(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】前面型撮像素子用基板および前記基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/20 20060101AFI20221107BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20221107BHJP
H01L 27/12 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
H01L21/20
H01L27/12 B
(21)【出願番号】P 2019557687
(86)(22)【出願日】2018-01-10
(86)【国際出願番号】 FR2018050053
(87)【国際公開番号】W WO2018130780
(87)【国際公開日】2018-07-19
【審査請求日】2020-12-21
(32)【優先日】2017-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】500361216
【氏名又は名称】ソワテク
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】ウォルター、シュバルツェンバッハ
(72)【発明者】
【氏名】オレグ、コノンチュク
(72)【発明者】
【氏名】ルドビク、エカルノ
(72)【発明者】
【氏名】クリステル、ミショー
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-345436(JP,A)
【文献】特開2008-305994(JP,A)
【文献】特表2007-511068(JP,A)
【文献】特開2013-030773(JP,A)
【文献】特開2001-036054(JP,A)
【文献】特開2010-040931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/20
H01L 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体支持基板(1)と、電気絶縁層(2)と、半導体活性層(3)とを順次含んでなる前面型撮像素子用の基板であって、活性層(3)がシリコンゲルマニウムからなるエピタキシャル層であり、該活性層のゲルマニウム含量が10%未満であることを特徴と
し、電気絶縁層が、誘電体層および/または金属層(21、22、23)の積層体から構成され、該積層体が、700nm~3μmの間に含まれる波長範囲にある該積層体の反射率が、該積層体の厚さと等しい厚さを有する酸化シリコン層の反射率を上回るように選択される、基板。
【請求項2】
活性層(3)のゲルマニウム含量が8%以下である、請求項1に記載の基板。
【請求項3】
活性層(3)の厚さが、これを超えるとシリコンゲルマニウムの緩和が生じる厚さと定義される、シリコンゲルマニウム層の臨界厚さ未満である、請求項1または2に記載の基板。
【請求項4】
活性層の厚さが、1μm超、またはさらには2μm超である、請求項1~3のいずれか一項に記載の基板。
【請求項5】
電気絶縁層(2)とシリコンゲルマニウム層(42)との間にシリコン層(42)をさらに含んでなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の基板。
【請求項6】
電気絶縁層(2)が酸化シリコンからなる、請求項1~5のいずれか一項に記載の基板。
【請求項7】
電気絶縁層(2)の厚さが、10~200nmの間に含まれる、請求項1~6のいずれか一項に記載の基板。
【請求項8】
電気絶縁層(2)が、支持基板(1)から活性層(3)にかけて、酸化シリコン層(21)と、窒化チタン層(22)と、酸化シリコン層(23)とを順次含んでなる、請求項
1に記載の基板。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか一項に記載の基板と、該基板の活性層(3)中のフォトダイオードのマトリックスアレイとを含んでなることを特徴とする、前面型撮像素子。
【請求項10】
以下の工程:
- シリコンゲルマニウムのエピタキシャル成長に好適な半導体材料を含んでなるドナー基板(30、40)を提供する工程;
- 支持基板(1)を提供する工程;
- 支持基板(1)上にドナー基板(30、40)を結合させ、結合界面に電気絶縁層(2)を位置させる工程;
- 支持基板(1)上に半導体材料の層(34、42)を転写させるために、ドナー基板(30、40)を薄化させる工程;
- シリコンゲルマニウム層(35、3)の半導体材料の転写層(34、42)上でのエピタキシャル成長を行い、前記シリコンゲルマニウム層のゲルマニウム含量を10%未満とする工程
を含んでなる、前面型撮像素子用基板を製造する方法
であって、
電気絶縁層が、誘電体層および/または金属層(21、22、23)の積層体の支持基板(1)上への成膜により形成され、前記積層体が、700nm~3μmの間に含まれる波長範囲にある前記積層体の反射率が、前記積層体の厚さと等しい厚さを有する酸化シリコン層の反射率を上回るように選択される、方法。
【請求項11】
シリコンゲルマニウムのエピタキシャル成長に好適なドナー基板(30)の半導体材料が、シリコンゲルマニウムである、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記半導体材料(31)が、ベース基板(32)上にエピタクシーにより形成され、前記半導体材料およびベース基板が一緒になってドナー基板(30)を形成する、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
シリコンゲルマニウムのエピタキシャル成長に好適なドナー基板(40)の半導体材料が、シリコンである、請求項
10に記載の方法。
【請求項14】
支持基板(1)上に転写されるシリコン層(42)の厚さが、400nm以下である、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
シリコンゲルマニウムのエピタキシャル成長の最後に、シリコン層(42)が、電気絶縁層(2)とシリコンゲルマニウム層(3)との間に保護される、請求項
13または14に記載の方法。
【請求項16】
シリコンゲルマニウムのエピタキシャル成長が行われているシリコン層(42)をシリコンゲルマニウム層へ変換させるために、活性層(3)のシリコンゲルマニウムを凝縮する工程をさらに含んでなる、請求項
13または14に記載の方法。
【請求項17】
シリコンゲルマニウムのエピタキシャル成長に好適な半導体材料の層(34、42)の境界を定めるために、ドナー基板(30、40)における脆化域(33、41)を形成する工程を含んでなり、ドナー基板の薄化が、該脆化域(33、41)に沿った分離を含んでなる、請求項
10~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
脆化域(33、41)の形成が、ドナー基板(30、40)における原子種の埋め込みを含んでなる、請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
犠牲酸化物層(5)が、原子種の埋め込み前にドナー基板(40)上に形成され、原子種の埋め込みが、前記犠牲層(5)を介して実施され、前記犠牲酸化物層(5)が、支持基板(1)上でのドナー基板(30、40)の結合前に除去される、請求項
18と組み合わせた請求項
10に記載の方法。
【請求項20】
活性層(3)の厚さが、1μm超、またはさらには2μm超である、請求項
10~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
活性層(3)の厚さが、これを超えるとシリコンゲルマニウムの緩和が生じる厚さと定義される、シリコンゲルマニウム層の臨界厚さ未満である、請求項
10~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
活性層(3)のゲルマニウム含量が8%以下である、請求項
10~21のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、「前面」型撮像素子用基板、前記基板を組み込んだ撮像素子、および前記基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
文献US2016/0118431は、「前面」型撮像素子を記載している。
【0003】
図1に例示されるように、前記撮像素子は、裏面から前面にかけて、特定のドーピングを有するシリコン支持基板1’と、酸化シリコン層2’と、各々画素を定義するフォトダイオードのマトリックスアレイが定義される、支持基板1’のものと異なり得るドーピングを有する、活性層と呼ばれる単結晶シリコン層3’とを含んでなるSOI(Semiconductor-On-Insulator)型基板を含んでなる。
【0004】
しかしながら、このような撮像素子は、近赤外において、すなわち、700nm~3μmの間に含まれる波長に対して、感度が低い。
【0005】
実際に、活性シリコン層3’は、曝露される照射線の波長とともに著明に減少する吸収係数、すなわち、およそ106cm-1(300nmの波長)~数103cm-1(700nmの波長)を有する。
【0006】
しかしながら、単結晶シリコンは、撮像素子の製造を可能とするマイクロエレクトロニクス法と適合し、活性層の機能に好適な結晶品質(特に、転位がない)を有するという利点があるため、現時点で、撮像素子用基板の活性層を形成するのに好ましい材料である。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、上記の問題を克服すること、ならびに、撮像素子の製造方法との適合性および活性層の結晶品質という制約を尊重しながら、近赤外における光の吸収を増加させることを可能とする「前面」型撮像素子用基板を提案することである。
【0008】
この目的を達成するため、本発明は、半導体支持基板と、電気絶縁層と、半導体活性層とを順次含んでなる前面型撮像素子用基板であって、活性層がシリコンゲルマニウムからなるエピタキシャル層であり、前記シリコンゲルマニウム層のゲルマニウム含量が10%未満であることを特徴とする基板を提案する。
【0009】
「エピタキシャル層」とは、後の説明に記載のとおり、エピタクシーにより成長された層を意味する。
【0010】
「前面」とは、本明細書において、関連電子部品としての基板の同じ面に位置する、光照射に曝露されることを意図した撮像素子の面を意味する。
【0011】
有利には、活性層のゲルマニウム含量は、8%以下である。
【0012】
好ましくは、活性層の厚さは、これを超えるとシリコンゲルマニウムの緩和が生じる厚さと定義される、シリコンゲルマニウム層の臨界厚さ未満である。
【0013】
一つの実施態様によれば、基板は、電気絶縁層とシリコンゲルマニウム層との間にシリコン層をさらに含んでなる。
【0014】
一つの実施態様によれば、電気絶縁層は、酸化シリコンからなる。
【0015】
電気絶縁層の厚さは、10~200nmの間に含まれる。
【0016】
他の実施態様によれば、電気絶縁層は、誘電体層および/または金属層の積層体から構成され、前記積層体は、700nm~3μmの間に含まれる波長範囲にある前記積層体の反射率が、前記積層体の厚さと等しい厚さを有する酸化シリコン層の反射率を上回るように選択される。
【0017】
特定の一つの実施態様によれば、前記電気絶縁層は、支持基板から活性層にかけて、酸化シリコン層と、窒化チタン層と、酸化シリコン層とを順次含んでなる。
【0018】
本発明はまた、前記基板と、前記基板の活性層中のフォトダイオードマトリックスアレイとを含んでなる前面撮像素子に関する。
【0019】
本発明の他の目的は、前記基板の製造方法に関する。
【0020】
前記方法は、以下の工程:
- シリコンゲルマニウムのエピタキシャル成長に好適な半導体材料を含んでなるドナー基板を提供する工程;
- 支持基板を提供する工程;
- 支持基板上にドナー基板を結合させ、結合界面に電気絶縁層を位置させる工程;
- 支持基板上に半導体材料の層を転写させるために、ドナー基板を薄化させる工程;
- ゲルマニウム含量が10%未満、好ましくは8%以下であるシリコンゲルマニウム層の半導体材料の転写層上でのエピタキシャル成長を行う工程
を含んでなる。
【0021】
一つの実施態様によれば、シリコンゲルマニウムのエピタキシャル成長に好適なドナー基板の半導体材料は、シリコンゲルマニウムである。
【0022】
前記半導体材料は、ベース基板上にエピタクシーにより形成され得、前記半導体材料およびベース基板は一緒になってドナー基板を形成する。
【0023】
他の実施態様によれば、シリコンゲルマニウムのエピタキシャル成長に好適なドナー基板の半導体材料は、シリコンである。
【0024】
有利には、支持基板上に転写されるシリコン層の厚さは、400nm以下である。
【0025】
シリコンゲルマニウムのエピタキシャル成長の最後に、シリコン層は、電気絶縁層とシリコンゲルマニウム層との間に保護され得る。
【0026】
あるいは、前記方法は、シリコンゲルマニウムのエピタキシャル成長が行われているシリコン層をシリコンゲルマニウム層へ変換させるために、活性層のシリコンゲルマニウムを凝縮する工程をさらに含んでなってもよい。
【0027】
特に有利な様式では、前記方法は、シリコンゲルマニウムのエピタキシャル成長に好適な半導体材料の層の境界を定めるために、ドナー基板における脆化域を形成する工程を含んでなり、ドナー基板の薄化は、前記脆化域に沿った分離を含んでなる。
【0028】
好ましくは、脆化域の形成は、ドナー基板における原子種の埋め込みを含んでなる。
【0029】
特定の一つの実施態様によれば、電気絶縁層は、誘電体層および/または金属層の積層体の支持基板上への成膜により形成され、前記積層体は、700nm~3μmの間に含まれる波長範囲にある前記積層体の反射率が、前記積層体の厚さと等しい厚さを有する酸化シリコン層の反射率を上回るように選択される。
【0030】
この場合、犠牲酸化物層は、有利には、脆化域を形成するための原子種の埋め込み前にドナー基板上に形成され、原子種の埋め込みは、前記犠牲層を介して実施され、前記犠牲酸化物層は、支持基板上でのドナー基板の結合前に除去される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して、以下の詳細な説明を読むことにより明らかとなるであろう。
【0032】
【
図1】
図1は、文献US2016/0118431に記載の前面撮像素子用SOI基板の断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一つの実施態様による基板の断面図である。
【
図3】
図3は、異なるゲルマニウム含量に対する波長の関数としてのシリコンゲルマニウムの吸収係数を示す図である。
【
図4】
図4は、そのゲルマニウム含量の関数としてのシリコンゲルマニウム層の臨界厚さを示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の代替実施態様による基板の断面図である。
【
図6】
図6A~6Fは、本発明の一つの実施態様による前面撮像素子用基板の製造方法の主工程を例示する図である。
【
図7】
図7A~7Cは、
図6A~6Fにおいて例示した製造方法の代替の工程を例示する図である。
【
図8】
図8A~8Dは、本発明の一つの実施態様による前面撮像素子用基板の製造方法の主工程を例示する図である。
【
図9】
図9は、本発明の特定の実施態様による基板の断面図である。
【
図10】
図10は、波長(単位nm)の関数としての誘電体層の積層体の反射率を例示する図である。
【
図11】
図11A~11Eは、本発明の一つの実施態様による前面撮像素子用基板の製造方法の主工程を例示する図である。
【
図12】
図12は、本発明の一つの実施態様による基板を含んでなる「前面」型撮像素子の画素の断面図である。
【0033】
図の可読性の理由から、異なる層は、必ずしも一定尺度で表されたものではない。
【発明の具体的説明】
【0034】
図2は、本発明の一つの実施態様による前面撮像素子用基板の断面図である。
【0035】
前記基板は、裏面から前面にかけて、半導体支持基板1と、電気絶縁層2と、活性層と呼ばれる単結晶シリコンゲルマニウム(SiGe)層3とを順次含んでなる。
【0036】
支持基板1は、一般に、単結晶インゴットの切削により得られる。有利には、基板1は、シリコンからなる。
【0037】
一つの実施態様によれば、電気絶縁層は、酸化シリコン層である。
【0038】
有利には、前記電気絶縁層の厚さは、10~200nmの間に含まれる。
【0039】
層3は、画像の取り込みを可能とするフォトダイオードのマトリックスアレイ(図示せず)を受信することを意図したものである。層3の厚さは、一般に、1μm以上、またはさらには2μm超である。前記層3は、低濃度ドープされ得る。
【0040】
前記材料の異なる組成物に対する波長(単位μm)の関数としての吸収係数(単位cm
-1)を例示する
図3においてみられ得るように、吸収係数は、特に赤外において、ゲルマニウム含量とともに増加する。
【0041】
しかしながら、層3の設計は、ゲルマニウムの濃度だけでなく、前記層の厚さも関与する。実際に、SiGe層は、その格子定数がシリコンゲルマニウムのものとは異なるシリコン基板上でエピタクシーにより形成されるため、SiGe層の緩和は、臨界厚さと呼ばれる特定の厚さを上回る厚さで生じる。この緩和は、SiGe層内での転位の形成をもたらす。
【0042】
このような転位は、SiGe層を活性層3の機能に不適当なものとする可能性があるため、避けなければならない。
【0043】
ゲルマニウム含量の関数(組成物Si
1-xGe
xに対応する化学量論係数x)としてのSiGe層の臨界厚さ(単位Å)を例示する
図4に示されるように、臨界厚さは、ゲルマニウム濃度が大きくなるほど、小さくなる。
【0044】
よって、活性層3の厚さおよび前記層のゲルマニウム濃度は、
- 一方では、近赤外の波長における最大の光子を取り込むのに十分大きな厚さと、
- 他方では、特に近赤外における活性層による光子の吸収能力を増加させるのに十分なゲルマニウム濃度と、
- シリコンゲルマニウムの緩和およびそれに起因する結晶欠陥(転位)の生成を避けるための限られた厚さ(濃度に依存)
との間の妥協の結果、決定される。
【0045】
一般に、前記活性層における転位を最小限にしながら、赤外における最良の吸収を有するようにするために、層3の厚さおよびゲルマニウム濃度を最大限にすることが求められる。
【0046】
活性層のゲルマニウム含量は、10%未満、好ましくは、8%以下である。
図4は、実際に、Si
0.9Ge
0.1層の臨界厚さが、「前面」型撮像素子の活性層に好適なマイクロメートルの桁であることを示している。Si
0,92Ge
0,08層に関しては、臨界厚さは2μm超であり、その上、940nmに等しい波長における吸収係数は、シリコンの吸収係数の3~4倍超である。
【0047】
文献WO2005/043614に記載のとおりに熱混合により作製されたシリコンゲルマニウム層と比較して、本発明において実施されるシリコンゲルマニウムエピタキシャル活性層は、大きい均一性および低いコストを示す。実際に、熱混合によりシリコンゲルマニウム層を得ることは、(その自由表面から、機械的支持体を形成する基板にかけて)高ゲルマニウム含量(例えば、80%の桁のゲルマニウム含量)を有するシリコンゲルマニウム層と、厚いシリコン層(実質的に、最終シリコンゲルマニウム層の所望の厚さに相当)と、下にある基板へのゲルマニウム原子の拡散を防止する障壁層とから構成される積層体の形成を意味する。しかしながら、シリコン層が厚いほど、方法の時間が長くなる(前記時間は、シリコン層のエピタクシーの時間に次いで、ゲルマニウム原子をシリコン層内に拡散させるためのシリコンゲルマニウム層の熱処理の時間を含む)。よって、実際には、前記熱混合方法は、撮像素子に要求される1μmの桁の厚さを有する活性層の形成には適合しない。いずれにせよ、当業者ならば、エピタキシャル層を、熱混合により形成される層から、前記層の転位の量および緩和を測定することにより、区別することができるであろう。
【0048】
図2に例示した基板の製造方法の例を、以下に説明する。
【0049】
一般的に述べると、本発明による基板の製造方法は、以下の工程を含んでなる。
【0050】
一方では、シリコンゲルマニウムのエピタキシャル成長に好適な半導体材料を含んでなるドナー基板を提供する。前記材料は、特にSiGe(ホモエピタクシーを可能とする)であってもよいし、または、SiGeとは異なるが、そのエピタキシャル成長(ヘテロエピタクシー)を可能とするのにSiGeの格子定数に十分近い格子定数を有する材料であってもよい。この後者の場合は、前記半導体材料は、有利にはシリコンである。
【0051】
他方では、レシーバー基板を提供し、ドナー基板をレシーバー基板上に結合させ、結合界面に電気絶縁層を位置させる。
【0052】
次に、レシーバー基板上に半導体材料の層を転写させるために、ドナー基板を薄化させる。
【0053】
この薄化は、SiGeのエピタクシーにとって所望の厚さおよび表面準位を得るために、半導体材料の研磨またはエッチングにより、実施してもよい。
【0054】
しかしながら、有利には、結合工程の前に、転写する表層の境界を定めるために、半導体材料中に脆化域を形成させる。結合工程の後に、薄化に、脆化域に沿ったドナー基板の分離を含め、これにより、レシーバー基板上への表層の転写がもたらされる。一般に、転写層の厚さは、400nm以下である。場合によっては、エピタクシーの実施を支持するために、転写層の自由表面の仕上げ処理を行う。前記処理は、転写層の薄化をもたらすことができる。
【0055】
最後に、シード層としての役割を果たす半導体材料の転写層上で、活性層にとって所望の厚さが得られるまで、シリコンゲルマニウムの層のエピタキシャル成長を実施する。
【0056】
シード層がSiGeからなるものではない場合、例えば、シリコンからなる場合、SiGeのエピタクシーの最後に、活性層3の下のシード層が残存することに留意されたい。
【0057】
この状況は、本発明の特定の一つの実施態様に対応する
図5において例示している。シード層は、符号42により指定されている。
【0058】
シード層は、赤外における吸収の点で、活性SiGe層の特性に著しく影響を及ぼさないように、活性層の厚さと比較して十分薄い(300nm以下の厚さ)。
【0059】
しかしながら、例えば、凝縮法により、シード層を除去することが可能である。それ自体既知の様式で、前記方法は、SiGe層の酸化を含んでなり、前記酸化は、唯一シリコンを消費し(酸化シリコンを形成する)、SiGe層の自由表面と反対側の面にゲルマニウムを移動させる効果を有する。そうすると、エッチングにより除去できるSiO2層が、表面上に得られる。
【0060】
第1実施態様によれば、
図6A~6Fに例示されるように、出発点は、SiGe表層31を含んでなるドナー基板30である。
【0061】
前記SiGe層は、一般にシリコンからなるベース基板32上に、エピタクシーにより一般に形成される。前記SiGe層は、応力を受けるのに十分薄い。
【0062】
この実施態様の第1バージョンでは、SiGe層中に脆化域が形成される。
【0063】
特に有利な様式では、
図6Bに例示されるように、前記脆化域33は、SiGe層31の自由表面を介して原子種(一般に、水素および/またはヘリウム)の埋め込みにより形成される。それにより、脆化域33は、ドナー基板の表面においてSiGe層34の境界を定める。
【0064】
図6Cを参照すると、支持基板1および電気絶縁層2を含んでなるレシーバー基板が、さらに提供される。
【0065】
図6Dを参照すると、ドナー基板は、レシーバー基板上に結合され、SiGe層31および電気絶縁層2が、結合界面に位置している。
【0066】
次に、
図6Eに例示されるように、ドナー基板は、脆化域に沿って分離される。前記分離は、機械的、化学的、および/または熱的応力などの当業者に既知のいずれかの技術によって開始することができる。
【0067】
それにより、SiGe層34は、支持基板上に転写される。
【0068】
必要に応じて、埋め込みおよび分離に関連した欠陥を除去するため、ならびに、後に続くエピタクシー工程のために十分滑らかにするために、SiGe層の表面処理を実施する。
【0069】
この実施態様の第2バージョンでは、SiGe層31の下に位置するドナー基板30中に、脆化域33が形成される(
図7A参照)。
【0070】
特に有利な様式では、前記脆化域33は、層30の自由表面を介して原子種(一般に、水素および/またはヘリウム)の埋め込みにより形成される。それにより、脆化域33は、ドナー基板の表面においてSiGe層およびベース基板32の部38の境界を定める。
【0071】
図6Cを参照すると、支持基板1および電気絶縁層2を含んでなるレシーバー基板が、さらに提供される。
【0072】
図7Bを参照すると、ドナー基板は、レシーバー基板上に結合され、SiGe層31および電気絶縁層2が、結合界面に位置している。
【0073】
次に、ドナー基板は、脆化域33に沿って分離される。前記分離は、機械的、化学的、および/または熱的応力などの当業者に既知のいずれかの技術によって開始することができる。
【0074】
それにより、SiGe層31およびベース基板の部38は、支持基板上に転写される(
図7C参照)。
【0075】
次に、作製した表面の処理を実施して、SiGeの表面が現れるまで、表面ドナー基板の部38を除去し、それにより、埋め込みおよび分離に関連した欠陥を除去し、後に続くエピタクシー工程のために十分滑らかにする。
【0076】
図6Eに例示されるように、それにより、支持基板1上のSiGe層31の部34が得られる。
【0077】
図6F(実施態様の2つのバージョンに共通の工程)に例示されるように、次に、2つのSiGe層34および35の両方から形成される活性層3にとって所望の厚さになるまで、シード層の役割を果たす転写層34上にSiGe層35を成長させるために、エピタクシーを再開する。エピタクシー中、所望の電気的特性に応じて、層35を低濃度ドープすることが可能である。層35のドーピングは、必ずしもシード層34のドーピングと同じである必要はない。
【0078】
【0079】
第2実施態様によれば、
図8A~8Dに例示されるように、周知のスマートカット(商標)法を用いて、支持基板と、電気絶縁層と、SiGe層のエピタキシャル成長用のシリコンシード層とを含んでなるSOI基板を形成させる。
【0080】
この目的を達成するため、電気絶縁層2により覆われるドナーシリコン基板40(
図8A参照)が提供され、次に、転写するシリコン層42の境界を定める脆化域41(
図8B)が、原子種の埋め込みにより形成される。
【0081】
レシーバー基板がさらに提供され、これは一般に、最終基板の支持基板1である。
【0082】
図8Cを参照すると、ドナー基板40は、レシーバー基板1上に結合され、電気絶縁層2が、結合界面に位置している。
【0083】
次に、ドナー基板は、脆化域に沿って分離される。前記分離は、機械的、化学的、および/または熱的応力などの当業者に既知のいずれかの技術によって開始することができる。
【0084】
それにより、シリコン層42は、支持基板1上に転写される(
図8D参照)。
【0085】
必要に応じて、埋め込みおよび分離に関連した欠陥を除去するため、ならびに、後に続くエピタクシー工程のために十分滑らかにするために、シリコン層の表面処理を実施する。
【0086】
次に、シード層としての役割を果たす転写シリコン層42上でのSiGeのエピタクシーを、活性層3にとって所望の厚さになるまで、再開する。エピタクシー中、所望の電気的特性に応じて、層3を低濃度ドープすることが可能である。
【0087】
【0088】
前述のように、シリコンシード層は、撮像素子の形成のために保護され得る。あるいは、シリコン層は、上記の凝縮法により除去してもよい。
【0089】
本発明の特定の一つの実施態様によれば、電気絶縁層2は、従来のSOI基板のように酸化シリコン層ではないが、赤外における前記電気絶縁層の反射率を増加させるように選択される誘電体層および/または金属層の積層体から構成される。より正確には、この積層体を形成する誘電体層および/または金属層は、700nm~3μmの間に含まれる波長範囲にある前記積層体の反射率が、前記積層体の厚さと等しい厚さを有する酸化シリコン層の反射率を上回るように選択される。さらに、積層体の金属層は、有利には、支持基板から分離され、かつ、少なくとも1つの誘電体層により活性層から分離される。よって、前記誘電体層は、特に、支持基板に相対した活性層の電気絶縁の機能を保証する。
【0090】
例えば、
図9に例示されるように、電気絶縁層は、
- 支持基板1との界面に位置する第1酸化シリコン層21と、
- 窒化チタン層22と、
- 活性層3との界面に位置する第2酸化シリコン層23
とを順次含んでなる。
【0091】
窒化チタンは、マイクロエレクトロニクスにおいて広く使用されている金属材料である。
【0092】
誘電体酸化シリコン層21および23は、窒化チタン層を包み、それにより、活性層の金属汚染を避けることを可能とする。それにより、活性層と電気絶縁層との間の界面における電気的欠陥の生成、および活性層のSiGeと、活性層のドーピングが可能な撮像素子の金属成分との間の再結合が回避される。
【0093】
一般に、層21は、300~500nmの間に含まれる厚さを有し、層23は、10~50nmの間に含まれる厚さを有し、層22は、10~100nmの間に含まれる厚さを有する。
【0094】
このような電気絶縁層は、同じ厚さの酸化シリコン層よりも、活性層3を介して伝達される光子を多く反射するという利点を有する。
【0095】
このことは、
図10において確認でき、
図10は、波長(単位nm)の関数としての以下の積層体(支持基板から活性層にかけて):
- 厚さ400nmの第1酸化シリコン層21、
- 厚さ50nmの窒化チタン層22、および
- 厚さ20nmの第2酸化シリコン層23
の反射率を示している。
【0096】
それにより、850nmの波長に対して0.8に達する反射率が得られる。比較として、400nmの酸化シリコン層は、850nmの波長に対して0.5の反射率を有する。
【0097】
この増加した反射率は、活性層3内での光子の経路の長さを増加させ、それにより、前記層による光子の吸収を支持する効果を有する。
【0098】
よって、活性シリコンゲルマニウム層と、電気絶縁層を形成する誘電体層および/または金属層の積層体とを同時使用すると、赤外線の吸収に対するこれらの2層の好ましい効果が合わさる。
【0099】
この場合、基板の製造方法は、以下の様式で適合される。
【0100】
上記の方法と比較して、転写する層(SiGe層であるかシリコン層であるかを問わず)が、埋め込みにより形成される脆化域により、ドナー基板中に境界を定められる場合、誘電体層および/または金属層の積層体は、ドナー基板上ではなく、支持基板上に形成される。実際に、このような積層体は、埋め込みするには厚すぎるであろう。他方、有利には、埋め込み前に、それを介して脆化域を形成することを意図した原子種が埋め込まれる、犠牲酸化シリコン層が、ドナー基板上に形成される。前記犠牲層は、埋め込み中のチャネリング効果を回避することを可能とする。次に、前記犠牲層は、支持基板上でのその結合前に、ドナー基板から除去される。
【0101】
図11A~11Eは、このような誘電体層の積層体を含んでなる前面撮像素子用基板の好ましい実施態様を例示している。先行する図、特に
図8A~8Dと同じ参照記号により指定されている要素は、同じ要素を意味する。しかしながら、当業者ならば、
図6A~6Fまたは7A~7Cを参照して記載されている方法においてのように、転写シード層がSiGe層である場合に対しても、上記の方法を適用することができる。
【0102】
図11Aを参照すると、犠牲酸化シリコン層5により覆われるドナーシリコン基板40が提供され、次に、転写するシリコン層42の境界を定める脆化域41が、層5を介した原子種の埋め込みにより形成される。埋め込み後、例えば、化学的エッチングにより、犠牲層5が除去される。
【0103】
図11Bを参照すると、さらにレシーバー基板が提供され、これは一般に、最終基板の支持基板1であり、この上に、電気絶縁層2を形成することを意図した層21、22、23の積層体が形成される。
【0104】
図11Cを参照すると、ドナー基板40は、支持基板1上に結合され、電気絶縁層2を形成する誘電体層および/または金属層の積層体が、結合界面に位置している。
【0105】
次に、ドナー基板は、脆化域41に沿って分離される。前記分離は、機械的、化学的、および/または熱的応力などの当業者に既知のいずれかの技術によって開始することができる。
【0106】
それにより、シリコン層42は、支持基板1上に転写される(
図11D参照)。
【0107】
必要に応じて、埋め込みおよび分離に関連した欠陥を除去するため、ならびに、後に続くエピタクシー工程のために十分滑らかにするために、シリコン層の表面処理を実施する。
【0108】
図11Eを参照すると、次に、シード層としての役割を果たす転写シリコン層42上でのSiGeのエピタクシーを、活性層3にとって所望の厚さになるまで、再開する。エピタクシー中、所望の電気的特性に応じて、層3を低濃度ドープすることが可能である。
【0109】
図12は、
図2に対応する本発明の一つの実施態様によるが、これに限定されない基板を含んでなる前面型撮像素子の一部を例示している。画素に対応する撮像素子の一部のみが、この図において示されており、前記画素は、絶縁トレンチ7により活性層3中に形成される他の画素から電気絶縁されている。
【0110】
層3のものと異なる種類のドープ領域36が、活性層3の前面の表面下に形成される。この領域36は、活性層3とともにフォトダイオードを形成する。領域36と層3の前面との間に形成される領域37は、有利には、界面を不動態化するために、領域36のレベルを超えるドーピングレベルを有する。活性層3上に不動態化層6が形成され、この層は、前記画素を電気的に制御可能とする要素を包含し得る。
【0111】
場合によっては、フィルターなどの他の層を、不動態化層6上に形成してもよいが、それらは
図12に示していない。
【0112】
そのようなものとしての撮像素子の構造およびその製造方法は、当業者に既知であり、よって、本明細書において詳細に説明しない。
【0113】
参考文献
US 2016/0118431
WO 2005/043614