップ
3 ヒーター
10 制御装置
11 ノズル移動アクチュエーター
12 ヒーター駆動回路
13 先端位置検出手段
20 検出チップ
Tc 収束時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14