(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】HAPSのマルチフィーダリンクにおけるアンテナ切り替え時の処理遅延における干渉低減性能低下の緩和
(51)【国際特許分類】
H04B 7/06 20060101AFI20221107BHJP
H04B 7/15 20060101ALI20221107BHJP
H04W 84/06 20090101ALI20221107BHJP
H04W 16/28 20090101ALI20221107BHJP
H04B 7/0456 20170101ALI20221107BHJP
【FI】
H04B7/06 950
H04B7/15
H04W84/06
H04W16/28
H04B7/0456 110
(21)【出願番号】P 2020125096
(22)【出願日】2020-07-22
【審査請求日】2022-03-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】318002806
【氏名又は名称】HAPSモバイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】藤井 隆史
【審査官】齊藤 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-036100(JP,A)
【文献】特開2020-080459(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0199428(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/06
H04B 7/15
H04W 84/06
H04W 16/28
H04B 7/0456
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末装置の無線通信を中継する中継通信局と複数のフィーダリンク用アンテナとを有する空中滞在型の通信中継装置と、互いに時間同期され前記空中滞在型の通信中継装置の前記中継通信局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信する複数のゲートウェイ局と、を備えるシステムであって、
前記複数のフィーダリンク用アンテナと前記複数のゲートウェイ局との複数の組み合わせパターンのそれぞれについてフィーダリンク間の干渉を抑圧するためのウェイトを計算し
、前記複数の組み合わせパターンに対する複数のウェイトの計算結果を記憶する手段と、
前記空中滞在型の通信中継装置の回転及び移動の少なくとも一方により前記複数のフィーダリンク用アンテナと前記複数のゲートウェイ局との組み合わせが変化したとき、前記複数の組み合わせパターン
に対する複数のウェイトの計算結果から、前記変化後の組み合わせに対応する前記組み合わせパターンのウェイトの計算結果を選択する手段と、
前記選択した組み合わせパターンのウェイトの計算結果に基づいて、前記中継通信局と前記複数のゲートウェイ局との間で中継信号を送受信するときのフィーダリンク間の干渉を抑圧する手段と、を備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1のシステムにおいて、
前記複数のフィーダリンク用アンテナそれぞれの指向性ビームの角度を変化させてフィーダリンクの通信先のゲートウェイ局を追尾する手段と、
前記複数のフィーダリンク用アンテナの少なくとも一つの前記指向性ビームの角度の変化量が所定の閾値よりも大きくなったときに、前記複数のフィーダリンク用アンテナそれぞれが通信する前記フィーダリンクの通信先のゲートウェイ局を切り替える手段と、を備えることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1又は2のシステムにおいて、
前記複数の組み合わせパターンのそれぞれについて、前記複数のフィーダリンク用アンテナと前記複数のゲートウェイ局との間で送受信される複数のパイロット信号の受信結果に基づいて、前記複数のフィーダリンク用アンテナと前記複数のゲートウェイ局との間の伝搬路応答を推定し、前記複数の伝搬路応答に基づいて前記複数のゲートウェイ局それぞれに対応する複数のウェイトを計算することを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかのシステムにおいて、
前記選択した組み合わせパターンのウェイトの計算結果に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれから前記中継通信局に中継信号を送信する複数のフォワードリンクにおけるフィーダリンク間の干渉を抑圧することを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかのシステムにおいて、
前記選択した組み合わせパターンのウェイトの計算結果に基づいて、前記中継通信局から前記複数のゲートウェイ局それぞれに中継信号を送信する複数のリバースリンクにおけるフィーダリンク間の干渉を抑圧することを特徴とするシステム。
【請求項6】
空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継する中継通信局であって、
互いに時間同期された複数のゲートウェイ局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信するフィーダリンク通信部と、
前記複数のゲートウェイ局との間に形成する複数のフィーダリンク間の干渉を抑圧する干渉抑圧部と、を備え、
前記干渉抑圧部は、
前記複数のフィーダリンク用アンテナと前記複数のゲートウェイ局との複数の組み合わせパターンのそれぞれについてフィーダリンク間の干渉を抑圧するためのウェイトを計算し
、前記複数の組み合わせパターンに対する複数のウェイトの計算結果を記憶し、
前記空中滞在型の通信中継装置の回転及び移動の少なくとも一方により前記複数のフィーダリンク用アンテナと前記複数のゲートウェイ局との組み合わせが変化したとき、前記複数の組み合わせパターン
に対する複数のウェイトの計算結果から、前記変化後の組み合わせに対応する前記組み合わせパターンのウェイトの計算結果を選択し、
前記選択した組み合わせパターンのウェイトの計算結果に基づいて、前記中継通信局と前記複数のゲートウェイ局との間で中継信号を送受信するときのフィーダリンク間の干渉を抑圧する、ことを特徴とする中継通信局。
【請求項7】
請求項6の中継通信局において、
前記複数のフィーダリンク用アンテナそれぞれの指向性ビームの角度を変化させてフィーダリンクの通信先のゲートウェイ局を追尾する手段と、
前記複数のフィーダリンク用アンテナの少なくとも一つの前記指向性ビームの角度の変化量が所定の閾値よりも大きくなったときに、前記複数のフィーダリンク用アンテナそれぞれが通信する前記フィーダリンクの通信先のゲートウェイ局を切り替える手段と、を備えることを特徴とする中継通信局。
【請求項8】
請求項6又は7の中継通信局において、
前記干渉抑圧部は、前記複数の組み合わせパターンのそれぞれについて、前記複数のフィーダリンク用アンテナと前記複数のゲートウェイ局との間で送受信される複数のパイロット信号の受信結果に基づいて、前記複数のフィーダリンク用アンテナと前記複数のゲートウェイ局との間の伝搬路応答を推定し、前記複数の伝搬路応答に基づいて前記複数のゲートウェイ局それぞれに対応する複数のウェイトを計算することを特徴とする中継通信局。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれかの中継通信局において、
前記干渉抑圧部は、前記選択した組み合わせパターンのウェイトの計算結果に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれから前記中継通信局に中継信号を送信する複数のフォワードリンクにおけるフィーダリンク間の干渉を抑圧することを特徴とする中継通信局。
【請求項10】
請求項6乃至9のいずれかの中継通信局において、
前記干渉抑圧部は、前記選択した組み合わせパターンのウェイトの計算結果に基づいて、前記中継通信局から前記複数のゲートウェイ局それぞれに中継信号を送信する複数のリバースリンクにおけるフィーダリンク間の干渉を抑圧することを特徴とする中継通信局。
【請求項11】
請求項6乃至10のいずれかの中継通信局を有することを特徴とする空中滞在型の通信中継装置。
【請求項12】
空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継する中継通信局と、同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信する互いに時間同期された複数のゲートウェイ局との間におけるフィーダリンクの干渉抑圧方法であって、
前記空中滞在型の通信中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナと前記複数のゲートウェイ局との複数の組み合わせパターンのそれぞれについてフィーダリンク間の干渉を抑圧するためのウェイトを計算し
、前記複数の組み合わせパターンに対する複数のウェイトの計算結果を記憶することと、
前記空中滞在型の通信中継装置の回転及び移動の少なくとも一方により前記複数のフィーダリンク用アンテナと前記複数のゲートウェイ局との組み合わせが変化したとき、前記複数の組み合わせパターン
に対する複数のウェイトの計算結果から、前記変化後の組み合わせに対応する前記組み合わせパターンのウェイトの計算結果を選択することと、
前記選択した組み合わせパターンのウェイトの計算結果に基づいて、前記中継通信局と前記複数のゲートウェイ局との間で中継信号を送受信するときのフィーダリンク間の干渉を抑圧することと、を含むことを特徴とする干渉抑圧方法。
【請求項13】
空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継する中継通信局に設けられたコンピュータ又はプロセッサで実行されるプログラムであって、
前記空中滞在型の通信中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナ
と複数のゲートウェイ局との複数の組み合わせパターンのそれぞれについてフィーダリンク間の干渉を抑圧するためのウェイトを計算し
、前記複数の組み合わせパターンに対する複数のウェイトの計算結果を記憶するためのプログラムコードと、
前記空中滞在型の通信中継装置の回転及び移動の少なくとも一方により前記複数のフィーダリンク用アンテナと前記複数のゲートウェイ局との組み合わせが変化したとき、前記複数の組み合わせパターン
に対する複数のウェイトの計算結果から、前記変化後の組み合わせに対応する前記組み合わせパターンのウェイトの計算結果を選択するためのプログラムコードと、
前記選択した組み合わせパターンのウェイトの計算結果に基づいて、前記中継通信局と前記複数のゲートウェイ局との間で中継信号を送受信するときのフィーダリンク間の干渉を抑圧するためのプログラムコードと、を含むことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元化ネットワークの構築に適したHAPS等の空中浮揚型の無線中継装置のマルチフィーダリンクにおけるアンテナ切り替え時の処理遅延における干渉低減性能低下の緩和に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空中に浮揚して滞在可能な高高度プラットフォーム局(HAPS)(「高高度疑似衛星」ともいう。)等の通信中継装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この空中浮揚型の通信中継装置における通信回線は、その通信中継装置と移動通信網側のゲートウェイ(GW)局との間のフィーダリンクと、通信中継装置と端末装置との間のサービスリンクとで構成される。
【0003】
本出願人は、空中浮揚型の通信中継装置(以下「上空中継装置」という。)のフィーダリンクの周波数有効利用の向上を図ることができる通信システムを提案した(特許文献2参照)。この通信システムは、上空中継装置との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信する空間分割多重通信を行う複数のゲートウェイ局を備える。この通信システムによれば、上空中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナと複数のゲートウェイ局との位置関係に基づいてウェイトを計算し、計算したウェイトを用いることにより上空中継装置と複数のゲートウェイ局との間のフィーダリンク通信において複数のフィーダリンク間の干渉を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2016/0046387号明細書
【文献】特開2020-036100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は上記通信システムにおけるフィーダリンク間の干渉低減性能について鋭気研究した結果、次のような更に改善すべき課題があることがわかった。すなわち、上空で回転及び移動する上空中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナと複数のゲートウェイ局のアンテナとの組み合わせが変化したとき、ウェイトを用いた複数のフィーダリンク間の干渉低減性能が低下するおそれがあることがわかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るシステムは、端末装置の無線通信を中継する中継通信局と複数のフィーダリンク用アンテナとを有する空中滞在型の通信中継装置と、互いに時間同期され前記空中滞在型の通信中継装置の前記中継通信局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信する複数のゲートウェイ局と、を備えるシステムである。このシステムは、前記複数のフィーダリンク用アンテナと前記複数のゲートウェイ局との複数の組み合わせパターンのそれぞれについてフィーダリンク間の干渉を抑圧するためのウェイトを計算して記憶する手段と、前記空中滞在型の通信中継装置の回転及び移動の少なくとも一方により前記複数のフィーダリンク用アンテナと前記複数のゲートウェイ局との組み合わせが変化したとき、前記複数の組み合わせパターンのウェイトの計算結果から、前記変化後の組み合わせに対応する前記組み合わせパターンのウェイトの計算結果を選択する手段と、前記選択した組み合わせパターンのウェイトの計算結果に基づいて、前記中継通信局と前記複数のゲートウェイ局との間で中継信号を送受信するときのフィーダリンク間の干渉を抑圧する手段と、を備える。
【0007】
前記システムにおいて、前記複数のフィーダリンク用アンテナそれぞれの指向性ビームの角度を変化させてフィーダリンクの通信先のゲートウェイ局を追尾する手段と、前記複数のフィーダリンク用アンテナの少なくとも一つの前記指向性ビームの角度の変化量が所定の閾値よりも大きくなったときに、前記複数のフィーダリンク用アンテナそれぞれが通信する前記フィーダリンクの通信先のゲートウェイ局を切り替える手段と、を備えてもよい。
【0008】
前記システムにおいて、前記複数の組み合わせパターンのそれぞれについて、前記複数のフィーダリンク用アンテナと前記複数のゲートウェイ局との間で送受信される複数のパイロット信号の受信結果に基づいて、前記複数のフィーダリンク用アンテナと前記複数のゲートウェイ局との間の伝搬路応答を推定し、前記複数の伝搬路応答に基づいて前記複数のゲートウェイ局それぞれに対応する複数のウェイトを計算してもよい。
【0009】
前記システムにおいて、前記選択した組み合わせパターンのウェイトの計算結果に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれから前記中継通信局に中継信号を送信する複数のフォワードリンクにおけるフィーダリンク間の干渉を抑圧してもよい。
【0010】
前記システムにおいて、前記選択した組み合わせパターンのウェイトの計算結果に基づいて、前記中継通信局から前記複数のゲートウェイ局それぞれに中継信号を送信する複数のリバースリンクにおけるフィーダリンク間の干渉を抑圧してもよい。
【0011】
本発明の他の態様に係る中継通信局は、空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継する中継通信局である。この中継通信局は、互いに時間同期された複数のゲートウェイ局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信するフィーダリンク通信部と、前記複数のゲートウェイ局との間に形成する複数のフィーダリンク間の干渉を抑圧する干渉抑圧部と、を備える。前記干渉抑圧部は、前記複数のフィーダリンク用アンテナと前記複数のゲートウェイ局との複数の組み合わせパターンのそれぞれについてフィーダリンク間の干渉を抑圧するためのウェイトを計算して記憶し、前記空中滞在型の通信中継装置の回転及び移動の少なくとも一方により前記複数のフィーダリンク用アンテナと前記複数のゲートウェイ局との組み合わせが変化したとき、前記複数の組み合わせパターンのウェイトの計算結果から、前記変化後の組み合わせに対応する前記組み合わせパターンのウェイトの計算結果を選択し、前記選択した組み合わせパターンのウェイトの計算結果に基づいて、前記中継通信局と前記複数のゲートウェイ局との間で中継信号を送受信するときのフィーダリンク間の干渉を抑圧する。
【0012】
前記中継通信局において、前記複数のフィーダリンク用アンテナそれぞれの指向性ビームの角度を変化させてフィーダリンクの通信先のゲートウェイ局を追尾する手段と、前記複数のフィーダリンク用アンテナの少なくとも一つの前記指向性ビームの角度の変化量が所定の閾値よりも大きくなったときに、前記複数のフィーダリンク用アンテナそれぞれが通信する前記フィーダリンクの通信先のゲートウェイ局を切り替える手段と、を備えてもよい。
【0013】
前記中継通信局において、前記干渉抑圧部は、前記複数の組み合わせパターンのそれぞれについて、前記複数のフィーダリンク用アンテナと前記複数のゲートウェイ局との間で送受信される複数のパイロット信号の受信結果に基づいて、前記複数のフィーダリンク用アンテナと前記複数のゲートウェイ局との間の伝搬路応答を推定し、前記複数の伝搬路応答に基づいて前記複数のゲートウェイ局それぞれに対応する複数のウェイトを計算してもよい。
【0014】
前記中継通信局において、前記干渉抑圧部は、前記選択した組み合わせパターンのウェイトの計算結果に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれから前記中継通信局に中継信号を送信する複数のフォワードリンクにおけるフィーダリンク間の干渉を抑圧してもよい。
【0015】
前記中継通信局において、前記干渉抑圧部は、前記選択した組み合わせパターンのウェイトの計算結果に基づいて、前記中継通信局から前記複数のゲートウェイ局それぞれに中継信号を送信する複数のリバースリンクにおけるフィーダリンク間の干渉を抑圧してもよい。
【0016】
本発明の更に他の態様に係る空中滞在型の通信中継装置は、前記いずれかの中継通信局を有する。
【0017】
本発明の更に他の態様に係る干渉抑圧方法は、空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継する中継通信局と、同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信する互いに時間同期された複数のゲートウェイ局との間におけるフィーダリンクの干渉抑圧方法である。この干渉抑圧方法は、前記空中滞在型の通信中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナと前記複数のゲートウェイ局との複数の組み合わせパターンのそれぞれについてフィーダリンク間の干渉を抑圧するためのウェイトを計算して記憶することと、前記空中滞在型の通信中継装置の回転及び移動の少なくとも一方により前記複数のフィーダリンク用アンテナと前記複数のゲートウェイ局との組み合わせが変化したとき、前記複数の組み合わせパターンのウェイトの計算結果から、前記変化後の組み合わせに対応する前記組み合わせパターンのウェイトの計算結果を選択することと、前記選択した組み合わせパターンのウェイトの計算結果に基づいて、前記中継通信局と前記複数のゲートウェイ局との間で中継信号を送受信するときのフィーダリンク間の干渉を抑圧することと、を含む。
【0018】
本発明の更に他の態様に係るプログラムは、空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継する中継通信局に設けられたコンピュータ又はプロセッサで実行されるプログラムである。このプログラムは、前記空中滞在型の通信中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナと前記複数のゲートウェイ局との複数の組み合わせパターンのそれぞれについてフィーダリンク間の干渉を抑圧するためのウェイトを計算して記憶するためのプログラムコードと、前記空中滞在型の通信中継装置の回転及び移動の少なくとも一方により前記複数のフィーダリンク用アンテナと前記複数のゲートウェイ局との組み合わせが変化したとき、前記複数の組み合わせパターンのウェイトの計算結果から、前記変化後の組み合わせに対応する前記組み合わせパターンのウェイトの計算結果を選択するためのプログラムコードと、前記選択した組み合わせパターンのウェイトの計算結果に基づいて、前記中継通信局と前記複数のゲートウェイ局との間で中継信号を送受信するときのフィーダリンク間の干渉を抑圧するためのプログラムコードと、を含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、空中浮揚型の通信中継装置に搭載した複数のフィーダリンク用アンテナと複数のゲートウェイ局との組み合わせが変化したときに、変化後の組み合わせパターンに対応するウェイトを計算する必要がないため、ウェイト処理遅延によるマルチフィーダリンク間の干渉低減性能の低下を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る通信システムにおけるHAPSのセル構成の一例を示す説明図。
【
図2】(a)は実施形態に係る複数GWシステムの概略構成の一例を示す側面図。(b)はHAPSの複数のフィーダリンク用アンテナと複数のGW局との関係を上方から見た説明図。
【
図3】実施形態に係る複数のGW局のGWアンテナがHAPSを追尾する様子の一例を示す説明図。
【
図4】実施形態に係る複数のGW局のGWアンテナがHAPSを追尾する様子の他の例を示す説明図。
【
図5】実施形態に係るHAPSの複数のFLアンテナの指向性ビームの一例を示す説明図。
【
図6】実施形態に係るHAPSにおけるFLアンテナの指向性ビーム制御の一例を示す説明図。
【
図7】実施形態に係るHAPSにおけるFLアンテナの指向性ビーム制御の他の例を示す説明図。
【
図8】実施形態に係るHAPSにおけるFLアンテナの指向性ビーム制御の更に他の例を示す説明図。
【
図9】複数GWシステムにおけるGW局間(フィーダリンク間)のフォワードリンク干渉の一例の説明図。
【
図10】複数GWシステムにおけるGW局間(フィーダリンク間)のリバースリンク干渉の一例の説明図。
【
図11】ウェイトWを近似式で求めて適用したMIMO干渉キャンセラーの一例を示す説明図。
【
図12】実施形態に係る複数GWシステムのマルチフィーダリンクにおけるHAPS側(受信側)に設けたフォワードリンクの干渉キャンセラー部の概略構成の一例を示す説明図。
【
図13】ZF法によりウェイトWを求めて適用したMIMO干渉キャンセラーの一例を示す説明図。
【
図14】実施形態に係る複数GWシステムにおけるフィーダリンクの伝搬路応答Hの一例を示す説明図。
【
図15】実施形態に係る複数GWシステムにおける基準経路長の一例を示す説明図。
【
図16】
図15におけるGW局のアンテナとHAPSのFLアンテナとの間の経路長の一例を示す説明図。
【
図17】
図15におけるGW局のアンテナとHAPSのFLアンテナとの間の基準経路長を基準にした経路差の一例を示す説明図。
【
図18】各GW局から送信される上り回線の送信信号帯域におけるパイロット信号の一例を示す説明図。
【
図19】HAPSで受信された上り回線の受信信号帯域におけるパイロット信号の一例を示す説明図。
【
図20】伝搬路応答の導出に用いられるパイロット信号の一例を示す説明図。
【
図21】フィーダリンクの伝搬路応答の導出モデルの一例を示す説明図。
【
図22】(a)~(c)は実施形態に係る複数GWシステムにおけるHAPSの機体回転時のFLアンテナによるGW局の追尾及びFLアンテナとGW局との組み合わせを切り替えるアンテナ切り替えの一例を示す説明図。
【
図23】実施形態に係る複数GWシステムにおけるHAPSのFLアンテナとGW局との第1の組み合わせパターン(パターンA)及びそのパターンAにおけるウェイトの計算で定義される基準経路の一例を示す説明図。
【
図24】実施形態に係る複数GWシステムにおけるHAPSのFLアンテナとGW局との第2の組み合わせパターン(パターンB)及びそのパターンBにおけるウェイトの計算で定義される基準経路の一例を示す説明図。
【
図25】実施形態に係る複数GWシステムにおけるHAPSのFLアンテナとGW局との第3の組み合わせパターン(パターンC)及びそのパターンCにおけるウェイトの計算で定義される基準経路の一例を示す説明図。
【
図26】実施形態に係る複数GWシステムにおいてHAPSの機体回転中にアンテナ切り替えを行わない場合のマルチフィーダリンク間の干渉低減性能の時間変化の一例を示すグラフ。
【
図27】実施形態に係る複数GWシステムにおいてHAPSの機体回転中にアンテナ切り替えを行う場合のマルチフィーダリンク間の干渉低減性能の時間変化の一例を示すグラフ。
【
図28】実施形態に係る複数GWシステムのパターンAからパターンBへのアンテナ切り替え時におけるウェイト(W)テーブルの選択・切り替えの一例を示す説明図。
【
図29】実施形態に係るHAPSの中継通信局の主要構成の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る通信システムにおけるHAPS20のセル構成の一例を示す説明図である。本実施形態に係る通信システムは、多数の端末装置への同時接続や低遅延化などに対応する第5世代又はその後の世代の移動通信の3次元化ネットワークの実現に適する。また、本明細書に開示する通信システム、無線中継局、基地局、リピータ及び端末装置に適用可能な移動通信の標準規格は、第5世代の移動通信の標準規格、及び、第5世代以降の次々世代の移動通信の標準規格を含む。
【0022】
図1に示すように、通信システムは、複数の空中浮揚型の通信中継装置(無線中継装置)としての高高度プラットフォーム局(HAPS)(「高高度疑似衛星」、「成層圏プラットフォーム」ともいう。)20を備えている。HAPS20は、所定高度の空域に位置して、所定高度のセル形成目標空域に3次元セル(3次元エリア)を形成する。HAPS20は、自律制御又は外部から制御により地面又は海面から100[km]以下の高高度の空域(浮揚空域)に浮遊あるいは飛行して位置するように制御される浮揚体としての飛行船に、中継通信局21が搭載されたものである。
【0023】
HAPS20の位置する空域は、例えば、地上(又は海や湖などの水上)の高度が11[km]以上及び50[km]以下の成層圏の空域である。この空域は、気象条件が比較的安定している高度15[km]以上25[km]以下の空域であってもよく、特に高度がほぼ20[km]の空域であってもよい。
【0024】
本実施形態の通信システムにおける1又は2以上のHAPSで3次元セルを形成する目標の空域であるセル形成目標空域は、HAPS20が位置する空域と従来のマクロセル基地局等の基地局(例えばLTEのeNodeB)がカバーする地面近傍のセル形成領域との間に位置する、所定高度範囲(例えば、50[m]以上1000[m]以下の高度範囲)の空域である。
【0025】
なお、本実施形態の3次元セルが形成されるセル形成目標空域は、海、川又は湖の上空であってもよい。また、HAPS20で形成する3次元セルは、地上又は海上に位置する端末装置61との間でも通信できるよう地面又は海面に達するように形成してもよい。
【0026】
HAPS20の中継通信局はそれぞれ、サービスリンク用アンテナ(以下「SLアンテナ」という。)215により、移動局である端末装置61と無線通信するための複数のビームを地面に向けて形成する。端末装置61は、遠隔操縦可能な小型のヘリコプター等の航空機であるドローンに組み込まれた通信端末モジュールでもよいし、飛行機の中でユーザが使用するユーザ装置であってもよい。セル形成目標空域においてビームが通過する領域が3次元セルである。セル形成目標空域において互いに隣り合う複数のビームは部分的に重なってもよい。
【0027】
HAPS20の中継通信局21はそれぞれ、例えば、地上(又は海上)側のコアネットワークに接続された中継局としてのゲートウェイ局(「フィーダ局」ともいう。)70と無線通信する基地局、又は、地上(又は海上)側の基地局に接続された中継局としてのフィーダ局(リピータ親機)70と無線通信するリピータ子機である。
【0028】
HAPS20の中継通信局21は、フィーダリンク用アンテナ(以下「FLアンテナ」という。)211により無線通信可能な地上又は海上に設置されたフィーダ局70を介して、移動通信網80のコアネットワークに接続されている。HAPS20とフィーダ局70との間のフィーダリンクの通信は、マイクロ波又はミリ波などの電波による無線通信で行ってもよいし、レーザ光などを用いた光通信で行ってもよい。
【0029】
HAPS20はそれぞれ、内部に組み込まれたコンピュータ等で構成された制御部が制御プログラムを実行することにより、自身の浮揚移動(飛行)や中継通信局21での処理を自律制御してもよい。例えば、HAPS20はそれぞれ、自身の現在位置情報(例えばGPS位置情報)、予め記憶した位置制御情報(例えば、飛行スケジュール情報)、周辺に位置する他のHAPSの位置情報などを取得し、それらの情報に基づいて浮揚移動(飛行)や中継通信局21での処理を自律制御してもよい。
【0030】
また、HAPS20それぞれの浮揚移動(飛行)や中継通信局21での処理は、移動通信網の通信センター等に設けられた管理装置としての管理装置(「遠隔制御装置」ともいう。)によって制御できるようにしてもよい。管理装置は、例えば、PCなどのコンピュータ装置やサーバ等で構成することができる。この場合、HAPS20は、管理装置からの制御情報を受信したり管理装置に監視情報などの各種情報を送信したりできるように制御用通信端末装置(例えば、移動通信モジュール)が組み込まれ、管理装置8ら識別できるように端末識別情報(例えば、IPアドレス、電話番号など)が割り当てられるようにしてもよい。制御用通信端末装置の識別には通信インターフェースのMACアドレスを用いてもよい。
【0031】
また、HAPS20はそれぞれ、自身又は周辺のHAPSの浮揚移動(飛行)や中継通信局21での処理に関する情報、HAPS20の状態に関する情報や各種センサなどで取得した観測データなどの監視情報を、管理装置等の所定の送信先に送信するようにしてもよい。制御情報は、HAPSの目標飛行ルート情報を含んでもよい。監視情報は、HAPS20の現在位置、飛行ルート履歴情報、対気速度、対地速度及び推進方向、HAPS20の周辺の気流の風速及び風向、並びに、HAPS20の周辺の気圧及び気温の少なくとも一つの情報を含んでもよい。
【0032】
中継通信局21と端末装置61との無線通信の上りリンク及び下りリンクの複信方式は、特定の方式に限定されず、例えば、時分割複信(Time Division Duplex:TDD)方式でもよいし、周波数分割複信(Frequency Division Duplex:FDD)方式でもよい。また、中継通信局21と端末装置61との無線通信のアクセス方式は、特定の方式に限定されず、例えば、FDMA(Frequency Division Multiple Access)方式、TDMA(Time Division Multiple Access)方式、CDMA(Code Division Multiple Access)方式、又は、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)であってもよい。また、前記無線通信には、ダイバーシティ・コーディング、送信ビームフォーミング、空間分割多重化(SDM:Spatial Division Multiplexing)等の機能を有し、送受信両方で複数のアンテナを同時に利用することにより、単位周波数当たりの伝送容量を増やすことができるMIMO(多入力多出力:Multi-Input and Multi-Output)技術を用いてもよい。また、前記MIMO技術は、1つの基地局が1つの端末装置と同一時刻・同一周波数で複数の信号を送信するSU-MIMO(Single-User MIMO)技術でもよいし、1つの基地局が複数の異なる端末装置に同一時刻・同一周波数で信号を送信又は複数の異なる基地局が1つの端末装置に同一時刻・同一周波数で信号を送信するMU-MIMO(Multi-User MIMO)技術であってもよい。
【0033】
なお、以下の実施形態では、端末装置61と無線通信する中継通信局21を有する通信中継装置が、無人飛行船タイプのHAPS20の場合について図示して説明するが、通信中継装置はソーラープレーンタイプのHAPSであってもよい。また、以下の実施形態は、HAPS以外の他の空中浮揚型の通信中継装置にも同様に適用できる。
【0034】
また、HAPS20とフィーダ局としてのゲートウェイ局(以下「GW局」と略す。)70を介した基地局90との間のリンクを「フィーダリンク」といい、HAPS10と端末装置61の間のリンクを「サービスリンク」という。特に、HAPS20とGW局70との間の区間を「フィーダリンクの無線区間」という。また、GW局70からHAPS20を経由して端末装置61に向かう通信のダウンリンクを「フォワードリンク」といい、端末装置61からHAPS20を経由してGW局70に向かう通信のアップリンクを「リバースリンク」ともいう。
【0035】
図1において、通信中継装置は無人飛行船タイプのHAPS20であるが、ソーラープレーンタイプのHAPSあってもよい。また、図示の例において、HAPS20の高度が約20kmの成層圏に位置し、HAPS20が複数のセル200C(1)~200C(7)を形成し、その複数セル(7セル)構成のセル200C(1)~200C(7)のフットプリント200F(1)~200F(7)からなるサービスエリア20Aの直径は100~200kmであるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
図1において、成層圏に位置するHAPS20を用いた地上(又は水上)の端末装置61と直接通信する通信サービスは、サービスエリアの拡大、災害時の通信手段として非常に魅力的である。HAPS20の通信回線はGW局70とHAPS20との間を結ぶフィーダリンクFLと、HAPS20と端末装置61との間を結ぶサービスリンクSLから成る。サービスリンクの通信容量はその中継周波数であるフィーダリンクの通信容量で決まることから、フィーダリンクの周波数利用効率を高める必要がある。特に
図1に示すようにサービスリンクが多セル構成になった場合はフィーダリンクの通信容量が不足しやすくなるため、フィーダリンクの周波数有効利用技術が不可欠である。しかしながら、HAPS20とGW局70を一対一で構成した場合、フィーダリンクの周波数利用効率を高めることが難しい。
【0037】
そこで、本実施形態では、HAPS20との間の周波数分割複信(FDD)方式のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信する複数のGW局を備え、一つのHAPS20と複数のGW局との間に形成したマルチフィーダリンクにおいて空間分割多重通信を行う複数ゲートウェイシステム(以下「複数GWシステム」ともいう。)を構築している。この複数GWシステムでは、複数のフィーダリンク間の干渉を除去することにより、設置するGW局の数の分だけ周波数利用効率を向上できる。
【0038】
なお、以下の実施形態では、HAPS20と複数のGW局との間の空間分割多重通信をフィーダリンクのフォワードリンクのみで行う場合について説明するが、当該空間分割多重通信は、フィーダリンクのリバースリンクのみで行ってもよいし、フォワードリンクとリバースリンクの両方で行うようにしてもよい。
【0039】
図2(a)は実施形態に係る複数GWシステムの概略構成の一例を示す側面図であり、
図2(b)はHAPS20の複数のFLアンテナ211(1)~211(3)と複数のGW局70(1)~70(3)との関係を上方から見た説明図である。図示の例では、FLアンテナの数(N)及びGW局の数(N)はそれぞれ同数(図示の例では3)であり、同数のFLアンテナ211(1)~211(3)及びGW局70(1)~70(3)を互いに1対1で対応させて設けている。また、FLアンテナ211及びGW局70の組数は2組でもよいし、4組以上であってもよい。また、図示の例では複数のGW局70は、HAPS20からの距離及びGW局間の間隔が互いに等しくなるように配置されているが、当該距離及び当該間隔の少なくとも一方は互いに異ならせてもよい。各GW局70は、HAPS20の各FLアンテナ211(「HAPS局アンテナ」ともいう。)の受信する複素振幅が無相関となるように配置する。また、GW局70(1)~70(3)のフィーダリンク用アンテナ(以下「GWアンテナ」という。)71(1)~71(3)は互いに直交する垂直偏波(V)及び水平偏波(H)の2偏波で送受信可能である。また、図示の例ではHAPS20の複数のFLアンテナ211(1)~211(3)は、HAPS20の中心からの距離及びFLアンテナ間の間隔が互いに等しくなるように配置されているが、当該距離及び当該間隔の少なくとも一方はFLアンテナ間で互いに異ならせてもよい。例えば、当該距離及び当該間隔はFLアンテナ間で互いに異ならせてもよい。
【0040】
また、
図3に示すように、複数のGW局70(1)~70(3)はそれぞれ、空中で移動するHAPS20を追尾するようにGWアンテナ71(1)~71(3)を制御するアンテナ制御部を備えてもよい。図中の破線のHAPS20’は移動前の位置を示し、図中の実線のHAPS20は移動後の位置を示している。GWアンテナ71(1)~71(3)それぞれがHAPS20を追尾することにより、パラボラアンテナなどの高い指向性を有するGWアンテナ71(1)~71(3)を用いた場合でも、HAPS20の移動によるフィーダリンクの通信品質の低下を抑制できる。
【0041】
また、
図4に示すように、複数のGW局70(1)~70(3)はそれぞれ、空中で旋回して移動(旋回飛行)するHAPS20を追尾するようにGWアンテナ71(1)~71(3)を制御するアンテナ制御部を備えてもよい。図中の破線のHAPS20’は旋回移動前の位置を示し、図中の実線のHAPS20は旋回移動後の位置を示している。GWアンテナ71(1)~71(3)それぞれがHAPS20を追尾することにより、パラボラアンテナなどの高い指向性を有するGWアンテナ71(1)~71(3)を用いた場合でも、HAPS20の旋回移動によるフィーダリンクの通信品質の低下を抑制できる。
【0042】
また、
図5に示すように、HAPS20の複数のFLアンテナ211(1)~211(3)はそれぞれ、GW局70(1)~70(3)に対応するアンテナ指向性ビーム(以下「指向性ビーム」又は「ビーム」という。)212(1)~212(3)を有し、HAPS20は、複数のFLアンテナ211(1)~211(3)の指向性ビーム212(1)~212(3)がそれぞれ対応するGW局70(1)~70(3)の方向に向くようにFLアンテナ211(1)~211(3)を制御するアンテナ制御部を備えてもよい。FLアンテナ211(1)~211(3)の指向性ビーム212(1)~212(3)はそれぞれ、例えば、自身に最も対向しているGW局70の方向を向き、その他のGW局には干渉を与えないように、すなわち、主ビームの利得と反対方向の利得の比(F/B)が十分に大きくなるように形成される。これにより、HAPS20が移動したり回転したりした場合もで、そのHAPS20の移動及び回転によるフィーダリンクの通信品質の低下を抑制できる。
【0043】
HAPS20のアンテナ制御部による複数のFLアンテナ211(1)~211(3)の指向性ビーム212(1)~212(3)の制御方式としては、ジンバル方式、電気方式(360度のビームフォーミング制御方式)、電気方式(角度限定のビームフォーミング制御方式+アンテナ切替)など、各種の方式を用いることができる。
【0044】
例えば、
図6のジンバル方式では、HAPS20の上下方向の軸(ヨーイング軸、Z軸)を中心とした回転(旋回)に応じて、その軸を中心として複数のFLアンテナ211(1)~211(3)の全体を機械的に回転駆動制御可能である。例えば、
図6において、HAPS20が左回転方向Rbに約45度回転すると、その回転方向とは逆の右回転方向Raに複数のFLアンテナ211(1)~211(3)の全体を機械的に回転駆動させる。
【0045】
各FLアンテナ211(1)~211(3)の角度調整の回転駆動制御は、HAPSの位置や姿勢の情報を参照して行ってもよいが、FLアンテナ211(1)~211(3)の受信レベルの値を参照して各FLアンテナ211(1)~211(3)の回転駆動制御を行ってもよい。例えば、各FLアンテナ211(1)~211(3)を小刻みに回転させ、各FLアンテナ211(1)~211(3)の受信レベルが最大となるような角度を見つけ、その角度に向くように各FLアンテナ211(1)~211(3)の回転駆動制御を行う。ここで、各FLアンテナ211(1)~211(3)の受信レベルそれぞれに閾値を設定し、その値を下回ったときに各FLアンテナ211(1)~211(3)を既定の角度回転させ、上記受信レベルが最大となる角度へのFLアンテナ211(1)~211(3)の回転駆動制御を行ってもよい。上記受信レベルの閾値は例えば予め実験により求め、上記既定の角度は例えば360度/FLアンテナ数(図示の例では120度)であってもよい。各また、FLアンテナ211(1)~211(3)から対応するGW局以外からの受信レベルを比較するためのモニタリングビームを作り、最大レベルとなるGW局を選択し、その方向に指向性ビームが向くように各FLアンテナ211(1)~211(3)を回転駆動制御してもよい。
【0046】
なお、
図6では各FLアンテナ211(1)~211(3)の水平方向の角度調整について示しているが、垂直方向についても同様に角度調整を行ってもよい。
【0047】
上記FLアンテナ211(1)~211(3)の回転駆動制御により、HAPS20が回転しても、FLアンテナ211(1)~211(3)の指向性ビーム212(1)~212(3)がそれぞれ対応するGW局70(1)~70(3)の方向に向くので、フィーダリンクの通信品質の低下を防止できる。
【0048】
また、
図7の電気方式(360度のビームフォーミング制御方式)では、FLアンテナとして、複数のアンテナ素子213aを円周形状に沿って配置したサーキュラーアレイアンテナ213を備える。そして、HAPS20の位置及び姿勢情報に基づいて、複数のアンテナ素子213aそれぞれを介して送受信される信号(振幅、位相)に適用するウェイトを制御する。例えば、HAPS20の位置及び姿勢の情報は、HAPS20に組み込んだGNSS(Global Navigation Satellite System)システムと慣性測定ユニット(IMU:Inertial Measurement Unit)とを組み合わせたGNSS慣性航法システム(GNSS/INS)の出力に基づいて取得してもよい。
【0049】
上記サーキュラーアレイアンテナ213の各アンテナ素子213aのウェイトの制御は、HAPSの位置や姿勢の情報を参照して行ってもよいが、サーキュラーアレイアンテナ213の各アンテナ素子213aの受信レベルの値を参照し、各GW局に対応する位置で最大の受信レベルとなる指向性ビームを形成するように、各アンテナ素子213aのウェイトの制御を行ってもよい。例えば、サーキュラーアレイアンテナ213の各アンテナ素子213aの位相を小刻みに変化させ、受信レベルが最大となるような角度を見つけ、その角度方向にビームが形成されるように各各アンテナ素子213aのウェイトの制御を行う。また、サーキュラーアレイアンテナ213から対応するGW局以外からの受信レベルを比較するためのモニタリングビームを作り、最大レベルとなるGW局を選択し、その方向にビームを形成してもよい。
【0050】
なお、
図7では水平方向のビーム角度調整について示しているが、垂直方向についても同様にビーム角度調整を行ってもよい。
【0051】
上記サーキュラーアレイアンテナ213の各アンテナ素子213aのウェイトの制御により、複数のGW局70(1)~70(3)それぞれの方向に向く指向性ビーム212(1)~212(3)を形成する。これにより、HAPS20が回転しても、FLアンテナ211(1)~211(3)の指向性ビーム212(1)~212(3)がそれぞれ対応するGW局70(1)~70(3)の方向に向くので、フィーダリンクの通信品質の低下を防止できる。
【0052】
図8の電気方式(角度限定のビームフォーミング制御方式+アンテナ切替)では、FLアンテナとして、複数のアンテナ素子214aを平面状に2次元配置した複数の平面アレイアンテナ214(1)~214(3)を備える。そして、GNSS/INSなどによって取得されたHAPS20の位置及び姿勢情報に基づいて、複数の平面アレイアンテナ214(1)~214(3)の複数のアンテナ素子214aそれぞれを介して送受信される信号(振幅、位相)に適用するウェイトを制御するビームフォーミング制御を行う。
【0053】
上記平面アレイアンテナ214(1)~214(3)の切り替え及びビームフォーミングの制御は、HAPSの位置や姿勢の情報を参照して行ってもよいが、各平面アレイアンテナ214(1)~214(3)の受信レベルの値を参照し、各平面アレイアンテナ214(1)~214(3)が最大の受信レベルとなるようにアンテナ切り替えとビームフォーミングの制御を行ってもよい。例えば、各平面アレイアンテナ214(1)~214(3)を小刻みに回転させ、各平面アレイアンテナ214(1)~214(3)の受信レベルが最大となるような角度を見つけ、その角度に向くように各の回転駆動制御を行う。ここで、各平面アレイアンテナ214(1)~214(3)の受信レベルそれぞれに閾値を設定し、その値を下回ったときに、平面アレイアンテナ214(1)~214(3)の切り替えを行うとともに、各平面アレイアンテナ214(1)~214(3)を既定の角度回転させ、上記受信レベルが最大となる角度へビームを形成するビームフォーミングを行ってもよい。上記受信レベルの閾値は例えば予め実験により求め、上記既定の角度は例えば360度/FLアンテナ数(図示の例では120度)であってもよい。また、各平面アレイアンテナ214(1)~214(3)から対応するGW局以外からの受信レベルを比較するためのモニタリングビームを作り、各平面アレイアンテナ214(1)~214(3)が最大レベルとなるGW局を選択し、その方向にビームを形成するようにアンテナ切り替えとビームフォーミングを行ってもよい。
【0054】
なお、
図8では水平方向のビーム角度調整について示しているが、垂直方向についても同様にビーム角度調整を行ってもよい。
【0055】
上記平面アレイアンテナ214(1)~214(3)の切り替え及びビームフォーミングの制御により、複数のGW局70(1)~70(3)それぞれの方向に向く指向性ビーム212(1)~212(3)を形成する。ここで、例えば、平面アレイアンテナ214(1)の平面に垂直な法線方向に対して指向性ビーム212(1)が傾いている角度(図中のθ)が予め設定した所定角度θth度よりも大きくなったときに、GW局70(1)に対応するFLアンテナを平面アレイアンテナ214(2)に切り替える。これにより、HAPS20が回転しても、FLアンテナ211(1)~211(3)の指向性ビーム212(1)~212(3)がそれぞれ対応するGW局70(1)~70(3)の方向に向くので、フィーダリンクの通信品質の低下を防止できる。
【0056】
上記構成の複数GWシステムでは、GW局間(フィーダリンク間)のフォワードリンク及びリバースリンクの少なくとも一方における干渉が大きくなるおそれがある。例えば、
図9に示すように、GW局70(1)から送信された希望信号(所望信号)S1がHAPS20のFLアンテナ211(1)で受信されているときに、他のGW局70(2),70(3)から送信された信号が干渉信号I2,I3としてFLアンテナ211(1)で受信される。そのため、フィーダリンクのSINR特性が悪化するおそれがある。また、
図10に示すように、HAPS20のFLアンテナ211(1)から送信された希望信号(所望信号)S1がGW局70(1)で受信されているときに、HAPS20の他のFLアンテナ211(2),211(3)から送信された信号が干渉信号I2,I3としてGW局70(1)で受信される。そのため、フィーダリンク(リバースリンク)のSINR特性が悪化するおそれがある。
【0057】
そこで、本実施形態では、以下に示すように見通し環境(LOS:Line-Of-Sight)対応のMIMO干渉キャンセラーをGW局間(フィーダリンク間)に適用し、GW局間(フィーダリンク間)のフォワードリンク及びリバースリンクの干渉を低減することにより、フィーダリンク(フォワード、リバースリンク)のSINR特性を向上させている。
【0058】
まず、本実施形態の複数GWシステムにおけるGW局間(フィーダリンク間)のフォワードリンクの干渉を低減する構成及び方法について説明する。
【0059】
[HAPS側(送信側)のフォワードリンクのMIMO干渉キャンセラー(受信干渉キャンセラー)]
図11は、ウェイトWを近似式で求めて適用したMIMO干渉キャンセラーの一例を示す説明図である。
図12は、実施形態に係る複数GWシステムのマルチフィーダリンクにおけるHAPS側(送信側)に設けたフォワードリンクの干渉キャンセラー部220の概略構成の一例を示す説明図。HAPS20のFLアンテナ211(1)は、GW局70(1)から送信された希望信号S1(Y11)と、GW局70(2)から送信された干渉信号I2(Y12)と、GW局70(3)から送信された干渉信号I3(Y13)とを受信する。その受信信号AN1は、次式(1)で表される。
【0060】
【0061】
HAPS20の干渉キャンセラー部220では、次式(2)に示すように他のFLアンテナ211(2)及び211(3)で受信された信号S2,S3にそれぞれ対応するウェイトW2,W3を掛け、減算することにより、上記干渉信号I2,I3をキャンセルした希望信号S1(Y11)を出力することができる。GW局70(2),70(3)から送信された希望信号S2(Y22)及びS3(Y33)についても同様に他のGW局からの干渉信号をキャンセルすることができる。
【0062】
【0063】
図13は、ZF(Zero-Forcing)法によりウェイトWを求めて適用したMIMO干渉キャンセラーの一例を示す説明図である。例えばGW局70(1)から送信された信号は、HAPS20のFLアンテナ211(1)で希望信号S1(Y11)として受信されるだけでなく、干渉信号I1(Y12),I1'(Y13)としてFLアンテナ211(2)及び211(3)に受信される。更に、GW局70(2)から送信された信号は、干渉信号I2(Y21)としてFLアンテナ211(1)に受信されるだけでなく、干渉信号I2'(Y23)としてFLアンテナ211(3)に受信される。更に、GW局70(3)から送信された信号は、干渉信号I3(Y31)としてFLアンテナ211(1)に受信されるだけでなく、干渉信号I3'(Y32)としてFLアンテナ211(2)に受信される。
図13のMIMO干渉キャンセラーでは、これらの干渉信号I1,I1',I2'及びI3'を考慮し、例えば次式(3)に示すように希望信号S1(Y11)を出力する。これにより、GW局間(フィーダリンク間)の干渉抑圧の精度を高めることができる。
【0064】
【0065】
上記MIMO干渉キャンセラーに用いるウェイトWを計算するには、HAPS20のFLアンテナ211(1)~211(3)との間の伝搬路応答H(
図14参照)を把握する必要がある。特に、本実施形態の複数GWシステムでは、GW局70(1)~70(3)に対してHAPS20の機体が相対的に動くため、その動きに応じて伝搬路応答Hも変化する。
【0066】
次式(4)は、
図14に示す複数GWシステムにおけるGW局70(1)~70(3)のアンテナとHAPS20のFLアンテナ211(1)~211(3)との間の伝搬路の伝搬路応答Hの一例を示している。GW局70(1)~70(3)のアンテナはそれぞれ希望信号(所望信号)s
1,s
2,s
3を送信し、HAPS20のFLアンテナ211(1)~211(3)はGW局70(1)~70(3)からの電波を受信して受信信号y
1,y
2,y
3を出力する。
【0067】
【0068】
次式(5)は伝搬路応答H中の行列要素を示している。式(5)中の|h
ij|は、第i番目のGW局70(i)のアンテナから送信されHAPS20の第j番目のFLアンテナ211(j)で受信された信号の受信信号レベルに対応する。また、式(5)中のd
ijは、GW局70(i)のアンテナとHAPS20の第j番目のFLアンテナ211(j)との間の経路長(
図9参照)である。式(5)中の「f」及び「c」はそれぞれ、送受信される信号の周波数及び速度(=光速)である。
【0069】
【0070】
上記式(4)及び式(5)に示すように、伝搬路応答Hを推定するには、GW局70(i)とHAPS20のFLアンテナ211(j)との間の経路長dijを把握する必要がある。各経路長dijを把握するのは困難である。そこで、本実施形態では、各経路長dijを把握するのではなく、複数GWシステムのフィーダリンクにおいて希望信号の送受信するアンテナ間の経路長を基準経路長dsとし、他のアンテナ間の経路長を基準経路長ds及び経路差Δdで表し、経路差Δdを求めることで基準となる基準経路成分からなる伝搬路応答(以下「基準伝搬路応答」ともいう。)に対する経路差成分からなる相対的な伝搬路応答(以下「相対伝搬路応答」ともいう。)を推定している。
【0071】
例えば、
図15の複数GWシステムのフィーダリンクでは、GW局70(1)がHAPS20のFLアンテナ211(1)に希望信号を送信し、GW局70(2)がHAPS20のFLアンテナ211(2)に希望信号を送信し、GW局70(3)がHAPS20のFLアンテナ211(3)に希望信号を送信している。従って、GW局70(i)のアンテナとFLアンテナ211(i)の間の3つの経路長d
ii(i=1,2,3)それぞれが基準経路長であり、他のGW局70(i)のアンテナとFLアンテナ211(j)の間の経路長d
ij(i≠j)はそれぞれ、基準経路長d
ii(i=1,2,3)と経路差Δd
ij(i≠j)との和で表すことができる。
【0072】
例えば、第1番目のGW局70(1)から送信した信号をHAPS20の各FLアンテナ211(1)~211(3)で受信する伝搬路の場合、GW局70(1)のアンテナとHAPS20の各FLアンテナ211(1)~211(3)との間の経路長d
11、d
21、d
31(
図16参照)を直接把握するのは困難である。希望信号を送受信するGW局70(1)のアンテナとFLアンテナ211(1)との間の経路長d
11を基準経路長とすると、他の経路の経路長d
21、d
31は次式(6)に示すように基準経路長d
11と経路差Δd
21、Δd
31(
図17参照)との和で表すことができる。
【0073】
【0074】
上記経路差Δdij(i≠j)は後述のようにパイロット信号により把握することができる。また、次式(7)に示すように伝搬路応答Hは経路差成分Δhij(i≠j)からなる相対伝搬路応答及び基準経路成分hii(i=1,2,3)からなる基準伝搬路応答で表すことができる。また、式(7)中の経路差成分Δhijは次式(8)で表される。式(8)中の経路差Δdijを求めることにより、基準伝搬路応答に対する相対伝搬路応答(経路差成分Δhij)を推定している。
【0075】
【0076】
【0077】
本実施形態では、上記伝搬路応答Hを動的に把握するため、各GW局70(1)~70(3)からパイロット信号を送信している。なお、以下の例では、狭帯域のパイロット信号を用いる場合について説明するが、互いに直交する複数の拡散符号を用いてスペクトル拡散したパイロット信号を用い、そのパイロット信号をスペクトル逆拡散した受信結果に基づいて伝搬路応答を推定してもよい。
【0078】
図18は、GW局70(1)~70(3)から送信される上り回線の送信信号帯域におけるパイロット信号の一例を示す説明図である。
図19は、HAPS20で受信される上り回線の受信信号帯域におけるパイロット信号の一例を示す説明図である。
図20は、フィルターで分離され伝搬路応答の導出に用いられるパイロット信号の一例を示す説明図である。
図21は、
図18~
図20のパイロット信号を用いたフィーダリンクの伝搬路応答の導出モデルの一例を示す説明図である。
【0079】
図示の例では、GW局70(1)~70(3)から希望信号S1,S2,S3が送信されるフィーダリンクの送信信号帯域FBに低周波側及び高周波側から隣接する第1の隣接帯域である第1ガードバンドGB1及び第2の隣接帯域である第2ガードバンドGB2それぞれに、各GW局70(1)~70(3)から送信される複数のパイロット信号が分散配置されている。具体的には、第1ガードバンドGB1に各GW局70(1)~70(3)から送信される同一周波数の互いに周波数f1,f2,f3が異なるパイロット信号SP1,SP2,SP3が位置している。また、第2ガードバンドGB2に各GW局70(1)~70(3)から送信される互いに周波数f1’,f2’,f3’が異なるパイロット信号SP1’,SP2’,SP3’が位置している。HAPS20の中継通信局21は、GW局70(1)、70(2)及び70(3)から受信した第1ガードバンドGB1の複数のパイロット信号SP1,SP2,SP3をそれぞれフィルターで分離し、GW局70(1)、70(2)及び70(3)から受信した第2ガードバンドGB2の複数のパイロット信号SP1’,SP2’,SP3’をそれぞれフィルターで分離する。
【0080】
次に、HAPS20の中継通信局21は、
図18に示すように受信信号から狭帯域受信フィルター218を用いて各パイロット信号S
Pi(i=1~3)を分離し(
図19参照)、分離したパイロット信号S
Piから、k番目のGW局70(k)からHAPS20のi番目のFLアンテナ211(i)への伝搬路応答h
kiを求める。中継通信局21は、求めた伝搬路応答h
kiの情報(次式(9)及び式(10)参照)を干渉キャンセラー部220に出力する。
【0081】
【0082】
【0083】
例えば、HAPS20のFLアンテナ211(1)及び211(2)が受信するパイロット信号h11,h11’,h21及びh21’はそれぞれ次式(11)、(12)、(13)及び(14)で表され、それらの信号の比h21/h11及びh21’/h11’はそれぞれ、次式(15)及び(16)で表される。
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
上記式(11)~(16)中のd11はGW局70(1)とFLアンテナ211(1)との間の経路長であり、Δd21はGW局70(1)とFLアンテナ211(1)及び211(2)それぞれとの間の経路長の差(経路差)である。GW局70(1)とFLアンテナ211(2)との間の経路長はd11+Δd21で表される。
【0091】
上記式(15)及び(16)から、上記経路差Δd21は次式(17)で求めることができる。なお、式(17)中のθは、h11’とh11の位相差と、h21とh21’の位相差とを加算した位相差である。すなわち、θ=(h11’とh11の位相差)+(h21とh21’の位相差)である。
【0092】
【0093】
GW局70(1)とFLアンテナ211(1)及び211(3)それぞれとの間の経路差Δd31及びその他の経路差Δd12,Δd13,Δd23,Δd32についても、同様に求めることができる。
【0094】
上記経路差Δd21,Δd31,Δd12,Δd13,Δd23,Δd32を用いて、上記フィーダリンクの送信信号帯域の中心周波数fscにおける伝搬路応答Hfcは、例えば次式(18)のHPのように推定できる。
【0095】
【0096】
図18及び
図19に示すようにGW局70(1)~70(3)がそれぞれ複数のパイロット信号を送信する場合、各パイロット信号の波長λ
1、λ
2、λ
3以上の経路差を検知することができる。例えば、LTEを想定するとフィーダリンクの送信信号帯域FBの帯域幅Bは18MHzであるので、上記式(17)に示すようにΔd
21をパイロット周波数差Bの波長以内の範囲で推定可能となる。本例では、実装上必要な範囲である0<Δd
21<16[m]の範囲まで精度よく推定することができる。
【0097】
また、
図18及び
図19の例では、各GW局70(1)~70(3)から送信される互いに周波数f
1,f
2,f
3,f
1’,f
2’,f
3’が異なる複数のパイロット信号S
P1,S
P2,S
P3及びパイロット信号S
P1’,S
P2’,S
P3’が、第1ガードバンドGB1及び第2ガードバンドGB2に均等に分散されて配置されているので、各パイロット信号をフィルターで分離して容易に個別検出することができる。
【0098】
なお、上記伝搬路応答の行列Hfc(上記式(18)のHP)を用いて、干渉キャンセラーに用いるウェイトは、例えば、伝搬路応答の行列を用いたZF(Zero-Forcing)法又はMMSE(Minimum Mean Square Error)法により計算することができる。
【0099】
例えば、ZF法では、次式(19)のように伝搬路応答の行列Hfcの逆行列でウェイトWを求めることができる。
【0100】
【0101】
また、MMSE法では、次式(20)によりウェイトWを用いることができる。ここで、NTは送信アンテナ数であり、γはSNRである。
【0102】
【0103】
干渉キャンセラー部220は、上記ウェイトWを用いることにより、次式(21)の受信信号Yから干渉信号をキャンセルした次式(22)の復調信号Eに変換して出力することができる。干渉キャンセラー部220は、式(22)中のウェイトWの行列の各要素の値をWテーブルのデータとして記憶する。
【0104】
【0105】
【0106】
次に、本実施形態の複数GWシステムにおけるHAPS20のFLアンテナによるGW局の追尾、FLアンテナとGW局との組み合わせの切り替え(以下「アンテナ切り替え」ともいう。)、及び、そのアンテナ切り替え時のフィーダリンク間の干渉低減性能低下の緩和について説明する。
【0107】
本実施形態の複数GWシステムにおいて、HAPS20の機体が上空で移動したり回転したりすると、HAPS20のFLアンテナの指向性ビーム(主ビーム)の方向がGW局(GWアンテナ)に向かう方向からずれてフィーダリンクの通信品質が低下するおそれがある。このHAPS20の移動や回転によるフィーダリンクの通信品質の低下を抑制するために、HAPS20の複数のFLアンテナがそれぞれ対応する通信先のGW局(GWアンテナ)を追尾したり、複数のFLアンテナと複数のGW局(GWアンテナ)との組み合わせを切り替えるアンテナ切り替えを行ったりしてもよい。
【0108】
図22(a)~
図22(c)は、実施形態に係る複数GWシステムにおけるHAPS20の機体回転時のFLアンテナによるGW局の追尾及びFLアンテナとGW局との組み合わせを切り替えるアンテナ切り替えの一例を示す説明図である。
図22(a)は、HAPS20の機体が回転する前の状態を示している。HAPS20のFLアンテナ211(1)~211(3)の指向性ビーム(主ビーム)はそれぞれ、フィーダリンクの通信を行っている通信先のGW局70(1)の方向を向いている。図中のθは、FLアンテナ211(1)~211(3)のアンテナ主面(例えば平面アレイアンテナの平面)に垂直な方向に対する指向性ビームの方向の傾き角度である。
【0109】
HAPS20の機体が図中の左回転方向に回転すると、
図22(b)に示すように各FLアンテナ211(1)~211(3)の指向性ビームが通信先のGW局70(1)の方向に継続して向くように図中の右回転方向に回転する制御される。
【0110】
各FLアンテナ211(1)~211(3)の指向性ビームの傾き角度θが所定の角度閾値θthよりも大きくなると、各FLアンテナによるフィーダリンクの通信品質が低下するため、
図22(c)に示すように互いにフィーダリンクの通信を行うFLアンテナ211(1)~211(3)とGW局70(1)~70(3)(GWアンテナ)との組み合わせが切り替えられる。
図22(c)の例では、例えば、第1番目のGW局70(1)と組み合わせられるFLアンテナが第1番目のFLアンテナ211(1)から第3番目のFLアンテナ211(3)に切り替えられる。
【0111】
本実施形態の複数GWシステムにおいて、HAPS20の複数のFLアンテナと複数のGW局(GWアンテナ)との組み合わせが変化すると、上記干渉キャンセラー部でのフィーダリンク間干渉の抑圧に用いるウェイトが大きく変化する。そのため、FLアンテナ211(1)~211(3)とGW局70(1)~70(3)(GWアンテナ)との組み合わせを切り替えるアンテナ切り替えを行ったときはウェイト(ウェイト行列)も切り替える必要がある。
【0112】
図23、
図24及び
図25はそれぞれ、HAPS20の複数のFLアンテナ211(1)~211(3)と複数のGW局70(1)~70(3)(GWアンテナ)との3種類の組み合わせパターン(パターンA,B,C)及び各パターンにおけるウェイト(ウェイト行列)の計算で定義される基準経路の一例を示す説明図である。
【0113】
図23のパターンAでは、GW局70(1)からFLアンテナ211(1)への経路長d
11、GW局70(2)からFLアンテナ211(2)への経路長d
22及びGW局70(3)からFLアンテナ211(3)への経路長d
33をそれぞれ基準経路長として伝搬路応答H
Aが推定され、その伝搬路応答H
Aに基づいて、フィーダリンク間干渉の抑圧処理に用いるウェイトW
Aが計算される。
【0114】
図24のパターンBでは、GW局70(1)からFLアンテナ211(3)への経路長d
31、GW局70(2)からFLアンテナ211(1)への経路長d
12及びGW局70(3)からFLアンテナ211(2)への経路長d
23をそれぞれ基準経路長として伝搬路応答H
Bが推定され、その伝搬路応答H
Bに基づいて、フィーダリンク間干渉の抑圧処理に用いるウェイトW
Bが計算される。
【0115】
図25のパターンCでは、GW局70(1)からFLアンテナ211(2)への経路長d
21、GW局70(2)からFLアンテナ211(3)への経路長d
32及びGW局70(3)からFLアンテナ211(1)への経路長d
13をそれぞれ基準経路長として伝搬路応答H
Cが推定され、その伝搬路応答H
Cに基づいて、フィーダリンク間干渉の抑圧処理に用いるウェイトW
Cが計算される。
【0116】
上記3種類のパターンA,B,Cでは基準経路長が互いに異なるため、フィーダリンク間干渉を抑圧して受信信号Yを復調信号Eに変換するときに用いるウェイトW(WA,WB,WC)が大きく異なる。例えば、受信信号Yから復調信号Eに変換する上記式(22)におけるウェイトにおいて、次式(23)の行列要素Δh21に含まれる経路差Δd21は、次式(24)に示すようにパターンが変わると大きく変わる。そのため、パターンA,B,Cに応じて適切なウェイトWA,WB,WC(ウェイト行列)を用いる必要がある。
【0117】
【0118】
【0119】
干渉キャンセラー部220は、上記パターンA,B,Cに対応するウェイトWA,WB,WCのそれぞれの行列の各要素の値を、WAテーブル、WBテーブル、WCテーブルとして記憶する。
【0120】
図26は、実施形態に係る複数GWシステムにおいてHAPS20の機体回転中にアンテナ切り替えを行わない場合のマルチフィーダリンク間の干渉低減性能の時間変化の一例を示すグラフである。
図27は、実施形態に係る複数GWシステムにおいてHAPS20の機体回転中にパターンAからパターンBにアンテナ切り替えを行う場合のマルチフィーダリンク間の干渉低減性能の時間変化の一例を示すグラフである。
図26及び
図27はいずれもコンピュータシミュレーションの結果である。
図26及び
図27において、縦軸は干渉キャンセラー部220から出力される復調信号Eにおける帯域幅分のSINR[dB]であり、横軸は、干渉キャンセラー部220におけるウェイトWの計算処理遅延時間(サブフレーム数)である。また、図中の直線C100は、干渉キャンセラー部220におけるウェイトWの計算処理遅延による伝搬路応答Hの誤差(経路差の計算の誤差)がない場合の理想的な帯域幅分のSINR[dB]である。
【0121】
図26のアンテナ切り替えを行わない場合は、図中の曲線C101に示すようにウェイトWの計算処理遅延による伝搬路応答Hの誤差(経路差の計算の誤差)分だけ干渉低減性能が次第に低下してSINR[dB]がなだらかに悪化する。
【0122】
一方、
図27のアンテナ切り替えを行う場合は、図中の曲線C102に示すようにパターンAからパターンBにアンテナ切替を行った直後に干渉低減性能が急激に低下してSINR[dB]が急激に悪化する。この急激な干渉低減性能の低下は、アンテナ切り替えによってパターンBに切り替わったにもかかわらず、ウェイトW
Bの計算処理遅延時間τ(例えば、数100ms~数s程度の処理遅延)により、パターンBへのアンテナ切り替え直後において、アンテナ切り替え前のパターンAのウェイトW
A(W
Aテーブル)が使用されるために発生することがわかった。
【0123】
そこで、本実施形態では、HAPS20の移動及び回転の少なくとも一方によって発生する可能性があるHAPS20の複数のFLアンテナ211(1)~211(3)と複数のGW局70(1)~70(3)(GWアンテナ)との3種類の組み合わせパターン(パターンA,B,C)のすべてについて、各パターンA,B,Cに対応するウェイトWA,WB,WCを事前に計算してWAテーブル、WBテーブル、WCテーブルとして記憶している。そして、HAPS20の移動及び回転の少なくとも一方によって組み合わせパターンが変化したときは、変化後の組み合わせに対応する組み合わせパターンのウェイトの計算結果(Wテーブル)を選択し、選択した組み合わせパターンのウェイトの計算結果(Wテーブル)に基づいて中継信号を送受信するときのフィーダリンク間の干渉を抑圧する処理を実行する。
【0124】
例えば、
図28に示すようにパターンAからパターンBへのアンテナ切り替えを行ったときに、干渉キャンセラー部220において、予め記憶されている複数のWテーブルからパターンBに対応するW
Bテーブルを選択し、干渉抑圧処理を伴う受信信号Yから復調信号Eへの変換に用いるWテーブルをW
AテーブルからW
Bテーブルに切り替える。このWテーブルの切り替えにより、干渉キャンセラー部220におけるウェイトWの計算処理遅延時間τがあってもアンテナ切り替え直後からパターンBに対応するW
Bテーブルを使用可能になるため、干渉低減性能の急激な低下(
図27参照)を緩和することができる。
【0125】
図28におけるアンテナ切り替え前はパターンAのW
Aテーブルを用いられるため、復調信号S’は例えば次式(25)で表される。パターンBへのアンテナ切り替え直後は、事前に記憶されているパターンBのW
Bテーブルが選択されて用いられるため、復調信号S’は例えば次式(26)に示すようにパターンBでの経路差のずれのみとなり、フィーダリンク間干渉低減性能の急激な低下がなく、干渉低減性能の低下を緩和することができる。これに対し、パターンBへのアンテナ切り替え直後にウェイトWの計算処理遅延時間τによりW
Aテーブルを使用し続ける場合は、次式(27)に示すようにアンテナ切り替え前のパターンAのW
Aテーブルを用いて変換されて復調信号S’が出力されるため、フィーダリンク間干渉低減性能の急激な低下が発生する。
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
なお、パターンAからパターンBへのアンテナ切り替えのタイミングは、HAPS20の中継通信局21がFLアンテナ211(1)~211(3)を介して接続する複数のGW局70(1)~70(3)の接続GW情報に基づいて判断することができる。
【0130】
また、干渉キャンセラー部220において予め計算して記憶しておく複数のウェイト(Wテーブル)は、複数のアンテナ切り替えタイミングそれぞれの近傍におけるパターンA,B,Cそれぞれにおいて計算したものであってもよい。この場合は、アンテナ切り替え直後に選択して用いるウェイト(Wテーブル)が実際の経路長(経路差)に対応したウェイト(Wテーブル)に近くなり、アンテナ切り替え直後におけるフィーダリンク間干渉低減性能を高めることができる。
【0131】
図29は、本実施形態に係るHAPS20の中継通信局21の主要構成の一例を示す説明図である。
図29において、中継通信局21は、フィーダリンク通信部221とサービスリンク通信部222と周波数変換部223と各部を制御する制御部224と干渉抑圧部225を備える。
【0132】
フィーダリンク通信部221は、GW局70の数(FLアンテナ211の数)に対応する複数の受信機を備え、FLアンテナ211を介してGW局70との間でフィーダリンク用の第1周波数F1の無線信号を送受信する。
【0133】
フィーダリンク通信部221の複数の受信機は、複数のGW局70(1)~70(3)それぞれから送信された複数のパイロット信号を受信し、複数のパイロット信号が重複したパイロット信号群をフィルターで分離する。また、各受信機は、上記フィルターで分離された複数のパイロット信号を、フィーダリンクの伝搬路を伝搬してきたパイロット信号hkiの受信結果として干渉抑圧部225に出力する。
【0134】
サービスリンク通信部222は、サービスリンク用アンテナ115を介して端末装置61との間でサービスリンク用の第2周波数F2の無線信号を送受信する。周波数変換部223は、フィーダリンク通信部221とサービスリンク通信部222との間で第1周波数F1と第2周波数F2との周波数変換を行う。中継通信局21で中継される無線信号は、例えば、LTE又はLTE-Advancedの標準規格に準拠したOFMDA通信方式を用いて送受信してもよい。この場合は、無線信号の遅延が異なるマルチパスが発生しても良好な通信品質を維持できる。
【0135】
制御部224は、予め組み込まれたプログラムを実行することにより各部を制御することができる。
【0136】
干渉抑圧部225は、予め組み込まれたプログラムを実行することにより、フィーダリンク通信部221から出力された複数のパイロット信号の受信結果(hki)に基づいて、前述の伝搬路応答の推定、ウェイトの計算及び干渉キャンセル信号処理を行う。
【0137】
なお、移動通信網の通信オペレータの遠隔制御装置(制御元)からの制御情報を受信したり遠隔制御装置に情報を送信したりする場合は、制御部224に接続されたユーザ端末(移動局)226を備えてもよい。制御部224は、例えば、遠隔制御装置から送信されてきた制御情報をユーザ端末(移動局)226で受信し、その制御情報に基づいて各部を制御してもよい。ここで、遠隔制御装置とユーザ端末(移動局)226との間の通信は、例えば遠隔制御装置及びユーザ端末(移動局)226それぞれに割り当てられたIPアドレス(又は電話番号)を用いて行ってもよい。
【0138】
以上、本実施形態によれば、HAPS20と複数のGW局70(1)~70(3)との間の同一周波数のマルチフィーダリンクにおける複数のフィーダリンク間の干渉を動的に抑圧することができる。
【0139】
特に本実施形態によれば、複数GWシステムにおいてHAPS20に搭載した複数のFLアンテナ211(1)~211(3)と複数のGW局70(1)~70(3)との組み合わせが変化したときに、変化後の組み合わせパターンに対応するウェイトを計算する必要がないため、ウェイト処理遅延によるマルチフィーダリンク間の干渉低減性能の低下を緩和することができる。
【0140】
また、本実施形態によれば、マルチフィーダリンクにおける干渉の動的な抑圧に必要となるHAPS20と複数のGW局70(1)~70(3)との経路差を実装上必要な範囲まで推定して把握することができるので、マルチフィーダリンクにおける干渉を精度よく抑圧することができる。
【0141】
なお、上記実施形態では、HAPS20のフィーダリンクのフォワードリンクに適用した場合について説明したが、本発明は、フィーダリンクのリバースリンクにも適用することでリバースリンクにおけるSNIRの低下を抑制しつつ、フィーダリンクの周波数利用効率の向上を図ることができる。
【0142】
なお、本明細書で説明された処理工程並びにHAPS等の通信中継装置の中継通信局、フィーダ局、ゲートウェイ局、管理装置、監視装置、遠隔制御装置、サーバ、端末装置(ユーザ装置、移動局、通信端末)、基地局及び基地局装置の構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0143】
ハードウェア実装については、実体(例えば、無線中継局、フィーダ局、ゲートウェイ局、基地局、基地局装置、無線中継局装置、端末装置(ユーザ装置、移動局、通信端末)、管理装置、監視装置、遠隔制御装置、サーバ、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において前記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0144】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、前記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された前記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0145】
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であればよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
【0146】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。
【符号の説明】
【0147】
20 HAPS(通信中継装置)
21 中継通信局
61 端末装置
70,70(1)~70(3) ゲートウェイ局(GW局)
71,71(1)~71(3) フィーダリンク用アンテナ(GWアンテナ)
200C,200C(1)~200C(7) 3次元セル
200F,200F(1)~200F(7) フットプリント
211、211(1)~211(3) フィーダリンク用アンテナ(FLアンテナ)
212、212(1)~212(3) アンテナ指向性ビーム
215 サービスリンク用アンテナ(SLアンテナ)
220 干渉キャンセラー部
221 フィーダリンク通信部
222 サービスリンク通信部
223 周波数変換部
224 制御部
225 干渉抑圧部