(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】非粘着性、軟質および透明なスチレン系熱可塑性エラストマー
(51)【国際特許分類】
C08L 53/02 20060101AFI20221107BHJP
C08L 91/00 20060101ALI20221107BHJP
C08G 81/02 20060101ALI20221107BHJP
C08C 19/00 20060101ALI20221107BHJP
C08F 297/04 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
C08L53/02
C08L91/00
C08G81/02
C08C19/00
C08F297/04
(21)【出願番号】P 2019550689
(86)(22)【出願日】2018-03-12
(86)【国際出願番号】 EP2018056026
(87)【国際公開番号】W WO2018166950
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-03-04
(32)【優先日】2017-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516008383
【氏名又は名称】イネオス・スタイロリューション・グループ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ミヒル・フェルスウィフェル
(72)【発明者】
【氏名】ノルベルト・ニースナー
(72)【発明者】
【氏名】アイケ・ヤーンケ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ヴァーグナー
(72)【発明者】
【氏名】コンラート・クノール
【審査官】飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-525561(JP,A)
【文献】特表平10-511418(JP,A)
【文献】特表2002-540268(JP,A)
【文献】米国特許第06673857(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0098401(US,A1)
【文献】米国特許第06177517(US,B1)
【文献】米国特許第06521712(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 53/02
C08L 91/00
C08G 81/02
C08C 19/00
C08F 297/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性エラストマー組成物であって、成分a)、b)およびc):
a)97.1から90.9重量%の、次の構造を有する少なくとも1種の星形ブロックコポリマーA
[S
1-(S/B)
k-(S/B)
l-(S/B)
m-S
2]
n-X (I)
(式中、S
1およびS
2は、少なくとも1種のビニル芳香族モノマーから作られるポリマーブロックであり、S/Bは、少なくとも1種のビニル芳香族モノマーと少なくとも1種のジエンとから作られるランダムコポリマーブロックであり、軟質相を形成し;Xは、多官能性カップリング剤に由来するカップリング中心である);
b)2.9から9.1重量%の少なくとも1種の可塑剤B、好ましくは鉱油;ならびに
c)0から2重量%のさらなる添加剤C
を含み;
成分a)、b)およびc)の合計は100重量%であり;
アームS
1-(S/B)
k-(S/B)
l-(S/B)
m-S
2は同一であり;
ブロックS
1およびS
2(硬質相を形成する)の割合は、ブロックコポリマーA全体に基づいて、24から40重量%であり;
すべてのブロック(S/B)のビニル芳香族モノマー/ジエン(=S/B)比は1/0.45から1/2.5であり;
ブロック(S/B)
k、(S/B)
lおよび(S/B)
mのS/B比は互いに異なり;ブロック(S/B)
kおよび(S/B)
mのS/B比はブロック(S/B)
lのS/B比よりも低く;
ブロックS
2/S
1の重量比は0.1から0.8であり;
ブロックコポリマーAの重量平均モル質量M
wは200,000から350,000g/molであり;nは
3から8の自然数であり;k、mは1であり;lは少なくとも1である自然数である、
前記熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項2】
成分a)、b)およびc)を以下の量:
a)96.2から91.7重量%;
b)3.8から8.3重量%;
c)0から2重量%
で含む、請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項3】
可塑剤Bは鉱油である、請求項1または2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項4】
メルトマスフローインデックス(ISO1133-1:2011に従って200℃および5kgの荷重でポリマー溶融物について測定)は8から16cm
3/10分の範囲である、請求項1~3のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項5】
nは3から5の自然数である、請求項1~4のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項6】
Xはエポキシ化アマニ油またはエポキシ化ダイズ油に由来するカップリング中心である、請求項1~5のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項7】
ブロックコポリマーAのM
wは210,000から320,000g/molである、請求項1~6のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項8】
ポリマーブロックS
1のMwは18,000から36,000g/molの範囲であり、好ましくは21,600から34,000g/molの範囲であり;ポリマーブロックS
2のMwは4,000から8,100g/molの範囲であり、好ましくは4,200から7,500g/molの範囲である、請求項1~7のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項9】
ブロックコポリマーAのブロックS
2/S
1重量比は0.1から0.6であり、好ましくは0.15から0.40であり、より好ましくは0.15から0.3である、請求項1~8のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項10】
コポリマーブロック(S/B)
kのS/B比は0.5から1.0であり、好ましくは0.65から0.85であり;コポリマーブロック(S/B)
lのS/B比は0.5から1.2であり、好ましくは0.7から1.1であり、コポリマーブロック(S/B)
mのS/B比は0.3から0.8であり、好ましくは0.4から0.7である、請求項1~9のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項11】
コポリマーブロック(S/B)
k、(S/B)
lおよび(S/B)
mの重量平均モル質量M
wは互いに異なり;Mw(S/B)
kは13,800から26,900g/molの範囲であり、Mw(S/B)
lは21,200から41,000g/molの範囲であり、Mw(S/B)
mは11,500から23,000g/molの範囲である、請求項1~10のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項12】
成分a)を連続的に押出機に導入し、次いで成分b)および場合によりさらなる成分c)を計量導入する、請求項1~11のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
【請求項13】
成分b)および場合により成分c)を、そのまままたは溶液で、ブロックコポリマーAの溶液に添加し、次いで液体を均質化し、その後溶媒から生成物を遊離させる、請求項1~11のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物から生産される、
成形品、特に、輸液器具、透析ユニットおよび呼吸マスクのようなチューブおよびバッグ。
【請求項15】
医療用途のための、特に医療用チューブおよびバッグのための、請求項1~11のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物の使用の方法。
【請求項16】
請求項1および5~11のいずれか1項に記載の星形ブロックコポリマーA。
【請求項17】
請求項1および5~11のいずれか1項に記載の式(I)のブロックコポリマーAの製造方法であって、
i)
全開始剤の1回での添加、
ii)ビニル芳香族モノマーの第1の添加および重合、
iii)ビニル芳香族モノマーとジエンの混合物の少なくとも3回の添加および重合、
iv)ビニル芳香族モノマーの第2の添加および重合、ならびに
v)最後のポリマーブロックのビニル芳香族モノマーの添加および重合後のカップリング工程
を特徴とする前記製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非粘着性、軟質および透明なスチレン系熱可塑性エラストマー(S-TPE)、前記エラストマーを含む熱可塑性エラストマー組成物、それらの製造方法、それから生産される成形品、ならびに特に医療用途、特に医療用チューブおよびバッグのための、前記S-TPE組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
可塑化されたPVCのような、医療用途に使用される一般的な熱可塑性エラストマーは、いくつかの欠点を有する。PVCから作られた軟質な医療用チューブを、剛性のスチレンポリマーから作られた付属品に接合する場合、PVC部からスチレン部に可塑剤の移行が起こることが多い。この移行により、プラスチック特性が破壊され、環境応力割れ耐性(environmental stress-cracking resistance)が低下する。したがって、医療用途に適した改良がなされた材料が必要である。
【0003】
特許文献1および特許文献2は、エラストマー線状および星形SBCブロックコポリマーを開示しており、とりわけ、その一般式は、Y-[(A-B/A)n-A]m+1およびY-[(B/A-A)n]m+1であり、式中、Aは硬質相を形成するビニル芳香族ブロックであり、B/Aは軟質相を形成するランダムジエン/ビニル芳香族コポリマーブロックであり、Yはカップリング剤のラジカルであり、mおよびnは1から10である。例は、総質量Mw175,000g/molまたは145,000g/molを有する構造Y-[(B/A)-(B/A)-(B/A)-A]のカップリングした星形ブロックコポリマーを示す。
【0004】
特許文献3は、少なくとも2本の異なるアームおよびそれらの混合物を有する星形エラストマーSBCブロックコポリマーを記載する。好ましくは、硬質-軟質-硬質-軟質-硬質のペンタブロック特性を有する、3本または4本のアームを有するカップリングしたブロックコポリマーであり、その一般式は、[A1-B/A-A2-]m[A2-]lYであり、式中、A1およびA2はビニル芳香族硬質ブロック(A1はA2より大きい)であり、B/Aは軟質ビニル芳香族/ジエンコポリマーブロックである。ブロックコポリマーの重量平均分子量Mwは、好ましくは120,000から200,000g/molである。
【0005】
特許文献4は、SBCブロックコポリマー5から99重量%および、植物油またはそれとホワイト油との混合物に基づく可塑剤1から95重量%、好ましくは4から49重量%を含む、熱可塑性エラストマー組成物を開示している。SBCブロックコポリマーは、対称な3ブロックコポリマーまたは、それらの間に外側ブロックSとランダム軟質ブロックB/Sとをもつ星形ブロックコポリマーである(例はない)。ブロックコポリマーのジエン含有量は50重量%未満であり、軟質相の割合は少なくとも60重量%である。線状S-B/S-Sブロックコポリマー(Mw163,000g/mol)およびホワイト油/ヒマワリ油混合物(40/60)5から10重量%をもつ組成物は、68または63のショアA硬度を有し、180℃において16.9または27.8の高いメルトフローインデックス(5kp、10min-1)を有する。
【0006】
これらの熱可塑性エラストマー組成物は、特に押出目的のための加工性に関して不十分である。
【0007】
特許文献5は、熱可塑性エラストマー組成物を記載しており、これらは、a)ビニル芳香族モノマーの硬質ブロックAと、ジエン/ビニル芳香族コポリマーの1種またはそれ以上のランダム軟質ブロックBとから合成されたブロックコポリマー5%から99重量%、およびb)可塑剤、特にジイソノニルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレート(DINCH)とホワイト油との混合物1%から95重量%を含む。ブロックコポリマーは、好ましくは外部ブロックAおよび内部ブロックBをもつ、対称なトリブロックコポリマーである。前記トリブロックコポリマーはブリードなしにホワイト油最大10重量%を吸収することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】US6,031,053
【文献】US6,197,889
【文献】WO2012/055919
【文献】US6,673,857
【文献】WO2012/084914
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記DINCH/ホワイト油の組合せでは、油の取り込みを高めることができ、柔らかさを向上させることができるが、機械的特性に関しては材料の性能が十分ではない。例えば、特にチューブ用途には、きびきびさ(snappiness)、またはキンク習性(kinking behavior)、すなわち、曲げからの回復の改善が依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの目的は、従来技術のS-TPEと比較して、それらの機械的特性を劣化させることなく油の取り込みを改善し、非粘着性の習性を示す、透明および軟質なS-TPEを提供することである。さらなる目的は、改善されたきびきびさまたはキンク習性を有するS-TPE組成物を提供することである。本発明のさらなる1つの目的は、高い空時収率で生産することができる前述の特性を有するS-TPEを提供することである。本発明のさらなる1つの目的は、可塑剤の量を増やして添加したときに、メルトボリュームフローレート(MFI200/5)16cm3/10分以下によって確認される良好な加工性を維持するS-TPE組成物を提供することである。
【0011】
本発明の主題は、熱可塑性エラストマー組成物であって、成分a)、b)およびc):
a)97.1から90.9重量%の、次の構造を有する少なくとも1種の星形ブロックコポリマーA
[S1-(S/B)k-(S/B)l-(S/B)m-S2]n-X (I)
[式中、S1およびS2は、少なくとも1種のビニル芳香族モノマーから作られるポリマーブロックであり、S/Bは、少なくとも1種のビニル芳香族モノマーと少なくとも1種のジエンとから作られるランダムコポリマーブロックであり、軟質相を形成し;Xは、多官能性(二官能性または複官能性)カップリング剤に由来するカップリング中心である];
b)2.9から9.1重量%の少なくとも1種の可塑剤B、好ましくは鉱油;ならびに
c)0から2重量%のさらなる添加剤C;
を含み(または、それらからなり);
成分a)、b)およびc)の合計は100重量%であり;
アームS1-(S/B)k-(S/B)l-(S/B)m-S2は同一であり;
ブロックS1およびS2(硬質相を形成する)の割合は、ブロックコポリマーA全体に基づいて、24から40重量%であり;
すべてのブロック(S/B)のビニル芳香族モノマー/ジエン(=S/B)比は1/0.45から1/2.5であり;
ブロック(S/B)k、(S/B)lおよび(S/B)mのS/B比は互いに異なり;ブロック(S/B)kおよび(S/B)mのS/B比はブロック(S/B)lのS/B比よりも低く;
ブロックS2/S1の重量比は0.1から0.8であり;
ブロックコポリマーAの重量平均モル質量Mw(ISO16014-3:2012に従ってGPCにより決定)は200,000から350,000g/molであり;nは1から8の自然数であり;k、mは1であり;lは少なくとも1である自然数である、熱可塑性エラストマー組成物である。
【0012】
本発明による熱可塑性エラストマー組成物のメルトボリュームフローレート(=MFI、ISO1133-1:2011に従って200℃および5kgの荷重でポリマー溶融物で測定)は、好ましくは8から16cm3/10分の範囲であり、より好ましくは8から15cm3/10分の範囲である。
【0013】
ASTM D2240(15秒後に測定)に従って決定された本発明による熱可塑性エラストマー組成物のショアA硬度は、一般に70から80の範囲である。
【0014】
「高い空時収率」とは、最初のモノマーを添加してから停止剤を添加するまでの間の時間が3.5時間以内であることを意味する。
【0015】
本発明において、重量平均モル質量Mwは、ISO16014-3:2012(低T<60℃、THF中のポリスチレン標準に対する相対較正方法によるサイズ排除)に従って、GPCによって決定される。
【0016】
重量%は重量パーセントを意味する。
【0017】
本発明において、「ジエン」は共役ジエンを意味する。ブタジエンは1,3-ブタジエンを意味する。
【0018】
本発明による熱可塑性エラストマー組成物において、場合によりc)が存在すると、その最小分率は通常0.01重量%である。
【0019】
好ましくは、熱可塑性エラストマー組成物は、成分a)、b)およびc)を以下の量:
a)96.2から91.7重量%;
b)3.8から8.3重量%;
c)0から2重量%
で含む(または、それらからなる)。
【0020】
より好ましくは、熱可塑性エラストマー組成物は、成分a)、b)およびc)を以下の量:
a)96.19から91.69重量%;
b)3.80から8.30重量%;
c)0.01から1.00重量%
で含む(または、それらからなる)。
【0021】
本発明による熱可塑性エラストマー組成物は、好ましくは成分a)として1種の星形ブロックコポリマーAを含む。
【0022】
本発明による熱可塑性エラストマー組成物は、好ましくは成分b)として1種の可塑剤Bを含む。
【0023】
好ましくは、本発明による熱可塑性エラストマー組成物は、成分a)、b)およびc)からなる。
【0024】
本発明のさらなる主題は、上記の本発明による熱可塑性エラストマー組成物中の成分a)として使用される新規の星形ブロックコポリマーAである。
【0025】
成分A)
星形ブロックコポリマーAは、次の構造:
[S1-(S/B)k-(S/B)l-(S/B)m-S2]n-X (I)
(式中、S1およびS2は、少なくとも1種の、好ましくは1種の、ビニル芳香族モノマーから作られるポリマーブロックであり、S/Bは、少なくとも1種の、好ましくは1種のビニル芳香族モノマーと、少なくとも1種の、好ましくは1種のジエンとから作られるランダムコポリマーブロックであり、軟質相を形成し;Xは、多官能性カップリング剤に由来するカップリング中心である)を有し;
アームS1-(S/B)k-(S/B)l-(S/B)m-S2は同一であり;
ブロックS1およびS2(硬質相を形成する)の割合は、ブロックコポリマーA全体に基づいて、24から40重量%であり;
すべてのブロック(S/B)のビニル芳香族モノマー/ジエン(=S/B)重量比は1/0.45から1/2.5、好ましくは1/0.50から1/1.2であり;
ブロック(S/B)k、(S/B)lおよび(S/B)mのS/B比は互いに異なり;ブロック(S/B)kおよび(S/B)mのS/B比はブロック(S/B)lのS/B比よりも低く;
ブロックS2/S1の重量比は0.1から0.8であり;好ましくは0.1から0.6であり、より好ましくは0.15から0.40であり、最も好ましくは0.15から0.3であり;
ブロックコポリマーAの重量平均分子量Mwは200,000から350,000g/molであり、nは1から8の自然数であり;k、mは1であり;lは少なくとも1である自然数であり、好ましくはl=1から10であり、より好ましくはl=1、2、または3であり、最も好ましくはl=1である。
【0026】
本発明に関する星形構造は、1から8本の、好ましくは2から5本の、より好ましくは3から5本の、最も好ましくは3から4本の、連結剤を介してカップリングされた同一の配列を有する分枝を含む構造であり、ここで各分枝は上記のようなブロックコポリマーの構造を有する。
【0027】
上記構造(I)において、nは好ましくは2から5であり、より好ましくは3から5であり、最も好ましくは3または4である。
【0028】
さらに、本発明に関する星形構造ブロックコポリマーは、遂次重合によりコポリマーの分枝を形成し、その後、適切なカップリング剤、例えば、多官能性(二官能性または複官能性)カップリング剤を添加して分枝をカップリングさせることによって得られるブロックコポリマーである。適切なカップリング剤は当業者にて公知であり、後述する。本発明のブロックコポリマーの製造方法を以下に記載する。当業者が承知しているように、活性ポリマー鎖の一部は、カップリング剤と反応するのではなく、停止することがある。
【0029】
本発明に関して、星形構造を有するブロックコポリマーは、星形構造ポリマーと末端単鎖を含む生成物混合物でもあり得る。
【0030】
好ましくは、ブロックS1およびS2の割合は、ブロックコポリマーA全体に基づいて、25から39重量%であり、より好ましくは26から35重量%であり、特に26から33重量%である。
【0031】
ブロックコポリマーAの重量平均分子量Mwは好ましくは210,000から320,000g/molであり、より好ましくは215,000から300,000g/molである。
【0032】
本発明によるブロックコポリマーAのメルトフローインデックス(MFI)は、一般に2から5cm3/10分(200℃および5kg)の範囲である。
【0033】
さらに好ましくは、すべてのブロック(S/B)のビニル芳香族モノマー/ジエン(=S/B)重量比は0.5から1.0であり、最も好ましくは0.55から0.95である。
【0034】
好ましくは、コポリマーブロック(S/B)kのビニル芳香族モノマー/ジエン(=S/B)比は0.5から1であり、より好ましくは0.65から0.85である。
【0035】
好ましくは、コポリマーブロック(S/B)lのビニル芳香族モノマー/ジエン(=S/B)比は0.5から1.2であり、より好ましくは0.7から1.1である。
【0036】
軟質ブロック(S/B)lは、上記範囲内の異なる分子量および/または異なるモノマー組成をもつ2個またはそれ以上のランダム軟質ブロックに細分されている。
【0037】
好ましくは、コポリマーブロック(S/B)mのビニル芳香族モノマー/ジエン(=S/B)比は0.3から0.8であり、より好ましくは0.4から0.7である。
【0038】
好ましくは、ブロック(S/B)k、(S/B)lおよび(S/B)mの重量平均モル質量Mw(ISO16014-3:2012に従ってGPCで決定)は互いに異なる。より好ましくは、ブロック(S/B)lのMwはブロック(S/B)kのMwよりも高く、ブロック(S/B)kのMwはブロック(S/B)mのMwよりも高い。
【0039】
好ましくは、コポリマーブロック(S/B)kの重量平均分子量Mwは、13,800から26,900g/molの範囲であり、より好ましくは15,700から25,000g/molの範囲である。
【0040】
好ましくは、コポリマーブロック(S/B)lの重量平均分子量Mwは、21,200から41,000g/molの範囲であり、より好ましくは24,000から38,000g/molの範囲である。
【0041】
好ましくは、コポリマーブロック(S/B)mの重量平均分子量Mwは、11,500から23,000g/molの範囲であり、より好ましくは13,500から21,500g/molの範囲である。
【0042】
好ましくは、ポリマーブロックS1の重量平均分子量Mwは、18,000から36,000g/molの範囲であり、より好ましくは21,600から34,000g/molの範囲である。
【0043】
好ましくは、ポリマーブロックS2の重量平均分子量Mwは、4,000から8,100g/molの範囲であり、より好ましくは4,200から7,500g/molの範囲である。
【0044】
ビニル芳香族モノマーは、好ましくはスチレン、α-メチルスチレンおよび/またはビニルトルエンから選択され、特にスチレンである。ジエンは、好ましくはイソプレンおよび/またはブタジエンから選択される。特にブタジエンが好ましい。
【0045】
ランダムコポリマーブロックS/Bは好ましくは1種のビニル芳香族モノマーと1種のジエンから、特にスチレンとブタジレンから作られる。
【0046】
カップリング中心Xは、リビングアニオン性ポリマー鎖末端(=ブロックS2を介して連結)と多官能性(二官能性または複官能性)カップリング剤の反応によって形成される。前記カップリング剤は一般にいずれかの適切なn-またはオリゴ官能性化合物であってよい。好ましくは、エポキシ化植物油、特にエポキシ化アマニ油またはエポキシ化ダイズ油から選択される。
【0047】
重合したビニル芳香族モノマーおよびジエンで構成されるコポリマーブロックS/Bはランダムに分布している。これらは、例として、テトラヒドロフランまたはカリウム塩のようなランダム化剤の存在下でアルキルリチウム化合物を使用したアニオン重合によって得ることができる。アニオン開始剤とカリウム塩のモル比が25:1から60:1の範囲であり、特に好ましくは30:1から40:1の範囲であるカリウム塩の使用が好ましい。この方法は同時に、ブタジエン単位の1,2結合の割合を低くすることができる。好適なカリウム塩は特にカリウムアルコラートであり、特に重合溶媒に可溶なもの、例えば、tert-アミルアルコラートもしくはトリエチルカルビノラートのような少なくとも5個の炭素原子を有する第三級アルコラート、または他のCに富む第三級アルコラートである。
【0048】
ブタジエン単位の1,2結合の割合は、1,2、1,4-シス、および1,4-トランス結合の全体に基づいて好ましくは8から15%の範囲である。
【0049】
アニオン的に製造されたポリマーの場合、分子量は、モノマーの量と開始剤の量との比によって制御される。
【0050】
分子量は通常、ポリスチレンを基準として使用して、溶媒としてのTHF中のゲル浸透クロマトグラフィー(GPS)により決定される。
【0051】
本発明の星形ブロックコポリマーAは、一般に非極性溶媒中でアニオン重合を介して生産され、ここで、開始方法は、一般に有機金属化合物である開始剤を使用する。本発明における生産方法は、一般に重合反応の終了時に少なくとも1種のカップリング剤の添加を使用し、ここで、少なくとも1種の開始剤を重合反応の開始時に添加する。本発明の方法により、特に星の同一のアーム(分枝)を有する星形の分子構造を特徴とする本発明のブロックコポリマーAの生産が可能になる。
【0052】
アニオン重合反応における好適な開始剤は、有機金属化合物であり、好ましくはアルカリ金属の化合物であり、特に好ましくはリチウムの化合物である。開始剤の例としては、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、およびtert-ブチルリチウムである。有機金属化合物は、一般に化学的に不活性な炭化水素の溶液の形態で添加される。添加量は、原則としてポリマーの所望のモル質量に依存するが、一般にモノマーに基づいて0.002から5mol%である。
【0053】
使用する溶媒は、好ましくは、シクロヘキサンまたはメチルシクロヘキサンのような脂肪族炭化水素である。
【0054】
アニオン重合反応はまた、極性共溶媒(ランダム化剤として)の添加を一般に使用し、ここで共溶媒は開始剤の金属カチオンに対してルイス塩基として作用すると考えられている。好ましいルイス塩基は、エーテルおよび第三級アミンのような極性非プロトン性化合物である。特に効果的なエーテルの例は、テトラヒドロフラン、ならびにエチレングリコールジメチルエーテルおよびジエチレングリコールジメチルエーテルのような脂肪族ポリエーテルである。言及される第三級アミンは、トリエチルアミン、トリブチルアミン、およびピリジンである。非極性溶媒に添加する極性共溶媒の量は、例えば0.5から5体積%である。特に好ましくは、テトラヒドロフラン0.1から0.6体積%の量である。多くの場合、非常に好ましくは、0.2から0.4体積%の量である。
【0055】
ルイス塩基の添加量および構造により、共重合パラメータならびにジエン単位の1,2-および1,4-結合の割合が決定される。得られたブロックコポリマーは、一般に、すべてのジエン単位に基づいて、1,2-結合20から80%および1,4-結合80から20%の割合を有する。
【0056】
好ましくは、可溶性カリウム塩、具体的にはカリウムアルコラートを、共溶媒の代わりに、(ランダム化剤として)添加する。ここで、カリウム塩が、リチウム-カルバニオンイオンペアとの金属交換によって相互作用し、それによって、ビニル芳香族モノマー、好ましくはスチレンとの付加物を優先的に形成するカリウム-カルバニオン化合物を形成し、一方、リチウム-カルバニオン化合物は、ジエン、特に好ましくはブタジエンとの付加物を優先的に形成すると考えられる。カリウム-カルバニオン化合物は、実質的に反応性が高いため、優勢なリチウム-カルバニオン化合物と共に、わずかな割合、すなわち1/10から1/50でも、ビニル芳香族モノマー、好ましくはスチレン、およびジエン、特に好ましくはブタジエンの取り込み平均確率を同様にするのに十分である。アニオン開始剤とカリウム塩のモル比が25:1から60:1の範囲であり、好ましくは30:1から40:1の範囲であるカリウム塩の使用が好ましい。ビニル芳香族モノマー、好ましくはスチレン、およびジエン、好ましくはブタジエンのほぼ同一の取り込みを達成するためには、リチウム/カリウムモル比が33から39が特に好ましく選択される。
【0057】
さらに、重合操作中に、リビング鎖間およびリビング鎖と溶解塩との間でも頻繁に金属交換が行われ、ある場合には、同じ鎖がビニル芳香族モノマーと、好ましくはスチレンと付加物を優先的に形成し、さらに別の場合には、ジエンと、特に好ましくはブタジエンと付加物を形成すると考えられる。その結果得られた共重合パラメータは、ビニル芳香族モノマーとジエンでほぼ同じである。好適なカリウム塩は特にカリウムアルコラートであり、特に重合溶媒に可溶なもの、例えば、tert-アミルアルコラートもしくはトリエチルカルビノラートのような少なくとも5個の炭素原子を有する第三級アルコラート、または他のCに富む第三級アルコラートである。
【0058】
典型的な対応するアルコールの例は、3-エチル-3-ペンタノールおよび2,3-ジメチル-3-ペンタノールである。テトラヒドロリナロール(3,7-ジメチル-3-オクタノール)および2-メチル-2-ブタノール(tert-アミルアルコール)が特に好適であることが証明されている。原則としてカリウムアルコラートと並んでやはり好適な他の化合物は、アルキル金属化合物に対して不活性な他のカリウム塩である。ジアルキルカリウムアミド、アルキル化ジアリールカリウムアミド、アルキルチオラート、およびアルキル化アリールチオラートを挙げることができる。
【0059】
重合温度は、一般に0から100℃、好ましくは30から90℃、特に好ましくは45から90℃である。重合反応は、一般に複数の段階で行われ、重合開始時には、単一の開始方法を用いて開始剤が添加される。例として、方法はハードブロックS1を生産することによって開始する。モノマーの一部を、反応器において初期充填として使用し、重合反応を開始剤の添加を介して開始する。添加されるモノマーの量と開始剤の量から計算できる明確な鎖構造を実現するために、第2のモノマーの添加が行われる前の方法で高い転化率(99%超)を達成することが推奨される。しかし、これは必須ではない。
【0060】
モノマー添加の順序は、選択されたブロック構造によって異なる。バッチ方法の場合には、シクロヘキサンのような溶媒のすべてまたは一部を、初期充填として使用することから始め、そして、初期充填として、sec-ブチルリチウムのような開始剤の、所望のモル質量を確立するために必要であり、さらに滴定量として既知である、溶媒中および槽中の微量の不純物を消失させるのに役立つ量を使用することが好ましい。次いで、好ましくはシクロヘキサンに溶解したカリウムtert-アルミアルコラートのようなカリウム塩を添加すること、またはTHFのような錯化溶媒を反応器に添加し、次いでビニル芳香族モノマーの最初の量を添加してブロックS1を生産することが好ましい。次いで、ブロック(S/B)kの製造のためのジエンおよびビニル芳香族モノマーを、好ましくは同時に添加する。添加は、場合によりさらなる溶媒と一緒に、例えば熱放散を向上させるために、所望の構成に応じて複数の部分で行うことができる。ブロックS/Bのランダム構造および構成は、ビニル芳香族化合物に対するジエンの量的割合を介して、カリウム塩が使用される場合は、カリウム塩の濃度を介して、ルイス塩基が使用されている場合は、共溶媒として使用されるルイス塩基の濃度と化学構造を介して、さらには温度を介して決定される。
【0061】
次いで、ブロック(S/B)l(またはサブブロック(S/B)l1、(S/B)l2などであってもよい)はジエンおよびビニル芳香族モノマーを添加することにより、成長ポリマー鎖上に重合する。好ましくは、1個のブロック(S/B)lのみが、次いで成長ポリマー鎖上に重合される。次いで、ブロック(S/B)mを成長ポリマー鎖上に重合するために使用されるジエンおよびビニル芳香族モノマーの添加が行われる。ブロックS2を生産するために、最後にビニル芳香族モノマーが添加される。
【0062】
本発明の方法によれば、ビニル芳香族モノマーの最後の添加後にカップリング剤とのカップリングが起こり、したがって複数のポリマーブロックS2が互いに結合し、星形の分子構造を有する本発明のブロックコポリマーAが形成される。
【0063】
一般に、いずれかのn-またはオリゴ官能性化合物をカップリング剤として使用することが可能である。カップリング剤は、エポキシ化アマニ油またはエポキシ化ダイズ油のようなエポキシ化植物油、アルコキシシラン、例えば、Si(OMe)4のようなシラン、SiCl4、Si(アルキル)2Cl2、Si(アルキル)Cl3のようなクロロシランであって、アルキルは、C1~C4-アルキル部分、好ましくはメチルである、クロロシラン、四塩化スズのような脂肪族炭化水素のハロゲン化物から選択されることが好ましく、好ましいカップリング剤はエポキシ化アマニ油またはエポキシ化ダイズ油のようなエポキシ化植物油である。
【0064】
カップリング剤は、カップリング中心Xを形成し、これはリビングアニオン鎖末端と、上記カップリング剤のうちの1種との反応により形成される。
【0065】
カップリング剤の量は、その機能性および使用される開始剤の量の関数として計算される。活性開始剤の量(開始剤の総量から滴定量を引いたもの)に対応して、すべてのリビング鎖を反応させるのに必要な量のカップリング剤を添加することが好ましい。エステル基の場合、これらが2個のリビング鎖を形成するが、一方、エポキシドおよびハロアルカンおよび-シランは、官能基1個当たり1個のリビング鎖を形成するという事実を考慮する必要がある。例として、エポキシ化ダイズ油は、主に1または2個のエポキシ基を有するトリグリセリドの形でエステル化された脂肪酸を含み、それに応じて、カルボキシ基はさらに2個の鎖と結合を形成するため、主に3または4個のポリマー鎖と結合を形成し、グリセロールの金属アルコラートを遊離する。
【0066】
エポキシ化アマニ油またはエポキシ化ダイズ油のようなエポキシ化植物油をカップリング剤として使用する場合、すべてのリビングポリマー鎖の約70%のみがカップリング剤にカップリングされる。リビングポリマー鎖の残りの30%はカップリング剤と反応するのではなく停止し、星形ブロックコポリマーAのポリマーマトリックス中でカップリングしていないままである。
【0067】
ポリマー濃度は広く変化させることができるが、好ましくは、個々のブロックの重合反応の終了時の温度が100℃の値を超えないように選択するべきであり、または、その温度がその値を超える場合には、せいぜい短時間にすることにより、著しく早期の熱停止を回避する。カップリング方法後の典型的なポリマー濃度は、撹拌槽でのパッチ方法の場合には、10から50重量%、好ましくは20から40重量%、特に好ましくは20から35重量%である。
【0068】
好ましくは槽の内圧を低下させて、溶媒の沸騰および還流を介して反応溶液を冷却する還流冷却器と好ましくは組み合わせた撹拌槽の代わりに、原則として、他の種類の反応器、例えば、熱交換器のような冷却部と組み合わせたループ反応器を使用することも可能であり、または撹拌槽を外部熱交換器と組み合わせて使用することも可能である。
【0069】
本発明のブロックコポリマーAをバッチ方法で生産する代わりに、それらを、例えば、上記の反応器を様々な組合せで連続して配置することを介して、または好ましくは静的混合要素を備えた管状反応器により、または管状反応器と上記の反応器の組合せを介して連続方法で生産できる。反応ゾーンの数は、異なるモノマーの添加数にカップリング剤の添加数を加えた数と同じであることが好ましい。
【0070】
開始時および適切な時点で、一般に開始剤およびランダム化剤ならびに場合によりさらなる溶媒を含む開始剤系をさらに混合し;ここで、モノマー供給物に溶媒を添加して、モノマーが反応器に到達する前に希釈形態になるようにすることが好ましい。
【0071】
好ましい一実施形態では、ポリマー濃度は、反応器カスケードに沿って15から35重量%の範囲で一定に保たれる。別の好ましい一実施形態では、ポリマー濃度は、最終モノマー添加を介して36から50重量%に増加する。
【0072】
したがって、ブロックコポリマーAの製造のための本発明による方法は、以下の構成:
i)単一の開始、
ii)ビニル芳香族モノマーの第1の添加および重合、
iii)ビニル芳香族モノマーとジエンの混合物の少なくとも3回の添加および重合、
iv)ビニル芳香族モノマーの第2の添加および重合、ならびに
v)最後のポリマーブロックのビニル芳香族モノマーの添加および重合後のカップリング工程
を特徴とする。
【0073】
本発明のエラストマーブロックコポリマーのさらなる後処理は、従来の方法によって行われる。ここで、撹拌槽において操作し、カップリング方法の後、場合により、イソプロパノールのような少量のアルコールを使用して、存在する可能性がある少量の残留カルバニオン、およびカップリング工程で生産された可能性のあるポリマー結合アルコラートをプロトン化して、槽内での堆積物の形成および生成物の変色を回避し、溶液の粘度を低下させ、さらなる後処理の前に、生成物をわずかに酸化する従来の方法でCO2/水を使用し、結果として、続いて得られた生成物がガラスのように無色透明となることが推奨される。
【0074】
また、ポリマーを、フリーラジカル捕捉剤(free-radical scavenger)を用いて、または好ましくはフリーラジカル捕捉剤の組合せ(例えば、α-トコフェロール(ビタミンE)、Sumilizer(登録商標)GM、およびSumilizer(登録商標)GSならびにそのブレンドのようなCフリーラジカル捕捉剤を、Irganox(登録商標)1010、Irganoz(登録商標)565およびIrganox(登録商標)1076ならびにそのブレンドのようなOフリーラジカル捕捉剤と組み合わせて)を用いて、および二次酸化防止剤(例えば、好ましくは亜リン酸塩をベースとする市販品、例としては亜リン酸トリイソノニルフェニル(TNPP)またはIrgafos(登録商標)168)を用いて安定化し、従来の方法を使用して溶媒を除去し、生成物を押し出してペレット化することも有用である。
【0075】
溶媒を除去するための好ましい1つの方法は、溶媒の濃度を段階的に低下させることであり、ここで、重合反応がバッチ方法を使用する場合、溶液を、有利には、最初に緩衝槽中の中間貯蔵部中に入れ、次いで好ましくは、ポンプを通過させた後、1つまたはそれ以上の連続する熱交換器を介して溶媒の沸点よりも好ましくは100から140℃高い温度(シクロヘキサンの場合にはこれは180から220℃)に加熱し、次いで、圧力保持バルブを通過させた後、好ましくは100から350m/秒の蒸気速度で短いパイプを介して減圧容器に移動させ、ここで、減圧容器の圧力および温度は、溶媒がちょうど凝縮し始め、表面が溶媒膜のコーティングを有する、すなわち乾燥していないように好ましくは調整されており;溶媒としてシクロヘキサンの場合、100から140℃の温度および1.6から4.3barの圧力を選択することがここでは好ましい。
【0076】
溶媒蒸気は、好ましくは、減圧容器から上方に排出され、凝縮され、後処理にかけられ、一方、ポリマー溶液は、ここで濃度は約70から95%であり、容器の底部にフレーク状の沈殿物を生じ、そこから、例えばギアポンプによって次の熱交換器へと前方へ搬送することができ、好ましくは170から230℃まで再加熱することができる。
【0077】
次いで、溶液を、圧力保持バルブ経由で、好ましくは二軸押出機のスクリュにおいて再び減圧し、ここで、溶媒蒸気は、ポリマー供給点の上流および下流のベントドームを経由して排出される。次いで、溶媒の濃度を、好ましくは互いに密閉されたバリアスクリュ要素を備えた押出機セグメントでさらに低下させ、それと同時に、真空度を高め続け、押出機頭部の上流は好ましくは1から300mbarであり、達成される溶媒含有量が好ましくは3000ppmより低く、特に好ましくは2000ppmより低くなるまで、少量の水を注入することが好ましい。
【0078】
押出機の最後に、溶融物をストランドペレット化(strand-pelletized)または水中ペレット化のいずれかをすることができ、ここでは水中ペレット化方法が好ましい。しかしながら、他の方法により、例えば、場合により押出機と組み合わせたFilmtruderとして知られているものを介して、または、大部分がスチレンベースの熱可塑性エストラマーの場合には、従来のように、水蒸気ストリッピングを介して、溶媒を除去することも可能である。この場合、ポリマーフレークが得られる。ペレットまたはフレークは、他のタイプのゴムと同様に、Acrawax(登録商標)、Besquare(登録商標)、Aerosil(登録商標)および/またはリン酸三カルシウムのようなブロッキング防止剤を使用して接着から保護することができる。また、Wurtz PAT 906/EMCのような加工助剤としての分散油および界面活性剤は、水中造粒の水回路において、水サイクルおよびサイロにおける粒状物の粘着性を低減することを助けることができる。
【0079】
本発明の方法の特定の構成は、本発明のブロックコポリマーAを良好な空時収率で生産することができることである。バッチ重合方法のための、すなわち第1のモノマー充填が開始剤充填と組み合わされた時点から、カップリング方法の終了まで、すなわち、アルコールの場合による添加と反応器の排気を開始できる時点までの空時収率(STY)は、一般に0.5から3.5時間であり、好ましくは1から3時間である。
【0080】
本発明によるブロックコポリマーAは、非粘着性および透明な熱可塑性エラストマーである。
【0081】
ブロックコポリマーAを含む本発明による熱可塑性エラストマー組成物は、軟質で、好ましくは、例えばチューブおよび注入セットのための医療用途に使用することができる。
【0082】
成分b)
本発明による熱可塑性エラストマー組成物中の、成分b)として使用される好適な可塑剤Bは、好ましくは低芳香族パラフィン油、ナフテン系油またはオリゴマーポリブタジエンのような鉱油である。特に好ましくはホワイト油である。
【0083】
植物油または、少なくとも20個の炭素原子を有し、脂肪族C原子とエステル基の比が11を超え、脂肪族C原子はカルボン酸成分とアルコール成分の合計である、脂肪族エステルのような、他の可塑剤をまた使用することができるが、それらの使用はあまり好ましくない。前記エステル中で、ジイソノニルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシルエステルが好ましく、例えば市販品Hexamoll(登録商標)DINCH(CAS番号ヨーロッパおよびアジア:166412-78-8;CAS番号米国:474919-59-0;BASF SEより)である。
【0084】
前述の可塑剤は、単独でまたは組み合わせて使用できる。好ましくは1種のみの可塑剤B、特に鉱油が使用される。
【0085】
成分c)
本発明による熱可塑性エラストマー組成物中の成分c)として場合により存在するさらなる添加剤Cは、可塑剤を含まない。添加剤Cは、特に安定剤、ブロッキング防止剤、染料、難燃剤および紫外線吸収剤から選択される。
【0086】
好ましいのは、安定剤、特に、Irganox(登録商標)1010(BASF SE)、Songnox(登録商標)1010、Irganox1076、Irganox565およびそのブレンドのような酸素ラジカル捕捉剤(radical scavenger)、Sumilizer(登録商標)GS、SumilizerGMおよびそのブレンドのような炭素ラジカル捕捉剤、ならびに/またはIrgafos(登録商標)168(BASF SE)のような二次安定剤の使用である。前記安定剤は市販されている。前述の安定剤は、好ましくは0.01から0.5重量%、より好ましくは0.1から0.3重量%の量で使用される。
【0087】
さらに好ましくは、Acrawax(登録商標)、Besquare(登録商標)、Aerosil(登録商標)、および/またはリン酸三カルシウムのようなブロッキング防止剤の使用である。前述の安定剤は、好ましくは0.01から1.0重量%、より好ましくは0.05から0.5重量%の量で使用される。
【0088】
本発明による熱可塑性エラストマー組成物の製造方法
本発明による熱可塑性エラストマー組成物(または成型物組成物)は成分a)、b)および、存在する場合、c)をプラスチック技術の通常の方法で混合し均質化することによって得ることができ、成分を添加する順序は様々であってよい。好適な混合装置の例は、連続もしくはバッチ式混練機、バンバリーミキサー、または同方向回転もしくは逆回転の、単軸もしくは二軸押出機である。好ましくは、成分a)を押出機に連続的に導入し、次いで成分b)および場合により成分c)を計量導入する。
【0089】
成分b)および場合により成分c)を成分a)に組み込むさらなる好ましい変形形態は、成分b)および場合により成分c)(そのままでまたは溶液で使用できる)をそれが存在する形態のブロックコポリマーAのポリマー溶液(例えばシクロヘキサン中)に計量導入することであり、例えば、重合後、必要に応じて容器中の撹拌機もしくは静的ミキサーまたは両方の組合せを使用して、次いで液体を均質化し、続いて生成物を溶媒から遊離させる。
【0090】
この好ましい、いわゆる含浸変形形態(impregnation variant)は、連続撹拌容器に成分a)、b)およびc)を添加するか、静的ミキサーを使用して成分a)の溶液を含む処理パイプに成分b)およびc)を添加することによって行うことができる。成分b)およびc)は、同時に、または方法もしくは時間における異なる段階で、(すなわち、1つの容器内で連続して、連続容器で、各添加の間に静的ミキサーを使用するなど)およびすべての順序で添加できる。好ましくは、安定剤添加剤Cが成分c)として使用される場合、前記安定剤添加剤Cは成分b)の前に添加される。好ましくは、安定剤添加剤Cが最初に添加される静的ミキサーによる含浸が使用され、続いて静的ミキサーによって、続いて成分b)を添加し、最後に最後の静的ミキサーを使用する。その後この混合物を、以下の後処理に記載されるように脱気する。
【0091】
ブロックコポリマーAがフレークの形態で(例えば、有機重合溶媒の蒸気ストリッピングによって)、前述のフレークの圧縮により成形体の形態で、または事前の押出によりペレットの形態で、製造されたかどうかに応じて、混合物のための異なる生産方法が好ましい。フレークおよび成形体は、好ましくはフレークをほとんどまたは全く剪断しないようにする装置において、好ましくは可塑剤Bと最初に混合する。この装置は、回転ドラム、パドルミキサーまたは低速混合機である。好適な混合機/ミキサーは、例えば、Kunststoff-Handbuch、Hanser Verlag、ミュンヘン、1975、セクション5.1.2.1、965から975頁に記載されている。
【0092】
フレークまたは成形体の表面の性質に応じて、可塑剤Bは異なる速度でポリマーに移行し、より大きな表面体積比で取り込みが促進される。混合は、すべての油が結合するまで行うことが好ましい。接触時間は1分から1日、好ましくは2分から1時間であり得る。温度は好ましくは20から200℃の間、好ましくは25から100℃の間、より好ましくは30から50℃の間である。
【0093】
成分a)およびb)の混合物を、次いで、好ましくは単軸もしくは二軸もしくは多軸混合機もしくは押出機(例えば、Coperion、以前のWerner&PfleidererからのZSK)、バス(BUSS)混練機(Buss AG、プラッテルン、スイス)またはLIST反応器(List AG、アリスドルフ、スイス)に移動させ、そこの温度を外部加熱および/または剪断により100℃超、好ましくは140℃超の温度に上昇する。好適な混合機/押出機は、例えば、Kunststoff-Handbuch、Hanser Verlag、ミュンヘン、1975、セクション5.1.3.3、1029から1091頁に記載されている。混合機は様々な時点でさらなる添加剤Cを供給することができる。
【0094】
添加剤Cが安定剤である場合、これらは、上記の含浸工程で(ポリマー溶液中に)投入する必要がある。
【0095】
成分b)としての可塑剤Bは、これまでに説明した段階で添加することができるだけでなく、成分a)の生産中のより速い段階で、脱気押出機での乾燥供給物としても添加することができる。
【0096】
ブロックコポリマーAが十分なメルトフローレートを有するペレットの形態であると、ブロックコポリマーAは押出機中で単独で溶融し、可塑剤Bは、後の時点で計量導入される。同様に、可塑剤Bおよびペレットならびにその他のさらなる添加剤C(安定剤を除く)の同時計量が好ましい。
【0097】
あらかじめ均質化された混合物(ready-homogenized mixture)を次いで、好ましくは水中ペレット化(ホットチョッピング)もしくはストランドペレット化(strand pelletizing)(コールドチョッピング)によって後処理し、また溶融物を射出成形機でさらに加工することができる。
【0098】
さらなる好適な連続的または不連続的な混合要素の例としては、ロールミル、バンバリー混練機、および同様の要素を含む。
【0099】
後処理は、好ましくは、第1の工程において、フラッシュ蒸発による多段脱揮を介して達成され、蒸発前、溶液を、超大気圧下で、熱交換器内で150から250℃、好ましくは180から220℃に加熱し、好ましくは100mbarから5barの間の、より好ましくは500mbarから2barの圧力に対して、溶媒、好ましくは1から20%の残留量まで非常に大部分が蒸発する、シクロヘキサンまたは例えばブロックコポリマーAを製造するためのアニオン重合に適した他の炭化水素と共にスロットルバルブを通過させる。
【0100】
溶融物を、好ましくは150から250℃の間の温度に再度加熱し、圧力維持バルブを介して搬送要素中に、好ましくは単軸または二軸または多軸押出機に、好ましくは500mbarから2barの間の圧力に対して再び投入する。押出機の脱揮ドームを介して、複数の段階で圧力を好ましくは1から500mbar、好ましくは5から400mbarまで下げることができ、ポリマー溶融物の温度を好ましくは120から280℃の間、好ましくは160から240℃の間に保持する。次いで、溶融物を、例えば、水中ペレット化の手段によりペレット形態に変換することができる。
【0101】
押出機の最後に配置されるのは、好ましくは、例えばGalaから入手できる種類の水中ペレタイザーでありホットチョッパとも呼ばれる。ペレットが粘着する傾向を低減するために、水/ペレット混合物の滞留時間は、好ましくは10秒から60分であり、より好ましくは2から15分である。次いで、水/ペレット混合物を、好ましくはふるいを介して分離し、この水は好ましくは循環され熱交換器を介して冷却される。個々のペレットが互いに粘着することを防止するために、水は好ましくはブロッキング防止剤、好ましくは脂肪酸アミド分散液を含むことが好ましい。その後、ふるいにかけられたペレットを、好ましくは空気の流れで乾燥し、好ましくは例えばリン酸三カルシウムまたはシリカのような粉末形態のさらなるブロッキング防止剤を散布する。次いで、それをサイロに移動するか、袋または他の包装手段に包装することもできる。
【0102】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、非粘着性、軟質、耐キンク性、熱可塑的に加工可能であり、再溶融によって容易にリサイクル可能である。
【0103】
優れた加工特性、および、ガラスクリアポリスチレン(GPPS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、Ineos StyrolutionからのStyrolux(登録商標)もしくはK-Resin(登録商標)(Ineos Styrolution)のようなスチレン-ブタジエンブロックコポリマー、スチレン-アクリロニトリルポリマー(SAN)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンポリマー(ABS)、またはポリフェニレンエーテル(PPE)、またはGPPS/PPE混合物のような、スチレンベース熱可塑性樹脂との適合性により、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、二成分{2C}射出成形に適しているか、または単に溶剤接着によって簡単に接合することができる。
【0104】
前述の硬質成分と本発明の軟質成分としての熱可塑性エラストマー組成物との境界は、さらに透明である。したがって、2C射出成形では、1つの成形手順で可撓な剛性の高い部品を生産することができる。また硬質成分としても好適なのは、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステルだけでなく、1,3-プロパンジオールのような他のジオール成分を含むもの、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、および好ましくはビスフェノールAに基づいて芳香族ジカルボン酸、ポリカーボネートまたはそれらの混合物との組合せを含む他の脂肪族二塩基酸である。
【0105】
熱可塑性エラストマー組成物は、多くの用途、特に弾力性のあるおよび可撓な成型物および成形品、好ましくは輸液器具、透析ユニットおよび呼吸マスクのような医療品の生産に適している。
【0106】
本発明の透明な熱可塑性エラストマー組成物から生産された成形品、特にチューブは、改善された曲げからの回復および水による高い湿潤性を示す。これらの特性により、気泡を満たしているか、または気泡を含んでいるかを確認すること、および気泡の通過を確実に容易にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0107】
以下の実施例および特許請求の範囲は、本発明を説明するものである。
【実施例】
【0108】
ブロックコポリマーA
構造[S1-(S/B)k-(S/B)l-(S/B)m-S2]n-Xの星形ブロックコポリマーAを、スチレン(モノマーS1からS5)およびブタジエン(モノマーB1からB3)の遂次アニオン重合(表1を参照)、ならびにエポキシ化ダイズ油を使用したその後のカップリングによって製造した。シクロヘキサン25670mlを初期充填(ic)として使用し、1.4M sec-ブチルリチウム(BuLi ic)2mlを用いて終点まで滴定し、45℃に加熱してから、開始用として1.4M sec-ブチルリチウム溶液46.38ml、およびランダム化剤として0.553Mカリウムtert-アミルアルコラート(PTA)溶液5.61mlを添加した。次に、開始剤混合物を次いで混合した。次の工程では、スチレン(S1)1350グラムを添加し、重合反応を進行させてモノマー消費(反応混合物の温度低下によって確認される)を完了させた。次の工程では、ブタジエン(B1)570グラムとスチレン(S2)415グラムを同時に添加し、重合反応を進行させてモノマー消費(反応混合物の温度低下によって確認される)を完了させた。
【0109】
次の工程では、ブタジエン(B2)800グラムおよびスチレン(S3)720グラムを再び同時に添加し、重合反応を進行させてモノマー消費(反応混合物の温度低下によって確認される)を完了させた。次の工程では、ブタジエン(B3)535グラムおよびスチレン(S4)310グラムを再び同時に添加し、重合反応を進行させてモノマー消費(反応混合物の温度低下によって確認される)を完了させた。次の工程では、スチレン(S5)300グラムを添加し、重合反応を進行させてモノマー消費(反応混合物の温度低下によって確認される)を完了させた。
【0110】
最後に、シクロヘキサン30mlに溶解したEdenol(登録商標)D82、7.21mLをカップリング剤として添加し、10分間反応させた。最後に、イソプロパノール0.5mlを使用して反応を停止させ、0.1kg/hのCO2のガス流で5分間酸性化し、水10mLおよび安定剤溶液(0.135重量%phm* Sumilizer GS、0.135重量%phm Irganox(登録商標)1010および0.18重量%phm Irgafos168)を添加した。
*phm=「モノマー100重量部当たり」(成分(開始剤、カップリング剤など)の重量%はモノマーの総質量に基づいて計算される)
【0111】
【0112】
熱可塑性エラストマー組成物の製造
鉱油(表2を参照)4から9phmを可塑剤Bとしてそれぞれ、これまでに説明したブロックコポリマーを合成するために使用されるモノマーの総重量の100重量部(pbw)に添加した。この目的のために、重合および安定化後、脱気の前に、可塑剤Bをシクロヘキサン中のブロックコポリマーAのポリマー溶液に添加し、続いて容器中でプロペラミキサーにより30分間かなりの混合を行った。
【0113】
得られた機械的評価用の熱可塑性エラストマー組成物(ISO527、表2を参照)から、ISO527(1A)に従って引張試験片(tensile bar)を生産した。
【0114】
ヒステリシスは、ISO527(1A)に従って引張試験片で測定された。ヒステリシスを測定する手順は次の通りである:50mm/分で100%のひずみまでストレッチし、一定の伸びで1秒間維持し、50mm/分でゼロ応力まで戻し、50mm/分で200%のひずみまでストレッチし、一定の伸びで1秒間維持し、50mm/分でゼロ応力まで戻し、50mm/分で300%のひずみまでストレッチし、一定の伸びで1秒間維持し、50mm/分でゼロ応力まで戻す。この時点で、ゼロ応力における伸びを測定した。
【0115】
透明度、ヘイズおよび明澄度を、ASTM D1003に従って、BYK Haze-gard Iで、10分間40bar、200℃で生産された2mm圧縮成形プレートで測定した。
【0116】
【0117】
本発明による得られたS-TPE組成物は、改善された曲げからの回復を有し、そのことは、例えば、低ヒステリシス(300%のひずみの伸びの後のゼロ応力で75%未満の残留ひずみ(実施例、表2を参照)および以下に記載する包装試験によって示される。
【0118】
可塑剤B 9phmをもつS-TPE組成物から生産された140cmの長さのチューブを20cmの長さに畳み、20℃で1、3および7日間一緒に束ねて保存した。次に、チューブを広げ、1秒間に150cmにストレッチし、壁に垂直につるして、重量で落下できるようにした。30分後、各チューブの垂直方向の長さを測定した。
【0119】
値はしわの回復の尺度である。値が大きいほど、しわのない元の線形形状への回復が向上する。
【0120】
3日間ぶら下げた後、可塑剤B 9phmをもつ本発明のS-TPE組成物は、127cmの垂直方向の長さを有したが、同じ外径および内径を有する静脈セットから取られた市販のPVCチューブは124cmの垂直方向の長さを有していた。これは、本発明による材料中の「曲げ」が、包装を解いた後にはるかに良好に回復することを意味する。
【0121】
さらに、本発明によるS-TPE組成物の引張強度は、ISO527(1A)に従って引張試験片で測定した9MPaより高い破断応力により示されるように高かった。
【0122】
さらに、得られた組成物は軟質で、72.4から77.4の範囲のショアA硬度を有した。
【0123】
表2に示すデータは、本発明による組成物が高い透明度を有することを証明する。さらに、得られた本発明のサンプルのMFI値は、可塑剤が添加される量を増やしても(40、45phmを参照)良好な加工を可能にするようなものである。