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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】ラケットフレームおよびラケット
(51)【国際特許分類】
   A63B 49/022 20150101AFI20221107BHJP
   A63B 102/02 20150101ALN20221107BHJP
【FI】
A63B49/022
A63B102:02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020093204
(22)【出願日】2020-05-28
(65)【公開番号】P2021186187
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 洋平
(72)【発明者】
【氏名】大友 隆行
(72)【発明者】
【氏名】太田 映
(72)【発明者】
【氏名】矢野 弘樹
【審査官】槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-105558(JP,A)
【文献】特表2006-519050(JP,A)
【文献】特開2020-151058(JP,A)
【文献】特開2000-300698(JP,A)
【文献】特表2000-505711(JP,A)
【文献】特開2009-17913(JP,A)
【文献】米国特許第7887444(US,B1)
【文献】欧州特許出願公開第1913982(EP,A1)
【文献】中国特許出願公開第1753707(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 49/00-51/16
A63B 102/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に並んで配置されたフェース部およびグリップ部を備え、
前記フェース部は、前記第1方向において前記グリップ部とは反対側に位置する第1端部を有する第1部分と、前記第1方向において前記グリップ部側に位置する第2端部を有し、かつ前記第1部分と間隔を隔てて配置されている第2部分とを含み、
前記第1部分には、前記第1方向に沿って延び、かつ前記第1方向と直交する第2方向において互いに間隔を隔てて配置された複数の第1貫通孔が形成されており、
前記複数の第1貫通孔は、前記第1端部と前記第2端部とを通る中心線に最も近い場所に位置する2つの第1孔と、前記2つの第1孔の前記第2方向における両隣にそれぞれ位置する2つの第2孔とを少なくとも有し、
前記第1方向および前記第2方向と交差する第3方向において、前記2つの第1孔の各々の幅は、前記2つの第2孔の各々の幅よりも広く、
前記第2方向において、前記第1端部および前記第2端部を通る中心線と前記2つの第1孔の各々との間の距離は、前記2つの第1孔と前記2つの第2孔との間の最短距離の半分よりも短い、ラケットフレーム。
【請求項2】
第1方向に並んで配置されたフェース部およびグリップ部を備え、
前記フェース部は、前記第1方向において前記グリップ部とは反対側に位置する第1端部を有する第1部分と、前記第1方向において前記グリップ部側に位置する第2端部を有し、かつ前記第1部分と間隔を隔てて配置されている第2部分とを含み、
前記第1部分には、前記第1方向に沿って延び、かつ前記第1方向と直交する第2方向において互いに間隔を隔てて配置された複数の第1貫通孔が形成されており、
前記複数の第1貫通孔は、前記第1端部と前記第2端部とを通る中心線に最も近い場所に位置する2つの第1孔と、前記2つの第1孔の前記第2方向における両隣にそれぞれ位置する2つの第2孔とを少なくとも有し、
前記第1方向および前記第2方向と交差する第3方向において、前記2つの第1孔の各々の幅は、前記2つの第2孔の各々の幅よりも広く
前記複数の第1貫通孔は、前記2つの第2孔に対して前記2つの第1孔とは反対側に位置する2つの第3孔と、前記2つの第3孔に対して前記2つの第1孔とは反対側に位置する2つの第4孔とをさらに有し、
前記第3方向において、前記2つの第4孔の各々の幅は、前記2つの第3孔の各々の幅よりも広く、
前記第2方向において前記2つの第2孔と前記2つの第3孔との間の最短距離は、前記2つの第1孔と前記2つの第2孔との間の最短距離、および前記2つの第3孔と前記2つの第4孔との間の最短距離よりも短い、ラケットフレーム。
【請求項3】
第1方向に並んで配置されたフェース部およびグリップ部を備え、
前記フェース部は、前記第1方向において前記グリップ部とは反対側に位置する第1端部を有する第1部分と、前記第1方向において前記グリップ部側に位置する第2端部を有し、かつ前記第1部分と間隔を隔てて配置されている第2部分とを含み、
前記第1部分には、前記第1方向に沿って延び、かつ前記第1方向と直交する第2方向において互いに間隔を隔てて配置された複数の第1貫通孔が形成されており、
前記複数の第1貫通孔は、前記第1端部と前記第2端部とを通る中心線に最も近い場所に位置する2つの第1孔と、前記2つの第1孔の前記第2方向における両隣にそれぞれ位置する2つの第2孔とを少なくとも有し、
前記第1方向および前記第2方向と交差する第3方向において、前記2つの第1孔の各々の幅は、前記2つの第2孔の各々の幅よりも広く
前記第2部分には、前記第1方向に沿って延び、かつ前記第2方向において互いに間隔を隔てて配置された複数の第2貫通孔が形成されており、
前記第3方向において、前記2つの第1孔の各々の幅は、前記複数の第2貫通孔の各々の幅よりも広い、ラケットフレーム。
【請求項4】
請求項1に記載のラケットフレームと、
前記フェース部に張られおり、かつ前記第1部分と前記第2部分との間を前記第1方向に沿って延びる複数のメインストリング部を含むストリングを備え、
前記ストリングは、前記複数の第1貫通孔に通されており、前記中心線に対して前記第2方向の一方側または他方側に位置する前記第1孔と前記第2孔との間において、前記第1孔および前記第2孔よりも外側で折り返されている、ラケット。
【請求項5】
前記第2部分には、前記第1方向に沿って延び、かつ前記第2方向において互いに間隔を隔てて配置された複数の第2貫通孔が形成されており、
前記第3方向において、前記2つの第1孔の各々の幅は、前記複数の第2貫通孔の各々の幅よりも広い、請求項2に記載のラケットフレーム。
【請求項6】
請求項5に記載のラケットフレームと、
前記フェース部に張られおり、かつ前記第1部分と前記第2部分との間を前記第1方向に沿って延びる複数のメインストリング部を含むストリングを備え、
前記ストリングは、前記複数の第1貫通孔に通されており、前記中心線に対して前記第2方向の一方側または他方側に位置する前記第1孔と前記第2孔との間において、前記第1孔および前記第2孔よりも外側で折り返されている、ラケット。
【請求項7】
前記ストリングは、前記中心線に対して前記第2方向の一方側または他方側に位置する前記第2孔と前記第3孔との間において、前記複数の第2貫通孔のうちの2つの第2貫通孔に通されている、請求項6に記載のラケット。
【請求項8】
第1方向に並んで配置されたフェース部およびグリップ部を備え、
前記フェース部は、前記第1方向において前記グリップ部とは反対側に位置する第1端部を有する第1部分と、前記第1方向において前記グリップ部側に位置する第2端部を有し、かつ前記第1部分と間隔を隔てて配置されている第2部分とを含み、
前記第1部分には、前記第1方向に沿って延び、かつ前記第1方向と直交する第2方向において互いに間隔を隔てて配置された複数の第1貫通孔が形成されており、
前記複数の第1貫通孔は、前記第1端部と前記第2端部とを通る中心線に最も近い場所に位置する2つの第1孔と、前記2つの第1孔の前記第2方向における両隣にそれぞれ位置する2つの第2孔と、前記2つの第2孔に対して前記2つの第1孔とは反対側に位置する2つの第3孔と、前記2つの第3孔に対して前記2つの第1孔とは反対側に位置する2つの第4孔とを有し、
前記第1方向および前記第2方向と交差する第3方向において、前記2つの第1孔の幅は、前記2つの第2孔の幅よりも広く、
前記フェース部に張られおり、かつ前記第1部分と前記第2部分との間を前記第1方向に沿って延びる複数のメインストリング部を含むストリングをさらに備え、
前記ストリングは、前記複数の第1貫通孔に通されており、
前記第2方向において、前記2つの第1孔の各々に通されている前記メインストリング部と前記2つの第2孔の各々に通されている前記メインストリング部との間の最短距離は、前記2つの第2孔の各々に通されている前記メインストリング部と前記2つの第3孔の各々に通されている前記メインストリング部との間の最短距離よりも長い、ラケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラケットフレームおよびラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
ラケットフレームおよびラケットの性能の評価指標として、スピン性能および反発性能がある。特開2017-121431号公報には、良好な反発性能及びスピン性能を有するテニス用ラケットフレームが開示されている。
【0003】
また、従来、フェース部を平面視したときに、フェース部の一部領域がスピン性能が相対的に高められた第1領域として設計され、フェース部の他の一部領域が反発性能が相対的に高められた第2領域として設計された、ラケットフレームが知られている。第1領域では、打球時にストリングが打球面に沿った方向に動きやすいように設計されている。第2領域では、第1領域と比べて、打球時にストリングが打球面に沿った方向に動きにくいように設計されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-121431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の主たる目的は、従来のラケットフレームおよびラケットと比べて、フェース部の一部領域のスピン性能がさらに向上した、ラケットフレームおよびラケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るラケットフレームは、第1方向Aに並んで配置されたフェース部およびグリップ部を備える。フェース部は、第1方向Aにおいてグリップ部とは反対側に位置する第1端部を有する第1部分と、第1方向Aにおいてグリップ部側に位置する第2端部を有し、かつ第1部分と間隔を隔てて配置されている第2部分とを含む。第1部分には、第1方向Aに沿って延び、かつ第1方向Aと直交する第2方向Bにおいて互いに間隔を隔てて配置された複数の第1貫通孔が形成されている。複数の第1貫通孔は、第2方向Bにおいて第1部分の中心に最も近い第1孔と、第1孔に対して中心とは反対側に位置する第2孔とを有している。第1方向Aおよび第2方向Bと交差する第3方向Cにおいて、第1孔の幅は、第2孔の幅よりも広い。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来のラケットフレームおよびラケットと比べて、フェース部の一部領域のスピン性能がさらに向上した、ラケットフレームおよびラケットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施の形態に係るラケットフレームを示す平面図である。
図2図1に示されるラケットフレームのフェース部の第1端部に固定されているストリング保護体をグリップ部側または第2端部側から見た側面図である。
図3図2に示されるストリング保護体の斜視図である。
図4図2に示されるストリング保護体を、図3とは異なる視点から視た斜視図である。
図5】本実施の形態に係るラケットを示す平面図である。
図6図5に示されるラケットにおいて、ラケットフレームとストリングとの関係を説明するための図である。
図7図5に示されるラケットのフェース部の第1端部に固定されているストリング保護体をグリップ部側から見た側面図である。
図8】試料1および試料2の各々のスピン性能を比較したグラフである。
図9】試料2および試料3の各々のスピン性能を比較したグラフである。
図10】実施例の第3メインストリング部および第4メインストリング部の各々に生じる歪み量を測定した実験系を示す写真である。
図11図10に示される実験系において、第3メインストリング部および第4メインストリング部の各々に加圧を開始してから終了するまでの間に測定された、第3メインストリング部および第4メインストリング部の各々に生じる歪み量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0010】
<ラケットフレームの構成>
図1に示されるように、本実施の形態に係るラケットフレーム100は、フェース部1と、シャフト部2と、グリップ部3とを有している。フェース部1、シャフト部2、およびグリップ部3は、第1方向Aに並んで配置されている。シャフト部2は、第1方向Aにおいて、フェース部1とグリップ部3の間に配置されている。
【0011】
ラケットフレームに用いられる材質は、例えばCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic)である。但し、ラケットフレームに用いられる材質は、これに限られるものではない。例えば、GFRP(Glass Fiber Reinforced Plastic)等を用いることができる。
【0012】
フェース部1は、平面視において、楕円環形状を有している。平面視におけるフェース部1の長手方向は、第1方向Aに沿っている。平面視における短手方向は、第1方向Aと直交する第2方向Bに沿っている。第1方向Aおよび第2方向Bに直交する第3方向Cは、ラケット110の打球方向である。
【0013】
フェース部1は、第1方向Aにおいて、第1端部1aと第2端部1bとを有している。第1端部1aは、第1方向Aにおいて、フェース部1におけるグリップ部3とは反対側に位置する端部である。第2端部1bは、第1方向Aにおいて、グリップ部3側に位置する端部である。
【0014】
フェース部1は、第1端部1aを有する第1部分11と、第2端部1bを有する第2部分12とを含む。第1部分11は、第1端部1aを中心として第2方向Bに沿って延びている。第2部分12は、第2端部1bを中心として第2方向Bに沿って延びている。第2部分12は、第1方向Aにおいて、第1部分11と間隔を隔てて配置されている。
【0015】
フェース部1は、第3部分13および第4部分14をさらに含む。第3部分13は、第1部分11と第2部分12との間に配置されており、かつ第1部分11の一端と第2部分12の一端とを接続している。第4部分14は、第1部分11と第2部分12との間に配置されており、かつ第1部分11の他端と第2部分12の他端とを接続する。第4部分14は、第2方向Bにおいて、第3部分13と間隔を隔てて配置されている。
【0016】
フェース部1の第1部分11,第2部分12,第3部分13、および第4部分14の各々は、内周1cと外周1dとを有している。フェース部1には、ストリングを通すための複数の貫通孔が形成されている。複数の貫通孔は、内周1cおよび外周1dの各々に開口している。複数の貫通孔は、以下に示される、複数の第1貫通孔21、複数の第2貫通孔24、複数の第3貫通孔25、および複数の第4貫通孔26を含む。
【0017】
第1部分11には、複数の第1貫通孔21が形成されている。複数の第1貫通孔21の各々は、第1方向Aに沿って延びており、かつ第2方向Bにおいて互いに間隔を隔てて配置されている。複数の第1貫通孔21の詳細な構成は、後述する。
【0018】
第2部分12には、複数の第2貫通孔24が形成されている。複数の第2貫通孔24の各々は、第2方向Bにおいて互いに間隔を隔てて配置されている。第2方向Bにおいて隣り合う2つの第2貫通孔24の間隔は、例えば第1端部1aおよび第2端部1bを通る中心線CLから離れるにつれて、徐々に広くなっている。
【0019】
第3部分13には、複数の第3貫通孔25が形成されている。複数の第3貫通孔25の各々は、第1方向Aにおいて互いに間隔を隔てて配置されている。
【0020】
第4部分14には、複数の第4貫通孔26が形成されている。複数の第4貫通孔26の各々は、第1方向Aにおいて互いに間隔を隔てて配置されている。
【0021】
シャフト部2は、第1の分岐部材2Aと第2の分岐部材2Bとを有している。グリップ部3は、グリップ部材3Aと、グリップ3Bとを有している。第1の分岐部材2A及び第2の分岐部材2Bは、グリップ部材3Aから分岐している。グリップ3Bは、グリップ部材3Aを覆うように形成されている。グリップ3Bには、例えばポリウレタンが用いられる。
【0022】
以下では、図2図5を参照して、複数の第1貫通孔21の詳細について説明する。複数の第1貫通孔21は、ラケット110においてストリング200のメインストリング部201が通される孔である。
【0023】
図2図5に示されるように、ラケットフレーム100は、例えば第1部分11に取り付けられたグロメット15をさらに備えている。図3に示されるように、グロメット15は、グロメット本体15aと、複数の突起15bとを有している。複数の突起15bの各々は、グロメット本体15aに対して第1方向Aにおいて第2部分12側に向かって突出している。図2図5に示されるように、複数の第1貫通孔21の各々は、グロメット15の複数の突起15bに形成されている。グロメット15は、ストリング200のメインストリング部201を保護する。好ましくは、グロメット15は、フェース部1とは別体となっている。グロメット15を構成する材料は、例えばナイロン樹脂である。
【0024】
図2図3に示されるように、第1部分11には、複数の突起15bが挿通される複数の挿通孔11aが形成されている。複数の挿通孔11aの各々は、複数の突起15bの各々が挿通され得る限りにおいて、任意の構成を備えていればよい。第1方向Aから視て、複数の挿通孔11aの各々の平面形状は、例えば円形状である。
【0025】
図2に示されるように、複数の第1貫通孔21の各々は、第1端部1aおよび第2端部1bを通る中心線CL(仮想線)に対して、線対称に設けられている。複数の第1貫通孔21は、中心線CLに対して第2方向Bの一方の側および他方の側の各々に配置された、第1孔22a、第2孔23a、第3孔23b、第4孔22b、第5孔22c、および第6孔23cを含む。第1孔22a、第2孔23a、第3孔23b、第4孔22b、第5孔22c、および第6孔23cは、上記記載順に第1部分11の中心線CLから離れるように配置されている。なお、中心線CLは、グリップ部3の中心軸を通る。
【0026】
第1孔22aは、複数の第1貫通孔21のうち、第2方向Bにおいて中心線CLに最も近い位置に配置されている。
【0027】
第2孔23aは、第1孔22aに対して中心線CLとは反対側に配置されている。第2孔23aは、第1孔22aと隣り合っている。第2孔23aは、複数の第1貫通孔21のうち、第2方向Bにおいて第1部分11の中心線CLに2番目に近い位置に配置されている。
【0028】
第3孔23bは、第2孔23aに対して第1孔22aとは反対側に配置されている。第3孔23bは、第2孔23aと隣り合っている。第3孔23bは、第2方向Bにおいて第1部分11の中心線CLに3番目に近い位置に配置されている。
【0029】
第4孔22bは、第3孔23bに対して第2孔23aとは反対側に配置されている。第4孔22bは、第3孔23bと隣り合っている。第4孔22bは、第2方向Bにおいて第1部分11の中心線CLに4番目に近い位置に配置されている。
【0030】
第5孔22cは、第4孔22bに対して第3孔23bとは反対側に配置されている。第5孔22cは、第4孔22bと隣り合っている。第4孔22bは、第2方向Bにおいて第1部分11の中心線CLに5番目に近い位置に配置されている。
【0031】
第6孔23cは、第5孔22cに対して第4孔22bとは反対側に配置されている。第6孔23cは、第5孔22cと隣り合っている。第6孔23cは、第2方向Bにおいて第1部分11の中心線CLに6番目に近い位置に配置されている。
【0032】
図2および図3に示されるように、第1方向Aから視て、第1孔22aおよび第4孔22bの各々の平面形状は、第3方向Cに長い楕円形状である。第1方向Aから視て、第1孔22aおよび第4孔22bの各々の長手方向は、第3方向Cに沿っている。第1方向Aから視て、第1孔22aおよび第4孔22bの各々の短手方向は、第2方向Bに沿っている。第1方向Aから視て、第5孔22cの平面形状は、例えば円形状である。
【0033】
図2および図3に示されるように、第1方向Aから視て、第2孔23a,第3孔23b、および第6孔23cの各々の平面形状は、例えば円形状である。
【0034】
図2に示されるように、第3方向Cにおいて、第1孔22aの幅W1は、第2孔23aの幅W2よりも広い。第2方向Bにおいて、第1孔22aの幅は、例えば第2孔23aの幅と等しくてもよい。
【0035】
図2に示されるように、第3方向Cにおいて、第3孔23bの幅W3は、第4孔22bの幅W4よりも狭い。第2方向Bにおいて、第3孔23bの幅は、例えば第4孔22bの幅と等しくてもよい。
【0036】
図2に示されるように、第3方向Cにおいて、第5孔22cの幅W5は、第6孔23cの幅W6よりも広くてもよく、第2方向Bにおいて、第5孔22cの幅は、例えば第6孔23cの幅より広くてもよい。
【0037】
第2方向Bにおいて、複数の第1貫通孔21の各々の幅は、例えば互いに等しくてもよい。
【0038】
なお、第1方向Aから視た複数の第1貫通孔21の各々の平面形状は、上述した各幅の大小関係が実現される限りにおいて、特に制限されない。第1方向Aから視て、第5孔22cの平面形状は、楕円形状であってもよい。この場合、第1方向Aから視て、第5孔22cの長手方向は、第3方向Cに沿っている。第1方向Aから視て、第5孔22cの短手方向は、第2方向Bに沿っている。
【0039】
第3方向Cにおいて、第1孔22a、第4孔22b、および第5孔22cの各々の幅は、複数の第2貫通孔24の各々の幅よりも広い。
【0040】
図5図7に示されるように複数の第1貫通孔21の各々の第3方向Cの幅および第2方向Bの幅は、ストリング200の外径以上であるが、好ましくはストリング200の外径よりも広い。複数の第1貫通孔21の各々の第3方向Cの幅および第2方向Bの幅は、複数の挿通孔11aの各々の第3方向Cの幅および第2方向Bの幅よりも狭い。
【0041】
図2に示されるように、第2方向において、中心線CLを挟んで隣り合う2つの第1孔22a間の距離L1は、第1孔22aと第2孔23aとの間の距離L2よりも短い。言い換えると、第2方向において、中心線CLと第1孔22aとの間の距離L1/2は、第1孔22aと第2孔23aとの間の距離L2の半分よりも短い。
【0042】
図2に示されるように、第2方向において、第2孔23aと第3孔23bとの間の距離L3は、第1孔22aと第2孔23aとの間の距離L2よりも短い。第2方向において、第3孔23bと第4孔22bとの間の距離L4は、第2孔23aと第3孔23bとの間の距離L3よりも長い。第2方向において、第4孔22bと第5孔22cとの間の距離L5は、第3孔23bと第4孔22bとの間の距離L4よりも短い。第2方向において、第5孔22cと第6孔23cとの間の距離L6は、第4孔22bと第5孔22cとの間の距離L5よりも長い。なお、上述した距離L1~距離L6は、各孔の第2方向Bの中心間の距離である。
【0043】
<ラケットの構成>
次に、図5図7を参照して、本実施の形態に係るラケット110について説明する。図5図7に示されるように、ラケット110は、ラケットフレーム100と、ラケットフレーム100のフェース部1に張られたストリング200とを備える。
【0044】
図6に示されるように、ストリング200は、複数の第1貫通孔21、複数の第2貫通孔24、複数の第3貫通孔25、および複数の第4貫通孔26の各々に通されている。ストリング200は、複数のメインストリング部201と、複数の折り返し部202と、複数の折り返し部203と、複数のクロスストリング部204とを有している。
【0045】
複数のメインストリング部201は、複数の第1貫通孔21と複数の第2貫通孔24との間を第1方向Aに沿って延びている。複数のクロスストリング部204は、複数の第3貫通孔25と複数の第4貫通孔26との間を第2方向Bに沿って延びている。
【0046】
複数の折り返し部202は、複数の第1貫通孔21よりも外側に配置されている。複数の折り返し部202は、第1孔22aと第2孔23aとの間に配置されている第1折り返し部202aと、第3孔23bと第4孔22bとの間に配置されている第2折り返し部202bと、第5孔22cと第6孔23cとの間に配置されている第3折り返し部202cとを有している。
【0047】
言い換えると、ストリング200は、第1孔22aと第2孔23aとの間において、第1孔22aおよび第2孔23aよりも外側で折り返されている。第1孔22aから第1方向Aに沿って延びるメインストリング部201と、第2孔23aから第1方向Aに沿って延びるメインストリング部201とは、第1折り返し部202aを介して接続されている。
【0048】
ストリング200は、第3孔23bと第4孔22bとの間において、第3孔23bおよび第4孔22bよりも外側で折り返されている。第3孔23bから第1方向Aに沿って延びるメインストリング部201と、第4孔22bから第1方向Aに沿って延びるメインストリング部201とは、第2折り返し部202bを介して接続されている。
【0049】
ストリング200は、第5孔22cと第6孔23cとの間において、第5孔22cおよび第6孔23cよりも外側で折り返されている。第5孔22cから第1方向Aに沿って延びるメインストリング部201と、第6孔23cから第1方向Aに沿って延びるメインストリング部201とは、第3折り返し部202cを介して接続されている。
【0050】
図6および図7に示されるように、複数の折り返し部203は、複数の第2貫通孔24よりも外側に配置されている。複数の折り返し部203は、第1折り返し部202aと第2折り返し部202bとの間に配置されている第4折り返し部203aと、第2折り返し部202bと第3折り返し部202cとの間に配置されている第5折り返し部203bとを有している。
【0051】
第2孔23aから第1方向Aに沿って延びるメインストリング部201と、第3孔23bから第1方向Aに沿って延びるメインストリング部201とは、第4折り返し部203aを介して接続されている。第4孔22bから第1方向Aに沿って延びるメインストリング部201と、第5孔22cから第1方向Aに沿って延びるメインストリング部201とは、第5折り返し部203bを介して接続されている。
【0052】
ストリング200は、第2孔23aと第3孔23bとの間において、複数の第2貫通孔24のうちの2つの第2貫通孔24に通されている。ストリング200は、第2孔23aと第3孔23bとの間において、複数の第2貫通孔24のうち第2方向Bにおいて上記中心線CLに近い位置に配置されている2つの第2貫通孔24(第1群の第2貫通孔)に通されており、上記第4折り返し部203aを有している。
【0053】
ストリング200は、第4孔22bと第5孔22cとの間において、複数の第2貫通孔24のうちの2つの第2貫通孔24に通されている。ストリング200は、第4孔22bと第5孔22cとの間において、複数の第2貫通孔24のうち上記第1群の第2貫通孔よりも上記中心線CLから遠い位置に配置されている2つの第2貫通孔24(第2群の第2貫通孔)に通されており、上記第5折り返し部203bを有している。
【0054】
第5孔22cには、例えば互いに結われて直列に接続された2本のストリングの、結び目が配置される。
【0055】
図7に示されるように、第2方向Bにおいて、第1孔22aに通されているメインストリング部201と第2孔23aに通されているメインストリング部201との間の距離L12は、各第1孔22aに通されているメインストリング部201間の間の距離L11よりも長い。
【0056】
第2方向Bにおいて、第1孔22aに通されているメインストリング部201と第2孔23aに通されているメインストリング部201との間の距離L12は、第2孔23aに通されているメインストリング部201と第3孔23bに通されているメインストリング部201との間の距離L13よりも長い。
【0057】
第2方向Bにおいて、第2孔23aに通されているメインストリング部201と第3孔23bに通されているメインストリング部201との間の距離L13は、第3孔23bに通されているメインストリング部201と第4孔22bに通されているメインストリング部201との間の距離L14よりも短い。
【0058】
第2方向Bにおいて、第3孔23bに通されているメインストリング部201と第4孔22bに通されているメインストリング部201との間の距離L14は、第4孔22bに通されているメインストリング部201と第5孔22cに通されているメインストリング部201との間の距離L15よりも長い。
【0059】
第2方向Bにおいて、第4孔22bに通されているメインストリング部201と第5孔22cに通されているメインストリング部201との間の距離L15は、第5孔22cに通されているメインストリング部201と第6孔23cに通されているメインストリング部201との間の距離L16よりも短い。
【0060】
図5に示されるように、ラケット110のフェース部1には、第2方向Bにおいてフェース部1の中心よりも第1部分11側に位置する第1領域R1と、第2方向Bにおけるフェース部1の中心を含む第2領域R2とが形成される。第1領域R1は、第2領域R2と比べて、第1部分11に近い。そのため、第1領域R1で打球したときのスピン性能および反発性能は、第2領域R2で打球したときのスピン性能および反発性能と比べて、複数の第1貫通孔21の構成の影響を受けやすい。
【0061】
ラケットフレーム100のフェース部1へのストリング200の張り方は、特に制限されない。以下では、メインストリング部201の張り方の一例を説明する。
【0062】
ストリング200は、はじめに複数の第2貫通孔24のうち中心線CLに最も近い孔を、例えば図6中の矢印で示されるように外側から内側に向かって通される。次に、ストリング200は、第1孔22a(図2および図7参照)を内側側に向から外かって通された後、当該外側で折り返されて(第1折り返し部202a)、第2孔23a(図2および図7参照)を外側から内側に向かって通される。
【0063】
次に、ストリング200は、複数の第2貫通孔24のうち中心線CLに2番目に近い孔を内側から外側に向かって通された後、当該外側で折り返されて(第4折り返し部203a)、複数の第2貫通孔24のうち中心線CLに3番目に近い孔を外側から内側に向かって通される。次に、ストリング200は、第3孔23b(図2および図7参照)を内側から外側に向かって通された後、当該外側で折り返されて(第2折り返し部202b)、第4孔22b(図2および図7参照)を外側から内側に向かって通される。
【0064】
次に、ストリング200は、複数の第2貫通孔24のうち中心線CLに4番目に近い孔を内側から外側に向かって通された後、当該外側で折り返されて(第5折り返し部203b)、複数の第2貫通孔24のうち中心線CLに5番目に近い孔を外側から内側に向かって通される。次に、ストリング200は、第5孔22c(図2および図7参照)を内側から外側に向かって通された後、当該外側で折り返されて(第3折り返し部202c)、第6孔23c(図2および図7参照)を外側から内側に向かって通される。
【0065】
次に、ストリング200は、複数の第2貫通孔24のうち中心線CLに6番目に近い孔を内側から外側に向かって通される。このように、ストリング200が、第1折り返し部202a,第4折り返し部203a、第2折り返し部202b、第5折り返し部203b、および第3折り返し部202cを順に形成するように、複数の第1貫通孔21および複数の第2貫通孔24に通されることにより、複数のメインストリング部201が形成され得る。
【0066】
なお、ストリング200は、上述した張り方に対し、第1方向Aに反転して張られてもよい。準備されたストリング200は、はじめに第1孔22aを外側から内側に向かって通された後、複数の第2貫通孔24のうち中心線CLに最も近い孔を内側から外側に向かって通されてもよい。
【0067】
次に、本実施の形態に係るラケットフレーム100およびラケット110の実施例について説明する。
【0068】
<実施例1>
本実施例では、複数の第1貫通孔の構成が互いに異なる試料1~3に係るラケットフレームのスピン性能を評価した。
【0069】
(試料1~3)
試料1に係るラケットフレームは、比較例として、複数の第1貫通孔の各々の第2方向Bの間隔が互いに等しくかつ複数の第1貫通孔の各々の第3方向Cの幅が互いに等しいものとした。
【0070】
試料2に係るラケットフレームは、複数の第1貫通孔の各々の第2方向Bの間隔が互いに等しいが、第2方向Bにおいて中心線CLを挟んで隣り合う2つの第1孔間の距離が、第1孔と第2孔との間の距離よりも短いものとした。
【0071】
試料3は、ラケットフレーム100とした。つまり、試料1は、複数の第1貫通孔の各々の第2方向Bの間隔が互いに等しくかつ複数の第1貫通孔の各々の第3方向Cの幅が互いに等しい点でのみ、試料3と異なるものとした。試料2は、複数の第1貫通孔の各々の第2方向Bの間隔が互いに等しい点でのみ、試料3と異なるものとした。試料2は、第2方向Bにおいて中心線CLを挟んで隣り合う2つの第1孔間の距離が、第1孔と第2孔との間の距離よりも短い点でのみ、試料1と異なるものとした。
【0072】
試料3では、第2方向Bにおいて、第1孔に通されているメインストリング部と第2孔に通されているメインストリング部との間の距離は、第2孔に通されているメインストリング部と第3孔に通されているメインストリング部との間の距離よりも長かった。
【0073】
(評価方法)
グリップ部が治具に固定されたラケットの上記第1領域に、テニスボール発射機から発射されたテニスボールを衝突させ、衝突により跳ね返ったテニスボールのスピンの回転数を測定した。テニスボール発射機は、テニスボールの中心が上記中心線に重なるように、テニスボールをラケットに発射した。テニスボール発射機がテニスボールを発射する方向は、ラケットの上記中心線と直交し、かつ当該発射する方向がラケットの上記第2方向に対して成す傾斜角が15度または30度となるように、設定された。テニスボールは、硬式テニスボールを用いた。スピンの回転数の測定には、ハイスピードカメラを用いた。
【0074】
(評価結果)
図8は、試料1および試料2の評価結果を対比したグラフである。図9は、試料2および試料3の評価結果を対比したグラフである。
【0075】
図8に示されるように、試料2から跳ね返ったテニスボールのスピン回転数は、上記傾斜角によらず、試料1から跳ね返ったテニスボールのスピン回転数よりも多かった。上記傾斜角が15度である打球時では、試料2から跳ね返ったテニスボールのスピン回転数は、試料1から跳ね返ったテニスボールのスピン回転数に対して17%多かった。上記傾斜角が30度である打球時では、試料2から跳ね返ったテニスボールのスピン回転数は、試料1から跳ね返ったテニスボールのスピン回転数に対して6%多かった。
【0076】
一般的に、上記傾斜角が30度である打球時には、上記傾斜角が15度である打球時と比べて、スピンがかかりやすい。つまり、試料1によってもスピンがかかりやすい上記傾斜角が30度である打球条件においても、試料2のスピン性能は、試料1のスピン性能と比べて高いことが確認された。
【0077】
図9に示されるように、試料3から跳ね返ったテニスボールのスピン回転数は、スピンがかかりやすい上記傾斜角が30度である打球条件においても、試料2から跳ね返ったテニスボールのスピン回転数よりも多かった。上記傾斜角が30度である打球時では、試料3から跳ね返ったテニスボールのスピン回転数は、試料2から跳ね返ったテニスボールのスピン回転数に対して7%多かった。
【0078】
つまり、スピンがかかりやすい上記傾斜角が30度である打球条件においても、試料3のスピン性能は、試料2のスピン性能と比べて高いことが確認された。さらにこれらの結果から、試料3のスピン性能は、試料1のスピン性能と比べて高いことが確認された。
【0079】
<実施例2>
本実施例では、上記試料3に係るラケットの上記第1領域の歪み特性を評価した。
【0080】
(評価方法)
まず、試料3の第3孔23bおよび第4孔22b(図2および図7参照)の各々から第1方向Aに沿って延びる2本のメインストリング部201のそれぞれに、歪みセンサを取り付けた。各メインストリング部201における歪みセンサの取付位置は、第3孔23bおよび第4孔22bの各々と、第2方向Bにおいて第1端部1aに最も近いクロスストリング部204と交わる部分との間とした。なお、各メインストリング部201は、上述のように、1つのストリングから構成されており、第2折り返し部202bによって折り返されたものとした。
【0081】
次に、図10に示されるように、第3方向Cに固定された試料3の上記第1領域に、半球形状であって外径がテニスボールの外径と等しい圧子を第3方向Cに押し当てて、押し当ての開始時から終了時までの各歪み量の変化を評価した。上記圧子は、圧子の頂部が上記第1領域において上記2本のメインストリング部201の第2方向Bにおける中点と第3方向Cに重なるように、配置された。つまり、上記2本のメインストリング部201の各々は、上記圧子により同じ条件で押圧された。
【0082】
図11は、上記評価結果を示すグラフである。図11の横軸は、押し当ての開始時から終了時までの時間(単位:ms)を示し、図11の横軸は、歪み量を示す。図11中の線分Dは、第3孔23bから第1方向Aに沿って延びるメインストリング部201の歪み量を示し、図11中の線分Eは、第4孔22bから第1方向Aに沿って延びるメインストリング部201の歪み量を示す。
【0083】
図11に示されるように、第4孔22bから延びるメインストリング部201と、第3孔23bから延びるメインストリング部201との間には、歪み始めるまでに時間差Δtが確認された。第4孔22bの第3方向Cの幅W4が第3孔23bの第3方向Cの幅W3よりも広い。そのため、第4孔22bから延びるメインストリング部201は、第3孔23bから延びるメインストリング部201よりも第3方向Cに移動しやすい。2つのメインストリング部201の各々は第3方向Cに移動した後に歪み始めるため、上記時間差Δtは、2つのメインストリング部201の間での第3方向Cへの移動のしやすさに差が存在することに起因している、と考えられる。
【0084】
さらに、図11に示されるように、第4孔22bから延びるメインストリング部201と、第3孔23bから延びるメインストリング部201との間には、最大歪み量差ΔSTが確認された。さらに、各メインストリング部201の歪み量が最大となるまで、第4孔22bから延びるメインストリング部201の歪み量は、第3孔23bから延びるメインストリング部201の歪み量よりも、常に少なかった。各メインストリング部201の第3方向Cへの移動は各メインストリング部201に加えられる力の一部によって実現され、各メインストリング部201の歪は各メインストリング部201に加えられる力の残部によって実現される。そのため、所定時間が経過した時の歪み量差、および上記最大歪み量差ΔSTも、2つのメインストリング部201の間での第3方向Cへの移動のしやすさに差が存在することに起因している、と考えられる。
【0085】
上記時間差Δtが第2折り返し部202bを介して接続された2つのメインストリング部201間に形成されることで、2つのメインストリング部201は、第3方向Cに押圧されてから上記時間差Δtが経過するまでの時間、第1方向Aに移動しやすい。さらに、所定時間が経過した時の歪み量差、および上記最大歪み量差ΔSTが第2折り返し部202bを介して接続された2つのメインストリング部201間に形成されることで、2つのメインストリング部201は、第3方向Cに押圧されてから押圧されなくなるまでの時間、第1方向Aに移動しやすい。
【0086】
その結果、例えば、第4孔22bから延びるメインストリング部201は、第3孔23bから延びるメインストリング部201側に引っ張られ、第1方向Aにおいて第1部分11側に移動しやすい。2つのメインストリング部201が上記のように動くとき、上記第1領域において当該2つのメインストリング部201に衝突したテニスボールには、スピンがかかりやすくなる。この作用は、第3孔23bおよび第4孔22bの各々から延びる2つのメインストリング部201間のみならず、第1孔22aおよび第2孔23aの各々から延びる2つのメインストリング部201間、および第5孔22cおよび第6孔23cの各々から延びる2つのメインストリング部201間においても、実現される。
【0087】
本発明者らは、本実施例2の評価結果から考察される上記理由により、上記実施例1の図9に示される評価結果が得られたと考えている。
【0088】
<作用効果>
次に、上記実施例1および実施例2に基づいて、本実施の形態に係るラケットフレームおよびラケットの作用効果について説明する。
【0089】
ラケットフレーム100は、第1方向Aに並んで配置されたフェース部1およびグリップ部3を備える。フェース部1は、第1方向Aにおいてグリップ部3とは反対側に位置する第1端部1aを有する第1部分11と、第1方向Aにおいてグリップ部3側に位置する第2端部1bを有し、かつ第1部分11と間隔を隔てて配置されている第2部分とを含む。第1部分11には、第1方向Aに沿って延び、かつ第1方向Aと直交する第2方向Bにおいて互いに間隔を隔てて配置された複数の第1貫通孔21が形成されている。複数の第1貫通孔21は、第2方向Bにおいて第1部分11の中心に最も近い第1孔22aと、第1孔22aに対して中心とは反対側に位置する第2孔23aとを有している。第1方向Aおよび第2方向Bと交差する第3方向Cにおいて、第1孔22aの幅は、第2孔23aの幅よりも広い。
【0090】
本発明者らは、上記実施例1に記載の通り、上記構成を備えるラケットフレーム100(上述した実施例1,2の試料3)では、各第1貫通孔の第2方向Bの間隔および第3方向Cの幅が互いに等しい場合(上述した実施例1における試料1)、および各第1貫通孔の第2方向Bの間隔は互いに異なるが各第1貫通孔の第3方向Cの幅が互いに等しい場合(上述した実施例1における試料2)と比べて、スピン性能が7%向上していることを見出した。
【0091】
上記ラケットフレーム100では、第2方向Bにおいて中心線CLと第1孔22aとの間の距離L1/2は、第1孔22aと第2孔23aとの間の距離L2の半分よりも短い。つまり、上記距離L1は、上記距離L2よりも短い。
【0092】
本発明者らは、上記実施例1に記載の通り、第2方向Bにおいて中心線CLと第1孔22aとの間の距離L1/2が第1孔22aと第2孔23aとの間の距離L2の半分よりも短い場合(上述した実施例1における試料2)では、第2方向Bにおいて中心線CLと第1孔22aとの間の距離L1/2が第1孔22aと第2孔23aとの間の距離L2の半分と等しい場合(上述した実施例1における試料1)と比べて、スピン性能が6%向上していることを見出した。
【0093】
これについては、上記第1領域R1において第2方向Bに隣り合う2つのメインストリング部201間の距離が長いほど、上記第1領域R1での打球時に当該2つのメインストリング部201とテニスボールとの相対的な位置関係が異なりやすく、打球時に当該2つのメインストリング部201に加えられる力に差が生じやすい。折り返し部202を介して接続されている2つのメインストリング部201間の第2方向Bにおける距離が長いほど、当該2つのメインストリング部201間での上記力の差が大きくなり、当該2つのメインストリング部201は第1方向Aの一方の側に移動しやすくなる。その結果、当該2つのメインストリング部201に衝突したテニスボールにはスピンがかかりやすくなる。つまり、距離L2が長いほど、第1孔22aに通されたメインストリング部201および第2孔23aに通されたメインストリング部201に衝突したテニスボールにはスピンがかかりやすくなる。
【0094】
一方、各第1孔22aに通されたメインストリング部201は折り返し部202を介して接続されておらず、上記距離L1が長くされても、各第1孔22aに通されたメインストリング部201は第1方向Aに移動しやすくならない。上記距離L1が上記距離L2よりも短ければ、上記距離L2がその分だけ長くされ得る。つまり、上記距離L1が上記距離L2よりも短ければ、ラケットフレーム100のスピン性能が効率的に高められる。
【0095】
上記ラケットフレーム100において、複数の第1貫通孔21は、第2孔23aに対して第1孔22aとは反対側に位置する第3孔23bと、第3孔23bに対して第1孔22aとは反対側に位置する第4孔22bとをさらに有している。第3方向Cにおいて、第4孔22bの幅W4は、第3孔23bの幅W3よりも広い。
【0096】
このようなラケットフレーム100では、第1領域R1において、第1孔22aおよび第2孔23aの各々から延びる2つのメインストリング部201にて打球するとき、第3孔23bおよび第4孔22bの各々から延びる2つのメインストリング部201にて打球するとき、ならびに第1孔22a~第4孔22bの各々から延びる4つのメインストリング部201にて打球するときに、高いスピン性能が発揮される。そのため、上記ラケットフレーム100では、上記第1幅W1が上記第2幅W2よりも広いが、上記第4幅W4が上記第3幅W3と同等である構成と比べて、高いスピン性能が発揮される領域が広い。
【0097】
上記ラケットフレーム100において、第2方向Bにおいて第2孔23aと第3孔23bとの間の距離L3が、第1孔22aと第2孔23aとの間の距離L2、および第3孔23bと第4孔22bとの間の距離L4よりも短い。
【0098】
上記距離L3が上記距離L2および上記距離L4よりも短ければ、上記距離L1が上記距離L2よりも短い場合と同等の理由により、ラケットフレーム100のスピン性能が効率的に高められる。
【0099】
ラケット110は、ラケットフレーム100と、フェース部1に張られおり、かつ第1部分11と第2部分12との間を第1方向Aに沿って延びる複数のメインストリング部を含むストリング200とを備える。ストリング200は、複数の第1貫通孔21に通されており、第1孔22aと第2孔23aとの間において、第1孔22aおよび第2孔23aよりも外側で折り返されている(第1折り返し部202a)。
【0100】
上記ラケット110は、ラケットフレーム100を備えることにより、ラケットフレーム100と同等の効果を奏することができる。
【0101】
上記ラケット110では、第2方向Bにおいて、第1孔22aに通されているメインストリング部と第2孔23aに通されているメインストリング部との間の距離は、第2孔23aに通されているメインストリング部と第3孔23bに通されているメインストリング部との間の距離よりも長くなる。
【0102】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0103】
1 フェース部、1a 第1端部、1b 第2端部、1c 内周、1d 外周、2 シャフト部、2A 第1の分岐部材、2B 第2の分岐部材、3 グリップ部、3A グリップ部材、3B グリップ、11 第1部分、11a 挿通孔、12 第2部分、13 第3部分、14 第4部分、15 グロメット、15a グロメット本体、15b 突起、21 第1貫通孔、22a 第1孔、22b 第4孔、22c 第5孔、23a 第2孔、23b 第3孔、23c 第6孔、24 第2貫通孔、25 第3貫通孔、26 第4貫通孔、100 ラケットフレーム、110 ラケット、200 ストリング、201 メインストリング部、202,203 折り返し部、202a 第1折り返し部、202b 第2折り返し部、202c 第3折り返し部、203a 第4折り返し部、203b 第5折り返し部、204 クロスストリング部。
図1
図2
図3
図4
図5
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図8
図9
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図11