(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】抗LAG3抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20221107BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221107BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20221107BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20221107BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221107BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P35/02
A61P31/12
A61K45/00
A61K39/395 T
A61P43/00 121
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020136614
(22)【出願日】2020-08-13
(62)【分割の表示】P 2018517612の分割
【原出願日】2016-10-07
【審査請求日】2020-08-13
(32)【優先日】2015-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】エリカ ウルマン
(72)【発明者】
【氏名】アイヌール ハーマン
(72)【発明者】
【氏名】エラ イオッフェ
(72)【発明者】
【氏名】エレナ ブロヴァ
(72)【発明者】
【氏名】ギャビン サーストン
【審査官】吉川 阿佳里
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-500006(JP,A)
【文献】特表2015-527880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
A61K 45/00-45/08
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍または腫瘍細胞の増殖の阻害を必要とする被験体における腫瘍または腫瘍細胞の増殖を阻害するための医薬組成物であって、該組成物が、治療有効量の、ヒトリンパ球活性化遺伝子3(LAG3)タンパク質に特異的に結合する単離抗体またはその抗原結合性断片を含み、該抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号420のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域(HCDR1)、配列番号422のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号424のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号428のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号430のアミノ酸配列を含むLCDR2、および配列番号432のアミノ酸配列を含むLCDR3を含
み、該抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号418に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)と、配列番号426に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)とを含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記単離抗体またはその抗原結合性断片が、
(i)配列番号418のアミノ酸配列
、
(i
i)配列番号418に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列;または
(i
ii)5カ所を超えないアミノ酸置換を有する、配列番号418のアミノ酸配列
を有する重鎖可変領域(HCVR)と、
(i)配列番号426のアミノ酸配列
、
(i
i)配列番号426に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列;または
(i
ii)5カ所を超えないアミノ酸置換を有する、配列番号426のアミノ酸配列
を有する軽鎖可変領域(LCVR)と
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記単離抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号418のアミノ酸配列を有するHCVRを含む、請求項1または2のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項4】
前記単離抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号426のアミノ酸配列を有するLCVRを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記単離抗体またはその抗原結合性断片が、重鎖および軽鎖を含み、前記重鎖が、配列番号577のアミノ酸配列を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記単離抗体またはその抗原結合性断片が、重鎖および軽鎖を含み、前記軽鎖が、配列番号578のアミノ酸配列を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記単離抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号577のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号578のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記腫瘍が、原発性腫瘍または再発性腫瘍である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記腫瘍が、確立された腫瘍である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記腫瘍が、血液がん、脳がん、腎細胞がん、卵巣がん、膀胱がん、前立腺がん、乳がん、肝細胞癌、骨がん、結腸がん、非小細胞肺がん、頭頚部扁平上皮がん、結腸直腸がん、中皮腫、B細胞リンパ腫、および黒色腫からなる群より選択される疾患または障害を伴う被験体に存在する、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記医薬組成物が、初期用量、その後に1回または複数回の二次用量として投与され、各回の二次用量が、直前の用量の1~4週間後に投与されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記抗体または抗原結合性断片が、前記被験体の体重1kg当たり1、3、または10mgの用量で投与されることを特徴とする、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記医薬組成物が、第2の治療剤と組み合わせて前記被験体へと投与されることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記第2の治療剤が、CTLA4阻害剤、腫瘍特異抗原に対する抗体、ウイルス感染細胞抗原に対する抗体、PD-L1阻害剤、CD20阻害剤、CD20およびCD3に対する二特異性抗体、抗酸化剤などの栄養補助食品、VEGFアンタゴニスト、化学療法剤、細胞傷害剤、放射線、NSAID、コルチコステロイド、および前記疾患または前記障害と関連する少なくとも1つの症状を好転させるのに有用な、任意の他の治療からなる群より選択される、請求項10に従属する場合の請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記第2の治療剤が、PD-1阻害剤である、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
前記PD-1阻害剤が、REGN2810、ニボルマブ、またはペンブロリズマブである、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記PD-1阻害剤が、前記被験体の体重1kg当たり1、3、または10mgの用量で投与されることを特徴とする、請求項15または16に記載の組成物。
【請求項18】
前記医薬組成物が、皮下、静脈内、皮内、腹腔内、経口、筋内、または頭蓋内投与されることを特徴とする、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
疾患または障害の処置を必要とする被験体におけるLAG3をアンタゴナイズすることにより処置可能な疾患または障害を処置するための組成物であって、該組成物が、治療有効量の抗LAG3抗体またはその抗原結合断片を含み、該抗体またはその抗原結合断片が、配列番号420のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域(HCDR1)、配列番号422のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号424のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号428のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号430のアミノ酸配列を含むLCDR2、および配列番号432のアミノ酸配列を含むLCDR3を含
み、該抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号418に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)と、配列番号426に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)とを含む、組成物。
【請求項20】
前記単離抗体またはその抗原結合性断片が、
(i)配列番号418のアミノ酸配列
、
(i
i)配列番号418に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列;または
(i
ii)5カ所を超えないアミノ酸置換を有する、配列番号418のアミノ酸配列
を有する重鎖可変領域(HCVR)と、
(i)配列番号426のアミノ酸配列
、
(i
i)配列番号426に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列;または
(i
ii)5カ所を超えないアミノ酸置換を有する、配列番号426のアミノ酸配列
を有する軽鎖可変領域(LCVR)と
を含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記単離抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号418のアミノ酸配列を有するHCVRを含む、請求項19または20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記単離抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号426のアミノ酸配列を有するLCVRを含む、請求項19~21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記単離抗体またはその抗原結合性断片が、重鎖および軽鎖を含み、前記重鎖が、配列番号577のアミノ酸配列を含む、請求項19~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
前記単離抗体またはその抗原結合性断片が、重鎖および軽鎖を含み、前記軽鎖が、配列番号578のアミノ酸配列を含む、請求項19~23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記単離抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号577のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号578のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項19~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
前記疾患または前記障害が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、およびサル免疫不全ウイルス(SIV)からなる群より選択されるウイルスにより引き起こされる慢性ウイルス感染である、請求項19に記載の組成物。
【請求項27】
前記疾患または前記障害が、血液がん、脳がん、腎細胞がん、卵巣がん、膀胱がん、前立腺がん、乳がん、肝細胞癌、骨がん、結腸がん、非小細胞肺がん、頭頚部扁平上皮がん、結腸直腸がん、中皮腫、B細胞リンパ腫、および黒色腫からなる群より選択される、請求項19に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、免疫調節性受容体であるリンパ球活性化遺伝子3(LAG3)タンパク質に特異的に結合する単離抗体またはその抗原結合性断片、ならびにこれらの抗体を使用する治療方法および診断方法に関する。
【0002】
配列表
配列表の公式のコピーは、ファイル名「2016_10_07_10176WO01_SEQ_LIST_ST25.txt」、作成日2016年10月7日および約240キロバイトのサイズのASCIIフォーマットの配列表としてEFS-Webを介して電子的に本明細書と同時に提出される。このASCIIフォーマットの書類に含まれる配列表は、本明細書の一部であり、その全体が参考として本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
T細胞共刺激性分子およびT細胞共阻害性分子(まとめて、共シグナル伝達分子と名付けられる)は、T細胞の活性化、サブセットの分化、エフェクター機能、および生存の調節において、極めて重要な役割を果たす(Chenら、2013年、Nature Rev. Immunol.、13巻:227~242頁)。T細胞受容体が、抗原提示細胞上の、同族ペプチド-MHC複合体を認識した後、共シグナル伝達受容体が、T細胞受容体と共に、免疫シナプスに共局在化し、そこで、これらの受容体は、TCRによるシグナル伝達と相乗作用して、T細胞の活性化および機能を促進または阻害する(Fliesら、2011年、Yale J. Biol. Med.、84巻:409~421頁)。最終的な免疫応答は、共刺激性シグナルと、共阻害性シグナル(「免疫チェックポイント」)との平衡により調節される(Pardoll、2012年、Nature Reviews Cancer、12巻:252~264頁)。リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)は、末梢性T細胞寛容の媒介において、1つのこのような「免疫チェックポイント」として機能する。
【0004】
LAG3(CD223ともまた呼ばれる)とは、活性化したCD4 T細胞上およびCD8 T細胞上、γδT細胞上、ナチュラルキラーT細胞上、B細胞上、ナチュラルキラー細胞上、形質細胞様樹状細胞上、および調節性T細胞上で発現する、503アミノ酸の膜貫通タンパク質受容体である。LAG3は、免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーのメンバーである。LAG3の主要機能は、免疫応答を弱めることである。LAG3の、MHCクラスII分子への結合は、LAG3発現細胞への、負のシグナルの送達を結果としてもたらし、抗原依存性のCD4 T細胞応答およびCD8 T細胞応答を下方調節する。LAG3は、T細胞の「疲弊」と称される通り、T細胞が増殖し、サイトカインを産生し、標的細胞を溶解させる能力を負に調節する。LAG3はまた、調節性T(Treg)細胞機能の増強において役割を果たすことも報告されている(Pardoll、2012年、Nature Reviews Cancer、12巻:252~264頁)。
【0005】
LAG3は、腫瘍免疫および感染免疫において、重要な役割を果たすので、免疫療法にとって理想的な標的である。モノクローナル抗体を含むアンタゴニストによるLAG3の遮断は、がんおよび慢性ウイルス感染の処置において研究されている(Turnisら、2015年、Eur. J. Immunol.、45巻:1892~1905頁)。
【0006】
当技術分野では、LAG3に対するモノクローナル抗体が公知であり、例えば、米国特許/公開第5976877号、同第6143273号、同第6197524号、同第8551481号、同第20110070238号、同第20110150892号、同第20130095114号、同第20140093511号、同第20140127226号、同第20140286935号、ならびにWO95/30750、WO97/03695、WO98/58059、WO2004/078928、WO2008/132601、WO2010/019570、WO2014/008218、EP0510079B1、EP0758383B1、EP0843557B1、EP0977856B1、EP1897548B2、EP2142210A1、およびEP2320940B1において記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第5976877号明細書
【文献】米国特許第6143273号明細書
【文献】米国特許第6197524号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ヒトを処置するための免疫療法を開発する場合、低免疫原性、適切な結合動態パラメータ、サル標的との交差反応性、適切なin vitro活性および/または適切なin vivo活性などの特性を呈示する抗体が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、LAG3に結合する抗体およびそれらの抗原結合性断片を提供する。本発明の抗体は、とりわけ、LAG3を発現する免疫細胞をターゲティングし、LAG3活性をモジュレートするのに有用である。ある特定の実施形態では、本発明の抗体は、例えば、T細胞により媒介される殺滅が有益または所望である状況下で、LAG3活性を阻害もしくは中和し、かつ/またはT細胞の活性化を刺激するのに有用である。ある特定の実施形態では、抗体は、調節性T細胞の機能を阻害し、かつ/または疲弊したT細胞のアネルギー状態を逆転させるのに有用である。本発明の抗LAG3抗体またはそれらの抗原結合性部分を、多特異性の抗原結合性分子の一部として含めて、例えば、免疫応答をモジュレートし、かつ/または抗体を、腫瘍細胞またはウイルス感染細胞など、特定の細胞型へとターゲティングすることができる。抗体は、がんおよびウイルス感染などの疾患または障害の処置において有用である。
【0010】
本発明の抗体は、全長(例えば、IgG1抗体またはIgG4抗体)の場合もあり、抗原結合性部分(例えば、Fab、F(ab’)2、またはscFv断片)だけを含む場合もあり、機能性に影響を及ぼす、例えば、残留するエフェクター機能を消失させるように修飾することができる(Reddyら、2000年、J. Immunol.、164巻:1925~1933頁)。ある特定の実施形態では、抗体は、二特異性でありうる。
【0011】
第1の態様では、本発明は、LAG3に特異的に結合する、単離組換えモノクローナル抗体またはそれらの抗原結合性断片を提供する。ある特定の実施形態では、抗体は、完全ヒト抗体である。
【0012】
本発明の例示的な抗LAG3抗体を、本明細書の表1~3に列挙する。表1は、例示的な抗LAG3抗体の、重鎖可変領域(HCVR)、軽鎖可変領域(LCVR)、重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)、および軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)のアミノ酸配列の識別子を明示する。表2は、例示的な抗LAG3抗体の、HCVR、LCVR、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3の核酸配列の識別子を明示する。表3は、例示的な抗LAG3抗体の、重鎖配列および軽鎖配列のアミノ酸配列の識別子を明示する。
【0013】
本発明は、表1に列挙したHCVRのアミノ酸配列、またはそれらに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらと実質的に類似する配列のうちのいずれかから選択されるアミノ酸配列を含むHCVRを含む、抗体またはそれらの抗原結合性断片を提供する。
【0014】
本発明はまた、表1に列挙したLCVRのアミノ酸配列、またはそれらに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらと実質的に類似する配列のうちのいずれかから選択されるアミノ酸配列を含むLCVRを含む、抗体またはそれらの抗原結合性断片も提供する。
【0015】
本発明はまた、表1に列挙したLCVRのアミノ酸配列のうちのいずれかと対合させた、表1に列挙したHCVRのアミノ酸配列のうちのいずれかを含む、HCVRとLCVRとのアミノ酸配列対(HCVR/LCVR)を含む、抗体またはそれらの抗原結合性断片も提供する。ある特定の実施形態に従い、本発明は、表1に列挙した、例示的な抗LAG3抗体のうちのいずれかの中に含有される、HCVR/LCVRのアミノ酸配列対を含む、抗体またはそれらの抗原結合性断片を提供する。ある特定の実施形態では、HCVR/LCVRのアミノ酸配列対は、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/74、82/90、98/106、114/122、130/138、146/154、162/170、178/186、194/202、210/218、226/234、242/250、258/266、274/282、290/298、306/314、322/330、338/346、354/362、370/378、386/394、402/410、418/426、434/442、450/522、458/522、466/522、474/522、482/522、490/522、498/530、506/530、514/530、538/546、および554/562からなる群より選択される。ある特定の実施形態では、HCVR/LCVRのアミノ酸配列対は、配列番号386/394(例えば、H4sH15479P)、418/426(例えば、H4sH15482P)、または538/546(例えば、H4sH14813N)のうちの1つから選択される。ある特定の実施形態では、本発明は、HCVRおよびLCVRを含む抗LAG3抗体またはそれらの抗原結合性断片であって、前記HCVRが、5カ所を超えないアミノ酸置換を有する、表1に列挙したアミノ酸配列を含み、前記LCVRが、5カ所を超えないアミノ酸置換を有する、表1に列挙したアミノ酸配列を含む、抗LAG3抗体またはそれらの抗原結合性断片を提供する。例えば、本発明は、HCVRおよびLCVRを含む抗LAG3抗体またはそれらの抗原結合性断片であって、前記HCVRが、5カ所を超えないアミノ酸置換を有する、配列番号418のアミノ酸配列を含み、前記LCVRが、5カ所を超えないアミノ酸置換を有する、配列番号426のアミノ酸配列を含む、抗LAG3抗体またはそれらの抗原結合性断片を提供する。別の例示的な実施形態では、本発明は、HCVRおよびLCVRを含む抗LAG3抗体またはそれらの抗原結合性断片であって、前記HCVRが、少なくとも1カ所のアミノ酸置換を有する、配列番号418のアミノ酸配列を含み、前記LCVRが、1カ所のアミノ酸置換を有する、配列番号426のアミノ酸配列を含む、抗LAG3抗体またはそれらの抗原結合性断片を提供する。
【0016】
本発明はまた、表1に列挙したHCDR1のアミノ酸配列、またはこれらと実質的に類似する配列であって、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する配列のうちのいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖CDR1(HCDR1)を含む、抗体またはそれらの抗原結合性断片も提供する。
【0017】
本発明はまた、表1に列挙したHCDR2のアミノ酸配列、またはこれらと実質的に類似する配列であって、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する配列のうちのいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖CDR2(HCDR2)を含む、抗体またはそれらの抗原結合性断片も提供する。
【0018】
本発明はまた、表1に列挙したHCDR3のアミノ酸配列、またはこれらと実質的に類似する配列であって、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する配列のうちのいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖CDR3(HCDR3)を含む、抗体またはそれらの抗原結合性断片も提供する。
【0019】
本発明はまた、表1に列挙したLCDR1のアミノ酸配列、またはこれらと実質的に類似する配列であって、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する配列のうちのいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む、軽鎖CDR1(LCDR1)を含む、抗体またはそれらの抗原結合性断片も提供する。
【0020】
本発明はまた、表1に列挙したLCDR2のアミノ酸配列、またはこれらと実質的に類似する配列であって、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する配列のうちのいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む、軽鎖CDR2(LCDR2)を含む、抗体またはそれらの抗原結合性断片も提供する。
【0021】
本発明はまた、表1に列挙したLCDR3のアミノ酸配列、またはこれらと実質的に類似する配列であって、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する配列のうちのいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む、軽鎖CDR3(LCDR3)を含む、抗体またはそれらの抗原結合性断片も提供する。
【0022】
本発明はまた、表1に列挙したLCDR3のアミノ酸配列のうちのいずれかと対合させた、表1に列挙したHCDR3のアミノ酸配列のうちのいずれかを含む、HCDR3とLCDR3とのアミノ酸配列対(HCDR3/LCDR3)を含む、抗体またはそれらの抗原結合性断片も提供する。ある特定の実施形態に従い、本発明は、表1に列挙した、例示的な抗LAG3抗体のうちのいずれかの中に含有される、HCDR3/LCDR3のアミノ酸配列対を含む、抗体またはそれらの抗原結合性断片を提供する。ある特定の実施形態では、HCDR3/LCDR3のアミノ酸配列対は、配列番号392/400(例えば、H4sH15479P)、424/432(例えば、H4sH15482P)、および544/552(例えば、H4sH14813N)からなる群より選択される。
【0023】
本発明はまた、HCVRおよびLCVRを含む抗体またはそれらの抗原結合性断片であって、前記HCVRが、表1に列挙したアミノ酸配列と1アミノ酸異なるアミノ酸配列を含むHCDR1、表1に列挙したアミノ酸配列と1アミノ酸異なるアミノ酸配列を含むHCDR2、および表1に列挙したアミノ酸配列と1アミノ酸異なるアミノ酸配列を含むHCDR3を含む抗体またはそれらの抗原結合性断片も提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、HCVRおよびLCVRを含む抗体またはそれらの抗原結合性断片であって、前記LCVRが、表1に列挙したアミノ酸配列と1アミノ酸異なるアミノ酸配列を含むLCDR1、表1に列挙したアミノ酸配列と1アミノ酸異なるアミノ酸配列を含むLCDR2、および表1に列挙したアミノ酸配列と1アミノ酸異なるアミノ酸配列を含むLCDR3を含む抗体またはそれらの抗原結合性断片を提供する。例えば、本発明は、HCVRおよびLCVRを含む抗LAG3抗体またはそれらの抗原結合性断片であって、前記HCVRが、配列番号420のアミノ酸配列、または配列番号420と1アミノ酸異なるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号422のアミノ酸配列、または配列番号422と1アミノ酸異なるアミノ酸配列を含むHCDR2、および配列番号424のアミノ酸配列、または配列番号424と1アミノ酸異なるアミノ酸配列を含むHCDR3を含む抗体またはそれらの抗原結合性断片を提供する。別の例示的な実施形態では、本発明は、HCVRおよびLCVRを含む抗体またはそれらの抗原結合性断片であって、前記LCVRが、配列番号428のアミノ酸配列、または配列番号428と1アミノ酸異なるアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号430のアミノ酸配列、または配列番号430と1アミノ酸異なるアミノ酸配列を含むLCDR2、および配列番号432のアミノ酸配列、または配列番号432と1アミノ酸異なるアミノ酸配列を含むLCDR3を含む抗体またはそれらの抗原結合性断片を提供する。
【0024】
本発明は、表3に列挙したHCのアミノ酸配列、またはそれらに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらと実質的に類似する配列のうちのいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む重鎖を含む、抗体またはそれらの抗原結合性断片を提供する。
【0025】
本発明はまた、表3に列挙したLCのアミノ酸配列、またはそれらに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらと実質的に類似する配列のうちのいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、抗体またはそれらの抗原結合性断片も提供する。
【0026】
本発明はまた、表3に列挙したLCのアミノ酸配列のうちのいずれかと対合させた、表3に列挙したHCのアミノ酸配列のうちのいずれかを含む、HCおよびLCのアミノ酸配列対(HC/LC)を含む、抗体またはそれらの抗原結合性断片も提供する。ある特定の実施形態に従い、本発明は、表3に列挙した、例示的な抗LAG3抗体のうちのいずれかの中に含有される、HC/LCのアミノ酸配列対を含む、抗体またはそれらの抗原結合性断片を提供する。ある特定の実施形態では、HC/LCのアミノ酸配列対は、配列番号577/578、579/578、および580/581からなる群より選択される。
【0027】
本発明はまた、表1に列挙した、例示的な抗LAG3抗体のうちのいずれかの中に含有される、6つのCDRのセット(すなわち、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3)を含む、抗体またはそれらの抗原結合性断片も提供する。ある特定の実施形態では、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3のアミノ酸配列のセットは、配列番号388-390-392-396-398-400(例えば、H4sH15479P)、420-422-424-428-430-432(例えば、H4sH15482P)、および540-542-544-548-550-552(例えば、H4sH14813N)からなる群より選択される。
【0028】
関連する実施形態では、本発明は、表1に列挙した、例示的な抗LAG3抗体のうちのいずれかにより規定される、HCVR/LCVRのアミノ酸配列対内に含有される、6つのCDRのセット(すなわち、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3)を含む、抗体またはそれらの抗原結合性断片を提供する。例えば、本発明は、配列番号386/394(例えば、H4sH15479P)、418/426(例えば、H4sH15482P)、および538/546(例えば、H4sH14813N)からなる群より選択される、HCVR/LCVRのアミノ酸配列対内に含有されるHCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3のアミノ酸配列のセットを含む、抗体またはそれらの抗原結合性断片を含む。当技術分野では、HCVRおよびLCVRのアミノ酸配列内のCDRを同定するための方法および技法が周知であり、本明細書で開示される、指定されたHCVRおよび/またはLCVRのアミノ酸配列内のCDRを同定するのに使用することができる。CDRの境界を同定するのに使用しうる、例示的な常套手段は、例えば、Kabatによる定義、Chothiaによる定義、およびAbMによる定義を含む。一般に、Kabatによる定義という用語は、配列可変性に基づき、Chothiaによる定義という用語は、構造的なループ領域の位置に基づき、AbM定義とは、Kabat法とChothia法との折衷である。例えば、Kabat、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991年);Al-Lazikaniら、J. Mol. Biol.、273巻:927~948頁(1997年);およびMartinら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、86巻:9268~9272頁(1989年)を参照されたい。公表のデータベースもまた、抗体内のCDR配列を同定するために利用可能である。
【0029】
本発明は、グリコシル化パターンの修飾を有する抗LAG3抗体を含む。一部の実施形態では、所望されないグリコシル化部位を除去する修飾が、例えば、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)機能を増大させるのに有用な場合もあり、オリゴ糖鎖内に存在するフコース部分を欠く抗体が、これに有用な場合もある(Shieldら(2002年)、JBC、277巻:26733頁を参照されたい)。他の適用では、補体依存性細胞傷害(CDC)を修飾するために、ガラクトシル化の修飾を施すことができる。
【0030】
本発明は、Fcドメインを含む抗LAG3抗体を含み、この場合、Fcドメインは、本明細書の別の箇所で記載される、IgG1アイソタイプまたはIgG4アイソタイプを含む。ある特定の実施形態では、Fcドメインは、配列番号569、570、571、572、および573からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0031】
本発明はまた、LAG3への特異的結合について、HCVRのCDRおよびLCVRのCDRを含む抗体またはその抗原結合性断片であって、HCVRおよびLCVRの各々が、表1に列挙したHCVR配列およびLCVR配列から選択されるアミノ酸配列を有する抗体またはその抗原結合性断片と競合する抗体およびそれらの抗原結合性断片も提供する。
【0032】
本発明はまた、LAG3の、MHCクラスIIへの結合を遮断する、単離抗体およびそれらの抗原結合性断片も提供する。一部の実施形態では、LAG3の結合を遮断する抗体またはその抗原結合性断片は、LAG3上の、MHCクラスIIと同じエピトープに結合する場合もあり、LAG3上の、MHCクラスIIと異なるエピトープに結合する場合もある。
【0033】
本発明はまた、ヒトまたは他の種に由来するLAG3に特異的に結合する、抗体およびそれらの抗原結合性断片も提供する。ある特定の実施形態では、抗体は、ヒトLAG3および/またはサルLAG3に結合しうる。
【0034】
本発明はまた、LAG3への結合について、HCVRのCDRおよびLCVRのCDRを含む基準抗体またはその抗原結合性断片であって、HCVRおよびLCVRの各々が、表1に列挙したHCVR配列およびLCVR配列から選択されるアミノ酸配列を有する抗体またはその抗原結合性断片と交差競合する抗体およびそれらの抗原結合性断片も提供する。
【0035】
本発明はまた、HCVRのCDRおよびLCVRのCDRを含む基準抗体またはその抗原結合性断片であって、HCVRおよびLCVRの各々が、表1に列挙したHCVR配列およびLCVR配列から選択されるアミノ酸配列を有する抗体またはその抗原結合性断片と同じエピトープに結合する、抗体およびそれらの抗原結合性断片も提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、HCVRのCDRおよびLCVRのCDRを含む基準抗体またはその抗原結合性断片であって、HCVR/LCVRのアミノ酸配列対が、配列番号418/426を有する抗体またはその抗原結合性断片と同じエピトープに結合する、抗体およびそれらの抗原結合性断片を提供する。
【0036】
本発明はまた、ヒトLAG3の細胞外ドメイン(配列番号588)内に含有される、1または複数のアミノ酸と相互作用する、抗LAG3抗体も含む。ある特定の実施形態では、本発明は、(a)配列番号588のアミノ酸28~69;(b)配列番号588のアミノ酸28~71;(c)配列番号588のアミノ酸31~52;および(d)配列番号588のアミノ酸32~69からなる群より選択されるアミノ酸配列と相互作用する、抗LAG3抗体およびそれらの抗原結合性断片を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、配列番号589内に含有される、1または複数のアミノ酸と相互作用する、抗LAG3抗体およびそれらの抗原結合性断片を提供し、例えば、本発明は、配列番号589内に含有される、少なくとも5アミノ酸、少なくとも10アミノ酸、または少なくとも20アミノ酸と相互作用する、抗LAG3抗体およびそれらの抗原結合性断片を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、配列番号589のアミノ酸配列(配列番号588のアミノ酸28~71に対応する)と相互作用する、抗LAG3抗体およびそれらの抗原結合性断片を提供する。
【0037】
一実施形態では、本発明は、以下の特徴:(a)ヒトLAG3および/またはカニクイザルLAG3に特異的に結合すること;(b)LAG3の、MHCクラスIIへの結合を遮断すること;(c)LAG3により誘導されるT細胞の下方調節を遮断し、T細胞によるシグナル伝達をレスキューすること;および(d)腫瘍の増殖を抑制し、がんを伴う被験体における生存を増大させることのうちの1または複数を有する、組換えヒトモノクローナル抗体または抗原結合性断片を提供する。
【0038】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、アゴニストの様式で、LAG3に特異的に結合しうる、すなわち、LAG3の結合および/または活性を増強するか、または刺激することが可能であり、他の実施形態では、抗体は、アンタゴニストの様式で、LAG3に特異的に結合しうる、すなわち、LAG3が、そのリガンドに結合することを遮断しうる。
【0039】
ある特定の実施形態では、本発明の抗体または抗原結合性断片は、LAG3への第1の結合特異性と、第2の標的エピトープに対する第2の結合特異性とを含む二特異性である。第2の標的エピトープは、LAG3上の別のエピトープの場合もあり、異なるタンパク質上の別のエピトープの場合もある。ある特定の実施形態では、第2の標的エピトープは、異なるT細胞、B細胞、腫瘍細胞、またはウイルス感染細胞を含む、異なる細胞上のエピトープでありうる。
【0040】
第2の態様では、本発明は、抗LAG3抗体またはそれらの部分をコードする核酸分子を提供する。例えば、本発明は、表1に列挙したHCVRのアミノ酸配列のうちのいずれかをコードする核酸分子を提供するが、ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙したHCVRの核酸配列、またはそれらに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらと実質的に類似する配列のうちのいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0041】
本発明はまた、表1に列挙したLCVRのアミノ酸配列のうちのいずれかをコードする核酸分子も提供するが、ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙したLCVRの核酸配列、またはそれらに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらと実質的に類似する配列のうちのいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0042】
本発明はまた、表1に列挙したHCDR1のアミノ酸配列のうちのいずれかをコードする核酸分子も提供するが、ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙したHCDR1の核酸配列、またはそれらに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらと実質的に類似する配列のうちのいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0043】
本発明はまた、表1に列挙したHCDR2のアミノ酸配列のうちのいずれかをコードする核酸分子も提供するが、ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙したHCDR2の核酸配列、またはそれらに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらと実質的に類似する配列のうちのいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0044】
本発明はまた、表1に列挙したHCDR3のアミノ酸配列のうちのいずれかをコードする核酸分子も提供するが、ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙したHCDR3の核酸配列、またはそれらに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらと実質的に類似する配列のうちのいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0045】
本発明はまた、表1に列挙したLCDR1のアミノ酸配列のうちのいずれかをコードする核酸分子も提供するが、ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙したLCDR1の核酸配列、またはそれらに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらと実質的に類似する配列のうちのいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0046】
本発明はまた、表1に列挙したLCDR2のアミノ酸配列のうちのいずれかをコードする核酸分子も提供するが、ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙したLCDR2の核酸配列、またはそれらに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらと実質的に類似する配列のうちのいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0047】
本発明はまた、表1に列挙したLCDR3のアミノ酸配列のうちのいずれかをコードする核酸分子も提供するが、ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙したLCDR3の核酸配列、またはそれらに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらと実質的に類似する配列のうちのいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0048】
本発明はまた、HCVRをコードする核酸分子であって、HCVRが、3つのCDR(すなわち、HCDR1-HCDR2-HCDR3)のセットを含み、HCDR1-HCDR2-HCDR3のアミノ酸配列のセットが、表1に列挙した、例示的な抗LAG3抗体のうちのいずれかにより規定される核酸分子も提供する。
【0049】
本発明はまた、LCVRをコードする核酸分子であって、LCVRが、3つのCDR(すなわち、LCDR1-LCDR2-LCDR3)のセットを含み、LCDR1-LCDR2-LCDR3のアミノ酸配列のセットが、表1に列挙した、例示的な抗LAG3抗体のうちのいずれかにより規定される核酸分子も提供する。
【0050】
本発明はまた、HCVRおよびLCVRの両方をコードする核酸分子であって、HCVRが、表1に列挙したHCVRのアミノ酸配列のうちのいずれかのアミノ酸配列を含み、LCVRが、表1に列挙したLCVRのアミノ酸配列のうちのいずれかのアミノ酸配列を含む核酸分子も提供する。ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙したHCVRの核酸配列、またはそれらに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらと実質的に類似する配列のうちのいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、および表2に列挙したLCVRの核酸配列、またはそれらに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらと実質的に類似する配列のうちのいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列を含む。本発明のこの態様に従う、ある特定の実施形態では、核酸分子は、HCVRおよびLCVRをコードし、HCVRおよびLCVRのいずれも、表1に列挙した、同じ抗LAG3抗体に由来する。
【0051】
本発明は、表3で列挙した重鎖アミノ酸配列のうちのいずれかをコードする核酸分子を提供する。本発明はまた、表3で列挙した軽鎖アミノ酸配列のうちのいずれかをコードする核酸分子も提供する。
【0052】
本発明はまた、重鎖(HC)および軽鎖(LC)の両方をコードする核酸分子であって、HCが、表3で列挙したHCアミノ酸配列のうちのいずれかを含み、LCが、表3で列挙したLCアミノ酸配列のうちのいずれかを含む核酸分子も提供する。
【0053】
関連する態様では、本発明は、抗LAG3抗体の重鎖可変領域または軽鎖可変領域を含むポリペプチドを発現することが可能な組換え発現ベクターを提供する。例えば、本発明は、上記で言及した核酸分子のうちのいずれか、すなわち、表1で明示されるHCVR配列、LCVR配列、および/またはCDR配列のうちのいずれかをコードする核酸分子を含む組換え発現ベクターを含む。本発明はまた、抗LAG3抗体の重鎖または軽鎖を含むポリペプチドを発現することが可能な組換え発現ベクターも提供する。例えば、本発明は、上記で言及した核酸分子のうちのいずれか、すなわち、表3で明示される重鎖配列または軽鎖配列のうちのいずれかをコードする核酸分子を含む組換え発現ベクターを含む。本発明の範囲内にはまた、このようなベクターを導入した宿主細胞のほか、抗体または抗体断片の産生を可能とする条件下で宿主細胞を培養し、このようにして作製された抗体および抗体断片を回収することにより、抗体またはその部分を作製する方法も含まれる。
【0054】
第3の態様では、本発明は、LAG3に特異的に結合する、組換えヒト抗体またはその断片と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。関連する態様では、本発明は、抗LAG3抗体と、第2の治療剤との組み合わせである組成物を特色とする。一実施形態では、第2の治療剤は、抗LAG3抗体と有利に組み合わせた、任意の薬剤である。抗LAG3抗体と有利に組み合わせうる、例示的な薬剤は、限定なしに述べると、LAG3に結合し、かつ/もしくはLAG3によるシグナル伝達をモジュレートする他の薬剤(他の抗体またはその抗原結合性断片などを含む)、および/またはLAG3に直接結合しないが、それにも拘らず、免疫細胞の活性化をモジュレートする薬剤を含む。本発明の抗LAG3抗体を伴うさらなる組み合わせ療法および共製剤(co-formulation)については、本明細書の別の箇所で開示する。
【0055】
第4の態様では、本発明は、被験体における免疫応答をモジュレートする方法であって、治療有効量の、本発明の抗LAG3抗体またはそれらの抗原結合性断片を、それを必要とする被験体へと投与するステップを含む方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、被験体における免疫応答を増強する方法であって、被験体へと、有効量の、本発明の抗体またはその断片であって、LAG3に結合する抗体またはその断片を投与するステップを含む方法を提供する。一実施形態では、本発明は、被験体におけるT細胞の活性化を刺激するかまたは増強する方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、T細胞の活性をレスキューする方法であって、T細胞の活性がレスキューされるように、T細胞を、有効量の、本発明の抗体と接触させるステップを含む方法を提供する。一実施形態では、本発明は、被験体における調節性T(Treg)細胞を阻害する方法であって、治療有効量の、本発明の抗体またはその抗原結合性断片を、それを必要とする被験体へと投与するステップを含む方法を提供する。ある特定の実施形態では、それを必要とする被験体は、がんまたはウイルス感染などの疾患または障害を患っている場合がある。ある特定の実施形態では、本発明は、LAG3により媒介される、T細胞活性の阻害をレスキューする方法であって、T細胞を、有効量の、本発明の抗体と接触させるステップを含む方法を提供する。
【0056】
第5の態様では、本発明は、本発明の抗LAG3抗体または抗原結合性部分を使用して、被験体におけるがんまたはウイルス感染などの疾患または障害を処置するための治療法であって、本発明の抗体または抗体断片を含む、治療有効量の医薬組成物を、それを必要とする被験体へと投与するステップを含む治療法を提供する。処置される障害は、LAG3の活性またはシグナル伝達の刺激または阻害により、改善されるか、好転される(ameliorate)か、阻害されるか、または防止される、任意の疾患または状態である。ある特定の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片を、第2の治療剤と組み合わせて、それを必要とする被験体へと投与する。第2の治療剤は、別のT細胞共阻害剤に対する抗体、腫瘍細胞抗原に対する抗体、T細胞受容体に対する抗体、ウイルス感染細胞上のエピトープに対する抗体、細胞傷害剤、抗がん薬、抗ウイルス薬、抗炎症薬(例えば、コルチコステロイド)、化学療法剤、放射線療法、免疫抑制剤、および当技術分野で公知の、任意の他の薬物または治療からなる群より選択することができる。ある特定の実施形態では、第2の治療剤は、そのような副作用が生じる場合に、本発明の抗体またはその抗原結合性断片と関連する、任意の可能な副作用に拮抗するかまたはこれを低減する一助となる薬剤でありうる。
【0057】
ある特定の実施形態では、本発明は、腫瘍の増殖を抑制するための方法を提供する。例えば、本発明は、被験体における、原発性腫瘍または転移性腫瘍に起因する、腫瘍の増殖の抑制を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、がんを伴う被験体の生存(例えば、無進行生存または全生存)を増強する方法を提供する。がんの例は、血液がん(例えば、リンパ腫、骨髄腫、または白血病などの血液悪性疾患)、脳がん(例えば、多形神経膠芽腫)、肺がん(例えば、非小細胞肺がん)、頭頚部扁平上皮がん、肝細胞癌、腎細胞癌、黒色腫、中皮腫、卵巣がん、膀胱がん、乳がん、骨がん、結腸直腸がん、前立腺がん、および結腸がんを含む、原発がんおよび/または再発がんを含むがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、本発明は、確立された腫瘍の増殖を阻害または抑制するための方法を提供する。方法は、それを必要とする被験体へと、治療有効量の、本発明の抗LAG3抗体を含む医薬組成物を投与するステップを含む。ある特定の実施形態では、抗体を、プログラム細胞死1(PD-1)阻害剤(例えば、ニボルマブまたはREGN2810などの抗PD-1抗体)、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)阻害剤(例えば、抗PD-L1抗体)、血管内皮増殖因子(VEGF)アンタゴニスト(例えば、アフリベルセプト、ベバシズマブ)、アンギオポエチン2(Ang2)阻害剤(例えば、ネスバクマブ(nesvacumab)などの抗Ang2抗体)、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)阻害剤(例えば、イピリムマブ)、CD20×CD3二特異性抗体、細胞毒素、化学療法剤、および放射線療法からなる群より選択される第2の治療剤と組み合わせて投与する。がんを処置するための使用において、本発明の抗LAG3抗体と組み合わせて使用されうるさらなる治療/治療剤のさらなる例については、本明細書の別の箇所で記載する。
【0058】
抗体またはその断片は、皮下、静脈内、皮内、腹腔内、経口、筋内、または頭蓋内投与することができる。抗体またはその断片は、被験体の体重1kg当たり約0.1mg~約100mgの用量で投与することができる。
【0059】
本発明はまた、がんなど、LAG3の結合および/またはシグナル伝達の遮断から利益を得る疾患または障害を処置するための医薬の製造における、本発明の抗LAG3抗体またはそれらの抗原結合性断片の使用も含む。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
ヒトリンパ球活性化遺伝子3(LAG3)タンパク質に特異的に結合する単離抗体またはその抗原結合性断片であって、水素/重水素交換により決定される通り、LAG3の細胞外ドメイン内に含有される、1または複数のアミノ酸(配列番号588のアミノ酸28~71)と相互作用する、抗体またはその抗原結合性断片。
(項目2)
水素/重水素交換により決定される通り、配列番号589内に含有される、1または複数のアミノ酸と相互作用する、項目1に記載の単離抗体またはその抗原結合性断片。
(項目3)
(a)配列番号588のアミノ酸28~69;(b)配列番号588のアミノ酸28~71;(c)配列番号588のアミノ酸31~52;および(d)配列番号588のアミノ酸32~69からなる群より選択されるアミノ酸配列と相互作用する、項目1に記載の単離抗体またはその抗原結合性断片。
(項目4)
配列番号589内に含有される、少なくとも10のアミノ酸と相互作用する、項目2に記載の単離抗体またはその抗原結合性断片。
(項目5)
配列番号589内に含有される、少なくとも20のアミノ酸と相互作用する、項目2または4に記載の単離抗体またはその抗原結合性断片。
(項目6)
配列番号589のアミノ酸配列と相互作用する、項目1から5のいずれか一項に記載の単離抗体またはその抗原結合性断片。
(項目7)
前記抗体またはその抗原結合性断片が、重鎖可変領域(HCVR)内に含有される、3つの重鎖相補性決定領域(CDR)(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)と、軽鎖可変領域(LCVR)内に含有される、3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)とを含み、前記HCVRが、
(i)配列番号418のアミノ酸配列、
(ii)配列番号418に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列、
(iii)配列番号418に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列;または
(iv)5カ所を超えないアミノ酸置換を有する、配列番号418のアミノ酸配列
を含み;前記LCVRが、
(i)配列番号426のアミノ酸配列、
(ii)配列番号426に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列、
(iii)配列番号426に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列;または
(iv)5カ所を超えないアミノ酸置換を有する、配列番号426のアミノ酸配列
を含む、項目1から6のいずれか一項に記載の単離抗体。
(項目8)
(a)25℃での表面プラズモン共鳴アッセイにおいて測定される通り、約1.5nM未満の結合解離平衡定数(KD)で、単量体ヒトLAG3に結合すること;
(b)37℃での表面プラズモン共鳴アッセイにおいて測定される通り、約2nM未満のKDで、単量体ヒトLAG3に結合すること;
(c)25℃での表面プラズモン共鳴アッセイにおいて測定される通り、約20pM未満のKDで、二量体ヒトLAG3に結合すること;
(d)37℃での表面プラズモン共鳴アッセイにおいて測定される通り、約90pM未満のKDで、二量体ヒトLAG3に結合すること;
(e)フローサイトメトリーアッセイにおいて測定される通り、約2nM未満のEC50で、hLAG3発現細胞に結合すること;
(f)フローサイトメトリーアッセイにおいて測定される通り、約2.3nM未満のEC50で、mfLAG3発現細胞に結合すること;
(g)細胞接着アッセイにより決定される通り、約20nM未満のIC50で、hLAG3の、ヒトMHCクラスIIへの結合を遮断すること;
(h)細胞接着アッセイにより決定される通り、約15nM未満のIC50で、hLAG3の、マウスMHCクラスIIへの結合を遮断すること;
(i)細胞接着アッセイにより決定される通り、hLAG3の、MHCクラスIIへの結合を90%超遮断すること;
(j)ルシフェラーゼレポーターアッセイにおいて決定される通り、約2.5nM未満のEC50で、LAG3により媒介される、T細胞活性の阻害をレスキューすること;および
(k)蛍光アッセイにおいて決定される通り、約1.2nM未満のEC50で、活性化CD4+およびCD8+ T細胞に結合すること
からなる群より選択される、1または複数の特性を有する、項目1から7のいずれか一項に記載の単離抗体またはその抗原結合性断片。
(項目9)
5カ所を超えないアミノ酸置換を有する、配列番号418のアミノ酸配列を含むHCVRを含む、項目7または8に記載の単離抗体またはその抗原結合性断片。
(項目10)
5カ所を超えないアミノ酸置換を有する、配列番号426のアミノ酸配列を含むLCVRを含む、項目7から9のいずれか一項に記載の単離抗体またはその抗原結合性断片。
(項目11)
5カ所を超えないアミノ酸置換を有する、配列番号418のアミノ酸配列を含むHCVR、および5カ所を超えないアミノ酸置換を有する、配列番号426のアミノ酸配列を含むLCVRを含む、項目7から9のいずれか一項に記載の単離抗体またはその抗原結合性断片。
(項目12)
配列番号420のアミノ酸配列、または配列番号420と1アミノ酸異なるアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号422のアミノ酸配列、または配列番号422と1アミノ酸異なるアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号424のアミノ酸配列、または配列番号424と1アミノ酸異なるアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号428のアミノ酸配列、または配列番号428と1アミノ酸異なるアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号430のアミノ酸配列、または配列番号430と1アミノ酸異なるアミノ酸配列を含むLCDR2、および配列番号432のアミノ酸配列、または配列番号432と1アミノ酸異なるアミノ酸配列を含むLCDR3を含む、項目7または8に記載の単離抗体またはその抗原結合性断片。
(項目13)
配列番号418のアミノ酸配列を有するHCVRを含む、項目7から12のいずれか一項に記載の単離抗体またはその抗原結合性断片。
(項目14)
配列番号426のアミノ酸配列を有するLCVRを含む、項目7から13のいずれか一項に記載の単離抗体またはその抗原結合性断片。
(項目15)
配列番号420-422-424-428-430-432のアミノ酸配列を含む、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3を含む、項目7または8に記載の単離抗体またはその抗原結合性断片。
(項目16)
配列番号418/426のHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む、項目15に記載の単離抗体またはその抗原結合性断片。
(項目17)
重鎖および軽鎖を含み、前記重鎖が、配列番号579のアミノ酸配列を含む、項目16に記載の単離抗体。
(項目18)
重鎖および軽鎖を含み、前記軽鎖が、配列番号578のアミノ酸配列を含む、項目16に記載の単離抗体。
(項目19)
配列番号579/578の重鎖/軽鎖アミノ酸配列対を含む、項目17または18に記載の単離抗体または抗原結合性断片。
(項目20)
LAG3への結合について、配列番号418のアミノ酸配列を有するHCVRの3つのCDR、および配列番号426のアミノ酸配列を有するLCVRの3つのCDRを含む抗体と競合する、抗体またはその抗原結合性断片。
(項目21)
LAG3上の、配列番号418のアミノ酸配列を有するHCVRの3つのCDR、および配列番号426のアミノ酸配列を有するLCVRの3つのCDRを含む抗体と同じエピトープに結合する、抗体またはその抗原結合性断片。
(項目22)
(a)25℃での表面プラズモン共鳴アッセイにおいて測定される通り、約1.5nM未満の結合解離平衡定数(KD)で、単量体ヒトLAG3に結合すること;
(b)37℃での表面プラズモン共鳴アッセイにおいて測定される通り、約2nM未満のKDで、単量体ヒトLAG3に結合すること;
(c)25℃での表面プラズモン共鳴アッセイにおいて測定される通り、約20pM未満のKDで、二量体ヒトLAG3に結合すること;
(d)37℃での表面プラズモン共鳴アッセイにおいて測定される通り、約90pM未満のKDで、二量体ヒトLAG3に結合すること;
(e)フローサイトメトリーアッセイにおいて測定される通り、約2nM未満のEC50で、hLAG3発現細胞に結合すること;
(f)フローサイトメトリーアッセイにおいて測定される通り、約2.3nM未満のEC50で、mfLAG3発現細胞に結合すること;
(g)細胞接着アッセイにより決定される通り、約20nM未満のIC50で、hLAG3の、ヒトMHCクラスIIへの結合を遮断すること;
(h)細胞接着アッセイにより決定される通り、約15nM未満のIC50で、hLAG3の、マウスMHCクラスIIへの結合を遮断すること;
(i)細胞接着アッセイにより決定される通り、hLAG3の、MHCクラスIIへの結合を90%超遮断すること;
(j)ルシフェラーゼレポーターアッセイにおいて決定される通り、約2.5nM未満のEC50で、LAG3により媒介される、T細胞活性の阻害をレスキューすること;および
(k)蛍光アッセイにおいて決定される通り、約1.2nM未満のEC50で、活性化CD4+およびCD8+ T細胞に結合すること
からなる群より選択される、1または複数の特性を有する、項目20または21に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
(項目23)
項目1から22のいずれか一項に記載の単離抗体またはその抗原結合性断片と、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む、医薬組成物。
(項目24)
項目1から22のいずれか一項に記載の抗体のHCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む、単離ポリヌクレオチド分子。
(項目25)
項目1から22のいずれか一項に記載の抗体のLCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む、単離ポリヌクレオチド分子。
(項目26)
項目24または25に記載のポリヌクレオチド配列を含むベクター。
(項目27)
項目26に記載のベクターを発現する細胞。
(項目28)
被験体における腫瘍または腫瘍細胞の増殖を阻害する方法であって、それを必要とする前記被験体へと、治療有効量の、項目1から22のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含む、方法。
(項目29)
前記腫瘍が、原発性腫瘍または再発性腫瘍である、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記腫瘍が、確立された腫瘍である、項目28に記載の方法。
(項目31)
前記腫瘍が、血液がん、脳がん、腎細胞がん、卵巣がん、膀胱がん、前立腺がん、乳がん、肝細胞癌、骨がん、結腸がん、非小細胞肺がん、頭頚部扁平上皮がん、結腸直腸がん、中皮腫、B細胞リンパ腫、および黒色腫からなる群より選択される疾患または障害を伴う被験体に存在する、項目28から30のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
前記抗体またはその抗原結合性断片を、初期用量、その後に1回または複数回の二次用量として投与し、各回の二次用量を、直前の用量の1~4週間後に投与する、項目28から31のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
前記抗体または抗原結合性断片を、前記被験体の体重1kg当たり約1、3、または10mgの用量で投与する、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記抗体またはその抗原結合性断片を、前記被験体へと、第2の治療剤と組み合わせて投与する、項目28から33のいずれか一項に記載の方法。
(項目35)
前記第2の治療剤が、CTLA阻害剤、腫瘍特異抗原に対する抗体、ウイルス感染細胞抗原に対する抗体、PD-L1阻害剤、CD20阻害剤、CD20およびCD3に対する二特異性抗体、抗酸化剤などの栄養補助食品、VEGFアンタゴニスト、化学療法剤、細胞傷害剤、放射線、NSAID、コルチコステロイド、および前記疾患または前記障害と関連する少なくとも1つの症状を好転させるのに有用な、任意の他の治療からなる群より選択される、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記第2の治療剤が、PD-1阻害剤である、項目34に記載の方法。
(項目37)
前記PD-1阻害剤が、REGN2810、ニボルマブ、またはペンブロリズマブである、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記PD-1阻害剤を、前記被験体の体重1kg当たり1、3、または10mgの用量で投与する、項目36または37に記載の方法。
(項目39)
前記抗体またはその抗原結合性断片を、皮下、静脈内、皮内、腹腔内、経口、筋内、または頭蓋内投与する、項目28から38のいずれか一項に記載の方法。
(項目40)
LAG3をアンタゴナイズすることにより処置可能な疾患または障害を処置するための方法であって、それを必要とする被験体へと、治療有効量の、項目1から22のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含む、方法。
(項目41)
前記疾患または前記障害が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、およびサル免疫不全ウイルス(SIV)からなる群より選択されるウイルスにより引き起こされる慢性ウイルス感染である、項目40に記載の方法。
(項目42)
前記疾患または前記障害が、血液がん、脳がん、腎細胞がん、卵巣がん、膀胱がん、前立腺がん、乳がん、肝細胞癌、骨がん、結腸がん、非小細胞肺がん、頭頚部扁平上皮がん、結腸直腸がん、中皮腫、B細胞リンパ腫、および黒色腫からなる群より選択される、項目40に記載の方法。
【0060】
他の実施形態は、以下の詳細な説明の再検討から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】
図1は、本明細書の実施例8で記載される、ルシフェラーゼベースのLAG3バイオアッセイについての概略図である。パネル(A):「二特異性」方式:不活性のJurkat由来のT細胞を、CD3×CD20二特異性抗体を介してクラスタリングする、T細胞受容体(TCR)により活性化させる。パネル(B):「ペプチド」方式:この方式では、不活性のJurkat由来のT細胞を、特異的MHC/ペプチド複合体により活性化させる(MBP85-99ペプチドと複合体化したMHCIIタンパク質である、HLA-DR2ABとの、Ob2F3 TCRヘテロ二量体)。LAG3の、DR2への結合は、活性化したJurkat由来のT細胞内の応答を弱める。LAG3遮断抗体は、活性化したJurkat由来のT細胞内の応答をレスキューする。
【0062】
【
図2A】
図2A~2Bは、単独および抗マウスPD-1抗体と組み合わせた抗マウスLAG3抗体の、確立されたColon 26腫瘍に対する、in vivoにおける有効性の結果(実施例10において記載する)についてまとめる。
図2A:各処置群内の平均腫瘍容量(mm
3±SEM)を、腫瘍植込み後、複数の時点において測定した。処置は、平均腫瘍容量が50mm
3に到達した、14日目に開始した。処置日を、矢印で指し示す。全ての抗体は、10mg/kgで、腹腔内(i.p.)投与した。
図2B:各処置群内の個々の腫瘍容量は、植込み後35日目に測定した。統計学的有意性は、ダネットの検定後多重比較を伴う、一元ANOVAにより決定した(
*p<0.05)。
図2A~2B:処置群:アイソタイプ対照ラットIgG2a+マウスIgG1対照抗体(丸);抗マウスPD-1抗体+マウスIgG1対照(上向きの三角);抗マウスLAG3抗体+ラットIgG2a対照(四角);抗マウスPD-1抗体+抗マウスLAG3抗体(下向きの三角)。
【
図2B】
図2A~2Bは、単独および抗マウスPD-1抗体と組み合わせた抗マウスLAG3抗体の、確立されたColon 26腫瘍に対する、in vivoにおける有効性の結果(実施例10において記載する)についてまとめる。
図2A:各処置群内の平均腫瘍容量(mm
3±SEM)を、腫瘍植込み後、複数の時点において測定した。処置は、平均腫瘍容量が50mm
3に到達した、14日目に開始した。処置日を、矢印で指し示す。全ての抗体は、10mg/kgで、腹腔内(i.p.)投与した。
図2B:各処置群内の個々の腫瘍容量は、植込み後35日目に測定した。統計学的有意性は、ダネットの検定後多重比較を伴う、一元ANOVAにより決定した(
*p<0.05)。
図2A~2B:処置群:アイソタイプ対照ラットIgG2a+マウスIgG1対照抗体(丸);抗マウスPD-1抗体+マウスIgG1対照(上向きの三角);抗マウスLAG3抗体+ラットIgG2a対照(四角);抗マウスPD-1抗体+抗マウスLAG3抗体(下向きの三角)。
【0063】
【
図3A】
図3A~3Bは、単独および抗マウスPD-1抗体と組み合わせた抗マウスLAG3抗体の、確立されたMC38に対する、in vivoにおける有効性の結果(実施例11において記載する)についてまとめる。
図3A:各処置群内の平均腫瘍容量(mm
3±SEM)を、腫瘍植込み後、複数の時点において測定した。処置は、平均腫瘍容量が45mm
3に到達した、8日目に開始した。処置日を、矢印で指し示す。
図3B:各処置群内の個々の腫瘍容量は、植込み後23日目に測定した。統計学的有意性は、ダネットの検定後多重比較を伴う、一元ANOVAにより決定した(
****p<0.0001)。
図3A~3B:処置群:アイソタイプ対照ラットIgG2a+マウスIgG1(丸)、抗マウスPD-1抗体+mIgG1対照(上向きの三角)、抗マウスLAG3抗体+ラットIgG2a対照(四角)、および抗マウスPD-1+抗マウスLAG3抗体(下向きの三角)。
【
図3B】
図3A~3Bは、単独および抗マウスPD-1抗体と組み合わせた抗マウスLAG3抗体の、確立されたMC38に対する、in vivoにおける有効性の結果(実施例11において記載する)についてまとめる。
図3A:各処置群内の平均腫瘍容量(mm
3±SEM)を、腫瘍植込み後、複数の時点において測定した。処置は、平均腫瘍容量が45mm
3に到達した、8日目に開始した。処置日を、矢印で指し示す。
図3B:各処置群内の個々の腫瘍容量は、植込み後23日目に測定した。統計学的有意性は、ダネットの検定後多重比較を伴う、一元ANOVAにより決定した(
****p<0.0001)。
図3A~3B:処置群:アイソタイプ対照ラットIgG2a+マウスIgG1(丸)、抗マウスPD-1抗体+mIgG1対照(上向きの三角)、抗マウスLAG3抗体+ラットIgG2a対照(四角)、および抗マウスPD-1+抗マウスLAG3抗体(下向きの三角)。
【0064】
【
図4A】
図4A~4Bは、実験の終了時において、(実施例11において記載する)腫瘍を保有するマウスから回収された、流入領域リンパ節(DLN)内(A)および脾臓内(B)で、Taqman解析により検討された、マウスIFNγ遺伝子およびCD8b遺伝子の発現レベル(マウスシクロフィリンBの発現に対して正規化された)を示す(
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001)。
【
図4B】
図4A~4Bは、実験の終了時において、(実施例11において記載する)腫瘍を保有するマウスから回収された、流入領域リンパ節(DLN)内(A)および脾臓内(B)で、Taqman解析により検討された、マウスIFNγ遺伝子およびCD8b遺伝子の発現レベル(マウスシクロフィリンBの発現に対して正規化された)を示す(
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001)。
【0065】
【
図5A】
図5A~5Bは、抗ヒトLAG3抗体(「mAb1」)および抗ヒトPD-1抗体(REGN2810)の、MC38腫瘍に対する、in vivoにおける有効性(実施例12において記載する)についてまとめる。
図5A:腫瘍植込み後、複数の時点における、各処置群内の平均腫瘍容量(mm
3±SEM)。処置日を、矢印で指し示す。
図5B:各群内の個々の腫瘍容量は、24日間にわたりモニタリングした。24日目における、各群内の無腫瘍マウスの数を示す。
図5A~5B:処置群:25mg/kgのmAb1(抗hLAG3)(四角);10mg/kgのREGN2810(抗hPD-1)(上向きの三角)、および25mg/kgのヒトアイソタイプ対照抗体(丸)。
【
図5B】
図5A~5Bは、抗ヒトLAG3抗体(「mAb1」)および抗ヒトPD-1抗体(REGN2810)の、MC38腫瘍に対する、in vivoにおける有効性(実施例12において記載する)についてまとめる。
図5A:腫瘍植込み後、複数の時点における、各処置群内の平均腫瘍容量(mm
3±SEM)。処置日を、矢印で指し示す。
図5B:各群内の個々の腫瘍容量は、24日間にわたりモニタリングした。24日目における、各群内の無腫瘍マウスの数を示す。
図5A~5B:処置群:25mg/kgのmAb1(抗hLAG3)(四角);10mg/kgのREGN2810(抗hPD-1)(上向きの三角)、および25mg/kgのヒトアイソタイプ対照抗体(丸)。
【0066】
【
図6A】
図6A~6Cは、単独および抗ヒトPD-1抗体(REGN2810)と組み合わせた抗ヒトLAG3抗体(「mAb1」)の、MC38腫瘍に対する、in vivoにおける有効性(実施例13において記載する)についてまとめる。
図6A:腫瘍植込み後、複数の時点における、各処置群内の平均腫瘍容量(mm
3±SEM)。処置日を、矢印で指し示す。
図6B:各処置群内の個々の腫瘍容量は、植込み後22日目に測定した。統計学的有意性は、テューキーの検定後多重比較を伴う一元ANOVAにより決定した(
*p<0.05;
**p<0.01)。
図6A~6B:処置群:25mg/kgのmAb1(抗hLAG3)(菱形);10mg/kgのREGN2810(抗hPD-1)(四角);25mg/kgのmAb1(抗hLAG3)と、10mg/kgのREGN2810(抗hPD-1)との組み合わせ(上向きの三角);25mg/kgのヒトアイソタイプ対照(丸)。
図6C:処置されたマウスにおける、無腫瘍生存パーセント。統計学的有意性は、ログランク(マンテル-コックス)検定により決定した(
****p<0.0001)。処置群:25mg/kgのmAb1(抗hLAG3)(菱形);10mg/kgのREGN2810(抗hPD-1)(下向きの三角);25mg/kgのmAb1(抗hLAG3)と、10mg/kgのREGN2810(抗hPD-1)との組み合わせ(上向きの三角);25mg/kgのヒトアイソタイプ対照(丸)。
【
図6B】
図6A~6Cは、単独および抗ヒトPD-1抗体(REGN2810)と組み合わせた抗ヒトLAG3抗体(「mAb1」)の、MC38腫瘍に対する、in vivoにおける有効性(実施例13において記載する)についてまとめる。
図6A:腫瘍植込み後、複数の時点における、各処置群内の平均腫瘍容量(mm
3±SEM)。処置日を、矢印で指し示す。
図6B:各処置群内の個々の腫瘍容量は、植込み後22日目に測定した。統計学的有意性は、テューキーの検定後多重比較を伴う一元ANOVAにより決定した(
*p<0.05;
**p<0.01)。
図6A~6B:処置群:25mg/kgのmAb1(抗hLAG3)(菱形);10mg/kgのREGN2810(抗hPD-1)(四角);25mg/kgのmAb1(抗hLAG3)と、10mg/kgのREGN2810(抗hPD-1)との組み合わせ(上向きの三角);25mg/kgのヒトアイソタイプ対照(丸)。
図6C:処置されたマウスにおける、無腫瘍生存パーセント。統計学的有意性は、ログランク(マンテル-コックス)検定により決定した(
****p<0.0001)。処置群:25mg/kgのmAb1(抗hLAG3)(菱形);10mg/kgのREGN2810(抗hPD-1)(下向きの三角);25mg/kgのmAb1(抗hLAG3)と、10mg/kgのREGN2810(抗hPD-1)との組み合わせ(上向きの三角);25mg/kgのヒトアイソタイプ対照(丸)。
【
図6C】
図6A~6Cは、単独および抗ヒトPD-1抗体(REGN2810)と組み合わせた抗ヒトLAG3抗体(「mAb1」)の、MC38腫瘍に対する、in vivoにおける有効性(実施例13において記載する)についてまとめる。
図6A:腫瘍植込み後、複数の時点における、各処置群内の平均腫瘍容量(mm
3±SEM)。処置日を、矢印で指し示す。
図6B:各処置群内の個々の腫瘍容量は、植込み後22日目に測定した。統計学的有意性は、テューキーの検定後多重比較を伴う一元ANOVAにより決定した(
*p<0.05;
**p<0.01)。
図6A~6B:処置群:25mg/kgのmAb1(抗hLAG3)(菱形);10mg/kgのREGN2810(抗hPD-1)(四角);25mg/kgのmAb1(抗hLAG3)と、10mg/kgのREGN2810(抗hPD-1)との組み合わせ(上向きの三角);25mg/kgのヒトアイソタイプ対照(丸)。
図6C:処置されたマウスにおける、無腫瘍生存パーセント。統計学的有意性は、ログランク(マンテル-コックス)検定により決定した(
****p<0.0001)。処置群:25mg/kgのmAb1(抗hLAG3)(菱形);10mg/kgのREGN2810(抗hPD-1)(下向きの三角);25mg/kgのmAb1(抗hLAG3)と、10mg/kgのREGN2810(抗hPD-1)との組み合わせ(上向きの三角);25mg/kgのヒトアイソタイプ対照(丸)。
【0067】
【
図7A】
図7A~7Cは、第1の実験(実施例14において記載する)における、単独および抗ヒトPD-1抗体(REGN2810)と組み合わせた抗ヒトLAG3抗体(「mAb1」)の、MC38腫瘍に対する、in vivoにおける有効性についてまとめる。
図7A:腫瘍植込み後、複数の時点における、各処置群内の平均腫瘍容量(mm
3±SEM)。処置日を、矢印で指し示す。
図7B:各処置群内の個々の腫瘍容量は、植込み後22日目に測定した。統計学的有意性は、テューキーの検定後多重比較を伴う一元ANOVAにより決定した(
*p<0.05)。
図7C:処置されたマウスにおける、無腫瘍生存パーセント。統計学的有意性は、ログランク(マンテル-コックス)検定により決定した(
*p<0.0197)。処置群:25mg/kgのmAb1(抗hLAG3)(菱形);10mg/kgのREGN2810(抗hPD-1)(六角形);1mg/kgにおけるREGN2810(抗hPD-1)(上向きの三角);25mg/kgのmAb1(抗hLAG3)と、10mg/kgのREGN2810(抗hPD-1)との組み合わせ(四角);25mg/kgのmAb1(抗hLAG3)と、1mg/kgにおけるREGN2810(抗hPD-1)との組み合わせ(下向きの三角);および25mg/kgのヒトアイソタイプ対照(丸)。
【
図7B】
図7A~7Cは、第1の実験(実施例14において記載する)における、単独および抗ヒトPD-1抗体(REGN2810)と組み合わせた抗ヒトLAG3抗体(「mAb1」)の、MC38腫瘍に対する、in vivoにおける有効性についてまとめる。
図7A:腫瘍植込み後、複数の時点における、各処置群内の平均腫瘍容量(mm
3±SEM)。処置日を、矢印で指し示す。
図7B:各処置群内の個々の腫瘍容量は、植込み後22日目に測定した。統計学的有意性は、テューキーの検定後多重比較を伴う一元ANOVAにより決定した(
*p<0.05)。
図7C:処置されたマウスにおける、無腫瘍生存パーセント。統計学的有意性は、ログランク(マンテル-コックス)検定により決定した(
*p<0.0197)。処置群:25mg/kgのmAb1(抗hLAG3)(菱形);10mg/kgのREGN2810(抗hPD-1)(六角形);1mg/kgにおけるREGN2810(抗hPD-1)(上向きの三角);25mg/kgのmAb1(抗hLAG3)と、10mg/kgのREGN2810(抗hPD-1)との組み合わせ(四角);25mg/kgのmAb1(抗hLAG3)と、1mg/kgにおけるREGN2810(抗hPD-1)との組み合わせ(下向きの三角);および25mg/kgのヒトアイソタイプ対照(丸)。
【
図7C】
図7A~7Cは、第1の実験(実施例14において記載する)における、単独および抗ヒトPD-1抗体(REGN2810)と組み合わせた抗ヒトLAG3抗体(「mAb1」)の、MC38腫瘍に対する、in vivoにおける有効性についてまとめる。
図7A:腫瘍植込み後、複数の時点における、各処置群内の平均腫瘍容量(mm
3±SEM)。処置日を、矢印で指し示す。
図7B:各処置群内の個々の腫瘍容量は、植込み後22日目に測定した。統計学的有意性は、テューキーの検定後多重比較を伴う一元ANOVAにより決定した(
*p<0.05)。
図7C:処置されたマウスにおける、無腫瘍生存パーセント。統計学的有意性は、ログランク(マンテル-コックス)検定により決定した(
*p<0.0197)。処置群:25mg/kgのmAb1(抗hLAG3)(菱形);10mg/kgのREGN2810(抗hPD-1)(六角形);1mg/kgにおけるREGN2810(抗hPD-1)(上向きの三角);25mg/kgのmAb1(抗hLAG3)と、10mg/kgのREGN2810(抗hPD-1)との組み合わせ(四角);25mg/kgのmAb1(抗hLAG3)と、1mg/kgにおけるREGN2810(抗hPD-1)との組み合わせ(下向きの三角);および25mg/kgのヒトアイソタイプ対照(丸)。
【0068】
【
図8A】
図8A~8Cは、第2の実験(実施例14において記載する)における、単独および抗ヒトPD-1抗体(REGN2810)と組み合わせた抗ヒトLAG3抗体(「mAb1」)の、MC38腫瘍に対する、in vivoにおける有効性についてまとめる。
図8A:腫瘍植込み後、複数の時点における、各処置群内の平均腫瘍容量(mm
3±SEM)。処置日を、矢印で指し示す。統計学的有意性は、ダネットの多重比較検定を伴う、二元ANOVAにより決定した(
*p<0.05)。
図8B:植込み後23日目に測定される、各処置群内の個々の腫瘍容量。統計学的有意性は、ダネットの多重比較検定を伴う、一元ANOVAにより決定した(
**p<0.01)。
図8C:処置されたマウスにおける、無腫瘍生存パーセント。統計学的有意性は、多重比較のためのボンフェローニ補正を伴う、ログランク(マンテル-コックス)検定により決定した(
***p<0.001、
**p<0.01)。処置群:25mg/kgのmAb1(抗hLAG3)(菱形);5mg/kgのmAb1(抗hLAG3)(六角形);10mg/kgのREGN2810(抗hPD-1)(上向きの三角);25mg/kgのmAb1(抗hLAG3)と、10mg/kgのREGN2810(抗hPD-1)との組み合わせ(四角);5mg/kgのmAb1(抗hLAG3)と、10mg/kgのREGN2810(抗hPD-1)との組み合わせ(下向きの三角);および25mg/kgのヒトアイソタイプ対照(丸)。
【
図8B】
図8A~8Cは、第2の実験(実施例14において記載する)における、単独および抗ヒトPD-1抗体(REGN2810)と組み合わせた抗ヒトLAG3抗体(「mAb1」)の、MC38腫瘍に対する、in vivoにおける有効性についてまとめる。
図8A:腫瘍植込み後、複数の時点における、各処置群内の平均腫瘍容量(mm
3±SEM)。処置日を、矢印で指し示す。統計学的有意性は、ダネットの多重比較検定を伴う、二元ANOVAにより決定した(
*p<0.05)。
図8B:植込み後23日目に測定される、各処置群内の個々の腫瘍容量。統計学的有意性は、ダネットの多重比較検定を伴う、一元ANOVAにより決定した(
**p<0.01)。
図8C:処置されたマウスにおける、無腫瘍生存パーセント。統計学的有意性は、多重比較のためのボンフェローニ補正を伴う、ログランク(マンテル-コックス)検定により決定した(
***p<0.001、
**p<0.01)。処置群:25mg/kgのmAb1(抗hLAG3)(菱形);5mg/kgのmAb1(抗hLAG3)(六角形);10mg/kgのREGN2810(抗hPD-1)(上向きの三角);25mg/kgのmAb1(抗hLAG3)と、10mg/kgのREGN2810(抗hPD-1)との組み合わせ(四角);5mg/kgのmAb1(抗hLAG3)と、10mg/kgのREGN2810(抗hPD-1)との組み合わせ(下向きの三角);および25mg/kgのヒトアイソタイプ対照(丸)。
【
図8C】
図8A~8Cは、第2の実験(実施例14において記載する)における、単独および抗ヒトPD-1抗体(REGN2810)と組み合わせた抗ヒトLAG3抗体(「mAb1」)の、MC38腫瘍に対する、in vivoにおける有効性についてまとめる。
図8A:腫瘍植込み後、複数の時点における、各処置群内の平均腫瘍容量(mm
3±SEM)。処置日を、矢印で指し示す。統計学的有意性は、ダネットの多重比較検定を伴う、二元ANOVAにより決定した(
*p<0.05)。
図8B:植込み後23日目に測定される、各処置群内の個々の腫瘍容量。統計学的有意性は、ダネットの多重比較検定を伴う、一元ANOVAにより決定した(
**p<0.01)。
図8C:処置されたマウスにおける、無腫瘍生存パーセント。統計学的有意性は、多重比較のためのボンフェローニ補正を伴う、ログランク(マンテル-コックス)検定により決定した(
***p<0.001、
**p<0.01)。処置群:25mg/kgのmAb1(抗hLAG3)(菱形);5mg/kgのmAb1(抗hLAG3)(六角形);10mg/kgのREGN2810(抗hPD-1)(上向きの三角);25mg/kgのmAb1(抗hLAG3)と、10mg/kgのREGN2810(抗hPD-1)との組み合わせ(四角);5mg/kgのmAb1(抗hLAG3)と、10mg/kgのREGN2810(抗hPD-1)との組み合わせ(下向きの三角);および25mg/kgのヒトアイソタイプ対照(丸)。
【0069】
【
図9】
図9は、単独および抗ヒトPD-1抗体(REGN2810)と組み合わせた抗ヒトLAG3抗体(「mAb1」)の、確立されたMC38腫瘍に対する有効性について評価する実験(本明細書の実施例15において記載する)の、腫瘍植込み後、複数の時点における、各処置群内の平均腫瘍容量(mm
3±SEM)を示す。処置日を、矢印で指し示す。
【0070】
【
図10】
図10は、実施例15において記載される実験において、植込み後22日目に測定される、各処置群内の個々の腫瘍容量を示す。統計学的有意性は、ダネットの多重比較検定を伴う、一元ANOVAにより決定した。
【0071】
【
図11】
図11は、本明細書の実施例15において記載される実験で処置されたマウスにおける、無腫瘍生存パーセントを示す。統計学的有意性は、多重比較のためのボンフェローニ補正を伴う、ログランク(マンテル-コックス)検定により決定した(
**p<0.01)。
【0072】
【
図12】
図12は、雌カニクイザルにおける、mAb1の単回静脈内注入後の時間と対比した、血清中の平均値(+SD)機能的なmAb1濃度についてのグラフ(実施例16において記載する)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0073】
本方法について記載する前に、このような方法および条件は、変動しうるので、本発明は、記載される特定の方法および実験条件に限定されるものではないことを理解されたい。また、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、本明細書で使用される用語法は、特定の実施形態だけについて記載することを目的とするものであり、限定的であることを意図するものではないことも理解されたい。
【0074】
そうでないことが規定されない限りにおいて、本明細書で使用される技術用語および科学用語は全て、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解される意味と同じ意味を有する。本発明の実施または試行では、本明細書で記載される方法および材料と同様または同等の、任意の方法および材料を使用しうるが、ここでは、好ましい方法および材料について記載する。本明細書で言及される刊行物は全て、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる。
【0075】
「LAG3」という用語は、CD223としてもまた公知の、免疫チェックポイント受容体またはT細胞共阻害剤である、リンパ球活性化遺伝子3タンパク質を指す。全長LAG3のアミノ酸配列は、GenBankで、受託番号:NP_002277.4として提供されており、本明細書ではまた、配列番号582とも称する。「LAG3」という用語はまた、配列番号574、575、または576のアミノ酸配列を有する、LAG3のタンパク質改変体も含む。「LAG3」という用語は、組換えLAG3またはその断片を含む。用語はまた、例えば、ヒスチジンタグ、マウスFcもしくはヒトFc、またはROR1などのシグナル配列へとカップリングさせた、LAG3またはその断片も包含する。例えば、用語は、配列番号575により例示される配列であって、C末端において、全長LAG3のアミノ酸残基29~450へとカップリングさせた、マウスFc(mIgG2a)を含む配列を含む。配列番号574により例示されるタンパク質改変体は、C末端において、全長LAG3のアミノ酸残基29~450へとカップリングさせたヒスチジンタグを含む。非ヒト種に由来することが指定されない限りにおいて、「LAG3」という用語は、ヒトLAG3を意味する。
【0076】
LAG3は、免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーのメンバーである。LAG3は、4つの細胞外Ig様ドメインであるD1~D4を伴う、503アミノ酸の1型膜貫通タンパク質であり、活性化T細胞、ナチュラルキラー細胞、B細胞、形質細胞様樹状細胞、および調節性T細胞上で発現する。LAG3受容体は、抗原提示細胞(APC)上に存在するMHCクラスII分子に結合する。
【0077】
本明細書で使用される「T細胞共阻害剤」という用語は、T細胞の活性化または抑制を介して、免疫応答をモジュレートする、リガンドおよび/または受容体を指す。T細胞共シグナル伝達分子としてもまた公知である、「T細胞共阻害剤」という用語は、プログラム細胞死1(PD-1)、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)、BおよびTリンパ球アテニュエータ(B and T lymphocyte attenuator)(BTLA)、CD-28、2B4、LY108、T細胞免疫グロブリンおよびムチン3(T cell immunoglobulin and mucin 3)(TIM3)、免疫グロブリンおよびITIMを有するT細胞免疫受容体(T cell immunoreceptor with immunoglobulin and ITIM)(TIGIT;VSIG9としてもまた公知である)、白血球関連免疫グロブリン様受容体1(leucocyte associated immunoglobulin-like receptor 1)(LAIR1;CD305としてもまた公知である)、誘導性T細胞共刺激因子(inducible T cell costimulator)(ICOS;CD278としてもまた公知である)、T細胞活性化のVドメインIg抑制因子(V-domain Ig suppressor of T cell activation)(VISTA)、およびCD160を含むがこれらに限定されない。
【0078】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、ジスルフィド結合により相互接続された、2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖である、4つのポリペプチド鎖から構成される免疫グロブリン分子(すなわち、「全長抗体分子」)、ならびにそれらの多量体(例えば、IgM)、またはそれらの抗原結合性断片を指すことを意図する。各重鎖は、重鎖可変領域(「HCVR」または「VH」)および重鎖定常領域(CH1ドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメインから構成される)から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(「LCVRまたは「VL」)および軽鎖定常領域(CL)から構成される。VH領域およびVL領域は、相補性決定領域(CDR)と称する超可変性領域であって、フレームワーク領域(FR)と称する、より保存的な領域を散在させた領域へと、さらに細分することができる。各VHおよびVLは、アミノ末端から、カルボキシ末端へと、以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置される、3つのCDRと、4つのFRとから構成される。本発明のある特定の実施形態では、抗体のFR(またはそれらの抗原結合断片)は、ヒト生殖細胞系列の配列と同一の場合もあり、天然で修飾されている場合もあり、人工的に修飾される場合もある。アミノ酸のコンセンサス配列は、2つまたはこれを超えるCDRの照合解析に基づき規定することができる。
【0079】
1もしくは複数のCDR残基の置換、または1もしくは複数のCDRの省略もまた可能である。科学文献では、結合のために、1つまたは2つのCDRを可欠とした抗体について記載されている。Padlanら(1995年、FASEB J.、9巻:133~139頁)は、公表された結晶構造に基づき、抗体とそれらの抗原との接触領域について解析し、CDR残基のうちで、実際に抗原に接触するのは、約5分の1~3分の1だけであると結論付けた。Padlanはまた、1つまたは2つのCDRが、抗原と接触するアミノ酸を有さない、多くの抗体も見出した(Vajdosら、2002年、J Mol Biol 320巻:415~428頁もまた参照されたい)。
【0080】
抗原に接触しないCDR残基は、先行研究に基づき、Chothia CDRの外部に存在するKabat CDRの領域から、分子的モデル化および/または経験により同定することができる(例えば、CDRH2内の残基H60~H65は、多くの場合、要求されない)。CDRまたはその残基を省略する場合は通例、別のヒト抗体配列内の対応する位置を占有するアミノ酸、またはこのような配列のコンセンサス配列で置換する。CDR内の置換のための位置、および置換するアミノ酸もまた、経験的に選択することができる。経験的置換は、保存的置換の場合もあり、非保存的置換の場合もある。
【0081】
本明細書で開示される完全ヒト抗LAG3モノクローナル抗体は、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインのフレームワーク領域内および/またはCDR領域内に、対応する生殖細胞系列の配列と比較して、1または複数のアミノ酸の置換、挿入、および/または欠失を含みうる。このような変異は、本明細書で開示されアミノ酸配列を、例えば、公表の抗体配列データベースから入手可能な生殖細胞系列の配列と比較することにより、たやすく確認することができる。本発明は、本明細書で開示されるアミノ酸配列のうちのいずれかに由来する、抗体およびそれらの抗原結合性断片を含むが、この場合、1または複数のフレームワーク領域内および/またはCDR領域内の、1または複数のアミノ酸を、抗体が由来した生殖細胞系列の配列の対応する残基、または別のヒト生殖細胞系列の配列の対応する残基、または対応する生殖細胞系列残基の保存的アミノ酸置換(本明細書では、このような配列変化をまとめて、「生殖細胞系列変異」と称する)に照らして変異させる。当業者は、本明細書で開示される、重鎖可変領域および軽鎖可変領域の配列から始めて、1カ所または複数カ所の個々の生殖細胞系列変異またはそれらの組み合わせを含む、多数の抗体および抗原結合性断片を容易に作製することができる。ある特定の実施形態では、VHドメインおよび/またはVLドメイン内のフレームワーク残基および/またはCDR残基の全てを、抗体が由来した、元の生殖細胞系列の配列内で見出される残基へと復帰変異させる。他の実施形態では、ある特定の残基だけを、元の生殖細胞系列の配列へと復帰変異させる、例えば、FR1の最初の8アミノ酸内、もしくはFR4の最後の8アミノ酸内に見出される残基だけを変異させるか、またはCDR1内、CDR2内、もしくはCDR3内に見出される残基だけを変異させる。他の実施形態では、フレームワーク残基および/またはCDR残基のうちの1または複数を、異なる生殖細胞系列の配列(すなわち、抗体が元来由来した生殖細胞系列の配列と異なる、生殖細胞系列の配列)の対応する残基に変異させる。さらに、本発明の抗体は、フレームワーク領域内および/またはCDR領域内の、2カ所またはこれを超える生殖細胞系列変異の任意の組み合わせを含有することが可能であり、この場合、例えば、ある特定の個々の残基を、特定の生殖細胞系列の配列の対応する残基に変異させる一方で、元の生殖細胞系列の配列と異なる、ある特定の他の残基を維持するか、または異なる生殖細胞系列の配列の対応する残基に変異させる。1カ所または複数カ所の生殖細胞系列変異を含有する抗体および抗原結合性断片が得られたら、これらを、結合特異性の改善、結合アフィニティーの増大、アンタゴニスト性またはアゴニスト性の生物学的特性(場合により)の改善または増強、免疫原性の低減など、1または複数の所望の特性について容易に調べることができる。この一般的な方式で得られた、抗体および抗原結合性断片は、本発明の中に包含される。
【0082】
本発明はまた、本明細書で開示されるHCVRアミノ酸配列、LCVRアミノ酸配列、および/またはCDRアミノ酸配列であって、1カ所または複数カ所の保存的置換を有するアミノ酸配列のうちのいずれかの改変体を含む、完全ヒト抗LAG3モノクローナル抗体も含む。例えば、本発明は、本明細書で開示される、HCVRアミノ酸配列、LCVRアミノ酸配列、および/またはCDRアミノ酸配列のうちのいずれかと比べて、例えば、10カ所またはこれより少数、8カ所またはこれより少数、6カ所またはこれより少数、4カ所またはこれより少数などの数の保存的アミノ酸置換を伴う、HCVRアミノ酸配列、LCVRアミノ酸配列、および/またはCDRアミノ酸配列を有する抗LAG3抗体を含む。
【0083】
本明細書で使用される「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を含むことを意図する。本発明のヒトmAbは、例えば、CDR内および特定のCDR3内に、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基(例えば、in vitroにおけるランダム変異誘発もしくは部位特異的変異誘発、またはin vivoにおける体細胞変異により導入された変異)を含みうる。しかし、本明細書で使用される「ヒト抗体」という用語は、別の哺乳動物種(例えば、マウス)の生殖細胞系列に由来するCDR配列を、ヒトFR配列へとグラフトしたmAbを含むことを意図しない。用語は、非ヒト哺乳動物において、または非ヒト哺乳動物の細胞内で、組換えにより作製される抗体を含む。用語は、ヒト被験体から単離されるか、またはヒト被験体において発生する抗体を含むことを意図しない。
【0084】
本明細書で使用される「組換え」という用語は、当技術分野において、組換えDNA技術として公知の技術または方法であって、例えば、DNAスプライシングおよびトランスジェニック発現を含む技術または方法により、創出されるか、発現するか、単離されるか、または得られる、本発明の抗体またはその抗原結合性断片を指す。用語は、非ヒト哺乳動物(トランスジェニック非ヒト哺乳動物、例えば、トランスジェニックマウスを含む)発現系、もしくは細胞(例えば、CHO細胞)発現系において発現するか、または組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離される抗体を指す。
【0085】
本明細書で使用される「多特異性の抗原結合性分子」という用語は、二特異性、三特異性、または多特異性の抗原結合性分子およびそれらの抗原結合性断片を指す。多特異性抗原結合性分子は、1つの標的ポリペプチドの異なるエピトープに特異的な場合もあり、1つを超える標的ポリペプチドのエピトープに特異的な抗原結合性ドメインを含有する場合もある。多特異性の抗原結合性分子は、単一の多機能性ポリペプチドの場合もあり、2つまたはこれを超えるポリペプチドの多量体の複合体であって、互いと共有結合的または非共有結合的に会合する複合体の場合もある。「多特異性の抗原結合性分子」という用語は、別の機能的分子、例えば、別のペプチドまたはタンパク質へと連結する場合もあり、これと共発現させる場合もある、本発明の抗体を含む。例えば、抗体またはその断片は、第2の結合特異性を伴う、二特異性または多特異性の抗原結合性分子を作製するように、タンパク質またはその断片など、1または複数の他の分子的実体へと、機能的に連結する(例えば、化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合的会合によるか、または他の形で)ことができる。本発明に従い、「多特異性の抗原結合性分子」という用語はまた、二特異性抗体、三特異性抗体、もしくは多特異性抗体またはこれらの抗原結合性断片も含む。ある特定の実施形態では、本発明の抗体を、別の抗体またはその抗原結合性断片へと機能的に連結して、第2の結合特異性を伴う、二特異性抗体を作製する。本発明の二特異性抗体および多特異性抗体については、本明細書の別の箇所で記載する。
【0086】
「~に特異的に結合する(specifically binds)」または「~に特異的に結合する(binds specifically to)」などという用語は、抗体またはその抗原結合性断片が、生理学的条件下で、抗原と、比較的安定的な複合体を形成することを意味する。特異的結合は、少なくとも約1×10-8Mまたはこれ未満の平衡解離定数(例えば、小さなKDは、緊密な結合を描示する)により特徴づけることができる。当技術分野では、2つの分子が特異的に結合するのかどうかを決定するための方法が周知であり、例えば、平衡透析、表面プラズモン共鳴などを含む。本明細書で記載される通り、LAG3に特異的に結合する抗体は、表面プラズモン共鳴、例えば、BIACORE(商標)により同定されている。さらに、LAG3内の1つのドメインと、1または複数のさらなる抗原とに結合する多特異性抗体、またはLAG3の2つの異なる領域に結合する二特異性抗体は、そうであるにも拘らず、本明細書で使用される通り、「~に特異的に結合する」抗体であると考えられる。
【0087】
「高アフィニティー」抗体という用語は、LAG3に対する結合アフィニティーであって、表面プラズモン共鳴、例えば、BIACORE(商標)または溶液アフィニティーELISAにより測定される、少なくとも10-8M、好ましくは、10-9M、より好ましくは、10-10M、なおより好ましくは、10-11M、なおより好ましくは、10-12MのKDとして表される結合アフィニティーを有するmAbを指す。
【0088】
「スローオフ速度(slow off rate)」、「Koff」、または「kd」という用語は、表面プラズモン共鳴、例えば、BIACORE(商標)により決定される通り、1×10-3秒-1またはこれ未満、好ましくは、1×10-4秒-1またはこれ未満の速度定数で、LAG3から解離する抗体を意味する。
【0089】
本明細書で使用される、抗体の「抗原結合性部分」、抗体の「抗原結合性断片」などの用語は、任意の、天然に存在するか、酵素的に得られるか、合成であるか、または遺伝子操作されたポリペプチドまたは糖タンパク質であって、抗原に特異的に結合して、複合体を形成するポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。本明細書で使用される抗体の「抗原結合性断片」または「抗体断片」という用語は、LAG3に結合する能力を保持する抗体の、1または複数の断片を指す。
【0090】
具体的な実施形態では、本発明の抗体または抗体断片は、リガンドなどの部分、あるいは細胞毒素、第2の抗LAG3抗体、腫瘍特異抗原に対する抗体、抗がん薬物、またはがんもしくは慢性ウイルス感染を含むウイルス感染を含む、疾患もしくは状態を処置するのに有用な任意の他の治療用部分などの治療用部分へとコンジュゲートさせることができる(「免疫コンジュゲート」)。
【0091】
本明細書で使用される「単離抗体」とは、異なる抗原特異性を有する他の抗体(Ab)を実質的に含まない抗体を指すことを意図する(例えば、LAG3に特異的に結合する単離抗体またはその断片は、LAG3以外の抗原に特異的に結合するAbを実質的に含まない)。
【0092】
本明細書で使用される「遮断抗体」または「中和抗体」(または「LAG3活性を中和する抗体」または「アンタゴニスト抗体」)とは、そのLAG3への結合が、LAG3の、少なくとも1つの生物学的活性の阻害を結果としてもたらす抗体を指すことを意図する。例えば、本発明の抗体は、LAG3の、MHCクラスIIへの結合を防止するかまたは遮断しうる。
【0093】
本明細書で使用される「活性化抗体」または「増強抗体」(または「アゴニスト抗体」)とは、そのLAG3への結合が、LAG3の、少なくとも1つの生物学的活性の増大または刺激を結果としてもたらす抗体を指すことを意図する。例えば、本発明の抗体は、LAG3の、MHCクラスIIへの結合を増大させうる。
【0094】
本明細書で使用される「表面プラズモン共鳴」という用語は、例えば、BIACORE(商標)システム(Pharmacia Biosensor AB、Uppsala、Sweden and Piscataway、N.J.)を使用して、バイオセンサーマトリックス中のタンパク質濃度の変更を検出することにより、リアルタイムの生体分子の相互作用についての解析を可能とする光学現象を指す。
【0095】
本明細書で使用される「KD」という用語は、特定の抗体-抗原間相互作用についての平衡解離定数を指すことを意図する。
【0096】
「エピトープ」という用語は、パラトープとして公知の、抗体分子の可変領域内の特異的な抗原結合部位と相互作用する抗原決定基を指す。単一の抗原は、1つを超えるエピトープを有しうる。したがって、異なる抗体は、抗原上の異なる領域に結合する可能性があり、異なる生物学的効果を及ぼしうる。「エピトープ」という用語はまた、B細胞および/またはT細胞が応答する抗原上の部位も指す。「エピトープ」という用語はまた、抗体が結合する抗原の領域も指す。エピトープは、構造的エピトープとして規定することもでき、機能的エピトープとして規定することもできる。機能的エピトープは一般に、構造的エピトープのサブセットであり、相互作用のアフィニティーに直接寄与する残基を有する。エピトープはまた、コンフォメーションエピトープ、すなわち、非線形アミノ酸から構成されるエピトープでもありうる。ある特定の実施形態では、エピトープは、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル基、またはスルホニル基など、化学的に活性の表面分子の群分けである決定基を含む場合があり、ある特定の実施形態では、特異的な三次元構造特徴、および/または特異的な電荷特徴を有しうる。
【0097】
本明細書で使用される「交差競合する」という用語は、抗体またはその抗原結合性断片が、抗原に結合し、別の抗体またはその抗原結合性断片の結合を、阻害または遮断することを意味する。用語はまた、2つの抗体の間の、いずれの向きの競合も含む、すなわち、第1の抗体が、第2の抗体に結合し、その結合を遮断する場合、およびこの逆の場合を含む。ある特定の実施形態では、第1の抗体と第2の抗体とは、同じエピトープに結合しうる。代替的に、第1の抗体と第2の抗体とは、1つの抗体の結合が、例えば、立体障害を介して、第2の抗体の結合を阻害または遮断するように、異なるが重複するエピトープに結合しうる。抗体の間の交差競合は、当技術分野で公知の方法、例えば、リアルタイムの、無標識バイオレイヤー干渉アッセイ(label-free bio-layer interferometry assay)により測定することができる。2つの抗体の間の交差競合は、第2の抗体の結合であって、自己間結合(この場合、第1の抗体と第2の抗体とは、同じ抗体である)に起因する、バックグラウンドシグナル未満の結合として表すことができる。2つの抗体の間の交差競合は、例えば、第2の抗体の結合%であって、ベースラインの自己間のバックグラウンド結合(この場合、第1の抗体と第2の抗体とは、同じ抗体である)未満の結合%として表すことができる。
【0098】
核酸またはその断片に言及する場合の、「実質的な同一性」または「実質的に同一な」という用語は、適切なヌクレオチドの挿入または欠失を伴って、別の核酸(またはその相補鎖)と、最適な形でアライメントされた場合に、下記で論じられる、配列同一性についての、任意の周知のアルゴリズムにより測定される通り、ヌクレオチド塩基のうちの少なくとも約90%、そしてより好ましくは、少なくとも約95%、96%、97%、98%、または99%においてヌクレオチド配列の同一性がすることを指し示す。ある特定の場合には、基準核酸分子に対する実質的な同一性を有する核酸分子は、基準核酸分子によりコードされるポリペプチドと同じであるかまたは実質的に類似するアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする。
【0099】
配列同一性は、アルゴリズム、例えば、全域的アライメントのためのニードルマン-ブンシュアルゴリズム(NeedlemanおよびWunsch、1970年、J. Mol. Biol.、48巻:443~453頁)、または局所的アライメントのためのスミス-ウォーターマンアルゴリズム(SmithおよびWaterman、1981年、J. Mol. Biol.、147巻:195~197頁)を使用して計算することができる。別の好ましいアルゴリズムは、Dufresneら、Nature Biotechnology、2002年(20巻、1269~71頁)により記載されており、GenePASTソフトウェア(GQ Life Sciences,Inc.Boston、MA)において使用されている。
【0100】
ポリペプチドに適用される場合の、「実質的な類似性」または「実質的に類似する」という用語は、2つのペプチド配列が、デフォルトのギャップの重みを使用する、GAPプログラムまたはBESTFITプログラムなどにより、最適な形でアライメントされた場合に、少なくとも90%の配列同一性、なおより好ましくは、少なくとも95%、98%、または99%の配列同一性を共有することを意味する。好ましくは、同一でない残基位置は、保存的アミノ酸置換により異なる。「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基を、同様の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を伴う側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基で置換する置換である。一般に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能的な特性を実質的に変化させないであろう。2つまたはこれを超えるアミノ酸配列が、互いと、保存的置換により異なる場合は、置換の保存的性格について補正するように、類似性のパーセントまたは程度を、上方に調整することができる。当業者には、この補正を行うための手段が周知である。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Pearson(1994年)、Methods Mol. Biol.、24巻:307~331頁を参照されたい。類似する化学的特性を伴う側鎖を有するアミノ酸の群の例は、1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシン;2)脂肪族-ヒドロキシル側鎖:セリンおよびトレオニン;3)アミド含有側鎖:アスパラギンおよびグルタミン;4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン;5)塩基性側鎖:リシン、アルギニン、およびヒスチジン;6)酸性側鎖:アスパラギン酸およびグルタミン酸;ならびに7)硫黄含有側鎖:システインおよびメチオニンを含む。好ましい保存的アミノ酸置換基は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リシン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸、およびアスパラギン-グルタミンである。代替的に、保存的置きかえは、Gonnetら(1992年)、Science、256巻:1443~45頁において開示されている、PAM250対数尤度行列で、正の値を取る任意の変化である。「中程度に保存的な」置きかえとは、PAM250対数尤度行列で、負でない値を取る任意の変化である。
【0101】
ポリペプチドの配列類似性は、配列解析ソフトウェアを使用して測定することが典型的である。タンパク質解析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換を含む、多様な置換、欠失、および他の修飾へと割り当てられる、類似性の尺度を使用して、類似する配列をマッチさせる。例えば、GCGソフトウェアは、異なる種の生物に由来する、相同なポリペプチドなど、近縁のポリペプチドの間の配列相同性もしくは配列同一性、または野生型タンパク質とその変異タンパク質との配列相同性もしくは配列同一性を決定するのに、デフォルトのパラメータで使用しうる、GAPおよびBESTFITなどのプログラムを含有する。例えば、GCG Version 6.1を参照されたい。ポリペプチド配列はまた、GCG Version 6.1内のプログラムであるFASTAを、デフォルトのパラメータまたは推奨されるパラメータで使用して比較することもできる。FASTA(例えば、FASTA2およびFASTA3)は、クエリー配列と、検索配列との最良の重複領域についての、アライメントおよび配列同一性パーセントを提示する(Pearson(2000年)、前出)。本発明の配列を、異なる生物に由来する多数の配列を含有するデータベースと比較する場合の、別の好ましいアルゴリズムは、コンピュータプログラムであるBLAST、とりわけ、デフォルトのパラメータを使用するBLASTPまたはTBLASTNである。例えば、それらの各々が参照により本明細書に組み込まれる、Altschulら(1990年)、J. Mol. Biol.、215巻:403~410頁;および(1997年)、Nucleic Acids Res.、25巻:3389~3402頁を参照されたい。
【0102】
「治療有効量」という語句は、投与に所望される効果をもたらす量を意味する。正確な量は、処置の目的に依存し、公知の技法を使用して、当業者に確認可能である(例えば、Lloyd(1999年)「The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compounding」を参照されたい)。
【0103】
本明細書で使用される「被験体」という用語は、ウイルス感染またはがんなど、疾患または障害の、好転、防止、および/または処置を必要とする動物、好ましくは哺乳動物を指す。用語は、がん、転移性がん、またはウイルス感染を有するか、またはこれらを有する危険性があるヒト被験体を含む。
【0104】
本明細書で使用される「抗がん薬」とは、がんを処置するか、または好転させるか、または阻害するのに有用な任意の薬剤であって、細胞毒素および薬剤、たとえば、代謝拮抗剤、アルキル化剤、アントラサイクリン、抗生物質、抗有糸分裂剤、プロカルバジン、ヒドロキシウレア、アスパラギナーゼ、コルチコステロイド、シクロホスファミド、ミトタン(mytotane)(O,P’-(DDD))、生物製剤(例えば、抗体およびインターフェロン)、および放射性薬剤を含むがこれらに限定されない薬剤を意味する。本明細書で使用される「細胞毒素または細胞傷害剤」はまた、化学療法剤も指し、細胞に対して有害な任意の薬剤も意味する。例は、Taxol(登録商標)(パクリタキセル)、テモゾロミド(temozolamide)、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、シスプラチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン(coichicin)、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン(dihydroxy anthracin dione)、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシン、ならびにこれらの類似体または相同体を含む。
【0105】
本明細書で使用される「抗ウイルス薬」という用語は、宿主被験体におけるウイルス感染を処置するか、防止するか、または好転させるのに使用される、任意の薬物または治療を指す。「抗ウイルス薬」という用語は、ジドブジン、ラミブジン、アバカビル、リバビリン、ロピナビル、エファビレンツ、コビシスタット、テノフォビル、リルピビリン、鎮痛剤、およびコルチコステロイドを含むがこれらに限定されない。本発明の文脈では、ウイルス感染は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、およびサル免疫不全ウイルス(SIV)を含むがこれらに限定されないウイルスにより引き起こされる、長期にわたる感染または慢性感染を含む。
【0106】
本明細書で使用される「免疫応答を増強すること」という用語は、腫瘍細胞またはウイルス感染細胞に対する、T細胞またはNK細胞などの免疫細胞の活性の増大を指す。本発明の文脈では、用語は、LAG3により媒介される、T細胞活性の阻害の遮断、またはT細胞の疲弊状態のレスキューもしくは逆転を含む。「免疫応答を増強すること」という用語はまた、調節性T細胞活性の阻害も含む。本発明の文脈で使用される、免疫応答の増強は、腫瘍細胞の殺滅の増大および/または腫瘍の増殖の阻害を結果としてもたらす。
【0107】
本発明の抗体および抗原結合性断片は、LAG3に特異的に結合し、T細胞の活性化を増強する。抗LAG3抗体は、LAG3に、高アフィニティーで結合する場合もあり、低アフィニティーで結合する場合もある。ある特定の実施形態では、本発明の抗体は、遮断抗体であることが可能であり、この場合、抗体は、LAG3に結合し、LAG3によるシグナル伝達を阻害しうる。一部の実施形態では、本発明の抗体は、LAG3の、MHCクラスIIへの結合を遮断し、かつ/またはT細胞の活性化を刺激もしくは増強する。一部の実施形態では、抗体は、LAG3に結合し、疲弊したT細胞のアネルギー状態を逆転させる。ある特定の実施形態では、抗体は、LAG3に結合し、調節性T細胞の活性を阻害する。一部の実施形態では、抗体は、免疫応答を刺激もしくは増強し、かつ/またはがんもしくはウイルス感染を患う被験体を処置するのに有用でありうる。抗体は、それを必要とする被験体へと投与されると、被験体におけるHIV、LCMV、またはHBVなどのウイルスによる慢性感染を低減しうる。抗体を使用して、被験体における腫瘍細胞の増殖を阻害することができる。抗体は、単独で使用することもでき、がんまたはウイルス感染を処置するための、当技術分野で公知の、他の治療用部分または治療モダリティーを伴う補助治療として使用することもできる。
【0108】
ある特定の実施形態では、抗LAG3抗体は、多特異性の抗原結合性分子であることが可能であり、LAG3に対する第1の結合特異性と、別のT細胞共阻害剤およびLAG3の異なるエピトープからなる群より選択される抗原に対する第2の結合特異性とを含む。
【0109】
以下のうちのいずれか1つを含む免疫原を使用して、LAG3に対する抗体を作出することができる。ある特定の実施形態では、本発明の抗体を、全長の、天然LAG3(NCBI受託番号:NP_002277.4を参照されたい)(配列番号582)、または組換えLAG3ペプチドで免疫化されたマウスから得る。代替的に、LAG3またはその断片は、標準的な生化学法を使用して作製することができ、免疫原として修飾(配列番号574~576)および使用することができる。
【0110】
ある特定の実施形態では、免疫原は、LAG3の、1または複数の細胞外ドメインである。本発明の一実施形態では、免疫原は、配列番号582の、アミノ酸残基約29~450の範囲である、LAG3の断片である。
【0111】
一部の実施形態では、免疫原は、E.coliまたはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞など、任意の他の真核動物細胞もしくは哺乳動物細胞において発現させた、組換えLAG3ペプチドでありうる。
【0112】
ある特定の実施形態では、LAG3に特異的に結合する抗体は、上記で言及した領域の断片、または指示された領域を越えて、本明細書で記載される領域のN末端およびC末端の一方または両方から、約5~約20アミノ酸残基だけ伸長するペプチドを使用して調製することができる。ある特定の実施形態では、上記で言及した領域またはその断片の任意の組み合わせを、LAG3特異的抗体の調製において使用することができる。
【0113】
ペプチドは、タグ付けのために、またはKLHなどの担体分子へのコンジュゲーションを目的として、ある特定の残基の付加または置換を含むように修飾することができる。例えば、システインを、ペプチドのN末端またはC末端に添加することもでき、リンカー配列を付加して、例えば、免疫化のためのKLHへのコンジュゲーションのためのペプチドを調製することもできる。
【0114】
本発明のある特定の抗LAG3抗体は、in vitroアッセイまたはin vivoアッセイにより決定される通り、LAG3に結合し、その活性を中和することが可能である。本発明の抗体が、LAG3に結合し、その活性を中和する能力は、当業者に公知の、任意の標準的な方法であって、本明細書で記載される結合アッセイまたは活性アッセイを含む方法を使用して測定することができる。
【0115】
結合活性を測定するための、非限定的な、例示的in vitroアッセイを、本明細書の実施例に例示する。実施例3では、ヒト抗LAG3抗体の、ヒトLAG3に対する結合アフィニティーおよび動態定数(kinetic constant)を、表面プラズモン共鳴により決定し、測定は、Biacore 4000測定器上またはBiacore T200測定器上で行った。実施例4では、遮断アッセイを使用して、抗LAG3抗体の間の交差競合を決定した。実施例5および6は、抗体の、LAG3を過剰発現する細胞への結合について記載する。実施例7では、結合アッセイを使用して、in vitroにおいて、抗LAG3抗体が、LAG3のMHCクラスII結合能を遮断する能力を決定した。実施例8では、ルシフェラーゼアッセイを使用して、抗LAG3抗体が、T細胞内の、LAG3によるシグナル伝達をアンタゴナイズする能力を決定した。実施例9では、蛍光アッセイを使用して、抗LAG3抗体が、活性化サルCD4+およびCD8+ T細胞に結合する能力を決定した。
【0116】
ある特定の実施形態では、本発明の抗体は、in vitro、がんを伴う被験体、またはLCMVなどのウイルスに感染した被験体において、T細胞の活性を増強または刺激することが可能である。ある特定の実施形態では、本発明の抗体を、被験体における免疫応答を増強し、腫瘍の増殖を阻害するように、第2のT細胞共阻害剤に対する抗体など、第2の治療剤と組み合わせて使用する。
【0117】
LAG3に特異的な抗体は、さらなる標識も部分も含有しない場合もあり、N末端またはC末端の標識または部分を含有する場合もある。一実施形態では、標識または部分は、ビオチンである。結合アッセイでは、標識(存在する場合)の位置は、ペプチドが結合する表面と比べた、ペプチドの配向性を決定しうる。例えば、表面を、アビジンでコーティングする場合、ペプチドのC末端の部分が、表面に対して遠位となるように、N末端のビオチンを含有するペプチドを配向させる。一実施形態では、標識は、放射性核種、蛍光色素、またはMRI検出用標識でありうる。ある特定の実施形態では、このような標識抗体を、イメージングアッセイを含む診断アッセイにおいて使用することができる。
【0118】
本発明の例示的な実施形態
ある特定の実施形態では、本発明は、ヒトリンパ球活性化遺伝子3(LAG3)タンパク質に特異的に結合する単離抗体またはその抗原結合性断片であって、(a)25℃での表面プラズモン共鳴アッセイにおいて測定される通り、約10nM未満の結合解離平衡定数(KD)で、単量体ヒトLAG3に結合すること;(b)37℃での表面プラズモン共鳴アッセイにおいて測定される通り、約8nM未満のKDで、単量体ヒトLAG3に結合すること;(c)25℃での表面プラズモン共鳴アッセイにおいて測定される通り、約1.1nM未満のKDで、二量体ヒトLAG3に結合すること;(d)37℃での表面プラズモン共鳴アッセイにおいて測定される通り、約1nM未満のKDで、二量体ヒトLAG3に結合すること;(e)フローサイトメトリーアッセイにおいて測定される通り、約8nM未満のEC50で、hLAG3発現細胞に結合すること;(f)フローサイトメトリーアッセイにおいて測定される通り、約2.3nM未満のEC50で、mfLAG3発現細胞に結合すること;(g)細胞接着アッセイにより決定される通り、約32nM未満のIC50で、hLAG3の、ヒトMHCクラスIIへの結合を遮断すること;(h)細胞接着アッセイにより決定される通り、約30nM未満のIC50で、hLAG3の、マウスMHCクラスIIへの結合を遮断すること;(i)細胞接着アッセイにより決定される通り、hLAG3の、MHCクラスIIへの結合を90%超遮断すること;(j)ルシフェラーゼレポーターアッセイにより決定される通り、約9nM未満のEC50で、LAG3により媒介される、T細胞活性の阻害をレスキューすること;および(k)蛍光アッセイにおいて測定される通り、約1.2nM未満のEC50で、活性化CD4+およびCD8+ T細胞に結合することからなる群より選択される特性を有する抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0119】
ある特定の実施形態では、本発明の単離抗体またはその抗原結合性断片は、表1に列挙した重鎖可変領域(HCVR)配列のうちのいずれか1つの中に含有される、3つの重鎖相補性決定領域(CDR)(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3);および表1に列挙した軽鎖可変領域(LCVR)配列のうちのいずれか1つの中に含有される、3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を含む。ある特定の実施形態では、単離抗体またはその抗原結合性断片は、表1に列挙したHCVR配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するHCVRを含む。ある特定の実施形態では、単離抗体またはその抗原結合性断片は、表1に列挙したLCVR配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するLCVRを含む。
【0120】
ある特定の実施形態では、単離抗体またはその抗原結合性断片は、(a)配列番号4、20、36、52、68、84、100、116、132、148、164、180、196、212、228、244、260、276、292、308、324、340、356、372、388、404、420、436、452、460、468、476、484、492、500、508、516、540、および556からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するHCDR1ドメイン;(b)配列番号6、22、38、54、70、86、102、118、134、150、166、182、198、214、230、246、262、278、294、310、326、342、358、374、390、406、422、438、454、462、470、478、486、494、502、510、518、542、および558からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するHCDR2ドメイン;(c)配列番号8、24、40、56、72、88、104、120、136、152、168、184、200、216、232、248、264、280、296、312、328、344、360、376、392、408、424、440、456、464、472、480、488、496、504、512、520、544、および560からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するHCDR3ドメイン;(d)配列番号12、28、44、60、76、92、108、124、140、156、172、188、204、220、236、252、268、284、300、316、332、348、364、380、396、412、428、444、524、532、548、および564からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するLCDR1ドメイン;(e)配列番号14、30、46、62、78、94、110、126、142、158、174、190、206、222、238、254、270、286、302、318、334、350、366、382、398、414、430、446、526、534、550、および566からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するLCDR2ドメイン;ならびに(f)配列番号16、32、48、64、80、96、112、128、144、160、176、192、208、224、240、256、272、288、304、320、336、352、368、384、400、416、432、448、528、536、552、および568からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するLCDR3ドメインを含む。
【0121】
ある特定の実施形態では、本発明の単離抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/74、82/90、98/106、114/122、130/138、146/154、162/170、178/186、194/202、210/218、226/234、242/250、258/266、274/282、290/298、306/314、322/330、338/346、354/362、370/378、386/394、402/410、418/426、434/442、450/522、458/522、466/522、474/522、482/522、490/522、498/530、506/530、514/530、538/546、および554/562からなる群より選択される、HCVR/LCVRのアミノ酸配列対を含む。
【0122】
ある特定の実施形態では、本発明は、配列番号386/394、418/426、および538/546からなる群より選択される、HCVR/LCVRのアミノ酸配列対を含む、単離抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0123】
ある特定の実施形態では、本発明は、LAG3の、MHCクラスIIへの結合を遮断する単離抗体またはその抗原結合性断片であって、HCVRの3つのCDRであり、配列番号2、18、34、50、66、82、98、114、130、146、162、178、194、210、226、242、258、274、290、306、322、338、354、370、386、402、418、434、450、458、466、474、482、490、498、506、514、538、および554からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するHCVR;ならびにLCVRの3つのCDRであり、配列番号10、26、42、58、74、90、106、122、138、154、170、186、202、218、234、250、266、282、298、314、330、346、362、378、394、410、426、442、522、530、546、および562からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するLCVRを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0124】
ある特定の実施形態では、単離抗体または抗原結合性断片は、配列番号386/394、418/426、および538/546からなる群より選択される、HCVR/LCVRのアミノ酸配列対を含む。
【0125】
ある特定の実施形態では、本発明は、LAG3への結合について、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/74、82/90、98/106、114/122、130/138、146/154、162/170、178/186、194/202、210/218、226/234、242/250、258/266、274/282、290/298、306/314、322/330、338/346、354/362、370/378、386/394、402/410、418/426、434/442、450/522、458/522、466/522、474/522、482/522、490/522、498/530、506/530、514/530、538/546、および554/562からなる群より選択される、HCVR/LCVRのアミノ酸配列対を含む抗体またはその抗原結合性断片と競合する抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0126】
ある特定の実施形態では、本発明は、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/74、82/90、98/106、114/122、130/138、146/154、162/170、178/186、194/202、210/218、226/234、242/250、258/266、274/282、290/298、306/314、322/330、338/346、354/362、370/378、386/394、402/410、418/426、434/442、450/522、458/522、466/522、474/522、482/522、490/522、498/530、506/530、514/530、538/546、および554/562からなる群より選択される、HCVR/LCVRのアミノ酸配列対を含む抗体またはその抗原結合性断片と同じエピトープに結合する抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0127】
ある特定の実施形態では、本発明は、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体である、抗体またはその抗原結合性断片を提供する。前記抗体またはその抗原結合性断片は、例えば、例えば、ヒトIgG1抗体またはヒトIgG4抗体などのIgG1抗体またはIgG4抗体でありうる。これらの抗体の定常領域は、野生型定常領域に対応する場合もあり、変異を導入した定常領域に対応する場合もあろう。
【0128】
ある特定の実施形態では、本発明は、重鎖および軽鎖を含む単離抗体であって、重鎖が、配列番号577、579、および580からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む単離抗体を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、重鎖および軽鎖を含む単離抗体であって、軽鎖が、配列番号578、および581からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む単離抗体を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、配列番号577/578、579/578、および580/581からなる群より選択される、重鎖/軽鎖のアミノ酸配列対を含む、単離抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0129】
一態様では、本発明は、LAG3に特異的に結合する、第1の抗原結合特異性と、第2の標的エピトープに特異的に結合する、第2の抗原結合特異性とを含む、多特異性の抗原結合性分子を提供する。
【0130】
一態様では、本発明は、上記の実施形態のいずれかの抗LAG3抗体またはその抗原結合性断片と、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0131】
一態様では、本発明は、本明細書で開示される抗体またはその抗原結合性断片のポリヌクレオチド配列を含む単離ポリヌクレオチド分子およびベクターを提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、本明細書で明示される抗体のHCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む単離ポリヌクレオチド分子および/またはベクターを提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、本明細書で明示される抗体のLCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む単離ポリヌクレオチド分子および/またはベクターを提供する。
【0132】
一態様では、本発明は、被験体における免疫応答を増強する方法であって、本明細書で開示される、単離抗LAG3抗体またはその抗原結合性断片を含む医薬組成物を投与するステップを含む方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、被験体における調節性T(Treg)細胞を阻害する方法であって、本明細書で開示される、単離抗LAG3抗体またはその抗原結合性断片を含む医薬組成物を投与するステップを含む方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、被験体におけるT細胞の活性化を増強する方法であって、本明細書で開示される、単離抗LAG3抗体またはその抗原結合性断片を含む医薬組成物を投与するステップを含む方法を提供する。ある特定の実施形態では、被験体は、血液がん、脳がん、腎細胞癌(例えば、腎明細胞癌)、卵巣がん、膀胱がん、前立腺がん、乳がん(例えば、トリプルネガティブ乳がん)、肝細胞癌、骨がん、結腸がん、非小細胞肺がん、頭頚部扁平上皮がん、結腸直腸がん、中皮腫、リンパ腫(例えば、B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)、および黒色腫からなる群より選択される疾患または障害を有する。ある特定の実施形態では、被験体は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、およびサル免疫不全ウイルス(SIV)からなる群より選択されるウイルスにより引き起こされる慢性ウイルス感染を有する。ある特定の実施形態では、抗LAG3抗体を、被験体へと、PD-1阻害剤、CTLA阻害剤、腫瘍特異抗原に対する抗体、ウイルス感染細胞抗原に対する抗体、PD-L1阻害剤、CD20阻害剤、CD20およびCD3に対する二特異性抗体、抗酸化剤などの栄養補助食品(dietary supplement)、VEGFアンタゴニスト、化学療法剤、細胞傷害剤、放射線、NSAID、コルチコステロイド、および疾患または障害と関連する少なくとも1つの症状を好転させるのに有用な、任意の他の治療からなる群より選択される、第2の治療剤と組み合わせて投与する。
【0133】
一態様では、本発明は、被験体における腫瘍または腫瘍細胞の増殖を阻害する方法であって、それを必要とする被験体へと、治療有効量の、本明細書で開示される、抗LAG3抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含む方法を提供する。ある特定の実施形態では、腫瘍は、原発性または再発性である。ある特定の実施形態では、腫瘍は、確立された腫瘍である。ある特定の実施形態では、被験体は、転移性疾患を有し、かつ/または先行する治療により処置されている。ある特定の実施形態では、腫瘍は、血液がん、脳がん、腎細胞がん、卵巣がん、膀胱がん、前立腺がん、乳がん、肝細胞癌、骨がん、結腸がん、非小細胞肺がん、頭頚部扁平上皮がん、結腸直腸がん、中皮腫、リンパ腫、および黒色腫からなる群より選択される疾患または障害を伴う被験体に存在する。ある特定の実施形態では、抗LAG3抗体またはそれらの抗原結合性断片を、1回または複数回の用量として投与し、各用量を、直前の用量の1~4週間後に投与する。ある特定の実施形態では、抗LAG3抗体またはそれらの抗原結合性断片を、被験体の体重1kg当たり約0.1mg~約100mgの用量で投与する。ある特定の実施形態では、抗LAG3抗体を、被験体へと、PD-1阻害剤、CTLA阻害剤、腫瘍特異抗原に対する抗体、PD-L1阻害剤、CD20阻害剤、CD20およびCD3に対する二特異性抗体、抗酸化剤などの栄養補助食品、VEGFアンタゴニスト、化学療法剤、細胞傷害剤、放射線、NSAID、コルチコステロイド、および疾患または障害と関連する少なくとも1つの症状を好転させるのに有用な、任意の他の治療からなる群より選択される、第2の治療剤と組み合わせて投与する。一実施形態では、第2の治療剤は、PD-1阻害剤であり、この場合、PD-1阻害剤は、PD-1に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片である。一実施形態では、PD-1阻害剤は、REGN2810である。ある特定の実施形態では、抗LAG3抗体またはそれらの抗原結合性断片を、皮下、静脈内、皮内、腹腔内、経口、筋内、または頭蓋内投与する。
【0134】
一態様では、本発明は、LAG3により媒介される、T細胞活性の阻害をレスキューする方法であって、T細胞を、本明細書で開示される、抗LAG3抗体またはその抗原結合性断片と接触させるステップを含む方法を提供する。一実施形態では、T細胞を、抗PD-1抗体(例えば、REGN2810)と組み合わせた、本発明の抗LAG3抗体と接触させる。
【0135】
抗体の抗原結合性断片
そうでないことが具体的に指し示されない限りにおいて、本明細書で使用される「抗体」という用語は、2つの免疫グロブリン重鎖および2つの免疫グロブリン軽鎖を含む抗体分子(すなわち、「全長抗体分子」)ならびにこれらの抗原結合性断片を包含すると理解されるものとする。本明細書で使用される、抗体の「抗原結合性部分」、抗体の「抗原結合性断片」などの用語は、任意の、天然に存在するか、酵素的に得られるか、合成であるか、または遺伝子操作されたポリペプチドまたは糖タンパク質であって、抗原に特異的に結合して、複合体を形成するポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。本明細書で使用される、抗体の「抗原結合性断片」または「抗体断片」という用語は、LAG3に特異的に結合する能力を保持する、抗体の1または複数の断片を指す。抗体断片は、Fab断片、F(ab’)2断片、Fv断片、dAb断片、CDRを含有する断片、または単離CDRを含みうる。ある特定の実施形態では、「抗原結合性断片」という用語は、多特異性の抗原結合性分子のポリペプチド断片を指す。このような実施形態では、「抗原結合性断片」という用語は、例えば、LAG3に特異的に結合する、MHCクラスII分子を含む。抗体の抗原結合性断片は、例えば、タンパク質分解性消化、または抗体の可変ドメインおよび(任意選択で)定常ドメインをコードするDNAの操作(manipulation)および発現を伴う、組換え遺伝子操作(engineering)法など、任意の適切な標準的技法を使用して、全長抗体分子から導出することができる。このようなDNAは、公知であり、かつ/もしくは、例えば、市販の供給源である、DNAライブラリー(例えば、ファージ抗体ライブラリーを含む)からたやすく入手可能であるか、または合成することができる。DNAは、シーケンシングし、化学的に操作することもでき、分子生物学的技術を使用して、例えば、1または複数の可変ドメインおよび/または定常ドメインを、適切な構成へと配置するか、またはコドンを導入するか、システイン残基を創出するか、アミノ酸を修飾、付加、もしくは欠失させることなどにより操作することもできる。
【0136】
抗原結合性断片の非限定的な例は、(i)Fab断片;(ii)F(ab’)2断片;(iii)Fd断片;(iv)Fv断片;(v)単鎖Fv(scFv)分子;(vi)dAb断片;および(vii)抗体の超可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる、最小限の認識単位(例えば、CDR3ペプチドなどの単離相補性決定領域(CDR))、または拘束FR3-CDR3-FR4ペプチドを含む。ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDRグラフト抗体、ダイアボディ(diabody)、トリアボディ(triabody)、テトラボディ(tetrabody)、ミニボディ(minibody)、ナノボディ(nanobody)(例えば、一価ナノボディ、二価ナノボディなど)、低分子免疫医薬(SMIP)、およびサメ可変IgNARドメインなど、他の操作分子もまた、本明細書で使用される「抗原結合性断片」という表現の中に包含される。
【0137】
抗体の抗原結合性断片は典型的に、少なくとも1つの可変ドメインを含むであろう。可変ドメインは、任意のサイズまたはアミノ酸組成であることが可能であり、一般に、1または複数のフレームワーク配列と隣接するか、またはこれらとインフレームにある、少なくとも1つのCDRを含むであろう。VLドメインと会合するVHドメインを有する抗原結合性断片内では、VHドメインと、VLドメインとを、互いと比べて、任意の適切な配置に置くことができる。例えば、可変領域は、二量体であることが可能であり、VH-VH二量体、VH-VL二量体、またはVL-VL二量体を含有しうる。代替的に、抗体の抗原結合性断片は、単量体のVHドメインまたはVLドメインを含有しうる。
【0138】
ある特定の実施形態では、抗体の抗原結合性断片は、少なくとも1つの定常ドメインへと共有結合的に連結された、少なくとも1つの可変ドメインを含有しうる。本発明の抗体の抗原結合性断片内で見出されうる、可変ドメインおよび定常ドメインの、非限定的な例示的構成は、(i)VH-CH1;(ii)VH-CH2;(iii)VH-CH3;(iv)VH-CH1-CH2;(v)VH-CH1-CH2-CH3;(vi)VH-CH2-CH3;(vii)VH-CL;(viii)VL-CH1;(ix)VL-CH2;(x)VL-CH3;(xi)VL-CH1-CH2;(xii)VL-CH1-CH2-CH3;(xiii)VL-CH2-CH3;および(xiv)VL-CLを含む。可変ドメインおよび定常ドメインの任意の構成であって、上記で列挙した例示的な構成のうちのいずれかを含む構成では、可変ドメインおよび定常ドメインを、互いと直接連結することもでき、完全なヒンジ領域もしくはリンカー領域または部分的なヒンジ領域もしくはリンカー領域により連結することもできる。ヒンジ領域は、少なくとも2つの(例えば、5つ、10、15、20、40、60、またはこれを超える)アミノ酸からなることが可能であり、単一のポリペプチド分子内の、隣接する可変ドメインおよび/または定常ドメインの間の、可撓性または半可撓性の連結を結果としてもたらす。さらに、本発明の抗体の抗原結合性断片は、上記で列挙した、可変ドメインおよび定常ドメインの構成であって、互いと、かつ/または1または複数の単量体のVHドメインまたはVLドメインと非共有結合的に会合させた(例えば、ジスルフィド結合による)構成のうちのいずれかの、ホモ二量体またはヘテロ二量体(または他の多量体)を含みうる。
【0139】
全長抗体分子と同様に、抗原結合性断片は、単一特異性の場合もあり、多特異性(例えば、二特異性)の場合もある。抗体の多特異性抗原結合性断片は典型的に、少なくとも2つの異なる可変ドメインを含み、この場合、各可変ドメインは、別個の抗原または同じ抗原上の異なるエピトープに特異的に結合することが可能であろう。本明細書で開示される、例示的な二特異性抗体フォーマットを含む、任意の多特異性抗体フォーマットは、当技術分野で利用可能な慣用的な技法を使用して、本発明の抗体の抗原結合性断片の文脈における使用に適合させることができる。
【0140】
ヒト抗体の調製
当技術分野では、トランスジェニックマウスにおいてヒト抗体を作出するための方法が公知である。任意のこのような公知の方法を、本発明の文脈で使用して、LAG3に特異的に結合するヒト抗体を作製することができる。
【0141】
VELOCIMMUNE(登録商標)技術(例えば、US6,596,541、Regeneron Pharmaceuticals、VELOCIMMUNE(登録商標)を参照されたい)、またはモノクローナル抗体を作出するための、任意の他の公知の方法を使用して、ヒト可変領域およびマウス定常領域を有する、LAG3に対する高アフィニティーのキメラ抗体を、まず単離する。VELOCIMMUNE(登録商標)技術は、マウスが、抗原性刺激に応答して、ヒト可変領域およびマウス定常領域を含む抗体を産生するように、内因性マウス定常領域遺伝子座に作動可能に連結した、ヒト重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含むゲノムを有する、トランスジェニックマウスの作出を伴う。抗体の重鎖および軽鎖の可変領域をコードするDNAを単離し、ヒト重鎖定常領域およびヒト軽鎖定常領域をコードするDNAに作動可能に連結する。次いで、DNAを、完全ヒト抗体を発現することが可能な細胞内で発現させる。
【0142】
一般に、VELOCIMMUNE(登録商標)マウスに、目的の抗原をチャレンジし、リンパ球(B細胞など)を、抗体を発現するマウスから回収する。リンパ球を、骨髄腫細胞系と融合させて、不死ハイブリドーマ細胞系を調製し、このようなハイブリドーマ細胞系を、スクリーニングおよび選択して、目的の抗原に特異的な抗体を産生する、ハイブリドーマ細胞系を同定する。重鎖および軽鎖の可変領域をコードするDNAを単離し、重鎖および軽鎖の、所望アイソタイプの定常領域へと連結することができる。このような抗体タンパク質は、CHO細胞などの細胞内で作製することができる。代替的に、抗原特異的キメラ抗体または軽鎖および重鎖の可変ドメインをコードするDNAを、抗原特異的リンパ球から直接単離することもできる。
【0143】
まず、ヒト可変領域およびマウス定常領域を有する、高アフィニティーキメラ抗体を単離する。下記の実験セクションにおける通り、抗体を特徴づけ、アフィニティー、選択性、エピトープなどを含む、所望の特徴について選択することができる。マウス定常領域を、所望のヒト定常領域で置きかえて、本発明の完全ヒト抗体、例えば、野生型IgG1もしくは野生型IgG4または修飾IgG1もしくは修飾IgG4を作出する。選択される定常領域は、具体的使用に応じて変動しうるが、高アフィニティーの抗原結合性特徴および標的特異性特徴は、可変領域内に存在する。
【0144】
生物学的等価物
本発明の抗LAG3抗体および抗体断片は、記載される抗体のアミノ酸配列から変動するが、LAG3に結合する能力を保持するアミノ酸配列を有するタンパク質を包含する。このような改変体の抗体および抗体断片は、1カ所または複数カ所の、アミノ酸の付加、欠失、または置換であって、親配列と比較した場合、記載される抗体の生物学的活性と本質的に同等の生物学的活性を呈示する付加、欠失、または置換を含む。同様に、本発明の抗体をコードするDNA配列は、開示される配列と比較して、1カ所または複数カ所の、ヌクレオチドの付加、欠失、または置換を含むが、本発明の抗体または抗体断片と、本質的に生物学的に同等である抗体または抗体断片をコードする配列を包含する。
【0145】
2つの抗原結合性タンパク質または抗体は、例えば、単回用量であれ、複数回用量であれ、同様の実験条件下、同じモル用量で投与された場合に、それらの吸収の速度および程度が有意差を示さない、医薬同等物または医薬代替物であれば、生物学的に同等であると考えられる。一部の抗体は、それらの吸収の程度において同等であるが、それらの吸収の速度において同等でないが、このような吸収速度の差違が、意図的なものであり、例えば、長期使用時において、有効な体内薬物濃度を達成するのに必須ではなく、表示に反映されており、研究される特定の薬物製品にとって、医学的に重要でないと考えられるため、生物学的に同等であると考えうるならば、同等物または医薬代替物と考えられる。
【0146】
一実施形態では、2つの抗原結合性タンパク質は、それらの安全性、純度、または効力において、臨床的に有意義な差違が見られない場合、生物学的に同等である。
【0147】
一実施形態では、2つの抗原結合性タンパク質は、患者を、基準生成物と、生物学的生成物との間で、そのような切換えを伴わずに治療を持続させた場合と比較した、予測される有害作用の危険性の増大であって、免疫原性の臨床的に有意な変化、または有効性の減殺を含む有害作用の危険性の増大を伴わずに、1回または複数回にわたり切り換えうる場合、生物学的に同等である。
【0148】
一実施形態では、2つの抗原結合性タンパク質は、それらのいずれもが、そのような機構が公知である程度において、1または複数の使用条件に対する、1または複数の共通の作用機構により作用する場合、生物学的に同等である。
【0149】
生物学的等価性は、in vivo法により裏付けることもでき、かつ/またはin vitro法により裏付けることもできる。生物学的等価性の尺度は、例えば、(a)ヒトまたは他の哺乳動物におけるin vivo試験であって、抗体またはその代謝物の濃度を、血液中、血漿中、血清中、または他の生物学的流体中で、時間の関数として測定するin vivo試験;(b)ヒトのin vivoにおけるバイオアベイラビリティーデータと相関しており、その妥当な予測であるin vitro試験;(c)ヒトまたは他の哺乳動物におけるin vivo試験であって、抗体(またはその標的)の適切な短期的薬理学効果を時間の関数として測定するin vivo試験;および(d)十分にコントロールされた臨床試験であって、抗体の安全性、有効性、もしくはバイオアベイラビリティー、または生物学的等価性を確立する臨床試験を含む。
【0150】
本発明の抗体の生物学的に同等な改変体は、例えば、残基または配列の多様な置換を施すことにより構築することもでき、生物学的活性に必要とされない、末端または内部の残基または配列を欠失させることにより構築することもできる。例えば、生物学的活性に必須でないシステイン残基は、復元時における、不要であるかまたは不適正な分子内ジスルフィド架橋の形成を防止するように、欠失させるか、または他のアミノ酸で置きかえることができる。他の文脈では、生物学的に同等な抗体は、抗体のグリコシル化特徴を修飾するアミノ酸変化、例えば、グリコシル化を消失させるかまたは除去する変異を含む抗体改変体を含みうる。
【0151】
Fc改変体を含む抗LAG3抗体
本発明のある特定の実施形態に従い、例えば、中性のpHと比較して、酸性のpHにおいて、抗体の、FcRn受容体への結合を増強または減殺する、1カ所または複数カ所の変異を含むFcドメインを含む、抗LAG3抗体が提供される。例えば、本発明は、Fcドメインの、CH2領域内またはCH3領域内に変異を含む、抗LAG3抗体を含み、この場合、変異は、酸性環境(例えば、pHが約5.5~約6.0の範囲である、エンドソーム内)で、Fcドメインの、FcRnへのアフィニティーを増大させる。このような変異は、動物へと投与されると、抗体の血清半減期の延長を結果としてもたらしうる。このようなFc修飾の非限定的な例は、例えば、250位(例えば、EまたはQ);250および428位(例えば、LまたはF);252位(例えば、L/Y/F/WまたはT)、254位(例えば、SまたはT)、ならびに256位(例えば、S/R/Q/E/DまたはT)における修飾;または428および/もしくは433位(例えば、H/L/R/S/P/QまたはK)、および/もしくは434位(例えば、A、W、H、FまたはY[N434A、N434W、N434H、N434F、またはN434Y])における修飾;または250および/または428位における修飾;または307位もしくは308位(例えば、308F、V308F)および434位における修飾を含む。一実施形態では、修飾は、428L修飾(例えば、M428L)および434S修飾(例えば、N434S);428L修飾、259I修飾(例えば、V259I)、および308F修飾(例えば、V308F);433K修飾(例えば、H433K)、および434位の修飾(例えば、434Y);252、254、および256位の修飾(例えば、252Y、254T、および256E);250Q修飾および428L修飾(例えば、T250QおよびM428L);ならびに307および/または308修飾(例えば、308Fまたは308P)を含む。さらに別の実施形態では、修飾は、265A修飾(例えば、D265A)および/または297A修飾(例えば、N297A)を含む。
【0152】
例えば、本発明は、250Qおよび248L(例えば、T250QおよびM248L);252Y、254T、および256E(例えば、M252Y、S254T、およびT256E);428Lおよび434S(例えば、M428LおよびN434S);257Iおよび311I(例えば、P257IおよびQ311I);257Iおよび434H(例えば、P257IおよびN434H);376Vおよび434H(例えば、D376VおよびN434H);307A、380A、および434A(例えば、T307A、E380A、およびN434A);ならびに433Kおよび434F(例えば、H433KおよびN434F)からなる群より選択される、変異の1または複数の対または群を含むFcドメインを含む抗LAG3抗体を含む。一実施形態では、本発明は、二量体の安定化を促進するように、IgG4のヒンジ領域内にS108P変異を含むFcドメインを含む抗LAG3抗体を含む。前出のFcドメイン変異、および本明細書で開示される抗体可変ドメイン内の他の変異の全ての可能な組み合わせは、本発明の範囲内にあることが想定される。
【0153】
本発明はまた、キメラ重鎖定常(CH)領域を含む抗LAG3抗体も含むが、この場合、キメラCH領域は、1つを超える免疫グロブリンアイソタイプのCH領域に由来するセグメントを含む。例えば、本発明の抗体は、ヒトIgG1分子、ヒトIgG2分子、またはヒトIgG4分子に由来する、CH2ドメインの一部または全部であって、ヒトIgG1分子、ヒトIgG2分子、またはヒトIgG4分子に由来する、CH3ドメインの一部または全部と組み合わされた、CH2ドメインの一部または全部を含むキメラCH領域を含みうる。ある特定の実施形態に従い、本発明の抗体は、キメラヒンジ領域を有する、キメラCH領域を含む。例えば、キメラヒンジは、ヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG4のヒンジ領域に由来する、「上方ヒンジ」のアミノ酸配列(EU番号付けに従い、216~227位に由来するアミノ酸残基)であって、ヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG4のヒンジ領域に由来する「下方ヒンジ」の配列(EU番号付けに従い、228~236位に由来するアミノ酸残基)と組み合わされたアミノ酸配列を含みうる。ある特定の実施形態に従い、キメラヒンジ領域は、ヒトIgG1またはヒトIgG4の上方ヒンジに由来するアミノ酸残基と、ヒトIgG2の下方ヒンジに由来するアミノ酸残基とを含む。ある特定の実施形態では、本明細書で記載されるキメラCH領域を含む抗体は、抗体の治療特性または薬物動態特性に有害な影響を及ぼさずに、Fcエフェクター機能の修飾を呈示する(例えば、その開示が、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、米国特許公開第20140243504号を参照されたい)。ある特定の実施形態では、Fc領域は、配列番号569、570、571、572、および573からなる群より選択される配列を含む。
【0154】
抗体の生物学的特徴
一般に、本発明の抗体は、LAG3への結合により機能する。本発明は、可溶性の単量体または二量体のLAG3分子に、高アフィニティーで結合する、抗LAG3抗体およびそれらの抗原結合性断片を含む。例えば、本発明は、例えば、本明細書の実施例3で規定されるアッセイフォーマットを使用して、表面プラズモン共鳴により測定される通り、約10nM未満のKDで、単量体のLAG3(例えば、25℃または37℃で)に結合する抗体および抗体の抗原結合性断片を含む。ある特定の実施形態では、抗体またはそれらの抗原結合性断片は、例えば、本明細書の実施例3で規定されるアッセイフォーマット、または実質的に類似するアッセイを使用して、表面プラズモン共鳴により測定される通り、約5nM未満、約2nM未満、約1nM未満、約0.5nM未満、約0.1nM未満、約0.05nM未満、または約0.04nM未満のKDで、単量体のLAG3に結合する。
【0155】
本発明はまた、例えば、本明細書の実施例3で規定されるアッセイフォーマットを使用して、表面プラズモン共鳴により測定される通り、約1.1nM未満のKDで、二量体のLAG3(例えば、25℃または37℃で)に結合する抗体およびそれらの抗原結合性断片も含む。ある特定の実施形態では、抗体またはそれらの抗原結合性断片は、例えば、本明細書の実施例3で規定されるアッセイフォーマット、または実質的に類似するアッセイを使用して、表面プラズモン共鳴により測定される通り、約0.5nM未満、約0.25nM未満、約0.1nM未満、約0.05nM未満、または約0.01nM未満のKDで、二量体のLAG3に結合する。
【0156】
本発明はまた、例えば、本明細書の実施例3で規定されるアッセイフォーマット、または実質的に類似するアッセイを使用して、25℃または37℃で、表面プラズモン共鳴により測定される通り、約1.6分間を超える解離半減期(t1/2)で、LAG3に結合する抗体およびそれらの抗原結合性断片も含む。ある特定の実施形態では、本発明の抗体または抗原結合性断片は、例えば、本明細書の実施例3で規定されるアッセイフォーマット(例えば、mAb捕捉または抗原捕捉フォーマット)、または実質的に類似するアッセイを使用して、25℃または37℃で、表面プラズモン共鳴により測定される通り、約5分間を超える、約10分間を超える、約30分間を超える、約50分間を超える、約60分間を超える、約70分間を超える、約80分間を超える、約90分間を超える、約100分間を超える、約200分間を超える、約300分間を超える、約400分間を超える、約500分間を超える、約600分間を超える、約700分間を超える、約800分間を超える、約900分間を超える、約1000分間を超える、または約1100分間を超えるt1/2で、LAG3に結合する。
【0157】
本発明はまた、本明細書の実施例5で規定されるフローサイトメトリーアッセイ、または実質的に類似するアッセイにより測定される通り、約8nM未満のEC50で、ヒトLAG3発現細胞に結合する抗体またはそれらの抗原結合性断片も含む。ある特定の実施形態では、抗体またはそれらの抗原結合性断片は、例えば、本明細書の実施例5で規定されるアッセイフォーマット、または実質的に類似するアッセイを使用して、フローサイトメトリーアッセイにより測定される通り、約5nM未満、約2nM未満、約1nM未満、または約0.5nM未満のEC50で、hLAG3発現細胞に結合する。
【0158】
本発明はまた、本明細書の実施例5で規定されるフローサイトメトリーアッセイ、または実質的に類似するアッセイにより測定される通り、約2.5nM未満のEC50で、カニクイザルLAG3発現細胞に結合する抗体またはそれらの抗原結合性断片も含む。ある特定の実施形態では、抗体またはそれらの抗原結合性断片は、例えば、本明細書の実施例5で規定されるアッセイフォーマット、または実質的に類似するアッセイを使用して、フローサイトメトリーアッセイにより測定される通り、約2nM未満、または約1nM未満のEC50で、mfLAG3発現細胞に結合する。
【0159】
本発明はまた、例えば、実施例7で示される細胞接着アッセイ、または実質的に類似するアッセイを使用して決定される通り、約32nM未満のIC50で、LAG3の、MHCクラスII(ヒトHLA-DR2)への結合を遮断する抗体またはそれらの抗原結合性断片も含む。ある特定の実施形態では、抗体またはそれらの抗原結合性断片は、例えば、本明細書の実施例7で規定されるアッセイフォーマット、または実質的に類似するアッセイを使用して、細胞接着アッセイにより測定される通り、約25nM未満、約20nM未満、約10nM未満、または約5nM未満のIC50で、LAG3の、ヒトMHCクラスIIへの結合を遮断する。
【0160】
本発明はまた、例えば、実施例7で示される細胞接着アッセイ、または実質的に類似するアッセイを使用して決定される通り、約30nM未満のIC50で、LAG3の、MHCクラスII(マウスHLA-DR2)への結合を遮断する抗体またはそれらの抗原結合性断片も含む。ある特定の実施形態では、抗体またはそれらの抗原結合性断片は、例えば、本明細書の実施例7で規定されるアッセイフォーマット、または実質的に類似するアッセイを使用して、細胞接着アッセイにより測定される通り、約25nM未満、約20nM未満、約10nM未満、または約5nM未満のIC50で、マウスLAG3の、ヒトMHCクラスIIへの結合を遮断する。
【0161】
本発明はまた、本明細書の実施例7で規定される細胞接着アッセイ、または実質的に類似するアッセイにより測定される通り、LAG3の、ヒトMHCクラスIIまたはマウスMHCクラスIIへの結合を、90%を超えて遮断する抗体またはそれらの抗原結合性断片も含む。
【0162】
本発明はまた、本明細書の実施例8で規定されるT細胞/APCルシフェラーゼレポーターアッセイ、または実質的に類似するアッセイにより測定される通り、9nM未満のEC50で、LAGにより誘導されるT細胞の下方調節を遮断する抗体またはそれらの抗原結合性断片も含む。ある特定の実施形態では、抗体またはそれらの抗原結合性断片は、例えば、本明細書の実施例8で規定されるアッセイフォーマット、または実質的に類似するアッセイを使用して、T細胞/APCルシフェラーゼレポーターアッセイにより測定される通り、約5nM未満、約1nM未満、約0.5nM未満、または約0.1nM未満のEC50で、LAG3により誘導されるT細胞の下方調節を遮断する。
【0163】
本発明はまた、本明細書の実施例9で規定される蛍光アッセイ、または実質的に類似するアッセイにより測定される通り、約1.2nM未満のEC50で、カニクイザル活性化CD4+およびCD8+ T細胞に結合する抗体またはそれらの抗原結合性断片も含む。ある特定の実施形態では、抗体またはそれらの抗原結合性断片は、例えば、本明細書の実施例9で規定されるアッセイフォーマット、または実質的に類似するアッセイを使用して、蛍光アッセイにより測定される通り、約1.1nM未満、約1nM未満、約0.5nM未満、約0.2nM未満、または約0.1nM未満のEC50で、カニクイザル活性化CD4+およびCD8+ T細胞に結合する。
【0164】
ある特定の実施形態では、本発明の抗体は、そのアミノ酸配列が配列番号582に示される全長タンパク質の任意の他の領域または断片への結合を介して、LAG3と関連するMHCクラスII結合活性を遮断または阻害することにより機能しうる。
【0165】
ある特定の実施形態では、本発明の抗体は、それを必要とする被験体へと、予防的に投与されると、腫瘍の増殖を阻害するか、またはがんの進行を遅延させるのに有用であり、被験体の生存を延長しうる。例えば、本発明の抗体の投与は、原発性腫瘍の縮小をもたらすことが可能であり、転移または続発性腫瘍の発生を防止しうる。ある特定の実施形態では、本発明の抗体は、それを必要とする被験体へと、治療的に投与されると、腫瘍の増殖を阻害するのに有用であり、被験体の生存を延長しうる。例えば、治療有効量の、本発明の抗体の、被験体への投与は、被験体において確立された腫瘍の縮小および消滅をもたらしうる。
【0166】
一実施形態では、本発明は、LAG3に結合する単離組換えモノクローナル抗体またはそれらの抗原結合性断片であって、以下の特徴:(i)配列番号2、18、34、50、66、82、98、114、130、146、162、178、194、210、226、242、258、274、290、306、322、338、354、370、386、402、418、434、450、458、466、474、482、490、498、506、514、538、および554からなる群より選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それと実質的に類似する配列を有するHCVRを含むこと;(ii)配列番号10、26、42、58、74、90、106、122、138、154、170、186、202、218、234、250、266、282、298、314、330、346、362、378、394、410、426、442、522、530、546、および562からなる群より選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それと実質的に類似する配列を有するLCVRを含むこと;(iii)配列番号8、24、40、56、72、88、104、120、136、152、168、184、200、216、232、248、264、280、296、312、328、344、360、376、392、408、424、440、456、464、472、480、488、496、504、512、520、544、および560からなる群より選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それと実質的に類似する配列を有するHCDR3ドメイン;ならびに配列番号16、32、48、64、80、96、112、128、144、160、176、192、208、224、240、256、272、288、304、320、336、352、368、384、400、416、432、448、528、536、552、および568からなる群より選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それと実質的に類似する配列を有するLCDR3ドメインを含むこと;(iv)配列番号4、20、36、52、68、84、100、116、132、148、164、180、196、212、228、244、260、276、292、308、324、340、356、372、388、404、420、436、452、460、468、476、484、492、500、508、516、540、および556からなる群より選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それと実質的に類似する配列を有するHCDR1ドメイン;配列番号6、22、38、54、70、86、102、118、134、150、166、182、198、214、230、246、262、278、294、310、326、342、358、374、390、406、422、438、454、462、470、478、486、494、502、510、518、542、および558からなる群より選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それと実質的に類似する配列を有するHCDR2ドメイン;配列番号12、28、44、60、76、92、108、124、140、156、172、188、204、220、236、252、268、284、300、316、332、348、364、380、396、412、428、444、524、532、548、および564からなる群より選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それと実質的に類似する配列を有するLCDR1ドメイン;ならびに配列番号14、30、46、62、78、94、110、126、142、158、174、190、206、222、238、254、270、286、302、318、334、350、366、382、398、414、430、446、526、534、550、および566からなる群より選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それと実質的に類似する配列を有するLCDR2ドメインを含むこと;(v)25℃での表面プラズモン共鳴アッセイにおいて測定される通り、約10nM未満の結合解離平衡定数(KD)で、単量体ヒトLAG3に結合すること;(vi)37℃での表面プラズモン共鳴アッセイにおいて測定される通り、約8nM未満のKDで、単量体ヒトLAG3に結合すること;(vii)25℃での表面プラズモン共鳴アッセイにおいて測定される通り、約1.1nM未満のKDで、二量体ヒトLAG3に結合すること;(viii)37℃での表面プラズモン共鳴アッセイにおいて測定される通り、約1nM未満のKDで、二量体ヒトLAG3に結合すること;(ix)フローサイトメトリーアッセイにおいて測定される通り、約8nM未満のEC50で、hLAG3発現細胞に結合すること;(x)フローサイトメトリーアッセイにおいて測定される通り、約2.3nM未満のEC50で、mfLAG3発現細胞に結合すること;(xi)細胞接着アッセイにより決定される通り、約32nM未満のIC50で、hLAG3の、ヒトMHCクラスIIへの結合を遮断すること;(xii)細胞接着アッセイにより決定される通り、約30nM未満のIC50で、hLAG3の、マウスMHCクラスIIへの結合を遮断すること;(xiii)細胞接着アッセイにより決定される通り、hLAG3の、MHCクラスIIへの結合を90%超遮断すること;(xiv)ルシフェラーゼレポーターアッセイにおいて測定される通り、約9nM未満のEC50で、LAG3により媒介される、T細胞活性の阻害をレスキューすること;(xv)蛍光アッセイにおいて測定される通り、約1.2nM未満のEC50で、活性化CD4+およびCD8+ T細胞に結合すること;(xvi)がんを伴う被験体における腫瘍の増殖を抑制し、生存を延長すること、ならびに(xvii)完全ヒト抗体であることのうちの1または複数を呈示する抗体またはその断片を提供する。
【0167】
本発明の抗体は、前述の生物学的特徴、またはそれらの任意の組み合わせのうちの1または複数を有しうる。当業者には、本発明の抗体の他の生物学的特徴は、本明細書の作業例を含む、本開示についての再検討から明らかであろう。
【0168】
種選択性および種交差反応性
本発明のある特定の実施形態に従い、抗LAG3抗体は、ヒトLAG3に結合するが、他の種に由来するLAG3には結合しない。代替的に、ある特定の実施形態では、本発明の抗LAG3抗体は、ヒトLAG3および1または複数の非ヒト種に由来するLAG3に結合する。例えば、本発明の抗LAG3抗体は、ヒトLAG3に結合しうるが、マウスLAG3、ラットLAG3、モルモットLAG3、ハムスターLAG3、アレチネズミLAG3、ブタLAG3、ネコLAG3、イヌLAG3、ウサギLAG3、ヤギLAG3、ヒツジLAG3、ウシLAG3、ウマLAG3、ラクダLAG3、カニクイザルLAG3、マーモセットLAG3、アカゲザルLAG3、またはチンパンジーLAG3のうちの1または複数には、場合により、結合することもあり、結合しないこともある。ある特定の実施形態では、本発明の抗LAG3抗体は、ヒトLAG3およびカニクイザルLAG3に、同じアフィニティーで結合する場合もあり、異なるアフィニティーで結合する場合もあるが、ラットLAG3およびマウスLAG3には結合しない。
【0169】
エピトープマッピングおよび関連する技術
本発明は、LAG3分子の1または複数のドメインであって、例えば、D1~D4の細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含むドメイン内で見出される、1または複数のアミノ酸と相互作用する抗LAG3抗体を含む。抗体が結合するエピトープは、LAG3分子の、前述のドメインのうちのいずれかに位置する、3つまたはこれを超える(例えば、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはこれを超える)アミノ酸による、単一の連続配列(例えば、ドメイン内の線形エピトープ)からなりうる。代替的に、エピトープは、LAG3分子の、前述のドメインの一方または両方に位置する、複数の非連続アミノ酸(またはアミノ酸配列)(例えば、コンフォメーションエピトープ)からなりうる。
【0170】
当業者に公知の多様な技法を使用して、抗体が、ポリペプチド内またはタンパク質内の「1または複数のアミノ酸と相互作用する」のかどうかを決定することができる。例示的な技法は、例えば、「Antibodies」、HarlowおよびLane(Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor、NY)において記載されているアッセイなど、慣用的な交差遮断アッセイを含む。他の方法は、アラニン走査変異解析、ペプチドブロット解析(Reineke(2004年)、Methods Mol. Biol.、248巻:443~63頁)、ペプチド切断解析、結晶構造研究、およびNMR解析を含む。加えて、エピトープの切出し、エピトープの抽出、および抗原の化学修飾などの方法を使用することができる(Tomer(2000年)、Prot. Sci.、9巻:487~496頁)。抗体が相互作用するポリペプチド内のアミノ酸を同定するのに使用しうる別の方法は、質量分析により検出される、水素/重水素交換である。一般的に述べると、水素/重水素交換法は、目的のタンパク質の重水素による標識化、その後に重水素により標識されたタンパク質への抗体の結合を伴う。次に、タンパク質/抗体複合体を、水へと移すと、抗体複合体により保護されているアミノ酸内の交換可能なプロトンは、界面の一部ではないアミノ酸内の交換可能なプロトンより緩徐な速度で、重水素から水素への逆交換を経る。結果として、タンパク質/抗体界面の一部を形成するアミノ酸は、重水素を保持することが可能であるため、界面内に含まれないアミノ酸と比較して、相対的に大きな質量を呈示する。抗体を解離させた後で、標的タンパク質を、プロテアーゼによる切断および質量分析による解析にかけ、これにより、抗体が相互作用する特定のアミノ酸に対応する、重水素により標識された残基を明らかにする。例えば、Ehring(1999年)、Analytical Biochemistry、267巻:252~259頁;EngenおよびSmith(2001年)、Anal. Chem.、73巻:256A~265A頁を参照されたい。
【0171】
「エピトープ」という用語は、B細胞および/またはT細胞が応答する抗原上の部位を指す。B細胞エピトープは、連続アミノ酸から形成される場合もあり、タンパク質の三次フォールディングにより並置される非連続アミノ酸から形成される場合もある。連続アミノ酸から形成されるエピトープは典型的に、変性溶媒への曝露時に保持されるのに対し、三次フォールディングにより形成されるエピトープは典型的に、変性溶媒で処理すると失われる。エピトープは典型的に、固有の空間的コンフォメーション内に、少なくとも3個のアミノ酸を含み、通例、少なくとも5個または8~10個のアミノ酸を含む。
【0172】
抗原構造ベースの抗体プロファイリング(ASAP)としてもまた公知である、修飾支援プロファイリング(MAP)とは、同じ抗原を指向する多数のモノクローナル抗体(mAb)を、各抗体の、化学的または酵素的に修飾された抗原表面への結合プロファイルの類似性に従い類別する方法(参照によりその全体において本明細書に具体的に組み込まれる、US2004/0101920を参照されたい)である。各類別は、別の類別により表されるエピトープと、顕著に異なるか、または部分的に重複する、固有のエピトープを反映しうる。この技術は、特徴づけを、遺伝的に顕著に異なる抗体に注力しうるように、遺伝的に同一な抗体の迅速なフィルタリングを可能とする。ハイブリドーマスクリーニングに適用した場合、MAPは、所望の特徴を有するmAbを産生する、稀なハイブリドーマクローンの同定を容易とする。MAPを使用して、本発明の抗体を、異なるエピトープに結合する抗体の群へと選別することができる。
【0173】
ある特定の実施形態では、抗LAG3抗体またはそれらの抗原結合性断片は、LAG3内の、例示される領域のうちの任意の1または複数の中のエピトープであって、配列番号582で例示される天然形態のエピトープ、もしくは配列番号574~576で例示される、組換えにより作製されたエピトープ、またはこれらの断片に結合する。一部の実施形態では、本発明の抗体は、LAG3のアミノ酸残基29~450からなる群より選択される、1または複数のアミノ酸を含む細胞外領域に結合する。一部の実施形態では、本発明の抗体は、配列番号576により例示される、カニクイザルLAG3のアミノ酸残基1~533からなる群より選択される、1または複数のアミノ酸を含む細胞外領域に結合する。
【0174】
ある特定の実施形態では、本発明は、LAG3の細胞外領域(配列番号588)内で見出される1または複数のエピトープと相互作用する、抗LAG3抗体およびそれらの抗原結合性断片を含む。エピトープは、LAG3の細胞外領域内に位置する、3つまたはこれを超える(例えば、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはこれを超える)アミノ酸による、1または複数の連続配列からなりうる。代替的に、エピトープは、LAG3の細胞外領域内に位置する、複数の非連続アミノ酸(またはアミノ酸配列)からなりうる。本明細書の実施例18に示す通り、例示的な本発明の抗体である、H4sH15482Pが相互作用するLAG3のエピトープは、配列番号588のアミノ酸28~71に対応するアミノ酸配列である、LRRAGVTWQHQPDSGPPAAAPGHPLAPGPHPAAPSSWGPRPRRY(配列番号589)により規定される。したがって、本発明は、配列番号588のアミノ酸28~71(すなわち、配列LRRAGVTWQHQPDSGPPAAAPGHPLAPGPHPAAPSSWGPRPRRY[配列番号589])からなる領域内に含有される、1または複数のアミノ酸と相互作用する抗LAG3抗体を含む。
【0175】
本発明は、本明細書の表1で記載される、特定の例示的な抗体のうちのいずれか、または表1で記載された例示的な抗体のうちのいずれかのCDR配列を有する抗体と同じエピトープ、またはエピトープの部分に結合する抗LAG3抗体を含む。同様に、本発明はまた、LAG3またはLAG3断片への結合について、本明細書の表1で記載される、特定の例示的な抗体のうちのいずれか、または表1で記載された例示的な抗体のうちのいずれかのCDR配列を有する抗体と競合する抗LAG3抗体も含む。例えば、本発明は、LAG3への結合について、本明細書の実施例4で規定される、1または複数の抗体(例えば、H4sH15482P、H4sH15479P、H4sH14813N、H4H14813N、H4H15479P、H4H15482P、H4H15483P、H4sH15498P、H4H15498P、H4H17828P2、H4H17819P、およびH4H17823P)と交差競合する抗LAG3抗体を含む。
【0176】
当技術分野で公知の、慣用的な方法を使用することにより、抗体が、基準抗LAG3抗体と同じエピトープに結合するのか、これとの結合について競合するのかを容易に決定することができる。例えば、被験抗体が、本発明の基準抗LAG3抗体と同じエピトープに結合するのかどうかを決定するために、基準抗体を、飽和条件下で、LAG3タンパク質またはLAG3ペプチドに結合させる。次に、被験抗体が、LAG3分子に結合する能力について評価する。被験抗体が、基準抗LAG3抗体による飽和結合の後で、LAG3に結合することが可能であれば、被験抗体は、基準抗LAG3抗体と異なるエピトープに結合すると結論付けることができる。他方、被験抗体が、基準抗LAG3抗体による飽和結合の後で、LAG3タンパク質に結合することができなければ、被験抗体は、本発明の基準抗LAG3抗体が結合するエピトープと同じエピトープに結合しうる。
【0177】
抗体が、結合について、基準抗LAG3抗体と競合するのかどうかを決定するために、上記で記載した結合法を、2つの方向で実施する。第1の方向では、基準抗体を、飽和条件下で、LAG3タンパク質に結合させ、その後にLAG3分子への被験抗体の結合の評価を行う。第2の方向では、被験抗体を、飽和条件下で、LAG3分子に結合させ、その後にLAG3分子への基準抗体の結合の評価を行う。両方の方向で、第1の(飽和)抗体だけに、LAG3分子への結合が可能であれば、被験抗体と、基準抗体とは、LAG3への結合について競合すると結論付けられる。当業者により察知される通り、結合について、基準抗体と競合する抗体は、必ずしも、基準抗体と同一なエピトープに結合しない場合もあり、基準抗体の結合を、重複または隣接するエピトープへの結合により、立体的に遮断する場合もある。
【0178】
各抗体が、他の抗体の、抗原への結合を、競合的に阻害する(遮断する)場合、2つの抗体は、同じエピトープまたは重複するエピトープに結合する。すなわち、1、5、10、20、または100倍過剰量の、一方の抗体は、競合的結合アッセイにおいて測定される通り、他方の抗体の結合を、少なくとも50%であるが、好ましくは75%、90%、なおまたは99%阻害する(例えば、Junghansら、Cancer Res.、1990年、50巻:1495~1502頁を参照されたい)。代替的に、抗原内の、本質的に全てのアミノ酸変異であって、一方の抗体の結合を低減するかまたは消失させる変異が、他方の抗体の結合を低減するかまたは消失させる場合、2つの抗体は、同じエピトープを有する。一方の抗体の結合を低減するかまたは消失させる、一部のアミノ酸変異が、他方の抗体の結合を低減するかまたは消失させる場合、2つの抗体は、重複するエピトープを有する。
【0179】
次いで、さらなる慣用的な実験(例えば、ペプチド変異および結合解析)を実行して、観察される、被験抗体の結合の欠如が、実際、基準抗体と同じエピトープへの結合に起因するのか、立体遮断(または別の現象)が、観察される結合の欠如の一因をなすのかを確認することができる。この種の実験は、ELISA、RIA、表面プラズモン共鳴、フローサイトメトリー、または当技術分野で利用可能な、任意の他の定量的抗体結合アッセイもしくは定性的抗体結合アッセイを使用して実施することができる。
【0180】
免疫コンジュゲート
本発明は、がんを処置するのに、細胞毒素または化学療法剤などの治療用部分へとコンジュゲートさせた、ヒト抗LAG3モノクローナル抗体(「免疫コンジュゲート」)を包含する。本明細書で使用される「免疫コンジュゲート」という用語は、細胞毒素、放射性薬剤、サイトカイン、インターフェロン、標的もしくはレポーター部分、酵素、毒素、ペプチドもしくはタンパク質、または治療剤へと、化学的または生物学的に連結された抗体を指す。抗体は、その標的に結合することが可能である限りにおいて、分子に沿った任意の位置において、細胞毒素、放射性薬剤、サイトカイン、インターフェロン、標的もしくはレポーター部分、酵素、毒素、ペプチド、または治療剤へと連結することができる。免疫コンジュゲートの例は、抗体薬物コンジュゲートおよび抗体-毒素融合タンパク質を含む。一実施形態では、薬剤は、LAG3に対する第2の異なる抗体でありうる。ある特定の実施形態では、抗体は、腫瘍細胞またはウイルス感染細胞に特異的な薬剤へとコンジュゲートさせることができる。抗LAG3抗体へとコンジュゲートさせうる治療用部分の種類については、処置される状態と、達成される、所望の治療的効果とを考慮に入れることになる。免疫コンジュゲートを形成するのに適する薬剤の例は、当技術分野で公知であり、例えば、WO05/103081を参照されたい。
【0181】
多特異性抗体
本発明の抗体は、単一特異性の場合もあり、二特異性の場合もあり、または多特異性の場合もある。多特異性抗体は、1つの標的ポリペプチドの異なるエピトープに特異的な場合もあり、1つを超える標的ポリペプチドに特異的な抗原結合性ドメインを含有する場合もある。例えば、Tuttら、1991年、J. Immunol.、147巻:60~69頁;Kuferら、2004年、Trends Biotechnol.、22巻:238~244頁を参照されたい。
【0182】
一態様では、本発明は、多特異性の抗原結合性分子またはそれらの抗原結合性断片を含み、この場合、免疫グロブリンの一方の特異性は、LAG3の細胞外ドメインまたはその断片に特異的であり、免疫グロブリンの他方の特異性は、LAG3の細胞外ドメイン外における結合、もしくは第2の治療的標的への結合に特異的であるか、または治療的部分へのコンジュゲーションに起因する。
【0183】
本発明の多特異性の抗原結合性分子、またはそれらの改変体のうちのいずれかを、当業者に公知の、標準的な分子生物学的技術(例えば、組換えDNA技術およびタンパク質発現技術)を使用して構築することができる。
【0184】
一部の実施形態では、LAG3特異的抗体を、LAG3の顕著に異なるドメインに結合する可変領域を併せて連結して、単一の結合分子内に、二重のドメイン特異性を付与する、二特異性フォーマット(「二特異性」)で作出する。適切にデザインされた二特異性剤は、特異性および結合アビディティーの両方を増大させることにより、全体的なLAG3阻害有効性を増強しうる。個々のドメイン(例えば、N末端ドメインのセグメント)に対する特異性を伴う可変領域、または1つのドメイン内の異なる領域に結合しうる可変領域を、各領域が、別個のエピトープ、または1つのドメイン内の異なる領域に同時に結合することを可能とする、構造足場上で対合させる。二特異性剤についての1つの例では、1つのドメインに対する特異性を伴う結合剤に由来する重鎖可変領域(VH)を、第2のドメインに対する特異性を伴う一連の結合剤に由来する軽鎖可変領域(VL)で組み換えて、そのVHの元の特異性を破壊せずに、元のVHと対合しうる、非同族のVLパートナーを同定する。このようにして、単一のVLセグメント(例えば、VL1)を、2つの異なるVHドメイン(例えば、VH1およびVH2)と組み合わせて、2つの結合「アーム」(VH1-VL1およびVH2-VL1)から構成される二特異性剤を作出することができる。単一のVLセグメントの使用は、系の複雑性を低減し、これにより、二特異性剤を作出するのに使用される、クローニング工程、発現工程、および精製工程を単純化し、これらの効率を増大させる(例えば、USSN13/022759およびUS2010/0331527を参照されたい)。
【0185】
代替的に、本明細書で記載される技法、または当業者に公知の他の技法を使用して、1つを超えるドメインおよび第2の標的に結合する抗体であって、例えば、第2の異なる抗LAG3抗体などであるがこれらに限定されない抗体を、二特異性フォーマットで調製することができる。顕著に異なる領域に結合する抗体可変領域を、関与性の部位、例えば、LAG3の細胞外ドメインに結合する可変領域と併せて連結して、単一の結合分子に、二重抗原特異性を付与することができる。この性質を有する、適切にデザインされた二特異性剤は、二重の機能を果たす。細胞外ドメインに対する特異性を伴う可変領域を、細胞外ドメイン外に対する特異性を伴う可変領域と組み合わせ、各可変領域が、別個の抗原に結合することを可能とする、構造足場上で対合させる。
【0186】
本発明の文脈で使用されうる、例示的な二特異性抗体フォーマットは、第1の免疫グロブリン(Ig)CH3ドメインおよび第2のIg CH3ドメインの使用を伴うが、この場合、第1のIg CH3ドメインと第2のIg CH3ドメインとは、互いと、少なくとも1つのアミノ酸異なり、少なくとも1つのアミノ酸の差違は、二特異性抗体の、プロテインAへの結合を、アミノ酸差違を欠く二特異性抗体と比較して低減する。一実施形態では、第1のIg CH3ドメインは、プロテインAに結合し、第2のIg CH3ドメインは、H95R修飾(IMGTのエクソン番号付けによる;EU番号付けによるH435R)など、プロテインAへの結合を低減するかまたは消失させる変異を含有する。第2のCH3は、Y96F修飾(IMGTによる;EUによるY436F)をさらに含みうる。第2のCH3内で見出されうる、さらなる修飾は、IgG1抗体の場合のD16E、L18M、N44S、K52N、V57M、およびV82I(IMGTによる;EUによるD356E、L358M、N384S、K392N、V397M、およびV422I);IgG2抗体の場合のN44S、K52N、およびV82I(IMGT;EUによるN384S、K392N、およびV422I);IgG4抗体の場合のQ15R、N44S、K52N、V57M、R69K、E79Q、およびV82I(IMGTによる;EUによるQ355R、N384S、K392N、V397M、R409K、E419Q、およびV422I)を含む。上記で記載した二特異性抗体フォーマット上の変動は、本発明の範囲内にあることが想定される。
【0187】
本発明の文脈で使用されうる、他の例示的な二特異性フォーマットは、限定なしに述べると、例えば、scFvベースの二特異性フォーマットまたはダイアボディ二特異性フォーマット、IgG-scFv融合体、二重可変ドメイン(DVD)-Ig、Quadroma、KIH(knobs-into-holes)、共通軽鎖(例えば、KIH(knobs-into-holes)を伴う共通軽鎖など)、交差Mab、交差Fab、(SEED)body、ロイシンジッパー、Duobody、IgG1/IgG2、二重作用型Fab(DAF)-IgG、およびMab2二特異性フォーマットを含む(前出のフォーマットの総説については、例えば、Kleinら、2012年、mAbs、4巻:6号、1~11頁、およびこれに引用されている参考文献を参照されたい)。二特異性抗体はまた、ペプチド/核酸コンジュゲーションを使用して構築することもでき、例えば、この場合、直交性の化学反応性を伴う非天然アミノ酸を使用して、部位特異的抗体-オリゴヌクレオチドコンジュゲートを作出するが、ここで、このコンジュゲートは、規定された組成、価数、および形状を伴う、多量体の複合体へと自己アセンブルする(例えば、Kazaneら、J. Am. Chem. Soc.[Epub:2012年12月4日]を参照されたい)。
【0188】
治療的投与および製剤
本発明は、本発明の抗LAG3抗体またはそれらの抗原結合性断片を含む治療用組成物を提供する。本発明に従う治療用組成物は、適切な担体、賦形剤、および移入、送達、耐容性(tolerance)の改善をもたらすように製剤へと組み込まれる他の薬剤などと共に投与されるであろう。大多数の適切な製剤は、全ての創薬化学者に公知の処方集:「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、Mack Publishing Company、Easton、PA中に見出すことができる。これらの製剤は、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、蝋、油、脂質、脂質(カチオン性またはアニオン性)含有小胞(LIPOFECTIN(商標)など)、DNAコンジュゲート、無水吸収ペースト、水中油エマルジョンおよび油中水エマルジョン、carbowaxエマルジョン(多様な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、およびcarbowaxを含有する半固体混合物を含む。また、Powellら、「Compendium of excipients for parenteral formulations」、PDA、(1998年)、J Pharm Sci Technol、52巻:238~311頁も参照されたい。
【0189】
抗体の用量は、投与される被験体の年齢およびサイズ、標的疾患、条件、投与経路などに応じて変動しうる。本発明の抗体を、成体患者における疾患または障害を処置するか、またはこのような疾患を防止するために使用する場合、本発明の抗体を、通常、体重1kg当たり約0.1~約60mg、より好ましくは、体重1kg当たり約5~約60、約20~約50、約10~約50、約1~約10、または約0.8~約11mgの用量の単回投与で投与することが有利である。状態の重症度に応じて、処置の頻度および持続期間を調整することができる。ある特定の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、少なくとも約0.1mg~約800mg、約1~約500mg、約5~約300mg、または約10~約200mg、約10~約100mg、もしくは約10~約50mgの用量の初期用量として投与することができる。ある特定の実施形態では、初期用量に続き、2回目の用量、またはその後複数回にわたる抗体もしくはその抗原結合性断片の用量を、初期用量の量とほぼ同じであるかまたはこれ未満でありうる量で行うことができるが、この場合、その後の用量を、少なくとも1日間~3日間;少なくとも1週間、少なくとも2週間;少なくとも3週間;少なくとも4週間;少なくとも5週間;少なくとも6週間;少なくとも7週間;少なくとも8週間;少なくとも9週間;少なくとも10週間;少なくとも12週間;または少なくとも14週間隔てる。
【0190】
多様な送達系、例えば、リポソーム内の封入、マイクロ粒子、マイクロカプセル、変異体ウイルスを発現することが可能な組換え細胞、受容体により媒介されるエンドサイトーシスが公知であり、本発明の医薬組成物を投与するのに使用することができる(例えば、Wuら(1987年)、J. Biol. Chem.、262巻:4429~4432頁を参照されたい)。導入法は、皮内経路、経皮経路、筋内経路、腹腔内経路、静脈内経路、皮下経路、鼻腔内経路、硬膜外経路、および経口経路を含むがこれらに限定されない。組成物は、任意の簡便な経路、例えば、注入またはボーラス注射、上皮または粘膜皮膚内膜を介する吸収(例えば、口腔粘膜、直腸粘膜、および腸粘膜など)を介して投与することができ、他の生体活性薬剤と併せて投与することができる。投与は、全身投与の場合もあり、局所投与の場合もある。医薬組成物はまた、小胞、具体的にはリポソームにより送達することもできる(例えば、Langer(1990年)、Science、249巻:1527~1533頁を参照されたい)。
【0191】
本明細書ではまた、本発明の抗体を送達するためのナノ粒子の使用も想定される。抗体コンジュゲートナノ粒子は、治療的適用および診断的適用のいずれのためにも使用することができる。抗体コンジュゲートナノ粒子、ならびに調製および使用方法については、参照により本明細書に組み込まれる、Arruebo, M.ら、2009年(「Antibody-conjugated nanoparticles for biomedical applications」、J. Nanomat.、2009巻、文献ID:439389、24頁、doi:10.1155/2009/439389)により詳細に記載されている。腫瘍細胞または自己免疫組織細胞またはウイルス感染細胞をターゲティングするように、ナノ粒子を開発し、医薬組成物中に含有される抗体へとコンジュゲートさせることができる。薬物送達のためのナノ粒子については、例えば、各々がその全体において本明細書に組み込まれる、US8257740またはUS8246995にもまた記載されている。
【0192】
ある特定の状況では、医薬組成物は、制御放出系で送達することができる。一実施形態では、ポンプを使用することができる。別の実施形態では、ポリマー材料を使用することができる。さらに別の実施形態では、制御放出系を、組成物の標的の近傍に設置することができ、このため、全身用量の一部を要求するに過ぎない。
【0193】
注射用調製物は、静脈内注射、皮下注射、皮内注射、頭蓋内注射、腹腔内注射、および筋内注射、点滴注入などのための剤形を含みうる。これらの注射用調製物は、公知の方法により調製することができる。例えば、注射用調製物は、例えば、上記で記載した抗体またはその塩を、従来注射のために使用されている、滅菌水性媒体中または滅菌油性媒体中で、溶解させるか、懸濁させるか、または乳化させることにより調製することができる。注射用の水性媒体としては、例えば、生理食塩液、グルコース、およびアルコール(例えば、エタノール)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO-50(水素化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50mol)付加物)]など、適切な可溶化剤と組み合わせて使用しうる他の補助剤などを含有する等張性溶液がある。油性媒体としては、例えば、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどの可溶化剤と組み合わせて使用しうる、ゴマ油、ダイズ油などが使用される。このようにして調製された注射剤は、適切なアンプルに充填することが好ましい。
【0194】
本発明の医薬組成物は、標準的な注射針およびシリンジにより皮下送達することもでき、静脈内送達することもできる。加えて、皮下送達に関して、ペン型送達デバイスも、本発明の医薬組成物の送達に、たやすく適用される。このようなペン型送達デバイスは、再使用可能な場合もあり、使い捨ての場合もある。再使用可能ペン型送達デバイスは一般に、医薬組成物を含有する交換型カートリッジを活用する。カートリッジ内の医薬組成物の全てが投与され、カートリッジが空となったら、空のカートリッジをたやすく廃棄し、医薬組成物を含有する新たなカートリッジで置きかえることができる。こうして、ペン型送達デバイスを再使用することができる。使い捨てのペン型送達デバイスでは、交換型カートリッジは存在しない。そうではなくて、使い捨てのペン型送達デバイスには、デバイス内のレザバー内に保持された医薬組成物が、あらかじめ充填される。レザバーの医薬組成物が空になったら、デバイス全体を廃棄する。
【0195】
本発明の医薬組成物の皮下送達では、多数の再使用可能なペン型送達デバイスおよび自動注射(autoinjector)送達デバイスが適用される。例は、少数を挙げると、AUTOPEN(商標)(Owen Mumford,Inc.、Woodstock、UK)、DISETRONIC(商標)ペン(Disetronic Medical Systems、Burghdorf、Switzerland)、HUMALOG MIX 75/25(商標)ペン、HUMALOG(商標)ペン、HUMALIN 70/30(商標)ペン(Eli Lilly and Co.、Indianapolis、IN)、NOVOPEN(商標)I、II、およびIII(Novo Nordisk、Copenhagen、Denmark)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(Novo Nordisk、Copenhagen、Denmark)、BD(商標)ペン(Becton Dickinson、Franklin Lakes、NJ)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、OPTIPEN STARLET(商標)、およびOPTICLIK(商標)(Sanofi-Aventis、Frankfurt、Germany)を含むが、当然ながらこれらに限定されない。本発明の医薬組成物の皮下送達で適用される、使い捨てのペン型送達デバイスの例は、少数を挙げると、SOLOSTAR(商標)ペン(Sanofi-Aventis)、FLEXPEN(商標)(Novo Nordisk)、およびKWIKPEN(商標)(Eli Lilly)、SURECLICK(商標)Autoinjector(Amgen、Thousand Oaks、CA)、PENLET(商標)(Haselmeier、Stuttgart、Germany)、EPIPEN(Dey,L.P.)、およびHUMIRA(商標)ペン(Abbott Labs、Abbott Park、IL)を含むが、当然ながらこれらに限定されない。
【0196】
上記で記載した、経口使用または非経口使用のための医薬組成物は、有効成分の用量に適する単位用量の剤形へと調製すると有利である。単位用量にあるこのような剤形は、例えば、錠剤、丸剤、カプセル、注射剤(アンプル)、坐剤などを含む。含有される抗体の量は一般に、単位用量にある剤形1つ当たり約5~約500mgであり、とりわけ、注射剤の形態では、抗体は、約5~約100mgで含有されることが好ましく、他の剤形では、約10~約250mgで含有されることが好ましい。
【0197】
抗体の治療的使用
本発明の抗体は、とりわけ、LAG3の発現、シグナル伝達、もしくは活性と関連するか、もしくはこれらにより媒介されるか、または、LAG3と、LAG3のリガンドであるMHCクラスIIの相互作用を遮断するか、あるいはLAG3の活性および/またはシグナル伝達を他の形で阻害することにより処置可能な、任意の疾患または障害を、処置する、防止する、および/または好転させるのに有用である。例えば、本発明は、本明細書で記載される抗LAG3抗体(または抗LAG3抗体を含む医薬組成物)を、このような処置を必要とする患者へと投与することにより、がんを処置し(腫瘍増殖を阻害し)、かつ/またはウイルス感染を処置するための方法、ならびにがんの処置(腫瘍増殖の阻害)および/またはウイルス感染の処置における使用のための、抗LAG3抗体(または抗LAG3抗体を含む医薬組成物)を提供する。本発明の抗体は、がんもしくはウイルス感染などの疾患もしくは障害もしくは状態の、処置、防止、および/もしくは好転、ならびに/またはこのような疾患、障害、もしくは状態と関連する、少なくとも1つの症状を好転させるのに有用である。本明細書で記載される処置法の文脈では、抗LAG3抗体は、単剤療法として(すなわち、唯一の治療剤として)投与することもでき、1または複数のさらなる治療剤(それらの例については、本明細書の別の箇所で記載する)と組み合わせて投与することもできる。
【0198】
本発明の一部の実施形態では、本明細書で記載される抗体は、血液がん、脳がん(例えば、多形神経膠芽腫)、腎細胞癌(例えば、明細胞腎がん)、卵巣がん、膀胱がん、前立腺がん、乳がん(例えば、トリプルネガティブ乳がん)、肝細胞癌、骨がん、結腸がん、非小細胞肺がん、頭頚部扁平上皮がん、結腸直腸がん、中皮腫、および黒色腫を含むがこれらに限定されない、原発がんまたは再発がんを患う被験体を処置するのに有用である。
【0199】
本明細書で使用される「血液がん」という用語は、血液、骨髄、リンパ、またはリンパ系に影響を及ぼす血液悪性疾患を含む。それ自体として、用語は、リンパ性細胞系統および骨髄系細胞系統に由来する細胞の悪性疾患を含む。骨髄細胞系は通常、顆粒球、赤血球、血小板、マクロファージ、マスト細胞を産生し、リンパ細胞系は、B細胞、T細胞、NK細胞、形質細胞を産生する。したがって、用語は、上記で言及された細胞の悪性疾患、すなわち、リンパ腫、骨髄腫、リンパ性白血病、および骨髄性白血病を含む。例は、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、急性単球性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(例えば、B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)、および骨髄腫(多発性骨髄腫を含む)を含むがこれらに限定されない。
【0200】
抗体を使用して、がんの早期または後期の症状を処置することができる。一実施形態では、本発明の抗体またはその断片を使用して、進行がんまたは転移性がんを処置することができる。抗体は、充実性腫瘍および血液がんのいずれの腫瘍の増殖も、低減または阻害または縮小するのに有用である。ある特定の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片による処置は、被験体における腫瘍の、40%を超える退縮、50%を超える退縮、60%を超える退縮、70%を超える退縮、80%を超える退縮、または90%を超える退縮をもたらす。ある特定の実施形態では、抗体を使用して、腫瘍の再発を防止することができる。ある特定の実施形態では、抗体は、がんを伴う被験体における無進行生存または全生存を延長するのに有用である。一部の実施形態では、抗体は、がんを患う患者における長期にわたる生存を維持しながら、化学療法または放射線治療に起因する毒性を軽減するのに有用である。
【0201】
ある特定の実施形態では、被験体は、がんを患う患者であり、
・過去に、抗PD-1/PD-L1による治療を施されていないが、抗PD-1ベースの治療を施すのに適切な候補者である患者;および/または
・過去に、抗PD-1/PD-L1ベースの治療を施され、抗PD-1/PD-L1療法時の、少なくとも3カ月間にわたり、客観的応答(CRまたはPR)もしくはSDを確認したが、その後、その治療時に進行した患者、または最良の応答として、SDもしくはPRを示し、その後、6カ月間にわたり安定的応答を示した患者;および/または
・標準治療の候補者ではないか、もしくは臨床有益性をもたらすことが予測される実施可能な治療が存在せず、かつ、mAb1単剤療法に適切な患者;および/または
・抗PD-1/PD-L1を経ていない、病期IIIBもしくはIVのNSCLCを患う患者であって、転移性疾患のための既往の治療を伴わないか、もしくは1つの白金含有レジメンの後で、疾患の進行/再発を伴う患者;および/または
・抗PD-1/PD-L1を経た、病期IIIBもしくはIVのNSCLCを患う患者であって、転移性疾患のための、2つを超えない既往の治療を伴う患者;および/または
・抗PD-1/PD-L1を経ていない、明細胞の構成要素を伴う、進行ccRCCもしくは転移性ccRCCを患う患者であって、抗血管新生治療の、1つ~2つの既往のレジメンを施された患者;および/または
・抗PD-1/PD-L1を経た*、明細胞の構成要素を伴う、進行ccRCCもしくは転移性ccRCCを患う患者であって、抗血管新生治療の、1つ~2つの既往のレジメンを施された患者;および/または
・抗PD-1/PD-L1を経ていない、転移性TNBC(エストロゲン、プロゲステロン、およびヒト表皮増殖因子受容体2陰性である)を患う患者であって、5つもしくはこれより少ない、既往の一連の治療を施された患者;および/または
・抗PD-1/PD-L1を経ていない、進行黒色腫もしくは転移性黒色腫を患う患者であって、転移性疾患のための、2つを超えない既往のレジメンを施された患者;および/または
・抗PD-1/PD-L1を経た、進行黒色腫もしくは転移性黒色腫を患う患者であって、転移性疾患のための、2つを超えない既往のレジメンを施された患者;および/または
・抗PD-1/PD-L1を経ていない、再発性/不応性のDLBCLを患う患者であって、自家幹細胞移植の後で進行しているか、もしくはその候補者ではない患者;および/または
・抗PD-1/PD-L1を経た*、再発性/不応性のDLBCLを患う患者であって、自家幹細胞移植の後で進行しているか、もしくはその候補者ではない患者
である。
【0202】
ある特定の実施形態では、本発明の抗体は、慢性ウイルス感染を患う被験体を処置するのに有用である。一部の実施形態では、本発明の抗体は、宿主内のウイルス力価を低下させ、かつ/または疲弊したT細胞をレスキューするのに有用である。ある特定の実施形態では、本発明の抗体またはその断片を使用して、リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)による慢性ウイルス感染を処置することができる。一部の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片を、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはヒトパピローマウイルス(HPV)またはB型肝炎ウイルス/C型肝炎ウイルス(HBV/HCV)に感染した患者へと、治療用量で投与することができる。関連する実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片を使用して、カニクイザルなど、サル被験体におけるサル免疫不全ウイルス(SIV)による感染を処置することができる。
【0203】
ある特定の実施形態では、本発明の遮断抗体は、治療有効量で、がんまたはウイルス感染を患う被験体へと投与することができる。
【0204】
1または複数の、本発明の抗体を投与して、疾患または障害の症状または状態のうちの1または複数を、緩和することもでき、防止することもでき、これらの重症度を低下させることもできる。
【0205】
本明細書ではまた、がんおよびウイルス感染などの疾患または障害を発症する危険性がある患者へと、1または複数の、本発明の抗体を、予防的に使用することも想定される。
【0206】
本発明のさらなる実施形態では、本抗体を、がんまたはウイルス感染を患う患者を処置するための医薬組成物を調製するために使用する。本発明の別の実施形態では、本抗体を、がんまたはウイルス感染を処置するのに有用な、当業者に公知の、任意の他の薬剤または任意の他の治療を伴う補助治療として使用する。
【0207】
組み合わせ療法および組み合わせ製剤
組み合わせ療法は、本発明の抗LAG3抗体と、本発明の抗体、または本発明の抗体の生物学的に活性の断片と有利に組み合わせうる、任意のさらなる治療剤とを含みうる。
【0208】
本発明の抗体は、例えば、血液がん、脳がん(例えば、多形神経膠芽腫)、腎細胞癌、卵巣がん、膀胱がん、前立腺がん、乳がん、肝細胞癌、骨がん、結腸がん、非小細胞肺がん、頭頚部扁平上皮がん、結腸直腸がん、中皮腫、および黒色腫を含むがんを処置または阻害するのに使用される、1または複数の抗がん薬または抗がん治療と、相乗作用的に組み合わせることができる。本明細書では、腫瘍の増殖を阻害し、かつ/またはがん患者の生存を延長するように、本発明の抗LAG3抗体を、免疫刺激療法および/または免疫支持療法と組み合わせて使用することが想定される。免疫刺激療法は、抑制された免疫細胞に対する「ブレーキを解除する」か、または免疫応答を活性化させるように「アクセルを踏む」ことにより、免疫細胞活性を増進させる、直接的な免疫刺激療法を含む。例は、他のチェックポイント受容体のターゲティング、ワクチン接種、およびアジュバントを含む。免疫支持モダリティーは、免疫原性の細胞死、炎症を推進することにより、腫瘍の抗原性を増大させる場合もあり、抗腫瘍免疫応答を促進する、他の間接的効果を及ぼす場合もある。例は、放射線、化学療法、抗血管新生剤、および手術を含む。
【0209】
多様な実施形態では、1または複数の、本発明の抗体は、PD-1阻害剤(例えば、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピジリズマブ、BGB-A317、またはREGN2810などの抗PD-1抗体)、PD-L1阻害剤(例えば、アベルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、MDX-1105、またはREGN3504などの抗PD-L1抗体)、CTLA-4阻害剤(例えば、イピリムマブ)、TIM3阻害剤、BTLA阻害剤、TIGIT阻害剤、CD47阻害剤、GITR阻害剤、別のT細胞共阻害剤またはT細胞リガンドのアンタゴニスト(例えば、CD-28、2B4、LY108、LAIR1、ICOS、CD160、またはVISTAに対する抗体)、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤、血管内皮増殖因子(VEGF)のアンタゴニスト[例えば、アフリベルセプトなど、「VEGF-Trap」、もしくはUS7,087,411で明示されている、他のVEGF阻害性融合タンパク質、または抗VEGF抗体もしくはその抗原結合断片(例えば、ベバシズマブまたはラニビズマブ)、またはVEGF受容体の小分子キナーゼ阻害剤(例えば、スニチニブ、ソラフェニブ、またはパゾパニブ)]、Ang2阻害剤(例えば、ネスバクマブ)、形質転換増殖因子ベータ(TGFβ)阻害剤、表皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤(例えば、エルロチニブ、セツキシマブ)、CD20阻害剤(例えば、リツキシマブなどの抗CD20抗体)、腫瘍特異抗原[例えば、CA9、CA125、黒色腫関連抗原3(MAGE3)、癌胎児性抗原(CEA)、ビメンチン、腫瘍M2-PK、前立腺特異抗原(PSA)、ムチン1、MART-1、およびCA19-9]に対する抗体、ワクチン(例えば、カルメット-ゲラン桿菌ワクチン、がんワクチン)、抗原提示を増大させるアジュバント(例えば、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)、二特異性抗体(例えば、CD3×CD20二特異性抗体、またはPSMA×CD3二特異性抗体)、細胞毒素、化学療法剤(例えば、ダカルバジン、テモゾロミド、シクロホスファミド、ドセタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シスプラチン、カルボプラチン、ゲムシタビン、メトトレキサート、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、およびビンクリスチン)、シクロホスファミド、放射線治療、IL-6R阻害剤(例えば、サリルマブ)、IL-4R阻害剤(例えば、デュピルマブ)、IL-10阻害剤、IL-2、IL-7、IL-21、およびIL-15などのサイトカイン、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)(例えば、抗CD19-DM4 ADC、および抗DS6-DM4 ADC)、抗炎症薬(例えば、コルチコステロイドおよび非ステロイド系抗炎症薬)、抗酸化剤などの栄養補助食品、またはがんを処置するための任意の他の治療ケアと組み合わせて使用することができる。ある特定の実施形態では、本発明の抗LAG3抗体は、抗腫瘍応答を増進させるように、樹状細胞ワクチン、腫瘍溶解性ウイルス、腫瘍細胞ワクチンなどを含むがんワクチンと組み合わせて使用することができる。本発明の抗LAG3抗体と組み合わせて使用しうるがんワクチンの例は、黒色腫および膀胱がんのためのMAGE3ワクチン、乳がんのためのMUC1ワクチン、脳がん(多形神経膠芽腫を含む)のためのEGFRv3(例えば、Rindopepimut)、またはALVAC-CEA(CEA+がんのための)を含む。
【0210】
ある特定の実施形態では、本発明の抗LAG3抗体を、長期にわたる永続的な抗腫瘍応答を発生させ、かつ/またはがんを伴う患者の生存を増強する方法において、放射線療法と組み合わせて投与することができる。一部の実施形態では、本発明の抗LAG3抗体を、放射線療法を、がん患者へと投与する前に投与することもでき、これと共時的に投与することもでき、この後で投与することもできる。例えば、放射線療法を、1回または複数回の用量で、腫瘍病変へと実施し、その後に1回または複数回の用量の本発明の抗LAG3抗体を投与することができる。一部の実施形態では、放射線療法を、腫瘍病変へと、患者の腫瘍の局所的免疫原性を増強するように(補助的照射(adjuvinating radiation))、かつ/または腫瘍細胞を死滅させるように(アブレーション的照射(ablative radiation))局所投与し、その後に本発明の抗LAG3抗体を全身投与することができる。例えば、頭蓋内照射を、脳がん(例えば、多形神経膠芽腫)を伴う患者へと、本発明の抗LAG3抗体の全身投与と組み合わせて投与することができる。ある特定の実施形態では、本発明の抗LAG3抗体を、放射線療法および化学療法剤(例えば、テモゾロミド)またはVEGFアンタゴニスト(例えば、アフリベルセプト)と組み合わせて投与することができる。
【0211】
ある特定の実施形態では、本発明の抗LAG3抗体を、LCMV、HIV、HPV、HBV、またはHCVにより引き起こされる慢性ウイルス感染を処置するように、1または複数の抗ウイルス薬と組み合わせて投与することができる。抗ウイルス薬の例は、ジドブジン、ラミブジン、アバカビル、リバビリン、ロピナビル、エファビレンツ、コビシスタット、テノフォビル、リルピビリン、およびコルチコステロイドを含むがこれらに限定されない。
【0212】
さらなる治療活性薬剤/成分を、本発明の抗LAG3抗体の前に投与することもでき、これと共時的に投与することもでき、この後で投与することもできる。本開示の目的では、このような投与レジメンを、第2の治療活性成分「と組み合わせた」抗LAG3抗体の投与と考える。
【0213】
さらなる治療活性成分を、被験体へと、本発明の抗LAG3抗体の投与の前に投与することができる。例えば、第1の成分が、第2の成分の投与の、1週間前、72時間前、60時間前、48時間前、36時間前、24時間前、12時間前、6時間前、5時間前、4時間前、3時間前、2時間前、1時間前、30分前、15分前、10分前、5分前、または1分間未満前に投与される場合、第1の成分は、第2の成分「の前に」投与されるとみなすことができる。他の実施形態では、さらなる治療活性成分を、被験体へと、本発明の抗LAG3抗体の投与の後で投与することができる。例えば、第1の成分が、第2の成分の投与の、1分後、5分後、10分後、15分後、30分後、1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、6時間後、12時間後、24時間後、36時間後、48時間後、60時間後、72時間後に投与される場合、第1の成分は、第2の成分「の後で」投与されるとみなすことができる。さらに他の実施形態では、さらなる治療活性成分を、被験体へと、本発明の抗LAG3抗体の投与と共時的に投与することができる。本発明の目的のための「共時的」投与は、例えば、抗LAG3抗体およびさらなる治療活性成分の、被験体への、単一の剤形(例えば、共製剤化剤形)または被験体へと、互いから約30分間またはこれ未満の内に投与される別個の剤形での投与を含む。別個の剤形で投与される場合、各剤形は、同じ経路(例えば、抗LAG3抗体およびさらなる治療活性成分の両方を、静脈内、皮下などに投与することができる)を介して投与することもでき、代替的に、各剤形は、異なる経路(例えば、抗LAG3抗体は、静脈内投与し、さらなる治療活性成分は、皮下投与することができる)を介して投与することもできる。いずれにせよ、成分を、単一の剤形で投与するのであれ、同じ経路により、別個の剤形で投与するのであれ、異なる経路により、別個の剤形で投与するのであれ、いずれも、本開示の目的での「共時的投与」と考えられる。本開示の目的では、さらなる治療活性成分の投与「の前における」、「と共時的な」、または「の後における」(これらの用語については、本明細書の上記で規定した)、抗LAG3抗体の投与は、さらなる治療活性成分「と組み合わせた」、抗LAG3抗体の投与と考えられる。
【0214】
本発明は、様々な投与量の組み合わせを使用して、本発明の抗LAG3抗体を、本明細書の別の箇所で記載されるさらなる治療活性成分のうちの1または複数と共製剤化する医薬組成物を含む。
【0215】
本発明の抗LAG3抗体を、PD-1阻害剤(例えば、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、US2015/0203579において開示されている抗PD-1抗体)と組み合わせて投与する、例示的な実施形態であって、抗LAG3抗体と、PD-1阻害剤とを含む共製剤の投与を含む実施形態では、個々の成分を、被験体へと投与することもでき、かつ/または様々な投与量の組み合わせを使用して共製剤化することもできる。こうして、本発明は、がんまたはウイルス感染の処置における、同時的使用、別個の使用、および/または逐次的使用のための、(i)本発明の抗LAG3抗体と、(ii)PD-1阻害剤(例えば、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、US2015/0203579において開示されている抗PD-1抗体)との組み合わせを含む。例えば、抗LAG3抗体およびPD-1阻害剤(例えば、抗PD-1抗体)の各々は、0.01mg、0.02mg、0.03mg、0.04mg、0.05mg、0.1mg、0.2mg、0.3mg、0.4mg、0.5mg、0.6mg、0.7mg、0.8mg、0.9mg、1.0mg、1.5mg、2.0mg、2.5mg、3.0mg、3.5mg、4.0mg、4.5mg、5.0mg、6.0mg、7.0mg、8.0mg、9.0mg、および10.0mgからなる群より選択される量で、被験体へと投与することもでき、かつ/または共製剤中に含有させることもできる。組み合わせ/共製剤は、被験体へと、本明細書の別の箇所で開示される投与レジメンのうちのいずれかであって、例えば、毎週2回、毎週1回、隔週1回、3週間ごとに1回、1カ月ごとに1回、2カ月ごとに1回、3カ月ごとに1回、4カ月ごとに1回、5カ月ごとに1回、6カ月ごとに1回などを含むレジメンに従い投与することができる。本発明の抗LAG3抗体は、例えば、約0.8~約11、約1~約10、約3~約10、約1、約3、または約10mg/kgの用量で、約3~5、または約3.0mg/kgの用量のPD-1阻害剤(例えば、US2015/0203579において開示されている抗PD-1抗体)と同時に投与しうるであろう。同時投与は、例えば、14日ごと、21日ごと、または28日ごとに行いうるであろう。
【0216】
本発明の抗LAG3抗体を、VEGFアンタゴニスト(例えば、アフリベルセプトなどのVEGFトラップ)と組み合わせて投与する、例示的な実施形態であって、抗LAG3抗体と、VEGFアンタゴニストとを含む共製剤の投与を含む実施形態では、個々の成分を、被験体へと投与することもでき、かつ/または様々な投与量の組み合わせを使用して共製剤化することもできる。例えば、抗LAG3抗体は、0.01mg、0.02mg、0.03mg、0.04mg、0.05mg、0.1mg、0.2mg、0.3mg、0.4mg、0.5mg、0.6mg、0.7mg、0.8mg、0.9mg、1.0mg、1.5mg、2.0mg、2.5mg、3.0mg、3.5mg、4.0mg、4.5mg、5.0mg、6.0mg、7.0mg、8.0mg、9.0mg、および10.0mgからなる群より選択される量で、被験体へと投与することもでき、かつ/または共製剤中に含有させることもでき、VEGFアンタゴニスト(例えば、アフリベルセプトなどのVEGFトラップ)は、0.1mg、0.2mg、0.3mg、0.4mg、0.5mg、0.6mg、0.7mg、0.8mg、0.9mg、1.0mg、1.1mg、1.2mg、1.3mg、1.4mg、1.5mg、1.6mg、1.7mg、1.8mg、1.9mg、2.0mg、2.1mg、2.2mg、2.3mg、2.4mg、2.5mg、2.6mg、2.7mg、2.8mg、2.9mg、および3.0mgからなる群より選択される量で、被験体へと投与することもでき、かつ/または共製剤中に含有させることもできる。組み合わせ/共製剤は、被験体へと、本明細書の別の箇所で開示される投与レジメンのうちのいずれかであって、例えば、毎週2回、毎週1回、隔週1回、3週間ごとに1回、1カ月ごとに1回、2カ月ごとに1回、3カ月ごとに1回、4カ月ごとに1回、5カ月ごとに1回、6カ月ごとに1回などを含むレジメンに従い投与することができる。
【0217】
投与レジメン
本発明のある特定の実施形態に従い、複数回用量の抗LAG3抗体(または本明細書で言及される抗LAG3抗体と、さらなる治療活性薬剤のうちのいずれかとの組み合わせを含む医薬組成物)を、被験体へと、規定された時間経過にわたり投与することができる。本発明のこの態様に従う方法は、被験体へと、複数回用量の本発明の抗LAG3抗体を逐次的に投与するステップを含む。本明細書で使用される「逐次的に投与するステップ」とは、各用量の抗LAG3抗体を、被験体へと、異なる時点、例えば、所定の間隔(例えば、数時間、数日間、数週間、または数カ月間)だけ隔てた、異なる日において投与することを意味する。本発明は、患者へと、単回の初期用量の抗LAG3抗体、その後に1回または複数回の二次用量の抗LAG3抗体、任意選択で、その後に1回または複数回の三次用量の抗LAG3抗体を逐次的に投与するステップを含む方法を含む。抗LAG3抗体は、被験体の体重1kg当たり0.1mg~100mgの間の用量で投与することができる。
【0218】
「初期用量」、「二次用量」、および「三次用量」という用語は、本発明の抗LAG3抗体の投与の時間的順序を指す。したがって、「初期用量」とは、処置レジメンの開始時に投与される用量(「ベースライン用量」ともまた称する)であり、「二次用量」とは、初期用量の後で投与される用量であり、「三次用量」とは、二次用量の後で投与される用量である。初期用量、二次用量、および三次用量はいずれも、同じ量の抗LAG3抗体を含有しうるが、一般に、投与頻度の点で、互いと異なりうる。しかし、ある特定の実施形態では、初期用量、二次用量、および/または三次用量に含有される抗LAG3抗体の量は、処置の経過中に、互いに変動する(例えば、必要に応じて、上方調整または下方調整される)。ある特定の実施形態では、2回またはこれを超える(例えば、2、3、4、または5回にわたる)用量を、処置レジメンの開始時に、「負荷用量」として投与し、その後により低い頻度で後続の用量(例えば、「維持用量」)を投与する。
【0219】
ある特定の実施形態では、初期用量、二次用量、および/または三次用量に含有される抗LAG3抗体の量は、最適量未満または治療量未満でありうる。本明細書で使用される「治療量未満」または「最適量未満」という用語は、治療効果をもたらすには低過ぎるレベル、またはがんなどの疾患を処置するのに必要なレベルを下回るレベルで投与される抗体の用量を指す。
【0220】
本発明のある特定の例示的な実施形態では、各二次用量および/または三次用量を、直前の投与の、1~26週間(例えば、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、20、20.5、21、21.5、22、22.5、23、23.5、24、24.5、25、25.5、26、26.5週間、またはこれを超える期間)後に投与する。本明細書で使用される「直前の用量」という語句は、複数回投与の順序における、抗LAG3抗体の用量であって、介在する用量が存在しない順序において、すぐ次の用量を実施する前に、患者へと投与される、抗LAG3抗体の用量を意味する。
【0221】
本発明のこの態様に従う方法は、患者へと、抗LAG3抗体の、任意の数の二次用量および/または三次用量を投与するステップを含みうる。例えば、ある特定の実施形態では、単回の二次用量だけを、患者へと投与する。他の実施形態では、2回またはこれを超える(例えば、2、3、4、5、6、7、8回、またはこれを超える)二次用量を、患者へと投与する。同様に、ある特定の実施形態では、単回の三次用量だけを、患者へと投与する。他の実施形態では、2回またはこれを超える(例えば、2、3、4、5、6、7、8回、またはこれを超える)三次用量を、患者へと投与する。
【0222】
複数回の二次用量を伴う実施形態では、各回の二次用量は、他の二次用量と同じ頻度で投与することができる。例えば、各回の二次用量は、患者へと、直前の用量の1~2週間後、または1~2カ月間後に投与することができる。同様に、複数回の三次用量を伴う実施形態では、各三次用量は、他の三次用量と同じ頻度で投与することができる。例えば、各三次用量は、患者へと、直前の用量の2~12週間後に投与することができる。本発明のある特定の実施形態では、二次用量および/または三次用量を、患者へと投与する頻度は、処置レジメンの経過にわたり変動しうる。投与頻度はまた、処置の経過中に、臨床検査後の個々の患者の必要に応じて、医師が調整することもできる。
【0223】
抗体の診断的使用
本発明の抗LAG3抗体を使用して、例えば、診断目的で、試料中のLAG3を検出および/または測定することができる。一部の実施形態は、1または複数の、本発明の抗体の、がん、自己免疫疾患、またはウイルス感染などの疾患または障害を検出するためのアッセイにおける使用を想定する。LAG3についての例示的な診断アッセイは、例えば、被験体(例えば、患者)から得られた試料を、本発明の抗LAG3抗体と接触させることを含みうるが、この場合、抗LAG3抗体を、検出可能な標識またはレポーター分子で標識するか、またはLAG3を、対象試料から選択的に単離する、捕捉リガンドとして使用する。代替的に、非標識の抗LAG3抗体を、診断的適用において、それ自体が検出可能な形で標識された二次抗体と組み合わせて使用することができる。検出可能な標識またはレポーター分子は、3H、14C、32P、35S、もしくは125Iなどの放射性同位元素;イソチオシアン酸フルオレセインまたはローダミンなどの蛍光部分もしくは化学発光部分;またはアルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、もしくはルシフェラーゼなどの酵素でありうる。試料中のLAG3を検出または測定するのに使用しうる、具体的な例示的アッセイは、酵素免疫測定アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、および蛍光活性化細胞分取(FACS)を含む。
【0224】
本発明に従うLAG3診断的アッセイにおいて使用しうる試料は、被験体から得られる、任意の組織試料または体液試料であって、正常状態下または病理学的状態下で、検出可能な数量のLAG3タンパク質またはその断片を含有する試料を含む。一般に、健常患者(例えば、がんまたは自己免疫疾患に罹患していない患者)から得られる、特定の試料中のLAG3レベルを測定して、まず、ベースラインのLAG3レベルまたは標準LAG3レベルを確立する。次いで、このベースラインのLAG3レベルを、がんに関連する状態、またはこのような状態と関連する症状を有することが疑われる個体から得られる試料中で測定されるLAG3レベルと比較することができる。
【0225】
LAG3に特異的な抗体は、さらなる標識または部分を含有しない場合もあり、N末端またはC末端の標識または部分を含有する場合もある。一実施形態では、標識または部分は、ビオチンである。結合アッセイでは、標識(存在する場合)の位置は、ペプチドが結合する表面と比べた、ペプチドの配向性を決定しうる。例えば、表面を、アビジンでコーティングする場合、ペプチドのC末端の部分が、表面に対して遠位となるように、N末端のビオチンを含有するペプチドを配向させる。
【0226】
本発明の態様は、開示された抗体の、患者におけるがんまたはウイルス感染の予後を予測するためのマーカーとしての使用に関する。本発明の抗体は、患者におけるがんの予後について評価し、生存を予測する診断アッセイにおいて使用することができる。
【実施例】
【0227】
以下の実施例は、当業者に、本発明の方法および組成物を、どのようにして作製および使用するのかについての、完全な開示および記載をもたらすように明示されるものであり、本発明者らが、自らの発明と考えるものの範囲を限定することを意図するものではない。使用される数(例えば、量、温度など)に関しては、精度を確保するように努めているが、一部の実験の誤差および偏差については、説明するものとする。そうでないことが指し示されない限りにおいて、部は、重量部であり、分子量は、平均分子量であり、温度は、摂氏度であり、室温は、約25℃であり、圧力は、大気圧または大気圧付近である。
【0228】
(実施例1:LAG3に対するヒト抗体の作出)
LAG3に対するヒト抗体は、マウスFc領域へとカップリングさせた、GenBank受託番号:NP_002277.4(配列番号582)のうちの、ほぼアミノ酸29~450の範囲のLAG3の断片を使用して作出した。免疫原は直接、免疫応答を刺激するアジュバントと共に、US8502018B2に記載されている、VELOCIMMUNE(登録商標)マウス(すなわち、ヒト免疫グロブリンの重鎖可変領域およびカッパ軽鎖可変領域をコードするDNAを含む操作マウス)またはWO2013022782に記載されている、ヒト化Universal Light Chain(ULC)VelocImmune(登録商標)マウスへと投与した。抗体の免疫応答は、LAG3特異的イムノアッセイによりモニタリングした。所望の免疫応答を達成したら、脾臓細胞を採取し、それらの生存度を保存し、ハイブリドーマ細胞系を形成するように、マウス骨髄腫細胞と融合させた。LAG3特異的抗体を産生する細胞系を同定するように、ハイブリドーマ細胞系をスクリーニングおよび選択した。この技法および上記で記載した免疫原を使用して、いくつかの抗LAG3キメラ抗体(すなわち、ヒト可変ドメインと、マウス定常ドメインとを保有する抗体)を得、このようにして、VELOCIMMUNE(登録商標)マウスから作出した例示的な抗体を、H1M14985N、H1M14987N、H2M14811N、H2M14885N、H2M14926N、H2M14927N、H2M14931N、H2M18336N、H2M18337N、およびH4H14813Nと命名した。
【0229】
抗LAG3抗体はまた、参照によりその全体において本明細書に具体的に組み込まれる米国特許第7,582,298号において記載されている通り、骨髄腫細胞への融合を伴わずに、抗原陽性B細胞(免疫化されたマウスのいずれかに由来する)からも直接単離した。この方法を使用して、いくつかの完全ヒト抗LAG3抗体(すなわち、ヒト可変ドメインと、ヒト定常ドメインとを保有する抗体)を得、この方式で作出した例示的な抗体を、以下:H4H15477P、H4H15483P、H4H15484P、H4H15491P、H4H17823P、H4H17826P2、H4H17828P2、H4sH15460P、H4sH15462P、H4sH15463P、H4sH15464P、H4sH15466P、H4sH15467P、H4sH15470P、H4sH15475P、H4sH15479P、H4sH15480P、H4sH15482P、H4sH15488P、H4sH15496P2、H4sH15498P2、H4sH15505P2、H4sH15518P2、H4sH15523P2、H4sH15530P2、H4sH15555P2、H4sH15558P2、H4sH15567P2、およびH4H17819Pの通りに命名した。
【0230】
例示的な抗体であるH4sH15496P2、H4sH15498P2、H4sH15505P2、H4sH15518P2、H4sH15523P2、H4sH15530P2、H4sH15555P2、H4sH15558P2、およびH4sH15567P2は、ULC Velocimmune(登録商標)マウスに由来するB細胞から作出した。
【0231】
本実施例の方法に従い作出される、例示的な抗体の生物学的特性を、下記に明示される実施例に詳細に記載する。
【0232】
(実施例2:重鎖可変領域および軽鎖可変領域のアミノ酸配列およびヌクレオチド配列)
表1は、本発明の選択された抗LAG3抗体の、重鎖可変領域および軽鎖可変領域ならびにCDRの、アミノ酸配列の識別子を明示する。対応する核酸配列の識別子は、表2に明示する。
【表1-1】
【表1-2】
【表2-1】
【表2-2】
【0233】
本明細書では、以下の命名法:Fc接頭辞(例えば、「H1M」、「H4sH」、「H4H」など)、その後に数字による識別子(例えば、表1に示す、「14813」、「17828」など)、その後に「P」、「P2」、または「N」の接尾辞に従い、抗体に言及することが典型的である。こうして、本明細書では、この命名法に従い、抗体に、例えば、「H4sH14813N」、「H4H17819P」、「H4H17828P2」などとして言及することができる。本明細書で使用される抗体の呼称における、H4sHおよびH4Hの接頭辞は、抗体の特定のFc領域のアイソタイプを指し示す。例えば、「H4sH」抗体は、US20140243504(その全体において本明細書に組み込まれる)において開示されている通り、2つまたはこれを超えるアミノ酸変化を伴うヒトIgG4 Fcを有し、「H4H」抗体は、ヒンジ領域内にセリンからプロリンへの変異(S108P)を伴うヒトIgG4 Fcを有し、「H1M」抗体は、マウスIgG1Fcを有し、「H2M」抗体は、マウスIgG2 Fc(抗体呼称中の第1の「H」により表示される通り、全ての可変領域は、完全ヒト可変領域である)を有する。当業者により察知される通り、特定のFcアイソタイプを有する抗体は、異なるFcアイソタイプを伴う抗体へと転換することができる(例えば、マウスIgG1 Fcを伴う抗体は、ヒトIgG4を伴う抗体へと転換することができるなど)が、いずれにせよ、可変ドメイン(CDRを含む)(表1に、数字による識別子で示す)は、依然として同じであり、抗原への結合特性は、Fcドメインの性質に拘わらず、同一であるかまたは実質的に同様であることが予測される。
【0234】
ある特定の実施形態では、マウスIgG1 Fcを伴う、選択された抗体を、ヒトIgG4 Fcを伴う抗体へと転換した。ある特定の実施形態では、抗体は、US20100331527(その全体において本明細書に組み込まれる)において開示される通り、2つまたはこれを超えるアミノ酸変化を伴うヒトIgG4 Fcを含む。一実施形態では、IgG4 Fcドメインは、二量体の安定化を促進するように、ヒンジ領域内にセリンからプロリンへの変異(S108P)を含む。ある特定の実施形態では、本発明の抗体のFc領域は、配列番号569、570、571、572、または573のアミノ酸配列を含む。表3は、ヒトIgG4 Fcを伴う、選択された抗LAG3抗体の、重鎖配列および軽鎖配列のアミノ酸配列の識別子を明示する。
【表3】
【0235】
表3中の各重鎖配列は、可変領域(VHまたはHCVR;HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む)および定常領域(CH1ドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含む)を含んだ。表3中の各軽鎖配列は、可変領域(VLまたはLCVR;LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む)および定常領域(CL)を含んだ。配列番号577は、アミノ酸1~123を含むHCVRと、アミノ酸124~449を含む定常領域とを含んだ。配列番号578は、アミノ酸1~107を含むLCVRと、アミノ酸108~214を含む定常領域とを含んだ。配列番号579は、アミノ酸1~123を含むHCVRと、アミノ酸124~450を含む定常領域とを含んだ。配列番号580は、アミノ酸1~119を含むHCVRと、アミノ酸120~445を含む定常領域とを含んだ。配列番号581は、アミノ酸1~107を含むLCVRと、アミノ酸108~214を含む定常領域とを含んだ。
【0236】
以下の実施例で使用される対照構築物
比較を目的として、以下の実験には、2つの対照構築物(抗LAG3抗体):「対照薬(comparator)1」:WO2010/019570に従い、抗体「25F7」のVH/VL配列を有する、LAG3に対するヒトモノクローナル抗体;および「対照薬2」:US2014/0093511に従い、抗体「v3.5」のVH/VL配列を有する、LAG3に対するヒトモノクローナル抗体を含めた。
【0237】
(実施例3:表面プラズモン共鳴により決定される、抗体の、LAG3への結合)
抗原の、精製抗LAG3抗体への結合についての、結合の会合速度定数および解離速度定数(それぞれ、kaおよびkd)、平衡解離定数および解離半減期(それぞれ、KDおよびt1/2)は、BiaCore 4000測定器上またはBiaCore T200測定器上の、リアルタイム表面プラズモン共鳴バイオセンサーアッセイを使用して決定した。それぞれ、マウスFcまたはヒトFcと共に発現させる、約50~85RUの抗LAG3モノクローナル抗体を捕捉するのに、BiaCoreセンサー表面を、ウサギ抗マウスポリクローナル抗体(GE;型番BR-1008-38)、またはマウス抗ヒトFcモノクローナル抗体(GE;型番BR-1008-39)で誘導体化した。抗LAG3抗体への結合について試験されるLAG3試薬は、C末端のmyc-myc-ヘキサヒスチジンタグ(hLAG3-mmh;配列番号574)と共に発現させる、組換えヒトLAG3、およびC末端のマウスIgG2a mFcタグ(hLAG3-mFc;配列番号575)と共に発現させる組換えヒトLAG3を含んだ。異なる濃度(50、25、12.5、および6.25nM)のLAG3試薬を、BiaCore T200上の流量50μL/分で、抗LAG3モノクローナル抗体を捕捉した表面上に注入した。LAG3試薬の、捕捉されたモノクローナル抗体への結合は、4分間にわたりモニタリングし、HBSTランニングバッファー(0.01MのHEPES pH7.4、0.15MのNaCl、3mMのEDTA、0.05%v/vのSurfactant P20)中でそれらの抗体からの解離は、8分間にわたりモニタリングした。実験は、25℃および37℃で実施した。動力学的な会合速度定数(ka)および解離速度定数(kd)は、Scrubber2.0c曲線当てはめソフトウェアを使用して、1:1結合モデルに照らして、データを加工し、これに当てはめることにより決定した。次いで、結合解離平衡定数(KD)および解離半減期(t1/2)を、KD(M)=kd/kaおよびt1/2(分)=[ln2/(60*kd)]としての動力学的な速度定数から計算した。
【0238】
25℃および37℃における、異なる抗LAG3モノクローナル抗体の、単量体(mmHでタグ付けした)または二量体(mFcでタグ付けした)のLAG3試薬への結合についての結合動態パラメータを、表4~7に示す。
【表4】
【0239】
表4は、25℃において、本発明の全ての抗LAG3抗体が、49pM~10nMの範囲のK
D値で、hLAG3-mmhに結合したのに対し、比較薬は、0.58nMおよび0.8nMのK
D値で結合したことを示す。
【表5】
【0240】
表5は、37℃において、本発明の全ての抗LAG3抗体が、32pM~7.66nMの範囲のKD値で、hLAG3-mmhに結合したのに対し、比較薬は、2.1nMおよび3.0nMのKD値で結合したことを示す。
【0241】
表4および5のデータは、全ての抗LAG3抗体が、25℃および37℃のいずれにおいても、単量体のhLAG3-mmhに、極めて類似したアフィニティーで結合することを指し示す。
【表6】
【0242】
表6は、25℃において、本発明の全ての抗LAG3抗体が、4.3pM~1.0nMの範囲のK
D値で、hLAG3二量体タンパク質に結合したのに対し、比較薬は、97pMおよび0.16nMのK
D値で結合したことを示す。
【表7】
【0243】
表7は、37℃において、本発明の全ての抗LAG3抗体が、4.0pM~0.9nMの範囲のKD値で、hLAG3二量体タンパク質に結合したのに対し、比較薬は、0.26nMおよび0.45nMのKD値で結合したことを示す。
【0244】
表6および7のデータは、全ての抗LAG3抗体が、25℃および37℃のいずれにおいても、hLAG3二量体試薬に、類似したアフィニティーで結合することを指し示す。
【0245】
(実施例4:Octetによる、抗LAG3抗体の間の交差競合)
2つの抗体が、単量体ヒトLAG3(hLAG3.mmh)への結合について、互いと競合するのかどうかについて評価するため、Octet RED384バイオセンサー(Pall ForteBio Corp.)上の、リアルタイム無標識バイオレイヤー干渉アッセイを使用して、抗LAG3モノクローナル抗体の間の結合の競合を決定した。交差競合実験は、1000rpmの速度でプレートを振とうさせながら、0.01MのHEPES pH7.4、0.15MのNaCl、0.05%v/vの界面活性剤であるTween-20、0.1mg/mLのBSA(Octet HBS-P緩衝液)中、25℃で行った。全ての被験抗LAG3抗体および被験hLAG3溶液は、Octet HBS-P緩衝液中で処方した。2つの抗体が、hLAG3への結合について、互いと競合することが可能であるのかどうかについて評価するため、まず、約0.6~0.85nMのhLAG3.mmhを、5μg/mLのhLAG3を含有するウェルから、抗HisでコーティングされたOctetバイオセンサーチップ上に、75秒間にわたり捕捉した。hLAG3を捕捉したOctetバイオセンサーチップを、50ug/mlの、第1の抗LAG3モノクローナル抗体(本実施例では、mAb-1と称する)を含有するウェル内に、5分間にわたり浸漬し、その後に第2の抗LAG3モノクローナル抗体(本実施例では、mAb-2と称する)を含有するウェル内に浸漬することにより飽和させた。各ステップの間に、Octetバイオセンサーチップを、HBS-P緩衝液中で、30秒間にわたり洗浄した。
【0246】
リアルタイムの結合応答を、実験の経過中にモニタリングし、あらゆるステップの終了時における結合応答を記録した。hLAG3の、mAb-1への結合の応答、次いで、遮断mAbへの結合の応答を、バックグラウンドの結合に照らして補正し、比較し、異なる抗Lagモノクローナル抗体の競合的/非競合的挙動を決定した。
【0247】
表8は、結合の順序に依存しない、いずれの方向にも競合する抗体の関連性を明白に規定する。
【表8】
【0248】
(実施例5:フローサイトメトリーにより決定される、抗体の、LAG3を過剰発現する細胞への結合)
組換えhLAG3(NCBI受託番号:NP_002277.4)、またはサルLAG3(mfLAG3)[アカゲザル(Macaca mulata)配列:NCBI受託番号:XP_001108923.1に基づき、アミノ酸74位における「X」を、プロリンで置きかえるように、カニクイザル配列:NCBI受託番号:XP_005570011.1をさらに修飾した](配列番号576)を、細胞表面において発現する安定的な細胞系である、HEK293細胞(HEK293;ATCC番号:CRL-1573)を開発し、本発明の抗LAG3モノクローナル抗体の結合特異性を、フローサイトメトリー解析により決定するのに使用した。
【0249】
抗LAG3抗体の結合を、以下の通りに評価した。hLAG3またはmfLAG3を発現する、安定的なHEK293細胞を、D-PBS(Irvine Scientific型番9240)で1回洗浄し、トリプシン処理し(Specialty Media型番SM-2004-C)、HEK293細胞の培養培地(DME+10%FBS+P/S/G+非必須アミノ酸)でブロッキングした。遠心分離の後、細胞を、染色緩衝液(D-PBS+2%のFBS)中1mL当たりの細胞2.0×10
6個で再懸濁させた。抗体なしで緩衝液だけの対照を含む、抗LAG3抗体およびアイソタイプ対照を、染色緩衝液中に、5pM~100nMの範囲の用量で系列希釈した。系列希釈された抗体を、細胞懸濁物へと添加し、氷上で15~30分間にわたりインキュベートした。細胞を遠心分離し、ペレットを、染色緩衝液で洗浄して、結合しなかった抗体を除去した。その後、細胞を、ヒトFcを認識するアロフィコシアニンコンジュゲート二次F(ab’)2(Jackson ImmunoResearch;型番109-136-170)と共に、氷上で、15~30分間にわたりインキュベートした。細胞を遠心分離し、ペレットを、染色緩衝液で洗浄して、結合しなかった二次F(ab’)2を除去し、Cytofix(BD Biosciences;型番554655)と、染色緩衝液との1:1希釈物で一晩にわたり固定した。翌日、固定された細胞を遠心分離し、ペレットを、染色緩衝液で洗浄し、再懸濁させ、濾過した。蛍光測定値を、HyperCyt(登録商標)血球計算器上で収集し、ForeCyt(商標)(IntelliCyt;Albuquerque、NM)により解析して、平均値蛍光強度(MFI)を決定した。EC
50値は、GraphPad Prismを使用して、11点の反応曲線についての、4パラメータのロジスティック方程式から計算した。EC
50は、最大結合シグナルの50%が検出される抗体濃度として規定した。各抗体についてのMFI比は、抗体濃度を100nMとするときのMFIを、抗体濃度を0nMとするときのMFIで除することにより計算した。
【表9】
【0250】
表9に示される通り、比較薬およびアイソタイプ対照は、FACS解析により測定可能な、野生型の親HEK293細胞への結合を何ら実証しなかった。計算されたMFI比は、1.0~1.6倍の間の範囲であった。野生型細胞上で大きな比を示す抗LAG3抗体は少数であったことから、非特異的結合が示唆され、計算されたMFI比は、0.9~8.2倍の間の範囲であった。これらの染色条件下では、抗LAG3抗体ならびに比較薬についてのEC
50値は、決定されなかった。
【表10】
【0251】
表10に示される通り、アイソタイプ対照は、測定可能な、HEK293/hLag3細胞への結合を何ら実証しなかった。本発明の15の抗LAG3抗体全ては、300pM~7.9nMの範囲のEC
50値で、HEK293/hLag3細胞への著明な結合を示した。計算されたMFI比は、62~414倍の範囲であった。比較薬のEC
50値は、結合アッセイにおいて、0.65nMおよび0.75nMであり、MFI比は、いずれの抗体についても、200倍未満であった。
【表11】
【0252】
表11に示される通り、アイソタイプ対照は、測定可能な、HEK293/mfLag3細胞への結合を何ら実証しなかった。本発明の15の抗LAG3抗体のうちの合計13は、900pM~10nMを超える範囲のEC50値で、HEK293/mfLAG3細胞への著明な結合を示した。計算されたMFI比は、8.8倍~21.5倍の範囲であった。比較薬のEC50値は、10nMを超え、計算されたMFI比は、6.7倍および8.6倍であった。
【0253】
(実施例6:電気化学発光イムノアッセイにより決定される、抗体の、LAG3を過剰発現する細胞への結合)
抗LAG3モノクローナル抗体のパネルが、細胞表面において発現したLAG3に結合する能力について調べるため、電気化学発光ベースの検出プラットフォーム[Meso Scale Diagonostics、Rockville、MD;MSD]内で、ヒトおよびサルのLAG3を発現する細胞系を活用するin vitro結合アッセイを開発した。
【0254】
安定的なHEK293(ATCC番号:CRL-1573)細胞系は、組換えhLAG3(NCBI受託番号:NP_002277.4)、またはサルLAG3(mfLAG3)[アカゲザル(Macaca mulata)配列:NCBI受託番号:XP_001108923.1に基づき、アミノ酸74位における「X」を、プロリンで置きかえるように、カニクイザル配列Macaca fascicularis:NCBI受託番号:XP_005570011.1を修飾した](配列番号576)を発現するレンチウイルスの形質導入により作出した。蛍光活性化細胞分取(FACS)により検出可能なLAG3の発現をもたらさない親HEK293細胞系を、バックグラウンド結合対照として、実験に含めた。非類縁のヒトIgG4およびhIgG4を、アイソタイプ対照抗体として含めた。
【0255】
実験は、以下の手順に従い実行した。上記で記載した3つの細胞系に由来する細胞を、Ca2+/Mg2+を伴わない、1倍濃度のPBS緩衝液中で1回すすぎ、その後にEnzyme Free Cell Dissociation Solutionと共に、37℃で10分間にわたるインキュベーションを行った。剥がした細胞を、Ca2+/Mg2+を伴う、1倍濃度のPBSで、1回洗浄し、Cellometer(商標)Auto T4細胞カウンター(Nexcelom Bioscience)でカウントした。細胞洗浄緩衝液中、ウェル1つ当たりの細胞約10,000個を、96ウェル炭素電極プレート(MULTI-ARRAY high bind plate;MSD)へと播種し、37℃で1時間にわたりインキュベートして、細胞の接着を可能とした。非特異的結合部位を、PBS中に2%のBSA(w/v)により、室温で、1時間にわたりブロッキングした。プレートに結合した細胞へと、系列希釈物中1.7pM~100nMの範囲の抗LAG3抗体の溶液と、抗体の存在しない溶液とを、二連で添加し、プレートを、室温で1時間にわたりインキュベートした。次いで、AquaMax2000プレート洗浄機(MDS Analytical Technologies)を使用して、結合しなかった抗体を除去するように、プレートを洗浄した。プレートに結合した抗体は、室温で1時間にわたる、SULFO-TAG(商標)コンジュゲート抗ヒトIgG抗体(MSD)により検出した。洗浄の後、製造元の推奨する手順に従い、Read Buffer(MSD)によりプレートを展開し、SECTOR Imager 6000(MSD)測定器により発光シグナルを記録した。直接的な結合シグナル(相対光単位:RLUによる)を、抗体濃度の関数として解析し、データを、GraphPad Prism(商標)ソフトウェアを使用する、S字型用量反応モデル(4パラメータのロジスティックモデル)により当てはめた。各抗体の効力は、EC50を計算することにより決定した。HEK293-hLAG3細胞およびHEK293-mfLAG3細胞への結合についてのEC50は、最大結合シグナルの50%が検出される抗体濃度として規定した。100nMの抗体の、HEK293-hLAG3細胞またはHEK293-mfLAG3細胞への結合により検出されるシグナルの、HEK293親細胞への結合により検出されるシグナルと比較した比を、LAG3結合の特異性の指標として記録した。最高抗体濃度(100nM)で、比が2倍より小さい場合、抗体を、非特異的(NS)として結論付けた。
【0256】
【0257】
表12に示す通り、抗体の効力は、HEK293-hLAG3細胞への結合についてのEC50値を690pM~52nMとする範囲であり、抗体の全ては、100nMの抗体による結合で、ヒトLAG3を発現する細胞への、親HEK293細胞と比較して、>2倍の結合である特異的結合をもたらした。抗体のうちの7つだけが、7.9nM~74nMの範囲のEC50値で、HEK293-mfLAG3細胞に特異的に結合した。比較薬の、HEK293-hLag3細胞上の結合効力は、約4.0nMおよび7.0nMであった。比較薬は、HEK293-mfLag3細胞への特異的結合を示さなかった。非関与性対照の、HEK293-hLAG3細胞およびHEK293-mfLAG3細胞への結合は、H4Hアイソタイプ対照およびH4sHアイソタイプ対照結合により予測される通り、非特異的であり、比を、HEK293親細胞の、0.7~1.1倍の範囲とする結合であった。
【0258】
(実施例7:細胞接着アッセイにおける、LAG3の、MHCクラスIIへの結合の遮断)
細胞接着アッセイを活用して、抗LAG3モノクローナル抗体が、ヒトMHCIIまたはマウスMHCIIを発現する細胞(それぞれ、RAJI細胞およびA20細胞)の、マイクロタイタープレート上に付着させたhLAG3発現HEK293細胞への接着を遮断する能力を測定した(Huardらによる、Eur J Immunol.、1995年、25巻:2718~21頁において記載されているアッセイに基づく)。
【0259】
安定的なHEK293(ATCC番号:CRL-1573)細胞系は、組換えhLAG3(NCBI受託番号:NP_002277.4)、またはマウスLAG3(mLAG3)(GenBank受託番号:NP_032505.1)を発現するレンチウイルスの形質導入により作出した。親HEK293細胞系は、蛍光活性化細胞分取(FACS)技術により検出可能なヒトLAG3の発現をもたらさず、MHCIIを発現するRAJI細胞およびA20細胞の接着についてのLAG3の要求を裏付けるのに使用した。
【0260】
実験は、以下の手順に従い実行した。コンフルエンシー未満のHEK293-hLAG3発現細胞を、1倍濃度のPBSで1回洗浄し、トリプシン処理し、1,200rpmで5分間にわたり遠心分離した。細胞ペレットを、1倍濃度のPBS中に再懸濁させ、その後、細胞数を決定するようにカウントした。適切な数の細胞を単離し、各ウェルが、100μLの細胞1.2×104個を含有するように、完全培地(DME+10%FBS+ペニシリン/ストレプトマイシン/グルタミン)中に再懸濁させた。細胞を、滅菌のNunclon(商標)Delta 96-Well MicroWell(商標)Black
Optical Bottom Plates(Thermo Scientific)へと播種した。辺縁効果を回避するように、プレートの縁辺のウェルは、アッセイデザインに含めなかった。ウェルの縁辺へは、細胞の代わりに、1倍濃度のPBS 100μLを添加した。播種されたHEK293-hLAG3細胞は、37℃、5%のCO2で、一晩にわたりインキュベートした。インキュベーションの後、これらの細胞を、抗LAG3抗体およびアイソタイプ対照で処置した。
【0261】
処置日には、全ての抗体を、RPMI培地(FBSまたは補充物質を添加しない)中で系列希釈(1:3)した。9点の希釈物を、45pM~300nMの間の範囲とし、最後の希釈点は、mAbを含有しなかった。RAJI細胞を使用する接着アッセイにおいて、H4sH抗体について調べるために、9点の希釈物を、23pM~150nMの間の範囲とし、最後の希釈点は、mAbを含有しなかった。最終容量を50μLとする抗LAG3抗体またはアイソタイプ対照を、HEK293-hLAG3細胞へと添加し、37℃、5%CO2で、1時間にわたりインキュベートした。播種したHEK293-LAG3細胞を、被験抗体または対照抗体と共にインキュベートする一方、以下の手順を使用して、非接着性B細胞(RAJI細胞またはA20細胞)を、Calcein AMで標識した。RAJI懸濁細胞およびA20懸濁細胞を採取し、1,200rpmで、5分間にわたり遠心分離した。細胞ペレットを、1倍濃度のPBS中に再懸濁させ、カウントした。細胞を、RPMIで洗浄し、RPMI中に、1ml当たりの細胞106個の濃度で再懸濁させた。細胞懸濁物1ml当たりのCalcein AM 5μLを添加することにより、細胞を標識し、37℃、5%のCO2で、30分間にわたりインキュベートした。標識された細胞を、RPMIで1回洗浄し、遠心分離し、1倍濃度のPBSで洗浄し、PBS中に1ml当たりの細胞5×106個の濃度で再懸濁させた。その後、Calcein AMで標識された細胞1ml当たり10μLのBD Pharmingen Fc Block(0.5mg/mL)を添加し、これを、RTで、10分間にわたりインキュベートした。Calcein AMで染色され、Fcを遮断されたRAJI細胞またはA20細胞を、RPMI中に、1ml当たりの細胞3×106個の最終濃度まで再懸濁させ、その後、接着アッセイにおいて使用した。
【0262】
1時間にわたる、LAG3抗体によるHEK293-LAG3細胞の処置の終了時に、標識されたRAJI細胞またはA20細胞50μlを、各ウェルへと、ウェル1つ当たりの細胞1.5×105個の密度で添加した。標識された懸濁細胞を、HEK293単層と共に、37℃、5%のCO2で、1時間にわたりインキュベートした。ウェルを、RPMIで4回にわたり、静かに洗浄し、各回の洗浄後に、プレートを、ペーパータオルで拭い、その後にPBSで2回にわたり洗浄することにより、接着しなかった細胞を洗い落とした。最終容量を200μlとするPBSを、各ウェルへと添加し、励起/発光波長を485nm/535nmとして、VICTOR(商標)X5 Multilabel Plate Reader上で、Calcein AM蛍光を読み取った。IC50値は、GraphPad Prismを使用して、9点の反応曲線についての、4パラメータのロジスティック方程式を使用して計算した。IC50は、HEK細胞の、RAJI細胞またはA20細胞への接着の50%遮断が観察される抗体濃度として規定した。
【0263】
細胞ベースの接着アッセイを使用して、抗LAG3抗体が、LAG3の、ヒトMHCIIおよびマウスMHCIIの両方への結合を遮断する能力について評価した。アッセイは、蛍光標識されたMHCIIを内因的に発現する細胞[ヒトMHCII(RAJI)またはマウスMHCII(A20)]の、ヒトLAG3を発現するように操作された細胞への結合のフォーマットを活用した。LAG3抗体が、この相互作用を遮断する能力を評価し、結果を、表13に示す。
【表13】
【0264】
表13に示す通り、アイソタイプ対照は、RAJI細胞またはA20細胞の、HEK293-hLAG3細胞への結合の、測定可能な遮断を何ら実証しなかった。本発明の全てのLAG3抗体は、最高の抗体濃度で、RAJI細胞またはA20細胞の、HEK293-hLAG3細胞への接着のうちの92~98%を遮断し、IC50値は、RAJI細胞接着については、2.5nM~31nMの範囲であり、A20細胞の、HEK293-hLAG3細胞への接着については、3.6nM~30nMの範囲であった。比較薬のIC50値は、RAJI細胞の接着については、3.4nMおよび7.2nMであり、A20細胞の、HEK293-Lag3細胞への接着については、5.1nMおよび9.6nMであった。
【0265】
(実施例8:T細胞/APCルシフェラーゼレポーターアッセイにおける、LAG3により誘導されるT細胞の下方調節の遮断)
T細胞活性化は、抗原提示細胞(APC)上の、主要組織適合性複合体クラスIまたはII(MHCIまたはMHCII)タンパク質により提示される特定のペプチドを認識する、T細胞受容体(TCR)を刺激することにより達成される(Goldrathら、1999年、Nature、402巻、255~262頁)。活性化したTCRは、今度はアクチベータータンパク質1(AP-1)、活性化T細胞の核因子(NFAT)、または活性化B細胞の核因子カッパ軽鎖エンハンサー(NFκB)などの転写因子により駆動されるレポーター遺伝子によりモニタリングされうる、シグナル伝達イベントのカスケードを誘発する。T細胞の応答は、T細胞上で構成的または誘導的に発現する、共受容体の関与を介して精緻化される。1つのこのような受容体は、T細胞活性の負の調節因子である、LAG3である。LAG3は、そのリガンドであるMHCIIであって、APCまたはがん細胞を含む標的細胞上で発現するMHCIIと相互作用し、TCRシグナロソーム(signalosome)により誘発される正のシグナルを断絶させることにより、T細胞の活性化を阻害する(Workmanら、2002年、J Immunol、169巻:5392~5395頁)。
【0266】
抗LAG3抗体が、T細胞内でLAG3により媒介されるシグナル伝達をアンタゴナイズする能力を特徴付けるために、2つの哺乳動物細胞系:Jurkat由来T細胞(下記で記載される、クローンJRT3.T3.5)およびHEK293バックグラウンド内の操作APC(下記で記載される)に由来する混合培養物を活用することにより、APCとT細胞との相互作用により誘導されるT細胞シグナル伝達を測定するように、LAG3T細胞/APCレポーターアッセイを開発した(
図1)。
【0267】
第1の構成要素には、LAG3T細胞/APCレポーターバイオアッセイのためのT細胞系を、以下の通りに開発した。Jurkat由来のT細胞クローンである、JRT3.T3.5(ATCC番号:TIB-153)にまず、製造元の指示書に従い、Cignal Lenti AP-1 Luc reporter(Qiagen(Sabiosciences);型番CLS-011L)を形質導入した。レンチウイルスは、最小CMVプロモーターの制御下にあるホタルルシフェラーゼ遺伝子、TPA誘導性転写応答エレメント(TRE)のタンデムリピート、およびピューロマイシン耐性遺伝子をコードする。抗生物質による選択の後、レポーター細胞のピューロマイシン耐性プールを、ヒトCD28(NP_006130.1)、Ob2F3 TCRのアルファサブユニットおよびベータサブユニット(アルファ:AGA92550.1、ベータ:AAA61026.1)、ヒトLAG3キメラ(ヒトLAG3の細胞外ドメイン(NP_002277.4)と、ヒトCD300aの膜貫通/細胞質ドメイン(181~299のアミノ酸;受託番号NP009192.2)とを含む)、およびヒトPD-1(受託番号NP_005009.2)の形質導入によりさらに操作した。タンパク質の発現は、各ラウンドの形質導入の後における、FACS解析により確認した。その後、単一のクローンである、JRT3.T3/AP1-Luc/CD28/hLAG3-CD300aキメラ/hPD-1クローン2D2を作出し、T細胞/APCレポーターバイオアッセイにおいて使用した。細胞系は、本実施例では選択培地と称する、100ug/mLのハイグロマイシン+500ug/mLのG418+1ug/mLのピューロマイシンを補充した、RPMI+10%のFBS+ペニシリン/ストレプトマイシン/グルタミン(P/S/G)中で維持した。本明細書では、これらの細胞を、レポーターT細胞と称する。
【0268】
第2の構成要素には、LAG3T細胞/APCレポーターバイオアッセイのためのAPC細胞系を、以下の通りに作出した。ヒトCD20(番号:NP_068769.2)を発現する、安定的なHEK293細胞系(ATCC番号:CRL-1573)に、ヒトMHCIIサブユニットである、HLA-DR2A(NP_061984.2)およびHLA-DR2B(NP_002115)を形質導入した。HLA-DR2陽性細胞を、FACSにより単離し、結果として得られる細胞系である、HEK293/CD20/HLA-DR2を、本実施例では選択培地と称する、DME+10%+P/S/G+非必須アミノ酸(100ug/mLのハイグロマイシン+500ug/mLのG418を補充した)中で維持した。本明細書では、これらの細胞を、APC細胞と称する。
【0269】
TCRによるシグナル伝達を誘発するために、T細胞とAPCとを係合させるのに、2つの手法:(1)二特異性方式;および(2)ペプチドパルシング方式を使用した。このバイオアッセイでは、抗LAG3抗体は、LAG3/MHCII間の相互作用を遮断し、CD300a分子の細胞質ゾルテールにより送達される阻害性シグナル伝達を失効化させることにより、T細胞活性をレスキューし、その後、AP1-Lucシグナル伝達を増大させた。T細胞活性化は、ルシフェラーゼ読み出しによりモニタリングした。
【0270】
二特異性方式:この方式では、T細胞上のCD3に結合する1つのFabアームと、HEK293細胞上のCD20に結合する第2のFabとから構成される、二特異性抗体(CD3×CD20二特異性抗体;例えば、US20140088295に開示されている)を活用した。二特異性分子の存在は、免疫学的シナプスの形成と、操作T細胞上のCD3分子のクラスタリングに起因する、TCR複合体の活性化とを結果としてもたらす。
【0271】
スクリーニングの前日に、操作レポーターT細胞を、選択培地中、1mL当たりの細胞5×105個へと培養し、翌日のバイオアッセイで試験した。抗LAG3抗体のEC50値は、一定濃度のCD3×CD20二特異性抗体(100pM)の存在下で決定した。以下の順序で、試薬を添加した。抗Lag3抗体およびアイソタイプ対照を、10%のFBSおよびペニシリン/ストレプトマイシン/グルタミンを補充した、RPMI1640(アッセイ培地)中で系列希釈した。10点の希釈物を、15pM~100nMの間の範囲とし、最後の希釈点は、mAbを含有しなかった(緩衝液単独の対照)。系列希釈した抗体を、一定濃度(100pM)の二特異性抗体を含有する、96ウェル白色平底プレート内の、対応するウェルへと添加した。一晩にわたり培養したレポーターT細胞を、アッセイ培地中、1mL当たり2×106個で再懸濁させ、二特異性抗体を加えた抗LAG3抗体を含有するプレートへと添加し、37℃/5%のCO2で、30分間にわたりインキュベートした。レポーターT細胞の最終濃度は、ウェル1つ当たり5×104個であった。
【0272】
次に、APC細胞を、D-PBS(Irvine Scientific;型番9240)で1回洗浄し、トリプシン処理し(Specialty Media;型番SM-2004-C)、アッセイ培地でブロッキングした。遠心分離の後、細胞を、アッセイ培地中、1mL当たり4×105個で再懸濁させ、レポーターT細胞を含有するプレートへと添加し、二特異性抗体を加えた抗LAG3抗体と共にインキュベートした。APC細胞の最終濃度は、ウェル1つ当たり1×104個であった。プレートを、37℃、5%のCO2で、4~6時間にわたりインキュベートした。ONE-Glo(商標)(Promega;型番E6051)試薬を添加した後で、AP1-Luc活性を検出し、相対光単位(RLU)を、Victor照度計上で捕捉した。全ての試料を、二連で試験した。
【0273】
MBP85-99を使用するペプチドパルシング方式:TCRは、特定のMHC/ペプチド複合体を認識し、T細胞の活性化をもたらす。このアッセイで使用されるOb2F3 TCRヘテロ二量体は、MBP85-99ペプチド(ミエリン塩基性タンパク質:NP_001020272;配列番号583)と複合体形成させた、MHCIIタンパク質である、HLA-DR2ABと相互作用することが報告されている。
【0274】
スクリーニングの前日に、操作レポーターT細胞を、二特異性方式について上記で記載した通りに調製した。APC細胞を、対応する抗生物質含有細胞培養培地中、37℃/5%のCO2で、0.2μMのMBP85-99ペプチド(Celtek HLA-DR2 MBP85-99(DMSO中);ER-15;ロット番号:140411;分子量:1797.1g/モル)により、一晩にわたりパルシングした。抗LAG3抗体のEC50値は、パルシングされたAPC1×104個の存在下で決定した。以下の順序で、試薬を添加した。抗LAG3抗体および対照を、アッセイ培地中で系列希釈した。抗LAG3抗体の10点の系列希釈物を、15pM~100nMの間の範囲とし、最後の希釈点は、mAbを含有しなかった。抗体を、96ウェル白色平底プレート内の、対応するウェルへと添加した。一晩にわたり培養したレポーターT細胞を、アッセイ培地中、1mL当たり2×106個で再懸濁させ、プレートへと添加し、37℃、5%のCO2で、30分間にわたりインキュベートした。レポーターT細胞の最終濃度は、ウェル1つ当たりのT細胞5×104個であった。次に、MBP85-99ペプチドでパルシングされたAPC細胞を、D-PBS(Irvine Scientific;型番9240)で1回洗浄し、トリプシン処理し(Specialty Media;型番SM-2004-C)、アッセイ培地でブロッキングした。遠心分離の後、細胞を、アッセイ培地中、1mL当たり4×105個で再懸濁させ、抗LAG3に、ペプチドでパルシングされたレポーターT細胞を加えたプレートへと添加した。APC細胞の最終濃度は、ウェル1つ当たり1×104個であった。アッセイプレートを、37℃/5%のCO2で、4~6時間にわたりインキュベートした。ONE-Glo(商標)(Promega;型番E6051)試薬を添加した後で、AP1-Luc活性を検出し、相対光単位(RLU)を、Victor照度計上で捕捉した。全ての試料を、二連で試験した。
【0275】
EC
50値は、GraphPad Prismを使用して、10点の反応曲線についての、4パラメータのロジスティック方程式から決定した。スクリーニングされた各抗体のRLU値は、対照である、mAbを含有しない最後の系列希釈物を、100%とすることにより正規化したものであるが、これは、理論的には、二特異性分子(二特異性方式における)、またはMBP85-99ペプチドでパルシングされたAPCにより誘発される、最大のAP1-Luc応答を提示するはずである。結果を表14にまとめる。
【表14】
【0276】
表14に示す通り、T細胞/APCバイオアッセイで試験した、本発明の全ての抗Lag3 mAbは、LAG3/HLA-DR2による阻害を、アッセイのペプチド方式では、135pM~8.83nMの範囲のEC50値でレスキューし、アッセイの二特異性方式では、87pM~100nMを超える範囲のEC50値でレスキューしたが、比較薬は、280pMおよび350pMのEC50値を呈示した。被験アイソタイプ対照は、バイオアッセイにおいて、著明なレスキュー活性を示さなかった。さらなる実験では、抗PD-1抗体(REGN2810;本明細書の実施例12に記載される)添加は、T細胞活性化のレスキューを増強しなかった。
【0277】
第2の実験では、HEK293/CD20/HLA-DR2細胞系に、レンチウイルス(pLVX)ベクター系へとクローニングした、ヒトPD-L1遺伝子(受託番号NP_054862.1のアミノ酸1~290)を形質導入した。上記で記載した通り、hLAG-3およびAP-1により駆動されるルシフェラーゼレポーターを発現する、Jurkat由来のT細胞を、ヒトMHCII/ペプチド複合体を発現する、PD-L1陽性抗原提示細胞と共にインキュベートした。このアッセイでは、抗LAG-3抗体は、T細胞の活性を、抗PD-1抗体(REGN2810;本明細書の実施例12で記載される)の存在下に限りレスキューし、抗PD-1抗体の非存在下では、レスキューしなかった。まとめると、抗LAG-3抗体は、このT細胞アッセイでは、LAG-3/MHCII阻害性シグナル伝達を遮断することにより、T細胞の活性化をレスキューし、抗PD-1抗体と相乗的に作用した。
【0278】
(実施例9:抗LAG3抗体は、刺激されたカニクイザルCD4+およびCD8+ T細胞への結合を提示する)
本実施例では、FACSを介して、選択された抗LAG3抗体が、LAG3を発現するカニクイザルCD4+および/またはCD8+ T細胞に結合する能力について評価した。
【0279】
まず、T細胞を、カニクイザル全血液(Bioreclamation、Westbury、NY)から単離した。略述すると、2匹のカニクイザルドナーに由来する全血液を、PBS中で1:1に希釈し、85%のFicoll-Paque溶液上に重層させた。標準的な手順に従い、赤血球を単核細胞から分離し、汎T細胞単離キット(Miltenyi Biotech)を使用して、T細胞を単離した。
【0280】
T-cell Activation/Expansion kit for non-human primate(Miltenyi Biotech)を使用して、単離されたT細胞を活性化させた。細胞-ビーズ混合物を、完全培地中、1mL当たりの細胞1×106個の濃度で再懸濁させた。72時間のインキュベーション後、ビーズを除去し、活性化させたT細胞を、完全培地中、96時間にわたり拡大した。
【0281】
次に、FACSを介して、生細胞と死細胞とを識別するように、上記で記載した、各ドナーに由来する、刺激したカニクイザルT細胞を、LIVE/DEAD色素(Molecular Probes)で染色した。その後、CD4およびCD8について陽性および陰性の細胞集団の検出を可能とするように、細胞を、PEコンジュゲート抗CD8およびFITCコンジュゲート抗CD4と共に、氷上で15分間にわたり共インキュベートした。
【0282】
抗LAG3抗体の、既に単離されたカニクイザルCD4+およびCD8+ T細胞への結合について評価するために、抗LAG3抗体およびアイソタイプ対照を、ブロッキング緩衝液中で系列希釈し、100nM~50pMの範囲の最終用量を含む96ウェルV字底プレート内に播種した。次に、Zenon Alexa-Fluor 647(Molecular Probes)を使用して、系列希釈された抗体を直接標識し、カニクイザルCD4+/CD8+ T細胞懸濁物と共に、氷上で、15~30分間にわたりインキュベートした。細胞を遠心分離し、ペレットを、染色緩衝液で洗浄して、結合しなかった抗体を除去し、Cytofix(BD Biosciences)と染色緩衝液との1:1希釈物で12時間にわたり固定した。インキュベーション時間後、固定緩衝液を除去し、ペレットを、染色緩衝液中で再懸濁させ、濾過し、蛍光測定のために使用した。
【0283】
蛍光測定値を、Fortessa(Becton Dickinson)上で収集し、データを、FlowJoにより解析して、平均値蛍光強度(MFI)を決定した。EC
50値は、GraphPad Prismを使用して、11点の反応曲線についての、4パラメータのロジスティック方程式から計算した。各抗体についてのMFI比は、抗体濃度を11.1nMとするときのMFIを、抗体濃度を0nMとするときのMFI(陰性対照)で除することにより計算した。
【表15】
【0284】
既に示した通り、抗LAG3抗体である、H4sH15482PおよびH4sH14813Nは、操作カニクイザルLAG3-HEK293細胞系への結合を提示した。本実施例では、H4sH15482PおよびH4sH14813Nは、CD4+ LAG3発現カニクイザルT細胞およびCD8+ LAG3発現カニクイザルT細胞への特異的な結合を、1.1nM~85pMの範囲のEC50で裏付けた(表15)。まとめると、本実施例で記載した、選択された抗LAG3抗体は、カニクイザル活性化CD4+およびCD8+ T細胞上で発現するLAG3との交差反応性を示す。これに対し、比較薬1は、カニクイザルCD8+ T細胞に対する結合だけを裏付けた。
【0285】
(実施例10:in vivoにおける、抗LAG3抗体の、Colon 26腫瘍に対する有効性)
単独の抗マウスLAG3抗体および抗マウスPD-1抗体と組み合わせた抗マウスLAG3抗体の、in vivoにおける有効性について、Colon 26前臨床相乗作用腫瘍モデルにおいて研究した。
【0286】
BALB/cマウスは、Taconic Biosciencesから購入した。BALB/cマウス系統に由来するマウス腺癌細胞系である、Colon 26は、American Type Culture Collection(ATCC)から購入した。0日目、50匹のBALB/cマウスの皮下に、Colon 26細胞(BALB/c系統に由来する、マウス腺癌系)1×106個を植え込んだ。8日目に、平均腫瘍容量を50mm3とするマウス40匹を選択し、4つの処置群(群1つ当たりのN=10)へと無作為化した。14、17、21、24、および28日目に、マウスに、以下の抗体:群1:ラットIgG2aアイソタイプ対照抗体(クローン2A3、BioXCell;型番BE0089)およびmIgG1アイソタイプ対照抗体(クローンMOPC-21、BioXCell;型番BE0083);群2:抗マウスPD-1抗体(ラットIgG2a抗マウスPD-1抗体、クローンRPMI-14、BioXCell;型番BE0089)およびmIgG1アイソタイプ対照抗体;群3:抗マウスLAG3抗体(ラットIgG1抗マウスLAG3抗体、クローンC9B7W、BioXCell;型番BE0174)およびラットIgG2a対照抗体;群4:抗マウスPD-1抗体および抗マウスLAG3抗体を投与した。全ての抗体は、腹腔内注射により、10mg/kgで投与した。腫瘍容量は、毎週2回ずつ、実験の持続期間(42日間)にわたるカリパー測定によりモニタリングした。
【0287】
抗マウスPD-1抗体で処置されたマウスでは、腫瘍の増殖の有意な低減が観察され(
図2A~2B)、10匹中5匹のマウスが、実験の終了時の45日目までに、無腫瘍となった。抗マウスLAG3抗体で処置されたマウスのサブセットでもまた、腫瘍の増殖の低減が観察され、10匹中3匹のマウスが、45日目までに、無腫瘍となった。これと対照的に、抗LAG3と抗PD-1抗体との組み合わせ処置は、いずれの単剤療法よりも優れており、10匹中8匹のマウスが、実験の終了時に、無腫瘍となったことから、抗LAG3および抗PD-1による処置の強力な相加効果が示唆される。対照群では、実験の終了時において、無腫瘍マウスは見られなかった。組み合わせ療法で処置されたマウスでは、35日目までに、腫瘍容量の、統計学的に有意な低減(p<0.05、
図2B)が見られたが、単剤療法で処置されたマウスでは、これが見られなかった。効果的な腫瘍の排除にも拘らず、体重減少の証拠は観察されなかった(示していない)。こうして、確立されたColon 26腫瘍モデルでは、抗PD-1抗体と抗LAG3抗体との組み合わせレジメンは、対応する単剤療法より有意に有効であった。
【0288】
in vivoにおける、抗マウスPD-1抗体および抗マウスLAG3抗体の活性はまた、4T1、RENCA、およびA20による前臨床相乗作用腫瘍モデルでも研究した。両方の抗体による組み合わせ処置は、単一の抗体処置と比較して、少なくとも相加的な抗腫瘍効果を結果としてもたらした(データは示さない)。
【0289】
(実施例11:in vivoにおける、抗マウスLAG3抗体の、MC38腫瘍に対する有効性)
抗マウスPD-1遮断抗体および抗マウスLAG3遮断抗体を使用して、C57BL/6マウスにおいて確立されたMC38腫瘍に対する、PD-1およびLAG3の二重遮断の効果を検討した。
【0290】
C57BL/6マウスは、Taconic Biosciencesから購入した。C57BL/6マウス系統に由来するマウス腺癌細胞系である、MC38は、米国国立保健研究所への寄託物から得た。抗LAG3抗体および抗PD-1抗体ならびに対照は、実施例10で記載した通りに得た。
【0291】
0日目、50匹のC57BL/6マウスの脇腹の皮下に、MC38細胞3×105個を植え込んだ。8日目に、平均腫瘍容量を45mm3とするマウス40匹を選択し、4つの処置群(群1つ当たりのN=10)へと無作為化した。8、12、15、19、および23日目に、マウスに、以下の抗体:群1:ラットIgG2aアイソタイプ対照抗体およびmIgG1アイソタイプ対照抗体;群2:抗マウスPD-1抗体およびmIgG1抗体;群3:抗マウスLAG3抗体およびラットIgG2a抗体;群4:抗マウスPD-1抗体および抗マウスLAG3抗体を投与した。全ての抗体は、腹腔内注射により、10mg/kgで投与した。腫瘍容量は、毎週2回ずつ、実験の持続期間(28日間)にわたるカリパー測定によりモニタリングした。
【0292】
抗PD-1抗体療法は、マウスのサブセット内の腫瘍の増殖を著明に低減し(p<0.0001;23日目)(
図3A~3B)、10匹中2匹のマウスが、実験の終了時に、無腫瘍となった。抗LAG3抗体による単剤療法が、有意な抗腫瘍効果を示さなかった(実験終了時に無腫瘍のマウスは、10匹中0匹であった)のに対し、抗LAG3抗体と、抗PD-1抗体との組み合わせは、抗PD-1療法単独より優れていたことから、相乗効果が指し示される。
【0293】
組み合わせた抗PD-1抗体および抗LAG3抗体の免疫調節特性について調べるため、処置されたマウスの脾臓内および流入領域リンパ節(DLN)内のT細胞マーカーを検討した(
図4)。腫瘍保有マウスの脾臓および流入領域リンパ節を、切除により除去し、15mLのRPMI1640 Glutamax I培地(Invitrogen)に入れた。全RNAを単離し、マウスCD8β[プローブ:AGCAGCTCTGCCCTCAT(配列番号584)、フォワードプライマー:GCTCTGGCTGGTCTTCAGTATG(配列番号585)、リバースプライマー:TTGCCGTATGGTTGGTTTGAAC(配列番号586)]およびマウスIFNγ(Mm01168134_m1、Applied Biosystems)に特異的なプライマー/プローブミックスを使用して、RT-PCR Taqman解析を実施した。マウスシクロフィリンB転写物発現レベルに対して、試料を正規化した。TaqMan解析は、組み合わせ処置群における、マウスのDLN内および脾臓内の両方のCD8+ T細胞の拡大、ならびに組み合わせで処置された動物および単一の抗PD-1で処置された動物の両方における、T細胞エフェクター分子であるIFNγの産生の増大を裏付けたことから、PD-1およびLAG3の遮断は、T細胞の増殖およびエフェクター機能を増大させることが指し示される。
【0294】
(実施例12:in vivoにおける、抗ヒトLAG3抗体の、MC38腫瘍に対する有効性)
この実験では、本発明の例示的な抗ヒトLAG3抗体の、MC38腫瘍に対する有効性について研究した。抗ヒトLAG3 mAbは、マウスLAG3に結合しない。したがって、これらの抗体の、マウスのin vivoにおける抗腫瘍特性について研究するために、ヒトLAG3タンパク質を発現するようにヒト化されたマウスを使用した。本明細書の実験のために、VelociGene(登録商標)技術(Valenzuelaら、2003年、Nat. Biotechnol.、21巻:652~659頁)を使用して、ヒトPD-1およびヒトLAG3の細胞外部分、ならびにこれらのタンパク質のマウス形の膜貫通部分および細胞内部分を発現する二重ヒト化マウスを作出した。
【0295】
VelociGene(登録商標)技術を使用して、マウスPdcd1遺伝子およびマウスLag3遺伝子の細胞外ドメインを、ヒトPD-1遺伝子およびヒトLAG3遺伝子の対応する領域で置きかえるように、二重ヒト化LAG3/PD-1マウスを操作した(2015年11月20日に出願された、米国特許出願第62/258,181号)。ヒト化PD-1およびヒト化LAG3の発現は、抗CD3/抗CD28抗体による刺激の後における、ヒト化マウスT細胞上のPD-1タンパク質およびLAG3タンパク質の発現を検討することにより確認した。ヒトPD-1タンパク質およびLAG3タンパク質の、対応するマウスリガンドとの相互作用は、細胞接着アッセイにおいて、ヒトLAG3の、マウスMHCIIへの結合について調べることにより検証し、SPR-Biacore結合研究において、ヒトPD-1の、マウスPD-L1への結合について調べることにより検証した。
【0296】
本研究のために使用される、例示的な抗LAG3抗体は、ヒトLAG3に特異的に結合する完全ヒト抗体であり、配列番号420-422-424-428-430-432のHCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3、および配列番号418/426のHCVR/LCVR(H4sH15482Pとしてもまた公知であり、本明細書の下記では、「mAb1」と称する)を含む。
【0297】
抗ヒトPD-1抗体は、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第US20150203579号において開示されている。本実施例で使用される抗PD-1抗体は、H4H7798N(US20150203579において開示されている;REGN2810としてもまた公知である。より具体的には、H4H7798Nは、US20150203579において開示されている、配列番号330の重鎖と、配列番号331の軽鎖とを含む)である。REGN2810(抗hPD-1)は、高アフィニティーで、ヒトPD-1に結合し、PD-1の、PD-L1およびPD-L2との相互作用を遮断する。
【0298】
腫瘍の免疫原性を増大させるために、ニワトリオボアルブミンを発現するように、マウス結腸腺癌細胞を操作した(MC38.Ova)。
【0299】
0日目、LAG3hum/humPD-1hum/humマウスの皮下に、MC38.Ova細胞1.5×106個を植え込み、3つの処置群へと無作為化した(群1つ当たりのN=7)。3、6、10、14、および17日目に、腹腔内注射により、マウスに、mAb1(抗hLAG3)(25mg/kg)、REGN2810(抗hPD-1)(10mg/kg)、またはアイソタイプ対照抗体(25mg/kg)を投与した。腫瘍容量は、毎週2回ずつ、実験の持続期間(24日間)にわたるカリパー測定によりモニタリングした。
【0300】
0日目、LAG3
hum/humPD-1
hum/hum二重ヒト化マウスに、MC38.Ova細胞を接種し、3、6、10、14、および17日目に、腹腔内経路を介して、mAb1(抗hLAG3)(25mg/kg)、REGN2810(抗hPD-1)(10mg/kg)、またはアイソタイプ対照(25mg/kg)を投与した。REGN2810(抗hPD-1)は、部分的な腫瘍増殖の阻害を示し(
図5)、7匹中2匹のマウスで腫瘍退縮が観察されたのに対し、アイソタイプ対照群では、いずれのマウスも無腫瘍ではなかった。25mg/kgのmAb1(抗hLAG3)による単剤療法は、腫瘍の増殖に対して著明な効果を示さず、実験の終了時までに無腫瘍となったマウスは、7匹中1匹だけであった。マウスの体重は、mAb1(抗hLAG3)処置、REGN2810(抗hPD-1)処置、またはアイソタイプ対照処置による影響を受けなかった。
【0301】
(実施例13:in vivoにおける、抗ヒトLAG3抗体と抗ヒトPD-1抗体との組み合わせの、MC38腫瘍に対する有効性)
この実験では、二重ヒト化LAG3hum/humPD-1hum/humマウスにおける、REGN2810(抗hPD-1)と組み合わせたmAb1(抗hLAG3)の、MC38.Ova腫瘍に対する有効性について研究した。二重ヒト化マウスについては、本明細書の実施例12に記載されている。
【0302】
本研究のために使用される、例示的な抗LAG3抗体は、ヒトLAG3に特異的に結合する完全ヒト抗体であり、配列番号420-422-424-428-430-432のHCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3、および配列番号418/426のHCVR/LCVR(H4sH15482Pとしてもまた公知であり、本明細書の下記では、「mAb1」と称する)を含む。
【0303】
本実施例で使用される抗PD-1抗体は、H4H7798N(US20150203579において開示されている;REGN2810としてもまた公知である)。REGN2810(抗hPD-1)は、高アフィニティーで、ヒトPD-1に結合し、PD-1の、PD-L1およびPD-L2との相互作用を遮断する。
【0304】
0日目、マウスの皮下に、MC38.Ova細胞1×106個を植え込み、4つの処置群(対照群では、N=7であり、mAb1(抗hLAG3)処置群、REGN2810(抗hPD-1)処置群、およびmAb1(抗hLAG3)+REGN2810(抗hPD-1)組み合わせ処置群では各々、N=12である)へと無作為化した。3、7、10、14、および17日目に、腹腔内注射により、マウスに、mAb1(抗hLAG3)(25mg/kg)、REGN2810(抗hPD-1)(10mg/kg)、mAb1(抗hLAG3)(25mg/kg)とREGN2810(抗hPD-1)(10mg/kg)との組み合わせ、またはアイソタイプ対照(25mg/kg)を投与した。腫瘍容量は、毎週2回ずつ、実験の持続期間(32日間)にわたるカリパー測定によりモニタリングし、無腫瘍動物を、腫瘍の再発の非存在について、最長で80日間にわたりモニタリングした。
【0305】
REGN2810(抗hPD-1)単剤療法は、腫瘍の増殖阻害を結果としてもたらし(
図6A~6B)、動物12匹中2匹(17%)において腫瘍の退縮をもたらしたのに対し、mAb1(抗hLAG3)は、それほど有効ではなく、先行する実験の所見を確認した。腫瘍の退縮は、mAb1(抗hLAG3)で処置されたマウス12匹中1匹だけで観察された。アイソタイプ対照群では、32日目においても、無腫瘍マウスは見られなかった。これに対し、mAb1(抗hLAG3)とREGN2810(抗hPD-1)との組み合わせは、MC38.Ova腫瘍の増殖の頑健な阻害を裏付け、実験の終了時までに、12匹中5匹(42%)の無腫瘍マウスを結果としてもたらした。無腫瘍マウスのいずれも、植込み後80日間にわたり、腫瘍の再発を示さなかったことから、長期にわたり持続する組み合わせ免疫療法の効果が指し示される。テューキーの検定後多重比較を伴う一元ANOVAは、22日目の、mAb1(抗hLAG3)とREGN2810(抗hPD-1)との組み合わせ処置群における腫瘍容量の、mAb1(抗hLAG3)単剤療法(p<0.05)またはアイソタイプ対照(p<0.01)と比較した有意差を明らかにした(
図6B)。REGN2810(抗hPD-1)単剤療法もまた、腫瘍の増殖の、アイソタイプ対照と比べた有意な低減を示した(p<0.05)。mAb1(抗hLAG3)とREGN2810(抗hPD-1)との組み合わせ処置はまた、ログランク(マンテル-コックス)検定により解析される通り、動物の生存率の有意な改善(p<0.0001)も結果としてもたらした(
図6C)。組み合わせ療法の有効性の改善にも拘らず、体重減少の証拠は観察されなかった(データは示さない)。まとめると、mAb1(抗hLAG3)とREGN2810(抗hPD-1)との組み合わせは、REGN2810(抗hPD-1)単剤療法またはmAb1(抗hLAG3)単剤療法と比較した、腫瘍増殖の低減、腫瘍排除の改善、および生存の改善を含む有効性の改善を結果としてもたらした。
【0306】
(実施例14:MC38腫瘍に対する、抗LAG3抗体と抗PD-1抗体との組み合わせについての用量設定研究)
本実施例は、in vivoの二重ヒト化LAG3hum/humPD-1hum/humマウスにおける、MC38.Ova腫瘍に対する、抗ヒトPD-1と抗ヒトLAG3抗体との組み合わせの有効性を測定する用量設定実験のセットについて記載する。二重ヒト化マウスについては、本明細書の実施例12に記載されている。
【0307】
本研究のために使用される、例示的な抗LAG3抗体は、ヒトLAG3に特異的に結合する完全ヒト抗体であり、配列番号420-422-424-428-430-432のHCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3、および配列番号418/426のHCVR/LCVR(H4sH15482Pとしてもまた公知であり、本明細書の下記では、「mAb1」と称する)を含む。
【0308】
本実施例で使用される抗PD-1抗体は、H4H7798N(US20150203579において開示されている;REGN2810としてもまた公知である)である。REGN2810(抗hPD-1)は、高アフィニティーで、ヒトPD-1に結合し、PD-1の、PD-L1およびPD-L2との相互作用を遮断する。
【0309】
第1の実験では、REGN2810(抗hPD-1)を滴定し、10mg/kgおよび1mg/kgの用量レベルで、いずれの用量群も、単剤およびmAb1(抗hLAG3)(25mg/kg)との組み合わせとして調べた。両方の組み合わせ処置群の結果を、REGN2810(1mg/kgまたは10mg/kg)またはmAb1(25mg/kg)の単剤療法と比較して、相加的/相乗的な抗腫瘍効果が観察されるのかどうかを決定した。また、アイソタイプ対照抗体(25mg/kg)による処置についても調べた。0日目、LAG-3 hum/hum PD-1 hum/humマウスに、MC38.Ova細胞を植え込み、6つの処置群(アイソタイプ対照群では、N=6であり、mAb1処置群、REGN2810処置群、またはREGN2810+mAb1処置群では、N=12である)へと無作為化した。3、7、10、14、および17日目に、腹腔内注射により、マウスに、mAb1(25mg/kg);REGN2810(10mg/kg);REGN2810(1mg/kg);mAb1(25mg/kg)+REGN2810(10mg/kg);mAb1(25mg/kg)+REGN2810(1mg/kg);またはアイソタイプ対照(25mg/kg)を投与した。腫瘍容量は、36日間にわたりモニタリングし、無腫瘍動物を、最長で80日間にわたりモニタリングした。
【0310】
表16は、研究中の多様な時点における平均値腫瘍容量を示し、36日目における無腫瘍マウスの数を、表17に示す。
【表16】
【表17】
【0311】
1mg/kgのREGN2810単剤療法は、36日間にわたり最小限の腫瘍退縮を示すにとどまり、アイソタイプ対照処置群についての結果と同様であった(
図7A~7B)。36日目に無腫瘍のマウスは、REGN2810(1mg/kg)群およびアイソタイプ対照群のそれぞれにおいて、12匹中2匹(約16%)および6匹中0匹(0%)であった。これに対し、mAb1(25mg/kg)処置群、REGN2810(10mg/kg)処置群、およびREGN2810(1mg/kg)+mAb1(25mg/kg)処置群は、22日間にわたり、腫瘍の増殖の同様の低減を裏付けた(
図7A)。36日目に、mAb1(25mg/kg)処置が、12匹中1匹(約8%)の無腫瘍マウスを結果としてもたらしたのに対し、REGN2810(10mg/kg)群およびREGN2810(1mg/kg)+mAb1(25mg/kg)群のそれぞれでは、12匹中4匹(約33%)および12匹中3匹(25%)のマウスが無腫瘍であった。全体では、mAb1(25mg/kg)+REGN2810(10mg/kg)が、MC38.Ova腫瘍の増殖の最も頑健な低減を裏付け、12匹中6匹(50%)のマウスが、36日目までに無腫瘍となった。無腫瘍マウスのいずれも、処置の中止にも拘らず、植込み後80日間にわたり、腫瘍の再発を示さなかったことから、長期にわたり持続する組み合わせ免疫療法の効果が指し示される。mAb1(25mg/kg)+REGN2810(10mg/kg)処置はまた、ログランク(マンテル-コックス)検定により解析される通り、動物の生存率の有意な改善(p=0.0197)も結果としてもたらした(
図7C)。体重減少の証拠もまた、観察されなかった。
【0312】
第2の実験では、mAb1(抗hLAG3)を滴定し、25mg/kgおよび5mg/kgの用量レベルで、いずれの用量群も、単剤およびREGN2810(抗hPD-1)(10mg/kg)との組み合わせとして調べた。両方の組み合わせ処置群の結果を、mAb1(5mg/kgまたは25mg/kg)、またはREGN2810(10mg/kg)の単剤療法と比較して、相加的/相乗的な抗腫瘍効果が観察されるのかどうかを決定した。また、アイソタイプ対照抗体(25mg/kg)による処置についても調べた。0日目、LAG-3 hum/hum PD-1 hum/humマウスに、MC38.Ova細胞を植え込み、6つの処置群(アイソタイプ対照群では、N=6であり、mAb1処置群、REGN2810処置群、またはREGN2810+mAb1処置群では、N=12である)へと無作為化した。3、7、10、14、および17日目に、腹腔内注射により、マウスに、mAb1(5mg/kg);mAb1(25mg/kg);REGN2810(10mg/kg);mAb1(5mg/kg)+REGN2810(10mg/kg);mAb1(25mg/kg)+REGN2810(10mg/kg);またはアイソタイプ対照(25mg/kg)を投与した。腫瘍容量は、31日間にわたりモニタリングした。
【0313】
5mg/kgのmAb1単剤療法は、アイソタイプ対照処置群と同様の、最小限の腫瘍退縮を示すにとどまった。mAb1(25mg/kg)+REGN2810(10mg/kg)の組み合わせは、最も頑健な腫瘍の低減を示した(
図8A)。強力な組み合わせ効果はまた、mAb1(5mg/kg)+REGN2810(10mg/kg)処置群によっても裏付けられた。23日目に測定された腫瘍容量を、
図8Bに示す。抗LAG-3抗体とREGN2810との組み合わせもまた、動物の生存の有意な改善を示した(p<0.001;マンテル-コックスによるログランク検定により解析される)(
図8C)。結果は、強力な組み合わせ効果が、低用量の抗LAG3抗体でもなおみられることを示す。本明細書に示される結果に基づくと、腫瘍に対する処置レジメンにおいて、抗PD-1抗体と組み合わせた、高用量の抗LAG3抗体を使用する必要はない可能性がある。
【0314】
まとめると、二重ヒト化LAG3/PD-1マウスによるMC38.ova腫瘍モデルにおける、REGN2810(抗hPD-1)とmAb1(抗hLAG3)との組み合わせであって、マウス受容体と交差しない臨床抗体についての試験を可能とする組み合わせは、REGN2810(抗hPD-1)単剤療法およびmAb1(抗hLAG3)単剤療法と比較して、腫瘍増殖の低減および生存の改善を含む用量依存的な有効性の改善を裏付けた。REGN2810(抗hPD-1)およびmAb1(抗hLAG3)の組み合わせの、前臨床状況における、頑健な抗腫瘍有効性は、組み合わせがん免疫療法としての、それらの臨床開発を支持する。
【0315】
(実施例15:in vivoにおける、抗ヒトLAG3抗体と抗ヒトPD-1抗体との組み合わせの、確立されたMC38腫瘍に対する有効性)
この実験では、二重ヒト化LAG3hum/humPD-1hum/humマウスにおける、REGN2810(抗hPD-1)と組み合わせたmAb1(抗hLAG3)の、確立されたMC38.Ova腫瘍に対する有効性について検討した。二重ヒト化マウスについては、本明細書の実施例12に記載されている。
【0316】
本研究のために使用される、例示的な抗LAG3抗体は、ヒトLAG3に特異的に結合する完全ヒト抗体であり、配列番号420-422-424-428-430-432のHCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3、および配列番号418/426のHCVR/LCVR(H4sH15482Pとしてもまた公知であり、本明細書の下記では、「mAb1」と称する)を含む。
【0317】
本実施例で使用される抗PD-1抗体は、H4H7798N(US20150203579において開示されている;REGN2810としてもまた公知である)。REGN2810(抗hPD-1)は、高アフィニティーで、ヒトPD-1に結合し、PD-1の、PD-L1およびPD-L2との相互作用を遮断する。
【0318】
0日目、LAG-3hum/humPD-1hum/humマウスの皮下に、MC38.Ova細胞を接種した。10日目に、平均腫瘍容量を100mm3とするマウスを選択し、4つの処置群へと無作為化した。10、14、17、22日目に、IP注射により、マウスに、mAb1(25mg/kg;N=9)、REGN2810(10mg/kg;N=10)、mAb1(25mg/kg)+REGN2810(10mg/kg)組み合わせ(N=11)、またはアイソタイプ対照抗体(25mg/kg;N=7)を投与した。腫瘍容量は、腫瘍植込み後28日間にわたりモニタリングした。
【0319】
MC38.ova腫瘍を保有するヒト化マウスの、抗hPD-1抗体と抗hLAG-3抗体との組み合わせによる処置は、腫瘍内T細胞および末梢T細胞の活性化を惹起した。REGN2810単剤療法が、部分的な腫瘍増殖の阻害を結果としてもたらしたのに対し、mAb1単剤療法は、アイソタイプ対照で処置されたマウスと比較して、平均値腫瘍容量の低減を示さなかった(
図9)。これに対し、mAb1(25mg/kg)とREGN2810(10mg/kg)との組み合わせは、MC38.Ova腫瘍の増殖の頑健な阻害を裏付けた。ボンフェローニによる検定後多重比較を伴う、一元分散分析(ANOVA)は、mAb1とREGN2810との組み合わせ群における平均値腫瘍容量の、mAb1単剤療法(p<0.01)またはアイソタイプ対照(p<0.05)と比較した有意差を明らかにした(
図10)。組み合わせ療法を、REGN2810単剤療法と比較したところ、実験経過にわたる全体的な平均値腫瘍容量は、組み合わせ療法で小さかったが、この差違は、統計学的有意性に到達しなかった。抗LAG-3抗体とREGN2810との組み合わせはまた、動物の生存率の有意な増大ならびに生存の持続期間の有意な延長も結果としてもたらした(p<0.01;マンテル-コックスによるログランク検定により解析される)。25日目には、対照および単剤療法と比較して、組み合わせ療法で処置されたマウスのうちの50%が生存してした(
図11)。この結果に基づくと、組み合わせ処置は、それぞれの単剤療法と比較して、相加的で用量依存的な抗腫瘍効果を呈示した。
【0320】
(実施例16:カニクイザルにおける、抗LAG-3抗体の薬物動態)
雌カニクイザル(用量群1つ当たりの動物5匹)への1.0、5.0、または15.0mg/kgの単回の静脈内(IV)用量の後で、抗LAG3抗体mAb1の薬物動態(PK)を特徴づけた。機能的なmAb1濃度を決定するための血液試料を、多様な時点において、全ての動物から回収した。血清中の機能的なmAb1の濃度は、酵素免疫測定アッセイ(ELISA)を使用して決定した。血清中の抗mAb1抗体は、電気化学発光ベースの架橋イムノアッセイを使用して解析した。PKパラメータは、ノンコンパートメント解析(NCA)を使用して推定した。平均値濃度-時間プロファイルは、短い初期分布相、その後の線形ベータ排出相により特徴づける(
図12)。標的により媒介されるクリアランス相は、8週間の研究持続期間にわたり観察されなかった。平均値AUC
infは、被験用量レベルにわたり同等のAUC
inf/用量値により裏付けられる通り、用量に比例して増大した。平均値全身クリアランス(CL)値が、3つの用量群について同等であったことは、この所見と符合する。加えて、3つの用量群のベータ相半減期(t
1/2)も、10.8~11.5日間の範囲で同等であった。結果に基づき、最大で50mg/kgの無有害作用量(no-observed-adverse-effect level)(NOAEL)を確立することができた。これらの結果は、mAb1が、本研究の条件下で、線形動態を裏付けることを指し示した。
【0321】
(実施例17:カニクイザルにおける、抗LAG3抗体の毒物学評価)
mAb1についての、in vivo毒物学および毒物動態学(toxicokinetic)プロファイルを、雄および雌のカニクイザルによる、4週間、反復用量、GLP準拠の毒物学研究時に評価した。サル(群1つ当たり性別当たりの動物5匹)には、IV注入により、毎週0、2、10、または50mg/kgのmAb1を施した。毒性の評価は、死亡、瀕死状態、臨床観察、体重、食物消費、眼科検査、ECGの評価、呼吸数、パルスオキシメトリー、体温、および血圧の評価、神経科検査に基づいた。臨床病理学パラメータ(血液学、凝固、臨床化学、および尿検査)および免疫表現型解析もまた評価した。肉眼的剖検検査(gross necropsy examination)、臓器重量の測定、および組織病理学的評価も行った。完全剖検は、投与期間の終了時、または8週間にわたる回復期間の終了時において実施した。選択された臓器を秤量し、組織を肉眼的に検討し、顕微鏡的にも検討した。
【0322】
mAb1は、カニクイザルへの毎週のIV注入を介して投与される場合、評価される全ての用量レベルで十分に耐容性を示した。mAb1は、十分に耐容性を示し、評価される安全性パラメータのいずれにおいても、mAb1に関連する変化が存在しなかったため、研究についての無有害作用量(NOAEL)は、本研究で投与された最高用量である、1用量当たり50mg/kgであると考えられる。
【0323】
(実施例18:抗LAG3抗体であるH4sH15482Pの、hLAG3の細胞外ドメインへの結合についての、水素/重水素交換(H/D)ベースのエピトープマッピング)
ヒトLAG3細胞外ドメイン(ヒトLAG3のアミノ酸Leu23~Leu450;UniProt受託番号:P18627;C末端にヒトIgG1タグを伴って作製された(「hLag3.Fc」)(R&D Systems、Minneapolis、MN)(配列番号587)であって、抗LAG3抗体H4sH15482Pが相互作用するヒトLAG3細胞外ドメインのアミノ酸残基を決定するように、実験を行った。この目的で、質量分析(HDX-MS)を伴う、水素/重水素(H/D)交換エピトープマッピングを活用した。HDX法についての一般的な記載は、Ehring(1999年)、Analytical Biochemistry、267巻(2号):252~259頁;およびEngenおよびSmith(2001年)、Anal. Chem.、73巻:256A~265A頁において明示されている。
【0324】
実験手順
HDX-MS実験は、重水素を標識化するためのLeaptec HDX PALシステム、試料の消化およびローディングのためのWaters Acquity M-Class(Auxiliary solvent manager)、解析用カラム勾配のためのWaters Acquity M-Class(μBinary solvent manager)、ならびに消化したペプチドの質量測定のためのSynapt G2-Si質量分析計からなる統合型Waters HDX/MSプラットフォーム(Waters Corporation、Milford、MA)上で実施した。
【0325】
標識化溶液は、D2O下、pD7.0、10mMのPBS緩衝液中で調製した。重水素による標識化のために、抗Lag3抗体である、H4sH15482Pと共に、1:1のモル比であらかじめ混合された、3.8μLのhLAG3.Fc(1μL当たり5ピコモル)またはhLAG3.Fcを、56.2μLのD2O標識化溶液と共に、多様な時点でインキュベートした(例えば、非重水素化対照=0秒間、重水素による標識化:1分間および20分間)。重水素化は、50μLの試料を、あらかじめ冷却したクエンチ緩衝液(100mMのリン酸緩衝液、pH2.5中、0.2MのTCEP、6Mのグアニジン塩酸塩)50μLへと移すことによりクエンチした。混合物を、1.0℃で、4分間にわたりインキュベートした。次いで、クエンチされた試料を、オンラインの、ペプシン/プロテアーゼXIII消化のための、Waters HDX Managerへと注入した。消化されたペプチドを、0℃で、ACQUITY UPLC BEH C18 1.7μm、2.1×5mm VanGuard pre-column(Waters Corporation)へと捕捉し、5%~40%のB相(移動相A:水中に0.1%のギ酸、移動相B:アセトニトリル中に0.1%のギ酸)による、9分間にわたる勾配分離のために、解析用カラムACQUITY UPLC BEH C18 1.7μm、1.0×50mmへと溶出させた。質量分析計は、コーン電圧を37V、走査時間を0.5秒間に設定し、質量/電荷範囲を50~1700トムソン単位(Th)に設定した。
【0326】
H4sH15482Pが相互作用するヒトLag3のペプチド残基を同定するために、非重水素化試料に由来するLC-MSEデータを加工し、ヒトLAG3の配列を含むデータベースに照らして検索し、配列を、ペプシンで消化し、Waters ProteinLynx Global Server(PLGS)ソフトウェアを使用してランダム化した。同定されたペプチドを、DynamXソフトウェアへとインポートし、2つの基準:1)アミノ酸1つ当たりの最小限の産物=0.2、および2)複製ファイル閾値=3によりフィルタリングした。次いで、DynamXソフトウェアにより、各時点において、三連で、複数の時点にわたり、保持時間および高質量精度(<10ppm)に基づき、各ペプチドによる重水素の取込みを、自動的に決定した。
【0327】
結果
MS
Eデータの収集とカップリングさせた、オンラインのペプシン/プロテアーゼXIIIカラムを使用して、ヒトLAG3に由来する、合計123ペプチドを、抗体の非存在下または存在下で、再現可能に同定し、78.3%の配列カバレッジを表示した。4つのLag-3ペプチドは、H4sH15482Pに結合すると、重水素の取込みを著明に低減した(p値<0.05として、セントロイドデルタ値>0.8ダルトン)。記録されたペプチド質量は、3つの複製物に由来する、セントロイドMH
+質量の平均値に対応する。hLAG3.Fc(配列番号587)のアミノ酸34~77に対応するこれらのペプチドは、H4sH15482Pに結合すると、重水素化速度を低下させた。これらの同定された残基はまた、Uniprot登録番号:P18627(LAG3_HUMAN;配列番号588)により規定され、表18でも例示される、ヒトLAG3の残基28~71にも対応する。
【表18】
【0328】
(実施例19:進行性悪性疾患を有する患者における、抗LAG3抗体についての臨床試験)
本実施例は、進行性悪性疾患を有する患者における、単剤療法としての抗LAG3抗体、および抗PD-1抗体と組み合わせた抗LAG3抗体の安全性、耐容性、および抗腫瘍活性について評価する臨床試験について記載する。
【0329】
本研究のために使用される、例示的な抗LAG3抗体は、ヒトLAG3に特異的に結合する完全ヒト抗体であり、配列番号420-422-424-428-430-432のHCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3、および配列番号418/426のHCVR/LCVR(H4sH15482Pとしてもまた公知であり、本明細書の下記では、「mAb1」と称する)を含む。
【0330】
本実施例で使用される抗PD-1抗体は、H4H7798N(US20150203579において開示されている;REGN2810としてもまた公知である)である。REGN2810(抗hPD-1)は、高アフィニティーで、ヒトPD-1に結合し、PD-1の、PD-L1およびPD-L2との相互作用を遮断する。
【0331】
研究の目的
研究の主要目的は、以下の通りである。
【0332】
用量漸増フェーズにおいて:リンパ腫を含む、進行性悪性疾患を有する患者における、単剤療法としてのmAb1およびREGN2810と組み合わせたmAb1の、フェーズ2のための用量を決定するために、安全性および薬物動態(PK)について評価すること。エンドポイントは、用量制限毒性(DLT)率、有害事象(AE)(免疫関連AEを含む)、重篤な有害事象(SAE)、死、および検査室異常(有害事象共通用語規準(Common Terminology Criteria for Adverse Events)[CTCAE]にしたがってグレード3またはこれを超える)、ならびに薬物動態を含む。
【0333】
用量拡大フェーズにおいて:ORRにより測定される、単独およびREGN2810と組み合わせたmAb1の予備的な抗腫瘍活性について評価する(コホートごとに個別に)こと。エンドポイントは、充実性腫瘍における応答評価基準(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)(RECIST)1.1に基づく全奏効率(ORR)(Eisenhauerら、2009年、Eur. J. Cancer、45巻:228~247頁)(充実性腫瘍)、およびルガノ基準(Chesonら、2014年、J. Clin. Oncol.、32巻:3059~3068頁)(リンパ腫)を含む。
【0334】
副次的目的は、(a)充実性腫瘍における免疫関連応答評価基準(immune-related Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)(irRECIST)に基づくORR(Wolchokら、2009年、Clin. Cancer Res.、15巻:7412~7420頁;Nishinoら、2013年、Clin. Cancer Res.、19巻:3936~3943頁)、最良全奏効(best overall response)(BOR)、応答持続期間(duration of response)(DOR)、病勢コントロール率(disease control rate)、ならびにRECIST、irRECIST、およびルガノ基準に基づくPFS(Chesonら、2014年、J. Clin. Oncol.、32巻:3059~3068頁)により測定される、単独およびREGN2810と組み合わせたmAb1の予備的な抗腫瘍活性について評価する(コホートごとに個別に)こと;(b)用量漸増フェーズで決定した、各拡大コホート内の安全性プロファイルを特徴付けること;(c)単剤療法としてのmAb1、ならびに組み合わせて施される場合のmAb1およびREGN2810のPKを特徴付けること;および(d)mAb1およびREGN2810に対する抗薬物抗体(ADA)により測定される免疫原性について評価することである。
【0335】
研究の探索的目的は、(a)腫瘍容量について評価すること;(b)ベースラインにおいて、処置の間に、および進行時に、単剤療法としてのmAb1またはREGN2810と組み合わせたmAb1で処置された患者から得られた、血清、血漿、末梢血単核細胞(PBMC)、および腫瘍組織試料(保管腫瘍組織を含む)における、REGN2810の薬力学効果を探索すること;および(c)(i)循環腫瘍核酸;(ii)PBMCサブセットの分布ならびに目的の免疫チェックポイント分子および他のバイオマーカーの発現;(iii)腫瘍RNAの発現;(iv)腫瘍浸潤リンパ球(CD8+ T細胞、CD4+
T細胞、調節性T細胞、およびB細胞、骨髄由来細胞、NK細胞など、他の、組織透過性の亜型)の数および分布;(v)PD-1、PD-L1、LAG3、および、おそらく、他のチェックポイントモジュレーターの発現レベル(メッセンジャーRNAおよび/またはタンパク質);(vi)公知のがん遺伝子および潜在的な腫瘍ネオ抗原における変異;ならびに(vii)腫瘍の変異負荷を含みうるがこれらに限定されない、目的のバイオマーカーについて、予測可能性および臨床応答との相関について評価することである。
【0336】
研究デザイン
これは、進行性悪性疾患を有する患者において、単剤療法として投与されるmAb1またはREGN2810と組み合わせて投与されるmAb1の、安全性、耐容性、活性、およびPKについてのフェーズ1、ファースト・イン・ヒューマン(first-in-human)(FIH)、オープンラベル、多施設の用量漸増研究である。単剤療法としてのmAb1および3.0mg/kgの用量のREGN2810と組み合わせたmAb1の、3つの用量レベル(1.0、3.0、および10mg/kg)を調べる。
【0337】
最長で28日間にわたるスクリーニング期間の後、患者に、21日間ずつの処置サイクルを、最大で17サイクルにわたり(最大で、のべ51週間にわたる処置)施し、その後に24週間にわたる追跡期間を設けた。各患者には、21日ごとに、mAb1(±REGN2810)を施す。
【0338】
処置は、51週間にわたる処置期間が完了するか、または疾患の進行、許容されない毒性、同意の取下げが生じるまで、もしくは研究の中止基準が満たされるまで継続される。応答評価は、研究薬の投与の遅延に関わらず、最初の24週間は6週間ごとであり、次いで、その後の27週間は9週間ごとである。最短で24週間にわたる処置(最小で8処置サイクル)の後、完全寛解(CR)が確認された患者は、処置を中断し、全ての関与性の研究評価を継続するように選び出すことができる。同様に、医師による診察の後、最短で24週間にわたり処置された患者であって、安定病態(SD)または部分奏効(PR)が3回連続の腫瘍評価にわたり維持されている患者も、処置は中断するが、全ての関与性の研究評価を継続するように選び出すことができる。奏効を経ているが、その後、進行している患者には、進行時において、腫瘍生検が要求される。4用量のmAb1単剤療法に耐容性を示し、少なくともSDの初回腫瘍評価を有するが、その後、進行性疾患(PD)を実証している患者は、リンパ球活性化遺伝子2(LAG-3)の遮断とプログラム細胞死1(PD-1)の遮断との組み合わせによる応答「をレスキューし」ようとする試みにおいて、3.0mg/kgのREGN2810を、その時点まで安全に投与されている、最高用量(既知の場合)のmAb1に追加する選択肢を有する。安全性の評価は、各研究薬を投与する来院時に行う。
【0339】
用量漸増
3つの、用量漸増による、単剤療法コホートおよび組み合わせ療法コホートを登録するように計画する(3mg/kgのREGN2810を伴うかまたは伴わない、1.0、3.0、および10mg/kgのmAb1)。登録される第1のコホートには、mAb1単剤療法を、1.0mg/kgで施す。その後における、さらなる各コホートの登録は、先行するコホート内で観察される用量制限毒性(DLT)の数により制限されうる。必要な場合は、用量漸減コホート(3mg/kgのREGN2810を伴うかまたは伴わない、0.3mg/kgのmAb1)を登録する。
【0340】
用量漸増の規則
mAb1単剤療法コホートおよびmAb1+REGN2810コホートの両方で、全ての用量レベルについて評価するために、従来の3+3デザインの改変形(「4+3」)を使用する。各用量レベルにおいて、最小で3例の患者は、DLTについて評価可能であることが要求されるが、患者が、DLTについて評価可能となる前に中止する場合、患者の安全性を維持しながら、フェーズ1における用量漸増の効率を最大化するには、各用量レベルにおいて、4例の患者を登録する。DLTの評価期間は、28日間である。用量レベルの耐容性は、全ての潜在的なDLT評価可能患者が、28日間のDLT期間を、DLTを伴わずに(3例中0例、または4例中0例)完了した場合に限り達成される。3例の患者が、DLTを経ずにDLT期間を完了したが、4例目の患者が、DLT評価期間内にある場合、用量レベルの耐容性は、4例目の患者が、DLT評価期間を完了するか、またはDLTについて評価可能となる前に治療を中断した場合に限り達成される。DLT評価可能患者3または4例のうち、1例にDLTが見られる場合は、合計7例の患者となるように、4または3例のさらなる患者(それぞれ)を登録する。同様に、6例中1例または7例中1例のDLTも、耐容性を示し得ると考えられる。評価可能患者2~7例中2例のDLTは、最大耐量(MTD)を超えているであろう。耐容性を示した最高用量レベルで、安全性についてさらに評価するために、DLT評価可能患者がのべ6~10例となるように、さらなる患者3~4例を登録する。6~8例中0~1例、または9~10例中2例のDLTは、許容可能であると考えられるであろう。安全性についてさらに評価するために、後援者の裁量(研究者による診察)により、さらなる患者3例を、任意の用量レベルで登録することができる。
【0341】
1.0mg/kgのmAb1(用量レベル1;DL1)が安全(患者3~7例の後で)であるとみなされる場合、登録は、3.0mg/kgのmAb1(DL2)で開始されるであろう。DL2における患者4例の登録後、第1の組み合わせコホート(1.0mg/kgのmAb1+3.0mg/kgのREGN2810;DL3)における登録を始めることができる。3.0mg/kgのmAb1(DL2)が安全であるとみなされたら、10mg/kgのmAb1(DL4)への用量漸増を開始することができる。第2の組み合わせコホート(3.0mg/kgのmAb1+3.0mg/kgのREGN2810;DL5)は、DL2およびDL3の両方が安全であるとみなされた後に限り登録される。第3の組み合わせコホート(10mg/kgのmAb1+3.0mg/kgのREGN2810;DL6)は、DL4およびDL5の両方が安全であるとみなされた後に限り登録される。複数のコホートを同時に開く場合は、番号の小さなコホート(すなわち、DL3よりもDL2またはDL4よりもDL3)を優先する。
【0342】
用量制限毒性
用量漸増または新たな組み合わせ療法を開始するために、安全性を決定するためのDLT観察期間を、サイクル1、1日目から始まる28日間であって、研究薬(必要に応じて、REGN2810を伴うかまたは伴わないmAb1)の最初の2用量の安全性および耐容性をモニタリングすることを意図する28日間と規定する。DLTについて評価可能であるには、患者は、DLT期間を完了する前に、研究薬の、少なくとも最初の2用量(すなわち、1日目および22日目)を施され、初回の投与の後、少なくとも28日間にわたりモニタリングされ、2回目の投与から、またはDLT(下記で規定する)を経てから、少なくとも7日間にわたりモニタリングされなければならない。研究薬の2回目の用量の、35日目を越えた投与における遅延、および/または研究薬の中断は、研究薬関連であるならば、DLTと考えられる。したがって、その2回目の用量が遅延した患者、およびAEを経た患者では、DLT観察期間の持続期間が長くなり、事象がDLTであったのかどうかを決定するためには、持続期間も評価しなければならない。
【0343】
用量#2を、ウィンドウ(window)内で投与できない(研究薬の毒性に起因して)ことに加えて、DLTは一般に、研究薬に関連する以下の毒性のうちのいずれかとしても規定される。
【0344】
非血液学的毒性:
・グレード≧2のブドウ膜炎
・グレード≧3の任意の非血液学的毒性(アミラーゼまたはリパーゼ無症状性の上昇など、臨床的に重要でない検査室異常を除く)
【0345】
血液学的毒性:
・>7日間にわたり持続する、グレード4の好中球減少症
・グレード4の血小板減少症
・出血を伴う、グレード3の血小板減少症
・グレード≧3の発熱性好中球減少症、または感染症の記録を伴う、グレード≧3の好中球減少症
【0346】
DLTの定義を満たすirAEおよび非irAEのいずれも、DLTであると考えられる。
【0347】
最大耐量
MTDとは、評価可能患者6~7例中2例またはこれを超えるDLTに起因して、投与を停止させるレベルのすぐ下の用量レベルと規定され、単剤療法および組み合わせ療法について個別に決定される。しかし、REGN2810および他のPD-1/PD-L1抗体による単剤療法に起因して、AEの既知の発生のために、組み合わせコホートについて、MTDを決定し、用量レベルにおける、さらなる患者の追加を決定するときに、組み合わせ毒性の強度、頻度、および新規性を考慮することができる。DLTのために用量漸増を停止させない場合、MTDは、決定されていないと考えられる。最高用量レベルに耐容性を示すとみなされた単剤療法コホートおよび組み合わせコホートの各々には、さらに3例の患者を登録する(すなわち、これらのコホートの各々における患者は6~10例となる)。mAb1の単剤療法またはREGN2810との組み合わせ療法のための用量漸増を、DLTのために、1.0mg/kgで停止させる場合、コホートを、0.3mg/kgの用量で登録する。mAb1の単剤療法または組み合わせ療法のための用量漸増を、DLTのために、3.0または10mg/kgの用量レベルで停止させる場合、新たに登録された患者(それぞれ、単剤療法コホートまたは組み合わせ療法コホートにおける)には、mAb1の用量を、既に調べた用量レベルへと低減する。いかなる患者も、組み合わせ療法を、単剤療法として耐容性を示すことができなかったmAb1の用量で開始することを許容されない。
【0348】
推奨フェーズ2用量
拡大コホートのためのRP2Dは、MTDまたは被験最高用量より高用量ではなく、単剤療法コホートおよび組み合わせ療法コホートで異なりうる。RP2Dの決定は、安全性データおよびPKデータに基づく。
【0349】
単剤療法コホート内の患者であって、4用量のmAb1に耐容性を示し、少なくともSDの初回腫瘍評価を有するが、その後、PDを実証している患者は、LAG-3の遮断とPD-1の遮断との組み合わせによる応答「をレスキューし」ようとする試みにおいて、3.0mg/kgのREGN2810を、その時点まで安全に投与されている、最高用量(既知の場合)のmAb1に追加する選択肢を有する。
【0350】
拡大コホート
mAb1の耐容性を、単独およびREGN2810との組み合わせで確立したら、えり抜きの適応[非小細胞肺がん(NSCLC)、明細胞腎臓がん(ccRCC)、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)、黒色腫、およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)]において、単剤療法または組み合わせ療法を使用する複数の拡大コホートを登録し、安全性についてさらに評価し、LAG3を発現または過剰発現することが公知であり;単独であるかまたはREGN2810と組み合わせたmAb1の抗腫瘍活性が生じうる腫瘍における抗腫瘍活性についての予備的な証拠を得る。拡大コホートへの登録は、用量漸増が完了した後で始める。RP2Dを確認した後で、サイモン(Simon、1989年、Controlled Clinical Trials、10巻:1~10頁)による2段階のデザインを活用する、さらなる、10の拡大コホート(表19)を登録する。患者を、患者の腫瘍型、既往の抗PD-1/抗プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)療法の存在または非存在、治療レジメンの、その患者への適切性についての研究者の評価、割りつけられた処置コホートにおける患者枠の利用可能性に基づき、具体的な処置コホートへと割りつける。サイモンによる2段階のデザインの第1段階で、個々の拡大コホートにおいて、安全性問題が発生した場合は、登録を中止することができる。研究者と、Regeneron社との議論の後、同用量または低用量のmAb1で、登録を再開することができる。中止を惹起する安全性問題は、早期の安全性事象を含む場合もあり、後期の安全性事象を含む場合もあろう。患者を、mAb1(用量漸増所見により決定された用量)の単剤療法またはmAb1と3mg/kgのREGN2810との組み合わせで、Q3Wで、最大で51週間にわたり処置する。各拡大コホートのための第2段階の登録は、第1段階で、最小数の腫瘍応答が観察された場合に限り行う。
【表19】
【0351】
研究集団
用量漸増フェーズにおける研究集団:進行性悪性疾患を有する患者であって、抗LAG3薬および/またはPD-1/PD-L1阻害剤による既往の治療を施されておらず、かつ、標準治療の候補者ではないか、または臨床有益性をもたらすことが予測される実施可能な治療が存在しない患者、および治癒不能であり、標準治療(standard therapy)にも拘わらす、応答しなかったか、または腫瘍の進行を示した悪性疾患を伴う患者。
【0352】
用量拡大コホートにおける研究集団:えり抜きの悪性疾患を伴う患者であって、抗LAG3薬による既往の治療を施されておらず、
・過去に、抗PD-1/PD-L1による治療を施されていないが、抗PD-1ベースの治療を施すのに適切な候補者である患者(コホート1、3、5、6、および9);
または
・過去に、抗PD-1/PD-L1ベースの治療を施され、抗PD-1/PD-L1療法時の、少なくとも3カ月間にわたり、客観的応答(CRまたはPR)もしくはSDを確認したが、その後、その治療時に進行した患者、または最良の応答として、SDもしくはPRを示し、その後、6カ月間にわたり安定的応答を示した患者(コホート2、4、7、および10);
または
・標準治療の候補者ではないか、または臨床有益性をもたらすことが予測される実施可能な治療が存在せず、かつ、mAb1単剤療法に適切な患者(コホート8)。
【0353】
組入れ基準:患者は、研究への組入れに適格であるためには、以下の基準:
1.≧18歳の男女であること;
2.用量漸増コホート:腫瘍の進行が実証された悪性疾患(リンパ腫を含む)についての、組織学的または細胞学的に確認された診断を伴う患者であって、標準治療(standard of care)による、代替的な治療的選択肢が存在しないか、または治癒の潜在的可能性を伴う、代替的な標準治療(standard of care)が存在せず(すなわち、標準治療(standard therapy)にも拘わらす、腫瘍進行に応答できなかったか、またはこれを発症し)、かつ、過去に、PD-1/PD-L1阻害剤で処置されていない患者。これらの患者は、RECIST 1.1基準またはルガノ基準に従う、測定可能な疾患を要求しない。
3.用量拡大コホート:RECIST 1.1基準またはルガノ基準に従う、測定可能な疾患を伴う以下の腫瘍のうちの1つについての、組織学的または細胞学的に確認された診断を伴う患者であって、以下の基準を満たす患者。
i.抗PD-1/PD-L1を経ていない、病期IIIBまたはIVのNSCLCを患う患者であって、転移性疾患のための既往の治療を伴わないか、または1つの白金含有レジメンの後で、疾患の進行/再発を伴う患者(コホート1);
ii.抗PD-1/PD-L1を経た*、病期IIIBまたはIVのNSCLCを患う患者であって、転移性疾患のための、2つを超えない既往の治療を伴う患者(コホート2);
iii.抗PD-1/PD-L1を経ていない、明細胞の構成要素を伴う、進行ccRCCまたは転移性ccRCCを患う患者であって、抗血管新生治療の、1つ~2つの既往のレジメンを施された患者(コホート3);
iv.抗PD-1/PD-L1を経た*、明細胞の構成要素を伴う、進行ccRCCまたは転移性ccRCCを患う患者であって、抗血管新生治療の、1つ~2つの既往のレジメンを施された患者(コホート4);
v.抗PD-1/PD-L1を経ていない、転移性TNBC(エストロゲン、プロゲステロン、およびヒト表皮増殖因子受容体2陰性である)を患う患者であって、5つまたはこれより少ない、既往の一連の治療を施された患者(コホート5);
vi.抗PD-1/PD-L1を経ていない、進行黒色腫または転移性黒色腫を患う患者であって、転移性疾患のための、2つを超えない既往のレジメンを施された患者(コホート6);
vii.抗PD-1/PD-L1を経た*、進行黒色腫または転移性黒色腫を患う患者であって、転移性疾患のための、2つを超えない既往のレジメンを施された患者(コホート7);
viii.抗PD-1/PD-L1を経ていない、再発性/不応性のDLBCLを患う患者であって、自家幹細胞移植の後で進行しているか、またはその候補者ではない患者(コホート8および9)
ix.抗PD-1/PD-L1を経た*、再発性/不応性のDLBCLを患う患者であって、自家幹細胞移植の後で進行しているか、またはその候補者ではない患者(コホート10);
注:*抗PD-1/PD-L1を経たとは、抗PD-1/PD-L1療法に耐容性を示したか、または耐容性を示しつつあり(すなわち、毒性のために中断せず)、
a.イメージングの反復により確認されるCR/PR、または疾患進行の前における、初回用量から、少なくとも12週間にわたるSD。疾患進行は、抗PD-1/PD-L1による治療中であるか、または最終回の用量から12週間以内に起こったものでなければならない。
b.抗PD-1/PD-L1療法中における、その後6カ月間にわたる安定的な応答(ベースラインから、70%を超えない低下)を伴う、最良の応答としてのSDまたはPRのいずれかにより病勢コントロールを示していることと規定される。
4.Eastern Cooperative Oncology Group performance statusが0または1であること;
5.平均余命が少なくとも3カ月間であること;
6.以下の通りの、十分な臓器機能および骨髄機能:(a)ヘモグロビン≧9.0g/dL;(b)1L当たりの絶対好中球カウント≧1.5×109個;(c)1L当たりの血小板カウント≧75×109個;(d)血清クレアチニン≦1.5×正常上限(ULN)または1.73m2当たり1分間当たりの推定糸球体濾過率>50mL;(e)総ビリルビン≦1.5×ULN;(f)アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼおよびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)≦3×ULN、または肝転移の場合、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼおよびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)≦5×ULN;および/または(g)アルカリホスファターゼ≦2.5×ULN(または肝転移または骨転移の場合、アルカリホスファターゼ≦5.0×ULN);
7.診療所への来院および研究に関連する手順を遵守する意思があり、そうすることが可能であること;
8.署名したインフォームドコンセントを提出すること
を満たさなければならない。
【0354】
除外基準:以下の基準:1.別の研究で、現在処置を施されているか、または研究治療の初回用量から4週間以内に、治験薬についての研究に参加し、処置を施されたか、もしくは治験デバイスを使用したか、または研究治療の初回用量から3週間以内に、承認されている全身療法による処置を施されたか、または研究治療の初回用量から5半減期以内に、任意の既往の全身療法を施された(いずれかより長期の期間内に施された)こと。拡大コホート2、4、7、10(抗PD-1/PD-L1を経た)に限り、薬物の半減期または承認状態に関わらず、既往の抗PD-1/PD-L1療法が、研究治療の初回の投与から3週間以内に施されていてはいけない;2.LAG-3をターゲティングする、任意の生物学的分子または低分子による既往の処置;3.無作為化の前2週間以内の放射線療法、および放射線に起因する任意のAEから、ベースラインへと回復していないこと;4.拡大コホートだけ:進行しているか、または能動的な処置を要求する、別の悪性疾患であって、治癒をもたらす可能性のある治療を受けた非黒色腫性皮膚がん(non-melanomatous skin cancer)、もしくは原位置子宮頸癌、または登録前の少なくとも2年間にわたり、効果的に処置され、決定的な局所コントロールを伴うとみなされた、任意の他の腫瘍を除く悪性疾患;5.処置されていないか、または活性の中枢神経系転移。中枢神経系転移を過去に処置された患者も、安定であり(すなわち、研究処置の初回用量の前、少なくとも6週間にわたり、イメージングによる進行の証拠を伴わず、いかなる神経学的症状も、ベースラインに戻っており)、新たな中枢神経系転移の証拠または中枢神経系転移の拡大の証拠がみられず、REGN2810の初回用量の前4週間以内に、中枢神経系転移の管理のために、全身コルチコステロイドを要求しないという条件で参加しうる;6.インフォームドコンセントの前年における、脳炎、髄膜炎、またはコントロール不能の発作;7.irAEの危険性を示唆しうる、全身免疫抑制処置による処置を要求した、著明な自己免疫疾患の、進行中の証拠または近年(5年以内)の証拠。以下:白斑、消散した小児喘息、ホルモン置換法だけを要求した甲状腺機能低下症、全身処置を要求しない1型糖尿病または乾癬は、除外を要さない;8.研究薬の初回用量前1週間以内の、コルチコステロイド治療(1日当たり>10mgのプレドニゾンまたは同等物)。短期クールのステロイドを要求する患者は、除外されない;9.間質性肺疾患または活動性の非感染性肺炎の、既知の既往歴または任意の証拠(過去5年間における);10.コントロール不能の、ヒト免疫不全ウイルス感染、B型肝炎の感染、もしくはC型肝炎の感染;または免疫不全症の診断;11.全身療法を要求する、活動性の感染;12.研究投薬の開始予定の30日以内における、生ワクチンの施与;13.スクリーニングの前4週間以内における、大手術、直視下生検、または著明な外傷損傷;14.研究治療の初回用量の前9カ月以内の心筋梗塞;15.既往の同種幹細胞移植;16.研究者の見解では、研究への参加を、患者の最良の利益としない、任意の医学的状態;17.抗体処置に帰せられる、アレルギー性過敏性反応または急性過敏性反応の記録;18.ドキシサイクリンまたは他のテトラサイクリン抗生物質に対する既知のアレルギー;19.研究の要件に適う参加を妨げる、公知の精神科障害または物質乱用障害;20.研究中に避妊を行うことを望まない、性的に活動的な男性または出産の潜在的可能性がある女性。研究の計画された期間(スクリーニング来院~研究薬の最終用量の180日後)内に、妊娠しているか、授乳しているか、もしくは妊娠が予想される女性、または子供の父親となる予定の男性;21.初回の処置の開始前、研究の間、および研究薬の最終用量を投与した後、少なくとも6カ月間にわたり、適切な避妊を行うことを望まない、性的に活動的な男性または出産の潜在的可能性がある女性であることのうちのいずれかを満たす患者は、研究から除外されるであろう。
【0355】
研究処置
単剤療法:mAb1を、外来患者の状況において、以下の単剤療法用量:
・DL1:51週間にわたり、21日ごとに30分間にわたる、1.0mg/kgのmAb1のIV注入
・DL2:51週間にわたり、21日ごとに30分間にわたる、3.0mg/kgのmAb1のIV注入
・DL4:51週間にわたり、21日ごとに30分間にわたる、10mg/kgのmAb1のIV注入
・DL-1m:51週間にわたり、21日ごとに30分間にわたる、0.3mg/kgのmAb1のIV注入(必要な場合)
で、最大51週間まで、21日ごとに30分間にわたるmAb1の静脈内(IV)注入により投与する。
【0356】
組み合わせ療法:組み合わせ療法のための、研究薬投与の順序は、最初にmAb1、その後に同日のREGN2810である。研究薬を、外来患者の状況において、最大51週間まで、21日ごとに各々30分間にわたるIV注入により投与する。割りつけが予定される組み合わせレジメンは、
・DL3:51週間にわたり、21日ごとに30分間にわたる、1.0mg/kgのmAb1、および3.0mg/kgのREGN2810のIV注入
・DL5:51週間にわたり、21日ごとに30分間にわたる、3.0mg/kgのmAb1、および3.0mg/kgのREGN2810のIV注入
・DL6:51週間にわたり、21日ごとに30分間にわたる、10.0mg/kgのmAb1、および3.0mg/kgのREGN2810のIV注入
・DL-1c:51週間にわたり、21日ごとに30分間にわたる、0.3mg/kgのmAb1、および3.0mg/kgのREGN2810のIV注入(必要な場合)
を含む。
【0357】
研究エンドポイント
主要エンドポイント
用量漸増フェーズにおける主要エンドポイント:DLT率、有害事象(AE;免疫関連AEを含む)、重篤な有害事象(SAE)、死、および検査室異常(有害事象共通用語規準[CTCAE]にしたがってグレード3またはこれを超える)、ならびにPK
【0358】
用量拡大フェーズにおける主要エンドポイント:RECIST 1.1(充実性腫瘍)およびルガノ基準(リンパ腫)に基づく客観的奏効率(ORR)
【0359】
副次的エンドポイント
充実性腫瘍における免疫関連応答評価基準(irRECIST)に基づくORR;RECIST、irRECIST、およびルガノ基準に基づく、最良全奏効(BOR)、応答持続期間(DOR)、病勢コントロール率、および無増悪生存(PFS);AE(免疫関連AEを含む)、SAE、死、および検査室異常(CTCAEにしたがってグレード3またはこれを超える);PKおよびADA
【0360】
手順および評価
mAb1単独またはREGN2810と組み合わせたmAb1の安全性および耐容性を、AEについての臨床評価、ならびにバイタルサイン(体温、血圧、脈、および呼吸)、身体検査(完全検査および限定検査)、12リード式心電図(ECG)、および標準的な血液学、化学、および尿検査を含む検査室評価を含む臨床評価の測定の繰り返しによりモニタリングする。
【0361】
血清試料中およびADA(抗mAb1または抗REGN2810)試料中の、機能的なmAb1および機能的なREGN2810を決定するための血液試料を回収する。血清試料および血漿試料を、さらなるバイオマーカーの解析のために回収する。mAb1処置およびREGN2810処置への曝露、臨床活性、または基礎疾患に関する、推定薬力学バイオマーカー、予測バイオマーカー、および予後診断バイオマーカーを、血清中、血漿中、末梢血単核細胞(PBMC)中、および腫瘍組織中で調べる。抗腫瘍活性について、CTおよびMRIにより評価する。ゲノムDNA試料を、任意選択の薬理遺伝学的副次研究に同意した患者から回収する。
【0362】
結果
研究では、mAb1の投与は、安全であり、進行性悪性疾患を有する患者により、十分に耐容性を示すことが予測される。3mg/kgのREGN2810との組み合わせは、非小細胞肺がん、黒色腫、明細胞腎臓がん、B細胞リンパ腫、または乳がんなどの充実性腫瘍を伴う患者におけるORRにより評価される通り、腫瘍退縮をもたらすことが予測される。
【0363】
本発明の範囲は、本明細書で記載される具体的実施形態により限定されない。実際、本発明前出の記載および添付の図面から、当業者には、本明細書で記載される改変に加えて、多様な改変が明らかとなるであろう。このような改変は、添付の特許請求の範囲内に収まることが意図される。
【配列表】