(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】無線送信装置、基地局、端末装置、移動通信システム、固定無線アクセスシステム、並びに、無線送信方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 1/04 20060101AFI20221107BHJP
H03F 3/24 20060101ALI20221107BHJP
H03F 1/02 20060101ALI20221107BHJP
H03F 1/32 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
H04B1/04 R
H03F3/24
H03F1/02 188
H03F1/32
(21)【出願番号】P 2020102243
(22)【出願日】2020-06-12
【審査請求日】2021-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】韓 冰
(72)【発明者】
【氏名】太田 喜元
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0294387(US,A1)
【文献】Morteza Nick et al.,Adaptive Input-Power Distribution in Doherty Power Amplifiers for Linearity and Efficiency Enhancement,IEEE Transactions on Microwave Theory and Techniques,Vol.58, Issue 11,IEEE,2010年10月18日,pages 2764-2771
【文献】Ramzi Darraji et al.,Doherty Goes Digital: Digitally Enhanced Doherty Power Amplifiers,IEEE Microwave Magazine,Vol.17, Issue 8,IEEE,2016年07月07日,pages 41-51
【文献】Lei Guan et al.,Bandwidth-constrained least squares-based model extraction for band-limited digital predistortion of RF power amplifiers,2012 Workshop on Integrated Nonlinear Microwave and Millimetre-wave Circuits,IEEE,2012年09月03日,pages 1-3
【文献】Hari Chauhan et al.,An Optimization Platform for Digital Predistortion of Power Amplifiers,IEEE Design & Test,IEEE,2015年09月22日,Vol.33, Issue 2,pages 49-58
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/04
H03F 3/24
H03F 1/02
H03F 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線形の低入力電力領域と電力利得が部分的に低下した非線形の中間入力電力領域
と線形の高入力電力領域とを含む入出力特性を有する
ドハティ増幅器により送信信号を増幅する無線送信装置であって、
前記
ドハティ増幅器により増幅される電力増幅前の送信信号の電力分布が、前記非線形の中間入力電力領域を避けた電力分布になるように、前記電力増幅前の送信信号の電力を制御する電力制御部を備えることを特徴とする無線送信装置。
【請求項2】
請求項1の無線送信装置において
、
前記非線形の中間入力電力領域を避けた電力分布は、前記電力増幅前の送信信号の電力分布のうち前記低入力電力領域と前記中間入力電力領域との境界に位置する第1入力電力閾値よりも大きな電力部分を、前記中間入力電力領域の電力幅分だけ高電力側にシフトした電力分布であることを特徴とする無線送信装置。
【請求項3】
請求項1の無線送信装置において
、
前記非線形の中間入力電力領域を避けた電力分布は、前記電力増幅前の送信信号の電力分布の全体を低電力側にシフトした後、前記低入力電力領域と前記中間入力電力領域との境界に位置する第1入力電力閾値よりも大きい電力部分を、前記中間入力電力領域の電力幅分だけ高電力側にシフトした電力分布であることを特徴とする無線送信装置。
【請求項4】
請求項1の無線送信装置において
、
前記非線形の中間入力電力領域を避けた電力分布は、前記電力増幅前の送信信号の電力分布の最大電力点を維持しながら、前記低入力電力領域と前記中間入力電力領域との境界に位置する第1入力電力閾値よりも大きな電力部分を高電力側に圧縮するように、前記電力増幅前の送信信号の電力分布を変更することを特徴とする無線送信装置。
【請求項5】
請求項1の無線送信装置において、
前記非線形の中間入力電力領域を避けた電力分布は、前記電力増幅前の送信信号の電力分布のうち前記中間入力電力領域と前記高入力電力領域との境界に位置する第2入力電力閾値よりも小さい電力部分を、前記中間入力電力領域の電力幅分だけ低電力側にシフトした電力分布であることを特徴とする無線送信装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかの無線送信装置において、
前記電力制御部は、送信データに基づいて生成されたデジタル変調信号が入力され、前記
ドハティ増幅器により増幅される電力増幅前の送信信号の電力分布が、前記非線形の中間入力電力領域を避けた電力分布になるように、前記デジタル変調信号を制御して出力し、
前記電力制御部から出力された前記デジタル変調信号をアナログ変調信号に変換するDA変換部と、
高周波のキャリア信号を発生するキャリア信号発生部と、
前記キャリア信号発生部から前記キャリア信号が入力され、前記DA変換部から出力された前記アナログ変調信号を高周波の送信信号に変換する周波数変換部と、を更に備えることを特徴とする無線送信装置。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかの無線送信装置において、
送信データに基づいて生成されたデジタル変調信号をアナログ変調信号に変換するDA変換部と、
高周波のキャリア信号を発生するキャリア信号発生部と、
前記キャリア信号発生部から前記キャリア信号が入力され、前記DA変換部から出力された前記アナログ変調信号を高周波の送信信号に変換する周波数変換部と、を更に備え、
前記電力制御部は、前記周波数変換部から前記高周波の送信信号が入力され、前記
ドハティ増幅器により増幅される電力増幅前の送信信号の電力分布が、前記非線形の中間入力電力領域を避けた電力分布になるように、前記高周波の送信信号を制御して出力することを特徴とする無線送信装置
。
【請求項8】
請求項1乃至
7のいずれかの無線送信装置において、
前記
ドハティ増幅器は、高効率の
ドハティ増幅器であることを特徴とする無線送信装置。
【請求項9】
移動通信システムの基地局であって、
請求項1乃至
8のいずれかの無線送信装置を備えることを特徴とする基地局。
【請求項10】
固定無線アクセス(FWA)システムの基地局であって、
請求項1乃至
8のいずれかの無線送信装置を備えることを特徴とする基地局。
【請求項11】
移動通信システムの端末装置であって、
請求項1乃至
8のいずれかの無線送信装置を備えることを特徴とする端末装置。
【請求項12】
固定無線アクセス(FWA)システムの端末装置であって、
請求項1乃至
8のいずれかの無線送信装置を備えることを特徴とする端末装置。
【請求項13】
請求項
9の基地局及び請求項
10の端末装置の少なくとも一方を備えることを特徴とする移動通信システム。
【請求項14】
請求項
10の基地局及び請求項
12の端末装置の少なくとも一方を備えることを特徴とする固定無線アクセスシステム。
【請求項15】
送信対象のデータを処理して生成した送信信号を生成し、
線形の低入力電力領域と電力利得が部分的に低下した非線形の中間入力電力領域
と線形の高入力電力領域とを含む入出力特性を有する
ドハティ増幅器により送信信号の電力を増幅して送信する無線送信方法であって、
前記
ドハティ増幅器により増幅される電力増幅前の送信信号の電力分布が、前記非線形の中間入力電力領域を避けた電力分布になるように、前記電力増幅前の送信信号の電力を制御することを含むことを特徴とする無線送信方法。
【請求項16】
送信対象のデータを処理して生成した送信信号を生成し、
線形の低入力電力領域と電力利得が部分的に低下した非線形の中間入力電力領域
と線形の高入力電力領域とを含む入出力特性を有する
ドハティ増幅器により送信信号の電力を増幅して送信する無線送信装置に備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムであって、
前記
ドハティ増幅器により増幅される電力増幅前の送信信号の電力分布が、前記非線形の中間入力電力領域を避けた電力分布になるように、前記電力増幅前の送信信号の電力を制御するためのプログラムコードを含むことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドハティ増幅器などの高効率の電力増幅器を備えた無線送信装置、基地局、端末装置、移動通信システム、固定無線アクセスシステム、並びに、無線送信方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高効率のドハティ増幅器を用いた無線送信装置を備える移動通信システムの基地局が知られている(特許文献1参照)。ドハティ増幅器は、入力信号を分配する電力分配器と、電力分配器で分配された信号がそれぞれ入力されるメインアンプ(「キャリアアンプ」ともいう。)及びピークアンプを備え、低出力時にはメインアンプだけを動作させ、高出力時にはメインアンプ及びピークアンプの両方を同時に動作させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記ドハティ増幅器では、一般に、入出力電力特性において出力電力が飽和する飽和領域近傍で効率が最大となる。ここで、「効率」とは、電力増幅器に入力される直流電力に対する増幅後の交流信号の出力電力の比である。この効率が最大となる飽和領域近傍では入力電力と出力電力との関係が線形でなくなり、非線形特性を呈する。この結果、電力増幅後の送信号に歪みや干渉が発生し、無線通信の通信性能が劣化してしまう。
【0005】
上記飽和領域近傍において効率を低下させることなく線形性を向上させる技術として、「デジタルプリディストーション」(DPD)と呼ばれる一種のアクティブ・リニアライゼーションがある。
【0006】
しかしながら、アクティブ・リニアライゼーションを適用して飽和領域近傍の線形性を向上させたとしても、メインアンプだけを動作させる低出力動作モードと、メインアンプ及びピークアンプの両方を同時に動作させる高出力動作モードとの切り替えが行われる中間入力電力領域に、入力電力に対する出力電力の利得(電力利得)が部分的に低下した非線形部分が残ってしまい、電力増幅後の出力信号に非線形歪みが発生するおそれがある。特に、このような入出力電力特性が非線形の中間入力電力領域を含むことによる非線形歪みは、電力増幅器の効率が高くなるほど発生しやすくなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る無線送信装置は、電力利得が部分的に低下した非線形の中間入力電力領域を含む入出力特性を有する電力増幅器により送信信号を増幅する無線送信装置である。この無線送信装置は、前記電力増幅器により増幅される電力増幅前の送信信号の電力分布が、前記非線形の中間入力電力領域を避けた電力分布になるように、前記電力増幅前の送信信号の電力を制御する電力制御部を備える。
【0008】
前記無線送信装置において、前記電力増幅器は、線形の低入力電力領域と前記非線形の中間入力電力領域と線形の高入力電力領域とを含む入出力特性を有し、前記非線形の中間入力電力領域を避けた電力分布は、前記電力増幅前の送信信号の電力分布のうち前記低入力電力領域と前記中間入力電力領域との境界に位置する第1入力電力閾値よりも大きな電力部分を、前記中間入力電力領域の電力幅分だけ高電力側にシフトした電力分布であってもよい。
【0009】
前記無線送信装置において、前記電力増幅器は、線形の低入力電力領域と前記非線形の中間入力電力領域と線形の高入力電力領域とを含む入出力特性を有し、前記非線形の中間入力電力領域を避けた電力分布は、前記電力増幅前の送信信号の電力分布の全体を低電力側にシフトした後、前記低入力電力領域と前記中間入力電力領域との境界に位置する第1入力電力閾値よりも大きい電力部分を、前記中間入力電力領域の電力幅分だけ高電力側にシフトした電力分布であってもよい。
【0010】
前記無線送信装置において、前記電力増幅器は、線形の低入力電力領域と前記非線形の中間入力電力領域と線形の高入力電力領域とを含む入出力特性を有し、前記非線形の中間入力電力領域を避けた電力分布は、前記電力増幅前の送信信号の電力分布の最大電力点を維持しながら、前記低入力電力領域と前記中間入力電力領域との境界に位置する第1入力電力閾値よりも大きな電力部分を高電力側に圧縮した電力分布であってもよい。
【0011】
前記無線送信装置において、前記電力増幅器は、線形の低入力電力領域と前記非線形の中間入力電力領域と線形の高入力電力領域とを含む入出力特性を有し、前記非線形の中間入力電力領域を避けた電力分布は、前記電力増幅前の送信信号の電力分布のうち前記中間入力電力領域と前記高入力電力領域との境界に位置する第2入力電力閾値よりも小さい電力部分を、前記中間入力電力領域の電力幅分だけ低電力側にシフトした電力分布であってもよい。
【0012】
前記無線送信装置において、前記電力制御部は、送信データに基づいて生成されたデジタル変調信号が入力され、前記電力増幅器により増幅される電力増幅前の送信信号の電力分布が、前記非線形の中間入力電力領域を避けた電力分布になるように、前記デジタル変調信号を制御して出力し、前記電力制御部から出力された前記デジタル変調信号をアナログ変調信号に変換するDA変換部と、高周波のキャリア信号を発生するキャリア信号発生部と、前記キャリア信号発生部から前記キャリア信号が入力され、前記DA変換部から出力された前記アナログ変調信号を高周波の送信信号に変換する周波数変換部と、を更に備えてもよい。
【0013】
前記無線送信装置において、送信データに基づいて生成されたデジタル変調信号をアナログ変調信号に変換するDA変換部と、高周波のキャリア信号を発生するキャリア信号発生部と、前記キャリア信号発生部から前記キャリア信号が入力され、前記DA変換部から出力された前記アナログ変調信号を高周波の送信信号に変換する周波数変換部と、を更に備え、前記電力制御部は、前記周波数変換部から前記高周波の送信信号が入力され、前記電力増幅器により増幅される電力増幅前の送信信号の電力分布が、前記非線形の中間入力電力領域を避けた電力分布になるように、前記高周波の送信信号を制御して出力してもよい。
【0014】
前記無線送信装置において、前記電力増幅器は、前記線形の低入力電力領域と前記非線形の中間入力電力領域と前記線形の高入力電力領域とを含む入出力特性を有するドハティ増幅器であってもよい。
【0015】
前記無線送信装置において、前記電力増幅器は、高効率の電力増幅器であってもよい。
【0016】
本発明の他の態様に係る移動通信システム又は固定無線アクセス(FWA)システムの基地局は、前記いずれかの無線送信装置を備える。
【0017】
本発明の更に他の態様に係る移動通信システム又は固定無線アクセス(FWA)システムの端末装置は、前記いずれかの無線送信装置を備える。
【0018】
本発明の更に他の態様に係る移動通信システム又は固定無線アクセス(FWA)システムは、前記基地局及び前記端末装置の少なくとも一方を備える。
【0019】
本発明の更に他の態様に係る方法は、送信対象のデータを処理して生成した送信信号を生成し、電力利得が部分的に低下した中間入力電力領域を含む入出力特性を有する電力増幅器により送信信号の電力を増幅して送信する無線送信方法である。この無線送信方法は、前記電力増幅器により増幅される電力増幅前の送信信号の電力分布が、前記非線形の中間入力電力領域を避けた電力分布になるように、前記電力増幅前の送信信号の電力を制御することを含む。
【0020】
本発明の更に他の態様に係るプログラムは、送信対象のデータを処理して生成した送信信号を生成し、電力利得が部分的に低下した中間入力電力領域を含む入出力特性を有する電力増幅器により送信信号の電力を増幅して送信する無線送信装置に備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムである。このプログラムは、前記電力増幅器により増幅される電力増幅前の送信信号の電力分布が、前記非線形の中間入力電力領域を避けた電力分布になるように、前記電力増幅前の送信信号の電力を制御するためのプログラムコードを含む。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、送信信号を増幅する電力増幅器が、電力利得が部分的に低下した中間入力電力領域を含む入出力特性を有する場合に、前記中間入力電力領域に起因した非線形歪みの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る無線送信装置の一構成例を示すブロック図。
【
図2】実施形態に係るドハティ増幅器の一例を示すブロック図。
【
図3】実施形態に係るドハティ増幅器の効率及び出力の一例を示すグラフ。
【
図4】実施形態に係るドハティ増幅器に入力される入力信号の電力分布の一例を示すグラフ。
【
図5】実施形態に係る無線送信装置の電力制御部におけるアンプ入力電力の制御の一例(第1電力制御例)を示すブロック図。
【
図6】第1電力制御例におけるドハティ増幅器の入出力特性と電力制御後の入力信号の電力分布との関係の一例を示す説明図。
【
図7】第1電力制御例を実施した場合のドハティ増幅器の実効的な入出力特性とドハティ増幅器の出力信号の電力分布との関係の一例を示す説明図。
【
図8】実施形態に係る無線送信装置の電力制御部におけるアンプ入力電力の制御の他の例(第2電力制御例)を示すブロック図。
【
図9】第2電力制御例におけるドハティ増幅器の入出力特性と電力制御後の入力信号の電力分布との関係の一例を示す説明図。
【
図10】第2電力制御例を実施した場合のドハティ増幅器の実効的な入出力特性とドハティ増幅器の出力信号の電力分布との関係の一例を示す説明図。
【
図11】実施形態に係る無線送信装置の電力制御部におけるアンプ入力電力の制御の更に他の例(第3電力制御例)を示すブロック図。
【
図12】第3電力制御例におけるドハティ増幅器の入出力特性と電力制御後の入力信号の電力分布との関係の一例を示す説明図。
【
図13】第3電力制御例を実施した場合のドハティ増幅器の実効的な入出力特性とドハティ増幅器の出力信号の電力分布との関係の一例を示す説明図。
【
図14】実施形態に係る無線送信装置の電力制御部におけるアンプ入力電力の制御の更に他の例(第4電力制御例)を示すブロック図。
【
図15】第4電力制御例におけるドハティ増幅器の入出力特性と電力制御後の入力信号の電力分布との関係の一例を示す説明図。
【
図16】第4電力制御例を実施した場合のドハティ増幅器の実効的な入出力特性とドハティ増幅器の出力信号の電力分布との関係の一例を示す説明図。
【
図17】実施形態に係るドハティ増幅器を含む無線送信装置(送信機)を備える基地局の一構成例を示すブロック図。
【
図18】(a)及び(b)はそれぞれ、第1電力制御例及び比較例それぞれにおけるOFDM信号の入力信号及び出力信号の電力分布のシミュレーション結果の一例を示すグラフ。
【
図19】(a)及び(b)はそれぞれ、第1電力制御例及び比較例それぞれにおける復調後のOFDM信号の信号点配置のシミュレーション結果の一例を示すグラフ。
【
図20】(a)及び(b)はそれぞれ、第1電力制御例及び比較例それぞれにおけるSC-FDMA信号の入力信号及び出力信号の電力分布のシミュレーション結果の一例を示すグラフ。
【
図21】(a)及び(b)はそれぞれ、第1電力制御例及び比較例それぞれにおける復調後のSC-FDMA信号の信号点配置のシミュレーション結果の一例を示すグラフ。
【
図22】(a)及び(b)はそれぞれ、第2電力制御例及び比較例それぞれにおけるOFDM信号の入力信号及び出力信号の電力分布のシミュレーション結果の一例を示すグラフ。
【
図23】(a)及び(b)はそれぞれ、第2電力制御例及び比較例それぞれにおける復調後のOFDM信号の信号点配置のシミュレーション結果の一例を示すグラフ。
【
図24】(a)及び(b)はそれぞれ、第2電力制御例及び比較例それぞれにおけるSC-FDMA信号の入力信号及び出力信号の電力分布のシミュレーション結果の一例を示すグラフ。
【
図25】(a)及び(b)はそれぞれ、第2電力制御例及び比較例それぞれにおける復調後のSC-FDMA信号の信号点配置のシミュレーション結果の一例を示すグラフ。
【
図26】(a)及び(b)はそれぞれ、第3電力制御例及び比較例それぞれにおけるOFDM信号の入力信号及び出力信号の電力分布のシミュレーション結果の一例を示すグラフ。
【
図27】(a)及び(b)はそれぞれ、第3電力制御例及び比較例それぞれにおける復調後のOFDM信号の信号点配置のシミュレーション結果の一例を示すグラフ。
【
図28】(a)及び(b)はそれぞれ、第3電力制御例及び比較例それぞれにおけるSC-FDMA信号の入力信号及び出力信号の電力分布のシミュレーション結果の一例を示すグラフ。
【
図29】(a)及び(b)はそれぞれ、第3電力制御例及び比較例それぞれにおける復調後のSC-FDMA信号の信号点配置のシミュレーション結果の一例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態の構成、並びに、その構成によって得られる作用及び効果はそれぞれ一例であり、以下に説明する内容に限られるものではない。また、以下の実施形態で説明する無線送信装置は、移動通信システムの基地局や端末装置に適用できるだけでなく、固定無線アクセス(FWA)システムの基地局や端末装置にも適用できる。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る無線送信装置10の一構成例を示すブロック図である。
図1において、無線送信装置10は、電力制御部20と電力増幅器30とアンテナ40とを備える。なお、無線送信装置10は、送信信号生成部50を含んでもよい。
【0025】
電力増幅器30は、例えば、後で例示するドハティ増幅器である。電力増幅器30は、電力利得が部分的に低下した非線形の中間入力電力領域を含む入出力特性を有し、電力制御部20で電力が制御された送信信号を増幅する。電力増幅器30で増幅された送信信号はアンテナ40から送信される。
【0026】
電力制御部20は、送信信号生成部50により送信データに基づいて生成された送信信号が入力され、電力増幅器30により増幅される電力増幅前の送信信号の電力分布が、前記非線形の中間入力電力領域を避けた電力分布になるように、電力増幅前の送信信号の電力を制御する。
【0027】
図2は、本実施形態に係るドハティ増幅器(電力増幅器)30の構成の一例を示すブロック図である。ドハティ増幅器30は、入力信号の信号レベルが比較的低く飽和増幅の状態に達しない低ひずみ状態での電力効率が他の方式による増幅器と比べて大きい高効率の電力増幅器である。ドハティ増幅器30は、特に広い高周波数帯(例えば100MHz~100GHzのマイクロ波帯又はミリ波帯)での低ひずみ・高効率の電力増幅に適し、例えば移動通信システムや固定無線アクセス(FWA)システムを構成する基地局の無線通信部に搭載される無線送信装置(送信機)に適用可能である。
【0028】
また、ドハティ増幅器30は、平均電力に比べてピーク電力が大きい無線信号、例えば、第3世代、第4世代、又は、第5世代などの次世代の移動通信システムにおけるCDMA(Code Divisional Multiple Access)信号や、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)、SC-FDMA(Single-Carrier Frequency Division Multiple Access)信号等のデジタル変調方式で生成された信号を電力増幅する場合にバックオフの大きい動作点での効率を高めることができるので、基地局(例えば、eNodeB、gNodeB)等の無線通信装置に搭載される送信機の電力増幅器に適する。移動通信システムは、送信機の電力増幅器として本実施形態のドハティ増幅器30を用いた基地局(例えば、eNodeB、gNodeB)等の一又は複数の無線通信装置を備えてもよい。
【0029】
また、ドハティ増幅器30は、平均電力に比べてピーク電力が大きい無線信号、固定無線アクセス(FWA)システムにおけるCDMA信号や、OFDM、SC-FDMA信号等のデジタル変調方式で生成された信号を電力増幅する場合にバックオフの大きい動作点での効率を高めることができるので、固定無線アクセス(FWA)システムの基地局等の無線通信装置に搭載される送信機の電力増幅器にも適する。固定無線アクセス(FWA)システムは、送信機の電力増幅器として本実施形態のドハティ増幅器30を用いた基地局等の一又は複数の無線通信装置を備えてもよい。
【0030】
ここで、電力増幅器の「バックオフ」とは、当該電力増幅器の飽和出力電力Psat[dB]よりも低い電力を出力電力範囲の最大出力電力Pmax[dB]として当該電力増幅器を動作させることである。また、電力増幅器の最大出力電力Pmax[dB]と飽和出力電力Psat[dB]の差Psat-Pmax[dB]を、「バックオフ」という場合もある。この電力差Psat-Pmax[dB]は、「バックオフマージン」、「バックオフ量」又は「バックオフ値」ともいう。また、電力増幅器の「効率」ηとは、当該電力増幅器に入力される直流電力PDCに対する増幅後の交流信号の出力電力POUTの比であり、例えば、η=(POUT/PDC)×100[%]で表される。
【0031】
図2において、ドハティ増幅器30は、第1増幅回路31と第2増幅回路32と電力分配器33と、インピーダンス変換回路34とを備える。
【0032】
第1増幅回路31は、キャリアアンプ311と入力側回路312と出力側回路313とを備え、外部から入力される入力信号を増幅する。キャリアアンプ311は、例えば直流バイアス電圧がA級、AB級又はB級の動作基準点にバイアスされたA級動作、AB級動作又はB級動作のアンプで構成され、主に入出力特性の線形領域で、入力信号の全体波形の電力又は半周期の波形の電力を増幅する。
【0033】
入力側回路312は、ピークアンプ321に対する入力信号の位相調整を行う回路である。出力側回路313は、調整用のインピーダンスZ0’を有し、電気長が基本波の波長λの4分の1(λ/4)の伝送線路で構成され、キャリアアンプ311の出力インピーダンスを調整する回路である。
【0034】
第2増幅回路32は、第1増幅回路31に対して並列に設けられ、ピークアンプ321と入力側回路322と出力側回路323とを備え、入力信号の信号レベル(平均電力)が閾値よりも大きい場合に入力信号を増幅する。ピークアンプ321は、例えば直流バイアス電圧がC級動作点にバイアスされたC級動作のアンプで構成され、入出力特性の線形領域及び非線形領域を含む領域で、入力信号のピーク近傍の電力のみを増幅する。
【0035】
入力側回路322は、入力信号(出力信号)の基本波に対する外部負荷の特性インピーダンスZ0と同じインピーダンスZ0を有し、電気長が基本波の波長λの4分の1(λ/4)の伝送線路で構成され、ピークアンプ321の入力インピーダンスを調整する回路である。出力側回路323は、キャリアアンプ311に対する出力信号の位相調整を行う回路である。
【0036】
ドハティ増幅器30は、入力信号の電力レベル(瞬間入力電力)に応じて低入力増幅モードと高入力増幅モードとの間で自動的に切り替わる。
【0037】
入力信号の電力レベル(瞬間入力電力)が低いときは、第1増幅回路31がオン状態になり第2増幅回路32がオフ状態になることにより、第1増幅回路31のみにより入力信号が増幅される低入力増幅モードになる。低入力増幅モードでは、キャリアアンプ311は、例えば直流バイアス電圧がA級、AB級又はB級の動作基準点にバイアスされているので、入力信号の電力レベル(瞬間入力電力)に係わらず増幅を行い、出力信号を出力する。一方、ピークアンプ321は、直流バイアス電圧がC級にバイアスされているため、入力信号の電力レベル(瞬間入力電力)が小さい場合にはオフ状態、すなわち増幅動作を行わず増幅出力も発生しない。また、ピークアンプ321の直流消費電力も0あるいは十分小さいので、ドハティ増幅器30の全体としての効率が高い。
【0038】
入力信号の電力レベル(瞬間入力電力)が高いときは、第1増幅回路31及び第2増幅回路32の両方がオン状態になることにより、第1増幅回路31及び第2増幅回路32の両方で入力信号が増幅される高入力増幅モードになる。高入力増幅モードでは、ピークアンプ321がオン状態となりピークアンプ321への入力信号を増幅し、出力信号を発生する。このとき、第1増幅回路31のキャリアアンプ311の出力と第2増幅回路32のピークアンプ321の出力電力が合成されることにより、結果として、より大きな飽和電力を有する電力増幅器が構成される。
【0039】
電力分配器33は、例えばウィルキンソン電力分配器で構成され、所定の分配比率で入力信号の電力を分配して第1増幅回路31及び第2増幅回路32のそれぞれに入力信号を供給する。
【0040】
ドハティ増幅器30は、対称型のドハティ増幅器であってもよいし、非対称型のドハティ増幅器であってもよい。対称型のドハティ増幅器は、キャリアアンプ311の飽和出力電力とピークアンプ321の飽和出力電力が同じになるように設定されている。一方、非対称型のドハティ増幅器は、キャリアアンプ311の飽和出力電力よりピークアンプ321の飽和出力電力が大きくなるように設定されている。例えば、1:2の非対称型のドハティ増幅器では、キャリアアンプ311の飽和出力電力を「1」とした場合にピークアンプ321の飽和出力電力は「2」となるように設定される。この非対称型のドハティ増幅器は、キャリアアンプ311に電力分配比が「1」で入力されるとともに、λ/4線路の入力側回路322を介してピークアンプ321に電力分配比が「2」で入力される。特に、非対称型のドハティ増幅器は、バックオフの大きい動作点での電力増幅で高い効率ηが得られる。
【0041】
インピーダンス変換回路34は、第1増幅回路31の出力及び第2増幅回路32の出力の合成点35における出力インピーダンスと、ドハティ増幅器30に接続される負荷インピーダンスとの間でインピーダンス整合をとるように出力インピーダンスを変換する機能を有する。このインピーダンス整合は、例えば、変換後の出力インピーダンスと負荷インピーダンスとの間の関係が複素共役の関係になるように行われる。なお、インピーダンス整合が不要の場合は、インピーダンス変換回路34を設けなくてもよい。
【0042】
図3は、実施形態に係るドハティ増幅器30の効率及び出力の一例を示すグラフである。
図3の曲線C101は、ドハティ増幅器30の入力電力Pin[dBm]に対する出力電力Pout[dBm]を示す入出力特性である。曲線C102はドハティ増幅器30の効率であり、例えばアンプにFETが用いられている場合はドレイン効率とも呼ばれる。ドレイン効率は、FETのドレインに供給される直流電力P
DCに対する増幅後の交流信号の出力電力P
OUTの比η=(P
OUT/P
DC)×100[%]である。
【0043】
図3の曲線C101に示すように、ドハティ増幅器30は、線形の低入力電力領域P0~P1(斜度:a)と非線形の中間入力電力領域P1~P2と線形の高入力電力領域P2~Pmax(斜度:b(>a))とを含む入出力特性を有する。中間入力電力領域P1~P2は、キャリアアンプ311だけを動作させる低出力動作モードと、キャリアアンプ311及びピークアンプ321の両方を同時に動作させる高出力動作モードとの切り替えが行われる領域である。この入出力特性の中間入力電力領域P1~P2は、入力電力Pinに対する出力電力Poutの利得(電力利得)が部分的に低下した非線形部分である。中間入力電力領域P1~P2の電力を有する送信信号がドハティ増幅器30に入力されて電力増幅されると、電力増幅後の出力信号に非線形歪みが発生するおそれがある。
【0044】
そこで、本実施形態の無線送信装置10は、中間入力電力領域P1~P2に起因した非線形歪みの発生を抑制するため、ドハティ増幅器30により増幅される電力増幅前の送信信号の電力分布が、前記非線形の中間入力電力領域P1~P2を避けた電力分布になるように、電力増幅前の送信信号の電力(以下「アンプ入力電力」ともいう。)を制御する電力制御部20を備えている。
【0045】
以下、電力制御部20におけるアンプ入力電力を制御する機能をデジタル信号処理回路で実現した複数の電力制御例について説明する。なお、電力制御部20の機能はアナログ信号処理回路で実現するように構成してもよいし、コンピュータ又はプロセッサで実行可能なソフトウェア(プログラム)実現するように構成してもよい。
【0046】
図4は、以下の電力制御例においてドハティ増幅器30に入力される送信信号(以下「入力信号」ともいう。)の電力分布の一例を示すグラフである。
図4は、ドハティ増幅器30に入力される入力信号が、基地局のベースバンド処理部等により生成されたOFDM信号である例である。
図4の横軸はドハティ増幅器30に入力される入力信号(OFDM信号)の入力電力Pinであり、縦軸は各入力電力Pinについて計数された所定の単位期間あたり(例えば、単位時間あたり、1無線フレームあたり又は複数無線フレームあたり)に出現する累積出現回数である。(後述の
図6、
図9、
図12、
図15及びシミュレーション結果においても同様)。
【0047】
〔第1電力制御例〕
図5は、実施形態に係る無線送信装置の電力制御部20におけるアンプ入力電力の制御の一例(第1電力制御例)を示すブロック図である。
図6は、第1電力制御例におけるドハティ増幅器30の入出力特性と電力制御後の入力信号の電力分布との関係の一例を示す説明図である。
図7は、第1電力制御例を実施した場合のドハティ増幅器30の実効的な入出力特性とドハティ増幅器30の出力信号の電力分布との関係の一例を示す説明図である。なお、
図7の横軸はドハティ増幅器30から出力される出力信号(送信信号)の電力(以下「出力電力」ともいう。)Poutであり、縦軸は各出力電力Poutについて計数された所定の単位期間あたり(例えば、単位時間あたり、1無線フレームあたり又は複数無線フレームあたり)に出現する累積出現回数である(後述の
図10、
図13、
図16及びシミュレーション結果においても同様)。
【0048】
第1電力制御例では、ドハティ増幅器30で増幅する前の入力信号の電力分布が、
図6の下図に示す非線形の中間入力電力領域P1~P2を避けた電力分布になるように、入力電力を制御している。この中間入力電力領域(P1~P2)を避けた電力分布は、入力信号の電力分布のうち線形の低入力電力領域(0~P1)と非線形の中間入力電力領域(P1~P2)との境界に位置する第1入力電力閾値(以下「第1閾値」という。)P1よりも大きな電力部分を、中間入力電力領域(P1~P2)の電力幅分だけ高電力側にシフトした電力分布である。
【0049】
図5において、電力制御部20に入力信号が入力されると、その入力信号の電力(入力電力)Pinが計算され(S201)、計算した入力電力Pinと第1閾値P1が比較される(S202)。入力電力Pinが第1閾値P1よりも大きい場合は、入力電力Pinを中間入力電力領域(P1~P2)の電力幅分だけ高電力側にシフトするために、新入力電力Pin’=(Pin-P1)+P2が計算され(S203)、計算した新入力電力Pin’と、入力信号から取得した角度情報(S204)とを用いて複素信号が合成され(S205)、新入力信号として出力される。一方、上記S202の比較において、入力電力Pinが第1閾値P1以下の場合は、電力制御部20に入力された入力信号がそのまま出力される(S206)。
【0050】
図5の電力制御部20で電力制御された
図6の下図の電力分布を有する入力信号が、
図6の上図に示す入出力特性を有するドハティ増幅器30に入力されると、非線形の中間入力電力領域(P1~P2)で増幅される入力信号がなくなるか又は極めて少なくなり、
図7の下図に示すように電力制御部20に入力された入力信号の電力分布とほぼ同じプロファイルを有する非線形歪みが抑制された出力信号が、ドハティ増幅器30から出力される。その結果、エラーベクトル振幅(EVM)の発生を低減することができる。ドハティ増幅器30の実効的な入出力特性は、
図7の上図に示すように、非線形の中間入力電力領域P1~P2に対応する部分が抑圧され、線形の低入力電力領域(0~P1)の電力利得(斜度:a)の部分と、線形の高入力電力領域(P2~Pmax)の電力利得(斜度:b(>a))の部分とを含む特性になる。
【0051】
〔第2電力制御例〕
図8は、実施形態に係る無線送信装置の電力制御部20におけるアンプ入力電力の制御の他の例(第2電力制御例)を示すブロック図である。
図9は、第2電力制御例におけるドハティ増幅器30の入出力特性と電力制御後の入力信号の電力分布との関係の一例を示す説明図である。
図10は、第2電力制御例を実施した場合のドハティ増幅器30の実効的な入出力特性とドハティ増幅器30の出力信号の電力分布との関係の一例を示す説明図である。
【0052】
第2電力制御例では、ドハティ増幅器30で増幅する前の入力信号の電力分布が、
図9の下図に示す非線形の中間入力電力領域P1~P2を避けた電力分布になるように、入力電力を制御している。この中間入力電力領域(P1~P2)を避けた電力分布は、入力信号の電力分布の全体を低電力側に(P2-P1分)シフト(バックオフ)した後、線形の低入力電力領域(0~P1)と非線形の中間入力電力領域(P1~P2)との境界に位置する第1閾値P1よりも大きい電力部分を、中間入力電力領域(P1~P2)の電力幅分だけ高電力側にシフトした電力分布である。
【0053】
図8において、電力制御部20に入力信号が入力されると、その入力信号の電力(入力電力)Pinが計算され(S211)、入力信号の電力分布の全体を低電力側にシフトするために中間入力電力Pin’=Pin-(P2-P1)が計算され(S212)、計算した中間入力電力Pin’と第1閾値P1が比較される(S213)。中間入力電力Pin’が第1閾値P1よりも大きい場合は、中間入力電力Pin’を中間入力電力領域(P1~P2)の電力幅分だけ高電力側にシフト(バックオフ)するために、新入力電力Pin’’=(Pin’-P1)+P2が計算され(S214)、計算した新入力電力Pin’’と、入力信号から取得した角度情報(S215)とを用いて複素信号が合成され(S216)、新入力信号として出力される。一方、上記S213の比較において、中間入力電力Pin’が第1閾値P1以下の場合は、上記ステップ212で計算された中間入力電力Pin’と、入力信号から取得した角度情報(S218)とを用いて複素信号が合成され(S219)、新入力信号として出力される(S220)。
【0054】
図8の電力制御部20で電力制御された
図9の下図の電力分布を有する入力信号が、
図9の上図に示す入出力特性を有するドハティ増幅器30に入力されると、非線形の中間入力電力領域(P1~P2)で増幅される入力信号がなくなるか又は極めて少なくなり、
図10の下図に示すように電力制御部20に入力された入力信号の電力分布とほぼ同じプロファイルを有する非線形歪みが抑制された出力信号が、ドハティ増幅器30から出力される。その結果、エラーベクトル振幅(EVM)の発生を低減することができる。ドハティ増幅器30の実効的な入出力特性は、
図10の上図に示すように、非線形の中間入力電力領域P1~P2に対応する部分が抑圧され、線形の低入力電力領域(0~P1)の電力利得(斜度:a)の部分と、線形の高入力電力領域(P2~Pmax)の電力利得(斜度:b(>a))の部分とを含む特性になる。
【0055】
特に、第2電力制御の場合は、
図10の下図に示すように入力信号の電力が最大電力点(最大許容入力電力)Pmaxを超えるオーバーフローがないため、更にエラーベクトル振幅(EVM)の発生を低減することができる。
【0056】
〔第3電力制御例〕
図11は、実施形態に係る無線送信装置の電力制御部20におけるアンプ入力電力の制御の更に他の例(第3電力制御例)を示すブロック図である。
図12は、第3電力制御例におけるドハティ増幅器30の入出力特性と電力制御後の入力信号の電力分布との関係の一例を示す説明図である。
図13は、第3電力制御例を実施した場合のドハティ増幅器30の実効的な入出力特性とドハティ増幅器30の出力信号の電力分布との関係の一例を示す説明図である。
【0057】
第3電力制御例では、ドハティ増幅器30で増幅する前の入力信号の電力分布が、
図12の下図に示す非線形の中間入力電力領域P1~P2を避けた電力分布になるように、入力電力を制御している。この中間入力電力領域(P1~P2)を避けた電力分布は、入力信号の電力分布の最大電力点Pmaxを維持しながら、線形の低入力電力領域(0~P1)と非線形の中間入力電力領域(P1~P2)との境界に位置する第1閾値P1よりも大きな電力部分を高電力側(P2~Pmax)に圧縮した電力分布である。
【0058】
図11において、電力制御部20に入力信号が入力されると、その入力信号の電力(入力電力)Pinが計算され(S221)、計算した入力電力Pinと第1閾値P1が比較される(S222)。入力電力Pinが第1閾値P1よりも大きい場合は、入力信号の電力分布の最大電力点Pmaxを維持しながら第1閾値P1よりも大きな電力部分を高電力側(P2~Pmax)に圧縮した電力分布にするために、新入力電力Pin’=(Pin-P1)×(Pmax-P2)/(Pmax-P1)+P2が計算され(S223)、計算した新入力電力Pin’と、入力信号から取得した角度情報(S224)とを用いて複素信号が合成され(S225)、新入力信号として出力される。一方、上記S222の比較において、入力電力Pinが第1閾値P1以下の場合は、電力制御部20に入力された入力信号がそのまま出力される(S226)。
【0059】
図11の電力制御部20で電力制御された
図12の下図の電力分布を有する入力信号が、
図12の上図に示す入出力特性を有するドハティ増幅器30に入力されると、非線形の中間入力電力領域(P1~P2)で増幅される入力信号がなくなるか又は極めて少なくなり、
図13の下図に示すように電力制御部20に入力された入力信号の電力分布とほぼ同じプロファイルを有する非線形歪みが抑制された出力信号が、ドハティ増幅器30から出力される。その結果、エラーベクトル振幅(EVM)の発生を低減することができる。ドハティ増幅器30の実効的な入出力特性は、
図13の上図に示すように、非線形の中間入力電力領域P1~P2に対応する部分が抑圧され、線形の低入力電力領域(0~P1)の電力利得(斜度:a)の部分と、線形の高入力電力領域(P2~Pmax)の電力利得(斜度:a)の部分とを含む特性になる。
【0060】
特に、第3電力制御の場合は、
図13の上図に示すように低入力電力領域(0~P1)の電力利得(斜度:a)と高入力電力領域(P2~Pmax)の電力利得(斜度:a)が同じ又はほぼ同じになるため、ドハティ増幅器30の全体が線形のアンプになる。また、
図13の下図に示すように入力信号の電力が最大許容入力電力Pmaxを超えるオーバーフローがないため、更にエラーベクトル振幅(EVM)の発生を低減することができる。
【0061】
〔第4電力制御例〕
図14は、実施形態に係る無線送信装置の電力制御部20におけるアンプ入力電力の制御の一例(第4電力制御例)を示すブロック図である。
図15は、第4電力制御例におけるドハティ増幅器30の入出力特性と電力制御後の入力信号の電力分布との関係の一例を示す説明図である。
図16は、第4電力制御例を実施した場合のドハティ増幅器30の実効的な入出力特性とドハティ増幅器30の出力信号の電力分布との関係の一例を示す説明図である。
【0062】
第4電力制御例では、ドハティ増幅器30で増幅する前の入力信号の電力分布が、
図15の下図に示す非線形の中間入力電力領域P1~P2を避けた電力分布になるように、入力電力を制御している。この中間入力電力領域(P1~P2)を避けた電力分布は、入力信号の電力分布のうち非線形の中間入力電力領域(P1~P2)と線形の高入力電力領域(P2~Pmax)との境界に位置する第2入力電力閾値(以下「第2閾値」という。)P2よりも小さい電力部分を、中間入力電力領域(P1~P2)の電力幅分だけ低電力側にシフトした電力分布である。
【0063】
図14において、電力制御部20に入力信号が入力されると、その入力信号の電力(入力電力)Pinが計算され(S231)、計算した入力電力Pinと第2閾値P2が比較される(S232)。入力電力Pinが第2閾値P2よりも小さい場合は、入力電力Pinを中間入力電力領域(P1~P2)の電力幅分だけ低電力側にシフトするために、新入力電力Pin’=Pin-(P2-P1)が計算され(S233)、計算した新入力電力Pin’と、入力信号から取得した角度情報(S234)とを用いて複素信号が合成され(S235)、新入力信号として出力される。一方、上記S232の比較において、入力電力Pinが第2閾値P2以上の場合は、電力制御部20に入力された入力信号がそのまま出力される(S236)。
【0064】
図14の電力制御部20で電力制御された
図15の下図の電力分布を有する入力信号が、
図15の上図に示す入出力特性を有するドハティ増幅器30に入力されると、非線形の中間入力電力領域(P1~P2)で増幅される入力信号がなくなるか又は極めて少なくなり、
図16の下図に示すように電力制御部20に入力された入力信号の電力分布とほぼ同じプロファイルを有する非線形歪みが抑制された出力信号が、ドハティ増幅器30から出力される。その結果、エラーベクトル振幅(EVM)の発生を低減することができる。ドハティ増幅器30の実効的な入出力特性は、
図16の上図に示すように、非線形の中間入力電力領域P1~P2に対応する部分が抑圧され、線形の低入力電力領域(0~P1)の電力利得(斜度:a)の部分と、線形の高入力電力領域(P2~Pmax)の電力利得(斜度:b(>a))の部分とを含む特性になる。
【0065】
特に、第4電力制御の場合は、
図16の下図に示すように入力信号の電力が最大電力点(最大許容入力電力)Pmaxを超えるオーバーフローがないため、更にエラーベクトル振幅(EVM)の発生を低減することができる。
【0066】
図17は、実施形態に係るドハティ増幅器30を含む無線送信装置(送信機)10を備える移動通信システムの基地局60の一構成例を示すブロック図である。
図17において、基地局60は、アンテナ61と無線部62とデータ処理部63とNW(ネットワーク)通信部64と制御部65と記憶部66とを備えている。アンテナ61は、送受共用器(DUP:DUPlexer)等を介して無線部62に接続されている。
【0067】
無線部62は、ローノイズ高周波増幅器及び周波数変換器を有する受信機と、送信電力増幅器及び周波数変換器を有する送信機(無線送信機)とを有し、アンテナ61を介して無線信号の送信及び受信を行う。この無線部62を構成する送信機は、前述の電力制御部20と、送信電力増幅器としての前述のドハティ増幅器30とを備える。
【0068】
データ処理部63は、無線部62から受けた受信信号の復調及び復号化の処理を行って受信データを復元したり、送信データの符号化及び変調を行って送信信号を生成して無線部62に渡したりする。なお、前述の電力制御部20は、データ処理部63の最終段に設けてもよい。
【0069】
NW通信部64は、所定のインターフェースを介して移動体通信網のコアネットワークと通信し、受信したデータをコアネットワークに送信したり、送信対象のデータや制御情報をコアネットワークから受信したりする。
【0070】
制御部65は、予め組み込まれた制御プログラムを実行することにより、制御情報に基づいて、無線部62及びデータ処理部63を制御する。記憶部66は、受信データ、送信データ、制御プログラム、制御情報などを記憶する。
【0071】
なお、
図17の基地局60は、アンテナ61と無線部62とを有するRRH(遠隔無線ヘッド)と、データ処理部63とNW通信部64とを有するBBU(ベースバンドユニット)とをそれぞれ別装置として備え、RRHとBBUを光ファイバー回線等の高速通信インファーフェースで接続した構成であってもよい。
【0072】
また、前述の無線送信装置10は、移動通信システムの基地局と通信する端末装置におけるアップリンクの信号を送信する送信機に適用してもよい。移動通信システムは、本実施形態に係る基地局及び端末装置の少なくとも一方を備えてもよい。
【0073】
また、前述の無線送信装置10は、固定無線アクセス(FWA)システムの基地局と通信する端末装置におけるアップリンクの信号を送信する送信機に適用してもよい。固定無線アクセス(FWA)システムは、本実施形態に係る基地局及び端末装置の少なくとも一方を備えてもよい。
【0074】
また、基地局60の無線送信装置(送信機)10において、電力制御部20は、例えば、BBU等で送信データに基づいて生成されたデジタル変調信号(例えば、OFDM信号又はSC-FDMA信号)が入力され、ドハティ増幅器30により増幅される電力増幅前の送信信号の電力分布が、前記非線形の中間入力電力領域を避けた電力分布になるように、前記デジタル変調信号を制御して出力するように構成してもよい。この場合、無線送信装置(送信機)10は、電力制御部20から出力されたデジタル変調信号をアナログ変調信号に変換するDA変換部と、高周波のキャリア信号を発生するキャリア信号発生部と、キャリア信号発生部からキャリア信号が入力され、DA変換部から出力されたアナログ変調信号を高周波の送信信号に変換する周波数変換部とを備えてもよい。
【0075】
また、基地局60の無線送信装置(送信機)10は、BBU等で送信データに基づいて生成されたデジタル変調信号(例えば、OFDM信号又はSC-FDMA信号)をアナログ変調信号に変換するDA変換部と、高周波のキャリア信号を発生するキャリア信号発生部と、キャリア信号発生部からキャリア信号が入力され、DA変換部から出力されたアナログ変調信号を高周波の送信信号に変換する周波数変換部とを備えてもよい。この場合、電力制御部20は、前記周波数変換部から高周波の送信信号が入力され、ドハティ増幅器30により増幅される電力増幅前の送信信号の電力分布が、前記非線形の中間入力電力領域を避けた電力分布になるように、前記高周波の送信信号を制御して出力してもよい。
【0076】
次に、前述の第1電力制御例~第3電力制御例について、デジタル変調信号(OFDM信号又はSC-FDMA信号)をドハティ増幅器30で電力増幅したときの入力信号及び出力信号の電力分布並びに電力増幅後の信号を復調したときの信号点の再現性を評価したコンピュータ・シミュレーションの結果について説明する。以下のシミュレーションの結果では、本実施形態の電力制御を行わない場合の結果についても、比較例として示した。コンピュータ・シミュレーションには市販の数値解析ソフトウェア(MathWorks Inc.製のMATLAB(登録商標))を用い、変調方式は16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)とした。
【0077】
図18(a)及び(b)はそれぞれ、前述の第1電力制御例及び比較例それぞれにおけるOFDM信号の入力信号及び出力信号の電力分布のシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
図18(a)に示すように、第1電力制御例で電力を制御した後のOFDM信号をドハティ増幅器30に入力して増幅した場合、非線形歪みが抑制されたOFDM信号を出力することができる。これに対し、
図18(b)に示すように、電力制御を行わずにOFDM信号をドハティ増幅器30に入力して増幅した比較例では、前述の非線形の中間入力電力領域P1~P2に対応する位置で出力電圧に歪みが発生する。
【0078】
図19(a)及び(b)はそれぞれ、前述の第1電力制御例及び比較例それぞれにおける復調後のOFDM信号の信号点配置のシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
図19(a)に示すように、第1電力制御例で電力を制御した後のOFDM信号をドハティ増幅器30に入力して増幅した場合、OFDM信号の信号点の位置の変動(バラツキ)が小さい。これに対し、
図19(b)に示すように、電力制御を行わずにOFDM信号をドハティ増幅器30に入力して増幅した比較例では、OFDM信号の信号点の位置の変動(バラツキ)が大きい。
【0079】
図20(a)及び(b)はそれぞれ、前述の第1電力制御例及び比較例それぞれにおけるSC-FDMA信号の入力信号及び出力信号の電力分布のシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
図20(a)に示すように、第1電力制御例で電力を制御した後のSC-FDMA信号をドハティ増幅器30に入力して増幅した場合、非線形歪みが抑制されたSC-FDMA信号を出力することができる。これに対し、
図20(b)に示すように、電力制御を行わずにSC-FDMA信号をドハティ増幅器30に入力して増幅した比較例では、前述の非線形の中間入力電力領域P1~P2に対応する位置で出力電圧に歪みが発生する。
【0080】
図21(a)及び(b)はそれぞれ、前述の第1電力制御例及び比較例それぞれにおける復調後のSC-FDMA信号の信号点配置のシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
図21(a)に示すように、第1電力制御例で電力を制御した後のSC-FDMA信号をドハティ増幅器30に入力して増幅した場合、SC-FDMA信号の信号点の位置の変動(バラツキ)が小さい。これに対し、
図21(b)に示すように、電力制御を行わずにSC-FDMA信号をドハティ増幅器30に入力して増幅した比較例では、SC-FDMA信号の信号点の位置の変動(バラツキ)が大きい。
【0081】
図22(a)及び(b)はそれぞれ、前述の第2電力制御例及び比較例それぞれにおけるOFDM信号の入力信号及び出力信号の電力分布のシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
図22(a)に示すように、第2電力制御例で電力を制御した後のOFDM信号をドハティ増幅器30に入力して増幅した場合、非線形歪みが抑制されたOFDM信号を出力することができる。これに対し、
図22(b)に示すように、電力制御を行わずにOFDM信号をドハティ増幅器30に入力して増幅した比較例では、前述の非線形の中間入力電力領域P1~P2に対応する位置で出力電圧に歪みが発生する。
【0082】
図23(a)及び(b)はそれぞれ、前述の第2電力制御例及び比較例それぞれにおける復調後のOFDM信号の信号点配置のシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
図23(a)に示すように、第2電力制御例で電力を制御した後のOFDM信号をドハティ増幅器30に入力して増幅した場合、OFDM信号の信号点の位置の変動(バラツキ)が小さい。これに対し、
図23(b)に示すように、電力制御を行わずにOFDM信号をドハティ増幅器30に入力して増幅した比較例では、OFDM信号の信号点の位置の変動(バラツキ)が大きい。
【0083】
図24(a)及び(b)はそれぞれ、前述の第2電力制御例及び比較例それぞれにおけるSC-FDMA信号の入力信号及び出力信号の電力分布のシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
図24(a)に示すように、第2電力制御例で電力を制御した後のSC-FDMA信号をドハティ増幅器30に入力して増幅した場合、非線形歪みが抑制されたSC-FDMA信号を出力することができる。これに対し、
図24(b)に示すように、電力制御を行わずにSC-FDMA信号をドハティ増幅器30に入力して増幅した比較例では、前述の非線形の中間入力電力領域P1~P2に対応する位置で出力電圧に歪みが発生する。
【0084】
図25(a)及び(b)はそれぞれ、前述の第2電力制御例及び比較例それぞれにおける復調後のSC-FDMA信号の信号点配置のシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
図25(a)に示すように、第2電力制御例で電力を制御した後のSC-FDMA信号をドハティ増幅器30に入力して増幅した場合、SC-FDMA信号の信号点の位置の変動(バラツキ)が小さい。これに対し、
図25(b)に示すように、電力制御を行わずにSC-FDMA信号をドハティ増幅器30に入力して増幅した比較例では、SC-FDMA信号の信号点の位置の変動(バラツキ)が大きい。
【0085】
図26(a)及び(b)はそれぞれ、前述の第3電力制御例及び比較例それぞれにおけるOFDM信号の入力信号及び出力信号の電力分布のシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
図26(a)に示すように、第3電力制御例で電力を制御した後のOFDM信号をドハティ増幅器30に入力して増幅した場合、非線形歪みが抑制されたOFDM信号を出力することができる。これに対し、
図26(b)に示すように、電力制御を行わずにOFDM信号をドハティ増幅器30に入力して増幅した比較例では、前述の非線形の中間入力電力領域P1~P2に対応する位置で出力電圧に歪みが発生する。
【0086】
図27(a)及び(b)はそれぞれ、前述の第3電力制御例及び比較例それぞれにおける復調後のOFDM信号の信号点配置のシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
図27(a)に示すように、第3電力制御例で電力を制御した後のOFDM信号をドハティ増幅器30に入力して増幅した場合、OFDM信号の信号点の位置の変動(バラツキ)が小さい。これに対し、
図27(b)に示すように、電力制御を行わずにOFDM信号をドハティ増幅器30に入力して増幅した比較例では、OFDM信号の信号点の位置の変動(バラツキ)が大きい。
【0087】
図28(a)及び(b)はそれぞれ、前述の第3電力制御例及び比較例それぞれにおけるSC-FDMA信号の入力信号及び出力信号の電力分布のシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
図28(a)に示すように、第3電力制御例で電力を制御した後のSC-FDMA信号をドハティ増幅器30に入力して増幅した場合、非線形歪みが抑制されたSC-FDMA信号を出力することができる。これに対し、
図28(b)に示すように、電力制御を行わずにSC-FDMA信号をドハティ増幅器30に入力して増幅した比較例では、前述の非線形の中間入力電力領域P1~P2に対応する位置で出力電圧に歪みが発生する。
【0088】
図29(a)及び(b)はそれぞれ、前述の第3電力制御例及び比較例それぞれにおける復調後のSC-FDMA信号の信号点配置のシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
図29(a)に示すように、第3電力制御例で電力を制御した後のSC-FDMA信号をドハティ増幅器30に入力して増幅した場合、SC-FDMA信号の信号点の位置の変動(バラツキ)が小さい。これに対し、
図29(b)に示すように、電力制御を行わずにSC-FDMA信号をドハティ増幅器30に入力して増幅した比較例では、SC-FDMA信号の信号点の位置の変動(バラツキ)が大きい。
【0089】
以上、本実施形態によれば、送信信号を増幅するドハティ増幅器30が、電力利得が部分的に低下した中間入力電力領域を含む入出力特性を有する場合に、中間入力電力領域に起因した非線形歪みの発生を抑制することができる。
【0090】
なお、本明細書で説明された処理工程並びに無線送信装置、無線通信装置、基地局、端末装置、移動通信システム、固定無線アクセス(FWA)システムなどの構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0091】
ハードウェア実装については、実体(例えば、各種無線通信装置、送信機、Node B、端末、UE、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0092】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、上記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0093】
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であればよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
【0094】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。
【符号の説明】
【0095】
10 :無線送信装置
20 :電力制御部
30 :ドハティ増幅器(電力増幅器)
40 :アンテナ
50 :送信信号生成部
60 :基地局
61 :アンテナ
62 :無線部
63 :データ処理部
64 :NW通信部
65 :制御部
66 :記憶部