(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】ストレス関連障害を治療するための組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/198 20060101AFI20221107BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221107BHJP
A61K 31/5513 20060101ALI20221107BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20221107BHJP
A61K 38/095 20190101ALI20221107BHJP
A61K 31/197 20060101ALI20221107BHJP
A61K 31/27 20060101ALI20221107BHJP
A61K 31/4178 20060101ALI20221107BHJP
A61K 31/135 20060101ALI20221107BHJP
A61K 31/138 20060101ALI20221107BHJP
A61K 31/36 20060101ALI20221107BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20221107BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20221107BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
A61K31/198
A61K45/00
A61K31/5513
A61K31/573
A61K38/095
A61K31/197
A61K31/27
A61K31/4178
A61K31/135
A61K31/138
A61K31/36
A61K31/137
A61P25/18
A61P43/00 121
A61P43/00 125
(21)【出願番号】P 2020524727
(86)(22)【出願日】2018-07-19
(86)【国際出願番号】 US2018042874
(87)【国際公開番号】W WO2019018633
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-06-18
(32)【優先日】2018-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520019827
【氏名又は名称】ホフマン・テクノロジーズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ロスマン,ジョン
【審査官】吉川 阿佳里
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-538254(JP,A)
【文献】特開昭54-062325(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0193169(US,A1)
【文献】国際公開第2012/123819(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0029892(US,A1)
【文献】BIOL PSYCHIATRY,2006年,Vol. 60,pp. 767-776
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61P 1/00-43/00
A61K 45/00-45/08
A61K 38/00-38/58
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心的外傷後ストレス障害を、その治療を必要とする対象において治療するのに使用するための、少なくとも一つのチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬を含む組成物であって、
当該チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬が、α-メチル-L-チロシン、α-メチル-D-チロシン、及びα-メチル-DL-チロシンの内の一つ又は複数である、前記組成物。
【請求項2】
前記少なくとも一つのチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬がラセミ体のα-メチル-DL-チロシンである、
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
α-メチル-DL-チロシンが、経口、経鼻、皮下、静脈内、局所、経皮、経膣、直腸
投与、又はそれらの任意の組合せ用として製剤化される、請求項
2に記載の組成物。
【請求項4】
50~1500mgのα-メチル-DL-チロシンを含む、
請求項2又は3に記載の組成物。
【請求項5】
α-メチル-DL-チロシンが3つの分割された一回分投薬量に製剤化されている、
請求項2~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも一つのチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬がα-メチル-L-チロシン(メチロシン)である、
請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも一つのチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬がα-メチル-D-チロシンである、
請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
一つ又は複数のストレスモジュレーターをさらに含
み、当該一つ又は複数のストレスモジュレーターが、抗うつ薬、バソプレシン誘導体、神経調節薬、アセチルコリン誘導薬、ベンゾジアゼピン、グルココルチコイド又はカンナビノイドである、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
ストレスモジュレーターがPTSDの治療に有用である、
請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
バソプレシン誘導体がバソプレシン又はデスモプレシンである、
請求項8に記載の組
成物。
【請求項11】
神経調節薬が、GABA、リバスチグミン、又はピロカルピンである、
請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
抗うつ薬が、選択的セロトニン再取込み阻害薬(SSRI)、セロトニン-ノルエピネ
フリン再取込み阻害薬(SNRI)、又は三環系抗うつ薬である、
請求項8に記載の組成物。
【請求項13】
抗うつ薬が、セルトラリン、フルオキセチン、パロキセチン、又はベンラファキシンで
ある、
請求項8に記載の組成物。
【請求項14】
前記チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬がラセミ体のα-メチル-DL-チロシンであり、ストレスモジュレーターがデスモプレシン及びGABAである、
請求項8に記載の組成物。
【請求項15】
α-メチル-DL-チロシン、デスモプレシン、及びGABAを含む、
請求項8に記載の組成物。
【請求項16】
ストレスモジュレーターが、経口、経鼻、皮下、静脈内、局所、経皮、経膣、又は直腸
投与、又はそれらの任意の組合せ用として製剤化される、
請求項8~15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
ストレスモジュレーターが、1つ、2つ、3つ、又は4つの一回分投薬量に製剤化され
ている、
請求項8~16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
ストレスモジュレーターが毎日投与用に製剤化されている、
請求項8~17のいずれ
か1項に記載の組成物。
【請求項19】
前記チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬がα-メチル-DL-チロシンである、
請求項8~18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
侵入思考、悪夢、フラッシュバック、心的外傷的出来事を想起させるきっかけに曝露さ
れた後の精神的苦痛、心的外傷的出来事を想起させるきっかけに曝露された後の身体的反
応、心的外傷的出来事に関連する思考又は感情、心的外傷的出来事に関連する想起、心的
外傷的出来事の重要な側面の想起不能、自分自身又は世界に対する過度に否定的な思考及
び思い込み、心的外傷的出来事を生じさせたことについての自己又は他者への誇張された
非難、否定的(陰性)感情、活動への関心の減退、孤立の感覚、肯定的感情(陽性情動)
を経験することの困難さ、苛立ち又は攻撃(激しい怒り)、危険な又は破壊的行動、過度
の警戒心、過剰な驚愕反応、集中困難、及び睡眠障害の内の少なくとも一つを低減する、
請求項1~
19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
さらに、精神療法、認知行動療法、眼球運動による脱感作と再処理(EMDR)療法、
対人関係療法、理学療法、遊戯療法、又はそれらの組合せを提供することを含む、請求項
1~
20のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
[0001]本願は、2017年7月19日出願の米国特許出願第15/653,837号及び2018年2月9日出願の米国仮特許出願第62/628,687号に基づく優先権の利益を主張し、それらの開示内容を引用によって本明細書に援用する。
【技術分野】
【0002】
[0002]本発明は、一般的に、心的外傷後ストレス障害(これに限定されない)を含むストレス関連障害を治療するための組成物、キット、及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]アメリカ精神医学会は、心的外傷後ストレス障害(“PTSD”)を、自然災害、重大事故、テロ行為、戦争/戦闘、レイプ又はその他の個人的暴行などの衝撃的な(心の傷となるような)出来事を経験又は目撃した人に起こりうる精神障害と定義している。PTSDは、かつては砲弾ショック又は戦争神経症症候群と呼ばれていたが、典型的には、性的暴行や身体的暴行、最愛の人の突然死、事故、戦争、又は自然災害のような、強い不安、無力感、又は恐怖を引き起こす衝撃的な辛い体験の持続的影響である。犠牲者の家族もPTSDを発症する可能性があり、救急隊員及びレスキュー隊員も同様である。
【0004】
[0004]衝撃的な出来事を経験した大方の人は、ショック、怒り、神経過敏、恐怖、及びさらには罪悪感を含む反応を示す。大部分の人の場合、これらの感情は時間と共に消失する。しかし、PTSD患者の場合、これらの感情は持続及びさらには増大して、通常の生活が送れないほど強いものとなる。
【0005】
[0005]PTSDを患う人は、典型的には、異常なストレスホルモン濃度を有する。研究によれば、PTSDの個人は、PTSDでない個人よりコルチゾールの濃度が低く、エピネフリン及びノルエピネフリンの濃度は平均より高い。
【0006】
[0006]PTSDを治療するための改良された組成物及び方法を求める需要が存在する。
【発明の概要】
【0007】
[0007]本発明は、PTSD及びその他のストレス関連障害をそれを必要とする対象において治療するための方法、組成物、及びキットを提供する。一定の態様において、当該方法は、対象に、有効量のチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬を投与することを含む。他の態様において、本発明は、対象に、有効量の一つ又は複数のストレスモジュレーター、例えばバソプレシン、バソプレシン誘導体、アセチルコリン誘導薬、γ-アミノ酪酸(GABA)、及び不安又は興奮の治療に有用であることが知られているその他の薬剤を投与することをさらに含む方法を提供する。
【0008】
[0008]本発明はまた、エピネフリン及びノルエピネフリンの一つ又は複数の濃度をそれを必要とする対象において低減するための方法も提供する。一定の態様において、当該方法は、対象に、有効量のチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬を投与することを含む。他の態様において、本発明は、対象に、有効量のチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬と一つ又は複数のストレスモジュレーターとを投与することをさらに含む方法を提供する。
【0009】
[0009]なお更なる態様において、本発明は、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬と一つ又は複数のストレスモジュレーターとを含む医薬組成物を提供する。また、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬及び一つ又は複数のストレスモジュレーターを、それらのための包装と共に含むキットも提供する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0010]本発明の主題は、本開示の一部を形成する以下の詳細な説明を参照することによって、より容易に理解できるであろう。本発明は、本明細書中に記載及び/又は示されている特定の製品(生成物)、方法、条件又はパラメーターに限定されないこと、そして本明細書中で使用されている用語は、単なる例として特定の態様を説明するためのものであって、特許請求されている本発明を制限する意図はないことは理解されるはずである。
【0011】
[0011]本明細書においては別途定義されない限り、本願に関連して使用されている科学用語及び技術用語は、当業者によって一般的に理解されている意味を有するものとする。さらに、文脈上他の意味に解釈すべき場合を除いて、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0012】
[0012]上記及び本開示全体を通じて使用されている下記の用語及び略語は、別途記載のない限り、下記の意味を有すると理解されるものとする。
【0013】
[0013]本開示において、文脈上明白に他の意味を示していない限り、単数形の“a”、“an”及び“the”はその複数形の指示対象を含み、特定の数値への言及は少なくともその特定の値を含む。従って、例えば、“ある一つの化合物”への言及は、一つ又は複数のそのような化合物及び当業者に公知のその等価物への言及でもあるといったことなどである。“複数”という用語は、本明細書においては、一つより多いことを意味する。値の範囲が表現されている場合、別の態様は、一つの特定値から及び/又は他の特定値までを含む。同様に、値が“約”という先行詞の使用によって近似値として表されている場合、その特定の値は別の態様を形成することは理解されるであろう。全ての範囲は包括的であり且つ結合可能である。
【0014】
[0014]本明細書中で使用されている“成分”、“組成物”、“化合物の組成物”、“化合物”、“薬物”、“薬理学的に活性な薬剤(薬理活性物質)”、“活性薬”、“治療薬(therapeutic)”、“療法”、“治療”、又は“医薬(medicament)”という用語は、本明細書においては、対象(ヒト又は動物)に投与された場合に、局所及び/又は全身作用により所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を誘導する化合物(一つ又は複数)又は組成物のことを言うのに互換的に使用される。
【0015】
[0015]本明細書中で使用されている“治療”又は“療法”という用語(ならびにそれらの異なる語形)は、予防的(preventative, prophylactic)、治癒的、又は緩和的治療を含む。本明細書中で使用されている“治療する”という用語は、状態、疾患又は障害の少なくとも一つの有害作用又は悪影響又は症状を緩和又は軽減することを含む。治療又は療法の結果としての有益な又は所望の臨床結果は、検出可能であるかどうかに関わらず、症状の緩和、疾患又は状態の程度の縮小、疾患又は状態の安定化(すなわち疾患又は状態が悪化しない)、疾患又は状態の進行の遅延又は緩徐化、疾患又は状態の改善又は緩和、及び疾患又は状態の寛解(部分的であれ又は全体的であれ)などであるが、これらに限定されない。治療を必要とする人は、既にその疾患又は状態を有する者のほか、その疾患又は状態に罹りやすい者又はその疾患又は状態を予防すべき者などである。
【0016】
[0016]“アルキル”という用語は、本明細書においては、直鎖及び分枝鎖飽和脂肪族炭化水素基の両方を言うのに使用される。一部の態様において、アルキル基は1~約6個の炭素原子を有する。他の態様において、アルキル基は1~約4個の炭素原子を有する、すなわち“低級アルキル”である。
【0017】
[0017]“アルケニル”という用語は、少なくとも1個の二重結合を含有するアルキル基のことを言う。一部の態様において、アルケニル基は少なくとも1個の二重結合を含有する。更なる態様においてアルケニル基は1個又は2個の二重結合を含有する。なお更なる態様において、アルケニル基は1個の二重結合を含有する。他の態様において、アルケニル基は1~約6個の炭素原子を有する。他の態様において、アルケニル基は1~約4個の炭素原子を有する、すなわち低級“アルケニル”である。
【0018】
[0018]本明細書中で使用されている“ハロゲン”という用語は、Cl、Br、F、又はI基のことを言う。
【0019】
[0019]本明細書中に記載されているようにして治療される疾患又は障害は、心的外傷後ストレス障害、例えばPTSDである。国立PTSDセンターによれば、心的外傷後ストレス障害には主に5つのタイプがある。すなわち、通常のストレス反応、急性ストレス障害、単純性PTSD(uncomplicated PTSD)、併発性PTSD(comorbid PTSD)及び複雑性PTSD(complex PTSD)である。本明細書の目的のために、PTSDは公知のタイプ及びサブタイプのいずれも含まれうる。一部の態様において、PTSDは通常のストレス反応PTSDである。更なる態様において、PTSDは急性ストレス障害PTSDである。他の態様において、PTSDは単純性PTSDである。なお更なる態様において、PTSDは併発性PTSDである。さらに他の態様において、PTSDは複雑性PTSDである。
【0020】
[0020]例えばPTSDに関して、有害作用又は悪影響又は症状は、アメリカ精神医学会の診断統計マニュアル第5版(DSM-5、DSM-V)(その内容は引用によって本明細書に援用する)でPTSDに関して規定されている診断基準の項目のいずれかを含みうる。それらは、これらに限定されないが、侵入思考、悪夢、フラッシュバック、心的外傷的出来事を想起させるきっかけ(traumatic reminders)に曝露された後の精神的苦痛、及び心的外傷的出来事を想起させるきっかけに曝露された後の身体的反応の少なくとも一つ;心的外傷的出来事に関連する思考又は感情及び心的外傷的出来事に関連する想起の少なくとも一つ;心的外傷的出来事の重要な側面の想起不能、自分自身又は世界に対する過度に否定的な思考及び思い込み、心的外傷的出来事を生じさせたことについての自己又は他者への誇張された非難、否定的(陰性)感情、活動への関心の減退、孤立の感覚、及び肯定的感情(陽性情動)を経験することの困難さの少なくとも二つ;ならびに苛立ち又は攻撃(激しい怒り)、危険な又は破壊的行動、過度の警戒心(hypervigilance)、過剰な驚愕反応、集中困難、及び睡眠障害の少なくとも二つなどである。PTSDの症状、又は本開示の症状のいずれかの評価は、当該技術分野で公知の方法を用いて実施できる。
【0021】
[0021]上記及び本開示全体を通じて使用されている“有効量”という用語は、関係する障害、状態、又は副作用の治療に関して所望の結果を達成するために有効な量(用量及び必要な期間)のことを言う。当然のことながら、本発明の成分の有効量は、選択される特定の化合物、成分又は組成物、投与経路、及び各人に所望の結果を引き出す成分の能力に関してのみならず、緩和される病状又は状態の重症度、個人のホルモンレベル、年齢、性別、体重、患者の状態、治療される病的状態の重症度、併用薬物療法、特定の患者がその後従う特別食、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトであるか又は動物であるか、又は治療が予防的治療であるか又は治癒的治療であるかといった要因、及び当業者が認識するであろうその他の要因などに関しても患者ごとに変動し、適切な投与量は主治医の判断となるであろうことは理解されるはずである。投与計画は、安全性及び有効性を最適化するために当業者に公知の日常法を用いて、改良された治療応答が提供されるように調整することができる。有効量は、治療上の有益効果が、成分の何らかの有毒又は有害作用を上回る量でもある。
【0022】
[0022]“薬学的に許容可能な”とは、健全な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、又はその他の問題合併症なしに、ヒト及び動物の組織と接触するのに適切な、合理的な利益/リスク比に見合う化合物、材料、組成物、及び/又は剤形のことを言う。
【0023】
[0023]本発明の範囲内で、開示された化合物は薬学的に許容可能な塩の形態で製造できる。“薬学的に許容可能な塩”とは、親化合物がその酸塩又塩基塩の製造により改変されている開示化合物の誘導体のことを言う。薬学的に許容可能な塩の例は、アミンなどの塩基性残基の鉱酸又は有機酸の塩;カルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩又は有機塩などであるが、これらに限定されない。薬学的に許容可能な塩は、例えば非毒性の無機酸又は有機酸から形成された親化合物の従来型の非毒性塩又は第四級アンモニウム塩などである。例えば、そのような従来型の非毒性塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸から誘導される塩;及び酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸などの有機酸から製造される塩などである。これらの生理学的に許容可能な塩は、当該技術分野で公知の方法、例えば、遊離アミン塩基を過剰の酸と共に水性アルコール中に溶解することにより、又は遊離カルボン酸を水酸化物などのアルカリ金属の塩基又はアミンで中和することにより製造される。
【0024】
[0024]本明細書中に記載の化合物は代替の形態で製造されてもよい。例えば、多くのアミノ含有化合物は酸付加塩として使用又は製造できる。多くの場合、そのような塩は化合物の単離及び取扱い特性を改良する。例えば、試薬、反応条件などに応じて、本明細書中に記載の化合物は、例えば、それらの塩酸塩又はトシル酸塩として使用又は製造できる。同形の結晶形、全てのキラル形及びラセミ体、N-オキシド、水和物、溶媒和物、及び酸塩水和物も本発明の範囲内に含まれると想定される。
【0025】
[0025]本発明の一定の酸性又は塩基性化合物は双性イオンとして存在しうる。遊離酸、遊離塩基及び双性イオンを含む全ての形態の化合物が本発明の範囲内に含まれると想定される。アミノ基とカルボキシ基の両方を含有する化合物は、しばしばそれらの双性イオン形と平衡状態で存在することは当該技術分野では周知である。従って、例えばアミノ基及びカルボキシ基の両方を含有する本明細書中に記載のいずれの化合物も、それらの対応する双性イオンへの参照も含む。
【0026】
[0026]“立体異性体”という用語は、同一の化学組成を有するが、空間における原子又は基の配置に関して異なる化合物のことを言う。“エナンチオマー”という用語は、重ね合わせることができない互いの鏡像である立体異性体のことを言う。
【0027】
[0027]“投与する”という用語は、本発明の化合物又は組成物を直接投与するか、又は体内で等価の量の活性化合物又は物質を形成するプロドラッグ、誘導体又は類似体を投与することを意味する。
【0028】
[0028]“対象”、“個人”、及び“患者”という用語は、本明細書中では互換的に使用され、本発明による医薬組成物を用いて治療(予防的治療を含む)が提供される動物、例えばヒトのことを言う。本明細書で使用されている“対象”という用語は、ヒト及びヒト以外の動物のことをいう。“ヒト以外の動物”及び“ヒト以外の哺乳動物”という用語は本明細書中では互換的に使用され、全ての脊椎動物、例えばヒト以外の霊長類(特に高等霊長類)、ヒツジ、イヌ、齧歯類(例えばマウス又はラット)、モルモット、ヤギ、ブタ、ネコ、ウサギ、ウシ、ウマなどの哺乳動物、及び、爬虫類、両生類、ニワトリ、及びシチメンチョウなどの非哺乳動物を含む。一部の態様において、患者はヒトである。他の態様において、患者はヒト以外の哺乳動物である。更なる態様において、患者はヒト以外のトランスジェニック哺乳動物である。
【0029】
[0029]本明細書中で使用されている“阻害薬”という用語は、タンパク質、ポリペプチド又は酵素の発現又は活性を阻害するが、必ずしも発現及び/又は活性の完全阻害を意味するわけではない化合物を含む。どちらかと言えば、阻害は、タンパク質、ポリペプチド又は酵素の発現及び/又は活性を、所望の効果を生じるのに足る程度及び期間阻害することを含む。
【0030】
[0030]作用の何らかの特定機序に束縛されるつもりはないが、本発明の方法は、血流中に分泌されるカテコールアミンの量を減少させることによって、PTSD及びその他のストレス関連障害を治療すると考えられている。
【0031】
[0031]対象における腸PTSD(intestinal PTSD)及びその他のストレス関連障害の治療法を提供する。そのような方法は、それを必要とする対象に、有効量のチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬を投与することを含みうる。他のそのような方法は、それを必要とする対象に、有効量のチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬と、有効量の一つ又は複数の追加の治療薬、例えば一つ又は複数の追加の“ストレスモジュレーター(stress modulator)”を投与することを含む。
【0032】
[0032]本明細書中に開示されている方法に従って、下記症状の少なくとも一つの持続時間及び/又は重症度が低減される。すなわち、侵入思考、悪夢、フラッシュバック、心的外傷的出来事を想起させるきっかけに曝露された後の精神的苦痛、心的外傷的出来事を想起させるきっかけに曝露された後の身体的反応、心的外傷的出来事に関連する思考又は感情、心的外傷的出来事に関連する想起、心的外傷的出来事の重要な側面の想起不能、自分自身又は世界に対する過度に否定的な思考及び思い込み、心的外傷的出来事を生じさせたことについての自己又は他者への誇張された非難、否定的(陰性)感情、活動への関心の減退、孤立の感覚、肯定的感情(陽性情動)を経験することの困難さ、苛立ち又は攻撃(激しい怒り)、危険な又は破壊的行動、過度の警戒心、過剰な驚愕反応、集中困難、及び睡眠障害などである。
【0033】
[0033]このチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬と追加の治療薬(例えばストレスモジュレーター)は、同時、別個、又は順次投与できる。一部の態様において、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬と追加の薬剤(例えばストレスモジュレーター)は同時に投与される。更なる態様において、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬と追加の薬剤(例えばストレスモジュレーター)は別個に投与される。他の態様において、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬と追加の薬剤(例えばストレスモジュレーター)は順次投与される。一部の側面において、追加の薬剤(例えばストレスモジュレーター)は就寝前に投与される。
【0034】
[0034]チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬又はチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬と追加の薬剤(例えばストレスモジュレーター)の投与は、経口、経鼻、皮下、静脈内、筋肉内、経皮、経膣、直腸又はそれらの任意の組合せを含む様々な経路を通じて行うことができる。経皮投与は、例えば、オレイン酸、1-メチル-2-ピロリドン、ドデシルノナオキシエチレングリコールモノエーテルを用いて実施できる。
【0035】
[0035]本発明の他の適切な態様において、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬と追加の薬剤(例えばストレスモジュレーター)は、毎日、又は5~7日間のチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬と追加の薬剤(例えばストレスモジュレーター)の投与と、1~2日間のチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬とストレスモジュレーターの非投与からなるサイクルで投与することができる。一部の態様において、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬は毎日投与される。他の態様において、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬と追加の薬剤(例えばストレスモジュレーター)は毎日投与される。本発明の一部の適切な態様において、前記サイクルの少なくとも6回の投与が実施される。一部の適切な態様において、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬と追加の薬剤(例えばストレスモジュレーター)は分割投与で与えられる。他の態様において、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬は、1日1回、2回、3回、又は4回投与される。
【0036】
[0036]本発明の一部の適切な態様において、約25~約500mgのチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬が単回投与又は分割投与のいずれかで投与される。一部の側面において、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬の投与量は約1mg~約4gである。他の側面において、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬の投与量は約3mg~約1000mgである。更なる側面において、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬の用量は、約5mg~約500mg、約5~約100mg、約10~約100mg、約10~約100mg、約10~約90mg、約10~約80mg、約10~約70mg、約10~約60mg、約10~約50mg、約10~約40mg、約10~約30mg、約10~約25mg、又は約10~約20mgである。一部の適切な態様において、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬の投与量は、約25mg、約10mg、約15mg、約20mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、又は約100mgである。更なる側面において、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬の投与量は約60mgである。他の側面において、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬の投与量は、経口投与の場合、約60mgである。なお更なる側面において、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬の投与量は、2mg/mL懸濁液約0.25mLである。さらに他の側面において、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬の投与量は、皮下投与の場合、2mg/mL懸濁液約0.25mLである。
【0037】
[0037]好適なチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬は当該技術分野で周知であり、例えば、米国特許出願公開第2015/0290279号、2015/0216827号、2015/0111937号、2015/0111878号、2013/0184214号、及び20130183263号;米国特許第8,481,498号、9,308,188号、及び9,326,962号;ならびに国際特許出願公開第WO2015/061328号に十分に記載されている。これらは引用によってそれらの全文を本明細書に援用する。当業者に公知の任意の適切なチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬が使用できる。
【0038】
[0038]一定の態様において、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬は、チロシン誘導体である。チロシン誘導体は、立体異性体及びエナンチオマーを含む様々な異性体の形態で存在できる。チロシン誘導体は、例えば、L型又はD型で存在できる。チロシン誘導体は、例えば、ラセミ体でも存在できる。代表的なチロシン誘導体は、メチル (2R)-2-アミノ-3-(2-クロロ-4 ヒドロキシフェニル)プロパノエート、D-チロシンエチルエステルヒドロクロリド、メチル (2R)-2-アミノ-3-(2,6-ジクロロ-3,4-ジメトキシフェニル)プロパノエート H-D-Tyr(TBU)-アリルエステルHCl、メチル (2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-4,5-ジメトキシフェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(2-クロロ-3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(4-[(2-クロロ-6-フルオロフェニル)メトキシ]フェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(2-クロロ-3,4-ジメトキシフェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-5-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパノエート、ジエチル 2-(アセチルアミノ)-2-(4-[(2-クロロ-6-フルオロベンジル)オキシ]ベンジルマロネート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-4-メトキシフェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-4-ヒドロキシ-5-メトキシフェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(2,6-ジクロロ-3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパノエート、H-DL-tyr-OMe HCl、H-3,5-ジヨード-tyr-OMe HCl、H-D-3,5-ジヨード-tyr-OMe HCl、H-D-tyr-OMe HCl、D-チロシンメチルエステルヒドロクロリド、D-チロシン-OMe HCl、メチル D-チロシネートヒドロクロリド、(2R)-2-アミノ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、(2R)-2-アミノ-3-(4-ヒドロキシフェニル)メチルエステルヒドロクロリド、メチル (2R)-2-アミノ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパノエートヒドロクロリド、メチル (2R)-2-アザニル-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパノエートヒドロクロリド、3-クロロ-L-チロシン、3-ニトロ-L-チロシン、3-ニトロ-L-チロシンエチルエステルヒドロクロリド、DL-m-チロシン、DL-o-チロシン、Boc-Tyr(3,5-I2)-OSu、Fmoc-tyr(3-NO2)-OH、及びα-メチル-DL-チロシンの一つ又は複数を含む。本発明の一定の態様において、チロシン誘導体は以下に示すようなα-メチル-L-チロシンである。
【0039】
【化1】
[0039]他の態様において、チロシン誘導体はα-メチル-D-チロシンである。他の態様において、チロシン誘導体は以下に示すようなラセミ体のα-メチル-DL-チロシンである。
【0040】
【化2】
[0040]α-メチル-DL-チロシンは、本明細書においては、DNP-01又はL1-79又はAMPT又はα-メチル-パラ-チロシンとも呼ばれる。言い換えれば、α-メチル-DL-チロシンの別名は、例えば、DNP-01、L1-79、AMPT、及びα-メチル-パラ-チロシンを含む。
【0041】
[0041]一部の態様において、チロシン誘導体は、α-メチル-L-チロシン又はα-メチル-DL-チロシンの構造変異体である。α-メチル-L-チロシン又はα-メチル-DL-チロシンの構造変異体は、当該技術分野で周知であり、例えば米国特許第4,160,835号に十分に記載されている。前記特許は引用によってその全文を本明細書に援用する。
【0042】
[0042]他の態様において、チロシン誘導体は、式:
【0043】
【化3】
を有するアリールアラニン化合物である。上記式中、R
1は、H、メチル又はエチルエステル基、又はC
1-4アルキルであり;R
2は、H、低級アルケニル、スクシンイミド、又はC
1-4アルキルであり;R
3は、下記式:
【0044】
【化4】
[式中、Y
1は、パラ位に位置し、H、ヒドロキシ、メチルエーテル、ジメチルエーテル、トリメチルエーテル、又は非置換もしくはハロゲン置換ベンジルであり;Y
2及びY
3は、同じであるか又は異なり、片方又は両方のY
2及びY
3はメタ位か又はオルト位のいずれかに位置し、Y
2及びY
3は、H、ヒドロキシ、ハロゲン、メチルエーテル、又はニトロである]の置換ベンゼン環であり;そしてR
4は、水素、アセチル、tert-ブチルオキシカルボニル又はフルオレニルメチルオキシカルボニルである。一部の態様において、R
2は低級アルキルである。他の態様において、Y
1及びY
2は、同じであるか又は異なり、水素、シアノアミノ、カルボキシル、シアノ、チオカルバモイル、アミノメチル、グアニジノ、ヒドロキシ、メタンスルホンアミド、ニトロ、アミノ、メタンスルホニルオキシ、カルボキシメトキシ、ホルミル、メトキシ又は置換もしくは非置換5-又は6-員の、炭素及び一つ又は複数の窒素、硫黄又は酸素原子を含有するヘテロサイクリック環であり、そのようなヘテロサイクリック環の具体例は、ピロール-1-イル、2-カルボキシピロール-1-イル、イミダゾール-2-イルアミノ、インドール-1-イル、カルバゾール-9-イル、4,5-ジヒドロ-4-ヒドロキシ-4-トリフルオロメチルチアゾール-3-イル、4-トリフルオロメチルチアゾール-2-イル、イミダゾール-2-イル及び4,5-ジヒドロイミダゾール-2-イルであるが、(a)Y
1及びY
2は両方ともヒドロキシではあり得ず、(b)Y
1及びY
2は両方とも水素ではあり得ず、そして(c)Y
1及びY
2の一方が水素の場合、他方はヒドロキシルではあり得ない。一例において、R
3は、式:
【0045】
【化5】
を有する置換又は非置換ベンゾヘテロサイクリック環であり、そのベンゾヘテロサイクリック環は、インドリン-5-イル、1-(N-ベンゾイルカルバムイミドイル)-インドリン-5-イル、1-カルバムイミドイルインドリン-5-イル、1H-2-オキシインドール-5-イル、インドール-5-イル、2-メルカプトベンズイミダゾル-5(6)-イル、2-アミノベンズイミダゾール-5(6)-イル、2-メタンスルホンアミド-ベンズイミダゾール-5(6)-イル、1H-ベンゾオキサゾール-2-オン-6-イル、2-アミノベンゾチアゾール-6-イル、2-アミノ-4-メルカプトベンゾチアゾール-6-イル、2,1,3-ベンゾチアジアゾール-5-イル、1,3-ジヒドロ-2,2-ジオキソ-2,1,3-ベンゾチアジアゾール-5-イル、1,3-ジヒドロ-1,3-ジメチル-2,2-ジオキソ-2,1,3-ベンゾチアジアゾール-5-イル、4-メチル-2(1H)-オキソキノリン-6-イル、キノキサリン-6-イル、2-ヒドロキシキノキサリン-6-イル、2-ヒドロキシキノキサリン-7-イル、2,3-ジヒドロキシキノキサリン-6-イル、又は2,3-ジヒドロ-3(4H)-オキソ-1,4-ベンゾオキサジン-7-イルである。別の態様において、R
3は、式:
【0046】
【化6】
を有する置換又は非置換ヘテロサイクリック環であり、そのヘテロサイクリック環は、5-ヒドロキシ-4H-ピラン-4-オン-2-イル、2-ヒドロキシピリダ-4-イル、2-アミノピリダ-4-イル、2-カルボキシピリダ-4-イル、又はテトラゾロ[1,5-a]ピリダ-7-イルである。他の態様において、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬はアクアヤマイシン(aquayamycin)である。更なる態様において、トリプシンヒドロキシラーゼ阻害薬は、式:
【0047】
【0048】
[0043]更なる態様において、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬はオウデノン(oudenone)である。さらに他の態様において、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬は、式:
【0049】
【0050】
[0044]当業者に公知の他の適切なチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬も使用できる。他のチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬の例は、例えば、これらに限定されないが、シクロヘキシミド、アニソマイシン(anisomycin)、3-ヨード-L-チロシン、ピラトリオン(pyratrione)、カテコール又はトリフェノール環系を有するフェニルカルボニル誘導体、例えば、フェネチルアミン及び没食子酸誘導体、4-イソプロピルトロポロン、2-(4-チアゾリル)ベンズイミダゾール、8-ヒドロキシキノリン、o-フェナントロリン、5-ヨード-8-ヒドロキシキノリン、ビリルビン、2,9-ジメチル-1,10-フェナントロリン、α-α’-ジピリジル、ジベンゾ[f,h]キノキサリン、2,4,6-トリピリジル-s-トリアジン、エチル 3-アミノ-4H-ピロロ-イソオキサゾール-5(6H)-カルボキシレート、α-ニトロソ-β-ナフトール、ナトリウムジエチルジチオカルバメート、及びエチレンジアミン四酢酸などである。R Hochster,Metabolic Inhibitors V4:A Comprehensive Treatise 52 Elsevier(2012)参照。
【0051】
[0045]本発明の一定の方法において、60mgのチロシン誘導体を経口投与し、2mg/mLのチロシン誘導体懸濁液0.25mLを皮下投与する。好ましくは、50~1500mgのα-メチル-DL-チロシンを毎日投与する。
【0052】
[0046]他の側面において、本開示では、治療上有効量の一つ又は複数の追加の治療薬、例えばPTSDの治療に有用な一つ又は複数の“ストレスモジュレーター”の投与についても記載する。代表的な治療薬、例えばストレスモジュレーターは、バソプレシン、バソプレシン誘導体、アセチルコリン誘導薬、グルココルチコイド、カンナビノイド、神経調節薬、又は不安もしくは興奮の治療に有用であることが知られているその他の薬剤などである。
【0053】
[0047]バソプレシン誘導体は、1-デアミノ-8-D-アルギニンバソプレシン(DDAVP)、1-デアミノ-4-バリン-8-D-アルギニンバソプレシン(DVDAVP)及び8-アルギニンバソプレシン(AVP)などである。
【0054】
[0048]アセチルコリン誘導薬は、直接及び間接両方のアセチルコリンアゴニストを含み、例えば、メラノタン、バソプレシン、デスモプレシン、ベタネコール(bethanechol)、カルバコール(carbachol)、セビメリン(cevimeline)、ピロカルピン(pilocarpine)、アンベノミウム(ambenomium)、デメカリウム(demecarium)、ドネゼピル(donezepil)、エドロホニウム(edrophonium)、ガランタミン、ネオスチグミン、フィゾスチグミン、ピリドスチグミン、リバスチグミン、タクリン、及びエコチオフェート(echotiophate)などである(それらの塩を含む)。
【0055】
[0049]代表的なベンゾジアゼピン薬は、クロラゼプ酸(clorazepate)、ジアゼパム、フルラゼパム、ハラゼパム、プラゼパム、ロラゼパム、ロルメタゼパム、オキサゼパム、テマゼパム、クロナゼパム、フルニトラゼパム、ニメタゼパム、ニトラゼパム、アジナゾラム、アルプラゾラム、エスタゾラム、トリアゾラム、クリマゾラム、ロプラゾラム、及びミダゾラムなどである。
【0056】
[0050]他の態様において、一つ又は複数の追加の治療薬、例えばストレスモジュレーターは、抗うつ薬、例えば、これらに限定されないが、選択的セロトニン再取込み阻害薬(SSRI)、セロトニン-ノルエピネフリン再取込み阻害薬(SNRI)、又は三環系抗うつ薬である。抗うつ薬の追加例は、セルトラリン(Zoloft)、フルオキセチン、パロキセチン(Paxil)、ベンラファキシン、又はプラゾシンなどであるが、これらに限定されない。代表的なSSRIは、シタロプラム、フルボキサミン、エスシタロプラム、パロキセチン、セルトラリン、及びフルオキセチンなどである(それらの塩を含む)。
【0057】
[0051]一部の態様において、治療上有効濃度の他の神経調節薬が、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬に併せて追加できる。そのような神経調節薬の例は、これらに限定されないが、バソプレシン又はデスモプレシンなどの類似体、及び有効濃度のアセチルコリン又はガンマ-アミノ酪酸(GABA)を刺激する薬剤などである。
【0058】
[0052]一つ又は複数のストレスモジュレーターの投与量は、治療上有効な又は臨床的に許容可能な量を含みうる。別の例において、一つ又は複数の追加の治療薬、例えば“ストレスモジュレーター”の投与量は、本明細書中に記載されているチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬の効果を補完又は増強する量である。
【0059】
[0053]本発明の一部の態様において、方法はさらに、対象におけるストレス関連障害の一つ又は複数の症状及び/又は胆汁酸、インスリン、グルカゴン様ペプチド、トリグリセリド、又は脂肪酸を含む一つ又は複数の代謝作用物質(metabolic agents)のレベルを評価することを含む。この評価ステップは、前記投与ステップの前又は前記投与ステップの後に実施できる。
【0060】
[0054]対象におけるカテコールアミンのレベルは当該技術分野で公知の任意の方法を用いて決定できるが、血漿中及び/又は尿中のそれらのレベルを決定する方法が典型的には採用される。
【0061】
[0055]一部の態様において、投与は、当業者に公知の任意の適切な経路によって実施できる。薬学的活性分子、又は、一つもしくは複数の薬学的活性分子を含有する組成物の投与は、経口、経鼻、非経口(例えば、皮下、静脈内、髄内、関節内、筋肉内、又は腹腔内)、局所、経皮、経膣、直腸又はそれらの任意の組合せを含む様々な経路を通じて実施できる。経皮投与は、例えば、オレイン酸、1-メチル-2-ピロリドン、ドデシルノナオキシエチレングリコールモノエーテルを用いて実施できる。一部の態様において、組成物は経口投与される(例えば、カプセル、懸濁液、又は錠剤で)。他の態様において、組成物は非経口投与される(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内)。更なる態様において、組成物は静脈内注入又は注射によって投与される。さらに他の態様において、組成物は筋肉内又は皮下投与される。一態様において、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬は別のPTSD治療薬と共投与される。別の態様において、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬は別のPTSD治療薬の投与とは独立に投与される。一態様において、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬は最初に投与され、次いで別のPTSD治療薬が投与される。別の態様においては、前記PTSD治療薬が最初に投与され、次いで前記チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬が投与される。
【0062】
[0056]チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬と別のPTSD治療薬の投与及び/又はその他の治療は、同時に、又は別個に、同じ又は異なる経路を通じて、同じ又は異なる時間に行うことができる。投与計画は、最適の所望反応(例えば、治療的又は予防的応答)を得るために調整できる。
【0063】
[0057]II.組成物
[0058]さらに、本明細書中に記載の化合物と一つ又は複数の薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物を提供する。本明細書において、“組成物”とは、薬学的に有効量の一つ又は複数の活性成分(例えば、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬、別のPTSD治療薬、又はそれらの組合せ)を含有する任意の組成物のことを言う。“薬学的に許容可能な担体”は、使用された投与量及び濃度でそれに暴露された細胞又は哺乳動物に対して非毒性である任意の賦形剤を含む。医薬組成物は一つ又は追加の治療薬を含んでいてもよい。生理学的に許容可能な塩形及び標準的な医薬製剤技術は当業者に周知である。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.参照。
【0064】
[0059]薬学的に許容可能な担体は、溶媒、分散媒、緩衝剤、コーティング、抗菌薬及び抗真菌薬、湿潤剤、保存剤、バガー(buggers)、キレート剤、抗酸化剤、等張剤及び吸収遅延剤などである。
【0065】
[0060]薬学的に許容可能な担体は、水;生理食塩水;リン酸緩衝生理食塩水;デキストロース;グリセロール;エタノール及びイソプロパノールなどのアルコール;リン酸、クエン酸及びその他の有機酸;アスコルビン酸;低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリシンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、又はデキストリンを含むその他の炭水化物;EDTA;ナトリウムなどの塩形成対イオン;及び/又はTWEEN、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICSなどの非イオン性界面活性剤;糖、マンニトール及びソルビトールなどのポリアルコール、及び塩化ナトリウムなどの等張剤;ならびにそれらの組合せなどである。
【0066】
[0061]医薬組成物は、例えば、固体、半固体、及び液体剤形を含む様々な形で製剤化できる。例えば、錠剤、ピル、粉末、液体溶液(例えば注射用及び注入用溶液)、分散液又は懸濁液、リポソーム及び坐剤などである。一部の態様において、組成物は、注射用又は注入用溶液の形態である。組成物は、経口、静脈内、動脈内、筋肉内、皮下、非経口、経粘膜、局所又は経皮投与に適切な形態である。組成物は、即時、制御、延長又は遅延放出組成物として製剤化することもできる。
【0067】
[0062]投与用製剤は、無菌の水性又は非水性溶液、懸濁液、及びエマルションも含みうる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、及びオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルである。水性担体は、水、アルコール性/水性の溶液、エマルション又は懸濁液、例えば生理食塩水及び緩衝化媒体などである。薬学的に許容可能な担体は、0.01~0.1M、好ましくは0.05Mのリン酸緩衝液又は0.8%生理食塩水などであるが、これらに限定されない。他の一般的な非経口用ビヒクルは、リン酸ナトリウム溶液、リンガー(リンゲル)のデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸加リンガー液、又は固定油などである。静脈内用のビヒクルは、流体及び栄養補給剤、電解質補給剤、例えばリンガーのデキストロースを基にしたものなどを含む。保存剤及びその他の添加剤、例えば抗微生物剤、抗酸化剤、キレート剤、及び不活性ガスなども存在しうる。
【0068】
[0063]注射用としても適切な医薬組成物は、無菌水溶液(水溶性の場合)又は分散液ならびに無菌注射用溶液又は分散液を即時調製するための無菌粉末を含む。そのような場合、組成物は無菌でなければならず、易注射性(easy syringability)が存在する程度に(容易に注射できる程度に)流体であるべきである。また、製造及び貯蔵条件下で安定であるべきであり、好ましくは、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用から守られる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)を含有する溶媒又は分散媒、及びそれらの適切な混合物でありうる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散液の場合、必要な粒径の維持により、及び界面活性剤の使用により、維持できる。本明細書中に開示された治療法で使用するのに適切な製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,第16版(1980)に記載されている。
【0069】
[0064]一部の態様において、組成物は、例えば、糖、ポリアルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、又は塩化ナトリウムなどの等張剤を含む。注射用組成物の吸収延長は、組成物中に吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを含めることによって達成できる。
【0070】
[0065]無菌溶液は、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬を、単独で又は他の活性薬と組み合わせて、必要に応じて本明細書中に列挙された一つの成分又は成分の組合せとともに適切な溶媒中に所要量で配合し、次いでろ過滅菌することによって調製できる。一般的に、分散液は、活性化合物を、基本的分散媒及び上記の必要なその他の成分を含有する無菌ビヒクルに配合することによって調製される。無菌注射用溶液を製造するための無菌粉末の場合、製造の一つの方法は真空乾燥及び凍結乾燥である。この方法により、活性成分と任意の追加の所望成分の粉末が、その事前滅菌ろ過溶液から得られる。注射用の製剤は、処理され、アンプル、バッグ、ボトル、シリンジ又はバイアルなどの容器に充填され、そして当該技術分野で公知の方法に従って無菌条件下で密封される。さらに、該製剤は包装され、米国特許出願公開第2002/0102208号(引用によってその全文を本明細書に援用する)に記載されているようなキットの形態で販売されうる。そのような製品は、同封の組成物がPTSDを患う又はその素因がある対象の治療に有用であることを示すラベル又は添付文書を有するのが好ましい。
【0071】
[0066]組成物は1回だけ投与されても、又は複数回投与されてもよい。複数回投与の場合、組成物は、例えば1日3回、1日2回、1日1回、2日に1回、週2回、毎週、2週間に1回、又は毎月投与されうる。
【0072】
[0067]他の態様において、1回のボーラス投与が行われうる。更なる態様において、数回の分割用量が時間をかけて投与されうる。さらに他の態様において、用量は、治療状況の緊急性に応じて、比例的に減少又は増加させてもよい。単位剤形は、本明細書においては、哺乳動物対象を治療するための単位投与量として適切な物理的に離散した(別個の)単位のことを言う。各単位は、所望の治療効果を生み出すために計算された所定量の活性化合物を含有しうる。一部の態様において、単位剤形は、活性化合物の独自の特徴及び達成される特定の治療的又は予防的効果によって決まる及びそれらに直接的に依存する。
【0073】
[0068]III.キット
[0069]また、本明細書において、本明細書中に記載のチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬と追加の薬剤(例えばストレスモジュレーター)を、それらのための包装と共に含むキットも提供する。チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬は、例えばチロシン誘導体でありうる。チロシン誘導体は、異性体の形態で存在できるチロシン誘導体を含みうる。チロシン誘導体は、そのL型又はそのD型のチロシン誘導体を含みうる。チロシン誘導体は、例えば、ラセミ体でも存在できる。代表的なチロシン誘導体は、メチル (2R)-2-アミノ-3-(2-クロロ-4 ヒドロキシフェニル)プロパノエート、D-チロシンエチルエステルヒドロクロリド、メチル (2R)-2-アミノ-3-(2,6-ジクロロ-3,4-ジメトキシフェニル)プロパノエート H-D-Tyr(TBU)-アリルエステルHCl、メチル (2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-4,5-ジメトキシフェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(2-クロロ-3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(4-[(2-クロロ-6-フルオロフェニル)メトキシ]フェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(2-クロロ-3,4-ジメトキシフェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-5-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパノエート、ジエチル 2-(アセチルアミノ)-2-(4-[(2-クロロ-6-フルオロベンジル)オキシ]ベンジルマロネート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-4-メトキシフェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-4-ヒドロキシ-5-メトキシフェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(2,6-ジクロロ-3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパノエート、H-DL-tyr-OMe HCl、H-3,5-ジヨード-tyr-OMe HCl、H-D-3,5-ジヨード-tyr-OMe HCl、H-D-tyr-OMe HCl、D-チロシンメチルエステルヒドロクロリド、D-チロシン-OMe HCl、メチル D-チロシネートヒドロクロリド、(2R)-2-アミノ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、(2R)-2-アミノ-3-(4-ヒドロキシフェニル)メチルエステルヒドロクロリド、メチル (2R)-2-アミノ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパノエートヒドロクロリド、メチル (2R)-2-アザニル-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパノエートヒドロクロリド、3-クロロ-L-チロシン、3-ニトロ-L-チロシン、3-ニトロ-L-チロシンエチルエステルヒドロクロリド、DL-m-チロシン、DL-o-チロシン、Boc-Tyr(3,5-I2)-OSu、Fmoc-tyr(3-NO2)-OH、及びα-メチル-DL-チロシンの一つ又は複数を含む。本発明の一定の態様において、チロシン誘導体はα-メチル-L-チロシンである。本発明の他の特定の態様において、チロシン誘導体はα-メチル-D-チロシンである。他の態様において、チロシン誘導体はラセミ体のα-メチル-DL-チロシンである。
【0074】
[0070]他の態様において、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬は、アクアヤマイシン、オウデノン、シクロヘキシミド、アニソマイシン、3-ヨード-L-チロシン、ピラトリオン、カテコール又はトリフェノール環系を有するフェニルカルボニル誘導体、例えば、フェネチルアミン及び没食子酸誘導体、4-イソプロピルトロポロン、2-(4-チアゾリル)ベンズイミダゾール、8-ヒドロキシキノリン、o-フェナントロリン、5-ヨード-8-ヒドロキシキノリン、ビリルビン、2,9-ジメチル-1,10-フェナントロリン、α-α’-ジピリジル、ジベンゾ[f,h]キノキサリン、2,4,6-トリピリジル-s-トリアジン、エチル 3-アミノ-4H-ピロロイソオキサゾール-5(6H)-カルボキシレート、α-ニトロソ-β-ナフトール、ナトリウムジエチルジチオカルバメート、又はエチレンジアミンテトラ酢酸である。
【0075】
[0071]他の態様において、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬は、式:
【0076】
【化9】
の化合物である。上記式中、
R
1は、水素、メチル又はエチルエステル基、又は1~4個の炭素原子のアルキルであり;
R
2は、水素、低級アルキル、低級アルケン、スクシンイミド、又は1~4個の炭素原子のアルキルであり;
R
3は、下記式:
【0077】
【化10】
[式中、Y
1は、パラ位に位置し、水素、ヒドロキシ、メチルエーテル、ジメチルエーテル、トリメチルエーテル、又は非置換もしくはハロゲン置換ベンジルであり;
Y
2及びY
3は、同じであるか又は異なり、片方又は両方のY
2及びY
3はメタ位か又はオルト位のいずれかに位置し、Y
2及びY
3は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、メチルエーテル、又はニトロである]の置換ベンゼン環であり;そして
R
4は、水素、アセチル、tert-ブチルオキシカルボニル又はフルオレニルメチルオキシカルボニルである。
【0078】
[0072]IV.態様
[0073]一部の側面において、対象は、治療上有効量の第一のチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬、例えばα-メチル-DL-チロシンを、治療上有効量の第二のチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬、例えばα-メチル-L-チロシンと組み合わせて投与される。
【0079】
[0074]他の側面において、対象は、治療上有効量の一つ又は複数のチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬、例えば、α-メチル-DL-チロシン、α-メチル-D-チロシン、及び/又はα-メチル-L-チロシンを、治療上有効量の、PTSDの治療に有用な別の薬剤、例えばストレスモジュレーターと組み合わせて投与される。
【0080】
[0075]なお更なる側面において、組成物はチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬を含み、前記チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬は、対象においてPTSDを治療するのに有効な、例えばPTSDの一つ又は複数の症状を治療するのに有効な量で存在する。一部の態様において、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬はα-メチル-DL-チロシンである。他の態様において、組成物はさらに、治療上有効量の別のチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬、例えばメチロシン(metyrosine)又はα-メチル-L-チロシンを含む。更なる態様において、組成物はさらに、当業者に公知の、PTSDの治療に有用な、治療上有効量の別の薬剤、例えばストレスモジュレーターを含む。さらに他の態様において、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬はラセミ体のα-メチル-DL-チロシンである。
【0081】
[0076]さらに他の側面において、本開示は、それを必要とする対象におけるPTSDの治療法を提供し、該方法は、前記対象に、治療上有効量のチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬を、前記PTSDの治療に有用な治療上有効量のストレスモジュレーターと組み合わせて投与し、それによって前記対象における前記PTSDを治療することを含む。
【0082】
[0077]更なる側面において、本開示は、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬を含む組成物を提供し、前記チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬は、対象におけるPTSDを治療するのに有効な量で存在する。
【0083】
[0078]他の側面において、本開示は、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬とPTSDの治療に有用なストレスモジュレーターとを含む組成物を提供し、前記チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬と前記ストレスモジュレーターは、前記対象におけるPTSDを治療するのに有効な量で存在する。
【0084】
[0079]V.側面
[0080]側面1:心的外傷後ストレス障害(PTSD)をそれを必要とする対象において治療するための方法。該方法は、前記対象に、治療上有効量のチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬を投与し、それによって前記対象における前記PTSDを治療することを含む。
【0085】
[0081]側面2:前記チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬がラセミ体のα-メチル-DL-チロシンである、側面1の方法。
【0086】
[0082]側面3:前記チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬がメチロシン又はα-メチル-L-チロシンである、側面1の方法。
【0087】
[0083]側面4:前記チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬がα-メチル-D-チロシンである、側面1の方法。
【0088】
[0084]側面5:前記チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬がチロシン誘導体である、側面1の方法。
【0089】
[0085]側面6:前記チロシン誘導体が、メチル (2R)-2-アミノ-3-(2-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパノエート、D-チロシンエチルエステルヒドロクロリド、メチル (2R)-2-アミノ-3-(2,6-ジクロロ-3,4-ジメトキシフェニル)プロパノエート H-D-Tyr(TBU)-アリルエステルHCl、メチル (2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-4,5-ジメトキシフェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(2-クロロ-3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(4-[(2-クロロ-6-フルオロフェニル)メトキシ]フェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(2-クロロ-3,4-ジメトキシフェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-5-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパノエート、ジエチル 2-(アセチルアミノ)-2-(4-[(2-クロロ-6-フルオロベンジル)オキシ]ベンジルマロネート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-4-メトキシフェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-4-ヒドロキシ-5-メトキシフェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(2,6-ジクロロ-3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパノエート、H-DL-tyr-OME HCl、H-3,5-ジヨード-tyr-OME HCl、H-D-3,5-ジヨード-tyr-OME HCl、H-D-tyr-OME HCl、D-チロシンメチルエステルヒドロクロリド、D-チロシン-OMe HCl、メチル D-チロシネートヒドロクロリド、H-D-tyr-OMe HCl、D-チロシンメチルエステルHCl、H-D-Tyr-OMe-HCl、(2R)-2-アミノ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、(2R)-2-アミノ-3-(4-ヒドロキシフェニル)メチルエステルヒドロクロリド、メチル (2R)-2-アミノ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパノエートヒドロクロリド、メチル (2R)-2-アザニル-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパノエートヒドロクロリド、3-クロロ-L-チロシン、3-ニトロ-L-チロシン、3-ニトロ-L-チロシンエチルエステルヒドロクロリド、DL-m-チロシン、DL-o-チロシン、Boc-Tyr(3,5-I2)-OSu、Fmoc-tyr(3-NO2)-OH、α-メチル-L-チロシン、α-メチル-D-チロシン、α-メチル-DL-チロシン、又はそれらの組合せである、側面5の方法。
【0090】
[0086]側面7:前記チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬が1日1回、2回、3回、又は4回投与される、側面1の方法。
【0091】
[0087]側面8:前記チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬が、経口、経鼻、皮下、静脈内、局所、経皮、経膣、直腸又はそれらの任意の組合せで投与される、側面1の方法。
【0092】
[0088]側面9:前記方法がさらに、前記患者に、治療上有効量の、PTSDの治療に有用な一つ又は複数の別の薬剤を投与することを含む、側面1の方法。
【0093】
[0089]側面10:前記一つ又は複数の別の薬剤の少なくとも一つが抗うつ薬である、側面9の方法。
【0094】
[0090]側面11:前記抗うつ薬が、選択的セロトニン再取込み阻害薬(SSRI)、セロトニン-ノルエピネフリン再取込み阻害薬(SNRI)、又は三環系抗うつ薬である、側面10の方法。
【0095】
[0091]側面12:前記抗うつ薬が、セルトラリン、フルオキセチン、パロキセチン、又はベンラファキシンである、側面10の方法。
【0096】
[0092]側面13:前記一つ又は複数の別の薬剤の少なくとも一つが、ベンゾジアゼピン、グルココルチコイド、又はカンナビノイドである、側面9の方法。
【0097】
[0093]側面14:前記一つ又は複数の別の薬剤の少なくとも一つがバソプレシン類似体である、側面9の方法。
【0098】
[0094]側面15:バソプレシン類似体がデスモプレシンである、側面14の方法。
【0099】
[0095]側面16:前記一つ又は複数の別の薬剤の少なくとも一つが神経調節薬である、側面9の方法。
【0100】
[0096]側面17:神経調節薬がGABAである、側面16の方法。
【0101】
[0097]側面18:神経調節薬がアセチルコリンを増強する、側面16の方法。
【0102】
[0098]側面19:神経調節薬が、リバスチグミン、又はピロカルピン、又は類似の薬剤である、側面19の方法。
【0103】
[0099]側面20:前記一つ又は複数の別の薬剤が同時又は順次投与される、側面9の方法。
【0104】
[00100]側面21:前記チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬がラセミ体のα-メチル-DL-チロシンであり、前記一つ又は複数の別の薬剤がデスモプレシン及びGABAを含む、側面9の方法。
【0105】
[00101]側面22:前記α-メチル-DL-チロシン、デスモプレシン及びGABAが同時又は順次投与される、側面21の方法。
【0106】
[00102]側面23:前記一つ又は複数の別の薬剤の少なくとも一つが1日1回、2回、3回、又は4回投与される、側面9の方法。
【0107】
[00103]側面24:前記一つ又は複数の別の薬剤の少なくとも一つが、経口、経鼻、皮下、静脈内、局所、経皮、経膣、直腸又はそれらの任意の組合せで投与される、側面9の方法。
【0108】
[00104]側面25:前記方法がさらに、精神療法、認知行動療法、眼球運動による脱感作と再処理(EMDR)療法、対人関係療法、理学療法、遊戯療法、又はそれらの組合せを提供することを含む、側面1の方法。
【0109】
[00105]側面26:チロシンヒドロキシラーゼを含む組成物であって、前記チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬が対象における心的外傷後ストレス障害(PTSD)を治療するのに有効な量で存在する組成物。
【0110】
[00106]側面27:前記チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬がラセミ体のα-メチル-DL-チロシンである、側面26の組成物。
【0111】
[00107]側面28:前記チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬がメチロシン又はα-メチル-L-チロシンである、側面26の組成物。
【0112】
[00108]側面29:前記チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬がα-メチル-D-チロシンである、側面26の組成物。
【0113】
[00109]側面30:前記チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬がチロシン誘導体である、側面26の組成物。
【0114】
[00110]側面31:前記チロシン誘導体が、メチル (2R)-2-アミノ-3-(2-クロロ-4 ヒドロキシフェニル)プロパノエート、D-チロシンエチルエステルヒドロクロリド、メチル (2R)-2-アミノ-3-(2,6-ジクロロ-3,4-ジメトキシフェニル)プロパノエート H-D-Tyr(TBU)-アリルエステルHCl、メチル (2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-4,5-ジメトキシフェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(2-クロロ-3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(4-[(2-クロロ-6-フルオロフェニル)メトキシ]フェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(2-クロロ-3,4-ジメトキシフェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-5-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパノエート、ジエチル 2-(アセチルアミノ)-2-(4-[(2-クロロ-6-フルオロベンジル)オキシ]ベンジルマロネート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-4-メトキシフェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-4-ヒドロキシ-5-メトキシフェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(2,6-ジクロロ-3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパノエート、H-DL-tyr-OMe HCl、H-3,5-ジヨード-tyr-OMe HCl、H-D-3,5-ジヨード-tyr-OMe HCl、H-D-tyr-OMe HCl、D-チロシンメチルエステルヒドロクロリド、D-チロシン-OMe HCl、メチル D-チロシネートヒドロクロリド、H-D-tyr-OMe HCl、D-チロシンメチルエステルHCl、H-D-Tyr-OMe-HCl、(2R)-2-アミノ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、(2R)-2-アミノ-3-(4-ヒドロキシフェニル)メチルエステルヒドロクロリド、メチル (2R)-2-アミノ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパノエートヒドロクロリド、メチル (2R)-2-アザニル-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパノエートヒドロクロリド、3-クロロ-L-チロシン、3-ニトロ-L-チロシン、3-ニトロ-L-チロシンエチルエステルヒドロクロリド、DL-m-チロシン、DL-o-チロシン、Boc-Tyr(3,5-I2)-OSu、Fmoc-tyr(3-NO2)-OH、α-メチル-L-チロシン、α-メチル-D-チロシン、α-メチル-DL-チロシン、又はそれらの組合せである、側面30の組成物。
【0115】
[00111]側面32:前記チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬が150~300mgの量で存在する、側面26の組成物。
【0116】
[00112]側面33:チロシンヒドロキシラーゼが分割投与される、側面32の組成物。
【0117】
[00113]側面34:前記組成物がさらに、PTSDの治療に有用な、有効量の一つ又は複数の別の薬剤を含む、側面26の組成物。
【0118】
[00114]側面35:前記別の薬剤が、抗うつ薬、ベンゾジアゼピン、グルココルチコイド、カンナビノイド又はそれらの組合せである、側面34の組成物。
【0119】
[00115]側面36:前記一つ又は複数の別の薬剤の少なくとも一つがバソプレシン類似体である、側面34の組成物。
【0120】
[00116]側面37:バソプレシン類似体がデスモプレシンである、側面36の組成物。
【0121】
[00117]側面38:前記一つ又は複数の別の薬剤の少なくとも一つが神経調節薬である、側面34の組成物。
【0122】
[00118]側面39:神経調節薬がGABAである、側面38の組成物。
【0123】
[00119]側面40:神経調節薬がアセチルコリンを増強する、側面38の組成物。
【0124】
[00120]側面41:神経調節薬が、リバスチグミン、又はピロカルピン、又は類似の薬剤である、側面40の組成物。
【0125】
[00121]側面42:前記チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬がラセミ体のα-メチル-DL-チロシンであり、前記一つ又は複数の別の薬剤がデスモプレシン及びGABAを含む、側面34の組成物。
【0126】
[00122]側面43:前記抗うつ薬が、選択的セロトニン再取込み阻害薬(SSRI)、セロトニン-ノルエピネフリン再取込み阻害薬(SNRI)、三環系抗うつ薬、又はそれらの組合せである、側面35の組成物。
【0127】
[00123]側面44:前記抗うつ薬が、セルトラリン、フルオキセチン、パロキセチン、ベンラファキシン、又はそれらの組合せである、側面35の組成物。
【0128】
[00124]側面45:心的外傷後ストレス障害(PTSD)をそれを必要とする対象において治療するための方法であって、該方法は、前記対象に治療上有効量のチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬と、治療上有効量の、PTSDの治療に有用な一つ又は複数の別の薬剤を投与し、それによって前記対象における前記PTSDを治療することを含む方法。
【0129】
[00125]側面46:チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬と心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療に有用な一つ又は複数の別の薬剤とを含む組成物であって、前記チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬と前記一つ又は複数の別の薬剤が、対象における前記PTSDを治療するのに有効な量で存在する組成物。
【0130】
[00126]側面47:心的外傷後ストレス障害の治療法であって、それを必要とする対象に有効量の少なくとも一つのチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬を投与することを含む方法。
【0131】
[00127]側面48:前記チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬が、メチル (2R)-2-アミノ-3-(2-クロロ-4 ヒドロキシフェニル)プロパノエート、D-チロシンエチルエステルヒドロクロリド、メチル (2R)-2-アミノ-3-(2,6-ジクロロ-3,4-ジメトキシフェニル)プロパノエート H-D-Tyr(TBU)-アリルエステルHCl、メチル (2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-4,5-ジメトキシフェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(2-クロロ-3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(4-[(2-クロロ-6-フルオロフェニル)メトキシ]フェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(2-クロロ-3,4-ジメトキシフェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-5-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパノエート、ジエチル 2-(アセチルアミノ)-2-(4-[(2-クロロ-6-フルオロベンジル)オキシ]ベンジルマロネート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-4-メトキシフェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-4-ヒドロキシ-5-メトキシフェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(2,6-ジクロロ-3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパノエート、H-DL-tyr-OMe HCl、H-3,5-ジヨード-tyr-OMe HCl、H-D-3,5-ジヨード-tyr-OMe HCl、H-D-tyr-OMe HCl、D-チロシンメチルエステルヒドロクロリド、D-チロシン-OMe HCl、メチル D-チロシネートヒドロクロリド、(2R)-2-アミノ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、(2R)-2-アミノ-3-(4-ヒドロキシフェニル)メチルエステルヒドロクロリド、メチル (2R)-2-アミノ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパノエートヒドロクロリド、メチル (2R)-2-アザニル-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパノエートヒドロクロリド、3-クロロ-L-チロシン、3-ニトロ-L-チロシン、3-ニトロ-L-チロシンエチルエステルヒドロクロリド、DL-m-チロシン、DL-o-チロシン、Boc-Tyr(3,5-I2)-OSu、Fmoc-tyr(3-NO2)-OH、及びα-メチル-DL-チロシンの一つ又は複数である、側面47の方法。
【0132】
[00128]側面49:前記少なくとも一つのチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬がα-メチル-DL-チロシンである、側面48の方法。
【0133】
[00129]側面50:前記対象に有効量の一つ又は複数のストレスモジュレーターを投与することをさらに含む、側面47の方法。
【0134】
[00130]側面51:少なくとも一つのストレスモジュレーターが、バソプレシン、バソプレシン誘導体、アセチルコリン誘導薬、GABA、ベンゾジアゼピン、又は選択的セロトニン再取込み阻害薬である、側面50の方法。
【0135】
[00131]側面52:α-メチル-DL-チロシンと一つ又は複数のストレスモジュレーターが同時に投与される、側面50の方法。
【0136】
[00132]側面53:α-メチル-DL-チロシンと一つ又は複数のストレスモジュレーターが別個に投与される、側面50の方法。
【0137】
[00133]側面54:α-メチル-DL-チロシンが経口投与される、側面49の方法。
【0138】
[00134]側面55:50~1500mgのα-メチル-DL-チロシンが毎日投与される、側面49の方法。
【0139】
[00135]側面56:α-メチル-DL-チロシンが3回に分割されて投与される、側面54の方法。
【0140】
[00136]側面57:有効量の一つ又は複数のストレスモジュレーターが毎日投与される、側面50の方法。
【0141】
[00137]側面58:下記の少なくとも一つ、すなわち、侵入思考、悪夢、フラッシュバック、心的外傷的出来事を想起させるきっかけに曝露された後の精神的苦痛、心的外傷的出来事を想起させるきっかけに曝露された後の身体的反応、心的外傷的出来事に関連する思考又は感情、心的外傷的出来事に関連する想起、心的外傷的出来事の重要な側面の想起不能、自分自身又は世界に対する過度に否定的な思考及び思い込み、心的外傷的出来事を生じさせたことについての自己又は他者への誇張された非難、否定的(陰性)感情、活動への関心の減退、孤立の感覚、肯定的感情(陽性情動)を経験することの困難さ、苛立ち又は攻撃(激しい怒り)、危険な又は破壊的行動、過度の警戒心、過剰な驚愕反応、集中困難、及び睡眠障害を低減する、側面47の方法。
【0142】
[00138]DNP-01
[00139]DNP-01(L1-79とも呼ばれる)は、D,L型α-メチル-パラ-チロシンで、AMPTと略される。α-メチル-パラ-チロシンは、カテコールアミン生合成における第一の変換、すなわちカテコールアミン合成における律速段階であるチロシンからジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)への変換を触媒するチロシンヒドロキシラーゼ(TH)の活性を阻害する。L型α-メチル-パラ-チロシンは1979年にFDAによって認可され、Demser(登録商標)の商品名で市場に出回っている。典型的にはメチロシンと呼ばれ、AMTと略される。
【0143】
[00140]α-メチル-パラ-チロシンは、THに対して競合的に競合するチロシン類似体で、ほとんど未変化のまま尿中に排泄される。Demserは、カテコールアミン産生腫瘍である褐色細胞腫の治療において術前使用が認可されている。この腫瘍は、手術操作時に(圧迫されると)病的レベルのカテコールアミンを循環中に放出し、重篤なAE(有害事象)を招きかねない。Demserは、この潜在的に重篤な合併症を最小限に抑えるため、及び手術不適格の褐色細胞腫患者を治療するために認可された。分割投与で1~4g/日の用量での使用が認可されている。Demserに関連するAEは、>2g/日の用量での鎮静作用(典型的には慣れはするが持続しうる)、睡眠の一時的変化、高用量での振戦を含む錐体外路徴候、高用量での開口障害及びパーキンソン症候群、用量依存性の混乱(用量減で解消される)、用量関連下痢、ならびに結晶尿、吐き気と嘔吐、及びインポテンスを含む稀なAEなどである。
【0144】
[00141]PTSD治療のためのDNP-01
[00142]DNP-01は、自律神経系の交感神経及び副交感神経アームを再編成し、PTSDにおける不均衡な発現を修正する能力を有する薬剤である。DNP-01は、交感神経連絡(sympathetic traffic)を急速に減少させるだけでなく、長期間投与されると、過剰に刺激された交感神経が正常機能を反復及び再開できるようになる。認知的観点から言うと、交感神経系は、気分、報酬、夢幻状態(悪夢を含む)、記憶と想起、24時間周期の睡眠パターン、不安と興奮、及び代謝変化を含むPTSDで発現される多くのその他の症状の調節に関与している。本明細書中に示されているように、交感神経系を過剰刺激するストレス要因は、これらの経路を拡大し、ゆえにそれらの生理学的作用も増大させる様々な成長因子の放出をもたらしうる。これらの成長因子は、その後も誇張された交感神経反応に応答して産生され、新しく進化した神経構築を維持するために必要とされる。交感神経の活動亢進を低下させると、交感神経系におけるこれらの変化を正常のストレス前レベルに後退させることが可能となりうる。
【0145】
[00143]DNP-01は、短期及び中期のPTSD治療に治療効果があり、長期では治癒効果を有しうる。DNP-01は、体内でのカテコールアミン合成の第一段階であり律速段階でもある酵素チロシンヒドロキシラーゼを阻害する。DNP-01は、これらの神経伝達物質の合成、ひいては利用可能性を縮小することにより、不均衡な交感神経機能や脳のドーパミン作動性報酬及び認知機能を支持する成長因子の放出を削減する。この結果、受容体遮断薬で見られるのとは根本的に異なる治療の作用機序がもたらされる(受容体遮断薬は成長因子の放出を阻害しない)。短期及び中期において、カテコールアミンの放出削減は、大部分の患者でPTSDに伴う症状を改良するはずである。長期においては、正常より高いレベルの成長因子を支持するカテコールアミン放出レベルが削減されることによって、肥大したSNSを心的外傷前の構成に後退させることができるので、PTSD症状は永久に排除されるはずである。
【0146】
[00144]PTSDの治療の場合、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬(例えばα-メチル-DL-チロシン)を有する組成物を患者に1回で又は分割して(例えば1日3~5回)で経口投与できる。総日用量は100mg~500mgの範囲でありうる。
【0147】
[00145]組成物は、週間サイクルの間に1日又は2日間の休薬日を設け、6週間にわたって投与できる。PTSDの症状は、全対象に対して2週間に1回モニターできる。例えば、PTSDのための構造化面接(Structured Interview for PTSD)(SI-PTSD;Davidsonら,J Nervous Mental Disease 177:336-41(1989))、PTSDの臨床診断面接尺度(Clinician Administered PTSD Scale)(CAPS;Blakeら,Behavior Therapist 13:187-8(1990))又はDSM-IV PTSDのためのショートスクリーニング尺度(Short Screening Scale for DSM-IV PTSD)(Breslauら,Am J Psychiatry 156:908-11(1999))の下での評価による。
【0148】
[00146]概して、患者は上記治療によく耐えることができ、応答は治療のために文書化可能である。
【実施例】
【0149】
[00147]VI.実施例
[00148]以下の実施例は、前述の開示内容を補足するため、そして本明細書中に記載された主題をより良く理解するために提供される。これらの実施例は記載された主題を制限するものと見なされるべきではない。本明細書中に記載された実施例及び態様は、説明のみを目的としたものであること、それを踏まえて様々な修正又は変更が当業者には明白であること、そしてそれらも本発明の真の範囲内に含まれ、その範囲から逸脱することなくなされうることは理解されるはずである。
【0150】
実施例1
[00149]患者をスクリーニングし、PTSDのDSM-V基準をどの程度満たしているかについて評価する。基準を満たしている患者のサブグループに、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬(すなわちα-メチル-DL-チロシン)を含む治療計画を200mgの用量で1日3回投与する。別のサブグループには、さらにアセチルコリン誘導薬(例えばメラノタン)も含む治療計画を投与する。GABAは両グループに任意に投与する。各治療計画の投与後、対象がDSM-5基準を満たしている程度の変化を再度評価する。
【0151】
実施例2
[00150]21歳の男性患者がPTSDの症状を呈していた。彼の疾病徴候は、視線をあまり合わせない、特別な理由もなく人々の意図を疑う、一見予測可能な様式で呻き声を言葉にすることを強いる多くの夢エピソードによる睡眠妨害、休まることのない恐ろしい全般的睡眠、悪夢、世界に対する彼自身の個人的用役の恐れ(fear of his own personal utility to the world)、自殺の思考、人々からの無感情な孤立及び持続する全般的鬱などであった。
【0152】
[00151]彼の生い立ちには、両親からの分離(両親の投獄のため)、幼少時の度重なる引越、里親制度の両親、子供としての彼に対する他の子供たち及びとりわけ彼の薬物乱用父親からの暴力及びいじめなどがあった。彼は、矯正官としてもレイプなどの物事を目撃しており、それが彼を深く攪乱させていた。
【0153】
[00152]彼に300mgの薬物(すなわちラセミ体のα-メチル-DL-チロシン)が1日2回、3日間投与された。治療後、すべての症状は沈静化した。彼は、安眠を取り、視線合わせも正常化し、会話を開始及び維持し、彼の恐怖と悪夢は治まり、数年ぶりに気持ちが落ち着き、熟睡したと個人的にコメントした。また、適切な時期に映画を見た際、感情に気付き、子供時代以来初めて泣いたと述べた。
【0154】
[00153]彼は薬物を28日間続け、さらに大きな改善が観察された。例えば、自分の外
見に関心を持ち、他人と会話を交わし、食欲も増進し、微笑んだり笑うようになり、彼の
感情を表現できるようになった等々である。
以下に、出願時の特許請求の範囲の記載を示す。
[請求項1]
心的外傷後ストレス障害を、その治療を必要とする対象において治療するのに使用する
ための、少なくとも一つのチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬を含む組成物。
[請求項2]
前記チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬が、メチル (2R)-2-アミノ-3-(2-
クロロ-4 ヒドロキシフェニル)プロパノエート、D-チロシンエチルエステルヒドロ
クロリド、メチル (2R)-2-アミノ-3-(2,6-ジクロロ-3,4-ジメトキ
シフェニル)プロパノエート、H-D-Tyr(TBU)-アリルエステルHCl、メチ
ル (2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-4,5-ジメトキシフェニル)プロパノ
エート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(2-クロロ-3-ヒドロキシ-4-メト
キシフェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(4-[(2-ク
ロロ-6-フルオロフェニル)メトキシ]フェニル)プロパノエート、メチル (2R)
-2-アミノ-3-(2-クロロ-3,4-ジメトキシフェニル)プロパノエート、メチ
ル (2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-5-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル
)プロパノエート、ジエチル 2-(アセチルアミノ)-2-(4-[(2-クロロ-6
-フルオロベンジル)オキシ]ベンジルマロネート、メチル (2R)-2-アミノ-3
-(3-クロロ-4-メトキシフェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミ
ノ-3-(3-クロロ-4-ヒドロキシ-5-メトキシフェニル)プロパノエート、メチ
ル (2R)-2-アミノ-3-(2,6-ジクロロ-3-ヒドロキシ-4-メトキシフ
ェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-4-ヒド
ロキシフェニル)プロパノエート、H-DL-tyr-OMe HCl、H-3,5-ジ
ヨード-tyr-OMe HCl、H-D-3,5-ジヨード-tyr-OMe HCl
、H-D-tyr-OMe HCl、D-チロシンメチルエステルヒドロクロリド、D-
チロシン-OMe HCl、メチル D-チロシネートヒドロクロリド、(2R)-2-
アミノ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、(2R)-2-アミノ-3-(
4-ヒドロキシフェニル)メチルエステルヒドロクロリド、メチル (2R)-2-アミ
ノ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパノエートヒドロクロリド、メチル (2R)
-2-アザニル-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパノエートヒドロクロリド、3-
クロロ-L-チロシン、3-ニトロ-L-チロシン、3-ニトロ-L-チロシンエチルエ
ステルヒドロクロリド、DL-m-チロシン、DL-o-チロシン、Boc-Tyr(3
,5-I
2)-OSu、Fmoc-tyr(3-NO
2)-OH、α-メチル-L-チロ
シン、α-メチル-D-チロシン、及びα-メチル-DL-チロシンの内の一つ又は複数
である、請求項1に記載の組成物。
[請求項3]
前記少なくとも一つのチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬がチロシン誘導体である、請求
項1に記載の組成物。
[請求項4]
前記少なくとも一つのチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬がラセミ体のα-メチル-DL
-チロシンである、請求項1又は請求項2に記載の組成物。
[請求項5]
α-メチル-DL-チロシンが、経口、経鼻、皮下、静脈内、局所、経皮、経膣、直腸
投与、又はそれらの任意の組合せ用として製剤化される、請求項4に記載の組成物。
[請求項6]
50~1500mgのα-メチル-DL-チロシンを含む、請求項4又は請求項5に記
載の組成物。
[請求項7]
α-メチル-DL-チロシンが3つの分割された一回分投薬量に製剤化されている、請
求項4~6のいずれか1項に記載の組成物。
[請求項8]
前記少なくとも一つのチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬がα-メチル-L-チロシン(
メチロシン)である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
[請求項9]
前記少なくとも一つのチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬がα-メチル-D-チロシンで
ある、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
[請求項10]
前記少なくとも一つのチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬が、アクアヤマイシン、オウデ
ノン、シクロヘキシミド、アニソマイシン、3-ヨード-L-チロシン、ピラトリオン、
カテコール又はトリフェノール環系を有するフェニルカルボニル誘導体、例えば、フェネ
チルアミン及び没食子酸誘導体、4-イソプロピルトロポロン、2-(4-チアゾリル)
ベンズイミダゾール、8-ヒドロキシキノリン、o-フェナントロリン、5-ヨード-8
-ヒドロキシキノリン、ビリルビン、2,9-ジメチル-1,10-フェナントロリン、
α-α’-ジピリジル、ジベンゾ[f,h]キノキサリン、2,4,6-トリピリジル-
s-トリアジン、エチル 3-アミノ-4H-ピロロイソオキサゾール-5(6H)-カ
ルボキシレート、α-ニトロソ-β-ナフトール、ナトリウムジエチルジチオカルバメー
ト、又はエチレンジアミン四酢酸である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
[請求項11]
前記少なくとも一つのチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬が、式:
【化1】
を有するアリールアラニン化合物であり、上記式中、
R
1は、水素、メチル又はエチルエステル基、又は1~4個の炭素原子のアルキルであ
り;
R
2は、水素、低級アルキル、低級アルケン、スクシンイミド、又は1~4個の炭素原
子のアルキルであり;
R
3は、下記式:
【化2】
[式中、
Y
1は、パラ位に位置し、水素、ヒドロキシ、メチルエーテル、ジメチルエーテル、ト
リメチルエーテル、又は非置換もしくはハロゲン置換ベンジルであり;
Y
2及びY
3は、同じであるか又は異なり、片方又は両方のY
2及びY
3はメタ位か又
はオルト位のいずれかに位置し、Y
2及びY
3は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、メチル
エーテル、又はニトロである]の置換ベンゼン環であり;そして
R
4は、水素、アセチル、tert-ブチルオキシカルボニル又はフルオレニルメチル
オキシカルボニルである、請求項1に記載の組成物。
[請求項12]
一つ又は複数のストレスモジュレーターをさらに含む、請求項1~11のいずれか1項
に記載の組成物。
[請求項13]
ストレスモジュレーターがPTSDの治療に有用である、請求項12に記載の組成物。
[請求項14]
少なくとも一つのストレスモジュレーターが、抗うつ薬、バソプレシン誘導体、神経調
節薬、アセチルコリン誘導薬、ベンゾジアゼピン、グルココルチコイド又はカンナビノイ
ドである、請求項12又は13に記載の組成物。
[請求項15]
バソプレシン誘導体がバソプレシン又はデスモプレシンである、請求項14に記載の組
成物。
[請求項16]
神経調節薬が、GABA、リバスチグミン、又はピロカルピンである、請求項14に記
載の組成物。
[請求項17]
抗うつ薬が、選択的セロトニン再取込み阻害薬(SSRI)、セロトニン-ノルエピネ
フリン再取込み阻害薬(SNRI)、又は三環系抗うつ薬である、請求項14に記載の組
成物。
[請求項18]
抗うつ薬が、セルトラリン、フルオキセチン、パロキセチン、又はベンラファキシンで
ある、請求項14に記載の組成物。
[請求項19]
前記チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬がラセミ体のα-メチル-DL-チロシンであり
、ストレスモジュレーターがデスモプレシン及びGABAである、請求項10又は11の
いずれか1項に記載の組成物。
[請求項20]
α-メチル-DL-チロシン、デスモプレシン、及びGABAを含む、請求項17に記
載の組成物。
[請求項21]
ストレスモジュレーターが、経口、経鼻、皮下、静脈内、局所、経皮、経膣、又は直腸
投与、又はそれらの任意の組合せ用として製剤化される、請求項10~18のいずれか1
項に記載の組成物。
[請求項22]
ストレスモジュレーターが、1つ、2つ、3つ、又は4つの一回分投薬量に製剤化され
ている、請求項10~19のいずれか1項に記載の組成物。
[請求項23]
ストレスモジュレーターが毎日投与用に製剤化されている、請求項10~20のいずれ
か1項に記載の組成物。
[請求項24]
前記チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬がα-メチル-DL-チロシンである、請求項1
0~21のいずれか1項に記載の組成物。
[請求項25]
侵入思考、悪夢、フラッシュバック、心的外傷的出来事を想起させるきっかけに曝露さ
れた後の精神的苦痛、心的外傷的出来事を想起させるきっかけに曝露された後の身体的反
応、心的外傷的出来事に関連する思考又は感情、心的外傷的出来事に関連する想起、心的
外傷的出来事の重要な側面の想起不能、自分自身又は世界に対する過度に否定的な思考及
び思い込み、心的外傷的出来事を生じさせたことについての自己又は他者への誇張された
非難、否定的(陰性)感情、活動への関心の減退、孤立の感覚、肯定的感情(陽性情動)
を経験することの困難さ、苛立ち又は攻撃(激しい怒り)、危険な又は破壊的行動、過度
の警戒心、過剰な驚愕反応、集中困難、及び睡眠障害の内の少なくとも一つを低減する、
請求項1~24のいずれか1項に記載の組成物。
[請求項26]
さらに、精神療法、認知行動療法、眼球運動による脱感作と再処理(EMDR)療法、
対人関係療法、理学療法、遊戯療法、又はそれらの組合せを提供することを含む、請求項
1~25のいずれか1項に記載の組成物。
[請求項27]
チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬が、対象における心的外傷後ストレス障害(PTSD
)の治療に有効な量で存在する、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬を含む組成物。
[請求項28]
チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬が150~300mgの量で存在する、請求項27に
記載の組成物。