(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】顧客管理装置、通信システム、プログラム及び通信用表示名の管理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20221107BHJP
【FI】
G06Q50/10
(21)【出願番号】P 2020152843
(22)【出願日】2020-09-11
【審査請求日】2021-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519264564
【氏名又は名称】BBSakura Networks株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【氏名又は名称】中村 弘通
(74)【代理人】
【識別番号】100134728
【氏名又は名称】奥川 勝利
(72)【発明者】
【氏名】日下部 水規
(72)【発明者】
【氏名】日下部 雄也
(72)【発明者】
【氏名】堀場 勝広
(72)【発明者】
【氏名】平井 亮次
【審査官】野口 俊明
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2017/221977(JP,A1)
【文献】特許第4991969(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理事業者によって運用される登録装置に、該登録装置を利用する利用事業者によって使用される通信用装置の通信アドレスと複数の通信用表示名との対応関係が一括登録され、前記利用事業者の顧客が用いる通信端末と前記通信用装置とが通信する際、前記複数の通信用表示名のうちの該顧客に割り当てられた通信用表示名を用いて前記登録装置から該通信用装置の通信アドレスを取得して、該通信端末と該通信用装置との間の通信を確立する通信システムのための、前記利用事業者によって運用される顧客管理装置であって、
前記
利用事業者の複数顧客が前記複数の通信用表示名の中からそれぞれ選択した1又は2以上の通信用表示名を取得する取得部と、
前記利用事業者の複数顧客と該複数顧客にそれぞれ割り当てられる通信用表示名との対応関係を記憶する記憶部に、前記取得部が取得した前記1又は2以上の通信用表示名
と該通信用表示名を選択した顧客との対応関係を登録する登録部とを有することを特徴とする顧客管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の顧客管理装置において、
前記取得部は、通信ネットワークを介して前記1又は2以上の通信用表示名を取得することを特徴とする顧客管理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の顧客管理装置において、
前記通信用表示名は、前記通信用装置のAPN(Access Point Name)又はDNN(Data Network Name)であることを特徴とする顧客管理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の顧客管理装置において、
前記通信用装置は、ゲートウェイ装置であることを特徴とする顧客管理装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の顧客管理装置において、
前記通信用装置は、受信する通信データに対応する通信用表示名に基づいて複数のゲートウェイ装置の中からゲートウェイ装置を選択し、選択したゲートウェイ装置に該通信データを送信するデータ仕分け装置であることを特徴とする顧客管理装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の顧客管理装置において、
前記ゲートウェイ装置は、前記顧客によって使用される閉域ネットワークのゲートウェイ装置であることを特徴とする顧客管理装置。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の顧客管理装置において、
前記利用事業者は、前記管理事業者である移動通信事業者(MNO:Mobile Network Operator)が管理する前記登録装置であるDNS(Domain Name System)を利用する仮想移動体サービス提供者(MVNE:Mobile Virtual Network Enabler)であり、
前記顧客は、前記仮想移動体サービス提供者から通信用表示名が割り当てられる仮想移動通信事業者(MVNO:Mobile Virtual Network Operator)であることを特徴とする顧客管理装置。
【請求項8】
管理事業者によって運用され、通信用装置の通信アドレスと複数の通信用表示名との対応関係が一括登録される登録装置と、
前記登録装置を利用する利用事業者によって運用され、該利用事業者の顧客に対して前記複数の通信用表示名の中から割り当てられる通信用表示名を管理する顧客管理装置とを有し、
前記顧客が用いる通信端末と前記通信用装置とが通信する際、該顧客に割り当てられた通信用表示名を用いて前記登録装置から該通信用装置の通信アドレスを取得して、該通信端末と該通信用装置との間の通信を確立する通信システムであって、
前記顧客管理装置として、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の顧客管理装置を用いることを特徴とする通信システム。
【請求項9】
管理事業者によって運用される登録装置に、該登録装置を利用する利用事業者によって使用される通信用装置の通信アドレスと複数の通信用表示名との対応関係が一括登録され、前記利用事業者の顧客が用いる通信端末と前記通信用装置とが通信する際、前記複数の通信用表示名のうちの該顧客に割り当てられた通信用表示名を用いて前記登録装置から該通信用装置の通信アドレスを取得して、該通信端末と該通信用装置との間の通信を確立する通信システムのための、前記利用事業者によって運用される顧客管理装置のコンピュータが機能させるためのプログラムであって、
前記利用事業者の複数顧客が前記複数の通信用表示名の中からそれぞれ選択した1又は2以上の通信用表示名を取得する取得部、及び、
前記利用事業者の複数顧客と該複数顧客にそれぞれ割り当てられる通信用表示名との対応関係を記憶する記憶部に、前記取得部が取得した前記1又は2以上の通信用表示名と該通信用表示名を選択した顧客との対応関係を登録する登録部として、前記コンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項10】
管理事業者によって運用される登録装置に、該登録装置を利用する利用事業者によって使用される通信用装置の通信アドレスと複数の通信用表示名との対応関係が一括登録され、前記利用事業者の顧客が用いる通信端末と前記通信用装置とが通信する際、前記複数の通信用表示名のうちの該顧客に割り当てられた通信用表示名を用いて前記登録装置から該通信用装置の通信アドレスを取得して、該通信端末と該通信用装置との間の通信を確立する通信システムにおける通信用表示名の管理方法であって、
前記利用事業者の複数顧客が前記複数の通信用表示名の中からそれぞれ選択した1又は2以上の通信用表示名を
、前記利用事業者によって運用される顧客管理装置が取得することと、
前記顧客管理装置が、前記利用事業者の複数顧客と該複数顧客にそれぞれ割り当てられる通信用表示名との対応関係を記憶する記憶部に、取得した前記1又は2以上の通信用表示名と該通信用表示名を選択した顧客との対応関係を登録することと、を含むことを特徴とする通信用表示名の管理方法。
【請求項11】
請求項10に記載の通信用表示名の管理方法において、
前記顧客管理装置が、前記通信用装置の通信アドレスと前記複数の通信用表示名との対応関係を前記登録装置に一括登録を行うこと、を更に含み、
前記登録装置に登録される前記複数の通信用表示名として、複数種類の文字又は複数種類の文字列を意味する特殊文字を含む形式の通信用表示名を用いることを特徴とする通信用表示名の管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理事業者によって運用されるDNS(Domain Name System)等の登録装置を利用する利用事業者によって運用され、当該利用事業者の顧客に対して割り当てられるドメイン名やAPN(Access Point Name)等の通信用表示名を管理するための顧客管理装置、通信システム、プログラム及び通信用表示名の管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、PGW(パケットデータネットワーク(PDN)ゲートウェイ(GW))の通信アドレスと複数のAPNとの対応関係を一括登録する方法として、ワイルドカードAPNを用いる方法が知られている(特許文献1)。特許文献1に開示のシステムでは、ホーム加入者サーバ(HSS:Home Subscriber Server)において、加入者ごとにPGWの通信アドレスとAPNとの対応関係が管理されている。このシステムにおいて、ワイルドカードAPNに加入している加入者が用いる通信端末から、HSSで管理されているAPNとは異なる新たなAPNを用いた通信がなされたとき、当該加入者の対応関係に対して当該新たなAPNが追加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
移動通信の分野においては、管理事業者である移動通信事業者(MNO:Mobile Network Operator)の移動通信用設備を利用して移動通信事業を行う利用事業者としての仮想移動通信事業者(MVNO:Mobile Virtual Network Operator)が知られている。MVNOが移動通信事業を行うにあたっては、MVNOの顧客が用いる通信端末と当該MVNOのPGW(通信用装置)との通信を確立できるように、当該MVNOに割り当てられるAPN(通信用表示名)と当該MVNOのPGWの通信アドレスとの対応関係を、MNOのDNS(登録装置)に登録するための登録処理が必要となる。
【0005】
MVNOでは、APNが割り当てられる顧客に顧客自らが希望する文字列を含むAPNを使わせる事業を展開することが検討されている。しかしながら、MNOの移動通信用設備を利用するMVNOが、当該MVNOの顧客からの要望に応じて当該顧客の希望するAPNを当該顧客に割り当てる場合、当該MVNOは顧客の要望を受け付けるたびに、その都度、MNOに対して上述した登録処理を依頼する必要があった。そのため、顧客の希望するAPNを割り当てる手続きが煩雑で時間がかかるという問題があった。
【0006】
この問題は、利用事業者がMVNOである場合に限らず、MNOの移動通信用設備を利用したMVNOの移動通信事業を支援するサービスを提供する仮想移動体サービス提供者(MVNE:Mobile Virtual Network Enabler)が利用事業者である場合にも、同様に生じる問題である。例えば、MVNEの顧客であるMVNOに対して当該MVNOの希望するAPNをMVNEが割り当てる場合、当該MVNEはMVNOからの要望を受け付けるたびに、その都度、MNOに対して上述した登録処理を依頼する必要があり、手続きが煩雑であるという問題が生じる。
また、前記の問題は、移動通信事業に限らず、広くネットワーク事業に関して同様に生じる問題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る顧客管理装置は、管理事業者によって運用される登録装置に、該登録装置を利用する利用事業者によって使用される通信用装置の通信アドレスと複数の通信用表示名との対応関係が一括登録され、前記利用事業者の顧客が用いる通信端末と前記通信用装置とが通信する際、前記複数の通信用表示名のうちの該顧客に割り当てられた通信用表示名を用いて前記登録装置から該通信用装置の通信アドレスを取得して、該通信端末と該通信用装置との間の通信を確立する通信システムのための、前記利用事業者によって運用される顧客管理装置であって、前記複数顧客が前記複数の通信用表示名の中からそれぞれ選択した1又は2以上の通信用表示名を取得する取得部と、前記利用事業者の複数顧客と該複数顧客にそれぞれ割り当てられる通信用表示名との対応関係を記憶する記憶部に、前記取得部が取得した前記1又は2以上の通信用表示名と、該通信用表示名を選択した顧客との対応関係を登録する登録部とを有する。
前記顧客管理装置において、前記取得部は、通信ネットワークを介して前記1又は2以上の通信用表示名を取得してもよい。
また、前記顧客管理装置において、前記通信用表示名は、前記通信用装置のAPN(Access Point Name)であってもよい。
また、前記顧客管理装置において、前記通信用装置は、ゲートウェイ装置であってもよい。
また、前記顧客管理装置において、前記通信用装置は、受信する通信データに対応する通信用表示名に基づいて複数のゲートウェイ装置の中からゲートウェイ装置を選択し、選択したゲートウェイ装置に該通信データを送信するデータ仕分け装置であってもよい。
また、前記顧客管理装置において、前記ゲートウェイ装置は、前記顧客によって使用される閉域ネットワークのゲートウェイ装置であってもよい。
また、前記顧客管理装置において、前記利用事業者は、前記管理事業者である移動通信事業者(MNO:Mobile Network Operator)が管理する前記登録装置であるDNS(Domain Name System)を利用する仮想移動体サービス提供者(MVNE:Mobile Virtual Network Enabler)であってもよく、前記顧客は、前記仮想移動体サービス提供者から通信用表示名が割り当てられる仮想移動通信事業者(MVNO:Mobile Virtual Network Operator)であってもよい。
【0008】
また、本発明の他の態様に係る通信システムは、管理事業者によって運用され、通信用装置の通信アドレスと複数の通信用表示名との対応関係が一括登録される登録装置と、前記登録装置を利用する利用事業者によって運用され、該利用事業者の顧客に対して前記複数の通信用表示名の中から割り当てられる通信用表示名を管理する顧客管理装置とを有し、前記顧客が用いる通信端末と前記通信用装置とが通信する際、該顧客に割り当てられた通信用表示名を用いて前記登録装置から該通信用装置の通信アドレスを取得して、該通信端末と該通信用装置との間の通信を確立する通信システムであって、前記顧客管理装置として、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の顧客管理装置を用いる。
【0009】
また、本発明の更に他の態様に係るプログラムは、管理事業者によって運用される登録装置に、該登録装置を利用する利用事業者によって使用される通信用装置の通信アドレスと複数の通信用表示名との対応関係が一括登録され、前記利用事業者の顧客が用いる通信端末と前記通信用装置とが通信する際、前記複数の通信用表示名のうちの該顧客に割り当てられた通信用表示名を用いて前記登録装置から該通信用装置の通信アドレスを取得して、該通信端末と該通信用装置との間の通信を確立する通信システムのための、前記利用事業者によって運用される顧客管理装置のコンピュータが機能させるためのプログラムであって、前記利用事業者の複数顧客が前記複数の通信用表示名の中からそれぞれ選択した1又は2以上の通信用表示名を取得する取得部、及び、前記利用事業者の複数顧客と該複数顧客にそれぞれ割り当てられる通信用表示名との対応関係を記憶する記憶部に、前記取得部が取得した前記1又は2以上の通信用表示名と該通信用表示名を選択した顧客との対応関係を登録する登録部として、前記コンピュータを機能させる。
【0010】
また、本発明の更に他の態様に係る通信用表示名の管理方法は、管理事業者によって運用される登録装置に、該登録装置を利用する利用事業者によって使用される通信用装置の通信アドレスと複数の通信用表示名との対応関係が一括登録され、前記利用事業者の顧客が用いる通信端末と前記通信用装置とが通信する際、前記複数の通信用表示名のうちの該顧客に割り当てられた通信用表示名を用いて前記登録装置から該通信用装置の通信アドレスを取得して、該通信端末と該通信用装置との間の通信を確立する通信システムにおける通信用表示名の管理方法であって、前記利用事業者の複数顧客が前記複数の通信用表示名の中からそれぞれ選択した1又は2以上の通信用表示名を取得することと、前記利用事業者の複数顧客と該複数顧客にそれぞれ割り当てられる通信用表示名との対応関係を記憶する記憶部に、取得した前記1又は2以上の通信用表示名と該通信用表示名を選択した顧客との対応関係を登録することと、を含む。
前記通信用表示名の管理方法において、前記通信用装置の通信アドレスと前記複数の通信用表示名との対応関係を前記登録装置に一括登録を行うこと、を更に含み、前記登録装置に登録される前記複数の通信用表示名として、複数種類の文字又は複数種類の文字列を意味する特殊文字を含む形式の通信用表示名を用いてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、利用事業者が顧客からの要望に応じて当該顧客の希望する文字列を含む通信用表示名を当該顧客に割り当てる場合の手続きを簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係る通信システムの概略構成の一例を示す説明図。
【
図2】同通信システムにおいて、通信端末がPGWからPDNに接続するための処理の流れの概略を示すシーケンス図。
【
図3】同通信システムに関わる事業者間の手続きの概要を示す説明図。
【
図4】変形例に係る通信システムの概略構成の一例を示す説明図。
【
図5】同通信システムにおいて、ユーザーCが用いる通信端末がPGW-CからユーザーCの閉域PDNに接続するための処理の流れの概略を示すシーケンス図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る通信システムの概略構成の一例を示す説明図である。
本実施形態は、利用事業者である仮想移動体サービス提供者(MVNE)が、当該MVNEの顧客である複数の仮想移動通信事業者(MVNO-A、MVNO-B、MVNO-C)に対し、管理事業者である移動通信事業者MNOの移動通信用設備を利用して各MVNOが行う移動通信事業を支援するサービスを提供する例である。本実施形態において、MVNEは、各MVNOのそれぞれに個別のAPN(通信用表示名)を割り当て、MVNEが使用する通信用装置であるゲートウェイ装置としてのPGW70を通じて、各MVNOのユーザーが使用する通信端末10A,10B,10CがPDN(Packet Data Network)1を介した通信を可能にする。
【0014】
ここでは、MVNO-Aには「AAA.apn」のAPNが割り当てられ、MVNO-Bには「BBB.apn」のAPNが割り当てられ、MVNO-Cには「CCC.apn」のAPNが割り当てられている。また、
図1の例では、図示の都合上、各MVNOの通信端末10A,10B,10Cがそれぞれ1つずつだけ示されているが、通常は2以上の通信端末が存在する。また、PDN1は、インターネットなどであってもよいし、閉域網であってもよい。
【0015】
本実施形態の通信システムでは、MVNEの顧客である3つのMVNO(MVNO-A、MVNO-B、MVNO-C)がそれぞれ用いる通信端末10A,10B,10C(各MVNOのユーザーが使用する通信端末)がPDN1を介した通信を行う際には、通信端末10A,10B,10CとMVNEのPGW70との間の通信を確立する必要がある。この際、それぞれのMVNOに割り当てられたAPNを用いて登録装置としてのDNS50からPGW70の通信アドレス(PGWアドレス)を取得し、通信端末10A,10B,10CとPGW70との間の通信を確立する。この処理は、例えばMME(Mobility Management Entity)40によって行われる。
【0016】
本実施形態の通信システムは、主に、各MVNOがそれぞれ用いる通信端末10A,10B,10Cと、MNOによって運用される設備と、MVNEによって運用される設備とから構成される。MNOによって運用される設備は、例えば、基地局20、SGW(Serving Gateway)30、MME40、DNS50である。また、MVNEによって運用される設備は、例えば、HSS(Home Subscriber Server)60、PGW70、顧客管理装置80、認証サーバ90である。
【0017】
MVNEによって運用される設備は、顧客管理装置80については利用事業者であるMVNEによって管理運用されるが、その他の設備については他の事業者によって管理運用されるものであってもよい。例えば、HSS60、PGW70、認証サーバ90のうちの少なくとも1つは、MVNEの顧客である各MVNOが管理運用するものであってもよい。なお、本実施形態のように、HSS60、PGW70、認証サーバ90をMVNEが管理運用することで、MVNEの顧客である各MVNOは、独自に設備を用意することなく、移動通信事業を行うことが可能となる。
【0018】
本実施形態の通信端末10A~10Cは、いずれも、少なくとも移動通信部12、制御部13及び記憶部14を有し、その通信端末10A~10Cの機能に応じて、表示部11や操作部15を備える。
【0019】
移動通信部12は、移動局とも呼ばれる移動通信用の通信部であり、移動通信網を介して通信する通信手段として機能し、例えばシンセサイザ、周波数変換器、高周波増幅器などにより構成され、移動通信網の基地局20との間で無線通信するための高周波信号処理を実行する。移動通信部12は、移動通信網を介してIP(Internet Protocol)を用いた通信をする機能が備わっている。この移動通信部12は、例えば通信モジュールとして構成される。通信端末10A~10Cは、当該移動通信部12により、所定の無線通信方式で基地局20と無線通信を行い、移動通信網側に接続することができる。
【0020】
制御部13は、通信端末10A~10Cの動作を制御するものである。制御部13は、例えば、MPU(マイクロ・プロセッシング・ユニット)によって構成される。制御部13は、所定のファームウェア等のプログラムを実行することで、例えば、PDN1を介した通信を用いる各種処理を実行することができる。
【0021】
記憶部14は、RAMやROM等によって構成され、制御部13に用いられる各種データを記憶する。例えば、記憶部14には、予め通信端末10A~10Cごとに割り当てられている端末識別情報であるIMSI(International Mobile Subscriber Identity)又はGUTI(Globally Unique Temporary ID)(以下「IMSI」の例で説明する。)の情報が記憶されている。また、記憶部14には、PDNを介した通信に用いるためのPCO(Protocol Configuration Options)や、当該通信端末に対応するMVNOに割り当てられたAPNなどの設定データ等が記憶される。
【0022】
また、基地局20は、無線アクセス網(RAN)を構成し、例えば、eNodeB(eNB)やgNodeB等とも呼ばれたり、自局が形成するセルのサイズによりマクロセル基地局やスモールセル基地局などと呼ばれたりする。基地局20は、例えば、無線信号の送受信をする無線部(RRH)と、デジタルベースバンド信号処理を行うベースバンド部(BBU)を備える。RRHは、例えば、BBUから受信したデジタルベースバンド信号をRF信号に変換し、所定の信号レベルに電力増幅して通信端末10A~10Cに送信する。また、RRHは、通信端末10A~10Cの移動通信部12から受信したRF信号をデジタルベースバンド信号に変換し、BBUへ送信する。
【0023】
SGW30は、基地局20との間ではIPを用いずに移動通信網を通じてデータ通信を行うゲートウェイ装置であり、PDN1などの外部ネットワークのゲートウェイ装置であるPGW70と通信端末10A~10Cとの間のIPを用いたデータ通信を中継する。すなわち、SGW30は、基地局20を含むRANのアンカーポイントとなり、PGW70の間でユーザパケットデータの中継処理を行う。
【0024】
移動通信網に含まれるコアネットワークは、例えばLTE/LTE-AdvancedにおいてEPC(Evolved Packet Core)とも呼ばれ、所定の通信インターフェースを介して基地局20が接続される。コアネットワークは、MME40のほか、SCEF(Service Capability Exposure Function)やPCRF(Policy and Charging Rules Function)等の他のノードを有していてもよい。
【0025】
MME40は、基地局20を収容して無線通信ネットワーク制御、モビリティ制御、ハンドオーバ制御、ユーザー認証制御、通信確立制御等を行うノードである。MME40は、通信端末10A~10C及び基地局20のそれぞれについて通信ログ情報及び通信制御パラメータ等の情報を収集して格納する機能などを有していてもよい。
【0026】
DNS50は、MNOによって管理運営され、MVNEの顧客である各MVNOが用いる通信端末10A~10CとPGW70とが通信する際に、通信端末10A~10Cが使用するAPN(当該通信端末10A~10Cに対応するMVNOに割り当てられたAPN)に基づいて、PGW70の通信アドレスを特定する名前解決処理を行う。本実施形態のDNS50は、少なくとも、MVNEが使用するPGW70の通信アドレスと、MVNEの顧客である各MVNOに割り当てられた複数のAPNとの対応関係が登録された名前解決データベース51を備えている。
【0027】
HSS60は、MVNEの顧客である各MVNOの移動通信事業の通信サービスを利用するユーザー(加入者)の情報のデータベースを含み、例えば、各MVNOのユーザー契約情報やユーザー認証情報を管理し、それらの情報を位置登録契機でMME40へ通知する処理などを行う。
【0028】
PGW70は、PDN1などの外部ネットワークのゲートウェイ装置であり、MVNEの顧客であるMVNOがそれぞれ用いる通信端末10A~10CがPDN1を介して通信するための通信用装置である。PGW70は、通信端末10A~10CへのIPアドレスの払出し、PDN1への接続に関するユーザー認証、課金用の通信利用データ(例えばCDR:Call Data Record)の作成、DHCPサーバ機能等を有する。
【0029】
ここで、上述したDNS50の名前解決データベース51は、登録されるAPNとして、複数種類の文字又は複数種類の文字列を意味する特殊文字「*」で表現されるワイルドカードを含む形式のワイルドカードAPNに対応している。本実施形態では、
図1に示すように、PGW70の通信アドレスと「*.apn」というワイルドカードAPNとの対応関係が名前解決データベース51に登録されている。このようなワイルドカードAPNを利用することで、1つの通信アドレスと複数のAPNとの対応関係を一括登録する処理や当該複数のAPNの管理などが容易になる。特に、1つの通信アドレスと複数のAPNとの対応関係を一括登録する方法としては、当該通信アドレスと個々のAPNとの対応関係を個別に登録してもよいのであるが、一定数以上のAPNをまとめて同じ通信アドレスに対応づける場合には、ワイルドカードAPNを用いるのが便利である。
【0030】
MVNEは、新たな顧客であるMVNOに個別のAPNを割り当てる場合、従来は、新たなMVNOが発生するごとに、その新たなMVNOに割り当てるAPNとMVNEの使用するPGW70との対応関係をDNS50の名前解決データベース51に新たに登録する登録処理を、DNS50を管理運営するMNOへ依頼するという手続きをとっていた。この場合、MVNE側もMNO側も、新たなMVNOが発生するごとに手続きが発生するという点で煩雑である。また、MNO側での必要な処理や手続きに時間を要するため、MVNEが新たなMVNOにAPNを割り当てることができるまでに多くの時間が必要となる。
【0031】
特に、最近では、APNが割り当てられるMVNO側から、自らの希望する文字列を含むAPNを使いたいという要望がMVNE側に出されることが多い。このような要望に応える場合、従来、MVNOが希望するAPNを受けたMVNEは、そのAPNが使用できるかどうかをMNOへ問い合わせる手続きも必要となることから、更に手続きが煩雑化し、長期化する。
【0032】
そこで、本実施形態においては、MVNEが将来MVNOに割り当てる可能性のある複数のAPNと、当該MVNEの顧客であるMVNOに使用させるPGW70の通信アドレスとの対応関係を、予めDNS50に一括して登録する手続きを、MVNEがMNOに対して行っておく。具体的には、MVNEは、PGW70の通信アドレスと「*.apn」というワイルドカードAPNとの対応関係を名前解決データベース51に登録する登録処理をMNOに事前に依頼する。この登録処理が完了することで、MVNEは、「*.apn」のワイルドカードの範囲内に含まれるAPNであれば、MVNOに新たなAPNを割り当てる際に、MNOに対して当該新たなAPNの登録処理を依頼する手続きが不要となる。
【0033】
以上の処理、手続きを実現するために、本実施形態では、MVNEが管理運営する顧客管理装置80を用いている。この顧客管理装置80は、主に、顧客データベース81と、外部通信部82と、処理部83と、内部通信部84とから構成されている。
【0034】
顧客データベース81は、MVNEの顧客であるMVNO-A、MVNO-B、MVNO-Cと、それぞれに割り当てられたAPNとの対応関係を記憶する記憶部として機能する。顧客データベース81に記憶される他の情報は、例えば、顧客であるMVNO-A、MVNO-B、MVNO-Cに払い出しているIMSIが挙げられる。そのほか、顧客データベース81に記憶される情報は、任意に設定でき、例えば、認証に利用するユーザー名、パスワード、認証方式(PAP、CHAP等)、帯域制限などの情報が挙げられる。認証サーバ90が顧客であるMVNOにより管理されているものである場合、認証用のユーザー名、パスワード等の情報は、顧客データベース81に記憶しておく必要はなく、その代わりに、例えば認証サーバ90の通信アドレスを記憶してもよい。
【0035】
外部通信部82は、MVNEによる管理外の装置と通信するものである。特に、本実施形態の外部通信部82は、MVNEの顧客であるMVNO-A、MVNO-B、MVNO-Cのオペレータ等が通信装置を使い、インターネット等のネットワークを通じて顧客管理装置80にアクセスするためのインターフェースとして用いられる。各MVNOは、オペレータがパソコン等の端末装置を操作して、外部通信部82を通じて顧客管理装置80にアクセスすることにより、MVNEの顧客用ページから各種情報の入力を行うことができ、顧客の利便性向上を図ることができる。特に、本実施形態において、各MVNOは、MVNEが事前手続でMNOのDNS50に登録した「*.apn」のワイルドカードの範囲内で自身が希望するAPNを、MVNEの顧客用ページから入力することができる。したがって、外部通信部82は、複数顧客であるMVNO-A、MVNO-B、MVNO-Cが、DNS50に事前登録した「*.apn」のワイルドカードの範囲内からそれぞれ選択した1又は2以上のAPNを取得する取得部として機能する。
【0036】
処理部83は、顧客管理装置80で行う各種処理を実行する。特に、本実施形態の処理部83は、登録部として機能し、外部通信部82によって取得される各MVNOが選択したAPNとそのAPNを選択したMVNOとの対応関係を、顧客データベース81に登録する処理を行う。
【0037】
また、本実施形態の処理部83は、MVNEの顧客であるMVNOがMVNEの顧客用ページから入力した希望のAPNを顧客データベース81に登録したとき、内部通信部84からHSS60に対し、当該APNと当該MVNOのユーザーとの対応関係を登録する要求処理を行う。この場合、HSS60は、顧客管理装置80の内部通信部84からの要求に応じ、加入者情報データベースにおいて、その要求に係るAPNと、当該APNに対応するMVNOのユーザーのIMSIとを対応づける(紐づける)処理を行う。なお、この処理は、HSS60をMVNEが管理している本実施形態では行われるが、HSS60をMNOが管理するような場合には不要である。その代わりに、初回に一度MNOが管理するHSSにワイルドカードAPNの登録をするようにする。
【0038】
また、本実施形態の処理部83は、PGW70が通信端末10A~10CのPND1への接続を認証するためのユーザー認証を行う認証サーバ90に対し、顧客データベース81で管理する認証用情報を提供する処理も行う。例えば、処理部83は、MVNEの顧客であるMVNOがMVNEの顧客用ページから入力した希望のAPNを顧客データベース81に登録したとき、内部通信部84から認証サーバ90に対し、当該APNと当該MVNOのユーザーとの対応関係を登録する要求処理を行う。この場合、認証サーバ90は、顧客管理装置80の内部通信部84からの要求に応じ、認証用データベースにおいて、その要求に係るAPNと、当該APNに対応するMVNOのユーザーのIMSIとを対応づける(紐づける)処理を行う。
【0039】
内部通信部84は、MVNEによる管理内の装置と通信するものであり、MVNEが管理運営するHSS60や認証サーバ90と通信する際のインターフェースとして用いられる。
【0040】
また、認証サーバ90は、PGW70を介してPDN1へ接続する通信端末10A~10Cのユーザー認証を行う。認証サーバ90は、PGW70からユーザー認証要求を受信すると、認証用データベースを参照して、ユーザー認証要求に係るIMSIやAPNに基づいてユーザー認証を行う。顧客管理装置80において新しいAPNが顧客データベース81に登録された場合、顧客管理装置80から送られてくる新しいAPNと当該MVNOのユーザーとの対応関係に基づいて、認証用データベースの情報(認証用確認情報)が更新される。なお、本実施形態のように認証サーバ90と顧客管理装置80とがそれぞれデータベースを持っていても良いが、いずれか一方のデータベースに統合してもよい。例えば、顧客管理装置80の顧客データベース81を認証サーバ90の認証用データベースに統合してもよい。
【0041】
図2は、本実施形態の通信システムにおいて、通信端末10A~10CがPGW70からPDN1に接続するための処理の流れの概略を示すシーケンス図である。
なお、ここの説明では、MVNO-Aの通信端末10Aを用いて説明するが、他のMVNOの通信端末10B,10Cでも同様である。
【0042】
例えばユーザーが通信端末10Aの電源を投入すると、通信端末10Aの移動通信部12は、予め自身に割り当てられているIMSIの情報を含む接続要求を、基地局20を介してMME40へ送信する(S101,S102)。MME40は、このIMSIが認証されたものであるかどうかを確認するための認証要求を、HSS60に送信する(S103)。HSS60は、この認証要求に係るIMSIがHSS60に登録されているかどうかの認証処理を行い(S104)、その認証応答をMME40へ送信する(S105)。この認証処理により、接続要求を送信した通信端末10Aが、MNOの移動通信用設備を利用して移動通信事業を行うMVNO-Aの通信端末であるかどうかの認証が行われる。
【0043】
次に、MME40は、接続要求を送信した通信端末10Aに対し、基地局20を介してAPN要求を送信する(S106,S107)。このAPN要求を受信した通信端末10Aは、記憶部14に記憶されているAPNを、基地局20を介してMME40へ送信する(S108,S109)。
【0044】
このようにして通信端末10AのAPNを受け取ったMME40は、DNS50に対してAPNを送信する(S110)。これにより、DNS50は、名前解決データベース51を参照して、受信したAPNに対応づけられたPGW70の通信アドレス(PGWアドレス)を特定する名前解決処理を行い(S111)、特定したPGWアドレスをMME40に知らせる(S112)。
【0045】
次に、MME40は、SGW30を介して、PGWアドレスに対応するPGW70に対し、通信端末10Aから受信したAPNやIMSIを含むセッション生成要求を送信する(S113,S114)。このセッション生成要求を受信したPGW70は、そのセッション生成要求に係る通信端末10AがPGW70を介してPDN1に接続することを許可されているものかどうかを確認するためのユーザー認証要求を、認証サーバ90に送信する(S115)。
【0046】
認証サーバ90は、このユーザー認証要求に係るIMSI及びAPNが認証用データベースに登録されているかどうかを確認するユーザー認証処理を行い(S116)、そのユーザー認証応答をPGW70へ送信する(S117)。このユーザー認証処理により、接続要求を送信した通信端末10Aが、PGW70を介してPDN1に接続することを許可されているものかどうかの認証が行われる。
【0047】
ユーザー認証処理を終えたら、PGW70は、セッションを生成し(S118)、そのセッション生成応答をSGW30へ送信する(S119)。これにより、SGW30は、通信端末10Aからの通信データをPGW70へ通すための処理を実行するとともに、セッション生成応答をMME40へ送信する(S120)。このセッション生成応答を受信したMME40は、接続要求を送信した通信端末10Aに対し、基地局20を介して接続許可を通知する(S121,S122)。これにより、通信端末10Aは、PGW70からPDN1に接続して、PDN1に接続される他の装置とデータ通信を行うことができるようになる。
【0048】
図3は、本実施形態の通信システムに関わる事業者間の手続きの概要を示す説明図である。
本実施形態の一例では、MNOの移動通信用設備を利用してMVNOが行う移動通信事業を支援するサービスを提供するMVNEは、まず、MNOからIMSIの貸し出しを受ける。MVNEは、貸し出されたIMSIを含むSIMをMVNEの顧客となるMVNO-Aに提供し、MVNO-Aは、提供されたSIMをMVNOのユーザーに使用させることで、MVNO-Aのユーザーに対し、MNOの移動通信用設備を利用した移動通信事業を行うことができる。
【0049】
MVNEは、顧客となるMVNO-Aに対し、MVNO-Aのユーザーの通信端末10AによりPDN1に接続してデータ通信を行うことを可能にするため、MVNEの使用するPGW70(MVNO-Aに使用させるPGW)に対応するAPNを、そのMVNO-Aに対して割り当てる必要がある。そのためには、MVNEの使用するPGW70の通信アドレス(PGWアドレス)と当該APNとの対応関係を、VNOの管理運営するDNS50に登録してもらう手続きが必要となる。
【0050】
本実施形態では、上述したとおり、この手続きを簡素化するために、MVNEは、将来顧客に割り当てる可能性のある複数のAPNとPGW70の通信アドレスとの対応関係を、予めDNS50に一括して登録する手続きを行う。具体的には、MVNEの使用するPGW70の通信アドレス(PGWアドレス)と複数のAPNとの対応関係をDNS50に一括登録する登録処理を、MNOへ依頼する(S201)。これを受けて、MNOは、DNS50の名前解決データベース51に、PGW70の通信アドレスとワイルドカードAPN「*.apn」との対応関係を登録する(S202)。具体的には、MNOは、ワイルドカードAPN「*.apn」に当てはまるAPNでPGW70のノードリストを取得できるようにNAPTR(The Naming Authority Pointer)レコードを設定する。
【0051】
MNOは、名前解決データベース51への登録を終えたら、MVNEに対し、登録の完了通知を送る(S203)。これにより、MVNEは、新たな顧客となるMVNO-Aに対してAPNを割り当てる際、MNOに対して当該新たなAPNの登録を依頼する手続きを行うことなく、当該APNを新たなMVNO-Aに割り当てることができる。
【0052】
MVNEの顧客となったMVNO-Aは、MVNEの管理運営する顧客管理装置80の外部通信部82を通じて、MVNEの顧客用ページにアクセスすることができる(S204)。そして、MVNO-Aは、この顧客用ページにおいて、自身に割り当てられるAPNに含めることを希望する文字列(DNS50に登録されたワイルドカードAPN「*.apn」のワイルドカード「*」に当てはめる文字列)を入力する(S205)。ここでは、MVNO-Aが「AAA」という文字列を希望したものとする。
【0053】
この入力を顧客管理装置80で受け付けたMVNEは、顧客管理装置80の処理部83により、入力された文字列「AAA」をワイルドカードAPN「*.apn」のワイルドカード「*」に当てはめたAPN「AAA.apn」を、当該MVNO-Aに対応づけて、顧客データベース81に登録する(S206)。このとき、APNに付随する情報として、例えば、認証に用いるユーザー名、パスワードや、認証サーバ90での認証方式、PGW70での帯域制限などの情報も、顧客データベース81で管理してもよい。この場合、通信端末10A~10Cにおいてユーザー名、パスワード等の情報を正しく入力しないと、通信端末10A~10Cの通信が許可されないようにすることが可能である。
【0054】
また、MVNEは、顧客管理装置80の処理部83により、顧客データベース81に登録したAPN「AAA.apn」について、HSS60の加入者情報データベース及び認証サーバ90の認証用データベースの認証用確認情報をそれぞれ更新する(S207,S208)。
【0055】
以上の処理、手続きが完了したら、MVNEは、MVNO-Aが選択(希望)したAPN「AAA.apn」をMVNO-Aに割り当てる(S209)。これにより、MVNO-Aは、自身のユーザー(MVNEからMVNO-Aに提供されたSIMを使用するユーザー)の通信端末10Aに対し、MVNEから割り当てられたAPN「AAA.apn」を伝える。その結果、例えば通信端末10Aのユーザーが通信端末10AでAPNを「AAA.apn」と設定することにより(S210)、通信端末10Aの記憶部14にAPN「AAA.apn」が記憶され、通信端末10Aは、MVNEの使用するPGW70からPDN1に接続して、PDN1に接続される他の装置とデータ通信を行うことができるようになる。なお、このデータ通信を許可するためにユーザー名やパスワード等の情報が必要な場合には、それらの情報もユーザーに伝え、ユーザーはその情報を通信端末10Aに入力するようにする。
【0056】
以上のように、本実施形態の顧客管理装置80を用いることで、MVNEは、顧客であるMVNOに当該MVNOが選択(希望)する新たなAPN(オンデマンドのAPN)を割り当てる際に、MNOに対して当該新たなAPNの登録処理を依頼する手続きが不要となる。したがって、MVNE側もMNO側も手続きが簡素化されるとともに、MVNEは、顧客のMVNOが選択(希望)するAPNを迅速に割り当てることができる。
【0057】
また、本実施形態のように、MVNEの顧客であるMVNOが自身の希望する文字列を含んだAPNを設定できるので、MVNOが行う移動通信事業のブランディング戦略に有利となる。
【0058】
なお、上述した実施形態においては、MNOの管理運営するDNS50を利用する利用事業者がMVNEである場合について説明したが、利用事業者がMVNOである場合でも同様である。すなわち、MVNOがMVNEを介さずに直接MNOと手続きなどを行う場合でも、例えば、MVNOが、当該MVNOの顧客であるユーザー(例えば法人顧客)に対し、独自のAPNを割り当てる事業を行うことが考えられる。この場合であっても、上述した実施形態によれば、MVNOの管理運営する顧客管理装置80を用いることで、MVNOは、顧客であるユーザーに当該ユーザーが選択(希望)する新たなAPN(オンデマンドのAPN)を割り当てる際、MNOに対して当該新たなAPNの登録処理を依頼する手続きが不要となる。したがって、MVNO側もMNO側も手続きが簡素化されるとともに、MVNOは、顧客のユーザーが選択(希望)するAPNを迅速に割り当てることができる。
【0059】
また、上述した実施形態において、HSS60は、利用事業者であるMVNEが管理運用するものでもよいし、管理事業者であるMNOが管理運用するものであっても良い。MNOが管理運用するHSS60を用いる場合、DNS50と同様、HSS60にも、ワイルドカードAPNを登録するようにしてもよい。この場合、ワイルドカードの範囲内に含まれるAPNであれば、MNOに対して新たなAPNの登録処理を依頼する手続きが不要となり、また、顧客管理装置80とHSS60との間の通信も不要とすることが可能である。
【0060】
〔変形例〕
次に、上述した実施形態における通信システムの一変形例について説明する。
図4は、本変形例に係る通信システムの概略構成の一例を示す説明図である。
本変形例は、MVNEを介さずに直接MVNOがMNOと手続き等を行う例であって、利用事業者としてのMVNOの顧客であるユーザーA~ユーザーC(例えば法人顧客)に対し、それぞれ独自のAPNを割り当てるものである。ここでは、ユーザーAには「AAA.apn」のAPNが割り当てられ、ユーザーBには「BBB.apn」のAPNが割り当てられ、ユーザーCには「CCC.apn」のAPNが割り当てられている。
【0061】
また、本変形例において、ユーザーCは、閉域ネットワーク(例えば、ユーザーCの社内ネットワーク)である閉域PDN1Cを管理運用している。ユーザーCが用いる許可通信端末である通信端末10Cが、基地局20を介して、PGW-C70Cから閉域PDN1Cに接続する際、MVNOが提供する認証システムによって認証処理を行う。本変形例における認証システムでは、MVNOがユーザーCに割り当てるAPNを利用したものであり、高セキュアな認証処理を実現する。
【0062】
なお、ユーザーA及びユーザーBにそれぞれ割り当てられるAPNは、ユーザーA及びユーザーBの通信端末10A,10BがPGW70からPDN1に接続するものであり、上述した実施形態における通信端末10A,10BがPGW70からPDN1に接続する場合と同様である。したがって、以下の説明では、上述した実施形態との重複記載となる点は省略し、本変形例に特有の点を中心に説明する。
【0063】
本変形例に係る通信システムは、
図4に示すように、利用事業者であるMVNOによって運用される設備が上述した実施形態の場合と異なっている。具体的には、SGW30とPGW70及びPGW-C70Cとの間に、MVNOによって運用される通信用装置としてのLB(Load Balancer)100が設置されている。LB100は、SGW30から送られてくる通信データや処理要求等を、同等に機能してPGW70を構成する複数の構成装置に振り分け、構成装置一台あたりの負荷を抑制する処理に用いられる。
【0064】
本変形例100では、LB100を利用し、SGW30を介して送られてくる通信データの送信元の通信端末に対応するAPNに基づいて、PGW70及びPGW-C70Cのうちの一方を選択し、選択したPGW70又はPGW-C70Cに通信データを送るデータ仕分け装置としてLB100を機能させる。LB100は、ユーザーA~ユーザーCの各APNと、各APNに対応するPGW70又はPGW-C70Cとの対応関係が登録された仕分けデータベース101を備え、この仕分けデータベース101を参照して、SGW30を介して送られてくる通信データの送信元の通信端末に対応するAPNに基づいて、当該APNに対応するPGW70又はPGW-C70Cに通信データを送る仕分け処理を行う。
【0065】
なお、本変形例では、LB100を利用して仕分け処理を行うが、LB100とは異なる通信用装置を用いて仕分け処理を行っても良い。また、本変形例では、通信データの送信元の通信端末に対応するAPNに基づいて仕分け処理を行う例であるが、通信データの送信元の通信端末のIMSIに基づいて行うことも可能である。
【0066】
上述したような仕分け処理を行うので、本変形例におけるDNS50の名前解決データベース51には、
図4に示すように、LB100の通信アドレス(LBアドレス)と「*.apn」というワイルドカードAPNとの対応関係が登録される。これにより、MVNOの顧客であるユーザーA~ユーザーCの通信端末10A~10CがそれぞれのPDN1又は閉域PDN1Cに接続して通信を行う際、いずれの通信データも、一旦はLB100へ送られ、その後にLB100で仕分け処理されて、対応するPGW70又はPGW-C70Cに送られることになる。
【0067】
MVNOの顧客管理装置80の顧客データベース81には、上述した実施形態と同様に、ユーザーA~ユーザーCがそれぞれ選択(希望)したAPNが登録される。その後、本変形例における顧客管理装置80の処理部83は、上述した実施形態と同様にHSS60及び認証サーバ90に対する更新処理を行うとともに、本変形例では、内部通信部84からLB100に対し、当該APNと当該MVNOのユーザーとの対応関係を仕分けデータベース101に登録するための処理を行う。
【0068】
図5は、本変形例の通信システムにおいて、ユーザーCが用いる通信端末10CがPGW-C70CからユーザーCの閉域PDN1Cに接続するための処理の流れの概略を示すシーケンス図である。
なお、ここの説明では、ユーザーCの通信端末10Cについて説明するが、他のユーザーAやユーザーBの通信端末10A,10Bについても同様である。
【0069】
ユーザーCの通信端末10Cが基地局20を介して閉域PDN1Cに接続する場合、DNS50における名前解決処理(S111',S112')を経て、MME40は、SGW30を介して、ユーザーCに割り当てられたAPNに対応したLBアドレスによって特定されるLB100対し、セッション生成要求を送信する(S101~S114)。このセッション生成要求を受信したLB100は、仕分けデータベース101を参照して、セッション生成要求に含まれる当該通信端末10CのAPNに対応づけられたPGW-C70Cを選択する仕分け処理を行う(S201)。そして、選択したPGW-C70Cに対し、セッション生成要求を送る(S202)。
【0070】
LB100からのセッション生成要求を受信したPGW-C70Cは、そのセッション生成要求に係る通信端末10CがPGW-C70Cを介して閉域PDN1Cに接続することを許可されているものかどうかを確認するためのユーザー認証要求を、認証装置としての認証サーバ90Cに送信する(S115)。
【0071】
この認証サーバ90Cは、このユーザー認証要求に係るIMSI及びAPNが認証用データベースに登録されているかどうかを確認するユーザー認証処理を行い(S116)、そのユーザー認証応答をPGW-C70Cへ送信する(S117)。このユーザー認証処理により、接続要求を送信した通信端末10Cが、PGW-C70Cを介して閉域PDN1Cに接続することを許可されているものかどうかの認証が行われる。
【0072】
ここで、閉域PDN1Cに接続するための認証処理を行う認証サーバ90Cは、MVNOによって管理運用されるものであってもよいが、本変形例では、閉域PDN1Cを管理運用しているユーザーCによって管理運用されている。閉域PDN1Cを管理運用するユーザーCは、基地局20を介さずに閉域PDN1Cに接続するための認証処理を行う認証サーバ90Cをすでに管理運用している場合があり、そのような場合には既存の認証サーバ(社内アカウント管理サーバ等)を利用することができる。なお、認証サーバ90Cの更新処理は、顧客管理装置80の送信部としての外部通信部82を介して行うこともできるし、顧客管理装置80を介さずに行うこともできる。
【0073】
本変形例のように認証サーバ90CをユーザーCが管理運用している場合、顧客管理装置80ではユーザー名やパスワード等の情報を管理せず、当該認証サーバ90Cの通信アドレスを管理するようにしてもよい。この場合、例えば、PGW-C70Cは、顧客管理装置80に記憶されている認証サーバ90Cの通信アドレスを参照して、APNとIMSIが一致するリクエストについて、当該認証サーバ90Cに認証要求を送信する。これにより、認証サーバ90Cは認証処理を行ない、PGW-C70Cに認証応答を返すようにする。このように顧客管理装置80で認証サーバ90Cの通信アドレスを管理する場合、認証サーバ90Cと顧客管理装置80とを独立して更新・管理運用できるので、既存の認証サーバ90Cはそれまでと変わらない更新・管理運用が可能となる。したがって、ユーザーCは、顧客管理装置80のことを考慮せずに、認証サーバ90Cの更新・管理運用が可能となり、ユーザーの利便性が高い。
【0074】
ユーザー認証処理を終えたら、以後は、上述した実施形態と同様、PGW-C70Cがセッションを生成し(S118)、そのセッション生成応答をSGW30へ送信する(S119)。これにより、SGW30は、通信端末10Cからの通信データをPGW-C70Cへ通すための処理を実行するとともに、セッション生成応答をMME40へ送信する(S120)。このセッション生成応答を受信したMME40は、接続要求を送信した通信端末10Cに対し、基地局20を介して接続許可を通知する(S121,S122)。これにより、通信端末10Cは、PGW-C70Cから閉域PDN1Cに接続して、閉域PDN1Cに接続される他の装置とデータ通信を行うことができるようになる。
【0075】
本変形例においても、上述した実施形態と同様、MVNOの管理運営する顧客管理装置80を用いることで、MVNOは、顧客であるユーザーA~ユーザーCにそれぞれのユーザーが選択(希望)する新たなAPN(オンデマンドのAPN)を割り当てる際、MNOに対して当該新たなAPNの登録処理を依頼する手続きが不要となる。したがって、MVNO側もMNO側も手続きが簡素化されるとともに、MVNOは、顧客であるユーザーが選択(希望)するAPNを迅速に割り当てることができる。
【0076】
また、一般に、APNごとのPAP/CHAP認証では、APN、ユーザ名、パスワード、認証方式がインターネット等で公開されるが、本変形例においては、特にユーザーCに割り当てられるAPN、ユーザー名、パスワード、認証方式については、公開されず、ユーザーCのみに提示され、他のユーザーAやユーザーBを含む第三者が知ることができない。しかも、ユーザーCに割り当てられるAPNは、ユーザーC自身が選択して決定されるものである。したがって、ユーザーCに割り当てられるAPNを用いてユーザーCの閉域PDN1Cへの接続の認証処理を行う本変形例は、高セキュアな認証処理を提供できるものである。
【0077】
また、閉域PDN1Cへの接続の認証処理に、APNを用いずに、SIMの情報を用いることも考えられるが、この場合、SIMが盗難されるなどして不正利用されると、閉域PDN1Cへ不正アクセスされる危険性が高い。これに比べて、本変形例のようにユーザーCのみに呈示されるAPNを用いた認証処理であれば、SIMが盗難されるなどして不正利用される場合でも、閉域PDN1Cへの不正アクセスの危険性を下げることができる。
【0078】
以上の説明は、LTE/LTE-Advancedを想定し、通信用表示名がAPNである場合について説明であるが、第5世代などの次世代における通信方式においては、例えば、通信用表示名がDNN(Data Network Name)である場合でも同様である。
【0079】
なお、本明細書で説明された処理工程並びに通信端末、DNS、顧客管理装置、認証サーバ、その他の通信システムの構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。また、当該構成要素は、単一の装置によって構成されるものに限らず、互いに通信可能に接続された複数の装置によって構成されるものを含む。
【0080】
ハードウェア実装については、実体(例えば、各種無線通信装置、eNodeBやgNode等の各種基地局装置、移動通信部、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において前記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0081】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、前記構成要素を実現するために用いられる各部は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された前記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置や記憶装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0082】
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であれよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
【0083】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。
【符号の説明】
【0084】
1 :PDN
1C :閉域PDN
10A~10C:通信端末
11 :表示部
12 :移動通信部
13 :制御部
14 :記憶部
15 :操作部
20 :基地局
30 :SGW
40 :MME
50 :DNS
51 :名前解決データベース
60 :HSS
70 :PGW
80 :顧客管理装置
81 :顧客データベース
82 :外部通信部
83 :処理部
84 :内部通信部
90,90C:認証サーバ
100 :LB
101 :仕分けデータベース