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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】ダンパー
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/31 20060101AFI20221107BHJP
【FI】
F16F15/31 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020165789
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022057499
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000103976
【氏名又は名称】株式会社オリジン
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100102417
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100194629
【弁理士】
【氏名又は名称】小嶋 俊之
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】飯山 俊男
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-340076(JP,A)
【文献】特開2018-168979(JP,A)
【文献】特開平09-158959(JP,A)
【文献】特開平09-229052(JP,A)
【文献】特開2019-203533(JP,A)
【文献】特開平07-012166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/31
F16F 7/10
E06B 9/322
F16H 48/12
F16H 48/14
F16H 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング、回転軸の周りを回転可能な回転体、及び前記ハウジングの内側で前記回転体と共に前記回転軸の周りを回転する作動子を具備し、
前記ハウジングは端板と前記端板の外周縁から軸方向に延びる筒状の外側壁とを有し、前記端板の中央には軸方向に延びる筒状又は柱状の内側壁が設けられており、
前記作動子は前記外側壁の内周面と前記内側壁の外周面との間に位置し、前記外側壁の内周面と前記内側壁の外周面との間には、前記回転体が回転した際に、前記作動子周方向に移動させると共に前記作動子を径方向に往復移動させる環状の作動子移動経路が設けられており、
前記作動子には前記外側壁の内周面及び前記内側壁の外周面に沿って移動可能な外側突出部及び内側突出部が形成されている、ことを特徴とするダンパー。
【請求項2】
前記外側突出部及び前記内側突出部は周方向に間隔をおいて2つずつ設けられている、請求項に記載のダンパー。
【請求項3】
前記回転体と一体となって前記回転軸の周りを回転するキャリアを備え、前記作動子は前記キャリアに支持される、請求項1又は2に記載のダンパー。
【請求項4】
前記作動子には径方向に延びる長穴が形成されており、前記作動子は前記長穴に挿通された断面円形の支持軸によって支持されている、請求項1乃至のいずれかに記載のダンパー。
【請求項5】
前記作動子は周方向に間隔をおいて複数配置されている、請求項1乃至のいずれかに記載のダンパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体と組み合わせて配置される作動子が回転体の回転によって振動するダンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
室内等に配設されるブラインドには、水平に方向に延びる複数枚のスラットが上下方向に配列されて上下方向に移動可能な形式のものがある。かような形式のブラインドにあっては、複数枚のスラットは夫々上下方向に延びる昇降コードを介して連結されており、昇降コードの一端はスラットと平行に水平方向に延びるボトムレールに、他端はヘッドボックス内の巻き取り機構の出力回転部材に夫々接続されている。巻き取り機構の入力回転部材には操作コードが接続されており、操作コードを操作して入力回転部材を正逆方向に回転させることで昇降コードを介して出力回転部材に接続されたボトムレールが昇降動し、これにより複数のスラットを上下方向に移動させることができる。巻き取り機構には通常、操作コードを保持するストッパー(コードロックと称されることもある)が設けられており、操作コードを左右方向の一方(通常は外側)に強制することで操作コードは任意の位置で保持され、ボトムレールを任意の高さ位置(上下方向位置)で固定することができる。操作コードがストッパーにより保持されている状態で操作コードを左右方向の他方に強制ことで上記保持は解除される。
【0003】
上述したとおり入力回転部材及び出力回転部材は連動して回転することから、例えば、操作コードを引っ張ってボトムレールを上昇させた状態において、操作コードがストッパーにより保持されていなければ、操作コードから手を離すとボトムレールは自由落下して床に衝突或いは昇降コードが最大限引き出されて巻き取り機構に衝撃が付加される。これは上記ストッパーによる操作コードの保持が解除された状態からかかる保持を解除してボトムレールが自由落下する場合も同様である。かようなボトムレールの自由落下を防止するために、上記巻き取り機構にダンパーを設けてボトムレールの降下速度を制限することがある。
【0004】
ダンパーとしては、内部にシリコンオイル等の比較的粘性の高い流体が封入されたハウジングと、ハウジングに回転自在に装着された回転部材とを備えるロータリーダンパーが実用に供されている。このロータリーダンパーにおいては、流体の粘性抵抗により回転部材の回転に対して逆向きのトルクを回転部材に作用させることで、入力回転部材又は出力回転部材の回転速度を制限する。下記特許文献1には、上述したロータリーダンパーの一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-12166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
而して、特許文献1に開示されたロータリーダンパーにあっては、ハウジング内に封入された流体が外部に漏洩する虞がある。また、一般的に流体の粘性抵抗は温度によって変化することから、気温の高い夏場と気温の低い冬場とではロータリーダンパーが付与する上記逆向きのトルクが変化してしまい、これにより制限される入力部材又は出力部材の回転速度も異なってしまう。
【0007】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、流体の粘性抵抗を利用することなく機械的に回転体の回転速度を制限することが可能な新規のダンパーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討の結果、回転体が回転する際に、回転体と共に回転軸の周りを回転する作動子を周方向に移動させながら径方向に往復移動させることで、上記主たる技術的課題を解決することができることを見出した。
【0009】
即ち、本発明よれば、上記主たる技術的課題を解決することができるダンパーとして、ハウジング、回転軸の周りを回転可能な回転体、及び前記ハウジングの内側で前記回転体と共に前記回転軸の周りを回転する作動子を具備し、
前記ハウジングは端板と前記端板の外周縁から軸方向に延びる筒状の外側壁とを有し、前記端板の中央には軸方向に延びる筒状又は柱状の内側壁が設けられており、
前記作動子は前記外側壁の内周面と前記内側壁の外周面との間に位置し、前記外側壁の内周面と前記内側壁の外周面との間には、前記回転体が回転した際に、前記作動子周方向に移動させると共に前記作動子を径方向に往復移動させる環状の作動子移動経路が設けられており、
前記作動子には前記外側壁の内周面及び前記内側壁の外周面に沿って移動可能な外側突出部及び内側突出部が形成されている、ことを特徴とするダンパーが提供される。
【0010】
好ましくは、記外側突出部及び前記内側突出部は周方向に間隔をおいて2つずつ設けられてい。前記回転体と一体となって前記回転軸の周りを回転するキャリアを備え、前記作動子は前記キャリアに支持されるのがよい。好適には、前記作動子には径方向に延びる長穴が形成されており、前記作動子は前記長穴に挿通された断面円形の支持軸によって支持されている。前記作動子は周方向に間隔をおいて複数配置されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のダンパーによれば、回転体が回転する際に、回転体と共に回転軸の周りを回転する作動子は周方向に移動しながら径方向に往復移動することから、回転体が有する運動エネルギの一部が作動子の振動エネルギに変換され、これにより回転体の回転速度が制限される。従って、本発明のダンパーによれば流体の粘性を利用することなく機械的に回転体の回転速度を制限することが可能となり、流体の外部への流出や気温差による制動トルクの変化は生じない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に従って構成されたダンパーの好適実施形態の全体構成を示す図。
図2図1に示すダンパーのハウジングを単体で示す図。
図3図1に示すダンパーの回転体を単体で示す図。
図4図1に示すダンパーのキャリアを単体で示す図。
図5図1に示すダンパーの作動子を単体で示す図。
図6図1に示すダンパーの作動を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に従って構成されたダンパーの好適実施形態を図示している添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0014】
図1を参照して説明すると、全体を番号2で示すダンパーは、ハウジング4、回転体6、及び作動子8を具備している。
【0015】
図1と共に図2を参照して説明すると、ハウジング4は合成樹脂製であって、正方形の端板10と端板10の外周縁から軸方向に延びる筒状の外側壁12とを有している。端板10の中央には円形の貫通穴14及びこの貫通穴14の外周縁を囲繞して外側壁12の内側に向かって軸方向に延びる筒状の内側壁16が設けられている。所望ならば、内側壁16は柱状であってもよい。図示の実施形態においては、内側壁16の基端部18は円筒形状であってその外周面は平坦面であるが、基端部18を除く部分20の外周面22は平坦面ではなくここには軸方向に延びる凹凸が周方向に繰り返し複数形成されている。外側壁12の内周面24にも軸方向に延びる凹凸が周方向に繰り返し複数形成されており、内周面24及び外周面22の切断縁の形状は相似である。つまり、軸方向に見ると外側壁12の内周面24と内側壁16の外周面22とは凹凸の数及びその周方向角度位置が同じであり(図示の実施形態においては、9個ずつの凹及び凸が夫々周方向に等角度間隔をおいて交互に配置されている)、外側壁12の内周面24と内側壁16の外周面22との間には、周方向に向かって径方向に振幅する環状の作動子移動経路26が規定されている。図1に示すとおり、ハウジング4の開口端は端板10と同一形状の合成樹脂製シールド板28によって封止されている。シールド板28は図示しない固定手段によってハウジング4の外側壁12に固定され、シールド板28の中央には円形の貫通穴30が形成されている。
【0016】
図1と共に図3を参照して説明すると、回転体6は合成樹脂製であって、回転軸oの周りを回転可能である。回転体6は軸方向に対して垂直に配置される回転円板32を備え、回転円板32はハウジング4の内側において内側壁16の端面とシールド板28とによって回転可能な状態で軸方向に挾持されている。回転円板32が内側壁16の端面とシールド板28とによって軸方向に挾持されることで、回転体6が回転した際の回転円板32の芯ぶれが軽減される。回転円板32の中央には正6角形状の貫通穴34が形成されており、回転円板32の軸方向片側面には貫通穴34の外周縁を囲繞して軸方向に突出する断面円形の支持筒36が設けられている。支持筒36はシールド板28の貫通穴30に挿通されてこれによって回転可能に軸支される。回転円板32の径方向中間部には、軸方向に貫通する断面円形の軸穴38及び軸方向に延出する断面円形の連結軸40が形成されている。図3の左図を参照することによって理解されるとおり、軸穴38及び連結軸40は同図において一点鎖線で示される共通の仮想円周上に周方向に等角度間隔をおいて交互に3個ずつ配置されている。
【0017】
図示の実施形態のダンパー2は回転体6と一体となって回転軸oの周りを回転するキャリア42を備えている。図1と共に図4を参照して説明すると、キャリア42は合成樹脂製であって、軸方向に対して垂直に配置される円環形状のキャリア基板44を備え、キャリア基板44はハウジング4の内側壁16の基端部18の外周面にこれに対して回転可能に嵌め合わされる。キャリア基板44には、軸方向に延びる円柱形状の支持軸46及び軸方向に延びる円筒形状の支持筒48が形成されている。図4の左図を参照することによって理解されるとおり、支持軸46及び支持筒48は同図において一点鎖線で示される共通の仮想円周上に等角度間隔をおいて交互に3個ずつ配置されている。支持軸46は支持筒48よりも軸方向に長く、支持軸46は作動子8を支持する。そして、支持軸46の先端部は回転体6の軸穴38によって軸受けされる。支持筒48は内側に回転体6の連結軸40が挿通されてこれを軸受けする。図示の実施形態においては、支持筒48は軸方向に貫通している。
【0018】
図1と共に図5を参照して説明すると、作動子8は合成樹脂製であって、ハウジング4における外側壁12の内周面24と内側壁16の外周面22との間に位置している。図示の実施形態においては、作動子8は平面視において略扇形状であって、その中央には径方向に延びる長穴50が形成されている。長穴50は軸方向に貫通しておりここにはキャリア42の支持軸46が挿通され、作動子8はキャリア基板44及び回転円板32によって軸方向に挟まれた状態でキャリア42に支持されている。長穴50に沿って支持軸46が移動自在であることから、作動子8は支持軸46に対して往復移動自在である。作動子8は3つの支持軸46の夫々に設けられている。作動子8には、ハウジング4における外側壁12の内周面24及び内側壁16の外周面22に沿って移動可能な外側突出部52及び内側突出部54も形成されている。図示の実施形態においては、外側突出部52は作動子8の径方向外側面において径方向外側に突出しておりその断面は円弧形状であって、周方向両端部に1つずつ周方向に間隔をおいて設けられている。一方、内側突出部54は作動子8の径方向内側面において径方向内側に突出しておりその断面は円弧形状であって、周方向両端部に1つずつ周方向に間隔をおいて設けられている。
【0019】
続いて、図1と共に図6を参照してダンパー2の作動について説明する。
回転体6が図1の中央縦断面図において同図の右方向から見て反時計方向に回転すると、回転体6と一体のキャリア42は回転体6と共に反時計方向に回転する。かくすると、キャリア42の支持軸46によって支持された作動子8は、図6において矢印で示すとおり、ハウジング4における外側壁12の内周面24と内側壁16の外周面22との間に規定された環状の作動子移動経路26に沿って反時計方向に移動すると共に径方向に往復移動する。図示の実施形態においては、外側壁12の内周面24及び内側壁16の外周面22には軸方向に延びる凹凸が周方向に繰り返し複数形成され、外側壁12の内周面24及び内側壁16の外周面22の切断縁の形状は相似であり、作動子8には外側壁12の内周面24及び内側壁16の外周面22に沿って移動可能な外側突出部52及び内側突出部54が形成されていることから、作動子8は径方向に対する姿勢を変更することなく上記往復移動をする。回転体6が時計方向に回転した場合には、キャリア42及び作動子8が時計方向に回転することを除いて反時計方向に回転した場合と同一の作動をする。
【0020】
従って、本発明のダンパーによれば、回転体6が回転する際に、回転体6と共に回転軸oの周りを回転する作動子8は周方向に移動しながら径方向に往復移動することから、回転体6が有する運動エネルギの一部が作動子8の振動エネルギに変換され、これにより回転体6の回転速度が制限される。従って、本発明のダンパーによれば流体の粘性を利用することなく機械的に回転体の回転速度を制限することが可能となり、流体の外部への流出や気温差による制動トルクの変化は生じない。
【0021】
以上、本発明に従って構成されたダンパーについて添付した図面を参照して詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲内において適宜の修正や変更が可能である。例えば、図示の実施形態においては、作動子はキャリアによって支持されていたが、キャリアを省略して回転体に支持されるようにしてもよい。この場合、作動子はハウジングの端板と回転体の回転円板とによって軸方向に挟まれることとなる。また、図示の実施形態においては、長穴は作動子に支持軸はキャリアに夫々形成されていたが、支持軸を作動子に長穴をキャリア又は回転体に夫々形成してもよい。作動子の数は適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0022】
2:ダンパー
4:ハウジング
6:回転体
8:作動子
10:端板
12:外側壁
16:内側壁
22:内側壁の外周面
24:外側壁の内周面
26:作動子移動経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6