IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭化成株式会社の特許一覧

特許7170723感光性樹脂組成物およびレジストパターンの形成方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物およびレジストパターンの形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/031 20060101AFI20221107BHJP
   G03F 7/033 20060101ALI20221107BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20221107BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20221107BHJP
   G03F 7/38 20060101ALI20221107BHJP
   G03F 7/40 20060101ALI20221107BHJP
   G03F 7/029 20060101ALI20221107BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20221107BHJP
   H05K 3/18 20060101ALI20221107BHJP
   H05K 3/06 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
G03F7/031
G03F7/033
G03F7/004 502
G03F7/004 501
G03F7/027 502
G03F7/38 511
G03F7/40 521
G03F7/027 511
G03F7/029
G03F7/20 501
G03F7/20 521
H05K3/18 D
H05K3/06 H
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2020525752
(86)(22)【出願日】2019-06-18
(86)【国際出願番号】 JP2019024154
(87)【国際公開番号】W WO2019244898
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2020-08-26
(31)【優先権主張番号】P 2018118583
(32)【優先日】2018-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018118780
(32)【優先日】2018-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018118576
(32)【優先日】2018-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】松田 隆之
(72)【発明者】
【氏名】国松 真一
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/021184(WO,A1)
【文献】特開2016-224162(JP,A)
【文献】国際公開第2016/163540(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004 - 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
感光性樹脂組成物の層を露光する工程;
露光された前記感光性樹脂組成物の層を加熱する加熱工程;及び
加熱された前記感光性樹脂組成物の層を現像する現像工程
を含む、回路基板製造用レジストパターンの形成方法であって、
前記露光から前記加熱の間に前記感光性樹脂組成物の層を減圧雰囲気下又は低酸素濃度雰囲気下にすることなく、
前記感光性樹脂組成物が、該感光性樹脂組成物の全固形分質量基準で、以下の成分:
(A)アルカリ可溶性高分子:10質量%~90質量%;
(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物:5質量%~70質量%;及び
(C)光重合開始剤:0.01質量%~20質量%;
を含み、
前記(A)アルカリ可溶性高分子全体におけるスチレン及び/又はスチレン誘導体の構成単位が15質量%以上である、レジストパターンの形成方法。
【請求項2】
前記(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物として、ビスフェノールA骨格の濃度が0.18mol/100g以上である化合物(B-1)の含有量が、前記感光性樹脂組成物の固形分に対して0以上18質量%以下である、請求項1に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項3】
更に(D)禁止剤を含む、請求項1または2に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項4】
更に(E)ベンゾトリアゾール誘導体を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項5】
前記(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物は、エチレン性不飽和二重結合を3個以上有する(メタ)アクリレート化合物を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項6】
前記(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物は、エチレン性不飽和二重結合を4個以上有する(メタ)アクリレート化合物を含む、請求項5に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項7】
前記(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物は、エチレン性不飽和二重結合を6個以上有する(メタ)アクリレート化合物を含む、請求項6に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項8】
[(A)アルカリ可溶性高分子の含有量]/[(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の含有量]の値が0.94以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項9】
[(A)アルカリ可溶性高分子の含有量]/[(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の含有量]の値が1.04以上である、請求項8に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項10】
[(A)アルカリ可溶性高分子の含有量]/[(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の含有量]の値が1.11以上である、請求項9に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項11】
[(A)アルカリ可溶性高分子の含有量]/[(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の含有量]の値が1.21以上である、請求項10に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項12】
[(A)アルカリ可溶性高分子の含有量]/[(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の含有量]の値が1.30以上である、請求項11に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項13】
[(A)アルカリ可溶性高分子の含有量]/[(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の含有量]の値が5以下である、請求項1~12のいずれか一項に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項14】
[(A)アルカリ可溶性高分子の含有量]/[(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の含有量]の値が4以下である、請求項13に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項15】
[(A)アルカリ可溶性高分子の含有量]/[(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の含有量]の値が3以下である、請求項14に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項16】
[(A)アルカリ可溶性高分子の含有量]/[(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の含有量]の値が2以下である、請求項15に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項17】
[(A)アルカリ可溶性高分子の含有量]/[(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の含有量]の値が1.5以下である、請求項16に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項18】
前記(A)アルカリ可溶性高分子中におけるスチレン及び/又はスチレン誘導体の構成単位が25質量%以上である、請求項1~17のいずれか一項に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項19】
前記(A)アルカリ可溶性高分子中におけるスチレン及び/又はスチレン誘導体の構成単位が30質量%以上である、請求項18に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項20】
前記(A)アルカリ可溶性高分子中におけるスチレン及び/又はスチレン誘導体の構成単位が35質量%以上である、請求項19に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項21】
前記(A)アルカリ可溶性高分子中におけるスチレン及び/又はスチレン誘導体の構成単位が40質量%以上である、請求項20に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項22】
前記(A)アルカリ可溶性高分子中におけるスチレン及び/又はスチレン誘導体の構成単位が90質量%以下である、請求項1~21のいずれか一項に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項23】
前記(A)アルカリ可溶性高分子が、単量体成分としてベンジル(メタ)アクリレートを更に含む、請求項1~22のいずれか一項に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項24】
前記加熱工程における加熱温度が30℃~150℃の範囲である、請求項1~23のいずれか一項に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項25】
前記露光工程を、描画パターンの直接描画による露光方法、又はフォトマスクの像を、レンズを通して投影させる露光方法により行う、請求項1~24のいずれか一項に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項26】
前記露光工程を、描画パターンの直接描画による露光方法により行う、請求項1~25のいずれか一項に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項27】
前記加熱工程を、露光から15分以内に行う、請求項1~26のいずれか一項に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項28】
前記露光工程を、中心波長390nm未満の第1のレーザー光と、中心波長390nm以上の第2のレーザー光とで露光する方法により行う、請求項1~27のいずれか一項に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項29】
前記第1のレーザー光の中心波長が350nm以上380nm以下であり、前記第2のレーザー光の中心波長が400nm以上410nm以下である、請求項28に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項30】
請求項1~29のいずれか一項に記載の方法により製造されたレジストパターンを有する基板に対してエッチング又はめっきを施し、前記レジストパターンを前記基板から剥離することにより回路基板を形成する、回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感光性樹脂組成物およびレジストパターンの形成方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
パソコン、携帯電話等の電子機器には、部品、半導体等を実装するためにプリント配線板等が用いられる。プリント配線板等の製造用レジストとしては、従来、支持フィルム上に感光性樹脂層を積層し、更に該感光性樹脂層上に必要に応じて保護フィルムを積層して成る感光性樹脂積層体、いわゆるドライフィルムフォトレジスト(以下、DFと呼ぶこともある)が用いられている。感光性樹脂層としては、現在、現像液として弱アルカリ水溶液を用いるアルカリ現像型のものが一般的である。
【0003】
DFを用いてプリント配線板等を作製するには、例えば、以下の工程を経由する。DFが保護フィルムを有する場合には、まず保護フィルムを剥離する。その後、銅張積層板又はフレキシブル基板等の永久回路作製用基板上にラミネーター等を用いてDFをラミネートし、配線パターンマスクフィルム等を通して露光を行う。次に、必要に応じて支持フィルムを剥離し、現像液により未硬化部分(例えばネガ型では未露光部分)の感光性樹脂層を溶解又は分散除去し、基板上に硬化レジストパターン(以下、単にレジストパターンと呼ぶこともある)を形成させる。
【0004】
レジストパターン形成後、回路を形成させるプロセスは、大きく2つの方法に分かれる。第一の方法は、レジストパターンによって覆われていない基板面(例えば銅張積層板の銅面)をエッチング除去した後、レジストパターン部分を現像液よりも強いアルカリ水溶液で除去する方法(エッチング法)である。
第二の方法は、上記基板面に、銅、半田、ニッケル、スズ等のメッキ処理を行った後、第一の方法と同様にしてレジストパターン部分を除去し、更に、現れた基板面(例えば銅張積層板の銅面)をエッチングする方法(メッキ法)である。エッチングには塩化第二銅、塩化第二鉄、銅アンモニア錯体溶液等が用いられる。
【0005】
近年では、電子機器の小型化及び軽量化に伴い、プリント配線板の微細化及び高密度化が進んでおり、上記のような製造工程において高解像性、高密着性を与える高性能DFが求められている。このような高解像性を実現させるものとして、特許文献1には、特定の熱可塑性樹脂、モノマー、及び光重合性開始剤により解像性を高めた感光性樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-249884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
露光工程の後、場合により、感光性樹脂層に対し加熱工程を行い、その後に現像を行うことがある。この加熱工程を実施することにより、高解像性や高密着性の更なる向上が可能となる。しかしながら、露光後加熱工程を加えても、従来の感光性樹脂組成物では密着性の向上が不十分であったり、露光後の経過時間が長くなると良好な密着性が得られないという課題があった。
【0008】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、本発明の目的は、
露光後に加熱してから現像したときの密着性を著しく向上させることができ、特には露光後の経過時間が長くなったときにおいても良好な密着性を実現する感光性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討を続けた結果、感光性樹脂組成物を構成するアルカリ可溶性高分子において、特定の構成単位を有する単量体成分を特定量で用いることにより上記目的を達成することができることに想到し、本発明を完成させるに至った。
また、本発明者らは鋭意検討を続けた結果、感光性樹脂組成物を構成するアルカリ可溶性高分子において、特定の光重合開始剤を用いることにより上記目的を達成することができることに想到し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
露光後、加熱してから現像して樹脂硬化物を得るための感光性樹脂組成物であって、前記感光性樹脂組成物が、該感光性樹脂組成物の全固形分質量基準で、以下の成分:
(A)アルカリ可溶性高分子:10質量%~90質量%;
(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物:5質量%~70質量%;及び
(C)光重合開始剤:0.01質量%~20質量%;
を含み、
前記(A)アルカリ可溶性高分子全体におけるスチレン及び/又はスチレン誘導体の構成単位が15質量%以上であることを特徴とする感光性樹脂組成物。
[2]
前記(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物として、ビスフェノールA骨格の濃度が0.18mol/100g以上である化合物(B-1)の含有量が、前記感光性樹脂組成物の固形分に対して0以上18質量%以下である、[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[3]
更に(D)禁止剤を含む、[1]または[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[4]
更に(E)ベンゾトリアゾール誘導体を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[5]
前記(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物は、エチレン性不飽和二重結合を3個以上有する(メタ)アクリレート化合物を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[6]
前記(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物は、エチレン性不飽和二重結合を4個以上有する(メタ)アクリレート化合物を含む、[5]に記載の感光性樹脂組成物。
[7]
前記(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物は、エチレン性不飽和二重結合を6個以上有する(メタ)アクリレート化合物を含む、[6]に記載の感光性樹脂組成物。
[8]
[(A)アルカリ可溶性高分子の含有量]/[(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の含有量]の値が0.94以上である、[1]~[7]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[9]
[(A)アルカリ可溶性高分子の含有量]/[(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の含有量]の値が1.04以上である、[8]に記載の感光性樹脂組成物。
[10]
[(A)アルカリ可溶性高分子の含有量]/[(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の含有量]の値が1.11以上である、[9]に記載の感光性樹脂組成物。
[11]
[(A)アルカリ可溶性高分子の含有量]/[(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の含有量]の値が1.21以上である、[10]に記載の感光性樹脂組成物。
[12]
[(A)アルカリ可溶性高分子の含有量]/[(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の含有量]の値が1.30以上である、[11]に記載の感光性樹脂組成物。
[13]
[(A)アルカリ可溶性高分子の含有量]/[(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の含有量]の値が5以下である、[1]~[12]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[14]
[(A)アルカリ可溶性高分子の含有量]/[(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の含有量]の値が4以下である、[13]に記載の感光性樹脂組成物。
[15]
[(A)アルカリ可溶性高分子の含有量]/[(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の含有量]の値が3以下である、[14]に記載の感光性樹脂組成物。
[16]
[(A)アルカリ可溶性高分子の含有量]/[(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の含有量]の値が2以下である、[15]に記載の感光性樹脂組成物。
[17]
[(A)アルカリ可溶性高分子の含有量]/[(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の含有量]の値が1.5以下である、[16]に記載の感光性樹脂組成物。
[18]
露光後、加熱してから現像して樹脂硬化物を得るための感光性樹脂組成物であって、前記感光性樹脂組成物が、前記感光性樹脂組成物の全固形分質量基準で、以下の成分:
(A)アルカリ可溶性高分子:10質量%~90質量%;
(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物:5質量%~70質量%;及び
(C)光重合開始剤:0.01質量%~20質量%;
を含み、
前記(C)光重合開始剤がアントラセン及び/又はアントラセン誘導体を含むことを特徴とする感光性樹脂組成物。
[19]
前記アントラセン誘導体は、9位及び/又は10位に、置換基を有していてもよい炭素数1~40のアルコキシ基及び/又は置換基を有していてもよい炭素数6~40のアリール基を有する、[18]に記載の感光性樹脂組成物。
[20]
前記アントラセン誘導体は、9,10位に、置換基を有していてもよい炭素数1~40のアルコキシ基及び/又は置換基を有していてもよい炭素数6~40のアリール基を有する、[18]又は[19]に記載の感光性樹脂組成物。
[21]
前記(C)光重合開始剤は、9,10-ジフェニルアントラセンを含む、[20]に記載の感光性樹脂組成物。
[22]
前記(C)光重合開始剤は、9,10-ジアルコキシアントラセンを含む、[20]に記載の感光性樹脂組成物。
[23]
前記(C)光重合開始剤は、ハロゲン原子を有するアントラセン誘導体を含む、[18]~[22]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[24]
前記(C)光重合開始剤は、9,10-ジアルコキシアントラセンのハロゲン置換体を含む、[23]に記載の感光性樹脂組成物。
[25]
前記(C)光重合開始剤は、9,10-ジアルコキシアントラセンの9位及び/又は10位のアルコキシ基が1つ以上のハロゲン原子で修飾されている化合物を含む、[24]に記載の感光性樹脂組成物。
[26]
前記(C)光重合開始剤は、アントラセン骨格に直接結合したハロゲン原子を有する化合物を含む、[18]~[25]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[27]
前記(A)アルカリ可溶性高分子中におけるスチレン及び/又はスチレン誘導体の構成単位が15質量%以上である、[18]~[26]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[28]
前記(A)アルカリ可溶性高分子中におけるスチレン及び/又はスチレン誘導体の構成単位が25質量%以上である、[1]~[27]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[29]
前記(A)アルカリ可溶性高分子中におけるスチレン及び/又はスチレン誘導体の構成単位が30質量%以上である、[28]に記載の感光性樹脂組成物。
[30]
前記(A)アルカリ可溶性高分子中におけるスチレン及び/又はスチレン誘導体の構成単位が35質量%以上である、[29]に記載の感光性樹脂組成物。
[31]
前記(A)アルカリ可溶性高分子中におけるスチレン及び/又はスチレン誘導体の構成単位が40質量%以上である、[30]に記載の感光性樹脂組成物。
[32]
前記(A)アルカリ可溶性高分子中におけるスチレン及び/又はスチレン誘導体の構成単位が90質量%以下である、[1]~[31]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[33]
前記(A)アルカリ可溶性高分子が、単量体成分としてベンジル(メタ)アクリレートを更に含む、[1]~[32]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[34]
[1]~[33]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を露光する工程と、露光された前記感光性樹脂組成物を加熱する加熱工程と、加熱された前記感光性樹脂組成物を現像する現像工程と、を含むレジストパターンの形成方法。
[35]
前記加熱工程における加熱温度が30℃~150℃の範囲である、[34]に記載のレジストパターンの形成方法。
[36]
前記露光工程を、描画パターンの直接描画による露光方法、又はフォトマスクの像を、レンズを通して投影させる露光方法により行う、[34]又は[35]に記載のレジストパターンの形成方法。
[37]
前記露光工程を、描画パターンの直接描画による露光方法により行う、[34]又は[35]に記載のレジストパターンの形成方法。
[38]
前記加熱工程を、露光から15分以内に行う、[34]~[37]のいずれかに記載のレジストパターンの形成方法。
[39]
前記露光工程を、中心波長390nm未満の第1のレーザー光と、中心波長390nm以上の第2のレーザー光とで露光する方法により行う、[34]~[38]のいずれかに記載のレジストパターンの形成方法。
[40]
前記第1のレーザー光の中心波長が350nm以上380nm以下であり、前記第2のレーザー光の中心波長が400nm以上410nm以下である、[39]に記載のレジストパターンの形成方法。
[41]
[34]~[40]のいずれかに記載の方法により製造されたレジストパターンを有する基板に対してエッチング又はめっきを施すことにより回路基板を形成する、回路基板の製造方法。
[42]
中心波長390nm未満の第1のレーザー光と、中心波長390nm以上の第2のレーザー光とで露光して樹脂硬化物を得るための感光性樹脂組成物である、[1]~[33]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[43]
前記第1のレーザー光の中心波長が350nm以上380nm以下であり、前記第2のレーザー光の中心波長が400nm以上410nm以下である、[42]に記載の感光性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、露光後に加熱してから現像したときの密着性を著しく向上させることができ、特には露光後の経過時間が長くなったときにおいても良好な密着性を実現する感光性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための例示の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。また、本明細書における各種測定値については、特に断りのない限りにおいて、本開示の[実施例]の項に記載される方法又はこれと同等であることが当業者に理解される方法に準じて測定される。
【0012】
[感光性樹脂組成物]
本発明の感光性樹脂組成物は、露光後、加熱してから現像して樹脂硬化物を得るための感光性樹脂組成物であって、感光性樹脂組成物が、該感光性樹脂組成物の全固形分質量基準で、以下の成分:(A)アルカリ可溶性高分子:10質量%~90質量%;(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物:5質量%~70質量%;及び(C)光重合開始剤:0.01質量%~20質量%;を含む。
そして特に本実施形態の感光性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性高分子が複数種類のアルカリ可溶性高分子からなる場合には、(A)アルカリ可溶性高分子全体におけるスチレン及び/又はスチレン誘導体の構成単位が15質量%以上であることを特徴とする。
【0013】
感光性樹脂組成物から得られるドライフィルムレジストは、通常、露光直後に加熱をしないと密着性向上効果は得られないが、本発明の感光性樹脂組成物から得られるドライフィルムレジストにおいては、露光後の経過時間が長くなったときにおいても良好な密着性(つまり、細いレジスト)を発現することができる。本発明の感光性樹脂組成物は、この特性に適した組成を有するものである。
【0014】
本実施形態の感光性樹脂組成物では、(A)アルカリ可溶性高分子が複数種類のアルカリ可溶性高分子を含む場合には、(A)アルカリ可溶性高分子全体におけるスチレン及び/又はスチレン誘導体の構成単位が15質量%以上であることにより、露光後に加熱してから現像したときの密着性を著しく向上させることができ、特に露光後の経過時間が長くなったときにおいても良好な密着性を得ることができる。
以下、各成分を順に説明する。
【0015】
<(A)アルカリ可溶性高分子>
本開示で、(A)アルカリ可溶性高分子は、アルカリ物質に溶け易い高分子を包含する。より具体的には、(A)アルカリ可溶性高分子に含まれるカルボキシル基の量は、酸当量で100~600であり、好ましくは250~450である。酸当量とは、その分子中に1当量のカルボキシル基を有する重合体の質量(単位:グラム)を言う。(A)アルカリ可溶性高分子中のカルボキシル基は、感光性樹脂層に、アルカリ水溶液に対する現像性及び剥離性を与えるために必要である。酸当量を100以上にすることは、現像耐性、解像性、及び密着性を向上させる観点から好ましい。そして酸当量を250以上にすることがより好ましい。一方で、酸当量を600以下にすることは、現像性及び剥離性を向上させる観点から好ましい。そして酸当量を450以下にすることがより好ましい。本開示で、酸当量は、電位差滴定装置を用い、0.1mol/LのNaOH水溶液で滴定する電位差滴定法により測定される値である。
【0016】
(A)アルカリ可溶性高分子の重量平均分子量は、5,000~500,000であることが好ましい。重量平均分子量を500,000以下にすることは、解像性及び現像性を向上させる観点から好ましい。重量平均分子量を100,000以下にすることがより好ましく、70,000以下にすることが更に好ましく、60,000以下にすることが更に好ましく、50,000以下にすることが特に好ましい。一方で、重量平均分子量を5,000以上にすることは、現像凝集物の性状、並びに感光性樹脂積層体とした場合のエッジフューズ性及びカットチップ性等の未露光膜の性状を制御する観点から好ましい。重量平均分子量を10,000以上にすることがより好ましく、20,000以上にすることが更に好ましい。エッジフューズ性とは、感光性樹脂積層体としてロール状に巻き取った場合に、ロールの端面からの、感光性樹脂層(すなわち感光性樹脂組成物から成る層)のはみ出し易さの程度をいう。カットチップ性とは、未露光膜をカッターで切断した場合に、チップの飛び易さの程度をいう。このチップが感光性樹脂積層体の上面等に付着すると、後の露光工程等でマスクに転写して、不良品の原因となる。(A)アルカリ可溶性高分子の分散度は、1.0~6.0であることが好ましく、1.0~5.0であることがより好ましく、1.0~4.0であることが更に好ましく、1.0~3.0であることが更に好ましい。
【0017】
本実施形態では、感光性樹脂組成物は、露光後に加熱してから現像したときの密着性を著しく向上させることができ、特には露光後の経過時間が長くなったときにおいても良好な密着性を発現する観点から、(A)アルカリ可溶性高分子として、芳香族炭化水素基を有する単量体成分を含むものであることが好ましい。なお、このような芳香族炭化水素基としては、例えば、置換又は非置換のフェニル基や、置換又は非置換のアラルキル基が挙げられる。この(A)アルカリ可溶性高分子における芳香族炭化水素基を有する単量体成分の含有割合は、全単量体成分の合計質量を基準として、20質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが更に好ましく、55質量%以上であることが特に好ましく、60質量%以上であることが最も好ましい。上限としては特に限定されないが、好ましくは95質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。なお、(A)アルカリ可溶性高分子を複数種類含有する場合における、芳香族炭化水素基を有する単量体成分の含有割合は、重量平均値として求めた。
【0018】
前記芳香族炭化水素基を有する単量体としては、例えば、アラルキル基を有するモノマー、スチレン、及び重合可能なスチレン誘導体が挙げられる。中でも、アラルキル基を有するモノマー、又はスチレンが好ましい。
【0019】
アラルキル基としては、置換又は非置換のフェニルアルキル基(ベンジル基を除く)や、置換又は非置換のベンジル基等が挙げられ、置換又は非置換のベンジル基が好ましい。
フェニルアルキル基を有するコモノマーとしては、フェニルエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ベンジル基を有するコモノマーとしては、ベンジル基を有する(メタ)アクリレート、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、クロロベンジル(メタ)アクリレート等;ベンジル基を有するビニルモノマー、例えば、ビニルベンジルクロライド、ビニルベンジルアルコール等が挙げられる。中でもベンジル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0020】
芳香族炭化水素基を有する単量体成分を含有する(A)アルカリ可溶性高分子は、芳香族炭化水素基を有する単量体と、後述する第一の単量体の少なくとも1種及び/又は後述する第二の単量体の少なくとも1種とを重合することにより得られることが好ましい。
芳香族炭化水素基を有する単量体成分を含有しない(A)アルカリ可溶性高分子は、後述する第一の単量体の少なくとも1種を重合することにより得られることが好ましく、第一の単量体の少なくとも1種と後述する第二の単量体の少なくとも1種とを共重合することにより得られることがより好ましい。
【0021】
第一の単量体は、分子中にカルボキシル基を有する単量体である。第一の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、イタコン酸、4-ビニル安息香酸、マレイン酸無水物、マレイン酸半エステル等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸が好ましい。
なお、本明細書において「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味し、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基を意味し、かつ「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」又は「メタクリレート」を意味する。
【0022】
第一の単量体の共重合割合は、全単量体成分の合計質量を基準として、10~50質量%であることが好ましい。該共重合割合を10質量%以上にすることは、良好な現像性を発現させる観点、エッジフューズ性を制御するなどの観点から好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましい。該共重合割合を50質量%以下にすることは、レジストパターンの高解像性及びスソ形状の観点から、更にはレジストパターンの耐薬品性の観点から好ましく、これらの観点においては、35質量%以下がより好ましく、32質量%以下が更に好ましく、30質量%以下が特に好ましい。
【0023】
第二の単量体は、非酸性であり、かつ分子中に重合性不飽和基を少なくとも1個有する単量体である。第二の単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類;酢酸ビニル等のビニルアルコールのエステル類;並びに(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。中でも、メチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及びn-ブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
アラルキル基を有する単量体、及び/又はスチレンを単量体として含有することが、露光後に加熱してから現像したときの密着性を著しく向上させることができ、特には露光後の経過時間が長くなったときにおいても良好な密着性を発現する観点から好ましい。例えば、メタクリル酸とベンジルメタクリレートとスチレンを含む共重合体、メタクリル酸とメチルメタクリレートとベンジルメタクリレートとスチレンを含む共重合体等が好ましい。
【0024】
(A)アルカリ可溶性高分子は、1種単独で使用することができ、或いは2種以上を混合して使用してもよい。2種以上を混合して使用する場合には、芳香族炭化水素基を有する単量体成分を含むアルカリ可溶性高分子を2種類混合使用すること、又は芳香族炭化水素基を有する単量体成分を含むアルカリ可溶性高分子と、芳香族炭化水素基を有する単量体成分を含まないアルカリ可溶性高分子と、を混合使用することが好ましい。後者の場合、芳香族炭化水素基を有する単量体成分を含むアルカリ可溶性高分子の使用割合は、(A)アルカリ可溶性高分子の全部に対して、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが最も好ましい。
【0025】
本実施形態の(A)アルカリ可溶性高分子は、単量体成分としてスチレン及び/又はスチレン誘導体の構成単位を52質量%以上含むアルカリ可溶性高分子(A-1)を、感光性樹脂組成物中の固形分に対して3質量%以上含むことが好ましい。これにより、露光後に加熱してから現像したときの密着性を著しく向上させることができ、特に露光後の経過時間が長くなったときにおいても良好な密着性を得ることができる。同様の観点から、(A)アルカリ可溶性高分子は、アルカリ可溶性高分子(A-1)を、感光性樹脂組成物中の固形分に対して10質量%以上含むことがより好ましく、15質量%以上含むことが更に好ましく、20質量%以上含むことが特に好ましく、30質量%以上含むことが最も好ましい。
スチレン誘導体としては、例えば、メチルスチレン、ビニルトルエン、tert-ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、4-ビニル安息香酸、スチレンダイマー、スチレントリマー等が挙げられる。
【0026】
特に、本実施形態では、(A)アルカリ可溶性高分子が複数種類のアルカリ可溶性高分子からなる場合には、(A)アルカリ可溶性高分子全体におけるスチレン及び/又はスチレン誘導体の構成単位が15質量%以上である。これにより、露光後に加熱してから現像したときの密着性を著しく向上させることができ、特に露光後の経過時間が長くなったときにおいても良好な密着性を得ることができる。スチレン骨格は疎水性であるため現像液に対する膨潤性を抑制でき、良好な密着性を発現可能である。(A)アルカリ可溶性高分子中におけるスチレン及び/又はスチレン誘導体の構成単位は、25質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、35質量%以上であることがさらに好ましく、40質量%以上であることが特に好ましい。
【0027】
ただし、スチレン骨格の含有量が多いと樹脂のモビリティが低下するため反応性が上がりきらず、所望の密着性を得ることができない。また、露光後の経過時間が長くなると系内のラジカルが失活していくため、露光後の加熱による密着性向上効果は低減していく。(A)アルカリ可溶性高分子中におけるスチレン及び/又はスチレン誘導体の構成単位の上限としては、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、75質量%以下であることが更に好ましく、70質量%以下であることが特に好ましい。
【0028】
このように本発明においては、(A)アルカリ可溶性高分子全体におけるスチレン及び/又はスチレン誘導体の構成単位が15質量%以上であり、かつ露光後に加熱してから現像することにより、スチレン骨格の含有量が多い系であっても加熱により樹脂のモビリティが向上し、スチレン骨格の疎水性と炭素-炭素二重結合の反応性を高度に両立することができ、その結果、密着性を著しく向上させることができたと思われる。そして、密着性が著しく向上することにより、露光後の経過時間が長くなったときにおいても良好な密着性を得ることができたと考えられる。
【0029】
また、露光後に加熱してから現像したときの密着性を著しく向上させることができ、特には露光後の経過時間が長くなったときにおいても良好な密着性を発現する観点から、アルカリ可溶性高分子(A-1)が、単量体成分として(メタ)アクリル酸の構成単位を25質量%以上含むことが好ましく、26質量%以上含むことがより好ましく、27質量%以上含むことが更に好ましく、28質量%以上含むことが特に好ましく、29質量%以上含むことが最も好ましい。同様の観点から、35質量%以下含むことが好ましく、32質量%以下含むことがより好ましく、30質量%以下含むことが更に好ましい。
【0030】
(A)アルカリ可溶性高分子の合成は、上記で説明された単数又は複数の単量体を、アセトン、メチルエチルケトン、イソプロパノール等の溶剤で希釈した溶液に、過酸化ベンゾイル、アゾイソブチロニトリル等のラジカル重合開始剤を適量添加し、加熱攪拌することにより行われることが好ましい。混合物の一部を反応液に滴下しながら合成を行う場合もある。反応終了後、さらに溶剤を加えて、所望の濃度に調整する場合もある。合成手段としては、溶液重合以外に、塊状重合、懸濁重合、又は乳化重合を用いてもよい。
【0031】
(A)アルカリ可溶性高分子のガラス転移温度Tgの重量平均値Tgtotalが、30℃以上150℃以下であることが好ましい。Tgtotalは、後述される実施例に記載の方法により算出される。感光性樹脂組成物において、150℃以下のTgtotalを有する(A)アルカリ可溶性高分子を使用することによって、露光後に加熱してから現像したときの密着性を著しく向上させることができ、特には露光後の経過時間が長くなったときにおいても良好な密着性を発現することができる。この観点から、(A)アルカリ可溶性高分子のTgtotalは、135℃以下であることがより好ましく、130℃以下であることが更に好ましく、125℃以下であることがもっと好ましく、120℃以下であることが更に好ましく、110℃以下であることが特に好ましい。また、30℃以上のTgtotalを有する(A)アルカリ可溶性高分子を使用することは、耐エッジフューズ性を向上させる観点から好ましい。この観点から、(A)アルカリ可溶性高分子のTgtotalは、40℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることが更に好ましく、60℃以上であることが特に好ましい。
【0032】
(A)アルカリ可溶性高分子の、感光性樹脂組成物の全固形分質量に対する割合は、好ましくは10質量%~90質量%の範囲であり、より好ましくは30質量%~70質量%であり、更に好ましくは40質量%~60質量%である。感光性樹脂組成物に対する(A)アルカリ可溶性高分子の割合を90質量%以下にすることは、現像時間を制御する観点から好ましい。一方で、感光性樹脂組成物に対する(A)アルカリ可溶性高分子の割合を10質量%以上にすることは、耐エッジフューズ性を向上させる観点から好ましい。
【0033】
<(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物>
(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物は、硬化性及び(A)アルカリ可溶性高分子との相溶性の観点から、分子内に(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含むことが好ましい。(B)化合物中の(メタ)アクリロイル基の数は、1個以上であればよい。
【0034】
(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物は、その構造中にエチレン性不飽和基を有することによって重合性を有する化合物である。エチレン性不飽和結合は、より好ましくはメタクリロイル基に由来する。密着性の観点、及び現像液発泡性抑制の観点から、(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物は、炭素数3以上のアルキレンオキシド構造を有することが好ましい。アルキレンオキシド構造の炭素数は、より好ましくは3~6、更に好ましくは3~4である。
【0035】
(メタ)アクリロイル基を1個有する(B)化合物としては、例えば、ポリアルキレンオキシドの片方の末端に(メタ)アクリル酸を付加した化合物、又は、ポリアルキレンオキシドの片方の末端に(メタ)アクリル酸を付加し、他方の末端をアルキルエーテル化若しくはアリルエーテル化した化合物、フタル酸系化合物等を挙げることができ、剥離性や硬化膜柔軟性の観点で好ましい。
【0036】
このような化合物としては、例えば、ポリエチレングリコールをフェニル基に付加した化合物の(メタ)アクリレートであるフェノキシヘキサエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、平均2モルのプロピレンオキサイドを付加したポリプロピレングリコールと、平均7モルのエチレンオキサイドを付加したポリエチレングリコールと、をノニルフェノールに付加した化合物の(メタ)アクリレートである4-ノルマルノニルフェノキシヘプタエチレングリコールジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、平均1モルのプロピレンオキサイドを付加したポリプロピレングリコールと、平均5モルのエチレンオキサイドを付加したポリエチレングリコールと、をノニルフェノールに付加した化合物の(メタ)アクリレートである4-ノルマルノニルフェノキシペンタエチレングリコールモノプロピレングリコール(メタ)アクリレート、平均8モルのエチレンオキサイドを付加したポリエチレングリコールをノニルフェノールに付加した化合物のアクリレートである4-ノルマルノニルフェノキシオクタエチレングリコール(メタ)アクリレート(例えば東亞合成(株)製、M-114)等が挙げられる。
また、γ-クロロ-β-ヒドロキシプロピル-β'-メタクリロイルオキシエチル-о-フタレートを含むと、上記観点に加えて、感度、解像性、密着性の観点でも好ましい。
【0037】
分子内に(メタ)アクリロイル基を2個有する化合物としては、例えば、アルキレンオキシド鎖の両末端に(メタ)アクリロイル基を有する化合物、又はエチレンオキシド鎖とプロピレンオキシド鎖とがランダム若しくはブロックで結合したアルキレンオキシド鎖の両末端に(メタ)アクリロイル基を有する化合物等を挙げることができる。
【0038】
このような化合物としては、例えば、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘプタエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、オクタエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、デカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、12モルのエチレンオキシド鎖の両末端に(メタ)アクリロイル基を有する化合物等のポリエチレングリコ-ル(メタ)アクリレ-ト等の他、ポリプロピレングリコ-ルジ(メタ)アクリレ-ト、ポリブチレングリコ-ルジ(メタ)アクリレ-ト等を挙げることができる。化合物中にエチレンオキシド基とプロピレンオキシド基とを含むポリアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、平均12モルのプロピレンオキシドを付加したポリプロピレングリコールの両末端にそれぞれ平均3モルのエチレンオキシドを更に付加したグリコールのジメタクリレート、平均18モルのプロピレンオキシドを付加したポリプロピレングリコールの両末端にそれぞれ平均15モルのエチレンオキシドを更に付加したグリコールのジメタクリレート、FA-023M、FA-024M、FA-027M(製品名、日立化成工業製)等が挙げられる。これらは柔軟性、解像性、密着性等の観点で好ましい。
【0039】
分子内に(メタ)アクリロイル基を2個有する化合物の別の例として、ビスフェノールAをアルキレンオキシド変性することにより両末端に(メタ)アクリロイル基を有している化合物が、解像性及び密着性の観点では好ましい。
具体的には下記一般式(I):
【化1】
{式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、AはCであり、BはCであり、n1及びn3は各々独立に1~39の整数であり、かつn1+n3は2~40の整数であり、n2及びn4は各々独立に0~29の整数であり、かつn2+n4は0~30の整数であり、-(A-O)-及び-(B-O)-の繰り返し単位の配列は、ランダムであってもブロックであってもよい。そして、ブロックの場合、-(A-O)-と-(B-O)-とのいずれかがビスフェニル基側でもよい。}で表される化合物を使用することができる。
例えば、ビスフェノ-ルAの両端にそれぞれ平均5モルずつのエチレンオキサイドを付加したポリエチレングリコ-ルのジメタクリレ-ト、ビスフェノ-ルAの両端にそれぞれ平均2モルずつのエチレンオキサイドを付加したポリエチレングリコ-ルのジメタクリレ-ト、ビスフェノ-ルAの両端にそれぞれ平均1モルずつのエチレンオキサイドを付加したポリエチレングリコ-ルのジメタクリレ-トが、解像性、密着性の点で好ましい。
また、上記一般式(I)中の芳香環が、ヘテロ原子及び/又は置換基を有する化合物を用いてもよい。
【0040】
ヘテロ原子としては、例えば、ハロゲン原子等が挙げられ、そして置換基としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基、炭素数6~18のアリール基、フェナシル基、アミノ基、炭素数1~10のアルキルアミノ基、炭素数2~20のジアルキルアミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボニル基、メルカプト基、炭素数1~10のアルキルメルカプト基、アリール基、水酸基、炭素数1~20のヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、アルキル基の炭素数が1~10のカルボキシアルキル基、アルキル基の炭素数が1~10のアシル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルコキシカルボニル基、炭素数2~10のアルキルカルボニル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のN-アルキルカルバモイル基若しくは複素環を含む基、又はこれらの置換基で置換されたアリール基等が挙げられる。これらの置換基は縮合環を形成しているか、又はこれらの置換基中の水素原子がハロゲン原子等のヘテロ原子に置換されていてもよい。一般式(I)中の芳香環が複数の置換基を有する場合には、複数の置換基は同一であるか、又は異なっていてよい。
【0041】
分子内に(メタ)アクリロイル基を3個以上有する化合物としては、中心骨格として分子内にアルキレンオキシド基を付加させることができる基を3モル以上有し、これにエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、ブチレンオキシ基等のアルキレンオキシ基を付加させて得られたアルコールを(メタ)アクリレートとすることにより得られる。この場合、中心骨格になることができる化合物としては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、イソシアヌレート環等を挙げることができる。これら化合物としては、トリ(メタ)アクリレート、例えば、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(例えばトリメチロールプロパンに平均21モルのエチレンオキサイドを付加したトリメタクリレート、トリメチロールプロパンに平均30モルのエチレンオキサイドを付加したトリメタクリレートが、柔軟性、密着性、ブリードアウト抑制の観点で好ましい)等;テトラ(メタ)アクリレート、例えば、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等;ペンタ(メタ)アクリレート、例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等;ヘキサ(メタ)アクリレート、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。(メタ)アクリロイル基を3個以上有する化合物は露光後に加熱してから現像したときの密着性を著しく向上させることができ、特には露光後の経過時間が長くなったときにおいても良好な密着性を発現する観点で好ましく、メタクリル基を3個以上有する化合物であるとより好ましい。
【0042】
テトラ(メタ)アクリレートとしては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが好ましい。ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートは、ペンタエリスリトールの4つの末端に合計1~40モルのアルキレンオキサイドが付加されているテトラ(メタ)アクリレート等でよい。
ヘキサ(メタ)アクリレートとしては、ジペンタエリスリトールの6つの末端に合計1~40モルのエチレンオキサイドが付加されているヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールの6つの末端に合計1~20モルのε-カプロラクトンが付加されているヘキサ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0043】
前記(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物として、エチレン性不飽和二重結合を3個以上有する(メタ)アクリレート化合物を含むことが、露光後に加熱してから現像したときの密着性を著しく向上させることができ、特には露光後の経過時間が長くなったときにおいても良好な密着性を得ることができる観点から好ましい。同様の観点から、エチレン性不飽和二重結合を4個以上有する(メタ)アクリレート化合物を含むことがより好ましく、エチレン性不飽和二重結合を5個以上有する(メタ)アクリレート化合物を含むことが更に好ましく、エチレン性不飽和二重結合を6個以上有する(メタ)アクリレート化合物を含むことが特に好ましい。また、同様の観点から、これらはメタクリレート化合物であることが好ましい。
【0044】
エチレン性不飽和二重結合を3個以上、4個以上、5個以上、6個以上有するような化合物は、露光による重合時に架橋密度をアップさせる効果があることが考えられるが、官能基数が多いことによる立体障害の影響で、所望の架橋密度が得られないことが多い。本発明においては、好ましくはエチレン性不飽和二重結合を3個以上有する化合物、より好ましくはエチレン性不飽和二重結合を4個以上有する化合物、更に好ましくはエチレン性不飽和二重結合を5個以上有する化合物、特に好ましくはエチレン性不飽和二重結合を6個以上有する化合物を、露光後に加熱処理も行って系内のモビリティを向上させることにより、官能基数が多くても立体障害の影響を低減させ、高い密着性を得ることができることを見出した。
【0045】
好ましくはエチレン性不飽和二重結合を3個以上有する化合物、より好ましくはエチレン性不飽和二重結合を4個以上有する化合物、更に好ましくはエチレン性不飽和二重結合を5個以上有する化合物、特に好ましくはエチレン性不飽和二重結合を6個以上有する化合物の含有量としては、前記感光性樹脂組成物の固形分に対して3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、7質量%以上であることが更に好ましく、10質量%以上であることが特に好ましい。また、含有量の上限値としては、露光後の加熱処理の効果を発現させる観点から、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましく、15質量%以下が特に好ましい。
【0046】
(b1)エチレン性不飽和結合を3個以上有する(メタ)アクリレート化合物としては:
トリ(メタ)アクリレート、例えば、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(例えば、柔軟性、密着性、及びブリードアウト抑制の観点での好適例として、トリメチロールプロパンに平均21モルのエチレンオキサイドを付加したトリ(メタ)アクリレート、及び、トリメチロールプロパンに平均30モルのエチレンオキサイドを付加したトリ(メタ)アクリレート)等;
テトラ(メタ)アクリレート、例えば、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等;
ペンタ(メタ)アクリレート、例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等;
ヘキサ(メタ)アクリレート、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
これらの中でも、テトラ、ペンタ又はヘキサ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0047】
(b1)エチレン性不飽和結合を3個以上有する(メタ)アクリレート化合物は、ブリードアウトの抑制の観点から、好ましくは500以上、より好ましくは700以上、更に好ましくは900以上の重量平均分子量を有する。
【0048】
テトラ(メタ)アクリレートとしては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが好ましい。ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートとしては、ペンタエリスリトールの4つの末端に合計1~40モルのアルキレンオキサイドが付加されているテトラ(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0049】
テトラ(メタ)アクリレートは、下記一般式(II):
【化2】
{式中、R3~R6は、それぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基を表し、Xは、炭素数2~6のアルキレン基を表し、m1、m2、m3及びm4は、それぞれ独立に、0~40の整数であり、m1+m2+m3+m4は、1~40であり、そしてm1+m2+m3+m4が2以上である場合には、複数のXは、互いに同一であるか、又は異なっていてよい}で表されるテトラメタクリレート化合物であることがより好ましい。
【0050】
理論に拘束されることを望むものではないが、一般式(II)で表されるテトラメタクリレート化合物は、基R3~R6を有することにより、H2C=CH-CO-O-部分を有するテトラアクリレートに比べて、アルカリ溶液中での加水分解性が抑制されているものと考えられる。一般式(II)で表されるテトラメタクリレート化合物を含む感光性樹脂組成物を使用することは、露光後に加熱してから現像したときの密着性を著しく向上させることができ、特には露光後の経過時間が長くなったときにおいても良好な密着性を実現する観点から好ましい。
【0051】
一般式(II)において、基R3~R6の少なくとも1つは、メチル基であることが好ましく、そして基R3~R6の全てが、メチル基であることがより好ましい。
【0052】
レジストパターンについて所望の解像性、スソ形状及び残膜率を得るという観点から、一般式(II)において、Xは、-CH2-CH2-であることが好ましい。
【0053】
レジストパターンについて所望の解像性、スソ形状及び残膜率を得るという観点から、一般式(II)において、m1、m2、m3及びm4は、それぞれ独立に、1~20の整数であることが好ましく、2~10の整数であることがより好ましい。更に、一般式(II)において、m1+m2+m3+m4は、1~36又は4~36であることが好ましい。
【0054】
一般式(II)で表される化合物としては、例えば、ペンタエリスリトール(ポリ)アルコキシテトラメタクリレート等が挙げられる。また、本開示において、「ペンタエリスリトール(ポリ)アルコキシテトラメタクリレート」は、上記一般式(II)において、m1+m2+m3+m4=1である「ペンタエリスリトールアルコキシテトラメタクリレート」及びm1+m2+m3+m4=2~40である「ペンタエリスリトールポリアルコキシテトラメタクリレート」の両方を包含する。一般式(II)で表される化合物としては、特開2013-156369号公報に列挙されている化合物、例えば、ペンタエリスリトール(ポリ)アルコキシテトラメタクリレート等が挙げられる。
【0055】
ヘキサ(メタ)アクリレート化合物としては、ジペンタエリスリトールの6つの末端に合計1~24モルのエチレンオキサイドが付加されているヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールの6つの末端に合計1~10モルのε-カプロラクトンが付加されているヘキサ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0056】
露光後に加熱してから現像したときの密着性を著しく向上させることができ、特には露光後の経過時間が長くなったときにおいても良好な密着性を実現する観点から、本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物として、エチレン性不飽和結合を4個以上有し、かつアルキレンオキサイド鎖を有する(メタ)アクリレート化合物を含むことが特に好ましい。この場合、エチレン性不飽和結合は、より好ましくはメタクリロイル基に由来し、そしてアルキレンオキサイド鎖は、より好ましくはエチレンオキサイド鎖である。
【0057】
本実施形態では、露光後に加熱してから現像したときの密着性を著しく向上させることができ、特には露光後の経過時間が長くなったときにおいても良好な密着性を実現する観点から、感光性樹脂組成物は、(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物として、アルキレンオキサイド鎖とジペンタエリスリトール骨格とを有する(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。アルキレンオキサイド鎖としては、例えば、エチレンオキサイド鎖、プロピレンオキサイド鎖、ブチレンオキサイド鎖、ペンチレンオキサイド鎖、へキシレンオキサイド鎖などが挙げられる。感光性樹脂組成物がアルキレンオキサイド鎖を複数含む場合、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。上記の観点から、アルキレンオキサイド鎖としては、エチレンオキサイド鎖、プロピレンオキサイド鎖、及びブチレンオキサイド鎖がより好ましく、エチレンオキサイド鎖、及びプロピレンオキサイド鎖が更に好ましく、エチレンオキサイド鎖が特に好ましい。
【0058】
感光性樹脂組成物において、(A)アルカリ可溶性高分子と、アルキレンオキサイド鎖及びジペンタエリスリトール骨格を有する(メタ)アクリレート化合物とを併用することによって、レジストパターンの耐薬品性、密着性及び解像性のバランスが保たれる傾向にある。
【0059】
アルキレンオキサイド鎖及びジペンタエリスリトール骨格を有する(メタ)アクリレート化合物は、複数の水酸基の少なくとも1つがアルキレンオキシ基で変性されたジペンタエリスリトール化合物と、(メタ)アクリル酸とのエステルである。ジペンタエリスリトール骨格の6つの水酸基が、アルキレンオキシ基で変性されていてもよい。エステル一分子中におけるエステル結合の数は、1~6であってよく、6であることが好ましい。
【0060】
アルキレンオキサイド鎖及びジペンタエリスリトール骨格を有する(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、ジペンタエリスリトールにアルキレンオキサイドが平均4~30モル、平均6~24モル、又は平均10~14モル付加しているヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0061】
具体的には、アルキレンオキサイド鎖及びジペンタエリスリトール骨格を有する(メタ)アクリレート化合物として、露光後に加熱してから現像したときの密着性を著しく向上させることができ、特には露光後の経過時間が長くなったときにおいても良好な密着性を実現する観点から、下記一般式(III):
【化3】
{式中、Rは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、かつnは、0~30の整数であり、かつ全てのnの合計値が1以上である}で表される化合物が好ましい。一般式(III)において、全てのnの平均値が4以上であるか、又はnがそれぞれ1以上であることが好ましい。Rとしてはメチル基が好ましい。
【0062】
同様の観点から、感光性樹脂組成物中の固形分総量に対するアルキレンオキサイド鎖及びジペンタエリスリトール骨格を有する(メタ)アクリレート化合物の含有量は、好ましくは1質量%~50質量%、より好ましくは5質量%~40質量%、更に好ましくは7質量%~30質量%の範囲内である。
【0063】
感光性樹脂組成物の固形分総量に対して、(b1)エチレン性不飽和結合を3個以上有する(メタ)アクリレート化合物の含有量が、0質量%を超え、かつ40質量%以下であることが好ましい。この含有量が、0質量%を超えると、露光後に加熱してから現像したときの密着性を著しく向上させることができ、特には露光後の経過時間が長くなったときにおいても良好な密着性を実現する傾向にあり、40質量%以下であると、硬化レジストの柔軟性が改善し、かつ剥離時間が短縮する傾向にある。この含有量は、2質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、4質量%以上25質量%以下であることが更に好ましい。
【0064】
密着性の観点、及び現像液発泡性抑制の観点から、感光性樹脂組成物は、(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物として、(b2)ブチレンオキサイド鎖又はプロピレンオキサイド鎖と、1個又は2個の(メタ)アクリロイル基と、を有する化合物を含むことが好ましい。
(b2)ブチレンオキサイド鎖又はプロピレンオキサイド鎖と、1個又は2個の(メタ)アクリロイル基とを有する化合物は、ブリードアウトの抑制の観点から、好ましくは500以上、より好ましくは700以上、更に好ましくは1000以上の分子量を有する。
【0065】
(b2)ブチレンオキサイド鎖又はプロピレンオキサイド鎖と、1個又は2個の(メタ)アクリロイル基とを有する化合物としては、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。(b2)ブチレンオキサイド鎖又はプロピレンオキサイド鎖と、1個又は2個の(メタ)アクリロイル基とを有する化合物は、ブチレンオキサイド鎖又はプロピレンオキサイド鎖に加え、エチレンオキサイド鎖を含んでいてもよい。
【0066】
具体的には、(b2)ブチレンオキサイド鎖又はプロピレンオキサイド鎖と、1個又は2個の(メタ)アクリロイル基とを有する化合物は、好ましくは1~20個、より好ましくは4~15個、更に好ましくは6~12個のC48O又はC36Oを有する(メタ)アクリレート又はジ(メタ)アクリレートである。
【0067】
感光性樹脂組成物の固形分総量に対して、(b2)ブチレンオキサイド鎖又はプロピレンオキサイド鎖と、1個又は2個の(メタ)アクリロイル基とを有する化合物の含有量が、0質量%を超え、かつ20質量%以下であることが好ましい。
【0068】
本実施形態では、ドライフィルムレジストの構成成分のブリードアウトを抑制して保存安定性を向上させるために、(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物の固形分総量を基準として、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、特に好ましくは100質量%が、500以上の重量平均分子量を有する化合物である。ブリードアウトの抑制及びレジストパターンの耐薬品性の観点から、(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物の重量平均分子量は、好ましくは760以上、より好ましくは800以上、更に好ましくは830以上、特に好ましくは900以上である。(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物の重量平均分子量は、(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物の分子構造から計算される分子量として求めることができる。複数種類の(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物が存在する場合は、各化合物の分子量を含有量で加重平均することにより求めることができる。
【0069】
レジストパターンの、耐薬品性、密着性、高解像性、及びスソ形状の観点から、(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物中におけるメタクリロイル基の濃度は、好ましくは0.20mol/100g以上、より好ましくは0.30mol/100g以上、更に好ましくは0.35mol/100g以上である。メタクリロイル基の濃度の上限値は、重合性及びアルカリ現像性が確保されるのであれば限定されないが、例えば、0.90mol/100g以下又は0.80mol/100g以下でよい。
【0070】
同様の観点から、(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物中における、メタクリロイル基の濃度/(メタクリロイル基の濃度+アクリロイル基の濃度)の値は、好ましくは0.50以上、より好ましくは0.60以上、更に好ましくは0.80以上、特に好ましくは0.90以上、最も好ましくは0.95以上である。
【0071】
上記で説明された(メタ)アクリレート化合物は、それぞれ独立に、又は組み合わせて使用されることができる。感光性樹脂組成物は、(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物として、その他の化合物も含んでよい。その他の化合物としては、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート、多価アルコールにα,β-不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、グリシジル基含有化合物にα,β-不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0072】
(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の感光性樹脂組成物の全固形分質量に対する割合は、好ましくは5質量%~70質量%である。この割合を5質量%以上にすることは、感度、解像性及び密着性の観点から好ましい。この割合を20質量%以上にすることがより好ましく、30質量%以上にすることが更に好ましい。一方で、この割合を70質量%以下にすることは、エッジフューズ及び硬化レジストの剥離遅延を抑えるという観点から好ましい。この割合を50質量%以下にすることがより好ましい。
【0073】
(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物として、ビスフェノールA骨格の濃度が0.18mol/100g以上である化合物(B-1)の含有量が、前記感光性樹脂組成物の固形分に対して0以上18質量%以下であることが好ましい。これにより、露光後に加熱してから現像したときの密着性を著しく向上させることができ、特には露光後の経過時間が長くなったときにおいても良好な密着性を得ることができる。ビスフェノールA骨格の濃度が高いエチレン性不飽和二重結合を有する化合物は、一般的にはその疎水性から密着性が向上するケースがある。
【0074】
本発明においては、ビスフェノールAのリジッドな骨格により、露光後に加熱を行ってもモビリティが向上せず、密着性向上の効果は小さいことを見出した。よって本発明においては、上記の観点から、(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物として、ビスフェノールA骨格の濃度が0.18mol/100g以上である化合物(B-1)の含有量が、前記感光性樹脂組成物の固形分に対して18質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10量%以下であることが更に好ましく、6質量%以下であることがもっと好ましく、3質量%以下であることが特に好ましく、1質量%以下であることが最も好ましい。同様の観点から、(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物として、ビスフェノールA骨格の濃度が0.20mol/100g以上である化合物(B-1)の含有量が、前記感光性樹脂組成物の固形分に対して18質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10量%以下であることが更に好ましく、6質量%以下であることがもっと好ましく、3質量%以下であることが特に好ましく、1質量%以下であることが最も好ましい。
【0075】
特に本実施形態においては、[(A)アルカリ可溶性高分子の含有量]/[(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の含有量]の値が0.94以上であることが好ましい。これにより、露光後に加熱してから現像したときの密着性を著しく向上させることができ、特には露光後の経過時間が長くなったときにおいても良好な密着性を得ることができる。同様の観点から、[(A)アルカリ可溶性高分子の含有量]/[(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の含有量]としては、1.04以上であることがより好ましく、1.11以上であることが更に好ましく、1.21以上であることが特に好ましく、1.30以上であることがもっと好ましく、1.35以上であることが最も好ましい。
[(A)アルカリ可溶性高分子の含有量]/[(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の含有量]の値を大きくすることは、一般的にはアルカリ可溶性、つまりは親水性の成分が多くなり、かつ系内のTgも上がりモビリティが低下することにより二重結合反応率が低下し、結果として密着性が低下することが一般的である。しかし本発明においては、[(A)アルカリ可溶性高分子の含有量]/[(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の含有量]の値が大きく、かつ露光後に加熱処理も行うことにより、[(A)アルカリ可溶性高分子の含有量]/[(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の含有量]の値が大きくても系内のモビリティが向上して二重結合反応率も向上し、更にはアルカリ可溶性高分子が有するカルボキシル基の銅との相互作用による密着性向上の効果も加わり、本発明の効果を実現できたと考える。
【0076】
[(A)アルカリ可溶性高分子の含有量]/[(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の含有量]の値が5以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましく、3以下であることがさらに好ましく、2以下であることが特に好ましく、1.5以下であることが最も好ましい。
【0077】
<(C)光重合開始剤>
(C)光重合開始剤は、光によりモノマーを重合させる化合物である。
(C-1)光重合開始剤
本実施形態の感光性樹脂組成物は、(C-1)光重合開始剤((C)光重合開始剤)として本技術分野において一般に知られている化合物を含む。
【0078】
感光性樹脂組成物中の(C-1)光重合開始剤の総含有量は、好ましくは0.01~20質量%、より好ましくは0.05質量%~10質量%、さらに好ましくは0.1質量%~7質量%、特に好ましくは0.1質量%~6質量%の範囲内である。(C-1)光重合開始剤の総含有量は、十分な感度を得るという観点から0.01質量%以上であることが好ましく、レジスト底面まで光を充分に透過させて、良好な高解像性を得るという観点から20質量%以下であることが好ましい。
【0079】
(C-1)光重合開始剤としては、キノン類、芳香族ケトン類、アセトフェノン類、アシルフォスフィンオキサイド類、ベンゾイン又はベンゾインエーテル類、ジアルキルケタール類、チオキサントン類、ジアルキルアミノ安息香酸エステル類、オキシムエステル類、アクリジン類(例えば9-フェニルアクリジン、ビスアクリジニルヘプタン、9-(p-メチルフェニル)アクリジン、9-(m-メチルフェニル)アクリジンが感度、解像性、密着性の点で好ましい)が挙げられ、更にヘキサアリールビイミダゾール、ピラゾリン化合物、アントラセン化合物(例えば9,10-ジフェニルアントラセン、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセンが感度、解像性、密着性の点で好ましい)、クマリン化合物(例えば7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリンが感度、解像性、密着性の点で好ましい)、N-アリールアミノ酸又はそのエステル化合物(例えばN-フェニルグリシンが感度、解像性、密着性の点で好ましい)、及びハロゲン化合物(例えばトリブロモメチルフェニルスルホン)などが挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用されることができる。その他、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイルージフェニルーホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキシドを用いてもよい。
【0080】
芳香族ケトン類としては、例えば、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン[4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン]、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノンを挙げることができる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用されることができる。これらの中でも、密着性の観点から、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンが好ましい。
【0081】
さらに、透過率の観点から、感光性樹脂組成物中の芳香族ケトン類の含有量は、好ましくは0.01質量%~0.5質量%、さらに好ましくは0.02質量%~0.3質量%の範囲内である。
【0082】
ヘキサアリールビイミダゾールの例としては、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾール、2,2’,5-トリス-(o-クロロフェニル)-4-(3,4-ジメトキシフェニル)-4’,5’-ジフェニルビイミダゾール、2,4-ビス-(o-クロロフェニル)-5-(3,4-ジメトキシフェニル)-ジフェニルビイミダゾール、2,4,5-トリス-(o-クロロフェニル)-ジフェニルビイミダゾール、2-(o-クロロフェニル)-ビス-4,5-(3,4-ジメトキシフェニル)-ビイミダゾール、2,2’-ビス-(2-フルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール、2,2’-ビス-(2,3-ジフルオロメチルフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール、2,2’-ビス-(2,4-ジフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール、2,2’-ビス-(2,5-ジフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール、2,2’-ビス-(2,6-ジフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール、2,2’-ビス-(2,3,4-トリフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール、2,2’-ビス-(2,3,5-トリフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール、2,2’-ビス-(2,3,6-トリフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール、2,2’-ビス-(2,4,5-トリフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール、2,2’-ビス-(2,4,6-トリフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール、2,2’-ビス-(2,3,4,5-テトラフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール、2,2’-ビス-(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール、及び2,2’-ビス-(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール等が挙げられ、これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用されることができる。高感度、解像性及び密着性の観点から、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体が好ましい。
【0083】
本実施形態では、感光性樹脂組成物中のヘキサアリールビスイミダゾール化合物の含有量は、感光性樹脂層の剥離特性及び/又は感度を向上させるという観点から、好ましくは0.05質量%~7質量%、より好ましくは0.1質量%~6質量%、さらに好ましくは1質量%~5質量%の範囲内である。
【0084】
感光性樹脂層の剥離特性又は感度、解像性、密着性の観点から、感光性樹脂組成物は、光増感剤としてピラゾリン化合物、アントラセン化合物(例えば9,10-ジフェニルアントラセンや、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセンのようなシアルコキシアントラセン類が感度、解像性、密着性の点で好ましい)も含むことが好ましい。
ピラゾリン化合物としては、例えば、1-フェニル-3-(4-tert-ブチル-スチリル)-5-(4-tert-ブチル-フェニル)-ピラゾリン、1-(4-(ベンゾオキサゾール-2-イル)フェニル)-3-(4-tert-ブチル-スチリル)-5-(4-tert-ブチル-フェニル)-ピラゾリン、1-フェニル-3-(4-ビフェニル)-5-(4-tert-ブチル-フェニル)-ピラゾリン、1-フェニル-3-(4-ビフェニル)-5-(4-tert-オクチル-フェニル)-ピラゾリン、1-フェニル-3-(4-イソプロピルスチリル)-5-(4-イソプロピルフェニル)-ピラゾリン、1-フェニル-3-(4-メトキシスチリル)-5-(4-メトキシフェニル)-ピラゾリン、1-フェニル-3-(3,5-ジメトキシスチリル)-5-(3,5-ジメトキシフェニル)-ピラゾリン、1-フェニル-3-(3,4-ジメトキシスチリル)-5-(3,4-ジメトキシフェニル)-ピラゾリン、1-フェニル-3-(2,6-ジメトキシスチリル)-5-(2,6-ジメトキシフェニル)-ピラゾリン、1-フェニル-3-(2,5-ジメトキシスチリル)-5-(2,5-ジメトキシフェニル)-ピラゾリン、1-フェニル-3-(2,3-ジメトキシスチリル)-5-(2,3-ジメトキシフェニル)-ピラゾリン、1-フェニル-3-(2,4-ジメトキシスチリル)-5-(2,4-ジメトキシフェニル)-ピラゾリン等が上記の観点から好ましく、挙げられる。これらの中でも、1-フェニル-3-(4-ビフェニル)-5-(4-tert-ブチル-フェニル)-ピラゾリンがより好ましい。
【0085】
本実施形態では、感光性樹脂組成物中の光増感剤の含有量は、透過率の観点から、そして感光性樹脂層の剥離特性及び/又は感度を向上させるという観点から、好ましくは0.05質量%~5質量%、より好ましくは0.1質量%~3質量%、更に好ましくは0.1質量%~1質量%、特に好ましくは0.1質量%~0.7質量%の範囲内である。
【0086】
(C-2)光重合開始剤
また、本実施形態において、感光性樹脂組成物は、(C-2)光重合開始剤((C)光重合開始剤)として、アントラセン及び/又はアントラセン誘導体を含むものを用いることができる。
【0087】
(C-2)光重合開始剤として、アントラセン及び/又はアントラセン誘導体を少なくとも用いることは、露光後に加熱してから現像したときの密着性を著しく向上させることができ、特には露光後の経過時間が長くなったときにおいても良好な密着性を得ることができる観点から有利である。また、アントラセン及び/又はアントラセン誘導体は、中心波長390nm未満の第1の活性光と中心波長390nm以上の第2の活性光とを吸光して重合開始剤として機能を有することができる。活性光は例えばレーザー光である。
【0088】
したがって、一態様において、感光性樹脂組成物は、第1の活性光と第2の活性光とに対する感光性を有することができ、2波長露光に用いることも可能である。アントラセン及び/又はアントラセン誘導体は、第1の活性光と第2の活性光との波長範囲に複数の吸収極大を有するように選択することもできる。第1の活性光の中心波長は、好ましくは350~380nm、より好ましくは355~375nmであり、特に好ましくは375nmである。第2の活性光の中心波長は、好ましくは400~410nm、より好ましくは402~408nmであり、特に好ましくは405nm(h線)である。
【0089】
感光性樹脂組成物中の(C-2)光重合開始剤の総含有量は、好ましくは0.01~20質量%、より好ましくは0.05質量%~10質量%、更に好ましくは0.1質量%~7質量%、特に好ましくは0.1質量%~6質量%の範囲内である。(C-2)光重合開始剤の総含有量は、十分な感度を得るという観点から0.01質量%以上であることが好ましく、レジスト底面まで光を充分に透過させて、良好な高解像性を得るという観点から20質量%以下であることが好ましい。
【0090】
アントラセン及びアントラセン誘導体は、露光後に加熱してから現像したときの密着性を著しく向上させることができ、特には露光後の経過時間が長くなったときにおいても良好な密着性を実現する点で有利である。アントラセン誘導体は、同様の観点から、好ましくは9位及び/又は10位、より好ましくは9,10位に、置換基を有していてもよい炭素数1~40のアルコキシ基及び/又は置換基を有していてもよい炭素数6~40のアリール基を有する。
【0091】
一態様において、アントラセン誘導体は、露光後に加熱してから現像したときの密着性を著しく向上させることができ、特には露光後の経過時間が長くなったときにおいても良好な密着性を実現する観点から、9位又は10位の少なくとも一方に、置換基を有していてもよい炭素数1~40のアルコキシ基を有することが好ましく、9位又は10位の少なくとも一方に、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルコキシ基を有することがさらに好ましい。良好な密着性及び解像度を得る観点から、9,10位に、置換基を有していてもよい炭素数1~40のアルコキシ基を有することが好ましく、9,10位に、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルコキシ基を有することがさらに好ましい。9位と10位の基の炭素数は同じであってもよく、異なっていてもよい。
置換基を有していてもよいアルコキシ基としては:
メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、t-ブトキシ基、2-メチルプロポキシ基、1-メチルプロポキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソアミルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、エイコシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ノルボルニルオキシ基、トリシクロデカニルオキシ基、テトラシクロドデシルオキシ基、アダマンチルオキシ基、メチルアダマンチルオキシ基、エチルアダマンチルオキシ基、及びブチルアダマンチルオキシ基;
ハロゲンで修飾されたアルコキシ基、例えば、クロロブトキシ基、クロロプロポキシ基;
ヒドロキシル基が付加したアルコキシ基、例えば、ヒドロキシブチルオキシ基;
シアノ基が付加したアルコキシ基、例えば、シアノブトキシ基;
アルキレンオキサイド基が付加したアルコキシ基、例えば、メトキシブトキシ基;
アリール基が付加したアルコキシ基、例えば、フェノキシブトキシ基、
等が挙げられる。この中でn-ブトキシ基がより好ましい。
【0092】
一態様において、アントラセン誘導体は、露光後に加熱してから現像したときの密着性を著しく向上させることができ、特には露光後の経過時間が長くなったときにおいても良好な密着性を実現する観点から、9位又は10位の少なくとも一方に、置換基を有していてもよい炭素数6~40のアリール基を有することが好ましく、9位又は10位の少なくとも一方に、置換基を有していてもよい炭素数6~30のアリール基を有することがより好ましい。
【0093】
露光後に加熱してから現像したときの密着性を著しく向上させることができ、特には露光後の経過時間が長くなったときにおいても良好な密着性を実現する観点から、9,10位に、置換基を有していてもよい炭素数6~40のアリール基を有することが好ましく、9,10位に、置換基を有していてもよい炭素数6~30のアリール基を有することがより好ましい。9位と10位の基の炭素数は同じであってもよく、異なっていてもよい。また、9位と10位の基は同じ基であってもよく、異なる基であってもよい。例えば、9位の基が置換基を有していてもよい炭素数1~40のアルコキシ基であり、10位の基が置換基を有していてもよい炭素数6~40のアリール基であってもよい。
【0094】
置換基を有していてもよい炭素数6~40のアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基;アルコキシ基が付加したアリール基、例えば、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基;アルキル基が付加したアリール基、例えば、トリル基、キシリル基、メシチル基、ノニルフェニル基;ハロゲンが付加したアリール基、例えば、クロロフェニル基;ヒドロキシル基が付加したアリール基、例えばヒドロキシフェニル基等が挙げられる。この中でフェニル基がより好ましい。
【0095】
アントラセン誘導体は、好ましくは、下記一般式(IV)で表される。
【化4】
1は、独立に水素原子、炭素数1~40の置換若しくは非置換のアルキル基、炭素数3~20の置換若しくは非置換の脂環族基、炭素数2~4のアルケニル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のヘテロアリール基又はN(R’)2基を示し、2以上のR1が互いに結合して環状構造を形成してもよく、該環状構造はヘテロ原子を含んでもよい。
【0096】
Xは、独立に単結合、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基、-N(R’)-基、-CO-O-基、-CO-S-基、-SO2-O-基、-SO2-S-基、-SO2-N(R’)-基、-O-CO-基、-S-CO-基、-O-SO2-基又はS-SO2-基を示す。ただし、Xが単結合、かつ、R1が水素原子の組み合わせ(すなわち無置換のアントラセン)を除く。
【0097】
上記R’は、水素原子、炭素数1~40の置換若しくは非置換のアルキル基、炭素数3~20の置換若しくは非置換の脂環族基、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数6~40の置換若しくは非置換のアリール基又は置換若しくは非置換のヘテロアリール基を示し、R’同士が相互に結合して環状構造を形成してもよく、該環状構造はヘテロ原子を含んでもよい。
【0098】
pは、1~10の整数であり、好ましくは2~4である。
【0099】
上記R1及びR’における炭素数1~40の置換若しくは非置換のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-テトラデシル基、n-ヘキサデシル基、n-エイコシル基、i-プロピル基、i-ブチル基、sec-ブチル基及びt-ブチル基などが挙げられる。
【0100】
上記R1及びR’における炭素数3~20の置換若しくは非置換の脂環族基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及び炭素数6~20の有橋脂環式炭化水素基(たとえば、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデシル基、アダマンチル基、メチルアダマンチル基、エチルアダマンチル基、及びブチルアダマンチル基等)などが挙げられる。
【0101】
上記R1及びR’における炭素数2~4のアルケニル基の具体例としては、ビニル及びプロペニル基などが挙げられる。
【0102】
上記R1及びR’における炭素数6~40の置換若しくは非置換のアリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ノニルフェニル基、クロロフェニル基、ヒドロキシフェニル基が挙げられる。
【0103】
上記R1及びR’における置換若しくは非置換のヘテロアリール基としては、置換若しくは非置換のアリール基中に、硫黄原子、酸素原子、窒素原子などのヘテロ原子を1以上含む基、たとえば、ピリジル基、イミダゾリル基、モルホリニル基、ピペリジル基、ピロリジル基などが挙げられる。
【0104】
また、上記R1及びR’の各炭化水素基は、置換基によって置換されていてもよい。このような置換基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、炭素数1~4のヒドロキシアルキル基(たとえば、ヒドロキシメチル基、1-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基、1-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基、1-ヒドロキシブチル基、2-ヒドロキシブチル基、3-ヒドロキシブチル基、4-ヒドロキシブチル基等)、炭素数1~4のアルコキシル基(たとえば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、2-メチルプロポキシ基、1-メチルプロポキシ基、t-ブトキシ基等)、シアノ基、炭素数2~5のシアノアルキル基(たとえば、シアノメチル基、2-シアノエチル基、3-シアノプロピル基、4-シアノブチル基等)、アルコキシカルボニル基(たとえば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基等)、アルコキシカルボニルアルコキシ基(たとえば、メトキシカルボニルメトキシ基、エトキシカルボニルメトキシ基、t-ブトキシカルボニルメトキシ基等)、ハロゲン原子(たとえば、フッ素、塩素等)及びフルオロアルキル基(たとえば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等)などが挙げられる。上記R1及びR’の各炭化水素基は、ハロゲン原子によって置換されていることが好ましい。特に、アントラセン誘導体は、ハロゲン原子によって置換されたアルコキシ基を9位及び/又は10位に有することが好ましい。
【0105】
上記R1及びR’の好ましい具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、カンフォロイル基、ノルボニル基、p-トルイル基、ベンジル基、メチルベンジル基、フェニル基及び1-ナフチル基が挙げられる。
【0106】
上記Xの好ましい具体例としては、単結合、酸素原子、硫黄原子、-N(R’)-基、-O-CO-基、及びO-SO2-基が挙げられる。ここで、上記Xが-N(R’)-基の場合、上記R’は、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、カンフォロイル基、ノルボニル基又はベンジル基が好ましい。
【0107】
上記一般式(IV)で示される化合物の例としてはたとえば、1-メチルアントラセン、2-メチルアントラセン、2-エチルアントラセン、2-t-ブチルアントラセン、9-メチルアントラセン、9,10-ジメチルアントラセン、9-ビニルアントラセン、9-フェニルアントラセン、9,10-ジフェニルアントラセン、2-ブロモ-9,10-ジフェニルアントラセン、9-(4-ブロモフェニル)―10-フェニルアントラセン、9-(1-ナフチル)アントラセン、9-(2-ナフチル)アントラセン、2-ブロモ-9,10-ビス(2-ナフチル)アントラセン、2,6-ジブロモ-9,10-ビス(2-ナフチル)アントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、9,10-ジプロポキシアントラセン、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジ(2-エチルヘキシルオキシ)アントラセン、1,2-ベンズアントラセン、アントロビン、1,4,9,10-テトラヒドロキシアントラセン、9-アントラセンメタノール、1-アミノアントラセン、2-アミノアントラセン、9-(メチルアミノメチル)アントラセン、9-アセチルアントラセン、9-アントラアルデヒド、10-メチル-9-アントラアルデヒド、1,8,9-トリアセトキシアントラセンなどが挙げられる。これらの中では、9,10-ジメチルアントラセン、9,10-ジフェニルアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、9,10-ジプロポキシアントラセン、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジ(2-エチルヘキシルオキシ)アントラセン、9,10-ビス-(3-クロロプロポキシ)アントラセンが好ましく、特に露光後に加熱してから現像したときの密着性を著しく向上させることができ、特には露光後の経過時間が長くなったときにおいても良好な密着性を実現する観点から、9,10-ジエトキシアントラセン、9,10-ジブトキシアントラセン及び9,10-ジフェニルアントラセン、9,10-ビス-(3-クロロプロポキシ)アントラセンがより好ましく、9,10-ジブトキシアントラセン及び9,10-ジフェニルアントラセン、9,10-ビス-(3-クロロプロポキシ)アントラセンが特に好ましい。上記一般式(IV)で示される化合物は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0108】
露光後に加熱してから現像したときの密着性を著しく向上させることができ、特には露光後の経過時間が長くなったときにおいても良好な密着性を得ることができる観点で、(C-2)光重合開始剤は、好ましくは、(1)9,10-ジフェニルアントラセンを含み;(2)9,10-ジアルコキシアントラセンを含み;(3)ハロゲン原子を有するアントラセン誘導体を含み;(4)9,10-ジアルコキシアントラセンのハロゲン置換体を含み;(5)9,10-ジアルコキシアントラセンの9位及び/又は10位のアルコキシ基が1つ以上のハロゲン原子で修飾されている化合物を含み;並びに/或いは、(6)アントラセン骨格に直接結合したハロゲン原子を有する化合物を含む。
【0109】
上記一般式(IV)で示される化合物は、露光後に加熱してから現像したときの密着性を著しく向上させることができ、特には露光後の経過時間が長くなったときにおいても良好な密着性を得ることができる観点で有利であり、更に、390nm未満を中心波長とする第1の活性光と、390nm以上の波長を中心波長とする第2の活性光とを用いた2波長露光に使用でき、優れた感度、密着性及び解像度を示す感光性樹脂組成物を提供できる点でも有利である。
【0110】
一態様において、(C-2)光重合開始剤は、ハロゲン原子を有するアントラセン誘導体を含むことが好ましい。ハロゲン原子を有するアントラセン誘導体の好適例は、9,10-ジアルコキシアントラセンのハロゲン置換体である。当該ハロゲン置換体の好適例は、9,10-ジアルコキシアントラセンの9位及び/又は10位のアルコキシ基が1つ以上のハロゲンで修飾されている化合物である。好ましいアルコキシ基としては、炭素数1~40のアルコキシ基として上記で例示したものが挙げられる。
【0111】
一態様において、アントラセン誘導体としては、アントラセン骨格に直接結合したハロゲン原子を有する化合物も好ましい。このようなアントラセン化合物としては、9-ブロモ-10-フェニルアントラセン、9-クロロ-10-フェニルアントラセン、9-ブロモ-10-(2-ナフチル)アントラセン、9-ブロモ-10-(1-ナフチル)アントラセン、9-(2-ビフェニリル)-10-ブロモアントラセン、9-(4-ビフェニリル)-10-ブロモアントラセン、9-ブロモ-10-(9-フェナントリル)アントラセン、2-ブロモアントラセン、9-ブロモアントラセン、2-クロロアントラセン、9,10-ジブロモアントラセンが挙げられる。
【0112】
アントラセン及びアントラセン誘導体の合計量、又は好ましい態様においては上記一般式(IV)で示される化合物の量は、感光性樹脂組成物の固形分総量に対して、好ましくは0.05~5質量%、より好ましくは0.1~3質量%、特に好ましくは0.1~1.0質量%の範囲である。
【0113】
(C-2)光重合開始剤は、アントラセン及びアントラセン誘導体以外の化合物を更に含んでもよく、このような化合物としては、キノン類、芳香族ケトン類、アセトフェノン類、アシルフォスフィンオキサイド類、ベンゾイン又はベンゾインエーテル類、ジアルキルケタール類、チオキサントン類、ジアルキルアミノ安息香酸エステル類、オキシムエステル類、アクリジン類(例えば9-フェニルアクリジン、ビスアクリジニルヘプタン、9-(p-メチルフェニル)アクリジン、9-(m-メチルフェニル)アクリジンが感度、解像性、及び密着性の点で好ましい)、ヘキサアリールビイミダゾール、ピラゾリン化合物、クマリン化合物(例えば7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリンが感度、解像性、及び密着性の点で好ましい)、N-アリールアミノ酸又はそのエステル化合物(例えばN-フェニルグリシンが感度、解像性、及び密着性の点で好ましい)、及びハロゲン化合物(例えばトリブロモメチルフェニルスルホン)などが挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用されることができる。その他、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキシド等を用いてもよい。
【0114】
芳香族ケトン類としては、例えば、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン[4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン]、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノンを挙げることができる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用されることができる。これらの中でも、密着性の観点から、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンが好ましい。更に、透過率の観点から、感光性樹脂組成物中の芳香族ケトン類の含有量は、好ましくは0.01質量%~0.5質量%、更に好ましくは0.02質量%~0.3質量%の範囲内である。
【0115】
ヘキサアリールビイミダゾールの例としては、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾール、2,2’,5-トリス-(o-クロロフェニル)-4-(3,4-ジメトキシフェニル)-4’,5’-ジフェニルビイミダゾール、2,4-ビス-(o-クロロフェニル)-5-(3,4-ジメトキシフェニル)-ジフェニルビイミダゾール、2,4,5-トリス-(o-クロロフェニル)-ジフェニルビイミダゾール、2-(o-クロロフェニル)-ビス-4,5-(3,4-ジメトキシフェニル)-ビイミダゾール、2,2’-ビス-(2-フルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール、2,2’-ビス-(2,3-ジフルオロメチルフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール、2,2’-ビス-(2,4-ジフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール、2,2’-ビス-(2,5-ジフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール、2,2’-ビス-(2,6-ジフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール、2,2’-ビス-(2,3,4-トリフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール、2,2’-ビス-(2,3,5-トリフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール、2,2’-ビス-(2,3,6-トリフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール、2,2’-ビス-(2,4,5-トリフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール、2,2’-ビス-(2,4,6-トリフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール、2,2’-ビス-(2,3,4,5-テトラフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール、2,2’-ビス-(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール、及び2,2’-ビス-(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール等が挙げられ、これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用されることができる。感度、解像性及び密着性の観点から、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体が好ましい。
【0116】
感光性樹脂組成物中のヘキサアリールビスイミダゾール化合物の含有量は、感光性樹脂層の剥離特性及び/又は感度を向上させるという観点から、好ましくは0.05質量%~8質量%、より好ましくは0.1質量%~7質量%、更に好ましくは1質量%~6質量%の範囲内である。
【0117】
感光性樹脂層の剥離特性、感度、解像性、及び密着性の観点から、感光性樹脂組成物は、(C-2)光重合開始剤として、1種又は2種以上のピラゾリン化合物を含むことが好ましい。
【0118】
ピラゾリン化合物としては、例えば、1-フェニル-3-(4-tert-ブチル-スチリル)-5-(4-tert-ブチル-フェニル)-ピラゾリン、1-(4-(ベンゾオキサゾール-2-イル)フェニル)-3-(4-tert-ブチル-スチリル)-5-(4-tert-ブチル-フェニル)-ピラゾリン、1-フェニル-3-(4-ビフェニル)-5-(4-tert-ブチル-フェニル)-ピラゾリン、1-フェニル-3-(4-ビフェニル)-5-(4-tert-オクチル-フェニル)-ピラゾリン、1-フェニル-3-(4-イソプロピルスチリル)-5-(4-イソプロピルフェニル)-ピラゾリン、1-フェニル-3-(4-メトキシスチリル)-5-(4-メトキシフェニル)-ピラゾリン、1-フェニル-3-(3,5-ジメトキシスチリル)-5-(3,5-ジメトキシフェニル)-ピラゾリン、1-フェニル-3-(3,4-ジメトキシスチリル)-5-(3,4-ジメトキシフェニル)-ピラゾリン、1-フェニル-3-(2,6-ジメトキシスチリル)-5-(2,6-ジメトキシフェニル)-ピラゾリン、1-フェニル-3-(2,5-ジメトキシスチリル)-5-(2,5-ジメトキシフェニル)-ピラゾリン、1-フェニル-3-(2,3-ジメトキシスチリル)-5-(2,3-ジメトキシフェニル)-ピラゾリン、1-フェニル-3-(2,4-ジメトキシスチリル)-5-(2,4-ジメトキシフェニル)-ピラゾリン等が上記の観点から好ましく、1-フェニル-3-(4-ビフェニル)-5-(4-tert-ブチル-フェニル)-ピラゾリンがより好ましい。
【0119】
<(D)禁止剤>
本実施の形態では、感光性樹脂組成物は、更に(D)禁止剤を含むことが、露光後の加熱を行っても、未露光部分の最短現像時間が延長しない観点から好ましい。同様の観点から、(D)禁止剤としては、ラジカル重合禁止剤、またはフェノール誘導体であることが好ましく、フェノール誘導体であることがより好ましい。(D)禁止剤は、使用する原料成分に元から含まれていてもよく、感光性樹脂組成物調合液の調合時に添加してもよい。使用する原料成分に元から含まれている場合は、感光性樹脂積層体を作成後に、GC-MS分析等により禁止剤含有量を定量することができる。
【0120】
ラジカル重合禁止剤としては、例えば、ナフチルアミン、塩化第一銅、ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩、ジフェニルニトロソアミン等が挙げられる。感光性樹脂組成物の感度を損なわないために、ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩が好ましい。
【0121】
フェノール誘導体としては例えば、p-メトキシフェノール、ハイドロキノン、ピロガロール、tert-ブチルカテコール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,5-ジ-tert-アミルヒドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、ビス(2-ヒドロキシ-3-t-ブチル-5-エチルフェニル)メタン、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチル・テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルフォスフォネート-ジエチルエステル、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレート、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、スチレン化フェノール(例えば川口化学工業(株)製、アンテージSP)、トリベンジルフェノール(例えば川口化学工業(株)製、TBP、ベンジル基を1~3個有するフェノール)、ビフェノール等が挙げられる。
【0122】
(D)禁止剤の、感光性樹脂組成物の全固形分質量に対する割合は、0.001質量%~10質量%であることが好ましい。この割合は、露光後の加熱を行っても、未露光部分の最短現像時間が延長しない観点から0.001質量%以上であることが好ましく、0.005質量%以上であることがより好ましく、0.01質量%以上であることが更に好ましく、0.05質量%以上であることがもっと好ましく、0.1質量%以上であることが特に好ましい。一方で、この割合は、感度低下が少ない点及び解像性の向上の点で、10質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましく、0.5質量%以下であることが特に好ましく、0.3質量%以下であることが最も好ましい。
【0123】
<(E)ベンゾトリアゾール誘導体>
更に(E)ベンゾトリアゾール誘導体を含むことが、露光後の加熱を行っても、感光性樹脂組成物層を現像除去した後の銅表面に変色が見られない観点から好ましい。(E)ベンゾトリアゾール誘導体としては、ベンゾトリアゾール類、及びカルボキシベンゾトリアゾール類から成る群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することが好ましい。
ベンゾトリアゾール類としては、例えば、1,2,3-ベンゾトリアゾール、1-クロロ-1,2,3-ベンゾトリアゾール、ビス(N-2-エチルヘキシル)アミノメチレン-1,2,3-ベンゾトリアゾール、ビス(N-2-エチルヘキシル)アミノメチレン-1,2,3-トリルトリアゾール、ビス(N-2-ヒドロキシエチル)アミノメチレン-1,2,3-ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
カルボキシベンゾトリアゾール類としては、例えば、4-カルボキシ-1,2,3-ベンゾトリアゾール、5-カルボキシ-1,2,3-ベンゾトリアゾール、N-(N,N-ジ-2-エチルヘキシル)アミノメチレンカルボキシベンゾトリアゾール、N-(N,N-ジ-2-ヒドロキシエチル)アミノメチレンカルボキシベンゾトリアゾール、N-(N,N-ジ-2-エチルヘキシル)アミノエチレンカルボキシベンゾトリアゾール等が挙げられる。
これらの中ではカルボキシベンゾトリアゾール類が特に好ましい。
【0124】
(E)ベンゾトリアゾール誘導体の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分質量を100質量%としたとき、好ましくは0.001質量%~3質量%である。該含有量を0.001質量%以上にすることは、露光後の加熱を行っても、感光性樹脂組成物層を現像除去した後の銅表面に変色が見られない観点から好ましく、0.02質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上が更に好ましい。一方で、該含有量を3質量%以下にすることは、感度を維持し、染料の脱色を抑える観点から好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましく、0.5質量%以下が特に好ましく、0.3質量%以下が最も好ましい。
【0125】
染料の脱色は波長630nmの透過率で測定することが可能である。波長630nmの透過率が高いことは染料が脱色されていることを示す。支持フィルムと感光性樹脂組成物層の積層体の波長630nmにおける透過率は80%以下であることが好ましく、78%以下であることが好ましく、75%以下であることが好ましく、72%以下であることが好ましく、70%以下であることが好ましく、68%以下であることが好ましく、65%以下であることが好ましく、62%以下であることが好ましく、60%以下であることが好ましく、58%以下であることが好ましく、55%以下であることが好ましく、52%以下であることが好ましく、50%以下であることが好ましい。この透過率は支持フィルムと感光性樹脂組成物層の積層体の透過率であり、保護層は含まれない。
【0126】
<添加剤>
感光性樹脂組成物は、所望により、染料、可塑剤、酸化防止剤、安定化剤等の添加剤を含んでよい。例えば、特開2013-156369号公報に列挙されている添加剤を使用してよい。
(染料及び着色物質)
本実施の形態では、感光性樹脂組成物は、所望により、染料(例えばロイコ染料、フルオラン染料等)及び着色物質から成る群より選ばれる少なくとも1種を更に含有してもよい。
【0127】
着色物質としては、例えば、フクシン、フタロシアニングリーン、オーラミン塩基、パラマジエンタ、クリスタルバイオレット、メチルオレンジ、ナイルブルー2B、ビクトリアブルー、マラカイトグリーン(例えば、保土ヶ谷化学(株)製 アイゼン(登録商標) MALACHITE GREEN)、ベイシックブルー20、ダイアモンドグリーン(例えば保土ヶ谷化学(株)製 アイゼン(登録商標) DIAMOND GREEN GH)が挙げられる。感光性樹脂組成物中の着色物質の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分質量を100質量%としたとき、0.001質量%~1質量%であることが好ましい。該含有量を0.001質量%以上にすることは、感光性樹脂組成物の取扱い性を向上させるという観点から好ましい。一方で、該含有量を1質量%以下にすることは、感光性樹脂組成物の保存安定性を維持するという観点から好ましい。
【0128】
感光性樹脂組成物は、染料を含有することにより露光部分が発色するので視認性の点で好ましく、また、検査機等が露光のための位置合わせマーカーを読み取る場合、露光部と未露光部とのコントラストが大きい方が認識し易く有利である。この観点で好ましい染料としては、ロイコ染料及びフルオラン染料が挙げられる。
ロイコ染料としては、トリス(4-ジメチルアミノフェニル)メタン[ロイコクリスタルバイオレット]、ビス(4-ジメチルアミノフェニル)フェニルメタン[ロイコマラカイトグリーン]等が挙げられる。とりわけ、コントラストが良好となる観点から、ロイコ染料としては、ロイコクリスタルバイオレットを用いることが好ましい。感光性樹脂組成物中のロイコ染料の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分質量に対して0.1質量%~10質量%であることが好ましい。この含有量を0.1質量%以上にすることは、露光部分と未露光部分とのコントラストを良好にする観点から好ましい。この含有量は、0.2質量%以上にすることがより好ましく、0.4質量%以上にすることが特に好ましい。一方で、この含有量を10質量%以下にすることが保存安定性を維持するという観点から好ましい。この含有量は、5質量%以下にすることがより好ましく、2質量%以下にすることが特に好ましい。
【0129】
また、感光性樹脂組成物中に、ロイコ染料と、(C)光重合開始剤において前述したハロゲン化合物とを組み合わせて用いることは、密着性及びコントラストを最適化する観点から好ましい。ロイコ染料を該ハロゲン化合物と併用する場合には、感光性樹脂組成物中の該ハロゲン化合物の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分質量を100質量%としたとき、0.01質量%~3質量%であることが、感光層における色相の保存安定性を維持するという観点から好ましい。
【0130】
(その他の添加剤)
本実施の形態では、感光性樹脂組成物は、ビスフェノールAのエポキシ化合物類を更に含有してもよい。ビスフェノールAのエポキシ化合物類としては、例えば、ビスフェノールAをポリプロピレングリコールで修飾し末端をエポキシ化した化合物等が挙げられる。
本実施の形態では、感光性樹脂組成物は、可塑剤を更に含有してもよい。可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル類(例えば、ジエチルフレート等)、o-トルエンスルホン酸アミド、p-トルエンスルホン酸アミド、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリ-n-プロピル、アセチルクエン酸トリ-n-ブチル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールアルキルエ-テル、ポリプロプレンレングリコールアルキルエーテル等が挙げられる。また、アデカノールSDX-1569、アデカノールSDX-1570、アデカノールSDX-1571、アデカノールSDX-479(以上旭電化(株)製)、ニューポールBP-23P、ニューポールBP-3P、ニューポールBP-5P、ニューポールBPE-20T、ニューポールBPE-60、ニューポールBPE-100、ニューポールBPE-180(以上三洋化成(株)製)、ユニオールDB-400、ユニオールDAB-800、ユニオールDA-350F、ユニオールDA-400、ユニオールDA-700 (以上日本油脂(株)製)、BA-P4Uグリコール、BA-P8グリコール(以上日本乳化剤(株)製)等のビスフェノール骨格を有する化合物も挙げられる。
【0131】
感光性樹脂組成物中の可塑剤の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分質量に対して、好ましくは1質量%~50質量%であり、より好ましくは1質量%~30質量%である。該含有量を1質量%以上にすることは、現像時間の遅延を抑え、かつ硬化膜に柔軟性を付与するという観点から好ましい。一方で、該含有量を50質量%以下にすることは、硬化不足及びコールドフローを抑えるという観点から好ましい。
感光性樹脂組成物中の水分量が多いと、感光性樹脂組成物の局所的な可塑化が急激に促進され、エッジフューズが発生する。エッジフューズを抑制する観点から感光性樹脂組成物調合液を支持フィルムに塗布、乾燥後の感光性樹脂組成物を基準として、感光性樹脂組成物中の水分量は0.7%以下であることが好ましい。感光性樹脂組成物中の水分量は0.65%以下であることが好ましく、0.6%以下であることが好ましく、0.55%以下であることが好ましく、0.5%以下であることが好ましく、0.45%以下であることが好ましく、0.4%以下であることが好ましく、0.35%以下であることが好ましく、0.3%以下であることが好ましく、0.25%以下であることが好ましく、0.2%以下であることが好ましい。
【0132】
[溶剤]
感光性樹脂組成物は、溶剤に溶解させて感光性樹脂組成物調合液の形態で、感光性樹脂積層体の製造に使用できる。溶剤としては、ケトン類、アルコール類等が挙げられる。前記ケトン類は、メチルエチルケトン(MEK)、アセトンに代表される。前記アルコール類は、メタノール、エタノール、及びイソプロパノールに代表される。溶剤は、感光性樹脂積層体の製造に際して、支持層上に塗布する感光性樹脂組成物調合液の25℃における粘度が、500mPa・s~4,000mPa・sとなるような量で、感光性樹脂組成物に添加されることが好ましい。
【0133】
[感光性樹脂積層体]
支持フィルムとしては、露光光源から放射される光を透過する透明な支持フィルムが好ましい。このような支持フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、塩化ビニリデン共重合フィルム、ポリメタクリル酸メチル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、スチレン共重合体フィルム、ポリアミドフィルム、セルロース誘導体フィルム等が挙げられる。これらのフィルムは、必要に応じて延伸されたものも使用可能である。
支持フィルムとしては、露光時の光散乱を抑制する観点からヘイズ5%以下のものであることが好ましく、2%以下がより好ましく、1.5%以下が更に好ましく、1.0%以下が特に好ましい。同様の観点から、感光層と接する面の表面粗さRaは30nm以下が好ましく、20nm以下がより好ましく、10nm以下が特に好ましい。フィルムの厚みは、薄いほど画像形成性及び経済性を向上させるため有利であるが、感光性樹脂積層体の強度を維持するために、10μm~30μmのものが好ましく用いられる。支持フィルムが含有する滑剤等の微粒子の大きさとしては5μm未満であることが好ましい。
【0134】
また、支持フィルムは単層構造であってもよく、複数の組成から形成される樹脂層を積層した多層構造であってもよい。多層構造の場合、帯電防止層があってもよい。2層構造や3層構造のような多層構造の場合、例えば、一方の面Aに微粒子を含有する樹脂層を形成し、もう一方の面Bには、(1)面Aと同じように微粒子を含有、(2)面Aより少量の微粒子を含有、(3)面Aより細かい微粒子を含有、(4)微粒子を含有しない、といった構造をとることができる。(2)、(3)、(4)の構造の場合は、面B側に感光性樹脂層を形成することが好ましい。このとき、面A側に微粒子を含有する樹脂層があると、フィルムの滑り性等の観点から好ましい。このときの微粒子の大きさとしては、本発明の効果の観点からも1.5μm未満であることが好ましい。
【0135】
感光性樹脂積層体に用いられる保護層の重要な特性は、感光性樹脂層との密着力が支持層よりも充分小さく、容易に剥離できることである。例えば、ポリエチレンフィルム又はポリプロピレンフィルムが、保護層として好ましく使用されることができる。また、特開昭59-202457号公報に示された剥離性の優れたフィルムを用いることもできる。保護層の膜厚は10μm~100μmが好ましく、10μm~50μmがより好ましい。
【0136】
ポリエチレンフィルム表面には、フィッシュアイと呼ばれるゲルが存在する場合がある。フィッシュアイを有するポリエチレンフィルムを保護層として用いた場合には、該フィッシュアイが感光性樹脂層に転写されることがある。フィッシュアイが感光性樹脂層に転写されると、ラミネート時に空気を巻き込んで空隙になることがあり、レジストパターンの欠損につながる。フィッシュアイを防ぐ観点から、保護層の材質としては、延伸ポリプロピレンが好ましい。具体例としては王子製紙(株)製 アルファンE-200Aを挙げることができる。
【0137】
感光性樹脂積層体における感光性樹脂層の厚さは、用途において異なるが、好ましくは1μm~300μm、より好ましくは3μm~100μm、特に好ましくは5μm~60μm、最も好ましくは10μm~30μmである。感光性樹脂層の厚さは、薄いほど解像度が向上し、また厚いほど膜強度が向上する。
【0138】
次に、感光性樹脂積層体の製造方法について説明する。
支持層及び感光性樹脂層、並びに必要により保護層を順次積層して感光性樹脂積層体を作製する方法としては、既知の方法を採用することができる。例えば、感光性樹脂層に用いる感光性樹脂組成物を、これを溶解する溶剤と混ぜ合わせ均一な溶液にし、まず支持層上にバーコーター又はロールコーターを用いて塗布し、次いで乾燥して前記溶剤を除去することにより、支持層上に感光性樹脂組成物から成る感光性樹脂層を積層することができる。次いで必要により、感光性樹脂層上に保護層をラミネートすることにより、感光性樹脂積層体を作製することができる。
【0139】
<レジストパターンの形成方法>
次に、本実施の形態の感光性樹脂積層体を用いてレジストパターンを製造する方法の一例を説明する。該方法は、感光性樹脂組成物を露光する露光工程、露光された感光性樹脂組成物を加熱する加熱工程、及び該感光性樹脂組成物を現像する現像工程を含むことができる。
レジストパターンとしては、例えば、プリント配線板、半導体素子、印刷版、液晶ディスプレイパネル、タッチパネル、フレキシブル基板、リードフレーム基板、COF(チップオンフィルム)用基板、半導体パッケージ用基板、液晶用透明電極、液晶用TFT用配線、PDP(プラズマディスプレイパネル)用電極等のパターンが挙げられる。一例として、プリント配線板の製造方法を、下記の通り説明する。
【0140】
プリント配線板は、以下の各工程を経て製造される。
(1)ラミネート工程
先ず、ラミネート工程において、ラミネーターを用いて基板上に感光性樹脂層を形成する。具体的には、感光性樹脂積層体が保護層を有する場合には保護層を剥離した後、ラミネーターで感光性樹脂層を基板表面に加熱圧着しラミネートする。基板の材料としては、例えば、銅、ステンレス鋼(SUS)、ガラス、酸化インジウムスズ(ITO)等が挙げられる。
本実施形態では、感光性樹脂層は基板表面の片面だけにラミネートするか、又は必要に応じて両面にラミネートしてもよい。ラミネート時の加熱温度は一般的に40℃~160℃である。また、ラミネート時の加熱圧着を2回以上行うことにより、得られるレジストパターンの基板に対する密着性を向上させることができる。加熱圧着時には、二連のロールを備えた二段式ラミネーターを使用するか、又は基板と感光性樹脂層との積層物を数回繰り返してロールに通すことにより圧着してもよい。
【0141】
(2)露光工程
本工程では、所望の配線パターンを有するマスクフィルムを支持層上に密着させて活性光源を用いて行う露光方法、所望の配線パターンである描画パターンの直接描画による露光方法、又はフォトマスクの像を、レンズを通して投影させることによる露光方法によって、感光性樹脂層を露光する。
【0142】
露光工程は、描画パターンの直接描画による露光方法、又はフォトマスクの像を、レンズを通して投影させる露光方法により行うことが好ましく、描画パターンの直接描画による露光方法により行うことがより好ましい。本実施の形態に係る感光性樹脂組成物の利点は、描画パターンの直接描画による露光方法、又はフォトマスクの像を、レンズを通して投影させる露光方法においてより顕著であり、描画パターンの直接描画による露光方法において特に顕著である。
【0143】
露光工程が直接描画による露光方法の場合、中心波長390nm未満のレーザー光または、中心波長390nm以上のレーザー光であることが好ましい。中心波長350nm以上380nm以下のレーザー光または、中心波長400nm以上410nm以下のレーザー光であることがより好ましい。中心波長390nm未満の第1のレーザー光と、中心波長390nm以上の第2のレーザー光とで露光する方法により行うことが好ましい。また、第1のレーザー光の中心波長が350nm以上380nm以下であり、第2のレーザー光の中心波長が400nm以上410nm以下であることがより好ましい。
【0144】
(3)加熱工程
本工程では、露光された感光性樹脂組成物に対し、約30℃~約200℃の加熱工程を行うことが好ましく、30℃~150℃の範囲であることがより好ましく、60℃~120℃の範囲であることが更に好ましい。この加熱工程を実施することにより、解像性、密着性の向上が可能となる。加熱には、熱風、赤外線、又は遠赤外線の方式の加熱炉、恒温槽、ホットプレート、熱風乾燥機、赤外線乾燥機、ホットロールなどを用いることができる。加熱方法がホットロールであると短時間処理が可能な点で好ましく、ホットロールが2連以上であるとより好ましい。
【0145】
特に本発明においては、スチレン及び/又はスチレン誘導体の構成単位を15質量%以上含み、かつ露光後に加熱してから現像することにより、スチレン骨格の含有量が多い系であっても加熱により樹脂のモビリティが向上し、スチレン骨格の疎水性と炭素-炭素二重結合の反応性を高度に両立することができる。
【0146】
また、本発明においては、(C-2)光重合開始剤((C)光重合開始剤)としてアントラセン及び/又はアントラセン誘導体を少なくとも用い、かつ露光後に加熱してから現像することにより、加熱により樹脂のモビリティが向上し、例えばスチレン骨格の含有量が比較的多い系であってもスチレン骨格の疎水性と炭素-炭素二重結合の反応性を高度に両立することができる。
【0147】
その結果、密着性を著しく向上させることができる。そして、密着性が著しく向上することにより、露光後の経過時間が長くなったときにおいても良好な密着性を得ることができる。また、前記加熱工程を、露光から15分以内に行うことが、本発明の効果の観点から好ましく、10分以内に行うことがより好ましく、5分以内に行うことが更に好ましい。
【0148】
(4)現像工程
本工程では、露光後、感光性樹脂層上の支持層を剥離し、続いてアルカリ水溶液の現像液を用いて未露光部を現像除去することにより、レジストパターンを基板上に形成する。
アルカリ水溶液としては、Na2CO3又はK2CO3の水溶液を用いる。アルカリ水溶液は、感光性樹脂層の特性に合わせて適宜選択されるが、約0.2質量%~約2質量%の濃度、かつ約20℃~約40℃のNa2CO3水溶液が好ましい。
上記の(1)~(4)の各工程を経てレジストパターンを得ることができる。
【0149】
本発明の回路基板の製造方法では、上記の方法により製造されたレジストパターンを有する基板に対してエッチング又はめっきを施すことにより回路基板を形成する。
【0150】
(5)エッチング工程又はめっき工程
現像により露出した基板表面(例えば銅張積層板の銅面)をエッチング又はめっきし、導体パターンを製造する。
(6)剥離工程
その後、レジストパターンを、適当な剥離液を用いて基板から剥離する。
ここで使用される剥離液としては、例えば、アルカリ水溶液、アミン系剥離液等を挙げることができる。しかしながら、本発明の感光性樹脂組成物から露光後加熱を経て形成されたレジストパターンは、アミン系剥離液に対して良好な剥離性を示すとともに、剥離片が過度に微細化されることがないとの特徴を有する。したがって、剥離液としてアミン系剥離液を用いると、本発明の有利な効果が最大限に発揮されて好ましい。
【0151】
アミン系剥離液に含有されるアミンは、無機アミンであっても有機アミンであってもよい。
無機アミンとしては、例えば、アンモニア、ヒドロキシルアミン、ヒドラジン等が挙げられる。
【0152】
有機アミンとしては、例えば、エタノールアミン、プロパノールアミン、アルキルアミン、環状アミン、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。これらの具体例としては、
エタノールアミンとして、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N、N-ジメチルエタノールアミン、N、N-ジエチルエタノールアミン、アミノエトキシエタノール等を;
プロパノールアミンとして、例えば、1-アミノ-2-プロパノール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール等を;
アルキルアミンとして、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチレンアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等を;
環状アミンとして、例えば、コリン、モルホリン等を;
第4級アンモニウム塩として、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、N、N、N-トリエチル-N-(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、N、N-ジエチル-N、N-ジ(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド等を;
それぞれ例示できる。
【0153】
本発明で用いられるアミン系剥離剤は、上記に例示したアミンの1種以上を含む水溶液であってよい。水溶液中のアミンの濃度は、目的、感光性樹脂層の組成、現像条件等によって適宜に設定されてよい。
本発明で用いられるアミン系剥離剤は、剥離剤に通常用いられる添加剤、例えば、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐剤、再付着防止剤等を、更に含有していてもよい。
剥離工程は、例えば0℃以上100℃以下、好ましくは室温(23℃)以上50℃以下の温度において、例えば、1秒以上1時間以下、好ましくは10秒以上10分以下の時間、行われる。
【0154】
剥離工程の後、所望により、レジストパターンを除去した後の基板を、例えば純水等によって洗浄してもよい。
【0155】
本実施の形態の感光性樹脂積層体は、プリント配線板、フレキシブル基板、リードフレーム基板、タッチパネル基板、COF用基板、半導体パッケージ用基板、液晶用透明電極、液晶用TFT用配線、PDP用電極等の導体パターンの製造に適した感光性樹脂積層体である。
なお、上述した各種パラメータについては、特に断りのない限り、後述の実施例における測定方法又はこれと同等であることが当業者に理解される方法に準じて測定される。
【実施例
【0156】
次に、実施例及び比較例を挙げて本実施の形態をより具体的に説明する。しかしながら、本実施の形態は、その要旨から逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。実施例中の物性は以下の方法により測定した。
高分子の物性値の測定、並びに実施例及び比較例の評価用サンプルの作製方法を説明する。また、得られたサンプルについての評価方法及びその評価結果を示す。
【0157】
<<第1の実施例>>
第1の実施例では、(A)アルカリ可溶性高分子全体におけるスチレン及び/又はスチレン誘導体の構成単位が15質量%以上である感光性樹脂組成物についての評価を行った。
【0158】
(1)物性値の測定
<高分子の重量平均分子量又は数平均分子量の測定>
高分子の重量平均分子量又は数平均分子量は、日本分光(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(ポンプ:Gulliver、PU-1580型、カラム:昭和電工(株)製Shodex(登録商標)(KF-807、KF-806M、KF-806M、KF-802.5)4本直列、移動層溶媒:テトラヒドロフラン、ポリスチレン標準サンプル(昭和電工(株)製Shodex STANDARD SM-105)による検量線使用)によりポリスチレン換算として求めた。
さらに、高分子の分散度は、数平均分子量に対する重量平均分子量の比(重量平均分子量/数平均分子量)として算出された。
【0159】
(2)評価用サンプルの作製方法
評価用サンプルは以下のように作製した。
<感光性樹脂積層体の作製>
後掲する表1-1(表2-1、表3-1)に示す成分(但し、各成分の数字は固形分としての配合量(質量部)を示す。)及び溶媒を十分に攪拌、混合して、感光性樹脂組成物調合液を得た。表1-1(表2-1、表3-1)中に略号で表した成分の名称を、下記表1-2(表2-2、表3-2)に示す。支持フィルムとして16μm厚のポリエチレンテレフタラートフィルム(東レ(株)製、FB-40)を用い、その表面にバーコーターを用いて、この調合液を均一に塗布し、95℃の乾燥機中で3分間乾燥して、感光性樹脂組成物層を形成した。感光性樹脂組成物層の乾燥厚みは25μmであった。
次いで、感光性樹脂組成物層のポリエチレンテレフタラートフィルムを積層していない側の表面上に、保護層として19μm厚のポリエチレンフィルム(タマポリ(株)製、GF-818)を貼り合わせて感光性樹脂積層体を得た。
【0160】
<基板整面>
画像性の評価基板として、35μm圧延銅箔を積層した0.4mm厚の銅張積層板を、スプレー圧0.2MPaで研削剤(宇治電化学工業(株)製、#400)を用いてジェットスクラブ研磨した後、10質量%HSO水溶液で基板表面を洗浄した。
<ラミネート>
感光性樹脂積層体のポリエチレンフィルム(保護層)を剥がしながら、50℃に予熱した銅張積層板に、ホットロールラミネーター(旭化成(株)社製、AL-700)により、感光性樹脂積層体をロール温度105℃でラミネートした。エアー圧は0.35MPaとし、ラミネート速度は1.5m/minとした。
【0161】
<露光>
ラミネート後2時間経過した評価用基板に、直接描画露光機IP-8 8000Hにより、ストーファー41段ステップタブレットを用いて露光した。露光は、前記ストーファー41段ステップタブレットをマスクとして露光、現像したときの最高残膜段数が15段となる露光量で行った。
【0162】
露光後7分間経過した評価用基板を、ホットロールラミネーター(旭化成(株)社製、AL-700)により加熱した。ロール温度は105℃、エアー圧は0.30MPa、ラミネート速度は0.5m/minとした。なお、露光後の経過時間を長くすると加熱の効果が無くなってくるため、通常は露光後1分程度に加熱する。そのため、本実施例の露光7分後の加熱は非常に厳しい条件である。
【0163】
<現像>
ポリエチレンテレフタレートフィルム(支持層)を剥離した後、アルカリ現像機(フジ機工製、ドライフィルム用現像機)を用い、30℃の1質量%NaCO水溶液を所定時間に亘ってスプレーして現像を行った。現像スプレーの時間は最短現像時間の2倍の時間とし、現像後の水洗スプレーの時間は最短現像時間の4倍の時間とした。この際、未露光部分の感光性樹脂層が完全に溶解するのに要する最も短い時間を最短現像時間とした。
【0164】
<密着性評価>
マスクパターンL/S=Xμm/200μmのパターンが正常に形成されている最小ライン幅を光学顕微鏡により測定した。この測定を8本のラインについて行い、その8つの線幅の平均値を密着性の値として求めた。
【0165】
<銅表面の変色性>
現像までは上記と同様の工程を実施し、感光性樹脂組成物層をラミネートした未露光部において、感光性樹脂組成物層を現像除去した後の銅表面を目視で観察した。
〇:変色無し
△:少し変色が見られる
【0166】
<最短現像時間の遅延>
最短現像時間を以下の2条件で測定した。
(A)通常の最短現像時間
基板に感光性樹脂積層体をラミネートし、支持フィルムを剥離後、未露光部分の感光性樹脂層が完全に溶解するのに要する最も短い時間を測定した。
(B)加熱後の最短現像時間
基板に感光性樹脂積層体をラミネート後、ホットロールラミネーター(旭化成(株)社製、AL-700)により加熱した。ロール温度は105℃、エアー圧は0.30MPa、ラミネート速度は0.1m/minとした。
〇:(B)と(A)の最短現像時間が同じ(遅延なし)
△:(B)の最短現像時間が(A)の最短現像時間よりも1~3秒長い(遅延あり)
【0167】
以上の評価結果を、実施例および比較例の感光性樹脂組成物の成分と併せて表1-1に示す。また、表1-1中に略号で表した成分の名称を表1-2に示す。
【0168】
【表1-1】
【0169】
【表1-2】
【0170】
表1-1及び1-2の結果から、本発明の構成要件の範囲に入っている実施例においては、本発明の範囲外である比較例よりも、画像性評価結果が優れていることが確認された。
【0171】
表1-1及び1-2の結果から、本発明の構成要件の範囲に入っている実施例においては、本発明の範囲外である比較例におけるよりも、画像性評価結果が優れていることが確認された。
【0172】
なお、本実施例の露光後の加熱条件は、露光7分後の加熱であるため非常に厳しい条件である。例えば、実施例1及び比較例1の組成を露光後の加熱無しで現像したときの密着性は、共に12.0μmであった。つまり、比較例1の組成においては露光7分後の加熱では効果は見られなかったが、実施例1においては非常に厳しい条件であっても密着性を良くすることができる。また、露光1分後に加熱する条件においては、実施例1及び比較例1の組成のいずれにおいても10.0μmの密着性が得られた。
【0173】
以上の結果より、一般的な露光後の加熱条件においては密着性が良好な場合であっても、本実施例の露光後7分後の加熱という厳しい条件においては密着性が良くなるという訳ではない。しかし、特定の組成を有する本発明の感光性樹脂組成物により、初めてこの厳しい露光後加熱条件においても密着性を良くすることができた。これにより、回路基板を製造する際、露光後の経過時間が長くなってしまっても良好な密着性を得ることができるため、高精細な回路パターンを安定して形成可能となる。
【0174】
<<第2の実施例>>
第2の実施例では、(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物が、エチレン性不飽和二重結合を3個以上有する(メタ)アクリレート化合物を含む、感光性樹脂組成物についての評価を行った。
後掲する表2-1に示す成分で、上述した第1の実施例と同様にして、評価用サンプルを作製した。
<露光>
ラミネート後2時間経過した評価用基板に、直接描画露光機(オルボテック(株)製、Nuvogo1000、光源:375nm(30%)+405nm(70%))により、ストーファー41段ステップタブレットを用いて露光した。露光は、前記ストーファー41段ステップタブレットをマスクとして露光、現像したときの最高残膜段数が19段となる露光量で行った。
【0175】
<加熱>
露光後7分経過した評価用基板を、ホットロールラミネーター(旭化成(株)社製、AL-700)により加熱した。ロール温度は105℃、エアー圧は0.30MPa、ラミネート速度は1m/minとした。なお、露光後の経過時間を長くすると加熱の効果が無くなってくるため、通常は露光後1分程度に加熱する。そのため、本実施例の露光7分後の加熱は非常に厳しい条件である。
【0176】
<現像>
ポリエチレンテレフタレートフィルム(支持層)を剥離した後、アルカリ現像機(フジ機工製、ドライフィルム用現像機)を用い、30℃の1質量%NaCO水溶液を所定時間に亘ってスプレーして現像を行った。現像スプレーの時間は最短現像時間の2倍の時間とし、現像後の水洗スプレーの時間は最短現像時間の3倍の時間とした。この際、未露光部分の感光性樹脂層が完全に溶解するのに要する最も短い時間を最短現像時間とした。
【0177】
露光~現像の工程を上記のようにしたこと以外は、第1の実施例と同様にして評価した。
以上の評価結果を、実施例および比較例の感光性樹脂組成物の成分と併せて表2-1に示す。また、表2-1中に略号で表した成分の名称を表2-2に示す。
【0178】
【表2-1】
【0179】
【表2-2】
【0180】
表2-1及び2-2の結果から、本発明の構成要件の範囲に入っている実施例においては、本発明の範囲外である比較例よりも、画像性評価結果が優れていることが確認された。
【0181】
なお、本実施例の露光後の加熱条件は、露光7分後の加熱であるため非常に厳しい条件である。例えば、実施例1及び比較例1の組成を露光後の加熱無しで現像したときの密着性は、共に11.8μmであった。つまり、比較例1の組成においては露光7分後の加熱では効果は見られなかったが、実施例1においては非常に厳しい条件であっても密着性を良くすることができる。また、露光1分後に加熱する条件においては、実施例1及び比較例1の組成のいずれにおいても9.6μmの密着性が得られた。
【0182】
以上の結果より、一般的な露光後の加熱条件においては密着性が良好な場合であっても、本実施例の露光後7分後の加熱という厳しい条件においては密着性が良くなるという訳ではない。しかし、本発明により初めてこの厳しい露光後加熱条件においても密着性を良くすることができた。これにより、回路基板を製造する際、露光後の経過時間が長くなってしまっても良好な密着性を得ることができるため、高精細な回路パターンを安定して形成可能となる。
【0183】
<<第3の実施例>>
第3の実施例では、(C-2)光重合開始剤がアントラセン及び/又はアントラセン誘導体を含む感光性樹脂組成物についての評価を行った。
後掲する表3-1に示す成分で、上述した第1の実施例と同様にして、評価用サンプルを作製した。
<露光>
ラミネート後2時間経過した評価用基板に、直接描画露光機(オルボテック(株)製、Nuvogo1000、光源:375nm(30%)+405nm(70%))により、ストーファー41段ステップタブレットを用いて露光した。露光は、前記ストーファー41段ステップタブレットをマスクとして露光、現像したときの最高残膜段数が21段となる露光量で行った。
【0184】
<加熱>
露光後7分経過した評価用基板を、ホットロールラミネーター(旭化成(株)社製、AL-700)により加熱した。ロール温度は105℃、エアー圧は0.30MPa、ラミネート速度は1m/minとした。なお、露光後の経過時間を長くすると加熱の効果が無くなってくるため、通常は露光後1分程度に加熱する。そのため、本実施例の露光7分後の加熱は非常に厳しい条件である。
【0185】
<現像>
ポリエチレンテレフタレートフィルム(支持層)を剥離した後、アルカリ現像機(フジ機工製、ドライフィルム用現像機)を用い、30℃の1質量%Na2CO3水溶液を所定時間に亘ってスプレーして現像を行った。現像スプレーの時間は最短現像時間の2倍の時間とし、現像後の水洗スプレーの時間は最短現像時間の3倍の時間とした。この際、未露光部分の感光性樹脂層が完全に溶解するのに要する最も短い時間を最短現像時間とした。
【0186】
露光~現像の工程を上記のようにしたこと以外は、第1の実施例と同様にして評価した。
以上の評価結果を、実施例および比較例の感光性樹脂組成物の成分と併せて表3-1に示す。また、表3-1中に略号で表した成分の名称を表3-2に示す。
【0187】
【表3-1】
【0188】
【表3-2】
【0189】
表3-1及び3-2の結果から、本発明の構成要件の範囲に入っている実施例においては、本発明の範囲外である比較例におけるよりも、画像性評価結果が優れていることが確認された。なお、本実施例の露光後の加熱条件は、露光7分後の加熱であるため非常に厳しい条件である。例えば、実施例7及び比較例1の組成を露光後の加熱無しで現像したときの密着性は、共に12.8μmであった。つまり、比較例1の組成においては露光7分後の加熱では効果は見られなかったが、実施例7においては非常に厳しい条件であっても密着性を良くすることができる。また、露光1分後に加熱する条件においては、実施例7及び比較例1の組成のいずれにおいても9.6μmの密着性が得られた。
【0190】
以上の結果より、一般的な露光後の加熱条件においては密着性が良好な場合であっても、露光後7分後の加熱という厳しい条件においては密着性が良くなるという訳ではないところ、本発明によって初めてこの厳しい露光後加熱条件においても密着性を良くすることができることが分かる。すなわち、本発明に係る組成物によれば、回路基板を製造する際、露光後の経過時間が長くなってしまっても良好な密着性を得ることができるため、高精細な回路パターンを安定して形成可能となる。
【0191】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0192】
本発明による感光性樹脂組成物を用いることで、露光後に加熱してから現像したときの密着性を著しく向上させることができ、特には露光後の経過時間が長くなったときにおいても良好な密着性を実現するものとなり、感光性樹脂組成物として広く利用することができる。